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特許5785243高温超電導多相発電機を有する風力タービン
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5785243
(24)【登録日】2015年7月31日
(45)【発行日】2015年9月24日
(54)【発明の名称】高温超電導多相発電機を有する風力タービン
(51)【国際特許分類】
   F03D 11/00 20060101AFI20150907BHJP
   F03D 1/06 20060101ALI20150907BHJP
   F03D 7/04 20060101ALI20150907BHJP
   H02K 55/04 20060101ALI20150907BHJP
   H02K 7/18 20060101ALI20150907BHJP
【FI】
   F03D11/00 Z
   F03D1/06 A
   F03D7/04 E
   H02K55/04
   H02K7/18 A
【請求項の数】10
【全頁数】17
(21)【出願番号】特願2013-261362(P2013-261362)
(22)【出願日】2013年12月18日
(65)【公開番号】特開2014-122628(P2014-122628A)
(43)【公開日】2014年7月3日
【審査請求日】2013年12月18日
(31)【優先権主張番号】PA 2012 70821
(32)【優先日】2012年12月21日
(33)【優先権主張国】DK
(73)【特許権者】
【識別番号】513273753
【氏名又は名称】エンビジョン エナジー(デンマーク) アンパーツゼルスカブ
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100102819
【弁理士】
【氏名又は名称】島田 哲郎
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100153084
【弁理士】
【氏名又は名称】大橋 康史
(74)【代理人】
【識別番号】100160705
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 健太郎
(74)【代理人】
【識別番号】100157211
【弁理士】
【氏名又は名称】前島 一夫
(72)【発明者】
【氏名】ピーダ ラスムスン
【審査官】 山本 崇昭
(56)【参考文献】
【文献】 特開2012−231607(JP,A)
【文献】 特開2011−211817(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2007/0279815(US,A1)
【文献】 国際公開第2012/140757(WO,A1)
【文献】 特開2012−50181(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F03D 11/00
F03D 1/06
F03D 7/04
H02K 7/18
H02K 55/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
風力タービン(1)であって、
−最上部と底部とを有する風力タービンタワー(2)と、
−前記風力タービンタワー(2)の上部に配置されたナセル(3)と、
−前記ナセル(3)に回転可能に取り付けられたローターハブ(4)と、
−前記ローターハブ(4)に取り付けられた1枚又はそれ以上の風力タービン翼(5)であって、該風力タービン翼(5)が回転体平面を形成する、風力タービン翼と、
−前記ローターハブ(4)に連結されたシャフト(12)と、
−前記シャフトに連結された発電機(10)であって、該発電機(10)が、ステータ(15)に対して回転可能に配置されたローター(16)を備え、該ローター(16)が少なくとも1つの超電導ローターコイルを備え、前記ステータ(15)が少なくとも1つの導電ステータコイルを備え、前記超電導ローターコイルと前記ステータコイルが、前記ローター(16)が回転したとき前記ステータコイルにおいて電流を誘導する相互作用的磁場を持つように配列される、発電機(10)と、
−前記発電機(10)に電気的に結合された少なくとも1台のコンバータ(13)であって、該コンバータ(13)が、発電機側(19)に電気的に接続された送電線網側(20)を備え、該送電線網側(20)は、所定のグリッドコードを有する送電線網(11)に電気的に結合されるように構成され、かつ、前記発電機側(19)は、前記発電機(10)に電気的に結合されるように構成され、前記コンバータ(13)が、前記発電機(10)からの出力を前記送電線網(11)の出力に適合するように変換するように構成される、コンバータ(13)と、
を備え、
−前記発電機(10)の前記ステータコイルが、前記発電機(10)の公称電磁トルクに対する電磁ブレーキトルクの過渡現象を減少するようなステータコイルの2つ又はそれ以上のセット(26、27、38)を形成するように配列され、各セット(26、27、38)が所定数の位相を形成し、
−前記コンバータが、2つ又はそれ以上のコンバータモジュール(29、30、39)を備え、その各々が発電機側(31、32、40)と送電線網側(33、34、41)とを備え、各モジュール(29、30、39)の前記発電機側(31、32、40)が、前記発電機において配列された前記ステータコイルのセット(26、27、38)の1つに、電気的に結合された所定数の整流回路を備えることを特徴とする、
風力タービン(1)。
【請求項2】
前記コンバータ(13)が、前記コンバータ(13)の作動を制御するように構成された少なくとも1つのコントローラに電気的に結合され、
前記コントローラが、前記コンバータ(13)に電気的に結合され、かつ、前記コンバータ(13)の側(19、20)の少なくとも一方を制御するように構成された、少なくとも1つのサブコントローラを備えることを特徴とする、請求項1に記載の風力タービン。
【請求項3】
前記コントローラが、前記コンバータモジュール(29、30、39)の各々に電気的に結合されるスイッチ手段に電気的に結合され、かつ、前記コントローラが、前記スイッチ手段の作動を制御することを特徴とする、請求項2に記載の風力タービン。
【請求項4】
前記ステータコイルのセット(26、27、38)の1つが、前記コンバータモジュールの前記発電機側(31、32、40)の1つに配列された前記整流回路に電気的に接続された、多相結合(23)を形成するように、前記ステータコイルのセット(26、27、38)の1つが配列されることを特徴とする、請求項1〜3のいずれか1項に記載の風力タービン。
【請求項5】
前記ステータ(15)が複数のスロット(43)を備え、その中に前記ステータコイル(44)が配列され、かつ、前記ステータコイル(44)が、少なくとも2つの層(45a、45b)に配列されることを特徴とする、請求項1〜4のいずれか1項に記載の風力タービン。
【請求項6】
直流電流リンク(21)が、前記コンバータ(13)の前記発電機側(19)の出力と前記送電線網側(20)の入力との間に電気的に接続されることを特徴とする、請求項1〜5のいずれか1項に記載の風力タービン。
【請求項7】
一次側と二次側とを備える変圧器(22)が、前記コンバータ(13)と前記送電線網(11)との間に電気的に結合されることを特徴とする、請求項1〜6のいずれか1項に記載の風力タービン。
【請求項8】
請求項1〜7のいずれか1項に記載の風力タービン(1)を作動する方法であって、前記風力タービン(1)の前記作動が、
−前記風力タービン内部に配置されたコントローラに電気的に結合された1つ又はそれ以上の測定装置を用いて前記風力タービンのエラーを検出するステップ(48)と、
−前記コンバータ(13)を前記送電線網(11)から切断するように、前記コントローラを介して前記風力タービン(1)の前記コンバータ(13)に電気的に結合されたスイッチ手段を作動するステップ(49)と、
−前記ピッチ可能な翼部分を風向きからピッチアウトするように、前記風力タービン翼(5)の少なくとも一部に連結されたピッチ機構を作動するステップ(50)と、
を含み、
−前記コントローラが、前記エラーが検出された前記コンバータ(13)の一部を選択的にオフに切り替え(52)かつ前記コンバータ(13)の残り部分をオンに切り替え、
−前記ピッチ可能な翼部分を風向きの中でピッチングするように連結された前記ピッチ機構を作動するステップ(54)
を含むことを特徴とする方法。
【請求項9】
前記コントローラが、前記風力タービン(1)の作動を制御するために使用される制御パラメータの少なくとも1つを、正常動作時の値より低い別の設定値へ変更する(53)ことを特徴とする、請求項8に記載の風力タービン(1)を作動する方法。
【請求項10】
前記制御パラメータが出力基準値であり、前記設定値が公称出力の40〜60%であることを特徴とする、請求項9に記載の風力タービン(1)を作動する方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、−最上部と底部とを有する風力タービンタワーと、−風力タービンタワーの最上部に配置されたナセルと、−ナセルに回転可能に取り付けられたローターハブと、−ローターハブに取り付けられた1枚又はそれ以上の風力タービン翼であって、風力タービン翼が回転体平面(rotor plane)を形成する、風力タービン翼と、−ローターハブに連結されたシャフトと、−シャフトに連結された発電機であって、発電機がステータに対して回転可能に配置されたローターを備え、ローターが少なくとも1つの超電導ローターコイルを備え、ステータが少なくとも1つの導電ステータコイルを備え、超電導ローターコイルとステータコイルが、ローターが回転したときステータコイルにおいて電流を誘導する相互作用的磁場を持つように配列される、発電機と、−発電機に電気的に結合された少なくとも1台のコンバータであって、コンバータが、発電機側(generator side)に電気的に接続された送電線網側(power grid side)を備え、送電線網側は、所定のグリッドコード(grid code、系統連系規定)を有する送電線網に電気的に結合されるように構成され、かつ、発電機側は、発電機に電気的に結合されるように構成され、コンバータが発電機からの出力を送電線網の電力に適合するように変換するように構成され、発電機のステータコイルが、発電機の公称電磁トルクに対する電磁ブレーキトルクの過渡現象を減少するために2セット又はそれ以上のステータコイルを形成するように配列され、各セットが所定数(a number of)の位相を形成する、コンバータと、を備える風力タービンに関する。
【0002】
本発明は、風力タービンを作動する方法にも関する。該方法において、風力タービンの作動は、−風力タービン内部に配置されたコントローラに電気的に結合された1つまたはそれ以上の測定装置を用いて風力タービンのエラーを検出するステップと、−コンバータが送電線網から切断されるように、コントローラを介して風力タービンのコンバータに電気的に結合されたスイッチ手段を作動するステップと、−ピッチ可能な翼部分が、風向きからピッチアウト(又はピッチング制御オフ)するように、風力タービン翼の少なくとも一部に連結されたピッチ機構を作動するステップとを含む。
【背景技術】
【0003】
今日の風力タービンは、ローターハブ及び風力タービン翼に連結されたナセルを備え、ナセルの中に発電機及びコンバータが配置されることが知られている。発電機は、回転するローター軸からの機械的エネルギーを電気エネルギーへ変換し、これがコンバータへ伝送される。コンバータは、送電線網に結合されて、発電機からの出力を送電線網の出力に適合する出力へ変換する。
【0004】
最近まで、サイズ及び出力共に近年増大し続けている風力タービンに永久磁石発電機(PMG)を使用することが知られていた。これは、風力タービンの中の発電機も、サイズ及び重量を増大せざるを得ないことを意味し、このことが、発電機をより高価にかつ設置時の取り扱いをより困難にしている。風力タービンの出力が6MWを超えるまでに増大すると、従来の発電機すなわちPMGは、発電機に要求されるサイズ及び重量ゆえに、このような大型の風力タービンにはもはや適さない。このように大型で重量の発電機の場合、風力タービンタワーをかなり強化しなければならず、かつ/又は風力タービンを設置するために使用されるクレーンのリフト能力には限界があるので発電機を分割して設置せざるを得ない。
【0005】
近年、高温超電導体が市販されるようになり、風力タービン発電機の最新世代(高温超電導(HTS)発電機)を大型風力タービンに使用できるようになった。従って、PGMの問題点を認識して大型風力タービン用の発電機の設計を改良したい当業者は、代わりにHTS発電機を使用する気になるだろう。
【0006】
この種のHTS発電機は、ローターコイルの電流密度を著しく増大できるので、発電機の出力密度も増大する。これによって、HTS発電機のサイズ及び重量を減少しながら、高い出力を維持し、大型風力タービンのコストを削減できる。ドライブトレインの信頼性及びサービスインターバルは、突風及びドライブトレインにおける機械的応力に敏感なギアボックス連結の代わりに、ローターハブへの直接駆動連結を使用することによって、さらに増大するだろう。
【0007】
HTS発電機は、典型的には、ローターコイルにおける高い電流密度のために発電機内に高い電磁場を誘導する3つの位相を備えている。そして、ローターコイルは、ローター及びローター軸における高い電磁トルクを形成する。英国特許第2416566号明細書は、HTS発電機が、ローターハブに連結されているこの種の風力タービンを開示する。HTS発電機は、次に三相結合を介してコンバータへ直接結合される。コンバータは、発電機に結合された整流装置と、3つの位相を用いる送電線網に結合された整流回路とを備え、整流装置とインバータ回路との間にDCリンクが配列される。Xiaohang Li著「風力発電基地における超電導装置」は、HTS発電機に結合された単純なギア装置を備えるハイブリッドドライブトレインを持つ同様の風力タービンを開示する。HTS発電機は、送電線網の位相に適合する三相結合を介してコンバータに結合される。
【0008】
上記の形態は、IGBT(Insulted Gate Bipolar Transistor)の少なくとも1つに生じた短絡などコンバータの故障が検出されたとき、風力タービンのドライブトレインの作動及び風力タービン翼の回転を止めなければならないと言う不利を持つ。短絡が生じると、発電機はブレーキトルクを発生するが、ブレーキトルクは、発電機の公称トルクの9〜10倍である。これは、回転部の極端な減速によって、ドライブトレイン特に発電機、ローター軸、ローターハブ及び風力タービン翼に深刻な損傷を引き起こす可能性がある。
【0009】
PMGの場合には、そのローターコイルにおいて生じる電流密度が比較的小さいためこの問題を蒙らないので、当業者が初めてHTS発電機を用いて大型風力タービン用の発電機の設計を改良しようとするときこの問題が生じる。
【0010】
米国公開特許第2009/0295168号明細書は、ステータ組立体と、ステータに対して配列されたローター組立体とを有する超電導発電機を備える、風力タービンを開示する。ステータ組立体は、ステータコイルを形成する複数の二重螺旋形巻線を備え、ステータコイルは相互に直列に配列されて6又は12の位相を形成する。前記明細書は、どのように、複数の位相が、風力タービンのドライブトレインの他の部分に結合するかについては記載がない。
【0011】
独国特許出願公開第4032492A1号明細書は、スイッチ手段を介して、少なくとも2セットのステータ巻線を有する発電機に結合された、コンバータユニットを備える電気機械を開示する。スイッチ手段は、ステータコイルを構成するステータ巻線のセットの間で様々な形態を選択するために使用される。スイッチ手段がオフになると、各セットは、他の2つのセットと同相の少なくとも3つの位相を形成する。スイッチ手段が作動されると、セットが結合されて、6又は12の位相を有するハイブリッド形態が形成される。この形態においては、ステータコイルの各セットは、同じコンバータユニットに結合され、スイッチを用いて、発電機とコンバータユニットとの間の位相数を制御する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】英国特許第2416566号明細書
【特許文献2】米国公開特許第2009/0295168号明細書
【特許文献3】独国特許出願公開第4032492A1号明細書
【非特許文献】
【0013】
【非特許文献1】Xiaohang Li著「風力発電基地における超電導装置」
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
本発明の1つの目的は、発電機における電磁ブレーキトルクを減少できるようにする発電機形態を提供することである。
【0015】
本発明の1つの目的は、短絡電流及び異なる位相の間の影響を減少できるようにする発電機形態を提供することである。
【0016】
本発明の1つの目的は、電磁トルクのリップルを減少できるようにする発電機形態を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0017】
本発明の1つの目的は、コンバータが2つ又はそれ以上のコンバータモジュールを備え、その各々が発電機側と送電線網側とを備え、各モジュールの発電機側が、発電機内に配列されたステータコイルのセットの1つに電気的に結合された所定数の(a number of)整流回路を備えることを特徴とする風力タービンによって達成される。
【0018】
これによって、コンバータの故障例えばIGBTの短絡が検出されたとき、発電機において発生する電磁ブレーキトルクを減少できる。この種の故障が検出されると、風力タービンは、緊急時手順を実施し、この手順において回転部は数回転以内で停止される。この形態でなければ風力タービンに故障を引き起こす可能性のあるこの種の手順において、この形態は、ドライブトレイン、例えばローター軸、ローターハブ及び風力タービン翼に、生じる機械的応力を大幅に減少する。発電機とコンバータのとの間の電気的結合は、3を超える例えば6、9、12またはそれ以上の位相を形成するように構成される。発電機は、個々のステータコイルを位相の数に対応する所定数の相互接続部又は巻線として配列できるように構成できる。ステータコイルは、相互接続部又は巻線の数と位相の数を変更できる発電機内に配置された、所定数の端末又はスイッチユニットに電気的に接続できる。これによって、従来の発電機より多くの数の位相に亘って電磁トルクを配分できるので、各位相を通過する交流電流を減少させることができる。これは、また、コンバータのスイチング周波数(switching frequency)を大幅に増大するので、電磁トルクのリップルを大幅に減少する。これによって、全負荷のときの回転部における応力が減少し、ドライブトレインの信頼性が向上する。
【0019】
この形態は、コンバータをフルスケールコンバータとして構成できるようにするので、風力タービンは最大出力で作動でき、有効電力及び無効電力をよりよく制御できる。これによって、風力タービンは、特に次世代送電線網(smart power grid)に結合するのに適するようになる。
【0020】
本発明の発電機の中のステータコイルと、コンバータの中の整流回路との間の電気的結合は、ブレーキトルクの過渡現象を、発電機の公称トルクの100〜800%、好ましくは200〜600%、好ましくは200〜400%に、減少するように構成することができる。これによって、IGBT短絡時に発電機において発生する電磁ブレーキトルクを、ドライブトレインに引き起こされる応力が風力タービンに故障を生じさせない程度の、許容レベルにまで減少させることができる。
【0021】
ステータコイルは、2セット又はそれ以上、例えば3セット、4セット、5セット又は6セットで配列でき、各セットは、少なくとも2つの位相、例えば3相、4相、5相、6相あるいは9相でも具備することができる。各セットの各位相は、ステータコイルの個々の配列体によって形成できる巻線を形成する。セットは全て同数の位相、例えば3相又は6相を形成するか、あるいは、異なる数、例えば3相と6相を形成することもできる。これによって、コンバータへの電気的結合を、必要であれば異なるセットの間で切り替えるか、あるいは、各セットを異なるコンバータモジュールに結合することができる。セットにおける位相の合計数は、発電機とコンバータの間の電気的結合の位相の数を規定する。各セットにおける位相又は巻線は、均衡のとれた形態を形成するように、隣接するセットに関連して、又は、ローターの極又はローターコイルに関連して配列できる。2つの隣り合うセットの間の角度は、ステータにおいて配列される巻線又は位相の合計数によって規定できる。例えば、30°、40°、60°、72°、90°又は120°である。セットは、発電機の安全性を増大できるように、巻線の冗長セット(redundent sets of windings)として構成することができる。
【0022】
これによって、ステータにおいて形成された隣り合う位相間の相互インダクタンスを減少して、これらの隣り合う位相間の循環電流を減少できる。また、脈動界磁電流の周波数が増大するので、発電機において発生する高調波ひずみを減少できる。
【0023】
コンバータは、発電機の中に形成されたステータコイルのセットに電気的に結合される1つ又はそれ以上のコンバータモジュールによって形成できる。各コンバータモジュールは、発電機側に配列されて発電機から伝送された交流をDC電流に整流するように構成される所定数の整流回路を備えることができる。各整流回路は、そのコンバータモジュールに結合されたセットの位相の1つに電気的に接続できる。コンバータモジュールの送電線網側は、送電線網側に配列された所定数例えば3つのインバータ回路を介して送電線網に電気的に結合できる。
【0024】
これによって、コンバータをモジュール式コンバータとして構成でき、出力は、個別のコンバータモジュールに亘って配分されるので、各コンバータモジュールの出力が減少する。これによって、各コンバータモジュールを、低電圧又は中電圧モジュールとして構成でき、各モジュールのサイズ及び重量を減少できる。コンバータの安全性は、モジュールの少なくとも2つを冗長モジュールとして構成することによって向上できる。
【0025】
1つの実施形態によれば、コンバータは、コンバータの作動を制御するように構成された少なくとも1台のコントローラに電気的に結合されており、該コントローラは、コンバータに電気的に結合され、かつ、コンバータの両側の少なくとも一方を制御するように構成された、少なくとも1つのサブコントローラを備える。
【0026】
コンバータの作動は、測定または感知された1つ又はそれ以上のパラメータに基づいて、コンバータに電気的に結合されたコントローラによって、制御又は駆動される。発電機側に配列された整流回路は、サブコントローラに結合されて、該サブコントローラは、1つ又はそれ以上のパラメータ、例えば、発電機へ又は発電機から伝送される電流又は電圧、入来風速、ローター軸の角度回転速度又はトルク、若しくは、その他の関連パラメータに基づいて整流回路の作動を制御又は駆動する。これによって、整流回路を実質的に正弦波形に維持できるので、駆動発電機の効率を向上する。
【0027】
コンバータは、発電機側から伝送された直流(DC)電圧を送電線網の電流に適合する交流電圧へ変換するように構成される、送電線網側に配列された所定数のインバータ回路を備えることができる。インバータ回路は、別のサブコントローラに結合して、該サブコントローラは、1つ又はそれ以上のパラメータ、例えば、送電線網へ又は送電線網から伝送される電流又は電圧、グリッドコードによって規定された送電線網の出力仕様、出力基準値、若しくは、別の関連パラメータに基づいて、インバータ回路の作動を制御又は駆動する。各インバータ回路は、トランジスタ例えばIGBT又はダイオードの配列体を備えることができる。これによって、高い出力の質を維持しながら、送電線網に供給される(無効及び有効)電力を制御できる。
【0028】
具体的な実施形態によれば、コントローラは、コンバータモジュールの各々に電気的に結合されるスイッチ手段に電気的に結合され、コントローラはスイッチ手段の作動を制御する。
【0029】
各コンバータモジュールは、スイッチ又は接点の形式のスイッチ手段に電気的に結合でき、コントローラは、これらのスイッチ又は接点の作動を個別に制御する。スイッチ手段は、発電機の巻線のセットとコンバータモジュールとの間及び/またはコンバータモジュールと送電線網との間に配列できる。これによって、コントローラは、風力タービンにエラー又は非常事象例えば整流回路の1つの短絡が検出されたとき、コンバータをオフに切り替えることができる。コントローラは、制御信号を別のコントローラ又はサブコントローラへ送るように構成でき、別のコントローラ又はサブコントローラは、風力タービン翼のピッチ可能部がピッチアウト又はフェザーアウト(pitched or feathered out)するように風力タービン翼の中のピッチ機構を作動する。次に、コントローラは、エラーが検出されたコンバータモジュールをアウト(switch out)に切り替え、残りのコンバータモジュールをイン(switch in)に切り替えるように構成できる。コントローラは、制御パラメータの少なくとも1つ、例えば出力基準値を別のより小さい値、例えば公称出力の40〜60%、好ましくは50%に設定するように構成できる。別のコントローラ又はサブコントローラは、コントローラから受け取った制御信号に基づいてピッチイン又はフェザーイン(pitched or feathered in)するように、風力タービン翼の中のピッチ機構を作動する。
【0030】
これによって、風力タービンを運転停止することなく、欠陥コンバータモジュールを取り外して、新しいコンバータモジュールと交換できる。これによって、コンバータモジュールの1つが故障した場合、休止時間を減少し、簡単かつ迅速にコンバータを整備できる。
【0031】
具体的実施形態によれば、ステータコイルのセットの1つは、コンバータモジュールの発電機側の1つに配列された整流回路に、電気的に接続された多相結合を形成するように配列される。
【0032】
これによって、発電機とコンバータとの間の電気的結合を、3つを超える、好ましくは6、9、12又はこれらの値の間の任意の数の位相を備える、単一の多相結合として形成できる。ステータコイルは、ローターコイルが配列されたローターの周縁に面した、ステータの周縁に配列される。ステータ及びローターコイルは、磁場の場の強さが増大するように、所定のエアギャップによって相互に分離されている。ステータは、複数のステータコイル及び/又は極を備え、これらのコイル及び/又は極は、多相結合における位相の数に対応する数の巻線を形成するように相互に接続される。コンバータの中の各整流回路は、発電機から伝送された交流をDC電流へ整流するように構成され、DC電流は、その後DCリンクへ伝送される。各個別の整流回路は、多相結合の位相の1つに電気的に接続される。整流回路は、トランジスタ、例えばIGBT又はダイオードの配列体として構成できる。
【0033】
相互接続されたステータコイルによってステータに形成された巻線は、均衡の取れた形態を形成するように、それら相互に関連して、例えば所定の角度で、かつ/又は、ローターの中の極又はローターコイルに関連して、配列できる。2つの隣り合う巻線間の角度は、30°、40°、60°、72°、90°又は120°とすることができる。これによって、ステータに形成された隣り合う位相間の相互インダクタンスを減少できるので、隣り合う位相間の循環電流を減少できる。また、多相結合は脈動界磁電流の周波数を増大できるようにするので、発電機に発生する高調波ひずみを減少できる。
【0034】
1つの実施形態によれば、ステータは、複数のスロットを備え、その中にステータコイルが配置され、コイルは、少なくとも2層で配列される。
【0035】
これによって、ステータコイルの配置によって形成された、位相間や巻線間の位相変位を減少するように、ステータコイルをスロットにおいて多層に配置列できる。ステータコイルは、発電機の各位相又は巻線が各層に配置されるように配列することができる。位相又は巻線を第1層において配列する順番は、第2層における順番と反対にすると良い。ステータコイルが2より多い層で配列される場合、各層の順番は、隣りの層の順番と異なる(例えば、反対)か、あるいは、ステータコイルは、同じ順番を持つ群として配列しても良い。
【0036】
1つの実施形態によれば、直流リンクは、コンバータにおいて発電機側の出力と送電線網側の入力との間で電気的に接続される。
【0037】
1つ又はそれ以上のコンデンサの形式のDCリンクは、コンバータの前記2つの側の間に配列できる。これによって、送電線網側に伝送される電圧レベルを実質的に不変レベルに維持できるようにコンデンサにエネルギーを蓄積でき、電圧リップルを減少できる。これによって、風力タービンを送電線網に結合する前に所望の電圧レベルまでコンデンサを充電できるので、ソフトスタートで風力タービンを送電線網に結合できる。測定装置をDCリンク及びコントローラに結合しても良く、測定装置は、リンクの電圧レベルを測定するように構成できる。電圧レベルを利用して、コンバータの発電機側及び送電線網側の作動を制御することもできる。チョッパー回路の形式の保護回路をDCリンクに結合して、送電線網における短絡からドライブトレインを保護できる。
【0038】
1つの実施形態によれば、一次側及び二次側を備える変圧器が、コンバータと送電線網との間に電気的に結合される。
【0039】
変圧器は、コンバータの電圧レベルが送電線網の電圧に適合するようにコンバータの電圧レベルを傾斜路的に増減するように構成できる。変圧器は、ドライブトレインを損傷する可能性のある送電線網の故障からドライブトレインを保護する。1つ又はそれ以上のコンデンサ及び/又はインダクタの形式のフィルタ手段を、コンバータと変圧器との間に、及び/又は、発電機とコンバータとの間に、配置できる。これによって、送電線網へ供給される出力電流の中の高調波及び出力電流のリップルを減少できる。
【0040】
また、本発明の目的は、コントローラが、エラーが検出されたコンバータの部分を選択的にオフにして、コンバータの残り部分をイン(switch in、オン)に切り替え、ピッチ可能な翼部分を、風向きの中でピッチングする(pitched into the wind direction)ように結合されたピッチ機構を作動することを特徴とする、風力タービンを作動する方法によって達成される。
【0041】
この方法によって、緊急時に、運転を再開する前に風力タービンの作動を短時間休止すればよく、風力タービンの全体的休止時間を減少できる。コントローラは、緊急事象が検出されたら、送電線網からコンバータを切断する(オフに切り替える)。緊急事象としては、コンバータモジュールの1つにおける短絡が考えられる。コントローラは、その後、風力タービン翼の中のピッチ機構を作動し、翼のピッチ可能部分は風からピッチアウト又はフェザーアウトする。また、コントローラは、機械的ブレーキを作動し、かつ/又は発電機へエネルギーを送り返すことによって、発電機を用いて風力タービン翼を制動できる。その後、コントローラを介してピッチ機構を再び作動し、翼のピッチ可能部分を風向きの中でピッチング又はフェザーリングする。コントローラがソフトスタートアップを使用する場合、DCリンクが設定レベルまで充電されたとき、コンバータが再びインに切り替えられる。
【0042】
具体的実施形態によれば、コントローラは、風力タービンの作動を制御するために使用される制御パラメータの少なくとも1つを、その正常運転時の値より低い別の設定値へ変更する。
【0043】
緊急状況が検出されたとき、風力タービンは、風力タービン、例えばドライブトレインにおける機械的応力及びひずみを減少するように、より低い作動レベルで作動することができる。これは、コントローラを用いてエラーが検出されたコンバータモジュールをアウト(オフ)に切り替えることによって実施でき、その後、残りのコンバータモジュールが高圧送電網に再び接続される(イン(オン)に切り替えられる)。その後、コントローラは、風力タービンの作動を制御するために使用される制御パラメータの少なくとも1つをより低い別の値に設定することができる。
【0044】
具体的実施形態によれば、制御パラメータは出力基準値であり、設定値は、公称出力の40〜60%である。
【0045】
制御パラメータとしては、出力基準値、最大許容風速、出力効率、又は、別の適切な制御パラメータが考えられる。好ましい実施形態において、出力基準値は、低減された値、例えば公称出力の40〜60%、好ましくは50%に設定される。
【0046】
本発明は、添付図面を参照して、一例として説明される。
【図面の簡単な説明】
【0047】
図1】風力タービンの代表的実施形態を示す。
図2】送電線網及びローターハブに結合された発電機の代表的実施形態を示す。
図3】風力タービンにおいて配列されたドライブトレインの代表的第1実施形態を示す。
図4】風力タービンにおいて配列されたドライブトレインの代表的第2実施形態を示す。
図5】風力タービンにおいて配列されたドライブトレインの代表的第3実施形態を示す。
図6】ステータの巻線配列体の代表的実施形態を示す。
図7】発電機において発生した電磁トルクの図表である。
図8】コンバータの故障が検出されたとき風力タービンの作動を制御する代表的方法のフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0048】
以下の文章において、図面について1つずつ説明するが、図面において様々な部品及び位置に同じ番号が付けられる。特定の図面において指示される部品及び位置の必ずしも全てが、その図面と一緒には論じられない。
【0049】
図1は、風力タービンタワー2と、風力タービンタワー2の最上部に取り付けられたナセル3とを備える風力タービン1の代表的実施形態を示す。風力タービンタワー2は、相互に上下に取り付けられる1つ又はそれ以上のタワー区分を含むことができる。ローターハブ4は、ローター軸を介してナセル3に回転可能に取り付けても良い。1枚又はそれ以上の風力タービン翼5は、ローターハブの中心から外向きに(放射状に)延びるシャフトを介してローターハブ4に取り付けても良い。2枚又は3枚の風力タービン翼5をローターハブ4に取り付けることができ、風力タービン翼5は、回転体平面を形成する。風力タービンタワー2は、地表面7の上方に延在する基礎体6の上に据え付けることができる。
【0050】
風力タービン翼5は、ローターハブ4に取り付けるように構成された翼根元8を備えることができる。風力タービン翼5は、翼5の自由端に配置された先端部9を備えることができる。風力タービン翼5は、翼の長さに沿って空気力学的プロフィルを有する。風力タービン翼5は、例えば、ガラス、炭素又は有機繊維で作られた繊維を持つ、積層材を形成する繊維強化プラスチック又は複合材料で作ることができる。積層材は、外部装置例えば真空注入装置によって供給された樹脂例えばエポキシを用いて注入できる。
【0051】
図2は、送電線網11及びローターハブ4に結合された高温超電導(HTS)発電機の形式の発電機10の代表的実施形態を示す。ローターハブ4は、回転可能なローター軸12を介してナセル3内部に配置された発電機に結合できる。ローター軸12は回転軸を形成し、その周りでローターハブ4及び風力タービン翼12は回転する。風力タービン翼5は、回転体平面に衝突する入来風の運動エネルギーを機械的エネルギーへ変換し、これが、ローター軸12を介して発電機10へ伝送される。発電機10は、機械的エネルギーを電気エネルギーへ変換するように構成され、電気エネルギーはコンバータ13へ伝送される。
【0052】
発電機10は、ステータ15及びローター16を包含する発電機ハウジング14を備えることができる。発電機ハウジング14は、図2に示すように両端が2枚の端板で閉鎖される円筒形ハウジングとして形成できる。ローター軸12は、図2に示すように、発電機10の中へ延び、選択的に発電機10を貫通させても良い。1つ又はそれ以上の支持手段17を発電機ハウジング14に、及び/又は、その内部に配置でき、支持手段17は、回転時にローター軸12を受け入れてこれを支持するように構成することができる。ローター軸12は、例えば端板に配置された軸受形式の支持手段17によって支持し、かつ/又は、発電機ハウジング14によって直接支持することができる。ステータ15は、導電性材料、例えば銅で作られた所定数のステータコイル(図示せず)を備え、ローターは、所定数のローターコイル(図示せず)を備えることができる。ステータ15及びローター16は、ローターコイルがステータコイルと相互作用する磁場を誘起するように、相互に関連して配列できる。
【0053】
ローター16は、例えばBi−Sr−Ca−Cu−O(BSCCO)、Y−Ba−Cu−O(YBCO)、Tl−Ba−Ca−Cu−O、Hg−Ba−Ca−Cu−O、RE−Ba−Cu−O((RE)BCO)又はその他の適切な材料などHTS材料で作られた少なくとも所定数のローターコイルを備える超電導ローターとして構成できる。「超電導」と言う用語は、導体として選択された材料の抵抗がゼロである状態として定義される。ローター16は、ローターコイルが超電導状態に達するようにローターコイルを冷却するように構成された冷却装置(図示せず)を備えるか、またはこれに結合できる。
【0054】
ステータ15のステータコイルは、所定数の巻線を形成するように配列でき、巻線は、各々がコンバータ13に配列された所定数の整流回路に電気的に結合された位相を形成する。コンバータ13は、ステータからの出力が、特定の送電線網11のグリッドコードにおいて規定される仕様(周波数、位相、電圧及び電流)に適合するように、ステータ15からの出力を変換するように構成することができる。
【0055】
図3は、風力タービン1において配列されたドライブトレイン18の代表的第1実施形態を示す。ドライブトレイン18は、風力タービン翼5及びローター軸12を介して発電機10に機械的に連結されたローターハブ4の形式のローターを備えることができる。発電機10は、コンバータ13の発電機側19に電気的に結合され、発電機側は、リンク21を介して送電線網側20に電気的に結合される。次に、送電線網側20は、変圧器22に電気的に結合され、変圧器は送電線網11に電気的に結合される。
【0056】
ステータ15の中の個々のステータコイルは、所定数の巻線を形成するように所定数の相互接続部で配列できる。各巻線は、発電機10の位相を形成する。ステータコイルは、6つの巻線で形成された6つの位相(そのうち3つのみ図示)を備える多相配列体を形成するように構成できる。発電機10とコンバータ13との間の電気的結合は、発電機10の位相23、及び、コンバータ13の発電機側19に配列された整流回路に、結合される多相結合として構成できる。相互接続されたステータコイルによって、ステータ15に形成された巻線は、均衡の取れた形態を形成するように相互に関連して配列される。2つの隣り合う巻線間の角度は、所望の形態次第で0°、30°、又は、60°とすることができる。
【0057】
コンバータ13の発電機側19は、発電機10の巻線の数に対応する数の整流回路を備える多相配列体として構成できる。コンバータ13は、フルスケールコンバータとして構成できる。発電機側19は、6つの整流回路を備えることができ、その各々が位相23の1つに電気的に結合される。コンバータ13の各整流回路は、発電機10から伝送された交流を直流に整流するように構成できる。整流回路は、第2部分に接続された第1部分を備えるトランジスタ例えばIGBTの配列体として構成できる。第1部分は、交流の正の半分を整流するように構成でき、第2部分は、交流の負の半分を整流するように構成できる。夫々の位相23は、整流回路の上記2つの部分間の相互接続部に結合すると良い。
【0058】
第1部分及び第2部分の出力は、整流電流がリンク21へ伝送されるようにリンク21に電気的に結合される。直流リンクの形式のリンク21は1つ又はそれ以上のコンデンサバンク(banking capacitors)の形式のエネルギー蓄積体として構成できる。リンク21は、実質的に不変レベルに、送電線網側20の電圧レベルを維持して、発電機における電磁トルクの電圧リップルを減少するように構成できる。
【0059】
次に、平滑化直流電流(smoothened direct current)が、所定数のインバータ回路を備える送電線網側20へ伝送される。インバータ回路は、リンク21からの直流を送電線網11のための交流へ変換するように構成できる。送電線網側20は、直流を送電線網11の仕様に適合する電圧及び電流へ変換するように構成できる。送電線網側20は送電線網11の位相24の数に対応する3つのインバータ回路を備えることができる。インバータ回路は、第4部分に接続された第3部分を備えるトランジスタの配列体、例えばIGBTとして構成できる。第3部分は、交流の正の半分を生成するように構成でき、第4部分は、交流の負の半分を生成するように構成できる。夫々の位相24は、インバータ回路の上記2つの部分間の相互接続部に結合すると良い。
【0060】
コンバータ13及び/又は発電機10は、コントローラ(図示せず)に電気的に結合すると良い。コントローラは、コンバータ13の出力に電気的に結合された1つ又はそれ以上のセンサを介して、送電線網11へ伝送される出力電圧及び/又は電流を、検出し制御するように構成できる。コントローラは、発電機10の出力に電気的に結合された1つ又はそれ以上のセンサを介して、発電機10から伝送される出力電圧及び/又は電流を、検出し制御するように構成できる。コントローラは、リンク21に電気的に結合された測定装置を用いてリンク21の電圧レベルを測定するように構成できる。この電圧レベルは、コンバータ13の発電機側19、及び、送電線網側20の作動を制御するために使用される。
【0061】
図4は、風力タービン1において配列されたドライブトレイン25の代表的な第2実施形態を示す。ドライブトレイン25は、発電機10’及びコンバータ13’の形態の点で図3のドライブトレイン18と異なる。
【0062】
ステータ15のステータコイルは、少なくとも2セットのステータコイル26、27を形成するように配列でき、各セット26、27は所定数の巻線を備える。各セット26、27のステータコイルは、3つの個別の巻線を形成するように配列できる。セット26、27の巻線の総数は、発電機10’とコンバータ13’との間の位相の数を規定し、この実施形態においては、位相数は6である。各巻線は、特定のセット26、27の位相を形成する。ステータ15においてステータコイルによって形成された個々の巻線は、均衡の取れた形態を形成するように相互に関連して配列できる。2つの隣り合う巻線間の角度は、所望の形態次第で0°、30°又は60°とすることができる。セット26、27は、結果として風力タービン1の安全性及び信頼性を高める位相のセットを形成するように構成できる。
【0063】
各セット26、27の位相は、セット26、27と同じ数の位相を有する2つの電気結合を介して、コンバータ13’に電気的に結合できる。コンバータ13’は、少なくとも2つのコンバータモジュール29、30を備える、モジュール式コンバータとして構成できる。コンバータモジュール29、30は、夫々、セット26、27の位相に電気的に結合できる。各コンバータモジュール29、30は、リンク35、36を介して送電線網側33、34に電気的に結合された発電機側31、32を備えることができる。発電機側31、32は、各セット26、27の位相と同じ数例えば3つの整流回路を備えることができる。コンバータモジュールの各整流回路31、32は、発電機10’から伝送された交流を直流へ整流するように構成できる。整流回路は、第2部分に接続された第1部分を備えるトランジスタ例えばIGBTの配列体として構成できる。第1部分は、交流の正の半分を整流するように構成し、第2部分は交流の負の半分を整流するように構成できる。セット26、27の夫々の位相は、整流回路の2つの部分間の相互接続部に結合すると良い。送電線網側33、34及びリンク35、36は、送電線網側20及びリンク21と同じ形態を持つことができる。
【0064】
図5は、風力タービン1において配列されたドライブトレイン37の代表的第3実施形態を示す。ドライブトレイン37は、発電機10”が3セットの位相26、27、38を備え、コンバータ13”が3つのコンバータモジュール29、30、39を備える点で、図4のドライブトレイン25と異なる。
【0065】
ステータコイルによって形成された巻線のセット38は、他のセット26、27と同じ形態を持ち、同じ数の位相を持つことができる。コンバータモジュール39は、他のコンバータモジュール29、30と同じ形態を持つことができる。リンク42は、他のリンク35、36と同じ形態を持つことができる。別の実施形態において、第3セット38は、他のセット26、27よりもっと大きい数例えば6つの巻線又は位相を備えることができる。第3コンバータモジュールの発電機側40は、第3セット38の位相と同じ数例えば6つの整流回路を持つように構成できる。送電線網側41は、他の送電線網側33、34と同じ形態を持つことができる。第3リンク42は、他のリンク35、36と異なる形態を持つことができる。これによって、ドライブパスの数及び位相の数をドライブトレインの所望の設計に適合させることができる。
【0066】
図6は、ステータ15の巻線配列体の代表的実施形態を示し、巻線配列体は、ステータ15のスロット43の中に入れられる。ステータ15は、複数のスロット43を備えることができ、この中にステータコイル44が配列される。ステータコイル44は、スロット43において、複数の巻線を形成して、その各々が発電機10、10’、10”において位相を形成するように位置付けられる。ステータコイル44は、少なくとも2つの層すなわち第1層45a及び第2層45bに配列できる。層45a及び45bに配置される巻線の数は、発電機10、10’、10”において又はセット26、27、38の1つにおいて配列される位相の数に対応できる。巻線又はステータコイル44が各層45a、45bに配列される順番は、図6に示すように隣の層の順番と反対にすることができる。これによって、巻線を2つまたはそれ以上の層45a、45bに分割することによって、ステータ15における巻線又は位相の幅を小さくできる。図6は、2つの区分又は小巻線(sub-windings)に分割され1〜6の印が付けられた6つの位相を示し、例えば1の印で示される小巻線は、発電機10、10’、10”の巻線又は位相の1つを形成する。
【0067】
発電機10、10’、10”の巻線又は位相は、単層45aに配列することができる。図6に示す6つの位相は、代わりに単層45aで配列できる。これによって、2つ又はそれ以上の区分又は小巻線に分割することなく、巻線又は位相をステータ1に配列できる。
【0068】
図7は、発電機10において発生した電磁トルクの図表である。図表は、6つの位相を有する発電機10、10’によって発生した電磁トルク46を示す。図表は、伝統的な3つの位相を有する発電機によって発生した電磁トルク47も示す。
【0069】
図示するように、伝統的発電機は、ピークピーク値によって示される大きいリップルを持つ電磁トルク47を発生して、発電機の中に大きい高調波ひずみを形成する。伝統的な発電機の3つの位相によって形成される電磁トルク47のスイチング周波数は、図に示すように比較的低い。本発明に係わる発電機10、10’、10”は、電磁トルクがより多くの位相に配分されるので、図示するようにリップルのピークピーク値が減少した電磁トルク46を発生する。リップルのピークピーク値及び高調波ひずみは、発電機10、10’、10”の形態次第で40%かそれ以上減少できる。発電機10、10’、10”は、位相の数が増大するので、図表に示すように電磁トルク46のスイチング周波数も増大する。
【0070】
発電機10、10’、10”とコンバータ13、13’との間の電気的結合は、所望の形態及び電気的結合の位相の数次第でブレーキトルクの過渡現象を発電機の公称トルクの100〜800%に減少するように構成できる。位相の各々従って整流回路の各々において発生する界磁電流は減少するので、コンバータ13、13’のエラーのために発電機において発生するブレーキトルクはより許容可能なレベルまで減少する。
【0071】
図8は、コンバータ13’の故障が検出されたとき風力タービン1の作動を制御する代表的方法のフローチャートである。コンバータモジュール29、30、39に電気的に結合されたコントローラは、コンバータモジュール29、30、39の各々に結合されるスイッチ手段(図示せず)に電気的に結合できる。スイッチ手段は、コントローラから送られた制御信号に応じてコンバータモジュール29、30、39をイン(オン)又はアウト(オフ)に切り替えるように構成できる。スイッチ手段は、発電機10’、10”の中の巻線のセット26、27、38とコンバータモジュール29、30、39との間及び/又はコンバータモジュール29、30、39と送電線網11との間に配列できる。コントローラは、風力タービン翼5のピッチ可能部分のピッチを制御するように構成された別のコントローラに電気的に結合できる。1つ又はそれ以上の測定装置を用いて、発電機10’、10”及び/又はコンバータモジュール29、30、39の性能を監視できる。
【0072】
風力タービン1の中のコントローラが、コンバータモジュール29、30、39の1つ又はそれ以上において、エラー又は故障を検出したとき(ステップ48)、コントローラは、スイッチ手段へ制御信号を送る。スイッチ手段が作動され(ステップ49)、コンバータ13’は送電線網11から切断される。次に、別の制御信号が、風力タービン翼5のピッチングシステムに結合された別のコントローラへ送られる。ピッチ可能部分が風向きからピッチアウト(pitched out)又はフェザーリングするように、ピッチングシステムは風力タービン翼5のピッチ機構を作動する(ステップ50)。その後、例えばドライブトレイン25、37のローターに連結された1つ又はそれ以上のブレーキを用いることによって、風力タービン1を停止できる(ステップ51)。コントローラは、発電機10’、10”を使用してローターを制動できるように、例えば他の電源から又は送電線網から発電機へ電力を送り返すことができる。
【0073】
コントローラは、その後、エラー又は故障が検出されたコンバータモジュール29、30、39を選択的にオフに切り替えることができる(ステップ52)。その後、コンバータ13’が再び送電線網11へ電気的に結合されるように、他のコンバータモジュール29、30、39をインに切り替えることができる。コントローラは、リンク35、36、42が設定レベルまで充電されたときまずコンバータ13‘をインに切り替えソフトスタートアップを用いて、風力タービン1の作動を開始するように構成できる。
【0074】
次に、コントローラは、正常な作動モードにおいて風力タービン1の作動を制御するために使用された制御パラメータの1つ又はそれ以上の値を変更できる(ステップ53)。制御パラメータとしては出力基準値が考えられる。出力基準値は、正常な作動モードにおいて90〜100%の公称値に設定できる。コントローラは、緊急時例えばコンバータモジュール29、30、39の1つに故障又はエラーが生じた場合、制御パラメータを、正常作動モード時の値より低い別の値に設定できる。出力基準値は、コンバータモジュール29、30、39の1つに故障又はエラーが生じた場合、40〜60%の値に設定できる。
【0075】
コントローラは、次に、風力タービン翼5のピッチシステムに結合された他のコントローラへ制御信号を送ることができる。ピッチシステムは、その後、ピッチ可能部分が再び風向きの中でピッチングするように風力タービン翼のピッチ機構を作動する(ステップ54)。コントローラは、またローターを拘束するブレーキを解除すると良い。風力タービンは、作動を再開する(ステップ55)が、風力タービンにおける、例えばドライブトレインにおける機械的応力及びひずみを、減少するように、より低い作動レベルで作動される。
【符号の説明】
【0076】
1 風力タービン
2 風力タービンタワー
3 ナセル
10、10’、10’’ 発電機
13、13’、13’’ コンバータ
29、30、39 コンバータモジュール
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8