(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、本発明の実施形態を、図面を用いて説明する。
図1〜7は、本発明の実施形態を示す図である。
図1は本実施の形態の電磁石型回転電機において、ロータ及びステータの周方向一部を示す概略断面図である。
図2は、
図1のA部拡大図である。
図3は、本実施の形態において、ロータ巻線に流れる誘導電流により生成される磁束がロータ中に流れる様子を示す模式図である。
図4は、ロータ巻線にダイオードを接続して示す、
図3に対応する図である。
図1に示すように、電動機または発電機として機能する電磁石型回転電機(以下、単に「回転電機」という。)10は、図示しないケーシングに固定されたステータ12と、ステータ12と所定の空隙をあけて径方向内側に対向配置され、ステータ12に対し回転可能なロータ14とを備える(なお、単に「径方向」という場合、ロータの回転中心軸に対し直交する放射方向をいう。本明細書全体及び特許請求の範囲で同じである。)。
【0027】
また、ステータ12は、ステータヨークであるステータコア16と、ステータコア16の周方向箇所に配置されたティース18と、各ティース18に巻線された、すなわち巻かれた複数相(より具体的にはu相、v相、w相の3相)のステータ巻線20u,20v,20wとを含む。すなわち、ステータコア16の内周面には、径方向内側へ(ロータ14へ向けて)突出する複数のティース18がステータ12の周方向に沿って互いに間隔をおいて配列されており、各ティース18間にステータスロット22が形成されている。また、ステータコア16及び複数のティース18は磁性材により、一体に設けられている。
【0028】
各相のステータ巻線20u,20v,20wは、ステータスロット22を通ってティース18に短節集中巻で巻装されている。このように、ティース18にステータ巻線20u,20v,20wが巻装されることで磁極が構成される。そして、複数相のステータ巻線20u,20v,20wに複数相の交流電流を流すことで、周方向に複数配置されたティース18が磁化し、周方向に回転する回転磁界をステータ12に生成する。すなわち、複数相のステータ巻線20u,20v,20wは、ステータ12に回転磁界を生じさせる。なお、ステータ巻線は、このようにステータ12のティース18に巻線する構成に限定するものではなく、例えばティース18から外れたステータコア16の環状部分の周方向複数個所に複数相のステータ巻線を巻線するトロイダル巻きとし、ステータ12に回転磁界を生じさせることもできる。
【0029】
ティース18に形成された回転磁界は、その先端面からロータ14に作用する。
図1に示す例では、3相(u相、v相、w相)のステータ巻線20u,20v,20wがそれぞれ巻装された3つのティース18により1つの極対が構成されている。
【0030】
一方、ロータ14は、円筒状のロータヨークであるロータコア24と、ロータコア24の外周面の周方向の等間隔複数個所に、径方向外側に向けて(ステータ12に向けて)突出して配置された突部である、主突極26と、複数のロータ巻線28n、28sとを含む(なお、単に「周方向」という場合、ロータの回転中心軸を中心として描かれる円形に沿う方向をいう。本明細書全体及び特許請求の範囲で同じである)。ロータコア24及び複数の主突極26は、磁性鋼板を複数積層した積層体等の磁性材により、一体に設けられている。より詳しくは、ロータ14の周方向に関して1つおきの主突極26に複数の第1ロータ巻線28nをそれぞれ集中巻きで巻線し、第1ロータ巻線28nを巻線した主突極26と隣り合う別の主突極26であって、周方向1つおきの主突極26に、複数の第2ロータ巻線28sをそれぞれ集中巻きで巻線している。
【0031】
また、
図2から
図4に示すように、各第1ロータ巻線28nは、主突極26の先端側(
図2から
図4の上端側)に巻かれた第1誘導巻線30と、第1誘導巻線30に接続された第1共通巻線32とを含む。第1共通巻線32は、第1誘導巻線30が巻かれる主突極26の根元側(
図2から
図4の下端側)に巻かれている。また、各第2ロータ巻線28sは、各第1ロータ巻線28nが巻かれた主突極26と周方向に隣り合う別の主突極26の先端側に巻かれた第2誘導巻線34と、第2誘導巻線34に接続された第2共通巻線36とを含む。第2共通巻線36は、第2誘導巻線34が巻かれる主突極26の根元側に巻かれている。
【0032】
図4に示すように、ロータ14の周方向に隣り合う2個の主突極26を1組として、各組で1個の主突極26に巻かれた第1誘導巻線30の一端と、別の主突極26に巻かれた第2誘導巻線34の一端とを、2個の磁気特性調整部であり整流素子である第1ダイオード38及び第2ダイオード40を介して接続している。すなわち、
図5Aは、本実施の形態において、ロータ14(
図4)の周方向に隣り合う主突極26に巻装された2個のロータ巻線28n、28sの接続回路の等価回路を示す図である。
図5Aに示すように、第1誘導巻線30及び第2誘導巻線34の一端は、互いに順方向が逆になる第1ダイオード38及び第2ダイオード40を介して、接続点Rで接続されている。
【0033】
また、
図4、
図5Aに示すように、各組で1個の主突極26に巻かれた第1共通巻線32の一端は、別の主突極26に巻かれた第2共通巻線36の一端に接続されている。第1共通巻線32及び第2共通巻線36は互いに直列に接続されることで、共通巻線組42を構成している。さらに、第1共通巻線32の他端は接続点Rに接続され、第2共通巻線36の他端は、第1誘導巻線30及び第2誘導巻線34の接続点Rとは反対側の他端に接続されている。また、各ロータ巻線28n、28sの誘導巻線30,34及び共通巻線32,36の巻回中心軸は、ロータ14(
図1)の径方向と一致している。なお、各誘導巻線30,34及び共通巻線32,36は、対応する主突極26に、樹脂等により造られる電気絶縁性を有するインシュレータ(図示せず)等を介して巻装することもできる。
【0034】
このような構成では、後述するように、第1誘導巻線30、第2誘導巻線34、第1共通巻線32及び第2共通巻線36に整流された電流が流れることで主突極26が磁化し、磁極部として機能する。また、
図1に戻って、ステータ巻線20u,20v,20wに交流電流を流すことで、ステータ12が回転磁界を生成するが、この回転磁界は、基本波成分の磁界だけでなく、基本波よりも高い次数の高調波成分の磁界を含んでいる。
【0035】
より詳しくは、ステータ12に回転磁界を発生させる起磁力の分布は、各相のステータ巻線20u,20v,20wの配置や、ティース18及びステータスロット22によるステータコア16の形状に起因して、(基本波のみの)正弦波分布にはならず、高調波成分を含むものとなる。特に、集中巻においては、各相のステータ巻線20u,20v,20wが互いに重なり合わないため、ステータ12の起磁力分布に生じる高調波成分の振幅レベルが増大する。例えばステータ巻線20u,20v,20wが3相集中巻の場合は、高調波成分として、入力電気周波数の時間的3次成分であり、空間的な2次成分の振幅レベルが増大する。このようにステータ巻線20u,20v,20wの配置やステータコア16の形状に起因して起磁力に生じる高調波成分は空間高調波と呼ばれている。
【0036】
ステータ12からロータ14に、この空間強調波成分を含む回転磁界が作用すると、空間高調波の磁束変動により、ロータ14の主突極26間の空間に漏れ出す漏れ磁束の変動が発生し、これにより
図3に示す各誘導巻線30,34の少なくともいずれかの誘導巻線30,34に誘導起電力が発生する。また、ステータ12から近い、主突極26の先端側の誘導巻線30,34に主に誘導電流を発生させる機能を持たせ、ステータ12から遠い、共通巻線32,36に主に主突極26を磁化する機能を持たせることができる。また、
図5Aの等価回路から理解されるように、隣り合う主突極26(
図3、
図4)に巻装された誘導巻線30,34を流れる電流の合計が共通巻線32,36にそれぞれ流れる電流となる。また、隣り合う共通巻線32、36同士を直列に接続しているので、両方で巻き数を増加させたのと同じ効果を得られ、各主突極26に流れる磁束を同じとしたままで各共通巻線32,36に流す電流を低減できる。
【0037】
そして、各誘導巻線30,34に誘導起電力が発生すると、第1誘導巻線30、第2誘導巻線34、第1共通巻線32及び第2共通巻線36にダイオード38,40の整流方向に応じた直流電流が流れ、ロータ巻線28n、28sが巻装された主突極26が磁化することで、この主突極26が磁極の固定された磁石である磁極部として機能する。
図4に示す、周方向に隣り合う第1ロータ巻線28nと第2ロータ巻線28sとで巻き方向が逆になっており、周方向に隣り合う主突極26同士で磁化方向が逆になる。図示の例では、第1ロータ巻線28nが巻装された主突極26の先端にN極が生成され、第2ロータ巻線28sが巻装された主突極26の先端にS極が生成されるようにしている。このため、ロータ14の周方向においてN極とS極とが交互に配置される。また、各ダイオード38,40(
図4)は、各主突極26に巻かれた複数のロータ巻線28n、28sに発生する誘導起電力によって複数の主突極26に生じる磁気特性を、周方向に交互に異ならせている。
【0038】
また、各ダイオード38,40は、対応する誘導巻線30,34に接続され、ステータ12で生成される空間高調波を含む回転磁界による誘導起電力の発生により、対応する誘導巻線30,34に流れる電流を整流することで、ロータ14の周方向に隣り合う誘導巻線30,34に流れる電流の位相を、A相とB相とに交互に異ならせている。A相は、対応する主突極26の先端側にN極を生成するものであり、B相は、対応する主突極26の先端側にS極を生成するものである。
【0039】
また、
図1に示すように、ロータ14の周方向に関する各誘導巻線30,34及び各共通巻線32,36の幅θは、ロータ14の電気角で180°に相当する幅よりも短く設定し、各誘導巻線30,34及び各共通巻線32,36は、それぞれ主突極26に短節巻きで巻装されている。より好ましくは、ロータ14の周方向に関する各誘導巻線30,34及び各共通巻線32,36の幅θは、ロータ14の電気角で90°に相当する幅に等しく、あるいはほぼ等しくしている。ここでの各誘導巻線30,34及び各共通巻線32,36の幅θについては、各誘導巻線30,34及び各共通巻線32,36の断面積を考慮して、各誘導巻線30,34及び各共通巻線32,36の断面の中心幅で表すことができる。すなわち、各誘導巻線30,34及び各共通巻線32,36の内周面の幅と外周面の幅との平均値で各誘導巻線30,34及び各共通巻線32,36の幅θを表すことができる。なお、ロータ14の電気角は、ロータ14の機械角にロータ14の極対数pを乗じた値で表される(電気角=機械角×p)。このため、周方向に関する各誘導巻線30,34及び各共通巻線32,36の幅θは、ロータ14の回転中心軸から各誘導巻線30,34及び各共通巻線32,36までの距離をrとすると、以下の(1)式を満たす。
【0040】
θ<π×r/p (1)
このように幅θを規制している理由は、後で詳しく説明する。
【0041】
特に、本実施の形態では、ロータ14は、周方向の複数個所に配置された主突極26の周方向の両側面に、補助突極44を含んでいる。この補助突極44は、主突極26の軸方向(
図1、
図2の表裏方向)のほぼ全長にわたり、主突極26の両側面から周方向に対し傾斜した方向に突出する、板状の磁性体である。このため、補助突極44は、主突極26の両側面から突出する。例えば、図示の例では、補助突極44は、各主突極26の周方向両側面の径方向(
図2の上下方向)中間部に、先端に向かうほどロータ14の径方向外側になるように周方向に対し傾斜した方向に突出している。このため、各補助突極44の先端は、補助突極44の根元よりもロータ14の径方向外側に位置している。また、各補助突極44の幅は、根元部で大きくし、中間部から先端部にわたり根元部の幅よりも小さい、ほぼ同じ大きさとしている。
【0042】
このような補助突極44は、
図3に示すように、ロータ14の各主突極26の間に形成され、ロータ巻線28n、28sが内側に配置される複数のロータスロット46内に配置され、隣り合う主突極26の互いに対向する周方向側面から突出している。また、同じロータスロット46内に配置される2個の補助突極44は互いに直接には結合されず、先端部は互いに離れている。このような補助突極44は、ロータコア24及び主突極26と同じ磁性材料により形成することができる。例えば、ロータコア24、各主突極26、及び各補助突極44を、軸方向に複数枚の磁性鋼板を積層することにより構成される積層体により一体に形成することができる。
【0043】
また、各主突極26に巻かれた各ロータ巻線28n、28sのうち、誘導巻線30,34と共通巻線32,36とは、対応するロータスロット46内で補助突極44で仕切られて分離されている。同じ主突極26に巻かれる誘導巻線30,34と共通巻線32,36とは、ロータコア24の軸方向端面よりも外側に設けられる図示しない片側または両側のコイルエンド側等、補助突極44から外れた部分で互いに接続されている。なお、各誘導巻線30,34と各共通巻線32,36とは互いに異なる材料により形成することもできる。例えば、各共通巻線32,36は銅線等の導電性材料により形成し、各誘導巻線30,34は、アルミニウムまたはアルミニウム合金等の、共通巻線を構成する導電性材料よりも軽量な別の導電性材料により形成することもできる。また、
図2に示すように、各主突極26の先端部に周方向両側に突出する鍔部48を形成して、誘導巻線30、34(34は
図3等参照)の抜け止めを図ることもできる。
【0044】
このような回転電機10は、
図6の回転電機駆動システム50により駆動する。
図6は、
図1の回転電機10を駆動する回転電機駆動システム50の概略構成を示す図である。回転電機駆動システム50は、回転電機10と、回転電機10を駆動する駆動部であるインバータ52と、インバータ52を制御する制御装置54と、電源部である蓄電装置56とを備え、回転電機10を駆動する。
【0045】
蓄電装置56は、直流電源として設けられ、充放電可能であり、例えば二次電池により構成する。インバータ52は、U相、V相、W相の3相のアームAu,Av,Awを備え、各相アームAu,Av,Awは、それぞれ2のスイッチング素子Swを直列に接続している。スイッチング素子Swは、トランジスタ、IGBT等である。各スイッチング素子Swに逆並列にダイオードDiを接続している。各アームAu,Av,Awの中点は、回転電機10を構成する対応する相のステータ巻線20u,20v,20wの一端側に接続されている。ステータ巻線20u,20v,20wにおいて、同じ相のステータ巻線同士は互いに直列に接続され、異なる相のステータ巻線20u,20v,20wが中性点で接続されている。
【0046】
また、蓄電装置56の正極側及び負極側は、インバータ52の正極側と負極側とにそれぞれ接続されており、蓄電装置56とインバータ52との間にコンデンサ58が、インバータ52に対し並列に接続されている。制御装置54は、例えば車両のアクセルペダルセンサ(図示せず)等から入力される加速指令信号に応じて回転電機10のトルク目標を算出し、トルク目標等に応じた電流指令値に応じて各スイッチング素子Swのスイッチング動作を制御する。制御装置54には、3相のうち、少なくとも2相のステータ巻線(例えば20u、20v)側に設けられた電流センサ60で検出された電流値を表す信号と、レゾルバ等の回転角度検出部(図示せず)で検出された回転電機10のロータ14(
図1)の回転角度を表す信号とがそれぞれ入力される。制御装置54は、CPU,メモリ等を有するマイクロコンピュータを含むもので、インバータ52のスイッチング素子Swのスイッチングを制御することにより、回転電機10のトルクを制御する。制御装置54は、機能ごとに分割された複数の制御装置により構成することもできる。
【0047】
このような制御装置54は、インバータ52を構成する各スイッチング素子Swのスイッチング動作により蓄電装置56からの直流電力を、u相、v相、w相の3相の交流電力に変換して、ステータ巻線20u,20v,20wの各相に対応する相の電力を供給することを可能とする。回転電機駆動システム50は、例えば、車両用走行動力発生装置として、エンジンと走行用モータとを駆動源として備えるハイブリッド車、燃料電池車、電気自動車等に搭載して使用される。なお、蓄電装置56とインバータ52との間に電圧変換部であるDC/DCコンバータを接続して、蓄電装置56の電圧を昇圧してインバータ52に供給可能とすることもできる。
【0048】
上記の回転電機10では、3相のステータ巻線20u,20v,20wに3相の交流電流を流すことでティース18に形成された回転磁界(基本波成分)がロータ14に作用し、これに応じて、ロータ14の磁気抵抗が小さくなるように、主突極26がティース18の回転磁界に吸引される。これによって、ロータ14にトルク(リラクタンストルク)が作用する。
【0049】
さらに、ティース18に形成された空間高調波成分を含む回転磁界がロータ14の各ロータ巻線28n、28sの誘導巻線30,34に鎖交すると、各誘導巻線30,34には、空間高調波成分に起因するロータ14の回転周波数(回転磁界の基本波成分)と異なる周波数の磁束変動によって、各ロータ巻線28n、28sに誘導起電力が発生する。この誘導起電力の発生に伴って各ロータ巻線28n、28sに流れる電流は、各ダイオード38、40により整流されることで一方向(直流)となる。そして、各ダイオード38,40で整流された直流電流が各ロータ巻線28n、28sに流れるのに応じて各主突極26が磁化することで、各主突極26が、磁極が(N極かS極のいずれか一方に)固定された磁石として機能する。
【0050】
例えば、
図3に示すようにステータ12の各相のステータ巻線20u、20v、20wを巻装したティース18が、ロータ巻線28n、28sを巻装した主突極26に径方向に対向していないで、1個のティース18がロータ14の周方向に関して隣り合う2個の主突極26の間の中央位置に対向する場合を考える。また、この状態で、
図3の破線矢印で示すように、ステータ12からロータ14に、ステータ12の起磁力として、空間的2次の空間高調波の磁束であるq軸磁束が流れる場合を考える。この場合、補助突極44があることで空間高調波をステータ12の(
図3ではW相の)ティース18から補助突極44を介して、主突極26へ多く誘導し、主突極26から別の(
図3ではU相、V相の)ティース18へ誘導して、誘導巻線30,34に多くの磁束を鎖交させることができる。
図3は、1つのティース18からq軸磁束の最大の磁束が流れる位相角に対応する状態を示しており、電気的1周期の中でq軸磁束の向き及び大きさが変化する。また、
図3では、破線矢印αが誘導巻線30に鎖交する磁束を示しており、破線矢印βが誘導巻線34に鎖交する磁束を示している。この場合、S極となる主突極26に巻かれた第2誘導巻線34に第2ダイオード40(
図4)が接続され、第2ダイオード40は、対応する主突極26をS極とする方向に電流を流す。このため、S極側の主突極26にq軸磁束によりS極をN極とする方向に磁束が流れようとし、これを妨げる方向に第2誘導巻線34に誘導電流が流れようとし、その流れは第2ダイオード40で妨げられない。この結果、
図3の実線矢印で示すように主突極26に誘導電流による磁束が流れる。また、ステータ12のティース18からN極の主突極26を介して補助突極44にq軸磁束が流れようとする場合もあり、N極の主突極26をS極とする方向に磁束が流れようとするときに、これを妨げる方向にN極の主突極26に巻かれた第1誘導巻線30に誘導電流が流れようとする。この場合、第1誘導巻線30に接続された第1ダイオード38(
図4)が、対応する主突極26をN極とする方向に電流を流す。この場合も
図3の実線矢印で示すように主突極26に誘導電流による磁束が流れる。このため、各主突極26がN極またはS極に磁化する。上記のように各主突極26の両側面から補助突極44が突出しているので、補助突極44がない、すなわち各スロット46内で周方向に隣り合う主突極26同士の間に空間しかない場合に比べて、各誘導巻線30,34に鎖交する磁束の振幅の最大値を大きくできるので、鎖交磁束の変化を大きくできる。
【0051】
そして、各主突極26(磁極が固定された磁石)の磁界がステータ12により生成される回転磁界(基本波成分)と相互作用して、吸引及び反発作用が生じる。このステータ12により生成される回転磁界(基本波成分)と主突極26(磁石)の磁界との電磁気相互作用(吸引及び反発作用)によっても、ロータ14にトルク(磁石トルクに相当するトルク)を作用させることができ、ロータ14がステータ12で生成される回転磁界(基本波成分)に同期して回転駆動する。このように回転電機10は、ステータ巻線20u,20v,20wへの供給電力を利用してロータ14に動力(機械的動力)を発生させる電動機として機能させることができる。
【0052】
また、第1誘導巻線30に流れる誘導電流と、第2誘導巻線34に流れる誘導電流との位相はずれるので、第1誘導巻線30と第2誘導巻線34とに、それぞれ位相がずれた半波整流が生成される。これに対して、第1共通巻線32と第2共通巻線36とには、第1誘導巻線30と第2誘導巻線34とに流れる電流の和の大きさの電流が流れるので、例えば連続して大きな直流電流が流れるようになる。このため、各主突極26に磁極が形成されやすくなり、ロータ14のトルクを増大できる。
【0053】
しかも、本実施の形態の回転電機10によれば、ロータ14は、各主突極26の周方向側面から突出し、磁性を有する補助突極44を含むので、ステータ12で生成される回転磁界に含まれ、ロータ巻線28n、28sに鎖交する高調波成分である空間高調波、例えば、時間3次である空間2次の高調波成分を、補助突極44により有効に増大させることができる。例えば、ステータ12で生成される起磁力分布の高調波成分の多くの磁束をステータ12のティース18から、補助突極44を介して主突極26へ誘導して、ロータ巻線28n、28sに多くの磁束を鎖交させることができる。また、高調波成分の多くの磁束をティース18から主突極26を介して補助突極44へ誘導して、ロータ巻線28n、28sに多くの磁束を鎖交させることもできる。このため、ロータ巻線28n、28sに鎖交する磁束の磁束密度の変化を大きくし、ロータ巻線28n、28sに誘導される誘導電流を大きくでき、主突極26に形成される電磁石である磁極の磁力を強くできる。このため、ロータ磁力を増加させ、回転電機10を大型化することなく、回転電機10のトルクを向上できる。また、ステータ巻線20u、20v、20wに流すステータ電流を小さくしても所望のトルクを得られるので、銅損を低減でき、効率向上を図れる。この結果、回転電機10のトルク及び効率を向上させることができる。このように主突極26の周方向側面に直接、磁性材製の補助突極44を突出させ、主突極26と補助突極44とが直接磁気的に連結されることで、磁路が形成されるようにするので、ロータ巻線28n、28sへの鎖交磁束を増大でき、回転電機10のトルク及び効率を向上できる。
【0054】
これに対して、本発明とは異なり、主突極26の周方向側面に補助突極44を形成しない場合、ロータ巻線28n、28sに誘導電流を発生させるための鎖交磁束の数が少なくなり、ロータ巻線28n、28sに発生する誘導電流が小さくなる。このため、ロータ巻線28n、28sを流れる誘導電流により形成される電磁石の磁力が弱くなり、回転電機10のトルクの向上の面からは改良の余地がある。また、この構成で所望のトルクを得るためにはステータ巻線20u,20v,20wに大きなステータ電流を流す必要があり、ステータ巻線20u,20v,20wの銅損が大きくなり、効率が低下する原因ともなっている。本発明によれば、このような不都合をいずれもなくして、回転電機10のトルク及び効率を向上できる。
【0055】
また、各補助突極44の先端は、前記補助突極44の根元よりもロータ14の径方向外側に位置するので、各補助突極44の先端位置に応じて、空間高調波の必要な磁束成分を効率よく各補助突極44から各主突極26に誘導して、ロータ巻線28n、28sに効率よく多くの磁束を鎖交させ、トルク及び効率をより有効に向上させることができる。
【0056】
また、周方向に隣り合う2個の主突極26の周方向側面であって、互いに対向する周方向側面に結合された2個の補助突極44は、互いに結合されていないので、主突極26にトルクに寄与しない磁束が流れるのを抑制し、トルクの向上を図れるとともに、ロータ14の径方向に関して補助突極44よりも内側にロータ巻線28n、28sの共通巻線32,36を容易に配置できる。
【0057】
これに対して、本実施の形態と異なり、互いに対向する周方向側面に結合された2個の補助突極44をロータスロット46内で互いに連結することもできるが、この場合には、例えば、ロータ14のうち、主突極26から外れたロータコア24から、N極となる主突極26、この主突極26に結合された補助突極44、この補助突極44に結合された別の補助突極44、この別の補助突極44が結合されたS極となる主突極26、及びロータコア24に順に磁束が流れてループする磁気回路が形成される可能性がある。この場合、このループする磁気回路はトルクに寄与しない。また、このループする磁気回路に磁束が流れる分、主突極26の先端部に流れて、トルクに寄与する磁束が減少する傾向となるので好ましくない。このため、本実施の形態のように、互いに対向する周方向側面に結合された2個の補助突極44は、ロータスロット46内で互いに連結されていない構成を採用するのが、トルクの向上の面からは好ましい。
【0058】
また、ロータ14の周方向に互いに対向する主突極26の周方向側面に結合された2個の補助突極44の先端部をロータスロット46内で互いに連結していると、ロータ14の径方向に関して補助突極44よりも内側にロータ巻線28n、28sを配置するのが難しくなるが、本実施の形態では、このような不都合もなくせる。
【0059】
さらに、各補助突極44は、各主突極26の周方向側面に、先端に向かうほどロータ14の径方向外側になるように周方向に対し傾斜した方向に突出している。このため、各補助突極44の長さを過度に大きくすることなく、空間高調波の必要な磁束成分、例えば磁束密度が高い空間2次の高調波成分を補助突極44から主突極26に効率よく誘導して、ロータ巻線28n、28sに効率よく多くの磁束を鎖交させ、トルク及び効率をより有効に向上させることができる。
【0060】
また、本実施の形態では、各ロータ巻線28n、28sにおいて、ロータ14の周方向に関する幅θを上記の(1)式で述べたように規制している。このため、ロータ巻線28n、28sに発生する、回転磁界の空間高調波による誘導起電力を大きくすることができる。すなわち、空間高調波によるロータ巻線28n、28sへの鎖交磁束の振幅(変動幅)は、周方向に関するロータ巻線28n、28sの幅θにより影響を受ける。ここで、周方向に関するロータ巻線28n、28sの幅θを変化させながら、ロータ巻線28n、28sへの鎖交磁束の振幅(変動幅)を計算した結果を
図7に示している。
図7では、コイル幅θを電気角に換算して示している。
図7に示すように、コイル幅θが180°から減少するにつれてロータ巻線28n、28sへの鎖交磁束の変動幅が増大しているため、コイル幅θを180°よりも小さくする、すなわちロータ巻線28n、28sを短節巻とすることで、全節巻と比較して、空間高調波による鎖交磁束の振幅を増大させることができる。
【0061】
したがって、回転電機10(
図1)では、周方向に関する各主突極26の幅を電気角で180°に相当する幅よりも小さくし、ロータ巻線28n、28sを各主突極26に短節巻で巻装することで、ロータ巻線28n、28sに発生する空間高調波による誘導起電力を効率よく増大させることができる。この結果、ロータ14に作用するトルクを効率よく増大させることができる。
【0062】
さらに、
図7に示すように、コイル幅θが90°の場合に、空間高調波による鎖交磁束の振幅が最大となる。したがって、空間高調波によるロータ巻線28n、28sへの鎖交磁束の振幅をより増大させるためには、周方向に関する各ロータ巻線28n、28sの幅θがロータ14の電気角で90°に相当する幅に等しい(あるいはほぼ等しい)ことが好ましい。このため、ロータ14の極対数をpとし、ロータ14の回転中心軸からロータ巻線28n、28sまでの距離をrとした場合に、周方向に関する各ロータ巻線28n、28sの幅θは、以下の(2)式を満たす(あるいはほぼ満たす)ことが好ましい。
【0064】
このようにすることで、ロータ巻線28n、28sに発生する空間高調波による誘導起電力を最大にすることができ、誘導電流により各主突極26に発生する磁束を最も効率よく増大させることができる。この結果、ロータ14に作用するトルクをより効率よく増大させることができる。すなわち、幅θが90°に相当する幅を大きく超えると、互いに打ち消し合う方向の起磁力がロータ巻線28n、28sに鎖交しやすくなるが、90°に相当する幅よりも小さくなるのにしたがって、その可能性が低くなる。ただし、幅θが90°に相当する幅よりも大きく減少すると、ロータ巻線28n、28sに鎖交する起磁力の大きさが大きく低下する。このため、幅θを約90°に相当する幅とすることでそのような不都合を防止できる。このため、周方向に関する各ロータ巻線28n、28sの幅θは、電気角で90°に相当する幅に略等しくすることが好ましい。
【0065】
また、回転電機10では、ステータ巻線20u,20v,20wに流す交流電流の位相である、ロータ位置に対する電流進角を制御することで、ロータ14のトルクを制御することもできる。さらに、ステータ巻線20u,20v,20wに流す交流電流の振幅を制御することによって、ロータ14のトルクを制御することもできる。また、ロータ14の回転数を変化させてもロータ14のトルクが変化するため、ロータ14の回転数を制御することによって、ロータ14のトルクを制御することもできる。
【0066】
次に、
図8、
図9を用いて比較例と本実施形態とにおいて、回転電機の空間高調波の磁束線のシミュレーション結果を説明する。
図8、
図9は、それぞれ空間高調波の磁束線を示す略図であり、
図8は、比較例の場合を、
図9は、上記の
図1〜5に示した実施の形態の場合を、それぞれ示している。
図8に示す比較例は、上記の
図1〜5に示した実施の形態の回転電機10において、各補助突極44を省略している。
図8、
図9のいずれの場合も、ロータ14とステータ12との位相関係は同一としている。この場合、ステータ12のティース18の周方向一部と、ロータ14の主突極26の周方向一部とが径方向に対向している。
【0067】
このシミュレーション結果から明らかなように、補助突極44を設けている
図9に示す本実施の形態では、補助突極44がない
図8の比較例に比べて、空間高調波の磁束線が補助突極44を通過しつつ誘導巻線30,34に多く鎖交することが分かる。
【0068】
なお、上記の
図4、
図5Aに示した構成では、ロータ14の周方向に隣り合う2個の主突極26を1組として、各組で1個の主突極26に巻かれた第1誘導巻線30の一端と、別の主突極26に巻かれた第2誘導巻線34の一端とを、2個の整流素子である第1ダイオード38及び第2ダイオード40を介して接続する場合を説明した。ただし、本実施形態では、
図5Bのように構成することもできる。
図5Bは、ロータ巻線に接続するダイオードの数を少なくした別例を示す、
図5Aに対応する図である。
図5Bに示す別例では、本実施形態において、ロータのN極となる周方向1つおきの主突極26(
図3参照)の先端側に巻装した複数の第1誘導巻線30同士を直列に接続することで第1誘導巻線組86を形成し、ロータのS極となる周方向1つおきの主突極26の先端側に巻装した複数の第2誘導巻線34同士を直列に接続することで第2誘導巻線組88を形成している。第1誘導巻線組86及び第2誘導巻線組88の一端は、互いに順方向が逆になる第1ダイオード38及び第2ダイオード40を介して、接続点Rで接続されている。
【0069】
また、
図5Bに示すように、ロータの周方向に隣り合うN極及びS極の2つの主突極26(
図3参照)を1組とした場合に、各組において第1共通巻線32及び第2共通巻線36同士を直列に接続することで共通巻線組42を形成するとともに、全部の主突極26に関する全部の共通巻線組42同士を直列接続している。さらに、直列接続した複数の共通巻線組42のうち、一端となる1つの共通巻線組42の第1共通巻線32の一端を接続点Rに接続し、他端となる別の共通巻線組42の第2共通巻線36の一端を、第1誘導巻線組86及び第2誘導巻線組88の接続点Rとは反対側の他端に接続している。このような構成では、上記の
図4、
図5Aに示した構成と異なり、ロータに設けるダイオードの総数を第1ダイオード38及び第2ダイオード40の2つに減らすことができる。この場合でも各主突極26の側面に補助突極44(
図3参照)を形成し、補助突極44で仕切られた径方向外側と径方向内側との空間にそれぞれ誘導巻線30,34及び共通巻線32,36を配置することができる。
【0070】
なお、上記の
図1〜
図7に示した実施形態では、ロータ巻線28n、28sの誘導巻線30,34及び共通巻線32,36の全体が主突極26に巻かれた場合を説明した。ただし、ロータが磁性材製の環状コアと、環状コアの周方向複数個所に設けられた磁性材製の主突極と、主突極の周方向側面に突出する磁性を有する補助突極とを備え、さらに各主突極の補助突極よりも径方向外側にロータ誘導巻線を巻装する構成において、主突極から外れた環状コアにロータ共通巻線を巻装するトロイダル巻きとする構成を採用することもできる。
【0071】
次に、
図10は、本発明の別の実施の形態の回転電機において、補助突極44の別例の第1例を示す、
図2に対応する図である。
図10に示す構成では、補助突極44は、各主突極26の周方向両側面から周方向に突出するように結合され、長さ方向中間部で径方向外側に向かうように略直角に曲げられている。すなわち、補助突極44は、周方向の根元側板部74に径方向の先端側板部76が結合されている。このため、各補助突極44の先端側部分は、ロータ14の略径方向に伸びている。また、各補助突極44の先端側部分と主突極26とが平行に配置されている。なお、各主突極26の先端側部分は根元側部分に鈍角で結合することもできる。例えば、各主突極26の先端側部分は、ロータ14中心の方向に向く径方向に設けることもできる。
【0072】
このような
図10に示す構成では、
図2に示した構成の場合と異なり、補助突極44の径方向外側に配置する誘導巻線30(34)の総断面積を大きくできる。このため、ロータ14の径方向に関して補助突極44よりも外側に多くのロータ巻線28n(28s)を配置しやすくなる。その他の構成及び作用は、上記の
図1から
図7に示した実施形態と同様である。
【0073】
次に、
図11は、本発明の別の実施の形態の回転電機において、補助突極44の別例の第2例を示す、
図2のB部拡大対応図である。
図11に示す構成では、上記の
図1から
図7に示した実施形態において、各補助突極44の先端部に先端に向かうほど周方向に関する幅が大きくなる幅広先端部62が設けられている。すなわち、各補助突極44は幅広先端部62を有し、幅広先端部62は、ロータ14の径方向外側に向かうほど周方向に関する幅が大きくなっている。また、幅広先端部62のステータ12に対向する先端面Pは、ステータ12とロータ14との間の環状のギャップ空間64の周方向に沿う曲面またはこの曲面に接する平坦面としている。このような構成によれば、各補助突極44の長さ方向の全体で周方向に関する幅を大きくすることなく、ステータ12から空間高調波の必要な磁束成分、例えば空間2次の高調波成分を補助突極44から主突極26に効率よく誘導できる。このため、ロータ巻線28n(28s)の配置空間を過度に小さくすることなく、ステータ12から空間高調波の必要な磁束成分を補助突極44または主突極26を通じて主突極26または補助突極44に効率よく誘導して、ロータ巻線28n(28s)に効率よく多くの磁束を鎖交させることができる。この結果、回転電機10のトルク及び効率を有効に向上させることができる。その他の構成及び作用は、上記の
図1から
図7に示した実施形態と同様である。
【0074】
また、
図12は、本発明の別の実施の形態の回転電機において、補助突極44の別例の第3例を示す、
図2のB部拡大対応図である。
図12に示す構成では、補助突極44の先端部だけでなく、中間部も周方向の幅を大きくしている。すなわち、補助突極44の周方向に関する幅は、根元部から先端に向かうに従って徐々に大きくしている。また、補助突極44の先端部に、ロータ14の径方向外側に向かうほど周方向に関する幅が大きくなる幅広先端部66が設けられている。このような構成の場合も、上記の
図11に示した構成と同様に、ロータ巻線28n(28s)の配置空間を過度に小さくすることなく、ステータ12から空間高調波の必要な磁束成分を補助突極44または主突極26を通じて主突極26または補助突極44に効率よく誘導して、回転電機10のトルク及び効率を有効に向上させることができる。その他の構成及び作用は、上記の
図1から
図7に示した実施形態または上記の
図11に示した構成と同様である。
【0075】
また、
図13は、本発明の別の実施の形態の回転電機において、補助突極44の別例の第4例を示す、
図2のB部拡大対応図である。
図13に示す構成のように、補助突極44は、先端部の周方向の幅を長さ方向の略全体で同じとする場合でも、先端面Pをステータ12とロータ14との間の環状のギャップ空間64の周方向に沿う曲面またはこの曲面に接する平坦面とすることもできる。その他の構成及び作用は、上記の
図1から
図7に示した実施形態と同様である。
【0076】
図14は、本発明の別の実施の形態の回転電機において、ロータ14及びステータ12の周方向一部を示す概略断面図である。
図15は、
図14の電磁石型回転電機において、ロータ巻線68n、68sに流れる誘導電流により生成される磁束がロータ14中に流れる様子を示す模式図である。上記の
図1〜
図7に示した実施形態では、各主突極26に誘導巻線30,34及び共通巻線32,36を巻装する場合を説明した。ただし、
図14、
図15に示す構成のように、各主突極26に巻装するロータ巻線68n、68sを、隣り合う別の主突極26に巻装される別のロータ巻線68s、68nに対して分断されるようにすることもできる。すなわち、ロータ14は、周方向に関して1つおきの主突極26に複数の第1ロータ巻線68nをそれぞれ集中巻きで巻線し、第1ロータ巻線68nを巻線した主突極26と隣り合う主突極26であって、周方向1つおきの主突極26に、複数の第2ロータ巻線68sをそれぞれ集中巻きで巻線している。
【0077】
また、複数の第1ロータ巻線68nを直列接続した第1ロータ巻線回路70に1つの第1ダイオード38を接続し、複数の第2ロータ巻線68sを直列接続した第2ロータ巻線回路72に1つの第2ダイオード40を接続している。すなわち、ロータ14の周方向に1つおきに配置された複数の第1ロータ巻線68nは、電気的に直列に接続され、かつ無端状に接続されるとともに、その間の一部に第1ダイオード38が各第1ロータ巻線68nと直列に接続され、第1ロータ巻線回路70が構成されている。各第1ロータ巻線68nは、同じ磁極(N極)として機能する主突極26に巻装されている。
【0078】
また、複数の第2ロータ巻線68sは、電気的に直列に接続され、かつ無端状に接続されるとともに、その間の一部に第2ダイオード40が各第2ロータ巻線68sと直列に接続され、第2ロータ巻線回路72が構成されている。各第2ロータ巻線68sは、同じ磁極(S極)として機能する主突極26に巻装されている。また、周方向に隣り合う(異なる磁極の磁石が形成される)主突極26に巻装されたロータ巻線68n、68sは、互いに電気的に分断されている。
【0079】
また、ロータ14の周方向に隣り合う主突極26同士で、異なる磁極の磁石が形成されるように、各ダイオード38,40によるロータ巻線68n、68sの電流の整流方向を互いに逆にしている。すなわち、周方向において隣り合うように配置された第1ロータ巻線68nと第2ロータ巻線68sとで流れる電流の向き(ダイオード38,40による整流方向)、すなわち順方向が互いに逆になるようにダイオード38,40がロータ巻線68n、68sに接続されている。ダイオード38,40は、互いに逆向きでロータ巻線68n、68sに接続されている。
【0080】
また、各ロータ巻線68n、68sの巻回中心軸は径方向と一致している。そして各ダイオード38,40は、ステータ12で生成される空間高調波を含む回転磁界による誘導起電力の発生により、対応するロータ巻線68n、68sに流れる電流を整流することで、ロータ14の周方向に隣り合うロータ巻線68n、68sに流れる電流の位相を、A相とB相とに交互に異ならせている。また、ダイオード38,40は、誘導起電力の発生により、対応するロータ巻線68n、68sに流れる電流を独立して整流し、各ロータ巻線68n、68sに流れる電流により生成される周方向複数個所の主突極26の磁気特性を周方向に交互に異ならせている。この構成では、ダイオード38,40の数を全体で2つに減らすことができ、ロータ14の巻線構造を簡略化することができる。
【0081】
さらに、各主突極26の周方向両側面に補助突極44を突出させ、補助突極44で各主突極26に巻かれたロータ巻線68n、68sを先端側と根元側とに分けているが、ロータ巻線68n、68sの先端側及び根元側同士は直列に接続されている。なお、図示の例では、補助突極44は、主突極26の周方向側面に周方向に対し傾斜する方向に突出形成しているが、上記の
図10に示した構成のように、補助突極44を周方向両側面に周方向に突出させ、中間部で径方向に曲げるように形成することもできる。また、
図11,12に示した構成のように、補助突極44の先端部の周方向の幅を大きくすることもできる。
図14、
図15に示した構成の場合も、ステータ12で生成される回転磁界に含まれる空間高調波をロータ巻線68n、68sに多く鎖交させて、回転電機10のトルク及び効率を向上することができる。その他の構成及び作用は、上記の
図1から
図7に示した構成と同様である。
【0082】
また、
図16に示すように、各主突極26に巻装されたロータ巻線68n、68sごとにそれぞれ1つずつ第1ダイオード38または第2ダイオード40を短絡するように接続することもできる。その他の構成及び作用は、上記の
図1から
図7に示した構成、または上記の
図14、
図15に示した構成と同様である。
【0083】
なお、図示は省略するが、上記の
図6に示した回転電機駆動システム50において、回転電機10のq軸電流またはd軸電流にパルス電流を周期的に重畳させることにより、回転電機10のさらなるトルク増大を図ることもできる。q軸電流にパルス電流を重畳させる場合、パルス状に減少してから増大する減少パルス電流を重畳させることが、インバータ52の小型化等を図る面から好ましい。d軸電流にパルス電流を重畳させる場合、パルス状に増大してから減少する増加パルス電流を重畳させることが、トルク増大の面から好ましい。d軸電流に増加パルス電流を重畳させるのと同時にq軸電流に減少パルス電流を重畳させることもできる。なお、d軸とは、回転電機10の周方向に関してロータ巻線28n、28s(または68n、68s)の巻回中心軸方向である磁極方向をいい、q軸とはd軸に対し電気角で90度進んだ方向をいう。例えば、上記の
図1、
図14に示すようにロータ14の回転方向が規定される場合、d軸方向、q軸方向は、
図1、
図14にそれぞれ矢印で示したような関係で規定される。
【0084】
以上、本発明を実施するための形態について説明したが、本発明はこうした実施形態に何ら限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において、種々なる形態で実施し得ることは勿論である。例えば、上記では、ステータの径方向内側にロータが対向配置された場合を説明したが、ステータの径方向外側にロータが対向配置された構成でも本発明を実施できる。また、ステータ巻線はステータに集中巻きで巻線する場合を説明したが、例えばステータで空間高調波を含む回転磁界を生成できるのであればステータにステータ巻線を分布巻きで巻線する構成でも本発明を実施できる。また、上記の各実施形態では、磁気特性調整部をダイオードとした場合を説明したが、ロータ巻線に発生する誘導起電力によって前記複数の主突極に生じる磁気特性を周方向で異ならせる機能を有するものであれば、他の構成を採用することもできる。また、本発明では、例えばアキシャルギャップ型の回転電機等の構成を採用することもできる。