(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5785170
(24)【登録日】2015年7月31日
(45)【発行日】2015年9月24日
(54)【発明の名称】電気エネルギーを移動型消費機器に誘導伝送する装置及び方法
(51)【国際特許分類】
B60M 7/00 20060101AFI20150907BHJP
B60L 1/00 20060101ALI20150907BHJP
B60L 9/24 20060101ALI20150907BHJP
【FI】
B60M7/00 X
B60L1/00 A
B60L9/24
【請求項の数】10
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2012-527259(P2012-527259)
(86)(22)【出願日】2010年7月21日
(65)【公表番号】特表2013-503772(P2013-503772A)
(43)【公表日】2013年2月4日
(86)【国際出願番号】EP2010060565
(87)【国際公開番号】WO2011026688
(87)【国際公開日】20110310
【審査請求日】2012年6月26日
(31)【優先権主張番号】102009039975.5
(32)【優先日】2009年9月3日
(33)【優先権主張国】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】508237443
【氏名又は名称】コンダクティクス−バンプフラー ゲーエムベーハー
(74)【代理人】
【識別番号】110000659
【氏名又は名称】特許業務法人広江アソシエイツ特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ウェッチリン,マーシャス
(72)【発明者】
【氏名】グリーン,アンドリュー
【審査官】
相羽 昌孝
(56)【参考文献】
【文献】
特開平11−018205(JP,A)
【文献】
特開2000−184503(JP,A)
【文献】
特開2001−158258(JP,A)
【文献】
特開2008−128686(JP,A)
【文献】
特開2002−351546(JP,A)
【文献】
特開2002−281613(JP,A)
【文献】
特開平11−008904(JP,A)
【文献】
特開2003−209903(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60M 7/00
B60L 1/00 − 15/42
H02J 7/00
H02J 17/00
G05D 1/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
経路に沿って延び、互いに電気的に分離され、経路セクションに分割され、個別の経路セクションが、前記個別の経路セクションに、定電流を印加することのできる少なくとも1台の電流源(3’−7’)に個々に割り当てられている、1次導体配置構造体(2)を含む前記経路に沿って走行させることができる移動型消費機器(F1−F13)に電気エネルギーを誘導伝送する装置であって、
前記個別の経路セクションに位置している前記移動型消費機器(F1−F13)の動作状態によって、前記個別の経路セクションにおいて個々の状況での所要全電力を決定する手段(11)と、
前記個別の経路セクションの前記所要全電力に対応する前記定電流が前記個別の経路セクションに印可されるように前記電流源(3’−7’)を作動させる手段(11)とが設けられ、
前記所要全電力を決定する手段(11)は、経路セクションにおける前記所要全電力の様々な供給レベル(VS1−VS4)が、前記供給レベル(VS1−VS4)における最大所要全電力に対応し、該経路セクションで印加されるべき前記定電流の値に割り当てられている、割り当て表を備え、
前記割り当て表を使用して、個別の経路セクションの特定の供給レベル(VS1−VS4)が、当該個別の経路セクションに配置される前記移動型消費機器(F1−F13)の動作状態によって決定されることを特徴とする装置。
【請求項2】
前記消費機器(F1−F13)の様々な動作状態に割り当てられた電力値が、前記所要全電力を決定する手段(11)に保存されていることを特徴とする、請求項1に記載の装置。
【請求項3】
前記消費機器(F1−F13)は、車両制御器と推進駆動器と1台以上の作業ユニットとを表し、
これらの動作のために必要とされる電力値が、前記所要全電力を決定する手段(11)に保存されていることを特徴とする、請求項2に記載の装置。
【請求項4】
前記経路セクションは、前記個別の経路セクションに現時点で供給されている定電流を判断する電流測定装置(5c、6c、7c)が割り当てられていることを特徴とする、請求項1から3のうちの一項に記載の装置。
【請求項5】
経路に沿って走行させることができ、かつ、前記経路に沿って延び、互いに電気的に分離され、経路セクションに分割された一次導体配置構造体(2)から誘導的に移動型消費機器(F1~F13)に電気エネルギーが供給され、定電流が個々の状況で個別の経路セクションに割り当てられた少なくとも1台の電流源(3’−7’)から前記個別の経路セクションに印加される、前記移動型消費機器(F1−F13)に電気エネルギーを誘導伝送する方法であって、
前記個別の経路セクションに位置している前記移動型消費機器(F1−F13)の動作状態による所要全電力が個々の経路セクションに対して決定され、
前記個別の経路セクションでの前記所要全電力に対応し、関連付けられた電流源(3’−7’)によって前記個別の経路セクションに印加される定電流の値が、経路セクションにおける前記所要全電力の様々な供給レベル(VS1−VS4)に割り当てられた、割り当て表を用いて、
供給レベル(VS1−VS4)は、経路セクションにおける前記決定された所要全電力に応じて選択され、個別の経路セクションの特定の供給レベル(VS1−VS4)が、当該個別の経路セクションに配置される前記移動型消費機器(F1−F13)の動作状態によって決定されることを特徴とする方法。
【請求項6】
前記経路セクションに印加されるべき前記定電流の値は、該供給レベル(VS1−VS4)における最大全電力に対応していることを特徴とする、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
経路セクションにおける前記消費機器(F1−F13)の様々な動作状態が決定され、
該経路セクションにおける前記所要全電力が前記決定された動作状態に応じて決定されることを特徴とする、請求項5又は6に記載の方法。
【請求項8】
前記動作状態は、第1の電力値をもつ前記消費機器(F1−F13)の制御状態と、第2の電力値をもつ前記消費機器(F1−F13)の推進状態と、及び/又は、第3の電力値をもつ前記消費機器(F1−F13)の作業状態とを含むことを特徴とする、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記経路セクションのうちの1つの将来の所要全電力が、現時点で前記経路セクションに位置している前記消費機器(F1−F13)の所定の将来の動作状態から決定されることを特徴とする、請求項7又は8に記載の方法。
【請求項10】
前記経路セクションのうちの1つの将来の所要全電力が、少なくとも1つの隣接する経路セクション)に位置している前記消費機器(F1−F13)の所定の将来の動作状態から決定されることを特徴とする、請求項7から9のうちの一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明は、請求項1のプリアンブルに記載された電気エネルギーを移動型消費機器に誘導伝送する装置と、請求項6のプリアンブルに記載されたこのための方法とに関する。
【背景技術】
【0002】
特に、組立工場又は棚付き倉庫内のテルハーシステム、又は、無人輸送システムのような消費機器が所定の経路に沿ってガイドされるシステムにおいて、電気エネルギーが移動型消費機器に伝送されるとき、完全な経路は、少なくとも電気的に個別の経路セクションに分割されることが知られている。原則として、個別の経路セクションは、専用の電源モジュールを通じて電気エネルギーが個々に供給される。空いている経路セクションの安全性を高め、従来のシステムの電力所要量を削減するために、通常は、移動型消費機器が作動している経路セクションだけに電気エネルギーが供給される。
【0003】
したがって、独国特許第60290141(T2)号明細書は、自動輸送及びパーソナル・ガイダンス・システムと、輸送モジュールのためのガイド装置としての軌道を含んでいるこのようなシステム内の輸送モジュールの制御とを開示する。さらに、このシステムは、様々な一連の供給回路のための電源の分配装置付きの電源システムを備える。供給システムは、様々な供給回路を通電又は停電させることにより、輸送モジュールの移動を制御する。ここで、輸送モジュールが供給回路に存在するとき、これは、使用中の供給回路のすぐ後ろに配置された1台以上の回路が、軌道上を互いに別々に走行する様々な輸送モジュールの間で安全間隔を維持するために通電されることを妨げる。これは、供給回路を通じて輸送モジュールに電気エネルギーが供給されたときに、車両の自動移動を確保する。電気エネルギーが供給回路によって輸送モジュールに供給されない場合、制動装置がこれらの供給回路において輸送モジュール内で自動的に始動させられる。
【0004】
独国特許第60125579(T2)号明細書は、ロボット分野に属する走行車である2次負荷への接触なしに電気エネルギーを伝送するために、1次誘導線が高周波電流を使用する非接触電流電源装置を開示する。走行車内の電気機器を修理又は補修可能にするために、移動軌道の対応するセクションは、車に電圧が供給されないようにオフに切り替えることが可能である。
【0005】
国際特許出願公開第93/23909号パンフレットは、個別のセグメントに分割され、車両がこのセグメントにあるときに限りエネルギーが供給される経路を自動誘導車両に誘導供給する道路をさらに記載する。
【0006】
国際特許出願公開第2007/006400(A2)号パンフレットは、互いに電気的に分離されていない複数のセクションに分割され、それによって、それぞれの経路コントローラを各セクションに割り当てることが可能であり、各経路セクションがフィードフォワード制御され、フィードバック制御され、又は、両方で制御されることを可能にする1次導体を開示する。様々な経路セクションは、定電流を印加するそれぞれの電流源を収容しないが、交流電流を1次導体に供給する唯一の供給回路が存在し、それによって、経路コントローラは、供給回路を用いるデータ伝送のために使用可能にされる。経路コントローラは、それぞれの経路セクションで供給されるべき消費機器の台数と、さらなる情報、例えば、消費機器によって要求される電力及び消費機器のエネルギーバッファに格納されているエネルギーの容量とを、供給回路へ送信することができる。その上で、供給回路は、所要電力と、完全な1次導体の電流のパルス幅変調率、及び/又は、振幅値の特性を計算し、したがって、この値を印加するために使用可能にされる。さらに、正弦波電流ブロックがオン期間中に印加される。オフ期間中に、1次導体内の電流は、オフに切り替えられ、それによって、この期間中に、消費機器のエネルギーバッファは、必要な電圧を供給する。所要電力に基づく様々な経路セクションへの電力供給は、実行できない。
【0007】
独国特許出願公開第102007026896(A1)号は、発生された伝送導体電流であって、少なくとも2台の移動型消費機器への電力の誘導伝送のための配置構造体の伝送経路に印加される伝送導体電流の電力適応制御の方法を開示する。この特許文献に示された伝送導体は、定電流を個々のセクションに印加するために対応した電流源が割り当てられている経路セクションに分割されない。したがって、所要電力に依存する様々な経路セクションの電力供給は、実行できない。
【0008】
様々な時点で複数の移動型消費機器が様々な経路セクションを走行する設備では、所要電力を簡単に低減することが望まれる。多くの場合、移動型消費機器は、負荷を吊り上げるため、又は、部品を把持するために付加的な動作、例えば、回転動作、上昇動作、又は、旋回動作を実行する。この結果、消費機器で要求される多種多様の電力の要件を生じる。例えば、走行消費機器又は車両は、その車制御器及び推進駆動器のための電力だけを必要とするのに対し、より多くの電力が付加的な回転運動のため必要とされる。しかし、多くの場合、このような車両は、待機(予備)位置においても静止し、すなわち、この場合、車制御器に電力を供給することだけが必要である。経路セクション内に比較的低い所要電力をもつ静止車両だけが存在するときでも、従来の設備では、最大所要電力が維持され、経路セクションは、車両の完全な不在中に電流及び電圧のない状態に切り替えられるだけである。この種の設備は、多くの場合、一定の電流供給を用いて作動されるので、結果として、経路セクションの電流及び電圧搬送供給要素に一定の高電流を生じ、連続的な高い電力損失をもたらす。
【0009】
従来の設備では、電力供給がすべての車両が待機(準備)位置にある経路セクションにおいて同様にオフに切り替えられる場合、この経路セクション内の車両の車制御器は、この経路セクションが再始動されるときに、最初に始動されることになり、車両の急速又は瞬時の再始動を阻止する。このことを回避するために、車両は、経路セクションがオフに切り替えられたときでも車制御器の動作を維持するために必要とされる電力を確保する車両バッテリを備えることができる。しかし、車両が長期間に亘って静止している場合、車両バッテリは放電され、その結果、再始動は、時間のかかる車制御器の始動を用いる場合に限り可能である。最適な信頼性及び速度をもつ動作を確保するためには、したがって、バッテリにより大きい容量を与えること、又は、知られているような全電力を経路セクションに連続的に供給することのいずれかが必要である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】独国特許第60290141(T2)号
【特許文献2】独国特許第60125579(T2)号
【特許文献3】国際特許出願公開第93/23909号
【特許文献4】国際特許出願公開第2007/006400(A2)号
【特許文献5】独国特許出願公開第102007026896(A1)号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
したがって、本発明の基礎となる目的は、上記欠点を解決し、装置の動作中に要求及び短反応時間に適合する移動型消費機器への電気エネルギーの省エネ型の供給を可能にする、電気エネルギーを移動型消費機器へ誘導伝送する装置及び方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明は、請求項1に記載の特徴をもつ移動型消費機器への電気エネルギーの誘導伝送のための装置と、請求項6に記載の特徴をもつこの装置のための方法とによって本目的を達成する。本発明の有利な実施形態及び都合の良い展開は、従属請求項に開示される。
【0013】
本発明によれば、冒頭に挙げた、電気エネルギーを移動型消費機器へ誘導伝送する装置は、個別の経路セクションにおいてこの経路セクションに位置している移動型消費機器によって個々の場合に必要とされる全電力を決定する手段と、個別の経路セクションの所要全電力に対応する定電流を印加する電流源を作動させる手段とが設けられていることを特徴とする。本発明によれば、冒頭に挙げた、電気エネルギーを移動型消費機器へ誘導伝送する方法は、そこに位置している移動型消費機器によって要求される全電力が個々の経路セクションに対し決定されることと、経路セクションで必要とされる全電力に対応する定電流が、関連した電流源によって個々の経路セクションに印加されることとを特徴とする。これは、所要電力が個別の経路セクションにおいて個々の場合に提供され、その結果、電力損失を低減することができるので、装置の動作に大きな影響を伴うことなく、装置によって必要とされるエネルギーの実質的な低減を達成することを可能にさせる。
【0014】
本発明の有利な一実施形態では、必要とされる全電力を決定する手段は、経路セクションにおける所要全電力の様々な供給レベルにこの経路セクションで印加されるべき定電流の値が割り当てられた割り当て表を備えることができる。有利な点として、定電流の値は、この供給レベルにおける最大所要全電力に対応することができる。本発明による方法の有利な一変形では、供給レベルは、経路セクションにおける決定された所要全電力に応じて選択することができ、経路セクションにおける選択された供給レベルに割り当てられた印加されるべき定電流の値は、経路セクションに印加することができる。これは、所要全電力の小さい変動への印加定電流の連続的な調節を回避することを可能にする。
【0015】
さらに有利な変形では、消費機器の様々な動作状態に割り当てられた電力値は、所要全電力を決定する手段に保存することができる。本変形の有利な展開では、消費機器は、制御ユニット、推進駆動ユニット、及び、1台以上の作業ユニットを示すことが可能であり、これらの動作のために必要とされる電力値は、所要全電力を決定する手段に保存される。
【0016】
経路セクションに現時点で印加されている定電流を決定するために、電流測定装置を経路セクションに設けることが可能である。
【0017】
本発明のさらに有利な変形では、経路セクション内の消費機器の様々な動作状態を決定することが可能であり、この経路セクションにおける所要全電力は、決定された動作状態に応じて決定することが可能である。これは、消費機器の様々な動作状態が、個別の経路セクションで必要とされる予め分かっている電力値に基づいてその個別の経路セクション内の電流源によって必要とされる全電力と直接的にリンクされることを可能にする。本変形の有利な一展開では、動作状態は、第1の電力値をもつ消費機器の制御状態と、第2の電力値をもつ消費機器の推進状態と、及び/又は、第3の電力値をもつ消費機器の作業状態とを備えることができる。
【0018】
本発明の有利な一実施形態では、少なくとも1つの経路セクションの所要全電力は、1台以上の消費機器の現在動作状態から決定することができる。
【0019】
有利な一展開では、1つの経路セクションの将来の所要全電力は、現時点でこの1つの経路セクションに位置している消費機器の所定の将来の動作状態から決定することができる。これは、装置が動作的に制御され、個別の経路セクションに位置している移動型消費機器によって個別の経路セクションの1つずつで必要とされる全電力を決定する手段と電流源を作動させる手段とが、事前に既に知られている動作状態と所要全電力レベルとを考慮することができるとき、すなわち、装置を制御しているとき、将来の動作状況についての知識から、有利に使用することができる。
【0020】
さらに好ましい実施形態では、1つの経路セクションの将来の所要全電力は、少なくとも1つの隣接する経路セクションに位置している消費機器の所定の将来の動作状態から決定することができる。これにより、特に将来の時点のための所要全電力を決定するとき、経路セクションの中へ短く移動する消費機器を早期に考慮することが可能になるので、送り込まれる定電流の切り替え動作を回避することが可能である。これは、電流源における切り替え損失を回避し、電流源の負荷を低減することを可能にする。
【0021】
本発明のさらに特有の特徴及び利点は、図面を参照して好ましい実施形態例の以下の説明から明らかになる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図1】第1の動作状態にある複数の移動型消費機器と一体となった本発明による装置の概略図である。
【
図2】第2の動作状態にある移動型消費機器と一体となった
図1の概略図である。
【
図4】本発明による装置の動作のフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0023】
図1は、図示されていない経路に沿って広がる既知の1次導体配置構造体2と一体となって、既知のテルハーシステム1の形をした移動型消費機器F1からF13へ電気エネルギーを誘導伝送する本発明による装置を示す。
【0024】
1次導体配置構造体2は、全部で5個の電気的に分離された経路セクション、すなわち、第1の回収セクション3と、第2の回収セクション4と、往路セクション5と、作業セクション6と、復路セクション7とに分割される。第1の回収セクション3及び第2の回収セクション4は、電気的な連結が行われることなく、一端で点の組8を用いて往路セクション7と、そして、他端で点の組9を用いて復路セクション7と機械的に接続可能である。
【0025】
個別の経路セクション3から7は、いずれの場合でも、必要に応じて経路セクション3から7までにおける様々な強度の定電流を印加するそれらの固有の電流源3’から7’までによって給電される。消費機器F1からF13までへのエネルギーの伝送は誘導的に行われるので、定電流は、交番磁界を生成する交流電流である。電流源3’から7’は、既知の方法で生成することが可能であり、それらの役割のため、3相50Hz/400V電気エネルギー供給網10に接続されている。電流源3’から7’は、装置1の動作全体を監視し、特に、電流源3’から7’を制御する設備制御器11とも接続されている。
【0026】
設備制御器11は、個別の経路セクション3から7に位置している移動型消費機器F1からF13によって、個別の経路セクション3から7においていずれの場合にも必要とされる全電力を決定する手段と、個々の経路セクション3から7の所要全電流に対応する定電流を印加する電流源3’から7’とを作動させる手段11とを表し、この役割のため、図示されない上位レベル工場制御器と接続することができる。設備制御器11は、1台のコンピュータ上で集中的に、又は、分散コンピュータ上で非集中的に、従来の方法で構築することが可能である。本例では、設備制御器11は、全負荷時に最大電流強度I
VLをもち、そして、より低い負荷時に最大電流強度I
VLの3分の1又は半分の電流強度をもつ定電流を供給するように、電流源を作動させることができる。
【0027】
テルハーシステム1は、例えば、自走車の製造中に使用されるように、電気モーターによって作動される車F1からF13の形をした複数の移動型消費機器をさらに示す。車F1からF3への電気エネルギーの誘導供給は、経路に沿って広がる1次導体配置構造体2と、車F1からF13に配置された2次ピックアップ装置とを用いて、既知の方法で行われる。車F1からF13は、いずれの場合でも、電気推進駆動ユニット、車制御ユニット、及び、電気作動型作業ユニット、例えば、作業セクション6内のさらなる作業設備によって作用すべき車両本体部品用の把持装置、吊り上げ装置、又は、回転装置を示す。
【0028】
車F1からF13の様々な動作状態に対する電力値は、本例では、車制御器に対し約200Wであり、推進駆動器に対し約1000Wであり、作業ユニットの作業及び回転運動に対し約2000Wである。このように、静止中の車F1からF13は、車制御器のために200Wだけを必要とし、走行中の車は、車制御器及び推進駆動器のために約1200Wを必要とし、静止作業中の車は、車制御器及び作業ユニットのために約2200Wを必要とし、走行作業中の車は、約3200Wを必要とする。必要に応じて、個別の動作状態が同時に現れる可能性があるので、個別の車によって要求される電力は、個別の動作状態に対する様々な電力値を合算することによって決定される。
【0029】
図1では、車F1は、既に第1の回収セクション3にあり、
図2に示された待機(準備)位置へ走行中である。車F1の走行中、車F1の推進駆動器及び車制御器は作動中であり、電流源3’から電気エネルギーが供給される。第1の回収セクション3にあるさらなる車F7からF10は、待機(準備)位置にあるので、これらの車制御器だけが作動中である。
図1及び2では、車F1からF13の推進駆動器の動作は、直線矢印「←」によってマークされ、車制御器の動作は、円「○」によってマークされる。車F1とF7からF10とに給電するために、第1の回収セクション3は、関連した第1の電流源3’によって最大定電流I
VLの半分だけが供給される。
【0030】
図1における第2の回収セクション4は、3台の「静止中」車両F11からF13だけを収容しているので、これらの車両の車制御器に電流源4’から電力を供給するために最大定電流I
VLの3分の1だけを必要とする。よって、第2の回収セクションで必要とされる全電力は、車制御器を作動させるために必要とされる電力量の3倍である。
【0031】
図1における車両F5及びF6は、往路セクション5にあり、作業セクション6へ移動中である。2台の車両F5及びF6は、推進駆動器及び車制御器のために必要とされる電力だけを必要とするので、電流源5’から最大定電流I
VLの半分だけを往路セクション5に供給すれば十分である。
【0032】
図1における車F2、F3及びF4は、作業セクション6にあり、この中で、車F2は、推進駆動部及び車制御部が作動した状態で前方へ移動中であり、車F3は、前方へ移動し、1台の作業ユニットを用いて回転矢印
によって示された回転運動を実行中であるが、車F4は、静止中であり、この車F4の作業ユニットは、回転運動を実行中である。車F3及びF4の作業ユニットの回転運動は、車F2の単純な推進駆動部と比べてさらなる電力を必要とする。作業その結果、セクション6は、電流源6’によって最大定電流I
VLが供給される。
【0033】
対照的に、完全に空の復路セクション7は、完全に無電流かつ無電圧の状態に切り替えることが可能であり、その結果、電流源7’は、電流を復路セクションに供給しない。
【0034】
図2では、車F1も待機(準備)位置にあるので、もはやこの車の推進駆動器のための電力を供給する必要はない。第1の回収セクション3の電流源3’は、したがって、最大定電流I
VLの半分から3分の1まで低減することができる。これは、この回収セクション3における定電流からの損失が再び低減される可能性があるので、さらなる電力を節約する。第2の回収セクション4における状態は、変化しないままである。
【0035】
図2における車F2からF4は、作業セクション6から外へ出て、復路セクション7に進入しているが、作業ユニットは、もはや回転運動を実行していないので、復路セクション7は、車F2からF4の推進駆動器及び車制御器に給電するために電流源7’によって最大定電流I
VLの半分だけが供給される。対照的に、
図2では、往路セクション5から外に出ている車F5及びF6が作業セクション6にあり、この作業セクションでは、作業ユニットが、今度は、回転運動を実行し、その結果、所要全電力が最大であると共に、これまでのように、最大定電流I
VLが提供されなければならない。対照的に、往路セクション5は、今度は車がないので、もはや電流源5’から電力が供給される必要はなく、したがって、設備制御器11によって無電流及び無電圧状態へ切り替えることができる。
【0036】
図3は、
図1及び2による実施形態の電気システムの一部を概略的に示す。3つの経路セクション5、6及び7を、ここで一例として示すが、他の経路セクション3及び4の設計は、同様である。経路セクション3から7は同一の設計であるため、
図3において単独の車F5が位置している往路セクション5の経路セクションを、以下で一例として説明する。
【0037】
往路セクション5は、1次導体配置構造体2として、既知の往路5h及び復路5rを提示する。
図3に示されない車F5の2次ピックアップ装置は、往路5hに沿って誘導されるので、電気エネルギーが、車F5へ誘導的に伝送される。往路5hのための電気エネルギーは、電流源5’の電力モジュール5aによって提供される。電力モジュール5aは、電圧システム10から供給されるインバータとして、既知の方法で具現化される。電力モジュール5aは、入力信号として電力モジュール5aの動作パラメータと、既知の電流測定装置5cを用いて復路5rで測定される往路セクション5内の電流と、設備制御器11からの制御信号とを共に受信する電力制御器5bによって作動される。
【0038】
設備制御器11は、車F1からF13のための始動信号、停止信号及び他の動作信号を電力制御器5bへ送信し、すなわち、本実施形態例では、車F1からF13の動作のための機能のすべてを決定する。これは、走行されるべき経路セクションと、負荷が持ち上げられ、降ろされ、又は、回転等されるべき場所及び時間とのための信号を同様に含む。代替的な実施形態では、車F1からF13は、上位コマンドレベルで設備制御部11から実行されるべきタスクのための命令だけを受信し、その後、これらのタスクを計画し、それ自体で実行する「インテリジェント」車制御部を備えることが可能である。
【0039】
しかし、設備制御部11は、電流源3’から7’までから、メッセージ、例えば、状態メッセージ又はエラーメッセージと、電流源3’から7’の電気状態及び値に関するデータと、個別の経路セクション内に広く行き渡っている電力条件、電流条件及び電圧条件に関するデータと、該当する場合に車F1からF13までの現在動作状態に関するデータ、例えば、車がその瞬間に実際に位置している場所、車がちょうど実行している機能などに関するデータとをさらに受信する。
【0040】
設備制御器11と、電力制御器5b及び/又は車F1からF13との間の信号の伝送は、ケーブルによって、適切に装備された経路と車F1からF13との間の誘導結合を用いて接触なしに、又は、場合によってはワイヤレス通信手段によって、既知の方法で実行することができる。
【0041】
設備制御器11は、個別の経路セクション内で今にでも必要とされる全電力をさらに決定し、そのために、設備制御器は、電力測定装置5c及び他の経路セクションの電力測定装置の電流測定を使用する。代替的な実施形態では、設備制御部11はさらに、電流と、該当する場合には、電流測定を無くすことができるように設備制御部に分かっている車F1からF13までの将来の動作状態とから、所要全電力を計算することができる。
【0042】
例えば、設備制御部11が、車F1からF13は経路セクション3から7に存在していないことを見つけたとき、設備制御部は、関係している経路セクションを無電圧及び無電流状態に切り替える。
【0043】
その一方で、設備制御器11が、1台以上の車F1からF13が経路セクションに存在していることを明らかにしたとき、設備制御器は、この設備制御器に分かっているデータ、すなわち、この経路セクションに存在している車F1からF13のデータに基づいて、この経路セクション3から7における所要全電力を決定し、その後、安全に供給された定電流がこの全電力を賄うように、関係している電流源3’から7’を作動させる。定電流の連続的な調節を回避するために、好ましくは、複数の供給レベルを定めることができ、この複数の供給レベルの間で、関係している経路セクション3から7までの所要全電力がこれらの経路セクションに位置している車F1からF13によって現時点で必要とされる全電力と、好ましくは、同様にこれらの車の将来の動作状態とに応じて決定することができ、その後、対応する定電流が送り込まれる。本例では、以下の4個の供給レベルが定められ、供給レベル1は、所要電力零に対応し、供給レベル2は、最大所要全電力の3分の1に対応し、供給レベル3は、最大所要全電力の半分、したがって、全負荷での最大定電流の半分に対応する。供給レベル4は、所要全電力又は全負荷での定電流に対応する。しかし、これより多い又は少ない供給レベルを必要に応じて定めてもよい。
【0044】
図1では、復路セクション7に車が存在しないので、供給レベル1が復路セクション7に適用され、復路セクション7は、無電圧かつ無電流である。第2の回収セクション4では、車F11からF13までの個別の車制御器に給電することだけが必要であり、全負荷での定電流I
VLの3分の1をもつ供給レベル2で足りる。その一方で、第1の回収セクション3では、4台の静止中の車F7からF10及び走行中の車F1の車制御部と、この車の推進駆動部とが、最大定電流I
VLの半分をもつ供給レベル3で給電されるように給電されなければならない。同様のことは、車F5及びF6の推進駆動部及び車制御部が給電されなければならない往路セクション5にも当てはまる。対照的に、全負荷動作が、車F3及びF4の作業ユニットの動作と車F2及びF3の推進駆動とに起因して作業セクション6において当てはまるので、作業セクション6では、全負荷時に最大定電流I
VLをもつ供給レベル4が設定される。
【0045】
テルハーシステム1において変化する条件への供給レベルのできる限り最速の調節を可能にするために、設備制御部11は、特に、この設備制御部に予め分かっているか、又は、この設備制御部によって予め決定されたデータを使用する。したがって、
図1では、設備制御部11は、車F2からF4までがおそらく復路セクション7の中を間もなく走行することになること(
図2)を認識するために車F2からF4までの走行データを使用する。設備制御部は、その後に給電されるべき車F2からF4までの推進駆動部及び車制御部に基づいて、予測される電力所要量を決定し、その結果、車F2が駆動される前に早めに供給レベル2に変わるように対応する信号を電流源7’へ送信する。これは、中断なしの電力供給と、つまりは車F2と同様に車F3及びF4の走行とを確保することを可能にする。
【0046】
同じことが第1の回収セクション3に当てはまる。第1の回収セクションでは、設備制御部11は、車F1が
図2に示される車1の静止位置に間もなく到着することを判断し、かつ、供給レベル2から供給レベル1へ切り替わることが可能であることを判断するために、設備制御部に分かっている車F1の制御信号及び動作データを使用する。
【0047】
設備制御部11は、予め作業セクション6の方向へ車F5及びF6が走行中であることが分かり、作業セクションで計画された車F5及びF6の動作から、この作業セクションでの電力所要量が大きいであろうことが分かるため、この作業セクションで供給レベル4を維持する。
【0048】
より良い理解のため、以下の表は、
図1及び2における個別の経路セクションでの電力所要量を示す(VS:供給レベル;I
VL:全負荷時の電流)。
【表1】
【0049】
図4は、設備制御部11における制御プロセスの例を示す。
状態Z1では、テルハーシステム1は静止状態にあり、個別の経路セクション3から7までは、無電流及び無電圧である。問い合わせ段階A1は、変更が生じたか否かを連続的に監視する。変更は、例えば、停止後又は緊急停止後のテルハーシステム1の動作の始動である可能性がある。変更が生じない限り、テルハーシステム1は、静止状態のままである。ここで、問い合わせ段階A1が変更、例えば、設備制御部11、又は、図示されない上位レベル工場制御部からの動作始動の信号を明らかにした場合、システムは、状態Z2に切り替わり、状態Z2において、個別の経路セクション3から7までの所要全電力が決定される。これは、設備制御部11に存在する個別の車F1からF13までに関するデータ、及び/又は、車F1からF13までから設備制御部11へ送信されたデータを使用して行われる。
【0050】
有利な一実施形態では、個別の車F1からF13までの様々な動作状態は、高速作動のための設備制御部11内、例えば、割り当て表内の様々な電力値とリンクすることができる。これは、その結果、経路セクション3から7までに供給される電力を変更する必要があるかどうかを決定するために、経路セクション3から7までの個別の車F1からF13までの現在動作状態と、これらの経路セクションに既に供給された電力との迅速な比較を可能にする。
【0051】
代替的な実施形態では、静止状態Z1から再始動するとき、テルハーシステム1が個別の経路セクション3から7及び車F1からF13の現在状態とは確実に独立に作動されることを確保するために、全負荷での動作のため必要とされる最大定電流をあらゆる経路セクション3から7に供給することも可能である。これは、緊急停止後に再始動するとき、特に都合が良い可能性がある。
【0052】
その後、設備制御部11は、状態Z2で決定された個別の経路セクション3から7までの所要全電力を、調節のため関連した電流源3’から7’へ送信する(
図4におけるSQ)。その後、問い合わせ段階A2において、設備制御部11は、個別の経路セクション3から7においてエネルギー供給が望ましい状態に到達したかどうかをチェックする。
【0053】
到達していない場合、すなわち、望ましいエネルギー供給の状態が問い合わせ段階A2において1台以上の電流源3’から7’で確認されない場合、最初に、ここの電流源3’から7’は、問い合わせ段階A3において不良にとしてチェックされる。不良が存在する場合、状態Z4において、エラーメッセージが設備制御部11へ送信され、このエラーメッセージが適当な対策を開始させる。問い合わせ段階A3において不良がもはや存在しない場合、システムは、状態Z3へ戻り、所要全電力が個々のエネルギー供給装置3’から7’、好ましくは、問い合わせ段階A2において未だ準備ができていない経路セクション3から7だけに再送される。
【0054】
経路セクション3から7において必要とされる全電力が問い合わせ段階A2で利用できる場合、すなわち、対応する定電流が経路セクション3から5の1次導体配置構造体2の中を流れる場合、車F1からF13までは、
図1に示されるように、設備制御部11によって予め決定された動作状態Z5に切り替わる。
【0055】
テルハーシステム1は、ここで、設備制御部11が個別の車F1からF13までを作動させる正常状態Z5にある。状態Z5は、問い合わせ段階A4において設備制御部11によって連続的に監視される。変更が生じない限り、状態Z5が維持される。変更が生じた場合、例えば、車F1が
図2におけるこの車の静止位置に達した場合、状態Z2において、設備制御部11は、経路セクション3から7までの所要全電力を再び決定する。その後、状態Z3において、設備制御部11は、所要全電力を含む対応するメッセージを電流源3’から7’へ送出し、電流源3’から7’は、その後、前述のように所要全電力を供給する。好ましくは、変更された所要全電力を含むメッセージは、影響を受ける経路セクション3から7だけに送信される。このようにして、
図1及び2と表1とによる本実施形態例では、所要全電力が変更されていないので、メッセージが状態Z3において電流源4’及び6’へ送信されることはない。