【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記
図7に示した特許文献1の2軸異方向回転押出機によると、スクリュー(3)の先端部である軸付きキャップ(7)がダイヘッド(6)に設けられた軸受部(8)で支持されることにより、スクリュー(3)の振れを防止することができるという利点を有している。
【0007】
しかしながら、ダイヘッド(6)に軸受部(8)を設けていることから、樹脂押出通路(11)の径<2軸スクリュー(3)の軸心間距離−軸受部(8)の半径×2の関係を確保する必要がある。したがって、ダイヘッド(6)の設計の自由度(特に樹脂押出通路(11)の径の大きさ)が制約されるという問題があり、また、軸受部(8)の径についても制約されることから、スクリュー(3)の先端部を形成する軸部(15)の径を大きくすることができないために、スクリュー先端部の強度を上げることが難しいという問題がある。また、軸受部(8)が挿入される孔(6a)は、有底とする必要があることから、樹脂がここに滞留しやすく、樹脂によっては、この滞留が悪影響を及ぼす可能性があり、メンテナンスが面倒という問題もある。
【0008】
本発明の目的は、上述した従来技術の現状に鑑み、ダイヘッドの設計に制約を及ぼすことなく、また、スクリュー先端部の強度を確保し、しかも、樹脂の滞留を防いで、シリンダー内の圧力変動を小さくすることができる2軸異方向回転押出機を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
この発明による2軸異方向回転押出機は、シリンダーと、シリンダーの中空部内に配されて異方向に回転させられる2軸スクリューと、シリンダーの先端側に配されたダイヘッドとを備えている2軸異方向回転押出機において、シリンダーとダイヘッドとの間に、シリンダーの開口とダイヘッドの開口とを連通する貫通孔が設けられたアダプターが配置され、スクリュー先端部に、シリンダーから突出する突出軸部が設けられており、アダプターに、
貫通孔が設けられたアダプターとは別の部材とされて、突出軸部を支持する軸受部が設けられて
おり、軸受部は、突出軸部が嵌め入れられる円筒部と、円筒部の外周面と貫通孔の周面との間に渡された複数のブリッジ部とを有し、円筒部に固定されたブリッジ部の径方向外側端部がアダプターの貫通孔の内周面に設けられた溝に着脱可能に嵌め入れられていることを特徴とするものである。
【0010】
シリンダーとダイヘッドとの間に介在させられるアダプターに、シリンダーの開口とダイヘッドの開口とを連通する貫通孔が設けられることにより、シリンダーの開口からダイヘッドの開口に通じる樹脂通路が確保される。突出軸部は、その軸心が対応するスクリューの軸心と一致するように、スクリューに固定される。そして、この突出軸部に嵌め合わされてこれを回転自在に支持する軸受部がアダプターの貫通孔内に設けられる。ダイヘッドは、軸受部が設けられていない従来のものが使用される。突出軸部と軸受部との嵌め合いの隙間は、5〜100μm程度に設定される。
【0011】
こうして、スクリュー先端に設けられた突出軸部がアダプターに設けられた軸受部によって回転支持されるので、軸方向と直交する方向へのスクリューの振れが抑えられ、これにより、シリンダー内の樹脂による圧力変動が小さくなる。圧力変動は、シリンダー内の傷の発生や押出成形品の品質に悪影響を及ぼすことから、この変動が抑えられることで、設備寿命が長くなり、押出成形品の品質も向上する。
【0012】
ダイヘッドに軸受部を設ける場合、ダイヘッドの設計の自由度が制約され、また、軸受部の径および軸受部で支持されるスクリュー先端部の径を小さくせざるを得ないという問題があり、さらに、軸受部に樹脂が滞留しやすいという問題もある。
【0013】
これに対し、この発明の2軸異方向回転押出機によると、ダイヘッドとは別部材のアダプターに軸受部を設けることで、軸受部の径については、スクリューの軸部の径と同等程度にまで大きくすることができ、また、ダイヘッドが軸受無しとなることで、ダイヘッドの設計の自由度が制約されない。また、軸受部は両端が開口するものとなるので、樹脂が滞留しにくいという利点も得られる。
【0014】
2軸スクリューの形状は、2軸が平行であるパラレルタイプであってもよく、2軸の軸心間距離が徐々に小さくなるコニカルタイプであってもよい。
【0015】
軸受部は、アダプターに一体に形成されてもよく、アダプターとは別部材とされてもよい。いずれにしろ、軸受部は、突出軸部が嵌め入れられる円筒部と、円筒部の外周面と貫通孔の周面との間に渡された複数のブリッジ部とを有しているものとされることが好ましい。
【0016】
アダプター、アダプターとは別部材とされた軸受部、突出軸部は、適宜な金属(ステンレス鋼、鋼)等で形成される。軸受部の円筒部の内周には、固体潤滑剤層が形成されていることがより好ましい。固体潤滑剤層は、コーティングしてもよいが、好ましくは、円筒部が2重筒構造とされて、軸受部の円筒部は、ブリッジ部が一体に設けられた外筒と、外筒内に着脱可能に嵌め入れられた内筒とからなり、内筒は、固体潤滑剤分散型焼結材などの自己潤滑性材料で形成されたものとされる。このようにすると、使用によって摩耗した内筒だけを交換することで、他部材は、そのまま使用することができる。アダプターの本体部分、外筒およびブリッジ部までを一体で形成し、これに自己潤滑性材料で形成された別部材の内筒を嵌め入れるようにすることもできる。
【0017】
ブリッジ部の数は、例えば2つとして、円筒部を介して直線状に配置されているものとされる。ブリッジ部の数は、3つ以上として、周方向に所要の間隔で配置されるようにしてもよい。
【0018】
2軸異方向回転押出機の場合、2軸スクリューの先端に近い混練部分において、スクリュー同士が噛み合う部分の下部では、溶融した熱可塑性樹脂が両側から集まり、この部分の圧力が高くなり、反対側の上部では熱可塑性樹脂が離れていき、この部分の圧力が小さくなることから、この圧力変動に伴って、スクリューの振れが生じ、シリンダーの上部内面に傷が付きやすい。そこで、ブリッジ部の方向をスクリューの振れが生じやすい方向に合わせることにより、シリンダーの上部内面の傷の発生の防止に有利なものとすることができる。例えば、ブリッジ部が2つで、これらが円筒部を介して直線状に配置されている場合、一方の軸受部のブリッジ部と他方の軸受部のブリッジ部とのなす角が10時10分の方向になるように設定される。
【0019】
突出軸部の外周面には、らせん状の溝が形成されていることが好ましい。
【0020】
突出軸部と軸受部の円筒部との間には、これらを相対回転可能とするための隙間が設けられ、この隙間を調整することでこの隙間内への樹脂の侵入を抑制することができる。しかしながら、侵入を完全に0にすることは難しい。そこで、突出軸部の外周面にらせん状の溝を設けることにより、軸受部(円筒部)内において突出軸部が回転した場合、樹脂が突出軸部のらせん状の溝内に入って次々に送り出されていくことになり、軸受部の両端が開口する構成に加えて、らせん状の溝による送り機能が付加され、突出軸部と軸受部との間に樹脂が滞留することがより一層防止される。らせん状の溝の方向は、スクリューに設けられているらせん状の羽根と同じ方向とされ、これにより、軸受部内の樹脂はスクリューによって送り出される方向と同じ方向に送られる。らせん状の溝の方向は、スクリューのらせん状の羽根と逆の方向とされてもよく、この場合には、軸受部内の樹脂はスクリューによって送り出される方向と逆方向に送られてから、スクリューによって送り出されることになり、この場合でも、突出軸部と軸受部との間に樹脂が滞留することが防止される。
【0021】
また、軸受部は、貫通孔が設けられたアダプターとは別の部材とされており、円筒部に固定されたブリッジ部の径方向外側端部がアダプターの貫通孔の内周面に設けられた溝に着脱可能に嵌め入れられていることが好ましい。
【0022】
このようにすると、軸受部の加工が容易となるとともに、軸受部として、潤滑性に優れた材料を使用することができ、また、軸受部が摩耗した場合には、アダプターはそのまま使用して、軸受部だけを交換することができる。コニカルタイプの2軸異方向回転押出機では、アダプターに一体で軸受部を形成することが困難なものとなるが、軸受部を別部材として加工することでコニカルタイプに対しても容易に適用することができる。
【0023】
突出軸部は、その基部内周にめねじが設けられたものとされ、スクリュー先端の内周に設けられためねじにねじ合わされたおねじ部材にねじ合わされることで、スクリューに着脱自在に取り付けられていることが好ましい。既存の2軸異方向回転押出機においては、各スクリューは、スプラインが設けられた軸に複数のスクリューセグメントが嵌め入れられて、スプライン軸の先端部に形成されたねじ孔にスクリューキャップがねじ合わせられている構造とされていることがあり、この場合には、スクリューキャップに代えて、スクリューキャップと同じねじ部を有しその先端部分が軸方向に突出した突出軸部(らせん溝付き)を使用することで、既存のスクリューを変更しないでこの発明による2軸異方向回転押出機を得ることができる。突出軸部およびアダプター以外の2軸異方向回転押出機の構成については、従来の種々ものが使用できることはもちろんである。また、スクリューの振れが抑えられて、シリンダーの傷が防止できることから、スクリューやシリンダーの材料や表面処理を従来のものから変更することもできる。
【0024】
この発明の2軸異方向回転押出機は、既存のダイヘッドを使用し、既存のスクリューキャップに代えて突出軸部とするとともに、アダプターを追加することで得ることができ、他の設備変更をせずに押出成形中のスクリューの振れを防止することができる。
【0025】
この発明の2軸異方向回転押出機が対象とする熱可塑性樹脂としては、特に限定されないが、たとえば、溶融粘度が高いため溶融押出などの溶融成形が困難な樹脂、熱分解しやすい樹脂、低沸点の添加剤もしくは熱分解しやすい添加剤を含有する難成形樹脂などが挙げられる。溶融粘度が高いため溶融押出などの溶融成形が困難な樹脂としては、例えば、超高分子量ポリエチレン、超高重合度ポリ塩化ビニル、ポリテトラフルオロエチレン、ポリイミドなどのエンジニアリングプラスチック用の樹脂が挙げられる。熱分解しやすい樹脂としては、ポリ乳酸、ポリヒドロキシブチレートなどの生分解性樹脂、高塩素化度ポリ塩化ビニル、ポリアクリロニトリルなどが挙げられる。これらの樹脂には必要により適宜の発泡剤を配合してもよい。