特許第5784860号(P5784860)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】5784860
(24)【登録日】2015年7月31日
(45)【発行日】2015年9月24日
(54)【発明の名称】炭化ケイ素半導体装置
(51)【国際特許分類】
   H01L 29/12 20060101AFI20150907BHJP
   H01L 29/78 20060101ALI20150907BHJP
   H01L 29/739 20060101ALI20150907BHJP
【FI】
   H01L29/78 652T
   H01L29/78 655A
   H01L29/78 652C
   H01L29/78 652F
   H01L29/78 652S
   H01L29/78 655G
【請求項の数】9
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2015-504450(P2015-504450)
(86)(22)【出願日】2014年9月26日
(86)【国際出願番号】JP2014075720
【審査請求日】2015年1月22日
(73)【特許権者】
【識別番号】000002037
【氏名又は名称】新電元工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100137523
【弁理士】
【氏名又は名称】出口 智也
(74)【代理人】
【識別番号】100117787
【弁理士】
【氏名又は名称】勝沼 宏仁
(72)【発明者】
【氏名】中村 俊一
(72)【発明者】
【氏名】菅井 昭彦
(72)【発明者】
【氏名】井上 徹人
【審査官】 棚田 一也
(56)【参考文献】
【文献】 特開2010−263032(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 29/12
H01L 29/739
H01L 29/78
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第一導電型炭化ケイ素層と、
前記第一導電型炭化ケイ素層上に、水平方向で複数設けられた第二導電型炭化ケイ素層と、
前記第二導電型炭化ケイ素層内に形成された第一導電型のソース領域と、
隣り合った第二導電型炭化ケイ素層の間に位置する前記第一導電型炭化ケイ素層上に設けられた絶縁層と、
を備え、
前記絶縁層は、前記第二導電型炭化ケイ素層及び前記ソース領域上に位置する第一絶縁層と、前記第二導電型炭化ケイ素層上に位置し、前記ソース領域上には位置しない第二絶縁層と、を有し、
前記第一絶縁層内にゲート電極が設けられ、
前記第二絶縁層内にはゲート電極が設けられておらず、
水平方向において、前記第一絶縁層の隣に前記第二絶縁層が配置され、
前記第二絶縁層の下方に位置する第二導電型炭化ケイ素層の間の第二距離Lは、前記第一絶縁層の下方に位置する第二導電型炭化ケイ素層の間の第一距離Lよりも長くなっていることを特徴とする炭化ケイ素半導体装置。
【請求項2】
水平方向において、前記第一絶縁層と前記第二絶縁層とが交互に配置されることを特徴とする請求項1に記載の炭化ケイ素半導体装置。
【請求項3】
水平方向において、ある第一絶縁層の隣に前記第二絶縁層が配置され、当該第二絶縁層の隣に別の第一絶縁層が配置されるという周期で、前記第一絶縁層と前記第二絶縁層とが配置されることを特徴とする請求項1に記載の炭化ケイ素半導体装置。
【請求項4】
前記第一絶縁層の厚みから前記ゲート電極の厚みを差し引いた厚みと前記第二絶縁層の厚みは同じ厚さとなっていることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の炭化ケイ素半導体装置。
【請求項5】
前記絶縁層が複数設けられ、
隣り合った前記絶縁層の間の水平方向の距離の各々が等しくなっていることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載の炭化ケイ素半導体装置。
【請求項6】
前記第一絶縁層及び前記第二絶縁層が複数設けられ、
隣り合った前記第一絶縁層と前記第二絶縁層との間の水平方向の距離の各々が等しくなっていることを特徴とする請求項2に記載の炭化ケイ素半導体装置。
【請求項7】
前記第二距離Lは、前記第一距離Lの1.25倍以上2倍以下となっていることを特徴とする請求項1乃至6のいずれか1項に記載の炭化ケイ素半導体装置。
【請求項8】
前記第二導電型炭化ケイ素層のうち前記ソース電極と接触する部分は、前記第二導電型炭化ケイ素層のうち前記ソース電極と接触しない部分と比較して不純物の濃度が高くなっていることを特徴とする請求項1乃至7のいずれか1項に記載の炭化ケイ素半導体装置。
【請求項9】
前記第一導電型のソース領域における不純物の濃度は、前記第一導電型炭化ケイ素層における不純物の濃度よりも高くなっていることを特徴とする請求項1乃至8のいずれか1項に記載の炭化ケイ素半導体装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、炭化ケイ素を用いた炭化ケイ素半導体装置に関する。
【背景技術】
【0002】
MOSFETを用いてモータ等の誘導性負荷を駆動した場合、定格電圧以上の電圧が半導体装置に印加され、アバランシェ降伏を起こし、半導体装置を破壊してしまうことがある。特に、炭化ケイ素半導体装置では、絶縁破壊強度が高いことから、絶縁膜にかかる電界強度が高くなる。このため、SiC−MOSFETにおいては、炭化ケイ素半導体装置がアバランシェ降伏を起こす前に、ゲート絶縁膜の絶縁破壊が起こり、半導体装置を破壊してしまうことがある。
【0003】
この点、ゲート絶縁膜にかかる電界を緩和するために、Pボディ間の間隔を狭くしたり、Pボディを深くしたりすることで、ゲート絶縁膜にかかる電界強度を緩和することが考えられる。
【0004】
また、アバランシェ降伏を起こした場合には、寄生バイポーラトランジスタ動作によって半導体装置が破壊されることがある。このような寄生バイポーラトランジスタ動作を防止するために、深いPボディを形成し、寄生バイポーラトランジスタ動作を抑制することが考えられる。
【0005】
なお、上述のように深いPボディを形成することは、例えば特許文献1、特許文献2等で開示されている。しかしながら、炭化ケイ素は不純物の拡散係数が小さいことから、不純物を拡散することによって深いPボディを形成することができない。また、イオン注入だけで深いPボディを形成することは困難である。このように深いPボディを形成することが困難であることから、炭化ケイ素半導体装置では、Pボディを深くすることでゲート絶縁膜にかかる電界強度を緩和することや、Pボディを深くすることで寄生バイポーラトランジスタ動作を抑制することが困難なものとなっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平11−330091号公報(例えば図1参照)
【特許文献2】特開昭63−128757号公報(例えば第2図参照)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、このような点を鑑みてなされたものであり、炭化ケイ素半導体装置において寄生バイポーラトランジスタ動作を抑制し、その結果、高いアバランシェ耐量を有する炭化ケイ素半導体装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明による炭化ケイ素半導体装置は、
第一導電型炭化ケイ素層と、
前記第一導電型炭化ケイ素層上に、水平方向で複数設けられた第二導電型炭化ケイ素層と、
前記第二導電型炭化ケイ素層内に形成された第一導電型のソース領域と、
隣り合った第二導電型炭化ケイ素層の間に位置する前記第一導電型炭化ケイ素層上に設けられた絶縁層と、
を備え、
前記絶縁層が、前記第二導電型炭化ケイ素層及び前記ソース領域上に位置する第一絶縁層と、前記第二導電型炭化ケイ素層上に位置し、前記ソース領域上には位置しない第二絶縁層と、を有し、
前記第一絶縁層内にゲート電極が設けられ、
前記第二絶縁層内にはゲート電極が設けられておらず、
水平方向において、前記第一絶縁層の隣に前記第二絶縁層が配置され、
前記第二絶縁層の下方に位置する第二導電型炭化ケイ素層の間の第二距離Lが、前記第一絶縁層の下方に位置する第二導電型炭化ケイ素層の間の第一距離Lよりも長くなっている。
【0009】
本発明による炭化ケイ素半導体装置では、
水平方向において、前記第一絶縁層と前記第二絶縁層とが交互に配置されてもよい。
【0010】
本発明による炭化ケイ素半導体装置では、
水平方向において、ある第一絶縁層の隣に前記第二絶縁層が配置され、当該第二絶縁層の隣に別の第一絶縁層が配置されるという周期で、前記第一絶縁層と前記第二絶縁層とが配置されてもよい。
【0011】
本発明による炭化ケイ素半導体装置において、
前記第一絶縁層の厚みから前記ゲート電極の厚みを差し引いた厚みと前記第二絶縁層の厚みは同じ厚さとなってもよい。
【0012】
本発明による炭化ケイ素半導体装置において、
前記絶縁層が複数設けられ、
隣り合った前記絶縁層の間の水平方向の距離の各々が等しくなってもよい。
【0013】
本発明による炭化ケイ素半導体装置において、
前記第一絶縁層及び前記第二絶縁層が複数設けられ、
隣り合った前記第一絶縁層と前記第二絶縁層との間の水平方向の距離の各々が等しくなってもよい。
【0014】
本発明による炭化ケイ素半導体装置において、
前記第二距離Lは、前記第一距離Lの1.25倍以上2倍以下となってもよい。
【0015】
本発明による炭化ケイ素半導体装置において、
前記第二導電型炭化ケイ素層のうち前記ソース電極と接触する部分は、前記第二導電型炭化ケイ素層のうち前記ソース電極と接触しない部分と比較して不純物の濃度が高くなってもよい。
【0016】
本発明による炭化ケイ素半導体装置において、
前記第一導電型のソース領域における不純物の濃度は、前記第一導電型炭化ケイ素層における不純物の濃度よりも高くなってもよい。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、内部にゲート電極が設けられていない第二絶縁層の下方に位置する第二導電型炭化ケイ素層の間の第二距離Lが、内部にゲート電極が設けられている第一絶縁層の下方に位置する第二導電型炭化ケイ素層の間の第一距離Lよりも長くなっている。また、水平方向において、第一絶縁層の隣に第二絶縁層が配置されている。このため、炭化ケイ素半導体装置に大きな電圧が加わったときに、内部にゲート電極が設けられた第一絶縁層ではなく内部にゲート電極が設けられていない第二絶縁層に電界を集中させることができる。このため、ゲート電極の下方に位置するゲート絶縁膜にかかる電界強度を緩和することができ、大きなアバランシェ耐量を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1図1は、本発明の第1の実施の形態による炭化ケイ素半導体装置の断面図である。
図2図2(a)−(c)は、本発明の第1の実施の形態による炭化ケイ素半導体装置を製造する工程を示した断面図である。
図3図3(a)−(c)は、本発明の第1の実施の形態による炭化ケイ素半導体装置を製造する工程を示した断面図であって、図2(c)以降の工程を示した断面図である。
図4図4は、本発明の第1の実施の形態による炭化ケイ素半導体装置の上方平面図である。
図5図5は、本発明の第2の実施の形態による炭化ケイ素半導体装置の断面図である。
図6図6は、本発明の第2の実施の形態による炭化ケイ素半導体装置の上方平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
第1の実施の形態
《構成》
以下、本発明に係る炭化ケイ素半導体装置の第1の実施の形態について、図面を参照して説明する。
【0020】
本実施の形態の炭化ケイ素半導体装置は、例えばプレーナゲート型の縦型MOSFETである。以下では、炭化ケイ素半導体装置としてこのプレーナゲート型の縦型MOSFETを用いて説明するが、これはあくまでも半導体装置の一例に過ぎず、絶縁ゲートバイポーラトランジスタ(IGBT)等のMOSゲートを有する他のデバイス構造にも適用することができることには留意が必要である。
【0021】
図1に示すように、本実施の形態の炭化ケイ素半導体装置は、高濃度のn型の炭化ケイ素半導体基板11(第一導電型炭化ケイ素基板)と、高濃度のn型の炭化ケイ素半導体基板11上に形成された低濃度のn型の炭化ケイ素層12(特許請求の範囲の「第一導電型炭化ケイ素層」に対応する。)と、低濃度のn型の炭化ケイ素層12上に、水平方向で複数設けられ、Pボディを構成する低濃度のp型の炭化ケイ素領域13と、を備えている。
【0022】
また、本実施の形態の炭化ケイ素半導体装置は、低濃度のp型の炭化ケイ素領域13内に形成された高濃度のn型のソース領域17(特許請求の範囲の「第一導電型のソース領域」に対応する。)と、低濃度のp型の炭化ケイ素領域13内に形成された高濃度のp型の炭化ケイ素領域18も備えている。また、本実施の形態の炭化ケイ素半導体装置は、隣り合ったp型の炭化ケイ素領域13,18の間に位置するn型の炭化ケイ素層12上に設けられた絶縁層21,22を備えている。なお、本実施の形態の低濃度のp型の炭化ケイ素領域13及び高濃度のp型の炭化ケイ素領域18が、特許請求の範囲の「第二導電型炭化ケイ素層」に対応している。
【0023】
上述の絶縁層21,22は、低濃度のp型の炭化ケイ素領域13及びn型のソース領域17上に位置する複数の第一絶縁層21と、高濃度のp型の炭化ケイ素領域18上に位置し、ソース領域上には位置しない複数の第二絶縁層22と、を有している。つまり、第一絶縁層21は隣り合った低濃度のp型の炭化ケイ素領域13の間に位置するn型の炭化ケイ素層12上に設けられ、他方、第二絶縁層22は隣り合った高濃度のp型の炭化ケイ素領域18の間に位置するn型の炭化ケイ素層12上に設けられている。
【0024】
第一絶縁層21内には例えばポリシリコン等からなるゲート電極31が設けられているが、第二絶縁層22内にはゲート電極31が設けられていない。また、水平方向(図1の左右方向)において、第一絶縁層21が第二絶縁層22の隣に配置されており、本実施の形態では、その一例として、第二絶縁層22が第一絶縁層21の両隣に配置されており、第一絶縁層21と第二絶縁層22とが交互に配置されている。また、本実施の形態では、隣り合った第一絶縁層21と第二絶縁層22との間の水平方向の距離の各々が等しくなっている。
【0025】
ところで、本願において、第一絶縁層21の隣に第二絶縁層22が配置されるとは、第一絶縁層21の一側方又は両側方に第一絶縁層21ではなく第二絶縁層22が配置されることを意味する。第一絶縁層21の一側方に第二絶縁層22が配置されている態様においては、第一絶縁層21の一側方には第二絶縁層22が配置されるが、第一絶縁層21の他側方には第一絶縁層21が配置されることとなる(後述する第2の実施の形態参照)。他方、第一絶縁層21の両側方に第二絶縁層22が配置されている態様においては、例えば本実施の形態のように、第一絶縁層21と第二絶縁層22とが交互に配置されることとなる。
【0026】
また、絶縁層21,22、高濃度のn型のソース領域17及び高濃度のp型の炭化ケイ素領域18上にはソース電極32が設けられている。また、高濃度のn型の炭化ケイ素半導体基板11の裏面にはドレイン電極36が設けられている。
【0027】
また、第二絶縁層22の下方に位置する隣り合ったp型の炭化ケイ素領域18の間の第二距離Lは、第一絶縁層21の下方に位置する隣り合ったp型の炭化ケイ素領域13の間の第一距離Lよりも長くなっており、L>Lとなっている。
【0028】
本実施の形態では、第一絶縁層21の厚みからゲート電極31の厚みを差し引いた厚みと第二絶縁層22の厚みは同じ厚さとなっている。なお、本実施の形態に関する図1乃至図3(a)−(c)及び第2の実施の形態に関する図5では、第一絶縁層21の厚みと第二絶縁層22の厚みが同じ厚みとなっているようにして示されているが、これは、これらの図面が構成の概略を示しているに過ぎないためである。実際には、第一絶縁層21の厚みからゲート電極31の厚みを差し引いた厚みと第二絶縁層22の厚みは同じ厚さとなっている。また、本実施の形態では、第一絶縁層21の幅と第二絶縁層22の幅は同じ長さとなっている。
【0029】
ところで、第二絶縁層22の下方に位置する隣り合ったp型の炭化ケイ素領域18の間の第二距離Lは、第一絶縁層21の下方に位置する隣り合ったp型の炭化ケイ素領域13の間の第一距離Lの例えば1.25倍以上2倍以下となっていることが好ましい。
【0030】
本実施の形態では、p型の炭化ケイ素領域13,18のうちソース電極32と接触する部分は、p型の炭化ケイ素領域13,18のうちソース電極32と接触しない部分と比較して不純物の濃度が高くなっている。つまり、p型の炭化ケイ素領域13,18のうちソース電極32と接触する部分は高濃度のp型の炭化ケイ素領域18となり、p型の炭化ケイ素領域13,18のうちソース電極32と接触しない部分は低濃度のp型の炭化ケイ素領域13となっている。また、n型のソース領域17における不純物の濃度は、n型の炭化ケイ素層12における不純物の濃度よりも高くなっている。
【0031】
図4は、本実施の形態による炭化ケイ素半導体装置の第一絶縁層21及び第二絶縁層22を上方から見た上方平面図である。この図4に示すように、本実施の形態では、第一絶縁層21及び第二絶縁層22はストライプ形状となっている。
《製造工程》
【0032】
次に、上述した構成からなる本実施の形態の炭化ケイ素半導体装置の製造工程の一例について、主に図2(a)−(c)及び図3(a)−(c)を用いて説明する。
【0033】
まず、高濃度のn型の炭化ケイ素半導体基板11を準備する(図2(a)参照)。
【0034】
次に、高濃度のn型の炭化ケイ素半導体基板11上に、エピタキシャル成長によって低濃度のn型の炭化ケイ素層12を形成する(図2(a)参照)。
【0035】
次に、例えば酸化膜等からなるマスクが低濃度のn型の炭化ケイ素層12の表面一面に積層される。次に、このマスクの所定の箇所に開口が設けられ、この開口を介してP型不純物イオンを注入することによって低濃度のp型の炭化ケイ素領域13が形成される(図2(b)参照)。なお、この低濃度のp型の炭化ケイ素領域13はストライプ形状で形成されており(図4参照)、後ほど形成される第二絶縁層22の下方に位置することとなるp型の炭化ケイ素領域13の間の第二距離Lは、後ほど形成される第一絶縁層21の下方に位置することとなるp型の炭化ケイ素領域13の間の第一距離Lよりも長くなっている。このように低濃度のp型の炭化ケイ素領域13が形成されると、その後でマスクが除去される。
【0036】
次に、例えば酸化膜等からなるマスクが低濃度のn型の炭化ケイ素層12及び低濃度のp型の炭化ケイ素領域13の表面一面に積層される。次に、このマスクの所定の箇所に開口が設けられ、この開口を介してp型の不純物イオンを注入することによって高濃度のp型の炭化ケイ素領域18が形成される(図2(c)参照)。なお、この高濃度のp型の炭化ケイ素領域18は、第二絶縁層22の下方に位置することとなるp型の炭化ケイ素領域13に形成され、隣り合った高濃度のp型の炭化ケイ素領域18の間の距離が第二距離Lとなる。このように高濃度のp型の炭化ケイ素領域18が形成されると、その後でマスクが除去される。
【0037】
次に、例えば酸化膜等からなるマスクが低濃度のn型の炭化ケイ素層12、高濃度のp型の炭化ケイ素領域18及び低濃度のp型の炭化ケイ素領域13の表面一面に積層される。次に、このマスクの所定の箇所に開口が設けられ、この開口を介してn型の不純物イオンを注入することによって高濃度のn型のソース領域17が形成される(図2(c)参照)。なお、この高濃度のn型のソース領域17は高濃度のp型の炭化ケイ素領域18に隣接するように形成される。このように高濃度のn型のソース領域17が形成されると、その後でマスクが除去される。
【0038】
次に、例えばアルゴン等の不活性ガスの雰囲気内で活性化アニールが行われる。
【0039】
次に、図2(c)に示された低濃度のn型の炭化ケイ素層12、高濃度のn型の炭化ケイ素層17及び高濃度のp型の炭化ケイ素領域18の表面一面に酸化膜29が積層される。
【0040】
次に、ポリシリコンを酸化膜29の表面に積層し、その後で、パターニングして、ゲート電極31となる箇所のポリシリコンのみを残す(図3(a)参照)。
【0041】
次に、酸化膜29及びゲート電極31の表面一面に酸化膜を積層し、その後で、パターニングして第一絶縁層21及び第二絶縁層22が配置される箇所の酸化膜のみを残す(図3(b)参照)。このことによって、第一絶縁層21及び第二絶縁層22が形成される。
【0042】
次に、第一絶縁層21、第二絶縁層22、高濃度のn型の炭化ケイ素層17及び高濃度のp型の炭化ケイ素領域18の表面一面に、ソース電極32を積層し、高濃度のn型の炭化ケイ素半導体基板11の裏面にドレイン電極36を設ける(図3(c)参照)。以上のようにして炭化ケイ素半導体装置が製造される。
【0043】
《効果》
次に、上述した構成からなる本実施の形態によって達成される効果であって、まだ述べていない効果又はとりわけ重要な効果について説明する。
【0044】
理解を助けるために、以下では、電気力線を電流に用いられる用語を用いて説明する。電圧をかけて電気力線がドレイン電極36側(図1の下側)から流入した場合には、当該電気力線はp型の炭化ケイ素領域13,18に向かって流れる。そして、p型の炭化ケイ素領域13,18が設けられていない箇所の下方から流入した電気力線は、p型の炭化ケイ素領域13,18の下方側の角又はp型の炭化ケイ素領域13,18の側方からp型の炭化ケイ素領域13,18内に流入される。一般には、炭化ケイ素においては横方向(図1の横方向)に流れる電気力線に対して絶縁破壊が起きやすくなっている。この点、本実施の形態では、第二絶縁層22の下方に位置するp型の炭化ケイ素領域18の間の第二距離Lは、第一絶縁層21の下方に位置するp型の炭化ケイ素領域13の間の第一距離Lよりも長くなっていることから、第二絶縁層22の下方に位置するp型の炭化ケイ素領域18の間の下方から流入される電気力線の本数は、第一絶縁層21の下方に位置するp型の炭化ケイ素領域13の間の下方から流入される電気力線の本数よりも多くなる。以上述べたことから、本実施の形態の態様では、第二絶縁層22の下方に位置するp型の炭化ケイ素領域18の間の下方から流入される電気力線によって絶縁破壊が最も発生しやすくなる。
【0045】
このため、本実施の形態によれば、ゲート電極31の下方のゲート絶縁膜21aの電界が高くなる前に、第二絶縁層22の下方に位置する高濃度のp型の炭化ケイ素領域18でアバランシェ降伏を起こさせることができ、アバランシェ電流をn型のソース領域17の下方を通らずにソース電極32に流れ込ませることができる。このため、アバランシェ電流による低濃度のp型の炭化ケイ素領域13での電圧降下が小さくなり、寄生バイポーラトランジスタの動作が抑制され、アバランシェ破壊耐量を向上させることができる。このように、本実施の形態によれば、ゲート電極31の下方のゲート絶縁膜21aにかかる電界強度を緩和することができ、アバランシェ破壊耐量を向上させることができる。なお、本実施の形態によれば、従来技術のようにp型の炭化ケイ素領域の間隔を狭くしたりp型の炭化ケイ素領域を深くしたりする、必要がない。
【0046】
また、本実施の形態では、水平方向において、第一絶縁層21の隣に第二絶縁層22が配置されている。このため、第一絶縁層21の下方に位置するp型の炭化ケイ素領域13ではなく第二絶縁層22の下方に位置するp型の炭化ケイ素領域18に電界を集中させることができる。特に本実施の形態では、水平方向において、第一絶縁層21と第二絶縁層22とが交互に配置されており、第一絶縁層21の両隣には必ず第二絶縁層22が配置されることとなる。このため、炭化ケイ素半導体装置に大きな電圧が加わった際に、ゲート電極31が含まれる第一絶縁層21ではなくゲート電極31が含まれない第二絶縁層22に電界をより確実に集中させることができる。したがって、ゲート絶縁膜21aにかかる電界強度をより確実に緩和することができ、アバランシェ破壊耐量をより確実に向上させることができる。
【0047】
また、本実施の形態によれば、既に述べたように従来技術のようにp型の炭化ケイ素領域を深くする必要がないので、ゲート絶縁膜21aの下方に形成されるJFET構造(ジャンクションFET構造)によるオン抵抗の増加を抑制することができ、オン抵抗を小さくすることができる。
【0048】
また、このようにp型の炭化ケイ素領域を深くする必要がないので、p型不純物イオンを打ち込むために大きなエネルギーを必要としない。このため、本実施の形態によれば、結晶欠陥領域を少なくすることができ、リーク電流の増大を抑えることができる。
【0049】
ちなみに、第二距離Lは第一距離Lの1.25倍以上2倍以下となっていることが好ましい。仮に第一距離Lが2μmであるとすると、第二距離Lは2.5μm〜4.0μmとなっていることが好ましい。第二距離Lの長さと第一距離Lの長さがあまりに近い長さとなっていると、ゲート電極31が含まれる第一絶縁層21ではなくゲート電極31が含まれない第二絶縁層22に電界を集中させるという効果を得にくいことから第二距離Lは第一距離Lの1.25倍以上であることが好ましい。他方、第二距離Lの長さを長くすると必然的に第二絶縁層22の幅を長くする必要がある。この点、第二絶縁層22にはゲート電極31が設けられないことから、電流を流すうえでは無駄な領域となる。したがって、第二絶縁層22が占める領域の大きさは極力抑える方がよく、第二距離Lは第一距離Lの2倍以下であることが好ましい。
【0050】
また、本実施の形態では、第一絶縁層21の厚みからゲート電極31の厚みを差し引いた厚みと第二絶縁層22の厚みは同じ厚さとなっている。これは、上述したように、第一絶縁層21と第二絶縁層22を同様の手法によって形成した結果である。このように第一絶縁層21と第二絶縁層22を同様の手法によって形成することによって、製造方法を簡便にすることができる。
【0051】
また、本実施の形態では、隣り合った第一絶縁層21と第二絶縁層22との間の水平方向の距離の各々が等しくなっている。このため、炭化ケイ素半導体装置に大きな電圧が加わっても、発生した電界を均等に各第二絶縁層22に集中させることができる。このため、ムラ無く確実に、ゲート絶縁膜21aにかかる電界強度を緩和することができる。
【0052】
また、本実施の形態では、ソース電極32と接触する部分は高濃度のp型の炭化ケイ素領域18となっている。このため、この高濃度のp型の炭化ケイ素領域18において、ソース電極32とのオーミック接触を十分に取ることができる。また、n型のソース領域17における不純物の濃度が高くなっていることから、n型のソース領域17においても、ソース電極32とのオーミック接触を十分に取ることができる。
【0053】
第2の実施の形態
次に、主に図5及び図6を用いて、本発明の第2の実施の形態について説明する。
【0054】
第1の実施の形態では、水平方向において、第一絶縁層21の隣に第二絶縁層22が配置されていることの一例として、第一絶縁層21と第二絶縁層22とが交互に配置される態様を用いて説明したが、第2の実施の形態では、図5及び図6に示すように、水平方向において、ある第一絶縁層21の隣に第二絶縁層22が配置され、当該第二絶縁層22の隣に別の第一絶縁層21が配置されるという周期で、第一絶縁層21と第二絶縁層22とが配置される態様を用いて説明する。
【0055】
第2の実施の形態において、その他の構成は、第1の実施の形態と略同一の態様となっている。第2の実施の形態において、第1の実施の形態と同一部分には同一符号を付して詳細な説明は省略する。
【0056】
本実施の形態でも、第1の実施の形態と同様の効果を奏することができる。第1の実施の形態で詳細に説明したことから、本実施の形態における効果の説明は固有な部分に留める。
【0057】
本実施の形態では、水平方向において、ある第一絶縁層21(例えば図5及び図6の左から2つ目の第一絶縁層21)の隣に第二絶縁層22が配置され、当該第二絶縁層22の隣に別の第一絶縁層21(例えば図5及び図6の最も右に位置する第一絶縁層21)が配置されるという周期で、第一絶縁層21と第二絶縁層22とが配置される。つまり、以降、左から順番に、第一絶縁層21、第二絶縁層22、第一絶縁層21、第一絶縁層21、第二絶縁層22、第一絶縁層21、・・・と繰り返されることとなる。このため、各第一絶縁層21の隣には必ず一つの第二絶縁層22が配置されることとなる。この結果、炭化ケイ素半導体装置に大きな電圧が加わった際に、ゲート電極31が含まれる第一絶縁層21ではなくゲート電極31が含まれない第二絶縁層22に電界を集中させることができる。このため、各ゲート絶縁膜21aにかかる電界強度を緩和することができ、アバランシェ破壊耐量を向上させることを期待することができる。
【0058】
また、本実施の形態によれば第二絶縁層22の数を減らすことができる。上述したように、第二絶縁層22にはゲート電極31が設けられないことから、電流を流すうえでは無駄な領域となる。この点、本実施の形態によれば、第二絶縁層22の占める領域を小さくすることができるので、電流を流すうえで無駄な領域を減らすことができる。
【0059】
最後になったが、上述した各実施の形態の記載及び図面の開示は、特許請求の範囲に記載された発明を説明するための一例に過ぎず、上述した実施の形態の記載又は図面の開示によって特許請求の範囲に記載された発明が限定されることはない。
【符号の説明】
【0060】
11 炭化ケイ素半導体基板(第一導電型炭化ケイ素基板)
12 n型の炭化ケイ素層(第一導電型炭化ケイ素層)
13 p型の炭化ケイ素領域(第二導電型炭化ケイ素層)
17 n型のソース領域(第一導電型のソース領域)
18 高濃度のp型の炭化ケイ素領域(第二導電型炭化ケイ素層)
21 第一絶縁層
21a ゲート絶縁膜
22 第二絶縁層
31 ゲート電極
32 ソース電極
36 ドレイン電極
【要約】
第一導電型炭化ケイ素層12と、第一導電型炭化ケイ素層12上に、水平方向で複数設けられた第二導電型炭化ケイ素層13と、第二導電型炭化ケイ素層13内に形成された第一導電型のソース領域17と、を備えている。第二導電型炭化ケイ素層13及びソース領域17上には、第一絶縁層21が設けられ、第二導電型炭化ケイ素層13上であってソース領域17上には位置しない箇所には、第二絶縁層22が設けられている。第一絶縁層21内にゲート電極31が設けられ、第二絶縁層22内にはゲート電極31が設けられていない。水平方向において、第一絶縁層21の隣に第二絶縁層22が配置されている。第二絶縁層22の下方に位置する第二導電型炭化ケイ素層の間の第二距離Lは、第一絶縁層21の下方に位置する第二導電型炭化ケイ素層の間の第一距離Lよりも長くなっている。
図1
図2
図3
図4
図5
図6