特許第5785160号(P5785160)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5785160
(24)【登録日】2015年7月31日
(45)【発行日】2015年9月24日
(54)【発明の名称】吸入器
(51)【国際特許分類】
   A61M 15/00 20060101AFI20150907BHJP
   A61M 13/00 20060101ALI20150907BHJP
【FI】
   A61M15/00 Z
   A61M13/00
【請求項の数】11
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2012-514379(P2012-514379)
(86)(22)【出願日】2010年6月8日
(65)【公表番号】特表2012-529315(P2012-529315A)
(43)【公表日】2012年11月22日
(86)【国際出願番号】EP2010003426
(87)【国際公開番号】WO2010142418
(87)【国際公開日】20101216
【審査請求日】2013年3月15日
(31)【優先権主張番号】61/185,380
(32)【優先日】2009年6月9日
(33)【優先権主張国】US
(31)【優先権主張番号】0910537.0
(32)【優先日】2009年6月18日
(33)【優先権主張国】GB
(73)【特許権者】
【識別番号】509240376
【氏名又は名称】アイバックス ファーマシューティカルズ アイルランド
(74)【代理人】
【識別番号】110000475
【氏名又は名称】特許業務法人みのり特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】カール,サイモン,ジー
(72)【発明者】
【氏名】ウォルシュ,デクラン
(72)【発明者】
【氏名】フェンロン,デリク
(72)【発明者】
【氏名】バック,ダン
【審査官】 鈴木 洋昭
(56)【参考文献】
【文献】 特表2006−502759(JP,A)
【文献】 特表2006−511297(JP,A)
【文献】 米国特許第7934498(US,B1)
【文献】 特表2009−502287(JP,A)
【文献】 米国特許第6994083(US,B2)
【文献】 国際公開第2009/091780(WO,A2)
【文献】 米国特許出願公開第2003/0079743(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61M 15/00
A61M 13/00
WPI
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
薬剤を保持し、前記薬剤が分配される空気流路をともに規定する空気取り込み手段と薬剤送達口とを有するハウジングを含む、患者に薬剤を送達するための計量式吸入器であって、
前記ハウジングは細長い本体を含み、
前記空気取り込み手段は前記細長い本体の端面に備えられており、
前記空気取り込み手段は、ハウジングに形成された細長い開口部の列を含み、隣り合う開口部の長辺が互いに面しており、各開口部はハウジングの外表面にそれぞれに区分された開口を備えており、
前記各開口部がハウジングの表面にそれぞれに区分された凹部を備え、当該凹部が開口部の開口を規定しており、
前記ハウジングの外表面の各開口部の開口は、少なくとも45°の角度を規定する2つの異なる平面に延在して、患者による吸入の間に2つの異なる平面のうちの1つにおいて開口部の開口の少なくとも一部が覆われた場合に、ボイドスペースから少なくとも1の前記開口部への空気流路が形成されるように、患者と開口部との間にボイドスペースが形成される、
患者に薬剤を送達するための吸入器。
【請求項2】
開口部が互いに平行に配置されていることを特徴とする、請求項1に記載の吸入器。
【請求項3】
前記各開口部の開口が、実質的に垂直な平面に延在していることを特徴とする請求項1又は2に記載の吸入器。
【請求項4】
前記空気取り込み手段が、前記細長い本体の端面の両側に配列された、細長い開口部の一組の列を含むことを特徴とする、請求項1〜3のいずれか一項に記載の吸入器。
【請求項5】
前記空気取り込み手段が、前記薬剤送達口が備えられるのと反対側の、前記細長い本体の端面に備えられていることを特徴とする、請求項1〜4のいずれか一項に記載の吸入器。
【請求項6】
前記細長い開口部の列の間に、隆起構造が備えられていることを特徴とする、請求項4に記載の吸入器。
【請求項7】
前記吸入器が、呼吸作動式の計量式吸入器であることを特徴とする、請求項1〜6のいずれか一項に記載の吸入器。
【請求項8】
前記ハウジングが、薬剤収容加圧キャニスターを受けるように適合されていることを特徴とする、請求項1〜7のいずれか一項に記載の吸入器。
【請求項9】
前記吸入器が、薬剤と推進剤とを収容する薬剤収容加圧キャニスターを含んでおり、前記薬剤が前記推進剤に溶解され、又は、前記薬剤が前記推進剤に懸濁されていることを特徴とする、請求項8に記載の吸入器。
【請求項10】
前記薬剤が、抗炎症剤、抗コリン剤、β−アドレナリン受容体アゴニスト、抗感染剤、抗ヒスタミン剤及びそれらの組み合わせからなる群から選ばれる、請求項1〜9のいずれか一項に記載の吸入器。
【請求項11】
前記薬剤が、サルブタモール、フォルモテロール、サルメテロール、フルチカゾン、ブデソニド、ベクロメタゾン、チオトロピウム、イプラトロピウム及びそれらの組み合わせからなる群から選ばれる、請求項1〜9のいずれか一項に記載の吸入器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、患者に薬剤を送達するための吸入器、詳細には、計量式吸入器に関する。
【背景技術】
【0002】
吸入によって患者に薬剤を送達するための吸入器が知られている。このような器具には、計量式吸入器(加圧タイプ及び乾燥粉末タイプの両方)を含む。計量式吸入器は、典型的には、薬剤収容ベッセルとマウスピースやノーズピースの形態である薬剤送達出口を有するアクチュエータハウジングとを含む。
【0003】
薬剤収容ベッセルは、活性を有する薬剤と推進剤との混合物を収容する加圧されたキャニスターでありうる。このようなキャニスターは通常、計量バルブ組立部を保持する圧着蓋を有する、深絞りアルミニウムカップから形成される。計量バルブ組立部は、使用の際には、アクチュエータハウジングのいわゆる「ステムブロック(StemBlock)」に強く押し込んで嵌め込まれる、突出バルブ軸を備える。
【0004】
計量式吸入器には、手動操作タイプと呼吸作動タイプとがある。手動操作タイプでは、患者は、キャニスターがそのバルブ軸に対して移動するように、キャニスターの閉端部をアクチュエータハウジングに押し込むことで、自己投与をおこなう(バルブ軸は、アクチュエータハウジングのステムブロックに固定されている)。この移動は、キャニスターの計量バルブ組立体を作動させるのに十分であって、計量チャンバー中の加圧された内容物は軸を通り、ステムブロックとその出口ジェットとオリフィスを通って放出されることになり、薬剤はエアロゾルミストとしてマウスピースやノーズピースから放出される。この動作と同時に、吸入される空気流の中のエアロゾルミストと同調して、患者はノーズピース又はマウスピースを通じて呼吸する。こうして患者は、キャニスターの除圧力を開放し、キャニスターは内部バルブばねの働きでバルブ軸に対して上方に移動して、休止位置に戻るのである。
【0005】
より最近の発展は、いわゆる呼吸作動式の計量式吸入器であり、これは、自動的にキャニスターをバルブ軸に対して移動させ、患者の呼吸に応答してキャニスターの計量チャンバーの内容物を放出するものである。このような吸入器の一般的な目的は、患者の呼吸に合わせた計量バルブ組立体の協同的な作動の難しさを緩和すること、また、患者の肺に導入される薬剤の量を最大にすることである。呼吸作動式の計量式吸入器は、WO01/93933 A2に開示されている。
【0006】
アクチュエータハウジングは一般的に、薬剤送達システムの不可欠部であると考えられている。なぜなら、ハウジングのデザインは、患者の吸入のために作り出される薬剤の形態に、多大に影響しうるからである。計量式吸入器のアクチュエータハウジングは、典型的に、薬剤が放出されるアクチュエータハウジングを通る空気流を作り出すための、空気取り込み手段を含んでいる。
【0007】
さらに、呼吸作動式吸入器では、アクチュエータハウジングを通る空気流は、呼吸作動式機構を典型的には操作し、又は呼吸作動式機構に何らかの方法で少なくとも影響を与える。それゆえに、このような吸入器のアクチュエータハウジングは、ハウジングを通って空気を流させるようにデザインされた空気取り込み口を含む。しかしながら、このような空気取り込み口は、使用の間に患者の手や指で覆われ又は閉塞される可能性があり、アクチュエータハウジングを通る空気流が妨げられ又は影響されることとなり、結果として、呼吸作動式の機構が誤作動するというという問題があった。この問題は、空気取り込み口が、アクチュエータハウジングの、患者の使用の間に吸入器を持つのに都合のよい位置に備えられるという事実によってしばしば深刻なものとなっている。
【0008】
このように、本技術分野では、患者が使用する間に閉塞されたりブロックされたりする可能性が低く、また同時に、患者には、より簡単で便利な操作を可能とする、改善された空気流の構造を提供する必要性がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】国際公開公報WO01/93933号
【発明の概要】
【0010】
本発明は、[1]薬剤を保持し、前記薬剤が分配される空気流路をともに規定する空気取り込み手段と薬剤送達口とを有するハウジングを含む、患者に薬剤を送達するための計量式吸入器であって、前記ハウジングは細長い本体を含み、前記空気取り込み手段は前記細長い本体の端面に備えられており、前記空気取り込み手段は、ハウジングに形成された細長い開口部の列を含み、隣り合う開口部の長辺が互いに面しており、各開口部はハウジングの外表面にそれぞれに区分された開口を備えており、前記各開口部がハウジングの表面にそれぞれに区分された凹部を備え、当該凹部が開口部の開口を規定しており、前記ハウジングの外表面の前記各開口部の開口は、少なくとも45°の角度を規定する2つの異なる平面に延在して、患者による吸入の間に2つの異なる平面のうちの1つにおいて開口部の開口の少なくとも一部が覆われた場合に、ボイドスペースから前記少なくとも1の開口部への空気流路が形成されるように、患者と開口部との間にボイドスペースが形成される、患者に薬剤を送達するための吸入器を提供する。
また本発明は、[2]開口部が互いに平行に配置されていることを特徴とする、前記[1]に記載の吸入器を提供する。
また本発明は、[3]前記各開口部の開口が、実質的に垂直な平面に延在していることを特徴とする、前記[1]又は[2]に記載の吸入器を提供する。
また本発明は、[4]前記空気取り込み手段が、前記細長い本体の端面の両側に配列された、細長い開口部の一組の列を含むことを特徴とする、前記[1]〜[3]のいずれか一項に記載の吸入器を提供する。
また本発明は、[5]前記空気取り込み手段が、前記薬剤送達口が備えられるのと反対側の、前記細長い本体の端面に備えられていることを特徴とする、前記の[1]〜[4]のいずれか一項に記載の吸入器を提供する。
また本発明は、[6]前記細長い開口部の列の間に、隆起構造が備えられていることを特徴とする、前記[4]に記載の吸入器を提供する。
また本発明は、[7]前記吸入器が、呼吸作動式の計量式吸入器であることを特徴とする、前記[1]〜[6]のいずれか一項に記載の吸入器を提供する。
また本発明は、[8]前記ハウジングが、薬剤収容加圧キャニスターを受けるように適合されていることを特徴とする、前記[1]〜[7]のいずれか一項に記載の吸入器を提供する。
また本発明は、[9]前記吸入器が、薬剤と推進剤とを収容する薬剤収容加圧キャニスターを含んでおり、前記薬剤が前記推進剤に溶解され、又は、前記薬剤が前記推進剤に懸濁されていることを特徴とする、前記[8]に記載の吸入器を提供する。
また本発明は、[10]前記薬剤が、抗炎症剤、抗コリン剤、β−アドレナリン受容体アゴニスト、抗感染剤、抗ヒスタミン剤及びそれらの組み合わせからなる群から選ばれる、前記[1]〜[9]のいずれか一項に記載の吸入器を提供する。
また本発明は、[11]前記薬剤が、サルブタモール、フォルモテロール、サルメテロール、フルチカゾン、ブデソニド、ベクロメタゾン、チオトロピウム、イプラトロピウム及びそれらの組み合わせからなる群から選ばれる、前記[1]〜[9]のいずれか一項に記載の吸入器を提供する。

【0011】
発明者らは、各々区分された開口を有し、各々が2つの異なる面に延在する複数の細長い開口部を設けることが、空気取り込み手段がブロックされるリスクを最小化することを見出した。区分された開口とは、各開口部の開口が、少なくとも部分的に、その開口に固有の表面によって区画されていることを意味している。
【0012】
発明の実施形態では、空気取り込み手段が、使用の間に患者によって、特に、患者の指や親指(いずれも軟組織を含み、多様な表面の起伏を形作ることができる)によってブロックされることを避けることができるであろう。患者が空気取り込み手段を覆った場合に、患者と開口部との間にボイドスペースを設けることによって、空気取り込み手段が患者によって覆われていても、空気取り込み手段を通って空気を流すことができる代替的な空気流が維持され得る。
【0013】
実施形態としては、特に、計量式吸入器と組み合わせて使用することが好ましく、また、加圧エアロゾルキャニスターを有するこのタイプの呼吸作動式吸入器であることが好ましい。
【0014】
本発明は公知の吸入器に最低限のデザイン変更のみで適用しうる。そのため、患者が混乱する可能性を低減し、また、より大きなデザイン変更に伴うような多大な金型コストを回避することができる。
【0015】
空気取り込み手段の開口部は、互いに平行に配置されうる。この方法では、所定の断面領域を有する空気取り込み手段を通る空気流を最大にすることができる。リブの形態である隆起した細長い構造が、隣り合う開口部の間に、開口部の区分された開口を規定するように備えられうる。
【0016】
開口部は2mmから20mmの範囲の長さを有してよく、好ましくは4mmから12mmである。開口部は0.5mmから2mmの範囲の幅を有してよく、好ましくは約1mmである。隣り合う開口部の間の距離は、開口部の幅と同じでありうる。隣り合う開口部の間に備えられる隆起表面構造は、0.5mmから5mmの範囲の高さであり、好ましくは1mmから3mmである。
【0017】
実施形態では、各開口部が実質的にハウジングの外側表面においてそれぞれ区分された凹部を備えるようになっており、凹部は開口部の開口を規定している。(ハウジングの外側表面における)各開口部の開口領域は、ハウジングの内側表面における開口部の領域よりも大きくてもよい。たとえば、凹部が開口部を包囲しているのでも良い。しかしながら、一般的には、空気取り込み手段がブロックされる危険を最小化するために、凹部の少なくとも一面が、開口部の対応する面と同じ又は類似であることが好ましい。
【0018】
上述のように、各開口部の開口が2つの異なる平面に延在していることは本発明の本質的な特徴であり、これはすなわち、開口は、角のある平面の間で若干のカーブ或いは端縁を規定しているということである。好ましい実施形態では、各開口部の開口は少なくとも45°、より好ましくは少なくとも60°、最も好ましくは少なくとも80°の角度を規定する、異なる平面に延在していることが好ましい。
【0019】
ハウジングは細長い本体を含んでもよく、かかる本体は一体構造でも複数部であってもよい。空気取り込み手段は、簡単には、薬剤送達口が備えられるのと反対側の、細長い本体の端に備えられうる。このケースでは、空気取り込み手段は、細長い本体の端面の両側に配置された細長い開口部の一組の列を含み、列の間には隆起した細長い表面構造を備え得る。
【0020】
吸入器は計量式吸入器、特に、呼吸作動式の計量式吸入器でありえる。ハウジングは、薬剤収容加圧キャニスターを受けるよう適合されていてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0021】
発明の実施形態が以下に、添付の下記の図面を参照して、単なる一例として、説明される。
図1図1は、先行技術文献WO01/93933 A2による空気取り込み手段を有する吸入器を示している。
図2図2は、本発明の実施形態による空気取り込み手段を有する吸入器の拡大図を示している。
図3図3は、図2に示された吸入器の側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
本発明は、患者に薬剤を送達するための吸入器、例えば、呼吸作動式の加圧計量式吸入器を提供する。吸入器は、薬剤を保持し、前記薬剤が分配される空気流路をともに規定する空気取り込み手段と薬剤送達口とを有するハウジングを含む。空気取り込み手段は、ハウジングに形成され、隣り合う開口部の長辺が互いに面している、細長い開口部の列を含む。各開口部はハウジングの外表面に、それぞれに区分された開口を備えている。各開口部の開口は、2つの異なる平面に延在して、患者による吸入の間に2つの異なる平面のうちの1つにおいて開口の少なくとも一部が覆われた場合に、覆いと開口部との間にボイドスペースが形成されて、ボイドスペースから前記少なくとも1の開口部への空気流路が形成されるようになっている。
【0023】
図1を参照すると、先行技術文献WO01/93933 A2(この文献の全ての記載が引用によって参照される)による、空気取り込み手段12を有する呼吸作動式の加圧計量式吸入器10が示されている。吸入器10の操作原理の詳細な説明は、本発明を理解するためには本質的でないが、しかし、背景情報として短い説明が提供される。
【0024】
吸入器10は、ともに細長いアクチュエータハウジングを規定している本体14とエンドキャップ16とを含んでいる。断面では大略的に円筒状である本体14は、一端に横方向に延在するマウスピース18を備え、他端は、円筒状の薬剤収容加圧キャニスターを受けられるように適合されている。ステムブロック(図示せず)は本体14の中に、キャニスターのバルブ軸を受けるために備えられ、マウスピース18と連通する出口ジェットとオリフィスとを含む。
【0025】
エンドキャップ16もまた、断面において大略的に円筒状であり、一端に空気取り込み手段12を備えており、他端はキャニスターの残りの部分を受けられるように適合されている。本体14とエンドキャップ16は、螺合によって互いに連結されている。呼吸作動式機構の部品(図示せず)は本体14とエンドキャップ16の両方の中に収容されている。
【0026】
ハウジング14、16の中に収容されている呼吸作動式機構とキャニスターとは、1又は複数の空気通路を備え、空気は、空気取り込み手段12から、ハウジング14、16の内部を通ってマウスピース18まで通過することができる。
【0027】
マウスピース18は、第一(閉)位置(図1に示す)と第二(開)位置との間を、軸22に関して回動することができる、ダストキャップ20を備えている。使用の際は、患者はダストキャップ20を回して開位置とし、露出したマウスピース18を口に入れる。マウスピース18を通して患者が吸入をおこなう際、ハウジング14、16内の圧力の差異が、呼吸作動式機構の、バルブ軸に対するキャニスターの自動的な移動を引き起こす。キャニスターの計量チャンバーに収容された薬剤が、患者の呼吸に従って放出される。
【0028】
患者の呼吸の間に、空気取り込み手段12からハウジング14、16を通ってマウスピース18まで空気が流れて、患者へ届く。キャニスターの計量チャンバーから放出された薬剤は、この空気流に含まれている。
【0029】
患者によって1回分の薬剤が吸入された後、ダストキャップ22は閉位置に戻され、これで、呼吸作動式機構とエアロゾルキャニスターは、次回の使用に備えるために停止位置にリセットされる。
【0030】
図1に示される吸入器10の空気取り込み手段12は、エンドキャップ16の端面に形成された複数の細長い開口部24を含んでいる。開口部24は端面の両側に、一組の列として配置されている。列の間には限定的な量の三次元部26があるものの、各列の中の隣り合う開口部24の開口は平滑な表面を規定している。その結果、吸入器の使用にあたっては、開口部24が患者の指や親指でブロックされて、呼吸作動式機構の誤作動、及び/又は、患者への薬剤の送達が不完全、非効果的となりえるという問題がある。
【0031】
図2、3に、本発明の実施形態による空気取り込み手段102を有する吸入器100の拡大図が示されている。空気取り込み手段102を除いて、本発明の吸入器100は図1に示される公知の吸入器10と同じ構造であり、同じく使用される。ゆえに、空気取り込み手段102を有するエンドキャップ以外についての、吸入器100の個々の要素の詳細な説明は省略される。同様に吸入器100の使用の詳細な説明は省略される。
【0032】
吸入器100の空気取り込み手段102は複数の、大略的に長方形の形状である、平行で細長い形状の開口部104を含んでいる。開口部104はエンドキャップ106の端面に形成されている。開口部104は端面の両側に、2つに区分された列として配置されており、各々の列は、長辺で互いに面する5つの開口部104を含んでいる。一方の列の開口部104の短辺は他方の列の開口部104の短辺と面しており、それらは、開口部104の長さ方向に垂直な方向に延在する、細長い表面突出部108によって、離隔されている。
【0033】
各々の開口部104はエンドキャップ106の表面に、実質的に凹設されており、かかる凹部が開口部104の開口を規定している。凹部は、隣り合う開口部104の長辺の間に配置され、成形されたリブ110の形態である隆起した細長い表面突出部によって規定されている。各々の凹部は一端で開口しており、各々のリブ110の対応する端部は面取りされている。それゆえ、各開口部104の開口は2つの本質的に垂直な平面に延在している:開口の‘上’部に対応する水平面と、開口の‘側’部に対応する垂直面である。
【0034】
開口104は5mmから7mmの長さ、1mmの幅を有する。開口部104の間の間隙は1.2mmであり、これらの間隙を埋める細長いリブ104は高さ2.5mmである。
【0035】
吸入器100の使用において、患者が、例えば指や親指で、2つの異なる面のうち1面における開口部104の開口の少なくとも一部を覆った場合、患者と開口部104との間には、ボイドスペースを通って開口部104への空気の流れが提供されるようボイドスペースが形成される。その結果、患者によって開口部104が閉塞、もしくはブロックされることが回避される。
【0036】
換言すれば、空気取り込み手段102が、開口部104に至る垂直の空気流(図2及び3中、矢印‘V’として図示されている)を阻止する、水平面に延在する表面によって覆われた場合、例えば、開口部104の開口の少なくとも一部が垂直面に延在するという空気取り込み手段102の形態ゆえに、開口部104に至る水平の空気流(図2及び3中、矢印‘H’として図示されている)を許容することとなる。逆に、空気取り込み手段102が、開口部104への水平の空気流(矢印‘H’として図示されている)を阻止する、垂直平面に延在する表面によって覆われた場合、空気取り込み手段102の形態ゆえに、水平面に延在する穴24の開口が、開口部104に至る垂直の空気流(矢印‘V’として図示されている)を許容する。
【0037】
図3を特に参照すると、開口部104の開口を規定する細長いリブ110は、エンドキャップ106の周囲表面112の後ろに立設されていることが見られる。このように、細長いリブ110は、患者の指や親指と開口部104との間のボイドスペースが維持されるようにしている。
【0038】
ここで説明される特定の実施形態は、図解を目的として記述されている。多様な改変が、当業者には明確であり、また、発明の目的から離れることなく実施され得る。
【0039】
例えば、上記の実施形態では呼吸作動式の加圧計量式吸入器の実施例であるが、別の実施例として、患者による空気取り込み口のブロックが低減され阻止されることが期待される、吸入によって患者に薬剤を送達するための吸入器をより一般的に含みうることが理解されるだろう。例えば、薬剤の効果的な噴霧の為に空気源が必要とされるドライパウダー吸入器において、そのようなブロックの阻止が期待されうる。
【0040】
上述の実施例において、空気取り込み手段はエンドキャップの端面に配置される。別の実施形態では、空気取り込み手段が他の位置、例えば、マウスピースに隣接する本体の端面に備えられていてもよい。
【0041】
本発明による吸入器の部品は、典型的には成形プラスチック部品でありえる。この部品は、本発明による表面の特徴を簡便に備えることが可能である。
【0042】
実施形態において、吸入器は、薬剤と推進剤とを収容する薬剤収容加圧キャニスターを含む。
【0043】
典型的には、薬剤は、抗炎症剤、抗コリン剤、β−アドレナリン受容体アゴニスト、抗感染剤、抗ヒスタミン剤及びそれらの組み合わせからなる群から選ばれる。
【0044】
好ましい抗炎症剤は、コルチコステロイドとNSAIDsとを含む。使用され得る好適なコルチコステロイドは、経口及び吸入コルチコステロイド、及び、抗炎症活性を有するそれらのプロドラッグを含む。例示は、メチルプレドニゾロン、プレドニゾロン、デキサメタゾン、プロピオン酸フルチカゾン、6a,9a-ジフルオロ-17a-[(2-フラニルカルボニル)オキシ]-11-ヒドロキシ-16a-メチル-3-オキソ-アンドロスタ-1,4-ジエン-17-カルボチオ酸 S-フルオロメチルエステル、6a,9a-ジフルオロ-11-ヒドロキシ-16a-メチル-3-オキソ-17a-プロピオニルオキシ-アンドロスタ-1,4-ジエン-17p-カルボチオ酸 S-(2-オキソ-テトラヒドロ-フラン-3S-イル)エステル、ベクロメタゾンエステル(例えば、17-プロピオン酸エステル、又は、17,21-ジプロピオン酸エステル)、ブデソニド、フルニソリド、モメタゾンエステル(例えば、フロ酸エステル)、トリアムシノロンアセトニド、ロフレポニド、チクレソニド、プロピオン酸ブチキソコルト、RPR-106541、及び、ST-126を含む。好適なコルチコステロイドは、プロピオン酸フルチカゾン、6a,9c-ジフルオロ-11-ヒドロキシ-16a-メチル-17a-[(4-メチル-1,3-チアゾール-5-カルボニル)オキシ]-3-オキソ-アンドロスタ-1,4-ジエン-17,8-カルボチオ酸 S-フルオロメチルエステル、及び、6a,9a-ジフルオロ-17a-[(2-フラニルカルボニル)オキシ-11-ヒドロキシ-16a-メチル-3-オキソ-アンドロスタ-1,4-ジエン-17p-カルボチオ酸 S-フルオロメチルエステルを含む。より好ましくは、6a,9a-ジフルオロ-17a-[(2-フラニルカルボニル)オキシ]-11-ヒドロキシ-16a-メチル-3-オキソ-アンドロスタ-1,4-ジエン-17-カルボチオ酸 S-フルオロメチルエステルである。
【0045】
好適なNSAIDsはクロモグリク酸ナトリウム、ネドクロミルナトリウム、ホスホジエステラーゼ(PDE)阻害剤(例えば、テオフィリン、PDE4阻害剤、又は、混合PDE3/PDE4阻害剤)、ロイコトリエンアンタゴニスト、ロイコトリエン合成阻害剤、iNOS阻害剤、トリプターゼ及びエラスターゼ阻害剤、ベータ−2インテグリンアンタゴニスト及びアデノシン受容体アゴニスト又はアンタゴニスト(例えば、アデノシン2aアゴニスト)、サイトカインアンタゴニスト(例えば、ケモカインアンタゴニスト)又はサイトカイン合成阻害剤を含む。
【0046】
他の好適なβ2−アドレナリン受容体アゴニストは、サルメテロール(例えば、キナフォエートとして)、サルブタモール(例えば、硫酸塩又は遊離塩基として)、フォルモテロール(例えば、フマル酸エステルとして)、フェノテロール、又はテルブタリン及びそれらの塩を含む。
【0047】
好適な抗コリン剤としては、ムスカリン受容体でアンタゴニストとして働く化合物、特に、M1及びM2レセプターのアンタゴニストである化合物である。化合物としてはアトロピン、スコポラミン、ホマトロピン、ヒヨスチアミンといったベラドンナ植物体のアルカロイドを含む;これらの化合物は通常、三級アミンであり塩として投与される。
【0048】
特に好適な抗コリン剤としては、アトロベントという名で販売されるイプラトロピウム(例えば、臭化物として)、オキシトロピウム(例えば、臭化物として)及びチオトロピウム(例えば臭化物として)(CAS−139404−48−1)を含む。同様の利益のものとして:メタンテリン(CAS−53−46−3)、臭化プロパンテリン(CAS−50−34−9)、臭化メチルアニソトロピンもしくはValpin50(CAS−80−50−2)、臭化クリジニウム(Quarzan、CAS−3485−62−9)、コピロレート(ロビナール)、ヨウ化イソプロパミド(CAS−71−81−8)、臭化メペンゾレート(US特許2,918,408)、塩化トリジヘキセチル(Pathilone、CAS−4310−35−4)、及び、硫化メチルヘキソシクリウム(Tral、CAS−115−63−9)。また、シクロペントレート塩酸塩(CAS−5870−29−1)、トロピカミド(CAS−1508−75−4)、トリヘキシフェニジル塩酸塩(CAS−144−11−6)、ピレンゼピン(CAS−29868−97−1)、テレンゼピン(CAS−80880−90−9)、AF−DX116、もしくは、メトクタルアミン及びWO01/04118に開示された化合物を参照のこと。
【0049】
好適な抗ヒスタミン剤(H1受容体アンタゴニストとも称される)としては、H1受容体を阻害し、人間への使用において安全であることが知られている多数のアンタゴニストの1又はそれ以上を含む。いずれも、ヒスタミンとH1受容体との相互作用の、可逆・競合的な阻害剤である。例示は、エタノールアミン、エチレンジアミン及びアルキルアミンを含む。さらに他の第一世代の抗ヒスタミン剤は、ピペリジン及びフェノチアジンに基づいて特徴づけられるものを含む。鎮静作用の無い第二世代アンタゴニストは、同様の構造−活性相関関係を有しており、コアのエチレングループ(アルキルアミン)もしくはピペリジン(piperizine)かピペリジン(piperidine)の三級アミングループ模倣体を保存している。例示されるアンタゴニストとしては次のものがある:
エタノールアミン:カルビノキサミンマレイン酸塩、クレマスチンフマル酸塩、ジフェニルヒドラミン塩酸塩、及び、ジメンヒドリナート。
【0050】
エチレンジアミン:ピリラミンマレイン酸塩、トリペレンナミンHCl、及び、トリペレンナミンクエン酸塩。
【0051】
アルキルアミン:クロロフェニルアミン及びその塩、例えば、マレイン酸塩、及び、アクリバスチン。
【0052】
ピペラジン:ヒドロキシジンHCl、ヒドロキシジンパモ酸塩、シクリジンHCl、シクリジン乳酸塩、メクリジンHCl、及び、セチリジンHCl。
【0053】
ピペリジン:アステミゾール、レボカバスチンHCl、ロラタジンもしくはそのデスカルボエトキシ(descarboethoxy)類似体、及び、テルフェナジン、及び、フェキソフェナジン塩酸塩又は他の薬学的に許容される塩。
【0054】
アゼラスチン塩酸塩もまたPDE4阻害剤と組み合わせて使用されうるH1受容体アンタゴニストである。
特に好適な抗ヒスタミン剤はメタピリレン及びロラタジンを含む。
【0055】
好ましくは、薬剤は推進剤と、好ましくは溶媒を含む組成物として提示される。他の好ましい材料としては、オレイン酸を含む界面活性剤を含む。好ましい溶媒としては、エタノール、グリセロール及びグリコールを含む。
【0056】
好ましい推進剤としては、ヒドロフルオロアルカンを含む;特に、1,1,1,2−テトラフルオロエタン(HFA134a);1,1,1,2,3,3,3−へプタフルオロプロパン(HFA227);もしくはそれらの組み合わせを含む。好ましくは、薬剤は推進剤に懸濁されている。代替的には、薬剤は推進剤に溶解されている。薬剤が推進剤に一部懸濁され、一部溶解されていてもよい。
【実施例】
【0057】
次の薬剤組成物が吸入器に使用された:
【表1】
【表2】
図1
図2
図3