特許第5784915号(P5784915)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5784915放射線検出器およびそれを備える放射線画像取得装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5784915
(24)【登録日】2015年7月31日
(45)【発行日】2015年9月24日
(54)【発明の名称】放射線検出器およびそれを備える放射線画像取得装置
(51)【国際特許分類】
   G01N 23/04 20060101AFI20150907BHJP
   G01N 23/087 20060101ALI20150907BHJP
   G01T 1/20 20060101ALI20150907BHJP
【FI】
   G01N23/04
   G01N23/087
   G01T1/20 L
   G01T1/20 G
   G01T1/20 C
【請求項の数】15
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2011-13191(P2011-13191)
(22)【出願日】2011年1月25日
(65)【公開番号】特開2012-154732(P2012-154732A)
(43)【公開日】2012年8月16日
【審査請求日】2014年1月24日
(73)【特許権者】
【識別番号】000236436
【氏名又は名称】浜松ホトニクス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100113435
【弁理士】
【氏名又は名称】黒木 義樹
(74)【代理人】
【識別番号】100124291
【弁理士】
【氏名又は名称】石田 悟
(74)【代理人】
【識別番号】100124800
【弁理士】
【氏名又は名称】諏澤 勇司
(72)【発明者】
【氏名】須山 敏康
(72)【発明者】
【氏名】杉山 元胤
【審査官】 比嘉 翔一
(56)【参考文献】
【文献】 特表2000−510729(JP,A)
【文献】 特開2005−127899(JP,A)
【文献】 特開平10−153662(JP,A)
【文献】 特開2010−253049(JP,A)
【文献】 特開2010−080636(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2010/0051820(US,A1)
【文献】 米国特許出願公開第2007/0045554(US,A1)
【文献】 特開平07−084056(JP,A)
【文献】 特開2010−056396(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 23/00−23/227
G01T 1/00− 7/12
A61B 6/00− 6/14
JSTPlus(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
対象物を透過した放射線の入射に応じてシンチレーション光を発生させる平面状の波長変換部材と、
前記波長変換部材を透過した前記放射線を直接検出する直接変換型の放射線検出素子と、
前記波長変換部材と前記放射線検出素子との間に配置され、前記シンチレーション光の前記放射線検出素子への入射を防止する遮蔽部材と、
を備えることを特徴とする放射線検出器。
【請求項2】
前記遮蔽部材は、前記シンチレーション光に対して遮光性を有する平面状部材である、
ことを特徴とする請求項1記載の放射線検出器。
【請求項3】
前記遮蔽部材は、前記シンチレーション光を反射する平面状反射部材である、
ことを特徴とする請求項1記載の放射線検出器。
【請求項4】
前記遮蔽部材は、前記放射線のうちの低エネルギー帯を遮断する、
ことを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の放射線検出器。
【請求項5】
放射線を出射する放射線源と、
前記放射線源から出射され、対象物を透過した前記放射線の入射に応じて、シンチレーション光を発生させる平面状の波長変換部材と、
前記波長変換部材の前記放射線の入射側の面から放射される前記シンチレーション光を撮像する撮像素子と、
前記波長変換部材を透過した前記放射線を直接検出する直接変換型の放射線検出素子と、
前記波長変換部材と前記放射線検出素子との間に配置され、前記シンチレーション光の前記放射線検出素子への入射を防止する遮蔽部材と、
を備えることを特徴とする放射線画像取得装置。
【請求項6】
前記遮蔽部材は、前記シンチレーション光に対して遮光性を有する平面状部材である、
ことを特徴とする請求項5記載の放射線画像取得装置。
【請求項7】
前記遮蔽部材は、前記シンチレーション光を反射する平面状反射部材である、
ことを特徴とする請求項5記載の放射線画像取得装置。
【請求項8】
前記遮蔽部材は、前記放射線のうちの低エネルギー帯を遮断する、
ことを特徴とする請求項5〜7のいずれか1項に記載の放射線画像取得装置。
【請求項9】
前記遮蔽部材及び前記波長変換部材は、前記放射線検出素子の検出面上にこの順で蒸着されている、
ことを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の放射線検出器。
【請求項10】
前記遮蔽部材及び前記波長変換部材は、前記放射線検出素子の検出面上にこの順で接着されている、
ことを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の放射線検出器。
【請求項11】
前記遮蔽部材及び前記波長変換部材は、前記放射線検出素子の検出面上にホルダ部材によって保持されている、
ことを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の放射線検出器。
【請求項12】
前記遮蔽部材及び前記波長変換部材は、前記放射線検出素子の検出面上に固定部材によって固定されている、
ことを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の放射線検出器。
【請求項13】
前記撮像素子は、前記放射線源からの放射線の出射領域から離れるように配置されている、
ことを特徴とする請求項5〜8のいずれか1項に記載の放射線画像取得装置。
【請求項14】
前記シンチレーション光を前記撮像素子に集光する撮像レンズを更に備える、ことを特徴とする請求項5〜8のいずれか1項に記載の放射線画像取得装置。
【請求項15】
前記対象物は、電子部品である、
ことを特徴とする請求項5〜8のいずれか1項に記載の放射線画像取得装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、放射線検出器およびそれを備える放射線画像取得装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、X線画像の検出技術に関しては、検出器に入射する放射線により生じた電荷を検出することにより、放射線を直接検出する方式である直接変換方式と、放射線をシンチレータ材料などの放射線変換部材を用いて光に変換してから検出器で検出する方式である間接変換方式が知られている。これらの2つの変換方式では放射線の検出エネルギー帯が制限される傾向にある。このような問題に対処するため、放射線を直接検出する放射線検出素子の検出面にシンチレータ材料からなる放射線変換膜を設けて、放射線変換膜を透過した放射線と、放射線変換膜によって変換されたシンチレーション光とを同時に放射線検出素子によって検出する構成が考案されている(下記特許文献1参照)。このような構成によれば、放射線の検出効率が向上し、S/Nが良好な画像データを取得することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2000−46951号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上述したような従来の構成では、広いエネルギー帯の放射線が同一の検出器で検出されるため、得られる画像データに画像ぼけが発生する傾向にある。これは、もともと比較的低エネルギー帯の放射線は、波長変換膜によりシンチレーション光に変換されやすく、放射線検出素子が放射線変換膜を広がりながら透過してきたシンチレーション光を検出することになるので、低エネルギー帯の放射線では、検出信号(S)が低下しやすい一方、高エネルギー帯では広がったシンチレーション光により検出信号に対するノイズが増加しやすくなり、広いエネルギー帯の放射線の検出信号のS/Nが低下してしまうためである。
【0005】
そこで、本発明は、かかる課題に鑑みて為されたものであり、広いエネルギー帯にわたってぼけの少ない放射線検出画像を取得することが可能な放射線検出器およびそれを備える放射線画像取得装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するため、本発明の放射線検出器は、対象物を透過した放射線の入射に応じてシンチレーション光を発生させる平面状の波長変換部材と、波長変換部材を透過した放射線を検出する放射線検出素子と、波長変換部材と放射線検出素子との間に配置され、シンチレーション光の放射線検出素子への入射を防止する遮蔽部材と、を備える。
【0007】
このような放射線検出器によれば、対象物を透過した放射線のうち比較的低エネルギー帯の放射線が、波長変換部材によってシンチレーション光に変換されて、波長変換部材の放射線の入射面側に配置された検出器によってそのシンチレーション光が検出されることにより、画像信号として検出可能にされる。それと同時に、対象物を透過した放射線のうち比較的高エネルギー帯の放射線は、波長変換部材及び遮蔽部材を透過して放射線検出素子によって直接画像信号として検出される。このとき、遮蔽部材によってシンチレーション光の放射線検出素子への入射が防止されるので、高エネルギー帯の画像信号におけるS/Nが向上するとともに、シンチレーション光は波長変換部材の入射面側で検出されるので、低エネルギー帯の画像信号における画像ぼけも防止することができる。その結果、広いエネルギー帯にわたって、放射線の検出信号のS/Nがよい画像を取得することができる。なお、「比較的低エネルギー帯の放射線」ならびに「比較的高エネルギー帯の放射線」とは、互いに分離したエネルギー帯をもつ放射線、もしくは、共通のエネルギー帯をもつ放射線を意味する。
【0008】
或いは、本発明の放射線画像取得装置は、放射線を出射する放射線源と、放射線源から出射され、対象物を透過した放射線の入射に応じて、シンチレーション光を発生させる平面状の波長変換部材と、波長変換部材の放射線の入射側の面から放射されるシンチレーション光を撮像する撮像素子と、波長変換部材を透過した放射線を検出する放射線検出素子と、波長変換部材と放射線検出素子との間に配置され、シンチレーション光の放射線検出素子への入射を防止する遮蔽部材と、を備える。
【0009】
このような放射線画像取得装置によれば、対象物を透過した放射線のうち比較的低エネルギー帯の放射線が、波長変換部材によってシンチレーション光に変換されて、波長変換部材の放射線の入射面側に配置された撮像素子によってそのシンチレーション光が検出されることにより、画像信号として検出可能にされる。それと同時に、対象物を透過した放射線のうち比較的高エネルギー帯の放射線は、波長変換部材及び遮蔽部材を透過して放射線検出素子によって直接画像信号として検出される。このとき、遮蔽部材によってシンチレーション光の放射線検出素子への入射が防止されるので、高エネルギー帯の画像信号におけるS/Nが向上するとともに、シンチレーション光は波長変換部材の入射面側で検出されるので、低エネルギー帯の画像信号における画像ぼけも防止することができる。その結果、撮像素子で撮像された低エネルギー帯の放射線画像と、放射線検出素子によって検出された高エネルギー帯の放射線画像とを別々に取得するので、取得された画像を加算することで広いエネルギー帯にわたって、放射線の検出信号のS/Nがよい画像を取得することができる。また、取得された画像を差分することで、良好なエネルギーサブトラクション画像を取得することができる。
【0010】
遮蔽部材は、シンチレーション光に対して遮光性を有する平面状部材である、ことが好適である。かかる遮蔽部材を備えれば、広いエネルギー帯にわたってS/Nを確実に向上させることができる。
【0011】
また、遮蔽部材は、シンチレーション光を反射する平面状反射部材である、ことも好適である。この場合、高エネルギー帯の画像信号におけるS/Nを向上させることができるとともに、低エネルギー帯の画像信号の検出効率を向上させることができる。
【0012】
さらに、遮蔽部材は、放射線のうちの低エネルギー帯を遮断する、ことも好適である。かかる構成を採れば、波長変換部材側から入射してきた低エネルギー帯の放射線が放射線検出素子に入射することを防止でき、高エネルギー帯の画像信号におけるS/Nをさらに向上させることができる。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、広いエネルギー帯にわたってぼけの少ない放射線検出画像を取得することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明の好適な一実施形態に係る放射線画像取得装置の正面図である。
図2図1の放射線検出器を拡大して示す正面図である。
図3図1の放射線検出器の組み上げ状態を示す正面図である。
図4図1の放射線検出器の組み上げ状態を示す正面図である。
図5】本発明の変形例である放射線検出器の正面図である。
図6】本発明の変形例である放射線画像取得装置の正面図である。
図7】本発明の変形例である放射線画像取得装置の正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、図面を参照しつつ本発明に係る放射線検出器およびそれを用いた放射線画像取得装置の好適な実施形態について詳細に説明する。なお、図面の説明においては同一又は相当部分には同一符号を付し、重複する説明を省略する。また、各図面は説明用のために作成されたものであり、説明の対象部位を特に強調するように描かれている。そのため、図面における各部材の寸法比率は、必ずしも実際のものとは一致しない。
【0016】
図1は、本発明の好適な一実施形態に係る放射線画像取得装置1の概略構成を示す正面図、図2は、図1の放射線検出器3を拡大して示す正面図、図3及び図4は、図1の放射線検出器3の組み上げ状態を示す正面図である。図1に示すように、放射線画像取得装置1は、半導体デバイス等の電子部品や食料品等の対象物Aに向けてX線等の放射線を出射する放射線源2と、放射線源2から出射されて対象物Aを透過した放射線を検出する放射線検出器3と、放射線検出器3によって変換された光を撮像する光検出器(撮像素子)4とを備えている。この放射線検出器3は、入射する放射線を直接検出して対象物Aの検出画像を示す画像信号を生成する直接変換方式の検出器であり、光検出器4は、入射する放射線を基に変換された光を検出して画像信号を生成するCMOSセンサ、CCDセンサ等の間接変換方式の検出器である。
【0017】
図1及び図2に示すように、放射線検出器3は、放射線源2から出射されて対象物Aを透過した放射線を直接検出する直接変換型検出器(放射線検出素子)5を備えている。この直接変換型検出器5としては、アモルファスセレン、CdTe、シリコン(Si)、又はGe等の半導体材料を主要材料とする半導体検出器が挙げられる。直接変換型検出器5は、対象物Aを透過して放射線源2側の平面状の放射線検出面5aから入射した放射線を内部で電荷に変換し、その電荷を検出することにより対象物Aの二次元の放射線透過像を示す画像信号を出力する。
【0018】
さらに、放射線検出器3は、直接変換型検出器5の放射線検出面5a側に配置された波長変換板(波長変換膜・波長変換部材)6及び遮光板(遮光膜・遮蔽部材)7を備えている。この波長変換板6は、直接変換型検出器5の放射線検出面5aに沿って放射線検出面5aを覆うように配置された平板状の部材であり、対象物Aを透過した放射線の入射に応じてシンチレーション光を発生させる。このような波長変換板6としては、Gd2O2S:Tb、Gd2O2S:Pr、CsI:Tl、CdWO4、CaWO4、Gd2SiO5:Ce、Lu0.4Gd1.6SiO5、Bi4Ge3O12、Lu2SiO5:Ce、Y2SiO5、YAlO3:Ce、Y2O2S:Tb、YTaO4:Tm等のシンチレータが挙げられ、その厚さは数μm〜数mmの範囲で検出する放射線のエネルギー帯によって適切な値に設定されている。また、遮光板7は、波長変換板6と直接変換型検出器5との間において放射線検出面5aを覆うように配置されており、波長変換板6で発生したシンチレーション光が直接変換型検出器5に入射するのを防止するための平板状部材である。具体的には、遮光板7は、シンチレーション光の波長域の光に対して遮光性を有し、放射線源2から出射される放射線を透過する性質を有する部材である。このような遮光部材7の材料としては、例えば、ベリリウム、アルミ、銅、チタンなどの金属部材や、カーボン(炭素)やシリコン(ケイ素)などの非金属部材、ポリプロピレンやポリイミド、ポリエチレンテレフタレートなどの高分子有機物質に遮光性を持たせた部材等が挙げられる。ここで、波長変換部材6及び遮光部材7の形態としては、膜状であってもよい。
【0019】
上記のような直接変換型検出器5に対して遮光部材7及び波長変換部材6を組み上げる際には、直接変換型検出器5の放射線検出面5a上に遮光部材7及び波長変換部材6をこの順で蒸着してもよいし、予め遮光部材7及び波長変換部材6を作製しておいてから放射線検出面5a上に遮光部材7及び波長変換部材6を接着してもよい。また、図3に示すように、遮光部材7及び波長変換部材6を保持するためのホルダ部材8,9を用意しておいて、それらのホルダ部材8,9によって遮光部材7及び波長変換部材6を直接変換型検出器5の放射線検出面5a上に保持するようにしてもよい。さらに、図4に示すように、ボルト等の固定部材を用いて遮光部材7及び波長変換部材6を直接変換型検出器5の放射線検出面5a上に固定するようにしてもよい。
【0020】
次に、このような構成の放射線検出器3と放射線源2及び光検出器4との位置関係について説明する。図1に示すように、放射線源2は、直接変換型検出器5の放射線検出面5aに対して放射線の光軸が略垂直になり(放射線検出面5aと放射線の光軸に対して垂直な面とが略平行になり)、放射線検出面5aの中心部に対向するように配置されている。また、光検出器4は、波長変換板6から放射されたシンチレーション光を撮像可能になるように、内蔵する撮像レンズ4aの光軸が波長変換板6の放射線入射面6aに対して斜めに交差するように(光軸に対して垂直な面と放射線入射面6aとが角度を有するように)配置されている。この撮像レンズ4aは、放射線入射面6aから放射されたシンチレーション光を光検出器4の内部の撮像素子(図示せず)に向けて集光する。このような配置により、光検出器4が放射線源2からの放射線の出射領域から外れるように配置されることになる。
【0021】
以上説明した放射線画像取得装置1によれば、対象物Aを透過した放射線のうち比較的低エネルギー帯の放射線が、波長変換板6によってシンチレーション光に変換されて、波長変換板6の放射線入射面6a側に配置された光検出器4によってそのシンチレーション光が検出されることにより、対象物Aの放射線透過像を示す画像信号として検出可能にされる。それと同時に、対象物Aを透過した放射線のうち比較的高エネルギー帯の放射線は、波長変換板6及び遮光板7を透過して直接変換型検出器5によって直接画像信号として検出される。これは、低エネルギー帯の放射線は波長変換板6の内部の放射線入射面6a側でシンチレーション光に変換されやすいのに対して、高エネルギー帯の放射線は、波長変換板6を透過しやすいためである。このとき、遮光板7によってシンチレーション光の直接変換型検出器5への入射が防止されるので、直接変換型検出器5によって検出される高エネルギー帯の画像信号におけるS/Nが向上する。また、直接変換方式の検出器においては、その検出器の時間分解能よりも短い時間で複数の放射線が入射した場合には、実際のエネルギーよりも高いエネルギーとして検出されてしまう傾向にある(この現象を「サムピーク」と呼ぶ)。本実施形態によれば、直接変換方式の検出器に入射する低エネルギーの放射線が減少し、その結果擬信号を減らすことが可能になる。それとともに、シンチレーション光は波長変換板6の放射線入射面6a側で検出されるので、光検出器4によって検出される低エネルギー帯の画像信号における画像ぼけも防止することができる。その結果、高エネルギー帯及び低エネルギー帯に分離してS/Nがよいデュアルエナジーの検出画像を取得することができる。
【0022】
また、直接変換方式の検出器は、エネルギー感度に限界があり、高エネルギー帯に感度を有する検出器は、低エネルギー帯の感度が低い場合がある。そこで、放射線画像取得装置1では、光検出器4によって間接変換方式によってシンチレーション光を撮像することによって、低エネルギー帯の放射線像も感度良く取得することができる。その結果、高エネルギー帯及び低エネルギー帯を含む広いエネルギー範囲で高感度の検出画像を取得することができる。
【0023】
また、光検出器4が放射線源2からの放射線の出射領域から外れるように配置されているので、対象物Aの放射線透過像に光検出器4の影が映り込むことが無く画像信号におけるノイズの発生を低減することができ、放射線の減衰もないため低エネルギー成分の放射線の検出も可能にされる。さらに、光検出器4の内部の被曝による放射線の直接変換信号を含むノイズの発生も防止される。
【0024】
さらには、放射線画像取得装置1によってワンショット(一回の撮像もしくは検出)で取得された低エネルギー帯の画像信号及び高エネルギー帯の画像信号に対して所定の演算処理を施すことにより、対象物Aに関する高コントラスト化されたエネルギー差分(エネルギーサブトラクション)、エネルギー分別された放射線透過画像を得ることができる。
【0025】
なお、本発明は、前述した実施形態に限定されるものではない。すなわち、遮光部材7は波長変換板6で発生したシンチレーション光を反射する反射板あるいは反射膜であってもよい。例えば、図5に示す本発明の変形例である放射線検出器103のように、波長変換板6と直接変換型検出器5との間に遮光板7の代わりに平板状の反射板107が介在していてもよい。この反射板107は、直接変換型検出器5の放射線検出面5aを覆うように配置されており、波長変換板6側にシンチレーション光の波長域の光を反射する反射面107aを有し、かつ、放射線源2から出射される放射線を透過する性質を有する部材である。このような反射部材107の材料としては、例えば、アルミやニッケル、銅、銀、金などの金属等の平板状部材の表面に研磨加工を施すことにより反射面が形成されたものが挙げられる。反射面の形成方法としては、研磨加工のほかに、放射線を透過する支持体の表面に蒸着や吹きつけ、塗布などにより金属層を形成する方法や、波長変換部材の放射線入射面6aの裏面に蒸着や吹きつけ、塗布などにより金属層を形成する方法などが挙げられる。このような反射板107を備えることにより、直接変換型検出器5によって検出される高エネルギー帯の画像信号におけるS/Nを向上させることができるとともに、光検出器4によってシンチレーション光を効率的に検出できるので、低エネルギー帯の画像信号の検出効率を向上させることができる。
【0026】
また、遮光板7及び反射板107には、対象物Aを透過した放射線のうち低エネルギー帯の成分を更に遮断するようなフィルタリング機能を持たせてもよい。このようなフィルタリング機能を有する遮光板7及び反射板107の材料の例としては、銅、アルミニウム、カーボン、シリコン(ケイ素)、ニッケル、銀、金、ステンレス(鉄)、チタン等が挙げられる。遮光板7及び反射板107にフィルタリング機能を持たせることにより、波長変換板6側から入射してきた低エネルギー帯の放射線が直接変換型検出器5に入射することを防止でき、高エネルギー帯の画像信号におけるS/Nをさらに向上させることができる。
【0027】
また、放射線検出器3に対する放射線源2及び光検出器4の位置関係に関しては、様々な変形態様を採ることができる。すなわち、光検出器4が放射線源2からの放射線の出射領域から離れるように配置されていればよく、図6に示すように、放射線源2が、直接変換型検出器5の放射線検出面5aに対して放射線の光軸が斜めに向くように配置され、光検出器4が、撮像レンズ4aの光軸が波長変換板6の放射線入射面6aに対して略垂直になり、放射線入射面6aの中心部に対向するように配置されていてもよい。また、図7に示すように、放射線源2から出射される放射線の光軸上に波長変換板6から発生するシンチレーション光を反射する反射板11を配置し、光検出器4の撮像レンズ4aが反射板11によって反射されたシンチレーション光を集光可能なように光検出器4が配置されてもよい。このようにしても、光検出器4を放射線の出射領域から分離することができる。
【符号の説明】
【0028】
1…放射線画像取得装置、2…放射線源、4…光検出器(撮像素子)、5…直接変換型検出器(放射線検出素子)、6…波長変換板、波長変換膜(波長変換部材)、7…遮光板、遮光膜(遮蔽部材)、107…反射板、反射膜(遮蔽部材)。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7