(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、図面を参照して本発明を実施するための形態について説明する。以下の実施の形態の構成は例示であり、本発明は実施の形態の構成に限定されない。
〈実施形態1〉
図1は、本実施形態1に係る入力ペンの外観図であり、
図1(a)は正面図、
図1(b)は平面図、
図1(c)は底面図である。
図2はペン先部分の説明図であり、正面と平行な断面(x−y面)を示すものである。
【0018】
図1に示されるように、実施形態1による入力ペン10は、棒状円筒型の本体1と、当該本体1の一端部に接続されたペン先2とを有する。
本体1は、ユーザによって握持される棒状の部材であり、少なくとも一部に導電性を有している。本実施形態では、本体1を円筒型としたが、これに限らずユーザが手に持って操作するのに適した形状であれば良く、例えば四角柱や六角柱であっても良い。また、本体1のサイズについても手に持って操作するのに適したサイズであれば、任意に設定して良く、例えば軸の直径を5mm〜20mm、軸の長さ(y軸方向の長さ)を50mm〜150mmとする。なお、本実施形態1では、軸の外形を9mm、長さを120mm、肉厚1.5mmの中空円筒形状とした。
【0019】
また、本実施形態1では、本体1を金属製とすることで、本体表面とペン先2との導電性を確保している。本体1の材質としては、鉄、ステンレス、アルミ、ニッケル、銅、真鍮、そしてこれらの合金等を用いることができる。なお、加工性や重量、耐候性の観点から本実施形態ではアルミ合金を用いている。
【0020】
ペン先2は、
図2に示すように、ドーム状の当接部21や、本体1との接合部22を有する外形形状となっている。ペン先2は、接合部22を本体1の中空部13に嵌入することで本体1に固設される。このときペン先2の接合部22の外径を本体1の内径と略同じか僅かに大きく形成しておくことで、嵌入した接合部22の外周面と本体1の内周面12との摩擦によってペン先2が抜け止めされる構成でも良いし、接合部22と内周面12とを接着剤等で接着する構成でもよい。
【0021】
また、ペン先2は、剛性の高い材料で形成された支持体23Bと、支持体23Bの先端部を覆う弾性体23Aと、当該支持体23B及び弾性体23Aの外面を被覆した導電性の上被部24とを有する。
【0022】
支持体23Bの材料は、所定以上の剛性を有するものであれば特に限定されず、金属、セラミック、合成樹脂等であっても良い。なお、合成樹脂を用いる場合、例えば少なくと
も40°以上、好ましくは50°以上の硬度のものを用いる。
【0023】
また、弾性体23Aは、支持体23Bと比べて柔らかく弾性を有した部材であり、例えばゴム、シリコン、ウレタン、スポンジ等であって、硬度が40°未満、好ましくは20°〜30°の材料からなる。これにより、ペン先2を所定の力(筆圧に相当する力)で平面に押しつけた場合、弾性体23Aが押し縮められてペン先2の先端部が変形するが、その変形量が支持体23Bによって規制される。
図3は、変形量を確認する試験の説明図である。
図3(a)に示すように入力ペン10の中心軸14と平面80との成す角が所定の角度θとなるようにペン先2が平面80に触れた状態を初期状態とし、本体1を平面80と垂直な方向F1へ所定の力(例えば50g)で付勢した際、
図3(b)に示すようにペン先2(支持体23)の当接部21が変形して本体1が付勢力の方向F1へ移動した量を変形量Hfとして測定する。
図3(b)では入力ペン10の初期状態を点線で示し、変形後の状態を実線で示している。なお、
図3(b)では説明のため当接部21が大きく変形した状態を示したが、本実施形態1のペン先2では、変形が支持体23Bによって制限されるため、実際の変形量Hfは僅かである。例えば、変形量Hfの閾値を少なくとも2mm以下、好ましくは1mm以下、更に好ましくは0.5mm以下と設定する。このように支持体23Bによってペン先の変形量を制限することにより、文字入力時の軸のブレを防止し、操作性を向上させている。
【0024】
また、上被部24は、支持体23の周囲に密着して設けられた薄膜状の部材である。本実施形態では、ペン先の導電性及び摺動性を確保するため、上被部24として布を採用した。上被部24としての布は、織物、編み物、フエルト、不織布などの組織構成が限定されるものではなく、繊維を薄膜状に形成したものであれば良い。但し、ペン先2を摺動させた際の耐久性を確保し、且つ
図3で示した変形量Hfを閾値以下とするため、上被部24としての布は、織物や編み物とするのが望ましい。なお、上被部24としてフエルトを用いる場合は、いったん毛織物に織ったものを縮絨して織フエルトとするのが良い。
【0025】
繊維の材質は、特に限定されず、木綿、麻、リンネル等の植物繊維、羊毛、絹、カシミヤ等の動物繊維、ナイロン、ポリウレタン、ポリエステル等の合成繊維といった任意の繊維を用いることができる。
【0026】
そして上被部24は、少なくとも一部に導電性の繊維を用い、表面抵抗が1×10
3〜1×10
5となっている。ここで導電性の繊維とは、ステンレス、チタン、アルミニウム等の繊維や、ナイロンやポリエステル等の繊維の表面にメッキや蒸着により金属層を形成したもの、導電性フィラー(金属粉、カーボン粉、金属フレーク、金属の短繊維、カーボンの短繊維)を材料中に分散混入した繊維などである。
【0027】
上被部24は、全ての繊維を導電性にしたものに限らず、上被部24を構成する繊維の一部に導電性の繊維を混用したものでも良い。例えば、絶縁性の繊維に対して所定割合の導電性の繊維を混紡した撚糸を用いて上被部24の布地を製造しても良い。また、縦糸と横糸の一方を絶縁性の糸、他方を導電性の糸として、交織したものでも良い。また、複数本の糸で編地を作成する際に、一部の糸を導電性の糸としたものでも良い。更に、絶縁性の糸で作成した生地に導電性の糸を縫い込んだものでも良い。本実施形態の上被部24は、8ゲージ〜13ゲージで天竺編みする際、糸の1/3に導電性の糸を用いて編地を作成した。
【0028】
上被部24で支持体23の外周面を覆ったペン先2の接合部22を本体1の中空部13に嵌入し、固定することで、上被部24の外面と本体1の内周面とが接触し、ペン先2と本体1とが導通する。即ち、ユーザが金属製の本体1を握持するとユーザの手とペン先とが導通することになる。このため入力時にペン先2がタッチパッド等の入力面に当接する
と、ユーザと導通したペン先2がグランドラインとして機能し、ペン先2とタッチパッド等とが静電結合して静電容量が生じ、この静電容量の変化をタッチパッド等が入力情報として検出する。
【0029】
図4は、ペン先2の先端形状の説明図であり、
図4(a)が非接触時のペン先の先端を示す図、
図4(b)が入力時のペン先の先端を示す図である。
図4(a)に示すように、ペン先2の先端部は、長軸方向(軸14方向)先端側に向けて凸のドーム型となっており、入力時にタッチパッド等の入力面と接する領域Caが入力面と接して変形した時の曲率Xを1/5mm〜1/10mmとしている。そして、
図4(b)に示すように、入力時にペン先2の先端をタッチパッド等の入力面51に当接させた場合、領域Saの範囲で入力面51からペン先2の表面までの距離が所定距離Th以内となる。ここで所定距離Thは、ペン先2とタッチパッド等とが静電結合する距離の上限値である。即ち、領域Saでペン先表面とタッチパッド等とが静電結合し、この間の静電容量が検出される。なお、本実施形態1では、領域Saの幅が3mm〜6mmとなるように設定している。
【0030】
従来、入力の安定性を高めるためにペン先に導電性のゴムやスポンジ等の弾性体を用いた入力ペンは、入力時に弾性体が変形してペン先が4〜6mm程度沈み込む為、文字を入力する際、一ストローク毎にペン先を4〜6mm程度浮かせて次のストロークに移らないと、ペン先がタッチパッド等の入力面から離れずにストロークが続いてしまう。このため、従来の入力ペンで文字入力を行うためには、一ストローク毎にペン先を入力面から意識して離さなければならず、非常に操作感が悪いという問題があった。
【0031】
これに対し本実施形態1によれば、支持体23の剛性が高く、筆記時にペン先が沈み込まないため、通常の筆記具で筆記するのと同様に手書き文字入力を行うことができ、高い操作性を実現できる。
【0032】
〈実施形態2〉
図5は、本実施形態2による入力ペン20の外観図であり、
図5(a)は背面図、
図5(b)は正面図、
図5(c)は右側面図、
図5(d)は平面図、
図5(e)は底面図である。
【0033】
図5に示されるように、実施形態1による入力ペン20は、棒状円筒型の金属製本体(本体)1と、金属製本体1の一端部に接続されたペン先2とを有する。
図6はペン先部分の説明図であり、
図6(b)は
図6(a)に示すA−A線の断面図、
図6(c)は
図6(a)に示すB−B線の断面図、
図6(d)は
図6(a)に示すC−C線の断面図である。
【0034】
図6(b)に示すように、ペン先2は、本体との接続部側から先端部側への軸(y軸)と直交する断面形状が扁平である。また、ペン先2は、
図6(a)〜
図6(c)に示すように、本体1との接合部側の扁平幅(
x軸方向の幅)と比べて先端部側の扁平幅が狭い先細り形状となっている。
【0035】
本実施形態では、ペン先2における扁平面の一方を前記座標入力装置との接触面22aとし、当該接触面が前記座標入力装置に対して凸の曲率を有している。
また、
図7,
図8は、ペン先2の意匠を示す図である。
図7,
図8では、ペン先2の外観として表れる部分を実線で示し、その他の部分を破線で示している。なお、
図7(a)は背面図、
図7(b)は正面図、
図7(c)は右側面図、
図7(d)は平面図、
図7(e)は底面図、
図8(b)は
図8(a)に示すA−A線の断面図、
図8(c)は
図8(a)に示すB−B線の断面図、
図8(d)は
図8(a)に示すC−C線の断面図である。
【0036】
そして、
図9はペン先2の外観斜視図、
図10は入力時の状態図、
図11はペン先2の縦断面図である。
本体1は、ユーザによって握持される棒状の部材であり、少なくとも一部に導電性を有している。本実施形態では、本体1を円筒型としたが、これに限らずユーザが手に持って操作するのに適した形状であれば良く、例えば四角柱や六角柱であっても良い。また、本体1のサイズについても手に持って操作するのに適したサイズであれば、任意に設定して良く、例えば軸の直径を5mm〜20mm、軸の長さ(y軸方向の長さ)を50mm〜150mmとする。なお、本実施形態1では、軸の外形を9mm、長さを120mm、肉厚1.5mmの中空円筒形状とした。
【0037】
また、本実施形態2では、本体1を金属製とすることで、本体表面とペン先2との導電性を確保している。本体1の材質としては、鉄、ステンレス、アルミ、ニッケル、銅、真鍮、そしてこれらの合金等を用いることができる。なお、加工性や重量、耐候性の観点から本実施形態ではアルミ合金を用いている。
【0038】
ペン先2は、少なくとも一部に導電性を有して本体と導通することで、接触面22aが座標入力装置との間で静電結合する電極として機能する。本実施形態では、弾性層26が導電性を有しているが、これに限らず弾性層26及び基幹部25が共に導電性を有していても良い。
【0039】
本実施形態2のペン先2は、
図11に示すように基幹部25と、基幹部25の接触面22a側に導電性の弾性層(上被部)26を有し、後端側の接続部22が本体1の一端部に嵌入されている。これにより導電性の弾性層26と金属製の本体1とが電気的に接続し、金属製の本体1を握持するユーザの手とペン先2の接触面22aを導通させている。
【0040】
ペン先2の基幹部25は、入力時にペン先2にかかる圧力に対して充分な剛性を有した樹脂や金属等の材料で構成されている。弾性層26は、入力時にタッチパッド等に押し当てられた際に弾性変形して充分な接触面積を確保するように、所定の肉厚を有している。
【0041】
導電性の弾性層26は、天然ゴム、ニトリルゴム、シリコーンゴム、シリコン、ウレタン、スポンジ、ポリエステル等の中にカーボンあるいは金属等の導電性フィラーを入れて成形した。
【0042】
図10(a)に示すように文字入力を行う際、ペン先2がタッチパッド等の入力面51に当接すると、ユーザと導通したペン先2がグランドラインとして機能し、ペン先2とタッチパッド等とが静電結合して静電容量が生じ、この静電容量の変化をタッチパッド等が入力情報として検出する。
【0043】
ペン先2は、50gの力で押圧した時には接触面(
図9(b)の22b)が直径3mmの円より大きくなるように構成されるが、より好ましくは50gの力で押圧した時、接触面が直径3mmの円より大きくかつ直径8mmの円より小さくなるように構成すると、静電容量の変化を検出するのに適している。
【0044】
図10(b)に示すように、タッチパッド等の入力面に対して垂直に入力ペン20を当接させてタップなどを行う場合にも、ペン先2の幅を狭く形成した先端部が撓んで接触面が確保される。
【0045】
本実施形態2によれば、ペン先2をタッチパッド等に押し当てた際、弾性層26が弾性変形しても基幹部25によって変形が規制されるので、入力時に軸がブレるほど変形して
しまうことを防ぐことができる。
【0046】
また、ペン先2
は、扁平で先が細い形状であるため、入力時にペン先2によって隠れてしまう領域が少なく、操作性が良い。
【0047】
図13(a)に示すように入力ペン20Aの中心軸14と平面80との成す角が所定の角度θとなるようにペン先2が平面80に触れた状態を初期状態とし、本体1を平面80と垂直な方向F1へ所定の力(例えば50g)で付勢した際、
図13(b)に示すようにペン先2(基幹部25)が撓んで本体1が付勢力の方向F1へ移動した量を変形量Hfとして測定する。
図13(b)では入力ペン20Aの初期状態を点線で示し、変形後の状態を実線で示している。なお、
図13(b)では説明のためペン先2が大きく変形した状態を示したが、本実施形態1の基幹部25は高剛性の材料を用いているため、実際の変形量Hfは僅かである。例えば、変形量Hfの閾値を少なくとも1mm以下、好ましくは0.5mm以下、更に好ましくは0.2mm以下と設定する。なお、この閾値は、基幹部25単体の変形量を規定するものとしても良いし、基幹部25に導電層28を被覆したペン先2の変形量を規定するものとしても良い。また、基幹部25単体の閾値とペン先2の閾値とを別に定めても良い。例えば基幹部25単体の閾値を0.2mm以下、ペン先2の閾値を0.5mm以下等としても良い。このように基幹部25の剛性を高く設定することにより、文字入力時の軸のブレを防止し、操作性を向上させている。
【0048】
ペン先2の接触面22aは、タッチパッド等の入力面51(
図12(c))に対して凸の曲面であり、この曲率を所定値以下としている。例えば本変形例では、接触面22aの曲率Xを1/5mm〜1/10mmとしている。このように接触面22aの曲率を小さく、即ち緩やかな曲面としたことにより、入力時にペン先2の接触面22aとタッチパッド等の入力面51との接触面積が充分に確保できるようにしている。
図12(c)に示すように、入力時にペン先2の接触面22aをタッチパッド等の入力面51に当接させた場合、領域Saの範囲で入力面51からペン先2の表面までの距離が所定距離Th以内となる。ここで所定距離Thは、ペン先2とタッチパッド等とが静電結合する距離の上限値である。即ち、領域Saでペン先表面とタッチパッド等とが静電結合し、この間の静電容量が検出される。従来の入力ペンでは、ペン先の弾性体が変形することで、領域Saを確保していたが、本変形例では、ペン先2の当接面の曲率を所定値(閾値)より小さくすることで、ペン先2が大きく変形しなくても領域Saが確保できるようにしている。なお、本実施形態1では、領域Saの幅が3mm〜6mmとなるように設定している。また、
図12(c)に示すように、上記実施形態3及び変形例の入力ペン20,20Aは、本体1の長軸(中心軸)14の先端側が入力時にタッチパッド等の入力面と交わる位置15が、静電結合する領域Saの中央と一致するように構成しても良い。入力ペン20,20Aをタッチパッド等に接触させて入力を行う場合、この静電結合する領域Saの中央の位置情報が入力される。即ち、本体1の中心軸14と入力面51との交わる位置15と、領域Saの中央とが一致する構成とすることで、位置15と入力位置とが一致することになる。これにより入力ペン20,20Aを把持して入力を行う際の入力ペンと入力位置との位置関係が、鉛筆やボールペン等の通常の筆記具を把持して紙に文字を書く際の筆記具と筆記位置(紙にインクが載る位置)との位置関係と同じになり、通常の筆記と同じ感覚でタッチパッド等への入力を行うことができるので操作性が向上する。
【0049】
導電層28としての布は、織物、編み物、フエルト、不織布などの組織構成が限定されるものではなく、繊維を薄膜状に形成したものであれば良い。但し、ペン先2を摺動させた際の耐久性を確保し、且つ
図3で示した変形量Hfを閾値以下とするため、導電層28としての布は、織物や編み物とするのが望ましい。なお、導電層28としてフエルトを用いる場合は、いったん毛織物に織ったものを縮絨して織フエルトとするのが良い。
【0050】
繊維の材質は、特に限定されず、木綿、麻、リンネル等の植物繊維、羊毛、絹、カシミヤ等の動物繊維、ナイロン、ポリウレタン、ポリエステル等の合成繊維といった任意の繊維を用いることができる。
【0051】
そして導電層28は、少なくとも一部に導電性の繊維を用い、表面抵抗が1×10
3〜1×10
5となっている。ここで導電性の繊維とは、ステンレス、チタン、アルミニウム等の繊維や、ナイロンやポリエステル等の繊維の表面にメッキや蒸着により金属層を形成したもの、導電性フィラー(金属粉、カーボン粉、金属フレーク、金属の短繊維、カーボンの短繊維)を材料中に分散混入した繊維などである。
【0052】
導電層28は、全ての繊維を導電性にしたものに限らず、導電層28を構成する繊維の一部に導電性の繊維を混用したものでも良い。例えば、絶縁性の繊維に対して所定割合の導電性の繊維を混紡した撚糸を用いて導電層28の布地を製造しても良い。また、縦糸と横糸の一方を絶縁性の糸、他方を導電性の糸として、交織したものでも良い。また、複数本の糸で編地を作成する際に、一部の糸を導電性の糸としたものでも良い。更に、絶縁性の糸で作成した生地に導電性の糸を縫い込んだものでも良い。本実施形態の上被部24は、8ゲージ〜13ゲージで天竺編みする際、糸の1/3に導電性の糸を用いて編地を作成した。
【0053】
このように本変形例によれば、基幹部25の剛性が高く、筆記時にペン先2が沈み込まないため、通常の筆記具で筆記するのと同様に手書き文字入力を行うことができ、高い操作性を実現できる。
【0054】
〈実施形態3〉
図14は、本実施形態3によるペン先2Aの意匠を示す図であり、
図14(a)は正面図、
図14(b)は右側面図、
図14(c)は左側面図、
図14(d)は背面図、
図14(e)は平面図、
図14(f)は底面図、
図14(g)は
図14(a)に示すA−A線の断面図、
図15は、使用状態の説明図、
図16(a)はペン先2Aを正面から見た参考図、
図16(b)は
図16(a)に示すA−A線の断面図、
図14(c)は
図16(a)に示すB−B線の断面図である。
【0055】
図14、
図15に示されるように、実施形態3によるペン先2Aは、ユーザが指に装着することで、タッチパッド等に対して入力ペンのように入力を行えるようにするもの(指ぺン)である。また、
図16に示すように、ペン先2Aは、指保持部30と基幹部29を有している。
【0056】
指保持部30は、
図16(b)に示すように断面形状が略環状であり、一部にギャップを有している。このギャップを押し広げるようにユーザが指を指保持部30の環内に挿入すると、広げられた指保持部30が戻ろうとする弾性力によりユーザの指を挟持することで、ペン先2がユーザの指に固定される。なお、指保持部30は、
図16(b)に示すように、縦方向(z方向)の高さ30Hよりも横方向(x方向)の幅30Wの方が大きくなっている。これは、装着する指の形状に合わせたものであり、基幹部29と連設された指保持部30の背面30Mが平面か或いは基幹部29と略同じ曲率の曲面とし、この背面30Mがユーザの指の腹に当たるように装着される。
【0057】
基幹部29は、前述の実施形態2における基幹部25と同様にタッチパッド等との接触面22aを有する。基幹部29は、入力時にペン先2Aにかかる圧力に対して充分な剛性を有した樹脂や金属等の材料で構成されている。
【0058】
基幹部29は、少なくとも一部に導電性を有し、ユーザの指と接触面22aを導通させる。本実施形態3では、基幹部29と指保持部30とを導電性の材料で一体的に成型したことにより、指保持部30で保持したユーザの指と接触面22aとが導通する。なお、基幹部29及び指保持部30を構成する導電性の材料とは、例えばゴムやプラスチックに導電性フィラーを混合したものや、金属である。なお、本実施形態3では、ニッケル合金を用いている。また、これに限らず、ステンレスやチタン、アルミニウム、プラチナ、金、銀などで基幹部29や指保持部30を構成しても良い。
【0059】
ペン先2の接触面22aは、タッチパッド等の入力面51に対して凸の曲面であり、この曲率を所定値以下としている。例えば本変形例では、接触面22aの曲率Xを1/5mm〜1/10mmとしている。このように接触面22aの曲率を小さく、即ち緩やかな曲面としたことにより、入力時にペン先2の接触面22aとタッチパッド等の入力面51との接触面積が充分に確保できるようにしている。
図18に示すように、入力時にペン先2の接触面22aをタッチパッド等の入力面51に当接させた場合、領域Saの範囲で入力面51からペン先2の表面までの距離が所定距離Th以内となる。ここで所定距離Thは、ペン先2とタッチパッド等とが静電結合する距離の上限値である。即ち、領域Saでペン先表面とタッチパッド等とが静電結合し、この間の静電容量が検出される。従来の入力ペンでは、ペン先の弾性体が変形することで、領域Saを確保していたが、本変形例では、ペン先2の当接面の曲率を所定値(閾値)より小さくすることで、ペン先2が大きく変形しなくても領域Saが確保できるようにしている。なお、本実施形態1では、領域Saの幅が3mm〜6mmとなるように設定している。
【0060】
このように基幹部29導電性を有し、接触面22aの曲率が所定値以下であれば、入力を行うための領域Saを確保できるため、基幹部29が金属や高剛性のプラスチックであっても接触面22aに弾性層を設ける必要がない。但し、本実施形態3では、摺動性を向上させるため基幹部29の接触面22aに導電性の布(上被部)28を貼付している。
【0061】
図17は、ペン先2Aの前方斜め上であって接触面22aの接線方向から見た図である。本実施形態の基幹部29は、
図17(a)に示すように水平方向(指の腹)に対して所定の角度θaで捻りを有している。なお、
図14及び
図17(a)では、右利き用に基幹部29に捻りを加えたものを示したが、左利き用の場合には、
図17(b)に示すように、この捻りを反対向きとする。このように基幹部29に捻りを設けたのは、次の理由による。
【0062】
紙に筆記具で文字を書く場合、筆記具を持つ手は、手のひらが紙面に対して傾いている。通常、このように紙面に対して、手のひらを傾けた状態で指の第一関節や第二関節を動かして文字を書くことに慣れているため、タッチパッド等に対しても同じ状態で文字を書くように入力操作が行うことが望ましい。そこで入力ペンを用いて入力操作を行えば、筆記具と同じ状態で文字を入力できるが、本実施形態3のように指先で文字を入力する場合に、手のひらを紙面に対して傾けると、タッチパッド等の入力面に触れる指先も指の腹が傾くことになる。このように指の腹を傾けてタッチパッド等の入力面に触れると、爪が邪魔をして指先が充分に入力面と接触できず、安定した入力を行うことができない。このため手のひらを入力面と平行にして指の腹を入力面に付けて入力を行うことも考えられるが、この場合、文字を書くための指の動きが、通常の筆記具を用いた場合と全く異なり、違和感を覚える。特に指の腹を入力面に付けた状態では、指の第一関節や第二関節を有効に
動かすことができず、非常に入力しづらい。
【0063】
そこで、本実施形態では、
図17に示したように基幹部29に捻りを設けることで、指の腹に対して接触面22aが所定の角度θaを有するようにした。これにより、タッチパッド等の入力面に対して手のひらを傾けた状態、即ち指の腹が入力面に対して傾いた状態としても、指先に装着したペン先2Aの接触面22aは、入力面と正対することになり、安定した入力を行うことができる。従って、通常の筆記具を用いた場合と同じ手の向きで入力を行うことができる。
【0064】
このように本実施形態3のペン先2Aを指に装着してタッチパッド等の入力を行うことにより、タッチパッド等との接触面22aが安定したものとなるので、精度良く入力を行うことができる。
【0065】
また、本実施形態3におけるペン先2Aの基幹部29は、装着したユーザの指の腹に対して所定角度θaの捻りを有しているので、単に指で入力を行うよりも入力がし易く、操作性が向上する。
【0066】
〈変形例3−1〉
図19は、前述の実施形態3の変形例を示す図であり、
図19(a)はペン先2Bの背面図、
図19(b)は基幹部29及び指保持部30Aの背面図、
図19(c)は
図19(a)に示したA−A線の断面図である。本変形例は、前述の実施形態3と比べ、基幹部29及び指保持部30Aを絶縁体の材料を用いて構成した点が異なっている。なお、その他の構成は同じであるため同一の要素には同符号を付す等して再度の説明を省略する。
【0067】
本変形例では、ゴム、シリコン、ウレタン、ポリスチレン等、絶縁体の材料で基幹部29及び指保持部30Aを一体成型した。なお、基幹部29には、
図19(b)に示すように貫通穴29Aが設けられ、この貫通穴29Aを介して接触面22a側の導電層28と、内側の導電層27とが電気的に接続されている。このため、ユーザが指を指保持部30Aに挿入すると、当該指が内側導電層27と接し、内側導電層27が外側導電層28と接続していることから、ユーザの指と接触面22aが導通する。
【0068】
従って、本変形例のように基幹部29や指保持部30Aを絶縁体で構成しても前述の実施形態3と同様に操作性の良いペン先を実現できる。
〈変形例3−2〉
図20は、前述の実施形態3の変形例を示す図であり、
図20(a)はペン先2Cの背面図、
図20(b)は基幹部29と指保持部の分解図、
図20(c)は
図20(a)に示したA−A線の断面図、
図20(d)は
図20(a)に示したB−B線の断面図である。本変形例は、前述の実施形態3と比べ、基幹部29と指保持部30Aとを別体に構成した点が異なっている。なお、その他の構成は同じであるため同一の要素には同符号を付す等して再度の説明を省略する。
【0069】
基幹部29は、タッチパッド等の入力面に対して凸の板状の部材であり、少なくとも一部に導電性を有し、接触面22aとユーザの指とを導通させている。本変形例では、金属製の板の接触面側に導電層(上被部)28を設けて基幹部29を構成している。なお、本例の基幹部29は、前述の実施形態3と同じく、指の腹と接する後端側の面に対して接触面22aが所定の角度θaとなるように捻りを有している。
【0070】
指保持部30Aは、弾性体からなるリング状の部材である。本例の指保持部30Aは、シリコーンゴムを用いた所謂ゴムバンドである。
本例のペン先2Cは、指保持部30Aの内周面に基幹部29の後端面を接着してなり、
ユーザが指をリング状の指保持部30Aに挿入すると、指保持部30Aの弾性力により基幹部29を指側に付勢し、接触面22aと反対側の面を指に密着させることで、指に対し接触面22aを固定する。
【0071】
本例の指保持部30Aは、基幹部29と別部材としたので、基幹部29のように導電性や剛性を有する必要がなく、自由に材質を選択できる。このため、低硬度(例えば10°〜30°)のシリコーンゴムを用いて指保持部30Aを構成しており、ユーザの指の爪にマニキュアやネイルチップ、ストーン、ビーズ等の装飾が施してある場合にも装飾を痛めることがない。
【0072】
〈変形例3−3〉
図21は、前述の実施形態3の変形例を示す図であり、
図21(a)はペン先2Dの背面図、
図21(b)は
図21(a)に示したA−A線の断面図、
図21(c)は
図21(a)に示したB−B線の断面図である。本変形例は、前述の実施形態3と比べ、指保持部の形状が異なっている。なお、その他の構成は同じであるため同一の要素には同符号を付す等して再度の説明を省略する。
【0073】
前述の実施形態3の指保持部30は、正面にギャップを有し、指が挿入された際に両サイドの部材が外側に撓み、戻ろうとする弾性力により指を保持する構成となっている。これに対し本変形例の指保持部30Bでは、一方のサイドの部材30Lを他方のサイドまで延長し、他方のサイドの部材30Rと一部重なり、外側に被さる形状とした。
【0074】
即ち、本例の指保持部30Bは、基幹部29と連設した背面30Mと、この背面30Mの一方のサイドに設けられ断面が環状となるよう正面を越えて他方のサイドへわたされた帯状の部材30Lと、前記背面30Mの他方のサイドに設けられ前記部材30Lと重なる帯状の部材30Rとを有し、背面30Mと帯状の部材30L,30Rとで一つの環をなす。なお、長い方の部材30Lの自由端側に、短い方の部材30Rの自由端の外側に被さる被せ部L1を有している。この被せ部L1は、指保持部30Bの環内に指が挿入され、帯状の部材30L,30Rが、
図21(b)において点線で示したように外側へ押し広げられた際にも被せ部L1が帯状の部材30Rに被さるよう帯状の部材30Lと部材30Rとが所定の長さ重なるように設定する。
【0075】
そして、帯状部材30Lの外周面に宝石や貴金属による装飾30Kを施した。本変形例によれば、ペン先2Dの正面に現れる帯状部材30Lの外周が一方のサイドから他方のサイドにわたり連続して広くとれるので、装飾を施す際の自由度が高く、意匠性が向上する。