(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記通路の体積が既知であり、前記蒸発器は真空下にあり、及び、前記制御装置は、弁作動サイクルの回数と前記計量供給通路の前記体積とから過酸化水素の注入体積を求めるために、前記弁作動サイクルの回数を追跡する請求項1に記載の計量供給ユニット。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明は、一般的に、蒸発過酸化水素を逐次的に添加することによる、ガス状滅菌雰囲気の中での物品の滅菌のための方法、特に、排気されたチャンバ等のベッセル内への蒸発過酸化水素を計量供給する計量供給ユニットを提供する。
【0019】
チャンバ内の過酸化水素の濃度を制御するために、例えば滅菌チャンバや蒸発器などの排気されたベッセルへ過酸化水素ガスを計量供給する方法を行う計量供給ユニット240(
図8参照)を提供する。チャンバ内の蒸発過酸化水素の濃度は、注入の累積の体積が実現されるまで注入サイクルの数を単に監視することによって繰り返し制御される。計量供給ユニット240は、以下により詳細に説明するように、固定した体積と上流端部と下流端部とを有する計量供給通路を画定する本体又は基部ブロック241と、上流端部を過酸化水素供給源に連結するための上流連結部と、下流端部を過酸化水素蒸発器に連結するための下流連結部と、上流端部を選択的に閉鎖するための上流弁242と、下流端部を選択的に閉鎖するための下流弁243と、上流弁及び下流弁の両方が同時に開くことを選択的に防止するための、非重複的にかつ互いに逆の形で弁を操作するための制御装置とを備える。好適には、制御装置は、過酸化水素供給源と蒸発器とに対する計量供給通路の逐次的な連結のために弁を逐次的に操作する。好適には、通路の体積が既知であり、蒸発器は真空下にあり、及び、制御装置は、弁作動サイクルの回数と計量供給通路の体積とから過酸化水素の注入体積を求めるために、弁作動サイクルの回数を追跡する。好適には、計量供給通路の既知の体積は75μLから15μLの間であるが、35μLから15μLの間、20μLから15μLの間、又は20μLでもよい。
本発明の計量供給ユニットによれば、高価な過酸化水素濃度測定システムが、不変体積の通路を用いて注入サイクルの数を経済的に監視することに代えられる。
【0020】
予め選択された温度で過酸化水素が沸騰する圧力よりも低い真空圧に滅菌チャンバを維持し、所望の圧力増大が実現されるまで過酸化水素の連続パルスを蒸発させて注入することによって、滅菌チャンバ内の過酸化水素の濃度を制御でき、予め選択された温度での過酸化水素の望ましくない凝縮を抑制することができる。
【0021】
以下にさらに説明するように、滅菌チャンバ内に注入される蒸発過酸化水素溶液が、滅菌すべき物品上で凝縮する。しかしながら、過酸化水素が凝縮中に気相から除去されるので、過酸化水素の凝縮水が長い内部管腔の滅菌作用に悪影響を与える。したがって、過酸化水素が長い内部管腔を貫通するように、過酸化水素が、可能な限り長く気相で維持されなければならず、過酸化水素の注入中に凝縮が避けられなければならない。これは、本発明により、個々の過酸化水素の注入パルスの体積を制御することによって実現される。一つの実施形態では、過酸化水素の各パルスの体積が75μL未満である。別の実施形態では、過酸化水素の各パルスの体積は35μL未満である。さらなる実施形態では、過酸化水素の各パルスの体積は20μL未満である。
【0022】
一実施形態では、
図3の流れ図と
図4から
図6のサイクルグラフとに示されているように、本発明は、滅菌される物品を過酸化水素とオゾンとに対して逐次的に露出させることによって物品を滅菌する方法を提供する。この物品が、真空下において、最初に過酸化水素の蒸発水溶液に対して露出させられ、その次にオゾン含有ガスに対して露出させられることが好ましい。この露出が、滅菌雰囲気の水蒸気含量を減少させることなしに行われ、かつ、この水蒸気含量が、過酸化水素溶液の水性溶媒と、水と酸素とへの過酸化水素の分解とから得られることが好ましい。滅菌チャンバが密封状態のままである間に、かつ、滅菌雰囲気のあらゆる成分の除去なしに、完全な滅菌プロセスが実現されることが最も好ましい。この目的のために、そのチャンバは、最初に、そのチャンバの雰囲気の温度において水性過酸化水素の蒸発を引き起こすのに十分な第1の真空圧になるように排気される。その次に、そのチャンバは密封されて、過酸化水素とオゾン含有ガスとが逐次的にそのチャンバに加えられ、及び、予め選択された露出期間の間、そのチャンバ内に維持される。滅菌剤の添加の最中と、露出の持続時間中は、滅菌雰囲気内のあらゆる成分の完全な除去が停止させられる。
【0023】
水性過酸化水素溶液は蒸発させられて、水蒸気含量を減少させる処置なしに、滅菌チャンバの中に直接的に注入される。本出願の発明者は、チャンバ内の水蒸気含量を減少させるためのあらゆる及び全ての段階が省略され、かつ、過酸化水素滅菌段階の後にオゾン滅菌段階が続く時に、過酸化水素滅菌段階中に発生させられる水蒸気が、オゾン滅菌段階を改善するために滅菌チャンバ内の雰囲気を十分に加湿するように使用されることが可能なので、使用される滅菌剤の量と滅菌サイクルの長さとが著しく減少させられることが可能であるということを、驚くべきことに発見している。同じ滅菌剤を使用する時に、依然として完全な滅菌を実現しながら、従来技術のプロセスの場合よりも著しく少ない量の過酸化水素とオゾンとが使用されることが可能である。さらに、本発明による滅菌剤の必要量が、同一のサイクルにおいて単純に2つの滅菌剤を使用することから予想される必要量よりも少ない。したがって、滅菌雰囲気中の湿度を調整する処置なしに全ての滅菌段階を通じて滅菌チャンバを密封状態に保つことが、相乗効果を結果的に生じさせると考えられる。
【0024】
図1に概略的に示されている本発明による滅菌装置は、一般的に、次の仕方で動作する。滅菌される物品(図示されていない)が滅菌チャンバ10内に置かれ、このチャンバが密封される。真空がこのチャンバ10に加えられる。蒸発過酸化水素溶液が配送ユニット30(
図8を参照されたい)から滅菌チャンバ10の中に供給されるが、これについてはより詳細に後述する。このチャンバの中に供給される蒸発過酸化水素は、物品の部分的滅菌を生じさせる。医療品質の酸素がオゾン発生器22内で電界に曝され、この電界はその酸素をオゾン含有ガスに変換する。その次に、このオゾン含有ガスはチャンバ10の中に送り込まれるが、このチャンバ10は、蒸発過酸化水素溶液の注入と、フリーラジカル(ヒドロキシル)と水と酸素とへの過酸化水素の分解とによってすでに加湿されている。オゾン含有ガスが物品の滅菌を完了する。その次に、残留する滅菌剤ガスが、触媒52を使用して水と酸素とに分解される。滅菌サイクルの最後に残る残留物は酸素と浄水だけである。
【0025】
本発明のオゾン滅菌方法が室温で行われ、及び、したがって、滅菌済みの物品が滅菌サイクルの直後に使用されることが可能であるように、滅菌済み物品の換気又は冷却が実質的に不要であることが好ましい。さらに、使用されるガスが、滅菌される長い管腔の中により迅速に拡散し、滅菌に必要とされるサイクル時間を減少させる。このことが、高額の医療装置在庫を維持するコストを病院が低減させることを可能にする。本発明の滅菌方法は幾つかのさらに別の利点を提供する。この方法は、有毒な廃棄物を生じさせず、危険なガスシリンダの取り扱いを不要にし、及び、環境又はユーザの健康に対して脅威を及ぼさない。ステンレス鋼の器具と熱に弱い器具とが同時に取り扱われることが可能であり、このことは、特定のユーザの場合に、2つの別々の滅菌装置の必要性を取り除くだろう。
【0026】
図1に概略的に示されている本発明による好ましい滅菌装置が、真空を閉じ込めるために密封されることが可能な滅菌チャンバ10を含む。これはアクセス扉12によって実現され、このアクセス扉12は、選択的に、滅菌チャンバの中への到達のために開かれることが可能であり、及び、その閉鎖状態において滅菌チャンバを密封する。この装置は、さらに、オゾン含有ガスを滅菌チャンバに供給するためのオゾン発生器22と、滅菌チャンバ10に蒸発過酸化水素を供給するための過酸化水素配送ユニット30と、真空ポンプ40(CM−005−052 TSO3,Inc)とを含む。真空ポンプ40は、滅菌ガスの浸透を増大させるように、かつ、滅菌チャンバの内側の温度よりも低い温度で蒸発過酸化水素溶液を発生させることが可能であるように、十分な真空を滅菌チャンバ10に加えるために使用される。好ましい実施形態の真空ポンプ40は、滅菌チャンバ内の雰囲気の実際の温度よりも低い温度に滅菌チャンバ内の水の沸点を低下させるために十分な真空を、滅菌チャンバ内に生じさせることが可能である。この好ましい装置では、真空ポンプは、133Pa(1トル(1.33mbar))の真空を生じさせることが可能である。オゾン発生器22内で発生させられるオゾンが、オゾン含有ガスが滅菌チャンバ10の通過後に又は直接的にオゾン発生器22からバイパス弁29bを通過して送り込まれるオゾン触媒52内で破壊される。オゾン触媒52(AM−004−001、TSO
3 Inc)は、外気へのオゾンガスの漏出を防止するために真空ポンプ40の後に連続して連結されている。好ましい触媒52中のオゾン分解材料がカロライト(carulite)である。経済的及び実用的な理由から、滅菌チャンバ10から排出される滅菌ガスの中のオゾンの分解のために触媒を使用することが好ましい。この触媒は、特定の量の熱の発生を伴いながら、接触時に過酸化水素とオゾンを破壊して酸素と水に再変形する。このタイプの触媒とその製造業者は、オゾン発生器分野の当業者には公知であり、本明細書では詳細に説明する必要は無い。さらに、滅菌ガス中に含まれているオゾンと過酸化水素を破壊する他の手段が、当業者には容易に明らかだろう。例えば、このガスは、予め選択された時間の間、滅菌剤の分解が加速される温度に加熱されることが可能であり、例えば3秒間の時間期間の間、300℃に加熱されることが可能である。
【0027】
過酸化水素配送ユニット30は、リザーバ220(AM−213−010、TSO
3 Inc)と、計量供給ユニット240と、導管280(AM−213−003、TSO
3 Inc)を経由して滅菌チャンバ10に直接的に連結されている蒸発器ユニット260(FM−213−003、TSO
3 Inc)とを含む。リザーバ220は、別の滅菌サイクルの実行のために十分に高い液位の過酸化水素を常に確保するために液位センサ222を備えている。過酸化水素溶液(3−59%)が、過酸化水素供給ユニット200(
図7を参照されたい)からリザーバに供給されるが、この過酸化水素供給ユニット200についてはより詳細に後述する。過酸化水素溶液は、密封ボトル180から供給ユニット200の中に供給される(
図7を参照されたい)。蒸発器ユニット260内で発生させられた蒸発過酸化水素溶液が、中間での流れの制限又は弁なしに、直接的に滅菌チャンバ10の中に入る。蒸発器ユニットが、過酸化水素溶液のより高い蒸発速度を実現しかつその凍結を防止するように十分に高い温度に過酸化水素溶液の温度を維持する加熱装置(図示されていない)を備えていることが好ましい。
【0028】
オゾン発生器22(OZ、model 14a、TSO
3 Inc)はコロナ放電タイプであり、かつ、オゾン分解速度を低下させるために冷却されるが、このことは全て当業で公知である。オゾン発生は、熱の形でのエネルギー損失に伴われている。熱がオゾンの酸素への分解を加速するので、この熱は、オゾン発生器22の冷却によって可能な限り速やかに取り除かれるべきである。この装置内のオゾン発生器は、冷却システム60によって3℃から6℃の比較的低い温度に保たれ、この冷却システム60は、冷却水再循環を伴う間接的冷却システムであるか、又は、冷却のための空冷ユニット又は冷凍ユニットを備える直接的冷却システム(図示されていない)である。この冷却システムが3−6℃の温度に維持されることが好ましい。好ましい実施形態では、この冷却システムは、オゾン発生器22によって発生させられるオゾン含有ガスが約20℃から約35℃の周囲温度にあるように、4℃に保たれる。したがって、加湿と滅菌とのために滅菌チャンバの中に入るオゾン含有ガスは25℃から35℃の外界温度に保たれる。このことは、オゾン分解が最小限にされかつ滅菌プロセスが最も効率的であることを意味する。オゾン発生器22が、医療グレードの酸素を供給されることが好ましい。酸素は、さらに、酸素供給弁21を通して滅菌チャンバ10の中に直接的に供給されてもよい。この装置は、病院内で一般的である壁上の酸素出口に連結されることが可能であり、又は、酸素シリンダに、又は、所望の品質及び流量を供給することが可能な任意の他の供給源に連結されることが可能である。オゾン発生器22に対する酸素の供給は、フィルタ23と、圧力調整器24と、流量計25と、酸素遮断弁26とを経由して生じる。オゾン発生器は、安全圧力スイッチ27によって酸素の過剰圧力から保護されている。オゾン発生器22によって生じさせられたオゾン−酸素混合物が、流量調整器オリフィス28と混合物供給電磁弁29aとを経由して滅菌チャンバ10に送られる。この混合物は、さらに、バイパス電磁弁29b(採用随意)を経由してオゾン触媒52に直接的に供給されることも可能である。体積125リットルの滅菌チャンバが使用される好ましい実施形態では、圧力調整器24と調整器弁28とが、約13.8kPa(2psig)の圧力と約1.5リットル/分の流量とに酸素供給量を調整することが好ましい。しかし、オゾン発生器22の構造及びモデルと、滅菌チャンバのサイズとに応じて、他の流量が使用されてもよいということが、当業者には容易に明らかだろう。
【0029】
滅菌チャンバ10内の真空は、真空ポンプ40と、滅菌チャンバ排液弁44とによって生じさせられる。
【0030】
弁29a、29bはテフロン電磁弁(CM−900−156、TSO3 Inc)である。弁26と真空弁44は電磁弁(CM−015−004、TSO3 Inc)である。
【0031】
本発明のプロセスと装置で使用される好ましいオゾン発生器は、コロナ放電タイプの発生器であり、この発生器は当業者に公知であり、本明細書でさらに説明される必要はない。
【0032】
動作
本発明による好ましい滅菌方法が、
図3の流れ図に示されている次の概略的な段階を含む。医療器具のような滅菌されるべき物品が、滅菌チャンバの中に直接的に置かれるが、病院環境で一般的に使用されるような滅菌包装容器、滅菌ラップ又は滅菌パウチ内に密封され、その後で滅菌チャンバ内に入れられることが好ましい。様々な異なるタイプのこうした容器又はパウチが当業者には公知であり、本明細書でさらに説明される必要はない。
【0033】
段階320において、滅菌される物品の挿入物が滅菌チャンバの中に入れられ終わった後に、段階340において、滅菌チャンバの扉が閉められてそのチャンバが密封され、及び、段階350において、そのチャンバ内の圧力が133Pa(1トル(1.33mbar))の第1の圧力に達し終わるまで、真空が滅菌チャンバに加えられる。予熱段階310において、滅菌チャンバの壁が40℃の温度に予熱され終わっていることが好ましい。加湿段階360において、滅菌チャンバを部分的に滅菌して加湿するために、蒸発過酸化水素溶液が滅菌チャンバの中に受け入れられる。2527Pa(19トル)の圧力増大が滅菌チャンバ内で実現され終わると、蒸発過酸化水素溶液の注入が停止させられる。滅菌チャンバは、過酸化水素がその最中に少なくとも部分的にフリーラジカルと水と酸素の形に分解する第1の露出期間370(2分であることが好ましい)の間、密封状態に維持されることが可能である。好ましくは、この露出期間が省かれることも可能である。その次に、乾燥オゾンと酸素の混合物の形態であることが好ましいオゾン含有ガスが、オゾン注入段階380において、滅菌チャンバに供給され、このチャンバが、予め選択された第2の露出期間390の間、密封状態にされる。チャンバの雰囲気が過酸化水素溶液によって加湿され終わっているので、オゾン含有ガスの加湿は行われないか、又は、不要でさえある。真空の付与の合間に、過酸化水素の蒸発段階の前に、及び、第2の露出期間の終了の前に、滅菌雰囲気の成分のどれもが第2の露出期間の終了前に除去されないように、あらゆる滅菌雰囲気成分の完全な除去が中止される。真空の付与の段階、第1の露出期間を伴う過酸化水素の注入の段階、及び、第2の露出期間を伴うオゾンガスの注入の段階が、少なくとも1回は反復されることが好ましく、及び、この反復の回数は、段階330において前もって選択されたサイクルに基づいて段階395において決定される。滅菌サイクルの完了後に滅菌チャンバ10から残留滅菌剤の全てを取り除くために、換気期400が開始され、この換気期が、滅菌チャンバの排気と酸素による洗い流しとの複数のサイクルを含むことが好ましい。この換気期400の後に、段階410において扉がロック解除され、滅菌された物品が滅菌チャンバから取り出されることが可能である。滅菌チャンバの床と扉の温度と蒸発器ユニットの温度とが、滅菌プロセス全体を通じて調整されることが好ましい。
【0034】
本発明による例示的な滅菌装置では、ユーザは複数の異なる滅菌サイクルの選択が可能である。好ましい方法では、このプロセスのサイクル選択段階330において、ユーザは、表1に示されておりかつ後述されるそれぞれの特性を有する3つのサイクルの中から選択することが可能である。
【表1】
サイクル1 − オゾンとの低い適合性を有する装置、ヒンジ付き装置、及び、短いフレキシブル内視鏡(1mm×85cm)の表面滅菌。(例えば、カメラ、ケーブル、パドル、鉗子、気管支鏡、尿管鏡)。
サイクル2 − オゾンとの高い適合性を有する表面装置、ヒンジ付き器具、及び、硬質の内視鏡(1mm×50cm)。
サイクル3 − サイクル#1によって滅菌可能な器具、及び、複雑な内視鏡(例えば、胃カメラ、大腸内視鏡)。
【0035】
50%過酸化水素溶液を使用してこの滅菌プロセスを行うことが好ましいが、このプロセスは、30%−50%の過酸化水素を含む溶液を使用して行われることが可能である。3%、30%、及び、50%の過酸化水素溶液を使用して行われる時のこのプロセスの例示的な条件が次の通りである。
【表2】
【0036】
最大注入圧力は、蒸発過酸化水素溶液の注入が停止される圧力である。条件調整時間が、滅菌される物品が滅菌チャンバ内に保たれ、かつ、約40℃に加熱されているチャンバの壁と床と扉によって室温から次第に温度上昇する、滅菌チャンバの封止後と真空の付与の前の時間期間を表す。チャンバ内のロード(load)のこの加温は、蒸発過酸化水素溶液の注入時におけるロード上の水の不要な凝縮を防止するために必要とされる。この凝縮のリスクは、過酸化水素溶液の濃度の低下につれて増大する。
【0037】
ユーザがこの3つのサイクルの1つを選択し終わると、そのユーザは滅菌チャンバの扉を閉め、開始ボタンを押す。その次に、滅菌装置制御システム(
図9を参照されたい)が、組み込まれている操作ソフトウェアの制御を受けて、選択されたサイクルに関する予め選択されたパラメータを使用して、選択されたサイクルによる滅菌プロセスを開始する。滅菌ロードの事前の条件調整はない。このサイクルは、約133Pa(約1トル(1.33mbar))の滅菌チャンバ内の真空の発生から開始する。その次に、蒸発水性過酸化水素溶液が、ロードを部分的に滅菌及び加湿するために、蒸発器ユニットを通して滅菌チャンバの中に注入される。過酸化水素溶液は、蒸発器ユニットの中に入る前に、
図8に示されている計量供給ユニット240の中を通過する。この計量供給ユニット240は蒸発器ユニット260に直接的に連結されており、及び、したがって、滅菌チャンバ内に存在する真空圧を受ける。計量供給ユニット240は基部ブロック241を含み、この基部ブロックは固定された既知の体積の通路(図示されていない)を有し、この通路は、その通路の上流側の末端において吸い込み弁242によって過酸化水素リザーバ220に連結されており、かつ、この通路の下流側の末端において排出弁243によって蒸発器ユニット260に連結されている。計量供給ユニット240を通過する過酸化水素溶液の流量は、弁242、243によって正確に制御されることが可能であり、これらの弁は、他方の弁が開いている時には一方の弁が常に閉じられており、かつ、両方の弁が同時には開かないように、互いに反対に切り替えられかつ非オーバーラップ(non−overlapping)である。このようにして、この通路は、排出弁243が開いておりかつ吸い込み弁242が閉じている時に排出され、及び、排出弁243が閉じておりかつ吸い込み弁242が開いている時に過酸化水素溶液で満たされ、及び、排出弁243が再び開いておりかつ吸い込み弁242が再び閉じている時に再び排出される。この通路の正確な体積が分かっているので、弁サイクル毎に供給される過酸化水素溶液の量が分かっており、過酸化水素の合計量が弁開閉サイクルの回数に基づいて計算されることが可能である。弁242、243が開閉する回数と頻度が装置のソフトウェアによって制御及び監視され、及び、供給ボトルから吸い込まれた合計量と計量供給された量とに基づいて、リザーバから取り出された過酸化水素溶液の量を求めるために、及び、リザーバ内の溶液の理論的な残留量を計算するために、使用されることが可能である。本発明の装置及び方法の発明者は、一般的な認識とは反対に、チャンバ内に供給される蒸発過酸化水素の正確な量が重要ではないということを発見している。これとは反対に、本出願の発明者は、過酸化水素蒸気の滅菌効果の最も確実な決定要因がチャンバ内の圧力であるということを驚くべきことに発見している。この滅菌効果は、過酸化水素による滅菌雰囲気の飽和レベルに依存している。しかし、この飽和レベルは、チャンバ内のロードと、ロード中の材料の吸収特性とに大きく依存するので、注入される溶液の量からは確実には計算不可能である。しかし、この飽和レベルはチャンバ内の圧力に直接的に比例している。したがって、チャンバ内の飽和レベルは、チャンバ内への注入された過酸化水素溶液の流量又は量を測定することによってではなく、チャンバ圧力に基づいてのみ求められることが可能である。この結果として、本発明の実施形態における過酸化水素注入段階360中の弁開閉サイクルの回数は、過酸化水素注入の完了時においてチャンバ10内で達する圧力に完全に依存している。好ましい実施形態では、50%水性過酸化水素溶液が使用され、チャンバ内で達しなければならない圧力増大が2527Pa(19トル)である。事前設定された2527Pa(19トル)の圧力増大の到達の後に、採用随意の2分間の保圧時間が続く。その次に、1回分の乾燥オゾン含有ガスが注入され、その後に第2の露出期間が続く。このオゾンの用量は、ユーザによって選択されるサイクルによって決まる。第1及び第2の部分的滅菌段階の所望の回数の反復が行われる時に、過酸化水素及びオゾン滅菌剤の残留物を取り除くために、酸素によってチャンバを3回にわたって排気及び再充填することによって、滅菌チャンバ10の換気が行われる。
【0038】
条件調整期中に各パルスによって注入される過酸化水素の体積における変化が、滅菌の有効性と、ロード上で観察される凝縮物の量とに対して影響を与えるかどうかを判定するために、本出願人は、異なる注入パルス量で滅菌試験を行った。理論的には、過酸化水素の注入/蒸発の速度が滅菌の有効性に影響を与える可能性があった。各パルス中に著しくより大きな体積を注入することによって、その溶液がチャンバ内により迅速に押し込まれ、及び、その液体が蒸発する時間が減少させられる。したがって、器具上又は包装材料上により多くの凝縮物が生じる機会がより一層多い。過剰に顕著である凝縮物が2つの問題点を生じさせることが予想される。第1に、顕著な凝縮が、器具の表面において胞子にオゾンが到達する能力を制限する可能性があった。第2に、過酸化水素液が包装材料内に閉じ込められたままになり、後でその滅菌されたロードを取り扱う人々にとって有害である可能性があった。閉じ込められた過酸化水素液の量が過剰に多い場合には、滅菌サイクルの終了時におけるチャンバとパッケージングとの換気が、過酸化水素凝縮物の全ての残留物を取り除くには不十分であることがある。
【0039】
滅菌チャンバ内の圧力が大気圧よりも低下させられている時には、チャンバ内に存在しているか又はチャンバ内に注入されるあらゆる液体が、大気条件における場合よりも低い温度で沸騰するだろう。本プロセスの上記の実施形態では、チャンバ内の圧力は最初に低下させられ、及び、その次に、ある一定の体積の過酸化水素が蒸気の形態で注入される。使用される過酸化水素の全体積が小さい増分で注入される。注入中は、チャンバ内の圧力が、2660Pa(20トル)(133Pa(1トル)の開始圧力+2527Pa(19トル)の圧力増大)の最終圧力に達するまで増大する。過酸化水素は水よりも高い温度で蒸発する(50%過酸化水素の沸点は114℃であり、水の沸点は100℃である)。したがって、凝縮物は、チャンバの中に入る初期溶液よりも過酸化水素においてより濃縮されるだろう。この現象は、チャンバ内に配置されているUVランプによって観察された。チャンバ内の圧力が増大していた場合にさえ、UVランプによって読み取られた蒸気中の過酸化水素の濃度は減少していた。さらに、第1の過酸化水素液滴の濃度(1330Pa(10トル))が滴定された。その液体が約85%の濃縮過酸化水素であることが発見された。
【0040】
約1330Pa(約10トル)の圧力では、過酸化水素の微量凝縮物(micro−condensation)の層がチャンバ内の物体上に現れた。この微量凝縮物の厚さは数分子分の厚さにすぎないと計算されたが、過酸化水素が蒸気の形態と液体の形態とにおいて滅菌することが可能であるということが公知なので(Chung他、2006、及び、Unger−Bimczok他、2008)、滅菌を補助することが可能である。さらに、オゾンは過酸化水素中でより溶けやすく、及び、胞子が存在している表面においてラジカルを形成することが可能である。
【0041】
一度に大きな体積の注入を行うために、テフロン管材料で分離された弁が、通常使用されるマイクロバルブ(microvalve)(AM−213−001、TSO3 Inc.)の代わりに使用された。この管材料の長さが、注入される体積によって決定された。この弁の中に含まれる体積が大きいので、2つサイズの弁が使用された。0.062″のオリフィスを有する第1のタイプ(TSO3 #:CM−900−157)が、1.5mLまでの体積に対して使用された。0.156″のオリフィスを有する第2のNeptuneタイプ(AM−900−156、TSO3 Inc.)が、3.5mLまでの体積に対して使用された。より大きい弁サイズは、さらに、大きな液体体積をチャンバ内に送り込むことを補助する。35μLの体積に関しては、Burket 7616マイクロポンプ(CM−113−001、TSO3 Inc.)が使用された。23μLの体積に関しては、より大きい、特別に作られたブロックが使用された。
【0042】
2つのサイクルがこの実験のために使用された。無菌状態を試験するために、サイクル1(半サイクル)が使用され、この場合には、上述したように、条件調整期の注入段階が、各試行毎の体積及びパルスの変化によって変更された。凝縮物の効果に関しては、4つの期から成るサイクル3が使用された。このサイクルは、そのサイクルに関してより多い量の過酸化水素が注入されてそのサイクルを最悪のケースシナリオにしたという事実の故に選択された。第3の試験が無菌状態の試験のために行われた。管腔(テフロン、1mm×80cm)が、MCB−09−A07にしたがってワイヤ方法を使用して接種処理された。サイクル1の半サイクルに対する露出の後に、各々の管腔の無菌状態が、超音波法とその後の濾過とを使用する量的回収によって、MCB−09−A07 rev.7にしたがって判定された。
【0043】
注入された体積を正確に求めるために、ビュレットがこの弁システム上に差し込まれた。その次に、この体積がパルス数で割り算された。3つのTSO3サイクルが、これら3つのサイクルに関する平均ロードを表す特別なロードを用いて試験された。サイクルの開始時にはこのロードは常に室温にあった。UVランプも、使用された滅菌装置上に備えられた。このことが、条件調整期中における過酸化水素蒸気の分析を可能にした。
【0044】
無菌状態が、管材料の中に装入されたテフロンワイヤ(1mm×80cm)を用いて検証され、及び、サイクル1の半サイクル内で試験された。条件調整期中の各パルスによる第1の注入体積が1.5mLだった。滅菌効果に関して良好な結果の場合には、体積が2倍にされただろう。結果が不十分であった場合には、その体積の半分が試験されただろう。1パルス当たり1.5mLを使用した試験の結果が良好だったので、その試験を2.5mLと3.4mLとを用いて繰り返した。2394Pa(18トル)の所望の圧力に達するために2つパルスだけしか必要ではなかったので、試験が3.4mLの注入で中止された。通常の条件調整期は2527Pa(19トル)で止まったが、圧力が超過されなかったことを確実なものにするために、マイクロバルブが2394Pa(18トル)から2527Pa(19トル)の間で使用された。
【0045】
3.4mLで無菌状態が得られた(全ての試験が胞子カウントに関してゼロだった)。したがって、本出願人は、パルス体積の変動が滅菌効果にまったく影響しないということを発見した。しかし、過酸化水素がチャンバ内に注入される場所に凝縮物が存在したということを滅菌試験中に発見した。したがって、各パルス毎に凝縮なしに注入されることが可能な最大体積を求めるために、より多くの試験が行われた。
【0046】
注入された第1の体積が再び1.5mLだった。凝縮物が注入場所においてロード上に存在した。測定された液体凝縮物の量が、3.4mLの注入パルスで観察されたものと同じだった。その次に、このパルス量が、それ以上多くの凝縮物が見えなくなるまで、1回毎に半分ずつ注入量を減少させることによって段階的に減少させられた。75μLでは、凝縮物は、再び、3.4mLの注入パルスの場合と同じだった。凝縮物形成における著しい減少が、75μLのパルス体積よりも低いパルス体積で観察された。35μLでは、凝縮物が依然として目視できたが、著しく減少した。23μLでは、凝縮物は殆ど目視できなかった。16μLのパルス体積では、凝縮物は全く完全に観察できなかった。凝縮物が約20μLのより大きいパルス体積で生じることが発見された。したがって、過酸化水素の不要な凝縮物の量を調整するためには、75μL未満のパルス注入体積を使用することが好ましく、35μLより小さいパルス注入体積を使用することがより好ましく、約20μLのパルス注入体積を使用することが最も好ましい。
【0047】
本発明による例示的なプロセスでは、滅菌チャンバの壁が温度40℃に維持され、一方、ロード温度が20℃と25℃の間で変化するだろう。使用される過酸化水素溶液の濃度は50%であることが好ましいが、3%程度の低濃度と59%程度の高濃度とが使用可能である。チャンバ内で到達される圧力が、使用される過酸化水素濃度(表IIを参照されたい)の関数である。到達する圧力が上記の各サイクルに関して同一であっても、必要とされる過酸化水素溶液の体積は、その溶液の濃度と、チャンバ内のロードのタイプと、そのロードの過酸化水素吸収能力とに依存する。オゾン注入前の滅菌雰囲気内の加湿レベルが、過酸化水素溶液の異なる濃度を使用することによって調整されることが可能である。
【0048】
オゾンの用量は、サイクル#1の場合の2mg/lとサイクル#2の場合の10mg/lの間で変化し、及び、その露出期間は、サイクル#1の場合の5分間とサイクル#3の場合の10分間の間で変化する。
【0049】
滅菌ガスとして加湿されたオゾンを使用する従来技術の滅菌プロセスで使用されるオゾンの量が一般的に約85mg/lである。オゾン注入前のロードの部分的滅菌と加湿とのために過酸化水素を使用することが、選択されたサイクルに応じて、2mg/lから10mg/lの間の用量までの、滅菌(SAL 10
-6)を実現するために必要とされるオゾンの量の大きな減少を可能にする。この減少は、過酸化水素とオゾンが同一の滅菌サイクルで使用されるという事実だけから予想される減少よりも著しく大きい。
【0050】
実際にはチャンバ内に注入される蒸発過酸化水素溶液は滅菌を実現するためには不十分であるが、胞子の4logの減少が観察されている。しかし、滅菌雰囲気1リットル当たりオゾン1−10mgの範囲内の非常に少量のオゾンだけを加えることが、FDAのSecurity Assurance Level規格又は例えばISO(SAL 10
-6)のような世界規格で必要とされるレベルの十分かつ完全な滅菌を結果的に生じさせる。この完全な滅菌は、使用される過酸化水素溶液の量とその溶液の濃度とは無関係に、蒸発過酸化水素溶液の注入だけを使用することによっては実現不可能だった。さらに、過酸化水素の高濃度が特定の器具との適合性を低下させる。これに加えて、例えば2分間の代わりに3分間の、過酸化水素注入後のより長い保圧時間が、滅菌効果を増強することはない。実際的には、過酸化水素注入後の保圧時間は滅菌効果に全く影響しない。さらに、上述したように、少量のオゾンだけを添加することが、驚くべきことに完全な滅菌を生じさせる。
【0051】
排出段階350(
図3を参照されたい)中に、酸素供給弁21、26と、混合物供給弁29aと、混合物バイパス弁29bとが閉じられ、及び、チャンバ排液弁44が開かれる。滅菌チャンバ10が約133Pa(約1トル(1.33mbar))の圧力に排気される。滅菌チャンバ上の圧力センサ13によって測定されるこの圧力に達すると、チャンバの排液弁44が閉じられ、及び、計量供給ユニット240が、蒸発器ユニット260に過酸化水素溶液を供給するために起動され、この蒸発器ユニット260内では過酸化水素溶液が蒸発させられた後に滅菌チャンバ10内に自由に流れ込む。圧力センサ13によって測定される滅菌チャンバ10内の圧力増大が2527Pa(19トル)に達すると、計量供給ユニット240は作動停止させられ、蒸発器260への過酸化水素溶液の供給が停止させられる。2分間にわたって続くことがある後続の第1の露出期間370の最中にあらゆる物質の注入が生じないように、チャンバが密封状態に維持されることが可能である。しかし、その露出期間は完全に随意である。過酸化水素注入段階360(通常は約2−6分間)の終了の直前に、オゾン発生器が、オゾン含有ガスの供給を確実なものにするために起動される。オゾン発生器から出て行く酸素/オゾン混合物の流量が、真空に抵抗することが可能でありかつ毎分1−3リットルに流量を調整することが可能である調整器オリフィス28によって。常に調整される。オゾン発生器22の作動は、供給弁26と混合物バイパス弁29bの開放を含む。供給弁26は、酸素をオゾン発生器の中に流入させる。その次に、この発生器によって生じさせられたオゾン/酸素混合物は、混合物バイパス弁29bを経由してオゾン触媒52の中に直接的に送り込まれる。段階370の完了後に、発生器22によって発生させられた酸素/オゾン混合物は、混合物供給弁29を開きかつ混合物バイパス弁29bを閉じることによって、滅菌チャンバ10の中に直接的に送り込まれる。選択されたサイクルにしたがった所望のオゾン濃度にチャンバ内で達するまで、酸素/オゾン混合物がチャンバ10の中に入る。この段階に要する時間は、当業で公知のタイプのオゾン監視装置15によって測定される、混合物中のオゾンガスの流量と濃度(好ましくは、160−200mg/l NTP)に依存している。所望の濃度に達し終わった後に、滅菌チャンバを密封しかつオゾン/酸素ガス混合物を真空下でチャンバ内に保つために、混合物供給弁29aが閉じられる。
【0052】
チャンバ内への滅菌ガス(酸素とオゾンガスの混合物)の供給が停止された後に、発生器22は停止させられ、及び、酸素供給弁26が閉じられる。ユーザによって選択された滅菌サイクルに応じて、5−10分間の露出期間にわたって滅菌チャンバが密封状態に維持される。同様に、選択されたサイクルに応じて、滅菌が完了する前に、段階350から段階390が1回から3回以上の回数にわたって繰り返される。この設定は10
-6(SAL 10
-6)のSecurity Assurance Level規格に準拠した。
【0053】
完全滅菌後に滅菌チャンバ10内の残留する過酸化水素とオゾンと湿気とを全て取り除くために、換気期400が行われる。この換気期は最終の露出期間390の後に行われる。チャンバ排液弁44が開かれ、及び、約650MPa(約6.5mbar)まで真空が加えられる。650MPa(6.5mbar)の真空圧が得られた後に、排液弁44が閉じられ、酸素供給弁21が開き、酸素を滅菌チャンバ10の中に受け入れる。大気圧に達すると、酸素供給弁21が閉じられ、滅菌チャンバ排液弁44が開かれ、及び、130MPa(1.3mbar)の圧力に達するまで真空が再び加えられる。130MPa(1.3mbar)までのこの最後の換気サイクルが、合計3つの換気サイクルの間に1回繰り返される。最後のサイクルの後に大気圧に達した後に、滅菌チャンバの内容物に対するアクセスを可能にするために、滅菌チャンバの扉機構が段階410で起動される。この換気期は2つの機能を有する。第1に、アクセス扉を開く前に滅菌チャンバ内の全ての滅菌剤残留物を取り除くために、及び、第2に、真空圧が加えられる時に滅菌済みの材料を蒸発によって乾燥させるために。当然であるが、所望の滅菌剤除去と乾燥とが実現される限りは、異なる真空圧とサイクル時間と反復回数とが適用されることが可能である。
【0054】
滅菌チャンバ10から排出される滅菌剤と湿気含有ガスとが、滅菌剤の完全な分解を確実なものにするために、大気中へのそのガスの排出の前に触媒52上を通過させられる。この触媒52は、滅菌サイクルの2つの部分、すなわち、(弁26、29bを伴う)発生器22の起動中と滅菌チャンバ10の排出中にだけ使用される。発生器22の始動期中に、混合物バイパス弁29bが開かれ、及び、オゾンが触媒52を通過させられる。発生器22の始動期が終了すると、バイパス弁29bが閉じる。滅菌チャンバ10の換気中に、滅菌チャンバ排液弁44が開かれ、オゾンを含む滅菌廃棄ガスが触媒52に導かれる。滅菌チャンバ10の排出が完了されると、排液弁44が閉じられる。オゾンの循環が真空ポンプ40によって確保される。触媒52は真空ポンプ40の上流側又は下流側に配置されることが可能である。
【0055】
実際には、20℃において水が0.023MPa(23.3mbar)の絶対圧にまで沸騰し、及び、35℃において水が0.056MPa(56.3mbar)の絶対圧にまで沸騰する。滅菌チャンバ内の真空が、水の沸騰温度が滅菌チャンバ内の温度よりも低下させられる圧力に調整されることが好ましい。この沸騰温度は非常に低く、蒸発器ユニット内の過酸化水素溶液の温度が急速に低下し、及び、周囲構造から得られるエネルギーに応じて、エネルギーの供給が実現されない場合にはこの過酸化水素溶液が凍結することがある。過酸化水素溶液を蒸発させるために必要とされるエネルギーは様々な供給源から得られる。このエネルギーは、主に、蒸発器ユニット260の主本体から得られ、この主本体は、加熱装置(図示されていない)が備えられているアルミニウムブロックの形である。この蒸発プロセスは、さらに、湿気が滅菌チャンバ壁上に凝縮する温度に加湿装置を冷却することもある。これは、少なくとも室温(好ましくは40℃)にチャンバ壁を維持するのに十分なだけチャンバ壁を加熱することによって回避される。これは、加熱装置(図示されていない)によって実現され、この加熱装置は当業者には容易に明らかだろう。
【0056】
滅菌チャンバ内に注入される蒸発過酸化水素溶液は、滅菌チャンバ内の相対湿度を増大させる。この加湿は、オゾン滅菌段階の効果を著しく改善する。酸素/オゾン含有ガスが、外界に近い温度で、加湿された滅菌チャンバ内に注入される。オゾン含有ガスは注入前には加熱されない。
【0057】
過酸化水素は、医療器具を滅菌する時にその限界を示す。H2O2は、例えばステンレス鋼のような金属に接触する時に安定性が低下する。この問題が、化学反応が加速される低圧力において悪化させられる。したがって、過酸化水素の分解が真空下で加速され、及び、長い金属管材料を滅菌するために使用可能な時間を限定する。さらに、H2O2がガスではないので、H2O2の拡散が制限される。過酸化水素は拡散によって長い管材料の末端に到達するだろうが、その到達時点までに、加速された分解のせいで、滅菌には不十分なレベルにまでその濃度が低下し終わっているだろう。
【0058】
本出願人は、上述したように、これらの問題がオゾンのような滅菌剤ガスの添加によって克服可能であるということだけでなく、過酸化水素のフリーラジカルへの分解による滅菌チャンバの加湿が滅菌剤ガスの効果を改善するということを発見している。さらに、本出願人は、オゾンが亜酸化窒素すなわち一酸化窒素によって有利に置き換えられることが可能であるということを驚くべきことに発見している。本出願人は、過酸化水素の分解中に発生される水と酸素も一酸化窒素の効果を改善するということを発見した。
【0059】
亜酸化窒素(すなわち一酸化窒素)は、低濃度において細胞に有毒であることが知られている。水と酸素の存在下では、NOが反応して二酸化窒素NO2を形成するが、この二酸化窒素も非常に有毒である。酸素の不在下では、NOはNO2を形成しないが、反応して硝酸を形成し、この硝酸は他の材料に対して非常に腐食性である。
【化1】
【0060】
過酸化水素の予備調整後の所要NO濃度が非常に低いので、硝酸形成の問題は、水ではなく過酸化水素と一酸化窒素を混合することによって最小限にされる。H2O2処理が胞子被膜を弱体化し、及び、過酸化水素と一酸化窒素は、互いに混合されると、オゾンが過酸化水素と混合される時のオゾンの反応と同様に、フリーラジカルを形成する。
【化2】
【0061】
このフリーラジカルは全ての有機物質と急速に反応して、その有機物質を酸化する。この酸化の速度は、NO又はO3だけの場合の101ではなく、109台であるだろう。
【0062】
本出願人は、当初に試験されたオゾンガスを酸素及び一酸化窒素のような別のガスで置き換えることの効果を試験した。この試験は、接種された装置上での滅菌効果を評価した。接種されたワイヤが管材料内に挿入され、及び、その後でパウチ内に挿入された。このパウチが、さらに、滅菌チャンバ内の装荷キャリッジ(loading carriage)の頂部に置かれた。この区域は滅菌チャンバ内の最小効果箇所(the point of least efficacy)と見なされる。
【0063】
実施例
同じロードが、行われた3つの組の試験(オゾン、酸素、一酸化窒素)のために使用された。管材料の長さと直径と材料とタイプは各サイクル毎に異なっていたが、これらが表3に説明されている。接種された管腔が、その3つのサイクルに関する平均ロードを表す特別なロードの中に置かれた。
各サイクル毎の管材料の長さと直径と材料
【表3】
【0064】
滅菌効果を評価するために使用される管腔が、プロトコルMCB−09−A07 Rev.9にしたがって接種された。ワイヤ法(wire method)が使用された。ワイヤが、1.0×10
6から2.5×10
6 UFC/10μLのG.stearothermophilus ATCC 7953胞子懸濁液10μLを用いて接種された。この接種されたワイヤが、通常の室温条件において一晩にわたって乾燥するままにされた。
【0065】
試験ロードが各サイクルの半サイクルに対して露出させられた。酸素と一酸化窒素とを用いる実験のために、オゾンが、試験対象のガスによって置き換えられた。ビュレットも、注入されたH2O2の体積を正確に求めるために弁システム上に差し込まれた。露出の後に、超音波法とその後の濾過とを使用する定量的回収によって、MCB−09−A04 Rev.7にしたがって、各管腔の無菌性が判定された。
【0066】
オゾン
各サイクルで使用された接種された管腔上での滅菌効果のベースラインが、過酸化水素だけを使用して確かめられた。過酸化水素とオゾンを使用するサイクルが、酸素と一酸化窒素の効果をオゾンに対して比較するために行われた。
【0067】
酸素
オゾンのために使用されたシステムと同じシステムを使用して酸素がチャンバ内に注入された。オゾン発生器は停止させられた。
【0068】
一酸化窒素
しかし、NOは、独立したNOシリンダ(Praxair)からチャンバ内に直接的に注入された。テフロンチューブによって分離されている、0.156″のオリフィスを有するNeptune弁(CM−900−156、TSO3 Inc.)が、この注入のために使用された。そうすることによって、そのガスがチャンバ内に強制的に送り込まれた。
【0069】
偶発的な漏洩による発生可能な危険性を抑制するために、全ての試験が戸外で行われた。NO検出器が使用された。NOがその機構から遠くに退けられることを可能にするために、長い管が触媒コンバータユニットの中に差し込まれた。2mg/Lの濃度を得るために必要な弁注入の回数を求めるために、計算が行われた(下記を参照されたい)。
弁体積:3.3mL(R−1937において計算された体積)
NO密度NTP:1.25g/L
滅菌チャンバの体積:125L
所望の最終濃度:2mg/L
NO圧力:3psig
補正された体積:3300×((14.7+3)/14.7)=3973.2μL
注入される質量:0.002g/L×125L=0.25gno
各注入によって注入される質量:1.25g/L×0.003974L=4.9665×10−3g/注入
必要とされる注入の回数:0.25gno/4.9665×10−3g/注入=50回の注入
【0070】
2つのレンズがチャンバ内に存在しており、一方のレンズが底部の後部にあり、かつ、他方のレンズが頂部の後部にある。これらは、一方が他方の頂部上に正確に位置合わせされている。一方のレンズがタングステン光源からのUV光を放出し、及び、他方のレンズがUV検出器に連結されている。この機構が、チャンバ内の過酸化水素蒸気の測定を可能にした。
【0071】
過酸化水素は、G.stearothermophilus胞子に対して幾分かの不活化作用を有する。しかし、管腔内で実現された無菌性のパーセンテージは、特に硬質かつ長い可撓性の管腔の場合には、過酸化水素を単独で使用するには不十分である。過酸化水素に関する結果と、過酸化水素と混合された他のガスの結果とが、表4に要約されている。
過酸化水素と混合された異なる滅菌剤による3つのTSO
3サイクルに関する無菌性のパーセンテージ
【表4】
【0072】
過酸化水素と混合された酸素の場合には、オゾンと同等の濃度が各サイクルで使用され、言い換えると、サイクル1では2mgのO2/L、サイクル2では10mg/L、最後にサイクル3では3mg/Lが使用された。酸素は、過酸化水素単独又はオゾンと混合された過酸化水素に比較して、サイクル1及びサイクル2においてそのプロセスの効果を低下させた。サイクル3では、酸素又はオゾンによるそのプロセスの効果は同等であった。したがって、酸素はオゾンを置き換えるには効果的ではないということが発見された。
【0073】
一酸化窒素は公知の殺菌剤であるが、一酸化窒素と過酸化水素の混合物が高濃度では爆発性である可能性があるので、一酸化窒素は過酸化水素と混合されることは決してなかった。爆発の危険性を最小限にするために、NO濃度が、第1の一連の試験の3つのサイクルにおいて2mg/Lに制限された。無菌性がそのサイクル全てにおいて幾つかのサンプルに関して実現され、したがって、一酸化窒素の濃度がさらに増大されることはなかった。これらの結果は非常に決定的であり、すなわち、過酸化水素と混合されたオゾンよりも良好であるか、又は、これと同様であった。
【0074】
この調査においてNOによるG.stearothermophilus胞子の不活性化を検証するために対照が行われない場合にさえ、NOの不活性化率が低いことが複数の調査で実証された。NOが滅菌チャンバ内に注入されかつ湿った空気と組み合わされると、NOは、予測可能な比率で酸素と反応してNO2を形成し、このNO2はG.stearothermophilus胞子に対して致死的である。NOが、酸素原子が存在しない状態の滅菌チャンバ内に注入される時には、NOはNO2を形成せず、及び、胞子が殺菌されない(http://www.mddionline.com/article/sterilizing−combination−products−using−oxides−nitrogen)。Noxilizer滅菌プロセスの発行者データによれば、5.12mg/LのNO2では、D値は0.3分にすぎない。3mg/Lでは、D値は約1.9分である。
【0075】
この実験では、注入されたNOの量が2mg/Lだった。全てのNO分子がNO2に変形させられた(2mg/LのNO2濃度の場合に1.9分のD値)ということを考慮すると、NO2によって2.5logの胞子だけが不活性化され終わっているだろう。これ、接種された装置上に存在する6logより少ない。実際には、NO2におけるNOの変換率はおそらく100%ではなく、D値は1.9分よりも大きい。したがって、NOだけによって不活性化された胞子の数は、おそらく約1logよりも多いだろう。
【0076】
別のガスによるオゾンの置換が本プロセスの3つのサイクル全てにおいて試験された。過酸化水素注入が通常の形で行われた。2つのガスが試験された。第1のガスである酸素は、決定的な結果を実現しなかった。無菌性はこの3つのサイクルの内の2つのサイクルで得られなかった。
【0077】
一酸化窒素も試験された。結果が3つのサイクル全てにおいて完全な無菌性を示した。全ての試験に使用された濃度が低かった。2mg/Lだけが3つの試験に関して注入された。この化学物質の使用は将来において考察されることが可能だろう。しかし、滅菌装置に対する大きな変更が、これに対処するために行われなければならないだろう。NO
2がこれらのサイクル中に形成されるので、適合可能な材料だけが使用されることが可能だった。さらに、例えばNO検出器のような保護装置が考慮されなければならないだろう。
【0078】
二酸化塩化物のような、フリーラジカルの形成を続けるために過酸化水素と相互作用することが可能な他の滅菌剤ガスが、オゾンの代わりに使用されることが可能である。
【0079】
一方、多くの異なる分子が、オゾンに対する過酸化水素の効果と同一の効果を有することが可能である。幾つかのイオンも、オゾンに対する過酸化水素の触媒効果を有することが可能である。Co
2+、Ni
2+、Cu
2+、Mn
2+、Zn
2+、Cr
2+、Fe
2+、Ti
2+イオンがオゾンの分解を増大させる(Ahmed他、2005)。酸素と共に分子を形成できる全ての遷移金属がオゾンを分解するだろう。正イオンが、オゾン分子に酸素原子を到達させることによって中性になろうとするだろう。概ね安定しているオゾン分子が酸素原子を容易に提供するだろう。塩基性pHを有する水がヒドロキシルイオンをより豊富に含むだろう。ヒドロキシルイオンはオゾンを酸素原子に分解する。こうした酸素原子は、その後でヒドロキシルラジカルを形成することが可能である。したがって、溶液pHを塩基性にするために使用されることが可能なあらゆる分子がオゾンの分解を促進するだろう。適切な例がNaOH又はKOHである。
【0080】
ヒドロキシルラジカルの別の供給源が、アルコール基を含む全ての溶媒である。これらの溶媒はOHイオンを提供し、及び、オゾンの希釈を促進する。同じ趣旨で、蟻酸塩とフミン質がラジカル形成に向かう連鎖を開始させることが可能である(Glaze他、1987)。酢酸及び過酢酸のような幾つかの酸も使用されることが可能である。酸性溶液中でより溶けやすくかつ安定しているオゾンが、より長期にわたって反応することと、より高度に濃縮されることとが可能である。炭酸基、臭素、リン酸基、又は、硫酸基を含むあらゆる分子も、オゾンを分解するだろう(Beltran、2004)。
【0081】
図2と
図7に示されているように、配送ユニット200が、密封された過酸化水素溶液ボトル180を受け入れるためのボトルホルダ202を含む。このホルダは、ボトル180が中にぴったりと受け入れられるボトル座204を有する。より詳細に後述されるボトル180は重力だけによって座204内に保持される。ホルダ202は、ボトル180がホルダの中に入れられるか又はホルダから取り外されることが可能な
図7に示されている開放位置と、ホルダが完全に滅菌装置キャビネット(図示されていない)内にありかつホルダの前部カバー205がキャビネット外側からのホルダへのアクセス全てを遮る閉鎖位置との間を動くように、ピボット203上に回転自在に取り付けられている。ホルダ202が閉鎖位置にある時には、この実施形態では垂直方向に方向配置された空気圧シリンダ208である針駆動装置と、そのシリンダのピストン棒210上に取り付けられている排液針208とを含む、空気圧で駆動される排液装置207が、ボトル180の底部から過酸化水素溶液全てを排液するために起動される。これは、ボトル180の底部に針の先端が達するまで針209をボトルのシールの中を貫通させるようにシリンダ208を作動させることによって実現される。針209はリザーバ240に流体的に連結されており(
図8を参照されたい)、及び、リザーバ240が導管211と弁212によってそれに流体的に連結されることが可能な真空ポンプ44(
図1を参照されたい)によって発生させられる真空を使用することによって、その溶液がボトル180からリザーバ240内に吸引される。ボトル180の内容物が吸引され終わると、ホルダが開かれてボトルが取り外されることが可能であり、又は、空のボトルが、リザーバ240の補充が必要とされるまでホルダ内に保持されることが可能である。リザーバ240は、リザーバ内の液位に関する信号を制御システムに提供する液面センサ242を備えている。センサ242から受け取られる信号に基づいて、制御システムは、リザーバ240内の液体の量がユーザによって選択されたサイクルの実行のために不十分であるかどうかを、ユーザに知らせる。
【0082】
別の実施形態では、過酸化水素配送システムはリザーバを含まない。この代わりに、ボトル180自体が、水性過酸化水素の急速な分解を防ぐために冷却される(CS−01)。センサ(S14)が、ボトル内に残されている溶液の量を測定する。その溶液が第1の予め選択された高さに達すると、第1の警報がスクリーン上に現れ、及び、より低い第2の予め選択された高さに達すると、オペレータに対してソフトウェアから発生されるメッセージが、もう1回だけの滅菌サイクル#1又は#2が、ボトル内の残留する溶液を使って行われることが可能であるということを明示する。その後で、オペレータは、新しい満杯のボトルをその配送システムに再装填しなければならないだろう。
【0083】
図10aから
図10dに示されているように、ボトル180は、そのボトル内の液体全ての完全な排液を確実なものにするために円錐形の底部182を有し、これによって、排液されたボトルの取り外し時における漏出又は汚染の危険性を減少させる。ボトル180が確実に直立状態のままであることを確保するために、スタンド184がボトルの底部末端に取り付けられている。このスタンド184は、ボトルの外側壁187上の円周溝186の中にスナップ嵌めされた上向きのカップ185を含む。針209はボトル底部内の最下点に位置合わせされ、及び、その針がボトル内の最下点に達するまでボトルのシールを貫通してボトルの中に動かされることが可能である。機械式、電子式、又は、他の制御構造及び機能が、ボトル底部の穿孔を防止しながらボトル底部との針の接触を確実なものにするために備えられている。圧力センサが往復針駆動装置及び/又は針マウント(図示されていない)の中に組み込まれることが好ましい。
【0084】
制御システム
この滅菌装置が、電気ブロック図(
図9)及びプロセス流れ図(
図3)に示されている方式によって制御されることが好ましい。この制御システムはPLCシェルフ(プログラマブルロジックコントローラ)の周りに構築される。このシェルフは、電源(107)、CPUユニット(108)、デバイスネットトランシーバ(109)、32×24ボルトDCディスクリート入力モジュール(110)、16×120VACディスクリート出力モジュール(111)、最後に16トランジスタディスクリート出力モジュール(112)、及び、RS232C通信モジュールを含む。これらのモジュールの全てが、データ及びアドレスバスを含む組込み接続システム(intrinsic connecting system)によって互いに一体的にスタックされている。
【0085】
デバイスネットは、計測及び制御のために産業において広く使用されている産業用のシリアル通信プロトコルである。この滅菌装置では、デバイスネットトランシーバ(109)が、CPU(109)と15ビットA/Dコンバータ(106)と15ビットD/Aコンバータ(125)と両方のディジタル温度インターフェース(120)、(121)との間でデータを全二重方式で通信するために使用されている。
【0086】
PLC CPUは3つのRS232ポートを有する。1つは、タッチスクリーンターミナル(118)に対してデータを送受信するために使用され、別の1つは感熱式プリンタ(119)にデータを送るために使用され、最後のポートはサービスポートとして使用され、このサービスポートでは、PC(パーソナルコンピュータ)が、制御プロトコルプログラムをアップロードするためにPLC CPU(108)と通信するために接続されることが可能である(制御プロトコルプログラムはこの文書の範囲内には含まれていない)。
【0087】
タッチスクリーンターミナル(118)は、感熱式プリンタ(119)の近くにおいて滅菌装置の前部に配置されている。タッチスクリーンターミナルと感熱式プリンタとがユーザインタフェースターミナルを構成する。
【0088】
感熱式プリンタ(119)とデバイスネットリンク(109)、(106)、(120)、(121)、(125)と、チャンバ圧力センサ(104)と、電子式酸素調整器(126)と、PLCディスクリート入力(111)及びディスクリート出力(112“とに必要な電力が、直流電源(103)によって供給される。
【0089】
チャンバ圧力センサ(104)とオゾン監視装置(105)とが、標準的な0−10VDC出力信号を有する。電子式酸素調整器は、0−5VDCの出力を有する。全ての信号が15ビットA/Dコンバータに送られる。全ての変換された信号が、処理のために、デバイスネットディジタルリンクによってCPUに送られる。
【0090】
滅菌装置の電力入力(100)は、中性点なしの3ワイヤ208−240VAC単相タイプである。電力入力は、伝導RFIを防止するためにフィルタリングされる(101)。電力は電力配送バス(102)によって滅菌装置の様々な電気システムに分配される。
【0091】
冷却システム(60)が、オゾン発生器を冷却するために使用される。このシステムは、冷却ユニット(114)と冷却剤循環装置ポンプ(113)とを含む。オゾン発生器内の冷却剤の温度が、オゾン発生器に配置されているRTDによって検出される。この温度は、デバイスネットシステム(109)(120)(121)によってCPU(108)に送られる。冷却剤循環装置(113)と冷却ユニット(114)は、ソフトウェアプロトコルによって制御されるPLC出力(111)によって駆動される接触器(contactor)によって制御される。冷却システムの制御を実現するために必要とされる全ての入力と出力とが、循環装置ポンプリレー、冷却システムリレー、循環装置過負荷センサ、冷却システム過負荷システム、冷媒低圧力及び冷却剤流れスイッチとして、電気ブロック図に示されている。
【0092】
真空制御システムは真空ポンプ40と圧力センサ104を含む。真空ポンプの始動及び停止操作が制御プロトコルにしたがって制御される。真空システムに必要とされる全ての入力と出力が、真空ポンプ接触器、真空ポンプ停止センサ(vacuum pump not running sensor)、真空ポンプ過負荷センサ、真空−チャンバ弁(vacuum to chamber valve)(44)、空気パルス弁(18)、及び、酸素−チャンバ弁(oxygen to chamber valve)(21)として、図に示されている。圧力センサの出力は15ビットA/Dコンバータ(106)によって変換され、及び、デバイスネットディジタルリンク(109)によってCPUに送られる。圧力センサは、さらに、温度におけるチャンバ圧力センサ、及び、チャンバ圧力センサヒータ故障という条件をCPU(108)に示す2つの別個の出力を有する。これら2つの信号は、PLC入力として電気ブロック図に示されている。
【0093】
滅菌チャンバ扉作動装置システムは、スクリュー式の電気駆動装置と、制御プロトコルの一部分として扉の閉鎖と作動装置のロック位置とロック解除位置との検出を可能にする4つの誘導センサとを含む。扉開放システムも、ユーザの安全性を確保するために、警報条件管理プロトコルで使用される。扉作動装置システムを実現するために必要とされる全ての入力と出力が、ロック扉リレー(lock door relay)、ロック解除扉リレー(unlock door relay)、扉閉鎖下部センサ(door closed lower sensor)(S2)、扉閉鎖上部センサ(door closed upper sensor)(S1)、扉ロックセンサ(door locked sensor)(S4)、扉ロック解除センサ(door unlocked sensor)(S3)として電気ブロック図に示されている。
【0094】
オゾン電源(116)は、全波整流器と、発振器回路と、高圧変圧器とを含む。この変圧器の出力がオゾン発生器(22)に接続されている。電源(116)は、高圧変圧器の非理想的な特性を使用する共振器として取り付けられている。CPU 108はオゾン発生を制御し、及び、オゾン監視装置104と電子式酸素調整器(126)とによって、滅菌のために求められている濃度が滅菌サイクル全体を通じて実現されかつ維持されることを確実なものにする。オゾン発生システムによって必要とされる全ての入力と出力とが、酸素供給弁(26)、オゾン−チャンバ弁(29a)、オゾン投棄−触媒弁(ozone dump to catalyst valve)(29b)、オゾン監視装置ゼロ設定(ozone monitor zeroing)、高電圧スタンバイリレー、高電圧電流リミタ、オゾン高電圧過負荷センサ、発振器高温度センサ、オゾン監視装置故障として、図に示されている。
【0095】
オゾン供給システムは、電子式酸素圧力調整器と呼ばれるユニットである。酸素を遮断する比例弁(proportional valve)が、絶対圧力センサ(27)からのアナログ信号を変換する集積PID回路によって制御される。その次に、PIDは適切なデューティサイクル電流を比例弁(26)に送る。オリフィス28と共に、このシステムは酸素流量調整器を構成する。機械式調整器24が、60psiの酸素圧力を10psiに低下させるための第1段の調整器として使用される。この電子式調整器は、さらに、ユーザの保護を確実にするための警報条件プロトコルを提供する。警報条件のために使用される入力が、酸素高圧力センサと酸素低圧力センサとして電気ブロック図に示されている。さらに、電子式酸素圧力調整器は、デバイスネットネットワークを経由してA/Dコンバータ106によって読み取られる0−5VDCアナログ出力を提供した。
【0096】
この制御システムはユーザインタフェース118を備えている。好ましい実施形態では、このインタフェースは、タッチセンシティブ液晶ディスプレイ(LCD)スクリーン118、動作報告のためのプリンタ119、及び、その装置の使用のために必要な情報をユーザが送受信することを可能にする通信ポート153(シリーズRS−232)を含む。タッチセンシティブパッド、キーボード等と、他のタイプの通信インタフェースのような、他のタイプのユーザインタフェースが使用可能であるということが当業者には容易に明らかだろう。感熱プリンタ状態入力が、プリンタオフラインセンサとプリンタ紙切れとして電気ブロック図に示されている。
【0097】
H2O2計量配分システムの制御プロセス
現時点では、H2O2計量配分システムの2つの形状構成が想定可能である。制御システムはこの両方のシステムのために使用可能である。
図7と
図8において本明細書において説明されている第1のシステムが、主として、
図8の温度調整リザーバ(240)の中に流入させられるH2O2のボトル(180)である。この第1のシステムは、
図7、
図8、
図9、
図2を参照して説明されるだろう。以下で説明される全ての入力及び出力センサは、
図9に示されている制御システムの入力及び出力のリストに示されている。滅菌装置が最初に初期化されると、扉12が閉じられ、及び、この閉じ状態がスイッチS7によって検出される。ホルダ内にボトルがないことが(S6)によって検出されると、穿孔針もシリンダPA−01(208)によって上方位置に引っ込められる。S8とS9とがシリンダ(208)の上方位置及び下方位置の検出を可能にする。さらに、アクチュエータPA−02がホルダロック解除位置に引っ込められる。ユーザは、扉(205)を開いてH2O2ボトルをホルダ内に挿入するように、スクリーン(118)上のメッセージによって促される。したがって、ボトルがS6によって検出されると、スクリーン(118)上の別のメッセージが、S7によって検出される扉(205)を閉じるようにユーザに促す。ソフトウェア制御がCPU(108)と状態センサとによって行われる。ボトルは重力によって回転台(209)上に据えられる。CPUはモータM−02がボトル180を回転させることを開始させる。バーコードリーダBS−01(
図2)(122)
図9が、ボトル上のバーコードを読み取る。CPUはそのボトルの有効期限を確認し、そのボトルがその有効期限を過ぎている場合には、扉205がロック解除されたままであり、スクリーン(118)上のメッセージが、そのボトルを別のボトルに交換するようにユーザに促す。その有効期限が適正である場合には、CPUは、モータM−02を停止させ、PA−02(
図2)を作動させることによって扉(205)をロックする。その次に、CPUは、S9が針が下方位置にあることを検出するまで、針209がボトルの密封キャップに穿孔するようにシリンダ(208)を作動させる。その次に、ボトルが、弁(212)を経由した吸引とポンプ(40)からの真空とによって、リザーバ240の中に中身を送り込まれて完全に空にされる。リザーバ内のH2O2全てが使用され終わるまで扉(205)はロックされたままである。液位センサS10、S11が、別のボトルが必要かどうかをCPUが推定するために必要な状態を提供する。そうである場合には、針がボトルから引き戻されて、扉(205)がロック解除され、及び、ユーザがH2O2ボトルを交換するようにスクリーン(118)上のメッセージによって促される。
【0098】
別の好ましいH2O2計量配分システムの説明
次に述べる計量配分システムは、冷却されたリザーバ(240)を含まない。その代わりに、H2O2はボトル(180)内に残る。液位検出器S10、S11が取り除かれ、及び、底部の付近においてボトルの側部に対してばねで押し付けられている超音波液位検出器によって置き換えられており、及び、この超音波液位検出器は、CPUに対して空のボトルを示すための低液位検出器として使用される。このセンサがばねで押し付けられているので、このセンサは、モータM−02を使用するには大きすぎる摩擦をボトル上に加える。したがって、ユーザは、バーコードが(BS−01)
図2又は(122)
図9によって読み取られるまで、ボトルを手動で回転させるように、スクリーン(118)上のメッセージによって促される。ボトルが期限切れではない場合には、ユーザは扉(205)を閉じるように促され、及び、CPUがボトルホルダのコンパートメントをロックし、及び、針を下降させて穿孔させるように作動させる(208)。その好ましい実施形態では、H2O2ホルダはペルチェセルユニットによって温度調整されている。ホルダに取り付けられておりかつ温度インタフェース(121)に接続されているRTDが、デバイスネットネットワークによってCPU(108)にデータを送り、及び、CPUは、ペルチェセルユニットに印加される電力の量をPID機能によって制御する。ペルチェユニットは、
図2においてSV−15、SV−16、アクチュエータ(PA−02及びPA−01)で構成されている空気圧システムを駆動する空気圧縮機のためにも使用される12VDC(121)電源によって給電される。各サイクルの間には、H2O2ボトル(180)とマイクロバルブモジュール(240)との間に連結されている配管がSV20によってパージされるだろう。モジュール(240)の入口の付近では、H2O2配管上にスナップ留めされている泡光学検出器(foam optical detector)が、その配管内の、空気無しでのその配管の完全な補充を表示するだろう。
【0099】
この点までは、両方のH2O2計量配分システムがマイクロバルブモジュール(240)に供給することが可能である。マイクロバルブ(SV−18及びSV19)は、両方のマイクロ弁のための適正なタイミングパルスを発生させるオンボードのマイクロコントローラ回路上のプリセットされたデューティサイクルプログラムのために相反的に動作している。この電子回路は、H2O2ポンプコントローラ信号(
図9)と呼ばれるCPU(108)からの信号によって作動させられる。ソフトウェアの制御を受けて、適正な量のH2O2が加湿器マニホルド(260、
図1)の中に受け入れられる。このマニホルドは、RTD(TT−04、
図1)のデータを使用しかつPID機能によって加熱器HTR−01(
図1)を制御するCPU(108)によって温度制御されている。その次に、H2O2がそのマニホルド(260)内で蒸発し、その蒸気はパイプ(280、
図1)を通して真空下でチャンバに送られる。
【0100】
上述の記述内容では、説明のために、本発明の実施形態の完全な理解を実現するように、数多くの詳細事項が明記されている。しかし、これらの個別的な詳細事項が本発明を実施するために必ずしも必要であるわけではないということが、当業者には明らかだろう。他の例では、公知の滅菌装置の構造と回路とが、本発明を不明瞭にしないために、ブロック図又は記号形式(symbol form)で示されている。例えば、滅菌装置の制御装置の特定の部分がソフトウェアルーチン、ハードウェア回路、ファームウェア、又は、これらの組み合わせとして具体化されているかどうかに関して、個別的な詳細事項が示されていない。
【0101】
本発明の上述の実施形態は単なる例示にすぎないことが意図されている。本発明の範囲から逸脱することなしに、当業者によって、これらの特定の実施形態に対して改変と変更と変形とが加えられることが可能であり、本発明の範囲は、本明細書に添付されている特許請求項だけによって定義されている。
【表5】
【表6】