特許第5785114号(P5785114)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5785114
(24)【登録日】2015年7月31日
(45)【発行日】2015年9月24日
(54)【発明の名称】器具取付部材
(51)【国際特許分類】
   H02G 3/02 20060101AFI20150907BHJP
【FI】
   H02G3/02
【請求項の数】3
【全頁数】25
(21)【出願番号】特願2012-39090(P2012-39090)
(22)【出願日】2012年2月24日
(65)【公開番号】特開2013-176220(P2013-176220A)
(43)【公開日】2013年9月5日
【審査請求日】2014年7月30日
(73)【特許権者】
【識別番号】000243803
【氏名又は名称】未来工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000659
【氏名又は名称】特許業務法人広江アソシエイツ特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】渡辺 佳樹
【審査官】 坂庭 剛史
(56)【参考文献】
【文献】 実開平04−017615(JP,U)
【文献】 実開平07−011821(JP,U)
【文献】 米国特許第6624355(US,B2)
【文献】 特開2008−253020(JP,A)
【文献】 実開昭63−128637(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02G 3/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
配線器具を取着するための一対の取着部を備え、壁表側から、壁材に穿設された壁孔を通過させて壁裏に配置されるとともに、壁裏から配線されるケーブルが接続される配線器具が前記取着部を使用して壁表に設置されることで、前記壁材を前記配線器具とで挟持して壁裏に固定される器具取付部材であって、
環状形成された周方向の一部が切欠された板状の本体を備え、
該本体の一面は、前記壁材の裏側から前記壁孔の周縁に当接する当接面をなし、前記本体における前記当接面の背面には、前記ケーブルを挿通可能とするとともに、該ケーブルを挿通した状態で前記本体を前記壁孔を通過させて壁裏に配置した際に、前記本体の壁裏での前記ケーブルからの脱落を抑止する環状のケーブル挿通部が突設されてなる器具取付部材。
【請求項2】
前記ケーブル挿通部の周壁は、少なくとも一部が蛇腹状に形成されて弾性変形可能な蛇腹部を有する請求項1に記載の器具取付部材。
【請求項3】
前記周壁の前記蛇腹部における隣り合う周壁は、その間で挿通される前記ケーブルを厚み方向から挟持可能である請求項2に記載の器具取付部材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、壁材に形成された壁孔を介して壁材の裏側に配置される器具取付部材に関する。
【背景技術】
【0002】
建築物の壁に配線器具を設置するために、器具取付部材が壁裏に配設される。この種の器具取付部材としては、例えば、特許文献1に開示の挟み金具が挙げられる。図11(a)に示すように、特許文献1の挟み金具80は、上下に対向する一対の挟持片81と、それら挟持片81の長辺方向の一端部同士を連結する連結片82とから形成され、挟持片81の長辺方向他端側に開口部83が形成されている。このように挟み金具80は、一辺に開口を有することで、壁50の厚みが厚かったり、壁50の立設間隔が狭かったりする場合であっても、開口部83の内側に壁50の開口縁を位置させながら、挟み金具80を回動させつつ壁50の壁孔50aに挿入することで、壁50の裏側に簡単に配置することができる。
【0003】
また、連結片82には、仮止め用穴82aが二箇所に形成されている。この仮止め用穴82aには、L字形の仮止め具84が差し込まれるようになっている。図11(b)に示すように、仮止め具84は、仮止め用穴82aに差し込まれる細長板状の差込部84aと、差込部84aの仮止め用穴82aへの差し込み時に、壁50の表面に当接する薄板状の当接部84bと、からなる。
【0004】
挟み金具80を用いて配線器具を壁50に設置する際、挟み金具80は、壁50に形成された四角形状の壁孔50aを介して壁50の裏側に配置される。そして、仮止め具84の差込部84aを連結片82の仮止め用穴82aに差し込むとともに、仮止め具84の当接部84bと、挟み金具80とで壁50を挟持することで、挟み金具80が壁50の裏側に仮固定される。そして、壁50裏に配線されたケーブルを、壁50裏に仮固定された挟み金具80を介して壁孔50aから壁50表側に引き出し、壁50表にて、スイッチなどの配線器具に引き出したケーブルを接続する。その後、挟み金具80のネジ孔81aを用いて、配線器具を壁50に固定しつつ、挟み金具80を壁50に固定する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】実開平4−111220号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1では、ケーブルを壁50の表側に引き出す際、壁50の裏側に配置された挟み金具80が落下しないようにするため、仮止め具84を挟み金具80の仮止め用穴82aに差し込み、挟み金具80と仮止め具84の当接部84bとで、壁50を挟まなければならない。これにより、配線器具の設置作業を煩わしく感じさせてしまう虞があった。
【0007】
本発明は、上記従来の問題に鑑みてなされたものであって、その目的は、壁材の裏側に簡単に配置することができるとともに配線器具の設置作業をスムーズに行うことができる器具取付部材を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記問題点を解決するために、請求項1に記載の発明は、配線器具を取着するための一対の取着部を備え、壁表側から、壁材に穿設された壁孔を通過させて壁裏に配置されるとともに、壁裏から配線されるケーブルが接続される配線器具が前記取着部を使用して壁表に設置されることで、前記壁材を前記配線器具とで挟持して壁裏に固定される器具取付部材であって、環状形成された周方向の一部が切欠された板状の本体を備え、該本体の一面は、前記壁材の裏側から前記壁孔の周縁に当接する当接面をなし、前記本体における前記当接面の背面には、前記ケーブルを挿通可能とするとともに、該ケーブルを挿通した状態で前記本体を前記壁孔を通過させて壁裏に配置した際に、前記本体の壁裏での前記ケーブルからの脱落を抑止する環状のケーブル挿通部が突設されてなることを要旨とする。
【0009】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の器具取付部材において、前記ケーブル挿通部の周壁は、少なくとも一部が蛇腹状に形成されて弾性変形可能な蛇腹部を有することを要旨とする。
【0010】
請求項3に記載の発明は、請求項2に記載の器具取付部材において、前記周壁の前記蛇腹部における隣り合う周壁は、その間で挿通される前記ケーブルを厚み方向から挟持可能であることを要旨とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、壁材の裏側に簡単に配置することができるとともに配線器具の設置作業をスムーズに行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】実施形態の器具取付枠、及び器具保持枠を示す斜視図。
図2】(a)は、器具取付枠を示す平面図、(b)は、器具取付枠を示す正面図、(c)は、器具取付枠を示す側面図。
図3】器具取付枠を壁材の裏側に配置した状態を示す正面図。
図4】器具取付枠を壁裏に挿入する様子を示す斜視図。
図5】器具取付枠を壁材の裏側に配置した状態を示す断面図。
図6】(a)は、別の実施形態における器具取付枠を示す平面図、(b)は、別の実施形態における器具取付枠を示す正面図、(c)は、図6(b)の6c−6c線断面図。
図7】別の実施形態の器具取付枠を壁裏に挿入する様子を示す斜視図。
図8】(a)は、別例の器具取付枠を示す斜視図、(b)は、別例の器具取付枠を示す平面図、(c)は、別例の器具取付枠を示す側面図。
図9】(a),(b)は、別例の器具取付枠を示す斜視図。
図10】別例の器具取付枠の設置方法を示す斜視図。
図11】(a)は背景技術の挟み金具を示す正面図、(b)は背景技術における仮止め具を示す斜視図。
【発明を実施するための形態】
【0013】
(第1の実施形態)
以下、本発明を具体化した第1の実施形態を図1図5に従って説明する。
図1に示すように、器具取付部材としての器具取付枠11は、壁Wに配線器具Hを設置するために、壁Wに穿設された壁孔Waを通過させて壁Wの裏側に配置されて使用されるものである。なお、壁孔Waは、縦長円形状をなしている。
【0014】
器具取付枠11について説明する。
図1に示すように、器具取付枠11を構成する薄板状の枠本体12は、環状に形成された周方向の一部が切欠した形状(本実施形態においては、縦長矩形枠を構成する長辺のうち一辺を切欠除去した形状)とされ、上下に対向する挟持片13と、両挟持片13の一端部同士を連結する連結片14とからなる。また、一対の挟持片13と、連結片14とにより囲まれた開口部15が形成されている。また、器具取付枠11は、合成樹脂材料により成形されてなる。
【0015】
図3に示すように、開口部15の長辺方向への長さL1は、壁孔Waの長辺方向への長さN1より短くなっている。また、開口部15の短辺方向への長さL2は、壁孔Waの短辺方向への長さN2より短くなっている。また、枠本体12において、連結片14の長辺方向への長さT1は、壁孔Waの長辺方向への長さN1より長く、枠本体12において、挟持片13の長辺方向への長さT2は、壁孔Waの開口幅、すなわち短辺方向への長さN2と同じになっている。
【0016】
枠本体12において開口部15を除く表面は、壁Wの裏側から壁孔Waの周縁に当接する当接面12aとなっている。
図1図2(b)に示すように、各挟持片13の表面、すなわち当接面12aと同一面には、薄板状をなす一対の係止突部17がそれぞれ突設されるとともに、各係止突部17は弾性変形可能になっている。各係止突部17の先端には、爪片17aが枠本体12の外方に向かうに従い尖るように形成されている。
【0017】
また、各挟持片13の表面において、一対の係止突部17の間には、挟持片13の長辺方向に沿って延びる薄板状をなす第1規制突部18aがそれぞれ突設されている。また、各挟持片13の表面において、一対の係止突部17の外方には、挟持片13の長辺方向に沿って延びる薄板状をなす一対の第2規制突部18bがそれぞれ突設されている。
【0018】
各挟持片13に形成された係止突部17及び第1,第2規制突部18a,18bは、同一円弧上に位置しているとともに、その円弧は、壁孔Waの円弧と略同一形状かつ略同一の長さである。これにより、係止突部17及び第1,第2規制突部18a,18bを壁孔Wa内に挿入したとき、係止突部17及び第1,第2規制突部18a,18bは、壁孔Waの内側に位置するようになっている。
【0019】
各挟持片13の表面において、係止突部17よりも内方であって、挟持片13の長辺方向に沿った略中央には、枠本体12を厚み方向に貫通する螺入孔19が形成されている。この螺入孔19には、ナット(図示せず)が、枠本体12の厚み方向へ移動不能に嵌入されるとともに、このナットにより螺入孔19の内周面に雌ねじが形成されている。よって、本実施形態では、螺入孔19及びナットにより取着部が形成されている。
【0020】
連結片14の長辺方向に沿った内側端部の略中央には、壁W裏への配線器具の当接状態を確認するためのするためのガイド片20が、枠本体12の表面に向かって突出形成されている。ガイド片20の突出長さは、壁孔Waの厚みよりも短くなっており、器具取付枠11を壁孔Waを通過させて壁W裏に当接した際に、ガイド片20が壁孔Waの内側に位置することで壁W表側から視認可能となっている。
【0021】
また、図4に示すように、当接面12aの反対面でもある各挟持片13の裏面であって、開口部15の反対側に位置する挟持片13の長辺端部には、ケーブルCが挿通される、又は内部をケーブルCが配線される電線管Dを保持するためのケーブル挿通部としての保持部30が枠本体12の外方に向かって突設されている。電線管Dは、波付管である。電線管Dには、小径電線管と、小径電線管よりも外径が大きい大径電線管がある。また、保持部30は、器具取付枠11に形成された螺入孔19を避けるように、該螺入孔19よりも外方に位置しており、螺入孔19に挿通されたビス43が枠本体12の背面に突出しても、保持部30で保持した電線管Dと干渉しないようになっている。
【0022】
図2(a)に示すように、保持部30は、周壁31によって開口なく囲まれた帯状の環(無端環状)をなすように形成されている。なお、周壁31は、枠本体12を含まず、保持部30は、周壁31と枠本体12とによって構成されている。より詳しくは、保持部30は、枠本体12の裏面を保持部30の一部として枠本体12に一体成形されてなる。また、周壁31は、枠本体12から枠本体12の外方に向かって延出する対向した側壁32と、両側壁32の自由端を連結する連結壁33とによって構成されている。また、周壁31によって囲まれた保持部30の内部が、内部空間となる。
【0023】
また、側壁32は、折り畳む方向を交互に変えて蛇腹状に形成されてなる弾性変形可能な蛇腹部、又は変形部としての弾性部34を備えている。側壁32は、交互に折り畳まれることで、弾性部34は挟持片13の長辺と直交する方向(背面方向)に伸縮可能に延設されており、この弾性部34によって、保持部30が弾性を備えることになる。また、弾性部34は、それぞれ対向する側壁32全体にわたって形成されているため、側壁32における対向した箇所に設けられていることになる。なお、弾性部34は、側壁32を蛇腹状に折り畳むことで屈曲形成されているため、弾性部34は蛇腹屈曲部でもある。
【0024】
また、図2(a)に示すように、連結壁33の内面及びこの内面と対向する枠本体12の裏面には、電線管Dの外面に係止することで電線管Dの軸方向への移動を規制する一対の係止片35が対向して設けられている。また、係止片35は、保持部30の内面において、弾性部34の対向箇所と直交する他の対向箇所に設けられていることになる。係止片35は、電線管Dの挿入方向に沿った奥方に形成されている。また、係止片35は、連結壁33に設けられているため、弾性部34を伸長させることで、係止片35の対向間隔が広がることになる。
【0025】
また、側壁32は、蛇腹状に形成された弾性部34を備えているため、弾性部34を伸縮させることで保持部30の内部径(以下、内径と示す)を複数段階に変化可能に構成されている。なお、保持部30の内径とは、対向する係止片35間の長さである。また、保持部30の内径が複数段階に変化することで、周壁31によって囲まれた保持部30の内部空間面積も複数段階に変化することになる。
【0026】
具体的に説明すると、図2(a)に示すように、弾性部34が折り畳まれた状態が初期段階となり、弾性部34を枠本体12の外方に向かって最も伸長させた状態が最終段階となる。初期段階における保持部30の内径R1は、小径電線管の外径よりも小さくなっている。一方、最終段階における保持部30の内径R2は、小径電線管よりも外径が大きい大径電線管を保持可能となるよう、大径電線管の外径よりもやや大きくなるように周壁31の周方向の長さが設定されている。つまり、弾性部34を伸縮させることで、保持部30の内径、及び保持部30の内部空間の面積を変更することができるため、二種類以上の外径の異なる電線管を保持部30の内部で受け入れて弾性部34の弾性力で圧接保持することができる。なお、最終段階における保持部30の内径R2は、立設された2枚の壁Wの間に形成される空間(図示せず)の奥行きよりも短い。これにより、保持部30を枠本体12の外方に最大限伸長させたとしても、保持部30が立設された2枚の壁Wのうち裏面に位置する壁Wに当接することがない。
【0027】
また、図2(a)に示すように、初期段階における弾性部34の折り畳み間隔Q1は、対向する側壁32によってケーブルCをその厚み方向から挟持することで保持可能な長さに形成されてなる。つまり、環状の外側に屈曲した箇所と環状の内側に屈曲した箇所の間である弾性部34の折り畳み間隔Q1は、ケーブルCの厚みより小さい幅となっている。これにより、弾性部34の折り畳み間隔Q1に相当する箇所は、ケーブルCを強制的に圧入することでケーブルCを挟持する挟持部36として機能する。
【0028】
次に、配線器具Hを保持する器具保持枠40について説明する。
図1に示すように、器具保持枠40は、縦長矩形枠状に形成されるとともに、器具保持枠40の内側には、縦長矩形状の器具保持孔41が形成されている。なお、器具保持枠40の長辺方向への長さM1は、壁孔Waの長辺方向への長さN1より長い。一方、器具保持枠40の短辺方向への長さM2は、壁孔Waの短辺方向への長さN2より短い。器具保持枠40の短辺方向に沿った略中央には、器具保持孔41を間に挟むように一対の挿通孔42が、器具保持枠40を厚み方向に貫通してそれぞれ形成されている。各挿通孔42は、器具保持枠40の短辺方向に細長に延びる長孔状に形成されている。
【0029】
次に、器具取付枠11の作用を、器具保持枠40を用いて配線器具Hを壁Wに設置する方法とともに、図4及び図5に従って説明する。なお、壁W裏には、ケーブルCが配線されるとともに、このケーブルCは、電線管D内に配線されている。また、ケーブルCは、その余長部が、電線管Dより引き出されている。
【0030】
まず、壁Wの所望位置に壁孔Waを、電動穿孔具を用いて穿設するとともに、壁W裏に配設されたケーブルCの余長部を壁孔Waから壁W表に引き出す。そして、作業者Pは、壁W表に引き出したケーブルCを保持部30に挿通するとともに、保持部30の内部に形成された挟持部36で挟持させ、さらに配線器具HにケーブルCを接続する。
【0031】
一辺が開口形成された器具取付枠11に保持部30を形成したことで、壁W裏から引き出したケーブルCを保持部30に挿通し、さらに挟持部36で挟持することができる。これにより、壁W裏に器具取付枠11を配置しても、該器具取付枠11の壁W裏への脱落を抑止することができる。また、配線器具HにケーブルCを接続するまでの間、ケーブルCを配線器具Hの近傍で保持することができるので、配線器具HへのケーブルCの取付作業が行い易くなる。
【0032】
次に、図4に示すように、配線器具Hを器具保持枠40の器具保持孔41に保持させるとともに、器具保持枠40の上側の挿通孔42にビス43を挿通する。そして、このビス43を、器具取付枠11の上側の螺入孔19に挿入するとともに、ナットに螺入し、器具取付枠11と器具保持枠40を仮固定する。すると、器具取付枠11と器具保持枠40は、それぞれビス43を回動軸として互いに回動自在に連結される。
【0033】
そして、器具保持枠40を壁Wの表側に配置しつつ、器具取付枠11のみを壁孔Waを通過させる。このとき、ビス43を回動中心として器具取付枠11を回動させ、壁孔Waの開口縁を開口部15内に位置させるようにし、器具取付枠11を壁孔Waを通過させる。器具取付枠11は、開口部15を有するため、壁Wが厚かったり、壁Wの立設間隔が狭かったりする場合であっても、開口部15の内側に壁Wの開口縁を位置させながら、枠本体12を回動させつつ壁Wの壁孔Waに挿入することで、壁Wの壁孔Waを容易に通過させ、壁Wの裏側に簡単に配置することができる。
【0034】
また、器具取付枠11の裏面には、枠本体12の外方、すなわち器具取付枠11の短辺方向と直交する方向に突出する保持部30が突設されているが、保持部30は弾性部34を有している。このため、器具取付枠11を壁孔Waを通過させる際に、器具取付枠11が壁Wの表面に当接したとしても、図4に示すように、弾性部34が壁Wに押圧されることで保持部30が圧縮変形され、保持部30の突出量が減少する。このように保持部30を弾性変形可能とすることで、壁孔Waを器具取付枠11が通過する際に邪魔にならない。また、ケーブルCや電線管Dを挿通させていない保持部30も、弾性部34の弾性変形によってその突設量が減少するため、壁孔Waを器具取付枠11が通過する際に邪魔にならない。
【0035】
次に、作業者Pは、保持部30を枠本体12の外方に向かって伸長させ、保持部30の内部に電線管Dを挿通させる。そして、作業者Pが保持部30の伸長作業を止めると、保持部30の初期段階への復帰力によって、保持部30の内面が電線管Dの外面を圧接することで、保持部30内部に電線管Dが保持される。また、係止片35が電線管Dの外面に係止することで電線管Dの軸方向への移動が規制される。また、電線管Dが保持部30の内面によって圧接保持されるため、器具取付枠11の自重によって、電線管と保持部30の接続状態が外れることがない。
【0036】
保持部30に蛇腹状に形成されてなる弾性部34を設けたことで、保持部30を枠本体12の裏面において伸縮させることができる。そして、弾性部34を伸縮させることで保持部30の内径が拡縮するため、複数種類の外径の電線管Dを1つの保持部30で保持することができる。
【0037】
次に、壁Wの裏側で、係止突部17及び第1,第2規制突部18a,18bを壁孔Wa内に挿入する。すると、図3に示すように、係止突部17及び第1,第2規制突部18a,18bは、壁孔Waの内面に当接することで器具取付枠11が壁Wに位置決めされる。この位置決め状態では、挟持片13に相当する当接面12aが、壁孔Waの上下両縁部に当接するとともに、連結片14に相当する当接面12aが、壁孔Waの左縁部に当接している。また、器具取付枠11の開口部15が、壁孔Waから壁Wの表側に臨むとともに、螺入孔19も壁孔Waから壁Wの表側に臨んでいる。
【0038】
さらに、図5に示すように、上側の係止突部17の各爪片17aを、壁孔Waの上側面W1に食い込ませて係止させるとともに、下側の係止突部17の各爪片17aを、壁孔Waの下側面W2に食い込ませて係止させる。すると、各爪片17aの係止により、器具取付枠11が壁Wの裏側へ落下することが規制される。
【0039】
続いて、器具取付枠11に対し、上側のナットに螺入されたビス43をさらに螺入する。さらに、器具保持枠40の下側の挿通孔42に対し、ビス43を挿通するとともに、そのビス43を器具取付枠11の下側の螺入孔19のナットに螺入する。そして、両ビス43を増締めすると、ビス43のナットへの螺進に伴い器具保持枠40が壁Wに引寄せられるとともに、器具取付枠11と、器具保持枠40とで壁Wが挟持される。そして、ビス43のナットへの螺入により、配線器具Hが壁Wの表側に設置されることで、器具保持枠40とともに壁Wを挟んで器具取付枠11が壁Wの裏側に設置される。このとき、図5に示すように、枠本体12の当接面12aが、壁Wの裏面における壁孔Waの周縁部に当接する。
【0040】
このとき、ガイド片20が、壁W表側から視認可能となるため、目視した際のガイド片20の突出量から、壁W裏での器具取付枠11の当接状態を確認することができる。すなわち、ガイド片20を壁孔Waに対して垂直かつ平行に視認することができたときには、器具取付枠11が壁W裏における正常位置に配置されたことを確認することができる。一方、ガイド片20を壁孔Waに対して垂直又は平行に視認することができなかったときには、器具取付枠11が壁W裏における正常位置に配置されていないことを確認することができる。
【0041】
上記実施形態によれば、以下のような効果を得ることができる。
(1)環状形成された周方向の一部が切欠された枠本体12を備えた器具取付枠11において、枠本体12の一面を壁W裏に当接する当接面12aとするとともに、枠本体12における当接面12aと同一面に螺入孔19を形成する一方、当接面12aの反対面には、ケーブルCを挿通した状態で枠本体12を壁孔Waを通過させて壁W裏に配置した際に、枠本体12の壁W裏でのケーブルCからの脱落を抑止する環状の保持部30を突設した。これによれば、器具取付枠11の一部が切欠形成されることで、器具取付枠11が開口部15を有する場合であっても、保持部30の環状構成によってケーブルCに器具取付枠11が支持される。その結果として、器具取付枠11が壁W裏に配置されても、器具取付枠11が壁W裏に落下することがなく、配線器具HへのケーブルCの接続作業や配線器具Hの設置作業をスムーズに行うことができる。
【0042】
(2)周壁31、より詳しくは側壁32が蛇腹状をなすことで、保持部30に弾性を備えさせた。これによれば、保持部30が弾性変形可能となるため、保持部30の変形が行い易くなる。
【0043】
(3)保持部30の周壁31、より詳しくは側壁32を蛇腹状に形成し、その折り畳み間隔Q1(隣り合う周壁31)によって、挿通されるケーブルCを厚み方向から挟持可能とした。これによれば、保持部30における屈曲箇所としての挟持部36でケーブルCを挟持することができるため、より一層、ケーブルCを脱落し難くすることができる。
【0044】
(4)電線管Dの周方向を取り囲むように連続する環状に形成された保持部30を備えた器具取付枠11において、保持部30の環状を形成する周壁31に、保持部30の周壁31が取り囲む内部空間が初期段階からその内部空間を拡張するように弾性変形可能な弾性部34を設けた。そして、該弾性部34を変形させて拡張させることで保持部30の内部空間に電線管Dを挿入可能であるとともに、初期段階に戻ることで電線管Dの外面に保持部30の周壁31内面を圧接させて周壁31内部に挿入した電線管Dに対して、元に戻ろうとする弾性復帰力によって電線管Dの外面に圧接させて電線管Dを保持可能とした。これによれば、伸長するだけで保持部30の内径を変更することができるので、使用する電線管Dの外径にかかわらず、同一の保持部30で保持することができる。
【0045】
(5)保持部30を、少なくとも二種類の外径の電線管D(小径電線管及び大径電線管)を保持可能とすべく、初期段階における保持部30の内部空間は小径電線管が挿通できない大きさであるとともに、大径電線管を挿通可能となる大きさまで拡張可能となるようにした。これによれば、初期段階への保持部30の復帰力によって、保持部30内側に挿通した電線管Dを保持部30で保持することができる。また、電線管Dを保持部30で保持することで、電線管Dを保持部30で保持せずに、ケーブルCを引き出して配線器具Hに接続する場合に比して、電線管Dで保護されないケーブルCの露呈量が少なくなる。
【0046】
(6)また、使用する電線管Dの外径にかかわらず、同一の保持部30で保持することができるため、使用する電線管Dの外径に合った内径の保持部30を個別に形成しなくても、保持部30を変形させるだけで対応可能な範囲の電線管であれば、全て1つの保持部30で保持することができる。
【0047】
(7)初期段階における保持部30の内径R1を、小径電線管の外径よりも小さく形成するが、弾性部34によって、小径電線管より外径の大きい電線管Dの外形より保持部30の内径を拡張可能に形成した。弾性部34は弾性力を備えているため、その弾性力によって少ない力でも保持部30が拡張し易くなる。また、伸長した後の復帰力が電線管Dに加わることで電線管Dが保持されるため、電線管Dが脱落し難くなる。
【0048】
(8)弾性部34は、周壁31に蛇腹状に形成された蛇腹屈曲部を有している。そして、屈曲した弾性部34を伸長した状態における保持部30の内径R2が、大径電線管の外径よりも大きくなるようにした。弾性部34を形成することで、該弾性部34において屈曲されている分だけ保持部30の延設方向への長さが収縮されるため、器具取付枠11自体が嵩張らない。
【0049】
(9)保持部30は、対向する箇所を互いに離間させることで保持部30の内部空間が拡張するものである。そして、弾性部34を、保持部30において離間させる箇所と略直交する両側部(両側壁32)に設けた。弾性部34を対向した箇所に設けた場合、対向していない箇所に設けた場合に比して均等に力がかかるので、あまり力を入れなくても容易に保持部30の伸長作業を行うことができる。
【0050】
(10)弾性部34を、対向した係止片35の対向間隔を広げる方向に弾性変形可能とした。これによれば、弾性部34の伸長に合わせて係止片35の位置も変位するので、係止片35による電線管Dの係止能力を維持しつつ、どのような外径の電線管Dも保持することができる。
【0051】
(11)保持部30の内側に、電線管Dの軸方向への移動を規制する係止片35を設けた。対向位置に設けられた係止片35によって電線管Dが係止されるため、より一層、電線管Dが保持部30から脱落し難くなる。
【0052】
(12)壁W表側から、壁Wに穿設された壁孔を通過させて壁W裏に配置される器具取付枠11において、壁W裏のケーブルCが挿通される環状の保持部30を、枠本体12の背面に突設した。そして、保持部30の周方向に、該保持部30の突出量を減少可能とすべく弾性部34に設けた。これによれば、器具取付枠11を壁W表側から壁孔Waを通過させて壁W裏に配置するときに、器具取付枠11が壁Wに当接したとしても、保持部30が弾性部34を有しているため、弾性部34の変形によって保持部30の突出量が減少するので、器具取付枠11の壁W裏への設置作業をスムーズに行うことができる。その結果、ケーブルCの配線作業を簡単に行うことができる。
【0053】
(13)ケーブルCや電線管Dを挿通させていない保持部30も、弾性部34の弾性変形によってその突設量が減少するため、使用しない保持部30があったとしても、壁孔Waを器具取付枠11が通過する際に邪魔にならない。
【0054】
(14)保持部30を、枠本体12の背面において螺入孔19を避けた位置に形成した。これによれば、螺入孔19に挿通されたビス43が枠本体12の背面に突出しても、保持部30で保持した電線管Dと干渉しないので、螺入孔19へのビス43の螺着作業や、保持部30への電線管Dなどの挿通作業をそれぞれスムーズに行うことができる。
【0055】
(15)枠本体12を、環状形成された板状の枠本体12における周方向の一部を切欠形成した形状とした。そして、枠本体12の背面において、保持部30を、螺入孔19を避けた位置に突設した。さらに、枠本体12の背面を保持部30の一部とし、残りの箇所に弾性部34を設けることで保持部30を形成した。これによれば、枠本体12の一部が保持部30を成すことになるので、保持部30が枠本体12から脱落することがなくなり、保持部30を枠本体12に固定しつつ、弾性変形させることで、器具取付枠11の壁W裏への設置作業をスムーズに行うことができる。
【0056】
(16)保持部30を、枠本体12と、該枠本体12から枠本体12の外方に向かって延出する対向した側壁32と、両側壁32の先端を連結する連結壁33と、によって構成した。そして、弾性部34を両側壁32にそれぞれ設けた。保持部30の両側壁32は、壁Wに直接当接しないので、器具取付枠11と壁Wが当接した際に生じる圧力を、両側壁32に形成された弾性部34から分散させ易い。
【0057】
(17)器具取付枠11を、縦長矩形枠を構成する長辺のうち一辺を切欠除去することで開口部15を有する形状とした。このため、枠本体12の開口部15を利用することで、壁孔Waに対し器具取付枠11を通過させる作業を容易に行うことができ、結果として器具取付枠11を壁Wの裏側に簡単に配置することができる。
【0058】
(第2の実施形態)
次に、本発明を具体化した第2の実施形態を図6(a),(b),(c)及び図7に従って説明する。なお、以下に説明する実施形態では、既に説明した第1の実施形態と同一構成については、同一符号を付すなどして、その重複する説明を省略又は簡略する。
【0059】
本実施形態の器具取付枠100では、図6(a),(b)に示すように、各挟持片13の裏面であって、開口部15と反対側に位置する挟持片13の長辺端部には、保持部30が挟持片13の長辺方向に沿ってそれぞれ二つずつ突設されている。これにより、器具取付枠100は、四個の保持部30を有することになり、各保持部30においてケーブルC及び電線管Dの少なくともどちらか一方を保持することができる。
【0060】
次に、器具取付枠100を用いて配線器具Hを壁Wに設置する方法について、図7に従って説明する。本実施形態では、電線管Dを用いず、ケーブルCを直接保持部30内に挿通させるものとする。
【0061】
作業者Pは、壁W表に引き出したケーブルCを保持部30の内部に形成された挟持部36で挟持させる。そして、ケーブルCを配線器具Hに接続する。また、器具取付枠100は、器具取付枠11に比して保持部30の数が多いため、器具取付枠100を壁孔Waを通過させる際に保持部30が壁Wの表面に当接する確率が高くなる。ところが、保持部30に形成された弾性部34が弾性変形することで、保持部30の数が多くなったとしても、壁孔Waを器具取付枠100が通過する際に邪魔にならない。
【0062】
したがって、上記第2の実施形態によれば、第1の実施形態の(1)〜(17)と同様の効果に加え、以下のような効果を得ることができる。
(18)器具取付枠100では、枠本体12の裏面に位置する各挟持片13の長辺方向に沿って保持部30をそれぞれ二つずつ突設することで、計四つの保持部30を設けた。このように、器具取付枠11に比して保持部30の数が多いため、器具取付枠100を壁孔Waを通過させる際に保持部30が壁Wの表面に当接する確率が高くなる。ところが、保持部30に形成された弾性部34が弾性変形することで、保持部30の数が多くなったとしても、壁孔Waを器具取付枠100が通過する際に邪魔にならない。
【0063】
なお、上記各実施形態は以下のように変更しても良い。
○ 各実施形態において、環状のケーブル挿通部(保持部30)は、ケーブルCの径方向への移動により、ケーブルCが該ケーブル挿通部から容易に離脱しなければ、ケーブル挿通部にスリットが形成されていても良い。
【0064】
○ 各実施形態において、保持部30の形成位置は、該保持部30と螺入孔19の形成位置が重複しなければ、どこに形成しても良い。例えば、挟持片13において螺入孔19よりも内方に位置しても良い。
【0065】
○ 各実施形態において、最終段階における保持部30の内径R2は、立設された2枚の壁Wの間に形成される空間の奥行きよりも長くても良い。この場合、最終段階における保持部30の実質的な内径R2は、2枚の壁Wの間に形成される空間の奥行きより若干短い長さが、最終段階における保持部30の実質的な内径R2となる。
【0066】
○ 各実施形態では、保持部30が弾性変形可能となるのであれば、弾性部34の折り畳み方向は、如何なる方向であっても良い。例えば、図8(a)〜(c)に示すように、電線管Dの軸方向、すなわち器具取付枠100の長辺方向に沿って周壁31が外側と内側に交互に折り畳まれていても良い。
【0067】
○ 各実施形態において、保持部30の形状は、少なくともケーブルCを保持することができる内径を有するのであれば、どのような形状であっても良い。例えば、図9(a)に示すように、保持部30を構成する周壁31のうち枠本体12の裏面と接続されている接続部37を除く全周が、蛇腹状に形成されていても良い。この場合、全周が蛇腹状に形成されていることから、保持部30内に挿入された電線管Dの外径に応じて、保持部30の内径が追従して変化することになる。また、保持部30は弾性を備えていれば良く、周壁31を蛇腹状に折り畳む必要はない。例えば、図9(b)に示すように、接続部37を基端とし、その基端から周壁31を円形状に湾曲させることで開口38及び弾性を有する保持部30を形成しても良い。この場合、開口38の開口幅は、保持部30内に挿通したケーブルCが脱落しないよう、ケーブルCの厚みよりも短いことが望ましい。また、接続部37を基端として周壁31を円形状に湾曲させることで弾性を有しているため、周壁31の自由端側を保持部30の外方に向かって伸長させることで、保持部30内に電線管Dを挿通することができる。
【0068】
○ 各実施形態では、弾性部34の弾性によって初期段階における保持部30の内径R1も縮小可能としたが、初期段階における保持部30の内径R1を、それ以上縮小する方向に変化しないようにしても良い。この場合、弾性部34の折り畳み間隔と周壁31の厚みなどから、初期段階における保持部30の内径R1を、それ以上縮小する方向に変化しないような長さに設定することで実現可能となる。
【0069】
○ 各実施形態において、側壁32を蛇腹状に折り畳むことで弾性部34を形成するのであれば、その折り畳み間隔はどのような長さであっても良い。例えば、折り畳み間隔が、ケーブルCの厚みよりも長くても良い。
【0070】
○ 各実施形態では、弾性部34が壁Wに押圧された際に生じた力を利用して器具取付枠11,100側に弾性変形させることで、壁孔Waを器具取付枠11,100が通過する際に邪魔にならないようにした。この変更例として、塑性変形可能な保持部30を用いても良い。この場合、壁孔Waに器具取付枠11,100を通過させる前に、作業者Pが保持部30を折り畳むことで保持部30の突出量を減少させ、壁孔Waを通過させた際に、作業者Pが保持部30を枠本体12の外方に伸長させれば良い。また、塑性変形可能な保持部30を用いた場合、保持部30の初期段階への復帰力ではなく、保持部30の内径を縮小させるように作業者Pが保持部30を押圧することで、保持部30の内部に電線管Dが保持されることになる。
【0071】
○ 各実施形態においてケーブルC又は電線管Dを保持することができるのであれば、保持部30は如何なる箇所に形成されていても良い。例えば、挟持片13の両短辺の開口端部に設けられていても良いし、連結片14に設けられていても良い。ただし、螺入孔19へのビス43の挿通が妨げられない位置に保持部30を設けることが好ましい。
【0072】
○ 各実施形態では、保持部30の対向した箇所(側壁32)に弾性部34を形成したが、対向した位置でなくても良い。また、弾性部34の形成箇所は1箇所であっても良い。すなわち、器具取付枠11,100が壁Wの表面に当接した際に生じた力が、器具取付枠11,100に伝達せず、保持部30から外部に逃げられれば良い。
【0073】
○ 各実施形態において、保持部30では1種類の外径の電線管しか保持できなくても良い。
○ 各実施形態では、保持部30を一対の螺入孔19のうちどちらか一方の螺入孔19が形成されている挟持片13の裏面に形成しても良い。
【0074】
○ 各実施形態では、小径電線管と大径電線管の2種類を保持可能としたが、3種類以上の外径の異なる電線管Dを保持させても良い。
○ 各実施形態において、保持部30は枠本体12に一体成形されていなくてもよく、保持部30が別体形成されていても良い。
【0075】
○ 各実施形態における保持部30をバインド線で成形しても良い。
○ 各実施形態では、電線管Dの軸方向への移動を規制できるのであれば、保持部30の内面に形成する係止片35の数は、二つに限られない。また、保持部30の内面であれば、どこに形成しても良い。
【0076】
○ 各実施形態におけるケーブル挿通部は、ケーブルCが内部に挿通される電線管Dの接続部としての機能を有するものを含んでも良い。電線管Dは、壁W裏に枠本体12を配置してから、又は壁W裏に枠本体12を配置しながら接続するものであるため、電線管Dの設置時にケーブル挿通部が邪魔にならない。
【0077】
○ 各実施形態では、係止突部17を削除しても良い。
○ 各実施形態では、第1,第2規制突部18a,18bを削除しても良い。
○ 各実施形態では、枠本体12における挟持片13の長辺方向への長さT2を、壁孔Waの幅(短辺方向への長さN2)と同じにしたが、枠本体12における挟持片13の長辺方向への長さT2を、壁孔Waの幅より短くしても良い。
【0078】
○ 各実施形態では、器具取付枠11,100を、取着部としての螺入孔19及びナットを上下一対備えるタイプに具体化したが、器具取付枠11,100を、枠本体12を短辺方向に延長し、取着部を上下二対以上備えるタイプに変更しても良い。
【0079】
○ 各実施形態では、配線器具Hを壁Wに設置する際、ビス43によって器具取付枠11,100と器具保持枠40を組み付けた状態で、器具取付枠11,100を壁Wの裏側に配置するようにしたが、これに限らない。すなわち、器具取付枠11,100と器具保持枠40を組み付けず、器具取付枠11,100のみを壁Wの裏側に配置し、その後、ビス43によって器具取付枠11,100に器具保持枠40を組み付けても良い。
【0080】
○ 各実施形態では、器具取付枠11,100の壁W裏への配置タイミングや、保持部30への電線管D及びケーブルCの挿通タイミングは、上記実施形態のタイミングに限られない。例えば、壁W表において、保持部30にケーブルCを挿通させた電線管Dを保持させた後、器具取付枠11,100を壁W裏に配置させても良い。
【0081】
また、電線管Dを使用しない場合、強度の大きいケーブルCを使用し、壁孔Waから引き出したケーブルCを保持部30に挿通して、器具取付枠11を壁孔Waを通過させて壁W裏に配置する。このとき、図10に示すように、保持部30に挿通したケーブルCの先端を折り返すように折り曲げておく。その後、壁W裏に配置した器具取付枠11を壁孔Wa側に引き寄せることで、爪片17aが壁孔Wa内面に係止して、器具取付枠11が壁Wに取り付けられる。そして、ケーブルCを配線器具Hと接続し、器具保持枠40に配線器具Hを保持させる。続いて、配線器具Hを保持した器具保持枠40を器具取付枠11にビス43で固定する。この作業の間に、ケーブルCが壁Wに対して進退動し、それに伴って器具取付枠11における爪片17aの壁孔Waへの係止がはずれることがあっても、環状形成された保持部30にケーブルCが挿通されているため、器具取付枠11がケーブルCに支えられることになり、器具取付枠11が壁W裏に脱落することがない。なお、電線管Dを使用する場合、壁W裏において電線管D内にケーブルCが配線された状態で壁Wに壁孔Waを穿設して、その壁孔WaからケーブルCを壁W表側に引き出し、壁W表において、保持部30にケーブルCを挿通し、さらに保持部30に電線管Dを接続する。
【0082】
○ 各実施形態では、器具取付枠11,100を、壁Wに対して傾動させながら壁孔Waを通過させる際に、保持部30の突出が障害とならないように、枠本体12に対してその突設方向を変更可能としても良い。つまり、各実施形態では、弾性部34が壁Wに押圧されることで、保持部30の突出方向を変えず、その突出量を減少させていたが、壁Wに押圧されることで、保持部30自体が器具取付枠11,100の短辺方向に向かって湾曲されるように変形するなどしても良い。
【0083】
次に、上記実施形態及び別例から把握できる技術的思想を以下に追記する。
(イ)前記ケーブル挿通部は、壁裏に配管され、内部に前記ケーブルが配線される電線管を受け入れるとともに、受け入れた該電線管に対して前記器具取付部材自身の自重では前記電線管から落下しないように当該電線管に取着可能である請求項1に記載の器具取付部材。
【0084】
(ロ)前記ケーブル挿通部は、受け入れた前記電線管の外面に係止する係止部を有する前記技術的思想(イ)に記載の器具取付部材。
(ハ)前記ケーブル挿通部は、該ケーブル挿通部の取り囲む内部空間が初期段階からその内部空間を拡張するように弾性変形又は塑性変形可能に構成されており、初期段階における前記ケーブル挿通部の内部空間は、前記電線管が挿通できない大きさであるとともに、前記ケーブル挿通部を変形させることで前記電線管を挿通可能となる大きさまで拡張可能であり、拡張して挿通した前記電線管に対して元に戻ろうとする弾性復帰力又は元に戻した塑性変形によって前記電線管の外面に圧接する前記技術的思想(イ)又は(ロ)に記載の器具取付部材。
【0085】
(ニ)前記ケーブル挿通部は、少なくとも二種類の外径の前記電線管に取着可能である前記技術的思想(イ)〜(ハ)のうちいずれか一項に記載の器具取付部材。
(ホ)前記ケーブル挿通部は、少なくとも二種類の外径の前記電線管に取着可能とすべく、該ケーブル挿通部の取り囲む内部空間が初期段階からその内部空間を拡張するように弾性変形又は塑性変形可能に構成されており、初期段階における前記ケーブル挿通部の内部空間は、小径の電線管が挿通できない大きさであるとともに、前記ケーブル挿通部を変形させることで大径の電線管を挿通可能となる大きさまで拡張可能である前記技術的思想(イ)〜(ニ)のうちいずれか一項に記載の器具取付部材。
【符号の説明】
【0086】
C…ケーブル、D…電線管、H…配線器具、R1…初期段階における保持部30の内径、R2…最終段階における保持部30の内径、W…壁、Wa…壁孔、11…器具取付部材としての器具取付枠、12…本体としての枠本体、12a…当接面、15…開口部、19…取着部を形成する螺入孔、30…ケーブル挿通部としての保持部、31…保持部の周壁、32…保持部の側壁、34…蛇腹部としての弾性部、35…係止部としての係止片、36…保持部の挟持部。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11