【課題を解決するための手段】
【0017】
本発明の1つの目的は、コンバータが2つ又はそれ以上のコンバータモジュールを備え、その各々が発電機側と送電線網側とを備え、各モジュールの発電機側が、発電機内に配列されたステータコイルのセットの1つに電気的に結合された所定数の(a number of)整流回路を備えることを特徴とする風力タービンによって達成される。
【0018】
これによって、コンバータの故障例えばIGBTの短絡が検出されたとき、発電機において発生する電磁ブレーキトルクを減少できる。この種の故障が検出されると、風力タービンは、緊急時手順を実施し、この手順において回転部は数回転以内で停止される。この形態でなければ風力タービンに故障を引き起こす可能性のあるこの種の手順において、この形態は、ドライブトレイン、例えばローター軸、ローターハブ及び風力タービン翼に、生じる機械的応力を大幅に減少する。発電機とコンバータのとの間の電気的結合は、3を超える例えば6、9、12またはそれ以上の位相を形成するように構成される。発電機は、個々のステータコイルを位相の数に対応する所定数の相互接続部又は巻線として配列できるように構成できる。ステータコイルは、相互接続部又は巻線の数と位相の数を変更できる発電機内に配置された、所定数の端末又はスイッチユニットに電気的に接続できる。これによって、従来の発電機より多くの数の位相に亘って電磁トルクを配分できるので、各位相を通過する交流電流を減少させることができる。これは、また、コンバータのスイチング周波数(switching frequency)を大幅に増大するので、電磁トルクのリップルを大幅に減少する。これによって、全負荷のときの回転部における応力が減少し、ドライブトレインの信頼性が向上する。
【0019】
この形態は、コンバータをフルスケールコンバータとして構成できるようにするので、風力タービンは最大出力で作動でき、有効電力及び無効電力をよりよく制御できる。これによって、風力タービンは、特に次世代送電線網(smart power grid)に結合するのに適するようになる。
【0020】
本発明の発電機の中のステータコイルと、コンバータの中の整流回路との間の電気的結合は、ブレーキトルクの過渡現象を、発電機の公称トルクの100〜800%、好ましくは200〜600%、好ましくは200〜400%に、減少するように構成することができる。これによって、IGBT短絡時に発電機において発生する電磁ブレーキトルクを、ドライブトレインに引き起こされる応力が風力タービンに故障を生じさせない程度の、許容レベルにまで減少させることができる。
【0021】
ステータコイルは、2セット又はそれ以上、例えば3セット、4セット、5セット又は6セットで配列でき、各セットは、少なくとも2つの位相、例えば3相、4相、5相、6相あるいは9相でも具備することができる。各セットの各位相は、ステータコイルの個々の配列体によって形成できる巻線を形成する。セットは全て同数の位相、例えば3相又は6相を形成するか、あるいは、異なる数、例えば3相と6相を形成することもできる。これによって、コンバータへの電気的結合を、必要であれば異なるセットの間で切り替えるか、あるいは、各セットを異なるコンバータモジュールに結合することができる。セットにおける位相の合計数は、発電機とコンバータの間の電気的結合の位相の数を規定する。各セットにおける位相又は巻線は、均衡のとれた形態を形成するように、隣接するセットに関連して、又は、ローターの極又はローターコイルに関連して配列できる。2つの隣り合うセットの間の角度は、ステータにおいて配列される巻線又は位相の合計数によって規定できる。例えば、30°、40°、60°、72°、90°又は120°である。セットは、発電機の安全性を増大できるように、巻線の冗長セット(redundent sets of windings)として構成することができる。
【0022】
これによって、ステータにおいて形成された隣り合う位相間の相互インダクタンスを減少して、これらの隣り合う位相間の循環電流を減少できる。また、脈動界磁電流の周波数が増大するので、発電機において発生する高調波ひずみを減少できる。
【0023】
コンバータは、発電機の中に形成されたステータコイルのセットに電気的に結合される1つ又はそれ以上のコンバータモジュールによって形成できる。各コンバータモジュールは、発電機側に配列されて発電機から伝送された交流をDC電流に整流するように構成される所定数の整流回路を備えることができる。各整流回路は、そのコンバータモジュールに結合されたセットの位相の1つに電気的に接続できる。コンバータモジュールの送電線網側は、送電線網側に配列された所定数例えば3つのインバータ回路を介して送電線網に電気的に結合できる。
【0024】
これによって、コンバータをモジュール式コンバータとして構成でき、出力は、個別のコンバータモジュールに亘って配分されるので、各コンバータモジュールの出力が減少する。これによって、各コンバータモジュールを、低電圧又は中電圧モジュールとして構成でき、各モジュールのサイズ及び重量を減少できる。コンバータの安全性は、モジュールの少なくとも2つを冗長モジュールとして構成することによって向上できる。
【0025】
1つの実施形態によれば、コンバータは、コンバータの作動を制御するように構成された少なくとも1台のコントローラに電気的に結合されており、該コントローラは、コンバータに電気的に結合され、かつ、コンバータの両側の少なくとも一方を制御するように構成された、少なくとも1つのサブコントローラを備える。
【0026】
コンバータの作動は、測定または感知された1つ又はそれ以上のパラメータに基づいて、コンバータに電気的に結合されたコントローラによって、制御又は駆動される。発電機側に配列された整流回路は、サブコントローラに結合されて、該サブコントローラは、1つ又はそれ以上のパラメータ、例えば、発電機へ又は発電機から伝送される電流又は電圧、入来風速、ローター軸の角度回転速度又はトルク、若しくは、その他の関連パラメータに基づいて整流回路の作動を制御又は駆動する。これによって、整流回路を実質的に正弦波形に維持できるので、駆動発電機の効率を向上する。
【0027】
コンバータは、発電機側から伝送された直流(DC)電圧を送電線網の電流に適合する交流電圧へ変換するように構成される、送電線網側に配列された所定数のインバータ回路を備えることができる。インバータ回路は、別のサブコントローラに結合して、該サブコントローラは、1つ又はそれ以上のパラメータ、例えば、送電線網へ又は送電線網から伝送される電流又は電圧、グリッドコードによって規定された送電線網の出力仕様、出力基準値、若しくは、別の関連パラメータに基づいて、インバータ回路の作動を制御又は駆動する。各インバータ回路は、トランジスタ例えばIGBT又はダイオードの配列体を備えることができる。これによって、高い出力の質を維持しながら、送電線網に供給される(無効及び有効)電力を制御できる。
【0028】
具体的な実施形態によれば、コントローラは、コンバータモジュールの各々に電気的に結合されるスイッチ手段に電気的に結合され、コントローラはスイッチ手段の作動を制御する。
【0029】
各コンバータモジュールは、スイッチ又は接点の形式のスイッチ手段に電気的に結合でき、コントローラは、これらのスイッチ又は接点の作動を個別に制御する。スイッチ手段は、発電機の巻線のセットとコンバータモジュールとの間及び/またはコンバータモジュールと送電線網との間に配列できる。これによって、コントローラは、風力タービンにエラー又は非常事象例えば整流回路の1つの短絡が検出されたとき、コンバータをオフに切り替えることができる。コントローラは、制御信号を別のコントローラ又はサブコントローラへ送るように構成でき、別のコントローラ又はサブコントローラは、風力タービン翼のピッチ可能部がピッチアウト又はフェザーアウト(pitched or feathered out)するように風力タービン翼の中のピッチ機構を作動する。次に、コントローラは、エラーが検出されたコンバータモジュールをアウト(switch out)に切り替え、残りのコンバータモジュールをイン(switch in)に切り替えるように構成できる。コントローラは、制御パラメータの少なくとも1つ、例えば出力基準値を別のより小さい値、例えば公称出力の40〜60%、好ましくは50%に設定するように構成できる。別のコントローラ又はサブコントローラは、コントローラから受け取った制御信号に基づいてピッチイン又はフェザーイン(pitched or feathered in)するように、風力タービン翼の中のピッチ機構を作動する。
【0030】
これによって、風力タービンを運転停止することなく、欠陥コンバータモジュールを取り外して、新しいコンバータモジュールと交換できる。これによって、コンバータモジュールの1つが故障した場合、休止時間を減少し、簡単かつ迅速にコンバータを整備できる。
【0031】
具体的実施形態によれば、ステータコイルのセットの1つは、コンバータモジュールの発電機側の1つに配列された整流回路に、電気的に接続された多相結合を形成するように配列される。
【0032】
これによって、発電機とコンバータとの間の電気的結合を、3つを超える、好ましくは6、9、12又はこれらの値の間の任意の数の位相を備える、単一の多相結合として形成できる。ステータコイルは、ローターコイルが配列されたローターの周縁に面した、ステータの周縁に配列される。ステータ及びローターコイルは、磁場の場の強さが増大するように、所定のエアギャップによって相互に分離されている。ステータは、複数のステータコイル及び/又は極を備え、これらのコイル及び/又は極は、多相結合における位相の数に対応する数の巻線を形成するように相互に接続される。コンバータの中の各整流回路は、発電機から伝送された交流をDC電流へ整流するように構成され、DC電流は、その後DCリンクへ伝送される。各個別の整流回路は、多相結合の位相の1つに電気的に接続される。整流回路は、トランジスタ、例えばIGBT又はダイオードの配列体として構成できる。
【0033】
相互接続されたステータコイルによってステータに形成された巻線は、均衡の取れた形態を形成するように、それら相互に関連して、例えば所定の角度で、かつ/又は、ローターの中の極又はローターコイルに関連して、配列できる。2つの隣り合う巻線間の角度は、30°、40°、60°、72°、90°又は120°とすることができる。これによって、ステータに形成された隣り合う位相間の相互インダクタンスを減少できるので、隣り合う位相間の循環電流を減少できる。また、多相結合は脈動界磁電流の周波数を増大できるようにするので、発電機に発生する高調波ひずみを減少できる。
【0034】
1つの実施形態によれば、ステータは、複数のスロットを備え、その中にステータコイルが配置され、コイルは、少なくとも2層で配列される。
【0035】
これによって、ステータコイルの配置によって形成された、位相間や巻線間の位相変位を減少するように、ステータコイルをスロットにおいて多層に配置列できる。ステータコイルは、発電機の各位相又は巻線が各層に配置されるように配列することができる。位相又は巻線を第1層において配列する順番は、第2層における順番と反対にすると良い。ステータコイルが2より多い層で配列される場合、各層の順番は、隣りの層の順番と異なる(例えば、反対)か、あるいは、ステータコイルは、同じ順番を持つ群として配列しても良い。
【0036】
1つの実施形態によれば、直流リンクは、コンバータにおいて発電機側の出力と送電線網側の入力との間で電気的に接続される。
【0037】
1つ又はそれ以上のコンデンサの形式のDCリンクは、コンバータの前記2つの側の間に配列できる。これによって、送電線網側に伝送される電圧レベルを実質的に不変レベルに維持できるようにコンデンサにエネルギーを蓄積でき、電圧リップルを減少できる。これによって、風力タービンを送電線網に結合する前に所望の電圧レベルまでコンデンサを充電できるので、ソフトスタートで風力タービンを送電線網に結合できる。測定装置をDCリンク及びコントローラに結合しても良く、測定装置は、リンクの電圧レベルを測定するように構成できる。電圧レベルを利用して、コンバータの発電機側及び送電線網側の作動を制御することもできる。チョッパー回路の形式の保護回路をDCリンクに結合して、送電線網における短絡からドライブトレインを保護できる。
【0038】
1つの実施形態によれば、一次側及び二次側を備える変圧器が、コンバータと送電線網との間に電気的に結合される。
【0039】
変圧器は、コンバータの電圧レベルが送電線網の電圧に適合するようにコンバータの電圧レベルを傾斜路的に増減するように構成できる。変圧器は、ドライブトレインを損傷する可能性のある送電線網の故障からドライブトレインを保護する。1つ又はそれ以上のコンデンサ及び/又はインダクタの形式のフィルタ手段を、コンバータと変圧器との間に、及び/又は、発電機とコンバータとの間に、配置できる。これによって、送電線網へ供給される出力電流の中の高調波及び出力電流のリップルを減少できる。
【0040】
また、本発明の目的は、コントローラが、エラーが検出されたコンバータの部分を選択的にオフにして、コンバータの残り部分をイン(switch in、オン)に切り替え、ピッチ可能な翼部分を、風向きの中でピッチングする(pitched into the wind direction)ように結合されたピッチ機構を作動することを特徴とする、風力タービンを作動する方法によって達成される。
【0041】
この方法によって、緊急時に、運転を再開する前に風力タービンの作動を短時間休止すればよく、風力タービンの全体的休止時間を減少できる。コントローラは、緊急事象が検出されたら、送電線網からコンバータを切断する(オフに切り替える)。緊急事象としては、コンバータモジュールの1つにおける短絡が考えられる。コントローラは、その後、風力タービン翼の中のピッチ機構を作動し、翼のピッチ可能部分は風からピッチアウト又はフェザーアウトする。また、コントローラは、機械的ブレーキを作動し、かつ/又は発電機へエネルギーを送り返すことによって、発電機を用いて風力タービン翼を制動できる。その後、コントローラを介してピッチ機構を再び作動し、翼のピッチ可能部分を風向きの中でピッチング又はフェザーリングする。コントローラがソフトスタートアップを使用する場合、DCリンクが設定レベルまで充電されたとき、コンバータが再びインに切り替えられる。
【0042】
具体的実施形態によれば、コントローラは、風力タービンの作動を制御するために使用される制御パラメータの少なくとも1つを、その正常運転時の値より低い別の設定値へ変更する。
【0043】
緊急状況が検出されたとき、風力タービンは、風力タービン、例えばドライブトレインにおける機械的応力及びひずみを減少するように、より低い作動レベルで作動することができる。これは、コントローラを用いてエラーが検出されたコンバータモジュールをアウト(オフ)に切り替えることによって実施でき、その後、残りのコンバータモジュールが高圧送電網に再び接続される(イン(オン)に切り替えられる)。その後、コントローラは、風力タービンの作動を制御するために使用される制御パラメータの少なくとも1つをより低い別の値に設定することができる。
【0044】
具体的実施形態によれば、制御パラメータは出力基準値であり、設定値は、公称出力の40〜60%である。
【0045】
制御パラメータとしては、出力基準値、最大許容風速、出力効率、又は、別の適切な制御パラメータが考えられる。好ましい実施形態において、出力基準値は、低減された値、例えば公称出力の40〜60%、好ましくは50%に設定される。
【0046】
本発明は、添付図面を参照して、一例として説明される。