(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0002】
モータ駆動装置は、内部に配置された電子部品を冷却するためにファンモータを備えている。
図8Aは従来技術におけるファンカバーの正面側斜視図であり、
図8Bは従来技術におけるファンカバーの背面側斜視図である。
図8Aに示されるように、ファンカバー100には、ファンモータ(
図8Aには示さない)からの空気を通過させる開口部120が形成されている。そして、
図8Bに示されるように、開口部120周りには、ファンモータを支持するための二つの突出部130が設けられている。
【0003】
図8Cは従来技術におけるファンカバーの側面図である。
図8Cに示されるように、ファンモータ110は、開口部120に対面するように二つの突出部130に支持される。具体的には、
図8Cの部分拡大図である
図8Dに示されるように、ファンモータ110は突出部130の先端に位置する支持部140に係止される。
【0004】
ファンモータ110が駆動されると、ファンモータ110が振動する。この振動は、ファンモータ110とファンカバー100との間に伝達する。さらに、この振動は、ファンカバー100とファンカバー100を把持する本体ケース(図示しない)との間に伝達する。その結果、騒音が発生したり、モータ駆動装置の各部品の信頼性が低下する可能性がある。
【0005】
このため、特許文献1においては、防振ゴムをファンモータと本体ケースの間に配置し、ファンモータの振動を抑えるようにしている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1においては、防振ゴムを別途準備する必要がある。このため、部品点数が増加し、モータ駆動装置の製造費用が増すこととなる。また、防振ゴムは経年劣化するので、モータ駆動装置の保守作業が煩雑になるという問題も生じる。
【0008】
本発明はこのような事情に鑑みてなされたものであり、防振ゴムを使用することなしに、ファンモータの振動を抑えることのできるファンカバーおよびそのようなファンカバーを含むモータ駆動装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前述した目的を達成するために1番目の発明によれば、ファンモータが取付けられたファンカバーにおいて、該ファンカバーは、開口部が形成されたファンカバー平坦部と、前記開口部周りにおいて前記ファンカバー平坦部から延びる突出部と、該突出部に設けられていて前記ファンモータを支持する支持部とを含んでおり、前記ファンモータに当接する前記ファンカバー平坦部の一部分に凸部が配置されており、前記凸部の先端と前記突出部の前記支持部との間の距離
を前記ファンモータの厚さよりも小さいようにし、前記凸部と前記支持部の上面との間で前記ファンモータを支持するようにした、ファンカバーが提供される。
2番目の発明によれば、1番目の発明において、前記支持部の上面に凹部が形成されている。
3番目の発明によれば、1番目または2番目のファンカバーが本体ケースに取付けられているモータ駆動装置が提供される。
【発明の効果】
【0010】
1番目の発明においては、ファンカバー平坦部と突出部の支持部との間の距離がファンモータの厚さよりも小さいので、突出部がファンモータをファンカバーに堅固に支持することができる。このため、ファンモータとファンカバーとの間の隙間が生じなくなるので、ファンモータ駆動時に生じる振動が抑制される。従って、ファンモータとファンカバーとの間に伝達される振動も抑えられる。つまり、防振ゴムを使用することなしにファンモータの振動を抑えられるので、騒音の発生を防止でき、製造費用を抑えることもできる。
さらに、既存のファンカバーに局所的に凸部を取付けることにより、既存のファンカバーであってもファンモータを堅固に取付けることができる。
2番目の発明においては、ファンモータに押付力が与えられてファンカバーが変形するときに、ファンモータが突出部の支持部から離脱するのを避けられる。
3番目の発明においては、ファンカバーと本体ケースとの間に伝達される振動を抑えられると共に、モータ駆動装置の各部品の信頼性が低下するのを避けられる。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、添付図面を参照して本発明の実施形態を説明する。以下の図面において同様の部材には同様の参照符号が付けられている。理解を容易にするために、これら図面は縮尺を適宜変更している。
図1Aは本発明に基づくファンカバーが取付けられたモータ駆動装置の斜視図である。
図1Aに示されるモータ駆動装置1は、図示しない電子部品を収容する本体ケース2と、本体ケース2の一端を閉鎖するファンカバー10とを主に含んでいる。ファンカバー10の背面には、
図1Bに示されるファンモータ11が取付けられているものとする。具体的には、ファンモータ11の上端が、後述する開口部12の位置においてファンカバー10の背面に当接するものとする。
【0013】
図2Aは本発明の第一の実施形態におけるファンカバーの正面側斜視図であり、
図2Bは
図2Aに示されるファンカバーの背面側斜視図である。
図2Aに示されるように、ファンカバー10の平坦部には、ファンモータ(
図2Aには示さない)からの空気を通過させる開口部12が形成されている。
図2Aにおいては、開口部12は、周方向に延びる四つの穴から構成されており、これら四つの穴が略リング状の開口部12を形成している。そして、
図2Bに示されるように、開口部12周りには、ファンモータを支持するための二つの突出部13が互いに対向して設けられている。
【0014】
図2Cは本発明の第一の実施形態におけるファンカバーの側面図である。
図2Cに示されるように、二つの突出部13は、ファンカバー10の背面から互いに向かってファンカバー10に対して略垂直に延びている。そして、
図2Cの部分拡大図である
図2Dに示されるように、突出部13には、内方に屈曲してファンモータ11を支持する支持部14が設けられている。支持部14の上面14aはファンカバー10の平坦部に対して概ね平行である。また、突出部13の支持部14は、ファンモータ11の縁部に部分的に重畳している。
【0015】
ここで、第一の実施形態においては、ファンカバー10の背面と突出部13の支持部14の上面までの距離は、ファンモータ11の厚さ(軸方向高さ)よりも小さい。また、突出部13およびファンカバー10のうちの少なくとも一方が、弾性材料、例えば樹脂材料から形成されている。このため、ファンモータ11の取付時には、ファンカバー10の背面と突出部13の支持部14までの距離を一時的に拡大させられる。従って、ファンモータ11の下端は二つの突出部13のそれぞれの支持部14に係止され、ファンモータ11をファンカバー10の背面に押付けられる。
【0016】
二つの支持部14がファンモータ11に押付力を与えるので、ファンモータ11をファンカバー10の背面に当接させられる。これにより、ファンモータ11をファンカバー10に堅固に支持することができる。それゆえ、ファンモータ11の駆動時であっても、ファンモータ11の振動が抑制される。従って、ファンモータ11とファンカバー10との間およびファンカバー10と本体ケース2との間に伝達される振動も抑えられる。それゆえ、本発明においては、騒音の発生を防止すると共に、モータ駆動装置1の各部品の信頼性が低下するのを避けることが可能となる。
【0017】
図3Aは本発明の第二の実施形態におけるファンカバーの正面図であり、
図3Bは
図3Aに示されるファンカバーの背面側斜視図である。これら図面に示されるように、本発明の第二の実施形態における二つの突出部13Aは、ファンカバー10の平坦部から互いに対面するように円弧状に湾曲して延びている。
図3Cから分かるように、突出部13Aの先端はファンモータ11の縁部に部分的に重畳している。
【0018】
図3Aおよび
図3Bから分かるように、突出部13Aには、突出部13Aの長手方向に部分的に延びる複数のスリット15が形成されている。このため、突出部13Aが硬質材料から形成されている場合であっても、突出部13Aは弾性を有するようになる。このため、第二の実施形態においては、突出部13Aを曲げることができる。なお、突出部13Aが、弾性を有する他の形状であってもよい。あるいは、突出部13Aおよびファンカバー10のうちの少なくとも一方が柔軟材料から形成されていてもよく、この場合には、スリット15を省略することができる。
【0019】
また、第二の実施形態における突出部13Aは湾曲しているので、その先端はファンカバー10の平坦部に対して概ね平行である。このため、第二の実施形態においては、突出部13Aの先端が支持部14としての役目を果たす。あるいは、第二の実施形態においては、支持部14を排除してもよい。
【0020】
図3Cは本発明の第二の実施形態におけるファンカバーの側面図である。
図3Cに示されるように、ファンモータ11を取付ける際には、二つの突出部13Aを互いに遠ざかる方向に開放させる。これにより、二つの突出部13Aの先端間の距離が広がる。そして、ファンモータ11を二つの突出部13Aの間の隙間に挿入し、その後、突出部13Aを元位置まで戻す。
【0021】
これにより、
図3Cに示されるように、突出部13Aの先端がファンモータ11の下端を支持するようになる。従って、ファンモータ11に押付力が与えられ、ファンモータ11をファンカバー10の背面に当接させられる。このため、第二の実施形態においては、ファンカバー10と突出部13Aの先端との間の距離がファンモータ11の厚さよりも短い場合であっても、ファンモータ11を適切に支持することができる。それゆえ、前述したのと同様な効果を得ることができるのが分かるであろう。
【0022】
ところで、一部のファンカバー10においては、ファンカバー10の背面と突出部13の支持部14の上面14aまでの距離がファンモータ11の厚さよりも大きい場合がある。このような場合には、突出部13の支持部14によってファンモータ11をファンカバー10に当接させられず、その結果、騒音などが生じうる。このような場合には、第三および第四の実施形態に従って、ファンカバー10の背面と突出部13の支持部14の上面14aまでの距離を小さくするのが好ましい。
【0023】
図4Aは本発明の第三の実施形態におけるファンカバーの背面斜視図であり、
図4Bは
図4Aに示されるファンカバーの側面図である。これら図面においては、
図2Bおよび
図2Cに示したのと概ね同様なファンカバーが示されている。第三の実施形態においては、開口部12の内側に位置する内側領域17に凸部16Aが設けられている。凸部16Aは弾性材料、例えば樹脂材料から形成されるのが好ましい。開口部12の内側領域17は、ファンモータ11の中心に対応した位置に配置されている。
【0024】
また、凸部16Aの高さは、ファンカバー10の背面と突出部13の支持部14の上面14aとの間の距離、およびファンモータ11の厚さに応じて定まる。言い換えれば、凸部16Aの先端と突出部13の支持部14の上面14aまでの距離がファンモータ11の厚さよりも小さくなるように、凸部16Aの高さが決定される。
【0025】
図4Aおよび
図4Bから分かるように、凸部16Aは、突出部13が設けられるファンカバー10の背面に設けられている。この凸部16Aは、既存のファンカバー10に後付けしてもよい。
【0026】
このように凸部16Aを配置した場合には、ファンモータ11の取付時にファンモータ11の上端が凸部16Aに当接するので、ファンカバー10が凸部16Aを中心してわずかながら変形する。従って、突出部13の支持部14がファンモータ11に押付力を与えつつ、ファンモータ11をファンカバー10の背面に固定するようになる。それゆえ、前述したのと同様な効果を得ることができる。このように、第三の実施形態においては、既存のファンカバー10に凸部16Aを取付けることにより、既存のファンカバーにファンモータ11を堅固に取付けることができる。
【0027】
ところで、一部のファンモータ11は、その中央付近の内部においてプリント回路基板(図示しない)を備えている。このため、ファンモータ11をファンカバー10に取付けたときに、ファンモータ11のプリント回路基板に負荷がかかって、これを破損させる場合がある。これに対し、ファンモータ11の上端縁部近傍に負荷がかかる場合には、プリント回路基板を破損させることはない。従って、一部のファンモータ11を用いる場合には、第四の実施形態に従って、凸部を異なる位置に配置するのが好ましい。
【0028】
図5Aは本発明の第四の実施形態におけるファンカバーの正面図であり、
図5Bは
図5Aに示されるファンカバーの側面図である。第四の実施形態においては、開口部12の外周に沿って部分的に延びる凸部16Bが支持部14の平坦部に設けられている。凸部16Bは弾性材料、例えば樹脂材料から形成されるのが好ましい。
【0029】
図5Aおよび
図5Bに示されるように、二つの凸部16Bが互いに対向してファンカバー10の背面に配置されている。これら凸部16Bは、既存のファンカバー10に後付けしてもよい。
【0030】
なお、さらに多数の凸部16Bを配置してもよい。
図5Aから分かるように、複数の凸部16Bと二つの突出部13とが、開口部12の周方向において等間隔で配置されているのが好ましい。なお、凸部16Bの高さは、前述した凸部Aと同様に定まるものとする。また、凸部16Bの高さは、平らで一定の高さではなく、傾斜を持つように形成されていてもよい。
【0031】
このように複数の凸部16Bを配置した場合には、ファンモータ11の取付時にファンモータ11の上端が凸部16Bに当接するので、ファンカバー10が複数の凸部16B周りにわずかながら変形する。従って、突出部13の支持部14がファンモータ11に押付力を与えつつ、ファンモータ11をファンカバー10の背面に固定するようになる。それゆえ、前述したのと同様な効果を得ることができるのが分かるであろう。
【0032】
また、第四の実施形態においては、複数の凸部16Bが開口部12の外周に沿って配置されているので、ファンモータ11の中央に内蔵されたプリント回路基板に負荷がかかるのを避けることができる。その結果、プリント回路基板の破損を防止できる。
【0033】
ところで、再び
図2を参照すると、四つの固定穴19がファンモータ11の上端の四隅に形成されている。これら固定穴19は、通常はファンモータ11を、図示しないプレートにネジ留め等するのに使用される。第五の実施形態で説明するように、これら固定穴19を他の方法で、ファンモータ11を固定するのに使用してもよい。
【0034】
図6Aは本発明の第五の実施形態におけるファンカバーの正面図であり、
図6Bは
図6Aに示されるファンカバーの背面側斜視図である。さらに、
図6Cは
図6Aに示されるファンカバーの側面図である。これら図面においては、凸部16Aが開口部12の内側領域17の中心に配置されている。さらに、第五の実施形態においては、開口部12の周囲に四つの凸部16Cが配置されている。
【0035】
これら凸部16Cは凸部16Aと同一材料から形成されているのが好ましく、ファンモータ11の固定穴19に対応した寸法および位置を有している。なお、
図6Aおよび
図6Bでは四つの凸部16Cが示されているが、ファンモータ11の固定穴19に対応した少なくとも一つの凸部16Cが設けられていればよい。また、第五の実施形態においては、凸部16Aを省略してもよい。
【0036】
このように複数の凸部16Cを配置した場合には、ファンモータ11の取付時にファンモータ11の上端の固定穴19が複数の凸部16Cのそれぞれに係合する。従って、ファンモータ11をファンカバー10の長手方向および横断方向に対して正確に位置決めすることができる。
【0037】
一般に、突出部13の支持部14がファンモータ11に押付力を与えるときに、ファンモータ11は位置ズレしやすい。しかしながら、第五の実施形態においては、凸部16Cがファンモータ11の固定穴19に係合している、このため、ファンモータ11に押付力が与えられた場合であっても、ファンモータ11は位置ズレせず、従って、ファンモータ11をファンカバー10の背面の正確な位置に固定することが可能となる。
【0038】
ところで、ファンモータ11に押付力が与えられると、ファンカバー10が変形して、ファンモータ11が突出部13の支持部14から離脱する場合がある。従って、
図6Cの拡大図である
図7に示されるように、支持部14の上面14aに凹部18が形成されている。
図7に示されるように、凹部18は、突出部13に近位である支持部14の上面14aの一部分に形成されるのが好ましい。このような場合には、押付力によりファンカバー10が変形するときに、ファンモータ11の下端が支持部14の凹部18に引っかかるようになる。このため、ファンモータ11に押付力が与えられた場合であっても、ファンモータ11が突出部13の支持部14から離脱することはない。
【0039】
ただし、凹部18の深さが大きい場合には、ファンカバー10の凸部16A、16Bと突出部13の支持部14との間の距離がファンモータ11の厚さよりも大きくなる場合がある。この場合には、ファンモータ11に押付力を与えることはできない。従って、凹部18を設けた場合には、ファンカバー10の凸部16A、16Bと突出部13の支持部14の凹部18の底部までの距離をファンモータ11の厚さよりも小さく維持する必要がある。なお、前述した実施形態のいくつかを適宜組み合わせることは、本発明の範囲に含まれる。