(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記第1検査装置、前記第2検査装置、および前記第3検査装置による検査を受けた被検物を前記複数の保持部から順次取り出して第1載置領域および第2載置領域を有するトレイに載置する排出部をさらに備え、
前記制御装置は、前記第1検査情報、前記第2検査情報、および前記第3検査情報に基づいて、前記取り出された被検物が前記検査に合格したか否かを判断し、前記取り出された被検物を前記判断の結果に応じて前記第1載置領域または前記第2載置領域に載置するよう前記排出部を制御する、
請求項10に記載の検査システム。
前記複数の保持部のそれぞれは、前記被検物を支持する支持台および前記支持台が支持する前記被検物の光学面を露出する円形状の露出孔を有する支持部と、前記支持部と前記ターンテーブルとを離隔して接続し、前記露出孔が前記平面上で移動可能なよう前記支持部を支持する3以上のアーム部とを備える、
請求項6から11のいずれか1項に記載の検査システム。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記従来の品質検査の方法では、被検物の表面がレンズのように曲面である場合に、その表面によって反射された光が観察視野の外へ向かうことがある。また、被検物の表面を一様の明るさで照らすことができないことがある。たとえば、観察する被検物像に光源が映り込んだり、反射体が備える観察用の孔や溝の部分が光を反射しないために影が生じたりする場合がある。
【0006】
このような場合には被検物全体を一度には観察できない。つまり、観察が必要な範囲全体を検査するために、被検物を傾けたり回転させたり(または観察位置を変えたり)する必要がある。これにより、各被検物の検査に必要な時間は必然的に長くなる。また、得られる被検物像には上記の映り込みや影といった観察の障害となるものが常に含まれているので、検査員または検査装置に、異常の有無の判断や異常がある範囲の特定のための高度な能力が要求される。
【0007】
また、外観検査を含む複数種類の検査からなる品質検査を、各検査を処理要素として含むパイプライン処理によって複数の被検物に対して並行して実行することができれば、品質検査の効率化を図ることができる。しかし、上記のような従来の方法による被検物の外観検査は上述のように時間がかかるため、このパイプライン処理のボトルネックになりやすく、品質検査のスループットの向上を妨げる。
【0008】
本発明はこれらの問題点に鑑みてなされたものであり、従来の方法を用いる場合より短い時間で、かつ精度を落とすことなく被検物の外観を検査する装置を提供することを目的とする。また本発明はさらに、外観検査を含む複数種類の検査を複数の被検物に対して並行に実施し、従来よりも高い効率で被検物の品質検査が可能な検査システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の目的を達成するために、本発明の一態様に係る外観検査装置は、
被検物が反射する光がなす反射光像によって前記被検物の外観を検査する外観検査装置であって、前記被検物の被観察面の反対側に位置し、前記被検物に向けて光を出射する光源部と、前記被検物の被観察面側に位置し、前記光源部から出射された光を前記被観察面に向けて反射させるとともに、前記被観察面で反射された光を透過させるハーフミラーと
、前記光源部と前記被検物との間に配置され、前記光源部から出射された光のうち、前記被検物に直接照射される方向に出射された光をすべて遮る遮光体とを備え
、前記光源部は前記反射光像をなす光の唯一の光源であって、前記出射した光で前記ハーフミラーの前記被検物に対向する面を略一様の照度で照射し、前記ハーフミラーは、前記光源部から出射された光を前記被観察面に向けて反射する領域内に穴および隙間を有しない。
【0010】
この構成を有する外観検査装置において、被検物の被観察面に落射する光の照度は一様性が高い。したがって、被観察面で反射されてハーフミラーを透過する光から得られる被検物像には光源の映り込みなどによる明部がなく、また、光源の暗部もしくは欠如部分またはハーフミラーの穴もしくは隙間などに起因する暗部もない。これにより、被検物の被観察面全体を検査するために複数の方向から観察する必要がない。このため、反射光像による被検物の異常の有無の検査を、高度な観察能力を要することなく被観察面全体に対して短時間で精度よく実施することができる。
またこの構成により、被検物が透明体である場合に、光源部から出射された光が直接被検物に入射することを防ぐことができる。この結果、得られる被検物像はハーフミラーによっていったん反射された光であって被検物の表面で反射(散乱)された光がなす反射光像である。これにより、被検物が透明体であっても、反射光像による被検物の表面における異常の有無の検査を高度な観察能力を要することなく短時間で精度よく実施することができる。また、光源部から出射された光が被検物を通過して撮像部に飛び込むことを防止することで、撮像部への入射光の光量を適切な量に調整できる。
【0011】
また、前記ハーフミラーは、前記被検物の被観察面に対向する凹面を有してもよい。また、前記ハーフミラーは、前記被検物の被観察面側を覆うドーム形状を有してもよい。
【0012】
この構成により、ハーフミラーは光源部からの光をより多くの方向から被検物の被観察面に反射し集光させることができる。
【0013】
また、前記ハーフミラーは、少なくとも450nm〜700nmの波長帯の光に対する透過率と反射率とが略一致する特性を有してもよい。
【0014】
入射光に対するハーフミラーの透過率と反射率とを等しくすることで、ハーフミラーで反射され、さらに被観察面で反射されてからハーフミラーを透過する光を当該入射光に対して最大の割合でハーフミラーから取り出すことができる。つまり、上記の特性を有するハーフミラーでは、被観察面で反射されてからハーフミラーを透過する光の量の割合が可視光線の波長帯で広い範囲にわたって入射光に対し最大の割合でハーフミラーから光を取り出すことができる。また、この割合はその範囲でいずれの波長に対してもほぼ一定であるので、取り出せる光の量には波長に依存するムラがない。これにより、被検物の観察においてハーフミラーを介することによる被検物の可視光像への影響が抑えられる。
【0015】
なお、上記の光透過(反射)特性を有するハーフミラーは、前記凹面には、チタンを主成分とする膜と二酸化ケイ素を主成分とする膜とを交互に積層してなる積層膜が形成して得てもよい。
【0016】
また、前記光源部が出射する光は拡散光であってもよい。
【0017】
光源部から拡散光を出射させてこれを用いることにより、ハーフミラーで反射されて被検物に落射する光の一様性をより確実に高めることができる。その結果、照射光のムラに起因するムラが抑えられた、より検査に適した被検物像が容易に得られる。
【0018】
上記の目的を達成するために、本発明の一態様に係る検査システムは、複数の被検物の検査を並行に実施する検査システムであって、台座と、前記台座に対して回転可能に接続されるターンテーブルと、前記ターンテーブルによって支持され、前記ターンテーブルに所定の間隔で前記複数の被検物を保持する複数の保持部とを備える回転搬送部と、前記台座の複数の位置に配置され、前記ターンテーブルが回転したときの前記複数の被検物の移動軌跡上に検査領域をそれぞれ有する複数の検査装置と、前記回転搬送部および前記検査装置の動作を制御する制御装置とを備え、前記制御装置は、前記ターンテーブルが一時停止と所定の角度の回転とを交互に繰り返し、前記ターンテーブルの一時停止の間、前記複数の検査装置の検査領域の中に前記複数の保持部のそれぞれに保持されている前記被検物のいずれかが位置するように前記回転搬送部を制御し、前記複数の検査装置が前記ターンテーブルの一時停止の間に前記検査領域の中にある前記被検物の検査であって相互に異なる検査をそれぞれ実施するように前記複数の検査装置を制御し、前記複数の検査装置の一である第1検査装置は、上記の外観検査装置のいずれかである検査システムである。
【0019】
この構成を有する検査システムを用いて行う品質検査では、回転搬送部が備える保持部に保持されて回転移動をする複数の被検物は、それぞれその回転移動の軌跡上で複数種類の検査を順次受ける。また、複数の被検物に対してこれらの複数種類の検査は並行して行われる。したがって、時間的に効率よく当該品質検査を行うことができる。また、被検物を円状の移動軌跡に沿って搬送しているため、無駄な経路を経ることなく被検物が移載されていき、空間的にも効率よく当該品質検査を行うことができる。なお、上記の外観検査装置のいずれかを第1検査装置として用いることで、外観検査の工程がボトルネックとなってこの検査システムのスループットが低下することを防いでいる。
【0020】
また、前記複数の被検物のそれぞれは、集光機能を有する光学素子であり、前記複数の検査装置の他の一である第2検査装置は、前記検査領域にある被検物の被観察面の反対側に位置し、前記被検物に向けて光を出射する光源部と、前記光源部と前記被検物との間であって前記被検物の焦点距離よりも前記被検物に近い位置に配置され、前記被検物の被観察面側から前記被検物に入射する平行光の集光光束を前記位置で前記集光光束の中心軸に垂直な面で切断したときに得られる前記集光光束の断面の形状に略一致する形状を有し、前記光源部から出射された光のうち、前記被検物に直接照射される方向に出射された光を遮る遮光体とを備えてもよい。
【0021】
この構成により、たとえばレンズのように、外観に加えて内部についても異常の有無を調べることが必要な被検物の品質検査を本検査システムのみで実施することができる。より具体的には、第2検査装置では被検物の暗視野観察を実施することができる。被検物がレンズであれば、本発明に係る検査システムによるレンズの品質検査に、レンズの内部にある異物、フローマークなどの成型不良、脈理、およびレンズの表面にある透過光線を遮る汚れやキズ、透過光線の方向を変える窪みやキズなどの異常を容易に発見するための工程を含めることができる。
【0022】
なお、この構成を有する第2検査装置でも、光源の映り込みによる明部も、光源の暗部または欠如部分に起因する暗部もない被検物像が得られる。これにより、被検物全体を検査するために複数の方向から観察する必要がない。このため、被検物全体の異常の有無を短時間で精度よく実施することができる。
【0023】
また、前記第2検査装置は駆動部をさらに備え、前記遮光体は前記駆動部と連動可能に
接続され、前記制御装置は、前記駆動部が、前記光源部から出射された光のうち、前記被検物に直接照射される方向に出射された光を遮らない位置に前記遮光体を移動させるように前記第2検査装置を制御してもよい。
【0024】
この構成により、第2検査装置では暗視野観察と明視野観察の両方を実施することができる。明視野観察を加えることで、暗視野観察では捉えにくいものも含めてより確実に異常を見つけることができる。これにより、本発明の一態様に係る検査システムによる品質検査全体の精度の向上させることができる。
【0025】
また、前記検査システムは、前記被検物の被観察面側を吸着する吸着機構を備える移載部と、前記複数の被検物を検査する検査装置である第3検査装置とをさらに備え、前記制御装置はさらに、前記移載部が前記吸着機構を用いて前記複数の被検物を順次吸着して前記移動軌跡上の所定の場所まで移動し、前記回転搬送部の一時停止時に前記所定の場所で吸着を解除して前記被検物を前記複数の保持部に順次載置するよう前記移載部および前記回転搬送部を制御し、前記第3検査装置が前記移載部によって吸着されている前記被検物の被観察面と反対側の面を検査するよう前記第3検査装置を制御してもよい。
【0026】
この構成を有する検査システムでは、被検物の被観察面とは反対の面から、保持部で保持されていない状態で被検物を検査することができる。これにより、たとえば被検物の保持部によって隠れる範囲の状態の検査をすることができる。
【0027】
また、前記制御装置は、前記第1検査装置を制御することで、少なくとも前記被検物の被観察面の状態に関する情報を含む第1検査情報を前記第1検査装置から取得し、前記制御装置は、前記第2検査装置を制御することで、少なくとも前記被検物の内部の状態に関する情報を含む第2検査情報を前記第2検査装置から取得し、前記制御装置は、前記第3検査装置を制御することで、少なくとも前記被検物の被観察面と反対側の面の状態に関する情報を含む第3検査情報を前記第3検査装置から取得してもよい。
【0028】
この構成により、本発明に係る検査システムは第1検査装置ないし第3検査装置から被検物を一方向から見た状態に関する情報、これと他の方向から見た状態に関する情報、および内部の状態に関する情報を総合的に利用して、各被検物の良不良を判断することができる。
【0029】
また、前記検査システムは、前記第1検査装置、前記第2検査装置、および前記第3検査装置による検査を受けた被検物を前記複数の保持部から順次取り出して第1載置領域および第2載置領域を有するトレイに載置する排出部をさらに備え、前記制御装置は、前記第1検査情報、前記第2検査情報、および前記第3検査情報に基づいて、前記取り出された被検物が前記検査に合格したか否かを判断し、前記取り出された被検物を前記判断の結果に応じて前記第1載置領域または前記第2載置領域に載置するよう前記排出部を制御してもよい。
【0030】
この構成により、本発明に係る検査システムは一連の検査が終わった各被検物の良不良の判断結果に応じて、各被検物を選別することができる。
【0031】
また、前記複数の保持部のそれぞれは、前記被検物を支持する支持台および前記支持台が支持する前記被検物の光学面を露出する円形状の露出孔を有する支持部と、前記支持部と前記ターンテーブルとを離隔して接続し、前記露出孔が前記平面上で移動可能なよう前記支持部を支持する3以上のアーム部とを備える。
【0032】
この構成により、保持部に保持される被検物の平面上における位置合わせをすることが
できる。
【0033】
また、前記検査システムは、さらに前記ターンテーブルにおける前記複数の保持部がそれぞれ備える支持部の位置決めに用いられる治具である位置決め部を備え、前記位置決め部は、前記移動軌跡を含む平面と直交する軸を有する直円錐体であり、前記軸に沿って上下動可能に前記台座に固定され、前記支持部の位置決め時に、前記直円錐体が前記露出孔を貫通して当接する位置まで上下されてもよい。
【0034】
本発明に係る検査システムでは、支持部に収まる各被検物は、ターンテーブルの一時停止時に移動経路上で第1検査装置または第2検査装置の検査領域に収まる必要がある。また、この支持部は被検物の形状や大きさに合わせて交換する必要が生じる。たとえば被検物がレンズであれば、レンズ全体の形状に合う形状の支持台と、このレンズの光学面に合う径を有する露出孔とを有する支持部を用いる。この構成により、露出孔の径の大小に関わらず共通の治具を用いて支持部の位置を調整することができる。
【0035】
なお、本願において被観察面とは、被検物の面であって、本発明の一態様に係る外観検査装置または本発明の一態様に係る検査システムが備える外観検査装置において観察者の視点またはこれに代えて被検物の像を得るための撮像部の対物レンズに対向する側の面を指して便宜的に用いる語であり、この面以外の面(側面、および対物レンズに対向する面と反対側の面を含む)や被検物の内部を観察の対象から除くものではない。
【発明の効果】
【0036】
本発明に係る外観検査装置は、従来の方法を用いる場合より短い時間で、かつ精度を落とすことなく被検物の外観を検査することができる。また、本発明に係る検査システムは、各種の検査を複数の被検物に対して並行に実施し、従来よりも高い効率で被検物の品質検査をすることができる。
【発明を実施するための形態】
【0038】
以下、本発明の実施の形態について図面を用いて詳細に説明する。なお、以下で説明する各実施の形態およびその変形例は本発明の実施の好ましい一具体例を示すものである。以下の実施の形態で示される数値、材料、構成要素、構成要素の配置または接続、方法におけるステップ、ステップの順序などは一例であり、本発明をこれに限定する趣旨で記載されるものではない。よって、以下の実施の形態またはその変形例における構成要素のうち、本発明の最上位概念を示す独立請求項に含まれていないものは本発明によって上記課題を達成するために必須の構成要素ではなく、より好ましい、または選択的に含めるべき構成要素として記載される。
【0039】
[実施の形態1]
まず、本発明の一態様に係る外観検査装置について図面を参照しながら説明する。
【0040】
図1は本発明の一態様に係る外観検査装置10の外観斜視図である。
図2は外観検査装置10の模式断面図である。
【0041】
図1に示すように、外観検査装置10は被検物の外観を検査する外観検査装置であって、撮像部11、遮光箱12、および光源部13を備える。外観検査装置10はさらに、
図2に示すように、ハーフミラー14、遮光体(マスク)15、および保持部16を備える。
【0042】
外観検査装置10の被検物は
図2に参照符号200で示される。なお、
図2では被検物200は集光レンズである場合を例として図示しているが、本発明の被検物は集光レンズに限られない。たとえば、凹レンズ(発散レンズ)や、レンズ以外の光学素子(例:光学フィルター)や、めっき加工などの加工によって表面に何らかの光学特性が付与される物も本発明に係る外観検査装置による外観検査の被検物となり得る。
【0043】
撮像部11は被検物200の被観察面側から被検物200の画像(被検物像)を取得する。撮像部11はたとえば、対物レンズ110と、鏡筒111と、撮像素子112とを備えるデジタルカメラである。撮像部11が取得した被検物像は、たとえば外観検査装置10がさらに備える、または外観検査装置10の外部にある記憶装置(図示せず)に記録される。あるいは、外観検査装置10と通信可能に接続される電子計算機による解析等の処理に供されてもよい。
【0044】
遮光箱12は、観察孔120と観察孔蓋121とを備える。遮光箱12は、本発明に係
る外観検査装置10における光学系に光源部13以外からの光が入らないようハーフミラー14全体を覆う遮光性の箱である。遮光箱12の観察孔120には撮像部11の対物レンズ110を含む鏡筒111が入れられる。観察孔蓋121は、観察孔120内にある撮像部11の鏡筒と遮光箱12との間隙を埋め、外観検査装置10の光学系の遮光性を確保する。
【0045】
光源部13は被検物200の被観察面の反対側に位置し、被検物200に向けて拡散光を出射する。たとえば光源部13は光源として複数の白色LED(図示せず)を有し、複数の白色LEDが発する光を拡散板(図示せず)を介して出射させることによって拡散光を出射する。なお、光源は白色LEDに限られず、たとえば蛍光灯であってもよい。光源部13の別の例としては、均一な白色光を面発光する有機EL(図示せず)を光源として有し、拡散板を有さないものが挙げられる。出射された拡散光は、後述のハーフミラー14の被検物200に対向する面にほぼ一様の照度で照射される。
【0046】
ハーフミラー14は、被検物200の被観察面側であって、撮像部11と被検物200との間に位置し、光源部13から出射された光を被検物200の被観察面に向けて反射させる。また、ハーフミラー14はさらに、被検物200の被観察面で反射された光を透過させる。したがって、撮像部11は、被検物200の被観察面で反射された光であって、ハーフミラー14が透過させた光を被検物像として取得する。
【0047】
ハーフミラー14は平板状でもよいが、被検物200の被観察面に対向する凹面を有する形状を有していてもよい。このような形状を有することで、平板状である場合に比べて光源部からの光をより多くの方向から被検物の被観察面に反射し集光させることができる。
図2に示す例では、被検物200の被観察面側を覆うドーム形状を有している。なお、ハーフミラー14の形状に関わらず、その大きさおよび光源部13の出光面の大きさは、ハーフミラー14が反射した光は被検物の被観察面全体へ落射し、さらに、落射した光は被検物の被観察面に反射されて観察光路に進むよう適宜調整される必要がある。なお、ハーフミラー14は大きいものが常によいというわけではなく、被検物に落射する光が来る方向を限定する場合は適宜小さいものが用いられる。たとえば被検物の内部で起こりうる全反射を防ぐために被検物に落射する光が来る方向を限定する場合が考えられる。
【0048】
図3はハーフミラー14の構造例を示す模式断面図である。ハーフミラー14はたとえば透明性を有する材料を上述の凹面を有する形状にしたもので、その凹面には、チタンを主成分とする膜(図中の破線)と二酸化ケイ素を主成分とする膜(図中の実線)とを交互に積層してなる積層膜が均一に形成されている。この構造を有しているハーフミラー14は、入射する光の一部を反射し、一部を透過する。
【0049】
発明者による試作では、透明なポリカーボネート製のドームに上述の2種類の膜を交互に6層、凹面全体に均一に積層することで、
図4に示すような光透過(反射)特性を示すハーフミラーが得られた。
図4によれば、このハーフミラーは少なくとも450nm〜700nmの波長帯の光に対する透過率と反射率とが略一致する(25%以内の差である)特性を有している。
【0050】
発明者がこのような特性を有するハーフミラーを調製したのは、入射光に対するハーフミラーの透過率と反射率とを等しくすることで、ハーフミラーで反射され、さらに被観察面で反射されてからハーフミラーを透過する光を当該入射光に対して最大の割合でハーフミラーから取り出すことができるからである。つまり、上記の特性を有するハーフミラーでは、被観察面で反射されてからハーフミラーを透過する光の量の割合が可視光線の波長帯で広い範囲にわたって入射光に対し最大の割合でハーフミラーから光を取り出すことができる。また、この割合はその範囲でいずれの波長に対してもほぼ一定であるので、取り
出せる光の量には波長に依存するムラがない。これにより、被検物の観察において、ハーフミラーを介することによる被検物の可視光像への影響が抑えられる。
【0051】
本発明に係る外観検査装置10が備えるハーフミラー14には、光を導入するため、または観察光路を通過させるための穴や隙間がない。これによって、被検物200の被観察面に向けて一様性の高い光反射を実現している。そして本発明に係る外観検査装置10ではハーフミラー14を介して被検物が観察されるが、ハーフミラー14が上述の波長帯に渡って一様な光透過(反射)特性を有しているので、被検物の観察においてハーフミラーを介することによる被検物の可視光像への影響が抑えられる。
【0052】
なお、上述のハーフミラー14の材料および構造は一例であり、所望の光透過(反射)特性が得られれば、どのような材料および構造であってもよい。
【0053】
遮光体15は、光源部13と被検物200との間に配置され、光源部13から出射された拡散光のうち、被検物200に直接照射される方向に出射された光を遮るためのものである。遮光体15の大きさ、形状、遮光性、位置はこの目的が達せられ、かつ、光源部13から出射される拡散光がハーフミラー14に到達するのを妨げないものであれば特に限定されない。たとえば被検物200の下に配置される透明性の高い樹脂製シートの上に印刷された黒色の着色部でもよい。または、後述する支持部160の底面が遮光体15を兼ねてもよい(この場合、支持部160は露出孔1601を有さない)。被検物がレンズのように透明体である場合、このように遮光体15を設けることで、光源部から出射された光が直接被検物に入射することを防ぐことができる。この結果、得られる被検物像はハーフミラーによっていったん反射された光を被検物表面で反射(散乱)した光がなす像であって、光源部から直接被検物に入射する光による影響のないものである。これにより、被検物が透明体であっても、反射光像による被検物の表面における異常の有無の検査を高度な観察能力を要することなく短時間で精度よく実施することができる。また、光源部から出射された光が被検物を通過して撮像部11に飛び込むことを防止することで、撮像部11への入射光の光量を適切な量に調整できる。なお、被検物が透明体でない場合には遮光体15はなくてもよい。
【0054】
図5の(a)は、保持部16の概略平面図である。保持部16は、支持部160と、複数のアーム部161と、テーブル162と、複数のアーム長調整部163とを備える。
【0055】
図5の(b)は、概略平面図中に示す保持部16の断面A―Aを示す概略断面図である。この概略断面図では、被検物200が支持部160に載せられている状態を示している。
【0056】
支持部160は、被検物200を支持する支持台1600および支持台1600が支持する被検物200の光学面を露出する円形状の露出孔1601を有する。
【0057】
複数のアーム部161は、支持部160とテーブル162とを離隔して接続し、支持部160を
図5に示すXY平面上で支持する。
【0058】
アーム長調整部163はアーム部161を、テーブル162に対するアーム部161の突出長を調整可能なように固定することでアーム長調整部163テーブル162と連結する。たとえばアーム部161はアーム長調整部163に螺嵌されてもよい。複数のアーム部161の長さを調整することで、支持部160(露出孔1601)を
図5に示すXY平面上で移動させることができる。なお、アーム長調整部163のような、アーム部161の突出長を調整するための機構は、このような位置調整が必要な場合に任意で備えられればよい。たとえば、支持部160の位置を外観検査装置10の検査領域に対して調整する
必要がある場合が考えられる。このような調整の必要がなければ、各アーム部161はテーブルに対して固定長の突出長を有し、支持部160のテーブル162に対する位置は固定であってもよい。
【0059】
なお、支持部160およびアーム部161は、光源部13が出射する拡散光のハーフミラー14への進行、および被検物にハーフミラー14から被検物200へ向かう光の被検物200への落射を極力妨げない大きさおよび形状のものが望ましい。
図2および
図5が示すのはその構造の例である。
【0060】
たとえば
図2および
図5が示す支持部160は、上面にすり鉢状の凹部を有する円柱の形状を有する。凹部の底には露出孔1601がある。露出孔1601は被検物200である集光レンズの光学部が露出されるに必要な直径を有する円形の孔であり、円柱の底面まで貫通する。露出孔1601の周辺には、当該集光レンズのフランジ部分が載るに必要な幅の面がある。この例のように凹部をすり鉢状とすることで、ハーフミラー14から凹部の底にある被検物200へ向かう光の被検物200への落射を妨げないようにしている。
【0061】
また、アーム部161の形状および本数は、この光源部13から出射される拡散光が、ハーフミラー14の被検物200に面する面にできるだけ一様に届くよう、平面視において面積が小さいものが望ましく、数は少ない方が望ましい。したがって、アーム部161の形状と本数は、全体として支持部160の安定が保てる剛性が得られ、かつ拡散光を極力妨げないよう調整される。ただし、上述のようなXY平面上での支持部160の位置調整が必要な場合には、アーム部161はアーム長調整部163と対で少なくとも3組以上備えられる(
図5は例として4組の場合を示す)。
【0062】
次に、上記の構成を有する外観検査装置10による被検物200の観察における外観検査装置10の動作について説明する。この説明でも上記と同様に被検物200は透明体の集光レンズである場合を例とする。また、ハーフミラー14は上記の実施例で示した特性を有しているとする。
【0063】
被検物200は支持部160の凹部に載置され、外観検査装置10の検査領域に配置される。このとき、被検物200は被観察面(
図2では上側の面)の全体と、露出孔1601において被観察面の反対側の面の光学部が露出している。また、露出孔1601において露出する被検物200の光学部は遮光体15に面している。
【0064】
光源部13は光を出射する。出射された光の進路には大きく分けて下記の4パターンがある。
【0065】
(進路1)遮光体15、支持部160、またはアーム部161によって遮られる。
(進路2)ハーフミラー14に到達、入射し、ハーフミラー14を透過する。
(進路3)ハーフミラー14に到達し、反射されて被検物200に落射する。
(進路4)上記(進路3)の光はさらに被検物200によって反射され、ハーフミラー14に到達、入射し、ハーフミラー14を透過する。
【0066】
なお、光源部13から出射されて被検物200に直接入射し、被検物200を透過する光はない。
【0067】
ここで、ハーフミラー14の上述の特性により、進路2の進路をとる光と進路3の進路をとる光の量は450nm〜700nmの波長帯において略一致する。また、反射率が50%の場合は、進路4の進路をとった光については、ハーフミラー14を透過するのは、被検物200に反射されてからハーフミラー14に到達した光のおよそ半分の量である。
【0068】
上記進路のうち、進路2の進路をとった光と進路4の進路をとった光のうち、つまりハーフミラー14を透過した光のうち、撮像部11の対物レンズ110に入射したものは、撮像素子112上で結像する。特に、進路4をとった光は被検物200の被検物像として結像して、検査のため観察される。
【0069】
上述の構成を有する外観検査装置10において、被検物200の被観察面に落射する光の照度は一様性が高い。したがって、被観察面で反射されてハーフミラー14を透過する光から得られる被検物像には光源の映り込みなどによる明部がなく、また、光源の暗部もしくは欠如部分またはハーフミラー14の穴もしくは隙間などに起因する暗部もない。これにより、被検物200の被観察面全体を検査するために複数の方向から観察する必要がない。このため、被検物200被観察面全体の外観の異常の有無の検査を、高度な観察能力を要することなく被観察面全体に対して短時間で精度よく実施することができる。特に、被検物200が上述のレンズのように透明体である場合は、被観察面側から十分見える限り、被観察面の反対側の面も含めて一の被検物像での外観検査が可能である。
【0070】
上述のとおり、外観検査装置10を例として本発明の一態様に係る外観検査装置を説明したが、本発明はこれに限定されない。たとえば次のような点で上記の説明と異なっていてもよい。
【0071】
(1)撮像部11を用いる観察に代えて、人による目視で被検物像を観察してもよい。また、撮像部11を用いる観察であるか人による目視による観察であるかに関わらず、実体顕微鏡などの拡大検査機で被検物像を拡大してもよい。
【0072】
(2)棒形状であるアーム部161に代えて、透明体の板などを用いて支持部160とテーブル162とを接続してもよい。支持部160が安定し、かつ、光源部13から出射された拡散光が十分な照度と一様性でハーフミラーに到達する構成であればよい。
【0073】
(3)被検物の被観察面の形状は、上述および図示の凸面に限られない。平面、凹面、または自由曲面であってもよい。被検物が透明体である場合は被観察面以外の面についても同様である。
【0074】
(4)被検物がレンズである場合は、上述および図示の単レンズに限られない。被検物は組合せレンズであってもよい。
【0075】
(5)上述の光源部およびハーフミラーの構成は、一般的な外観(人間の視覚によって知覚される外観)に基づく検査の場合に有益な構成の例である。実用上特定の波長帯の光のみを問題とする場合は、光源として当該特定の波長帯の光のみを出射するものを用いてもよい。また、ハーフミラーを当該特定の波長帯の光のみを反射または透過するものを用いてもよく、光源とハーフミラーとの両方が当該特定の波長帯の光のみを反射または透過するものであってもよい。
【0076】
(6)検査に用いられる光は可視光に限られない。たとえば赤外線または紫外線を用いて、可視光線のみを透過するコート膜の良否を検査する場合が考えられる。この場合、光源部、ハーフミラー、および撮像部もこれらの赤外線または紫外線に対応するものが用いられる。
【0077】
(7)ハーフミラーの形状について、「凹面」とは上述および図示のドーム形状の面のみならず、より湾曲率の高い面または低い面であってもよい。また、湾曲面のみならず、錐体や多面体等などであっても、光源部から出射された光を被検物の被観察面に向けて反
射させうるものであれば本発明の技術的範囲に含まれる。
【0078】
(8)上記では、光源部13は光を拡散板を介して拡散光として出射している。これはハーフミラー14で反射されて被検物200に落射する光の一様性をより確実に高めるためである。このような構成により、照射光のムラに起因するムラが抑えられた、より検査に適した被検物像が得られる。ただし、光源部13が出射する光は拡散光に限定されない。たとえば、拡散板を用いず、ハーフミラーの被観察面に面する側の面全体でほぼ一様の照度が得られるように複数のLED光源を相互に異なる姿勢で配置して実現されてもよい。
【0079】
(9)撮像部11と遮光箱12とは全体で光学系の遮光が確保できる構成を有していればよく、この構成は観察孔蓋121を含むものに限られない。たとえば遮光箱12に撮像部11を取り付けるためのアダプターが備えられていてもよいし、撮像部11の鏡筒と遮光箱12とが一体に組み付けられていてもよい。また、ハーフミラー14も遮光箱と組み付けられてもよい。
【0080】
(10)支持部160は取り外し可能であってもよい。たとえば、被検物200の大きさまたは形状に合わせて支持部160が交換されてもよい。
【0081】
(11)保持部16を用いずに被検物200を光源部13または遮光体15の上に置いてもよい。
【0082】
(12)被検物200を観察する視点の位置は、
図2において撮像部11があるような、被検物の真上に限られない。必要に応じて被検物200は横または斜め方向から観察されてもよいし、複数の方向から同時に観察されてもよい。
【0083】
[実施の形態2]
上記では、外観検査の時間の短縮と精度の維持または向上との両立を図ることができる構成を有する外観検査装置を本発明の実施の形態のひとつとして説明した。
【0084】
しかし、工業製品等の品質検査としては、外観のみならず、内部の検査も実施が必要な場合もある。ここで、外観検査を含む複数種類の検査からなる品質検査を、各検査を処理要素として含むパイプライン処理によって複数の被検物に対して並行して実行することができれば、品質検査の効率化を図ることができる。以下では、このような品質検査を実行することができる検査システムを本発明の実施の形態のひとつとして説明する。
【0085】
(検査システムの構成概要)
図6は、本発明の一態様に係る検査システム100の外観斜視図である。
【0086】
検査システム100は、複数の被検物の検査を並行に実施する検査システムであって、台座20と、台座20に対して回転可能に接続される円形のターンテーブル31と、ターンテーブル31によって支持され、ターンテーブル31の外周に沿って所定の間隔で複数の被検物を保持する複数の保持部32とを備える回転搬送部30と、台座20の複数の位置に配置され、前記ターンテーブル31が回転したときの複数の被検物の移動軌跡上に検査領域をそれぞれ有する複数の検査装置50と、回転搬送部30および検査装置50の動作を制御する制御装置60とを備える。制御装置60は、ターンテーブル31が一時停止と所定の角度の回転とを交互に繰り返し、ターンテーブル31の一時停止の間、複数の検査装置の検査領域の中に複数の保持部16のそれぞれに保持されている被検物のいずれかが位置するように回転搬送部30を制御する。また、制御装置60はさらに、ターンテーブル31の一時停止の間に複数の検査装置50が検査領域の中にある被検物の検査であっ
て相互に異なる検査をそれぞれ実施するように複数の検査装置50を制御する。ここで、複数の検査装置50の一である第1検査装置51は実施の形態1で説明した外観検査装置10である。
【0087】
検査システム100の各構成要素についてさらに詳しく説明する。
【0088】
台座20には検査システム100の上記の各構成要素が配置される。構成要素の位置関係については下記で個別に説明する。
【0089】
回転搬送部30が備えるターンテーブル31は、後述する制御装置60による制御のもと、一定の角度で間欠的に回転する。ターンテーブル31はたとえばインデックステーブルを用いて実現される。保持部32は、それぞれが実施の形態1で説明した外観検査装置10の保持部16と同じ構成を有する。つまり、各保持部32は、
図5に示される支持部160と、複数のアーム部161と、テーブル162と、複数のアーム長調整部163とを備える。ただし、実施の形態2では、テーブル162はターンテーブル31と一体的に形成され、これにより保持部32はターンテーブル31に支持されていると考える。したがって、ターンテーブル31が回転することで、保持部32を含む回転搬送部30全体が回転し、ターンテーブル31が停止することで、保持部32を含む回転搬送部30全体が停止する。被検物は支持部160に載置され、回転搬送部30(ターンテーブル31)の回転に伴い円状の移動軌跡を描くように搬送される。
【0090】
なお、本実施の形態ではターンテーブル31の形状を円形としているが、これは説明のための例示的な形状であって、本発明に係る検査システムが備えるターンテーブルは円形の構造体に限定されない。回転搬送部30の動作時において、各保持部32に保持される被検物が安定するのに必要な剛性を得られればどのような形状のものでもよい。たとえば、多角形または多角形と円との組み合わせからなる形状でもよい。また、本実施の形態で例示している板状の構造体ではなく、回転軸(図示なし)から各保持部32まで放射状に伸び、これらを接続する棒材または管材などの組み合わせからなる構造体でもよく、この構造体はさらに補強部材を含んでもよい。この場合、板上のターンテーブルを用いる場合に比べて軽量な回転搬送部が得られる。
【0091】
保持部31の回転搬送部30における配置について、回転搬送部30が4つの保持部32を備えている場合を例に説明する。
【0092】
図7は回転搬送部30の平面視(
図6においてZ軸方向からXY平面を見た視野)による概略図である。4つの保持部32は回転搬送部30の平面視において、円形であるターンテーブル31の外周に沿って、その内側に等間隔に配置される。別の言い方をすると、4つの保持部32は回転搬送部30の平面視において、4つの支持部160が回転搬送部30の回転の中心点35から等距離に位置し、かつ相互に等間隔になるよう配置される。この場合、回転搬送部30の1回の回転の角度(割出角度)を90度に設定することで回転搬送部30の一時停止時の4つの支持部160の位置を常に一致させることができる。なお、回転搬送部30の回転の中心点35と各支持部160との間の距離は、アーム長調整部163を用いて微調整することで等距離にしてもよい。
【0093】
複数の検査装置50については、第1検査装置51および第2検査装置52の2つの検査装置である場合を例に説明する。
【0094】
第1検査装置51は、実施の形態1として記載した外観検査装置10である。すなわち、第1検査装置51は被検物の外観を検査する外観検査装置であって、撮像部11、遮光箱12、光源部13、ハーフミラー14、遮光体15、および保持部16を備える。ただ
し実施の形態2では、回転搬送部30が備える保持部32が保持部16に相当する。第1検査装置51では、回転搬送部30(保持部32)は遮光箱12と光源部13との間に位置し、回転搬送部30の回転により複数の保持部32が順次入れ替わる構成を有する。第1検査装置51はこの点で実施の形態1としての外観検査装置10と異なる。なお、この差異点によって外観検査装置10の構成がもたらす効果が損なわれないために、回転搬送部30、遮光箱12、光源部13の間の隙間から被検物に直接入射する光が入らないようこれらの位置関係は調整される。この構成を有する第1検査装置51を複数の検査装置の一として用いることで、外観検査の工程がボトルネックとなって検査システム100のスループットが低下することを防いでいる。
【0095】
第2検査装置52は、第1検査装置51が実施する検査とは異なる検査を実施する。たとえば被検物が樹脂製のレンズである場合、泡、異物、フローマーク、脈理などの有無に関するレンズ内部の検査、およびレンズの表面にあって透過光線を遮る汚れやキズ、透過光線の方向を変える窪みやキズなどの検査の例として挙げられる。このような第2検査装置52については具体的な例を用いて後述する。
【0096】
2つの検査装置50と回転搬送部30との位置関係、および検査装置50どうしの位置関係について説明する。
図8は、2つの検査装置50および一時停止時における回転搬送部30の位置関係を示す平面視の概略図である。図中の二重線の矩形は検査装置50を示す。検査装置50はそれぞれ検査領域(検査対象の被検物が検査時に収まるべき領域)を有している。図中の破線の円はその検査領域を示す。検査領域510は第1検査装置51の検査領域であり、検査領域520は第2検査装置52の検査領域である。また、図中の矢印の付いた円は回転搬送部30の回転による被検物の移動軌跡を示す。各検査装置50は、それぞれの検査領域が上述の被検物の移動軌跡上にあるよう位置決めされる。さらにこれらの検査装置50は、保持部32のひとつに保持される被検物が第1検査装置51の検査領域の中にあるとき、保持部32の他のひとつに保持される被検物が第2検査装置52の検査領域の中にあるよう位置決めされる。
【0097】
制御装置60は回転搬送部30(ターンテーブル31)を制御する。この制御は、制御装置60が回転搬送部30を回転駆動させる駆動装置(図示せず)と通信可能に接続され、当該駆動装置を制御することで実現される。また、制御装置60はさらに各検査装置50とも通信可能に接続され、回転搬送部30が制御装置60の制御下で一時停止している間に各検査装置50に検査のための動作を実行させる。たとえば第1検査装置51に撮像部11による被検物の撮影を実行させる。
【0098】
制御装置60による回転搬送部30の制御についてさらに詳しく説明する。
【0099】
制御装置60は、回転搬送部30(ターンテーブル31)が一時停止と所定の角度の回転とを交互に繰り返すよう制御する。また、ターンテーブル31が一時停止している間、複数の検査装置50の検査領域の中に保持部32に保持されている被検物のいずれかが位置するように、回転搬送部30の回転角度(停止位置)を制御する。
【0100】
このような制御装置60は、たとえばソフトウェアを含めて専用もしくは汎用またはこれらを組み合わせたコンピュータシステムによって実現される。
図9は検査システム100の機能ブロック図である。
図9が示すように、制御装置60は検査システム100の構成要素のうち、制御対象となるものと通信可能に接続され、制御命令の各構成要素への送信、各構成要素からのデータの受信などを行う。
【0101】
なお、制御装置60の位置については、制御対象の各構成要素と通信可能に接続されていればどのような位置でもよい。たとえば台座20の下でもよい。また、任意の場所で制
御対象の各構成要素を遠隔で制御するものであってもよい。
【0102】
(検査システムの動作)
次に、検査システム100の動作について説明する。ここでは、上記に例示した構成を有する検査システム100による4つの被検物200から203の検査を例に
図8を参照しながら説明する。各被検物は下記の手順で検査される。
【0103】
(工程1)被検物の回転搬送部30への載置
(工程2)第1検査装置51による被検物の検査
(工程3)第2検査装置52による被検物の検査
(工程4)被検物の回転搬送部30からの排出
【0104】
初期状態では回転搬送部30に被検物は載っていないものとする。
【0105】
まず、回転搬送部30が停止している状態で、
図8においてINで示される位置で被検物200が最寄りの支持部160に載置される(被検物200、工程1)。
【0106】
次に、回転搬送部30が反時計回りに90度回転して一時停止する。この回転によって被検物200は検査領域510内へ搬送される。この一時停止の間、被検物200は検査領域510の中で第1検査装置51によって検査される(被検物200、工程2)。同じくこの一時停止の間に、INの位置で被検物201が最寄りの支持部160に載置される(被検物201、工程1)。
【0107】
次に、回転搬送部30は再び反時計回りに90度回転して一時停止する。この回転によって被検物200は検査領域520内へ搬送され、被検物201は検査領域510内へ搬送される。この一時停止の間、被検物200は検査領域520の中で、第2検査装置52によって検査され(被検物200、工程3)、被検物201は検査領域510の中で第1検査装置51によって検査される(被検物201、工程2)。また、一時停止の間にはINの位置で被検物202が最寄りの支持部160に載置される(被検物202、工程1)。
【0108】
次に、回転搬送部30は再び反時計回りに90度回転して一時停止する。この回転によって被検物200は
図8においてOUTで示される位置へ搬送され、被検物201は検査領域520内へ搬送される。また、この回転によって被検物202は検査領域510内へ搬送される。この一時停止の間、被検物200は支持部160から取り出される(被検物200、工程4)。また、一時停止の間に被検物201は第2検査装置52によって検査され(被検物201、工程3)、被検物202は検査領域510の中で第1検査装置51によって検査される(被検物202、工程2)。この一時停止の間にはさらに、INの位置で被検物203が最寄りの支持部160に載置される(被検物203、工程1)。
【0109】
以降、被検物201はOUTの位置に搬送されて排出される(被検物201、工程4)。被検物202は検査領域520の中で第2検査装置52によって検査され(被検物202、工程3)、OUTの位置に搬送されて排出される(被検物202、工程4)。被検物203は検査領域510の中で第1検査装置51によって検査され(被検物203、工程2)、検査領域520の中で第2検査装置52によって検査され(被検物203、工程3)、OUTの位置に搬送されて排出される(被検物203、工程4)。各被検物は1回の一時停止の間にひとつの工程のみを終える。
図10は検査システム100による上記の工程が並行して行われる状況を図示したものである。
【0110】
このように、この構成を有する検査システム100を用いて行う品質検査では、回転搬
送部30が備える保持部32に保持されて回転移動をする複数の被検物は、それぞれその回転移動の軌跡上で複数種類の検査を順次受ける。また、複数の被検物に対してこれらの複数種類の検査は並行して行われる。したがって、時間的に効率よく当該品質検査を行うことができる。また、被検物を円状の移動軌跡に沿って搬送しているため、無駄な経路を経ることなく被検物が移載されていき、空間的にも効率よく当該品質検査を行うことができる。
【0111】
[実施の形態2の変形例1]
被検物によっては、品質検査の一部として内部の状態に関する検査が必要な場合がある。たとえばレンズのように光を透過させる光学素子の品質検査では、外観検査装置による表面のコーティングの検査に加えて、泡、異物、フローマーク、脈理などの有無に関する被検物内部の検査、およびレンズの表面にあって透過光線を遮る汚れやキズ、透過光線の方向を変える窪みやキズなどの検査が必要である。以下では検査システム100が備える上記の第2検査装置52が被検物の内部の検査をするための装置である例について説明する。
【0112】
図11は、被検物が集光機能を有する光学素子である場合に検査システム100が備えてもよい第2検査装置52の一例の概略断面図である。
【0113】
図11に示されるように、検査システム100が備える複数の検査装置50の他の一である第2検査装置51は、検査領域にある被検物の被観察面の反対側に位置し、被検物に向けて光を出射する光源部23と、光源部23から出射された光のうち、被検物に直接照射される方向に出射された光を遮る遮光体25とを備える。遮光体25は、光源部23と被検物との間であって被検物の焦点距離よりも被検物に近い位置に配置される。また、遮光体25は、被検物の被観察面側から被検物に入射する平行光の集光光束を前記位置で前記集光光束の中心軸に垂直な面で切断したときに得られる前記集光光束の断面の形状に略一致する形状を有する。
【0114】
光源部23は、実施の形態1の光源部13と同様の構成を有する。
【0115】
遮光体25は、たとえば被検物200の下に配置される透明性の高い樹脂製シートの上に印刷された黒色の着色部によって実現されてもよい。ただし、形状および位置を上記のように構成することで、光源部23から出射された光は遮光体25の外からのみ被検物に入射する。これにより、第2検査装置52は、被検物の暗視野観察を実施することができる。暗視野観察では、レンズである被検物の内部にある微小または明色の(もしくは比較的透光性が高い)異物、フローマークなどの成型不良、脈理など正常部分とコントラストが低い異常を容易に発見することができる。したがって、レンズのように外観に加えて内部についても異常の有無を調べることが必要な被検物の品質検査を検査システム100のみで、複数の被検物に対して並行して実施することができる。
【0116】
この構成を有する第2検査装置でも、光源の映り込みによる明部も、光源の暗部または欠如部分に起因する暗部もない被検物像が得られる。これにより、被検物全体を検査するために複数の方向から観察する必要がない。このため、被検物全体の異常の有無を短時間で精度よく判定することができる。したがって、第2検査装置52による検査の工程がボトルネックとなることによる検査システム100のスループットの低下は防止されている。
【0117】
なお、上記で被検物200は集光機能を有する光学素子である場合を用いて説明しているが、被検物200はいわゆる凸レンズには限られない。被検物200が凹レンズの場合、この被検物200の遮光体25と対向する面の側に、当該凹レンズによる透過光の拡散
を打ち消し、さらに収束させる凸レンズを設けることで当該凹レンズの上記暗視野観察による検査を実施することができる。凹レンズのみならず、組合せレンズの場合も同様である。また、被検物200が集光機能がない光学素子(たとえば光学フィルター)であっても、被検物200を透過する光に対して上述のような大きさおよび形状の遮光体を個被検物200から見て光源部側に配置することで暗視野観察による検査が可能になる。
【0118】
なお、被検物の内部の異常には、その大きさ、色、または形状によっては暗視野観察でなく、明視野観察による方が視認しやすいものもある(たとえば黒ゴミ)。そのような異常の有無も検査する場合には、第2検査装置52は駆動部26をさらに備え、遮光体25は駆動部26と連動可能に接続される。制御装置60は、駆動部26が、光源部23から出射された光のうち、被検物に直接照射される方向に出射された光を遮らない位置に遮光体25を移動させるように第2検査装置52を制御してもよい。
【0119】
たとえば駆動部26は、電子制御可能なシリンダを用いて実現される。
図12はシリンダを用いて駆動部26を構成する例を概略断面図で示したものである。この例ではシリンダである26の可動部260と、遮光体25が配置されている透明体のシートの枠とを接続することで遮光体25と駆動部26とを連動可能に接続している。この可動部260を水平方向(
図8のXY平面に平行)に移動させて、遮光体25を元の位置(実線で示す遮光体25の位置)から水平方向(
図8のXY平面に平行)に移動させて上記の集光光束に入らない位置(破線で示す遮光体25の位置)まで遮光体25を移動させる。
【0120】
この構成により、第2検査装置では暗視野観察と明視野観察の両方を実施することができる。明視野観察を加えることで、暗視野観察では捉えにくいものも含めてより確実に異常を見つけることができる。これにより、検査システム100による品質検査全体の精度を向上させることができる。
【0121】
また、遮光体25はさらにレンズである被検物の光軸と平行に移動可能に構成されてもよい。この構成により、被検物のレンズとしての仕様によって異なる集光光束の形状に応じて遮光体25の位置を調整することができる。このような構成は、たとえば電子制御可能なシリンダ27を用いて実現される。
図13はシリンダ27を用いてこれを実現している例を概略断面図で示したものである。
図13では、シリンダ27の可動部270が被検物の光軸と平行に摺動可能になるようシリンダを設置し、その可動部270の先端に遮光体25が配置されている透明体のシートの枠を載せている。
【0122】
なお、
図11および
図12に示されるように、第2検査装置52は第1検査装置51の撮像部11と同様の構成を有する撮像部21を備えてもよい。撮像部21はたとえば、対物レンズ210と、鏡筒211と、撮像素子212とを備えるデジタルカメラである。たとえば第2検査装置52は、制御装置60からの制御命令に従って、上述の暗視野観察下または明視野観察下で被検物を撮像部21によって撮影し、この撮影によって取得した画像データを制御装置60に送信してもよい。
【0123】
図14は、第2検査装置52が上述の駆動部26および撮像部21を含む構成を有する場合の検査システム100の機能ブロック図である。制御装置60は第2検査装置52を制御して駆動部26または撮像部21を動作させる。
【0124】
[実施の形態2の変形例2]
実施の形態2で説明した検査システム100の動作には、工程1として被検物の回転搬送部30への載置が含まれている。この工程は人手によって行われてもよいし、機械を用いて行われてもよい。以下では、機械を用いてこの工程を実施し、さらに別の検査の実施を可能にする例を説明する。
【0125】
(実施の形態2の変形例2における構成概要)
図15は本発明の一態様に係る検査システム100がさらに移載部を備える例の部分の概略斜視図である。
【0126】
この検査システム100は、被検物の被観察面側を吸着する吸着機構400を備える移載部40と、複数の被検物を検査する検査装置である第3検査装置53とをさらに備える。制御装置60はさらに、移載部40が吸着機構400を用いて複数の被検物を順次吸着して支持部160に載置される被検物200の移動軌跡上の所定の場所まで移動し、回転搬送部30の一時停止時に前記所定の場所で吸着を解除して被検物200を複数の保持部32に順次載置するよう移載部40および回転搬送部30を制御する。また、制御装置60はさらに、第3検査装置53が移載部40によって吸着されている被検物200の被観察面と反対側の面を検査するよう第3検査装置53を制御する。
【0127】
図15および
図16を参照して上記の各構成要素について説明する。
図16は、本発明の一態様に係る検査システム100が備える第3検査装置53の検査領域と被検物200の移動軌跡との位置関係を示す概略平面図である。
【0128】
移載部40は、回転搬送部30より上でY軸に沿って走るスライド機構401、およびスライド機構401によってY軸に沿って往復運動可能な吸着機構410を備える。吸着機構410は、この往復運動の一端では
図15に示される被検物トレイ500の上方に位置(以下、この位置を吸着位置という)し、別の一端は
図8においてINで示す位置に最も近い保持部32の支持部160の上方に位置する(以下、この位置を解除位置という)。
【0129】
なお、この例における被検物トレイ500には被検物であるレンズが同じ面を上方にして複数並べられている。また、被検物トレイ500は、移載部40がさらに備えるスライド機構402によってXY平面上を平行移動可能な台の上に載せられている。
【0130】
吸着機構410は吸着口411を備え、たとえば負圧を利用して被検物を上述の各実施の形態およびその変形例でいうところの被検物の被観察面側(上面)からひとつずつ吸着口411で吸着し、負圧を解除して被検物の吸着を解除することができる。吸着機構410は、この吸着口411が回転搬送部30および被検物トレイ500より上方でZ軸方向で下を向く姿勢で移載部40に備えられている。なお、
図8に示される状態で回転搬送部30が一時停止している場合において吸着機構410が解除位置にあるとき、吸着口411はINで示す位置に最も近い保持部32の支持部160の真上に位置する。
【0131】
第3検査装置53は被検物200の検査のための装置であって、たとえば撮像部11および撮像部21と同様の構成を有する撮像部311を有する。ただし、撮像部311は撮像部11および撮像部21とは異なり、上述の被検物200の被観察面側とは反対側(この例では下側)から被検物200を撮影する。また、上述の第1検査装置51および第2検査装置52と異なり、検査領域530(
図16中の破線が示す領域)は上述の被検物200の円状の移動軌跡上になくてもよい。検査領域530は、Y軸に沿う往復運動をしている吸着機構410に吸着されている被検物200の移動軌跡にかかる。
【0132】
なお、吸着機構410は、吸着口411をZ軸に沿って往復運動させることができるスライド機構をさらに備えてもよい。これにより吸着の際は吸着口411を被検物トレイ500に近づけて被検物200を確実に吸着し、吸着の解除の際には吸着口411を支持部160に近づけて被検物200をより確実に支持部160に載置するためである。
【0133】
(移載部40および第3検査装置53の動作)
次に、移載部40および第3検査装置53の動作について説明する。この動作は、移載部40および第3検査装置53が制御装置60の制御の下、実施の形態2として記載した検査システムの動作の工程1で行う動作であり、下記の工程101から工程106からなる。初期状態で、吸着機構410は吸着位置にあるものとする。また、回転搬送部30はこの動作の間一時停止しているものとする。
【0134】
(工程101)スライド機構402は、被検物トレイ500に載せられている複数の被検物200のいずれかひとつが吸着口411の真下に位置するよう被検物トレイ500を平行移動させる。
【0135】
(工程102)吸着機構410は吸着口411の真下に位置する被検物200を吸着口411で吸着する。
【0136】
(工程103)吸着機構410は当該被検物200を吸着したままY軸に沿って解除位置へ向かって移動する。
【0137】
(工程104)第3検査装置53は吸着機構410に吸着されている被検物200が検査領域の中にあるときに被検物200を下側から撮影する。
【0138】
(工程105)吸着機構410は解除位置で停止する。このとき、吸着口411は支持部160の真上に位置する。
【0139】
(工程106)吸着機構410は被検物200の吸着を解除する。これにより被検物200は支持部160に載置される。
【0140】
この後、回転搬送部30は反時計回りに90度回転して、支持部160に載置された被検物200を第1検査装置51の検査領域510内へと搬送する。一方、吸着機構410は吸着位置へ移動する。吸着機構410が吸着位置に戻った時点で、工程101以下が繰り返される。すなわち、スライド機構402は被検物トレイ500に載せられている他の一の被検物200が吸着口411の真下に位置するよう被検物トレイ500を平行移動させる。
【0141】
なお、上記では回転搬送部30はこの動作の間一時停止していることを前提としたが、回転搬送部30は少なくとも工程104から工程106までの間のみ一時停止すればよい。工程104では、被検物200の画像を取得する際にターンテーブル31またはアーム部161が障害物とならないようにするためである。工程106では、吸着機構410が被検物200を確実に支持部160に載置できるようにするためである。
【0142】
(実施の形態2の変形例2の構成がもたらす効果)
検査システム100がこの構成を有する場合、複数の被検物200は同一の姿勢で、同一の軌跡に沿って移動して回転搬送部30へ載置される。そのため、その軌跡上に検査領域を有する検査装置を備えれば被検物の検査が可能である。上記の例では、検査システム100はその軌跡上にある被検物の画像を取得することができる検査装置53を備える。また、検査装置53によって、被検物の被観察面とは反対の面から、保持部32で保持されていない状態で被検物を検査することができる。これにより被検物の保持部32によって隠れる範囲の状態の検査をすることができる。たとえば、被検物が周辺にフランジを有するレンズである場合、保持部32に保持されている間は支持部160で隠れるフランジ周辺のゲート残りやフランジの形状不良の有無を検査するための被検物像を取得することができる。
【0143】
[実施の形態2の変形例3]
(第1〜第3検査装置を備える検査システムの構成)
図17は、検査システム100が、上記で実施の形態2から実施の形態2の変形例2として説明した構成を有する場合の機能ブロック図である。
図17に示されるように、検査システム100において制御装置60は回転搬送部30、第1検査装置51、第2検査装置52、第3検査装置53、および移載部40と通信可能に接続されている。そして制御装置60はこれらの構成要素に制御のための信号を送信して、上述のとおり回転搬送部30を制御してこれらの検査装置間を搬送させ、これらの検査装置を制御して各検査領域の中にある被検物の検査のための動作をさせる。
【0144】
一方、制御装置60はさらに、各検査装置からデータを受信し、このデータを利用してもよい。すなわち、制御装置60は、第1検査装置51を制御することで、少なくとも被検物の被観察面の状態に関する情報を含む第1検査情報を前記第1検査装置から取得し、第2検査装置52を制御することで、少なくとも前記被検物の内部の状態に関する情報を含む第2検査情報を前記第2検査装置から取得し、第3検査装置53を制御することで、少なくとも前記被検物の被観察面と反対側の面の状態に関する情報を含む第3検査情報を第3検査装置53から取得してもよい。
【0145】
ここで第1検査情報とは、たとえば第1検査装置51が被検物の被観察面側から撮影して得た被検物像を含む画像のデータである。第2検査情報とは、たとえば第2検査装置52が被検物の被観察面側から撮影して得た被検物像を含む画像のデータである。この画像には、当該被検物を暗視野観察できる状態で撮影した被検物像と、当該被検物を明視野観察できる状態で撮影した被検物像との少なくとも一方が含まれている。第3検査情報とは、たとえば第3検査装置53が被検物の被観察面側の反対側から撮影して得た被検物像を含む画像のデータである。
【0146】
この構成により、検査システム100は第1検査装置51ないし第3検査装置53から、被検物を一方向から見た状態に関する情報、これと他の方向から見た状態に関する情報、および内部の状態に関する情報を総合的に利用して、各被検物の良不良を判断することができる。たとえば、制御装置60は、各検査装置から取得したデータのうち、いずれかひとつでも被検物の異常を示す場合、その被検物は不良と判断してもよい。または、各検査装置から取得したデータからわかる被検物の異常の程度に基づいて各被検物の等級を判断してもよい。
【0147】
そして、検査システム100はさらに、この良不良の判断の結果に基づいて被検物の選別をしてもよい。このような検査システム100は、たとえば、第1検査装置51、第2検査装置52、および第3検査装置53による検査を受けた被検物を複数の保持部32から順次取り出して第1載置領域801および第2載置領域802を有する被検物トレイ800に載置する排出部70をさらに備える。制御装置60は、第1検査情報、第2検査情報、および第3検査情報に基づいて、取り出された被検物が品質検査に合格したか否かを判断し、被検物をその判断の結果に応じて第1載置領域801または第2載置領域802に載置するよう排出部70を制御する。
【0148】
図18は上述の構成を有する検査システム100による被検物200の選別処理の一例のフローチャートである。
【0149】
この検査システム100では、制御装置60は第3検査装置53、第1検査装置51、
および第2検査装置52のそれぞれからデータを取得し、被検物200が各検査装置による検査に合格であるか否かを判断する(ステップS10、S20、S30)。この例では
、これらの検査のすべてに合格した被検物200は、制御装置60による制御の下、排出部70により第1載置領域801に載置される(ステップS40)。また、これらの検査
のうちいずれかひとつでも不合格であった被検物200は、制御装置60による制御の下、排出部70により第2載置領域802に載置される(ステップS45)。
【0150】
(排出部の構成)
この排出部70の構成について例を用いてさらに説明する。
図19は、被検物200の選別を実施するための構成を有する検査システム100の排出部周辺の概略斜視図である。
図20は、本発明の一態様に係る検査システム100が備える排出部70と、被検物トレイ800と、被検物200の移動軌跡との位置関係を示す概略平面図である。
【0151】
排出部70は、回転搬送部30より上でX軸に沿って走るスライド機構701、およびスライド機構701によってX軸に沿って往復運動可能な吸着機構710を備える。吸着機構710は、この往復運動の一端では
図8においてOUTで示す位置に最も近い保持部32の支持部160の上方に位置し(以下、この位置を吸着位置という)、別の一端は
図18に示される被検物トレイ800の上方に位置する(以下、この位置を解除位置という)。
【0152】
被検物トレイ800は、排出部70がさらに備えるスライド機構702によってXY平面上を平行移動可能な台の上に載せられている。被検物トレイ800は第1載置領域71および第2載置領域72の2つの領域を有している。第1載置領域801は検査システム100による品質検査の合格品が集めて置かれる領域であり、第2載置領域802は不合格品が集めて置かれる領域である。
【0153】
吸着機構710は吸着口711を備え、たとえば負圧を利用して被検物200を上述の各実施の形態およびその変形例でいうところの被検物200の被観察面側(上面)からひとつずつ吸着口711で吸着し、負圧を解除して被検物200の吸着を解除することができる。吸着機構710は、この吸着口711が回転搬送部30および被検物トレイ800より上方でZ軸方向で下に向く姿勢で排出部70に備えられている。なお、
図8に示される状態で回転搬送部30が一時停止している場合において吸着機構710が吸着位置にあるとき、吸着口711はOUTで示す位置に最も近い保持部32の支持部160の真上に位置する。
【0154】
なお、吸着機構710は、吸着口をZ軸に沿って往復運動させることができるスライド機構をさらに備えてもよい。これにより吸着の際は吸着口を支持部160に近づけて被検物200を確実に吸着し、吸着の解除の際には吸着口を被検物トレイ800に近づけて被検物200をより確実に被検物トレイ800に載置するためである。
【0155】
(排出部70の動作)
次に、排出部70の動作について説明する。この動作は、排出部70が制御装置60の制御の下、実施の形態2として記載した検査システムの動作の工程4で行う動作であり、下記の工程401から工程405からなる。つまり、第3検査装置、第1検査装置51および第2検査装置による検査を終えた被検物200を保持している保持部32は、この動作の前に第2検査装置52の検査領域のある位置から90度回転して、
図8で示すOUTの位置に最も近い位置で一時停止している。
【0156】
(工程401)吸着機構710は、OUTの位置にある保持部32の支持部160が支持する被検物200の真上に吸着口711が位置するよう平行移動する。
【0157】
(工程402)吸着機構710は吸着口711の真下に位置する被検物200を吸着口
711で吸着する。
【0158】
(工程403)吸着機構710は当該被検物200を吸着したままX軸に沿って解除位置へ向かって移動する。
【0159】
(工程404)スライド機構702は、被検物トレイ800の第1載置領域801または第2載置領域802が、解除位置へ到達した状態にある吸着機構710の吸着口711の真下に位置するよう被検物トレイ500を平行移動させる。いずれの領域を吸着口711の真下に位置させるかは、制御装置60が各検査装置から取得したデータに基づいて判断した現在排出中の被検物200の合否に応じて決定する。
【0160】
(工程405)解除位置で停止した吸着機構710は被検物200の吸着を解除する。これにより被検物200は被検物トレイ800に載置される。
【0161】
なお、上記では回転搬送部30はこの動作の間一時停止していることを前提としたが、回転搬送部30は少なくとも工程402の間のみ一時停止すればよい。吸着機構710が被検物200を確実に支持部160から吸着するためである。
【0162】
また、工程404においてスライド機構702は、被検物トレイ800の位置をより詳細に決定して移動させてもよい。たとえば被検物トレイ800が図示のように各被検物200を載置するための凹部を各領域に複数備えている場合、各凹部のうちで空いているものが吸着口711の真下に位置するように被検物トレイ800を移動させてもよい。
【0163】
また、被検物トレイ800は2以上の載置領域を有してもよい。たとえば被検物200を3以上の等級に分類する場合は、等級の数と同数の載置領域を有してもよい。
【0164】
(実施の形態2の変形例3の構成がもたらす効果)
この構成により、検査システム100は一連の検査が終わった各被検物の良不良の判断結果に応じて、各被検物を選別することができる。
【0165】
[実施の形態2の変形例4]
本発明の各実施の態様に係る検査システム100では、支持部160に収まる各被検物200は、回転搬送部30の一時停止時に移動経路上で第1検査装置51または第2検査装置52の検査領域に確実に収まる必要がある。また、被検物の回転搬送部30への載置や回転搬送部30からの排出においても各被検物200は所定の位置にあることを前提として移載部40および排出部70は制御されている。
【0166】
このためには、上述の支持部160のそれぞれが一時停止時に各検査装置の検査領域、解除位置にある移載部40の吸着口411、および吸着位置にある排出部70の吸着口711のいずれかに対して比較的厳密な位置関係を有していることが検査の精度や移載および排出の低い失敗率の確保上重要である。
【0167】
また、支持部160は被検物の形状や大きさに合わせて交換する必要が生じる。たとえば被検物がレンズであれば、レンズ全体の形状に合う形状の支持台と、このレンズの光学面に合う径を有する露出孔とを有する支持部160を用いる。したがって、被検物の種類に合わせて支持部160を交換する場合には、交換のたびに位置を高い精度で調整する必要がある。
【0168】
これを実現するために、たとえば検査システム100は、さらにターンテーブル31における複数の保持部32がそれぞれ備える支持部160の位置決めに用いられる治具であ
る位置決め部90を備えてもよい。この位置決め部90は、回転搬送部30によって搬送される被検物の円状の移動軌跡を含む平面と直交する軸を有する直円錐体であり、この軸に沿って上下動可能に台座20に固定され、支持部160の位置決め時に、前記直円錐体が支持部160の露出孔1601を貫通して当接する位置まで上下されてもよい。
【0169】
図21は、本発明の一態様に係る検査システム100が備える治具90および回転搬送部30を含む部分の概略断面図である。たとえばこの位置決め部90は、台座20において、
図8のOUTの位置で直円錐体の軸が吸着機構710の吸着口711の真下にあって、吸着口711の中心と一致する位置に固定される。
【0170】
(使用方法)
位置決め部90を用いた支持部160の位置調整の方法の例を以下に説明する。
【0171】
各支持部160の交換(保持部32への取り付け)は、回転搬送部30を一時停止時の位置で止めて
図8のOUTの位置で行う。なお、支持部160の露出孔1601は円形であるとする。
【0172】
(手順1)位置決め部90を台座寄りに下げた状態で、支持部160をおおよその位置に取り付ける。
【0173】
(手順2)位置決め部90を上げる。その先端が支持部160の下面近くまで来た時点で、位置決め部90をこのまま上げて位置決め部90の先端が支持部160の露出孔1601内に入るか確認する。入らない場合は、入るようにアーム長調整部163を操作して支持部160のXY平面上での位置を調整する。入る場合は、さらに位置決め部90を上げる。
【0174】
(手順3)位置決め部90を、位置決め部90の側面が露出孔1601の最下部に当接するまで上げる。このとき、露出孔1601の最下部全体と位置決め-部90の側面とが
当接すればこの支持部160の位置合わせを終了する。露出孔1601の最下部と位置決め部90の側面とは一部のみが当接し隙間がある場合は、この隙間がなくなるようアーム長調整部163を操作して支持部160のXY平面上での位置を調整する。必要に応じて位置決め部90の上下位置も調整し、露出孔1601の最下部全体と位置決め部90の側面とを当接させてこの支持部160の位置合わせを終了する。
【0175】
このとおりひとつの支持部160のXY平面上での位置調整が終了したら、位置決め部90を下げてから回転搬送部30を回転させて次の一時停止位置で止め、次の支持部160で手順1から繰り返す。以下、全ての支持部160について同様に行う。
【0176】
このようにすることで、たとえば支持部160の数が4つであり、回転搬送部30の1回の回転角度が90度であれば、支持部160(露出孔1601)を回転搬送部30の回転の中心点35を対称の中心とする正方形の頂点に位置するよう正確に配置できる。
【0177】
この構成により、露出孔の径の大小に関わらず共通の治具を用いて支持部の位置を調整することができる。
被検物の外観を検査する外観検査装置は、被検物の被観察面の反対側に位置し、被検物に向けて光を出射する光源部と、被検物の被観察面側に位置し、光源部から出射された光を被観察面に向けて反射させるとともに、被観察面で反射された光を透過させるハーフミラーと