(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
空気を注入した砂質地盤の飽和度を、地盤中に設置した電極の間で検知した比抵抗に基づいて測定するに際して使用する地盤の飽和度測定のためのキャリブレーション方法であって、
間隔をあけて配置した2つの通電電極と、これら通電電極の間に間隔をあけて配置した複数の検知電極とを内設した密閉可能な容器の内部を、測定対象の砂質地盤から採取した地盤サンプルで充填した状態にして、この容器の内部を脱気しつつ容器の内部に水を充填することにより、容器の内部の地盤サンプルの飽和度を100%にした後、順次、容器の内部から水を排出して容器の内部の地盤サンプルの飽和度を低下させ、それぞれの飽和度において、前記通電電極の間に電流を流し、その際に前記検知電極の間で電圧を検知して、前記電流と電圧とに基づいて地盤サンプルの比抵抗を算出することにより、地盤サンプルの飽和度と比抵抗との関係を取得することを特徴とする地盤の飽和度測定のためのキャリブレーション方法。
前記検知電極を3個以上配置して、これら検知電極の中で2つの検知電極の組み合わせを複数選択し、選択したそれぞれの2つの検知電極の組み合わせの間で電圧を検知し、これら検知した電圧に基づいて、比抵抗を算出するための電圧を決定する請求項1または2に記載の地盤の飽和度測定のためのキャリブレーション方法。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、液状化防止のために空気を注入した砂質地盤の比抵抗に基づいて地盤の飽和度を測定するにあたり、高精度の測定を可能にする地盤の飽和度測定のためのキャリブレーション
方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため、本発明の地盤の飽和度測定のためのキャリブレーション方法は、空気を注入した砂質地盤の飽和度を、地盤中に設置した電極の間で検知した比抵抗に基づいて測定するに際して使用する地盤の飽和度測定のためのキャリブレーション方法であって、間隔をあけて配置した2つの通電電極と、これら通電電極の間に間隔をあけて配置した複数の検知電極とを内設した密閉可能な容器の内部を、測定対象の砂質地盤から採取した地盤サンプルで充填した状態にして、この容器の内部を脱気しつつ容器の内部に水を充填することにより、容器の内部の地盤サンプルの飽和度を100%にした後、順次、容器の内部から水を排出して容器の内部の地盤サンプルの飽和度を低下させ、それぞれの飽和度において、前記通電電極の間に電流を流し、その際に前記検知電極の間で電圧を検知して、前記電流と電圧とに基づいて地盤サンプルの比抵抗を算出することにより、地盤サンプルの飽和度と比抵抗との関係を取得することを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、密閉可能な容器の内部に、測定対象の砂質地盤から採取した地盤サンプルを充填した後、この容器の内部を脱気しつつ水を充填することにより、容器の内部の地盤サンプルの飽和度を容易に100%にすることができ、その後、順次、容器の内部から水を排出することにより、地盤サンプルの飽和度を容易に低下させることができる。そして、それぞれの飽和度において、容器の内部に間隔をあけて配置した2つの通電電極の間に電流を流して、これら通電電極の間に間隔をあけて配置した複数の検知電極の間で電圧を検知し、この電流と電圧とに基づいて地盤サンプルの比抵抗を算出して、地盤サンプルの飽和度と比抵抗との関係を取得することによって、実際の砂質地盤の飽和度と比抵抗との関係に近似したデータを、容易に得ることができる。したがって、空気を注入した砂質地盤の飽和度を、地盤中に設置した電極の間で検知した比抵抗に基づいて測定するに際して、本発明によって取得した地盤サンプルの飽和度と比抵抗との関係を用いることにより、高精度で実際の地盤の飽和度を測定することが可能になる。
【0009】
例えば、前記複数の検知電極が横並びになる状態に容器を設置して、前記検知電極の間で電圧を検知する。これにより、容器の内部の地盤サンプルの飽和度を下げた場合であっても、容器の内部での飽和度のばらつきが小さくなり、それぞれの飽和度における電圧を正確に検知するには有利になる。
【0010】
前記検知電極を3個以上配置して、これら検知電極の中で2つの検知電極の組み合わせを複数選択し、選択したそれぞれの2つの検知電極の組み合わせの間で電圧を検知し、これら検知した電圧に基づいて、比抵抗を算出するための電圧を決定することもできる。これにより、それぞれの飽和度における電圧を正確に検知するには有利になる。
【0011】
前記検知電極は、例えば、前記容器の内周面に沿った環状にする。これにより、電圧検知面積が大きくなるので、電圧を正確に検知するには有利になる。また、容器の内部に地盤サンプルを充填する際に、検知電極が邪魔にならずに円滑に充填し易くなる。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の地盤の飽和度測定のためのキャリブレーション
方法を図に示した実施形態に基づいて説明する。
【0014】
図1〜
図3に例示するように本発明
で用いるキャリブレーション装置1は、測定対象の砂質地盤から採取した地盤サンプルGが充填される容器2と、容器2の一端に取り付けられた吸引管6と、容器2の他端に取り付けられた給排水管5とを備えている。容器2は、両端にフランジ部4aを有する円筒部3と、それぞれのフランジ部4aを覆うように取り付けられる着脱可能な蓋部4bとを有している。
【0015】
吸引管6は開閉バルブ6aを有していて、真空ポンプに着脱自在に接続される。給排水管5は開閉バルブ5aを有していて、水供給源に着脱自在に接続される。それぞれの開閉バルブ5a、6aを閉弁した状態にすることで容器2は密閉可能になっている。
【0016】
容器2の内部の両端には、通電電極7が配置されるとともに、この2つの通電電極7の間に間隔をあけて複数の検知電極8a〜8eが配置されている。即ち、円筒部3の筒軸方向に間隔をあけて、通電電極7および検知電極8a〜8eが配置されている。
【0017】
通電電極7および検知電極8a〜8eは、種々の形状を採用することができるが、この実施形態では通電電極7は円盤状であり、検知電極8a〜8eは円筒部3の内周面に沿った環状になっている。
【0018】
円筒部3のサイズは、特に限定されないが、例えば、内径10cm〜20cm程度、長さ30〜60cm程度である。通電電極7および検知電極8a〜8eの外径は、円筒部3の内径とほぼ同じである。
【0019】
検知電極8a〜8eの数は複数であり、特に限定されないが3個以上が好ましく、例えば、3個〜10個程度の範囲で適宜決定される。隣り合う検知電極8a〜8eどうしの間隔は、例えば、5cm〜10cm程度であり、等間隔あるいは不等間隔で配置することもできる。隣り合う通電電極7と検知電極8a、通電電極7と検知電極8eの間隔も上記と同様の間隔である。
【0020】
吸引管6は、容器2の一端側の蓋部4bと通電電極7を挿通して容器2の一端に固定されている。給排水管5は、容器2の他端側の蓋部4bと通電電極7を挿通して容器2の他端に固定されている。この実施形態では、給水管および排水管として機能する給排水管5を設けているが、給水管と排水管とを別々に設けることもできる。
【0021】
それぞれの通電電極7には、容器2の内部と外部とを連通するコネクタ9を介してリード線9aが接続され、それぞれのリード線9aは通電手段10に接続されている。通電手段10は、通電電極7の間に電流を流して通電させる。
【0022】
それぞれの検知電極8a〜8eには、容器2の内部と外部とを連通するコネクタ9を介してリード線9aが接続され、それぞれのリード線9aは電圧検知手段11に接続されている。電圧検知手段11は、検知電極8a〜8eの間の電圧を検知する。
【0023】
通電手段10および電圧検知手段11は、リード線9aを通じてパーソナルコンピュータ等の演算装置12に接続されている。演算装置12には、通電手段10が流した電流(電流値)と、電圧検知手段11が検知した電圧(電圧値)が入力される。さらに、演算装置12には、容器2の内部の地盤サンプルGの飽和度が入力される構成になっている。
【0024】
地盤の比抵抗ρtは、地下水の比抵抗ρwが小さい場合、間隙率Bと飽和度Swの関係を用いた下記(1)式(アーチーの式)で表される。
ρt=A・(B)
-m・(Sw)
-n・ρw ・・・(1)
【0025】
A、m、nは経験的に求められている値であり、一般にm=1.3〜3、n=2、A=0.6〜1.5である。
【0026】
地盤に空気を注入して地下水が空気に置換された時に、間隙率B、地下水の比抵抗ρwに変化が生じないとすると、地盤の飽和度がSw1からSw2に変化した場合、それぞれの場合の地盤の比抵抗をρt1、ρt2とすると下記(2)式で表される。
(ρt2/ρt1)=(Sw2/Sw1)
-n ・・・(2)
【0027】
地下水位以深で完全飽和状態にある砂質地盤の飽和度が、空気を注入することで変化した場合、(2)式のSw1=1なので、以下の(3)式で表される。
Sw2=(ρt2/ρt1)
(-1/n) ・・・(3)
【0028】
そこで、本発明では地盤サンプルGの飽和度Swが100%(=1)の時の比抵抗ρt1を測定し、順次、飽和度Sw2を変化させて、それぞれの飽和度Sw2において比抵抗ρt2を算出する。そして、得られたデータをグラフにプロットして(3)式のn値を算出する。これにより、その地盤サンプルG、即ち、地盤サンプルGを採取した砂質地盤のn値を把握する。
【0029】
以下に本発明のキャリブレーション方法により、地盤サンプルGの飽和度と比抵抗との関係を取得する手順を説明する。
【0030】
まず、一方のフランジ部4aから蓋部4bを取り外すとともに、一方の通電電極7を円筒部3から取り外す。次いで、測定対象の砂質地盤から採取した地盤サンプルGを円筒部3に充填する。その後、一方の通電電極7を円筒部3の所定位置に配置するとともに、一方のフランジ部4aに蓋部4bを固定する。これにより、間隔をあけて配置した2つの通電電極7と、これら通電電極7の間に間隔をあけて配置した複数の検知電極8a〜8eとを内設した密閉可能な容器2の内部を、地盤サンプルGで充填した状態にする。
【0031】
次いで、
図4に例示するように、開閉バルブ6aを開いた状態にした吸引管6を通じて、真空ポンプによって容器2の内部の空気aを排出して脱気する。これと同時に、開閉バルブ5aを開いた状態にした給排水管5を通じて、水供給源から容器の内部に水Wを充填する。水Wが容器2の内部に充満し、余分な水Wは吸引管6を通じて排出される。これにより、容器2の内部の地盤サンプルGの飽和度を100%する。容器2の内部に充填する水Wは、その地盤サンプルGを採取した砂質地盤を流れる地下水を用いるか、その地下水と比抵抗が近い水を用いるようにする。
【0032】
飽和度を100%にした後は、開閉バルブ5a、5bを閉じた状態にして容器2の内部を密閉状態にする。ここで、通電電極7の間に電流を流し、その際に検知電極8a〜8eの中から選択した2つの検知電極の間で電圧を検知する。通電手段10により流した電流と、選択した2つの検知電極の間で検知した電圧とに基づいて地盤サンプルGの比抵抗を算出する。この時の地盤サンプルGの飽和度(100%)を演算装置12に入力する。
【0033】
例えば、流した電流I、検知した電圧Vであれば、抵抗値R=V/Iとなる。そして、電圧を検知した検知電極の間の距離L、この検知電極の間に存在する地盤サンプルGの断面積Sの場合は、比抵抗ρt=R×S/Lとして算出される。したがって、演算装置12には、それぞれの検知電極8a〜8eどうしの間の距離L、検知電極8a〜8eの間に存在する地盤サンプルGの断面積S(即ち、容器2の円筒部3の内側断面積)が入力されている。
【0034】
次いで、
図4のように給排水管5が下方になるように容器2を配置して、開閉バルブ5aを開けて給排水管5を通じて容器2の内部から適量の水Wを排出した後、開閉バルブ5aを閉じる。地盤サンプルGの飽和度を低下させた後は、通電電極7の間に電流を流し、その際に検知電極8a〜8eの中から選択した2つの検知電極の間で電圧を検知する。通電手段10により流した電流と、検知電極の間で検知した電圧とに基づいて、演算装置12によって地盤サンプルGの比抵抗を算出する。また、容器2の内部からこの時に排出した水Wの量に基づいて、地盤サンプルGの飽和度を算出し、この飽和度を演算装置12に入力する。
【0035】
同様に順次、容器2の内部から適量の水Wを排出して容器2の内部の地盤サンプルGの飽和度を低下させ、それぞれの飽和度において、通電電極7の間に電流を流し、その際に検知電極8a〜8eの中から選択した2つの検知電極の間で電圧を検知し、電流と電圧とに基づいて地盤サンプルGの比抵抗を算出する。また、その時の地盤サンプルGの飽和度を演算装置12に入力する。容器2の内部からその都度排出する水Wの量は、適宜決定することができる。
【0036】
上記の手順によって算出した地盤サンプルGの比抵抗と、地盤サンプルGの飽和度のデータとを、演算装置12によって処理して、
図5に例示するようにグラフにプロットすることにより両者の関係を取得する。
図5は、2種類(サンプル1、サンプル2)の地盤サンプルGについて、比抵抗と飽和度との関係を示している。このグラフによると、(3)式のn値がほぼ1になっている。
【0037】
したがって、(3)式は、Sw2=(ρt2/ρt1)
-1となり、砂質地盤中に設置した電極の間で比抵抗ρt1、ρt2を検知することで、地盤中に空気を注入して比抵抗ρt2になった場合の砂質地盤の飽和度Sw2を把握することができる。
【0038】
本発明により取得したデータによって、地盤サンプルG、即ち、砂質地盤に対して
図6に例示するような比抵抗変化率(ρt1に対するρt2の変化率)と飽和度との関係を取得することもできる。
図6は、(3)式のn値が1と2の場合の地盤サンプルG(砂質地盤)の比抵抗変化率と飽和度との関係を示している。
【0039】
上記のとおり本発明によれば、密閉可能な容器2の内部に地盤サンプルGを充填した後、容器2の内部を脱気しつつ水Wを充填することにより、容器2の内部の地盤サンプルGの飽和度を容易に100%にすることができる。その後、順次、容器2の内部から水Wを排出することにより、地盤サンプルGの飽和度を容易に低下させることができる。
【0040】
また、上記方法を用いて、それぞれの飽和度において地盤サンプルGの比抵抗を算出して、地盤サンプルの飽和度と比抵抗との関係を取得することによって、実際の砂質地盤の飽和度と比抵抗との関係に近似したデータを、容易に得ることができる。したがって、空気を注入した砂質地盤の飽和度を、地盤中に設置した電極の間で検知した比抵抗に基づいて測定するに際して、本発明によって取得した地盤サンプルの飽和度と比抵抗との関係を用いることにより、高精度で実際の地盤の飽和度を測定することが可能になる。
【0041】
検知電極8a〜8eの間で電圧を検知する際には、
図1に例示するように容器2を横倒して、検知電極8a〜8eを横並びの状態にすることが好ましい。地盤サンプルGの飽和度を下げた場合、容器2が立設した状態では、選択した検知電極8a〜8eの上下位置によって検知電極間に存在する地盤サンプルGの飽和度にばらつきが生じる。しかしながら、検知電極8a〜8eを横並びの状態にすることにより、選択した検知電極8a〜8eによらず、検知電極間に存在する地盤サンプルGの飽和度のばらつきが小さくなり、それぞれの飽和度における電圧を正確に検知するには有利になる。
【0042】
複数の検知電極8a〜8eの中から任意の2つの検知電極を選択し、選択した1組の検知電極の間で電圧を検知することもできるが、電圧を正確に検知するには、複数組の検知電極の間で検知を行なうことが好ましい。例えば、検知電極を3個以上配置して、これら検知電極の中で2つの検知電極の組み合わせを複数選択し、選択したそれぞれの2つの検知電極の組み合わせの間で電圧を検知し、これら検知した電圧に基づいて、比抵抗を算出するための電圧を決定する。例えば、この実施形態では、検知電極8aと8b、8aと8c、8aと8d、8aと8e、8bと8c、8bと8d、8bと8e、8cと8d、8cと8e、8dと8eとの間で電圧を検知する。そして、この10通りの検知電極の組み合わせで検知した電圧を平均した平均値を、比抵抗を算出するための電圧とする。或いは、10通りの検知電極の組み合わせで検知した電圧の内、電圧値の大きい上位2つおよび小さい下位2つのデータを除外した6つの電圧を平均した平均値を、比抵抗を算出するための電圧とする。
【0043】
このように、電圧を検知する2つの検知電極の組み合わせを複数にして、検知した複数の電圧に基づいて、比抵抗を算出するための電圧を決定することにより、検知電極8a〜8eの位置に起因する検知電圧のばらつきを小さくすることができる。それ故、地盤サンプルGのそれぞれの飽和度における電圧を正確に検知するには有利になる。
【0044】
検知電極8a〜8eの形状は特に限定されないが、実施形態で例示したような円筒部3の内周面に沿った環状にすることが好ましい。これにより、電圧検知面積が大きくなるので、容器2の内部での地盤サンプルGの飽和度のばらつきに起因する検知電圧のばらつきを抑制することができるので、電圧を正確に検知するには有利になる。また、容器2の内部に地盤サンプルGを充填する際に、検知電極8a〜8eが邪魔にならずに円滑に充填し易くなるので、作業性が向上する。