特許第5784855号(P5784855)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5784855
(24)【登録日】2015年7月31日
(45)【発行日】2015年9月24日
(54)【発明の名称】内視鏡
(51)【国際特許分類】
   A61B 1/00 20060101AFI20150907BHJP
   G02B 23/24 20060101ALI20150907BHJP
【FI】
   A61B1/00 310G
   A61B1/00 310C
   G02B23/24 A
【請求項の数】5
【全頁数】22
(21)【出願番号】特願2015-501253(P2015-501253)
(86)(22)【出願日】2014年4月14日
(86)【国際出願番号】JP2014060627
(87)【国際公開番号】WO2014192447
(87)【国際公開日】20141204
【審査請求日】2015年1月7日
(31)【優先権主張番号】特願2013-113228(P2013-113228)
(32)【優先日】2013年5月29日
(33)【優先権主張国】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000000376
【氏名又は名称】オリンパス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100076233
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 進
(74)【代理人】
【識別番号】100101661
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 靖
(74)【代理人】
【識別番号】100135932
【弁理士】
【氏名又は名称】篠浦 治
(72)【発明者】
【氏名】今井 薫
(72)【発明者】
【氏名】足立 純一
(72)【発明者】
【氏名】冨山 高寛
【審査官】 野田 洋平
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2013/011771(WO,A1)
【文献】 特開2010−207340(JP,A)
【文献】 特開平08−206061(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 1/00−1/32
G02B 23/24
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
先端部と湾曲部を有する挿入部と、
前記湾曲部に接続され、前記挿入部に挿通された湾曲駆動用牽引部材と、
前記湾曲駆動用牽引部材を牽引弛緩操作して前記湾曲部の全体を湾曲操作する湾曲操作部と、
管状部材で構成され、前記湾曲部に接続され、前記湾曲駆動用牽引部材を該管状部材の内部に配設される状態で、前記挿入部に挿通された第1の湾曲固定用牽引部材と、
前記第1の湾曲固定用牽引部材を牽引弛緩操作して前記湾曲部の全体の固定または解除を操作する第1の湾曲固定用操作部と、
前記湾曲部に接続され、前記挿入部に挿通された第2の湾曲固定用牽引部材と、
前記第2の湾曲固定用牽引部材を牽引弛緩操作して前記湾曲部の一部の固定または解除を操作する第2の湾曲固定操用作部と、
を備えたことを特徴とする内視鏡。
【請求項2】
前記第2の湾曲部固定用牽引部材の先端が、前記湾曲部の任意の位置に固定され、前記第2の湾曲固定用操作部による牽引操作により前記第2の湾曲部固定用牽引部材の固定位置よりも基端側の前記湾曲部を固定可能とすると共に、前記湾曲操作部による牽引操作により、前記第2の湾曲部固定用牽引部材の固定位置より先端側の前記湾曲部のみ湾曲可能としたことを特徴とする請求項1に記載の内視鏡。
【請求項3】
前記湾曲駆動用牽引部材および前記第2の湾曲固定用牽引部材をワイヤで形成したことを特徴とする請求項1に記載の内視鏡。
【請求項4】
前記第2の湾曲固定用牽引部材を管状部材で構成し、前記第2の湾曲固定用牽引部材の内部に前記第1の湾曲固定用牽引部材を配置したことを特徴とする請求項1に記載の内視鏡。
【請求項5】
前記第2の湾曲固定用牽引部材の先端が前記第1の湾曲固定用牽引部材に対して前記湾曲部の長手方向の基端側にずらした位置で固定され、前記第1の湾曲固定用操作部および前記第2の湾曲固定用操作部の操作によって、前記湾曲部の固定範囲と湾曲可能範囲を選択的に操作自在としたことを特徴とする請求項1に記載の内視鏡。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、湾曲部が設けられた硬性の挿入部を備えた内視鏡に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に内視鏡には、挿入部が曲がらない硬性管により構成された硬性内視鏡と、挿入部が可撓管にて構成され、先端に湾曲動作が出来る湾曲部を持った軟性内視鏡とが存在し、腹腔や鼻内などに広く用いられている。
【0003】
硬性内視鏡は、挿入部が硬性である為、手元での操作がダイレクトに先端まで伝わり、先端を狙った位置および方向へ制御し易い。また、硬性内視鏡は、挿入部にて邪魔な臓器、組織などを押しのけて視野を確保することができるなどの利点がある。
【0004】
しかし、硬性内視鏡は、正面視しかできず、斜めの位置にある物体などを観察する際、その都度、専用の視野角度を持った斜視の硬性内視鏡へ持ち換える必要があるという問題がある。
【0005】
その一方、軟性内視鏡は、挿入部が可撓管により構成されており、挿入部の先端側に手元操作部の操作にて自在に曲げられる湾曲部を有している。そのため、軟性内視鏡は、細く長い管路への挿入性に優れ、また湾曲機能により見たい方向に先端を曲げられる、という利点がある。
【0006】
そして近年では、硬性内視鏡と軟性内視鏡の両者の利点を兼ね備えた湾曲付き硬性内視鏡が存在している。具体的には、硬性内視鏡の先端に前述の軟性内視鏡が持つ湾曲部を挿入部に設けて組み合わせた構造である。
【0007】
この従来の硬性内視鏡に設けられる湾曲部は、硬性管により構成された挿入部と、この挿入部の先端部の間に位置している。この湾曲部には、いくつかの短い節輪がそれぞれリベット、ワイヤなど何らかの手段で接続されており、そして前述の先端部に接続された先頭の節輪に駆動用ワイヤが固定的に接続されている。
【0008】
そして、それ以降の節輪のいくつかまたは全てには、内部に駆動用ワイヤを通す為の孔、または専用の経路を持ち、そこには前述の駆動用ワイヤが通してある。そして、湾曲部は、駆動用ワイヤを引くことによって、引かれた方向へ湾曲する、というものである。
【0009】
しかしながら、従来の湾曲付き硬性内視鏡は、湾曲機構を持たない硬性内視鏡と比較し湾曲部という曲がる部位を有する為、湾曲部が体腔内に触れた場合に先端が動いてしまい安定した観察ができない、先端部近傍で組織を押しのけることができないなどといった課題がある。
【0010】
この課題への解決策としては、例えば、JP特公2010−207340号公報に可撓性湾曲ガイドチューブが開示されている。この可撓性湾曲ガイドチューブは、中空の可撓性チューブの先端に接続された湾曲部の駆動ワイヤの端部を操作部内のスライド部材に固定し、そのスライド部材が操作部の操作ダイアルを回転させることによって前後スライドする部材を前後に動かすことが可能となっており、それにより接続したワイヤを引っ張る事で湾曲動作を可能にしている。そして、特許文献1では、スライド部材を手元操作で固定してしまう事で、湾曲管を湾曲させたまま、その形状を保持できる機構の技術が開示されている。
【0011】
しかしながら、JP特公2010−207340号公報に記載されている従来の技術では、一度に湾曲部の全てが固定されてしまい、湾曲部の固定を解除すると全ての湾曲部の固定が解除されてしまう機構であるため、湾曲部の固定の機能と湾曲機能を共存させることができないという課題があった。つまり、従来の内視鏡は、湾曲部の固定状態では視野を変更することができないという問題があった。
【0012】
そこで、本発明は、上記事情に鑑みて、湾曲部を自由に湾曲操作できる状態、湾曲部を固定できる状態または湾曲部の一部だけ湾曲操作できる状態に切換えることができ、湾曲部の固定の機能と湾曲機能を共存させることができる湾曲付き内視鏡を提供することを目的としている。
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記目的を達成すべく、本発明の一態様の内視鏡は、先端部と湾曲部を有する挿入部と、前記湾曲部に接続され、前記挿入部に挿通された湾曲駆動用牽引部材と、前記湾曲駆動用牽引部材を牽引弛緩操作して前記湾曲部の全体を湾曲操作する湾曲操作と、管状部材で構成され、前記湾曲部に接続され、前記湾曲駆動用牽引部材を該管状部材の内部に配設される状態で、前記挿入部に挿通された第1の湾曲固定用牽引部材と、前記第1の湾曲固定用牽引部材を牽引弛緩操作して前記湾曲部の全体の固定または解除を操作する第1の湾曲固定用操作と、前記湾曲部に接続され、前記挿入部に挿通された第2の湾曲固定用牽引部材と、前記第2の湾曲固定用牽引部材を牽引弛緩操作して前記湾曲部の一部の固定または解除を操作する第2の湾曲固定操用作と、を備えている。
【0014】
上記記載の本発明によれば、湾曲部を自由に湾曲操作できる状態、湾曲部を固定できる状態または湾曲部の一部だけ湾曲操作できる状態に切換えることができ、湾曲部の固定の機能と湾曲機能を共存させることができる湾曲付き内視鏡を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】第1の実施の形態の硬性内視鏡の全体構成図
図2】同、挿入部の湾曲部の内部構造を示す断面図
図3】同、図2のIII−III線に沿った湾曲部の断面図
図4】同、図2のIV−IV線に沿った湾曲部の断面図
図5】同、図2のV−V線に沿った湾曲部の断面図
図6】同、図2のVI−VI線に沿った湾曲部の断面図
図7】同、図4の破線の円VIIで囲んだ部位の拡大図
図8】同、図5の破線の円VIIIで囲んだ部位の拡大図
図9】同、操作部内の構成を示す断面図
図10】同、ドラムユニット周りの機構を示す斜視図
図11】同、湾曲部の湾曲動作を説明する概略図
図12】同、全体湾曲固定ノブおよび基端側節輪群固定ノブが基端側に操作された状態の操作部内の構成を示す断面図
図13】同、全体湾曲固定ノブが基端側に操作され、基端側節輪群固定ノブが先端側に操作された状態の操作部内の構成を示す断面図
図14】同、全体湾曲固定ノブが先端側に操作され、基端側節輪群固定ノブが基端側に操作された状態の操作部内の構成を示す断面図
図15】第2の実施の形態の挿入部の湾曲部の内部構造を示す断面図
図16】同、図15のXVI−XVI線に沿った湾曲部の断面図
図17】同、図15のXVII−XVII線に沿った湾曲部の断面図
図18】同、図15のXVIII−XVIII線に沿った湾曲部の断面図
図19】同、図15のXVI−XVI線に沿った湾曲部の断面図
図20】同、図18の破線の円XXで囲んだ部位の拡大図
図21】同、図19の破線の円XXIで囲んだ部位の拡大図
図22】同、操作部内の構成を示す断面図
図23】同、全体湾曲固定ノブが基端側に操作され、基端側節輪群固定ノブが先端側に操作された状態の操作部内の構成を示す断面図
図24】同、全体湾曲固定ノブが先端側に操作され、基端側節輪群固定ノブが基端側に操作された状態の操作部内の構成を示す断面図
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、図面を参照して、本発明の硬性内視鏡について説明する。なお、以下の説明において、実施の形態に基づく図面は、模式的なものであり、各部分の厚みと幅との関係、夫々の部分の厚みの比率などは現実のものとは異なることに留意すべきであり、図面の相互間においても互いの寸法の関係や比率が異なる部分が含まれている場合がある。
【0017】
(第1の実施の形態)
先ず、本発明の第1の実施の形態について説明する。
図1に示すように、本実施の形態の湾曲付き内視鏡としての硬性内視鏡1は、被検体に挿入するための細長の挿入部2と、その基端に連設された操作部4を有している。また、操作部4からはユニバーサルコード7が延出しており、このユニバーサルコード7の基端には図示しない光源装置に接続されるライトガイドコネクタ8が配設されている。
【0018】
このライトガイドコネクタ8からは、ビデオコネクタ9が延出しており、図示しないビデオプロセッサに接続される。
【0019】
被検体に挿入する細長の挿入部2は、先端部分に先端部2aおよび湾曲部3が設けられている。この挿入部2は、湾曲部3から基端側は硬性管2bを有している。
【0020】
操作部4には、湾曲部3を湾曲操作する湾曲操作レバー5と、湾曲部3の湾曲状態を固定する湾曲固定用操作部(湾曲固定用操作手段)としての2つの湾曲部全体湾曲固定ノブ6aおよび基端側節輪群固定ノブ6bと、が設けられている。なお、湾曲操作レバー5および湾曲部全体湾曲固定ノブ6aおよび基端側節輪群固定ノブ6bの具体的な構成に関しては後述する。
【0021】
ライトガイドコネクタ8を介して光源装置から入力された光は、硬性内視鏡1の内部に挿通されたライトガイドケーブル17(図2参照)によって伝達され、硬性内視鏡1の先端部2aに配された、図示しないレンズを介して被検体に照射される。
【0022】
そして、硬性内視鏡1は、先端部2aに配されたカメラユニットより取り込まれた画像を、内部に挿通されたビデオユニットケーブル18(図2参照)にて伝達し、ビデオコネクタ9を介しビデオプロセッサに伝達され、図示しないモニタに送られ画像を映し出す仕組みとなっている。
【0023】
硬性内視鏡1の湾曲部3は、図2に示すように、複数の節輪11,12,13がリベット25にて接続され回動自在に形成される。詳述すると、湾曲部3は、先端側節輪群11、基端側節輪群13などを有している。これら先端側節輪群11および基端側節輪群13の両者の間には、中継用節輪12が設けられている。
【0024】
そして、先端側節輪群11の先頭にある湾曲管第一節輪10には、図3に示すように、湾曲操作ワイヤ14がワイヤ固定部10aに少なくとも2本接続されている。なお、少なくとも2本の湾曲操作ワイヤ14は、対向した位置に配置されるのが望ましいが、そうでなくとも良い。
【0025】
これら2本の湾曲操作ワイヤ14は、例えば、図4および図7に示すように、先端側節輪群11、中継用節輪12および基端側節輪群13に設けられたワイヤガイド29に形成されたワイヤ用ガイド経路29aを通されて操作部4の内部へと延設される。
【0026】
なお、本実施の形態の硬性内視鏡1は、その湾曲方向が2方向の湾曲部3を例に挙げているが、湾曲部3の湾曲方向は2方向に限定せず、それ以上の湾曲方向を有していても良い。この場合、湾曲部3の中心を軸とし、湾曲させたい方向と、その対向側へそれぞれ最低1本ずつの湾曲操作ワイヤ14が設置される。
【0027】
但し、湾曲操作ワイヤ14の設置位置は、曲げたい方向に対してのズレは許容できるものとする。
【0028】
湾曲部3の湾曲管第一節輪10には、図3に示したように、複数のワイヤ固定部10aを有しており、少なくとも2本以上、ここでは4本の湾曲部全体固定ワイヤ15がワイヤ固定部10aによって固定的に接続されている。これら湾曲部全体固定ワイヤ15の湾曲管第一節輪10への固定位置は、対向する位置に配置するのが望ましいが、必ずしも対向位置でなくとも良い。
【0029】
そして、湾曲部全体固定ワイヤ15は、図4から図6および図8に示すように、先端側節輪群11および基端側節輪群13のワイヤガイド29に穿孔されたワイヤ用ガイド経路29aに通される。
【0030】
なお、ワイヤ用ガイド経路29aは、必ずしも全ての節輪に存在しなくとも良く、それらの位置は対向位置が望ましいが必ずしもそうでなくとも良い。
【0031】
また、湾曲部全体固定ワイヤ15は、挿入部2の内部を経由して操作部4の内部まで延設されている。
【0032】
湾曲部3の中継用節輪12は、図5に示すように、複数のワイヤ固定部12aを有しており、これらワイヤ固定部12aに、少なくとも2本以上、ここでは4本の基端側節輪群固定ワイヤ16が固定的に接続されている。
【0033】
なお、これら基端側節輪群固定ワイヤ16の中継用節輪12への固定位置は、それぞれが対向する位置に配置するのが望ましいが、必ずしも対向位置でなくとも良い。
【0034】
そして、基端側節輪群固定ワイヤ16は、図6に示すように、基端側節輪群12のワイヤガイド29に穿孔されたワイヤ用ガイド経路29aに通され、挿入部2の内部を経由し、操作部4の内部まで延設されている。
【0035】
なお、湾曲部3は、外側に湾曲ゴム26が被せられており、可動部に異物、液体などの侵入を防ぐ構造となっている。
【0036】
図9および図10に示すように、挿入部2から操作部4の内部に引き込まれた湾曲操作ワイヤ14は、操作部4の内部に設けられたドラムユニット22の円弧面の一部に固定的に接続されている。なお、湾曲操作ワイヤ14は、湾曲駆動用牽引部材を構成している。
【0037】
即ち、2本の湾曲操作ワイヤ14は、図2および図3に示したように、それぞれの先端部が湾曲管第一節輪10において、上下の対向位置に先端側の端部が固定された状態として対が構成される。このように対が構成された2本の湾曲操作ワイヤ14は、それぞれの基端部がドラムユニット22の外周一部に、湾曲管第一節輪10の内部と同様にして対向位置に組みつけられる。
【0038】
また、ドラムユニット22の中心には、ドラム軸23が固定されている。なお、このドラム軸23は、ドラムユニット22に固定的に接続されていなければならず、また固定位置は必ずしもドラムユニット22の中心ではなくとも良い。
【0039】
ドラム軸23は、操作部4の内面に回動自在に取り付けられている。このドラム軸23は、操作部4に固着してはならず、自由に回転が可能である。
【0040】
なお、ドラム軸23は、操作部4の外壁を貫通し湾曲操作レバー5が固定的に接続されているか、もしくは湾曲操作レバー5が操作部4の外壁を貫通し内部のドラム軸23と固定的に接続されている。
【0041】
湾曲操作レバー5は、ドラム軸23の軸回りに回動するように可動させることができ、その動作と連動して内部のドラムユニット22が回動される。
【0042】
例えば、図11に示すように、湾曲操作レバー5を硬性内視鏡1の後方側へ動かすことで、連結されたドラム軸23の軸回りにドラムユニット22を回動させることができる。このように、湾曲操作レバー5の回動操作によって、ドラムユニット22を回転させることで、このドラムユニット22に連結された一対の湾曲操作ワイヤ14は、ドラム軸23の軸回りに一方がドラムユニット22に巻き取られて牽引され、対となる他方が押し出されて弛緩される。
【0043】
このような動作により、湾曲操作ワイヤ14の一方が操作部4方向に引きこまれるように引っ張られ、湾曲操作ワイヤ14の他方が挿入部2方向へ押し出されるようになる。これにより、湾曲管第一節輪10は、一方の湾曲操作ワイヤ14の先端が固定された側に引っ張られる。
【0044】
この一連の動作により、湾曲部3は、ここでは上下2方向の意図した角度に湾曲操作される。こうして、湾曲部3を湾曲操作するため、一対の湾曲操作ワイヤ14を牽引操作する湾曲操作部(湾曲操作手段)が構成されている。
【0045】
図9に戻って、操作部4内には、湾曲固定ワイヤ用ガイド19が固定的に設置されている。この湾曲固定ワイヤ用ガイド19には、湾曲固定用牽引部材としての4本の湾曲部全体固定ワイヤ15および4本の基端側節輪群固定ワイヤ16が一本毎にスムーズに通過できる大きさの複数の孔19aが形成されている(なお、図9においては2つのみ図示している)。
【0046】
即ち、湾曲固定ワイヤ用ガイド19に形成された複数の孔19aには、挿入部2から引き込まれた湾曲部全体固定ワイヤ15および基端側節輪群固定ワイヤ16がそれぞれ1本ずつ通されている。なお、これら孔19aと湾曲部全体固定ワイヤ15および基端側節輪群固定ワイヤ16は接触しても良い。
【0047】
湾曲部全体固定ワイヤ15および基端側節輪群固定ワイヤ16は、湾曲固定ワイヤ用ガイド19の孔19aを通過後に、それぞれ一本ずつ、ワイヤ固定用バネ20a,20bに通されている。
【0048】
これらワイヤ固定用バネ20a,20bの片端は、湾曲固定ワイヤ用ガイド19の基端面に当接している。なお、ワイヤ固定用バネ20a,20bの端部は、湾曲固定ワイヤ用ガイド19に固定されていても、単に接触しているだけでも、どちらでも良い。
【0049】
また、ワイヤ固定用バネ20a,20bの外径は、湾曲固定ワイヤ用ガイド19の孔19aの径よりも大きく設定されている。
【0050】
ワイヤ固定用バネ20aに通した湾曲部全体固定ワイヤ15は、次に全体湾曲固定バネオサエ24aに形成されたストッパ逃がし孔30aにそれぞれ1本ずつ通されている。なお、全体湾曲固定バネオサエ24aに穿孔されたストッパ逃がし孔30aの孔径は、ワイヤ固定用バネ20aの外径よりも小さく設定されている。
【0051】
ストッパ逃がし孔30aを通った湾曲部全体固定ワイヤ15は、その端部にワイヤ固定用ストッパ21aが固定的に組み付けられている。このワイヤ固定用ストッパ21aの外径は、全体湾曲固定バネオサエ24aに形成されたストッパ逃がし孔30aの孔径より小さく設定されている。また、ワイヤ固定用ストッパ21aの外径は、ワイヤ固定用バネ20aの内径より大きく設定されている。
【0052】
ワイヤ固定用バネ20aは、片端が湾曲固定ワイヤ用ガイド19の基端側の面に接触し、その位置を基準として自由長に解放されたとき、ワイヤ固定用ストッパ21aと接触し、所定の力量で押せる長手方向の寸法が設定されている。
【0053】
湾曲部全体固定ワイヤ15に接続されたワイヤ固定用ストッパ21aの組み付け位置は、ワイヤ固定用バネ20aが自由長に解放された状態のときに、ワイヤ固定用バネ20aに接触して所定の力量で付勢される湾曲部全体固定ワイヤ15が基端側へ張力を受ける位置に設定されている。
【0054】
全体湾曲固定バネオサエ24aは、操作部4の外面に位置する全体湾曲固定ノブ6aと固定的に接続されている。全体湾曲固定ノブ6aは、外部から操作部4の内部の全体湾曲固定バネオサエ24aの位置を前後に操作することができるようになっている。
【0055】
また、全体湾曲固定ノブ6aの操作により、全体湾曲固定ノブ6aに接続された全体湾曲固定バネオサエ24を先端側へ動かしてワイヤ固定用バネ20aを圧縮することが可能である。なお、操作部4には、ワイヤ固定用バネ20aを圧縮する位置で全体湾曲固定ノブ6aをロックする図示しない固定機構が設けられている。
【0056】
一方、ワイヤ固定用バネ20bに通した基端側節輪群固定ワイヤ16は、次に基端側節輪群固定バネオサエ24bに形成されたストッパ逃がし孔30bにそれぞれ1本ずつ通される。基端側節輪群固定バネオサエ28bに穿孔されたストッパ逃がし孔30bは、ワイヤ固定用バネ20bの外径よりも小さく設定されている。
【0057】
基端側節輪群固定バネオサエ28bに形成されたストッパ逃がし孔30bを通った基端側節輪群固定ワイヤ16は、その端部にワイヤ固定用ストッパ21bが固定的に組みつけられる。ワイヤ固定用ストッパ21bの外径は、基端側節輪群固定バネオサエ24bに空けられた、ストッパ逃がし孔30bより小さく設定されている。
【0058】
基端側節輪群固定ワイヤ16に接続されたワイヤ固定用ストッパ21bの組み付け位置は、ワイヤ固定用バネ20bが自由長に解放された状態のときに、ワイヤ固定用バネ20bに接触して、所定の力量で付勢される基端側節輪群固定ワイヤ16が基端側へ張力を受ける位置に設定されている。
【0059】
基端側節輪群固定バネオサエ24bは、操作部4の外面に位置する基端側節輪群固定ノブ6bに固定的に接続されており、基端側節輪群固定ノブ6bを動かすことで外部から操作部4の内部の基端側節輪群固定バネオサエ24bの位置を操作することができる。
【0060】
また、基端側節輪群固定ノブ6bを操作することで、この基端側節輪群固定ノブ6bに接続された基端側節輪群固定バネオサエ24bを先端側へ動かしてワイヤ固定用バネ20bを圧縮することが可能である。なお、操作部4には、ワイヤ固定用バネ20bを圧縮する位置で基端側節輪群固定ノブ6bをロックする図示しない固定機構が設けられている。
【0061】
以上のように構成された本実施の形態の硬性内視鏡1において、例えば、図9に示す状態では、全体湾曲固定ノブ6aおよび基端側節輪群固定ノブ6bが先端側に移動された操作位置となっている。このとき、操作部4に設けられたロック機構により、全体湾曲固定ノブ6aおよび基端側節輪群固定ノブ6bが操作された位置で固定されている。
【0062】
この状態では、全体湾曲固定ノブ6aおよび基端側節輪群固定ノブ6bに連結された全体湾曲固定バネオサエ24aおよび基端側節輪群固定バネオサエ24bは、全てのワイヤ固定用バネ20a,20bを先端側へ圧縮している。
【0063】
そして、この状態において、ワイヤ固定用バネ20a,20bがワイヤ固定用ストッパ21a,21bと接触しておらず、ワイヤ固定用ストッパ21a,21bが前後に自由に動くことができるようになっている。
【0064】
即ち、図9に示すような、全体湾曲固定ノブ6aおよび基端側節輪群固定ノブ6bが先端側となる先端側に移動した操作位置では、ワイヤ固定用ストッパ21a,21bが接続された湾曲部全体固定ワイヤ15および基端側節輪群固定ワイヤ16が前後に自由に動くことができる。
【0065】
そのため、湾曲部3に設けられた湾曲管第一節輪10、先端側節輪群11、中継用節輪12および基端側節輪群13は、湾曲部全体固定ワイヤ15および基端側節輪群固定ワイヤ16から基端側への牽引力を受けていない状態となり、それぞれの連結部位で自由に回動自在な状態となる。
【0066】
これにより、湾曲操作レバー5を操作することで、連動するドラムユニット22に連結された一対の湾曲操作ワイヤ14の牽引弛緩によって、湾曲部3を自由に湾曲操作することができる。
【0067】
また、図12に示すように、例えば、全体湾曲固定ノブ6aおよび基端側節輪群固定ノブ6bの両方が基端側へ移動された操作位置では、連結された全体湾曲固定バネオサエ24aおよび基端側節輪群固定バネオサエ24bは、ワイヤ固定用バネ20a,20bに当接せず、ワイヤ固定用バネ20a,20bの圧縮が解放された状態となる。
【0068】
このとき、ワイヤ固定用ストッパ21a,21bは、全体湾曲固定バネオサエ24aおよび基端側節輪群固定バネオサエ24bに設けられたストッパ逃がし孔30a,30bに通過する。
【0069】
圧縮が解放されたワイヤ固定用バネ20a,20bは、それぞれの先端側の片端が湾曲固定ワイヤ用ガイド19を押圧するが、湾曲固定ワイヤ用ガイド19が操作部4の内部で固定されて設けられているため、当接するワイヤ固定用ストッパ21a、21bを基端側に押圧する。
【0070】
これにより、ワイヤ固定用ストッパ21a,21bが連結された湾曲部全体固定ワイヤ15および基端側節輪群固定ワイヤ16の全てがワイヤ固定用バネ20a,20bの付勢力により基端側に引き寄せられて牽引される。即ち、ワイヤ固定用バネ20a,20bは、湾曲部全体固定ワイヤ15および基端側節輪群固定ワイヤ16を牽引する湾曲部固定用牽引部材を構成している。
【0071】
この状態では、湾曲管第一節輪10、先端側節輪群11、中継用節輪12および基端側節輪群13は、湾曲部全体固定ワイヤ15および基端側節輪群固定ワイヤ16による基端側への牽引力を受けて全てが基端側に引き付けられる。
【0072】
即ち、湾曲管第一節輪10、先端側節輪群11、中継用節輪12および基端側節輪群13は、基端側へ圧縮されて、それぞれの連結部位での可動が抑制される。
【0073】
その結果、一対の湾曲操作ワイヤ14も動きが抑制され、それら湾曲操作ワイヤ14を牽引弛緩する湾曲操作レバー5の自由に動かせず操作が抑制され、湾曲部3を自由に湾曲操作することができない状態となる。
【0074】
なお、このとき、湾曲部3は、内部の湾曲管第一節輪10、先端側節輪群11、中継用節輪12および基端側節輪群13が湾曲部全体固定ワイヤ15および基端側節輪群固定ワイヤ16によって周方向に均等な基端側への牽引力を受けるため略直線状の湾曲していない固定された状態となる。即ち、挿入部2は、略直線状に固定される。
【0075】
但し、ワイヤ固定用バネ20a,20bの付勢力を超える力が、外部より湾曲部3に直接加わった場合または湾曲操作レバー5に加わった場合は、湾曲部3が湾曲可動する。
【0076】
また、図13に示すように、例えば、全体湾曲固定ノブ6aが基端側へ移動され、基端側節輪群固定ノブ6bが先端側へ移動された操作位置では、全体湾曲固定ノブ6aに連結された全体湾曲固定バネオサエ24aのみがワイヤ固定用バネ20aの圧縮を解放する。
【0077】
このとき、ワイヤ固定用ストッパ21aは、全体湾曲固定バネオサエ24aに設けられたストッパ逃がし孔30aを通過する。
【0078】
圧縮が解放されたワイヤ固定用バネ20aは、上述と同様に、先端側の片端が湾曲固定ワイヤ用ガイド19を押圧し、当接するワイヤ固定用ストッパ21aを基端側に押圧する。これにより、ワイヤ固定用ストッパ21aが連結された湾曲部全体固定ワイヤ15の全てがワイヤ固定用バネ20aの付勢力により基端側に引き寄せられて牽引される。
【0079】
この状態においても、上述と同様に、湾曲管第一節輪10、先端側節輪群11、中継用節輪12および基端側節輪群13は、湾曲部全体固定ワイヤ15による基端側への牽引力を受けて全てが基端側に引き付けられる。
【0080】
即ち、ここでも、湾曲管第一節輪10、先端側節輪群11、中継用節輪12および基端側節輪群13は、基端側へ圧縮されて、それぞれの連結部位での可動が抑制される。その結果、一対の湾曲操作ワイヤ14も動きが抑制され、それら湾曲操作ワイヤ14を牽引弛緩する湾曲操作レバー5の自由に動かせず操作が抑制され、湾曲部3を自由に湾曲操作することができない状態となる。
【0081】
なお、このときも、湾曲部3は、内部の湾曲管第一節輪10、先端側節輪群11、中継用節輪12および基端側節輪群13が湾曲部全体固定ワイヤ15および基端側節輪群固定ワイヤ16によって周方向に均等な基端側への牽引力を受けるため略直線状の湾曲していない固定された状態となる。即ち、挿入部2は、略直線状に固定される。
【0082】
ここでも、ワイヤ固定用バネ20aの付勢力を超える力が、外部より湾曲部3に直接加わった場合または湾曲操作レバー5に加わった場合は、湾曲部3が湾曲可動する。
【0083】
なお、ここでは、ワイヤ固定用バネ20bの付勢力を受けていないため、ワイヤ固定用バネ20aのみの付勢力を超える力を加えることで、湾曲部3が湾曲できるようになる。
【0084】
また、図14に示すように、例えば、全体湾曲固定ノブ6aが先端側へ移動され、基端側節輪群固定ノブ6bが基端側へ移動された操作位置では、基端側節輪群固定ノブ6bに連結された基端側節輪群固定バネオサエ24bのみがワイヤ固定用バネ20bの圧縮を解放する。
【0085】
このとき、ワイヤ固定用ストッパ21bは、基端側節輪群固定バネオサエ24bに設けられたストッパ逃がし孔30bを通過する。
【0086】
圧縮が解放されたワイヤ固定用バネ20bは、上述と同様に、先端側の片端が湾曲固定ワイヤ用ガイド19を押圧し、当接するワイヤ固定用ストッパ21bを基端側に押圧する。
【0087】
これにより、ワイヤ固定用ストッパ21bが連結された基端側節輪群固定ワイヤ16の全てがワイヤ固定用バネ20bの付勢力により基端側に引き寄せられて牽引される。
【0088】
この状態においては、基端側節輪群固定ワイヤ16の先端が固定された中継用節輪12と、この中継用節輪12の基端側の基端側節輪群13のみが基端側節輪群固定ワイヤ16による基端側への牽引力を受けて基端側に引き付けられる。
【0089】
即ち、中継用節輪12および基端側節輪群13は、基端側へ圧縮されて、それぞれの連結部位での可動が抑制される。ここでは、湾曲部3は、中継用節輪12および基端側節輪群13が基端側節輪群固定ワイヤ16によって周方向に均等な基端側への牽引力を受けるため、中継用節輪12および基端側節輪群13が設けられた部位のみ略直線状の湾曲していない固定された状態となる。
【0090】
また、基端側節輪群固定ワイヤ16による基端側への牽引力を受けていない湾曲管第一節輪10および先端側節輪群11は、それぞれの連結部位での可動が抑制されず、自由に回動することができる。
【0091】
そのため、湾曲操作レバー5を操作することで、湾曲部3の先端側の湾曲管第一節輪10および先端側節輪群11が設けられた部位を湾曲操作することができる。
【0092】
なお、ここでも、ワイヤ固定用バネ20bの付勢力を超える力が、外部より湾曲部3の基端側の中継用節輪12および基端側節輪群13が設けられた部位に直接加わった場合または湾曲操作レバー5に加わった場合は、湾曲部3の全体が湾曲可動する。
【0093】
以上に説明したように、本実施の形態の硬性内視鏡1は、操作部4に設けられた全体湾曲固定ノブ6aおよび基端側節輪群固定ノブ6bを前後に操作することで、湾曲部3を自由に湾曲操作できる状態、湾曲部3を略直線状に固定できる状態または湾曲部3の先端側だけ湾曲操作でき、基端側を略直線状に固定できる状態を選択的に行える構成となっている。
【0094】
即ち、硬性内視鏡1は、挿入部2の全体を硬くする、または湾曲部3の一部を硬くしつつ、湾曲部3の一部、ここでは基端側だけ湾曲機能を温存する、ということが選択可能な構成とすることができる。
【0095】
このような構成とすることで、硬性内視鏡1は、正面視内視鏡と斜視内視鏡の持ち替えの手間を無くし観察時間を削減し、なおかつ従来の内視鏡よりもさらに広い範囲の観察ができる湾曲付きの硬性内視鏡となる。
【0096】
そして、硬性内視鏡1は、必要に応じて湾曲部3の全体、または湾曲部3の基端側を固定するといった必要に応じた湾曲部3の固定を使い分けることができるようになる。そして、硬性内視鏡1は、湾曲部3の先端部分だけを湾曲できるため、湾曲部3の基端側で組織を押し広げ、先端部分のみ湾曲させ管路内を観察するといった使用が可能となる。
【0097】
(第2の実施の形態)
次に、本発明の第2の実施の形態について説明する。なお、以下の説明において、第1の実施の形態にて説明した共通の構成要素に関しては、同一の符号を用いてそれら構成要素の詳細な説明を省略する。
【0098】
図15に示すように、本実施の形態の硬性内視鏡1は、挿入部2の湾曲部3から操作部4の内部に亘って、少なくとも2本以上の湾曲操作ワイヤ14が湾曲固定用牽引部材の1つである湾曲部全体固定弾性パイプ31に通された状態となっており、それぞれの湾曲操作ワイヤ14の先端部分が湾曲管第一節輪10に設けられたワイヤ固定部10aと固定的に接続されている。
【0099】
また、湾曲部全体固定弾性パイプ31の先端部分も、湾曲操作ワイヤ14と同位置にて湾曲管第一節輪10に設けられたワイヤ固定部10aに固定的に接続されている。なお、これら湾曲操作ワイヤ14および湾曲部全体固定弾性パイプ31は、対向する位置に配置するのが望ましいが、必ずしも対向位置でなくとも良い。
【0100】
湾曲部全体固定弾性パイプ31は、柔軟で可撓性があり長手方向に伸びにくい素材が用いられている。湾曲部全体固定弾性パイプ31は、可撓性のある金属素材が望ましいが、それ以外の素材でも柔軟で可撓性があり長手方向に伸びにくい素材であれば良い。
【0101】
湾曲部全体固定弾性パイプ31に通された状態の湾曲操作ワイヤ14は、図17に示すように、先端側節輪群11のワイヤガイド29に形成されたワイヤ用ガイド経路29aに通される。
【0102】
また、湾曲操作ワイヤ14および湾曲部全体固定弾性パイプ31は、中継用節輪12内から操作部4の内部に亘って、湾曲部全体固定弾性パイプ31の外側に、さらに湾曲固定用牽引部材の1つである基端側節輪群固定弾性パイプ32が被せられている。
【0103】
基端側節輪群固定弾性パイプ32は、湾曲部全体固定弾性パイプ31と同様に、柔軟で可撓性があり長手方向に伸びにくい素材が用いられている。基端側節輪群固定弾性パイプ32は、湾曲部全体固定弾性パイプ31と同様に、可撓性のある金属素材が望ましいが、それ以外の素材でも柔軟で弾性があり長手方向に伸びにくい素材であれば良い。
【0104】
図18および図20に示すように、基端側節輪群固定弾性パイプ32の先端部分は、中継用節輪12に設けられたワイヤガイド29に固定的に接続される。なお、中継用節輪12のワイヤガイド29では、基端側節輪群固定弾性パイプ32の内部に通されている湾曲操作ワイヤ14および湾曲部全体固定弾性パイプ31が進退自在なものとして固定されていない。
【0105】
図19および図21に示すように、中継用節輪12から操作部4側にかけては、中心に湾曲操作ワイヤ14が中心にあって、その外側に湾曲部全体固定弾性パイプ31が被せられ、さらにその外側に基端側節輪群固定弾性パイプ32が被せられた三重の構造となっている。
【0106】
そして、湾曲操作ワイヤ14、湾曲部全体固定弾性パイプ31および基端側節輪群固定弾性パイプ32は、三重構造の状態のまま、基端側節輪群13のワイヤガイド29に形成されたワイヤ用ガイド経路29aを通り、挿入部2の硬性管2bの内部に挿通されて操作部4の中に引き込まれている。
【0107】
図22に示すように、操作部4の内部には、第1の実施の形態と同様に、湾曲固定ワイヤ用ガイド19が内部に固定的に設置されている。この湾曲固定ワイヤ用ガイド19には、湾曲操作ワイヤ14が挿通する湾曲部全体固定弾性パイプ31の外側に被せられた基端側節輪群固定弾性パイプ32を一本毎にスムーズに通過できる大きさの孔19aが形成されている。
【0108】
なお、湾曲操作ワイヤ14および湾曲部全体固定弾性パイプ31が挿通する三重構造の最も外側にある基端側節輪群固定弾性パイプ32は、湾曲固定ワイヤ用ガイド19の孔19aに1本ずつ通されるが、これら基端側節輪群固定弾性パイプ32が湾曲固定ワイヤ用ガイド19の孔19aと干渉しても良い。
【0109】
そして、湾曲操作ワイヤ14および湾曲部全体固定弾性パイプ31が挿通する基端側節輪群固定弾性パイプ32は、湾曲固定ワイヤ用ガイド19の孔19aを通過後に、それぞれ一本ずつ、ワイヤ固定用バネ20bに通される。
【0110】
ワイヤ固定用バネ20bの片端は、湾曲固定ワイヤ用ガイド19に接している。なお、ワイヤ固定用バネ20bの当接端部は、湾曲固定ワイヤ用ガイド19に固定されていても、単に接触しているだけでもどちらでも良い。また、ワイヤ固定用バネ20bの外径は、湾曲固定ワイヤ用ガイド19の孔19aの径よりも大きく設定されている。
【0111】
基端側節輪群固定弾性パイプ32は、次に基端側節輪群固定バネオサエ24bに形成されたストッパ逃がし孔30bにそれぞれ1本ずつ通される。なお、基端側節輪群固定バネオサエ24bのストッパ逃がし孔30bは、ワイヤ固定用バネ20bの外径より小さく設定されている。
【0112】
そして、基端側節輪群固定バネオサエ24bのストッパ逃がし孔30bを通過した湾曲操作ワイヤ14および湾曲部全体固定弾性パイプ31が挿通する三重構造の最も外側にある基端側節輪群固定弾性パイプ32のうち、基端側節輪群固定弾性パイプ32のみが、基端側節輪群固定弾性パイプストッパ34に固定的に接続されている。
【0113】
なお、湾曲操作ワイヤ14および、この湾曲操作ワイヤ14が挿通する湾曲部全体固定弾性パイプ31は、基端側節輪群固定弾性パイプストッパ34に通されている。
【0114】
基端側節輪群固定弾性パイプストッパ34の内径は、湾曲操作ワイヤ14が挿通する湾曲部全体固定弾性パイプ31がスムーズに通過できるように、湾曲部全体固定弾性パイプ31の外径より大きく設定されている。また、基端側節輪群固定弾性パイプストッパ34の外径は、基端側節輪群固定バネオサエ24bのストッパ逃がし孔30bの孔径よりも小さく設定されている。
【0115】
また、上述のワイヤ固定用バネ20bは、先端が湾曲固定ワイヤ用ガイド19の基端面に接触して、その位置を基準として自由長に解放されたとき、基端側節輪群固定弾性パイプストッパ34と接触して、所定の力量で押せる長手方向の寸法が設定されている。
【0116】
即ち、ワイヤ固定用バネ20bは、先端が湾曲固定ワイヤ用ガイド19に接触して、その位置を基準として自由長に解放されたとき、基端側節輪群固定弾性パイプストッパ34と接触して、所定の力量で基端側節輪群固定弾性パイプストッパ34に接続された基端側節輪群固定弾性パイプ32が基端側へ張力を受ける位置に付勢する付勢力が設定されている。
【0117】
なお、基端側節輪群固定弾性パイプストッパ34の外径は、ワイヤ固定用バネ20bの内径より大きく設定されている。
【0118】
基端側節輪群固定弾性パイプストッパ34を通過した、二重構造として湾曲操作ワイヤ14の外側に被せられた湾曲部全体固定弾性パイプ31は、湾曲部全体固定弾性パイプ用ガイド35に形成された孔35aを通過後、それぞれ一本ずつワイヤ固定用バネ20aに通される。
【0119】
ワイヤ固定用バネ20aの片端は、湾曲部全体固定弾性パイプ用ガイド35に接している。ワイヤ固定用バネ20aの当接端部は、湾曲部全体固定弾性パイプ用ガイド35に固定されていても、単に接触しているだけでも、どちらでも良い。
【0120】
また、ワイヤ固定用バネ20aの外径は、湾曲部全体固定弾性パイプ用ガイド35の孔35aの孔径よりも大きく設定されている。
【0121】
湾曲操作ワイヤ14の外側に被せられた湾曲部全体固定弾性パイプ31は、ワイヤ固定用バネ20aに通された後、さらに全体湾曲固定バネオサエ24aに形成されたストッパ逃がし孔30aに、それぞれ1本ずつ通されている。なお、全体湾曲固定バネオサエ24aのストッパ逃がし孔30aの孔径は、ワイヤ固定用バネ20aの外径よりも小さく設定されている。
【0122】
ストッパ逃がし孔30aを通った、湾曲部全体固定弾性パイプ31は、湾曲部全体固定弾性パイプストッパ33に固定的に接続されている。この湾曲部全体固定弾性パイプストッパ33の内径は、湾曲部全体固定弾性パイプ31の外径より大きく設定されている。
【0123】
湾曲操作ワイヤ14は、湾曲部全体固定弾性パイプストッパ33の内部をスムーズに通過できるようになっている。なお、湾曲部全体固定弾性パイプストッパ33の外径は、全体湾曲固定バネオサエ24aのストッパ逃がし孔30aより小さく設定され、ワイヤ固定用バネ20aの内径より大きく設定されている。
【0124】
ワイヤ固定用バネ20aは、先端が湾曲部全体固定弾性パイプ用ガイド35の基端面に接触し、その位置を基準として自由長に解放されたとき、湾曲部全体固定弾性パイプストッパ33と接触して、所定の力量で湾曲部全体固定弾性パイプストッパ33を基端側へ押せる長手方向の寸法が設定されている。
【0125】
即ち、ワイヤ固定用バネ20aは、先端端が湾曲部全体固定弾性パイプ用ガイド35に接触し、その位置を基準として自由長に解放されたとき、ワイヤ固定用バネ20aが湾曲部全体固定弾性パイプストッパ33と接触して、所定の力量で湾曲部全体固定弾性パイプストッパ33に接続された湾曲部全体固定弾性パイプ31が基端側へ張力を受ける位置に付勢する付勢力が設定されている。
【0126】
基端側節輪群固定バネオサエ24bは、操作部4の外面に位置する基端側節輪群固定ノブ6bに固定的に接続されている。そして、基端側節輪群固定ノブ6bを動かすことで、外部から操作部4の内部の基端側節輪群固定バネオサエ24bの位置を前後に操作することができる。
【0127】
また、基端側節輪群固定ノブ6bを操作し、接続された基端側節輪群固定バネオサエ24bを先端側に動かしてワイヤ固定用バネ20bを圧縮することが可能である。なお、操作部4には、第1の実施の形態と同様に、ワイヤ固定用バネ20bを圧縮する位置で基端側節輪群固定ノブ6bをロックする図示しない固定機構が設けられている。
【0128】
全体湾曲固定バネオサエ24aは、操作部4の外面に位置する全体湾曲固定ノブ6aに固定的に接続されている。そして、全体湾曲固定ノブ6aを前後に動かすことで、外部から操作部4の内部の全体湾曲固定バネオサエ24aの位置を前後に操作することができる。
【0129】
また、全体湾曲固定ノブ6aを操作し、接続された全体湾曲固定バネオサエ24aを動かしてワイヤ固定用バネ20aを圧縮することが可能である。なお、操作部4には、第1の実施の形態と同様に、ワイヤ固定用バネ20aを圧縮する位置で全体湾曲固定ノブ6aをロックする図示しない固定機構が設けられている。
【0130】
以上のように構成された本実施の形態の硬性内視鏡1において、例えば、図22に示す状態として、全体湾曲固定ノブ6aおよび基端側節輪群固定ノブ6bの両方が先端側の位置にある状態では、全体湾曲固定ノブ6aおよび基端側節輪群固定ノブ6bに連結された全体湾曲固定バネオサエ24aおよび基端側節輪群固定バネオサエ24bが全てのワイヤ固定用バネ20a,20bを圧縮している。
【0131】
これらワイヤ固定バネ20a,20bは、この状態において湾曲部全体固定弾性パイプストッパ33および基端側節輪群固定弾性パイプストッパ34と接触することは無く、湾曲部全体固定弾性パイプストッパ33および基端側節輪群固定弾性パイプストッパ34が前後に自由に動くことができる状態となっている。
【0132】
このとき、湾曲部全体固定弾性パイプストッパ33および基端側節輪群固定弾性パイプストッパ34の中を通っている湾曲操作ワイヤ14は、前後に自由に動くことができる状態となる。
【0133】
即ち、図22に示すような、全体湾曲固定ノブ6aおよび基端側節輪群固定ノブ6bが先端側に移動した操作位置では、湾曲部全体固定弾性パイプストッパ33が接続された湾曲部全体固定弾性パイプ31および基端側節輪群固定弾性パイプストッパ34が接続された基端側節輪群固定弾性パイプ32が共に前後に自由に動くことができる。
【0134】
そのため、湾曲部3に設けられた湾曲管第一節輪10、先端側節輪群11、中継用節輪12および基端側節輪群13は、湾曲部全体固定ワイヤ15および基端側節輪群固定ワイヤ16から基端側への牽引力を受けていない状態となり、それぞれの連結部位で自由に回動自在な状態となる。
【0135】
これにより、湾曲操作レバー5を操作することで、連動するドラムユニット22に連結された一対の湾曲操作ワイヤ14の牽引弛緩によって、湾曲部3を自由に湾曲操作することができる。
【0136】
また、図23に示すように、例えば、全体湾曲固定ノブ6aが基端側へ移動され、基端側節輪群固定ノブ6bが先端側に移動された操作位置では、全体湾曲固定ノブ6aに連結された全体湾曲固定バネオサエ24aのみがワイヤ固定用バネ20aを圧縮せず解放する。このとき、湾曲部全体固定弾性パイプストッパ33は、全体湾曲固定バネオサエ24aに設けられたストッパ逃がし孔30aに通過する。
【0137】
圧縮が解放されたワイヤ固定用バネ20aは、先端側の片端が湾曲部全体固定弾性パイプ用ガイド35を押圧するが、湾曲部全体固定弾性パイプ用ガイド35が操作部4の内部で固定されて設けられているため、当接する湾曲部全体固定弾性パイプストッパ33を基端側に押圧する。
【0138】
これにより、湾曲部全体固定弾性パイプストッパ33が接続された湾曲部全体固定弾性パイプ31の全てがワイヤ固定用バネ20aの付勢力により基端側に引き寄せられて牽引される。即ち、ワイヤ固定用バネ20aは、湾曲部全体固定弾性パイプ31を牽引する湾曲部固定用牽引部材を構成している。
【0139】
この状態では、湾曲管第一節輪10、先端側節輪群11、中継用節輪12および基端側節輪群13は、湾曲部全体固定弾性パイプ31による基端側への牽引力を受けて全てが基端側に引き付けられる。
【0140】
即ち、湾曲管第一節輪10、先端側節輪群11、中継用節輪12および基端側節輪群13は、基端側へ圧縮されて、それぞれの連結部位での可動が抑制される。その結果、一対の湾曲操作ワイヤ14も動きが抑制され、それら湾曲操作ワイヤ14を牽引弛緩する湾曲操作レバー5の自由に動かせず操作が抑制され、湾曲部3を自由に湾曲操作することができない状態となる。
【0141】
なお、このとき、湾曲部3は、第1の実施の形態と同様に、略直線状の湾曲していない固定された状態となる。即ち、挿入部2は、略直線状に固定される。但し、ワイヤ固定用バネ20aの付勢力を超える力が、外部より湾曲部3に直接加わった場合または湾曲操作レバー5に加わった場合は、湾曲部3が湾曲可動する。
【0142】
また、図24に示すように、例えば、全体湾曲固定ノブ6aが先端側へ移動され、基端側節輪群固定ノブ6bが基端側へ移動された操作位置では、基端側節輪群固定ノブ6bに連結された基端側節輪群固定バネオサエ24bのみがワイヤ固定用バネ20bの圧縮を解放する。このとき、基端側節輪群固定弾性パイプストッパ34は、基端側節輪群固定バネオサエ24bに設けられたストッパ逃がし孔30bを通過する。
【0143】
圧縮が解放されたワイヤ固定用バネ20bは、上述と同様に、先端側の片端が湾曲固定ワイヤ用ガイド19を押圧し、当接する基端側節輪群固定弾性パイプストッパ34を基端側に押圧する。
【0144】
これにより、基端側節輪群固定弾性パイプストッパ34が連結された基端側節輪群固定弾性パイプ32の全てがワイヤ固定用バネ20bの付勢力により基端側に引き寄せられて牽引される。即ち、ワイヤ固定用バネ20bは、基端側節輪群固定弾性パイプ32を牽引する湾曲部固定用牽引部材を構成している。
【0145】
この状態においては、基端側節輪群固定弾性パイプ32の先端が固定された中継用節輪12と、この中継用節輪12の基端側の基端側節輪群13のみが基端側節輪群固定弾性パイプ32による基端側への牽引力を受けて基端側に引き付けられる。
【0146】
即ち、中継用節輪12および基端側節輪群13は、基端側へ圧縮されて、それぞれの連結部位での可動が抑制される。ここでの湾曲部3は、第1の実施の形態と同様に、中継用節輪12および基端側節輪群13が設けられた部位のみ略直線状の湾曲していない固定された状態となる。
【0147】
また、基端側節輪群固定弾性パイプ32による基端側への牽引力を受けていない湾曲管第一節輪10および先端側節輪群11は、それぞれの連結部位での可動が抑制されず、自由に回動することができる。
【0148】
そのため、湾曲操作レバー5を操作することで、湾曲部3の先端側の湾曲管第一節輪10および先端側節輪群11が設けられた部位を湾曲操作することができる。
【0149】
なお、ここでも、ワイヤ固定用バネ20bの付勢力を超える力が、外部より湾曲部3の基端側の中継用節輪12および基端側節輪群13が設けられた部位に直接加わった場合または湾曲操作レバー5に加わった場合は、湾曲部3の全体が湾曲可動する。
【0150】
以上に説明したように、本実施の形態の硬性内視鏡1は、第1の実施の形態と同様に、操作部4に設けられた全体湾曲固定ノブ6aおよび基端側節輪群固定ノブ6bを前後に操作することで、湾曲部3を自由に湾曲操作できる状態、湾曲部3を略直線状に固定できる状態または湾曲部3の先端側だけ湾曲操作でき、基端側を略直線状に固定できる状態を選択的に行える構成となっている。
【0151】
即ち、硬性内視鏡1は、挿入部2の全体を硬くする、または湾曲部3の一部を硬くしつつ、湾曲部3の一部、ここでは基端側だけ湾曲機能を温存する、ということが選択可能な構成とすることができる。
【0152】
このような構成とすることで、本実施の形態の硬性内視鏡1は、第1の実施の形態に記載の作用効果に加えて、操作ワイヤ14、湾曲部全体固定弾性パイプ31および基端側節輪群固定弾性パイプ32を三重構造にしているため、これらを挿入部2へ挿通させるスペースが減少するため、挿入部2を細径化することができる。
【0153】
尚、本発明で述べた実施例であるが、これは複数の節輪10,11,12,13がリベット25などにて回動自在に連結している湾曲部3の構成を例に説明していたが、湾曲部3の基本構成はこれらに限定するものではなく、湾曲操作ワイヤ14で牽引することで湾曲が可能である構成であれば、どのような形態であっても構わない。
【0154】
上述の実施の形態に記載した発明は、その実施の形態および変形例に限ることなく、その他、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で種々の変形を実施し得ることが可能である。さらに、上記実施の形態には、種々の段階の発明が含まれており、開示される複数の構成要件における適宜な組合せにより種々の発明が抽出され得るものである。
【0155】
例えば、実施の形態に示される全構成要件から幾つかの構成要件が削除されても、述べられている課題が解決でき、述べられている効果が得られる場合には、この構成要件が削除された構成が発明として抽出され得るものである。
【0156】
本出願は、2013年5月29日に日本国に出願された特願2013−113228号を優先権主張の基礎として出願するものであり、上記の内容は、特願2013−113228号の明細書、特許請求の範囲、および図面に引用されたものである。
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