【実施例】
【0017】
図1は、本発明の実施例の概念を示す図である。
【0018】
図1において、本発明の実施例である酸素分圧制御処理装置100は箱状体1を備え、箱状体は内部に、後述するように熱処理部としての管状型赤外線熱処理炉、例えば冷却気体の導入可能な赤外線急速急冷熱処理炉(以下、赤外線急速急冷熱処理炉を例にとって説明する。)によって構成可能な赤外線熱処理部、酸素分圧制御部、管状型赤外線急速急冷熱処理炉の温度を計測する熱処理部温度センサとしての赤外線急速急冷熱処理炉部温度センサ、管状型赤外線急速急冷熱処理部の温度をコントロールする温度コントローラ、酸素分圧制御された雰囲気ガスの供給ライン、実験に用いられた雰囲気ガスの排出ライン、酸素分圧制御部や制御信号を付与する酸素分圧コントローラ及び酸素分圧センサを一体的に備える。また、箱状体の内部には、運転操作コントローラが温度コントローラ及び酸素分圧コントローラと関連づけて設けられる。運転操作コントローラは、後述するように画面表示手段5を有して、画面表示手段の一部である画面部が箱状体1の表面に設置される。この画面部は、
図1に示すようにGUIを用いたタッチパネルとすることができる。なお、赤外線急速急冷熱処理炉は、縦型としてもよいし、加熱冷却の二室型としてもよい。昇温スピードとしては、1000°まで約12秒、冷却スピードはガス中100°まで約12秒のような能力のある赤外線加熱冷却炉が採用することができる。
【0019】
酸素分圧制御装置100は、ネットワーク3を介して多数のパソコン(PC)2に接続可能であり、“温度”及び“酸素濃度”の制御を画面表示手段5からばかりでなく、各パソコンからも制御可能とされる。また、パソコン2からのUSB4を用いて同様に“温度”及び“酸素濃度”の制御を行うことが可能である。このような制御を可能とするプログラムパターン運転のためのソフトが酸素分圧制御装置100に組み込まれている。
【0020】
図2は、箱状体1に、管状型赤外線急速急冷熱処理炉部11及び酸素分圧制御部12が組み込まれた状態を示す。
図2には、管状型赤外線急速急冷熱処理炉部温度センサ、温度コントローラ、雰囲気ガスの供給ライン、排出ライン、酸素分圧コントローラ及び酸素分圧センサが図示されていないが、これらの装置についても一体的に組み込まれている。なお、
図2において、箱状体1内に組み込まれる各装置は点線で示されるべきであるが、明瞭に表示するために実線で描いてある。
図2に図示されるように、
図2に示す例によれば、管状型赤外線急速急冷熱処理炉部11と酸素分圧制御部12は箱内で近接配置される。これに伴って、各センサも箱内に一体に配置され、正確な制御のための信号が得られる。
【0021】
管状型赤外線急速急冷熱処理炉部11は、水平方向に配置される横長の形状であって、試料をクリーンな雰囲気中で急速加熱できる熱処理炉13とこの熱処理炉13の加熱を行う赤外ランプで形成された赤外線部14を備える。熱処理炉13の内部の空間部に試料が挿入可能とされる。熱処理炉13には冷却気体を導入するための冷却気体導入管36及び使用済の冷却気体を排出する冷却気体排出管37が接続される。これらの配管には弁(図示せず)が設けられ、冷却気体導入管36には冷却気体導入制御装置(図示せず)が取り付けられる。冷却気体は、冷却気体導入管36から熱処理炉13に導入される、導入された冷却気体は、熱処理炉13内を流れて試料ホルダー15上の試料を冷却し、冷却気体排出管37から外部に排出される。冷却気体には、例えば熱伝導性のよいヘリウムガスなどが使用され、冷却気体は、冷却気体導入制御装置により流量制御される。このようにして、冷却気体冷却手段が構成される。
【0022】
熱処理炉13の温度をコントロールする温度コントローラ34は、これに予めプログラムされた昇温速度、冷却速度或いは恒温状態に試料ホルダー15上の試料の温度を制御する。また、温度コントローラ34は、熱処理部温度センサ(熱電対35)で試料温度を検出しながら赤外線ランプで形成された赤外線部14への投入電力をPID制御し、また冷却温度のコントロールを行う。
【0023】
酸素分圧制御部12は、熱処理炉13の下方に配設される。酸素分圧制御部12は、特許文献1その他の文献に記載してあるように、中空のセラミック製(SiOC)固体電解質体と、内側電極及び外側電極とを有する酸素分子排出装置と、加熱装置と、電圧印加手段とを備えて、酸素分子排出装置の電極間に電圧を印加して中空を通過するガス、例えばアルゴンガス中の酸素分圧を制御するように構成される。酸素分子排出装置は、そのPID定数が酸素分圧の関数として定義され、酸素センサより酸素分圧の現在値がサンプリングされる都度、関数に応じた値に自動調整され、調整された後のPID定数に基づいて酸素分子の排出作動をPID制御する。
【0024】
箱状体1は、一体型制御部16を内蔵する。一体型制御部16は、
図1に示す画面表示手段5を含み、更に
図3に示す運転操作コントローラ35、温度コントローラ34及び酸素分圧コントローラ33を含む。
【0025】
前述したように、画面表示手段5は、画面部17を含み、運転操作情報(データ)は、画面部17のタッチパネルから容易に一元設定がなされる。このように、タッチパネルを用いて運転条件の設定及び状態表示を行う。
【0026】
図3は、酸素分圧制御装置100の酸素分圧制御方法及び手段を示す。
図3において、管状型赤外線急速急冷熱処理炉部11の熱処理炉13は酸素分圧制御部12(
図13ではSiOCで表示)に連結ライン21で連結される。
【0027】
酸素分圧制御部12の入口側、すなわち上流側には雰囲気ガス(例えばアルゴンガス)の供給ライン22が連結され、この供給ライン22には止め弁23が設けてある。供給ライン22は3つのラインに分岐してあり、それぞれの分岐ラインには止め弁24及び流量調節器25が設けてあり、それぞれの分岐ラインには雰囲気ガス1、雰囲気ガス2あるいは雰囲気ガス3が供給される。
【0028】
熱処理炉13の出口側、すなわち下流側には実験に供された雰囲気ガスの排気ライン26が接続され、この排気ライン26には、止め弁27が設けてある。
【0029】
上述したように、固体電解質は管形に形成され、内外面に電極が形成され、電圧が印加される。管の一端から市販のアルゴンガスが供給されると、不純物として含まれる酸素は内面電極上で電子を得て酸素イオンとなる。酸素イオンは管壁を通過して外面電極へ到達し、電子を放出して酸素に戻り、排出される。
【0030】
一方、アルゴンガスは固体電解質の管壁を通過することができないので、そのまま管を通過していく。この結果、管出口では酸素を除去したアルゴンガスが流出してくることになる。この手法によれば、アルゴンガス中の酸素分圧を10
−30atm以下まで低下させることができる。
【0031】
酸素分圧制御部12の出口側の連結ライン21には酸素分圧センサ31が、そして熱処理炉13の出口側の排気ライン26には他の酸素分圧センサ32が設けてある。これらの酸素分圧センサ31、32からの計測された酸素分圧信号は酸素コントローラ33及び運転操作コントローラ35に入力される。横型炉13及びコイル14には熱電対35が設けてあり、温度信号が温度コントローラ34に入力される。
【0032】
運転操作コントローラ35は、酸素分圧コントローラ33及び温度コントローラに接続される。
【0033】
雰囲気ガスを目標とする酸素分圧に制御するためには、酸素分圧制御部12に接続する管状型赤外線急速急冷熱処理炉部11の上流側の前段酸素分圧センサ31、または下流側の後段の酸素分圧センサ(下流側酸素分圧センサ)32にて酸素濃度を測定、モニターし、酸素ポンプにフィードバックするが、管状型赤外線急速急冷熱処理炉部11の形状、大きさ、温度などに影響された後段の酸素分圧センサ32の酸素分圧側定値による制御を行う。この後段の酸素分圧センサ32の使用が上述した構成の一体化によって可能となり、高いニーズに対応したものとなり、酸素分圧と温度との一元化制御を可能とする。更には、急速クエンチ制御をも可能にする。
【0034】
管状型赤外線急速急冷熱処理炉部11において、試料の加熱冷却処理は、試料ホルダー15を熱処理炉13内中央部に位置させ、酸素分圧制御部12によって制御された雰囲気中でなされる。所定の急加熱処理が終了した後、切り換えて急冷却処理を行う。これによって熱処理炉13内での急加熱処理から急速クエンチまでの工程を箱状体1内で、全く大気にさらすことなく、制御された酸素分圧雰囲気中で連続して行うことができる。
【0035】
運転操作コントローラ40は、入力手段41、演算処理手段42、出力手段43、記録手段44及び画面表示手段45を備える。画面表示手段45は、
図1の画面表示手段5に対応し、画面部を17(
図2参照)備える。
【0036】
運転操作コントローラ40は、箱状体1内で熱処理炉13に近接配置された下流側酸素分圧センサ32から送信された測定酸素分圧信号、熱処理部温度センサ、すなわち熱電対35から送信された測定温度信号及び入力手段41に入力された運転操作制御情報に基づいて画面部に熱処理部温度コントロール線図及び酸素分圧コントロール線図を表示させる。
【0037】
上述の例では、赤外線急速急冷熱処理炉を用いているが、これに代えて箱状型電気炉及び急速クランチ装置を設けて急速加熱、急速冷却を別個に行うようにしてもよい。
【0038】
図4は、画面部17に熱処理部温度コントロール線
図46及び酸素分圧コントロール線
図47を表示した状態を示す。
【0039】
図4に示すように、熱処理部温度コントロール線
図46及び酸素分圧コントロール線
図47が時間軸を共通にして表示される。各線図を個別に表示させることもできる。これらの表示は、運転条件の設定及び状態表示の双方についてそれぞれ行うことができる。運転操条件を設定した場合には、表示させたこれらの線図を基にして、温度コントローラ34に温度制御信号48を、そして酸素分圧コントローラに酸素分圧制御信号49を送信し、温度コントローラ34及び酸素分圧コントローラ33を介してそれぞれ管状型電気炉部11、酸素分圧制御部12の制御を行う。このようしにて、“温度”及び“酸素濃度”の一元的制御がなされることになる。
また、運転コントローラ35は、画面部17に制御状態を示す熱処理温度線図及び酸素分圧線図を、時間軸を共通にして表示する。これらの線図を個別に表示させることができる。
【0040】
以上のように構成された酸素分圧制御装置100は、
図1に示すように、ネットワーク3を介して各地のパソコン2に接続され、パソコン2に運転操作コントローラ40の機能を持たせることによって、パソコン2の画面(図面部17に対応)から酸素分圧制御装置100に運転条件を入力し、温度コントローラ34及び酸素分圧コントローラ33を制御することができる。また、制御状態を同画面に表示することができる。USBを使用した時も同様である。