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特許5785270リンク適応のためにチャネル情報を送信するための方法および送信器要素、チャネル情報を受信するための方法および受信器要素
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5785270
(24)【登録日】2015年7月31日
(45)【発行日】2015年9月24日
(54)【発明の名称】リンク適応のためにチャネル情報を送信するための方法および送信器要素、チャネル情報を受信するための方法および受信器要素
(51)【国際特許分類】
   H04L 1/00 20060101AFI20150907BHJP
   H04J 99/00 20090101ALI20150907BHJP
   H04L 27/00 20060101ALI20150907BHJP
   H04B 7/04 20060101ALI20150907BHJP
【FI】
   H04L1/00 E
   H04J15/00
   H04L27/00 Z
   H04L1/00 B
   H04B7/04
【請求項の数】14
【全頁数】17
(21)【出願番号】特願2013-549746(P2013-549746)
(86)(22)【出願日】2011年12月16日
(65)【公表番号】特表2014-510432(P2014-510432A)
(43)【公表日】2014年4月24日
(86)【国際出願番号】EP2011073059
(87)【国際公開番号】WO2012097935
(87)【国際公開日】20120726
【審査請求日】2013年9月11日
(31)【優先権主張番号】11290037.8
(32)【優先日】2011年1月21日
(33)【優先権主張国】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】391030332
【氏名又は名称】アルカテル−ルーセント
(74)【代理人】
【識別番号】100094112
【弁理士】
【氏名又は名称】岡部 讓
(74)【代理人】
【識別番号】100106183
【弁理士】
【氏名又は名称】吉澤 弘司
(74)【代理人】
【識別番号】100128657
【弁理士】
【氏名又は名称】三山 勝巳
(74)【代理人】
【識別番号】100170601
【弁理士】
【氏名又は名称】川崎 孝
(72)【発明者】
【氏名】バレンティン,ステファン
(72)【発明者】
【氏名】ワイルド,トルステン
(72)【発明者】
【氏名】サントス,アンドレ エフ.ディー.
【審査官】 谷岡 佳彦
(56)【参考文献】
【文献】 米国特許出願公開第2009/0199055(US,A1)
【文献】 国際公開第2010/042235(WO,A1)
【文献】 特表2010−529789(JP,A)
【文献】 特表2010−507326(JP,A)
【文献】 国際公開第2009/087924(WO,A1)
【文献】 特表2010−527184(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04L 1/00
H04B 7/04
H04J 99/00
H04L 1/16
H04L 27/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
無線ネットワーク(11)の無線チャネル(33)のリンク適応のためにチャネル情報(CI)を送信する方法であって、
マルチレベル符号化を使用して前記チャネル情報(CI)を符号化するステップ(19)であって、前記マルチレベル符号化(19)は、マルチビット系列(c、c、…、c)を結合させるステップを含み、各ビット系列(c、c、…c、d)は、前記マルチレベル符号化(19)の符号化レベル(1、…、n)に対応する、ステップと、
前記チャネル情報(CI)の少なくとも一部(ci、ci)が、前記符号化レベル(1、…、n)の1つのビット系列(c、c、…、c)に対応するように、その符号化レベル(1、…、n)を前記チャネル情報(CI)の前記少なくとも一部(ci、ci)に割り当てるステップ(37)と
前記リンク適応のために前記チャネル情報(CI)をチャネル情報(CI)の複数部分(ci、ci)へと、チャネル情報(CI)の前記部分(ci、ci)の重要度に従って細分化するステップ(37)と、
前記複数部分(ci、ci)の少なくとも一部に前記符号化レベルの1つ(1、…、n)を割り当てるステップと
を含み、
前記少なくとも1つの符号化レベル(1、…、n)は、前記リンク適応のためにチャネル情報(CI)の少なくとも一部(ci、ci)の瞬間的な重要度に従ってチャネル情報(CI)の前記少なくとも一部に動的に割り当てられる、方法。
【請求項2】
前記チャネル情報(CI)の複数部分(ci、ci)に複数の符号化レベル(1、…、n)を割り当てるステップを含み、前記複数部分(ci、ci)の少なくとも1つに割り当てられた前記符号化レベル(1、…、n)の検出確率(p、p2、…、p)は、リンク適応に関して、前記少なくとも一部(c、c、…、c)より低い重要度を有する前記複数部分のその他の一部(ci、ci)に割り当てられた前記符号化レベル(1、…、n)の検出確率(p、p、…、p)より高い、請求項に記載の方法。
【請求項3】
チャネル情報(CI)の前記複数部分(ci、ci)の第1の部分(ci)は、前記無線チャネル(33)全体に関係する広帯域情報を含み、チャネル情報(CI)の前記複数部分(ci、ci)の第2の部分(ci)は、無線チャネル(33)の少なくとも1つのサブバンドに関係するサブバンド情報を含み、前記第1の部分(ci)は、前記第2の部分(ci)よりリンク適応に関して高い重要度を有している請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
前記チャネル情報(CI)は、粗情報、好ましくは、粗いプリコーディング・ベクトル(51a)を特徴付ける粗いプリコーディング・ベクトル情報と、前記粗情報を精緻化するための精緻化情報、好ましくは、前記粗いプリコーディング・ベクトル(51a)に基づいて、細かい粒度のプリコーディング・ベクトル(55a)を決定するための精緻化プリコーディング情報とを含み、前記粗情報は、チャネル情報(CI)の前記複数部分(ci、ci)の一部(ci)に対応し、前記一部(ci)は、前記精緻化情報に対応する前記複数部分(ci、ci)の他の一部(ci)より高い重要度を有する請求項乃至のいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
前記マルチレベル符号化(19)を使用してペイロード・データ(d)を送信するステップと、前記ペイロード・データ(d)および前記チャネル情報(CI)の前記
少なくとも一部(ci、ci)に、別々の符号化レベル(1、…、n)を割り当てるステップとを含む請求項1乃至のいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
前記符号化レベル(1、…、n)は、前記ペイロード・データおよび前記チャネル情報(CI)の前記少なくとも一部に動的に割り当てられる請求項に記載の方法。
【請求項7】
無線ネットワーク(11)の無線チャネル(33)のリンク適応のためにチャネル情報(CI)を受信する方法であって、
マルチレベル復号(27)を使用して前記チャネル情報(CI)を復号するステップ(27)であって、前記マルチレベル復号(27)は、マルチビット系列(c、c、…、c、d)を検出するステップを含み、各ビット系列(c、c、…、c、d)は、前記マルチレベル復号(27)の符号化レベル(1、…、n)に対応する、ステップと、
事前定義された符号化レベル(1、…、n)に対応するビット系列(c、c、…、c)に依存して前記チャネル情報(CI)の少なくとも一部(ci、ci)を決定するステップとを含み、
前記チャネル情報(CI)は、前記リンク適応のためにチャネル情報(CI)の複数部分(ci、ci)へと、チャネル情報(CI)の前記部分(ci、ci)の重要度に従って細分化され(37)、前記符号化レベルの1つ(1、…、n)は、前記複数部分(ci、ci)の少なくとも一部に割り当てられ、
前記少なくとも1つの符号化レベル(1、…、n)は、前記リンク適応のためにチャネル情報(CI)の少なくとも一部(ci、ci)の瞬間的な重要度に従ってチャネル情報(CI)の前記少なくとも一部に動的に割り当てられる、方法。
【請求項8】
前記チャネル情報(CI)は、前記リンク適応のためにチャネル情報(CI)の複数部分(ci、ci)へと、チャネル情報(CI)の前記部分(ci、ci)の重要度に従って細分化され、チャネル情報(CI)の前記複数部分(ci、ci)の第1の部分(ci)は、前記無線チャネル(33)全体に関係する広帯域情報を含み、チャネル情報(CI)の前記複数部分(ci、ci)の第2の部分(ci)は、前記無線チャネル(33)の1つまたは複数のサブバンドに関係するサブバンド情報を含み、前記第1の部分(ci)は、前記第2の部分(ci)よりリンク適応に関して高い重要度を有している請求項に記載の方法。
【請求項9】
前記チャネル情報(CI)は、前記リンク適応のためにチャネル情報(CI)の複数部分(ci、ci)へと、チャネル情報(CI)の前記数部分(ci、ci)の重要度に従って細分化され、前記チャネル情報(CI)は、粗情報、好ましくは粗いプリコーディング・ベクトル(51a)を特徴付ける粗いプリコーディング・ベクトル情報と、前記粗情報を精緻化するための精緻化情報、好ましくは、前記粗いプリコーディング・ベクトル(51a)に基づいて、細かい粒度のプリコーディング・ベクトル(55a)を決定するための精緻化プリコーディング情報とを含み、前記粗情報は、チャネル情報(CI)の前記複数部分(ci、ci)の一部(ci)に対応し、前記一部(ci)は、前記精緻化情報に対応する前記複数部分(ci、ci)の他の一部(c)より高い重要度を有する請求項またはに記載の方法。
【請求項10】
前記マルチレベル復号(27)を使用して、ペイロード・データ(d)を受信するステップを含み、別々の符号化レベル(1、…、n)が、前記ペイロード・データ(d)および前記チャネル情報(CI)の前記少なくとも一部(ci、ci)に割り当てられる請求項乃至のいずれか1項に記載の方法。
【請求項11】
無線ネットワーク(11)の無線チャネル(33)のリンク適応のためにチャネル情報(CI)を送信するための送信器要素(35)であって、
マルチレベル符号化(19)を使用して、前記チャネル情報(CI)を符号化すること(19)であって、前記マルチレベル符号化(19)は、マルチビット系列(c、c、…、c、d)を結合させることを含み、各ビット系列(c、c、…、c、d)は、前記マルチレベル符号化(17)の符号化レベル(1、…、n)に対応する、符号化すること(19)と、
前記チャネル情報(CI)の少なくとも一部(ci、ci)が、前記符号化レベル(1、…、n)の1つのビット系列(c、c、…、c)に対応するように、その符号化レベル(1、…、n)を前記チャネル情報(CI)の前記少なくとも一部(ci、ci)に割り当てること(37)と
を行うように構成され、さらに
前記送信器要素は、前記リンク適応のために前記チャネル情報(CI)をチャネル情報(CI)の複数部分(ci、ci)へと、チャネル情報(CI)の前記部分(ci、ci)の重要度に従って細分化し、前記複数部分(ci、ci)の少なくとも一部に前記符号化レベルの1つ(1、…、n)を割り当てるように、および、前記少なくとも1つの符号化レベル(1、…、n)を、前記リンク適応のためにチャネル情報(CI)の少なくとも一部(ci、ci)の瞬間的な重要度に従ってチャネル情報(CI)の前記少なくとも一部に動的に割り当てるように構成された送信器要素(35)。
【請求項12】
請求項1乃至のいずれか1項に記載の方法を実行するように構成されている請求項11に記載の送信器要素(35)。
【請求項13】
無線ネットワーク(11)の無線チャネル(33)のリンク適応のためにチャネル情報(CI)を受信するための受信器要素(41)であって、
マルチレベル復号を使用して前記チャネル情報を復号化すること(27)であって、前記マルチレベル復号(27)は、マルチビット系列(c、c、…、c)を検出することを含み、各ビット系列は、前記マルチレベル復号(27)の符号化レベル(1、…、n)に対応する、復号化すること(27)と、
事前定義された符号化レベル(1、…、n)に対応するビット系列(c、c、…、c)に依存して前記チャネル情報(c、c、…、c)の少なくとも一部(ci、ci)を決定することと
を行うように構成され
前記チャネル情報(CI)は、前記リンク適応のためにチャネル情報(CI)の複数部分(ci、ci)へと、チャネル情報(CI)の前記部分(ci、ci)の重要度に従って細分化され(37)、前記符号化レベルの1つ(1、…、n)は、前記複数部分(ci、ci)の少なくとも一部に割り当てられ、
前記少なくとも1つの符号化レベル(1、…、n)は、前記リンク適応のためにチャネル情報(CI)の少なくとも一部(ci、ci)の瞬間的な重要度に従ってチャネル情報(CI)の前記少なくとも一部に動的に割り当てられる、受信器要素(41)。
【請求項14】
請求項7乃至10のいずれか1項に記載の方法を実行するように構成されている請求項13に記載の受信器要素(41)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、無線ネットワークにおいて無線チャネルのリンク適応のためにチャネル情報を送信するための方法および送信器要素に関する。さらに、本発明は、チャネル情報を受信するための方法および受信器要素に関する。
【背景技術】
【0002】
当技術分野で知られているセルラー通信ネットワークの基地局は、その基地局に登録された特定のモバイル端末へのデータ送信のための送信モードを適応させるように構成されており、この適応は、基地局と端末との間の無線チャネルの現在の状態に依存している。チャネルの状態にデータ送信を適応させることは、しばしば、リンク適応と呼ばれる。
【0003】
個々の端末から基地局に無線チャネルの現在の状態を記述するチャネル情報を転送することが知られている。しかし、このチャネル情報の転送は、送信リソースを消費する。さらに、基地局にチャネル情報を転送するときに送信エラーが発生する可能性があり、このことは、実際のチャネル状態と、基地局によって受信されるチャネル情報によって表されるチャネル状態との間の不一致へとつながる可能性がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の目的は、チャネル情報を送信および受信するための方法、ならびに無線ネットワークの、端末および基地局など、異なるネットワーク・ノード間で確実かつ効率的なチャネル情報の転送を可能にする送信器要素および受信器要素を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の実施形態によると、無線ネットワークにおいて無線チャネルのリンク適応のためにチャネル情報を送信する方法が提供され、方法は、マルチレベル符号化を使用してチャネル情報を符号化するステップであって、前記マルチレベル符号化は、マルチビット系列を結合させるステップを含み、各ビット系列は、前記マルチレベル符号化の符号化レベルに対応する、ステップと、チャネル情報の少なくとも一部が前記符号化レベルの1つのビット系列に対応するように、その符号化レベルをチャネル情報の少なくとも一部に割り当てるステップとを含む。
【0006】
方法は、任意のタイプの無線ネットワークに適用することができる。たとえば、無線ネットワークは、Universal Mobile Telecommunication System(UMTS)、Long Term Evolution(LTE)システム、LTE−Advancedシステム、もしくはワールドワイド・インターオペラビリティ・フォー・マイクロウェーブ・アクセス(WiMAX)システムなどのセルラー・ネットワーク、またはそれぞれIEEE802.11または802.15標準ファミリに従う、無線・ローカル・エリア・ネットワーク(WLAN)あるいは無線・センサ・ネットワーク(WSN)など非セルラー・ネットワークでもよい。
【0007】
チャネル情報は、チャネルの瞬間的な特性を記述するものである。LTEでは、チャネル情報は、チャネル状態情報(CSI)とも呼ばれる。チャネル情報は、チャネル品質インジケータ(CQI)を含むことができる。LTEでは、端末は、チャネルの品質を推定し、推定された品質に依存してCQIを決定して、基地局にCQIを送信する。さらに、チャネル情報は、プリコーディング行列インジケータ(PMI)を含むことができる。端末は、基地局にPMIを通信することができる。基地局は、端末から受信されたPMIに依存してプリコーディング重みまたはプリコーディング行列を決定し、プリコーディング重みまたはプリコーディング行列によりその端末へのダウンリンク・データ送信を適応させることができる。相互的無線・チャネル(reciprocal wireless channel)を想定できない場合、同様の手順がいかなる無線・システムでも必要である。
【0008】
好ましくは、各符号化レベルは、その符号化レベルのビット系列の検出確率のレベルに対応する。検出確率は、無線チャネルを通じてチャネル情報を送信する際に送信エラーが発生する可能性があるとき、ビット系列が受信器によって正しく検出される確率である。方法は、無線ネットワークの端末によって実行することができる、すなわち、方法は、無線ネットワークの端末を動作させる方法とすることができる。
【0009】
事前定義された符号化レベルにチャネル情報の少なくとも一部を割り当てることで、検出確率、すなわちチャネル情報の送信の品質を制御することが可能になる。したがって、適切な符号化レベルを選択することで、たとえば、ネットワークの端末からネットワークの基地局にチャネル情報を転送する間でチャネル情報を歪めるリスクが減り、したがって、チャネル情報の送信の信頼性が改善される。また、適切な符号化レベルを選択することで、異なる妥当性のチャネル情報に優先順位を付けることが可能になる。たとえば、堅牢な符号化レベル(すなわち高い検出率)は、必要不可欠なチャネル情報に割り当てることができ、一方、それほど堅牢でない符号化レベルは、重要度が低いチャネル情報に選択される。
【0010】
一実施形態では、方法は、リンク適応のためにチャネル情報をチャネル情報の複数部分へと、これらの複数部分の重要度に従って細分化し、前記符号化レベルの1つを前記複数部分の少なくとも一部に割り当てるステップによって、チャネル情報を分類するステップを含む。前記複数部分は、リンク適応のためにそれらの重要度に関して互いに異なっていてもよい。たとえば、正しく機能するためにリンク適応にとって重要なチャネル情報の一部は、やや高い検出確率を有する符号化レベルに割り当てることができる。このチャネル情報の部分は、非常に信頼性をもって送信されることになる。信頼性をもって送信されるチャネル情報の重要部分は、信頼性が高いリンク適応につながる。
【0011】
好ましくは、方法は、チャネル情報の複数部分に複数の符号化レベルを割り当てるステップを含み、前記複数部分の少なくとも1つに割り当てられた符号化レベルの検出確率は、リンク適応に関して前記少なくとも一部より低い重要度を有する前記複数部分のその他の一部に割り当てられた符号化レベルの検出確率より高い。言い換えると、チャネル情報の部分は、異なる検出確率レベルを有する異なる符号化レベルをチャネル情報の部分に割り当てることによって、優先順位が付けられる。重要部分は、高い検出確率を有し、無線チャネルに高ノイズまたは強力な干渉がある場合でも、受信器によって再生成することができる。より重要度が低い部分は、重要部分より低い検出確率を有している。結果的に、受信器は、すべての状況においてより重要度が低い部分を検出することができない場合がある。しかし、より低い検出確率を有する符号化レベルを使用して、より重要度が低い部分を送信することで、消費される送信リソースを減らしながら、多くの場合、全体的なチャネル情報が改善される。このいわゆる「最善努力」の原理に従い、チャネル情報の重要部分は、全体的なチャネル情報の送信の効率に影響することなく、信頼性をもって送信することができる。
【0012】
一実施形態では、少なくとも1つの符号化レベルは、チャネル情報の少なくとも一部に静的に割り当てられる。しかし、他の実施形態では、この少なくとも1つの符号化レベルは、リンク適応のためにチャネル情報の少なくとも一部に、チャネル情報のこれらの一部の瞬間的な重要度に従って動的に割り当てられる。
【0013】
動的割当てが意味するのは、符号化レベルの割当ては、無線ネットワークの動作の間に自動的に変更されるということである。そのような動的変更は、チャネル情報の部分の重要度がどのように信号伝達されるかに基づいて、異なる時間尺度で実行することができる。これは、制御シグナリング、たとえばMACレイヤ制御シグナリング、無線リンク制御シグナリングの種々のレイヤで行うことができる。
【0014】
静的割当ては、重要度が一時的に一定であることを意味する。たとえば、変更は、ネットワークの動作および保守のパラメータを設定することによって行うことができる。
【0015】
一実施形態では、チャネル情報の前記複数部分の第1の部分は、無線チャネル全体に関係する広帯域情報を含み、チャネル情報の前記複数部分の第2の部分は、無線チャネルのサブバンドに関係するサブバンド情報を含み、第1の部分は、第2の部分よりリンク適応の重要度が高い。好ましくは、やや高い検出確率レベルを有する符号化レベルは、広帯域情報に割り当てられ、やや低い検出確率レベルを有する符号化レベルは、サブバンド情報に割り当てられ、前記低い検出確率レベルは、広帯域情報に割り当てられる検出確率レベルより低い。
【0016】
サブバンド・チャネル情報の重要度と比較して広帯域チャネル情報の重要度は、時間によって変わる場合がある。たとえば、周波数選択リソース割当てが周波数選択環境で実行される場合、広帯域チャネル情報は、サブバンド情報よりリンク適応に対する効果が低い。そのような場合、より高い検出確率を有する符号化レベルは、サブバンド情報に動的に割り当てることができるが、広帯域情報は、より低い検出確率の符号化レベルを受信する。ユーザが周波数選択環境を離れると、そのチャネルは平坦化(flatten)される。次に、サブバンド・チャネル情報の重要度が下がる。本発明の動的な実施形態は、上記の符号化レベルの割当てを逆転することによってこれを反映することができる。
【0017】
他の実施形態によると、チャネル情報は、粗情報および粗情報を精緻化するための精緻化情報を含み、粗情報は、チャネル情報の前記複数部分の一部に対応し、この一部は、精緻化情報に対応する前記複数部分の他の一部よりリンク適応に関して高い重要度を有する。たとえば、粗情報は、粗いプリコーディング・ベクトルを特徴付ける粗いプリコーディング・ベクトル情報であり、精緻化情報は、粗いプリコーディング・ベクトルに基づいて、細かい粒度のプリコーディング・ベクトルを決定するための精緻化プリコーディング情報である。プリコーディング・ベクトルは、無線チャネルを通じて送信される信号をプリコードするために、たとえば基地局など、ネットワークのネットワーク要素によって使用される好ましいプリコーディング重みを含むことができる。たとえば、粗いプリコーディング・ベクトル情報は、複数のプリコーディング・ベクトルを有する事前定義されたコードブックに格納されている好ましいプリコーディング・ベクトルを選択するためのインデックスでもよい。
【0018】
前の諸実施形態では、方法は、チャネル情報のみを送信する。他の実施形態では、方法は、前記マルチレベル符号化を使用してペイロード・データを送信するステップと、ペイロード・データおよびチャネル情報の少なくとも一部に別々の符号化レベルを割り当てるステップとを含む。言い換えると、少なくとも1つの符号化レベルは、ペイロードに割り当てることができ、少なくとも1つの別の符号化レベルは、チャネル情報に割り当てることができる。ペイロード・データは、特定の符号化レベルに対応する前記マルチビット系列の1つに対応することができる。ペイロード・データは、より高いプロトコル階層から受信されたデータ、またはより高いプロトコル階層に転送されるデータ、および/もしくはチャネル情報に関係ない制御データでもよい。例示的な実施形態では、第1の符号化レベルは全体的なチャネル情報に割り当てられ、第2の符号化レベルはペイロード情報に割り当てられる。
【0019】
チャネル情報、および/またはペイロードへの符号化レベルの割当ては静的でもよい。より高い検出確率を有する符号化レベルは、チャネル情報に割り当てることができる一方、より低い検出確率を有する符号化レベルは、ペイロード・データに割り当てられる。ペイロードの信頼性が高い送信がチャネル情報の信頼性が高い送信より重要な状況において、チャネル情報に割り当てられた符号化レベルは、ペイロード・データに割り当てられた符号化レベルより低い検出確率を有することができる。この割当ては、ペイロードの信頼性が高い送信がチャネル情報の信頼性が高い送信ほど重要でない状況で逆転することができる。
【0020】
たとえばチャネル情報およびペイロード・データなど、ビット系列に符号化レベルを静的に割り当てる代わりに、一実施形態では、符号化レベルは、ペイロード・データおよびチャネル情報の少なくとも一部に動的に割り当てられる。すなわち、ビット系列への符号化レベルの割当ては動的に変更される。この適応は、無線・チャネルの安定性に関して行うことができる。チャネルが一時的に不安定な場合(たとえば高いユーザ速度で)、チャネル情報は、時間によって変わりやすく、一時的な安定したチャネルを用いるよりも重要度が低い。一実施形態は、以下のようにこれを反映することができる。高速ユーザ(すなわち不安定なチャネル)について、高い検出確率を有する少なくとも1つの符号化レベルは、データに割り当てられる一方、より低い検出率の少なくとも1つの符号化レベルは、チャネル情報に割り当てられる。チャネル安定度が改善されると(たとえばより遅いユーザで)、この割当てが逆転される。
【0021】
好ましい実施形態では、マルチレベル符号化は、階層的な変調である。
【0022】
本発明の他の好ましい実施形態によると、無線ネットワークにおいて無線チャネルのリンク適応のためにチャネル情報を受信するための方法が提供され、方法は、マルチレベル復号を使用してチャネル情報を復号するステップであって、前記マルチレベル復号は、マルチビット系列を検出するステップを含み、各ビット系列は、前記マルチレベル復号の符号化レベルに対応する、ステップと、事前定義された符号化レベルに対応するビット系列に依存して、チャネル情報の少なくとも一部を決定するステップとを含む。
【0023】
一実施形態では、チャネル情報は、リンク適応のためにチャネル情報の複数部分へと、チャネル情報のこれらの複数部分の重要度に従って細分化され、チャネル情報の前記複数部分の第1の部分は、無線チャネル全体に関係する広帯域情報を含み、チャネル情報の前記複数部分の第2の部分は、無線チャネルのサブバンドに関係するサブバンド情報を含み、第1の部分は、第2の部分よりリンク適応に関して高い重要度を有している。
【0024】
好ましくは、チャネル情報は、リンク適応のためにチャネル情報の複数部分へと、チャネル情報のこれらの複数部分の重要度に従って細分化され、チャネル情報は、粗情報、好ましくは粗いプリコーディング・ベクトル情報、および粗いプリコーディング・ベクトルを特徴付ける粗情報を精緻化するための精緻化情報、好ましくは、粗いプリコーディング・ベクトルに基づいて、細かい粒度のプリコーディング・ベクトルを決定するための精緻化プリコーディング情報を含み、粗情報は、チャネル情報の前記複数部分の一部に対応し、この一部は、精緻化情報に対応する前記複数部分の他の一部よりリンク適応に関して高い重要度を有する。
【0025】
一実施形態では、方法は、前記マルチレベル符号化を使用して、ペイロード・データを受信するステップを含み、ペイロード・データは、チャネル情報の少なくとも一部への割り当てとは異なる符号化レベルに割り当てられる。
【0026】
本発明のさらに他の好ましい実施形態によると、無線ネットワークにおいて無線チャネルのリンク適応のためにチャネル情報を送信するための送信器要素が提供され、送信器要素は、マルチレベル符号化を使用してチャネル情報を符号化することであって、前記マルチレベル符号化は、マルチビット系列を結合させることを含み、各ビット系列は、前記マルチレベル符号化の符号化レベルに対応する、符号化することと、チャネル情報の少なくとも一部が、前記符号化レベルの1つのビット系列に対応するように、その符号化レベルをチャネル情報の少なくとも一部に割り当てることとを行うように構成されている。
【0027】
好ましくは、送信器は、本発明によるチャネル情報を送信するための方法を実行するように構成される。
【0028】
本発明のさらに他の好ましい実施形態によると、無線ネットワークにおいて無線チャネルのリンク適応のためにチャネル情報を受信するための受信器要素が提供され、受信器要素は、マルチレベル復号を使用して、チャネル情報を復号化することであって、前記マルチレベル復号は、マルチビット系列を検出することを含み、各ビット系列は、前記マルチレベル復号の符号化レベルに対応する、復号化することと、事前定義された符号化レベルに対応するビット系列に依存して、チャネル情報の少なくとも一部を決定することとを行うように構成されている。
【0029】
好ましくは、受信器要素は、本発明による方法を実行するように構成される。
【0030】
本発明の好適な実施形態および他の利点について図に示し、以下に詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0031】
図1】端末および基地局を含む無線通信ネットワークを示す図である。
図2図1のネットワークの無線伝送路を示すブロック図である。
図3】階層的変調方式の16QAMコンステレーションを示す図である。
図4】粗いプリコーディング・ベクトルおよび差動精緻化ベクトル(differential refining vector)を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0032】
記述および図面は、単に本発明の原理を示すものである。本明細書に明示的に記述して示していないが、本発明の原理を具体化し、その精神および範囲に含まれる様々な構成を当業者であれば考案できることが理解されるだろう。さらに、本明細書に詳述したすべての例は、原則として、本発明の原理、およびその技術を推進する発明者によって提供された概念を理解するのを支援するために、教育のみを目的とすることを明確に意図するものであり、そのような具体的に詳述された例および条件に限定しないものとして解釈するべきである。さらに、本明細書において、本発明の原理、態様、および実施形態を詳述するすべての記述、およびその特定の例は、その等価物を包含することを意図するものである。
【0033】
図1は、端末13および基地局15を含む無線通信ネットワーク11を示している。図示する実施形態において、ネットワーク11は、LTEまたはLTE−Advancedの通信システムである。LTEまたはLTE−Advancedでは、端末は、ユーザ装置(UE)とも呼ばれ、基地局は、拡張されたノードB(eNodeB)とも呼ばれる。しかし、本発明はLTEまたはLTE−Advancedに限定するものではない。他の実施形態では、ネットワーク11は、UMTSまたはWiMAXのアクセス・ネットワークの一部またはWLANもしくはWSNの一部でさえある。
【0034】
端末13は、チャネル符号器および/または変調器19(符号器19とも呼ばれる)と、送信器21(チャネル符号器19の出力は、送信器21の入力に接続される)とを有する第1の送受信器17を備え、送信器21の出力は、端末13のアンテナに結合されている。
【0035】
基地局は、受信器25と、チャネル復号器および/または復調器27(復号器27とも呼ばれる)とを備える第2の送受信器23を有する。受信器25は、基地局15のアンテナに結合され、受信器25の出力は、チャネル復号器27の入力に接続される。
【0036】
第1の送受信器、アップリンク無線チャネル29、および第2の送受信器23は、アップリンク伝送路31の一部である。第2の送受信器23は、第1の送受信器17の受信器に、ダウンリンク無線チャネル33を通じて送信するための送信器を有している。簡潔にするために、第2の送受信器23の送信器と第1の送受信器17の受信器の両方を図示しない。
【0037】
ネットワーク11を動作させる場合、チャネル情報CIは、符号器19によって符号化および/または変調される。符号器19は、送信器21によってアップリンク無線チャネル29を通じて送信される信号sを生成する。信号sは、符号器19によって生成され、チャネル情報CIを含むコードワードcを含むことができる。受信器25は、送信された信号を受信し、受信されたコードワードc’を含む受信された信号s’を復号器27に転送する。復号器27は、チャネル情報CIを再生成する。
【0038】
チャネル情報CIは、多くの場合、チャネル状態情報(CSI)と呼ばれる。LTEでは、チャネル情報は、2ビットのサイズを有することができるプリコーディング行列インジケータ(PMI)、および/または5ビットのサイズを有することができるチャネル品質情報(CQI)を含むことができる。CQIは、典型的には、無線チャネルの特性だけでなく(チャネル利得)、受信されるノイズおよび干渉のレベルも含むため、SINR(信号対干渉雑音比)にも関係する。コードワードcは、約1000から2000ビットのサイズを有することができる。ここで、コードワードcは、14の直交周波数分割多重(OFDM)シンボルを含む無線フレームを通じて送信され、全体的なコードワードの送信は1ミリ秒かかる。WiMAXでは、コードワードは、20ミリ秒の持続時間を有するフレーム内で送信することができる。チャネル情報CIは、ダウンリンク無線チャネル33を通じた送信のリンク適応のために基地局15によって使用することができる。端末13は、ダウンリンク無線チャネル33の測定されたチャネル品質に依存してチャネル情報CIを決定し、基地局15にチャネル情報CIを通信する。次に、基地局15は、たとえば、端末13から受信されたPMIによりプリコーディング行列を選択することによって、かつ/または端末13から受信されたCQIに依存して、変調および/または符号体系を選択することによって、ダウンリンク送信を適応させることができる。チャネル情報の送信は、周波数分割多重(FDD)を使用するシステムなど、アップリンク無線チャネル29およびダウンリンク無線チャネル33の特性が互いに異なるシステムにおいて特に効果的である。しかし、本発明はFDDシステムに限定されず、本発明は、また、相互的でないチャネル条件の下で時分割二重化(TDD)を使用するシステムに関しても使用することができる。TDDまたは他の二重通信方式でも、そのような条件は、高速フェージングまたは干渉によって引き起こされる場合がある。
【0039】
一実施形態では、信号sおよびコードワードcは、チャネル情報CIのみを含み、すなわち、チャネル情報CIだけが符号器19によって符号化される。他の実施形態では、データ系列dは、チャネル情報CIとともに伝送路31を通じて送信される。この実施形態では、符号器19は、チャネル情報CIだけでなくデータ系列dも符号化する。その結果、信号sおよびコードワードcは、チャネル情報CIおよびデータ系列dによって表されるペイロード・データの両方を含む。この実施形態では、復号器27は、チャネル情報CIおよびデータ系列dを再生成する。
【0040】
図2は、伝送路31の第1の好ましい実施形態をより詳細に示している。伝送路31は、符号器19を含む送信器要素35を有している。符号器19は、優先付け要素37およびマッパー39を含む。さらに、伝送路31は、復号器27を含む受信器要素41を有する。アップリンク無線チャネル29は、送信器要素35と受信器要素41との間に配置される。この実施形態では、ダウンリンク・チャネルに対応するチャネル情報CIは、アップリンク方向に、すなわち、アップリンク無線チャネル29を通じて送信される。その理由は、多くの無線ネットワークでは、チャネル情報CIが端末13から基地局15に送信されることを必要とするからである。しかし、他の実施形態では、送信は、ダウンリンク方向に実行される。すなわち、アップリンク・チャネルを特徴付けるために、ダウンリンク無線チャネル33は、送信器要素35と受信器要素41との間に配置される。図示する実施形態において、送信器要素35は、端末13の一部であり、受信器要素41は、基地局15の一部である。他の実施形態では、基地局15は、送信器要素35を含み、端末は、受信器要素41を含む。
【0041】
伝送路31を動作させる場合、チャネル情報CIは、チャネル情報の複数部分ci、ciへと細分化される。個別の部分ci、ciは、優先付け要素37に供給される。優先付け要素37は、この個別の部分にマルチレベル符号の符号化レベル0、…、nを割り当てることによって、チャネル情報CIを分類する。符号化レベル0、…、nは、基地局15によって実行されたリンク適応ために、これらの部分ci、ciの重要度に従って部分ci、ciに割り当てられる。各符号化レベル0、…、nについて、優先付け要素37は、ビット系列c、c、…、cを生成する。各生成されたビット系列c、c、…、cは、そのビット系列c、c、…、cの符号化レベルが割り当てられたチャネル情報CIの部分ci、ciに対応する。各符号化レベル0、…、nは、検出確率レベルp、p、…、pに対応する。図示する実施形態において、所与のインデックスiを有するチャネル情報CIの一部ci(i=1)、…、nは、j>iであるその他の一部の検出確率レベルpより高い検出確率レベルpを有する。pがビット系列cの検出確率レベルである場合、条件p>p>…>pが維持される。
【0042】
一実施形態では、i<jのときかつそのときに限り、部分ciが部分ciよりリンク適応に関してより重要であるように、チャネル情報CIは細分化することができる。この実施形態では、符号化レベルiは、部分ciがビット系列cに対応するように、部分ciに割り当てることができる。
【0043】
検出確率レベルp、p、…、pに関する上記の条件が維持するように、マッパー39は、チャネル情報CIのビット系列c、c、…、cを変調シンボルにマッピングする。そのため、マッパー39は、たとえばマッピング・テーブルなど、マッピング情報mを生成する。無線信号は、マッピング情報mに依存して生成され、アップリンク無線チャネル29を通じて受信器要素41に送信される。
【0044】
復号器27は、受信された信号を復号し、ビット系列c、c、…、cおよびチャネル情報CIの部分ci、ciを再生成する。再生成されたビット系列は、c’、c’、c’と呼ばれる。送信エラーの場合には、復号器27は、チャネル情報CIのビット系列c、c、…、cを正しく再生成することができない場合がある。特定のビット系列cが正しく再生成される確率c=c’は、チャネル情報CIのそのビット系列cの検出確率レベルpによって特徴付けられる。図示した実施形態において、したがって、ビット系列cは、他のビット系列c、…、cより信頼性をもって送信される。したがって、優先付け要素37は、低いインデックスi=1、…、nを有するビット系列c、c、…、cが、やや高いインデックスj<iを有するこれらのビット系列c、c、…、cより重要な部分ci、ciチャネル情報CIを含むように構成される。これは、チャネル情報CIの重要部分は、復号器27によってかなり信頼性をもって再生成されるため、フェージング、ノイズ、および干渉が存在する場合でも、CIのそれらの重要部分については、送信エラーの可能性は低く維持できるという効果がある。
【0045】
結果として、アップリンク無線チャネル29を介してCIの送信の間に、強力なノイズおよび/または強い干渉下にある場合にも、リンク適応のパフォーマンスは、大きく低下しない。単に、チャネル情報CIの重要部分は高い検出確率レベルを有し、残りの部分は比較的低い検出確率レベルを有しているため、チャネル情報CIは、効率的に、すなわち、アップリンク無線チャネル29の無線送信リソースの消費を低く抑えて送信される。
【0046】
図3は、階層的変調を使用する16QAMシンボル・コンステレーションに対する2ビット系列c、cの例示的なマッピングを示している。図3では、2つの符号化レベルを用いる階層的変調が使用される。しかし、本発明は、特別なタイプのマルチレベル符号化である階層的変調にも、特定数の符号化レベルにも限定されない。本発明は、任意のタイプのマルチレベル順方向誤り修正(FEC)コードを適用することができる。
【0047】
最高の優先度を有する第1のビット系列cは、階層的変調方式の外部シンボル43にマッピングされる。
【0048】
低い優先度を有する第2のビット系列cは、内部シンボル45にマッピングされる。他の実施形態では、2階層レベルを超える階層的変調が使用され、2ビット系列c、cを超えて提供することができる。
【0049】
第1の実施形態では、高い検出確率レベルを有する高い優先度は、ダウンリンク無線チャネル33に関する広帯域チャネル情報に割り当てられる。広帯域情報は、このようにチャネル情報CIの第1の部分ciである。広帯域情報は、無線チャネル全体に関係する。より低い検出確率レベルを有するより低い優先度は、その無線チャネルの特定のサブバンドに特有のサブバンド情報に割り当てられる。すなわち、サブバンド情報は、チャネル情報CIの第2の部分ciである。チャネル情報は、プリコーディング行列インジケータ(PMI)および/またはチャネル品質インジケータ(CQI)を含むことができる。PMIおよびCQIの両方は、チャネル(広帯域PMI、広帯域CQI)全体またはチャネルの特定のサブバンド(サブバンドPMI、サブバンドCQI)に関係することができる。ビット系列に対するチャネル情報CIのこれらの部分の例示的なマッピングは、以下の表に示している。
【0050】
【表1】
【0051】
一実施形態では、閉ループ多入力多出力(MIMO)の形のリンク適応が、ダウンリンク無線チャネル33を通じてダウンリンク送信のために実行される。正確な閉ループMIMO動作のために、少なくとも全体的な周波数帯(すなわち広帯域PMI)の好ましいプリコーディング重みを知り、無線チャネル33についていくらかの大まかな情報を与えることが重要である。さらに、基地局15が適切な変調および符号体系を選択し、スケジュール優先度を決定できるように、少なくとも全体的な帯域(広帯域CQI)を通じて平均されたチャネル品質情報を送信することができる。この広帯域情報は、閉ループMIMOを実行するための最小量の必要な情報を表しているため、広帯域情報は、アップリンク無線チャネル29を通じて高い検出確率レベルで送信される。図3に示すような階層的変調を使用する場合、この種の情報は、外部シンボル階層(外部シンボル43)にマッピングすることができる。
【0052】
広帯域情報の精緻化は、MIMO伝送の周波数選択の最適化に使用することができる。この精緻化は、より低い検出確率レベルに対応する、より低い符号化レベルを使用して送信される。LTEを使用する場合、無線送信リソースは、物理リソース・ブロック(PRB)と呼ばれる時間周波数ブロックへとグループ化される。1組の連続するPRBは、ダウンリンク無線チャネル33のサブバンドに対応する。サブバンドPMIおよび/またはサブバンドCQIは、1つまたは複数のサブバンド、すなわちPRBの1つまたは複数の組に関係するダウンリンク無線チャネル33に関する追加情報を与えることができる。より重要度が低い精緻化情報であるサブバンド情報は、階層的変調を使用する場合、好ましくは、内部シンボル階層(内部シンボル45)で送信される。このサブバンド情報(サブバンドPMI、サブバンドCQI)は、広帯域情報に関して違いを示す、差異情報(デルタCQI、デルタPMI)として表すことができる。
【0053】
第2の例示的な実施形態によると、チャネル情報CIは、事前定義されたコードブックに格納されているプリコーディング・ベクトルのインデックスの形をしている少なくとも1つのPMIを含むことができる。符号化レベルは、粗い粒度のプリコーディング・ベクトルおよび細かい粒度のプリコーディング・ベクトルに、それぞれ割り当てることができる。下記の表に示すように、粗いコードブックに格納されているベクトルへのインデックスは、高い検出確率レベルを有する符号化レベルに割り当てることができる。より低い検出確率を有する符号化レベルは、粗いコードブックに関連する可能性がある精緻化情報の送信に使用することができる。
【0054】
【表2】
【0055】
この手法を図4に図示している。図4の略図は、プリコーディング・ベクトルのベクトル空間を示している。粗いコードブックに格納されている粗いプリコーディング・ベクトル51は、第1の複雑な超球53に及ぶ。通常、これらのコードブック・ベクトルは、複雑な超球上の点を表している。粗いコードブックは、複雑な超球53にグラスマニアン・ライン・パッキングによって形成することができる。図示する実施形態において、粗いコードブックは、4つのプリコーディング・ベクトル51を有する。したがって、検出確率で送信されたPMIは、これら4つの粗いプリコーディング・ベクトル51の1つを識別するために2ビットを含む。図4において、粗いプリコーディング・ベクトル51aは、伝送路31を通じて送信されたPMIによって選択されている。
【0056】
より低い検出確率を有する符号化レベルを使用して送信された精緻化情報は、選択された粗いプリコーディング・ベクトル51aに依存して、結果として生じるプリコーディング・ベクトル57を決定するために使用できる差分ベクトル55を特徴付ける。図示する実施形態において、複数の差分ベクトル55は、精緻化コードブックに格納することができ、精緻化情報は、これらの差分ベクトル55の1つに対するインデックスを含むことができる。図4に示すように、差分ベクトル55は、たとえば個々の粗いプリコーディング・ベクトル周りの球形キャップの境界または内部の値に指し示すことによって、粗いコードブックを精緻化する。
【0057】
図示する実施形態において、4つの差分ベクトル55が精緻化コードブックに格納される。したがって、精緻化情報は、選択された差分ベクトル55aとして、これらの差分ベクトル55の1つを選択するために2ビットを含む。結果として生じるプリコーディング・ベクトル57は、たとえば、選択された粗いプリコーディング・ベクトル51aおよび選択された差分ベクトル55aを追加することによって、選択された粗いプリコーディング・ベクトル51aおよび選択された差分ベクトル55aに依存して決定される。
【0058】
送信エラーの場合には、復号器27は、差分ベクトル55を選択するための精緻化情報を復号することができない場合がある。しかし、高い検出確率を有する粗情報は、いずれにしても復号することができる。したがって、リンク適応は、選択された粗いプリコーディング・ベクトル51aによって表される粗情報に基づいて実行することができる。単に粗情報に依存する場合、リンク適応がまだ比較的良好に機能しているという意味で、精緻化情報はオプションである。階層的変調を使用する場合、粗いプリコーディング・ベクトル情報に対応するビット系列cは、外部シンボル43にマッピングすることができ、精緻化情報に対応するビット系列cは、内部シンボル45にマッピングすることができる(図3参照)。
【0059】
他の実施形態では、4つを超える符号化レベルが使用される。特に、プリコーディング・ベクトル57をさらに精緻化するために、追加の階層レベルを追加することができる。
【0060】
第3の実施形態によると、チャネル情報CIは、データ系列dと組み合わせられる(図2参照)。下に示したデータ系列dおよびチャネル情報CIへの符号化レベルの例示的な割当てによると、粗いコードブックの粗いプリコーディング・ベクトル51へのインデックスおよびデータ系列dは、符号器19を使用して同時に送信される。高い検出確率レベルpを有する符号化レベルは、チャネル情報に割り当てられる(たとえば、粗いプリコーディング・ベクトル)。低い検出確率レベルp<pを有する符号化レベルは、ペイロード系列dに割り当てられる。
【0061】
【表3】
【0062】
階層的変調を使用する場合、粗いプリコーディング・ベクトル情報に対応するビット系列cは、外部シンボル43にマッピングすることができ、ペイロード系列dに対応するビット系列cは、内部シンボル45にマッピングすることができる(図3参照)。CIがデータより重要度が低い場合、たとえば無線・チャネルが一時的に安定しておらず、正確なCT測定ができそうにない場合、このマッピングは逆転することができる。これらの場合、dはcに、ciはcにマッピングされる。チャネルの安定度が変わった場合、たとえば、移動しているユーザが速度を落とした場合、代替マッピング間の適応も可能であるため、一時的により安定したチャネルが得られる。
【0063】
一実施形態では、アップリンク無線チャネル29を通じたデータ送信がダウンリンク無線チャネル33のリンク適応のパフォーマンスより重要な場合、上に示したビット系列c、cへの符号化レベルの割当ては、動的に逆転することができる。これら2つのマッピングを繰り返しまたは定期的に切り替えることによって、伝送路31を動作させながら、チャネル情報CIおよびデータ系列dに動的に優先順位を付けることができる。たとえば、データ系列dの送信に優先順位を付けるために、大部分の送信時間に対して逆転されている間に、正確なチャネル情報CIを提供するために、上記の表に示すマッピングを時には使用して、フレーミング方式を確立することができる。
【0064】
同じ符号器19を使用してチャネル情報CIおよびデータ系列dを同時に送信することで、同じ時に復号器27によって受信された1つのコードワードから、チャネル情報CIおよびデータ系列dを再生成することが可能になる。そのような同時受信により、チャネル情報CIの送信の遅延が減る。結果として、アップリンク無線チャネル29の時間によって変わるシャドウイング、フェージング、および/または干渉のために古くなったチャネル情報CIを使用することによる不完全なリンク適応のリスクが減る。
【0065】
簡単に例示するために、上記の実施形態では、2つの符号化レベルしか使用しない。階層的変調は、例示的なタイプのマルチレベル符号化である。他の実施形態では、2つを超える符号化レベルが使用され、他のタイプのマルチレベル符号化、特にマルチレベル順方向誤り修正コード(FECコード)が適用される。さらに、上記の実施形態は、互いに組み合わせることができる。たとえば、3つのレベルを使用する場合、粗いプリコーディング・ベクトル51へのインデックス、差分ベクトル55へのインデックス、およびデータ系列dを同時に送信することができる。データ系列dは、また、広帯域PMIで、広帯域CQIで、サブバンドPMIで、および/またはサブバンドCQIで同時に送信することができる。さらに、別々の符号化レベルを使用して、広帯域情報、サブバンド情報、粗いプリコーディング・ベクトル51へのインデックス、および/または粗いプリコーディング・ベクトル51に関する精緻化情報を同時に送信することができる。
【0066】
まとめると、マルチレベル符号化を使用することで、チャネル情報の重要部分を信頼性をもって送信し、小さな追加のオーバヘッドで精緻化チャネル情報CIを送信することが可能になる。さらに、現在のチャネル状況にCIの別の部分の検出確率を動的に適応させることができる。精緻化情報および/またはサブバンド情報は、広帯域情報および/または粗情報を送信するためにシンボルおよび/またはコード・スペースに組み込むことができるため、基地局13のスケジューラによって、アップリンクに追加的な複数のアクセス・リソースを割り当てる必要はない。チャネル情報を報告するために異なるモード間の切替え、たとえば、チャネル情報CIの部分c、c、…、cと、符号化レベルへのデータ系列dの異なるマッピング間の切替えは、追加の制御信号なく実行することができる。さらに、精緻化されたチャネル情報(サブバンド情報および/または精緻化情報)は、追加的な遅延なく送信できるので、リンク適応の全体的な遅延を減らすことができる。したがって、チャネル情報は、マルチレベル符号化を使用することによって、より正確かつ/または信頼性をもって送信することができる。
【0067】
「プロセッサ」と書かれた任意の機能ブロックを含む、図に示す様々な要素の機能は、専用ハードウェア、および適切なソフトウェアと連携してソフトウェアを実行する機能を有するハードウェアの利用を通じて提供することができる。プロセッサによって提供される場合、機能は、単一の専用プロセッサによって、単一の共有プロセッサによって、または一部は共有できる複数の個々のプロセッサによって提供することができる。さらに、「プロセッサ」または「コントローラ」という用語の明示的な使用は、ソフトウェアを実行できるハードウェアを排他的に指すものと解釈するべきではなく、デジタル・シグナル・プロセッサ(DSP)ハードウェア、ネットワーク・プロセッサ、特定用途向け集積回路(ASIC)、フィールド・プログラマブル・ゲート・アレイ(FPGA)、ソフトウェアを格納するための読取り専用メモリ(ROM)、ランダム・アクセス・メモリ(RAM)、および不揮発性記憶装置を限定することなく、暗黙的に含むことができる。従来型および/またはカスタムの他のハードウェアも含むことができる。同様に、図に示すすべてのスイッチは概念のみを示すものである。それらの機能は、プログラム・ロジックの動作を通じて、専用ロジックを通じて、プログラム制御および専用ロジックの対話を通じて、または手動でも、実行することができ、文脈からより明確に理解されるように、特定の技術を実装者が選択可能である。
【0068】
本明細書に示す任意のブロック図は、本発明の原理を具体化する実例となる回路についての概念的な視点を表していることは当業者には自明であろう。同様に、そのようなコンピュータまたはプロセッサが明示的に示されているかどうかに関わりなく、任意のフローチャート、流れ図、状態遷移図、擬似コードなどは、コンピュータ可読媒体において本質的に表され、したがって、コンピュータまたはプロセッサによって実行できる様々なプロセスを表していることを理解されるだろう。
【0069】
当業者は、プログラムされたコンピュータによって様々な上記方法のステップを実行することができることを容易に認識するだろう。本明細書において、一部の実施形態は、また、機械またはコンピュータで読取り可能およびエンコード装置で実行可能またはコンピュータで実行可能なプログラム命令である、たとえば、デジタル・データ記憶メディアなど、プログラム記憶装置を包含することを意図するものであり、前記命令は、前記上述した方法のステップの一部またはすべてを実行する。プログラム記憶装置は、たとえば、デジタル・メモリ、磁気ディスクや磁気テープなどの磁気記憶メディア、ハード・ドライブ、または光学的に読取り可能なデジタル・データ記憶メディアなどでもよい。また、実施形態は、上術した方法の前記ステップを実行するようにプログラムされたコンピュータを包含することを意図するものである。
図1
図2
図3
図4