【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、基材微粒子と、前記基材微粒子の表面に形成された下地金属層と、前記下地金属層の表面に形成された導電層とを有する導電性微粒子であって、シースフロー電気抵抗方式粒度分布計を用いて粒子径分布を測定した場合、平均粒子径の1.26倍以上の粒子径を有する導電性微粒子の比率が0.87%以下である導電性微粒子である。
以下に、本発明を詳述する。
【0011】
本発明者らは、シースフロー電気抵抗方式粒度分布計を用いて測定した場合に、平均粒子径の1.26倍以上の粒子径を有する導電性微粒子の比率が8%以下である導電性微粒子は、凝集粒子だけでなく、粒子が2個以上結合した連結粒子の数も極めて少ないことから、このような導電性微粒子を用いることで、信頼性の極めて高い導電接続ができることを見出し、本発明を完成させるに至った。
【0012】
本発明の導電性微粒子は、基材微粒子と、前記基材微粒子の表面に形成された下地金属層と、前記下地金属層の表面に形成された導電層とを有する。
【0013】
上記基材微粒子は特に限定されず、適度な弾性率、弾性変形性及び復元性を有する基材微粒子であれば、無機材料であっても有機材料であってもよく、樹脂微粒子、無機微粒子、有機無機ハイブリッド微粒子、金属微粒子等が挙げられる。適度な弾性率、弾性変形性及び復元性が制御しやすいため、上記基材微粒子は樹脂微粒子であることが好ましい。
【0014】
上記樹脂微粒子を構成する樹脂は特に限定されず、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリテトラフルオロエチレン、ポリイソブチレン、ポリブタジエン等のポリオレフィンや、ポリメチルメタクリレート、ポリメチルアクリレート等のアクリル樹脂や、ジビニルベンゼン重合樹脂や、ジビニルベンゼン−スチレン共重合体、ジビニルベンゼン−アクリル酸エステル共重合体、ジビニルベンゼン−メタクリル酸エステル共重合体等のジビニルベンゼン共重合樹脂等が挙げられる。また、上記樹脂微粒子を構成する樹脂として、ポリアルキレンテレフタレート、ポリスルホン、ポリカーボネート、ポリアミド、フェノールホルムアルデヒド樹脂、メラミンホルムアルデヒド樹脂、ベンゾグアナミンホルムアルデヒド樹脂、尿素ホルムアルデヒド樹脂等が挙げられる。これらの樹脂は、単独で用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0015】
上記無機微粒子は特に限定されず、例えば、シリカ、アルミナ等の微粒子が挙げられる。上記有機無機ハイブリッド微粒子は特に限定されず、例えば、オルガノシロキサン骨格の中にアクリルポリマーを含有するハイブリッド微粒子が挙げられる。
【0016】
上記基材微粒子の平均粒子径は特に限定されないが、好ましい下限は0.5μm、好ましい上限は20μmである。上記基材微粒子の平均粒子径が0.5μm未満であると、例えば、無電解メッキをする際に凝集しやすく、単粒子としにくくなることがある。上記基材微粒子の平均粒子径が20μmを超えると、異方性導電材料として基板電極間で用いられる範囲を超えてしまうことがある。上記基材微粒子の平均粒子径のより好ましい下限は1μm、より好ましい上限は10μmであり、更に好ましい下限は2μm、更に好ましい上限は5μmである。
なお、上記基材微粒子の平均粒子径は、光学顕微鏡又は電子顕微鏡を用いて無作為に選んだ50個の基材微粒子の粒子径を測定し、それを算術平均することにより求めることができる。
【0017】
本発明の導電性微粒子は、基材微粒子の表面に下地金属層を有する。
上記下地金属層を構成する金属は、具体的には、ニッケル、金、銀、銅、白金、亜鉛、鉄、錫、鉛、アルミニウム、コバルト、インジウム、クロム、チタン、アンチモン、ビスマス、ゲルマニウム及びカドミウムからなる群より選択される少なくとも1種の金属が好ましい。なかでも、上記下地金属層の形成が容易であることから、上記下地金属層を構成する金属は、ニッケル、銀、銅であることが好ましい。更に、上記下地金属層は、ニッケル又は銅を含有することが好ましく、ニッケル層又は銅層であることがより好ましい。
【0018】
上記下地金属層の厚さの好ましい下限は0.005μm、好ましい上限は1μmである。上記下地金属層の厚さが0.005μm未満であると、導電層を形成する効果が得られないことがある。上記下地金属層の厚さが1μmを超えると、導電層を形成する際に凝集が生じやすく、凝集した導電性微粒子は隣接する電極間の短絡を引き起こすことがある。更に、得られる導電性微粒子の柔軟性が損なわれることがある。
【0019】
本発明の導電性微粒子は、上記下地金属層の表面に導電層を有する。上記導電層は、電極に接触し、電極間を導通させる役割を有する。
上記導電層を構成する金属は、例えば、金、パラジウム、銀、銅、白金、鉄、錫、鉛、アルミニウム、コバルト、インジウム、クロム、チタン、アンチモン、ビスマス、ゲルマニウム、カドミウム、珪素等の金属や、ITO、ハンダ等の金属化合物が挙げられる。なかでも、導電性に優れることから、上記導電層は、金、銀又はパラジウムを含有することが好ましく、金層、銀層又はパラジウム層であることがより好ましい。なかでも、上記導電層は、金又はパラジウムを含有することが更により好ましく、金層又はパラジウム層であることが特に好ましい。
上記導電層は、単層構造であってもよく、複数の層を有する積層構造であってもよい。積層構造の場合には、最外層を構成する金属は、金又はパラジウムであることが好ましい。
【0020】
上記導電層の厚みは特に限定されないが、好ましい下限は0.005μm、好ましい上限は0.6μmである。上記導電層の厚みが0.005μm未満であると、導電層としての充分な効果が得られないことがある。上記導電層の厚みが0.6μmを超えると、得られる導電性微粒子の比重が高くなったり、導電性微粒子の硬さが充分変形できる硬度ではなくなったりすることがある。
【0021】
本発明の導電性微粒子として、具体的には、例えば、基材微粒子と上記基材微粒子の表面に形成されたニッケル層と上記ニッケル層の表面に形成された金層とを有する導電性微粒子や、基材微粒子と上記基材微粒子の表面に形成されたニッケル層と上記ニッケル層の表面に形成されたパラジウム層とを有する導電性微粒子や、基材微粒子と上記基材微粒子の表面に形成された銅層と上記銅層の表面に形成されたパラジウム層とを有する導電性微粒子や、基材微粒子と上記基材微粒子の表面に形成されたニッケル層と上記ニッケル層の表面に形成された銀層とを有する導電性微粒子や、基材微粒子と上記基材微粒子の表面に形成された銅層と上記銅層の表面に形成された金層とを有する導電性微粒子等が挙げられる。
【0022】
本発明の導電性微粒子は、シースフロー電気抵抗方式粒度分布計を用いて粒度分布を測定した場合、平均粒子径の1.26倍以上の粒子径を有する導電性微粒子の比率が8%以下である。
平均粒子径の1.26倍以上の粒子径を有する導電性微粒子の比率を8%以下とすることで、凝集粒子だけでなく、粒子が2個以上結合した連結粒子の数も極めて少なくなり、例えば、本発明の導電性微粒子を異方性導電材料に用いた場合に、短絡の発生を防止することができる。特に、隣接する電極間の距離が短い電子部品の接続に用いる場合、本発明の効果が充分に発揮される。
なお、上記比率とは、上記シースフロー電気抵抗方式粒度分布計を用いて粒度分布を測定したすべての導電性微粒子の個数に対して、平均粒子径の1.26倍以上の粒子径を有する導電性微粒子の個数の割合を百分率で表した数値である。
【0023】
上記平均粒子径の1.26倍以上の粒子径を有する導電性微粒子の比率が8%を超えると、連結粒子が多くなり、隣接する電極間の距離が短い電子部品の接続に用いる場合に短絡が発生し、信頼性の高い導電接続ができない。上記比率の好ましい上限は2.5%であり、より好ましい上限は1%であり、更に好ましい上限は0.6%であり、特に好ましい上限は0.2%である。
なお、上記シースフロー電気抵抗方式粒度分布計とは、測定対象である粒子が、電極を配置したオリフィスを通過する際の電気抵抗に基づいて粒度分布を測定する装置である。上記シースフロー電気抵抗方式粒度分布計で粒度分布を測定した場合、連結粒子がない場合は、平均粒子径付近に単一のピークが得られる。連結粒子が存在する場合は、平均粒子径付近のピークとは別のピークが得られ、平均粒子径の1.26倍以上の粒子径を有する導電性微粒子の比率が高くなる。従って、平均粒子径の1.26倍以上の粒子径を有する導電性微粒子の比率が高い場合、連結粒子が多いと判断することができる。上記シースフロー電気抵抗方式粒度分布計として、例えば、シースフロー型粒度分布計(シスメックス社製「SD−2000」)等が挙げられる。なお、測定対象となる導電性微粒子の個数は特に限定されないが、10000個以上であることが好ましく、具体的には、例えば、30000個であることがより好ましい。
【0024】
本発明の導電性微粒子の平均粒子径は特に限定されないが、好ましい下限は0.5μm、好ましい上限は20μmである。上記導電性微粒子の平均粒子径が0.5μm未満であると、例えば、無電解メッキをする際に凝集しやすく、単粒子としにくくなることがある。上記導電性微粒子の平均粒子径が20μmを超えると、異方性導電材料として基板電極間で用いられる範囲を超えてしまうことがある。上記導電性微粒子の平均粒子径のより好ましい下限は1μm、より好ましい上限は10μmであり、更に好ましい下限は2μm、更に好ましい上限は5μmである。
なお、上記導電性微粒子の平均粒子径は、光学顕微鏡又は電子顕微鏡を用いて無作為に選んだ50個の導電性微粒子の粒子径を測定し、それを算術平均することにより求めることができる。
【0025】
本発明の導電性微粒子の製造方法は、上述した平均粒子径の1.26倍以上の粒子径を有する導電性微粒子の比率が8%以下である導電性微粒子が得られる方法であれば、特に限定されない。例えば、表面に下地金属層が形成された基材微粒子を予備分散させる工程1と、前記予備分散された基材微粒子の下地金属層の表面に導電層を形成させる工程2とを有する導電性微粒子の製造方法であって、前記工程1において、表面に下地金属層が形成された基材微粒子を分散させた分散液をろ過する工程を有する導電性微粒子の製造方法が挙げられる。このような導電性微粒子の製造方法もまた本発明の1つである。
【0026】
上記表面に下地金属層が形成された基材微粒子は、従来公知の方法で製造することができる。上記基材微粒子の表面に下地金属層を形成する方法は特に限定されず、例えば、無電解メッキ、電気メッキ、スパッタリング等の方法が挙げられる。上記基材微粒子が樹脂微粒子である場合、上記下地金属層は、無電解メッキで形成することが好ましい。
【0027】
上記表面に下地金属層が形成された基材微粒子を予備分散させる工程1では、表面に下地金属層が形成された基材微粒子を分散させた分散液をろ過する工程を有する。上記表面に下地金属層が形成された基材微粒子が分散している分散液をろ過することで、凝集している基材微粒子を分散させたり、凝集している基材微粒子を除去したりすることができる。
【0028】
上記分散液とは、上記表面に下地金属層が形成された基材微粒子と、溶媒とを含有する溶液を意味する。上記溶媒は特に限定されないが、純水、メタノールやエタノール等のアルコール、純水とアルコールとの混合物等を挙げることができる。上記溶媒は、純水であることが好ましい。
【0029】
上記分散液における上記表面に下地金属層が形成された基材微粒子の含有量は特に限定されないが、上記表面に下地金属層が形成された基材微粒子の含有量の好ましい下限は3重量%、好ましい上限は50重量%である。上記表面に下地金属層が形成された基材微粒子の含有量が3〜50重量%の範囲内であることで、上記表面に下地金属層が形成された基材微粒子の凝集を抑制することができたり、導電性微粒子の生産効率を高めたりすることができる。
【0030】
上記工程1は、上記表面に下地金属層が形成された基材微粒子を分散させた分散液をろ過する工程を有する。上記表面に下地金属層が形成された基材微粒子を分散させた分散液をろ過する方法として、上記分散液をステンレスメッシュ篩、ナイロン篩等でろ過する方法が挙げられる。上記ろ過を行う際の篩の孔径は特に限定されず、表面に下地金属層が形成された基材微粒子の平均粒子径に応じて、適宜設定することができる。例えば、上記表面に下地金属層が形成された基材微粒子の平均粒子径が2〜5μmの場合では、篩の孔径は平均粒子径より大きく、かつ、篩の孔径が20μm以下であることが好ましい。
【0031】
更に、上記工程1は、表面に下地金属層が形成された基材微粒子を分散させた分散液に超音波を照射する工程を有することが好ましい。上記表面に下地金属層が形成された基材微粒子を分散させた分散液に超音波を照射する工程を有することで、凝集している基材微粒子を分散させることができる。
本発明では、表面に下地金属層が形成された基材微粒子を分散させた分散液に超音波を照射する工程を行った後、表面に下地金属層が形成された基材微粒子を分散させた分散液をろ過する工程を行ってもよく、表面に下地金属層が形成された基材微粒子を分散させた分散液をろ過する工程を行った後、表面に下地金属層が形成された基材微粒子を分散させた分散液に超音波を照射する工程を行ってもよい。
【0032】
例えば、上記工程1として、表面に下地金属層が形成された基材微粒子を分散させた分散液に超音波を照射する工程を行い、次いで、表面に下地金属層が形成された基材微粒子を分散させた分散液をろ過する工程を行うことが好ましい。上記表面に下地金属層が形成された基材微粒子を分散させた分散液に超音波を照射する方法として、上記分散液に超音波洗浄機等で超音波を照射する方法が挙げられる。上記超音波は、超音波領域に振動数を有していれば特に限定されず、適宜設定することができる。
上記工程1は、表面に下地金属層が形成された基材微粒子を分散させた分散液に超音波を照射する工程を有することで、平均粒子径の1.26倍以上の粒子径を有する導電性微粒子の比率を低下させることができる。
【0033】
更に、上記工程1は、表面に下地金属層が形成された基材微粒子と、分散剤とを含有する分散液を調製する工程を有することが好ましい。上記表面に下地金属層が形成された基材微粒子と、分散剤とを含有する分散液を調製する工程を有することで、凝集している基材微粒子を分散させることができる。
本発明では、表面に下地金属層が形成された基材微粒子と、分散剤とを含有する分散液を調製する工程と、表面に下地金属層が形成された基材微粒子を分散させた分散液に超音波を照射する工程と、表面に下地金属層が形成された基材微粒子を分散させた分散液をろ過する工程の順序は特に限定されない。
【0034】
例えば、上記工程1として、表面に下地金属層が形成された基材微粒子と、分散剤とを含有する分散液を調製する工程を行い、次いで、表面に下地金属層が形成された基材微粒子を分散させた分散液に超音波を照射する工程を行い、次いで、表面に下地金属層が形成された基材微粒子を分散させた分散液をろ過する工程を行うことがより好ましい。上記表面に下地金属層が形成された基材微粒子と、分散剤とを含有する分散液を調製する方法は、上記表面に下地金属層が形成された基材微粒子と、分散剤と、溶媒とを混合し分散液を調製する方法、上記表面に下地金属層が形成された基材微粒子が分散している分散液に分散剤を添加し分散液を調製する方法等が挙げられる。
上記工程1は、表面に下地金属層が形成された基材微粒子と、分散剤とを含有する分散液を調製する工程を有することで、平均粒子径の1.26倍以上の粒子径を有する導電性微粒子の比率をより低下させることができる。
【0035】
上記分散剤は、例えば、ポリカルボン酸塩型界面活性剤、アルキル硫酸エステル塩、アルキルベンゼンスルホン酸塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸エステル塩等を用いることができる。なかでも、上記分散剤は分散性に優れることから、アルキル硫酸エステル塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸エステル塩が好ましい。
【0036】
本発明の導電性微粒子の製造方法は、次いで、上記予備分散された基材微粒子の下地金属層の表面に導電層を形成させる工程2を有する。上記予備分散された基材微粒子の下地金属層の表面に導電層を形成させる方法は、特に限定されず、無電解メッキ、置換メッキ、電気メッキ、スパッタリング等が挙げられる。なかでも、上記工程2において、超音波を照射しながら無電解メッキすることにより、上記予備分散された基材微粒子の下地金属層の表面に導電層を形成させる工程を行うことが好ましい。このような工程を行うことにより、平均粒子径の1.26倍以上の粒子径を有する導電性微粒子の比率をより低下させることができる。