【実施例】
【0014】
実施例の動力工具10について、図面を参照しながら説明する。
図1に示すように、動力工具10は、一例ではあるが、ポールヘッジトリマであり、生垣2を剪定するために使用される園芸用の動力工具である。特に、ポールヘッジトリマは、背の高い生垣の上部など、ユーザ(図示省略)の手が届きにくい範囲の剪定に、好適に用いることができる。
【0015】
図1、
図2に示すように、動力工具10は、中空ポール22と、中空ポール22の一端に設けられた原動機20と、中空ポール22の他端に設けられたヘッドユニット30を備えている。原動機20は、一例ではあるが、ガソリンを燃料とするエンジンである。なお、原動機20は、エンジンに限られず、例えば電動モータであってもよい。ヘッドユニット30は、工具であるブレードアセンブリ32を有している。ブレードアセンブリ32は、櫛状に刃先が並ぶ一対のシャーブレードを備えている(
図3、
図4参照)。ブレードアセンブリ32は、原動機20によって駆動される。
【0016】
図2に示すように、中空ポール22の内部には、伝達シャフト26が回転可能に収容されている。伝達シャフト26の一端は、原動機20に接続されており、伝達シャフト26の他端は、ヘッドユニット30に接続されている。伝達シャフト26は、原動機20からのトルクを、ブレードアセンブリ32を有するヘッドユニット30へ伝達する。中空ポール22には、ユーザが把持するためのハンドル24が設けられている。ハンドル24には、原動機20の出力を調整するためのスロットル(図示省略)が設けられている。
【0017】
図2に示すように、ヘッドユニット30は、関節機構40を備えている。関節機構40は、中空ポール22に対してブレードアセンブリ32を回転可能に支持している。ブレードアセンブリ32は、関節機構40により、使用位置A−B−Cと収容位置Dとの間で回転移動することができる。ユーザは、剪定する生垣2の表面の角度に応じて、ブレードアセンブリ32の位置を、使用位置A−B−Cの間で調整することができる。また、ユーザは、動力工具10の搬送や保管をするときは、便宜のために、ブレードアセンブリ32を収容位置Dに移動させることができる。ブレードアセンブリ32が収容位置Dにあるとき、ブレードアセンブリ32は中空ポール22に沿って配置され、動力工具10の全長は短くなる。
【0018】
図3、
図4に示すように、ヘッドユニット30は、ブレードアセンブリ32を着脱可能に保持するブレードホルダ34と、中空ポール22に固定された固定ハウジング36を備えている。ブレードホルダ34と固定ハウジング36は、関節機構40によって接続されており、相対的に回転可能となっている。さらに、ヘッドユニット30は、ロック解除スリーブ38を有している。ロック解除スリーブ38は、中空ポール22に取り付けられており、中空ポール22に沿ってスライド可能となっている。ロック解除スリーブ38には、ユーザが把持するためのグリップ39が設けられている。詳しくは後述するが、ユーザがロック解除スリーブ38を操作することによって、関節機構40がロック/アンロックされる。ここで、関節機構40がロックされるとは、中空ポール22に対するブレードアセンブリ32の回転が禁止されることを意味し、関節機構40がアンロックされるとは、中空ポール22に対するブレードアセンブリ32の回転が許容されることを意味する。
【0019】
図5、
図6を参照して、ヘッドユニット30の内部構造について説明する。ヘッドユニット30は、丸棒状のロック部材62と、略円板状のアンギュラプレート64を備えている。ロック部材62は、固定ハウジング36によって支持されている。ロック部材62は、中空ポール22と平行に配置されており、中空ポール22の軸方向にスライド可能となっている。ロック部材62の基端は、ロック解除スリーブ38に固定されており、ロック部材62の先端は、アンギュラプレート64に対向している。ロック部材62及びロック解除スリーブ38は、コイルばね72によって、アンギュラプレート64に向けて付勢されている。本実施例では、ロック部材62と平行に、丸棒状のサポート部材63が設けらている。サポート部材63もまた、固定ハウジング36によってスライド可能に支持されている。サポート部材63は、中空ポール22を挟んで、ロック部材62と反対側に位置している。サポート部材63は、アンギュラプレート64とは係合しない。
【0020】
アンギュラプレート64は、ブレードホルダ34に固定されている。アンギュラプレート64は、ロック部材62の先端と周方向に関して係合/係合解除することが可能なロック受け部材である。アンギュラプレート64には、周方向に沿って、複数の第1受け入れ部66aと、複数の第2受け入れ部66bが形成されている。複数の第1受け入れ部66aは、ブレードアセンブリ32が使用位置A−B−Cにあるときに(
図2参照)、ロック部材62の先端に対向する範囲に設けられている。一方、複数の第2受け入れ部66bは、ブレードアセンブリ32が収容位置Dにあるときに(
図2参照)、ロック部材62の先端に対向する範囲に設けられている。第1及び第2受け入れ部66a、66bのそれぞれは、ロック部材62の先端を受け入れ可能な溝である。
図5、
図6では、ロック部材62の先端が、一つの第1受け入れ部66aに挿入されている。このとき、関節機構40はロックされている。
図5、
図6に示すロック部材62の位置を、本明細書ではロック位置という。
【0021】
図7、
図8に示すように、ユーザは、ロック解除スリーブ38を操作することによって、関節機構40をアンロックすることができる。即ち、ユーザが中空ポール22に沿ってロック解除スリーブ38を引くと、ロック部材62がアンギュラプレート64から離れるように移動して、ロック部材62の先端がアンギュラプレート64の第1受け入れ部66a(又は第2受け入れ部66b)から離脱する。その結果、関節機構40はアンロックされ、中空ポール22に対するブレードアセンブリ32の回転が許容される。このときのロック部材62の位置を、本明細書ではアンロック位置という。
図7、
図8では、ブレードアセンブリ32が、使用位置と収容位置の間の中間範囲に位置している。このとき、ロック部材62の先端は、アンギュラプレート64の外周面68に接触する。この外周面68の少なくとも一部は、関節機構40の中心軸からの半径Rが、第1受け入れ部66a側から第2受け入れ部66b側に向けて、徐々に小さくなっていく半径変化部分となっている。この構成によると、ブレードアセンブリ32が使用位置と収容位置との間の中間範囲にあるときに、ブレードアセンブリ32を収容位置に向けて付勢することができる。それにより、ブレードアセンブリ32が意図せず使用位置に移動することを防止することができる。
【0022】
図9、
図10に示すように、ブレードアセンブリ32が収容位置へ移動すると、ブレードアセンブリ32の先端は、アンギュラプレート64の第2受け入れ部66bに挿入可能となる。それにより、関節機構40はロックされる。ここで、第2受け入れ部66bは、第1受け入れ部66aよりも、径方向の寸法が小さい。そのため、第2受け入れ部66bに挿入されたロック部材62は、ロック位置(
図5、6参照)まで移動することができず、アンロック位置とロック位置との間の中間位置に留まる。この中間位置を、本明細書では第2ロック位置という。このように、ブレードアセンブリ32が収容位置にあるとき、ロック部材62はアンロック位置と第2ロック位置との間で移動可能となり、ロック位置への移動が禁止される。
【0023】
以上のように、本実施例の動力工具10では、ユーザがブレードアセンブリ32の角度を変更することができる。ユーザがブレードアセンブリ32の角度を変更するときに、ブレードアセンブリ32が駆動されるようなことは、回避されなければならない。そのことから、本実施例の動力工具10では、下記するように、クラッチ機構が設けられている。クラッチ機構は、原動機20から伝達シャフト26を通じてブレードアセンブリ32に到るトルクの伝達経路上に設けられ、当該伝達経路を接続/切断することができる。このクラッチ機構は、上述したロック機構を構成するロック部材62に接続されており、ロック機構が関節機構40をアンロックしたときに、クラッチ機構が前記トルクの伝達経路を切断するように構成されている。以下、本実施例のクラッチ機構について、一例ではあるが、詳細に説明する。
【0024】
図5、7、9に示すように、固定ハウジング36の内部には、駆動側クラッチ部材54と従動側クラッチ部材56を含む、一対のクラッチ部材54、56が設けられている。駆動側クラッチ部材54は、伝達シャフト26側に接続されており、従動側クラッチ部材56は、ブレードアセンブリ32側に接続されている。詳しくは、伝達シャフト26の一端にスプライン軸28が固定されており、駆動側クラッチ部材54はそのスプライン軸28に取り付けられている。駆動側クラッチ部材54は、スプライン軸28に対して軸方向に移動可能であるとともに、スプライン軸28(即ち、伝達シャフト26)に対して回転不能に支持されている。駆動側クラッチ部材54は、コイルばね52により、従動側クラッチ部材56に向けて付勢されている。一方、従動側クラッチ部材56は、ギヤシャフト58に回転不能に固定されている。ギヤシャフト58は、複数の中間ギヤ59を介して、ブレードアセンブリ32に接続されている。なお、一対のクラッチ部材54、56(即ち、クラッチ機構)は、原動機20から伝達シャフト26を通じてブレードアセンブリ32に到るトルクの伝達経路上の、いずれの箇所に設けてもよい。
【0025】
図5に示すように、一対のクラッチ部材54、56は、互いに対向しており、近接すると回転方向に関して互いに係合する。このとき、原動機20からトルクは、ブレードアセンブリ32への伝達される。参考として、
図11に、本実施例の一対のクラッチ部材54、56の回転軸に垂直な断面形状を示す。ただし、クラッチ部材54、56の断面形状は特に限定されず、回転方向に関して互いに係合し得る形状であればよい。一方、
図7、9に示すように、一対のクラッチ部材54、56が互いに離間すると、一対のクラッチ部材54、56の係合は解除される。このとき、原動機20からトルクは、ブレードアセンブリ32へ伝達されない。このように、一対のクラッチ部材54、56は、互いに近接/離間することによって、原動機20からブレードアセンブリ32へのトルクの伝達経路を接続/切断することができる。
【0026】
図5、7、9に示すように、固定ハウジング36の内部には、スライドプレート70が設けられている。
図12に示すように、スライドプレート70は、開口71を有する板状の部材である。スライドプレート70は、ロック部材62及びサポート部材63に固定されており、ロック部材62及びサポート部材63と共に、軸方向にスライド可能となっている。スライドプレート70の一部(開口71の周縁部分)は、一対のクラッチ部材54、56の間に介在している。スライドプレート70は、ロック機構のロック部材62と、クラッチ機構の駆動側クラッチ部材54とを互いに接続し、両者を連動させることができる。
【0027】
図5に示すように、ロック部材62がロック位置にあるとき、スライドプレート70は、一対のクラッチ部材54、56が係合することを許容する。一方、
図7に示すように、ロック部材62がアンロック位置に移動すると、スライドプレート70は、駆動側クラッチ部材54を従動側クラッチ部材56から離れるように移動させる。一対のラッチ部材54、56は互いに離間し、その係合は解除される。その結果、原動機20からブレードアセンブリ32へのトルク伝達が切断される。また、
図9に示すように、ロック部材62が第2ロック位置にあるときも、スライドプレート70は、一対のクラッチ部材54、56が近接して係合することを禁止する。その結果、原動機20からブレードアセンブリ32へのトルク伝達は、切断され続ける。
【0028】
以上の構成により、本実施例の動力工具10では、ロック部材62が関節機構40をアンロックすると、一対のクラッチ部材54、56は、原動機20からブレードアセンブリ32へのトルク伝達を切断するように構成されている。その一方で、ロック部材62が関節機構40をロックしても、一対のクラッチ部材54、56は、原動機20からブレードアセンブリ32へのトルク伝達を必ずしも接続しない。即ち、ブレードアセンブリ32が使用位置にあるときに限って、一対のクラッチ部材54、56は、原動機20からブレードアセンブリ32へのトルク伝達を接続する。しかしながら、ブレードアセンブリ32が収容位置にあるときは、ロック部材62が関節機構40をロックしても、一対のクラッチ部材54、56は、ブレードアセンブリ32へのトルク伝達を切断し続ける。
【0029】
本実施例の動力工具10では、ブレードアセンブリ32が使用位置で固定されているときだけ、ブレードアセンブリ32の駆動が許容されるように構成されている。そして、ブレードアセンブリ32が固定されていないときや、ブレードアセンブリ32が収容位置にあるときは、ブレードアセンブリ32の駆動が禁止されるように構成されている。それにより、ブレードアセンブリ32の誤作動を有意に防止することができる。
【0030】
以上、本発明の実施形態について詳細に説明したが、これらは例示に過ぎず、特許請求の範囲を限定するものではない。特許請求の範囲に記載の技術には、以上に例示した具体例を様々に変形、変更したものが含まれる。
【0031】
本明細書または図面に説明した技術要素は、単独であるいは各種の組合せによって技術的有用性を発揮するものであり、出願時の請求項に記載の組合せに限定されるものではない。本明細書または図面に例示した技術は複数の目的を同時に達成するものであり、そのうちの一つの目的を達成すること自体で技術的有用性を持つものである。