特許第5784888号(P5784888)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5784888
(24)【登録日】2015年7月31日
(45)【発行日】2015年9月24日
(54)【発明の名称】BiTe系熱電材料の製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01L 35/34 20060101AFI20150907BHJP
   H01L 35/16 20060101ALI20150907BHJP
【FI】
   H01L35/34
   H01L35/16
【請求項の数】1
【全頁数】5
(21)【出願番号】特願2010-202122(P2010-202122)
(22)【出願日】2010年9月9日
(65)【公開番号】特開2012-59947(P2012-59947A)
(43)【公開日】2012年3月22日
【審査請求日】2013年7月4日
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】501402730
【氏名又は名称】株式会社アドマテックス
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100077517
【弁理士】
【氏名又は名称】石田 敬
(74)【代理人】
【識別番号】100087413
【弁理士】
【氏名又は名称】古賀 哲次
(74)【代理人】
【識別番号】100123593
【弁理士】
【氏名又は名称】関根 宣夫
(74)【代理人】
【識別番号】100144417
【弁理士】
【氏名又は名称】堂垣 泰雄
(72)【発明者】
【氏名】村井 盾哉
(72)【発明者】
【氏名】木太 拓志
(72)【発明者】
【氏名】大川内 義徳
【審査官】 安田 雅彦
(56)【参考文献】
【文献】 特開2010−046625(JP,A)
【文献】 特開2010−093024(JP,A)
【文献】 特開2002−232025(JP,A)
【文献】 特表2009−518167(JP,A)
【文献】 特表2007−514529(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 35/16−18
H01L 35/34
B01J 19/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
テルル化ビスマス系熱電材料の製造方法であって、メタノール、エタノール、1−プロパノール、イソプロパノール、1−ブタノール、2−ブタノール、酢酸エチル、アセトン及びアセトニトリルからなる群より選ばれる、330℃以上で超臨界流体となり得る溶媒中で、330℃以上、テルルの融点未満の温度においてビスマスとテルルを合金化させ、熱電材料を製造することを含む方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、テルル化ビスマス系(BiTe系)熱電材料の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
熱電材料は、2つの基本的な熱電効果であるゼーベック(Seebeck)効果及びペルチェ(Peltier)効果に基づき、熱エネルギと電気エネルギとの直接変換を行なうエネルギ材料である。
【0003】
熱電材料を用いた熱電発電デバイスは、従来の発電技術に比べて、構造は簡単で、堅牢かつ耐久性が高く、可動部材は存在せず、マイクロ化が容易であり、メンテナンス不要で信頼性が高く、寿命が長く、騒音は発生せず、汚染も発生せず、低温の廃熱を利用可能であるといった多くの利点がある。
【0004】
熱電材料を用いた熱電冷却デバイスも、従来の圧縮冷却技術に比べて、フロン不要で汚染は発生せず、小型化は容易で、可動部材は存在せず、騒音も発生しないなどの利点がある。
【0005】
そのため、特に近年のエネルギ問題や環境問題の重大化に伴い、航空・宇宙、国防建設、地質及び気象観測、医療衛生、マイクロ電子などの領域や石油化工、冶金、電力工業における廃熱利用方面などの広範な用途への実用化が期待されている。
【0006】
このような熱電材料としては、
(1)Bi−Te系、Pb−Te系、Si−Ge系等の化合物半導体、
(2)NaxCoO2(0.3≦x≦0.8)、(ZnO)mIn23(1≦m≦19)、Ca3Co49等のCo系酸化物セラミックス、
(3)Zn−Sb系、Co−Sb系、Fe−Sb系等のスクッテルダイト化合物、
(4)ZrNiSn等のハーフホイスラー化合物、
(5)FeSi2、MnSixなどのケイ化物
(6)IV族元素で主に構成された籠状のクラスタ格子とその内部空間に原子が取り込まれた、Ba−Ga−Ge、Ba−Ga−Si、Ba−Ga−Sn等のクラスレート化合物、
等が知られている。
【0007】
このような熱電材料は、従来、構成元素をるつぼ中で溶融させる溶融法や、反応対象物を水媒体中において、亜臨界状態の高温高圧下で反応させる水熱法、等によって合成されてきた。
【0008】
例えば、特許文献1には、水酸化ナトリウム等のナトリウム媒体と、硝酸コバルト等のコバルト媒体を、水熱反応又は超臨界水反応に暴露することを特徴とする、結晶性ナトリウムコバルト酸化物の合成方法が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2003−192353号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
このような従来の熱電材料の合成方法において、溶融法の場合、溶融させているため、蒸気圧の高いTe、Sb、Seが蒸発し、組成ずれが発生することがある。また溶融時の撹拌状態によっては、不均一な組織となることがある。また水熱反応では、長時間を要するため、生産性が悪いという問題がある。さらに、長時間高温にさらすため、溶融法の場合と同様に、Te等が優先的に若干蒸発し、合金化完了までに組成ずれが発生する可能性がある。
【0011】
本発明は上記問題を解決し、短時間でビスマステルル系熱電材料を製造する方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記問題点を解決するために本発明によれば、330℃以上で超臨界流体となり得る溶媒中で、330℃以上、テルルの融点未満の温度においてビスマスとテルルを合金化させ、熱電材料を製造する。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】実施例において得られた材料の強度の測定結果を示すグラフである。
図2】実施例において得られた材料の積分強度比の測定結果を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明のテルル化ビスマス系熱電材料の製造方法は、330℃以上で超臨界流体となり得る溶媒中で、330℃以上、テルルの融点未満の温度においてビスマスとテルルを合金化させることを特徴とする。好ましくは、400℃以上の温度で合金化させる。要は、合金化反応を起こさせる温度において超臨界流体となっていることが必要である。
【0015】
ビスマスの融点は271℃であり、テルルの融点は452℃であるため、330℃以上で超臨界流体となり得る材料としては、メタノール、エタノール、1−プロパノール、イソプロパノール、1−ブタノール、2−ブタノール、酢酸エチル、アセトン、水、及びアセトニトリルを用いることができる。
【0016】
上記溶媒にビスマス粉末及びテルル粉末を加え、また必要に応じてアンチモンやセレンを加え、超臨界状態まで昇温させる。これらのビスマス粉末及びテルル粉末等は、例えば塩化物を還元して金属単体粒子として合金化反応させる。また好ましくは100nm以下、より好ましくは50nm以下の粒径を有するナノ粒子として加えることが好ましい。さらに、この昇温は1分以内で超臨界状態にすることが好ましい。
【0017】
この溶媒中において、330℃以上の超臨界状態の温度かつテルルの融点未満の温度では、ビスマスは溶融しており、超臨界流体に拡散していく。この溶液が超臨界流体中に拡散するよりも早く固体状態のテルルと合金化反応を行うことにより、均一な、組成ずれのない合金粒子を得ることができる。330℃よりも低い場合には、同じ超臨界状態であっても、合金化よりも融液の拡散の方が優勢となって、合金化が不十分となる。すなわち、超臨界流体中では、融液拡散と合金化反応の競争が起こっており、330℃より温度が低いと合金化が遅く、融液が流体中に拡散してしまい、一方、330℃以上の温度においては合金化が早く、拡散する前に合金となることができるのである。
【実施例】
【0018】
エタノール100mLに、塩化ビスマス(BiCl3)0.4g、塩化テルル(TeCl4)2.56g、塩化アンチモン(SbCl3)1.16g、及びシリカ(SiO2)0.29gを加え、このスラリーに還元剤(NaBH4)を2.4g含むエタノール100mLを加えた。こうして作製した原料粒子を含むエタノールスラリーを、水500mL+エタノール300mL溶液で濾過洗浄し、その後さらにエタノール300mLで濾過洗浄した。
【0019】
次いで、このスラリーをオートクレーブに入れ、密閉し、1分で昇温させ、以下の表に示す条件において、300〜420℃の超臨界場における拡散反応を起こさせ、合金化を行った。
【0020】
【表1】
【0021】
得られた粉末を、N2ガスフロー雰囲気下で乾燥させ、粉末を回収した。この粉末を360℃でSPS焼結を行い、ナノコンポジット材料バルク体を得た。
【0022】
得られた材料の強度及び積分強度比を測定し、結果を図1及び図2に示す。この結果から明らかなように、300℃ではTeが検出される。これは温度が低いため合金化反応が遅く、融点の低いBiが溶融し、合金化する前に超臨界流体中に拡散し、さらに合金化できなかったTeが残存するためであると考えられる。
図1
図2