【実施例】
【0204】
以下、本発明の効果を明確にするために行った実施例について説明する。なお、本発明は、以下の実施例によって何ら限定されるものではない。
【0205】
(第1の実施の形態)
第1の実施の形態に関する実施例1〜25について説明する。
【0206】
まず、実施例1〜25における評価方法について説明する。
(積層体Aの作製)
実施例又は比較例の樹脂組成物を溶媒に溶解した樹脂組成物溶液を、12μm厚の電解銅箔(F2−WS)(古河電工社製)のマット面にバーコータを用いて塗布し、室温で5分間〜10分間レベリングを行った。この樹脂組成物溶液を塗布した銅箔を、常圧乾燥法及び減圧乾燥法により順次乾燥して、25μmの厚みの樹脂組成物層が銅箔上に積層された積層体Aを得た。なお、常圧乾燥法は、熱風オーブン(SPHH−10l)(ESPEC社製)にて95℃で15分間加熱して行った。また、減圧乾燥法は、真空乾燥器(DRR420DA)(ADVANTEC社製)、及び、ベルト駆動型油回転真空ポンプ(TSW−150)(佐藤真空社製)を用い、90℃にて30分間真空乾燥(約6.7×10
−2Paの減圧下)して行った。
【0207】
(評価A:アルカリ溶解速度及び速度比)
A−1:硬化前のアルカリ溶解速度
積層体Aを、そのまま及び熱風オーブン(SPHH−10l)(ESPEC社製)にて90℃で10分の加熱処理を施した。その後、積層体Aの樹脂面に、4
5℃にて3質量%水酸化ナトリウム水溶液を0.18MPaでスプレー噴霧し、樹脂が溶解又は膨潤剥離する時間を測定して求めた減膜速度により評価した。評価後のサンプルは10倍の実体顕微鏡観察にて銅の表面を観察し、樹脂組成物の薄い被膜が導体表面に残存しているか確認した。もし被膜が残存していた場合、再度評価を実施し、サンプルの膜厚を被膜が完全に除去できるまでの時間で除して、アルカリ溶解速度を算出した。1000秒間スプレーしても被膜が完全に除去できない場合「被膜あり」と記載した。
【0208】
A−2:アルカリ溶解速度比
90℃、10分の熱履歴後におけるアルカリ溶解速度比は、熱履歴前の樹脂組成物のアルカリ溶解速度を1として算出した。
【0209】
A−3:硬化後のアルカリ溶解速度
また、樹脂硬化物層のアルカリ溶解速度に関しては、積層体Aに熱風オーブン(SPHH−10l)(ESPEC社製)にて180℃で60分の加熱処理を施し、得られた樹脂硬化物層を有する積層体に関して、1000秒間アルカリでスプレー後に樹脂硬化物層を100℃、30分乾燥させてから膜厚を測定し、スプレー前後の減膜量を1000で除して算出した。
【0210】
(評価B:熱重量分析(TG))
PETフィルム(N152Q)(帝人デュポンフィルム社製)を真空吸着及び加熱できる塗工台(マツキ科学社製)上に敷き、真空吸着により貼り付けた後、ギャップが125μmのアプリケーター(マツキ科学社製)を用いて、このPET上に実施例又は比較例の樹脂組成物溶液を塗布した。その後、積層体Aの作製と同様の常圧乾燥法及び減圧乾燥法により、一定時間脱溶媒を行った。さらに、得られた積層体に対して、熱風オーブン(SPHH−10l)(ESPEC社製)を用いて、80℃で2時間、脱湿乾燥を実施した。この後、得られた樹脂組成物の膜をPETフィルム上から引き剥がした。この樹脂組成物の膜について、示差熱熱重量同時測定装置(TG/DTA6200)(エスアイアイ・ナノテクノロジー社製)を用いて、大気中で40℃から10℃/分の速度で300℃まで昇温し、40℃の際の重量を100%とした場合の、260℃における重量減少率を測定した。
【0211】
(評価C:ブリードアウトの評価)
積層体Aを、熱風オーブン(SPHH−10l)(ESPEC社製)により、180℃、60分の条件で熱硬化し、樹脂硬化物層を有する積層体を得た。これを縦250mm×横250mmに切り出し、樹脂硬化物層の表面を純水で洗浄し、水滴をガーゼで拭き取った後、フィルムを秤量(W1)した。これを40℃の恒温槽に入れ、2週間放置し、ブリードアウトした可塑剤をウェスで拭き取って、フィルムを秤量(W2)した。経時前後の質量から、ブリードアウト量を次式(1)により算出した。
式(1)
ブリードアウト量(%)=(W1−W2)/W1×16
【0212】
(評価D:はんだ耐性の評価)
積層体Aの樹脂面と銅箔のマット面とを140℃にて2分、4MPaの条件で真空プレスにより積層し、次いで熱風オーブン(SPHH−10l)(ESPEC社製)にて180℃、60分間加熱したものを、はんだ耐性の評価用の試料とした。
【0213】
はんだ耐性は、JPCA−BM02規格に準じ、3cm×3cmに切断した上記試料をハンダ浴に260℃で10秒間浸漬する試験により評価した。500倍の顕微鏡で観察し、膜表面に膨れなどの異常が全く見られなかった場合を◎とし、一部に膨れなどの異常が見られたが、2mm□以上の膨れが見られなかった場合を○とし、2mm□以上の膨れが見られた場合を×とした。なお、ここでの膨れとは、上記のハンダ浴浸漬をした後に見られた、硬化膜表面の5μm以上の盛り上がりを指す。
【0214】
(評価E:屈曲性の評価)
積層体Aの樹脂面と銅箔のマット面とを140℃にて2分、4MPaの条件で真空プレスにより積層し、次いで熱風オーブン(SPHH−10l)(ESPEC社製)にて180℃、60分間加熱したものを屈曲性評価用の試料とした。
【0215】
屈曲性は、上記試料を180度に折り曲げ、加重500g/(cm×cm)を5分間加えた後に元に戻し、さらに同様の折り曲げを計5回行う試験により評価した。5回行った後でも、クラックや割れなどの異常が見られなかった場合を◎とし、3回目〜5回目の間に異常が見られた場合を○とし、2回目で異常が見られた場合を△とし、1回目から異常が見られた場合を×とした。
【0216】
(評価F:スルーホール埋め込み性の評価)
あらかじめ、銅箔厚み12μm、絶縁性樹脂層厚み20μmの両面フレキシブル配線基板(エスパネックス(登録商標)M)(新日鉄化学社製)に直径100μmのスルーホールを穴あけし、15μm厚のスルーホールめっきを施したものを準備した(スルーホールのアスペクト比=1.1)。
【0217】
このスルーホールを有する基材の両面に積層体Aを、積層体Aの樹脂面を基材に接する向きに配置し、140℃にて2分、4MPaの条件で真空プレスにより、積層した。その後、得られた積層体を、スルーホール部近傍をはさみでカットし、耐水研磨紙(荒削り:#600及び本削り:#1200)でスルーホール部の断面が観察できるまで研磨し、スルーホール断面を10穴観察して、埋め込み性について下記基準に基づいて評価した。
【0218】
[評価基準]
◎:10穴ともスルーホールが完全に埋め込まれ、ボイドが認められなかった。
○:10穴中1穴において、断面積の10%未満のボイドが認められた。
△:10穴中1穴において、断面積の10%以上のボイドが認められた。又は、10穴中2穴において、断面積の10%未満のボイドが認められた。
×:10穴中2穴以上において、断面積の10%以上のボイドが認められた。又は、10穴中3穴以上にボイドが確認された。
【0219】
(評価G:絶縁信頼性評価(イオンマイグレーション試験))
絶縁信頼性評価は、以下のように実施した。実施例又は比較例の樹脂組成物溶液をPETフィルムに塗布し、熱風オーブン(SPHH−10l)(ESPEC社製)にて大気中90℃で30分間溶媒乾燥を行った。得られた樹脂組成物層付のPETフィルムをラインアンドスペースが20μm/20μmのくし型基板上に、真空プレス機(北川精機社製)にて、100℃、1.0MPaで1分間加圧し、PETフィルムを引きはがした後に熱風オーブン(SPHH−10l)(ESPEC社製)にて、180℃で60分間加熱硬化して、樹脂硬化物層を有する基板を得た。基板にマイグレーションテスタのケーブルをはんだ付けし、下記条件にて絶縁信頼性試験を行った。
【0220】
絶縁劣化評価システム:SIR−12(楠本化成社製)
恒温恒湿チャンバー:SH−641(エスペック社製)
温度:85℃
湿度:85%
印加電圧:20V
印加時間:1000時間
【0221】
絶縁抵抗値が1.0×10
6Ω未満の場合を×とし、1.0×10
6Ω以上1.0×10
8Ω未満の場合を△とし、1.0×10
8Ω以上1.0×10
9Ω未満の場合を○とし、1.0×10
9Ω以上の場合を◎とした。
【0222】
(評価H:密着性:銅箔と樹脂硬化物層のピール強度)
実施例又は比較例の樹脂組成物溶液を、12μm厚の電解銅箔(F2−WS)(古河電工社製)上にバーコータを用いて塗布し、その後95℃に加温されたオーブン中で15分間加熱し、その後95℃で30分間真空乾燥して溶媒を除去して、外層材となる25μmの厚みの樹脂組成物層を有する樹脂付き銅箔を得た。この樹脂付き銅箔の樹脂組成物層側を、銅箔厚み12μm、絶縁性樹脂層厚み20μmの片面フレキシブル配線基板(エスパネックス(登録商標)M)(新日鉄化学社製)の銅箔上に重ねて置き、さらに両面から離形用フィルムで挟んだ積層体を準備した。
【0223】
また、銅箔厚み12μm、絶縁性樹脂層厚み20μmの両面フレキシブル配線基板(エスパネックス(登録商標)M)(新日鉄化学社製)を用意し、3%塩酸水溶液で酸洗浄した。この両面フレキシブル配線基板の一方の導電層上に、前述の積層体の樹脂組成物層を真空プレス機(北川精機社製)にて、100〜120℃、1.0MPaで1〜2分間加圧して積層した。これを40℃の恒温槽に入れ、2週間放置した。得られた多層フレキシブル配線板を、以下で説明する評価に用いた。
【0224】
ピール強度の測定法はJIS C6471規格に準じて行った。多層フレキシブル配線板を長さ15cm×幅2.5cmの大きさに切断した。得られた試験片に対し、マスキングテープを用いて、両面フレキシブル配線基板側の表面に2.5cm幅のマスキングを行い、一方、積層体側の表面に中心幅1cmのマスキングを行い、塩化第二鉄溶液を用いて銅箔をエッチングした。エッチングした試験片を乾燥器105℃にて1時間放置し乾燥させた。その後、試験片を、厚み3mmのFR−4基板に両面粘着テープにて取り付けた。試験片の積層体側の表面の銅箔の一部を幅1cmで樹脂組成物層との界面で引剥がし、引きはがした銅箔の一部に掴み代としてのアルミ製テープに張りつけて、試料を作製した。
【0225】
得られた試料を引っ張り試験機(島津製作所社製、オートグラフAG−10KNI)に固定した。固定する際、確実に90°の方向に引き剥がすために試料に治具をとりつけた。約50mm/分の速度にて50mm引き剥がした際の荷重を測定し、1mmあたりの接着強度として算出した。ピール強度が0.7N/mm以上の場合を◎、0.5N/mm以上0.7N/mm未満の場合を○、0.2N/mm以上0.5N/mm未満の場合を△、0.2N/mm未満の場合を×とした。
【0226】
(評価I:アルカリ加工性)
絶縁層の厚さ25μm、導電層が12μm厚の電解銅箔(F2−WS)(古河電工社製)の両面フレキシブル基板(エスパネックス(登録商標)M)(新日鉄化学社製)を用意した。この両面フレキシブル基板を3%塩酸水溶液で酸洗浄した。その後、両面フレキシブル基板の一方の導電層上に、積層体Aの樹脂組成物層を真空プレス機(北川精機社製)にて、100〜120℃、1.0MPaで1〜2分間加圧して積層した。
【0227】
次に、積層体Aの導電層上にドライフィルムレジスト(サンフォート(登録商標)AQ2578)(旭化成イーマテリアルズ社製)をラミネートし、500μmφの円孔パターンを形成した後、塩化第二鉄エッチング液で円孔形成部の導電層をエッチング除去した。
【0228】
その後、50℃に加温した3質量%の水酸化ナトリウム水溶液を樹脂組成物層に圧力0.18MPaでスプレーし、その後、20℃のイオン交換水にて圧力0.20MPaで2分間スプレーしてビアホールを形成した。40μmの厚みの樹脂組成物層を3分以内のアルカリスプレー時間で除去でき、ビアホールの底に両面フレキシブル基板の導電層が完全に露出した場合を○とし、3分のスプレー時間ではビアホールの底に樹脂組成物層が残存した場合を×とした。
【0229】
[ポリイミドAの合成例]
三口セパラブルフラスコに窒素導入管、温度計、水分分離トラップを備えた玉付冷却管を取り付けた。オイルバス80℃で、N−メチル−2−ピロリドン(NMP)120.4g、トルエン45g、4,4’−オキシジフタル酸二無水物(ODPA)21.5gを入れ均一になるまで攪拌した。さらに、シリコーンジアミン(KF−8010、信越化学社製)21.1g、3,3’−ジアミノビフェニル−4,4’−ジオール(HAB)9gを少しずつ添加した後、180℃まで昇温し、2時間加熱した。反応中に副生する水は、トルエン還流下、トルエンとの共沸脱水により反応系内から除去した。水分分離トラップから副生した水を抜いた後、還流を止めてトルエンを除去して室温まで冷却した。次に生成物を5μmのフィルターで加圧ろ過することでポリイミドAワニスを得た。重量平均分子量は4.2万であった。
【0230】
[ポリイミドBの合成例]
三口セパラブルフラスコに窒素導入管、温度計、水分分離トラップを備えた玉付冷却管を取り付けた。オイルバス80℃で、N−メチル−2−ピロリドン(NMP)117g、トルエン45g、4,4’−オキシジフタル酸二無水物(ODPA)21.5gを入れ均一になるまで攪拌した。さらに、シリコーンジアミン(KF−8010、信越化学社製)20g、3,3’−ジアミノビフェニル−4,4’−ジオール(HAB)8.5gを少しずつ添加した後、180℃まで昇温し、2時間加熱した。反応中に副生する水は、トルエン還流下、トルエンとの共沸脱水により反応系内から除去した。水分分離トラップから副生した水を抜いた後、還流を止めてトルエンを除去して室温まで冷却した。次に生成物を5μmのフィルターで加圧ろ過することでポリイミドBワニスを得た。重量平均分子量は2.1万であった。
【0231】
[ポリイミドCの合成例]
三口セパラブルフラスコに窒素導入管、温度計、水分分離トラップを備えた玉付冷却管を取り付けた。オイルバス室温で、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン(DMI)344g、トルエン90g、ジメチルスルホキシド78.4g、2,2−ビス(3−アミノ−4−ヒドロキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン(6FAP)48.8g、ポリアルキルエーテルジアミン(商品名:Baxxodur(登録商標)EC302、BASF社製)112.8gを入れ均一になるまで攪拌した。さらに、3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物(BPDA)120gを少しずつ添加した後、180℃まで昇温し、3時間加熱した。反応中に副生する水は、トルエン還流下、トルエンとの共沸脱水により反応系内から除去した。水分分離トラップから副生した水を抜いた後、還流を止めてトルエンを除去して室温まで冷却した。次に生成物を5μmのフィルターで加圧ろ過することでポリイミドCワニスを得た。重量平均分子量は2.8万であった。ポリマーCの全質量中の一般式(3)で示す構造の含有率を仕込み量から計算した結果は35%であった。
【0232】
[ポリイミドDの合成例]
三口セパラブルフラスコに窒素導入管、温度計、水分分離トラップを備えた玉付冷却管を取り付けた。オイルバス室温で、γ−ブチロラクトン(GBL)121g、トルエン45g、ビシクロ[2,2,2]オクト−7−エン−2,3,5,6−テトラカルボン酸二無水物(BTA)23.1gを入れ80℃に昇温した後に、2,2’−ビス(3−アミノ−4−ヒドロキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン(6FAP)17.2g、シリコーンジアミン(KF−8010、信越化学社製)40.3gを入れ均一になるまで攪拌した。さらに、180℃まで昇温し、2時間加熱した。反応中に副生する水は、トルエン還流下、トルエンとの共沸脱水により反応系内から除去した。水分分離トラップから副生した水を抜いた後、還流を止めてトルエンを除去して室温まで冷却した。次に生成物を5μmのフィルターで加圧ろ過することでポリイミドDワニスを得た。重量平均分子量は1.9万であった。
【0233】
[ポリイミドEの合成例]
三口セパラブルフラスコに窒素導入管、温度計、水分分離トラップを備えた玉付冷却管を取り付けた。オイルバス室温で、γ−ブチロラクトン(GBL)121g、トルエン45g、1,2,3,4−ブタンテトラカルボン酸二無水物18.7gを入れ80℃に昇温した後に、2,2−ビス(3−アミノ−4−ヒドロキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン(6FAP)17.2g、シリコーンジアミン(KF−8010、信越化学社製)40.3gを入れ均一になるまで攪拌した。さらに、180℃まで昇温し、2時間加熱した。反応中に副生する水は、トルエン還流下、トルエンとの共沸脱水により反応系内から除去した。水分分離トラップから副生した水を抜いた後、還流を止めてトルエンを除去して室温まで冷却した。次に生成物を5μmのフィルターで加圧ろ過することでポリイミドEワニスを得た。重量平均分子量は1.8万であった。
【0234】
[ポリイミドFの合成例]
三口セパラブルフラスコに窒素導入管、温度計、水分分離トラップを備えた玉付冷却管を取り付けた。オイルバス室温で、γ―ブチロラクトン181.4g、トルエン50.0g、2,2’−ビス(3−アミノ−4−ヒドロキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン(6FAP)18.13g、ポリアルキルエーテルジアミン(商品名:ジェファーミン(XTJ−542)、ハンツマン社製)48.50gを入れ60℃で均一になるまで攪拌した。さらに、4,4’−オキシジフタル酸二無水物(ODPA)31.02gを少しずつ添加した後に180℃まで昇温し、2時間加熱した。反応中、副生する水は、トルエンと共沸し、水分分離トラップを備えた玉付冷却管を用いて、還流下、脱水を行った。副生水を抜いた後、還流を止め、トルエンを全抜きし、室温まで冷却した。次に生成物を5μmのフィルターで加圧ろ過することでポリイミドFワニスを得た。重量平均分子量は11.4万であった。ポリマーFの全質量中の一般式(3)で示す構造の含有率を仕込み量から計算した結果は48%であった。
【0235】
[ポリイミドGの合成例]
三口セパラブルフラスコに窒素導入管、温度計、水分分離トラップを備えた玉付冷却管を取り付けた。オイルバス室温で、γ―ブチロラクトン175.7g、トルエン50.0g、2,2’−ビス(3−アミノ−4−ヒドロキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン(6FAP)21.02g、ポリアルキルエーテルジアミン(商品名:ジェファーミン(XTJ−542)、ハンツマン社製)42.60gを入れ60℃で均一になるまで攪拌した。さらに、4,4’−オキシジフタル酸二無水物(ODPA)30.09gを少しずつ添加した。30分後、無水フタル酸0.89gを添加した後に180℃まで昇温し、2時間加熱した。反応中、副生する水は、トルエンと共沸し、水分分離トラップを備えた玉付冷却管を用いて、還流下、脱水を行った。副生水を抜いた後、還流を止め、トルエンを全抜きし、室温まで冷却した。次に生成物を5μmのフィルターで加圧ろ過することでポリイミドGワニスを得た。重量平均分子量は8.3万であった。ポリマーGの全質量中の一般式(3)で示す構造の含有率を仕込み量から計算した結果は、42%であった。
【0236】
[ポリイミドHの合成例]
三口セパラブルフラスコに窒素導入管、温度計、水分分離トラップを備えた玉付冷却管を取り付けた。オイルバス室温で、γ―ブチロラクトン72.7g、トルエン38.0g、4,4’−オキシジフタル酸二無水物(ODPA)30.09gを60℃で均一になるまで攪拌した。さらに、ポリアルキルエーテルジアミン(商品名:ジェファーミン(XTJ−542)、ハンツマン社製)42.32gを少しずつ添加した後に180℃まで昇温し、3時間加熱撹拌した。反応中、副生する水は、トルエンと共沸し、水分分離トラップを備えた玉付冷却管を用いて、還流下、脱水を行った。この反応溶液を一旦35℃まで冷却した後、無水フタル酸0.89gを加え、均一になるまで撹拌し、γ―ブチロラクトン101.9g、トルエン12.0g、2,2’−ビス(3−アミノ−4−ヒドロキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン(6FAP)21.12gを少しずつ加え、70℃で3時間加熱撹拌した。さらに反応溶液を180℃まで昇温し、3時間還流した。副生水を抜いた後、還流を止め、トルエンを全抜きし、室温まで冷却した。次に生成物を5μmのフィルターで加圧ろ過することでポリイミドHワニスを得た。重量平均分子量は8.7万であった。ポリマーHの全質量中の一般式(3)で示す構造の含有率を仕込み量から計算した結果は、42%であった。
【0237】
[ポリイミドIの合成例]
三口セパラブルフラスコに窒素導入管、温度計、水分分離トラップを備えた玉付冷却管を取り付けた。オイルバス室温で、γ―ブチロラクトン45.1g、トルエン40.0g、2,2’−ビス(3−アミノ−4−ヒドロキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン(6FAP)5.02g、1,3−ビス(3−アミノフェノキシ)ベンゼン(商品名:APB−N、三井化学社製)4.91gを入れ60℃で均一になるまで攪拌した。さらに、4,4’−オキシジフタル酸二無水物(ODPA)1.46g、両末端酸二無水物変性シリコーン(商品名:X−22−2290AS、信越化学社製)25.50gを少しずつ添加した。その後、180℃まで昇温し、2時間加熱した。反応中、副生する水は、トルエンと共沸し、水分分離トラップを備えた玉付冷却管を用いて、還流下、脱水を行った。副生水を抜いた後、還流を止め、トルエンを全抜きし、室温まで冷却した。次に生成物を5μmのフィルターで加圧ろ過することでポリイミドIワニスを得た。重量平均分子量は2.2万であった。
【0238】
[ポリイミドJの合成例]
三口セパラブルフラスコに窒素導入管、温度計、水分分離トラップを備えた玉付冷却管を取り付けた。オイルバス室温で、γ―ブチロラクトン151.6g、トルエン50.0g、2,2’−ビス(3−アミノ−4−ヒドロキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン(6FAP)28.53g、ポリアルキルエーテルジアミン(商品名:ジェファーミン(XTJ−542)、ハンツマン社製)22.10gを入れ60℃で均一になるまで攪拌した。さらに、4,4’−オキシジフタル酸二無水物(ODPA)30.09gを少しずつ添加した。30分後、無水フタル酸0.89gを添加した後に180℃まで昇温し、2時間加熱した。反応中、副生する水は、トルエンと共沸し、水分分離トラップを備えた玉付冷却管を用いて、還流下、脱水を行った。副生水を抜いた後、還流を止め、トルエンを全抜きし、室温まで冷却した。次に生成物を5μmのフィルターで加圧ろ過することでポリイミドJワニスを得た。重量平均分子量は9.1万であった。ポリマーJの全質量中の一般式(3)で示す構造の含有率を仕込み量から計算した結果は、25%であった。
【0239】
[ポリイミドKの合成例]
三口セパラブルフラスコに窒素導入管、温度計、水分分離トラップを備えた玉付冷却管を取り付けた。オイルバス室温で、γ―ブチロラクトン130.0g、トルエン50.0g、2,2’−ビス(3−アミノ−4−ヒドロキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン(6FAP)22.71g、ポリアルキルエーテルジアミン(商品名:Baxxodur(登録商標)EC302、BASF社製)16.34gを入れ60℃で均一になるまで攪拌した。さらに、4,4’−オキシジフタル酸二無水物(ODPA)29.47gを少しずつ添加した。30分後、無水フタル酸1.48gを添加した後に180℃まで昇温し、2時間加熱した。反応中、副生する水は、トルエンと共沸し、水分分離トラップを備えた玉付冷却管を用いて、還流下、脱水を行った。副生水を抜いた後、還流を止め、トルエンを全抜きし、室温まで冷却した。次に生成物を5μmのフィルターで加圧ろ過することでポリイミドKワニスを得た。重量平均分子量は3.2万であった。ポリマーKの全質量中の一般式(3)で示す構造の含有率を仕込み量から計算した結果は、20%であった。
【0240】
[ポリイミドLの合成例]
三口セパラブルフラスコに窒素導入管、温度計、水分分離トラップを備えた玉付冷却管を取り付けた。オイルバス室温で、γ―ブチロラクトン145.6g、トルエン50.0g、2,2’−ビス(3−アミノ−4−ヒドロキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン(6FAP)30.4g、ポリアルキルエーテルジアミン(商品名:ジェファーミン(XTJ−542)、ハンツマン社製)17.00gを入れ60℃で均一になるまで攪拌した。さらに、4,4’−オキシジフタル酸二無水物(ODPA)30.09gを少しずつ添加した。30分後、無水フタル酸0.89gを添加した後に180℃まで昇温し、2時間加熱した。反応中、副生する水は、トルエンと共沸し、水分分離トラップを備えた玉付冷却管を用いて、還流下、脱水を行った。副生水を抜いた後、還流を止め、トルエンを全抜きし、室温まで冷却した。次に生成物を5μmのフィルターで加圧ろ過することでポリイミドLワニスを得た。重量平均分子量は9.1万であった。ポリマーLの全質量中の一般式(3)で示す構造の含有率を仕込み量から計算した結果は、20%であった。
【0241】
[ポリイミドMの合成例]
三口セパラブルフラスコに窒素導入管、温度計、水分分離トラップを備えた玉付冷却管を取り付けた。オイルバス室温で、γ―ブチロラクトン199.7g、トルエン50.0g、2,2’−ビス(3−アミノ−4−ヒドロキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン(6FAP)13.55g、ポリアルキルエーテルジアミン(商品名:ジェファーミン(XTJ−542)、ハンツマン社製)63.00gを入れ60℃で均一になるまで攪拌した。さらに、4,4’−オキシジフタル酸二無水物(ODPA)30.09gを少しずつ添加した。30分後、無水フタル酸0.89gを添加した後に180℃まで昇温し、2時間加熱した。反応中、副生する水は、トルエンと共沸し、水分分離トラップを備えた玉付冷却管を用いて、還流下、脱水を行った。副生水を抜いた後、還流を止め、トルエンを全抜きし、室温まで冷却した。次に生成物を5μmのフィルターで加圧ろ過することでポリイミドMワニスを得た。重量平均分子量は8.6万であった。ポリマーMの全質量中の一般式(3)で示す構造の含有率を仕込み量から計算した結果は55%であった。
【0242】
[ポリイミドNの合成例]
三口セパラブルフラスコに窒素導入管、温度計、水分分離トラップを備えた玉付冷却管を取り付けた。オイルバス室温で、γ―ブチロラクトン213.8g、トルエン50.0g、2,2’−ビス(3−アミノ−4−ヒドロキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン(6FAP)9.16g、ポリアルキルエーテルジアミン(商品名:ジェファーミン(XTJ−542)、ハンツマン社製)75.00gを入れ60℃で均一になるまで攪拌した。さらに、4,4’−オキシジフタル酸二無水物(ODPA)30.09gを少しずつ添加した。30分後、無水フタル酸0.89gを添加した後に180℃まで昇温し、2時間加熱した。反応中、副生する水は、トルエンと共沸し、水分分離トラップを備えた玉付冷却管を用いて、還流下、脱水を行った。副生水を抜いた後、還流を止め、トルエンを全抜きし、室温まで冷却した。次に生成物を5μmのフィルターで加圧ろ過することでポリイミドLワニスを得た。重量平均分子量は9.1万であった。ポリマーLの全質量中の一般式(3)で示す構造の含有率を仕込み量から計算した結果は61%であった。
【0243】
[ポリイミドOの合成例]
三口セパラブルフラスコに窒素導入管、温度計、水分分離トラップを備えた玉付冷却管を取り付けた。オイルバス80℃で、γ―ブチロラクトン171.6g、トルエン50g、4,4’−オキシジフタル酸二無水物(ODPA)16.31gを入れ均一になるまで攪拌した。さらに、シリコーンジアミン(LP−7100、信越化学社製)1.37g、5,5’−メチレン−ビス(アントラニリックアシッド)(MBAA)1.86g、ポリアルキルエーテルジアミン(Baxxodur(登録商標)EC302、BASF社製)15.83gを少しずつ添加した後、180℃まで昇温し、2時間加熱した。反応中に副生する水は、トルエン還流下、トルエンとの共沸脱水により反応系内から除去した。水分分離トラップから副生した水を抜いた後、還流を止めてトルエンを除去して室温まで冷却した。次に生成物を5μmのフィルターで加圧ろ過することでポリイミドOワニスを得た。重量平均分子量は2.8万であった。ポリマーOの全質量中の一般式(3)で示す構造の含有率を仕込み量から計算した結果は42%であった。
【0244】
[ポリイミドPの合成例]
三口セパラブルフラスコに窒素導入管、温度計、水分分離トラップを備えた玉付冷却管を取り付けた。オイルバス室温で、γ―ブチロラクトン171.6g、トルエン50.0g、2,2’−ビス(3−アミノ−4−ヒドロキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン(6FAP)10.99g、5,5’−メチレン−ビス(アントラニリックアシッド)(MBAA)7.84g、ポリアルキルエーテルジアミン(商品名:ジェファーミン(XTJ−542)、ハンツマン社製)42.60gを入れ60℃で均一になるまで攪拌した。さらに、4,4’−オキシジフタル酸二無水物(ODPA)30.09gを少しずつ添加した。30分後、無水フタル酸0.89gを添加した後に180℃まで昇温し、2時間加熱した。反応中、副生する水は、トルエンと共沸し、水分分離トラップを備えた玉付冷却管を用いて、還流下、脱水を行った。副生水を抜いた後、還流を止め、トルエンを全抜きし、室温まで冷却した。次に生成物を5μmのフィルターで加圧ろ過することでポリイミドPワニスを得た。重量平均分子量は7.6万であった。ポリマーPの全質量中の一般式(3)で示す構造の含有率を仕込み量から計算した結果は45%であった。
【0245】
[ホスファゼン化合物Aの合成]
シアノ基を有するホスファゼン化合物Aは、特開2002−114981号公報の合成例17記載の方法で合成した。
【0246】
攪拌装置、加熱装置、温度計及び脱水装置を備えた容量2リットルの四ツ口フラスコに4−シアノフェノール1.32モル(157.2g)、フェノール2.20モル(124.2g)、水酸化ナトリウム2.64モル(105.6g)及びトルエン1000mlを添加した。この混合物を加熱還流し、系から水を除き、シアノフェノール及びフェノールのナトリウム塩のトルエン溶液を調製した。このシアノフェノール及びフェノールのナトリウム塩のトルエン溶液に、1ユニットモル(115.9g)のジクロロホスファゼンオリゴマーを含む20%クロルベンゼン溶液580gを撹拌しながら内温30℃以下で滴下した。この混合溶液を12時間還流した後、反応混合物に5%水酸化ナトリウム水溶液を添加し2回洗浄した。次に有機層を希硫酸で中和した後、水洗を2回行い、有機層を濾過し、濃縮、真空乾燥して、目的物(ホスファゼン化合物A)を得た。
【0247】
[ホスファゼン化合物Bの合成]
フェノール性水酸基を有するホスファゼン化合物Bは、国際公開第2005/019231号パンフレットの合成例4記載の方法で合成した。
【0248】
還流冷却器、温度計、撹拌機、滴下ロートを備えた2Lの4ツ口フラスコに純度99.9%のヘキサクロロシクロトリホスファゼン58g(0.5ユニットモル、NPCl2を1ユニットとする)、THF100mLを仕込んで溶液を得た。次に、別に調製した4−メトキシフェノールのNa塩のTHF溶液(4−メトキシフェノール68.3g(0.55モル)、ナトリウム11.1g(0.44g−atom)、THF200mL)を撹拌しながら、1時間かけて上記ヘキサクロロシクロトリホスファゼンのTHF溶液に滴下した。その際、反応温度が30℃を越えないように適宜冷却して反応を行った。滴下終了後、引き続き6時間60℃で撹拌反応を行った。次に、別に調製したナトリウムフェノラートのTHF溶液(フェノール61.2g(0.65モル)、ナトリウム13.8g(0.6g−atom)、THF200mL)を、反応温度が30℃以下になるように冷却制御し1時間かけて滴下した。次いで室温下で5時間、還流温度で3時間反応を行い、反応を完結した。反応終了後、溶媒のTHFを減圧下に留去し、次にトルエン500mLを加えて生成物を再溶解し、さらに水300mLを加えて水洗分液した。有機層を5%水酸化ナトリウム水溶液による洗浄及び2%水酸化ナトリウム水溶液による洗浄を各々1回行った後に、(1+9)塩酸水溶液で1回洗浄、5%炭酸水素ナトリウム水で1回洗浄し、さらに水で2回洗浄し、水層を中性とした。次に有機層を分液し、無水硫酸マグネシウムで脱水し、トルエンを留去して淡黄色油状の生成物を得た。残存塩素量は0.01%以下であった。上記の方法で得た4−メトキシフェノキシ基とフェノキシ基が混合置換したシクロトリホスファゼン116.2g(0.45ユニットモル)とピリジン塩酸塩583.6g(5.05モル)を、2Lの4ツ口フラスコに仕込み、徐々に昇温し、205〜210℃で1時間反応を行った。その後、生成物を精製し、目的物(ホスファゼン化合物B)を得た。
【0249】
[実施例1]
ポリイミドAの固形分が84質量%、オキサゾリン化合物としての1,3−ビス(4,5−ジヒドロ−2−オキサゾリル)ベンゼン(PBO)が16質量%になるように樹脂組成物を調製し、γ−ブチロラクトンで樹脂組成物の総固形分が40質量%になるように希釈した。この樹脂組成物溶液を用いて積層体を作製し、作製した積層体を評価した。
【0250】
[実施例2〜実施例25、実験例1]
表1及び表2に示す組成になるように、実施例1と同様にして、実施例2〜実施例25及び実験例1の樹脂組成物を調製し、樹脂組成物を用いて積層体を作製し、作製した積層体を評価した。
【0251】
なお、エポキシ化合物として、ビスフェノールAビス(トリエチレングリコールグリシジルエーテル)エーテル(商品名:BEO−60E、新日本理化社製)、ベンゾオキサジン化合物として、ビスフェノールS型ベンゾオキサジン(商品名:BS−BXZ、小西化学工業社製)、イソシアネート化合物として、ヘキサメチレンジイソシアネート系化合物(商品名:TPA−100、旭化成ケミカルズ社製)、両末端型のフェノール変性シリコーンとしてX−22−1821(水酸基価38mgKOH/g、信越化学社製)、難燃剤としてシアノ基を有するホスファゼン化合物A、フェノール性水酸基を有するホスファゼン化合物B、複合水酸化マグネシウム(商品名:MGZ−5R、堺化学工業社製)、酸化防止剤としてイルガノックス245(IRG245、BASF社製)を用いた。実施例1と同様にγ−ブチロラクトンで樹脂組成物の総固形分が40質量%になるように希釈した溶液を用いて積層体を作製し、作製した積層体を評価した。実施例1〜実施例25及び実験例1の評価結果を表4及び表5に示す。
【0252】
[比較例1〜比較例10]
表3に示す組成になるように、実施例1と同様にして樹脂組成物を調製し、樹脂組成物を使用して積層体を作製し、作製した積層体を評価した。
【0253】
なお、エポキシ化合物として、3官能エポキシ樹脂(商品名:VG3101、プリンテック社製)、ブロックイソシアネートとして、ヘキサメチレンジイソシアネート系のブロックイソシアネート(商品名:SBN−70D、旭化成ケミカルズ社製)を用いた。
【0254】
比較例1〜比較例10の樹脂組成物の評価結果を表6に示す。
【0255】
【表1】
【0256】
【表2】
【0257】
【表3】
【0258】
【表4】
【0259】
【表5】
【0260】
【表6】
【0261】
表4〜表6から分かるように、ポリイミドA〜ポリイミドN及びオキサゾリン化合物(PBO)を含む樹脂組成物は、アルカリ溶解速度比が0.95以上であり、プレス時のスルーホールの埋め込み性が良好となる(実施例1〜18)。この結果は、ポリイミドA〜ポリイミドNは、上記一般式(A−1)で表されるフェノール性水酸基の構造を有することから、積層体の溶媒乾燥条件(95℃、15分間加熱した後、90℃、30分真空乾燥)下及び90℃、10分の熱履歴後におけるポリイミドA〜ポリイミドNと(B−1)オキサゾリン化合物(PBO)との架橋反応が抑制され、流動性が損なわれなかったためと考えられる。
【0262】
特にポリイミドの末端を封止したポリイミドG,H,J,K,L,M,Nを用いた実施例11、12、14〜18に関しては、極めて良好なアルカリ溶解速度比を示しており、埋め込み性も良好であった。これは未封止ポリイミドのポリマー末端である酸二無水物とオキサゾリン化合物の反応性は比較的高いが、封止されて反応が進行しなかったためと考えられる。
【0263】
また、一般式(3)で示す構造(柔軟セグメント)を有するポリイミドC,F,G,H,J,Mを用いた実施例7、10、11、12、14、17に関しては、スルーホールの埋め込み性が良好であるが、とりわけポリマー直鎖状のテトラメチレン基を含むポリイミドF,G,H,J,Mを用いた実施例10〜12、14、17に関しては、1.0を超える高アスペクト比のスルーホールを有する基材にも好適に使用できることが分かる。
【0264】
ポリイミドA〜ポリイミドN及びオキサゾリン化合物(PBO)を含む樹脂組成物は、熱硬化後のアルカリ溶解速度が0.002〜0.005μm/秒の範囲内であり、屈曲性と絶縁信頼性が共に良好であり、この結果は、ポリイミドとオキサゾリン化合物との架橋密度が適度に制御されたためと考えられる。さらに一般式(3)で示す構造の含有量が25〜55質量%の範囲内であるポリイミドC,F,G,H,J,Mを用いた実施例7、10、11、12、14、17に関してはとりわけ屈曲性が優れている。
【0265】
実施例1〜25の樹脂組成物はいずれも熱重量減少量が2.0%以下であり、熱時のアウトガス量が低減されているため、高い耐熱性が得られていることがわかる。
【0266】
また、実施例1〜24はいずれも溶媒乾燥後の初期のアルカリ溶解速度及びアルカリ溶解速度比が0.95以上であり、アルカリ加工性の評価が良好となる。この結果は先述の通り、ポリイミドA〜ポリイミドNは、上記一般式(A−1)で表されるフェノール性水酸基の構造を有することから、積層体の溶媒乾燥条件(95℃、15分間加熱した後、90℃30分真空乾燥)下及び90℃10分の熱履歴後におけるポリイミドA〜ポリイミドNと(B−1)オキサゾリン化合物(PBO)との架橋反応が抑制されたためであると考えられる。
【0267】
一方、(B−1)オキサゾリン化合物の一部を(B−2)エポキシ化合物、(B−3)ベンゾオキサジン化合物、(B−4)イソシアネート化合物で置き換えた実施例19〜21及び3質量%の(C)多官能水酸基含有化合物を含む実施例22、23及び(A−2)フェノール性水酸基含有ポリイミドのフェノール性水酸基を半量カルボキシル基に置き換えたポリイミドPを含む実施例24に関しても第1の実施の形態に係るパラメータを全て満たしており、良好な結果が得られた。
【0268】
また、実施例1〜25は、(A−1)フェノール性水酸基を有するポリイミドのフェノール性水酸基と(B−1)オキサゾリン化合物が有するオキサゾリン基との比率が0.5〜4.0の範囲内である。この範囲においては、第1の実施の形態に係るパラメータ(a)〜(d)を全て満たしており、良好な評価結果が得られた。
【0269】
これらの結果から、実施例1〜25に係る樹脂組成物は、半導体素子の表面保護膜などとして好適に利用できることが分かる。
【0270】
これに対して、(A−2)カルボキシル基を有するポリイミドであるポリイミドOを含む樹脂組成物は、初期のアルカリ溶解速度及びアルカリ溶解速度比が低くなり、スルーホール埋め込み性、アルカリ加工性の評価が不良となった(比較例2〜5)。この結果は、上記乾燥条件下において、ポリイミドOとオキサゾリン化合物(PBO)との架橋反応が進行したためと考えられる。
【0271】
また、比較例3、5、6においては、反応性に富む(B−2)エポキシ化合物を含むことから、低温で反応が進行し、スルーホール埋め込み性が悪く、とりわけエポキシの添加量の多い比較例6に関しては熱硬化時に架橋密度が向上して硬化物のアルカリ溶解速度が0であった。この場合絶縁信頼性は良好であるが、屈曲性が不十分であった。
【0272】
比較例7は(B−3)ベンゾオキサジンを多く含み、硬化後のアルカリ溶解性が大きい。これは熱硬化時にベンゾオキサジンが自己反応し、フェノール性水酸基が副生したためと考えられ、絶縁信頼性及び耐熱性が不十分であった。
【0273】
比較例8は反応性に富む(B−4)イソシアネート化合物を多く含むことからエポキシ化合物と同様、低温で反応が進行し、スルーホール埋め込み性が悪化した。
【0274】
比較例9はブロックイソシアネートを含有することから低温での反応性は抑制され、スルーホール埋め込み性は良好であったが、260℃までの昇温過程において、ブロック剤が外れて揮発するため、熱重量減少量が非常に大きく、耐熱性試験では銅と樹脂硬化物間で全面的にデラミネーションが発生した。
【0275】
比較例10に関しては、アルカリ溶解速度評価において1000秒間アルカリをスプレーした後も銅上に肉眼で確認できる薄い被膜が残存し、アルカリ加工性が不十分であった。
【0276】
また、実験例1及び比較例10に関しては、ブリードアウト試験において表面に粘着状の物質が染み出す現象が確認され、密着性が不十分であった。この結果は熱硬化時に未反応で残った(C)多官能水酸基含有化合物がポリイミドの架橋体との相溶性が悪いために経時でブリードアウトしたと考えられる。
【0277】
これらの結果から、比較例1〜比較例10に係る樹脂組成物は、半導体素子の表面保護膜などとして十分な性能が得られないことが分かる。
【0278】
(第2の実施の形態)
第2の実施の形態に関する実施例26〜実施例31について説明する。
(積層体及びビア形成用コンフォーマルマスク製作)
樹脂組成物溶液を、12μm厚の電解銅箔(F2−WS)(古河電工社製)上にバーコータを用いて塗布し、その後95℃に加温されたオーブン中で15分間加熱し、その後95℃で30分間真空乾燥して溶媒を除去して、外層材となる25μmの厚みの樹脂組成物層を有する樹脂付き銅箔を得た。この樹脂付き銅箔の樹脂組成物層側を、銅箔厚み12μm、絶縁性樹脂層厚み20μmの片面フレキシブル配線基板(エスパネックス(登録商標)M)(新日鉄化学社製)の銅箔上に重ねて置き、さらに両面から離形用フィルムで挟んだものを準備した。
【0279】
次に前記の積層体を、上下両面定盤に硬度50度の耐熱シリコンラバーを貼り合せられた真空プレス装置(北川精機社製)を予め100℃に加熱された後に、前記積層体を入れ、2分間加圧しない状態で真空引きを行った後、圧力1MPaで2分間加圧し圧着させた。
【0280】
次に、外層の銅箔上にドライフィルムレジスト(サンフォート(登録商標)AQ2578)(旭化成イーマテリアルズ社製)をロールラミネータにより貼り合せた後、露光・現像、及びエッチングにより、所定の位置の銅箔をエッチング除去し、300μmピッチ間隔で100μmφのコンフォーマルマスク及び、直径3mmの円孔パターンを形成した。
【0281】
(評価J:ブラインドビア形状評価)
各実施例記載の方法により作製したフレキシブル配線板のブラインドビアは、エポキシ樹脂で包埋し、包埋された配線板に垂直に研磨装置(丸本ストラトス社製)を用いてブラインドビア径の中央位置まで断面研磨加工を行った後、測長機能付光学顕微鏡により観察し、形成されたブラインドビアにおける、
図5を参照して説明したビア形状のパラメータx、yの値を測定した。なお、評価に関してはブラインドビア10穴の観察を行い、パラメータx、yの平均値を算出した。
【0282】
(評価K:樹脂変性部分厚み評価)
前述の評価Jの断面観察用サンプルの表層をArイオンビームで3μmドライエッチし、飛行時間型二次イオン質量分析法(TOF−SIMS)により分析し、層間樹脂層のビアの壁面に接する部位からナトリウム(Na)とカリウム(K)が計50ppm含まれている部位までの水平方向の距離の最大値(樹脂変性部分の最大厚み)を測長した。
【0283】
TOF−SIMSの測定条件を下記に示す。
装置:独ION TOF社製 TOF−SIM 5
一次イオン:Bi3
加速電圧:25keV、電流量:0.3pA−10kHz
【0284】
なお、ブラインドビアは1水準につき2穴観察し、樹脂変性部分厚みは2穴の最大値とした。
【0285】
(評価L:薄付け無電解銅被覆性評価)
まず、事前に銅箔厚み12μm、絶縁性樹脂層厚み20μmの片面フレキシブル配線基板(エスパネックス(登録商標)M)(新日鉄化学社製)の基材を100×30mmに切り出し、事前に重量を測定しておき、基材の銅上に無電解銅めっき処理した後、100℃で60分間乾燥して吸湿成分を除去してから重量を測定することでめっき銅の質量を算出し、それに基づき算出した。こうして算出した結果を元に0.5μm厚無電解銅めっき条件及び1.0μm厚無電解銅めっき条件を決定した。
【0286】
各実施例26〜31記載の方法により作製したフレキシブル配線板のブラインドビアに、無電解銅めっき薬液(無電解銅めっきOPC−750)(奥野製薬社製)を用いて前記の条件で0.5〜1μm厚の無電解銅めっきを施した後、硫酸銅めっき薬液により電解銅めっき厚が10μm厚の条件で銅めっき層を形成した。次いでエポキシ樹脂で包埋し、包埋された配線板に垂直に研磨装置(丸本ストラトス社製)を用いてブラインドビア径の中央位置まで断面研磨加工を行い、さらにアルミナ研磨材で鏡面研磨を実施した後、光学顕微鏡観察により評価した。ブラインドビア断面について、銅めっき厚が7μm以上で均一に銅めっきされているものを◎とし、銅めっき厚が5μm以上7μm未満で均一に銅めっきされているものを〇、5μm未満で均一に銅めっきされているものを△、5μm未満で部分的に不均一に銅めっきされているものを×とした。
【0287】
(評価M:接続信頼性評価)
各実施例26〜31記載の方法により作製したフレキシブル配線板において、100μmφブラインドビアを介してコア基板の配線回路と外層基板の配線回路を無電解/電解銅めっきによりデイジーチェーン接続させて形成した配線回路を用い、125℃と−40℃のそれぞれの恒温漕を15分毎に交互に往復させ、その時の接続抵抗値を測定した。各温度での接続抵抗値の初期値からの変動幅が10%以内であるサイクル数が、1000サイクル以上の場合を◎、500サイクル以上1000サイクル未満の場合を○とし、500サイクル未満の場合を×とした。
【0288】
[実施例26]
ポリイミドGの固形分が51質量%、1,3−ビス(4,5−ジヒドロ−2−オキサゾリル)ベンゼン(PBO)が7質量%、複合水酸化マグネシウム(商品名:MGZ−5R、堺化学工業社製)が40質量%、酸化防止剤としてイルガノックス245(IRG245、BASF社製)が2質量%になるように樹脂組成物を調製し、γ−ブチロラクトンで樹脂組成物の総固形分が40質量%になるように希釈し、この樹脂組成物溶液を用いて積層体及びビア形成用コンフォーマルマスクを形成した。
【0289】
前記積層体に形成した前記3mm円孔パターンの露出した樹脂組成物層に45℃に加温した3質量%水酸化ナトリウム水溶液を0.18MPa(噴量0.92L/分)のフルコーン型スプレーノズルを用いて噴射処理したところ、樹脂組成物層のエッチング速度は0.26μm/秒であった。
【0290】
次に、前記積層体に形成した前記100μmφのコンフォーマルマスク部位から、露出した樹脂組成物層に、45℃に加温した3質量%水酸化ナトリウム水溶液を0.18MPa(噴出量0.92L/分)のフルコーン型スプレーノズルを用いて30秒間スプレー噴射処理し、その後0.12MPa(噴出量0.75L/分)のスプレーを120秒間水洗処理し、コンフォーマルマスクから露出した樹脂組成物層をエッチング除去しブラインドビアを形成した。
【0291】
次に、乾燥炉を用いて、180℃で1時間加熱することにより、樹脂組成物層を硬化させた。
【0292】
さらに前記評価Lの方法に基づき、0.5μm厚の無電解銅めっきを施し、10μm条件の電解銅めっき処理を行って、めっき付ブラインドビアを得た。
【0293】
こうして得られた基板のブラインドビアの形状を断面観察により調べたところ前記
図5におけるxは−15μm、yは20μmであり、
図3における樹脂変性部分厚みは15μmであった。さらにこの基板においては、薄付け無電解銅被覆性評価が◎、接続信頼性も◎であった。
【0294】
[実施例27]
45℃に加温した3質量%水酸化ナトリウム水溶液を0.18MPa(噴出量0.92L/分)のフルコーン型スプレーノズルを用いて45秒間スプレー噴射処理した以外は実施例26と同様にビアホール付基板を作製し、評価した。評価結果を表7に示す。
【0295】
[実施例28]
無電解銅めっき厚を1.0μmにした以外は実施例27と同様にビアホール付基板を作製し、評価した。評価結果を表7に示す。
【0296】
[実施例29]
無電解銅めっきを実施する前にKMnO溶液(日本マクダーミッド社)でデスミア処理をした以外は実施例26と同様にビアホール付基板を作製し、評価した。評価結果を表7に示す。
【0297】
[実施例30]
ポリイミドCの固形分が52質量%、1,3−ビス(4,5−ジヒドロ−2−オキサゾリル)ベンゼン(PBO)が6質量%、ホスファゼン化合物Aが10質量%、複合水酸化マグネシウム(商品名:MGZ−5R、堺化学工業社製)が30質量%、酸化防止剤としてイルガノックス245(IRG245、BASF社製)が2質量%になるように樹脂組成物を調製し、γ−ブチロラクトンで樹脂組成物の総固形分が40質量%になるように希釈し、この樹脂組成物溶液を用いた。また、45℃に加温した3質量%水酸化ナトリウム水溶液を0.18MPa(噴出量0.92L/分)のフルコーン型スプレーノズルを用いて25秒間スプレー噴射処理し、その後0.12MPa(噴出量0.75L/分)のスプレーを120秒間水洗処理し、コンフォーマルマスクから露出した樹脂組成物層をエッチング除去しブラインドビアを形成した。それ以外は、実施例26と同様にビアホール付基板を作製し、評価した。実施例30における樹脂組成物層のエッチング速度は0.48μm/秒であった。その他評価結果を表7に示す。
【0298】
[実施例31]
ポリイミドIの固形分が51質量%、1,3−ビス(4,5−ジヒドロ−2−オキサゾリル)ベンゼン(PBO)が9質量%、ホスファゼン化合物Bが10質量%、複合水酸化マグネシウム(商品名:MGZ−5R、堺化学工業社製)が30質量%になるように樹脂組成物を調製し、γ−ブチロラクトンで樹脂組成物の総固形分が40質量%になるように希釈し、この樹脂組成物溶液を用いた。また、45℃に加温した3質量%水酸化ナトリウム水溶液を0.18MPa(噴出量0.92L/分)のフルコーン型スプレーノズルを用いて35秒間スプレー噴射処理し、その後0.12MPa(噴出量0.75L/分)のスプレーを120秒間水洗処理し、コンフォーマルマスクから露出した樹脂組成物層をエッチング除去しブラインドビアを形成した。
【0299】
それ以外は、実施例26と同様にビアホール付基板を作製し、評価した。実施例30における樹脂組成物層のエッチング速度は0.15μm/秒であった。その他評価結果を表7に示す。
【0300】
[比較例11]
45℃に加温した3質量%水酸化ナトリウム水溶液を0.18MPa(噴出量0.92L/分)のフルコーン型スプレーノズルを用いて11秒間スプレー噴射処理した以外は実施例26と同様にビアホール付基板を作製し、評価した。評価結果を表7に示す。
【0301】
[比較例12]
45℃に加温した3質量%水酸化ナトリウム水溶液を0.18MPa(噴出量0.92L/分)のフルコーン型スプレーノズルを用いて75秒間スプレー噴射処理した以外は実施例26と同様にビアホール付基板を作製し、評価した。評価結果を表7に示す。
【0302】
[比較例13]
両面フレキシブル配線板としてエスパネックスM(新日鉄化学製、銅箔厚み12μm、絶縁性樹脂層厚25μm)を用いて銅箔上にドライフィルムレジスト(サンフォート(登録商標)AQ2578)(旭化成イーマテリアルズ社製)をロールラミネータにより貼り合せた後、露光・現像、及びエッチングにより、所定の位置の銅箔を片面のみエッチング除去し、300μmピッチ間隔で100μmφのコンフォーマルマスク及び、直径3mmの円孔パターンを形成した。
【0303】
まず前記3mm円孔パターンの露出した絶縁性樹脂層に80℃に加温しポリイミドケミカルエッチング液(商品名:TPE3000、東レエンジニアリング社製)を用いて液中で噴射処理したところ、エスパネックスMの樹脂層のエッチング速度は0.04μm/秒であった。
【0304】
上記工程で得られたサンプルを、以下の条件でウェットエッチングを行った。前処理として、ノニオン系界面活性剤である日信化学工業製サーフィノール104E(商品名)の0.5%水溶液に、30秒浸漬させた後に、液中スプレー方式水平搬送型エッチング装置に投入した。エッチング液は東レエンジニアリング社製エッチング液TPE−3000を用い、処理温度は80℃とした。まず前記3mm円孔パターンの露出した絶縁性樹脂層に80℃に加温しポリイミドケミカルエッチング液(商品名:TPE3000、東レエンジニアリング社製)を用いて液中で噴射処理したところ、エスパネックスMの絶縁性樹脂層のエッチング速度は0.04μm/秒であった。
【0305】
次に前記100μmφのコンフォーマルマスクを形成したサンプルに関して、前記前処理液で処理した後、80℃で600秒間前記ポリイミドエッチング液を液中スプレーした後、0.12MPa(噴出量0.75L/分)のスプレーを120秒間水洗処理して、ブラインドビアを形成した。
【0306】
さらに前記評価Lの方法に基づき、0.5μm厚の無電解銅めっきを施し、10μm条件の電解銅めっき処理を行ってめっき付ブラインドビアを得た。
【0307】
こうして得られたビアホール付基板について、実施例26と同様に評価を実施した。結果を表7に示す。
【0308】
[比較例14]
80℃で700秒間、前記ポリイミドケミカルエッチング液を液中スプレーした後、0.12MPa(噴出量0.75L/分)のスプレーを120秒間水洗処理して、ブラインドビアを形成した以外は、比較例13と同様に評価を実施した。結果を表7に示す。
【0309】
[比較例15]
比較例13と同様の方法で300μmピッチ間隔で100μmφのコンフォーマルマスクを形成した両面フレキシブル配線板を用い、このコンフォーマルマスク部から絶縁性樹脂層に炭酸ガスレーザー(日立建機社製)を照射してブラインドビアを形成した。デスミア処理は行わなかった。
【0310】
こうして得られたビアホール付基板に関して、実施例26と同様に評価を行った。結果を表7に示す。
【0311】
[比較例16]
炭酸ガスレーザー(日立建機社製)を照射してブラインドビアを形成した後、KMnO溶液(日本マクダーミッド社)によるデスミア処理を実施した以外は比較例15と同様に評価を実施した。結果を表7に示す。
【0312】
【表7】
【0313】
表7に示す結果から、実施例26〜31に関しては、アルカリによる樹脂エッチング速度が0.10μm/秒以上であり、厚み25μmの樹脂組成物層をアルカリで完全に除去するのに要する時間×0.2倍〜0.5倍だけアルカリスプレーし、その後水洗にてビアの底部の樹脂を完全に除去するという方式のビア加工方法において、ビアの側壁の樹脂変性部分の厚みが10μm以上であり、かつ、
図5を参照して説明したビアホールの形状に関するパラメータxが−15〜−25μmの範囲内であり、パラメータyは−5〜20μmの範囲内であった。この範囲内において、無電解銅めっき厚みが従来よりも薄い0.5μm条件下であっても、めっきの付き回り性が良好で、狙い値に近く、均一な電解めっき厚のビアが得られた。これらのビアの接続信頼性試験結果も良好であった。さらに、パラメータxが−20μm以上である実施例26、29〜31に関しては、とりわけめっきの付き回り性が良好で、ビアの接続信頼性における抵抗値が1000サイクルまで10%以内の変動に留まっていた。実施例26〜28、30、31においては、ビア形成後にデスミア処理を実施していない。その場合においてもめっき付き回り性、接続信頼性は良好であった。実施例26〜31においては、ナトリウムイオン及び/又はカリウムイオンを含んだ樹脂変性部分を形成する。このような樹脂変性部分は吸水率が高まるため、無電解銅めっき液の浸透性が高まり、かつ銅イオンとイオン交換するため無電解銅の付き回り性が向上すると考えられる。
【0314】
以上の結果から、第2の実施の形態に係る水平方向厚さ10μm以上の樹脂変性部分と特定のビア形状を組み合わせたビアにおいては、めっきの付き回り性が飛躍的に向上することができるため、更なる無電解銅の薄化が要求されている多層プリント配線板に好適に使用することができることが確認された。なお、第2の実施の形態に関する実施例において、樹脂組成物を熱硬化後した後に、表層の銅を全面エッチングしてから無電解銅めっきを付けることで、セミアディティブプロセスにも適用が可能である。セミアディティブプロセスにおいては微細化の観点でさらに無電解銅めっきの薄膜化が所望されている。
【0315】
一方、比較例11においては、樹脂組成物層を完全に除去するのに要する時間×0.1倍よりもアルカリスプレー時間が少なく、この場合xは−10μmであり良好であったが、yが40μmになり、100μm径のビアとして、ビア底部における接地面積を十分に確保することができず、接続信頼性試験の初期において断線が確認された。
【0316】
逆に樹脂層を完全に除去するのに要する時間×0.6倍よりもアルカリスプレー時間が多い比較例12においては、xが−35μmになっており、第2導体層の金属箔層の裏側への無電解銅めっき液の浸透性が不足して、従来の1μm厚の無電解めっき条件下においてもめっき付きまわり性、接続信頼性に劣るという結果となった。
【0317】
比較例13、14は従来技術のポリイミドエッチングを用いてビアを形成した例であるが、エッチング時間が完全に除去するのに要する時間×1倍よりも短い比較例13においては、ビア底が完全に開口せず、めっき付回り性及び接続信頼性が悪い結果になり、比較例14においては、ビア形状に係るパラメータxは良好であるものの、パラメータyが大きい値になった。また、これらのポリイミドエッチングでは樹脂変性部分が確認できなかった。そのため、0.5μmの無電解銅めっき条件において、めっきの付き回り性が悪く、接続信頼性が劣る結果となった。従来のポリイミドエッチングでは樹脂変性部分が形成されない理由としては、エッチング速度が非常に遅いことと、樹脂が高弾性、高Tgであるため、分子間相互作用が強く、エッチング液が膜の内部まで浸透しにくいためと推察される。
【0318】
比較例15、16は従来技術のレーザビア加工機を用いてビアを形成した例である。レーザビアでかつデスミアを実施していない実施例15に関しては、めっきの付きまわり性、接続信頼性いずれも悪い結果となった。デスミアを実施した実施例16に関しても、パラメータxは良好であるものの、パラメータyが大きい値になった。また、デスミアを実施したレーザビアの壁面に関しても、樹脂変性部分が確認できなかった。そのため、0.5μmの無電解銅めっき条件において、めっきの付き回り性が悪く、接続信頼性が劣る結果となった。
【0319】
以上の結果より、比較例11〜16においては、無電解銅めっきを薄化する場合において、十分の性能を発揮することができないことが分かる。
【0320】
(第3の実施の形態)
第3の実施の形態に係る実施例32〜37について説明する。
(内層コア基板の作製)
以下のようにして内層コア基板を作製した。まず、銅箔厚み12μm、絶縁性樹脂層厚み20μmの両面フレキシブル配線基板(エスパネックス(登録商標)M)(新日鉄化学社製)を用意した。この両面フレキシブル配線基板の基材銅をハーフエッチング処理をして、銅箔厚みを5μmに薄化した後、直径100μmのスルーホールをNCドリルで穴あけし、15μm厚のスルーホールめっきを施した。ここで、スルーホールのアスペクト比は0.9であった。次いで、スルーホールを有する両面フレキシブル基板において、スルーホール周囲に300μmφのランドとラインアンドスペース(L/S)が50/50μmとなる配線回路パターンを、ドライフィルムレジスト(サンフォート(登録商標)AQ2578)(旭化成イーマテリアルズ社製)を用いて銅箔上に形成し、次いで、銅箔にエッチングを施し、銅配線回路を形成した。このときの銅配線回路は20μm厚で形成した。
【0321】
(樹脂付き銅箔の作製)
以下のようにして、前記内層コア基板の外層に積層する樹脂付き銅箔を作製した。実施例32〜37の樹脂組成物溶液を12μm厚の電解銅箔(F2−WS)(古河電工製)上にバーコータを用いて塗布し、その後95℃に加温されたオーブン中で15分加熱処理し、その後90℃で30分間真空乾燥処理をして樹脂厚15〜60μmである樹脂付き銅箔を得た。
【0322】
(評価N:配線上の樹脂層厚み及び表面凹凸量)
実施例32〜37記載の方法により作製した多層フレキシブル配線板を、エポキシ樹脂で包埋した後に100μmピッチ配線回路の中心部を断面研磨し、測長機能付光学顕微鏡で観察した。100μmピッチ配線回路を10か所観察し、回路上樹脂厚は10か所のうち、最も薄い配線回路上の樹脂層厚(評価N−1)とし、併せて樹脂層の表面凹凸量(評価N−2)は10か所の平均値とした。樹脂層の表面凹凸性が±3μm以下である場合を◎、±3μm超±5μm以下である場合を〇とし、±5μm超である場合を×とした。
【0323】
(評価O:反発力評価)
実施例32〜37記載の方法により作製した多層フレキシブル配線板のフレキシブル部の反発力は、以下の方法により実施した。まずフレキシブル部を10mm×5mmサイズに切り出した。次いで反発力の測定装置としては、一定速度で上下動可能であり、クリアランス精度0.1mm以下の自動サーボゲージに、フォースゲージを取り付けたものを使用した。フォースゲージの先端に50mm角の平行平板を取り付け、フォースゲージを600mm/分の一定速度で稼働し、且つ平行平板のクリアランスが1mmで停止する様に設定した。
【0324】
次いで平行平板間隔を20mmとし、この間に切り出した基板を折り曲げず湾曲させた状態で挟んだ。これを前記条件でクリアランス1mmまで稼働したとき、フレキシブル基板は屈曲半径0.5mmまで折り曲げられることになる。そのままの状態で1分間経過した後のフォースゲージの荷重を測定し、これを基板幅で割ったものを反発力として算出した。反発力は0.1N/mm未満を◎、0.1N/mm以上0.2N/mm未満を〇、0.2N/mm以上0.3N/mm未満を△、0.3N/mm以上又は途中で割れや剥離が発生したものは×とした。
【0325】
(評価P:ブリードアウト量)
実施例32〜37において作成した積層体を用いて、上述の評価Cで説明した方法に従ってブリードアウト量を算出した。
【0326】
(評価Q:半導体チップ実装性評価)
実施例32〜37記載の方法により作製した多層フレキシブル配線板の外層に形成した回路パターンにはんだペースト(鉛フリーはんだM705)(千住金属社製)を印刷した後、チップマウンターによりチップ抵抗器(1005チップ)(エヌエスアイ社製)を自動で乗せた後、最高到達温度条件が250℃で5秒間のリフロー処理を4回通して部品実装を行い、目視検査によりはんだ実装の位置ずれ、部品の浮き、傾きを評価した。4回通した後も、これらの異常がいずれも認められず、またフィレット形状にも異常が認められなかったものを○、4回目に異常が認められたものを△、1〜3回目のいずれかに異常が認められたものを×とした。
【0327】
(評価R:折り曲げ実装性評価)
各実施例32〜37記載の方法により作製した、多層フレキシブル配線板のフレキシブル部の一端を、1mm厚のガラス基板の一辺とACF(日立化成製)で固着した後、フレキシブル部のもう一端を、外層基板の樹脂層が内側となる様に折り曲げてガラス基板の背面に両面テープで固着した。これを−40℃/125℃の各温度での15分保持を1サイクルとし、1000サイクルまで温度サイクル試験を実施した。1000サイクル後に剥離や膨らみの発生が認められなかったものを〇、剥離や膨らみの発生が認められたものを×とした。
【0328】
[実施例32]
ポリイミドGの固形分が51質量%、1,3−ビス(4,5−ジヒドロ−2−オキサゾリル)ベンゼン(PBO)が7質量%、複合水酸化マグネシウム(商品名:MGZ−5R、堺化学工業社製)が40質量%、酸化防止剤としてイルガノックス245(IRG245、BASF社製)が2質量%になるように樹脂組成物を調製し、γ−ブチロラクトンで樹脂組成物の総固形分が40質量%になるように希釈し、この樹脂組成物溶液を用いて15μm厚みの樹脂組成物層を有する積層体を作製した。この積層体に関して評価Pのブリードアウト試験を実施したところ、ブリードアウト量は20mg/m
2以下であった。
【0329】
この樹脂付き銅箔を前記内層コア基板の上下面に重ねて置き、さらに両面から離形用フィルムで挟んだものを予め準備した。
【0330】
積層装置としてロール・ツー・ロールでの積層が可能なダイヤフラム型真空ラミネータ(名機製作所製)を用いた。積層方法としては、ダイヤフラムのシリコンラバー表面温度を140℃に設定し、前記の積層体を真空ラミネータ内部に搬送した後、2分間ラミネート加圧しない状態で真空引きを行い、その後圧力0.9MPaで2分間加圧し、圧着した。さらに、外層の銅箔上にドライフィルムレジスト(サンフォート/旭化成イーマテリアルズ社製)をロールラミネータにより貼り合せた後、露光、現像及びエッチングにより、部品を実装する所定の位置の銅箔をエッチング除去し、内層コア基板に形成された銅ランドの上方に位置する様に100μmφのコンフォーマルマスクを形成した。
【0331】
次に、硬化乾燥炉を用いて、180℃で1時間加熱して樹脂組成物層を硬化した後、この樹脂硬化物層のコンフォーマルマスク部位に炭酸ガスレーザー(日立建機社製)を照射してブラインドビアを形成し、KMnO溶液(日本マクダーミッド社)によるデスミア処理を実施した。
【0332】
次に、内層コア基板との電気的接続を取るためブラインドビアへのめっき処理を行った。まず穴内壁の樹脂硬化物層にパラジウム触媒を付着させ活性化処理し、無電解銅めっき浴でエアレーションをさせながら無電解銅めっき層を形成した。その後、電解銅めっきを施して内層コア基板の導電層と外層導電層との電気的接続を完了させた。
【0333】
次に、従来の多層フレキシブル配線板と同様の外層基板に回路形成工程を行った。同時に折り曲げて使用するフレキシブル部位については外層基板上の不要な銅層をエッチング除去し、外層基板の樹脂硬化物層が内層コア基板に形成された配線回路のカバー層なるように形成した。これによりこの部位にさらにカバー層の形成は不要となり薄く形成することが可能となった。また反発力は0.07N/mmであった。
【0334】
このように製造した多層フレキシブル配線板を、エポキシ樹脂で包埋した後に断面研磨を行い、光学顕微鏡で観察を行った。内層コア基板に形成されたアスペクト比0.9のスルーホールやL/S=50/50μmの配線回路への外層基板の樹脂層埋め込み性はボイドなどの埋め込み不足はなく良好であり、また樹脂組成物層の表面凹凸量は5μm以下と非常に平滑であった。また配線回路層上の樹脂層最小厚みは約5μmであった。
【0335】
得られた基板に関して、別途、チップ実装性、折り曲げ実装性評価を実施したところ、チップ実装性は○、折り曲げ実装性は◎であった。結果を表8に示す。
【0336】
[実施例33]
前記樹脂付き銅箔の樹脂組成物層が25μm厚であること以外は、実施例32と同様に実施し、多層フレキシブル配線板を作製した。得られた基板の配線回路層上の樹脂層最小厚み及び表面凹凸量を断面観察により測定し、チップ実装性、折り曲げ実装性評価を実施した。結果を表8に示す。
【0337】
[実施例34]
前記樹脂付き銅箔の樹脂組成物層が40μm厚であること以外は、実施例32と同様に実施し、多層フレキシブル配線板を作製した。得られた基板の配線回路層上の樹脂層最小厚み及び表面凹凸量を断面観察により測定し、チップ実装性、折り曲げ実装性評価を実施した。結果を表8に示す。
【0338】
[実施例35]
ポリイミドIの固形分が65質量%、1,3−ビス(4,5−ジヒドロ−2−オキサゾリル)ベンゼン(PBO)が5質量%、ホスファゼン化合物Aが30質量%になるように樹脂組成物を調製し、γ−ブチロラクトンで樹脂組成物の総固形分が40質量%になるように希釈し、この樹脂組成物溶液を用いて25μm厚みの樹脂組成物層を有する積層体を作製した。
【0339】
それ以外は、実施例32と同様に実施し、多層フレキシブル配線板を作製した。得られた基板の配線回路層上の樹脂層最小厚み及び表面凹凸量を断面観察により測定し、チップ実装性、折り曲げ実装性評価を実施した。結果を表8に示す。
【0340】
[実施例36]
ポリイミドGの固形分が47質量%、1,3−ビス(4,5−ジヒドロ−2−オキサゾリル)ベンゼン(PBO)が11質量%、ホスファゼン化合物Bが10質量%、複合水酸化マグネシウム(商品名:MGZ−5R、堺化学工業社製)が30質量%、酸化防止剤としてイルガノックス245(IRG245、BASF社製)が2質量%になるように樹脂組成物を調製し、γ−ブチロラクトンで樹脂組成物の総固形分が40質量%になるように希釈し、この樹脂組成物溶液を用いて25μm厚みの樹脂組成物層を有する積層体を作製した。
【0341】
それ以外は、実施例32と同様に実施し、多層フレキシブル配線板を作製した。得られた基板の配線回路層上の樹脂層最小厚み及び表面凹凸量を断面観察により測定し、チップ実装性、折り曲げ実装性評価を実施した。結果を表8に示す。
【0342】
[実施例37]
ポリイミドGの固形分が49質量%、1,3−ビス(4,5−ジヒドロ−2−オキサゾリル)ベンゼン(PBO)が5質量%、3官能エポキシ樹脂(商品名:VG3101、プリンテック社製)が4質量%、複合水酸化マグネシウム(商品名:MGZ−5R、堺化学工業社製)が40質量%、酸化防止剤としてイルガノックス245(IRG245、BASF社製)が2質量%になるように樹脂組成物を調製し、γ−ブチロラクトンで樹脂組成物の総固形分が40質量%になるように希釈し、この樹脂組成物溶液を用いて25μm厚みの樹脂組成物層を有する積層体を作製した。
【0343】
それ以外は、実施例32と同様に実施し、多層フレキシブル配線板を作製した。得られた基板の配線回路層上の樹脂層最小厚み及び表面凹凸量を断面観察により測定し、チップ実装性、折り曲げ実装性評価を実施した。結果を表8に示す。
【0344】
[比較例17]
前記樹脂付銅箔の樹脂組成物層が10μm厚であること以外は、実施例32と同様に実施し、多層フレキシブル配線板を作製した。得られた基板の配線回路層上の樹脂層最小厚み及び表面凹凸量を断面観察により測定し、チップ実装性、折り曲げ実装性評価を実施した。結果を表8に示す。
【0345】
[比較例18]
前記樹脂付銅箔の樹脂組成物層が60μm厚であること以外は、実施例32と同様に実施し、多層フレキシブル配線板を作製した。得られた基板の配線回路層上の樹脂層最小厚み及び表面凹凸量を断面観察により測定し、チップ実装性、折り曲げ実装性評価を実施した。結果を表8に示す。
【0346】
[比較例19]
ポリイミドIの固形分が57質量%、1,3−ビス(4,5−ジヒドロ−2−オキサゾリル)ベンゼン(PBO)が8質量%、両末端型のフェノール変性シリコーンとしてX−22−1821(水酸基価38mgKOH/g、信越化学社製)を5質量%、ホスファゼン化合物Aが30質量%になるように樹脂組成物を調製し、γ−ブチロラクトンで樹脂組成物の総固形分が40質量%になるように希釈し、この樹脂組成物溶液を用いて25μm厚みの樹脂組成物層を有する積層体を作製した。この積層体に関してブリードアウト試験を実施したところ、ブリードアウト量は110mg/m
2であった。
【0347】
それ以外は、実施例32と同様に実施し、多層フレキシブル配線板を作製した。得られた基板の配線回路層上の樹脂層最小厚み及び表面凹凸量を断面観察により測定し、チップ実装性、折り曲げ実装性評価を実施した。結果を表8に示す。
【0348】
[ポリイミドQの合成例]
三口セパラブルフラスコに窒素導入管、温度計、水分分離トラップを備えた玉付冷却管を取り付けた。オイルバス室温でN−メチル−2−ピロリドン(NMP)330g、2,2’−ビス(4−(4−アミノフェノキシ)フェニル)プロパン40g、3,3’,4,4’−ジフェニルスルホンテトラカルボン酸二無水物50gを少しずつ添加した後、180℃まで昇温し、3時間加熱した。反応中、副生する水は、トルエンと共沸し、水分分離トラップを備えた玉付冷却管を用いて、還流下、脱水を行った。副生水を抜いた後、還流を止め、トルエンを全抜きし、室温まで冷却した。次に生成物を5μmのフィルターで加圧ろ過することでポリイミドQワニスを得た。重量平均分子量は110000であった。
【0349】
[エポキシ樹脂Aの調製例]
ナフタレン骨格エポキシ樹脂(日本化薬(株)製「NC−7000L」)29.9g、ポリアミドイミド樹脂(東洋紡績(株)製「HR15ET」)30g、スチレン・ブタジエン系エラストマー(旭化成ケミカルズ(株)製「タフプレン」)15gを固形分濃度が40質量%になるようにN−メチル−2−ピロリドンで希釈し、エポキシ樹脂Aの溶液を得た。
【0350】
[比較例20]
エポキシ樹脂Aの固形分が75質量%、エポキシの硬化剤としてアミノトリアジンノボラック樹脂(DIC(株)製「LA−1356」)が10質量%、ホスファゼン化合物Aが30質量%、硬化促進剤として2−エチル−4−メチルイミダゾール(四国化成工業(株)製「2E4MZ」)が0.1質量%になるように樹脂組成物を調製し、N−メチル−2−ピロリドンで樹脂組成物の総固形分が40質量%になるように希釈し、この樹脂組成物溶液を用いて25μm厚みの樹脂組成物層を有する積層体を作製した。
【0351】
それ以外は、実施例32と同様に実施し、多層フレキシブル配線板を作製した。得られた基板の配線回路層上の樹脂層最小厚み及び表面凹凸量を断面観察により測定し、チップ実装性、折り曲げ実装性評価を実施した。結果を表8に示す。
【0352】
[比較例21]
下記の手順で、樹脂2層の積層体を製作した。まず、ポリイミドQの樹脂組成物溶液を12μm厚の電解銅箔(F2−WS、古河電工製)上にバーコータを用いて塗布し、その後95℃に加温されたオーブン中で15分加熱処理し、その後120℃で3時間真空乾燥処理をして樹脂厚12.5μmである樹脂付き銅箔を得た。さらにこの樹脂付き銅箔の樹脂面側に比較例20の樹脂組成物が15μm厚みになるように塗工してから95℃で15分加熱処理し、その後90℃で30分間真空乾燥し、樹脂総厚27.5μmの2層構造の積層体を作製した。
【0353】
それ以外は、実施例32と同様に実施し、多層フレキシブル配線板を作製した。得られた基板の配線回路層上の樹脂層最小厚み及び表面凹凸量を断面観察により測定し、チップ実装性、折り曲げ実装性評価を実施した。結果を表8に示す。
【0354】
【表8】
【0355】
なお、表8中、厚みT1は、プレス前の樹脂組成物層厚みを示す。厚みT2は、回路配線上の樹脂層最小厚みを示す。
【0356】
表8の結果より、実施例32〜37の厚み15〜40μmの樹脂付き銅箔を用いて作製したフレキシブル基板において、フレキシブル部の反発力が0.06〜0.28N/mmの結果が得られた。また、ブリードアウト量も少なく、銅との密着性が優れているため、折り曲げ実装性の評価はいずれも良好であった。
【0357】
オキサゾリン化合物を含む樹脂組成物である実施例32〜36においては、特に折り曲げ実装性に優れ、かつ骨格中にテトラメチレンオキシド基を含有するポリイミドGを含む実施例32〜34、36に関してはとりわけ折り曲げ実装性に優れていた。また、膜厚15〜25μmの樹脂付銅箔を用いたフレキシブル基板に関しても特に折り曲げ実装性に優れていた。
【0358】
また、実施例32〜37においては、配線上の樹脂組成物層最小薄みが、5〜30μmの領域において、アスペクト比0.9のスルーホール直上及び銅厚12μmでL/S=50/50μmの回路直上における樹脂層表面の凹凸が5μm以下であり、さらに実施例33〜36においては、樹脂層表面の凹凸が3μm以下であり、平滑性に優れていると共にチップ実装性に優れていた。
【0359】
多層フレキシブル配線板には折り曲げ半径を小さくしてマザーボードやモジュール基板又は表示装置などと共に折り曲げて実装されるため、実装部の剥離耐性や接続信頼性、組み込み作業のし易さの要求から、折り曲げ半径の小径化での低い反発力が求められる。
【0360】
以上の結果より、実施例32〜37は、フレキシブル部の曲率半径を小さくして折り曲げた時の反発力が小さく、コア基板の配線回路上に積層される外層基板の樹脂組成物層の膜厚を薄くすることができるため、折り曲げ実装性、及び実装部での半導体素子の実装性を改善するのに好適に用いることが分かる。
【0361】
一方、膜厚10μmの樹脂付銅箔を用いた比較例17においては、導体層状の樹脂層最小厚みが2μmであり、被覆が不十分であると共にスルーホール内にもボイドが確認され、表面平滑性も悪い結果となっており、チップ実装評価のリフローにおいてチップの浮きが確認された。また、膜厚60μmの樹脂付銅箔を用いた比較例18においては、表面平滑性は良好なものの、反発力が大きく、折り曲げ実装性が悪い結果となった。
【0362】
比較例19においては、表面平滑性が良好で低反発力であるが、折り曲げ実装性評価時に樹脂層と内層コア基板の銅との界面でデラミネーションが発生した。比較例19の樹脂組成物においては経時で表面にブリードアウトが確認されており、折り曲げ実装性評価の温度サイクル中にブリードアウト成分由来の銅との密着力の低下が発生し、折り曲げによる応力に耐え切れず、銅との界面で剥離したと考えられる。
【0363】
また、エポキシ樹脂を用いた比較例20及びエポキシ樹脂と高弾性率のポリイミドQの2層構造である樹脂付き銅箔を用いた比較例21においては、反発力が高く、かつ樹脂面の平滑性にも劣るため、チップ実装評価、折り曲げ実装評価共に悪い結果となった。
【0364】
これらの結果から、比較例17〜比較例21に係る樹脂組成物は、折り曲げ実装性、及び実装部での半導体素子の実装性を改善するという観点で不向きであることが分かる。
【0365】
(第4の実施の形態)
以下、第4の実施の形態に係る実施例38〜43について説明する。
[フェノールノボラック樹脂A]
撹拌装置、コンデンサー、及び窒素ガス導入管を備えたガラス製反応釜に、フェノール404.2g(4.30モル)、4,4’−ジ(クロロメチル)ビフェニル150.70g(0.6モル)を仕込み100℃で3時間反応させ、その後42%ホルマリン水溶液28.57g(0.4モル)を添加し、その後、100℃で3時間反応させた。その間、生成するメタノールを留去した。反応終了後、得られた反応溶液を冷却し、水洗を3回行った。油層を分離し、減圧蒸留により未反応フェノールを留去することにより251gのフェノールノボラック樹脂Aを得た。
【0366】
[ポリイミドR]
三口セパラブルフラスコに窒素導入管、温度計、水分分離トラップを備えた玉付冷却管を取り付けた。オイルバス室温で、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン(DMI)344g、トルエン90g、ジメチルスルホキシド78.4g、2,2’−ビス(3−アミノ−4−ヒドロキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン(6FAP)48.8g、ポリアルキルエーテルジアミンBaxxodur(TM) EC302(BASF社製)112.8gを入れ均一になるまで攪拌した。さらに、3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物(BPDA)120gを少しずつ添加した後、180℃まで昇温し、3時間加熱した。反応中、副生する水は、トルエンと共沸し、水分分離トラップを備えた玉付冷却管を用いて、還流下、脱水を行った。副生水を抜いた後、還流を止め、トルエンを全抜きし、室温まで冷却した。次に生成物を5μmのフィルターで加圧ろ過することでポリイミドRワニスを得た。重量平均分子量は28000であった。
【0367】
このポリイミドAワニスを蒸留水中に投じて、再沈殿させ、得られた沈殿物を真空乾燥機で乾燥し、ポリイミドR固形物を得た。
【0368】
[ポリイミドS]
三口セパラブルフラスコに窒素導入管、温度計、水分分離トラップを備えた玉付冷却管を取り付けた。オイルバス室温で、トリエチレングリコールジメチルエーテル(22.5g)、γ―ブチロラクトン(52.5g)、トルエン(20.0g)、4,4’−オキシジフタル酸二無水物(ODPA)1.00g、両末端酸二無水物変性シリコーン(X−22−2290AS、信越化学(株)製)35.00gを入れ均一になるまで攪拌した。さらに、2,2’−ビス(3−アミノ−4−ヒドロキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン(6FAP)14.00g、を少しずつ添加した後、180℃まで昇温し、2時間加熱した。反応中、副生する水は、トルエンと共沸し、水分分離トラップを備えた玉付冷却管を用いて、還流下、脱水を行った。副生水を抜いた後、還流を止め、トルエンを全抜きし、室温まで冷却した。次に生成物を5μmのフィルターで加圧ろ過することでポリイミドSワニスを得た。重量平均分子量は27000であった。
【0369】
[評価S:ゴム硬度]
ゴム硬度は、JISK6253に従い、デュロメータ(タイプA)にて測定した。
【0370】
[評価T:表面平滑性の評価]
実施例38〜43記載の方法により作製した多層フレキシブル配線板のコア基板の配線回路(銅配線厚み平均25μm、配線ピッチ130μm〜500μm)や貫通ビア(ビア径100μmφ、ビア深さ約60μm)での表面平滑性の評価は断面構造解析により実施した。まず基板をエポキシ樹脂で包埋し、貫通ビアや配線回路の断面方向に研磨加工を行った後、測長機能付光学顕微鏡観察により評価した。表面平滑性は銅配線回路上と回路間との段差が5μm以内ならば○とし、5μmを超えた場合は×とした。
【0371】
[部品実装性]
実施例38〜43記載の方法により作製した多層フレキシブル配線板の外層に形成した回路パターンにはんだペースト(鉛フリーはんだM705、千住金属社製)を印刷した後、チップマウンターによりチップ抵抗器(1005チップ、エヌエスアイ社製)を自動で乗せた後、最高到達温度条件が250℃で5秒間のリフロー処理を2回通して部品実装を行い、目視検査によりはんだ実装の位置ずれ、部品の浮き、傾きがいずれも認められず、またフィレット形状にも異常が認められなかったものを○、いずれかに異常が認められたものをとした×とした。
【0372】
[層間絶縁信頼性]
実施例38〜43記載の方法により作製した多層フレキシブル配線板の絶縁層の内層及び外層の相対する位置に形成した0.5mmΦの円形電極パターンを用いて、85℃85%RHの恒温恒湿オーブン内で50VDCを1000時間連続で印加した時の絶縁抵抗値を測定した。絶縁抵抗値が10
6Ω以上であったものを○、10
6Ω未満になったものを×とした。
【0373】
[実施例38]
内層のコア基板として両面フレキシブル配線板としてエスパネックスM(新日鉄化学製、銅箔厚み12μm、絶縁性樹脂層厚20μm)を用いた。両面フレキシブル配線板には、ドリル加工及び銅めっき処理により100μmφを形成した。また最少130μmピッチの銅配線回路(28μm厚)を形成した。
【0374】
次にフェノールノボラック樹脂Aを10g、オキサゾリン基を含有する化合物として1,3−ビス(4,5−ジヒドロ−2−オキサゾリル)ベンゼン(PBO)を2g、難燃剤としてホスファゼン化合物Aを4g、溶剤としてN−メチルピロリドンを40g用いて、樹脂組成物溶液を調合した。
【0375】
外層材となる樹脂付き銅箔は、前記樹脂組成物溶液を12μm厚の電解銅箔(F2−WS、古河電工製)上にバーコータを用いて塗布し、その後95℃に加温されたオーブン中で12分乾燥処理をして得た。この樹脂付き銅箔をコア基板の上下面に重ねて置き、さらに両面から離形用フィルムで挟んだものを準備した。
【0376】
真空積層装置は、真空プレス装置(北川精機製)の上下両面定盤の全面に、内部にガラスクロスを含んでいる硬度50度の耐熱シリコンラバーを全面に貼りあわせたものを用いた。シリコンラバーは50cm角サイズとした。積層方法としては、シリコンラバー表面温度を120℃に予め加温した状態で、前記の積層体を入れ、2分間加圧しない状態で真空引きを行い、その後圧力1MPaで5分間加圧し積層した。周辺からの樹脂フロー量は約50μmであった。
【0377】
次に、外層の銅箔と内層の銅箔との間の接続のため、外層の銅箔上にDFをラミネートした後、露光・現像、及びエッチングにより、所定の位置の銅箔を除去してブラインドビアが必要な部位に200μmφのコンフォーマルマスクを形成した。
【0378】
次に、銅箔が除去された部位に、露出した樹脂組成物層に、50℃に加温した3質量%水酸化ナトリウム水溶液を約45秒間スプレーして樹脂組成物層を除去でき、ブラインドビアを形成した。
【0379】
次に、硬化乾燥炉を用いて、180℃で1時間加熱することにより、樹脂組成物層を硬化させた。得られたブラインドビアの壁面や底部には、樹脂残渣が観測されず、ブラインドビア形成は良好であり、過マンガン酸カリウム水溶液などによるデスミア工程は不要であった。
【0380】
次に、内層コア基板との電気的接続を取るためブラインドビアへのめっき処理を行った。まず穴内壁の樹脂硬化物層にカーボン微粒子を付着させ導電性粒子層を形成した。形成方法としてカーボンブラック分散液に浸漬後、酸系水溶液で分散煤を除去した。その後電解銅めっきを施して両面の電気的接続を完了させた。
【0381】
次に、従来の多層フレキシブル配線板と同様の回路形成工程を行った。以降の工程も従来のフレキシブル配線板の製造方法と同様にして実施した。
【0382】
このように製造した多層フレキシブル配線板の内層コア基板への樹脂埋め込み性や、銅配線回路での表面平滑性については、エポキシ樹脂で包埋した後に断面研磨を行い、光学顕微鏡で観察を行った。樹脂組成物の組成、プレス条件、樹脂フロー量及び評価結果を表9に示す。
【0383】
内層基板の貫通孔への樹脂埋め込みでは埋め込み不良による空隙などは確認されなかった。また表面平滑性についても銅配線上と配線間での基板厚の差異は5μm以内であった。また部品実装されたチップ抵抗器のはんだ実装性不良は確認されなかった。また層間絶縁信頼性を評価したところ、良好であった。
【0384】
以上のように、実施例38で作製した多層フレキシブル基板は、部品実装性及び層間絶縁信頼性に優れていた。
【0385】
[実施例39]
実施例38で作製した両面フレキシブル配線板をコア基板として用いた。次にポリイミドR固形物に、樹脂組成物溶液の固形分が40質量%になるようにγ−ブチロラクトン:ジメチルスルホキシド(DMSO)=80:20の混合溶媒を添加し、かつ接着性樹脂ワニスの固形分合計を100質量%とした際に、樹脂組成物溶液の中のポリイミドRが60質量%、オキサゾリン基を含有する化合物として1,3−ビス(4,5−ジヒドロ−2−オキサゾリル)ベンゼン(PBO)が15質量%、難燃剤としてホスファゼン化合物Aとホスファゼン化合物Bをそれぞれ6質量%と18質量%、酸化防止剤としてイルガノックス245(IRG245、BASF製)を1質量%になるように樹脂組成物溶液を調合した。
【0386】
外層材となる樹脂付き銅箔は、前記樹脂組成物溶液を12μm厚の電解銅箔(F2−WS、古河電工製)上にバーコータを用いて塗布し、その後110℃に加温されたオーブン中で12分乾燥処理をして得た。この樹脂付き銅箔をコア基板の上下面に重ねて置き、さらに両面から離形用フィルムで挟んだものを準備した。
【0387】
次いで、真空プレス装置の上下両面定盤の全面に、内部にガラスクロスを含んでいる硬度50度の耐熱シリコンラバーを全面に貼りあわせたものを用いて、実施例1と同様に積層した。積層方法としては、シリコンラバー表面温度を100℃に予め加温した状態で、前記の積層体を入れ、2分間加圧しない状態で真空引きを行い、その後圧力1MPaで2分間加圧し積層した。周辺からの樹脂フロー量は約80μmであった。
【0388】
次に、外層の銅箔と内層の銅箔との間の接続のため、外層の銅箔上にDFをラミネートした後、露光・現像、及びエッチングにより、所定の位置の銅箔を除去してブラインドビアが必要な部位に150μmφのコンフォーマルマスクを形成した。
【0389】
次に、銅箔が除去された部位に、露出した樹脂組成物層(アルカリ可溶性樹脂)に、50℃に加温した3質量%水酸化ナトリウム水溶液を約30秒間スプレーして樹脂組成物層を除去し、ブラインドビアを形成した。
【0390】
次に、硬化乾燥炉を用いて、180℃で1時間加熱することにより、樹脂組成物層を硬化させた。得られたブラインドビアの壁面や底部には、樹脂残渣が観測されず、ブラインドビア形成は良好であり、過マンガン酸カリウム水溶液などによるデスミア工程は不要であった。
【0391】
次に、内層コア基板との電気的接続を取るためブラインドビアへのめっき処理を行った。まず穴内壁の樹脂硬化物層にカーボン微粒子を付着させ導電性粒子層を形成した。形成方法としてカーボンブラック分散液に浸漬後、酸系水溶液で分散煤を除去した。その後電解銅めっきを施して両面の電気的接続を完了させた。
【0392】
次に、従来の多層フレキシブル配線板と同様の回路形成工程を行った。以降の工程も従来のフレキシブル配線板の製造方法と同様にして実施した。
【0393】
このように製造した多層フレキシブル配線板の内層コア基板への未硬化接着性樹脂埋め込み性や、銅配線回路での表面平滑性については、エポキシ樹脂で包埋した後に断面研磨を行い、光学顕微鏡で観察を行った。樹脂組成物の組成、プレス条件、樹脂フロー量及び評価結果を表9に示す。
【0394】
内層基板の貫通孔への樹脂埋め込みでは埋め込み不良による空隙などは確認されなかった。また表面平滑性についても銅配線上と配線間での基板厚の差異は3μm以内であった。また部品実装されたチップ抵抗器のはんだ実装性不良は確認されなかった。また層間絶縁信頼性を評価したところ、良好であった。
【0395】
以上のように、実施例39で製造した多層フレキシブル基板は、部品実装性及び層間絶縁信頼性に優れていた。
【0396】
[実施例40]
実施例38で作製した両面フレキシブル配線板をコア基板として用いた。外層材となる樹脂付き銅箔は、実施例39より得られた樹脂組成物溶液を12μm厚の電解銅箔(F2−WS、古河電工製)上にバーコータを用いて塗布し、その後95℃に加温されたオーブン中で12分乾燥処理をして得た。この未硬化接着性樹脂付き銅箔をコア基板の上下面に重ねて置き、さらに両面から離形用フィルムで挟んだものを準備した。
【0397】
次いで、真空プレス装置の上下両面定盤の全面に、内部にガラスクロスを含んでいる硬度50度の耐熱シリコンラバーを全面に貼りあわせたものを用いて、実施例38と同様に積層した。積層方法としては、シリコンラバー表面温度を120℃に予め加温した状態で、前記の積層体を入れ、2分間加圧しない状態で真空引きを行い、その後圧力1MPaで2分間加圧し積層した。周辺からの樹脂フロー量は約150μmであった。
【0398】
次に、外層の銅箔と内層の銅箔との間の接続のため、外層の銅箔上にDFをラミネートした後、露光・現像、及びエッチングにより、所定の位置の銅箔を除去してブラインドビアが必要な部位に75μmφのコンフォーマルマスクを形成した。
【0399】
次に、銅箔が除去された部位に、露出した樹脂組成物層に、50℃に加温した3質量%水酸化ナトリウム水溶液を約20秒間スプレーして樹脂組成物層を除去し、ブラインドビアを形成した。
【0400】
次に、硬化乾燥炉を用いて、95℃で3時間加熱した後、さらに180℃で1時間加熱することにより、樹脂組成物層を硬化させた。得られたブラインドビアの壁面や底部には、樹脂残渣が観測されず、ブラインドビア形成は良好であり、過マンガン酸カリウム水溶液などによるデスミア工程は不要であった。
【0401】
次に、内層コア基板との電気的接続を取るためブラインドビアへのめっき処理を行った。まず穴内壁の樹脂硬化物層にカーボン微粒子を付着させ導電性粒子層を形成した。形成方法としてカーボンブラック分散液に浸漬後、酸系水溶液で分散煤を除去した。その後電解銅めっきを施して両面の電気的接続を完了させた。
【0402】
次に、従来の多層フレキシブル配線板と同様の回路形成工程を行った。以降の工程も従来のフレキシブル配線板の製造方法と同様にして実施した。
【0403】
このように製造した多層フレキシブル配線板の内層コア基板への樹脂埋め込み性や、銅配線回路での表面平滑性については、エポキシ樹脂で包埋した後に断面研磨を行い、光学顕微鏡で観察を行った。樹脂組成物の組成、プレス条件、樹脂フロー量及び評価結果を表9に示す。
【0404】
内層スルーホールへの樹脂埋め込みでは埋め込み不良による空隙などは確認されなかった。また表面平滑性については銅配線上と配線間での基板厚の差異が5μm以内であった。また部品実装されたチップ抵抗器のはんだ実装性不良は確認されなかった。また層間絶縁信頼性を評価したところ、良好であった。
【0405】
以上のように、実施例40で作製した多層フレキシブル基板は、部品実装性及び層間絶縁信頼性に優れていた。
【0406】
[実施例41]
真空プレス装置の上下両面定盤の全面に、内部にガラスクロスを含んでいる硬度30度の耐熱シリコンラバーを全面に貼りあわせたものを用いて、積層した以外は実施例40と同様に基板を作製した。実施例41において、積層工程後の周辺からの樹脂フロー量は約60μmであった。
【0407】
このように製造した多層フレキシブル配線板の内層コア基板への樹脂埋め込み性や、銅配線回路での表面平滑性については、エポキシ樹脂で包埋した後に断面研磨を行い、光学顕微鏡で観察を行った。樹脂組成物の組成、プレス条件、樹脂フロー量及び評価結果を表9に示す。
【0408】
内層スルーホールへの樹脂埋め込みでは埋め込み不良による空隙などは確認されなかった。また表面平滑性については銅配線上と配線間での基板厚の差異が5μm以内であった。また部品実装されたチップ抵抗器のはんだ実装性不良は確認されなかった。また層間絶縁信頼性を評価したところ、良好であった。
【0409】
以上のように、実施例41で作製した多層フレキシブル基板は、部品実装性及び層間絶縁信頼性に優れていた。
【0410】
[実施例42]
真空プレス装置の上下両面定盤の全面に、内部にガラスクロスを含んでいる硬度70度の耐熱シリコンラバーを全面に貼りあわせたものを用いて、積層した以外は実施例40と同様に基板を作製した。実施例42において、積層工程後の周辺からの樹脂フロー量は約100μmであった。
【0411】
このように製造した多層フレキシブル配線板の内層コア基板への樹脂埋め込み性や、銅配線回路での表面平滑性については、エポキシ樹脂で包埋した後に断面研磨を行い、光学顕微鏡で観察を行った。樹脂組成物の組成、プレス条件、樹脂フロー量及び評価結果を表9に示す。
【0412】
内層スルーホールへの樹脂埋め込みでは埋め込み不良による空隙などは確認されなかった。また表面平滑性については銅配線上と配線間での基板厚の差異が5μm以内であった。また部品実装されたチップ抵抗器のはんだ実装性不良は確認されなかった。また層間絶縁信頼性を評価したところ、良好であった。
【0413】
以上のように、実施例42で作製した多層フレキシブル基板は、部品実装性及び層間絶縁信頼性に優れていた。
【0414】
[実施例43]
実施例1で作製した両面フレキシブル配線板をコア基板として用いた。
【0415】
樹脂組成物溶液の中のポリイミドSが69質量%、オキサゾリン基を含有する化合物として1,3−ビス(4,5−ジヒドロ−2−オキサゾリル)ベンゼン(PBO)が6質量%、難燃剤としてホスファゼン化合物Aが25質量%となるように樹脂組成物溶液を調合した。外層材となる樹脂付き銅箔は、前記樹脂組成物溶液を12μm厚の電解銅箔(F2−WS、古河電工製)上にバーコータを用いて塗布し、その後95℃に加温されたオーブン中で12分乾燥処理をして得た。この樹脂付き銅箔をコア基板の上下面に重ねて置き、さらに両面から離形用フィルムで挟んだものを準備した。
【0416】
真空積層装置は、真空プレス装置の上下両面定盤の全面に、内部にガラスクロスを含んでいる硬度50度の耐熱シリコンラバーを全面に貼りあわせたものを用いた。シリコンラバーは50cm角サイズとした。積層方法としては、シリコンラバー表面温度を120℃に予め加温した状態で、前記の積層体を入れ、2分間加圧しない状態で真空引きを行い、その後圧力1MPaで2分間加圧し積層した。周辺からの樹脂フロー量は約50μmであった。
【0417】
次に、外層の銅箔と内層の銅箔との間の接続のため、外層の銅箔上にDFをラミネートした後、露光・現像、及びエッチングにより、所定の位置の銅箔を除去してブラインドビアが必要な部位に75μmφのコンフォーマルマスクを形成した。同時にフレキ部となる部位も同じ工程にて銅箔を除去した。
【0418】
次に、銅箔が除去された部位に、露出した樹脂組成物層に、50℃に加温した3質量%水酸化ナトリウム水溶液を約20秒間スプレーして樹脂組成物層を除去し、ブラインドビアを形成とフレキ部アルカリ可溶性樹脂の除去を行った。
【0419】
次に、硬化乾燥炉を用いて、95℃で3時間加熱した後、さらに180℃で1時間加熱することにより、樹脂組成物層を硬化させた。得られたブラインドビアの壁面や底部には、樹脂残渣が観測されず、ブラインドビア形成は良好であり、過マンガン酸カリウム水溶液などによるデスミア工程は不要であった。
【0420】
次に、内層コア基板との電気的接続を取るためブラインドビアへのめっき処理を行った。まず穴内壁の樹脂硬化物層にカーボン微粒子を付着させ導電性粒子層を形成した。形成方法としてカーボンブラック分散液に浸漬後、酸系水溶液で分散煤を除去した。その後電解銅めっきを施して両面の電気的接続を完了させた。この工程で同時にフレキ部にも、ベースフイルム上に銅めっきが施された。
【0421】
次に、従来の多層フレキシブル配線板と同様の回路形成工程を行った。この工程において、フレキ部に付いた銅めっきを同時にエッチングにより除去し、外層を除去した構造を形成した。これ以降の工程については、従来のフレキシブル配線板の製造方法と同様にして実施した。
【0422】
このように製造した多層フレキシブル配線板の内層コア基板への樹脂埋め込み性や、銅配線回路での表面平滑性については、エポキシ樹脂で包埋した後に断面研磨を行い、光学顕微鏡で観察を行った。樹脂組成物の組成、プレス条件、樹脂フロー量及び評価結果を表9に示す。
【0423】
内層スルーホールへの樹脂埋め込みでは埋め込み不良による空隙などは確認されなかった。また表面平滑性についても銅配線上と配線間での基板厚の差異は5μm以内であった。また部品実装されたチップ抵抗器のはんだ実装性不良は確認されなかった。また層間絶縁信頼性を評価したところ、良好であった。
【0424】
以上のように、実施例43で作製したフレキ部を有する多層フレキシブル配線板は、部品実装性及び層間絶縁信頼性に優れていた。
【0425】
[比較例22]
実施例38で作製した両面フレキシブル配線板をコア基板として用いた。外層材となる樹脂付き銅箔は、実施例43で用いた樹脂組成物溶液を12μm厚のポリエステルフィルム上にダイコーターを用いて塗布し、95℃、30分乾燥して、膜厚25μmのフィルムを作成した。この積層フィルムを電解銅箔(厚み12μm、F1−WS/古河電工社製)の粗面側に重ねて真空プレスを用いて90℃、0.5MPaで1分ラミネートして、片面フレキシブル基板を製作した。この銅箔上にドライフィルムをラミネートし、露光、現像した後、塩化第二鉄エッチングにより、所定の位置の銅箔を除去し、部位に75μmφ円孔のコンフォーマルマスクを形成した。さらに銅箔が除去された部位に、3質量%の水酸化ナトリウム溶液を30秒スプレーし樹脂組成物層を溶解除去して、ブラインドビアを形成した。次に裏面のポリエステルフィルムを剥離した後、硬化乾燥炉を用いて、180℃で1時間加熱することにより、樹脂組成物層を硬化させたものを作製した。
【0426】
次に、コア基板の上下両面に、ブラインドビアが形成された片面フレキシブル基板をそれぞれ所定の位置に位置あわせして、真空プレス装置の上下両面定盤の全面に、内部に補強材を含まない硬度50度の耐熱シリコンラバーを貼りあわせたものを用いて、120℃、4.0MPaで5分ラミネートを行い貼り合わせて多層フレキシブル基板を作製した。周辺からの樹脂フロー量は約1.3mmであった。
【0427】
次に多層フレキシブル配線板と同様のブラインドビアめっきを行い、電気的接続を完了させた。次に従来の多層フレキシブル配線板と同様の回路形成工程を行った。
【0428】
樹脂組成物の組成、プレス条件、樹脂フロー量及び評価結果を表9に示す。
【0429】
このように製造した多層フレキシブル配線板の内層コア基板への未樹脂埋め込み性や、銅配線回路での表面平滑性の評価では、内層基板の貫通孔への樹脂埋め込みでは空隙が確認された。また表面平滑性についても銅配線上と配線間での基板厚の差異は10μm以上であった。また部品実装されたチップ抵抗器の一部において、はんだ実装部でフィレット不良が確認された。また層間絶縁信頼性を評価したところ、不良であった。補強材を含まないラバー材を用いたことで、加圧時の表面の追従性が十分でなく、平滑性を付与することができなかったと推定される。また、樹脂のフロー量が大きく、膜厚が極端に薄い部位が面内に存在したため、層間絶縁不良が発生したと推測される。
【0430】
[比較例23]
実施例38で作製した両面フレキシブル配線板をコア基板として用いた。外層材となる樹脂付き銅箔は、実施例39で用いた樹脂組成物溶液を12μm厚のポリエステルフィルム上にダイコーターを用いて塗布し、95℃、30分乾燥して、膜厚25μmのフィルムを作成した。この積層フィルムを厚み12μmの電解銅箔(F1−WS)(古河電工社製)の粗面側に重ねて真空プレスを用いて90℃、0.5MPaで1分ラミネートして、片面フレキシブル基板を製作した。この銅箔上にドライフィルムをラミネートし、露光、現像した後、塩化第二鉄エッチングにより、所定の位置の銅箔を除去し、部位に75μmφ円孔のコンフォーマルマスクを形成した。さらに銅箔が除去された部位に、3質量%の水酸化ナトリウム溶液を30秒スプレーし樹脂組成物層を溶解除去して、ブラインドビアを形成した。次に裏面のポリエステルフィルムを剥離した後、硬化乾燥炉を用いて、180℃で1時間加熱することにより、樹脂組成物層を硬化させたものを作製した。
【0431】
次に、コア基板の上下両面に、ブラインドビアが形成された片面フレキシブル基板をそれぞれ所定の位置に位置あわせして、真空プレス装置の上下両面定盤の全面に、内部に補強材を含まない硬度50度の耐熱シリコンラバーを貼りあわせたものを用いて、120℃、4.0MPaで5分ラミネートを行い貼り合わせて多層フレキシブル基板を作製した。周辺からの樹脂フロー量は約1.5mmであった次に多層フレキシブル配線板と同様のブラインドビアめっきを行い、電気的接続を完了させた。次に従来の多層フレキシブル配線板と同様の回路形成工程を行った。
【0432】
樹脂組成物の組成、プレス条件、樹脂フロー量及び評価結果を表9に示す。
【0433】
このように製造した多層フレキシブル配線板の内層コア基板への樹脂埋め込み性や、銅配線回路での表面平滑性の評価では、内層基板の貫通孔への樹脂埋め込みでは空隙が確認された。また表面平滑性についても銅配線上と配線間での基板厚の差異は10μm以上であった。また部品実装されたチップ抵抗器の一部において、はんだ実装部でフィレット不良が確認された。また層間絶縁信頼性を評価したところ、不良であった。
【0434】
[比較例24]
実施例38で作製した両面フレキシブル配線板をコア基板として用いた。外層材となる樹脂付き銅箔は、実施例39で用いた樹脂組成物溶液を12μm厚のポリエステルフィルム上にダイコーターを用いて塗布し、95℃、30分乾燥して、膜厚25μmのフィルムを作成した。この積層フィルムを厚み12μmの電解銅箔(F1−WS)(古河電工社製)の粗面側に重ねて真空プレスを用いて90℃、0.5MPaで1分ラミネートして、片面フレキシブル基板を製作した。この銅箔上にドライフィルムをラミネートし、露光、現像した後、塩化第二鉄エッチングにより、所定の位置の銅箔を除去し、部位に75μmφ円孔のコンフォーマルマスクを形成した。さらに銅箔が除去された部位に、3質量%の水酸化ナトリウム溶液を30秒スプレーし樹脂組成物層を溶解除去して、ブラインドビアを形成した。次に裏面のポリエステルフィルムを剥離した後、硬化乾燥炉を用いて、180℃で1時間加熱することにより、樹脂組成物層を硬化させたものを作製した。
【0435】
次に、コア基板の上下両面に、ブラインドビアが形成された片面フレキシブル基板をそれぞれ所定の位置に位置あわせして、真空プレス装置の上下両面SUS定盤上に補強材やラバーも何も挟まずに、120℃、4.0MPaで5分ラミネートを行い貼り合わせて多層フレキシブル基板を作製した。周辺からの樹脂フロー量は約2.5mmであった。次に多層フレキシブル配線板と同様のブラインドビアめっきを行い、電気的接続を完了させた。次に従来の多層フレキシブル配線板と同様の回路形成工程を行った。
【0436】
樹脂組成物の組成、プレス条件、樹脂フロー量及び評価結果を表9に示す。
【0437】
このように製造した多層フレキシブル配線板の内層コア基板への樹脂埋め込み性や、銅配線回路での表面平滑性の評価では、内層基板の貫通孔への樹脂埋め込みでは空隙が確認された。また表面平滑性についても銅配線上と配線間での基板厚の差異は10μm以上であった。また部品実装されたチップ抵抗器の一部において、はんだ実装部でフィレット不良が確認された。また層間絶縁信頼性を評価したところ、不良であった。補強材もラバー材も用いずにSUS定磐で加圧すると、表面の追従性が全く取れず、平滑性を付与することができなかったと推定される。また、樹脂のフロー量が大きく、膜厚が極端に薄い部位が面内に存在したため、層間絶縁不良が発生したと推測される。
【0438】
【表9】