【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、1分子中に2個以上のチオール基を有するポリチオールモノマー、1分子中に2個以上の炭素−炭素二重結合を有するポリエンモノマー、及び、該ポリチオールモノマーと該ポリエンモノマーとの反応により形成されるチオエーテルオリゴマーを含有する重合性化合物、並びに、重合開始剤を含有する表示素子用封止剤である。
以下に本発明を詳述する。
【0008】
本発明者は、表示素子用封止剤に用いる重合性化合物として、1分子中に2個以上のチオール基を有するポリチオールモノマー、1分子中に2個以上の炭素−炭素二重結合を有するポリエンモノマー、及び、該ポリチオールモノマーと該ポリエンモノマーとの反応により形成されるチオエーテルオリゴマーを用いることにより、アウトガスの発生を抑制することができ、接着性、及び、硬化物の透明性に優れる表示素子用封止剤を得ることができることを見出し、本発明を完成させるに至った。
本発明の表示素子用封止剤は、更に、液晶汚染の発生や有機発光材料層へのダメージを防止することができる。
なお、本明細書において上記「表示素子」とは、液晶表示素子と有機EL表示素子とを表す。
【0009】
本発明の表示素子用封止剤は、重合性化合物として、1分子中に2個以上のチオール基を有するポリチオールモノマー(以下、単に「ポリチオールモノマー」ともいう)、1分子中に2個以上の炭素−炭素二重結合を有するポリエンモノマー(以下、単に「ポリエンモノマー」ともいう)、及び、該ポリチオールモノマーと該ポリエンモノマーとの反応により形成されるチオエーテルオリゴマー(以下、単に「チオエーテルオリゴマー」ともいう)を含有する。これらの成分を含有する本発明の表示素子用封止剤は、アウトガスの発生を抑制することができ、接着性、及び、硬化物の透明性に優れるものとなる。
【0010】
上記ポリチオールモノマーとしては、例えば、エタンジチオール、プロパンジチオール、ヘキサメチレンジチオール、デカメチレンジチオール等の脂肪族ポリチオールや、トリレン−2,4−ジチオール、キシレンジチオール等の芳香族ポリチオールや、下記式(1)で表される1,4−ジチアン環含有ポリチオール化合物等の環状スルフィド化合物や、エステル結合含有ポリチオール化合物や、ジグリコールジメルカプタン、トリグリコールジメルカプタン、テトラグリコールジメルカプタン、チオジグリコールジメルカプタン、チオトリグリコールジメルカプタン、チオテトラグリコールジメルカプタン、トリス−(3−メルカプトプロピオニルオキシ)−エチルイソシアヌレート、テトラエチレングリコール−ビス(3−メルカプトプロピオネート)、トリメチロールプロパントリス(3−メルカプトプロピオネート)、ペンタエリスリトール−テトラキス(3−メルカプトプロピオネート)、ジペンタエリスリトール−ヘキサキス(3−メルカプトプロピオネート)、4−(メルカプトメチル)−3,6−ジチアオクタン−1,8−ジチオール、4,8−ビス(メルカプトメチル)−3,6,9−トリチアウンデカン−1,11−ジチオール、1,3,4,6−テトラメルカプトプロピオニルグリコールウリル等のその他のポリチオールモノマー等が挙げられる。これらのポリチオールモノマーは、単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0011】
【化1】
【0012】
式(1)中、lは、1〜5の整数を表す。
【0013】
上記式(1)で表される1,4−ジチアン環含有ポリチオール化合物としては、具体的には例えば、2,5−ジメルカプトメチル−1,4−ジチアン、2,5−ジメルカプトエチル−1,4−ジチアン、2,5−ジメルカプトプロピル−1,4−ジチアン、2,5−ジメルカプトブチル−1,4−ジチアン等が挙げられる。
【0014】
上記ポリチオールモノマーのなかでも、得られる表示素子用封止剤が透明性に優れるものとなるため、エステル結合含有ポリチオールモノマーが好ましい。
【0015】
上記エステル結合含有ポリチオールモノマーとしては、具体的には例えば、トリメチロールプロパントリス(3−メルカプトプロピオネート)、トリス−[(3−メルカプトプロピオニルオキシ)−エチル]−イソシアヌレート、ペンタエリスリトールテトラキスチオグリコレート、ペンタエリスリトールテトラキス(3−メルカプトプロピオネート)、テトラエチレングリコールビス(3−メルカプトプロピオネート)等が挙げられる。
なかでも、トリメチロールプロパントリス(3−メルカプトプロピオネート)、ペンタエリスリトール−テトラキス(3−メルカプトプロピオネート)、ジペンタエリスリトール−ヘキサキス(3−メルカプトプロピオネート)、1,4−ジチアン環含有ポリチオール化合物が好ましく、トリメチロールプロパントリス(3−メルカプトプロピオネート)、ジペンタエリスリトール−ヘキサキス(3−メルカプトプロピオネート)、2,5−ジメルカプトメチル−1,4−ジチアンがより好ましい。
【0016】
また、上記ポリチオールモノマーは、1分子中に3個以上のチオール基を有するモノマー(3官能以上のポリチオールモノマー)を含有することが好ましい。
上記3官能以上のポリチオールモノマーとしては、1分子中に3〜20個のチオール基を有するモノマーが好ましく、1分子中に3〜8個のチオール基を有するモノマーを含有がより好ましい。
【0017】
上記重合性化合物全体100重量部中における上記ポリチオールモノマーの含有量の好ましい下限は5重量部、好ましい上限は40重量部である。上記ポリチオールモノマーの含有量が5重量部未満であると、塗工性が悪化することがある。上記ポリチオールモノマーの含有量が40重量部を超えると、アウトガスの発生を充分に抑制できなくなることがある。上記ポリチオールモノマーの含有量のより好ましい下限は10重量部、より好ましい上限は35重量部である。
【0018】
上記ポリエンモノマーとしては、例えば、(メタ)アリル化合物、(メタ)アクリル化合物、ジビニルベンゼン等が挙げられる。これらのポリエンモノマーは、単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
なお、本明細書において、上記「(メタ)アリル」とはアリル又はメタリルを意味し、上記「(メタ)アクリル」とは、アクリル又はメタクリル意味する。
【0019】
上記(メタ)アリル化合物としては、例えば、トリアリルシアヌレート、トリアリルイソシアヌレート、トリメタリルイソシアヌレート、ジアリルマレエート、ジアリルアジペート、ジアリルフタレート、トリアリルトリメリテート、テトラアリルピロメリテート、グリセリンジアリルエーテル、トリメチロールプロパンジアリルエーテル、ペンタエリスリトール、ジアリルエーテル、1,3−ジアリル−5−グリシジルイソシアヌレート、1,3,4,6−テトラアリルグリコールウリル、1,3,4,6−テトラアリル−3a−メチルグリコールウリル、1,3,4,6−テトラアリル−3a,6a−ジメチルグリコールウリル等が挙げられる。なかでも、トリアリルシアヌレート、トリアリルイソシアヌレート、1,3,4,6−テトラアリルグリコールウリルが好ましい。
【0020】
上記(メタ)アクリル化合物としては、アクリロイル基又はメタクリロイル基を1分子中に2個以上有する化合物であれば特に限定されず、例えば、(メタ)アクリル酸とエポキシ化合物との反応により得られるエポキシ(メタ)アクリレート、(メタ)アクリル酸に水酸基を有する化合物を反応させることにより得られるエステル化合物、イソシアネートに水酸基を有する(メタ)アクリル酸誘導体を反応させることにより得られるウレタン(メタ)アクリレート等が挙げられる。
なお、本明細書において、上記「(メタ)アクリレート」とは、アクリレート又はメタクリレートを意味し、上記「エポキシ(メタ)アクリレート」とは、エポキシ化合物中の全てのエポキシ基を(メタ)アクリル酸と反応させた化合物のことを表す。
【0021】
上記エポキシ(メタ)アクリレートは特に限定されず、例えば、(メタ)アクリル酸とエポキシ化合物とを、常法に従って塩基性触媒の存在下で反応させることにより得られるものが挙げられる。
上記エポキシ(メタ)アクリレートの原料となるエポキシ化合物としては、例えば、ビスフェノールA型エポキシ化合物、ビスフェノールF型エポキシ化合物、ビスフェノールS型エポキシ化合物、2,2’−ジアリルビスフェノールA型エポキシ化合物、水添ビスフェノール型エポキシ化合物、プロピレンオキシド付加ビスフェノールA型エポキシ化合物、レゾルシノール型エポキシ化合物、ビフェニル型エポキシ化合物、スルフィド型エポキシ化合物、ジフェニルエーテル型エポキシ化合物、ジシクロペンタジエン型エポキシ化合物、ナフタレン型エポキシ化合物、フェノールノボラック型エポキシ化合物、オルトクレゾールノボラック型エポキシ化合物、ジシクロペンタジエンノボラック型エポキシ化合物、ビフェニルノボラック型エポキシ化合物、ナフタレンフェノールノボラック型エポキシ化合物、グリシジルアミン型エポキシ化合物、アルキルポリオール型エポキシ化合物、ゴム変性型エポキシ化合物、グリシジルエステル化合物、ビスフェノールA型エピスルフィド化合物等が挙げられる。
【0022】
上記(メタ)アクリル酸に水酸基を有する化合物を反応させることにより得られるエステル化合物のうち、2官能のものとしては、例えば、1,4−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,3−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、1,9−ノナンジオールジ(メタ)アクリレート、1,10−デカンジオールジ(メタ)アクリレート、2−n−ブチル−2−エチル−1,3−プロパンジオールジ(メタ)アクリレート、ジプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコール(メタ)アクリレート、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、プロピレンオキシド付加ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、エチレンオキシド付加ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、エチレンオキシド付加ビスフェノールFジ(メタ)アクリレート、ジメチロールジシクロペンタジエンルジ(メタ)アクリレート、1,3−ブチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、エチレンオキシド変性イソシアヌル酸ジ(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシ−3−(メタ)アクリロイロキシプロピル(メタ)アクリレート、カーボネートジオールジ(メタ)アクリレート、ポリエーテルジオールジ(メタ)アクリレート、ポリエステルジオールジ(メタ)アクリレート、ポリカプロラクトンジオールジ(メタ)アクリレート、ポリブタジエンジオールジ(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0023】
また、上記エステル化合物のうち、3官能以上のものとしては、例えば、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、プロピレンオキシド付加トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、エチレンオキシド付加トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、カプロラクトン変性トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、エチレンオキシド付加イソシアヌル酸トリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、グリセリントリ(メタ)アクリレート、プロピレンオキシド付加グリセリントリ(メタ)アクリレート、トリス(メタ)アクリロイルオキシエチルフォスフェート等が挙げられる。
【0024】
また、上記ポリエンモノマーは、1分子中に3個以上の炭素−炭素二重結合を有するモノマー(3官能以上のポリエンモノマー)を含有することが好ましい。
上記3官能以上のポリエンモノマーとしては、1分子中に3〜20個の炭素−炭素二重結合を有するモノマーが好ましく、1分子中に3〜8個の炭素−炭素二重結合を有するモノマーがより好ましい。
【0025】
上記重合性化合物全体100重量部中における上記ポリエンモノマーの含有量の好ましい下限は5重量部、好ましい上限は40重量部である。上記ポリエンモノマーの含有量が5重量部未満であると、塗工性が悪化することがある。上記ポリエンモノマーの含有量が40重量部を超えると、ポリエンモノマーの未反応物が残りアウトガスが発生することがある。上記ポリエンモノマーの含有量のより好ましい下限は10重量部、より好ましい上限は35重量部である。
【0026】
上記ポリチオールモノマーと上記ポリエンモノマーとの配合割合としては、上記ポリチオールモノマーのチオール基と、上記ポリエンモノマーの炭素−炭素二重結合とのモル比がチオール基:炭素−炭素二重結合=3:1〜1:3となる範囲で配合することが好ましく、チオール基:炭素−炭素二重結合=2:1〜1:2となる範囲で配合することがより好ましい。
【0027】
本発明の表示素子用封止剤は、上記重合性化合物として、上記ポリエンモノマーに加えて、ポリエンオリゴマーを含有することが好ましい。上記ポリエンオリゴマーを含有することにより、アウトガスの発生を抑制する効果や塗布性を向上させることができる。
なお、本明細書において、上記「ポリエンオリゴマー」は、上記「ポリエンモノマー」には含まれない。
【0028】
上記ポリエンオリゴマーに由来するポリエンモノマーとしては、上述した、(メタ)アリル化合物(メタ)アクリル化合物、ジビニルベンゼン等が挙げられる。
【0029】
上記ポリエンオリゴマーを製造する方法としては、例えば、上記ポリエンモノマーを、後述する重合開始剤等の存在下で反応させる方法等が挙げられる。上記重合開始剤としては、光重合開始剤、熱重合開始剤が挙げられ、熱重合開始剤が好ましく用いられる。
【0030】
上記ポリエンオリゴマーの重量平均分子量の好ましい下限は300、好ましい上限は2万である。上記ポリエンオリゴマーの重量平均分子量が300未満であると、アウトガスの発生を抑制する効果を充分に向上させることができないことがある。上記ポリエンオリゴマーの重量平均分子量が2万を超えると、得られる表示素子用封止剤の粘度が高くなりすぎて塗工性が悪化することがある。上記ポリエンオリゴマーの重量平均分子量のより好ましい下限は400、より好ましい上限は4000である。
なお、本明細書において、上記「重量平均分子量」は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)で測定を行い、ポリスチレン換算により求められる値である。GPCによってポリスチレン換算による重量平均分子量を測定する際に用いるカラムとしては、例えば、Shodex LF−804(昭和電工社製)等が挙げられる。
【0031】
上記重合性化合物全体100重量部中における上記ポリエンオリゴマーの含有量の好ましい下限は30重量部、好ましい上限は90重量部である。上記ポリエンオリゴマーの含有量が30重量部未満であると、アウトガスの発生を更に抑制する効果が充分に発揮されなかったりする。上記ポリエンオリゴマーの含有量が90重量部を超えると、得られる表示素子用封止剤の粘度が高くなりすぎて塗工性が悪化することがある。上記チオエーテルオリゴマーの含有量のより好ましい下限は35重量部、より好ましい上限は80重量部である。
【0032】
本発明の表示素子用封止剤は、上記チオエーテルオリゴマーを含有することにより、表示素子用封止剤の粘度が適度に高くなり、塗工時にムラが生じにくいものとなる。
【0033】
上記チオエーテルオリゴマーは、上記ポリチオールモノマーと、上記ポリチオールモノマーに対して3:1〜1:3となる範囲で上記ポリエンモノマーとを、重合開始剤の存在下で光照射や加熱により付加重合反応させることにより重合体として反応混合物中に得られる。上記重合開始剤としては、光重合開始剤、熱重合開始剤が挙げられ、熱重合開始剤が好ましく用いられる。
なお、上記チオエーテルオリゴマーは、未反応チオール基や未反応炭素−炭素二重結合を含んでいてもよいし、未反応チオール基や未反応炭素−炭素二重結合を含んでいなくてもよい。即ち、上記ポリチオールモノマーと上記ポリエンモノマーとの付加重合反応を充分に進めて得られるチオール基や未反応炭素−炭素二重結合を含まないチオエーテルオリゴマーであってもよいし、該付加重合反応の途中で反応を停止させることにより得られる未反応チオール基や未反応炭素−炭素二重結合を含むチオエーテルオリゴマーであってもよい。
【0034】
上記熱重合開始剤としては特に限定されないが、熱ラジカル重合開始剤が好適に用いられる。
上記熱ラジカル重合開始剤としては、例えば、アゾ化合物、有機過酸化物等からなるものが挙げられる。
上記アゾ化合物としては、例えば、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)、アゾビスイソブチロニトリル等が挙げられる。
上記有機過酸化物としては、例えば、過酸化ベンゾイル、ケトンパーオキサイド、パーオキシケタール、ハイドロパーオキサイド、ジアルキルパーオキサイド、パーオキシエステル、ジアシルパーオキサイド、パーオキシジカーボネート等が挙げられる。
また、上記光重合開始剤としては、後述する本発明の表示素子用封止剤に含有される重合開始剤として挙げる光重合開始剤と同様のものを用いることができる。
【0035】
上述したポリチオールモノマーとポリエンモノマーとの付加重合反応において、ポリエンモノマーの炭素−炭素二重結合のモル数に対するポリチオールモノマーのチオール基のモル数(チオール基のモル数/炭素−炭素二重結合のモル数)が0.15以下である場合は、通常、得られる反応混合物中にポリエンモノマーが未反応成分として残る。
【0036】
なお、本発明の表示素子用封止剤は、上述したポリチオールモノマーとポリエンモノマーとの付加重合反応において、付加重合反応の途中で反応を停止させることにより得られるポリチオールモノマーとポリエンモノマーとチオエーテルオリゴマーの混合物に重合開始剤を含有させたものであってもよい。
また、上記チオエーテルオリゴマーは、予め作製したものをポリチオールモノマー及びポリエンモノマーと混合してもよい。
上記チオエーテルオリゴマーを予め作製する場合、上記チオエーテルオリゴマーの原料となるポリチオールモノマー及びポリエンモノマーは、上述した、本発明の表示素子用封止剤に含有されるポリチオールモノマー及びポリエンモノマーと同一のものであってもよいし、異なるものであってもよい。
【0037】
上記チオエーテルオリゴマーの重量平均分子量の好ましい下限は500である。上記チオエーテルオリゴマーの重量平均分子量が500未満であると、得られる表示素子用封止剤の塗工時のムラを防止する効果が充分に発揮されないことがある。上記チオエーテルオリゴマーの重量平均分子量は1500を超えることがより好ましく、2000以上であることが更に好ましい。
また、上記チオエーテルオリゴマーの重量平均分子量の好ましい上限は4万である。上記チオエーテルオリゴマーの重量平均分子量が4万を超えると、得られる表示素子用封止剤が、粘度が高くなりすぎて塗工性に劣るものとなる。上記チオエーテルオリゴマーの重量平均分子量のより好ましい上限は1万、更に好ましい上限は8000である。
【0038】
上記重合性化合物全体100重量部中における上記チオエーテルオリゴマーの含有量の好ましい下限は30重量部である。上記チオエーテルオリゴマーの含有量が30重量部未満であると、アウトガスの発生を充分に抑制することができなかったり、得られる表示素子用封止剤の塗工時のムラを防止する効果が充分に発揮されなかったりする。上記チオエーテルオリゴマーの含有量のより好ましい下限は35重量部、更に好ましい下限は40重量部である。
また、上記重合性化合物全体100重量部中における上記チオエーテルオリゴマーの含有量の好ましい上限は90重量部である。上記チオエーテルオリゴマーの含有量が90重量部を超えると、得られる表示素子用封止剤の粘度が高くなりすぎて塗工性が悪化することがある。上記チオエーテルオリゴマーの含有量のより好ましい上限は80重量部である。
【0039】
本発明の表示素子用封止剤全体中における、ポリチオールモノマーの含有量は5〜40重量%であり、ポリエンモノマーの含有量は5〜40重量%であり、チオエーテルオリゴマーの含有量は30〜90重量%であることが好ましい。上記ポリチオールモノマー、上記ポリエンモノマー、及び、上記チオエーテルオリゴマーの含有量がこの範囲であることにより、アウトガスの発生を抑制する効果、塗工性、接着性、及び、硬化物の透明性の全てにおいて、充分な効果を発揮できるものとなる。
【0040】
本発明の表示素子用封止剤は、本発明の目的を阻害しない範囲において、上記ポリチオールモノマー、上記ポリエンモノマー、上記ポリエンオリゴマー、及び、上記チオエーテルオリゴマー以外のその他の重合性化合物を含有してもよい。
上記その他の重合性化合物としては、光又は熱で硬化反応するものであれば特に限定されず、例えば、上述したエポキシ(メタ)アクリレートの原料となるエポキシ化合物や、部分(メタ)アクリル変性エポキシ化合物等が挙げられる。
なお、本明細書において上記「部分(メタ)アクリル変性エポキシ化合物」とは、1分子中に1個以上のエポキシ基と1個の(メタ)アクリロイル基とを有する化合物を意味する。また、本明細書において上記「(メタ)アクリロイル基」とは、アクリロイル基又はメタクリロイル基を意味する。
上記部分(メタ)アクリル変性エポキシ化合物は、例えば、1分子中に2個以上のエポキシ基を有するエポキシ化合物の1個のエポキシ基を(メタ)アクリル酸と反応させることによって得ることができる。
【0041】
本発明の表示素子用封止剤は、重合開始剤を含有する。
上記重合開始剤としては、光重合開始剤や上述した熱重合開始剤が挙げられ、光重合開始剤が好適に用いられる。
上記重合開始剤は、分子量の好ましい下限が250、好ましい上限が1500である。分子量が250〜1500の重合開始剤を用いることにより、本発明の表示素子用封止剤は、アウトガスの発生を抑制する効果に更に優れるものとなる。上記重合開始剤の分子量が250未満であると、アウトガス発生の原因となることがある。上記重合開始剤の分子量が1500を超えると、硬化が不充分となることがある。なかでも、アウトガスの発生を低減する等の観点から、上記重合開始剤の分子量のより好ましい下限は300、より好ましい上限は1050、更に好ましい下限は348、更に好ましい上限は790である。
【0042】
上記光重合開始剤としては、例えば、アシルホスフィンオキサイド骨格を有する化合物、α−アミノアセトフェノン骨格を有する重化合物、ベンジルケタール骨格を有する化合物、α−ヒドロキシアセトフェノン骨格を有する化合物、ベンゾイン骨格を有する化合物、オキシムエステル骨格を有する化合物、チタノセン骨格を有する化合物、有機過酸化物、アゾ化合物、オリゴマー化合物等が挙げられる。これらの光重合開始剤は単独で用いられてもよいし、2種以上が組み合わせて用いられてもよい。なかでも、光硬化性の観点から、アシルホスフィンオキサイド骨格を有する化合物、α−アミノアセトフェノン骨格を有する重化合物、ベンジルケタール骨格を有する化合物、α−ヒドロキシアセトフェノン骨格を有する化合物、ベンゾイン骨格を有する化合物、オキシムエステル骨格を有する化合物、チタノセン骨格を有する化合物、及び、オリゴマー化合物からなる群より選択される少なくとも一種であることが好ましく、アシルホスフィンオキサイド骨格を有する化合物、及び/又は、オリゴマー化合物であることがより好ましい。
ここで、上記アシルホスフィンオキサイド骨格を有する化合物とは、アシルホスフィンオキサイドの一部が別の基に置換した化合物を意味する。上記α−アミノアセトフェノン骨格を有する化合物とは、α−アミノアセトフェノンの一部が別の基に置換した化合物を意味する。上記ベンジルケタール骨格を有する化合物とは、α−ジヒドロキシアセトフェノンの一部が別の基に置換した化合物を意味する。上記α−ヒドロキシアセトフェノン骨格を有する化合物とは、α−モノヒドロキシアセトフェノンの水酸基以外の一部が別の基に置換した化合物を意味する。上記ベンゾイン骨格を有する化合物とは、ベンゾインの一部が別の基に置換した化合物を意味する。上記オキシムエステル骨格を有する化合物とは、N−アセチルジメチルオキシムの一部が別の基に置換した化合物を意味する。上記チタノセン骨格を有する化合物とは、チタノセンの一部が別の基に置換した化合物を意味する。上記有機過酸化物とは、ペルオキシ基を有する化合物を意味する。上記アゾ化合物とは、アゾ基を有する化合物を意味する。
【0043】
上記アシルホスフィンオキサイド骨格を有する化合物としては、例えば、2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキサイド(BASF Japan社製、「LUCILIN TPO」)、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)フェニルホスフィンオキサイド(BASF Japan社製、「IRGACURE 819」)等が挙げられる。
【0044】
上記α−アミノアセトフェノン骨格を有する化合物としては、例えば、2−メチル−1−(4−メチルチオフェニル)−2−モルフォリノプロパン−1−オン(BASF Japan社製、「IRGACURE 907」)、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルフォリノフェニル)ブタノン(BASF Japan社製、「IRGACURE 369」)、1,2−(ジメチルアミノ)−2−((4−メチルフェニル)メチル)−1−(4−(4−モルホリニル)フェニル)−1−ブタノン(BASF Japan社製、「IRGACURE 379」)等が挙げられる。
【0045】
上記ベンジルケタール骨格を有する化合物としては、例えば、2,2−ジメトキシ−1,2−ジフェニルエタン−1−オン(BASF Japan社製、「IRGACURE 651」)等が挙げられる。
【0046】
上記α−ヒドロキシアセトフェノン骨格を有する化合物としては、例えば、2−ヒドロキシ−1−(4−(4−(2−ヒドロキシ−2−メチル−プロピオニル)−ベンジル)フェニル)−2−メチル−プロパン−1−オン(BASF Japan社製、「IRGACURE 127」)等が挙げられる。
【0047】
上記オキシムエステル骨格を有する化合物としては、例えば、1−(4−(フェニルチオ)フェニル)−1,2−オクタンジオン2−(O−ベンゾイルオキシム)(BASF Japan社製、「IRGACURE OXE 01」)、O−アセチル−1−(6−(2−メチルベンゾイル)−9−エチル−9H−カルバゾール−3−イル)エタノンオキシム(BASF Japan社製、「IRGACURE OXE 02」)等が挙げられる。
【0048】
上記チタノセン骨格を有する化合物としては、例えば、ビス(η5−2,4−シクロペンタジエン−1−イル)−ビス(2,6−ジフルオロ−3−(1H−ピロール−1−イル)−フェニル)チタニウム(BASF Japan社製、「IRGACURE 784」)等が挙げられる。
【0049】
上記光重合開始剤として挙げたオリゴマー化合物は、アウトガスの発生を低減する観点から、重合度が2〜10のものが好ましく、更に、アウトガスが発生しにくいことから、水酸基やアミノ基等の水酸結合性官能基を有することが好ましい。
具体的には例えば、オリゴ(2−ヒドロキシ−2−メチル−1−(4−(1−メチルビニル)フェニル)プロパン)(Lamberti社製、「ESACURE KIP 150」、「ESACURE1」)、ポリエチレングリコール200−ジ(β−4(4−(2−ジメチルアミノ−2−ベンジル)ブタノニルフェニル)ピペラジン)(IGM社製、「Omnipol 910」)、(2−カルボキシメトキシチオキサントン)−(ポリテトラメチレングリコール250)ジエステル(IGM社製、「Omnipol TX」)、(カルボキシメトキシメトキシベンゾフェノン)−(ポリエチレングリコール250)ジエステル(IGM社製、「Omnipol BP」)等が挙げられる。
【0050】
上記重合開始剤の含有量は、上記重合性化合物全体100重量部に対して、好ましい下限が0.1重量部、好ましい上限が5重量部である。上記重合開始剤の含有量が0.1重量部未満であると、得られる表示素子用封止剤の硬化反応が充分に進行しないことがある。上記重合開始剤の含有量が5重量部を超えると、硬化反応が速くなりすぎて、作業性が低下したり、得られる表示素子用封止剤の硬化物が不均一となったりすることがある。上記重合開始剤の含有量のより好ましい下限は0.5重量部、より好ましい上限は4重量部である。
【0051】
本発明の表示素子用封止剤は、熱硬化剤を含有してもよい。
上記熱硬化剤は、硬化後の硬化物が透明となるものが好ましく、例えば、チオール化合物、イミダゾール誘導体、アミン化合物、多価フェノール系化合物、酸無水物等が挙げられる。上記熱硬化剤のうち市販されているものとしては、例えば、HN−2200、HN−2000、HN−5500、MHAC−P(いずれも日立化成社製)、フジキュアー7000、フジキュアー7001、フジキュアー7002、トーマイド410−N、トーマイド215−70X、トーマイド423、トーマイド437、トーマイドTXC−636−A(いずれもT&K TOKA社製)、MEH−8000H、MEH−8005(いずれも明和化成社製)等が挙げられる。
【0052】
本発明の表示素子用封止剤は、接着性付与剤を含有してもよい。
上記接着性付与剤としては、例えば、3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、N−(アミノエチル)アミノプロピルトリメトキシシラン、メルカプトプロピルトリメトキシシラン等のシランカップリング剤や、チタンカップリング剤や、アルミニウムカップリング剤等が挙げられる。これらの接着性付与剤は単独で用いられてもよいし、2種以上が併用されてもよい。
【0053】
本発明の表示素子用封止剤は、酸化防止等を目的として安定剤を含有してもよい。
上記安定剤としては、例えば、2,2’−メチレンビス−(4−メチル−6−t−ブチルフェノール)、4,4’−ブチリデンビス−(6−t−ブチル−3−メチルフェノール)、2,2’−メチレンビス−(4−エチル−6−t−ブチルフェノール)等が挙げられる。これらの安定剤は単独で用いられてもよいし、2種以上が併用されてもよい。
【0054】
本発明の表示素子用封止剤は、更に、本発明の目的を阻害しない範囲において、充填剤、硬化促進剤、可塑剤、界面活性剤、難燃剤、帯電防止剤、消泡剤、レベリング剤、紫外線吸収材、有機溶剤等の添加剤を含有してもよい。
【0055】
本発明の表示素子用封止剤を製造する方法としては、例えば、ポリチオールモノマー、ポリエンモノマー、チオエーテルオリゴマー、重合開始剤、及び、ポリエンオリゴマーや必要に応じて添加される接着性付与剤等を、撹拌機を用いて均一に混合する方法等が挙げられる。
【0056】
本発明の表示素子用封止剤は、コーンローター式粘度計を用いて、20℃、20rpmの条件で測定した粘度の好ましい下限が0.4Pa・s、好ましい上限が40Pa・sである。上記粘度が0.4Pa・s未満であると、得られる表示素子用封止剤に組成ムラが発生したり、塗工が困難になったり、得られる表示素子の表示特性が悪くなったりすることがある。上記粘度が40Pa・sを超えると、塗工が困難となることがある。上記粘度のより好ましい下限は0.5Pa・s、より好ましい上限は35Pa・s、更に好ましい下限は1Pa・s、更に好ましい上限は25Pa・sである。
【0057】
本発明の表示素子用封止剤は、硬化物の波長380〜780nmの領域での可視光の平均透過率が80%以上であることが好ましい。上記可視光の平均透過率が80%以上であることにより、透明性が求められる用途に好適に用いることができる。上記可視光の平均透過率は、95%以上であることがより好ましい。
なお、上記可視光の平均透過率を測定する硬化物は、本発明の表示素子用封止剤に対して、2000mJ/cm
2の紫外線を照射する方法により得ることができる。
【0058】
本発明の表示素子用封止剤は、厚さ100μmの硬化物を、昇温速度10℃/minで130℃まで加熱したときの重量減少率が0.15%以下であることが好ましい。上記重量減少率は、アウトガス発生量とみなすことができるため、0.15%以下であることにより、表示素子への悪影響を抑制できるものとなる。上記重量減少率は、0.1%以下であることがより好ましい。
なお、上記重量減少率を測定する硬化物は、厚さ100μmとなるように塗布した本発明の表示素子用封止剤に対して、2000mJ/cm
2の紫外線を照射する方法により得ることができる。
【0059】
本発明の表示素子用封止剤を光照射により硬化させる場合の硬化方法としては、例えば、300〜400nmの波長及び300〜3000mJ/cm
2の積算光量の光を照射する方法等が挙げられる。
【0060】
本発明の表示素子用封止剤に光を照射するための光源としては、例えば、低圧水銀灯、中圧水銀灯、高圧水銀灯、超高圧水銀灯、エキシマレーザ、ケミカルランプ、ブラックライトランプ、マイクロウェーブ励起水銀灯、メタルハライドランプ、ナトリウムランプ、ハロゲンランプ、キセノンランプ、LEDランプ、蛍光灯、太陽光、電子線照射装置等が挙げられる。これらの光源は単独で用いられてもよいし、2種以上が併用されてもよい。
【0061】
本発明の表示素子用封止剤への光の照射手段としては、例えば、各種光源の同時照射、時間差をおいての逐次照射、同時照射と逐次照射との組み合わせ照射等が挙げられ、いずれの照射手段を用いてもよい。
【0062】
本発明の表示素子用封止剤は、表示素子の面、全面、前面、後面、若しくは、周囲を封止するための封止剤、シール剤、又は、表示素子に設けられた開口部を封止するための封口剤として用いることができ、なかでも、表示素子の全面を封止するために好適に用いられる。
なお、本明細書において上記「全面」とは、表示素子を有する面の必ずしも100%を意味するものではなく、表示素子に求められる必要な封止面を意味する。また、上記「前面」とは、光線を取り出す側、即ち、視認側の面を意味する。
【0063】
本発明の表示素子用封止剤は、例えば、有機EL表示素子用シール剤、有機EL表示素子用封止剤、液晶表示素子用シール剤、液晶表示素子用封止剤、エレクトロクロミック基板用シール剤、エレクトロクロミック基板用封止剤、電子ペーパー用シール剤、電子ペーパー用封止剤等に用いることができる。