(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5784997
(24)【登録日】2015年7月31日
(45)【発行日】2015年9月24日
(54)【発明の名称】ロック装置
(51)【国際特許分類】
E05B 85/26 20140101AFI20150907BHJP
B60N 2/44 20060101ALI20150907BHJP
B60J 5/00 20060101ALI20150907BHJP
【FI】
E05B85/26
B60N2/44
B60J5/00 M
【請求項の数】6
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2011-134010(P2011-134010)
(22)【出願日】2011年6月16日
(65)【公開番号】特開2013-2135(P2013-2135A)
(43)【公開日】2013年1月7日
【審査請求日】2014年4月18日
(73)【特許権者】
【識別番号】590001164
【氏名又は名称】シロキ工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100085187
【弁理士】
【氏名又は名称】井島 藤治
(72)【発明者】
【氏名】山崎 琢史
【審査官】
佐藤 美紗子
(56)【参考文献】
【文献】
特開2010−195369(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E05B 85/24−85/26
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
移動側、固定側のうちのどちらか一方に設けられたストライカと、
移動側、固定側のうちの他方に設けられ、前記ストライカが進入可能な溝が形成され、前記ストライカが前記溝に進入可能なアンロック位置から前記ストライカの前記溝からの離脱を禁止するロック位置まで回転可能なフックと、
回転可能に設けられ、前記ロック位置に位置する前記フックに係合することにより前記フックの回転を禁止するポールと、
前記フックと前記ポールとが係合する方向に付勢する付勢部材と、
を有し、
前記フックの周部に、
周面から内部に向かって形成された凹部と、
前記凹部と前記溝との間に形成され、前記フックの回転方向と交差する第1面とが形成され、
前記ポールに、
前記フックの凹部に係脱可能な凸部と、
前記ロック位置に位置する前記フックと係合した状態において、前記フックのアンロック位置方向への回転で前記第1面が当接可能な第2面と、
が形成されたことを特徴とするロック装置。
【請求項2】
前記フックの凹部は、
前記フックの回転平面上の幅が前記内部に行くに従って狭くなることを特徴とする請求項1記載のロック装置。
【請求項3】
前記フックがロック位置に位置する際に、
前記フックの第1面と前記ポールの第2面との間には、隙間があることを特徴とする請求項1または2記載のロック装置。
【請求項4】
前記フックの第1面は平面であり、
前記ポールの第2面は曲面であることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか記載のロック装置
【請求項5】
前記曲面は、円弧面であることを特徴とする請求項4記載のロック装置。
【請求項6】
前記円弧面の中心は、前記ポールの回転中心軸上にあることを特徴とする請求項5記載のロック装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ロック装置、例えば、車体に対して開閉可能なドアや、車体に対して脱着可能なシートを車体に固定するロック装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ロック装置の一例として、
図3に示すものがある。
図3は従来のロック装置の構成図である。
【0003】
ドア側(移動側)、ボデー側(固定側)の内のどちらか一方に設けられたベース1には、ドア側(移動側)、ボデー側(固定側)の内の他方に設けられたストライカ3が進入可能な溝1aが形成されている。
【0004】
溝1aを挟んで、一方の側には、ピン5を用いてフック7が回転可能に設けられている。溝1aを挟んで、他方の側には、ピン9を用いてポール11が回転可能に設けられている。
【0005】
フック7には、ストライカ3が進入可能な溝7aが形成されている。また、フック7の周部には、凸部7bが形成されている。
【0006】
尚、
図3に示す状態のフック7は、ストライカ3が溝7aからの離脱を禁止されたロック位置にある。また、
図3に示す状態から時計方向に略45°回転したフック7の状態は、溝7aにストライカ3が進入可能なアンロック位置である。
【0007】
ポール11のフック7側の側部には、フック7の凸部7bが係合可能な凹部11aが形成されている。
【0008】
そして、一端部がフック7に、他端部がポール11に係止されたスプリング13により、フック7がアンロック位置方向(図において矢印A方向)に、ポール11はフック7方向(図において、矢印B方向)に付勢されている。
【0009】
更に、ポール11には、ロック解除ケーブル15が接続されている。
【0010】
次に、上記構成の作動を説明する。
【0011】
フック7がロック位置にある
図2の状態は、フック7の凸部7bと、ポール11の凹部11aとが係合し、フック7のアンロック方向への回転が禁止され、ストライカ3はフック7の溝7aから離脱できない状態である(ロック状態)。
【0012】
ここで、スプリング13の付勢力に抗してロック解除解除ケーブル15を引くと、ポール11がフック7から離れ、フック7の凸部7bとポール11の凹部11aとの係合が解除され、フック7はスプリング13の付勢力により、アンロック位置方向に回転し、ストライカ3はフック7の溝7aから離脱できる状態となる(アンロック状態)。
【0013】
逆に、アンロック状態にある場合、ストライカ3でフック7の溝7aの内壁面を押すと、フック7はスプリング13の付勢力に抗してロック位置方向へ回転する。そして、フック7の凸部7bと、ポール11の凹部11aとが係合し、フック7のアンロック方向への回転が禁止され、ストライカ3はフック7の溝7aから離脱できない状態でロック状態となる(例えば、特許文献1参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0014】
【特許文献1】特許第4325794号(
図2、
図3)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
しかし、
図3に示す従来のロック装置の構成において、ロック状態で、フック7をアンロック位置方向へ回転させる大きな力が作用すると、フック7の凸部7bまたは鉤部7cが変形したり、ポール11の凹部11aが変形したりして、フック7がアンロック位置方向に回転し、ロック状態が破られる問題点がある。
【0016】
本発明は、上記問題点に鑑みてなされたもので、その課題は、ロック強度が高いロック装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0017】
本願発明は、移動側、固定側のうちのどちらか一方に設けられたストライカと、移動側、固定側のうちの他方に設けられ、前記ストライカが進入可能な溝が形成され、前記ストライカが前記溝に進入可能なアンロック位置から前記ストライカの前記溝からの離脱を禁止するロック位置まで回転可能なフックと、回転可能に設けられ、前記ロック位置に位置する前記フックに係合することにより前記フックの回転を禁止するポールと、前記フックと前記ポールとが係合する方向に付勢する付勢部材と、を有し、前記フックの周部に、周面から内部に向かって形成された凹部と、前記凹部
と前記溝との間に形成され、前記フックの回転方向と交差する第1面とが形成され、前記ポールに、前記フックの凹部に係脱可能な凸部と、
前記ロック位置に位置する前記フックと係合した状態において、前記フックの
アンロック位置方向への回転で前記第1面が当接可能な第2面と、が形成されたことを特徴とするロック装置である。
【0018】
上記ロック装置において、前記フックの凹部は、前記フックの回転平面上の幅が前記内部に行くに従って狭くなることが望ましい。
【0019】
また、前記フックがロック位置に位置する際に、前記フックの第1面と前記ポールの第2面との間には、隙間があることが望ましい。
【0020】
更に、前記フックの第1面は平面であり、前記ポールの第2面は曲面であることが望ましい。
【0021】
また、曲面は、円弧面であることが望ましい。
【0022】
更に、円弧面の中心は、前記ポールの回転中心軸上にあることが望ましい。
【発明の効果】
【0023】
本願発明によれば、前記フックの周部に、周面から内部に向かって形成された凹部と、前記凹部
と前記溝との間に形成され、前記フックの回転方向と交差する第1面とが形成され、前記ポールに、前記フックの凹部に係脱可能な凸部と、
前記ロック位置に位置する前記フックと係合した状態において、前記フックの
アンロック位置方向への回転で前記第1面が当接可能な第2面と、が形成されたことにより、前記ロック位置にある前記フックの前記溝に前記ストライカが進入し、前記フックに前記ポールが係合して、前記フックの回転が禁止された状態で、前記フックをアンロック位置方向へ回転させる大きな力が作用し、前記フックや前記ポールが変形し、前記フックがアンロック位置方向へ回転しようとしても、前記フックの前記第1面が前記ポールの前記第2面に当接し、前記フックのアンロック位置方向への回転を禁止するので、ロック強度が高い。
【0024】
前記フックの凹部は、前記フックの回転平面上の幅が前記内部に行くに従って狭くなることにより、ポールの凸部が必ずフックの凹部のフックの回転方向と交差する2つの壁面に当接する。よって、ロック状態において、フックとポールとの係合部分でのガタ音がない。
【0025】
また、前記フックがロック位置に位置する際に、前記フックの第1面と前記ポールの第2面との間には、隙間があることにより、通常はフックの凹部とポールの凸部との1カ所の係合だけで、フックのアンロック位置方向への回転を禁止するので、フックとポールとの係合がスムーズとなる。
【0026】
更に、前記フックの第1面は平面であり、前記ポールの第2面は曲面であることにより、ポールの第2面を押す力の方向をコントロールできる。よって、ポールの強度設計が容易となる。
【0027】
また、曲面は円弧面であることにより、ポールの第2面を押す力は円弧面の中心に向かう。よって、ポールに作用する力の方向が一定となり、ポールの強度設計が容易となる。
【0028】
更に、曲面の中心は、前記ポールの回転中心軸上にあることにより、ポールに大きな曲げモーメントが発生せず、ポールの強度を必要以上に大きくすることがなく、ロック装置の軽量化、コストダウンを図れる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【
図1】本実施形態のロック装置で、ロック状態を示す構成図である。
【
図2】
図1においてアンロック状態を示す構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
次に図面を用いて本発明の実施の形態を説明する。
【0031】
最初に、
図1、
図2を用いて、本実施形態のロック装置を説明する。
図1は本実施形態のロック装置で、ロック状態を示す構成図、
図2は
図1においてアンロック状態を示す構成図である。
【0032】
これらの図おいて、ドア側(移動側)、ボデー側(固定側)の内のどちらか一方に設けられたベース51には、ドア側(移動側)、ボデー側(固定側)の内の他方に設けられたストライカ53が進入可能な溝51aが形成されている。
【0033】
溝51aを挟んで、ベース51の一方の側には、ピン55を用いてフック57が回転可能に設けられている。溝51aを挟んで、ベース51の他方の側には、ピン59を用いてポール61が回転可能に設けられている。
【0034】
フック57には、ストライカ53が進入可能な溝57aが形成されている。また、フック57の周部には、フック57のアンロック位置への回転方向に沿って、第1凸部57b、第2凸部57cが形成されている。第1凸部57bと第2凸部57cとの間、即ち、第1凸部57bのフック57のアンロック位置への回転方向側の壁面と、第2凸部57cフック57のロック位置への回転方向側の壁面との間には、周面から内部に向かって形成された凹部57dが形成されている。この凹部57dは、フック57の回転平面上の幅(
図2において、wで示す)が内部に行くに従って狭くなっている。凹部57dよりフック57のアンロック位置への回転方向側に位置する第2凸部57cのフック57のアンロック位置への回転方向側の壁面は、フック57の回転方向と交差する第1面57gとなっている。
【0035】
ポール61のフック57と対向する面には、フック57の凹部57dに係脱可能な凸部61aが形成されている。また、ポール61のフック57と対向する面には、フック57の第2凸部57cが係脱可能な凹部61bが形成されている。この凹部61bの壁面農地の一方の壁面は、フック57の第1面57gが当接可能な第2面61cとなっている。
【0036】
尚、本実施形態では、
図1に示すように、フック57がロック位置に位置する際では、フック57の第1面57gとポール61の第2面61cとの間には、隙間(s)があるように、フック57の第2凸部57cとポール61の凹部61bとは設定されている。
【0037】
更に、フック57の第1面57gは、平面であり、ポール61の第2面61は、ポール61の回転中心軸(O)を中心とした円弧面とした。
【0038】
そして、一端部がフック57に、他端部がポール61に係止された付勢部材としてのスプリング63により、フック57がアンロック位置方向(図において矢印C方向)に、ポール61はフック57方向(図において、矢印D方向)に付勢されている。
【0040】
フック57がロック位置にある
図1の状態は、フック57の凹部57dと、ポール61の凸部61aとが係合し、フック57のアンロック方向への回転が禁止され、ストライカ53はフック57の溝57aから離脱できない状態である(ロック状態)。
【0041】
ここで、スプリング63の付勢力に抗して、ポール61を反矢印D方向に回転させると、ポール61はフック57から離れ、フック57の凹部57dと、ポール61の凸部61aとが係合が解除され、フック57はスプリング63の付勢力により、
図2に示すアンロック位置方向に回転し、ストライカ53はフック57の溝57aから離脱できる状態となる(アンロック状態)。
【0042】
尚、本実施形態では、ベース51のフック57が設けられる側には、ストッパ63が形成されている。一方、フック57の周面には、フック57がロック位置に位置している時(
図1の状態)に、ストッパ63に当接可能なロックストッパ面57eが形成されている。また、フック57の周面には、フック57がアンロック位置に位置している時(
図2の状態)に、ストッパ63に当接可能なアンロックストッパ面57fが形成されている。よって、フック57は、アンロック位置からロック位置まで回転可能となっている。
【0043】
逆に、アンロック状態にある場合、ストライカ53でフック57の溝57aの開口部近傍の面57hを押すと、フック57はスプリング63の付勢力に抗してロック位置方向へ回転する。そして、フック57の凹部57dと、ポール61の凸部61aとが係合し、フック57のアンロック方向への回転が禁止され、ストライカ53はフック57の溝57aから離脱できない状態でロック状態となる。
【0044】
上記構成によれば、以下のような効果が得られる。
【0045】
(1)
図1に示すロック状態で、フック57をアンロック位置方向へ回転させる大きな力が作用し、フック57の第2凸部57cが変形し、フック57がアンロック位置方向へ回転しても、フック57の第1面57gがポール61の第2面61cに当接し、フック57のアンロック位置方向への回転を禁止するので、ロック強度が高い。
【0046】
(2) フック57の凹部57dは、フック57の回転平面上の幅が内部に行くに従って狭くなっているので、ポール61の凸部61aが必ずフック57の凹部57dのフック57の回転方向と交差する2つの壁面に当接する。よって、ロック状態において、フック57とポール61との係合部分でのガタ音がない。
【0047】
(3) フック57がロック位置に位置する際では、フック57の第1面57gとポール61の第2面61cとの間には、隙間(s)があるように、フック57の第2凸部57cとポール61の凹部61bとを設定したことにより、通常はフック57の凹部57dとポール61の凸部61aとの1カ所の係合だけで、フック57のアンロック位置方向への回転を禁止するので、フック57とポール61との係合がスムーズとなる。
【0048】
(4) フック57の第1面57gは、平面であり、ポール61の第2面61cは、ポール61の回転中心軸(O)を中心とした円弧面としたことにより、ポール61の第2面61cを押す力はポール61の回転中心軸へ向かう。よって、ポール61に作用する力の方向が一定となり、ポール61の強度設計が容易となる。
【0049】
更に、円弧面の中心をポール61の回転中心軸としたことにより、ポール61に大きな曲げモーメントが発生せず、ポール61の強度を必要以上に大きくことがなく、ロック装置の軽量化、コストダウンを図れる。
【符号の説明】
【0050】
53 ストライカ
57 フック
57a 溝
57d 凹部
57g 第1面
61 ポール
61a 凸部
61c 第2面
63 スプリング