特許第5784994号(P5784994)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5784994ロールブラインド及びロールブラインドの製造方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5784994
(24)【登録日】2015年7月31日
(45)【発行日】2015年9月24日
(54)【発明の名称】ロールブラインド及びロールブラインドの製造方法
(51)【国際特許分類】
   E06B 9/44 20060101AFI20150907BHJP
【FI】
   E06B9/44
【請求項の数】7
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2011-132414(P2011-132414)
(22)【出願日】2011年6月14日
(65)【公開番号】特開2013-2084(P2013-2084A)
(43)【公開日】2013年1月7日
【審査請求日】2014年5月23日
(73)【特許権者】
【識別番号】000250672
【氏名又は名称】立川ブラインド工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(72)【発明者】
【氏名】山岸 万人
(72)【発明者】
【氏名】江波戸 武信
(72)【発明者】
【氏名】中村 元
【審査官】 佐藤 美紗子
(56)【参考文献】
【文献】 特開2007−138569(JP,A)
【文献】 実開平07−015997(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E06B 9/00−9/92
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
支持ブラケットに回転可能に支持された巻取軸から生地押さえを介して巻ずれ特性のあるスクリーンを吊下支持し、前記巻取軸に前記スクリーンを巻取り、あるいは巻戻して前記スクリーンを昇降するロールブラインドにおいて、
前記スクリーンの上端部に取着された生地取付部材であって、前記スクリーンの表裏を切り替え可能にして、前記生地押さえに仮止めされる生地取付部材と、
前記巻取軸の外周面上に設けられ、前記スクリーンを全て巻き戻した状態の前記巻取軸に対し、該巻取軸の軸方向に位置調節可能として前記スクリーンの巻ずれを調整する調整部材とを備える
ことを特徴とするロールブラインド。
【請求項2】
前記調整部材は、弾性を有する薄板で、一部を開口した円筒状に形成したことを特徴とする請求項1記載のロールブラインド。
【請求項3】
前記調整部材は、前記巻取軸の外周面上で位置調節可能に貼着される可剥離シートとしたことを特徴とする請求項1記載のロールブラインド。
【請求項4】
前記巻取軸には、前記調整部材の取付位置を表示する表示手段を備えたことを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載のロールブラインド。
【請求項5】
支持ブラケットに回転可能に支持された巻取軸から生地押さえを介して巻ずれ特性のあるスクリーンを吊下支持し、前記巻取軸に前記スクリーンを巻取り、あるいは巻戻して前記スクリーンを昇降するロールブラインドの製造方法において、
前記スクリーンの上端部に生地取付部材を取着し、前記スクリーンの表裏を切り替え可能にして、前記生地押さえに仮止めし、前記生地押さえを前記巻取軸に取り付ける工程と、
調整部材を、前記スクリーンを全て巻き戻した状態の前記巻取軸の外周面上に取り付ける工程とを備え、
前記巻取軸から垂下される前記スクリーンの表裏を切り替え、前記巻取軸に対し前記スクリーンを巻き取り試行して前記スクリーンの巻ずれを検出する工程と、
前記巻ずれを解消するように前記調整部材の取付位置を前記巻取軸の軸方向に移動させる工程と
をさらに備えることを特徴とするロールブラインドの製造方法。
【請求項6】
前記巻ずれを解消する前記調整部材の取付位置を検出し、前記巻取軸の外周面に前記取付位置を表示する表示手段を設けたことを特徴とする請求項5記載のロールブラインドの製造方法。
【請求項7】
同一の生地で同一サイズのスクリーンを備えた多数のロールブラインドの前記調整部材を、ひとつの前記ロールブラインドの巻き取り試行により得られた調整部材の取付位置にあわせて移動させることを特徴とする請求項5記載のロールブラインドの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、スクリーンの表裏を入れ替え可能としたロールブラインドに関するものである。
【背景技術】
【0002】
ロールブラインドは、取付面に回転可能に支持された巻取軸からスクリーンが垂下され、巻取軸をスクリーン巻取り方向に回転操作することにより、スクリーンが巻取軸に巻き取られて上昇する。また、巻取軸をスクリーン巻き戻し方向に回転操作することにより、スクリーンが巻取軸から巻き戻されて下降する。
【0003】
このようなロールブラインドでは、スクリーンの表裏を入れ替えて、部屋の模様替えを図りたいという要望があった。
特許文献1には、巻取筒から垂下するスクリーンを、巻取筒の前方へ垂下するか後方へ垂下するかを切り替えることにより、スクリーンの表裏を入れ替えるようにしたロールブラインドが開示されている。
【0004】
特許文献2には、巻取軸の外周面に設けられた係止溝にスクリーンの上端部のビーズ連結部を係止して巻取軸からスクリーンを垂下したロールブラインドが開示されている。このロールブラインドでは、ビーズ連結部を巻取軸の一側に引き抜いてスクリーンをひっくり返し、再度ビーズ連結部を係止溝に挿入すると、スクリーンの裏表を切り替え可能である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平3−221693号公報
【特許文献2】実開平3−63692号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ロールブラインドのスクリーンを構成する生地には、巻ずれ特性がある場合がある。図29に示すように、上端にロールブラインドの巻取軸に取着可能とした生地押さえ51を備えたスクリーン52において、生地厚の厚い第一の生地部53と、生地厚の薄い第二の生地部54とを備えたものがある。このようなスクリーン52で、第一の生地部53の幅方向の中心とスクリーン52の幅方向の中心とが一致しない場合には、巻ずれ特性が生ずる。
【0007】
そして、図29においては、スクリーン52の幅方向の中心に対し、第一の生地部53の幅方向の中心が左側にずれているため、スクリーン52の左側半分の生地厚平均が右側半分の生地厚平均より大きくなる。従って、このスクリーン52では左側への巻ずれが発生する。
【0008】
図30では、第一の生地部53の幅方向中心がスクリーン52の幅方向中心より右側にずれているため、右側への巻ずれが発生する。
図31では、生地押さえ51に対し生地が斜めに取り付けられて、スクリーン52の左端縁の下端が鉛直線に対しずれ幅tで左側にずれている。このような場合には、スクリーン52に左側への巻ずれが発生する。
【0009】
図32では、生地押さえ51に対し生地が斜めに取り付けられて、スクリーン52の右端縁の下端が鉛直線に対しずれ幅tで右側にずれている。このような場合には、スクリーン52に右側への巻ずれが発生する。
【0010】
図33では、生地の裁断時の誤差により、スクリーン52の上部の幅と下部の幅に誤差が生じ、スクリーン52の左端縁の下端が鉛直線に対しずれ幅tで左側にずれている。このような場合には、スクリーン52に左側への巻ずれが発生する。
【0011】
図34では、生地の裁断時の誤差により、スクリーン52の上部の幅と下部の幅に誤差が生じ、スクリーン52の右端縁の下端が鉛直線に対しずれ幅tで右側にずれている。このような場合には、スクリーン52に右側への巻ずれが発生する。
【0012】
図35では、生地の裁断時の誤差により、スクリーン52が平行四辺形状に裁断され、スクリーン52の左端縁の下端が鉛直線に対しずれ幅tで左側にずれている。このような場合には、スクリーン52に左側への巻ずれが発生する。
【0013】
図36では、生地の裁断時の誤差により、スクリーン52が平行四辺形状に裁断され、スクリーン52の右端縁の下端が鉛直線に対しずれ幅tで右側にずれている。このような場合には、スクリーン52に右側への巻ずれが発生する。
【0014】
このような巻ずれ特性のあるスクリーンを、特許文献1のようなロールブラインドに使用するときには、従来からある巻ずれ調整シールにより巻ずれを解消するように調整すればよい。
【0015】
しかし、スクリーンの表裏を入れ替えると、スクリーンの昇降操作時の巻取筒の回転方向が逆方向となる。従って、巻取筒内に収容されるスプリングモーターやストッパーの動作方向を逆方向とする必要があるため、巻取筒内の昇降装置の構造が複雑となる。
【0016】
特許文献2に開示されたロールブラインドでは、巻ずれ特性のある生地を使用する場合に、巻ずれを調整するために調整シールを使用すると、表裏いずれかの面に対して巻ずれを調整できたとしても、調整シールの付け替えができないので、表裏を入れ替えた場合には、巻ずれが生じてしまうという問題点が発生する。
【0017】
この発明の目的は、複雑な機構を用いることなく、巻ずれ特性のあるスクリーンの表裏を入れ替えても、巻ずれを発生させることなくスクリーンを巻き取り可能としたロールブラインドを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0018】
請求項1では、支持ブラケットに回転可能に支持された巻取軸から生地押さえを介して巻ずれ特性のあるスクリーンを吊下支持し、前記巻取軸に前記スクリーンを巻取り、あるいは巻戻して前記スクリーンを昇降するロールブラインドにおいて、前記スクリーンの上端部に取着された生地取付部材であって、前記スクリーンの表裏を切り替え可能にして、前記生地押さえに仮止めされる生地取付部材と、前記巻取軸の外周面上に設けられ、前記スクリーンを全て巻き戻した状態の前記巻取軸に対し、該巻取軸の軸方向に位置調節可能として前記スクリーンの巻ずれを調整する調整部材とを備える。
【0019】
請求項2では、前記調整部材は、弾性を有する薄板で、一部を開口した円筒状に形成した。
請求項3では、前記調整部材は、前記巻取軸の外周面上で位置調節可能に貼着される可剥離シートとした。
【0020】
請求項4では、前記巻取軸には、前記調整部材の取付位置を表示する表示手段を備えた。
請求項5では、支持ブラケットに回転可能に支持された巻取軸から生地押さえを介して巻ずれ特性のあるスクリーンを吊下支持し、前記巻取軸に前記スクリーンを巻取り、あるいは巻戻して前記スクリーンを昇降するロールブラインドの製造方法において、前記スクリーンの上端部に生地取付部材を取着し、前記スクリーンの表裏を切り替え可能にして、前記生地押さえに仮止めし、前記生地押さえを前記巻取軸に取り付ける工程と、調整部材を、前記スクリーンを全て巻き戻した状態の前記巻取軸の外周面上に取り付ける工程とを備える。そして、前記巻取軸から垂下される前記スクリーンの表裏を切り替え、前記巻取軸に対し前記スクリーンを巻き取り試行して前記スクリーンの巻ずれを検出する工程と、前記巻ずれを解消するように前記調整部材の取付位置を前記巻取軸の軸方向に移動させる工程とをさらに備える
【0021】
請求項6では、前記巻ずれを解消する前記調整部材の取付位置を検出し、前記巻取軸の外周面に前記取付位置を表示する表示手段を設けた。
請求項7では、同一の生地で同一サイズのスクリーンを備えた多数のロールブラインドの前記調整部材を、ひとつの前記ロールブラインドの巻き取り試行により得られた調整部材の取付位置にあわせて移動させる。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、複雑な機構を用いることなく、巻ずれ特性のあるスクリーンの表裏を入れ替えても、巻ずれを発生させることなくスクリーンを巻き取り可能としたロールブラインドを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1】ロールブラインドを示す正面図である。
図2】ロールブラインドを示す側面図である。
図3】第一の実施形態の調整部材と巻取軸を示す分解斜視図である。
図4】第一の実施形態の調整部材と巻取軸を示す側面図である。
図5】スクリーン取付装置を示す断面図である。
図6】スクリーン取付装置を示す側面図である。
図7】スクリーン取付装置を示す断面図である。
図8】スクリーン取付装置を示す側面図である。
図9】スクリーンの取付手順を示す断面図である。
図10】スクリーンの取付手順を示す断面図である。
図11】スクリーンの取付手順を示す断面図である。
図12】スクリーンの取付手順を示す断面図である。
図13】スクリーンの取付手順を示す断面図である。
図14】スクリーンの取付手順を示す断面図である。
図15】巻ずれ調整操作を示す説明図である。
図16】巻ずれ調整操作を示す説明図である。
図17】巻ずれ調整操作を示す説明図である。
図18】巻ずれ調整操作を示す説明図である。
図19】巻ずれ調整操作を示す説明図である。
図20】第二の実施形態を示す側面図である。
図21】第三の実施形態の巻ずれ調整操作を示す説明図である。
図22】第三の実施形態の巻ずれ調整操作を示す説明図である。
図23】第三の実施形態の巻ずれ調整操作を示す説明図である。
図24】第三の実施形態の巻ずれ調整操作を示す説明図である。
図25】第四の実施形態を示す説明図である。
図26】第四の実施形態を示す説明図である。
図27】第四の実施形態を示す説明図である。
図28】第四の実施形態を示す説明図である。
図29】従来例を示す説明図である。
図30】従来例を示す説明図である。
図31】従来例を示す説明図である。
図32】従来例を示す説明図である。
図33】従来例を示す説明図である。
図34】従来例を示す説明図である。
図35】従来例を示す説明図である。
図36】従来例を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
(第一の実施形態)
以下、この発明を具体化したロールブラインドの巻ずれ調整装置の第一の実施形態を図1図19に従って説明する。
【0025】
図1及び図2に示すロールブラインドは、取付ブラケット1を介して取付面に固定されるフレーム2の両端に支持ブラケット3が取着され、その支持ブラケット3間に巻取軸4が回転可能に支持されている。そして、巻取軸4からスクリーン5が垂下され、そのスクリーン5の下端にボトムレール6が吊下支持されている。
【0026】
前記巻取軸4の一端は操作装置7を介して前記支持ブラケット3に支持され、操作装置7に設けられるプーリーから無端状のボールチェーン8が垂下されている。そして、ボールチェーン8の操作により、巻取軸4を正逆方向に回転操作可能となっている。
【0027】
ボールチェーン8を操作して、巻取軸4をスクリーン巻取り方向に回転させると、巻取軸4にスクリーン5が巻き取られてスクリーン5が上昇する。また、巻取軸4をスクリーン巻き戻し方向に回転させると、巻取軸4からスクリーン5が巻き戻されてスクリーン5が下降する。
【0028】
前記巻取軸4はアルミ押出し形材で形成され、図2及び図4に示すように、その外周面の一側に取付凹部9が形成されている。この取付凹部9は、前記スクリーン5の上端を巻取軸4に取着するための生地押さえ10を取着するための第一の凹部12と、前記スクリーン5の巻ずれを調整する後記調整部材24を取着するための第二の凹部13とからなる。
【0029】
前記第一の凹部12には、底面から径方向外側に突出する係止突条14が形成され、その係止突条14の先端部に膨径部15が形成されている。前記第一の凹部12の一側には巻取軸4の外周面を延長するように庇部16が形成されている。前記第一の凹部12と第二の凹部13とはリブ17で仕切られている。
【0030】
前記生地押さえ10は、弾性を有する合成樹脂で前記巻取軸4とほぼ同様な長さの板状に形成され、その断面基端側に前記膨径部15を弾性的に嵌合可能とした第一の嵌合溝18が形成されている。
【0031】
前記生地押さえ10の表面は、巻取軸4の外周面に沿う円弧面に形成され、生地押さえ10の断面先端側に延びる弾性片19の先端部19aは、前記庇部16の下方に挿入可能となるように屈曲されている。
【0032】
そして、生地押さえ10の断面先端部を庇部16の下方に挿入した状態で、第一の嵌合溝18を係止突条14の膨径部15に嵌合すると、生地押さえ10の表面は巻取軸4の外周面の延長線上に位置する。
【0033】
前記生地押さえ10には、第一の嵌合溝18に隣接して生地押さえ10の断面先端側に向かって開口する第二の嵌合溝20が形成されている。そして、前記第二の嵌合溝20には生地取付部材21の一端部を嵌合可能となっている。
【0034】
前記生地取付部材21は、合成樹脂で板状に成形され、その断面基端側に前記第二の嵌合溝20に弾性的に嵌合可能とした膨径部22が形成されている。
前記生地取付部材21の表裏面の一方の面において、前記膨径部22には前記スクリーン5の上端部を当接させて位置決め可能とした保持部23が形成されている。そして、前記スクリーン5の上端はその端部を保持部23に当接させた状態で生地取付部材21に縫製により取着されている。
【0035】
上記のような生地押さえ10及び生地取付部材21を使用すると、スクリーン5の上端を巻取軸4に取着可能であるとともに、巻取軸4から垂下されるスクリーン5の表裏を入れ替え可能である。
【0036】
スクリーン5の上端部を巻取軸4に取着するには、図9に示すように、まず生地取付部材21にスクリーン5の上端部を縫着する。
次いで、例えば縫着したスクリーン5が生地取付部材21の上方に位置する状態で膨径部22を第二の嵌合溝20に嵌合して、生地取付部材21を生地押さえ10に仮止めする。
【0037】
次いで、図10に示すように、スクリーン5を生地押さえ10の表面側に案内した状態で、生地押さえ10の弾性片19及び生地取付部材21の先端部を巻取軸4の庇部16の下方に挿入し、生地押さえ10の第一の嵌合溝18を係止突条14の膨径部15に嵌合する。
【0038】
すると、図5に示すように、スクリーン5は弾性片19の先端部19aと庇部16の先端との間を経て生地押さえ10の表面に案内され、スクリーン5を巻取軸4に巻き取り可能となる。この場合には、図6に示すように、例えば室内側にスクリーン5の裏面Bが露出され、室外側に表面Aが露出される。
【0039】
また、巻取軸4にスクリーン5が巻き取られると、図11に示すように、スクリーン5の巻圧により生地押さえ10の弾性片19が巻取軸4の径方向に撓み、弾性片19と庇部16との間の段差がなくなる。
【0040】
室内側にスクリーン5の表面Aが露出されるようにする場合には、図12に示すように、縫着したスクリーン5が生地取付部材21の下方に位置する状態で、図13に示すように、膨径部22を第二の嵌合溝20に嵌合して、生地取付部材21を生地押さえ10に仮止めする。
【0041】
次いで、スクリーン5を生地押さえ10の表面側に案内した状態で、生地押さえ10及び生地取付部材21の先端部を巻取軸4の庇部16の下方に挿入し、生地押さえ10の第一の嵌合溝18を係止突条14の膨径部15に嵌合する。
【0042】
すると、図7に示すように、スクリーン5を巻取軸4に巻き取り可能となり、図8に示すように、室内側にスクリーンの表面Aが露出され、室外側に裏面Bが露出される。
前記巻取軸4には、前記スクリーン5の巻ずれを調整する調整部材24が嵌着されている。この調整部材24は、図3及び図4に示すように、弾性を有する合成樹脂の薄板で一部を開口した円筒状に形成され、その内径は前記巻取軸4の外径より若干小さい径で形成されている。また、開口部の一方の端縁に円筒の中心に向かって突出する係止片25が形成されている。
【0043】
調整部材24の開口部は、調整部材24を巻取軸4に嵌合しない状態で、円筒の中心に対し約70度の範囲で開口されている。また、調整部材24を巻取軸4に嵌合した状態では、開口部が約90度の範囲で開口され、図6に示すように、前記生地押さえ10には被さらないようになっている。調整部材24の長さは、巻取軸4の長さに比べて充分に短い長さで形成される。
【0044】
そして、巻取軸4に図2に示す生地押さえ10を介してスクリーン5を取り付けた後に、巻取軸4からスクリーン5を全て巻き戻した状態で、調整部材24の開口部を弾性的に拡開しながら、図3に矢印で示すように、同調整部材24を巻取軸4の軸方向に直交する方向(径方向)から同巻取軸4に嵌合可能となっている。
【0045】
このロールブラインドを窓枠等に設置した状態では、ロールブラインドの正面方向、すなわち図2において巻取軸4の右方向から巻取軸4に嵌合可能である。そして、巻取軸4に嵌合された調整部材24は、巻取軸4の外周面上をスライドさせて、巻取軸4の長手方向に移動可能となっている。
【0046】
次に、上記のような調整部材24の作用を説明する。
図15及び図16に示すように、例えばスクリーン5の表面Aが室内側に露出されるように巻取軸4に取着され、この状態で巻取軸4には調整部材24が取着されている。調整部材24の位置は、スクリーン5に巻ずれが生じない位置に設定されている。
【0047】
この例では、スクリーン5が右ずれ特性のある生地で構成される場合を示し、巻取軸4にスクリーン5が巻き取られるにつれて、スクリーン5の右端縁が右側の支持ブラケットに徐々に近づく特性がある生地である。
【0048】
すなわち、スクリーン5の中心線Cから右側の生地厚の平均が、中心線Cの左側の生地厚の平均より厚い生地や、前記生地取付部材21に対し生地が右上がりに取着されている生地、生地の右側が下端に向かい右方向に広がっている生地である。
【0049】
一方、左ずれ特性のある生地は、スクリーン5の中心線Cから左側の生地厚の平均が、中心線Cの右側の生地厚の平均より厚い生地や、前記生地取付部材21に対し生地が左上がりに取着されている生地、生地の左側が下端に向かい右方向に広がっている生地である。
【0050】
このようなロールブラインドは、生地の裁断工程、生地の縫製工程、組立工程、検査工程を経て製造される。裁断工程では、生地が必要寸法に合わせてレーザーカッターで裁断される。
【0051】
縫製工程では、裁断工程で必要寸法に裁断された生地の上下両端に生地取付部材若しくは生地押さえが縫着される。
組立工程では、フレーム、巻取軸及びボトムレールが必要寸法に合わせて切断され、巻取軸内にクラッチ装置、スプリングモーター、軸受け、操作チェーン等の機構部品が組み込まれる。そして、巻取軸が支持ブラケットの間に回転可能に取着され、縫製工程で形成された生地の生地押さえが巻取軸及びボトムレールに取着される。
【0052】
検査工程では、縫製工程で仕上がった生地に巻ずれ特性があるか否か不明な場合に、スクリーンを巻取軸に巻き取る巻き取り試行が行われる。
巻き取り試行において、スクリーンに右方向への巻ずれが発生した場合には、図15において、調整部材24をスクリーンの中心線Cより左側に位置させて再度巻き取り試行を行う。そして、依然として同方向に巻ずれが生じる場合には、調整部材24をさらに同方向に移動させる。
【0053】
巻ずれが左方向に転じた場合には、調整部材24を右側に僅かに移動させて巻き取り試行を行い、このような操作を繰り返して、調整部材24を巻ずれが発生しない位置に移動させる。
【0054】
また、巻き取り試行で巻ずれが生じない場合には、調整部材24を巻取軸4の長手方向中央部に取着する。
同一の生地で同一サイズのスクリーンを備えた多数のロールブラインドを製造する場合には、一つのサンプルの巻き取り試行によって得られた調整部材24の最適位置で多数のロールブラインドを製造する。
【0055】
また、縫製工程で形成された生地の誤差を測定し、その誤差と生地厚特性により調整部材の最適な取付位置を推定できるデータベースを準備した場合には、推定された取付位置に調整部材を取着する。
【0056】
図15及び図16に示す状態から、スクリーン5の表裏を入れ替えて、図18に示すように、スクリーン5の表面Aが室外側に露出されるように巻取軸4から吊下支持すると、スクリーン5の引き上げ操作時に生ずる巻ずれは、図16に示す状態とは異なる。
【0057】
そこで、図18に示すようにスクリーン5の表裏を入れ替えたとき、巻取軸4にスクリーン5を巻き取る試行操作を行い、巻ずれが発生するか否かを確認する。そして、図19に示すように、例えばスクリーン5に巻取軸4の右方向への巻ずれが発生した場合には、スクリーン5を全て巻き戻して、図17に示すように、調整部材24を巻取軸4の右方に移動させ、再度試行する。
【0058】
このような操作を繰り返して、調整部材24をスクリーン5に巻ずれが生じない位置に移動させる。
上記のように構成されたロールブラインドでは、次に示す効果を得ることができる。
(1)スクリーン5の巻き取り方向を変更することなく、スクリーン5の表裏を入れ替えることができる。従って、巻取軸4内に収容されるスプリングモーターやクラッチ装置等の機構部品を変更することなく、簡単な作業でスクリーン5の表裏を入れ替えて、リバーシブル構成のロールブラインドを提供することができる。
(2)スクリーン5に巻ずれ特性があっても、スクリーン5の表裏を入れ替えたとき、調整部材24の位置を調整することにより、巻ずれを解消することができる。
(第二の実施形態)
図20は、調整部材の第二の実施形態を示す。この実施形態の調整部材31は、開口部の両方の端縁に円筒の中心に向かって突出する係止片32a,32bが形成されている。
【0059】
巻取軸4には、前記係止片32aに係合する第二の凹部13と、前記係止片32bに係合する係止溝33が形成されている。その他の構成は、前記第一の実施形態と同一構成である。
【0060】
この実施形態のロールブラインドでは、第一の実施形態で得られた効果に加えて、次に示す効果を得ることができる。
(1)調整部材31の係止片32a,32bが、第二の凹部13と係止溝33に係合するので、調整部材31の巻取軸4からの不用意な外れを防止することができる。
(第三の実施形態)
図21図24は、第三の実施形態を示す。この実施形態は、前記第一及び第二の実施形態の調整部材に代えて、巻取軸に可剥離シールを調整部材として使用したものである。可剥離シールは、巻取軸に接着したシールを一旦剥がして、別の位置に再接着可能としたシールである。
【0061】
図21及び図22に示すように、例えばスクリーン5の表面Aが室内側に露出されるように巻取軸4に取着され、この状態で巻取軸4には可剥離シール41が貼着されている。可剥離シール41が貼着位置は、スクリーン5に巻ずれが生じない位置に設定されている。
【0062】
この状態から、スクリーン5の表裏を入れ替えて、図24に示すように、スクリーン5の表面Aが室外側に露出されるように巻取軸4から吊下支持すると、スクリーン5の引き上げ操作時に生ずる巻ずれは、図22に示す状態とは異なる。
【0063】
そこで、スクリーン5の表裏を入れ替えたとき、巻取軸4にスクリーン5を巻き取る試行操作を行い、巻ずれが発生するか否かを確認する。そして、図23に示すように、例えばスクリーン5に巻取軸4の右方向への巻ずれが発生した場合には、スクリーン5を全て巻き戻して、可剥離シール41を剥がして巻取軸4の右方に再接着し、再度試行する。
【0064】
このような操作を繰り返して、可剥離シール41をスクリーン5に巻ずれが生じない位置に貼着する。
従って、上記のような可剥離シールを使用して前記第一の実施形態と同様な効果を得ることができる。
(第四の実施形態)
図25図26は、第四の実施形態を示す。この実施形態は、前記第一及び第三の実施形態のロールブラインドの検査工程において、巻取軸4の外周面上に調整部材24,31の取付位置を示すマーキングを施すようにしたものである。
【0065】
図25に示すように、検査工程においてスクリーン5の表面が室内側に露出する状態で巻き取り試行を行い、調整部材24を巻ずれが生じない位置に移動させる。そして、図26に示すように、この状態での調整部材24の位置を示すマーキングM1を巻取軸4の外周面に施す。
【0066】
次いで、スクリーン5の裏面が室内側に露出する状態で巻き取り試行を行い、図26に示すように、調整部材24を巻ずれが生じない位置に移動させる。そして、図25に示すように、この状態での調整部材24の位置を示すマーキングM2を巻取軸4の外周面に施す。
【0067】
図27及び図28は、調整部材として可剥離シール41を使用する場合において、可剥離シール41の貼着位置にマーキングを施すようにしたものである。
図27に示すように、検査工程においてスクリーン5の表面が室内側に露出する状態で巻き取り試行を行い、可剥離シール41を巻ずれが生じない位置に貼着する。そして、図28に示すように、この状態での可剥離シール41の位置を示すマーキングM3を巻取軸4の外周面に施す。
【0068】
次いで、スクリーン5の裏面が室内側に露出する状態で巻き取り試行を行い、図28に示すように、可剥離シール41を巻ずれが生じない位置に移動させる。そして、図27に示すように、この状態での可剥離シール41の位置を示すマーキングM4を巻取軸4の外周面に施す。
【0069】
上記のように、検査工程でマーキングを施したロールブラインドでは、次に示す作用効果を得ることができる。
(1)マーキングM1,M2あるいは同M3,M4を巻取軸4の外周面に施したので、ロールブラインドの使用者あるいは施工者が、スクリーン5の表裏を入れ替える際、調整部材24,31あるいは可剥離シール41の取付変更位置を容易に確認することができる。従って、スクリーン5の表裏の入れ替え作業を、巻き取り試行を必要とすることなく、速やかに行うことができる。
【0070】
上記実施形態は、以下の態様で実施してもよい。
・外周面に生地押さえを取着するための取付溝やリブを具備しない円筒状の巻取軸に、第一の実施形態に示すような円筒の一部を開口した調整部材を嵌合してもよい。
・各実施形態において、調整部材は弾性を有する金属の薄板としてもよい。
・巻取軸4の外周面に、同巻取軸4の長手方向中央部からの距離を示す目盛りを設けてもよい。この目盛りにより、調整部材24,31あるいは可剥離シール41の位置調整を行う際の作業性を向上させることができる。
【符号の説明】
【0071】
3…支持ブラケット、4…巻取軸、5…スクリーン、24,31…調整部材、9…切り替え手段(取付凹部)、10…切り替え手段(生地押さえ)、14…切り替え手段(係止突条)、15…切り替え手段(膨径部)、20…切り替え手段(第二の嵌合溝)、21…切り替え手段(生地取付部材)、22…切り替え手段(膨径部)、M1〜M4(表示手段)。
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