(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
上記キレート剤が、アミノ多価カルボン酸、有機多価燐酸、無機多価燐酸、及びアミノ多価燐酸からなる群から選ばれる少なくとも1種以上の化合物である、請求項1〜3の何れか1項に記載の粒子状吸水剤。
上記無機還元剤が、亜硫酸塩、亜硫酸水素塩、ピロ亜硫酸塩、及び亜二チオン酸塩からなる群から選ばれる少なくとも1種以上の化合物である、請求項1〜7の何れか1項に記載の粒子状吸水剤。
無加圧下吸収倍率(CRC)が25[g/g]以上、加圧下吸水倍率(AAP2.0kPa)が25[g/g]以上で、Vortex(吸水速度)が60秒以下である、請求項1〜14の何れか1項に記載の粒子状吸水剤。
アクリル酸(塩)を主成分とする単量体水溶液の重合工程と、重合で得られた含水ゲル状架橋重合体の乾燥工程と、表面架橋工程とを含む、ポリアクリル酸(塩)系吸水性樹脂を主成分とする粒子状吸水剤の製造方法であって、
キレート剤0.001〜0.5重量%の添加工程と無機還元剤の添加工程とを更に含み、
上記単量体水溶液中のメトキシフェノール類の含有量が、対アクリル酸換算で10〜200ppmであり、
以下の(a)の要件を満たすことを特徴とする、ポリアクリル酸(塩)系吸水性樹脂を主成分とする粒子状吸水剤の製造方法。
(a)水不溶性無機微粒子0.05〜1.0重量%の添加工程を更に含むこと。
メトキシフェノール類を10〜200重量ppm含有するアクリル酸(塩)を主成分とする単量体水溶液の重合工程と、重合で得られた含水ゲル状架橋重合体の乾燥工程と、表面架橋工程と、キレート剤の添加工程を含む粒子状吸水剤の製造方法であって、
上記(c)無機還元剤の添加工程を表面架橋工程後に行う、請求項18〜20の何れか1項に記載の製造方法。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明について説明するが、本発明の範囲はこれらの説明に拘束されることはなく、以下の例示以外についても、本発明の趣旨を損なわない範囲で適宜変更実施し得る。
【0024】
先ず、以下で使用する略語について定義する。
【0025】
本明細書において、「CRC」(Centrifuge Retention Capacity)とは「遠心分離機保持容量」であり、後述する実施例に記載の測定方法により得られる値をいう。「CRC」を「無加圧下吸水倍率」又は単に「吸水倍率」とも称する。また、「SFC」(Saline Flow Conductivity)とは「食塩水流れ誘導性」であり、後述する実施例に記載の測定方法により得られる値をいう。更には、「AAP」(Absorbency against Pressure)とは4.83kPa又は2.0kPaの圧力に対する「加圧下吸水倍率」であり、後述する実施例に記載の測定方法により得られる値をいう。また、「FSR」(Free Swell Rate)とは「吸収速度」であり、後述する実施例に記載の測定方法により得られる値をいう。更には、「D50」(Distribution)とは「重量平均粒子径」であり、後述する実施例に記載の測定方法により得られる値をいう。また、「σζ」とは「粒度分布の対数標準偏差」であり、後述する実施例に記載の測定方法により得られる値をいう。「FHA」(Fixed Height Absorption)とは「固定された高さ吸収」であり、後述する実施例に記載の測定方法により得られる値をいう。また、「Vortex」とは「吸水速度」であり、後述の実施例に記載の測定方法により得られる値をいう。
【0026】
尚、本明細書において、「食塩水」とは「塩化ナトリウム水溶液」を意味し、範囲を示す「X〜Y」は、「X以上Y以下」であることを意味し、特に注釈のない限り、「ppm」は「重量ppm」又は「質量ppm」を意味し、「〜酸(塩)」は「〜酸及び/又はその塩」を意味し、「(メタ)アクリル」とは「アクリル及び/又はメタクリル」を意味する。
【0027】
本発明に係る粒子状吸水剤は、ポリアクリル酸(塩)系吸水性樹脂を主成分とし、含有量0.001〜0.5重量%のキレート剤、及び無機還元剤を含み、以下の(1)〜(3)の何れか1つ以上を満たす水性液体の吸収固化剤である。
(1)メトキシフェノール類の含有量が5〜60ppmであること、
(2)水不溶性無機微粒子を含有すること、
(3)含水率が3〜15重量%であること。
【0028】
本発明の粒子状吸水剤は、上記(1)〜(3)の何れか1つ以上を満たすことが必須であり、好ましくは何れか2つ以上、特に好ましくは3つを同時に満たす水性液体の吸収固化剤であるが、キレート剤及び無機還元剤を上記範囲内で併用されなければ、着色や劣化の防止効果が低い。着色や劣化防止において、上記(1)メトキシフェノール類及び上記(2)水不溶性無機微粒子は劣化防止、更には着色防止に寄与する。又、上記(3)含水率は着色に影響し(例えば、本願比較例3−8)、吸水速度にも寄与(例えば、本願実施例1−16)し、更に臭気や粉塵問題をも解決する。中でも、本発明の課題を解決するために、上記(1)メトキシフェノール類の含有量が5〜60ppmであることが好ましく、更に上記(3)含水率が3〜15重量%の場合、上記(2)水不溶性無機微粒子を含有することが好ましい。すなわち、キレート剤及び無機還元剤を上記範囲内で併用する方法において、上記(1)〜(3)は何れも着色防止または劣化防止に影響があり、本発明ではそれらの1つ以上、好ましくは2つ以上、特に好ましくは3つを選択する。
【0029】
尚、「主成分」とは、吸水性樹脂の含有量が、吸水剤全体に対して50重量%以上であることをいい、吸水性樹脂の含有量は、キレート剤及び無機還元剤を必須に含む吸水剤全体中、好ましくは含水率が3〜15重量%であるため、97重量%未満で吸水性樹脂を含み、吸水性樹脂の下限は60重量%以上、さらには70重量%以上、特に80重量%以上、さらには85重量%以上である。また、含水率が3重量%未満である場合、吸水性樹脂の含有量は60重量%以上99.999重量%未満であり、より好ましくは70重量%以上99.9重量%未満、さらに好ましくは80重量%以上99.7重量%未満、特に好ましくは90重量%以上99.5重量%未満であることをいう。
【0030】
本発明の粒子状吸水剤とは、ポリアクリル酸(塩)系吸水性樹脂を主成分として含む、水性液体の吸収固化剤(別称;ゲル化剤)のことを指す。該水性液体としては、水に限らず、尿、血液、糞、廃液、湿気や蒸気、氷、水と有機溶媒又は無機溶媒との混合物、雨水、地下水等が挙げられ、水を含む限り特に制限されないが、好ましくは、本発明の粒子状吸水剤は、尿、特に人尿の吸収固化剤とされる。
【0031】
本発明に係る粒子状吸水剤は、更に、着色防止や劣化防止のために、α−ヒドロキシカルボン酸化合物を含む水性液体の吸収固化剤であることが好ましい。
【0032】
本発明に係る粒子状吸水剤は、更に、劣化防止や通液性向上のために、多価金属塩及び/又はカチオン性ポリマーを含む水性液体の吸収固化剤であることが好ましい。従来、多価金属塩及び/又はカチオン性ポリマーを用いる場合、得られた吸水剤の着色問題が起こりやすかったが、本発明ではかかる問題もない。
【0033】
本発明に係る上記粒子状吸水剤は、優れた吸収性能を発揮でき、更に、優れた経時着色防止性能を有し、臭気のない、更に耐尿性に優れる、実使用で好適な吸収体用の粒子状吸水剤を与えることができる。
【0034】
以下、〔1〕ポリアクリル酸(塩)系吸水性樹脂、〔2〕キレート剤、〔3〕無機還元剤、〔4〕メトキシフェノール類、〔5〕水不溶性無機微粒子、〔6〕α−ヒドロキシカルボン酸化合物、〔7〕多価金属塩及び/又はカチオン性ポリマー、〔8〕造粒、〔9〕粒子状吸水剤、〔10〕粒子状吸水剤の製造方法、〔11〕吸水体について順に説明する。
【0035】
〔1〕ポリアクリル酸(塩)系吸水性樹脂
(1−1)単量体
本発明の粒子状吸水剤に用いられる吸水性樹脂は、任意にグラフト成分を含み、アクリル酸由来の構成単位を有する。好ましくは、この吸水性樹脂は、アクリル酸由来の構成単位を主成分として有している。この吸水性樹脂の製法は特に限定されないが、好ましくは、この吸水性樹脂は、アクリル酸及び/又はその塩を主成分とする単量体成分を重合して得られる。
【0036】
尚、上記単量体由来の構成単位とは、例えば、重合反応によって、各単量体の重合性二重結合が開いた構造に相当する。重合性二重結合が開いた構造とは、例えば、炭素間の二重結合(C=C)が単結合(−C−C−)となった構造である。
【0037】
本発明において、粒子状吸水剤に用いられる吸水性樹脂は、重合体に架橋構造を導入した水膨潤性水不溶性の重合体である。
【0038】
尚、「水膨潤性」とは、生理食塩水に対する無加圧下吸水倍率(CRC)が2[g/g]以上、好ましくは5〜200[g/g]、より好ましくは20〜100[g/g]であることをいい、「水不溶性」とは、吸水性樹脂中の水可溶分が必須に50重量%以下、好ましくは0〜25重量%、より好ましくは0〜15重量%、更に好ましくは0〜10重量%である、実質的に水不溶性であることをいう。これら「水膨潤性(CRC)」、「水不溶性(水可溶分)」は、後述の実施例で規定される測定方法によって求められる。
【0039】
また、本発明においてポリアクリル酸(塩)系吸水性樹脂とは、重合に用いられる総単量体(架橋剤を除く)におけるアクリル酸及び/又はその塩の合計モル%が必須に50〜100モル%、より好ましくは70〜100モル%、更に好ましくは90〜100モル%、特に好ましくは実質100モル%のものをいう。なお、ポリアクリル酸とは、アクリル酸の重合体に限定されず、ポリアクリロニトリルやポリアクリルアミドの加水分解物であるポリアクリル酸(塩)をも含む概念であるが、物性面から、後述するアクリル酸の重合によって得られるポリアクリル酸が好ましい。
【0040】
本発明で用いられるアクリル酸塩としては、リチウム塩、ナトリウム塩、カリウム塩等のアルカリ金属塩;アンモニウム塩;アミン塩等のアクリル酸の1価塩が通常用いられ、好ましくはアクリル酸のアルカリ金属塩が用いられ、より好ましくはアクリル酸のナトリウム塩あるいはカリウム塩である。また、水膨潤性を有する範囲でカルシウム塩、アルミニウム塩等の多価金属塩を併用してもよい。
【0041】
本発明において得られる吸水性樹脂の中和率は、好ましくは酸基に対して10モル%以上、90モル%未満であり、より好ましくは酸基に対して40モル%以上、80モル%未満、より好ましくは酸基に対して50モル%以上、74モル%未満である。中和率が10モル%未満の場合、吸収性能、特に吸水倍率が著しく低下する場合があり好ましくなく、また、中和率が90モル%以上の場合、吸収性能、特に加圧下吸水倍率の高い吸水剤が得られないことがあり好ましくない。また、吸収性能の観点から中和率を74モル%未満、更には72モル%未満とすることが特に好ましい。すなわち、本発明の方法においても、中和率が高いと着色する傾向にあり、よって、中和率の上限は前記範囲とされる。
【0042】
上記この中和工程は、重合前の単量体成分に対して行ってもよいし、重合中や重合後の含水ゲル状架橋重合体に対して行ってもよい。更には、単量体成分の中和と含水ゲル状架橋重合体の中和とを併用してもよい。好ましくは単量体成分としてのアクリル酸で中和がなされる。
【0043】
本発明において得られる吸水性樹脂の含水率(本願明細書の測定方法で規定)は、後述の乾燥工程や表面架橋工程等で後述した範囲内に、また、最終製品としての粒子状吸水剤の含水率は3〜15重量%に調整されることが好ましい。尚、当然のことながら、本発明に係る粒子状吸水剤が、上記(1)及び(2)の要件を満たさない場合には、最終製品としての粒子状吸水剤の含水率は必ず3〜15重量%に調整される。含水率が15重量%より高い場合、得られた吸水剤が着色する傾向にあり、また、3重量%未満では臭気や粉塵の問題が発生することもある。
【0044】
(1−2)アクリル酸(塩)以外の単量体
本発明において単量体として、アクリル酸(塩)を上記の範囲で使用するが、それ以外の単量体を併用してもよい。アクリル酸(塩)以外の単量体を用いる場合、アクリル酸(塩)以外の単量体の使用量は、主成分として用いられるアクリル酸(塩)及びその他単量体の合計量に対して0〜50モル%、好ましくは0〜30モル%、より好ましくは0〜10モル%である。アクリル酸(塩)以外の単量体を上記割合で使用することにより、最終的に得られる粒子状吸水剤の吸収特性がより一層向上するとともに、粒子状吸水剤をより一層安価に得ることができる。
【0045】
アクリル酸(塩)以外の併用される単量体としては、例えば、後述の米国特許又は欧州特許に例示される単量体が挙げられる。具体的には、併用される単量体として水溶性又は疎水性の不飽和単量体等が挙げられる。水溶性又は疎水性の不飽和単量体としては、例えば、メタクリル酸、(無水)マレイン酸、フマール酸、クロトン酸、イタコン酸、ビニルスルホン酸、2−(メタ)アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸、(メタ)アクリロキシアルカンスルホン酸及びそのアルカリ金属塩、アンモニウム塩、N−ビニル−2−ピロリドン、N−ビニルアセトアミド、(メタ)アクリルアミド、N−イソプロピル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジメチル(メタ)アクリルアミド、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、メトキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、イソブチレン、ラウリル(メタ)アクリレート等が挙げられる。本発明に係る粒子状吸水剤には、上記水溶性又は疎水性の不飽和単量体を共重合成分とするものも含まれる。
【0046】
(1−3)内部架橋剤
本発明で用いられる架橋方法としては特に制限なく、例えば、重合中や重合後に架橋剤を添加して後架橋する方法、ラジカル重合開始剤によりラジカル架橋する方法、電子線等により放射線架橋する方法等を挙げることができるが、予め所定量の内部架橋剤を単量体に添加して重合を行い、重合と同時または又は重合後に架橋反応させる方法が好ましい。
【0047】
本発明で用いられる内部架橋剤としては、例えば、N,N'−メチレンビスアクリルアミド、(ポリ)エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、(ポリ)プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、(ポリオキシエチレン)トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、(ポリオキシエチレン)グリセロールトリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(β−アクリロイルオキシプロピオネート)、トリメチロールプロパントリ(β−アクリロイルオキシプロピオネート)、ポリ(メタ)アリロキシアルカン、ポリエチレングリコールジグリシジルエーテル、エチレングリコール、プロピレングリコール、グリセリン、ブタンジール、エリスリトール、キシリトール、ソルビトール、ポリエチレングリコール等が挙げられ、これらの1種又は2種以上が用いられる。尚、1種以上の内部架橋剤を使用する場合には、得られる吸水性樹脂の吸収特性等を考慮して、2個以上の重合性不飽和基を有する化合物を重合時に必須に用いることが好ましい。
【0048】
内部架橋剤は、上記単量体に対して好ましくは0.005〜2モル%、より好ましくは0.01〜1モル%、更に好ましくは0.05〜0.2モル%である。上記内部架橋剤の使用量が0.005モル%よりも少ない場合、又は、2モル%よりも多い場合には、所望の吸収特性が得られないおそれがある。
【0049】
(1−4)重合濃度
重合工程において、単量体成分を水溶液とする場合、この水溶液(以下、単量体水溶液と称する)中の単量体成分の濃度は、単量体の種類や目的物性によって適宜決定され、特に限定されるものではないが、物性面から好ましくは10〜70重量%、より好ましくは15〜65重量%、さらに更に好ましくは30〜55重量%である。また、水以外の溶媒を必要に応じて併用してもよく、併用できる溶媒の種類は、特に限定されるものではない。なお尚、単量体濃度は飽和濃度を超えるスラリーでもよいが、好ましくは、上記範囲であり、さらにより好ましくは飽和濃度以下である。
【0050】
(1−5)その他成分
尚、重合に際し、アクリル酸(塩)を主成分とする単量体に対して水溶性樹脂(例えば、;澱粉、セルロース、ポリビニルアルコール)または又は吸水性樹脂(やその微粉)を、例えば、0〜50重量%、好ましくは0〜20重量%添加して、吸水性樹脂の諸物性を改善してもよい。また、重合に際し、単量体に対して各種の発泡剤(炭酸塩、アゾ化合物、気泡等)、界面活性剤、キレート剤、連鎖移動剤等を、例えば、0〜5重量%、好ましくは0〜1重量%添加して、吸水性樹脂の諸物性を改善してもよい。尚、上記水溶性樹脂や吸水性樹脂の使用はグラフト重合体(例えば、;澱粉グラフト重合体やPVAグラフト重合体)を与えるが、これらも本発明ではポリアクリル酸(塩)系吸水性樹脂と総称する。
【0051】
(1−6)重合工程
本発明では逆相懸濁重合、水溶液重合、噴霧又は液滴重合が適用できるが、上記単量体水溶液を重合するに際して、性能面や重合の制御の容易さから、水溶液重合又は逆相懸濁重合により行われることが好ましい。これらの重合は空気雰囲気下でも実施できるが、好ましくは、窒素やアルゴン等の不活性気体雰囲気(例えば、酸素1容積%以下)で行われ、また、単量体成分は、その溶存酸素が不活性気体で十分に置換(例えば、酸素1[mg/L]未満)された後に重合に用いられることが好ましい。本発明では、高生産性で高物性の吸水性樹脂を得るための、重合制御が困難であった水溶液重合に特に好適であり、特に好ましい水溶液重合として、連続ベルト重合(米国特許第4893999号、同第6241928号や米国特許出願公開第2005/215734号等に記載)、連続又はバッチニーダー重合(米国特許第6987151号や同第6710141号等に記載)が挙げられる。
【0052】
水溶液重合とは、分散溶媒を用いずに単量体水溶液を重合する方法であり、例えば、米国特許第4625001号、同第4873299号、同第4286082号、同第4973632号、同第4985518号、同第5124416号、同第5250640号、同第5264495号、同第5145906号、同第5380808号等の米国特許や、欧州特許第0811636号、同第0955086号、同第0922717号、同第1178059号等の欧州特許に記載されている。これらの米国特許や欧州特許に記載の単量体、架橋剤、重合開始剤、その他添加剤も本発明では適用できる。
【0053】
逆相懸濁重合とは、単量体水溶液を疎水性有機溶媒に懸濁させる重合法であり、例えば、米国特許第4093776号、同第4367323号、同第4446261号、同第4683274号、同第5244735号等の米国特許に記載されている。
【0054】
更に、本発明では、上記単量体を重合するに際して、本発明の課題でもある吸収特性の向上や経時着色防止を達成するため、単量体成分を調整した時点から重合開始時までの合計時間が短いほど好ましく、これらの合計時間は、好ましくは24時間以内、より好ましくは12時間以内、更に好ましくは3時間以内、特に好ましくは1時間以内である。
【0055】
工業的には大量にタンクで中和や単量体成分の調整を行うため、滞留時間、即ち上記合計時間が24時間を越えることも通常であるが、単量体成分を調整後及び/又はアクリル酸を中和後の時間(上記合計時間)が長いほど、残存モノマーの増加や吸水性樹脂の黄変現象(経時着色)が見出された。よって、滞留時間の短縮を図るためには、好ましくは、連続中和及び連続単量体成分調整して回分式重合又は連続重合を行い、更に好ましくは連続重合を行う。
【0056】
水溶液重合方法の中では、単量体水溶液の重合開始温度が40℃以上、更には50℃以上、更に60℃以上、特に70℃以上の高温重合が好ましい。かかる高温重合(高温開始重合)で得られた含水ゲルに対して本発明に係る製造方法を適用すると、粒度制御を含め本発明の効果が最大限に発揮できる。尚、上限は水溶液の沸点以下、好ましくは105℃以下である。
【0057】
また、重合温度のピーク温度が95℃以上、より好ましくは100℃以上、更に好ましくは105℃以上の高温重合(沸騰重合)が好ましい。かかる沸騰重合で得られた含水ゲルに対して本発明を適用すると、粒度制御を含め本発明の効果が最大限に発揮できる。尚、上限は沸点以下で十分であり、好ましくは130℃以下、更に好ましくは120℃以下である。
【0058】
本発明の効果をより発揮するために重合工程が水溶液性重合である。水溶液重合では予めアクリル酸を中和してもよく、重合後に中和してもよいが、相反する吸水倍率(CRC)と可溶分の相対的な関係の改善のためには重合中または又は重合後に含水ゲル状重合体の細分化工程を含む。単量体がアクリル酸を主成分とし、重合後の含水ゲル状架橋重合体の中和工程を含む。
【0059】
更に、重合後に還元剤を混合する場合、高架橋の重合ゲルは高いゲル強度故に中和剤や還元剤の混合が困難の場合もあり、よって、均一な混合の容易さから、重合後でかつ乾燥前の含水ゲル状架橋重合体を更に架橋することが好ましい。架橋には後述の表面架橋剤と同様に、カルボキシル基と反応する架橋剤が使用でき、ポリグリシジル化合物、ポリヒドロキシ化合物等をが好適に使用でき、その使用量は単量体に対して、好ましくは0.001〜2モル%、さらに更に好ましくは0.01〜1モル%、特に好ましくは0.05〜0.5モル%の範囲で適宜決定できる。
【0060】
尚、重合時間も特に限定されるものではなく、親水性単量体や重合開始剤の種類、反応温度等に応じて適宜決定すればよいが、通常0.5分〜3時間、好ましくは1分〜1時間である。
【0061】
また、得られた吸水剤中のメトキシフェノール類(特にp−メトキシフェノール)の制御(好ましくは吸水剤中に5〜60ppm)の点からも、本発明では、好ましくは重合工程が、メトキシフェノール類(特にp−メトキシフェノール)10〜200ppmを含む単量体中にアクリル酸(塩)を90〜100モル%含む、単量体濃度30〜55重量%の単量体水溶液を、ラジカル重合開始剤0.001〜1モル%によって、最高温度が130℃以下であり、重合時間が0.5分〜3時間である条件下で水溶液重合又は逆相懸濁重合を行う工程であることが好ましく、更には上記又は下記範囲のアクリル酸及び/又はその塩の合計モル%、単量体成分の濃度、重合開始剤の使用量、重合温度のピーク温度、重合時間などである。
【0062】
単量体水溶液を重合する際には、例えば、過硫酸カリウム、過硫酸アンモニウム、過硫酸ナトリウム等の過硫酸塩、t−ブチルハイドロパーオキサイド、過酸化水素等のハイドロパーオキサイド、2,2’−アゾビス(2−アミジノプロパン)二塩酸塩等のアゾ化合物、2−ヒドロキシ−1−フェニル−プロパン−1−オン、ベンゾインメチルエーテル等のラジカル重合開始剤と、更に、これらラジカル重合開始剤の分解を促進するL−アスコルビン酸等の還元剤とを併用したレドックス系開始剤等が用いられる。重合開始剤の使用量は単量体に対して通常0.001〜1モル%、更には0.001〜0.5モル%の範囲である。
【0063】
上記レドックス系開始剤で重合する場合、過硫酸塩や過酸化物と上記還元剤とを併用することが好ましく、還元剤としては例えば、亜硫酸ナトリウム、亜硫酸水素ナトリウム等の(重)亜硫酸(塩)、L−アスコルビン酸(塩)、第一鉄塩等の還元性金属(塩)、アミン類等が挙げられる。これらの還元剤の使用量は、単量体成分に対して、通常0.0001〜0.02モル%が好ましい。
【0064】
また、重合開始剤を用いる代わりに、反応系に放射線、電子線、紫外線等の活性エネルギー線を照射することにより重合反応を行ってもよい。また、放射線、電子線、紫外線等の活性エネルギー線と重合開始剤とを併用してもよい。
【0065】
また、後述のメトキシフェノール類(特にp−メトキシフェノール)さらにはキレート剤を重合時又は重合途中の単量体水溶液に添加し重合することが本発明の効果をより発揮できる点で好ましい。
【0066】
本発明では逆相懸濁重合、水溶液重合、噴霧重合又は液滴重合が適用できるが、本発明の効果をより発揮するため、重合工程が水溶液重合であることが好ましい。水溶液重合では予めアクリル酸を中和してもよく、重合後に中和してもよいが、相反する吸水倍率(CRC)と水可溶分との相対的な関係の改善のため、重合中又は重合後に含水ゲル状重合体後述の(1−7)細分化工程を含む。
【0067】
(1−7)ゲル細粒化工程
重合で得られた含水ゲル状架橋重合体はそのまま乾燥を行ってもよいが、重合中又は重合後に、該含水ゲル状架橋重合体の細粒化を行うことが好ましい。更に必要によりゲル解砕機等を用いて細粒化、好ましくは重量平均粒子径(篩分級で規定)で0.1〜3mm、更には0.5〜2mmに細粒化された後、乾燥される。本発明のポリアクリル酸(塩)系吸水性樹脂の形状は、特に制限なく、例えば、顆粒状、粉末状、フレーク状、繊維状等、任意の形態とすることができる。
【0068】
従って、細粒化は種々の方法で行われるが、例えば、上記ニーダー重合での重合時の細粒子化や、ベルト重合やタンク重合での重合後に任意形状の多孔構造を有するスクリュー型押出機から押し出して解砕する方法を例示できる。押し出し解砕にあたり、後述のキレート剤を水溶液の形態で添加することで、色変化を更に低減させることも可能である。
【0069】
本発明では、好ましくは上記含水ゲル状架橋重合体の細粒化と同時に無機還元剤が添加される。ゲル細粒化工程では含水ゲルと無機還元剤とを混合、更には混練することで、本発明の効果をより高いレベルで達成することができる。なお、ゲル細粒化工程や重合工程(途中)など、乾燥工程前に無機還元剤を添加する場合、後述のように、臭気の問題から、本発明の吸水剤において、その含水率は3〜15重量%が好ましく、また、本発明の吸水剤の製造方法においては、乾燥工程後および表面架橋工程において重合体の含水率を3〜15重量%に制御されることが好ましい。
【0070】
逆相懸濁重合のように粒子状となった後に、無機還元剤(更には後述のキレート剤やα−ヒドロキシカルボン酸化合物)を添加する場合、無機還元剤は吸水性樹脂の表面のみに混合されることになるが、本発明の効果の面から吸水性樹脂粒子の表面のみならず内部まで無機還元剤や必要によりキレート剤やα−ヒドロキシカルボン酸化合物が混合されることが好ましい。よって、水溶液重合後の重合ゲル(特に塊状ゲル又はシート状ゲル)を、細分化と同時に上記無機還元剤等を混練することが好ましい。
【0071】
尚、細粒化及び混合(特に混練)にはニーダーやスクリュー型押出機(別称;ミートチョパー)が好適に使用され、それらを複数台直列で使用してもよく、また、ニーダーとミートチョッパー等異なる装置とを併用してもよい。スクリュー型押出機は1台でもよく、2台以上を使用してもよい。
【0072】
(1−8)乾燥工程
本発明の粒子状吸水剤の製造方法における乾燥工程は、重合工程により得られた含水ゲル、好ましくは粒子状含水ゲル、更に好ましくは、篩分級で規定される重量平均粒子径が0.1〜3mmである含水ゲルを乾燥する工程である。
【0073】
乾燥方法としては、加熱乾燥、熱風乾燥、減圧乾燥、流動床乾燥、赤外線乾燥、マイクロ波乾燥、ドラムドライヤー乾燥、疎水性有機溶媒との共沸脱水、高温の水蒸気を用いた高湿乾燥等、種々の方法の1種または2種以上を採用することができる。好ましい態様としては、露点が40〜100℃、より好ましくは露点が50〜90℃の気体との接触乾燥を例示することができる。熱風乾燥を用いる場合、その風速(水平に広がる乾燥対象物に対して垂直に通過する風の速度)は、好ましくは0.01〜10[m/sec]、より好ましくは0.1〜5[m/sec]の範囲である。
【0074】
本発明において好適に使用される乾燥温度は特に制限されないが、例えば、50〜300℃の範囲(100℃以下の場合は減圧下で行うことが好ましい)、好ましくは100〜250℃、更に好ましくは130〜220℃、特に好ましくは150〜200℃の温度範囲である。乾燥時間は、通常10〜120分、より好ましくは20〜90分、更に好ましくは30〜60分である。乾燥時間が10分未満では、吸水性樹脂の内部のポリマー鎖に起こる変化が小さく、そのため十分な改善効果が得られないと考えられ、そのため諸物性の向上効果が見られない場合がある。また、乾燥時間が120分以上では、吸水性樹脂にダメージを与えてしまう結果、水可溶分が増加し、諸物性の向上効果も見られない場合がある。
【0075】
すなわち、本発明ではメトキシフェノールの制御や含水率調整の点からも、好ましくは乾燥工程が、粒子状含水ゲルを、乾燥温度100〜250℃、乾燥時間10〜120分にて含水率20重量%以下とする乾燥を行う工程であることが好ましく、更には上記又は下記範囲の乾燥温度、乾燥時間、含水率である。
【0076】
本発明の乾燥工程において、上記重合により得られた含水ゲル状架橋重合体の含水率を20重量%以下となるまで乾燥することが好ましく、15重量%以下まで乾燥することがより好ましく、10%重量%以下まで乾燥することが特に好ましい。ここで、乾燥後の含水率としては、2重量%以上、3重量%以上、4重量%以上、5重量%以上、6重量%以上、7重量%以上の順に好ましく、乾燥後の含水率をこのような下限値以上とすることによって、還元剤を使用することによる臭気の問題を抑制することができる。これらの範囲で含水率は、好ましくは2〜20重量%、より好ましくは3〜15重量%、更に好ましくは5〜15重量%、特に好ましくは7〜15重量%とされる。尚、(1−8)乾燥工程と後述の(1−10)表面架橋工程を同時に行ってよく、また、乾燥工程途中で表面架橋剤を加えてさらに表面架橋と同時または表面架橋後にさらに上記含水率までに乾燥してもよい。
【0077】
本発明において、乾燥工程後さらには最終の吸水剤の含水率について、含水率が高いと残存モノマーが残りやすく、その後の取り扱い性も悪いだけでなく、キレート剤および無機還元剤を併用しても含水率が高いと着色しやすいことが見いだされた。また、含水率が低いと過度の乾燥で生産性や物性(例えば、吸水速度)が低下したり、乾燥前に還元剤を使用したりする場合、臭気の問題の問題が発生することもある。なお、特許文献17(欧州特許第1645596号明細書)や特許文献15(米国特許出願公開2005/0856604号)には、特定量のp−メトキシフェノールや水不溶性微粒子の使用を開示しない。更に、吸水剤としての特定含水率(3〜15重量%、さらには4〜14重量%、6〜12重量%、7〜11重量%)の重要性についても開示しない。
【0078】
乾燥工程前に無機還元剤を添加する場合、上記臭気の問題が見いだされ、本発明では含水率を制御することでかかる課題を解決した。この臭気は単なる還元剤の分解というよりも重合後の含水ゲルや残存モノマー等の微量成分と、還元剤との複合的な臭気であり、吸水性樹脂の含水率を一定以下にすることによって生じると推定され、本発明では乾燥工程及び後述の表面架橋工程での含水率が極めて重要であることが見い出された。尚、乾燥後の含水率が高すぎる場合、後述の粉砕や分級において生産性の低下を伴う場合があり、好ましくない。
【0079】
(1−9)粉砕工程・分級工程
乾燥により得られた本発明の吸水性樹脂は、その目的に応じ必要により粒経制御のため粉砕、分級等の工程を経てもよい。これらの方法については、例えば、国際公開第2004/69915号に記載されている。
【0080】
重合後の含水ゲル状架橋重合体を乾燥することで、乾燥重合体が得られる。乾燥重合体は、そのまま乾燥粉末(好ましくは固形分80重量%以上)として使用してもよく、また、必要により乾燥後に粒度を調整してもよい。乾燥後の吸水性樹脂は後述の表面架橋での物性向上のため、好ましくは特定粒度にされる。粒度は重合、粉砕、分級、造粒、微粉回収等で適宜調整できる。
【0081】
表面架橋前の吸水性樹脂(本願実施例では、吸水性樹脂粉体と表記)の重量平均粒子径(D50)としては、200〜550μm、好ましくは250〜500μm、より好ましくは300〜450μm、特に好ましくは350〜400μmに調整される。また、150μm未満の粒子が少ないほどよい。乾燥重合体全体の重量に対する、粒径150μm未満の粒子の重量割合は、通常0〜5重量%、好ましくは0〜3重量%、特に好ましくは0〜1重量%に調整される。更に、850μm以上の粒子が少ないほどよい。乾燥重合体全体の重量に対する、粒経850μm以上の粒子の重量割合は、通常0〜5重量%、好ましくは0〜3重量%、特に好ましくは0〜1重量%に調整される。粒度分布の対数標準偏差(σζ)が好ましくは0.20〜0.45、好ましくは0.27〜0.40、好ましくは0.25〜0.37とされる。かかる粒度は、好ましくは表面架橋後の吸水性樹脂や最終製品の吸水剤にも適用される。よって、好ましくは表面架橋工程後やキレート剤・無機還元剤の添加工程後にも、分級工程や解砕工程が必要により付与される。
【0082】
(1−10)表面架橋工程
本発明で得られる粒子状吸水剤は、従来から知られている表面架橋処理工程を経て、より衛生材料向けに好適な吸水剤とすることができる。表面架橋とは、吸水性樹脂の表面層(表面近傍:吸水性樹脂表面から通常数10μm前後)に更に架橋密度の高い部分を設けることであり、表面でのラジカル架橋や表面重合、表面架橋剤との架橋反応等で形成することができる。
【0083】
本発明で用いることができる表面架橋剤としては、ポリアクリル酸系吸水性樹脂の官能基とイオン結合性または共有結合性の表面架橋剤(好ましくは共有結合性表面架橋剤)であって、種々の有機又は無機架橋剤を例示することができるが、物性や取り扱い性の観点から、カルボキシル基と反応し得る架橋剤を好ましく使用することができる。例えば、多価アルコール化合物、多価グリシジル化合物に代表される多価エポキシ化合物、多価アミン化合物又はそのハロエポキシ化合物との縮合物、オキサゾリン化合物、モノ、ジ、又はポリオキサゾリジノン化合物、多価金属塩、アルキレンカーボネート化合物、オキセタン化合物、環状尿素化合物等の1種または2種以上を例示することができる。
【0084】
より具体的には、米国特許第6228930号、同第6071976号、同第6254990号等に例示されている化合物を挙げることができる。例えば、モノ,ジ,トリ,テトラ又はポリエチレングリコール、モノプロピレングリコール、1,3−プロパンジオール、ジプロピレングリコール、2,3,4−トリメチル−1,3−ペンタンジオール、ポリプロピレングリコール、グリセリン、ポリグリセリン、2−ブテン−1,4−ジオール、1,4−ブタンジオール、1,3−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,2−シクロヘキサンジメタノール等の多価アルコール化合物;エチレングリコールジグリシジルエーテルやグリシドール等のエポキシ化合物;エチレンジアミン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、テトラエチレンペンタミン、ペンタエチレンヘキサミン、ポリエチレンイミン、ポリアミドポリアミン等の多価アミン化合物;エピクロロヒドリン、エピブロムヒドリン、α−メチルエピクロロヒドリン等のハロエポキシ化合物;上記多価アミン化合物と上記ハロエポキシ化合物との縮合物;2−オキサゾリジノン等のオキサゾリジノン化合物;エチレンカボネート等のアルキレンカーボネート化合物;オキセタン化合物;2−イミダゾリジノン等の環状尿素化合物等が挙げられるが、特に限定されるものではない。
【0085】
これら表面架橋剤の中でもAAPやSFCを向上させるためには、表面架橋剤として多価アルコール化合物、オキサゾリジノン化合物、アルキレンカーボネート化合物から選ばれる脱水反応性架橋剤が好適に使用され、また、表面架橋時または表面架橋後に後述の含水率3〜15重量%に制御するために表面架橋剤として多価グリシジル化合物に代表される多価エポキシ化合物が好適に使用される。
【0086】
表面架橋剤の使用量は、用いる化合物やそれらの組み合わせ等にもよるが、吸水性樹脂粉体100重量部に対して、0.001重量部〜10重量部の範囲内が好ましく、0.01重量部〜5重量部の範囲内がより好ましい。本発明において、表面架橋剤に合わせて水が使用され得る。この際、使用される水の量は、吸水性樹脂粉体100重量部に対し、好ましくは0.5〜20重量部、より好ましくは0.5〜10重量部の範囲である。また、本発明において、水以外に親水性有機溶媒を用いることも可能である。
【0087】
この際、使用される親水性有機溶媒の量は、吸水性樹脂粉体100重量部に対し、0〜10重量部であり、好ましくは0〜5重量部の範囲である。また吸水性樹脂粉体への架橋剤溶液の混合に際し、本発明の効果を妨げない範囲、例えば、0〜10重量%以下、好ましくは0〜5重量%、より好ましくは0〜1重量%で、水不溶性無機微粒子や界面活性剤を共存させてもよい。用いられる界面活性剤やその使用量は米国特許第7473739号に例示されている。
【0088】
上記表面架橋剤溶液の混合に用いられる混合装置としては、種々の混合機が使用できるが、好ましくは、高速攪拌型混合機、特に高速攪拌型連続混合機が好ましく、例えば、商品名タービュライザー(日本の細川ミクロン社製)や商品名レディゲミキサー(ドイツのレディゲ社製)等を例示できる。
【0089】
本発明の粒子状吸水剤の製造方法における表面処理は、吸水性樹脂表面の架橋密度を高めるための表面架橋反応を行う工程である。本発明の粒子状吸水剤の所望の性能を得るため、表面架橋剤を混合後の吸水性樹脂は好ましくは加熱処理され、必要によりその後冷却処理される。
【0090】
上記加熱処理の加熱温度(熱媒温度)は、例えば、70〜300℃、好ましくは120〜250℃、より好ましくは150〜250℃であり、加熱時間は、好ましくは1分〜2時間の範囲である。加熱処理は、通常の乾燥機又は加熱炉を用いて行うことができる。ここで、150〜250℃などの高温表面架橋や多価アルコールなどの(吸水性樹脂のカルボキシル基の)脱水反応性表面剤を使用する場合、吸水性樹脂がさらに乾燥されて表面架橋後の含水率は3%未満、特に1%未満となる傾向にある。
【0091】
特に、含水率3〜15重量%の粒子状吸水剤を製造する場合には、加熱温度(熱媒温度さらには材料温度)は80〜250℃の温度範囲で行われることが好ましく、より好ましくは80〜160℃の温度範囲、更に好ましくは80〜120℃の温度範囲、最も好ましくは80〜100℃の温度範囲である。加熱時間が80℃未満の場合、吸水性樹脂の表面架橋が十分でなく、加圧下吸水倍率や食塩水流れ誘導率が低くなる。含水率3〜15重量%に制御するために表面架橋剤として多価グリシジル化合物に代表される多価エポキシ化合物が好適に使用される。また、250℃より高い場合、粒子状吸水剤が着色する場合や、不快な臭気を生じるため、好ましくない。なお、吸水性樹脂の含水率は加熱温度だけで決まるものではなく、加熱時間、反応装置の圧力(減圧)や露点、生産量(単位時間あたりの処理量)などにも依存するため、それらを適宜設定すればよく、また、吸水性樹脂の材料温度は加熱温度より一般に低いため、材料温度を水の沸点以下に保って加熱することで所定含水率の吸水剤を得ることも好ましい。
【0092】
これらの表面架橋処理方法は、欧州特許第0349240号、同第0605150号、同第0450923号、同第0812873号、同第0450924号、同第0668080号等の各種欧州特許や、日本国特開平7−242709号、同第7−224304号等の各種日本特許、米国特許第5409771号、同第5597873号、同第5385983号、同第5610220号、同第5633316号、同第5674633号、同第5462972号等の各種米国特許、国際公開第99/42494号、同第99/43720号、同第99/42496号等の各種国際公開特許にも記載されており、これらの表面架橋方法も本発明に適用できる。また表面架橋処理工程において、上記架橋反応の後、更に硫酸アルミニウム水溶液のような水溶性多価金属塩を添加してもよい。これらの方法については国際公開第2004/69915号、同第2004/69293号等にも記載されており、本発明に適用できるものである。
【0093】
尚、メトキシフェノールを制御する点からも、本発明では好ましくは表面架橋工程が、乾燥工程後の吸水性樹脂粉末100重量部に対して表面架橋剤0.001〜10重量部を混合し、70〜300℃で1分〜2時間加熱処理することによって行われ、更には上記又は下記の表面架橋剤およびその量、加熱温度および時間である。
【0094】
また、表面架橋と同時あるいは表面架橋後に後述の多価金属及び/又はカチオン性ポリマーを添加してもよい。これら多価金属及び/又はカチオン性ポリマーはイオン結合性表面架橋剤としても作用でき、上記共有結合性表面架橋剤との併用によって、より通液性を向上できる。
【0095】
ここで、含水率3〜15重量%の粒子状吸水剤を製造する場合には、表面架橋後の吸水性樹脂の含水率は、3重量%以上、4重量%以上、5重量%以上、6重量%以上、7重量%以上の順に好ましく、表面架橋の含水率をこのような範囲内とすることによって、還元剤を使用することによる臭気、特に表面架橋工程時またはそれ以前に無機還元剤を添加する際の得られた吸水剤の臭気を抑制することができ、その結果、最終的に得られる吸水剤の臭気をより抑制することができる。かかる効果は、表面架橋工程時または表面架橋工程前、特に乾燥工程ないし重合後の乾燥工程前に無機還元剤に添加する場合に顕著であり、よって、かかる無機還元剤の添加において特に含水率が制御される。また、別の手段として、表面架橋時の含水率が3重量%未満、例えば、熱媒温度さらには材料温度150〜250℃での高温表面架橋や脱水反応性表面架橋剤による表面架橋では、表面架橋工程後に無機還元剤を添加することが臭気の点からはより好ましい。
【0096】
この臭気は単なる還元剤の分解というよりも、吸水性樹脂やその残存モノマー等の微量成分と、還元剤との複合的な臭気であり、吸水性樹脂の含水率を一定以下にすることによって生じると推定され、本発明では上記乾燥工程及び表面架橋工程での含水率が極めて重要であることが見い出された。また、より高い吸収倍率とより高い加圧下吸収倍率の吸水剤を得るためにも、表面架橋後の吸水性樹脂の含水率は上記範囲内とすることが好ましい。
【0097】
更には、含水率3〜15重量%の粒子状吸水剤を製造する場合には、吸水性樹脂の含水率を3〜15重量%に保持した状態で表面架橋を行うことが好ましく、4〜14重量%に保持した状態で表面架橋を行うことがより好ましく、5〜13重量%に保持した状態で表面架橋を行うことが更に好ましく、6〜12重量%、7〜11重量%に保持した状態で表面架橋を行うことが最も好ましい。含水率が上記範囲以上であれば、吸水性樹脂の吸収倍率が大幅に低下することを避けることができる。含水率が上記範囲(15重量%)以下であれば、着色がさらに改善され、吸水性樹脂の取り扱い性の悪化や粉体の流動性の低下を抑制することができる。
【0098】
表面架橋後に必要に応じて更に乾燥してもよいし、水やその他添加剤を加えて、含水率やその物性を調整してもよい。本発明で必須に添加される還元剤やキレート剤、また好ましく添加される水不溶性無機微粒子などを表面架橋後に添加してもよく、その他、添加剤として吸水性樹脂100重量部に対して、好ましくは0.001〜20重量部、より好ましくは0.01〜10重量部、特に好ましくは0.1〜5重量部の、抗菌剤、消臭剤、多価金属化合物、等を添加してもよい。
【0099】
(1−11)その他の工程
上記以外に、必要により、造粒工程、微粉除去工程、含水率の調整工程(例えば、本願実施例1−16)、微粉リサイクル工程等を設けてもよい。また、(1−10)表面架橋工程後にキレート剤、無機還元剤の添加工程を設けてもよい。添加には上記(1−10)表面架橋工程や下記〔8〕造粒などに使用する各種混合機が適宜使用できる。
【0100】
本発明の粒子状吸水剤は、ポリアクリル酸(塩)系吸水性樹脂を主成分とする粒子状吸水剤であって、キレート剤と、無機還元剤とを含み、当該キレート剤の含有量が0.001〜0.5重量%であり、以下の(1)〜(3)
(1)メトキシフェノール類の含有量が5〜60ppmであること。
(2)水不溶性無機微粒子を含有すること。
(3)含水率が3〜15重量%であること。
の何れか1つ以上の要件を満たすことを特徴としている。
【0101】
以下、〔2〕キレート剤、〔3〕無機還元剤、〔4〕メトキシフェノール類、及び〔5〕水不溶性無機微粒子について、説明する。
【0102】
〔2〕キレート剤
本発明の粒子状吸水剤は、課題を解決のために、キレート剤を必須に含む。本発明のキレート剤としては、効果の面から、高分子化合物又は非高分子化合物、中でも非高分子化合物が好ましく、具体的には、アミノ多価カルボン酸、有機多価燐酸、無機多価燐酸、アミノ多価燐酸から選ばれる化合物が好ましい。効果の面から、キレート剤の分子量は100〜5000であることが好ましく、より好ましくは200〜1000である。キレート剤がない場合、着色や劣化の面で劣った吸水剤となる。
【0103】
ここで、多価とは1分子中に複数の該官能基を有し、好ましくは2〜30個、更には3〜20個、4〜10個の該官能基を有する。また、これらキレート剤は水溶性キレート剤、具体的には、100g(25℃)の水に1g以上、更には10g以上溶解する水溶性キレート剤であることが好ましい。
【0104】
上記アミノ多価カルボン酸としては、イミノ2酢酸、ヒドロキシエチルイミノ2酢酸、ニトリロ3酢酸、ニトリロ3プロピオン酸、エチレンジアミン4酢酸、ジエチレントリアミン5酢酸、トリエチレンテトラミン6酢酸、trans−1,2−ジアミノシクロヘキサン4酢酸、N,N−ビス(2−ヒドロキシエチル)グリシン、ジアミノプロパノール4酢酸、エチレンジアミン2プロピオン酸、ヒドロキシエチレンジアミン3酢酸、グリコールエーテルジアミン4酢酸、ジアミノプロパン4酢酸、N,N’−ビス(2−ヒドロキシベンジル)エチレンジアミン−N,N’−2酢酸、1,6−ヘキサメチレンジアミン−N,N,N’,N’−4酢酸及びそれらの塩等が挙げられる。
【0105】
上記有機多価燐酸としては、ニトリロ酢酸−ジ(メチレンホスフィン酸)、ニトリロジ酢酸−(メチレンホスフィン酸)、ニトリロ酢酸−β−プロピオン酸−メチレンホスホン酸、ニトリロトリス(メチレンホスホン酸)、1−ヒドロキシエチリデンジホスホン酸等が挙げられ、また、上記無機多価燐酸としては、ピロ燐酸、トリポリ燐酸及びそれらの塩等が挙げられる。
【0106】
更に、上記アミノ多価燐酸としては、エチレンジアミン−N,N’−ジ(メチレンホスフィン酸)、エチレンジアミンテトラ(メチレンホスフィン酸)、シクロヘキサンジアミンテトラ(メチレンホスホン酸)、エチレンジアミン−N,N’−ジ酢酸−N,N’−ジ(メチレンホスホン酸)、エチレンジアミン−N,N’−ジ(メチレンホスホン酸)、エチレンジアミンテトラ(メチレンホスホン酸)、ポリメチレンジアミンテトラ(メチレンホスホン酸)、ジエチレントリアミンペンタ(メチレンホスホン酸)及びこれらの塩等が挙げられる。
【0107】
尚、本発明で最も好ましいアミノ多価燐酸としては、エチレンジアミンテトラ(メチレンホスホン酸)又はその塩等が挙げられる。塩として好ましいものは、一価塩、特にナトリウム塩、カリウム塩等のアルカリ金属塩、アンモニウム塩、アミン塩を挙げることができる。また、塩としてはナトリウム塩、カリウム塩が特に好ましい。
【0108】
尚、これらの中でも、着色防止の観点から、アミノカルボン酸系金属キレート剤、アミノ多価燐酸系金属キレート剤及びこれらの塩が好適に用いられる。とりわけ、ジエチレントリアミン5酢酸、トリエチレンテトラミン6酢酸、trans−1,2−ジアミノシクロヘキサン4酢酸、エチレンジアミンテトラ(メチレンホスフィン酸)、ジエチレントリアミンペンタ(メチレンホスホン酸)及びそれらの塩がより好適に用いられる。これらの中でも、エチレンジアミンテトラ(メチレンホスホン酸)又はその塩が最も好ましく、塩としては、一価の塩が好ましく、ナトリウム塩、カリウム塩等のアルカリ金属塩、アンモニウム塩、アミン塩を挙げることができる。また、これらの塩の中でもナトリウム塩、カリウム塩が特に好ましい。
【0109】
本発明の粒子状吸水剤におけるキレート剤の含有量は、0.001〜0.5重量%であり、0.001〜0.1重量%が好ましく、0.002〜0.1重量%がより好ましく、0.003〜0.05重量%が更に好ましく、0.005〜0.05重量%が特に好ましい。上記キレート剤の含有量が0.001重量%未満の場合、粒子状吸水剤の経時着色が酷くなり、該粒子状吸水剤の経時色調が悪化するため、好ましくない。また、前記特許文献29の実施例など上記キレート剤の含有量が0.5重量%を超える場合、粒子状吸水剤の初期着色が大きくなることが見いだされ、該粒子状吸水剤の初期色調が悪化する場合があるため、好ましくない。また、該粒子状吸水剤の経時色調も悪化する場合があるため、好ましくない。
【0110】
尚、経時着色とは、高温、高湿度下で長期間保存した場合等の粒子状吸水剤の着色を言い、初期着色とは、製造によって得られた時点での粒子状吸水剤の色調又は着色度合いを言う。
【0111】
かかるキレート剤は、上記(1−6)重合工程、(1−7)ゲル細粒化工程、(1−8)乾燥工程、(1−9)粉砕工程・分級工程、(1−10)表面架橋工程、(1−11)その他の工程のいずれか1つ以上に添加でき、(1−6)重合工程では重合工程以前の単量体調整時にキレート剤を添加してもよく、重合中ににキレート剤を添加してもよい。これら(1−6)〜(1−11)などの各製造工程での使用量が実質的に得られた吸水剤中の含有量となるが、吸水剤中のキレート剤は残存モノマーや水可溶分の定量と同様に水や生理食塩水によって吸水剤からキレート剤を抽出して液体クロマトグラフィーやイオンクロマトグラフィィーなどで適宜定量できる。
【0112】
なお、前記特許文献29(国際公開第2006/109882号パンフレット)は、アクリル酸アンモニウム塩を単量体に用いる着色防止方法やリン原子を含む化合物または硫黄系還元剤を複数回添加する着色防止方法を開示するが、特許文献29は本発明の特定含水率(3〜15重量%)はおろか、リン原子を含む化合物または硫黄系還元剤の特定添加量(0.001〜0.5重量%であり、好ましくは0.001〜0.1重量%)を開示せず、特許文献29の実施例5では1−ヒドロキシエチリデン−1,1−ジホスホン酸1.0重量%の添加、実施例4では同じく1−ヒドロキシエチリデン−1,1−ジホスホン酸合計2.0重量%の使用を開示する。かかる0.5重量%を超えるキレート剤の使用は無機還元剤の併用においても、後述の比較例1−5に示すように、得られた吸水剤の着色にかえって悪影響を与えることが見いだされ、本発明を完成した。
【0113】
〔3〕無機還元剤
本発明に係る粒子状吸水剤は、無機還元剤を必須に含み、好ましくは、無機還元剤として、還元性無機元素を有する水溶性無機化合物又は還元性無機元素を有する水溶性有機化合物を含む。尚、上記「水溶性」とは、25℃の水100gに対して1g以上、更には5g以上、特に10g以上溶解することをいう。キレート剤がない場合、残存モノマー、着色や劣化の面で劣った吸水剤となる。
【0114】
本発明における無機還元剤は、上記重合工程で用いる重合開始剤としての還元剤とは区別して使用する。すなわち、無機還元剤とは、還元性を有する化合物をいい、還元性無機元素を有していればよく、具体的には、還元性の硫黄原子又は還元性の燐原子を有する化合物が挙げられ、好ましくは還元性の硫黄原子を含む化合物又は還元性の燐原子を含む水溶性化合物が挙げられる。したがって、無機化合物であっても有機化合物であっても、還元性の硫黄原子又は還元性の燐原子を有していれば、本発明の無機還元剤とみなす。
【0115】
上記無機還元剤は酸型でもよいが、好ましくは塩型であり、塩としては1価又は多価の金属塩がより好ましく、1価の塩が更に好ましい。これら無機還元剤のうち、下記に例示される含酸素還元性無機化合物、すなわち、硫黄や燐が酸素と結合した無機還元剤、中でも含酸素系還元性無機塩が好ましい。また、これらの無機還元剤は、アルキル基、ヒドロキシアルキル基等の有機化合物に還元性の無機原子、好ましくは、還元性の硫黄原子又は燐原子を有している無機還元剤でもよい。
【0116】
また、本発明で用いられる、還元性の硫黄原子又は還元性の燐原子を有している無機還元剤としては、最も安定な硫黄原子の酸化数は+6(正6価)、燐原子の酸化数は+5(正5価)であるが、一般にそれ以下の酸化数の各原子は還元性を有しており、+4価の硫黄化合物(例えば、亜硫酸塩、亜硫酸水素塩、ピロ亜硫酸塩)、+3価の硫黄化合物(例えば、亜二チオン酸塩)、+2価の硫黄化合物(例えば、スルホキシル酸塩)、+4価の燐化合物(例えば、次燐酸塩)、+3価の燐化合物(例えば、亜燐酸塩、ピロ亜燐酸塩)、+1価の燐化合物(例えば、次亜燐酸塩)が使用される。これら還元性の無機化合物では、還元性硫黄原子又は還元性燐原子が有機物で置換されていてもよい。
【0117】
無機還元剤である、硫黄原子を含む無機化合物としては、特に限定されないが、例えば、亜硫酸ナトリウム、亜硫酸カリウム、亜硫酸カルシウム、亜硫酸亜鉛、亜硫酸アンモニウム等の亜硫酸塩;亜硫酸水素ナトリウム、亜硫酸水素カリウム、亜硫酸水素カルシウム、亜硫酸水素アンモニウム等の亜硫酸水素塩;ピロ亜硫酸ナトリウム、ピロ亜硫酸カリウム、ピロ亜硫酸アンモニウム等のピロ亜硫酸塩;亜二チオン酸ナトリウム、亜二チオン酸カリウム、亜二チオン酸アンモニウム、亜二チオン酸カルシウム、亜二チオン酸亜鉛等の亜二チオン酸塩;三チオン酸カリウム、三チオン酸ナトリウム等の三チオン酸塩;四チオン酸カリウム、四チオン酸ナトリウム等の四チオン酸塩;チオ硫酸ナトリウム、チオ硫酸カリウム、チオ硫酸アンモニウム等のチオ硫酸塩;亜硝酸ナトリウム、亜硝酸カリウム、亜硝酸カルシウム、亜硝酸亜鉛等の亜硝酸塩等が挙げられ、リン原子を含む無機化合物としては、次亜リン酸ナトリウム等が挙げられる。これらの中でも、亜硫酸塩、亜硫酸水素塩、ピロ亜硫酸塩、亜二チオン酸塩が好ましく、亜硫酸ナトリウム、亜硫酸水素ナトリウム、ピロ亜硫酸カリウム、亜二チオン酸ナトリウムがより好ましい。
【0118】
また、無機還元剤である、硫黄原子を含む水溶性有機化合物としては、特に限定されないが、例えば、2−ヒドロキシ−2−スルフィナート酢酸ホルムアルデヒドスルホキシル酸ナトリウム、ホルムアミジンスルフィン酸及びチオグリコール酸トリス(2−カルボキシエチル)ホスフィン塩酸塩(TCEP)、トリブチルホスフィン(TBP)等が挙げられるが、中でも、2−ヒドロキシ−2−スルフィナート酢酸、2−ヒドロキシ−2−スルホナト酢酸、及び/又はこれらの塩が好ましく例示される。好ましい塩としては、アルカリ金属、及びアルカリ土類金属塩であり、Li、Na、Kが好ましく、特にナトリウム塩が好ましい。2−ヒドロキシ−2−スルフィナート酢酸(塩)は、2−ヒドロキシ−2−スルホナト酢酸(塩)と組み合わせて使用してもよく、更に、前述の無機化合物と併用して使用してもよい。
【0119】
好ましい無機還元剤として、2−ヒドロキシ−2−スルフィナート酢酸は、還元性の硫黄原子をスルフィナート基として有するため本発明の無機還元剤であり、Brueggemann Chemical(ドイツ国Heilbron在)から市販されているBRUGGOLITE(R)FF7として入手することができ、2−ヒドロキシ−2−スルフィナート酢酸二ナトリウム塩を50〜60重量%、亜硫酸ナトリウム(Na
2SO
3)を30〜35重量%及び2−ヒドロキシ−2−スルホナト酢酸二ナトリウム塩を10〜15重量%含有するBRUGGOLITE(R)FF6として入手することができる。
【0120】
本発明の粒子状吸水剤に含まれる無機還元剤は、0.01〜1.0重量%が好ましく、0.05〜1.0重量%がより好ましく、0.05〜0.5重量%が特に好ましい。上記無機還元剤の含有量が0.01重量%以上であれば、粒子状吸水剤の経時着色を抑制することができる。また、上記無機還元剤の含有量が1.0重量%以下であれば、粒子状吸水剤の臭気を抑制することができ、特に、粒子状吸水剤が水性液を吸収した後の臭気を効果的に抑制することができる。
【0121】
なお、無機還元剤は上記(1−6)重合工程、(1−7)ゲル細粒化工程、(1−8)乾燥工程、(1−9)粉砕工程・分級工程、(1−10)表面架橋工程、(1−11)その他の工程(表面架橋後の添加工程など)のいずれか1つ以上に添加でき、(1−6)重合工程では重合開始時に添加してもよいが、一般に還元剤が消費されるため、好ましくは重合中に、さらには重合工程以降に添加することが好ましく、製造工程、特に工程や乾燥工程で消費される還元剤の量を含めて添加すればよい。得られる吸水剤中の無機還元剤の量は乾燥工程以降、特に表面架橋後の無機還元剤の添加なら、各製造工程での使用量が実質的に得られた吸水剤中の含有量となるが、乾燥工程以前に添加する無機吸水剤中のキレート剤は残存モノマーや水可溶分の定量と同様に水や生理食塩水によって吸水剤からキレート剤を抽出して液体クロマトグラフィーやイオンクロマトグラフィーなどで適宜定量できる。これら(1−6)〜(1−11)などの各製造工程での使用量が実質的に得られた吸水剤中となるが、吸水剤中のキレート剤は残存モノマーや水可溶分の定量と同様に水や生理食塩水によって吸水剤からキレート剤を抽出して液体クロマトグラフィーやイオンクロマトグラフィーなどで適宜定量できる。
【0122】
本発明の無機還元剤は、臭気の観点から好ましくは表面架橋処理工程の後に添加される。特許文献5のように、本発明の特定含水率(3〜15重量%)に制御することなく、無機還元剤を表面架橋処理工程、あるいはその前に添加される場合、得られる粒子状吸水剤が異臭を有する場合があり好ましくなく、特に得られた粒子状吸水剤が水性液を吸収した後、異臭を発生するので好ましくない。かかる臭気は単なる無機還元剤の臭気に限らず、表面架橋工程、特に高SFCや高AAPを目指す表面架橋工程で副生する臭気と推定される。
【0123】
すなわち、本発明の吸水剤の製造方法は、上記(c)を必須とする下位概念の製造方法その3として、本発明の粒子状吸水剤の製造方法(その3)は、アクリル酸(塩)を主成分とする単量体水溶液の重合工程と、重合で得られた含水ゲル状架橋重合体の乾燥工程と、表面架橋工程とを含む、ポリアクリル酸(塩)系吸水性樹脂を主成分とする粒子状吸水剤の製造方法であって、キレート剤0.001〜0.5重量%の添加工程と無機還元剤の添加工程とを更に含み、単量体がメトキシフェノール類を対アクリル酸換算で10〜200ppm含有し、乾燥工程後、及び表面架橋工程において、重合体の含水率を3〜15重量%に制御すること、さらに好ましくは、上記無機還元剤を、乾燥前の含水ゲル状架橋重合体に添加する、粒子状吸水剤の製造方法(第3の製造方法)である。
【0124】
〔4〕メトキシフェノール類
本発明の粒子状吸水剤は、上記(2)及び(3)の要件を満たさない場合には、5〜60ppmのメトキシフェノール類を含むことになるが、上記(2)及び(3)の何れかの要件を満たす場合であっても、メトキシフェノール類を含むことが好ましく、5〜60ppmのメトキシフェノール類を含むことがより好ましい。
【0125】
メトキシフェノール類としては、具体的には、o,m,p−メトキシフェノールや、それらに更にメチル基、t−ブチル基、水酸基等の1個又は2個以上の置換基を有するメトキシフェノール類が例示され、特に好ましくは、p−メトキシフェノールが本発明では使用、特に前記(1−6)重合工程で使用される。
【0126】
p−メトキシフェノールは、本発明のポリアクリル酸(塩)系吸水性樹脂を構成する単量体主成分であるアクリル酸に含まれることが好ましい。本発明の粒子状吸水剤におけるメトキシフェノール類(特にp−メトキシフェノール)の含有量は、5〜50ppmがより好ましく、6〜50ppmが更に好ましく、7〜40ppmが特に好ましく、8〜30ppmが最も好ましい。前記(1−6)重合工程において、メトキシフェノール類の含有量(10〜200ppm)をさらに後述の(10−1)アクリル酸の項に記載した範囲内に制御することによって、重合制御とともに耐尿性等の使用時のゲル安定性がより一層高まるため、好ましい。
【0127】
上記メトキシフェノール類の含有量が5ppm未満の場合、すなわち、蒸留等の精製によって重合禁止剤であるp−メトキシフェノールを除去した場合、意図的に重合を開始させる前に重合が起きる危険があるのみならず、アクリル酸(塩)を主原料として得られた本願発明の粒子状吸水剤の耐候性が悪化するため好ましくない。また、上記メトキシフェノール類の含有量が60ppmを超える場合、重合遅延等の重合反応が制御できない等の問題が生じるため好ましくなく、また本願発明の粒子状吸水剤が着色するため好ましくない。
【0128】
本願発明の粒子状吸水剤中のメトキシフェノール類(5〜60ppm)は、メトキシフェノール類を10〜200ppm含有するアクリル酸(塩)を主成分とする単量体水溶液を上記重合(上記の濃度、温度、重合開始剤等)した後、重合で得られた含水ゲル状架橋重合体を前述の好ましい範囲の条件で乾燥(上記の温度、時間、風速、固形分等)する工程を経ることによって調整することができる。一般にアクリル酸の重合禁止剤としてp−メトキシフェノールが200ppmの量で使用されることも周知であり、また、吸水性樹脂の重合時にアクリル酸(沸点143℃)を蒸留精製(例えば米国特許第6388000号)したりアクリル酸塩を活性炭で処理(特許文献7)することも周知であり、かかる蒸留精製ではp−メトキシフェノールは実質的にアクリル酸から除去され、よって、本発明のp−メトキシフェノールとはなりえない。
【0129】
尚、特許許文献17(欧州特許第1645596号明細書)は、含酸素還元性無機塩、アミノカルボン酸系キレート剤及び有機酸化防止剤を含有する吸水性樹脂組成物を開示し、有機酸化防止剤の一例としてアルキルヒドロキシアニソール(特許許文献17の請求項7、実施例6では1重量%使用)を開示するが、アルキルヒドロキシアニソールではp−メトキシフェノールに比べて十分な効果を発揮しない。
【0130】
更に、上記特許文献12及び特許文献15〜19に記載の還元剤等による着色防止技術では、キレート剤および無機還元剤を併用し、さらにメトキシフェノール(特にp−メトシフェノール)を特定の含有量に制御(特に重合時に使用して吸水性樹脂内部に均一に微量含有)することによる本願に記載の課題と効果を開示しない。
【0131】
同様に、特許文献15やその実施例5にあるように、乾燥前の無機還元剤を添加する場合、表面架橋後の最終的な含水率によっては臭気が発生するため注意を要する。特許文献5はp−メトシフェノール10〜160ppmでの吸水性樹脂の重合を開示するが、p−メトシフェノールを開示する特許文献10,11を含め、本願キレート剤及び還元剤の併用や好ましい最終含水率については開示していない。さらに、これらの特許文献は重合時のp−メトキシフェノールの使用を開示するが、p−メトキシフェノールは重合時や乾燥時にも消費され、本発明の制御方法を開示しないため、得られた最終製品中のp−メトシフェノール量を開示しない。また、非特許文献1(The Modern Superaborbent Polymer Technology;1998年)のpage41の表5,2には8つの製造場所A〜Hからの吸水性樹脂中の残存p−メトシフェノール(MEHQ)を記載しており、MEHQが16〜151ppmの吸水性樹脂を開示するが、非特許文献1も本発明の特定MEHQ(5〜60ppm)にキレート剤および無機還元剤の使用を開示しない。
【0132】
〔5〕水不溶性無機微粒子
本発明の粒子状吸水剤は、上記(1)及び(3)の要件を満たさない場合には、水不溶性無機微粒子を含むことになるが、上記(1)及び(3)の何れかの要件を満たす場合であっても、通液性(SFC)向上や吸湿時の流動性等の観点から、水不溶性無機微粒子、特に白色の水不溶性無機微粒子を含むことが好ましい。ここで、白色の水不溶性無機微粒子を添加することで、得られた吸水性樹脂の白色がより改善され、また、吸水性樹脂のゲル強度が向上するので好ましい。特許許文献15〜17などは、微量のp−メトキシフェノールや白色の水不溶性無機微粒子の併用を開示しない。ここで、水不溶性無機微粒子の白色度はL,a,bで70以上、±5以内、±10以内の範囲であり、好ましくは、80以上、±3以内、±7以内、好ましくは、90以上、±2以内、±5以内であり、混合前の吸水性樹脂より白色(好ましくは、Lで5以上、さらには7以上)の不溶性無機微粒子が使用される。特に吸水剤で上記含水率3〜15重量%、さらには上記範囲とする場合、本発明の課題の解決のために、水不溶性無機微粒子が好ましく併用される。
【0133】
上記水不溶性無機微粒子は、コールターカウンター法により測定された平均粒子径が、好ましくは0.001〜200μm、より好ましくは0.005〜50μm、更に好ましくは0.01〜10μmの範囲の微粒子であり、好ましくは親水性微粒子であり、例えば、シリカ(二酸化珪素)や酸化チタン等の金属酸化物、亜鉛と珪素、又は、亜鉛とアルミニウムとを含む複合含水酸化物(例えば、国際公開第2005/010102号に例示)、天然ゼオライトや合成ゼオライト等の珪酸(塩)、カオリン、タルク、クレー、ベントナイト、リン酸カルシウム、リン酸バリウム、珪酸又はその塩、粘土、珪藻土、シリカゲル、ゼオライト、ベントナイト、ヒドロキシアパタイト、ハイドロタルサイト、バーミュキュライト、パーライト、イソライト、活性白土、ケイ砂、ケイ石、ストロンチウム鉱石、蛍石、ボーキサイト等が挙げられる。また、このうち二酸化ケイ素及び珪酸(塩)がより好ましく、二酸化ケイ素及び珪酸(塩)が更に好ましい。
【0134】
上記二酸化ケイ素は特に限定はされないが、乾式法で製造されたアモルファスのフュームドシリカであることが好ましい。クォーツと呼ばれる二酸化ケイ素等は、健康上の問題を引き起こす可能性があるため好ましくない。
【0135】
本発明の粒子状吸水剤に含まれる水不溶性無機微粒子は、0.05〜1.0重量%の範囲が好ましく、より好ましくは0.05〜0.8重量%、更に好ましくは0.05〜0.7重量%、特に好ましくは0.1〜0.5重量%の範囲である。水不溶性無機微粒子の含有量が0.05重量%以上であれば、粒子状吸水剤の耐尿性の悪化を抑制することができる。水不溶性無機微粒子の含有量が1.0重量%以下であれば、粒子状吸水剤の加圧下吸水倍率の低下を抑制することができる。
【0136】
上記〔1〕の吸水性樹脂は、〔2〕キレート剤〜〔5〕水不溶性無機微粒子に加えて、下記〔6〕α−ヒドロキシカルボン酸化合物、〔7〕多価金属塩及び/又はカチオン性ポリマーを含むことも好ましいし、また、〔8〕造粒していてもよい。
【0137】
〔6〕α−ヒドロキシカルボン酸化合物
本発明の粒子状吸水剤は、さらなる着色防止や劣化防止(耐候性、耐尿性)等の観点から、上記した還元性硫黄化合物(例えば、2−ヒドロキシ−2−スルフィナート酢酸)以外にも、α−ヒドロキシカルボン酸化合物を含むことが好ましく、非還元性α−ヒドロキシカルボン酸化合物を含むことがより好ましい。ここで、非還元性α−ヒドロキシカルボン酸化合物とは、還元性無機元素(例えば、還元性硫黄、スルフィナート基など)を有しないヒドロキシカルボン酸化合物を指す。特に、高いAAPや高いSFCを満たす場合、または、多価金属塩及び/又はポリアミンポリマーを含有する場合、着色防止や劣化防止からα−ヒドロキシカルボン酸化合物を含むことが好ましく、表面架橋工程ないしそれ以降に混合することが好ましい。
【0138】
本発明で用いられ得るα−ヒドロキシカルボン酸化合物とは、分子内にヒドロキシル基を併せ持つカルボン酸又はその塩のことで、α位にヒドロキシル基を有するヒドロキシカルボン酸化合物である。α−ヒドロキシカルボン酸化合物は、非高分子α−ヒドロキシカルボン酸類が好ましく、添加のしやすさ、添加効果の点から、その分子量は好ましくは40〜2000、より好ましくは60〜1000、特に好ましくは100〜500の範囲であり、水溶性であることが好ましい。かかるα−ヒドロキシカルボン酸化合物としては、グリコール酸、酒石酸、乳酸(塩)、クエン酸(塩)、リンゴ酸(塩)、イソクエン酸(塩)、グリセリン酸(塩)、ポリα−ヒドロキシアクリル酸(塩)等が挙げられる。中でも、乳酸(塩)、リンゴ酸(塩)が好ましく、乳酸(塩)がより好ましい。
【0139】
α−ヒドロキシカルボン酸の塩としては、特に限定されるものではないが、塩としては一価塩又は多価塩が用いられ、好ましくは一価塩〜三価塩、具体的には、ナトリウム塩、カリウム塩、カルシウム塩、マグネシウム塩、アルミニウム塩が好ましく、ナトリウム塩がより好ましい。また、α−ヒドロキシカルボン酸の酸基は、100%塩に置換されてもよいし、部分的に置換されてもよい。
【0140】
これらα−ヒドロキシカルボン酸化合物は、コストパーフォーマンスの観点から、粒子状吸水剤中の含有量は、0.05〜1.0重量%の範囲が好ましく、より好ましくは0.05〜0.5重量%、更に好ましくは0.1〜0.5重量%の範囲である。また、特定範囲のメトキシフェノール、キレート剤及び無機還元剤を含む本発明の粒子状吸水剤が、更にα−ヒドロキシカルボン酸化合物を含むことで本発明の前述の効果をより高めることができる。
【0141】
〔7〕多価金属塩及び/又はカチオン性ポリマー
本発明の粒子状吸水剤は、吸水速度(Vortex)向上、通液性(SFC)向上や吸湿時の流動性等の観点から、多価金属塩及び/又はカチオン性ポリマーを更に含むことが好ましい。
【0142】
上記多価金属塩としては、多価金属の有機酸塩又は無機酸塩であり、アルミニウム、ジルコニウム、鉄、チタン、カルシウム、マグネシウム、亜鉛等の多価金属塩が好ましい。多価金属塩は水溶性、非水溶性の何れでもよいが、水溶性多価金属塩が好ましく、25℃の水に2重量%以上、更には5重量%以上の溶解する水溶性多価金属塩が使用できる。具体的には、例えば、塩化アルミニウム、ポリ塩化アルミニウム、硫酸アルミニウム、硝酸アルミニウム、ビス硫酸カリウムアルミニウム、ビス硫酸ナトリウムアルミニウム、カリウムミョウバン、アンモニウムミョウバン、ナトリウムミョウバン、アルミン酸ナトリウム、塩化カルシウム、硝酸カルシウム、塩化マグネシウム、硫酸マグネシウム、硝酸マグネシウム、塩化亜鉛、硫酸亜鉛、硝酸亜鉛、塩化ジルコニウム、硫酸ジルコニウム、硝酸ジルコニウム等の無機酸塩、それら多価金属の乳酸塩、酢酸塩等の有機酸塩を例示することができる。
【0143】
また、尿等の吸収液との溶解性の点からもこれらの結晶水を有する塩を使用するのが好ましい。特に好ましいのは、アルミニウム化合物、中でも、塩化アルミニウム、ポリ塩化アルミニウム、硫酸アルミニウム、硝酸アルミニウム、ビス硫酸カリウムアルミニウム、ビス硫酸ナトリウムアルミニウム、カリウムミョウバン、アンモニウムミョウバン、ナトリウムミョウバン、アルミン酸ナトリウムが好ましく、硫酸アルミニウムが特に好ましく、硫酸アルミニウム18水塩、硫酸アルミニウム14〜18水塩等の含水結晶の粉末は最も好適に使用することができる。これらは1種のみ用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0144】
上記カチオン性ポリマーとしては、アミノ基を有するカチオン性ポリマーであり、更には水溶性カチオン性ポリマーであり、好ましくは、25℃の水に2重量%以上、更には5重量%以上溶解する水溶性ポリマーである。例えば、ポリエチレンイミン等のポリアルキレンイミン、ポリエーテルポリアミン、ポリエーテルアミン、ポリビニルアミン、ポリアルキルアミン、ポリアリルアミン、ポリジアリルアミン、ポリ(N−アルキルアリルアミン)、モノアリルアミン−ジアリルアミン共重合体、N−アルキルアリルアミン−モノアリルアミン共重合体、モノアリルアミン−ジアルキルジアリルアンモニウム塩・共重合体、ジアリルアミン−ジアルキルジアリルアンモニウム塩・共重合体、ポリエチレンポリアミン、ポリプロピレンポリアミン、ポリアミジン等;これらの塩が好ましく挙げられる。また、国際公開第2009/041727号に記載の改質カチオン性ポリマーがより好ましく挙げられる。
【0145】
カチオン性ポリマーの重量平均分子量は、5000以上であることが好ましく、10000以上であることがより好ましく、30000以上であることが更に好ましい。重量平均分子量が5000未満であると期待する効果が得られなくなるおそれがある。また、上記カチオン性ポリマーの重量平均分子量の上限は特に限定されるものではないが、100万以下であることが好ましく、50万以下であることがより好ましい。上記カチオン性高分子化合物の重量平均分子量が、100万以下であることにより、粘度が低くなり、取り扱い性や混合性に優れるため好ましい。尚、重量平均分子量は、GPC、粘度測定、静的光散乱等の公知の方法で測定することができる。
【0146】
多価金属による表面架橋は、国際公開第2007/121037号、同第2008/09843号、同第2008/09842号、米国特許第7157141号、同第6605673号、同第6620889号、米国特許出願公開第2005/0288182号、同第2005/0070671号、同第2007/0106013号、同第2006/0073969号に示されている。また、上記有機表面架橋剤以外にポリアミンポリマー、特に重量平均分子量5000〜100万程度のポリアミンポリマーを同時又は別途で使用して通液性等を向上させてもよい。
【0147】
使用されるポリアミンポリマーは、例えば、米国特許第7098284号、国際公開第2006/082188号、同第2006/082189号、同第2006/082197号、同第2006/111402号、同第2006/111403号、同第2006/111404号等に例示されている。
【0148】
本発明の粒子状吸水剤に含まれる多価金属塩及び/又はカチオン性ポリマーの使用量は、粒子状吸水剤100重量部に対して、0〜5重量部、好ましくは0.001〜3重量部、より好ましくは0.01〜2重量部の範囲である。多価金属塩及び/又はカチオン性ポリマーの含有量が5重量部より多い場合、吸収性能、特に吸水倍率が著しく低下する場合があり好ましくなく、また、着色を引き起こす場合があり好ましくない。
【0149】
〔8〕造粒
本発明の粒子状吸水剤は、造粒物であることが好ましい。造粒物であることによって、粒子状吸水剤に含まれるダスト量が低減される。
【0150】
本発明の粒子状吸水剤を得るために、好ましくは、重合中又は重合後に造粒される。造粒されることで、更に吸水速度や粒度に優れ、紙オムツとしての実使用に優れた吸水剤となる。
【0151】
ここで、造粒とは、複数の粒子状の吸水性樹脂が結合して1つの大きな粒子状態とすることを意味し、最終的に結合粒子となる限り、結合時は含水ゲルでもよく、乾燥物でもよく、単量体でもよいし、結合粒子間は点接触でも、面接触でもよく、粒子間の界面はあってもよく、粒子間の結合によっては、界面が完全に消滅していてもよいが、吸水速度の点から好ましくは界面を有する造粒粒子とされる。
【0152】
本発明で用いる造粒前の吸水性樹脂は、(粒径が150μm未満の)微粉のみでもよく、微粉と、微粉よりも大きい粒子径を有する粒子との混合物でもよいが、造粒前の吸水性樹脂の粒子径は、重量平均粒子径が500μm以下であることが好ましく、400μm以下であることが吸水速度や毛管吸収倍率等の性能を向上させるためにより好ましい。本発明の造粒とは複数の吸水性樹脂粒子を決着させて、結合した粒子間の界面を有するまたは、粒子間の界面をなくした吸水性樹脂粒子をさし、通常、重量平均粒子径の増大(例えば、1.01〜10倍)、および/または、微粉の低減(例えば、150μm通過物、さらには106μmの減少)でも規定できる。
【0153】
また、造粒前の吸水性樹脂中、粒径が300μm未満の粒子の比率が、該吸水性樹脂に対して、10重量%以上であることが好ましく、30重量%以上であることがより好ましく、50重量%以上であることが更に好ましい。このような粒子径を有する吸水性樹脂は逆相懸濁重合(特に2段重合)で得ることでき、その他、水溶液重合で得られた吸水性樹脂を粉砕したもの、あるいはこれらを篩いに掛けて粒度を調整することによって好ましく得ることができる。また、300μm以下の粒子径の吸水性樹脂微紛を造粒し粒度調整したものを用いてもよく、粉砕して得られる一次粒子の不定形破砕状の粒子に微紛の造粒物を一部混合した吸水性樹脂を用いてもよい。吸水性樹脂の造粒物を一部混合した場合には吸水速度、毛管吸収倍率等の吸収特性が一層優れた本発明の吸水性樹脂組成物を得ることができる。微紛の造粒物の混合量は、好ましくは5重量%以上、より好ましくは10重量%以上、更に好ましくは15重量%以上である。
【0154】
造粒方法としては、複数の重合粒子が結合して大きな粒子になればその手法は特に制限はなく、逆相懸濁での造粒、すなわち、逆相重合中の凝集(欧州特許第0695762号、米国特許第4732968号)、若しくは2段重合(欧州特許第0807646号)、又は、重合後の不活性無機物添加による逆相造粒(米国特許第4732968号)で行うことができる。造粒することで、紙オムツでの実使用に更に優れる吸水剤が得られる。代表的な造粒粒子の電子顕微鏡写真を
図3に示す。
【0155】
また、逆相懸濁重合以外の造粒方法として、本発明の粒子状吸水剤を得るために、微粉造粒物の作製方法としては、微粉を再生する公知の技術が使用可能である。
【0156】
例えば、温水と吸水性樹脂の微粉とを混合して乾燥する方法(米国特許第6228930号)や、吸水性樹脂の微粉を単量体水溶液と混合して重合する方法(米国特許第5264495号)、吸水性樹脂の微粉に水を加え特定の面圧以上で造粒する方法(欧州特許第844270号)、吸水性樹脂の微粉を十分に湿潤させ非晶質のゲルを形成し乾燥及び粉砕する方法(米国特許第4950692号)、吸水性樹脂の微粉と重合ゲルとを混合する方法(米国特許第5478879号)等を用いることができ、好ましくは上記の温水と吸水性樹脂の微粉とを混合して乾燥する方法が用いられる。尚、粒子径は分級される篩目径で示される。造粒にはバインダーとして水が用いられ、水には前記キレート剤や還元性無機物を含んでいてもよい。
【0157】
更に、上記表面架橋処理の後に、水性液体を加えて含水率1〜10重量%を保ったまま加熱し、必要により整粒する造粒工程を含み、粉末として特定の粒度に調整される。加える水性液体とは、水単独でもよく、又は、本発明のキレート剤や無機還元剤、又は植物成分、抗菌剤、水溶性高分子、無機塩等を含んでもよい。それらの含有量は、水溶液の濃度が、0.001〜50重量%、更に好ましくは0.001〜30重量%、最も好ましくは0.01〜10重量%の範囲である。本発明において造粒は、水性液体を吸水性樹脂に噴霧あるいは滴下混合する方法が好ましく、噴霧する方法がより好ましい。噴霧される液滴の大きさは、平均粒子径で0.1〜300μmの範囲内が好ましく、0.1〜200μmの範囲がより好ましい。造粒する際に用いられる造粒装置としては、大きな混合力を備えたものであることが好ましい。
【0158】
具体的には、撹拌型造粒法、転動型造粒法、圧縮型造粒法及び流動層造粒法等が例示され、何れの方法によっても好ましく実施できる。なかでも、撹拌型造粒法が簡便性等の面でより好ましい。これらの方法を実施する場合、水分供給を水蒸気により行い得るようにする以外は、装置や操作条件等は従来公知の同様の技術を適用できる。尚、本発明では、装置内に水蒸気を供給することにより水分供給を行うため、用いる装置は、水蒸気を注入できるノズル等を備えており、更に、水蒸気の供給がスムーズに行えるよう密閉性が高く内部圧力の調整が可能な装置であることが望ましい。
【0159】
例えば、撹拌型造粒法により実施する場合、用い得る撹拌装置としては連続式とバッチ式があり、それぞれに縦型と横型とがある。縦型の連続式撹拌装置としては、スパイラルピンミキサ(太平洋機工社製)、フロージェットミキサ及びシュギ式造粒システム(粉研パウテックス社製)等が例示され、横型の連続式撹拌装置としては、アンニュラーレイヤーミキサ(ドライスベルケ社製)及び2軸ミキサ(List社製)等が例示される。
【0160】
縦型のバッチ式撹拌装置としては、ヘンシェルミキサ(三井鉱山社製)及びターボスヘヤーミキサ(モリッツ社製)等が例示され、横型のバッチ式撹拌装置としては、レディゲミキサー(レディゲ社製)、マルチフラックスミキサ(ゲリッケ社製)及びプロシュアミキサ(太平洋機工社製)等が例示される。
【0161】
更に、上記の造粒装置としては、例えば、円筒型混合機、二重壁円錐混合機、高速攪拌型混合機、V字型混合機、リボン型混合機、スクリュー型混合機、双腕型ニーダー、粉砕型ニーダー、回転式混合機、気流型混合機、タービュライザー、バッチ式レディゲミキサー、連続式レディゲミキサー等が好適である。
【0162】
また、表面架橋後に造粒する場合、水性液体を混合後、含水率を保ったまま加熱処理されることが好ましい。かかる工程でキレート剤や無機還元剤を水溶液として添加して、造粒と同時にキレート剤や無機還元剤を添加しても好ましい。一般に、吸水性樹脂に水を加えると、粘着性が発生するが、含水率を保ったまま加熱すると、短時間で粘着性がなくなり、粉体の流動性が回復するため、製造プロセスを簡略化、短時間化することができる。
【0163】
尚、本発明ではこの加熱工程を硬化工程と呼ぶ。造粒率や造粒強度の観点から、加熱処理時には含水率(180℃で3時間の乾燥減量で規定)が好ましくは1〜10重量%、より好ましくは2〜8重量%、更に好ましくは2.5〜6重量%を保ったまま加熱される。加熱には熱風等の熱媒が使用され、加熱温度(熱媒温度又は材料温度)は、好ましくは40〜120℃の範囲内、より好ましくは50〜100℃の範囲内であり、加熱時間は、1分〜2時間の範囲内が好ましい。加熱温度と加熱時間の組み合わせの好適例としては、60℃で0.1〜1.5時間、100℃で0.1〜1時間である。
【0164】
〔9〕粒子状吸水剤
本発明の粒子状吸水剤は、ポリアクリル酸(塩)系吸水性樹脂を主成分とする粒子状吸水剤であって、キレート剤と、無機還元剤とを含み、当該キレート剤の含有量が0.001〜0.5重量%であり、以下の構成要件(1)〜(3)の何れか1つ以上の要件を満たすことを特徴としている。
(1)メトキシフェノール類の含有量が5〜60ppmであること。
(2)水不溶性無機微粒子を含有すること。
(3)含水率が3〜15重量%であること。
【0165】
すなわち、(1)を必須とする吸水剤として、後述の実施例にも示される本発明の新規な吸水剤(第1の吸水剤)は、ポリアクリル酸(塩)系吸水性樹脂を主成分とする粒子状吸水剤であって、キレート剤と、無機還元剤とを含み、当該キレート剤の含有量が0.001〜0.5重量%であり、メトキシフェノール類(特にp−メトキシフェノール)の含有量が5〜60ppmである。後述の実施例にも示す本発明の新規な吸水剤は、好ましくは、無加圧下吸収倍率(CRC)が25[g/g]以上、加圧下吸水倍率(AAP4.83kPa)が20[g/g]以上で、食塩水流れ誘導性(SFC)が30[×10
−7・cm
3・s・g
−1]以上である。かかる吸水剤は、好ましくは吸水速度(FSR)が0.2[g/g/sec]以上の高吸水速度であり、下記の粒度を満たす。また、かかる吸水剤は、好ましくはα−ヒドロキシカルボン酸化合物を更に含む。また、多価金属塩及び/又はカチオン性ポリマーを更に含む。これら吸水剤は、初期および経時の着色もなく白色で通液性(SFC)や加圧下吸収倍率(AAP)も高いため、パルプの少ない高濃度のおむつに使用しても高い液拡散と少ない戻り量(Re−wet)の、吸水剤由来の着色問題もなく、良好な紙おむつを提供する。
【0166】
また、上記(2)を必須とする吸水剤として、後述の実施例にも示される本発明の新規な吸水剤(第2の吸水剤)は、ポリアクリル酸(塩)系吸水性樹脂を主成分とする粒子状吸水剤であって、キレート剤と、無機還元剤とを含み、当該キレート剤の含有量が0.001〜0.5重量%であり、水不溶性無機微粒子を含有する。かかる吸水剤はメトキシフェノール類(特にp−メトキシフェノール)の含有は任意であり、0〜200ppmでもよいが、好ましくは、上記(1)および本発明の新規な吸水剤(第1の吸水剤)と同様に5〜60ppmの範囲とされ、耐候性および着色がさらに改善される。本発明の新規な吸水剤(第2の吸水剤)は第1の吸水剤と同様に含水率が3重量%未満でもよいが、好ましくは(3)を満たし、3〜15重量%の範囲である。後述の実施例にも示す本発明の新規な吸水剤は、好ましくは、無加圧下吸収倍率(CRC)が25[g/g]以上、加圧下吸水倍率(AAP2.0kPa)が25[g/g]以上で、吸水速度(Vortex)が60秒以下である。
【0167】
また、上記(3)を必須とする吸水剤として、後述の実施例にも示される本発明の新規な吸水剤(第3の吸水剤)は、ポリアクリル酸(塩)系吸水性樹脂を主成分とする粒子状吸水剤であって、キレート剤と、無機還元剤とを含み、当該キレート剤の含有量が0.001〜0.5重量%であり、含水率が3〜15重量%である。かかる吸水剤はメトキシフェノール類(特にp−メトキシフェノール)の含有は任意であり、0〜200ppmでもよいが、好ましくは、上記(1)および本発明の新規な吸水剤(第1の吸水剤)と同様に5〜60ppmの範囲とされ、耐候性および着色がさらに改善される。本発明の新規な吸水剤(第3の吸水剤)は好ましくは、上記(1)および本発明の新規な吸水剤(第1の吸水剤)と同様に水不溶性無機微粒子を含有することで、耐尿性がさらに向上される。後述の実施例にも示す本発明の新規な吸水剤は、好ましくは、無加圧下吸収倍率(CRC)が25[g/g]以上、加圧下吸水倍率(AAP2.0kPa)が25[g/g]以上で、残存モノマーが500ppm以下である。かかる吸水剤も好ましくはα−ヒドロキシカルボン酸化合物を更に含む。また、多価金属塩及び/又はカチオン性ポリマーを更に含む。
【0168】
これら本発明の新規な吸水剤(特に第1の吸水剤、さらには第2、3の吸水剤)は、上記「〔6〕α−ヒドロキシカルボン酸化合物」で示したα−ヒドロキシカルボン酸(塩)及び/又は「〔7〕多価金属塩及び/又はカチオン性ポリマー」で示した多価金属塩及び/又はカチオン性ポリマー等を含むことが好ましく、これらは上記「〔1〕ポリアクリル酸(塩)系吸水性樹脂」で示したポリアクリル酸(塩)系吸水性樹脂と一体化されてなる。
【0169】
尚、本発明の粒子状吸水剤は、以下に例示した諸物性のうち、白色な高濃度オムツに好適に使用するため、通液性(SFC)や加圧下吸収倍率(AAP)、さらに好ましくは吸水速度や残存モノマーも重要であり、加圧下吸水倍率(AAP)が20[g/g]以上、食塩水流れ誘導性(SFC)が30[×10
−7・cm
3・s・g
−1]以上、吸水速度(Vortex)が60秒以下、残存モノマーが500ppm以下、の何れか1つの要件を更に満たすことが好ましい。
【0170】
これら物性のより好適な範囲を下記に示す。
【0171】
無加圧下吸収倍率(CRC)は25[g/g]以上、加圧下吸水倍率(AAP4.83kPa)は20[g/g]以上、食塩水流れ誘導性(SFC)は30[×10
−7・cm
3・s・g
−1]以上である。さらに、無加圧下吸収倍率(CRC)が25[g/g]以上、加圧下吸水倍率(AAP2.0kPa)が25[g/g]以上で、吸水速度(Vortex)が60秒以下である。上記吸水剤はさらには下記を満たす。
【0172】
(a)Fe
更に、本発明の粒子状吸水剤は、その着色防止の観点から、好ましいFe含有量(Fe
2O
3換算値として)は1ppm以下、更に好ましくは0.1ppm以下、特に好ましくは0.02ppm以下である。Fe量の制御には吸水性樹脂の原料中のFe量、特に中和に用いる塩基を適宜精製し、例えば、NaOH,Na
2CO
3)のFeを除去することで、制御することが可能である。Fe量は原料中で測定してもよく、最終の吸水剤で測定してもよい。
【0173】
尚、「Fe
2O
3換算値として」とは、鉄を鉄単独又は含有する化合物(Fe
2O
3やその鉄塩、水酸化鉄、鉄錯体等)中のFeの絶対量を、Fe
2O
3(分子量159.7)に代表される鉄化合物として表記することであり、Feのカウンターを全て酸化した重量であり、Fe分として、鉄量は、55.85×2/159.7で分子量(Fe
2O
3中のFe)で一義的に計算できる。
【0174】
すなわち、中和に用いた塩基を主な由来として、好ましくは、本発明の粒子状吸水剤は鉄(Fe)が2ppm以下、より好ましくは1.5ppm以下、更に好ましくは1ppm以下、特に好ましくは0.5ppm以下で含まれており、下限は好ましくは0.001ppmであり、より好ましくは0.01ppmである。
【0175】
例えば、Feが10(Fe
2O
3の量からFe量を求める場合は、Fe
2O
3量×55.85×2/159.7として計算される)ppmのNaOHで中和する場合、CH
2=CHCOOH(分子量72)+NaOH(分子量40、Feが約7ppm)→CH
2=CHCOONa(94)より、得られるポリアクリル酸ナトリウムには、中和率75モル%のアクリル酸ナトリウム(分子量88.55)では、7ppm×40/88.55=約3ppmのFe量となる。かかる所定量の鉄は使用後に廃棄する際の吸水性樹脂の分解を促進するが、過剰の鉄は使用時の劣化や使用前の着色の原因となり好ましくない。
【0176】
鉄量の制御は中和に用いる塩基(特に苛性ソーダ)の制御で主に行われ、その他、原料(アクリル酸、架橋剤、水等)の微量鉄の制御、更には重合装置やモノマー配管等の各種吸水性樹脂の装置や配管の樹脂コート、ガラスコート、ステンレス制御等で行える。尚、塩基中や吸水性樹脂中の鉄量は、例えば、JIS K1200−6に記載のICP発光分光分析方法で定量でき、定量方法の参考文献として、国際公開第2008/090961号を参照することができる。
【0177】
(b)粒子形状
本発明の粒子状吸水剤(吸水剤その1〜吸水剤その3)の粒子の形状は、特定の形状に制限されず、球状、略球状、(粉砕物である)不定形破砕状、棒状、多面体状、ソーセージ状(例えば、米国特許第4973632号)、皺を有する粒子(例えば、米国特許第5744564号)等が挙げられる。それらは一次粒子(single particle)でもよく、造粒粒子でもよく、これらの混合物でもよい。また、粒子は発泡した多孔質でもよい。好ましい粒子として、不定形破砕状の一次粒子又は造粒物が挙げられる。微粉単独ないし微粉を含んで造粒することで、粉塵も低減でき、さらに粒子径に対する被表面の割合が増大し、吸水速度が向上するので好ましい。
【0178】
(c)粒度
本発明の吸水剤(吸水剤その1〜吸水剤その3)は、吸水特性から粒子状であり、重量平均粒子径(D50)が200〜600μmの範囲であることが好ましく、200〜550μmの範囲であることがより好ましく、250〜500μmの範囲であることが更に好ましい。また、JIS標準篩150μm未満の粒子が少ないほどよく、その含有量は、通常0〜5重量%、好ましくは0〜3重量%、特に好ましくは0〜1重量%である。更に、JIS標準篩850μm以上の粒子が少ないほどよく、その含有量は、通常0〜5重量%、好ましくは0〜3重量%、特に好ましくは0〜1重量%である。
【0179】
本発明の吸水剤の嵩比重(米国特許第6562879号で規定)は0.30〜0.90、好ましくは0.50〜0.80、より好ましくは0.60〜0.75である。粒度は上記の粉砕や分級等で制御できる。
【0180】
(d)その他添加剤
更に、その目的機能に応じて、種々の機能を付与させるため、本発明の吸水剤に対して、界面活性剤、酸化剤、金属石鹸等の水不溶性無機又は有機粉末、消臭剤、抗菌剤、パルプや熱可塑性繊維等を、0〜3重量%、好ましくは0〜1重量%添加してもよい。尚、界面活性剤としては、国際公開第2005/075070号記載の界面活性剤が好ましく例示される。
【0181】
(e)含水率
本発明の粒子状吸水剤(吸水剤その1〜吸水剤その3)の含水率は、例えば、0.5〜16%重量であり、(吸水剤その2では必須に)3〜15重量%が好ましく、4〜14重量%とがより好ましく、5〜13重量%が更に好ましく、特に6〜12重量%、更に7〜11重量%である。含水率は調整法の一例として、上記所定含水率の乾燥及び表面架橋、必要により更に水の添加又は乾燥によって制御される。含水率が0.5重量%以上、特に3重量%以上であれば、吸水速度(Vortex/FSR)がより向上し、臭気の問題や、吸水速度の低下、耐衝撃性の低下、粉塵の発生などを起こし難く、含水率が15重量%以下であれば、着色も抑制され、粒子の粘着性や吸水倍率の低下を抑制することができる。吸水剤の含水率が低いと吸水速度(Vortex/FSR)が低下し、無機還元剤の添加時期(特に表面架橋工程またはそれ以前ならば)臭気の問題を有し、また、含水率が高いと着色の問題が起こる傾向にあり、よって、好ましくは上記含水率とされる。
【0182】
(f)無加圧下吸水倍率(CRC)
本発明で用いられる粒子状吸水剤のCRCは、好ましくは5[g/g]以上であり、より好ましくは15[g/g]以上であり、更に好ましくは25[g/g]以上である。CRCの上限値は、特に限定されないが、好ましくは70[g/g]以下であり、より好ましくは50[g/g]以下であり、更に好ましくは40[g/g]以下である。CRCが5[g/g]未満の場合、粒子状吸水剤を吸水体に用いた場合、吸収量が少なすぎ、オムツ等の衛生材料の使用に適さない。また、CRCが70[g/g]よりも大きい場合、加圧下吸水倍率(AAP)や通液性(SFC)が低下することもあり、粒子状吸水剤が紙オムツ等吸水体に使用された場合、吸水体への液の取り込み速度に優れる吸水剤を得ることができなくなる場合がある。CRCは上記の内部架橋剤や表面架橋剤等で制御できる。
【0183】
(g)加圧下吸水倍率(AAP)
本発明で用いられる粒子状吸水剤のAAP(2.0kPaさらには4.83kPa)は、20[g/g]以上、好ましくは22[g/g]以上であり、より好ましくは23[g/g]以上であり、更に好ましくは24[g/g]以上であり、最も好ましくは25[g/g]以上である。AAPの上限値は、特に限定されないが、好ましくは30[g/g]以下である。AAPが20[g/g]以上であれば、粒子状吸水剤を吸水体に使用した場合、吸水体に圧力が加わった際の液の戻り(通称リウェット:Re−Wetといわれる)がより少ない吸水剤を得ることができる。AAPは上記の表面架橋や粒度等で制御できる。
【0184】
尚、AAPの荷重条件は、得られる粒子状吸水剤のタイプによって、適宜4.83kPa又は2.0kPaを選択すればよく、上記数値範囲を示せば、どちらの荷重条件でもよいが、好ましくは、2.0kPaさらには4.83kPaの荷重で上記AAPを満足する。
【0185】
(h)食塩水流れ誘導性(SFC)
本発明で用いられる粒子状吸水剤のSFCは、好ましくは30[×10
−7・cm
3・s・g
−1]以上であり、より好ましくは50[×10
−7・cm
3・s・g
−1]以上であり、更に好ましくは70[×10
−7・cm
3・s・g
−1]以上であり、特に好ましくは80[×10
−7・cm
3・s・g
−1]以上である。SFCが30[×10
−7・cm
3・s・g
−1]以上であれば、液透過性をより向上することができ、粒子状吸水剤を吸水体に使用した場合に、吸水体への液の取り込み速度により優れる吸水剤を得ることができる。SFCの上限は特に指定されないが、好ましくは3000[×10
−7・cm
3・s・g
−1]以下であり、より好ましくは2000[×10
−7・cm
3・s・g
−1]以下である。SFCが3000[×10
−7・cm
3・s・g
−1]以下であれば、粒子状吸水剤を吸水体に使用した場合に、吸水体での液漏れを抑制することができる。SFCは上記の表面架橋や粒度、CRCの上記範囲への制御、上記「〔7〕多価金属塩及び/又はカチオン性ポリマー」で示した多価金属塩やポリアミンポリマー等で制御できる。尚、本明細書では食塩水流れ誘導性(SFC)を通液性又は通液性(SFC)と表記することもある。
【0186】
(i)吸水速度その1(FSR)
本発明に係る粒子状吸水剤は、FSRが好ましくは0.1[g/g/sec]以上であり、より好ましくは0.15[g/g/sec]以上であり、更に好ましくは0.20[g/g/sec]以上、最も好ましくは0.25[g/g/sec]以上である。FSRの上限値は特に指定されないが、過度の高吸水速度(VortexやFSR)は通液性(例えばSFC)や液拡散性を損なうおそれがあることから、好ましくは5.0[g/g/sec]以下であり、より好ましくは3.0[g/g/sec]以下である。FSRが0.05[g/g/sec]以上であれば、例えば、粒子状吸水剤を吸水体に使用した場合、液が十分に吸収されずに液漏れを生じてしまうことをより抑制することができる。FSRは上記の粒度や発泡重合等で制御できる。
【0187】
(j)吸水速度その2(Vortex)
本発明に係る粒子状吸水剤は、Vortexが好ましくは60秒以下であり、より好ましくは55秒以下であり、更に好ましくは50秒以下であり、最も好ましくは40秒以下である。Vortexの下限値は特に指定されないが、好ましくは10秒以上である。Vortexが60秒以下であれば、例えば、粒子状吸水剤を吸水体に使用した場合、液が十分に吸収されずに液漏れを生じてしまうことをより抑制することができる。Vortexは上記の粒度や発泡重合等で制御できる。
【0188】
(k)水可溶分(Extr)
本発明に係る粒子状吸水剤は、水可溶分が必須に50重量%以下、好ましくは35重量%以下であり、より好ましくは25重量%以下であり、更に好ましくは15重量%以下である。水可溶分が35重量%以下であれば、ゲル強度がより強く、液透過性により優れたものとなる。また、粒子状吸水剤を吸水体に使用した場合、吸水体に圧力が加わった際の液の戻り(通称リウェット:Re−Wet)がより少ない吸水剤を得ることができる。水可溶分は上記の内部架橋剤等で制御できる。
【0189】
(l)残存モノマー
本発明に係る粒子状吸水剤は、安全性の観点より、残存モノマーは500ppm以下、好ましくは400ppm以下、より好ましくは300ppm以下に制御される。残存モノマーは前記重合や乾燥に加えて、無機還元剤、特に硫黄元素を有する無機還元剤の使用で低減できる。本発明の吸水剤はより残存モノマーが少ないおやめ、吸水剤を紙オムツ中で高濃度(使用量を増加)で使用しても、紙オムツ中での溶出する残存モノマーが少なく好ましい。
【0190】
(m)初期色調(別称;初期着色)
本発明に係る粒子状吸水剤は、紙オムツ等の衛生材料向けに好適に使用できるものであり、白色粉末であることが好ましい。本発明に係る粒子状吸水剤は、粒子状吸水剤製造後の粒子状吸水剤の分光式色差計によるハンターLab表色系測定において、L値(Lightness)が少なくとも88、更には89以上、好ましくは90以上を示すことが好ましい。尚、L値の上限は通常100であるが、粉末で88ならば衛生材料等の製品において色調による問題が発生しない。また、b値は0〜12、好ましくは0〜10、更には0〜9、a値は−3〜3、好ましくは−2〜2、更には−1〜1とされる。
【0191】
尚、初期色調とは、粒子状吸水剤製造後の色調であるが、一般的には工場出荷前測定される色調とされる。また、例えば、30℃以下、相対湿度50%RHの雰囲気下での保存であれば製造後、1年間以内に測定される値である。
【0192】
(n)経時色調(別称;経時着色)
本発明に係る粒子状吸水剤は、紙オムツ等の衛生材料向けに好適に使用できるものであり、その際、高い湿度や温度条件下での長期貯蔵状態においても著しく清浄な白い状態を維持することが好ましい。上記長期貯蔵状態は、長期貯蔵色安定性促進試験として、後述の実施例を含め、粒子状吸水剤を温度70±1℃、相対湿度65±1%RHの雰囲気に7日間曝露した後の吸水剤の分光式色差計によるハンターLab表色系のL値(Lightness)を測定することで調べることができる。本発明に係る粒子状吸水剤は、上記長期貯蔵色安定性促進試験後の吸水剤の分光式色差計によるハンターLab表色系測定において、L値(Lightness)が少なくとも80以上、更には81以上、より更には82以上、特に83以上を示すことが好ましい。尚、L値の上限は通常100であるが、促進試験後のL値が80以上であれば、高い湿度や温度条件下での長期貯蔵状態においても実質問題が発生しないレベルである。また、b値は0〜15、好ましくは0〜12、更には0〜10、a値は−3〜3、好ましくは−2〜2、更には−1〜1とされる。
【0193】
〔10〕粒子状吸水剤の製造方法
本発明の粒子状吸水剤の製造方法は、一例として、上記〔1〕〜〔8〕に記載した方法によって行われる。
【0194】
具体的には、メトキシフェノール類を10〜200ppm含有するアクリル酸(塩)を主成分とする単量体水溶液の重合工程と、重合で得られた含水ゲル状架橋重合体の乾燥工程と、表面架橋工程とを含む、ポリアクリル酸(塩)系粒子状吸水剤の製造方法であって、キレート剤0.001〜0.5重量%の添加工程と無機還元剤の添加工程とを更に含み、単量体がメトキシフェノール類を対アクリル酸換算で10〜200ppm含有し、以下の(a)〜(c)の1つ以上をを満たす製造方法である。
(a)水不溶性無機微粒子の添加工程を更に含むこと。
(b)乾燥工程後、及び表面架橋工程において、重合体の含水率を3〜15重量%に制御すること。
(c)表面架橋工程後に、無機還元剤の添加工程を行うこと。
【0195】
上記製造方法によって、優れた吸収性能と経時着色防止性能を有し、更に驚くべきことに臭気が非常に少なく、耐尿性に優れる、実使用で好適な吸収体用の粒子状吸水剤を得ることができる。
【0196】
また、本発明の粒子状吸水剤の製造方法は、上記〔1〕、〔2」等で挙げたキレート剤を、重合前又は重合途中の単量体水溶液に添加してなる粒子状吸水剤の製造方法であることが好ましい。
【0197】
また、本発明の粒子状吸水剤の製造方法は、上記〔1〕、〔3」等で挙げた無機還元剤を、乾燥前の含水ゲル状架橋重合体に添加してなる粒子状吸水剤の製造方法であることが好ましい。
【0198】
本発明の粒子状吸水剤の製造方法は、更に、上記〔6」等で挙げたα−ヒドロキシカルボン酸(塩)の添加工程を含む、粒子状吸水剤の製造方法であることが好ましい。
【0199】
本発明の粒子状吸水剤の製造方法は、更に、上記〔7」等で挙げた多価金属塩及び/又はカチオン性ポリマーの添加工程を含む粒子状吸水剤の製造方法であることが好ましい。
【0200】
本発明の粒子状吸水剤の製造方法は、更に、上記〔8」等で説明した造粒工程を含む粒子状吸水剤の製造方法であることが好ましい。
【0201】
更に、本発明の粒子状吸水剤の製造方法は、一例として、上記〔1〕〜〔8〕に記載した方法によって行われる。より具体的には、重合工程が、単量体中にアクリル酸(塩)を90〜100モル%含む、単量体濃度30〜55重量%の単量体水溶液を、ラジカル重合開始剤0.001〜1モル%によって、最高温度130℃以下であり、重合時間が0.5分〜3時間である条件下で、水溶液重合又は逆相懸濁重合を行う工程であり、中和工程が、Fe含有量が0〜10(×55.85×2/159.7)ppmである塩基でなされ、乾燥工程が、粒子状含水ゲルを、乾燥温度100〜250℃で乾燥時間10〜120分にて含水率20重量%以下まで乾燥する工程であり、表面架橋工程が、乾燥工程後の吸水性樹脂粉末100重量部に対して表面架橋剤0.001〜10重量部を混合して70〜300℃で1分〜2時間の加熱処理で行われ、得られる粒子状吸水剤のメトキシフェノール類含有量を5〜60ppmとする製造方法が挙げられる。得られる粒子状吸水剤のメトキシフェノール類含有量の制御は、上述した方法又は後述する方法によって行うことができる。
【0202】
本発明の粒子状吸水剤の製造方法における前述のメトキシフェノール類は、粒子状吸水剤の製造工程の、何れの時点で添加してもよいが、単量体の主成分として使用される前述のアクリル酸に含まれることが好ましく、アクリル酸の精製工程で含有量を適宜調整することが好ましい。
【0203】
本発明の粒子状吸水剤の製造方法においては、メトキシフェノール類を10〜200ppm含有するアクリル酸を用いることが好ましい。
【0204】
(10−1)アクリル酸
本発明で使用されるアクリル酸を製造する方法としては、プロピレン及び/又はアクロレインの接触気相酸化法、エチレンシアンヒドリン法、高圧レッペ法、改良レッペ法、ケテン法、アクリロニトリル加水分解法等が工業的製造法として知られており、中でもプロピレン及び/又はアクロレインの気相酸化法が最も多く採用されている。そして、本発明においては、かかる気相酸化法で得られたアクリル酸が好適に使用される。
【0205】
本発明に係る粒子状吸水剤の製造方法においては、対アクリル酸換算値で、メトキシフェノール類を10〜200ppm含有する単量体が好ましく用いられる。この単量体の主成分は、アクリル酸であってもよく、アクリル酸及びアクリル酸塩であってもよい。上記メトキシフェノール類としては、具体的には、o,m,p−メトキシフェノールや、それらに更にメチル基、t−ブチル基、水酸基等の1個又は2個以上の置換基を有するメトキシフェノール類が例示され、特に好ましくは、p−メトキシフェノールが本発明では使用される。
【0206】
メトキシフェノール類の含有量は、対アクリル酸換算値で、好ましくは10〜120ppm、好ましくは10〜90ppm、更に好ましくは20〜90ppmである。p−メトキシフェノールの含有量が200ppm以下であれば、得られた吸水性樹脂の着色(黄ばみ/黄変)を抑制することができる。また、p−メトキシフェノールの含有量が10ppm未満の場合、すなわち、蒸留等の精製によって重合禁止剤であるp−メトキシフェノールを除去した場合、意図的に重合を開始させる前に重合が起きる危険があるのみならず、前述のようにアクリル酸(塩)を主原料として得られた吸水性樹脂や吸水剤の耐候性が悪くなるため好ましくない。
【0207】
尚、重合時のメトキシフェノール類はアクリル酸(分子量72)を基準とする場合、必要により中和して得られたアクリル酸塩は分子量が増大(例えば、75モル%中和ナトリウム塩では分子量88.5)し、その他、上述した〔2〕〜〔7〕で挙げた成分も添加するため、相対的にメトキシフェノール類の含有量は低減する。また、重合時の消費も鑑み、本発明では、重合前のアクリル酸塩におけるメトキシフェノール類の含有量10〜200ppmに対して、得られたポリアクリル酸塩中のメトキシフェノール類は5〜60ppmとなる。
【0208】
本発明の粒子状吸水剤の製造方法は、アクリル酸がメトキシフェノール類(特にp−メトシフェノール)を10〜200ppm含有する単量体水溶液の重合を経る粒子状吸水剤の製造方法であることが好ましい。更に、当該重合工程(濃度、開始剤、温度)及び乾燥工程(温度、時間、固形分、風量等)を経ることで、メトキシフェノールの所定量が消費され、得られた上記範囲のメトキシフェノール(特にp−メトキシフェノール)を5〜60ppmで含有、特に重合体内部に均一に含有する粒子状吸水剤を得ることができる。
【0209】
すなわち、本発明の製造方法では、メトキシフェノール類含有量が10〜200ppmの単量体を用いることによって、上記ラジカル重合工程及び乾燥工程によって得られる吸水性樹脂のメトキシフェノール類を5〜60ppmとする製造方法であってもよい。
【0210】
尚、吸水性樹脂中のメトシフェノールの制御方法は、上記一例に限定はされず、その他の手法として下記方法が例示でき、これらを併用してもよい。
【0211】
製法その2;メトシフェノール類の不存在又は10ppm未満で吸水性樹脂を重合後、更には乾燥後に所定量のメトシフェノール類を添加する方法。
【0212】
製法その3;メトシフェノール類を過剰に含む単量体で吸水性樹脂へと重合後、乾燥前に所定量のメトシフェノール類を洗浄によって除去する方法。尚、洗浄には水又は水アルコール混合液が使用できる。
【0213】
また、本発明で用いられる単量体は、製造工程でp−メトキシフェノール以外の重合禁止剤を使用してもよいし、当該重合禁止剤をp−メトキシフェノールと併用してもよい。
【0214】
p−メトキシフェノール以外の重合禁止剤としては、例えば、フェノチアジン、ハイドロキノン、銅塩、酢酸マンガン、メチレンブルー等が有効である。但し、これらの重合禁止剤はメトキシフェノールと異なり、重合を阻害するため、最終的には少ないほどよく、p−メトキシフェノールと併用する場合、単量体中の濃度は0.01〜10ppmが好ましい。
【0215】
また、本発明の課題(着色防止)を解決するうえで、アクリル酸中の水分量は少ないほどよく、通常、1000ppm以下、好ましくは750ppm以下、更に好ましくは500ppm以下、より好ましく300ppm以下、特に好ましくは200ppm以下、100ppm以下、80ppm以下、50ppm以下の順で好ましい。水分は少ないほど好ましいが、脱水コストから1ppm程度、更には5ppm程度でも十分である。かかる低水分のアクリル酸を得るには、蒸留や晶析を繰返してアクリル酸を精製して所定量の水分にまで調整したり、アクリル酸を無機又は有機の脱水剤と接触させたりして、水分を所定量とすれよい。単量体中の水分量が1000ppmを超える場合、得られる吸水性樹脂の着色(特に経時着色)が悪化する傾向にある。
【0216】
単量体の主成分は、アクリル酸及び/又はアクリル酸塩であるが、これらアクリル酸とアクリル酸塩とでは、分子量が異なる。この分子量の相違を考慮して、本発明において、対アクリル酸換算値が定義される。対アクリル酸換算値とは、アクリル酸塩が全て等モルの未中和アクリル酸であるとして換算した場合における、アクリル酸の重量に対する上記微量成分の重量の含有割合(重量比)である。すなわち、例えば、中和後のアクリル酸ナトリウム(分子量94)はアクリル酸(分子量72)に重量換算されて、アクリル酸換算後(94を72に換算)の重量でp−メトキシフェノール等上記微量成分の含有割合(重量比)等が規定される。重合後の粒子状吸水剤において、部分中和又は完全中和のアクリル酸塩がポリマーとなっている場合、対アクリル酸換算値は、部分中和又は完全中和のポリアクリル酸塩が全て等モルの未中和のポリアクリル酸であると換算して計算され得る。上記部分中和とは、中和率が0モル%を超えて100モル%未満であることを意味する。上記完全中和とは、中和率が100モル%であることを意味する。上記未中和とは、中和率が0モル%であることを意味する。
【0217】
尚、上記成分の定量は液体クロマトグラフィー又はガスクロマトグラフィーで行うことができる。
【0218】
(10−2)中和剤
また、本発明で単量体や重合体の中和に用いる苛性ソーダや炭酸ソーダ等の中和剤(塩基)は、鉄の含有量が少ないほど好ましく、その含有量(Fe
2O
3換算値として)は、通常、塩基固形分に対して0〜10.0ppmの範囲であり、好ましくは0.2〜5.0ppm、より好ましくは0.5〜5.0ppmの範囲で含まれる。鉄の含有量が0.01ppmより少なくなると、重合開始剤添加前に重合が起きる危険があるだけではなく、開始剤を添加しても重合が逆に遅くなる可能性もある。このような鉄としては、Feイオンでもよいが、効果の面から好ましくは3価の鉄、特にFe
2O
3である。尚、Fe量は上記範囲において、鉄と酸化鉄の分子量比(55.85×2/159.7(Fe
2O
3中のFe))で一義的に計算できる。
【0219】
本発明ではカウンターアニオンの種類に関わらずFeの絶対量が重要であり、ここで、Fe
2O
3換算とはFe量をカウンターアニオン(例えば、Fe(II)又はFe(III)の酸化物、硫酸塩、塩酸塩、水酸化物等)に関わらず、Fe(III)の酸化物であるFe
2O
3とするものであり、そのFe(分子量55.85)とFe
2O
3の分子量(159.7)から、本発明の塩基での好ましいFe量(Fe換算)は0〜7.0ppmとなる。
【0220】
鉄の含有量が0.01ppmより少なくなると、重合開始剤添加前に重合が起きる危険があるだけでなく、開始剤を添加しても重合が逆に遅くなる可能性もある。本発明で用いられる鉄としては、Feイオンでもよいが、効果の面から好ましくは3価の鉄、特にFe
2O
3又は水酸化鉄である。
【0221】
すなわち、本発明では、好ましくは中和工程が、Fe含有量(Fe換算)が0〜7.0ppmの塩基(特に該Fe含有量に制御されたNaOHまたは炭酸ナトリウム)でなされ、更に好ましくは上記Fe含有量の範囲である。
【0222】
(10−3)無機還元剤の添加方法
本発明の粒子状吸水剤の製造方法における無機還元剤の添加方法は、上記(1−6)重合工程、(1−7)ゲル細粒化工程、(1−8)乾燥工程、(1−9)粉砕工程・分級工程、(1−10)表面架橋工程、(1−11)その他の工程のいずれか1つ以上に添加でき、特に限定されるものではないが、粉末状、溶液、乳化液、又は、懸濁液として添加されることが好ましく、溶液として添加されることが好ましく、水溶液として添加されることがより好ましい。
【0223】
本発明の粒子状吸水剤の製造方法における無機還元剤が粉末状で添加される場合、粉末粒子の平均粒子径が0.001〜850μmであることが好ましく、0.01〜600μmであることがより好ましく、0.05〜300μmであることが更に好ましい。尚、平均粒子径はレーザーで体積平均粒子径として測定することができる。レーザーの一例は米国特許出願公開第2004/0110006号に記載されている。
【0224】
本発明の粒子状吸水剤の製造方法における無機還元剤が溶液で添加される場合に用いられる溶媒としては、特に限定されるものではないが、例えば、水;エタノール、メタノール、プロピレングリコール、グリセリン等のアルコール類;ポリエチレングリコール等を好適に用いることができる。中でも水あるいは水とアルコール類との混合溶液を用いることが好ましく、水溶液として添加されることが最も好ましい。また、かかる溶液中の無機還元剤の濃度は適宜決定され、飽和濃度を超えた分散液や過飽和溶液でもよいが、下記範囲の溶液、特に水溶液であり、上限は飽和濃度である。
【0225】
また、上記無機還元剤が懸濁液で混合される場合に用いられる分散媒としては、特に限定されるものではないが、例えば、水;エタノール、メタノール、プロピレングリコール、グリセリン等のアルコール類;ポリエチレングリコール等を好適に用いることができる。また、かかる分散液中の上記無機還元剤の濃度は1〜100重量%であることが好ましく、10〜100重量%であることがより好ましい。また、分散剤として、更に水溶性ポリマー、界面活性剤等を添加してもよい。
【0226】
更に、上記無機還元剤は、溶液又は懸濁液のほかにも、乳化剤と共に、例えば、水中で乳化液として、吸水性樹脂と混合してもよい。かかる場合の分散媒としては、特に限定されるものではないが、例えば、水等を好適に用いることができる。
【0227】
また、乳化剤としては、特に限定されるものではないが、非イオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤等を用いればよい。また、かかる乳化液中の上記無機還元剤の濃度は1〜90重量%であることが好ましく、10〜90重量%であることがより好ましい。
【0228】
更には、本発明に係る粒子状吸水剤の製造方法では、上記無機還元剤は、水溶液として添加されることが更に好ましい。また、かかる水溶液中の無機還元剤の濃度は0.01〜90重量%であることが好ましく、0.5〜60重量%であることがより好ましく、1〜90重量%であることが更に好ましく、10〜60重量%であることが特に好ましく、10〜90重量%であることが最も好ましい。また、上限は前記範囲内で分散液や過飽和溶液でもよいが、上限は飽和濃度である。
【0229】
本発明の粒子状吸水剤の製造方法における無機還元剤の添加は、重合前の単量体溶液、重合中若しくは重合後の含水ゲル状架橋体、表面架橋工程前、表面架橋工程後の何れの時期に行ってもよいが、重合中、重合後の含水ゲル状架橋重合体(即ち、乾燥前の含水ゲル状架橋重合体)、又は表面架橋工程後に添加することがより好ましい。
【0230】
重合後の含水ゲル状架橋重合体に無機還元剤を添加する場合、重合後の含水ゲル状架橋重合体を細粒化する工程で無機還元剤を添加するか、細粒化された重合後の含水ゲル状架橋重合体に無機還元剤を添加混合することが好ましい。表面架橋時、あるいは、特許文献15のように表面架橋前に無機還元剤の添加を行った場合、本発明のように含水率を3〜15重量%に制御しないと、粒子状吸水剤が着色するのみならず、臭気が強くなる。
【0231】
また、表面架橋工程より後において、上記添加工程を行う時期は、特に限定されるものではなく、上記多価金属塩及び/又はカチオン性ポリマーの、添加前、添加と同時又は添加後の何れの時点で添加してもよい。更に、上記α−ヒドロキシカルボン酸化合物の、添加前、添加と同時又は添加後の何れの時点で添加してもよい。
【0232】
本発明の粒子状吸水剤の製造方法における無機還元剤は、添加後、あるいは添加と同時に上記ポリアクリル酸(塩)系吸水性樹脂と混合されることが好ましい。添加又は混合する具体的な混合方法は特に限定されるものではなく、公知の解砕装置・粉砕装置や撹拌装置を用いて混合することができる。
【0233】
かかる解砕装置・粉砕装置としては、ニーダーや、任意形状の多孔構造を有するスクリュー型押出機(別称;ミートチョパー)が例示できる。尚、かかる解砕装置を複数台直列で使用してもよく、また、ニーダーとミートチョッパー等、異なる装置を併用してもよい。スクリュー型押出機は1台でもよく、2台以上を使用してもよい。かかる撹拌装置としては、例えば、円筒型混合機、スクリュー型混合機、スクリュー型押出機、タービュライザー、ナウター型混合機、V型混合機、双腕型ニーダー、流動式混合機、気流型混合機、回転円盤型混合機、ロールミキサー、転動式混合機、レディゲミキサー、パドルブレンダー、リボンミキサー、ロータリーブレンダー、ジャータンブラー、プラウジャーミキサー、モルタルミキサー等を好適に用いることができる。また、かかる攪拌装置は、表面架橋後のポリアクリル酸(塩)系吸水性樹脂と、上記無機還元剤と、必要に応じて上記他の添加剤とを含む混合物を加熱する加熱装置を備えていてもよいし、加熱装置によって加熱した上記混合物を冷却する冷却装置を備えていてもよい。上記攪拌装置によって攪拌を行う時間は特に限定されるものではないが、好ましくは60分以下、より好ましくは30分以下である。
【0234】
(10−4)キレート剤の添加方法
本発明の粒子状吸水剤の製造方法における前述のキレート剤は、前記(1−6)重合工程〜(1−10)表面架橋工程や(1−11)その他の工程を含め、粒子状吸水剤製造工程の何れの時点で添加してもよいが、前記(1−6)重合工程において、重合前又は重合途中の単量体水溶液に添加することが好ましい。重合前又は重合途中の単量体水溶液に添加する場合、キレート剤を粒子状吸水剤中により均一に含ませることができるため、経時着色を効果的に防止できる点で特に好ましい。
【0235】
前記(1−6)重合工程において、重合前の単量体溶液にキレート剤を添加する場合、重合反応機への単量体フィードラインでラインミキシングすることや、反応機内で攪拌混合することが好ましい。また、重合途中に添加する場合、重合反応開始後、重合反応がピーク温度に到達するまで間、あるいは、重合反応機から重合物が排出されるまでの間に添加することが好ましい。キレート剤を重合時又は重合途中の単量体水溶液に添加することはキレート剤を本発明の粒子状吸水剤に均一に添加でき、本願発明の効果をより奏させることができる点で好ましい。
【0236】
(10−5)水不溶性無機微粒子の添加方法
本発明の粒子状吸水剤の製造方法における、前述の水不溶性無機微粒子は、前記(1−6)重合工程〜(1−10)表面架橋工程や(1−11)その他の工程を含め、粒子状吸水剤製造工程の何れの時点で添加してもよいが、(1−10)表面架橋工程の後に添加することが好ましい。すなわち、水不溶性無機微粒子を前述の表面架橋剤と同時に添加して吸水性樹脂表面を架橋するか、前述の表面架橋剤で吸水性樹脂表面を架橋後、水不溶性無機微粒子を添加することが好ましい。特に、表面架橋剤による表面架橋後の吸水性樹脂に水不溶性無機微粒子を添加し表面処理することで、所望の吸水特性、特に高い通液特性が達成される。尚、水不溶性無機微粒子は前述のα−ヒドロキシカルボン酸化合物と同時にそれぞれ添加したり、予めα−ヒドロキシカルボン酸化合物と混合した混合物として添加したりすることが好ましい。
【0237】
(10−6)α−ヒドロキシカルボン酸化合物の添加方法
本発明の粒子状吸水剤の製造方法における、前述のα−ヒドロキシカルボン酸化合物は、前記(1−6)重合工程〜(1−10)表面架橋工程や(1−11)その他の工程を含め、粒子状吸水剤の製造工程の何れの時点で添加してもよいが、経時色安定性の効果を考慮すると、重合性単量体に予め含有させてもよく、上述した重合反応が完了後の後段工程において添加することが好ましい。重合反応が完了後の後段工程において添加する方法としては、重合後の含水ゲル状重合体へ添加する方法、乾燥工程後の乾燥物へ添加する方法、表面架橋処理工程若しくはその後に添加する方法が好ましい。
【0238】
本発明の粒子状吸水剤の製造方法における、α−ヒドロキシカルボン酸化合物の添加方法は、特に限定されるものではないが、粉末状、溶液、乳化液、又は懸濁液として添加することが好ましく、溶液として添加することがより好ましく、水溶液として添加することが更に好ましい。更には、α−ヒドロキシカルボン酸化合物は、上述した、キレート剤、多価金属塩及び/又はカチオン性ポリマー、水不溶性無機微粒子と同時にそれぞれ添加してもよいし、予めこれらの各成分と混合した混合物として添加してもよい。
【0239】
(10−7)多価金属塩及び/又はカチオン性ポリマーの添加方法
本発明の粒子状吸水剤の製造方法における、前述の多価金属塩及び/又はカチオン性ポリマーは、前記(1−6)重合工程〜(1−10)表面架橋工程や(1−11)その他の工程を含め、粒子状吸水剤の製造工程の何れの時点で添加してもよいが、表面処理時に添加することが好ましい。
【0240】
すなわち、前記(1−10)表面架橋工程において、多価金属塩及び/又はカチオン性ポリマーを前述の表面架橋剤と同時に添加して吸水性樹脂表面を架橋する方法か、前述の表面架橋剤で吸水性樹脂表面を架橋後、第2の表面架橋工程として、多価金属塩及び/又はカチオン性ポリマーを添加する方法が好ましい。多価金属塩及び/又はカチオン性ポリマーはポリアクリル酸系吸水性樹脂の官能基と反応、特にイオン結合する(第1または第2の)表面架橋剤として、得られる吸水剤の物性をさらに向上させる。特に、表面架橋剤による表面架橋後の吸水性樹脂に、多価金属塩及び/又はカチオン性ポリマーを添加して表面処理することで、所望の吸水特性、特に高い通液特性(SFC)が達成される。尚、多価金属塩及び/又はカチオン性ポリマーは、前述のα−ヒドロキシカルボン酸化合物と同時にそれぞれ添加したり、予めα−ヒドロキシカルボン酸化合物と混合した混合物として添加したりすることが好ましい。従来、多価金属塩及び/又はカチオン性ポリマーの使用は吸水性樹脂の着色を起こすこともあったが、本発明では問題もなく、多価金属塩及び/又はカチオン性ポリマーによる物性向上を達成する。
【0241】
(10−8)添加後の乾燥
また、上記(10−3)〜(10−7)の添加工程後、得られた混合物を乾燥してもよい。ここで、乾燥は、乾燥工程にかかる時間の50%以上の時間、より好ましくは実質すべての乾燥工程を通して、好ましくは40℃以上100℃未満の温度範囲で行われることが好ましい。かかる温度範囲で乾燥することにより、吸水剤が熱によるダメージを受けないため、得られる吸水剤の物性に悪影響を及ぼすことがない。
【0242】
尚、乾燥温度は熱媒温度で規定するが、マイクロ波等熱媒温度で規定できない場合は材料温度で規定する。乾燥方法としては、乾燥温度が上記範囲内であれば特に限定されるものではなく、熱風乾燥、無風乾燥、減圧乾燥、赤外線乾燥、マイクロ波乾燥等を好適に用いることができる。乾燥温度の範囲はより好ましくは40℃〜100℃、更に好ましくは50℃〜90℃の温度範囲である。また、乾燥は、一定温度で乾燥してもよく、温度を変化させて乾燥してもよいが、実質、すべての乾燥工程は上記の温度範囲内及び後述する含水率となるようになされることが好ましい。
【0243】
乾燥時間は、吸水剤の表面積、含水率、及び乾燥機の種類に依存し、目的とする含水率になるように適宜選択される。乾燥時間は、通常10〜120分、より好ましくは20〜90分、更に好ましくは30〜60分である。乾燥時間が10分未満では、乾燥が十分でなく、取り扱い性が十分でない場合がある。また、乾燥時間が120分以上では、過度の乾燥によって吸水剤にダメージを与えてしまう結果、(無機還元剤と吸水性樹脂の複合的とも推定される)臭気が発生したり、水可溶分量の上昇が起こったりして、諸物性の向上効果も見られない場合がある。この乾燥工程により、本発明の粒子状吸水剤の含水率が5重量%以下となるよう調整されてもよい。
【0244】
乾燥後の含水率としては3〜15重量%が好ましく、4〜14重量%がより好ましく、5〜13重量%が更に好ましく、特に6〜12重量%、更に7〜11重量%である。含水率は調整法の一例としては、上述した方法が例示される。
【0245】
前記特許文献17(欧州特許第1645596号明細書)は、吸水性樹脂、含酸素還元性無機塩、アミノカルボン酸系金属キレート剤および有機酸化防止剤を含有してなる耐着色性を有する吸水性樹脂組成物を開示するが、特定量のp−メトキシフェノールや水不溶性微粒子の使用は開示しないし、得られた吸水性樹脂組成物の含水率の重要性も記載しない。特許文献17の実施例では製造例で80重量%アクリル酸(92g+119.1g)および30重量%NaOH水溶液(102.2g+132.2g)などを単量体として得られた吸水性樹脂214.4gを用いて、実施例1−7で含酸素還元性無機塩、アミノカルボン酸系金属キレート剤及び有機酸化防止剤を溶媒なしで混合して吸水性樹脂組成物を得ている。よって、特許文献17では、吸水性樹脂の原料(g)と収量(212.2g)から吸水性樹脂の含水率は17重量%と計算で求められ、よって、特許文献17は本願好適な含水率3〜15重量%、さらには4〜14重量%、5〜13重量%、6〜12重量%、7〜11重量%を開示しない。また特許文献17は有機酸化防止剤として(ブチルなどの)アルキルヒドロキシアニソールなどを開示(段落〔0019〕〔0020〕〔実施例6〕)するが、微量のp−メトキシフェノールを開示しない。
【0246】
〔11)吸水体
本発明に係る吸水体は、本発明に係る粒子状吸水剤を含むものである。本発明の粒子状吸水剤を適切な素材と組み合わせることにより、例えば、衛生材料の吸収層として好適な吸水体とすることができる。以下、本発明の吸水体について説明する。本発明の吸水剤は白色で、通液性、加圧下吸水倍率、吸水速度も高く、残存モノマーも少ないため、高濃度の吸水体、特におむつに好適に使用できる。
【0247】
本発明において、吸水体とは、血液、体液、尿等を吸収する衛生材料に用いられる組成物であって、粒子状吸水剤とその他の素材からなる成形された組成物のことである。ここで、上記衛生材料としては、例えば、紙オムツ、生理用ナプキン、失禁パッド、医療用パッド等を挙げることができる。吸水体に用いられるその他の素材としては、セルロース繊維を挙げることができる。
【0248】
かかるセルロース繊維の具体例としては、例えば、木材からのメカニカルパルプ、ケミカルパルプ、セミケミカルパルプ、溶解パルプ等の木材パルプ繊維;レーヨン、アセテート等の人工セルロース繊維等を例示できる。より好ましいセルロース繊維は木材パルプ繊維である。またこれらセルロース繊維はナイロン、ポリエステル等の合成繊維を一部含有していてもよい。
【0249】
本発明に係る粒子状吸水剤を吸水体の一部として使用する際には、吸水体中に含まれる上記粒子状吸水剤の含有量が、好ましくは20重量%以上、より好ましくは30重量%以上、更に好ましくは50重量%以上の範囲である。吸水体中に含まれる本発明の粒子状吸水剤の重量が、20重量%未満になると、十分な吸収効果が得られなくなるおそれがある。
【0250】
本発明に係る粒子状吸水剤とセルロース繊維とを用いて吸水体を製造するには、例えば、セルロース繊維からなる紙、マット等に上記吸水剤を散布し、必要によりこれらの紙、マット等で挟持する方法、セルロース繊維と吸水剤とを均一にブレンドする方法等、吸水体を得るための公知の手段を適宜選択することができる。より好ましい方法としては、粒子状吸水剤とセルロース繊維とを乾式混含した後、圧縮する方法を挙げることができる。この方法により、セルロース繊維からの粒子状吸水剤の脱落を著しく抑えることが可能である。圧縮は、加熱下で行うことが好ましく、その温度範囲は、例えば、50〜200℃である。
【0251】
本発明に係る粒子状吸水剤は、吸水体に使用された場合、諸物性に優れるため、液の取り込みが早く、また、吸水体表層の液の残存量が少ない、非常に優れた吸水体が得られる。
【0252】
本発明に係る粒子状吸水剤は、優れた吸水特性を有しているため、種々の用途の吸水保水剤として使用することができる。具体的には、例えば、紙オムツ、生理用ナプキン、失禁パッド、医療用パッド等の吸収物品用吸水保水剤;水苔代替、土壌改質改良剤、保水剤、農薬効力持続剤等の農園芸用保水剤;内装壁材用結露防止剤、セメント添加剤等の建築用保水剤;リリースコントロール剤、保冷剤、使い捨てカイロ、汚泥凝固剤、食品用鮮度保持剤、イオン交換カラム材料、スラッジ又はオイルの脱水剤、乾燥剤、湿度調整材料等で使用できる。中でも、本発明に係る吸水剤は、紙オムツ、生理用ナプキン等の、糞、尿又は血液の吸収用衛生材料に特に好適に用いられる。
【0253】
本発明に係る吸水体は、紙オムツ、生理用ナプキン、失禁パッド、医療用パッド等の衛生材料に用いられる場合、(a)着用者の体に隣接して配置される液体透過性のトップシート、(b)着用者の身体から遠くに、着用者の衣類に隣接して配置される、液体に対して不透過性のバックシート、及び(c)トップシートとバックシートの間に配置された吸水体、を含んでなる構成で使用されることが好ましい。吸水体は二層以上であってもよいし、パルプ層等とともに用いてもよい。
【0254】
上述したように、本発明に係る粒子状吸水剤は、以下のようにも言い換えることができる。
【0255】
(1)ポリアクリル酸(塩)系吸水性樹脂を主成分とする粒子状吸水剤であって、5〜60ppmのメトキシフェノール類、キレート剤及び無機還元剤を含むことを特徴とする、ポリアクリル酸(塩)系吸水性樹脂を主成分とする粒子状吸水剤。
【0256】
(2)ポリアクリル酸(塩)系吸水性樹脂を主成分とする粒子状吸水剤であって、キレート剤、無機還元剤及び水不溶性無機微粒子を含むことを特徴とする、ポリアクリル酸(塩)系吸水性樹脂を主成分とする粒子状吸水剤。
【0257】
(3)表面架橋されたポリアクリル酸(塩)系吸水性樹脂を主成分とする粒子状吸水剤であって、無機還元剤及びキレート剤、p−メトキシフェノールを含み、含水率が3〜15重量%である、ポリアクリル酸(塩)系吸水性樹脂を主成分とする粒子状吸水剤。
【0258】
また、同様に、本発明の粒子状吸水剤の製造方法は、以下のように言い換えることができる。
【0259】
(1)メトキシフェノール類を10〜200ppm含有するアクリル酸(塩)を主成分とする単量体水溶液の重合工程と、重合で得られた含水ゲル状架橋重合体の乾燥工程と、表面架橋工程と、キレート剤の添加工程を含む、粒子状吸水剤の製造方法であって、
表面架橋工程後に、無機還元剤の添加工程を行うことを特徴とする、粒子状吸水剤の製造方法。
【0260】
(2)アクリル酸(塩)を主成分とする単量体水溶液の重合工程と、重合で得られた含水ゲル状架橋重合体の乾燥工程とを含む、粒子状吸水剤の製造方法であって、
表面架橋工程、キレート剤の添加工程、無機還元剤及び水不溶性無機微粒子の添加工程を含むことを特徴とする、粒子状吸水剤の製造方法。
【0261】
(3)メトキシフェノール類を10〜200ppm含有するアクリル酸(塩)を主成分とする単量体水溶液の重合工程と、重合で得られた含水ゲル状架橋重合体の乾燥工程と、表面架橋工程と、無機還元剤及びキレート剤の添加工程とを含むポリアクリル酸(塩)系吸水性樹脂を主成分とする、粒子状吸水剤の製造方法であって、
乾燥工程及び表面架橋工程において重合体の含水率を3〜15重量%に制御することを特徴とする、ポリアクリル酸(塩)系吸水性樹脂を主成分とする粒子状吸水剤の製造方法。
【0262】
本発明は上述した各実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能であり、異なる実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。
【0263】
(上記粒子状吸水剤の好適な下位概念)
(粒子状吸水剤の製造方法・その1)
本発明の粒子状吸水剤の製造方法として、上記(c)を必須とする下位概念の製造方法・その1は、メトキシフェノール類を10〜200ppm含有するアクリル酸(塩)を主成分とする単量体水溶液の重合工程と、重合で得られた含水ゲル状架橋重合体の乾燥工程と、表面架橋工程と、キレート剤0.001〜0.5重量%の添加工程を含む粒子状吸水剤の製造方法であって、表面架橋工程後に、無機還元剤の添加工程を行うことを特徴としている。かかる製造方法・その1の具体例を後述の実施例1−1〜1−16および表1〜5に示す。
【0264】
(粒子状吸水剤の製造方法・その2)
本発明の粒子状吸水剤の製造方法として、上記(b)を必須とする下位概念の製造方法・その2は、アクリル酸(塩)を主成分とする単量体水溶液の重合工程と、重合で得られた含水ゲル状架橋重合体の乾燥工程と、表面架橋工程とを含む、粒子状吸水剤の製造方法であって、キレート剤0.001〜0.5重量%の添加工程と無機還元剤の添加工程とを更に含み、単量体がメトキシフェノール類を対アクリル酸換算で10〜200ppm含有し、(a)水不溶性無機微粒子の添加工程を更に含むことを特徴としている。かかる製造方法・その2の具体例を後述の実施例2−1〜2−14および表6〜7に示す。
【0265】
(粒子状吸水剤の製造方法・その3)
本発明の粒子状吸水剤の製造方法として、上記(c)を必須とする下位概念の製造方法・その3は、アクリル酸(塩)を主成分とする単量体水溶液の重合工程と、重合で得られた含水ゲル状架橋重合体の乾燥工程と、表面架橋工程とを含む、粒子状吸水剤の製造方法であって、キレート剤0.001〜0.5重量%の添加工程と無機還元剤の添加工程とを更に含み、単量体がメトキシフェノール類を対アクリル酸換算で10〜200ppm含有し、乾燥工程後及び/又は表面架橋工程において、重合体の含水率3〜15重量%に制御すること、さらに好ましくは、上記無機還元剤を、乾燥前の含水ゲル状架橋重合体に添加することを特徴としている。かかる製造方法・その3の具体例を後述の実施例3−1〜3−13および表8〜9に示す。
【実施例】
【0266】
以下、実施例に従って本発明を説明するが、本発明は実施例に限定され解釈させるものではない。また、本発明の特許請求の範囲や実施例に記載の諸物性は、以下の測定法に従って求めた。尚、下記測定法は粒子状吸水剤について記述しているが、吸水性樹脂についても粒子状吸水剤を吸水性樹脂と読み替えて測定される。また、実施例において使用される電気機器は、200V又は100Vで、かつ60Hzの条件下で使用した。更に、粒子状吸水剤は、特に指定がない限り、25℃±2℃、相対湿度50%RHの条件下で使用した。下記測定法や実施例で例示された試薬や器具は、適宜相当品で代替されてもよい。
【0267】
尚、本発明の粒子状吸水剤は無機還元剤を必須に含むが、以下、表面架橋された吸水性樹脂であって、無機還元剤を添加前の吸水性樹脂について、粒子状吸水剤前駆体と称することがある(参照;実施例1−1〜1−8、比較例1−3、1−4等)。
【0268】
[物性の評価方法]
[CRC]
粒子状吸水剤0.2gを不織布製の袋(60×60mm)に均一に入れシールした後、25±3℃に調整した0.9重量%塩化ナトリウム水溶液(別称;生理食塩水)500g中に浸漬した。60分経過後、袋を引き上げ、遠心分離機を用いて250Gで3分間水切りを行った後、袋の重量W1[g]を測定した。同様の操作を、粒子状吸水剤を入れずに行い、そのときの重量W2[g]を求めた。次式にしたがってCRC(無加圧下吸水倍率)を算出した。
【0269】
【数1】
【0270】
[水可溶分]
容量250mlの蓋付きプラスチック容器に、0.90重量%塩化ナトリウム水溶液184.3gと粒子状吸水剤1.00gとを入れ、16時間攪拌を行い、粒子状吸水剤中の水可溶分を抽出した。この抽出液を濾紙1枚(ADVANTEC東洋株式会社、品名:JIS P 3801、No.2、厚さ0.26mm、保留粒子径5μm)を用いて濾過し、得られた濾液の50.0gを測定溶液とした。
【0271】
次いで、0.1NのNaOH水溶液でpH10となるまで滴定を行い、その後、0.1NのHCl水溶液でpH2.7となるまで滴定を行った。このときの滴定量([NaOH]ml、[HCl]ml)を求めた。また、同様の滴定操作を、0.90重量%塩化ナトリウム水溶液184.3gのみに対して行い、空滴定量([bNaOH]ml、[bHCl]ml)を求めた。
【0272】
本発明の粒子状吸水剤の場合、そのモノマーの平均分子量と、上記操作により得られた滴定量とに基づき、粒子状吸水剤中の水可溶分は、下記数2により算出することができる。尚、モノマーの平均分子量が未知である場合、滴定により求めた中和率を用いてモノマーの平均分子量が算出され得る。この中和率は、下記数3により算出される。
【0273】
【数2】
【0274】
【数3】
【0275】
[残存モノマー]
本発明の粒子状吸水剤に含まれる残存モノマー(残存アクリル酸(塩))は、上記[水可溶分]の測定法における攪拌時間を16時間から2時間に変更した以外は、同様の操作を行って得た濾液を分析することで求められる。具体的には、該操作で得られた濾液を、高速液体クロマトグラフィーで分析することで、粒子状吸水剤中の残存モノマーを求めることができる。尚、残存モノマーは、ppm(対粒子状吸水剤)で表す。
【0276】
[AAP]
圧力に対する吸収力(AAP)は0.90重量%食塩水に対する4.83kPa又は2.0kPaで60分の吸水倍率を示す。尚、AAPは、4.83kPa又は2.0kPaでの加圧下吸水倍率と称されることもある。
【0277】
図1に示す装置を用い、内径60mmのプラスチックの支持円筒100の底に、ステンレス製400メッシュの金網101(目開き38μm)を融着させ、室温(20〜25℃)、湿度50RH%の条件下で、該網上に粒子状吸水剤0.900gを均一に散布し、その上に、粒子状吸水剤に対して、4.83kPa(0.7psi)又は2.0kPa(0.3psi)の荷重を均一に加えることができるよう調整された、外径が60mmよりわずかに小さく支持円筒との隙間が生じず、かつ上下の動きが妨げられないピストン103と荷重104とをこの順に載置し、この測定装置一式の重量Wa[g]を測定した。
【0278】
直径150mmのペトリ皿105の内側に直径90mmのガラスフィルター106(株式会社相互理化学硝子製作所製、細孔直径:100〜120μm)を置き、0.90重量%塩化ナトリウム水溶液108(20〜25℃)をガラスフィルターの上面と同じレベルになるように加えた。その上に、直径90mmの濾紙107(ADVANTEC東洋株式会社製、品名:JIS P 3801、No.2、厚さ0.26mm、保留粒子径5μm)を1枚載せ、表面が全て濡れるようにし、かつ過剰の液を除いた。
【0279】
上記測定装置一式を上記湿った濾紙上に載せ、液を荷重下で吸収させた。1時間経過後、測定装置一式を持ち上げ、その重量Wb[g]を測定した。そして、Wa、Wbから、下記の式に従ってAAP[g/g]を算出した。
【0280】
【数4】
【0281】
[SFC]
SFC(食塩水流れ誘導性)は、吸水性樹脂粒子又は吸水剤の膨潤時の液透過性を示す値である。SFCの値が大きいほど高い液透過性を有することを示している。米国特許第5849405号明細書記載の食塩水流れ誘導性(SFC)試験に準じて行った。
【0282】
図2に示す装置を用いて、容器40に均一に入れた粒子状吸水剤0.900[g]を人工尿中で2.07kPa(0.3psi)の加圧下で、60分間膨潤させた後、ゲル44のゲル層の高さを記録した。次に2.07kPaの加圧下で、0.69重量%塩化ナトリウム水溶液33を、一定の静水圧でタンク31から膨潤したゲル44に通液させた。このSFC試験は、室温(20〜25℃)で行った。コンピューターと天秤とを用い、時間の関数として20秒間隔でゲル層を通過する液体量を10分間記録した。
【0283】
膨潤したゲル44(の主に粒子間)を通過する流速Fs(T)は、増加重量[g]を経過時間[s]で除する[単位;g/s]ことで決定した。一定の静水圧と安定した流速が得られた時間をTsとし、Tsと10分間の間に得たデータだけを流速計算に使用して、Tsと10分間の間に得た流速を使用してFs(T=0)の値、つまりゲル層を通る最初の流速を計算した。Fs(T=0)はFs(T)対時間の最小2乗法の結果をT=0に外挿することにより計算した。
【0284】
【数5】
【0285】
ここで、
Fs(t=0):流速[g/s]
L0:ゲル層の高さ[cm]
ρ:塩化ナトリウム水溶液の密度(1.003[g/cm
3])
A:セル41中のゲル層上側の面積(28.27[cm
2])
ΔP:ゲル層にかかる静水圧(4920[dyn/cm
2])
である。
【0286】
図2に示すSFC測定装置について、詳細に説明する。
【0287】
タンク31には、ガラス管32が挿入されており、ガラス管32の下端は、0.69重量%塩化ナトリウム水溶液33をセル41中の膨潤ゲル44の底部から、5cm上の高さに維持できるように配置した。タンク31中の0.69重量%塩化ナトリウム水溶液33は、コック35付きL字管34を通じてセル41へ供給された。セル41の下には、通過した液を補集する容器48が配置されており、補集容器48は上皿天秤49の上に設置されていた。セル41の内径は6cmであり、底面には目開き38μmのステンレス製金網42が設置されていた。ピストン46の下部には、液が通過するのに十分な穴47があり、底部には粒子状吸水剤、あるいはその膨潤ゲルが、穴47へ入り込まないように透過性の良いガラスフィルター45が取り付けてあった。セル41は、セルを乗せるための台の上に置かれ、セルと接する台の面は、液の透過を妨げないステンレス製の金網43の上に設置した。
【0288】
尚、人工尿は、純水994.25[g]に、塩化カルシウム2水和物0.25[g]、塩化カリウム2.0[g]、塩化マグネシウム6水和物0.50[g]、硫酸ナトリウム2.0[g]、りん酸2水素アンモニウム0.85[g]、及びりん酸水素2アンモニウム0.15[g]を加えたものを用いた。
【0289】
[吸水速度その1(FSR)]
FSR(吸水速度)とは、吸水剤の液を吸収する速度の指標である。吸水速度は高い値を示すことが好ましく。吸水速度が高い吸水剤を吸水体に使用することで、液の吸水速度に優れた吸水体を得ることが可能となる。吸水速度は以下の方法で測定される。
【0290】
粒子状吸水剤1.000±0.0005[g]を小数点以下4桁まで正確に秤量し(Wc[g])、25mlのガラス製ビーカー(直径32〜34mm、高さ50mm)に、該粒子状吸水剤の上面が水平となるように入れた。必要により、慎重にビーカーをたたく等の処置を行い、粒子状吸水剤を水平にする。次に、23±2.0℃に調整した0.9重量%塩化ナトリウム水溶液20mlを50mlのガラス製ビーカーに量り取り、該水溶液の重量を小数点以下4桁まで測定した(Wd[g])。
【0291】
次に、該0.9重量%塩化ナトリウム水溶液を、粒子状吸水剤の入った25mlビーカーに素早く注ぎ込み、塩化ナトリウム水溶液と粒子状吸水剤が接触した瞬間を起点として、時間測定を開始した。該塩化ナトリウム水溶液を注ぎ込んだビーカー中の液面を、約20°の角度から目視し、液面が水溶液から粒子状吸水剤に置き換わるまでの時間(Th[sec])を測定した。次に、塩化ナトリウム水溶液を注いだ後のビーカーに付着した塩化ナトリウム水溶液(ビーカー残存量)の重量(We[g])を小数点以下4桁まで測定した。下記の式によって、FSR(吸水速度)[g/g/sec]を求めた。尚、1つのサンプルについて3回測定し、その平均値を代表値とした。
【0292】
【数6】
【0293】
[吸水速度その2(Vortex)]
予め調整された0.90重量%塩化ナトリウム水溶液(生理食塩水)1.000重量部に食品添加物である食用青色1号(CAS番号:3844−45−9)0.02重量部を添加し、液温30℃に調整した。その生理食塩水50mlを胴径55mm、高さ70mmの容量100mlのビーカー(例えば相互理化学硝子製作所が販売するJISR−3503に準拠したビーカー)に計り取り、長さ40mm、太さ8mmの円筒型テフロン(登録商標)製マグネット式撹拌子(例えば、相互理化学ガラス製作所が販売するS型)で600rpmの条件下撹拌する中に、後述する実施例又は比較例で得られた粒子状吸水剤2.0gを投入し、吸水速度(秒)を測定する。始点、終点は、JIS K 7224(1996年度)「高吸水性樹脂の吸水速度試験方法 解説」に記載されている基準に準じ、粒子状吸水剤が生理食塩水を吸液して、ゲル化中の生理食塩水が回転するスターラーチップを覆うまでの時間回転する時間(断面から見るとV字で覆われる)を測定し、吸水速度(秒)として評価する。
【0294】
[重量平均粒子径(D50)、粒度分布の対数標準偏差(σζ)及び150μm未満の粒子]
重量平均粒子径(D50)は、国際公開第2004/069404号パンフレットに記載された方法に準じて測定した。所定量の粒子状吸水剤を目開き850μm、710μm、600μm、500μm、425μm、300μm、212μm、150μm、106μm、45μmのJIS標準篩(JIS Z8801−1(2000))、あるいはこれらのJIS標準篩に相当する篩を用いて篩い分けし、残留百分率Rを対数確率紙にプロットした。これにより、R=50重量%に相当する粒径を重量平均粒子径(D50)として読み取った。
【0295】
粒度分布の対数標準偏差(σζ)は、下記の式で表され、σζの値が小さいほど粒度分布が狭いことを意味する。
【0296】
【数7】
【0297】
ここで、
X1 : R=84.1[重量%]に相当する粒径
X2 : R=15.9[重量%]に相当する粒径
である。
【0298】
標準篩分級で規定される150μm未満の粒子[重量%]とは、目開き150μmのJIS標準篩(JIS Z8801−1(2000))を通過する粒子の重量、粒子状吸水剤の全体の重量に対する割合[重量%]である。本明細書においては、単に「150μm未満の粒子[重量%]又は「150μm pass[%]」とも称される。
【0299】
[粒子状吸水剤の着色評価(ハンターLab表色系/L値)]
粒子状吸水剤の着色評価は、HunterLab社製のLabScan(登録商標)XEを用いて行った。測定の設定条件は、反射測定が選択され、内径30mm、高さ12mmの粉末・ペースト試料用容器が用いられ、標準として粉末・ペースト用標準丸白板No.2が用いられ、30Φ投光パイプが用いられた。備え付けの試料用容器に約5gの粒子状吸水剤を充填した。この充填は、備え付け試料用容器を約6割程度充填するものであった。室温(20〜25℃)及び湿度50RH%の条件下で、上記分光式色差計にて表面のL値(Lightness:明度指数)を測定した。この値を、「曝露前の明度指数」とし、その値が大きいほど白色である。
【0300】
また、同じ装置の同じ測定法によって、同時に他の尺度の物体色a、b(色度)も測定できる。a/bは小さいほど、低着色で実質白色に近づくことを示す。粒子状吸水剤を製造した直後、あるいは、30℃以下、相対湿度50%RH以下の条件下、1年以内の期間保存された粒子状吸水剤の着色評価結果を初期色調とされる。
【0301】
続いて、上記ペースト試料用容器に約5gの粒子状吸水剤を充填し、70±1℃、相対湿度65±1%の雰囲気に調整した恒温恒湿機(エスペック株式会社製小型環境試験器、形式SH−641)中に粒子状吸水剤を充填したペースト試料容器を7日間曝露した。この曝露が、7日間着色促進試験である。曝露後、上記分光式色差計にて表面のL値(Lightness)a/b値を測定した。この測定値を、促進試験後の経時着色とする。
【0302】
[臭気試験]
粒子状吸水剤1重量部を100mlのビーカーに入れ、0.9重量%塩化ナトリウム水溶液20重量部を加えた後、フィルムでビーカーを密閉し37℃で1時間放置した。その後、成人の被験者10名による臭気官能試験を行った。評価方法は、不快な臭気がなく、オムツ等の衛生材料に使用可能な臭気であると判断されるものを○、不快な臭気があり、オムツ等の衛生材料に使用不可な臭気であると判断されるものを×とした。特に、不快な臭気が強いものを××とした。
【0303】
[含水率]
底面の大きさが直径約50mmのアルミカップに、粒子状吸水剤1.00[g]を量り取り、粒子状吸水剤及びアルミカップの総重量W8[g]を測定した。その後、雰囲気温度180℃のオーブン中に3時間静置して乾燥した。3時間経過後、オーブンから粒子状吸水剤及びアルミカップを取り出し、デシケーター中で室温まで冷却した。その後、乾燥後の粒子状吸水剤及びアルミカップの総重量W9[g]を求め、次式数8に従って含水率を求めた。
【0304】
【数8】
【0305】
[耐候性促進試験](ゲル劣化試験その1)
粒子状吸水剤3.0gを内径7.0cm、高さ14.0cmの石英製セパラブルフラスコに入れ、脱イオン水57.0gを加えた。その後、セパラブルフラスコ中の20倍膨潤ゲル粒子(60g)を軸の中央から翼端までが3.0cm、幅1.0cmの平羽根を4枚有した攪拌翼で攪拌しながらメタルハライドランプ(ウシオ電機製、UVL−1500M2−N1)を取り付けた紫外線照射装置(同、UV−152/1MNSC3−AA06)を用いて、照射強度60[mW/cm
2]で1分間、室温で紫外線を照射し、耐候性促進試験を受けた含水ゲル状吸水剤を得た。
【0306】
次いで、容量250mlの蓋付きプラスチック容器に、0.90重量%塩化ナトリウム水溶液184.3gと含水ゲル状吸水剤2.00gとを入れ、マゲネチックスタラーで16時間攪拌を行い、含水ゲル状吸水剤の可溶分を抽出した。この抽出液を濾紙1枚(ADVANTEC東洋株式会社、品名:JIS P 3801、No.2、厚さ0.26mm、保留粒子径5μm)を用いて濾過し、得られた濾液の5.0gと0.90重量%塩化ナトリウム水溶液45.0gの混合溶液を測定溶液とした。
【0307】
次いで、0.1NのNaOH水溶液でpH10となるまで滴定を行い、その後、0.1NのHCl水溶液でpH2.7となるまで滴定を行った。このときの滴定量([NaOH]ml、[HCl]ml)を求めた。また、同様の滴定操作を、0.90重量%塩化ナトリウム水溶液184.3gのみに対して行い、空滴定量([bNaOH]ml、[bHCl]ml)を求めた。
【0308】
本発明の含水ゲル状吸水剤の場合、そのモノマーの平均分子量と、上記操作により得られた滴定量とに基づき、含水ゲル状吸水剤の可溶分は、下記数9により算出することができる。尚、モノマーの平均分子量が未知である場合、滴定により求めた中和率を用いてモノマーの平均分子量が算出され得る。この中和率は、下記数10により算出される。
【0309】
【数9】
【0310】
【数10】
【0311】
粒子状吸水剤の可溶分と含水ゲル状吸水剤の可溶分から劣化率が、下記数11により算出される。
【0312】
【数11】
【0313】
[耐尿性試験](ゲル劣化試験その2)
粒子状吸水剤1重量部を250ml蓋付プラスチック容器(株式会社テラオカ製のパックエース)に入れ、模擬人工尿25重量部を加えた後、密閉して所定の温度及び時間で粒子状吸水剤を劣化させた。その後、250ml蓋付プラスチック容器を横に倒して10分間放置した時、膨潤したゲルが流動するかを評価した。尚、本試験では、下記2つの劣化条件で実施した。
【0314】
(1)耐尿性試験(L−アスコルビン酸濃度通常)(ゲル劣化試験その2−1)
[ゲル劣化条件(1)]
模擬人工尿:L−アスコルビン酸0.005重量%濃度の生理食塩水
劣化温度:37℃
劣化時間:24時間
(2)耐尿性試験(L−アスコルビン酸1000倍)(ゲル劣化試験その2−2)
[ゲル劣化条件(2)]
模擬人工尿:L−アスコルビン酸5重量%濃度の生理食塩水
劣化温度:90℃
劣化時間:1時間
[Dust測定]
株式会社セイシン企業製 Heubach Dustmeter 2000を用い、以下の条件で粒子状吸水剤からのダスト量を測定した。
【0315】
測定条件
作業環境:18〜22℃/45〜55RH%
試料:100.00g
形式:Type(I)(横型)
Rotat.:30[R/min]
Airflow:20.0[L/min]
Time:60min(設定上限30分ゆえ、30分を2回行う)
捕集フィルター:濾紙(ADVANTEC製 GC90)
測定10分後の濾紙の重量増加分[mg]を計測することにより、次式から粒子状吸水剤からのダスト量を求めた。
【0316】
【数12】
【0317】
[粒子状吸水剤に含まれるp−メトキシフェノール]
本発明の粒子状吸水剤に含まれるp−メトキシフェノールは、上記[可溶分]の評価方法における攪拌時間を16時間から1時間に変更した以外は、同様の操作を行って得た濾液を分析することで求められる。具体的には、該操作で得られた濾液を、高速液体クロマトグラフィーで分析することで、粒子状吸水剤中のp−メトキシフェノールを求めることができる。尚、p−メトキシフェノールは、ppm(対粒子状吸水剤)で表す。
【0318】
[粒子状吸水剤に含まれる還元剤(亜硫酸水素ナトリウム)]
本発明の粒子状吸水剤に含まれる還元剤として、亜硫酸水素ナトリウムの測定方法を例示する。200mlのビーカーに純水50gと粒子状吸水剤0.5gを入れ1時間放置する。次に、メタノール50gを加えた後、マラカイトグリーン2mmolを後述の溶離液に溶解した溶液2.5gを添加する。この溶液を約30分間攪拌した後、濾過し、濾液を高速液体クロマトグラフィーで分析することによって粒子状吸水剤に含まれる還元剤の量を求める。尚、溶離液はメタノール400ml、n−ヘキサン6ml、0.0M−2−N−morpholino−ethanesulfonic acid, sodium salt 100mlに比で調整される。また、検量線は還元剤を含まない粒子状吸水剤に還元剤をスパイクしたものを分析することで作成することができる。
【0319】
[粒子状吸水剤に含まれるキレート剤]
本発明の粒子状吸水剤に含まれるキレート剤は、上記[可溶分]の評価方法における攪拌時間を16時間から1時間に変更した以外は、同様の操作を行って得た濾液を分析することで求められる。具体的には、該操作で得られた濾液を、高速液体クロマトグラフィーで分析することで、粒子状吸水剤中のキレート剤を求めることができる。尚、キレート剤量は、ppm(対粒子状吸水剤)で表す。また、検量線はキレート剤を含まない粒子状吸水剤にキレート剤をスパイクしたものを分析することで作成することができる。
【0320】
[実施例1−1]
米国特許第7265190号に記載の
図3に示す装置を用いて、下記に従い、含水ゲル状架橋重合体を製造した。
【0321】
先ず、p−メトキシフェノールの含有量を70ppmに調整したアクリル酸35.2重量部、48重量%水酸化ナトリウム水溶液11.7重量部、ポリエチレングリコールジアクリレート(平均エチレンオキサイドユニット数:n=9)0.23重量部、キレート剤として1重量%ジエチレントリアミン5酢酸3ナトリウム(略称:DTPA・3Na)水溶液0.22重量部、及び脱イオン水33.6重量部の組成からなる単量体水溶液(1−1)を作製した。
【0322】
次に、40℃に調整した上記単量体水溶液(1−1)を、定量ポンプを用いて連続的に重合工程へ供給した。ベルト重合機に導入する前に、48重量%水酸化ナトリウム水溶液(鉄分含有量0.7ppm(対NaOH固形分))17.7重量部をラインミキシングにて連続混合した。この時、中和熱によって、モノマー温度は86℃まで上昇した。
【0323】
次いで、4重量%過硫酸ナトリウム水溶液1.38重量部をラインミキシングにて連続混合し、得られた連続混合物(1−1)を、両端に堰を有する平面ベルト上に、厚さ約7.5mmとなるように供給した。連続的に3分間重合を行い、含水ゲル状架橋重合体(1−1)を得た。
【0324】
次に、上記の含水ゲル状架橋重合体(1−1)を孔径22mmのミートチョッパーで約1.5mmに細分化した。この細分化されたゲルを、連続通風バンド乾燥機の移動する多孔板上に広げて載せ、185℃で30分間乾燥し、乾燥重合体(1−1)を得た。得られた乾燥重合体(1−1)をロールミルで粉砕した後、目開き710μm及び175μmの金属篩網を有する篩い分け装置で篩い分けすることにより、175〜710μmの吸水性樹脂粉体(1−1)を得た。
【0325】
得られた吸水性樹脂粉体(1−1)100重量部に対して、1,4−ブタンジオール0.3重量部、プロピレングリコール0.6重量部、脱イオン水3.0重量部の混合液からなる表面架橋剤を均一に混合した後、混合物を208℃で40分間加熱処理することにより、表面架橋吸水性樹脂粉体(1−1)を得た。
【0326】
得られた表面架橋吸水性樹脂粉体(1−1)を冷却した後、表面架橋吸水性樹脂粉体(1−1)100重量部に対して、30重量%亜硫酸水素ナトリウム水溶液1.66重量部を添加混合し、粒子状吸水剤前駆体(1−1)を得た。次いで、得られた粒子状吸水剤前駆体(1−1)を60℃の熱風乾燥機中に30分間放置し、その後、目開き710μmのJIS標準篩を通過させることで、粒子状吸水剤(1−1)を得た。得られた粒子状吸水剤(1−1)の含水率は1.8重量%であった。得られた粒子状吸水剤(1−1)の物性を表1に記載する。
【0327】
[実施例1−2]
実施例1−1記載の30重量%亜硫酸水素ナトリウム水溶液の添加量を1.66重量部から3.33重量部に変更したこと以外は、実施例1−1と同様にして粒子状吸水剤(1−2)を得た。得られた粒子状吸水剤(1−2)の物性を表1に記載する。
【0328】
[実施例1−3]
実施例1−1記載の30重量%亜硫酸水素ナトリウム水溶液の添加量を1.66重量部から0.166重量部に変更したこと以外は、実施例1−1と同様にして得られた吸水剤100重量部に、更に50重量%乳酸ナトリウム水溶液を0.6重量部添加混合し、粒子状吸水剤前駆体(1−3)を得た。次いで、得られた粒子状吸水剤前駆体(1−3)を60℃の熱風乾燥機中に30分間放置し、その後、目開き710μmのJIS標準篩を通過させることで、粒子状吸水剤(1−3)を得た。得られた粒子状吸水剤(1−3)の含水率は2.0重量%であった。得られた粒子状吸水剤(1−3)の物性を表1−1に記載する。
【0329】
[実施例1−4]
実施例1−3における、30重量%亜硫酸水素ナトリウム水溶液の添加量を0.166重量部から1.66重量部に変更し、かつ50重量%乳酸ナトリウム水溶液の添加量を0.6重量部から0.1重量部に変更したこと以外は、実施例1−3と同様にして粒子状吸水剤(1−4)を得た。得られた粒子状吸水剤(1−4)の物性を表1−1に記載する。
【0330】
[実施例1−5]
実施例1−3における、30重量%亜硫酸水素ナトリウム水溶液の添加量を0.166重量部から1.66重量部に変更したこと以外は、実施例1−3と同様と同様にして粒子状吸水剤(1−5)を得た。得られた粒子状吸水剤(1−5)の物性を表1に記載する。
【0331】
[実施例1−6]
実施例1−1における表面架橋吸水性樹脂粉体(1−1)100重量部に対して、30重量%亜硫酸水素ナトリウム水溶液0.33重量部を添加混合し、更に硫酸アルミニウム水溶液(酸化アルミニウム換算で8重量%)0.9重量部、60重量%乳酸ナトリウム水溶液0.30重量部、及びプロピレングリコール0.02重量部からなる混合液1.22重量部を均一に混合することで、粒子状吸水剤前駆体(1−6)を得た。次いで、得られた粒子状吸水剤前駆体(1−6)を60℃の熱風乾燥機中に30分間放置し、その後、目開き710μmのJIS標準篩を通過させることで、粒子状吸水剤(1−6)を得た。得られた粒子状吸水剤(1−6)の物性を表1に記載する。
【0332】
[実施例1−7]
米国特許第7265190号明細書に記載の
図3に示す装置を用いて、下記に従い、含水ゲル状架橋重合体を製造した。
【0333】
先ず、p−メトキシフェノールの含有量を70ppmに調整したアクリル酸35.2重量部、48重量%水酸化ナトリウム水溶液11.7重量部、ポリエチレングリコールジアクリレート(平均エチレンオキサイドユニット数:n=9)0.23重量部、31%エチレンジアミンテトラ(メチレンホスホン酸)5ナトリウム(略称:EDTMPA・5Na)水溶液0.03重量部、及び脱イオン水33.6重量部の組成割合からなる単量体水溶液(1−7)を作製した。
【0334】
次に、40℃に調整した上記単量体水溶液(1−7)を、定量ポンプを用いて連続的に重合工程へ供給した。ベルト重合機に導入する前に、48重量%水酸化ナトリウム水溶液17.7重量部をラインミキシングにて連続混合した。この時、中和熱によって、モノマー温度は86℃まで上昇した。次いで、4重量%過硫酸ナトリウム水溶液1.38重量部をラインミキシングにて連続混合し、得られた連続混合物(1−7)を、両端に堰を有する平面ベルト上に、厚さ約7.5mmとなるように供給した。連続的に3分間重合を行い、含水ゲル状架橋重合体(1−7)を得た。
【0335】
次に、上記の含水ゲル状架橋重合体(1−7)を孔径22mmのミートチョッパーで約1.5mmに細分化した。この細分化されたゲルを、連続通風バンド乾燥機の移動する多孔板上に広げて載せ、185℃で30分間乾燥し、乾燥重合体(1−7)を得た。得られた乾燥重合体(1−7)をロールミルで粉砕した後、目開き710μm及び175μmの金属篩網を有する篩い分け装置で篩い分けすることにより、粒子径が175〜710μmの吸水性樹脂粉体(1−7)を得た。
【0336】
得られた吸水性樹脂粉体(1−7)100重量部に対して、1,4−ブタンジオール0.3重量部、プロピレングリコール0.6重量部、及び脱イオン水3.0重量部の混合液からなる表面架橋剤を均一に混合した後、混合物を208℃で40分間加熱処理することにより、表面架橋吸水性樹脂粉体(1−7)を得た。
【0337】
得られた表面架橋吸水性樹脂粉体(1−7)を冷却した後、表面架橋吸水性樹脂粉体(1−7)100重量部に対して、30重量%亜硫酸水素ナトリウム水溶液1.66重量部、30重量%硫酸アルミニウム水溶液(酸化アルミニウム換算で8重量%)0.9重量部、60重量%乳酸ナトリウム水溶液0.30重量部、及びプロピレングリコール0.03重量部からなる混合液1.23重量部を均一添加し混合することで粒子状吸水剤前駆体(1−7)を得た。次いで、得られた粒子状吸水剤前駆体(1−7)を60℃の熱風乾燥機中に30分間放置し、その後、目開き710μmのJIS標準篩を通過させることで、粒子状吸水剤(1−7)を得た。得られた粒子状吸水剤(1−7)の物性を表1に記載する。
【0338】
[実施例1−8]
気相接触酸化で得られた市販のアクリル酸(和光純薬、試薬特級;p−メトキシフェノール200ppm含有)を、無堰多孔板50段を有する高沸点不純物分離塔の塔底に供給して、還流比を1として蒸留し、更に再蒸留することで、アクリル酸99重量%以上及び微量の不純物(主に水)からなる精製アクリル酸(1−8)を得た。精製アクリル酸(1−8)中のp−メトキシフェノール量はND(1ppm未満)であった。
【0339】
精製アクリル酸(1−8)にp−メトキシフェノールを15ppm加えることで調整アクリル酸(1−8)を得た。
【0340】
米国特許第7265190号明細書に記載の
図3に示す装置を用い、下記に従い、含水ゲル状架橋重合体を製造した。
【0341】
先ず、上記調整アクリル酸(1−8)35.2重量部、48重量%水酸化ナトリウム水溶液(鉄分含有量0.7ppm(対NaOH固形分))11.7重量部、ポリエチレングリコールジアクリレート(平均エチレンオキサイドユニット数:n=9)0.23重量部、31重量%エチレンジアミンテトラ(メチレンホスホン酸)5ナトリウム(略称:EDTMPA・5Na)水溶液0.03重量部、及び脱イオン水33.6重量部の組成割合からなる単量体水溶液(1−8)を作製した。
【0342】
次に、上記単量体水溶液(1−8)を40℃に調整し、定量ポンプで連続フィードした。該単量体水溶液(1−8)に、48重量%水酸化ナトリウム水溶液17.7重量部をラインミキシングにて連続混合した。この時、中和熱によって、モノマーの温度は86℃まで上昇した。次いで、4重量%過硫酸ナトリウム水溶液1.38重量部をラインミキシングにて連続混合した。このラインミキシングにより得られた連続混合物(1−8)を、両端に堰を有する平面ベルト上に、厚みが約7.5mmとなるように供給して、連続的に3分間重合を行い、含水ゲル状架橋重合体(1−8)を得た。
【0343】
次に、上記の含水ゲル状架橋重合体(1−8)を孔径22mmのミートチョッパーで約1.5mmに細分化した。この細分化されたゲルを、連続通風バンド乾燥機の移動する多孔板上に広げて載せ、185℃で30分間乾燥し、乾燥重合体(1−8)を得た。得られた乾燥重合体(1−8)をロールミルで粉砕した後、目開き710μm及び175μmの金属篩網を有する篩い分け装置で篩い分けすることにより、175〜710μmの吸水性樹脂粉体(1−8)を得た。
【0344】
得られた吸水性樹脂粉体(1−8)100重量部に対して、1,4−ブタンジオール0.3重量部、プロピレングリコール0.6重量部、及び脱イオン水3.0重量部の混合液からなる表面架橋剤を均一に混合した後、混合物を208℃で40分間加熱処理することにより、表面架橋吸水性樹脂粉体(1−8)を得た。
【0345】
得られた表面架橋吸水性樹脂粉体(1−8)を冷却した後、表面架橋吸水性樹脂粉体(1−8)100重量部に対して、30重量%亜硫酸水素ナトリウム水溶液1.66重量部及び硫酸アルミニウム水溶液(酸化アルミニウム換算で8重量%)0.9重量部、60重量%乳酸ナトリウム水溶液0.50重量部、及びプロピレングリコール0.04重量部からなる混合液1.44重量部を均一添加し混合することで粒子状吸水剤前駆体(1−8)を得た。次いで、得られた粒子状吸水剤前駆体(1−8)を60℃の熱風乾燥機中に30分間放置し、その後、目開き710μmのJIS標準篩を通過させることで、粒子状吸水剤(1−8)を得た。得られた粒子状吸水剤(1−8)の物性を表1に記載する。
【0346】
[実施例1−9]
実施例1−8記載の精製アクリル酸(1−8)にp−メトキシフェノールを200ppm加えることで調整アクリル酸(1−9)を得た。
【0347】
調整アクリル酸(1−8)に代えて調整アクリル酸(1−9)を使用したこと以外は、実施例1−8と同様に重合から表面架橋処理を行うことで表面架橋吸水性樹脂粉体(1−9)を得た。
【0348】
得られた表面架橋吸水性樹脂粉体(1−9)を冷却した後、表面架橋吸水性樹脂粉体(1−9)100重量部に対して、30重量%亜硫酸水素ナトリウム水溶液1.66重量部を添加混合し、粒子状吸水剤前駆体(1−9)を得た。次いで、得られた粒子状吸水剤前駆体(1−9)を60℃の熱風乾燥機中に30分間放置し、その後、目開き710μmのJIS標準篩を通過させることで、粒子状吸水剤(1−9)を得た。得られた粒子状吸水剤(1−9)の含水率は1.8重量%であった。得られた粒子状吸水剤(1−9)の物性を表1に記載する。
【0349】
[比較例1−1]
キレート剤を使用せず、また、30重量%亜硫酸水素ナトリウム水溶液の添加量を1.66重量部から0.166重量部に変更したこと以外は実施例1−1に記載の方法と同様にして比較粒子状吸水剤(1−1)を得た。得られた比較粒子状吸水剤(1−1)の物性を表1に記載する。
【0350】
[比較例1−2]
30重量%亜硫酸水素ナトリウム水溶液を使用しなかったこと以外は、実施例1−1記載の方法と同様にして比較粒子状吸水剤(1−2)を得た。得られた比較粒子状吸水剤(1−2)の物性を表1に記載する。
【0351】
[比較例1−3]
比較例1−2で得られた比較粒子状吸水剤(1−2)100重量部に対して、硫酸アルミニウム水溶液(酸化アルミニウム換算で8重量%)0.9重量部、60重量%乳酸ナトリウム水溶液0.30重量部、及びプロピレングリコール0.02重量部からなる混合液1.22重量部を均一に混合することで、比較粒子状吸水剤前駆体(1−3)を得た。
【0352】
次いで、得られた比較粒子状吸水剤前駆体(1−3)を60℃の熱風乾燥機中に30分間放置し、その後、目開き710μmのJIS標準篩を通過させることで、比較粒子状吸水剤(1−3)を得た。得られた比較粒子状吸水剤(1−3)の物性を表1に記載する。
【0353】
[比較例1−4]
実施例1−1記載のアクリル酸中p−メトキシフェノールの含有量を70ppmから270ppmに変更したこと以外は、実施例1−1と同様にして得られた比較表面架橋吸水性樹脂粉体(1−4)100重量部に対して、30重量%亜硫酸水素ナトリウム水溶液0.166重量部を均一に添加混合し、比較粒子状吸水剤前駆体(1−4)を得た。次いで、得られた比較粒子状吸水剤前駆体(1−4)を60℃の熱風乾燥機中に30分間放置し、その後、目開き710μmのJIS標準篩を通過させることで、比較粒子状吸水剤(1−4)を得た。得られた比較粒子状吸水剤(1−4)の物性を表1に記載する。
【0354】
[比較例1−5]
特許文献29やその実施例4、5を参照してキレート剤の多い比較例を示す。すなわち、1重量%ジエチレントリアミン5酢酸3ナトリウム(略称:DTPA・3Na)水溶液の添加量を0.22重量部から25.8重量部に、脱イオン水の添加量を33.6重量部から8.0重量に変更し、更に30重量%亜硫酸水素ナトリウム水溶液の添加量を1.66重量部から3.33重量部に変更したこと以外は、実施例1−1と同様の操作を行い、キレート剤6000ppmおよび無機還元剤1.0重量%を含む比較粒子状吸水剤(1−5)を得た。得られた比較粒子状吸水剤(1−5)の含水率は1.9重量%であった。得られた比較粒子状吸水剤(1−5)の物性を表1に記載する。
【0355】
[実施例1−10]
実施例1−7における調整アクリル酸を、実施例1−9記載の調整アクリル酸(1−9)に変更したこと以外は、実施例1−7と同様にすることで粒子状吸水剤(1−10)を得た。得られた粒子状吸水剤(1−10)の物性を表1に記載する。
【0356】
[実施例1−11]
実施例1−7記載の調整アクリル酸を、実施例1−8記載の調整アクリル酸(1−8)に変更したこと以外は、実施例1−7と同様にすることで粒子状吸水剤(1−11)を得た。得られた粒子状吸水剤(1−11)の物性を表1に記載する。
【0357】
[実施例1−12]
31重量%エチレンジアミンテトラ(メチレンホスホン酸)5ナトリウム(略称:EDTMPA・5Na)水溶液の添加量を0.03重量部から0.07重量部に変更したこと以外は、実施例1−11と同様にすることで粒子状吸水剤(1−12)を得た。得られた粒子状吸水剤(1−12)の物性を表1に記載する。
【0358】
[実施例1−13]
実施例1−1記載の粒子状吸水剤(1−1)に対して耐候性試験を行った結果得られた劣化率を表2に記載する。
【0359】
[比較例1−6]
実施例1−1記載のp−メトキシフェノールの含有量を70ppmに調整したアクリル酸に代えて、実施例1−8で得られたp−メトキシフェノールがNDの精製アクリル酸(1−8)にp−メトキシフェノールを1ppm加えることで得られた比較調整アクリル酸(1−6)を使用したこと以外は実施例1−1に記載の方法を同様に重合を行い、比較粒子状吸水剤(1−6)を得た。得られた比較粒子状吸水剤(1−6)のp−メトキシフェノールはND(1ppm未満)であった。得られた比較粒子状吸水剤(1−6)を用いて耐候性試験を行った結果を表2に記載する。
【0360】
[実施例1−14]
粒子状吸水剤(1−1)、(1−8)、(1−9)の残存p−メトキシフェノール、残存キレート剤、残存亜硫酸水素ナトリウムを測定した結果を表3に記載する。
【0361】
[比較例1−7]
比較粒子状吸水剤(1−4)、(1−5)の残存p−メトキシフェノール、残存キレート剤、残存亜硫酸水素ナトリウムを測定した結果を表3に記載する。
【0362】
【表1】
【0363】
【表2】
【0364】
【表3】
【0365】
[比較例1−8]
前述のように、特許文献17(欧州特許第1645596号明細書)は水不溶性無機微粒子、特定量のp−メトキシフェノール、特定含水率(3〜15重量%)を開示しない。また特許文献17は有機酸化防止剤として(ブチルなどの)アルキルヒドロキシアニソールなどを開示(段落〔0019〕〔実施例6〕)する。そこで、本発明の有意性を示すために、特許文献17およびその対応の日本国登録特許第3940103号公報の実施例6に準じて、比較粒子状吸水剤(1−8)を得た。
【0366】
具体的には、容量2Lのポリエチレン容器に、上記登録特許公報の製造例で得られた吸水性樹脂100重量部、亜硝酸ナトリウム3重量部、ヒドロキシエチレンジアミン三酢酸三ナトリウム(粒子径106μm以下の粒子の割合が89重量%のもの)1.5重量部及び特許文献17で開示のブチルヒドロキシアニソール1重量部を仕込み、攪拌翼を備えた混合機で1時間混合して、比較粒子状吸水剤(1−8)を得た。
【0367】
得られた比較粒子状吸水剤(1−8)1.0gに0.9重量%塩化ナトリウム水溶液(別称;生理食塩水)19.0gを加え、20倍に膨潤させた。次いで、該膨潤させた比較粒子状吸水剤(1−8)を容量120mlの蓋付きプラスチック製容器に入れ、雰囲気温度37℃のオーブン中に3時間放置することで、膨潤比較粒子状吸水剤(1−8)を得た。特許文献17に準じて得られた比較粒子状吸水剤(1−8)の20倍膨潤ゲルは黄色に着色していた。
【0368】
引き続いて、該比較粒子状吸水剤(1−8)の20倍膨潤ゲルの色調(初期色調)をHunter Lab社製LabScanXEを使用して測定した。測定結果を表4に示す。
【0369】
尚、色調測定は、直径5.0cm、高さ1.2cmの白色プロピレン製容器に被検物質を充填させて行った。また、ブランクとして前述の白色プロピレン製容器の色調は、L値:54.73、a値:0.16、b値:−0.50であった。
【0370】
更に、特許文献17(ブチルヒドロキシアニソール1重量部)に準じた比較粒子状吸水剤(1−8)の粉末について、実施例1−1〜1−12およびその表2と同様に、7日間着色促進試験(70℃、RH65%)を行ったが、本発明の粒子状吸水剤は実質白色を維持するのに対して、比較粒子状吸水剤(1−8)は橙色に着色していた。同様に色調(経時色調)を測定した。測定結果を表5に示す。また、7日間着色促進試験後の比較粒子状吸水剤(1−8)は異臭を放っていた。
【0371】
[実施例1−15]
実施例1−1で得られた粒子状吸水剤(1−1)について、比較例1−8と同様の操作を行うことで、粒子状吸水剤(1−1)の20倍膨潤ゲル(1−15)を得た。得られた膨潤粒子状吸水剤(1−15)は、特許文献17(ブチルヒドロキシアニソール1重量部)に準じた上記比較粒子状吸水剤(1−8)の20倍膨潤ゲルが黄色に変色するのに対して、粒子状吸水剤(1−1))の20倍膨潤ゲル(1−15)は、透明な含水ゲルのままであった。
【0372】
該粒子状吸水剤(1−1)の20倍膨潤ゲル(1−15)の色調についても、比較例1−8と同様に測定した。測定結果を表4に示す。
【0373】
[実施例1−16]
実施例1−1で得られた含水率1.8重量%の粒子状吸水剤(1−1)について、吸水速度(FSR)を測定したところ、0.23[g/g/sec]であった。含水率の影響を調べるため、粒子状吸水剤(1−1)に水10重量%を添加して、さらに80℃で減圧乾燥することで、含水率3.9重量%の粒子状吸水剤(1−15)を得た。
【0374】
上記得られた含水率3.9重量%の粒子状吸水剤(1−15)の吸水速度(FSR)は、0.27[g/g/sec]であり、含水率を向上、特に含水率3〜15重量%とすることで、吸水剤の吸水速度が向上することがわかる。以下、含水率3〜15重量%とする吸水剤の製造方法について、実施例3−1〜実施例3−13で述べる。
【0375】
【表4】
【0376】
【表5】
【0377】
(まとめ)
上記実施例1−1〜1−16および表1〜表5は、本発明の粒子状吸水剤の製造方法その1に関するものであり、メトキシフェノール類を10〜200ppm含有するアクリル酸(塩)を主成分とする単量体水溶液の重合工程と、重合で得られた含水ゲル状架橋重合体の乾燥工程と、表面架橋工程と、キレート剤0.001〜0.5重量%の添加工程を含む粒子状吸水剤の製造方法であって、表面架橋工程後に、無機還元剤の添加工程を行うことを特徴とする、粒子状吸水剤の製造方法である。
【0378】
上記実施例1−1〜1−13にあるように、本発明に係る吸水剤は、経時色調及び初期色調に優れ、表面架橋工程後に、無機還元剤の添加工程を行うことで、3重量%未満の低含水率や高温表面架橋(150〜250℃)で3重量%未満の低含水率であっても、得られた吸水剤には不快な臭気がなかった。かかる臭気は単純に使用原料(特に無機還元剤)の臭気というより、吸水性樹脂と無機還元剤と製造工程での複合的な臭気であり、発生が予期できなかったが、本発明ではかかる新たな課題を見いだし、それを上記に解決した。また、キレート剤及び無機還元剤の何れか一方のみ含有する比較例1−1〜1−3では、メトキシフェノール量が5〜60ppmの範囲内であっても経時色調が悪かった。メトキシフェノール量が5〜60ppmの範囲外である比較例1−4(吸水剤中に82ppm)、比較例1−6(アクリル酸で1ppmで、得られた吸水剤中にND)では経時色調が悪い、又は耐候性(表2の促進試験後可溶分参照)が悪い。また、特許文献29は本発明の特定含水率(3〜15重量%)はおろか、リン原子を含む化合物または硫黄系還元剤の特定添加量(0.001〜0.5重量%であり、0.001〜0.1重量%)を開示せず、特許文献29の実施例5では1−ヒドロキシエチリデン−1,1−ジホスホン酸1.0重量%の添加、実施例4では同じく1−ヒドロキシエチリデン−1,1−ジホスホン酸合計2.0重量%の使用を開示するが、比較例1−5に示すように、かかる0.5重量%を超えるキレート剤の使用例は得られた吸水剤の着色にかえって悪影響を与えることを見いだし、それを特定範囲への含水率制御で解決した。さらに、実施例1−16に示すように、吸水剤中の特定水分量は吸水速度の向上からも好ましい。
【0379】
すなわち、上記実施例に示すように、本発明の新規な吸水剤は、ポリアクリル酸(塩)系吸水性樹脂を主成分とする粒子状吸水剤であって、キレート剤と、無機還元剤とを含み、当該キレート剤の含有量が0.001〜0.5重量%であり、メトキシフェノール類の含有量が5〜60ppmである。上記実施例に示す本発明の新規な吸水剤は、好ましくは、無加圧下吸収倍率(CRC)が25[g/g]以上、加圧下吸水倍率(AAP4.83kPa)が20[g/g]以上で、食塩水流れ誘導性(SFC)が30[×10
−7・cm
3・s・g
−1]以上である。なお、表には記載しないが、かかる吸水剤はFSRが0.25前後(±0.02)[g/g/sec]の範囲であり、また、残存モノマーも400ppm以下、重量平均粒子径(D50)も約360〜380μmであった。また、かかる吸水剤は好ましくはα−ヒドロキシカルボン酸化合物を更に含む。また、多価金属塩及び/又はカチオン性ポリマーを更に含む。これら吸水剤は初期および経時の着色もなく白色で通液性(SFC)や加圧下吸収倍率(AAP)も高いため、パルプの少ない高濃度の紙オムツに使用しても高い液拡散と少ない戻り量(Re−wet)の、吸水剤由来の着色問題もなく、良好な紙オムツを提供する。
【0380】
[実施例2−1]
2本のシグマ型ブレードを備えたニーダー中、鉄分を0.7ppm含有するNaOHで中和したアクリル酸ナトリウム、アクリル酸及び水からなる、モノマーの濃度が38重量%、中和率が75モル%の単量体水溶液を調製した。尚、アクリル酸は、p−メトキシフェノールの含有量を70ppmに調整したものを用いた。この単量体水溶液に、内部架橋剤として、ポリエチレングリコールジアクリレート(平均エチレングリコールユニット数:9)を0.045モル%(対モノマー)となるように溶解させた。
【0381】
次いで、上記単量体水溶液に窒素ガスを吹き込み、該単量体水溶液中の溶存酸素を低減するとともに、反応容器内全体を窒素置換した。引き続き、2本のシグマ型ブレードを回転させながら単量体水溶液の温度を22℃に調整した後に、重合開始剤として過硫酸ナトリウムを0.12[g/mol](対モノマー)、L−アスコルビン酸を0.005[g/mol](対単量体)となるように添加した。
【0382】
直ちに重合が開始してモノマー水溶液が白濁したため、ブレードの回転を停止した。重合温度が50℃に達した後、ブレードを再び回転させ、ニーダー内で攪拌下重合を続け、約50分後に重量平均粒子径が約2mmの含水ゲル状架橋重合体(2−1)を得た。
【0383】
得られた含水ゲル状架橋重合体(2−1)を、170℃で約60分間熱風乾燥機にて乾燥させた。次いで、乾燥物をロールミル粉砕機にて粉砕し、目開き850μmと150μmの篩いで分級(篩いの上下を除去)し、含水率3重量%、重量平均粒子径370μmの吸水性樹脂粒子(2−1)を得た。得られた吸水性樹脂粒子(2−1)は、その粒子径が850μm以上の粒子は実質的に含まれておらず、かつ150μm未満の微紛が2重量%含まれていた。
【0384】
得られた吸水性樹脂粒子(2−1)100重量部に対して、エチレングリコールジグリシジルエーテル0.025重量部、1,4−ブタンジオール0.3重量部、プロピレングリコール0.5重量部、脱イオン水3.0重量部の混合液からなる表面架橋剤を均一に混合した後、混合物を208℃で40分間加熱処理することにより、表面架橋吸水性樹脂粉体(2−1)を得た。
【0385】
得られた表面架橋吸水性樹脂粉体(2−1)を冷却した後、表面架橋吸水性樹脂粉体(2−1)100重量部に対して、30重量%亜硫酸水素ナトリウム水溶液1.66重量部及び45重量%ジエチレントリアミン5酢酸ナトリウム水溶液0.44重量部を添加混合し、粒子状吸水剤前駆体(2−1)を得た。次いで、得られた粒子状吸水剤前駆体(2−1)を60℃の熱風乾燥機中に30分間放置し、その後、目開き810μmのJIS標準篩を通過させた。更に、表面架橋吸水性樹脂粉体(2−1)100重量部に対して、白色の水不溶性無機微粒子としてシリカ(商品名:アエロジル200CF−5、日本アエロジル株式会社製)0.3重量部を添加混合することで、粒子状吸水剤(2−1)を得た。得られた粒子状吸水剤(2−1)の物性を表6に記載する。なお、シリカのL、a、bは、それぞれ93.6、−0.8、−3.6であり、吸水性樹脂より白色であった。
【0386】
[実施例2−2]
実施例2−1における、表面架橋吸水性樹脂粉体(2−1)100重量部に対するシリカの添加量を0.3重量部から1.0重量部に変更したこと以外は、実施例2−1と同様にして粒子状吸水剤(2−2)を得た。得られた粒子状吸水剤(2−2)の物性を表6に記載する。
【0387】
[実施例2−3]
実施例2−1における、表面架橋吸水性樹脂粉体(2−1)100重量部に対するシリカの添加量を0.3重量部から0.5重量部に変更したこと以外は、実施例2−1と同様にして粒子状吸水剤(2−3)を得た。得られた粒子状吸水剤(2−3)の物性を表6に記載する。
【0388】
[実施例2−4]
実施例2−1における、表面架橋吸水性樹脂粉体(2−1)100重量部に対するシリカの添加量を0.3重量部から0.05重量部に変更したこと以外は、実施例2−1と同様にして粒子状吸水剤(2−4)を得た。得られた粒子状吸水剤(2−4)の物性を表6に記載する。
【0389】
[実施例2−5]
実施例2−1における、表面架橋吸水性樹脂粉体(2−1)100重量部に対する45重量%ジエチレントリアミン5酢酸ナトリウム水溶液の添加量を0.44重量部から0.022重量部に変更したこと以外は、実施例2−1と同様にして粒子状吸水剤(2−5)を得た。得られた粒子状吸水剤(2−5)の物性を表6に記載する。
【0390】
[実施例2−6]
実施例2−1における、表面架橋吸水性樹脂粉体(2−1)100重量部に対する45重量%ジエチレントリアミン5酢酸ナトリウム水溶液の添加量を0.44重量部から2.2重量部に変更したこと以外は、実施例2−1と同様にして粒子状吸水剤(2−6)を得た。得られた粒子状吸水剤(2−6)の物性を表6に記載する。
【0391】
[実施例2−7]
p−メトキシフェノールの含有量を70ppmに調整したアクリル酸36.8重量部、48重量%水酸化ナトリウム水溶液12.2重量部、ポリエチレングリコールジアクリレート(平均エチレンオキサイドユニット数:n=9)0.08重量部、1重量%ジエチレントリアミン5酢酸3ナトリウム(略称:DTPA・3Na)水溶液0.42重量部、及び脱イオン水30.3重量部の組成からなる単量体水溶液(2−2)を作製した。
【0392】
次に、40℃に調整した上記単量体水溶液(2−2)を、定量ポンプを用いて連続的に重合工程へ供給した。ベルト重合機に導入する前に、48重量%水酸化ナトリウム水溶液18.5重量部をラインミキシングにて連続混合した。この時、中和熱によって、モノマー温度は86℃まで上昇した。次いで、4重量%過硫酸ナトリウム水溶液1.66重量部をラインミキシングにて連続混合し、得られた連続混合物(2−2)を、両端に堰を有する平面ベルト上に、厚さ約7.5mmとなるように供給した。連続的に3分間重合を行い、含水ゲル状架橋重合体(2−2)を得た。
【0393】
次に、上記の含水ゲル状架橋重合体(2−2)を孔径22mmのミートチョッパーで約1.5mmに細分化した。この細分化されたゲルを、連続通風バンド乾燥機の移動する多孔板上に広げて載せ、185℃で30分間乾燥し、乾燥重合体(2−2)を得た。得られた乾燥重合体(2−2)をロールミルで粉砕した後、目開き850μmと150μmの篩いで分級(篩いの上下を除去)し、含水率3重量%、重量平均粒子径370μmの吸水性樹脂粒子(2−2)を得た。得られた吸水性樹脂粒子(2−2)は、その粒子径が850μm以上の粒子は実質的に含まれておらず、かつ150μm未満の微紛が2重量%含まれていた。
【0394】
得られた吸水性樹脂粒子(2−2)100重量部に対して、1,4−ブタンジオール0.3重量部、プロピレングリコール0.5重量部、及び脱イオン水3.0重量部の混合液からなる表面架橋剤を均一に混合した後、混合物を208℃で40分間加熱処理することにより、表面架橋吸水性樹脂粉体(2−2)を得た。
【0395】
得られた表面架橋吸水性樹脂粉体(2−2)を冷却した後、表面架橋吸水性樹脂粉体(2−2)100重量部に対して、30重量%亜硫酸水素ナトリウム水溶液1.66重量部及び45重量%ジエチレントリアミン5酢酸ナトリウム水溶液0.44重量部を添加混合し、粒子状吸水剤前駆体(2−2)を得た。次いで、得られた粒子状吸水剤前駆体(2−2)を60℃の熱風乾燥機中に30分間放置し、その後、目開き810μmのJIS標準篩を通過させた。更に、表面架橋吸水性樹脂粉体(2−2)100重量部に対して、シリカ(商品名:アエロジル200CF−5、日本アエロジル株式会社製)0.3重量部を添加混合することで、粒子状吸水剤(2−7)を得た。得られた粒子状吸水剤(2−7)の物性を表6に記載する。
【0396】
[実施例2−8]
実施例2−1における、表面架橋吸水性樹脂粉体(2−1)100重量部に対する30重量%亜硫酸水素ナトリウム水溶液の添加量を1.66重量部から0.22重量部に変更したこと以外は、実施例2−1と同様にして粒子状吸水剤(2−8)を得た。得られた粒子状吸水剤(2−8)の物性を表6に記載する。
【0397】
[実施例2−9]
実施例2−1における、表面架橋吸水性樹脂粉体(2−1)100重量部に対する30重量%亜硫酸水素ナトリウム水溶液の添加量を1.66重量部から22重量部に変更したこと以外は、実施例2−1と同様にして粒子状吸水剤(2−9)を得た。得られた粒子状吸水剤(2−9)の物性を表6に記載する。
【0398】
[実施例2−10]
実施例2−1における表面架橋吸水性樹脂粉体(2−1)100重量部に対して、更に、水3重量部を添加したこと以外は、実施例2−1と同様にして粒子状吸水剤(2−10)を得た。得られた粒子状吸水剤(2−10)の物性を表6に記載する。
【0399】
[実施例2−11]
実施例2−1における表面架橋吸水性樹脂粉体(2−1)100重量部に対して、更に、50重量%硫酸アルミニウム水溶液1.8重量部、60%乳酸ナトリウム水溶液0.55重量部、及びプロピレングリコール0.05重量部の混合溶液を添加したこと以外は、実施例2−1と同様にして粒子状吸水剤(2−11)を得た。得られた粒子状吸水剤(2−11)の物性を表6に記載する。
【0400】
[実施例2−12]
実施例2−1における、ポリエチレングリコールジアクリレート(平均エチレングリコールユニット数:9)の添加量を0.035モル%(対単量体)から0.023モル%とし、吸水性樹脂粒子(2−1)の重量平均粒子径が350μmとなるように分級を行い、更に、表面架橋工程における加熱処理条件を208℃で40分から200℃で35分に変更したこと以外は、実施例2−1と同様にして粒子状吸水剤(2−12)を得た。得られた粒子状吸水剤(2−12)の物性を表6に記載する。
【0401】
[比較例2−1]
45重量%ジエチレントリアミン5酢酸ナトリウム水溶液0.22重量部の添加を行わなかったこと以外は、実施例2−1記載の方法と同様にして比較粒子状吸水剤(2−1)を得た。得られた比較粒子状吸水剤(2−1)の物性を表6に記載する。
【0402】
[比較例2−2]
30重量%亜硫酸水素ナトリウム水溶液1.66重量部の添加を行わなかったことと、シリカの添加量を0.3重量部から0.5重量部に変更したこと以外は、実施例2−1記載の方法と同様にして比較粒子状吸水剤(2−2)を得た。得られた比較粒子状吸水剤(2−2)の物性を表6に記載する。
【0403】
[比較例2−3]
シリカ(商品名:アエロジル200CF−5、日本アエロジル株式会社製)0.5重量部の添加を行わなかったこと以外は、比較例2−2と同様にして比較粒子状吸水剤(2−3)を得た。得られた比較粒子状吸水剤(2−3)の物性を表6に記載する。
【0404】
[実施例2−13]
実施例2−1において、シリカ(商品名:アエロジル200CF−5、日本アエロジル株式会社製)0.3重量部を添加しなかった以外、実施例2−1と同様に行い、粒子状吸水剤(2−13)を得た。得られた粒子状吸水剤(2−13)の物性を表6に記載する。
【0405】
実施例2−1のAAP(28[g/g])から31[g/g](実施例2−13)に向上したが、逆に、Vortex(吸水速度)は50秒(実施例2−1)から64秒(実施例2−13)に低下し、さらに、耐尿性(劣化成分が1000倍量)が”流動あり(実施例2−13)”となった。特許文献17などに開示のない、水不溶性無機微粒子が耐尿性や吸水速度(Vortex)に重要であることが分かる。
【0406】
[実施例2−14]
実施例2−1において、重合時のアクリル酸にp−メトキシフェノールを添加しなかった以外、実施例2−1と同様に行い、粒子状吸水剤(2−14)を得た。得られた粒子状吸水剤(2−14)の物性を表6に記載する。実施例2−1(アクリル酸にp−メトキシフェノールが70ppm)の劣化率17.6%に対して、実施例2−1(アクリル酸に0ppmで、吸水剤中に0ppm)では劣化率27.3%であり、表2と同様に、p−メトキシフェノールが本願を満たさない場合、耐候性が低下した。尚、この結果を表7に示す。特許文献17などに開示のない、微量のp−メトキシフェノールが耐候性に重要であることが分かる。
【0407】
【表6】
【0408】
【表7】
【0409】
(まとめ)
実施例2−1〜2−14および表6〜7は、本発明の粒子状吸水剤の製造方法その2に関するものであり、アクリル酸(塩)を主成分とする単量体水溶液の重合工程と、重合で得られた含水ゲル状架橋重合体の乾燥工程と、表面架橋工程とを含む、ポリアクリル酸(塩)系吸水性樹脂を主成分とする粒子状吸水剤の製造方法であって、キレート剤0.001〜0.5重量%の添加工程と無機還元剤の添加工程とを更に含み、単量体がメトキシフェノール類を対アクリル酸換算で10〜200ppm含有し、(a)水不溶性無機微粒子の添加工程を更に含む、粒子状吸水剤の製造方法(第2の製造方法)である。
【0410】
上記実施例2−1〜2−12にあるように、本発明に係る吸水剤は、経時着色防止性、耐尿性、吸収速度に優れる。キレート剤及び無機還元剤の何れか一方のみ添加した比較例2−1〜2−3では、経時色調が悪い。水不溶性無機微粒子及びキレート剤の何れか一方のみ添加した、比較例2−1と2−3は、耐尿性が悪い。また、水不溶性無機微粒子(シリカ)を含まない比較例2−3は吸収速度も遅い。含水率に関して、実施例2−10の含水率4.1重量%ではダスト量6mgであり、実施例2−1の含水率2.0重量%でのダスト量21mg、比較例2−3の含水率1.7%でのダスト量40mgに比べて、含水率3.0重量%以上では飛躍的にダスト量が低減する。
【0411】
以上、上記の実施例に示される本発明の新規な吸水剤(第2の吸水剤)は、ポリアクリル酸(塩)系吸水性樹脂を主成分とする粒子状吸水剤であって、キレート剤と、無機還元剤とを含み、当該キレート剤の含有量が0.001〜0.5重量%であり、水不溶性無機微粒子を含有する。上記実施例のかかる本発明の新規な吸水剤は、好ましくは、無加圧下吸収倍率(CRC)が25[g/g]以上、加圧下吸水倍率(AAP2.0kPa)が25[g/g]以上で、Vortex(吸水速度)が60秒以下である。かかる吸水剤はメトキシフェノール類(特にp−メトキシフェノール)の含有は任意であるが、上記(1)および本発明の新規な吸水剤(第1の吸水剤)と同様に5〜60ppmの範囲(上記実施例では約10ppm前後)とされ、耐候性および着色がさらに改善される。本発明の新規な吸水剤(第2の吸水剤)は第1の吸水剤と同様に含水率が3重量%未満でもよいが、好ましくは(3)を満たし、3〜15重量%の範囲である。これら吸水剤は初期および経時の着色もなく白色で吸水速度(Vortex)も高く、加圧下吸収倍率(AAP)も高いため、パルプの少ない高濃度の紙オムツに使用しても高い液拡散と少ない戻り量(Re−wet)の、吸水剤の由来の着色の問題もなく、良好な紙オムツを提供する。
【0412】
[製造例3−1]
気相接触酸化で得られた市販のアクリル酸(和光純薬、試薬特級;p−メトキシフェノール200ppm含有)を、無堰多孔板50段を有する高沸点不純物分離塔の塔底に供給して、還流比を1として蒸留し、更に再蒸留することで、アクリル酸99%以上及び微量の不純物(主に水)からなる精製アクリル酸(3−1)を得た。精製アクリル酸(3−1)中のp−メトキシフェノール量はND(1ppm未満)であった。NDとは、精製アクリル酸(3−1)に対する含有割合が1ppm未満であることを意味する。
【0413】
精製アクリル酸(3−1)にp−メトキシフェノールを70ppm加えることで調整アクリル酸(3−1)を得た。
【0414】
[比較例3−1]
シグマ型羽根を2本有する内容積10リットルのジャケット付きステンレス型双腕型ニーダーに蓋を付けて形成した反応器中で、製造例3−1で得られた調整アクリル酸(3−1)408.4g、製造例3−1で得られた調整アクリル酸(3−1)を純水で希釈し、水酸化ナトリウム水溶液(鉄分含有量0.7ppm(対NaOH固形分))で中和することで得られた37重量%アクリル酸ナトリウム水溶液4321.9g、純水724.2g、及びポリエチレングリコールジアクリレート(分子量523)4.74gを溶解させて反応液とした。
【0415】
次にこの反応液を窒素ガス雰囲気下で、30分間脱気した。続いて、反応液に10重量%過硫酸ナトリウム水溶液29.5g及び0.1重量%L−アスコルビン酸水溶液11.3gを攪拌しながら添加したところ、およそ25秒後に重合が開始した。そして、生成したゲルを粉砕しながら、25℃以上95℃以下で重合を行い、重合が開始して30分後に含水ゲル状架橋重合体(C1−a)を取り出した。得られた含水ゲル状架橋重合体は、その径が約5mm以下に細分化されていた。尚、含水ゲル状架橋重合体(C1−a)の固形分量(180℃、3時間での乾燥減量より算出)は37.5重量%であった。
【0416】
含水ゲル状架橋重合体(C1−a)を50メッシュの金網上に広げ、170℃で65分間熱風乾燥を行い、乾燥物をロールミルを用いて粉砕し、さらに目開き850μmのJIS標準篩で分級、調合することにより、重量平均粒子径(D50)371μm、粒度分布の対数標準偏差(σζ)0.34の不定形破砕状の吸水性樹脂粒子(C1−c)を得た。吸水性樹脂粒子(C1−c)の遠心分離機保持容量(CRC)は46(g/g)、水可溶分は18重量%であった。
【0417】
得られた吸水性樹脂粒子(C1−c)100重量部にエチレングリコールジグリシジルエーテル0.027重量部、1,4−ブタンジオール0.3重量部、1,2−プロピレングリコール0.5重量部、及び純水2.8重量部の混合液からなる表面架橋剤を均一に混合した後、混合物を180℃で60分間加熱処理した。その後、得られた粒子を目開き850μmのJIS標準篩を通過するまで解砕し、表面が架橋された比較粒子状吸水剤(3−1)を得た。比較粒子状吸水剤(3−1)の分析結果を表8及び表9に記載する。
【0418】
[実施例3−1]
比較例3−1と同様に重合することで、含水ゲル状架橋重合体(1−a)を得た。0.375重量%亜硫酸水素ナトリウム水溶液をフィード速度30[g/min]で添加しながら、得られた含水ゲル状重合体(1−a)をフィード速度600[g/min]でミートチョッパー(MEAT−CHOPPER TYPE:12VR−400KSOX 飯塚工業株式会社、ダイ孔径:11mm、孔数:10、ダイ厚み8mm)で再粉砕し、含水ゲル状架橋重合体(1−a)に亜硫酸水素ナトリウム水溶液を均一に混合(還元剤で500ppm)することによって、細分化された含水ゲル状架橋重合体(1−b)を得た。
【0419】
この細分化された含水ゲル状架橋重合体(1−b)を50メッシュの金網上に広げ、170℃で65分間熱風乾燥を行い、乾燥物をロールミルを用いて粉砕し、さらに目開き850μmのJIS標準篩で分級、調合することにより、重量平均粒子径(D50)371μm、粒度分布の対数標準偏差(σζ)0.34の不定形破砕状の吸水性樹脂粒子(1−c)を得た。吸水性樹脂粒子(1−c)の遠心分離機保持容量(CRC)は46(g/g)、水可溶分は18重量%であった。
【0420】
得られた吸水性樹脂粒子(1−c)100重量部にエチレングリコールジグリシジルエーテル0.020重量部、1,2−プロピレングリコール1.5重量部、純水3.5重量部の混合液からなる表面架橋剤を均一に混合した後、混合物をステンレス製バットに均一に広げ、ポリエチレン製のバックでバット全体を密閉し、100℃で40分間加熱処理した。その後、得られた粒子を目開き850μmのJIS標準篩を通過するまで解砕し、表面が架橋された吸水性樹脂粒子(1−d)を得た。
【0421】
得られた吸水性樹脂粒子(1−d)100重量部に0.5重量%エチレンジアミンテトラ(メチレンホスホン酸)5ナトリウム(略称:EDTMPA・5Na)水溶液を1.0重量部添加混合し、粒子状吸水剤(3−1)を得た。粒子状吸水剤(3−1)の分析結果を表8及び表9に記載する。
【0422】
[実施例3−2]
0.375重量%亜硫酸水素ナトリウム水溶液のフィード速度を30[g/min]から12[g/min]に変更したこと以外は実施例3−1と同様にして、粒子状吸水剤(3−2)を得た。粒子状吸水剤(3−2)の分析結果を表8及び表9に記載する。
【0423】
[実施例3−3]
0.5重量%エチレンジアミンテトラ(メチレンホスホン酸)5ナトリウム(略称:EDTMPA・5Na)水溶液を2.5重量%%エチレンジアミンテトラ(メチレンホスホン酸)5ナトリウム(略称:EDTMPA・5Na)水溶液に変更し、その添加量を、吸水性樹脂粒子100重量部に対して2.0重量部としたこと以外は実施例3−1と同様にして、吸水性樹脂粒子(3−e)を得た。得られた吸水性樹脂粒子(3−e)100重量部にシリカゲル(商品名:アエロジル200、日本アエロジル社製)を0.3重量部添加混合することで、粒子状吸水剤(3−3)を得た。粒子状吸水剤(3−3)の分析結果を表8及び表9に記載する。
【0424】
[実施例3−4]
0.5重量%エチレンジアミンテトラ(メチレンホスホン酸)5ナトリウム(略称:EDTMPA・5Na)水溶液を2.5重量%エチレンジアミンテトラ(メチレンホスホン酸)5ナトリウム(略称:EDTMPA・5Na)水溶液に変更し、その添加量を、吸水性樹脂粒子100重量部に対して4.0重量部としたこと以外は実施例3−1と同様にして、粒子状吸水剤(3−4)を得た。粒子状吸水剤(3−4)の分析結果を表8及び表9に記載する。
【0425】
[実施例3−5]
0.375重量%亜硫酸水素ナトリウム水溶液の濃度を0.1重量%に変更し、そのフィード速度を30[g/min]から22.5[g/min]に変更し、0.5重量%エチレンジアミンテトラ(メチレンホスホン酸)5ナトリウム(略称:EDTMPA・5Na)水溶液を2.5重量部エチレンジアミンテトラ(メチレンホスホン酸)5ナトリウム(略称:EDTMPA・5Na)水溶液に変更し、その添加量を、吸水性樹脂粒子100重量部に対して2.0重量部としたこと以外は実施例3−1と同様にして、粒子状吸水剤(3−5)を得た。粒子状吸水剤(3−5)の分析結果を表8及び表9に記載する。
【0426】
[実施例3−6]
0.375重量%亜硫酸水素ナトリウム水溶液のフィード速度を30[g/min]から60[g/min]に変更し、0.5重量%エチレンジアミンテトラ(メチレンホスホン酸)5ナトリウム(略称:EDTMPA・5Na)水溶液の添加量を、吸水性樹脂粒子100重量部に対して4.0重量部へと変更したこと以外は実施例3−1と同様にして、粒子状吸水剤(3−6)を得た。粒子状吸水剤(3−6)の分析結果を表8及び表9に記載する。
【0427】
[実施例3−7]
0.375重量%亜硫酸水素ナトリウム水溶液の濃度を3.75重量%に変更し、そのフィード速度を60[g/min]から30[g/min]に変更したこと以外は実施例3−6と同様にして、粒子状吸水剤(3−7)を得た。粒子状吸水剤(3−7)の分析結果を表8及び表9に記載する。
【0428】
[実施例3−8]
3.75重量%亜硫酸水素ナトリウム水溶液のフィード速度を30[g/min]から60[g/min]に変更したこと以外は実施例3−7と同様にして、粒子状吸水剤(3−8)を得た。粒子状吸水剤(3−8)の分析結果を表8及び表9に記載する。
【0429】
[実施例3−9]
製造例3−1記載の精製アクリル酸に対するp−メトキシフェノールの加える量を70ppmから10ppmに変更することで調整アクリル酸(3−2)を得た。
【0430】
調整アクリル酸(3−2)を使用したこと以外は実施例3−1と同様にして表面が架橋された吸水性樹脂粒子(9−d)を得た。
【0431】
得られた吸水性樹脂粒子(9−d)100重量部に0.5重量%エチレンジアミンテトラ(メチレンホスホン酸)5ナトリウム(略称:EDTMPA・5Na)水溶液を4.0重量部添加混合し、吸水性樹脂粒子(9−e)を得た。
【0432】
得られた吸水性樹脂粒子(9−e)100重量部にシリカゲル(商品名:アエロジル200、日本アエロジル社製)を0.3重量部添加混合することで、粒子状吸水剤(3−9)を得た。粒子状吸水剤(3−9)の分析結果を表8及び表9に記載する。尚、粒子状吸水剤(3−9)の耐候性促進試験による劣化率は12%であった。
【0433】
[実施例3−10]
製造例3−1記載の精製アクリル酸に対するp−メトキシフェノールの加える量を70ppmから200ppmに変更することで調整アクリル酸(3−3)を得た。
【0434】
調整アクリル酸(3−3)を使用したこと以外は実施例3−1と同様にして表面が架橋された吸水性樹脂粒子(10−d)を得た。
【0435】
得られた吸水性樹脂粒子(10−d)100重量部に1重量%エチレンジアミンテトラ(メチレンホスホン酸)5ナトリウム(略称:EDTMPA・5Na)水溶液を2.0重量部添加混合し、吸水性樹脂粒子(10−e)を得た。
【0436】
得られた吸水性樹脂粒子(10−e)100重量部にシリカゲル(商品名:アエロジル200、日本アエロジル社製)を0.3重量部添加混合することで、粒子状吸水剤(3−10)を得た。粒子状吸水剤(3−10)の分析結果を表8及び表9に記載する。
【0437】
[実施例3−11]
0.375重量%亜硫酸水素ナトリウム水溶液の濃度を1重量%に変更し、そのフィード速度を30[g/min]から45[g/min]に変更し、1重量%エチレンジアミンテトラ(メチレンホスホン酸)5ナトリウム(略称:EDTMPA・5Na)水溶液の添加量を、吸水性樹脂粒子100重量部に対して5.0重量部とし、更に、吸水性樹脂粒子100重量部に対して15重量%乳酸ナトリウム水溶液2重量部を添加したこと以外は実施例3−1と同様にして、粒子状吸水剤(3−11)を得た。粒子状吸水剤(3−11)の分析結果を表8及び表9に記載する。
【0438】
[実施例3−12]
0.375重量%亜硫酸水素ナトリウム水溶液の濃度を1重量%に変更し、そのフィード速度を30[g/min]から45[g/min]に変更し、1重量%エチレンジアミンテトラ(メチレンホスホン酸)5ナトリウム(略称:EDTMPA・5Na)水溶液の添加量を、吸水性樹脂粒子100重量部に対して5.0重量部とし、更に、吸水性樹脂粒子100重量部に対して25重量%硫酸アルミニウム水溶液2重量部及び15重量%乳酸ナトリウム水溶液2重量部を添加したこと以外は実施例3−1と同様にして、粒子状吸水剤(3−12)を得た。粒子状吸水剤(3−12)の分析結果を表8及び表9に記載する。
【0439】
[実施例3−13]
実施例3−11記載の吸水性樹脂粒子(3−11)100重量部に、シリカ(商品名:アエロジル200、日本アエロジル社製)を0.5重量部添加混合することで、粒子状吸水剤(3−13)を得た。粒子状吸水剤(3−13)の分析結果を表8及び表9に記載する。
【0440】
[比較例3−2]
比較例3−1と同様に重合することで、含水ゲル状架橋重合体(C2−a)を得た。0.1%亜硫酸水素ナトリウム水溶液をフィード速度18[g/min]で添加しながら、得られた含水ゲル状重合体(C2−a)をフィード速度600[g/min]でミートチョッパー(MEAT−CHOPPER TYPE:12VR−400KSOX 飯塚工業株式会社、ダイ孔径:11mm、孔数:10、ダイ厚み8mm)で再粉砕し、含水ゲル状架橋重合体(C2−a)に亜硫酸水素ナトリウム水溶液を均一に混合することによって、細分化された含水ゲル状架橋重合体(C2−b)を得た。
【0441】
この細分化された含水ゲル状架橋重合体(C2−b)を50メッシュの金網上に広げ、170℃で65分間熱風乾燥を行い、乾燥物をロールミルを用いて粉砕し、さらに目開き850μmのJIS標準篩で分級、調合することにより、重量平均粒子径(D50)371μm、粒度分布の対数標準偏差(σζ)0.34の不定形破砕状の吸水性樹脂粒子(1−c)を得た。吸水性樹脂粒子(C2−c)の遠心分離機保持容量(CRC)は46(g/g)、水可溶分は18重量%であった。
【0442】
得られた吸水性樹脂粒子(C2−c)100重量部にエチレングリコールジグリシジルエーテル0.027重量部、1,4−ブタンジオール0.3重量部、1,2−プロピレングリコール0.5重量部、純水2.8重量部の混合液からなる表面架橋剤を均一に混合した後、混合物を180℃で60分間加熱処理した。その後、得られた粒子を目開き850μmのJIS標準篩を通過するまで解砕し、表面が架橋された比較粒子状吸水剤(3−2)を得た。比較粒子状吸水剤(3−2)の分析結果を表8及び表9に記載する。
【0443】
[比較例3−3]
比較吸水性樹脂粒子(3−1)100重量部に0.05重量%エチレンジアミンテトラ(メチレンホスホン酸)5ナトリウム(略称:EDTMPA・5Na)水溶液を1.0重量部添加混合することで、比較粒子状吸水剤(3−3)を得た。比較粒子状吸水剤(3−3)の分析結果を表8及び表9に記載する。
【0444】
[比較例3−4]
0.375重量%亜硫酸水素ナトリウム水溶液の濃度を30重量%に変更し、フィード速度を60[g/min]から26.25[g/min]に変更したこと以外は実施例3−1と同様の操作を行い、細分化された比較含水ゲル状架橋重合体(C4−b)を得た。
【0445】
細分化された比較含水ゲル状架橋重合体(C4−b)を50メッシュの金網上に広げ、170℃で65分間熱風乾燥を行い、乾燥物をロールミルを用いて粉砕し、さらに目開き850μmのJIS標準篩で分級、調合することにより、重量平均粒子径(D50)371μm、粒度分布の対数標準偏差(σζ)0.34の不定形破砕状の比較吸水性樹脂粒子(C4−c)を得た。比較吸水性樹脂粒子(C4−c)の遠心分離機保持容量(CRC)は44[g/g]、水可溶分は16重量%であった。
【0446】
得られた比較吸水性樹脂粒子(C4−c)100重量部にエチレングリコールジグリシジルエーテル0.027重量部、1,4−ブタンジオール0.3重量部、1,2−プロピレングリコール0.5重量部、及び純水2.8重量部の混合液からなる表面架橋剤を均一に混合した後、混合物を180℃で60分間加熱処理した。その後、得られた粒子を目開き850μmのJIS標準篩を通過するまで解砕し、表面が架橋された比較粒子状吸水剤(3−4)を得た。比較粒子状吸水剤(3−4)の分析結果を表8及び表9に記載する。
【0447】
[比較例3−5]
亜硫酸水素ナトリウム水溶液の濃度を0.375重量%から30重量%に変更し、そのフィード速度を60[g/min]から45[g/min]に変更し、エチレンジアミンテトラ(メチレンホスホン酸)5ナトリウム(略称:EDTMPA・5Na)水溶液を添加しないこと以外は実施例3−1と同様にして、比較粒子状吸水剤(3−5)を得た。
【0448】
[比較例3−6]
製造例3−1において、精製アクリル酸に対する、p−メトキシフェノールの加える量を70ppmから1ppmに変更することで調整アクリル酸(3−6)を得た。調整アクリル酸(3−6)を使用したこと以外は実施例3−1記載と同様にして細分化された比較含水ゲル状架橋重合体(C6−b)を得た。
【0449】
この細分化された比較含水ゲル状架橋重合体(C6−b)を50メッシュの金網上に広げ、170℃で65分間熱風乾燥を行い、乾燥物をロールミルを用いて粉砕し、さらに目開き850μmのJIS標準篩で分級、調合することにより、重量平均粒子径(D50)371μm、粒度分布の対数標準偏差(σζ)0.34の不定形破砕状の比較吸水性樹脂粒子(C6−c)を得た。比較吸水性樹脂粒子(C6−c)の遠心分離機保持容量(CRC)は50[g/g]、水可溶分は24重量%であった。
【0450】
得られた比較吸水性樹脂粒子(C6−c)100重量部に、エチレングリコールジグリシジルエーテル0.027重量部、1,4−ブタンジオール0.3重量部、1,2−プロピレングリコール0.5重量部、及び純水2.8重量部の混合液からなる表面架橋剤を均一に混合した後、混合物を180℃で60分間加熱処理した。その後、得られた粒子を目開き850μmのJIS標準篩を通過するまで解砕し、表面が架橋された比較吸水性樹脂粒子(C6−d)を得た。
【0451】
得られた比較吸水性樹脂粒子(C6−d)100重量部に、5重量%エチレンジアミンテトラ(メチレンホスホン酸)5ナトリウム(略称:EDTMPA・5Na)水溶液を0.4重量部添加混合し、比較吸水性樹脂粒子(C6−e)を得た。
【0452】
得られた比較吸水性樹脂粒子(6−e)100重量部にシリカゲル(商品名:アエロジル200、日本アエロジル社製)を0.3重量部添加混合することで、比較粒子状吸水剤(3−6)を得た。
【0453】
比較粒子状吸水剤(3−6)の耐候性促進試験による劣化率は24%であり、耐候性の悪い粒子状吸水剤であった。
【0454】
[比較例3−7]
製造例3−1において、精製アクリル酸に対するp−メトキシフェノールの加える量を70ppmから270ppmに変更することで調整アクリル酸(3−7)を得た。調整アクリル酸(3−7)を使用したこと以外は比較例3−6と同様にして比較粒子状吸水剤(3−7)を得た。
【0455】
[比較例3−8]
含水率と着色の関係について以下に示す。すなわち、0.375重量%亜硫酸水素ナトリウム水溶液の濃度を0.1重量%に変更し、更にそのフィード速度を30[g/min]から22.5[g/min]に変更したこと以外は実施例3−1と同様の操作を行い、表面が架橋された吸水性樹脂粒子(C8−d)を得た。
【0456】
得られた吸水性樹脂粒子(C8−d)100重量部に、0.5重量%エチレンジアミンテトラ(メチレンホスホン酸)5ナトリウム(略称:EDTMPA・5Na)水溶液を1.0重量部添加混合し、更に脱イオン水13重量部を添加混合することで、含水率17重量%の比較粒子状吸水剤(3−8)を得た。比較粒子状吸水剤(3−8)の分析結果を表8及び表9に記載する。尚、含水率17重量%の比較粒子状吸水剤(3−8)は、表に示すように、本発明の含水率の吸水剤に比べて着色も悪く、粒子が凝集して塊になりやすく、取り扱い性の悪いものであった。
【0457】
【表8】
【0458】
【表9】
【0459】
(まとめ)
以上、上記実施例3−1〜実施例3−13および表8、表9は、本発明の粒子状吸水剤の製造方法その3に関するものであり、アクリル酸(塩)を主成分とする単量体水溶液の重合工程と、重合で得られた含水ゲル状架橋重合体の乾燥工程と、表面架橋工程とを含む、ポリアクリル酸(塩)系吸水性樹脂を主成分とする粒子状吸水剤の製造方法であって、キレート剤0.001〜0.5重量%の添加工程と無機還元剤の添加工程とを更に含み、単量体がメトキシフェノール類を対アクリル酸換算で10〜200ppm含有し、乾燥工程後、及び表面架橋工程において、重合体の含水率を3〜15重量%に制御すること、さらに好ましくは、上記無機還元剤を、乾燥前の含水ゲル状架橋重合体に添加する。
【0460】
上記実施例3−1〜3−13にあるように、本発明に係る粒子状吸水剤は、キレート剤および無機還元剤を含み含水率が3〜15重量%であり、かかる構成によって、経時色調及び初期色調に優れ、不快な臭気がなかった。キレート剤及び無機還元剤の何れか一方のみ含有する比較例3−1〜3−3では経時色調が悪かった。また、還元剤のみでその添加量が多い比較例3−4及び3−5は、臭気が非常に強い粒子状吸水剤であった。メトキシフェノール量がアクリル酸中で10〜200ppmまたは吸水剤中に5〜60ppmの範囲外である比較例3−6(アクリル酸中に1ppm)は、劣化率が高く耐候性が悪い粒子状吸水剤であった。また、比較例3−7(アクリル酸中に270ppm)は初期着色も悪く、かつ臭気が発生した。かかる臭気は、還元剤自身の臭気というより、表面架橋における副生物由来の臭気であると考えられる。また、含水率について、比較例3−8(含水率17重量%)では本発明の吸水剤に比べて着色も悪く、また、耐尿性(劣化成分1000倍)も劣っていた。さらに、本発明の製造方法は劣化、臭気や着色の問題を解決したうえで、残存モノマーが400ppm以下、さらには300ppm以下と低い。
【0461】
以上、上記実施例にも示される本発明の新規な吸水剤(第3の吸水剤)は、ポリアクリル酸(塩)系吸水性樹脂を主成分とする粒子状吸水剤であって、キレート剤と、無機還元剤とを含み、当該キレート剤の含有量が0.001〜0.5重量%であり、含水率が3〜15重量%である。上記の実施例にも示される本発明の新規な吸水剤は、好ましくは、無加圧下吸収倍率(CRC)が25[g/g]以上、加圧下吸水倍率(AAP2.0kPa)が25[g/g]以上で、残存モノマーが500ppm以下である。かかる吸水剤はメトキシフェノール類(特にp−メトキシフェノール)の含有は任意であり、0〜200ppmでもよいが、好ましくは、上記(1)および本発明の新規な吸水剤(第1の吸水剤)と同様に5〜60ppmの範囲(上記実施例3−1〜3−8では約10ppm前後)とされ、耐候性および着色がさらに改善される。本発明の新規な吸水剤(第3の吸水剤)は好ましくは、上記(1)および本発明の新規な吸水剤(第1の吸水剤)と同様に水不溶性無機微粒子を含有することで、耐尿性がさらに向上される。かかる吸水剤も好ましくはα−ヒドロキシカルボン酸化合物を更に含む。また、多価金属塩及び/又はカチオン性ポリマーを更に含む。
【0462】
これら吸水剤は初期および経時の着色もなく白色で残存モノマーも少なく、吸水速度(Vortex)も高く、加圧下吸収倍率(AAP)も高いため、パルプの少ない高濃度の紙オムツに使用しても高い液拡散と少ない戻り量(Re−wet)の、吸水剤由来の着色問題もなく、良好な紙オムツを提供する。