特許第5785393号(P5785393)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5785393混合光システム内の変調された光を弁別する方法及び装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5785393
(24)【登録日】2015年7月31日
(45)【発行日】2015年9月30日
(54)【発明の名称】混合光システム内の変調された光を弁別する方法及び装置
(51)【国際特許分類】
   H05B 37/02 20060101AFI20150910BHJP
【FI】
   H05B37/02 J
   H05B37/02 L
【請求項の数】26
【全頁数】30
(21)【出願番号】特願2010-519558(P2010-519558)
(86)(22)【出願日】2008年8月6日
(65)【公表番号】特表2010-536139(P2010-536139A)
(43)【公表日】2010年11月25日
(86)【国際出願番号】IB2008053149
(87)【国際公開番号】WO2009019655
(87)【国際公開日】20090212
【審査請求日】2011年8月5日
【審判番号】不服2014-8340(P2014-8340/J1)
【審判請求日】2014年5月7日
(31)【優先権主張番号】2596184
(32)【優先日】2007年8月7日
(33)【優先権主張国】CA
(73)【特許権者】
【識別番号】590000248
【氏名又は名称】コーニンクレッカ フィリップス エヌ ヴェ
(74)【代理人】
【識別番号】110001690
【氏名又は名称】特許業務法人M&Sパートナーズ
(72)【発明者】
【氏名】アッシュダウン イアン
(72)【発明者】
【氏名】サルスベリー マルク
【合議体】
【審判長】 島田 信一
【審判官】 氏原 康宏
【審判官】 平田 信勝
(56)【参考文献】
【文献】 特表2006−511081(JP,A)
【文献】 特開平9−120891(JP,A)
【文献】 国際公開第2006/111934(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H05B 37/00-39/10
H01L 33/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
所望の光束及び色度を有する光を生成するための照射デバイスであって、
第1のスペクトルパワー分布を有する第1の光を生成するようになっている1つ又はそれ以上の第1の光源、及び前記第1のスペクトルパワー分布とは異なる第2のスペクトルパワー分布を有する第2の光を生成するようになっている1つ又はそれ以上の第2の光源と、
前記1つ又はそれ以上の第1の光源に作動的に結合され、第1の制御信号に基づいて前記1つ又はそれ以上の第1の光源に駆動電流を選択的に供給するように構成されている第1の電流ドライバ、及び前記1つ又はそれ以上の第2の光源に作動的に結合され、第2の制御信号に基づいて前記1つ又はそれ以上の第2の光源に駆動電流を選択的に供給するように構成されている第2の電流ドライバと、
前記第1の光及び第2の光の組合せを含む出力光の一部分を検知し、前記出力光の放射束を表す光信号を生成するように構成されている光センサと、
前記光センサに作動的に結合され、前記光センサから前記光信号を受信するようになっている処理モジュールであって、
第1の基準信号を使用して前記光信号の第1の部分を表す第1の濾波された信号の混合を遂行するように構成されている第1の混合モジュールを含み、前記第1の光の一部分の特性を表す第1の出力信号を供給する第1の濾波モジュール、
第2の基準信号を使用して前記光信号の第2の部分を表す第2の濾波された信号の混合を遂行するように構成されている第2の混合モジュールを含み、前記第2の光の一部分の特性を表す第2の出力信号を供給する第2の濾波モジュール、
を備えている前記処理モジュールと、
前記第1の電流ドライバ、前記第2の電流ドライバ、及び前記処理モジュールに作動的に結合され、前記第1の出力信号及び前記第2の出力信号に少なくとも部分的に基づいて、それぞれ前記第1の制御信号及び前記第2の制御信号を生成するように構成されているコントローラであって、前記第1の制御信号及び前記第2の制御信号が、それぞれ第1の変更信号及び第2の変更信号を使用するように構成されており、前記第1の変更信号が、前記第1の光源のための前記駆動電流及び/又は第1の制御信号の時間的な変化を表し、前記第2の変更信号が、前記第2の光源のための前記駆動電流及び/又は第2の制御信号の時間的な変化を表す、前記コントローラと、を備え、
前記第1の濾波モジュールは更に、少なくとも前記第1の混合モジュールの出力及び前記第1の変更信号に基づいて前記第1の出力信号を供給するように構成され、前記濾波及び/又は混合による情報の損失を補償する第1の補償モジュールを含む
ことを特徴とする照射デバイス。
【請求項2】
前記第1の基準信号は、前記第1の変更信号に基づくことを特徴とする請求項1に記載の照射デバイス。
【請求項3】
前記第1の制御信号は、第1の周波数及び第1のデューティサイクルを有するPWM信号を表していることを特徴とする請求項1に記載の照射デバイス。
【請求項4】
前記第1の変更信号は、少なくとも前記第1の周波数及び前記第1のデューティサイクルを表し、前記第1の濾波された信号は、前記PWM信号の調波に対応する前記第1の光の部分を表し、前記第1の補償モジュールは、少なくとも前記PWMデューティサイクルに基づいて前記第1の出力信号を供給するように構成されていることを特徴とする請求項3に記載の照射デバイス。
【請求項5】
前記第2の制御信号は、前記第1の周波数とは異なる第2の周波数を有する第2のPWM信号であることを特徴とする請求項3に記載の照射デバイス。
【請求項6】
前記第1の周波数及び第2の周波数の高い方と、前記第1の周波数及び第2の周波数の低い方との比が、実質的に2つの整数間にあることを特徴とする請求項5に記載の照射デバイス。
【請求項7】
少なくとも前記1つ又はそれ以上の第1の光源及び前記1つ又はそれ以上の第2の光源からの光を混合するための混合光学系を更に備えていることを特徴とする請求項1に記載の照射デバイス。
【請求項8】
前記第1の混合モジュールは、ホモダイン受信器として構成されていることを特徴とする請求項1に記載の照射デバイス。
【請求項9】
前記基準信号は、少なくとも部分的に前記第1の変更信号に基づく濾波されたスイッチド波形信号であることを特徴とする請求項8に記載の照射デバイス。
【請求項10】
前記第1の混合モジュールは、ヘテロダイン受信器として構成されていることを特徴とする請求項1に記載の照射デバイス。
【請求項11】
前記第1の混合モジュールは、ロックインフィルタとして構成されていることを特徴とする請求項1に記載の照射デバイス。
【請求項12】
前記基準信号は、前記第1の変更信号に基づくスイッチド波形信号であることを特徴とする請求項11に記載の照射デバイス。
【請求項13】
バンドパスフィルタを更に備え、前記光信号の第1の部分を表す第1の濾波された信号は、前記光信号を、前記バンドパスフィルタを通過させることによって得ていることを特徴とする請求項1に記載の照射デバイス。
【請求項14】
前記第1の制御信号は、第1の周波数及び第1のデューティサイクルを有するPCM信号であることを特徴とする請求項1に記載の照射デバイス。
【請求項15】
クロック信号を有するクロックを更に備え、前記第1の制御信号は前記クロック信号から導出されることを特徴とする請求項1に記載の照射デバイス。
【請求項16】
所望の光束及び色度の出力光を生成するための方法であって、
(a)第1の駆動電流の時間的な変化を表す第1の変更信号を少なくとも部分的に使用して1つ又はそれ以上の第1の光源のための第1の駆動電流を生成するステップと、
(b)第2の駆動電流の時間的な変化を表す第2の変更信号を少なくとも部分的に使用して1つ又はそれ以上の第2の光源のための第2の駆動電流を生成するステップと、
(c)前記1つ又はそれ以上の第1の光源及び前記1つ又はそれ以上の第2の光源によって放出される光の混合である出力光の特性を表す光信号を生成するステップと、
(d)前記光信号の第1の部分を処理するステップであって、第1の基準信号に基づいて第1の混合動作を遂行し、それによって前記1つ又はそれ以上の第1の光源によって放出される光の放射束を表す第1の測定値を供給するステップを含む、ステップと、
(e)前記光信号の第2の部分を処理するステップであって、第2の基準信号に基づいて第2の混合動作を遂行し、それによって前記1つ又はそれ以上の第2の光源によって放出される光の放射束を表す第2の測定値を供給するステップを含む、ステップと、を含み、
前記光信号の第1の部分を処理する前記ステップが、前記第1の光の特性を表す情報及び/又は前記第1の光源のための前記駆動電流に基づいて、前記第1の混合動作による情報の損失を補償する第1の補償動作を行うステップを更に含むことを特徴とする方法。
【請求項17】
前記第1の駆動電流及び/又は前記第2の駆動電流を調整するステップを更に含むことを特徴とする請求項16に記載の方法。
【請求項18】
前記光信号の第1の部分を処理するステップは更に、前記第1の変更信号に基づいて第1の補償動作を遂行するステップを含むことを特徴とする請求項16に記載の方法。
【請求項19】
前記第1の基準信号は、前記第1の変更信号に少なくとも部分的に基づいていることを特徴とする請求項16に記載の方法。
【請求項20】
前記第1の駆動電流は、第1の周波数及び第1のデューティサイクルを有するPWM信号であることを特徴とする請求項16に記載の方法。
【請求項21】
前記第1の変更信号は、少なくとも前記第1の周波数及び第1のデューティサイクルを表し、前記光信号の第1の部分は、前記PWM信号の調波に従って前記1つ又はそれ以上の第1の光源によって放出される光の放射束を表していることを特徴とする請求項20に記載の方法。
【請求項22】
前記第1の補償動作は、前記PWM信号の調波のフーリエ係数に従って、少なくとも前記PWMデューティサイクルに基づいて遂行されることを特徴とする請求項21に記載の方法。
【請求項23】
前記フーリエ係数は、式(5)に従っており、式(5)は、
であることを特徴とする請求項22に記載の方法。
【請求項24】
前記第2の駆動電流は、前記第1の周波数とは異なる第2の周波数を有するPWM信号であることを特徴とする請求項16に記載の方法。
【請求項25】
前記第1の周波数及び第2の周波数の高い方と、前記第1の周波数及び第2の周波数の低い方との比が、実質的に2つの整数間にあることを特徴とする請求項24に記載の方法。
【請求項26】
プロセッサに実行させ、所望の光束及び色度の出力光を生成させる方法を遂行させるためのステートメント及び命令を格納しているコンピュータ可読媒体を有するコンピュータプログラムプロダクトであって、前記方法が、
(a)第1の駆動電流の時間的な変化を表す第1の変更信号を少なくとも部分的に使用して1つ又はそれ以上の第1の光源のための第1の駆動電流を生成するステップと、
(b)第2の駆動電流の時間的な変化を表す第2の変更信号を少なくとも部分的に使用して1つ又はそれ以上の第2の光源のための第2の駆動電流を生成するステップと、
(c)前記1つ又はそれ以上の第1の光源及び前記1つ又はそれ以上の第2の光源によって放出される光の混合である出力光の特性を表す光信号を生成するステップと、
(d)第1の基準信号に基づいて第1の混合動作を遂行するステップを含めて前記光信号の第1の部分を処理し、それによって前記1つ又はそれ以上の第1の光源によって放出される光の放射束を表す第1の測定を供給するステップと、
(e)第2の基準信号に基づいて第2の混合動作を遂行するステップを含めて前記光信号の第2の部分を処理し、それによって前記1つ又はそれ以上の第2の光源によって放出される光の放射束を表す第2の測定を供給するステップと、を含み、
前記光信号の第1の部分を処理する前記ステップが、前記第1の光の特性を表す情報及び/又は前記第1の光源のための前記駆動電流に基づいて、前記第1の混合動作による情報の損失を補償する第1の補償動作を行うステップを更に含むことを特徴とするコンピュータプログラムプロダクト。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般的に照明システムに関する。より特定的には、本発明は、例えば混合光照射システムの光フィードバック制御を容易にするために、該システム内の異なる光源からの変調された光を弁別する方法及び装置に関する。
【背景技術】
【0002】
デジタル照明技術、即ち発光ダイオード(LED)のような半導体光源をベースとする照射は、従来の蛍光灯、HID、及び白熱灯に代わる実行可能な代替を提供する。LEDの機能的な長所及び便益性には、高いエネルギ変換及び光学的効率、耐久性、低い動作コスト、及び他の多くのものが含まれる。近年のLED技術の進歩により、多くの応用における種々の照明効果を可能にする効率的且つ頑丈なフルスペクトル光源が提供されるようになってきた。これらの源を組入れた器具の若干は、例えば米国特許第6,016,038号、同第6,211,626号に開示されているように、いろいろな色を発生させるために、及び色が変化する照明効果を発生させるために例えば赤、緑、及び青のような異なる色を発生することができる1つ又はそれ以上のLED、並びに、この、またはこれらのLEDの出力を独立的に制御するためのプロセッサを含む照明モジュールを特色としている。
【0003】
赤、緑、及び青光のような異なるスペクトルを有する光を混合することによって、異なる色の光の発生が可能であることは公知である。従って、市販されている赤、緑、及び青LED、及びオプションとしてアンバーLEDのような異なる色のLEDからの放射の強さを変化させることによって、白光を含むどのような所望の色の出力光も知覚させることができるようになる。
【0004】
得られた出力光の色度のような面は、出力光を発生させるために組合せたLEDの強さ及び中心波長の組合せに依存する。これらの光パラメータは、たとえLED駆動電流を一定に保ったとしても、ヒートシンクの熱定数、周囲温度の変化、及びデバイスの経年変化のような諸要因に起因して変動し得る。
【0005】
この問題を解消する一つの方法は、異なる色のLEDの放射束出力を連続的に監視し、出力光の光束及び色度を実質的に一定に維持するようにLEDの駆動電流を調整する光フィードバックを使用することである。この監視には、各LEDの色の放射束出力を測定する手段が必要である。
【0006】
今日まで、出力光の光束及び色度を検出して評価し、もしこれらの値が所望の色点から逸脱していれば補正を施すような光フィードバック解決法が幾つか提唱されてきた。例えば、多くの解決法は、各々が選択された色の光に応答する選択されたカラーフィルタを有する光センサのアレイに頼っている。しかしながら、これらの光センサは、異なる色のLEDが放出する光のスペクトル放射パワー分布が重畳していることが原因で、光学的クロストークを受け易く、そのため出力光の特性の測定が不正確になる。
【0007】
このクロストーク問題の部分的解決法は、狭い帯域幅と、鋭いカットオフ特性を有するバンドパスフィルタを選択することである。多層干渉フィルタを使用すれば、これらのフィルタの満足できる性能レベルを達成することはできるが、これらのフィルタは高価になりがちであり、またバンドパス波長が出力光のフィルタへの入射角に依存するので、典型的には出力光を平行化するための別の光学系が必要になる。
【0008】
干渉フィルタに関連する別の問題は、高い放射束のLEDの中心波長がLEDの接合温度に依存することである。更に、干渉フィルタのバンドパス透過スペクトルは温度依存性でもある。光センサの出力信号は、LEDのスペクトル放射パワー分布及びフィルタのバンドパス特性のコンボリューションに依存する。従って、たとえLEDスペクトル放射パワー分布を一定に維持したとしても光センサの出力信号は周囲温度に伴って変化し、これが光フィードバックシステムの性能を更に制限し得る。
【0009】
別の解決法では、複数の色のLEDをベースとする照明システム内の各LEDを電子制御回路によって制御し、単一の広帯域光センサを使用して一連の時間パルスで、測定される色以外のLEDを選択的にターンオフさせている。可視的なちらつきを回避するために、測定期間中の平均光出力を通常の動作中の公称連続光出力に実質的に等しくすることができる。この解決法に伴う問題は、LEDが消勢される度にカラーバランスが周期的に、且つ潜在的に大幅に変更され、それがちらつきを顕著にすることである。光センサが、付勢されたLEDの放射束を十分な精度及び受容できる信号対雑音比で測定するためには有限の時間量を必要とするので、光センサの応答時間によってサンプリング周波数が制限され得る。サンプリング周波数が制限されると、光フィードバックループのサンプリング分解能が低くなり、応答時間が長くなり得る。更に、LEDの色は順次に測定されるので、光データを収集するためのこのアプローチは、赤、緑、及び青LEDクラスタを有するシステムの場合にはフィードバックループの応答時間を3倍まで、また赤、緑、青、及びアンバーLEDクラスタ有するシステムの場合には4倍まで更に増加させ得る。
【0010】
類似の解決法は、測定中の色のための電流をターンオフさせる一連の時間パルス中にLEDの光出力を選択的に測定することによって、ちらつきを軽減させようとしている。しかしながら、これらの提唱された何れの解決法も、カラーバランスの周期的な、そして潜在的に大幅な変化に、またはフィードバックループ応答時間の短縮に対処するものではない。
【0011】
更に別の解決法では、PWM駆動パルスの立上がり及び立下がり時間の効果を回避するために、PWMパルスの持続時間中のPWMパルスが最大振幅に達した時にLEDの光出力が広帯域光センサによってサンプルされる。次いで、ローパス濾波することによって平均駆動電流が決定される。この解決法に伴う問題は、PWM周期中の有限時間の間少なくとも1つのLEDの色を消勢させるように、PWMパルスを同期させなければならないことである。この要求は、全ての異なる色のLEDを、100%のデューティファクタの全パワーで動作させることを妨げるおそれがある。この平均光検知に伴う別の欠陥は、LEDの色を順次に測定しなければならないことに加えて、付勢されたLEDの放射束を信頼できるように測定するためには、サンプリング周期が光センサのために十分な時間を与えなければならず、これがフィードバックループの応答時間を制限し得ることである。
【0012】
別の解決法は、光源を制御する装置を提供するものである。この光源は、ある離散した周波数の光信号と、ある離散した周波数の電子基準信号とが重畳している光を放出する少なくとも1つの光源を含んでいる。この装置は、光源に光学的に結合されていて光信号を受信するように設計されている光検出器を含む。この装置は、光検出器及び各光源に結合されている少なくとも1つのロックインシステムを含み、ロックインシステムは光検出器から光信号を、また光源から基準信号を受信する。各ロックインシステムは、光信号及び基準信号に基づいて光源の強さ値を生成する。ロックインシステムは、信号乗算器、及び信号乗算器に結合されているフィルタを含むことができる。信号乗算器によって処理され、非直流部分を除去するように濾波された光信号と基準信号との積が、強さ値である。この解決法は、光の寄与を検出することはできるが、このフォーマットのシステムに侵入する固有の誤差が存在し得るので、装置による光出力の制御の実効性が制限される。更に、この装置は、制御可能なデューティサイクルを有するパルス幅変調のような精緻な駆動技術を使用するLED駆動は行わない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【特許文献1】米国特許第6,016,038号明細書
【特許文献2】米国特許第6,211,626号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
上述したように、当分野には、広帯域光センサを使用して、混合光システム内の複数の光源のための放射束出力データを供給することができる新規な光フィードバック方法及び装置に対する要望が存在している。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明は、照射システムにおいて光放出フィードバックを行う方法及び装置を指向している。例えば、以下に説明する方法及び装置では、第1の光源からの光と、第2の光源からの光とからなる混合光が生成される。各光源は、その光源に関係付けられた制御信号を使用するように構成されている駆動電流によって駆動される。制御信号自体は、その光源に関係付けられた変更信号を使用するように構成することができる。混合光を表す光信号は例えば光センサを使用して生成され、光信号は基準信号に基づいて処理され、各光源からの光を表す測定値が生成される。基準信号は、対応する制御信号または変更信号に基づいて局部的に生成することができる。測定値は、照射システムのフィードバック制御のために使用することができる。所与の光源の測定値を得るための光信号の処理は、光の時間的に変化する面に基づいた濾波処理からなり、この濾波処理は、その光源に関係付けられた制御及び/又は変更信号に基づく混合及び補償動作からなることができる。
【0016】
一般的に言えば、一面において、所望の光束及び色度を有する光を生成する照射デバイスを提供する。この照射デバイスは、第1のスペクトルパワー分布を有する第1の光を生成するようになっている1つ又はそれ以上の第1の光源と、第1のスペクトルパワー分布とは異なる第2のスペクトルパワー分布を有する第2の光を生成するようになっている1つ又はそれ以上の第2の光源とを含む。照射デバイスは更に、1つ又はそれ以上の第1の光源に作動的に結合されている第1の電流ドライバと、1つ又はそれ以上の第2の光源に作動的に結合されている第2の電流ドライバとを含む。第1及び第2の電流ドライバは、それぞれ、第1及び第2の制御信号に基づいて、光源に駆動電流を選択的に供給するように構成されている。照射デバイスは更に、第1の光及び第2の光の組合せを含む出力光の一部分を検知する光センサを含み、この光センサは出力光の放射束を表す光信号を生成するように構成されている。また、光センサに作動的に結合され、それから光信号を受信する処理モジュールも設けられている。処理モジュールは、第1の混合モジュールを含む第1の濾波モジュールを含む。第1の混合モジュールは、第1の基準信号を使用して、光信号の第1の部分を表す第1の濾波された信号の混合を遂行するように構成されている。第1の濾波モジュールは、第1の光の一部分の特性を表す第1の出力信号を発生する。また、処理モジュールは、第2の混合モジュールを含む第2の濾波モジュールを含む。第2の混合モジュールは、第2の基準信号を使用して、光信号の第2の部分を表す第2の濾波された信号の混合を遂行するように構成されている。第2の濾波モジュールは、第2の光の一部分の特性を表す第2の出力信号を発生する。照射デバイスは、第1の電流ドライバ、第2の電流ドライバ、及び処理モジュールに作動的に結合されているコントローラをも含む。コントローラは、それぞれ第1の出力信号及び第2の出力信号の少なくとも一部分に基づいて、第1の制御信号及び第2の制御信号を生成するように構成されている。第1の制御信号及び第2の制御信号は、それぞれ、第1の変更信号及び第2の変更信号を少なくとも部分的に使用するように構成されている。
【0017】
一実施形態では、第1の濾波モジュールは更に、少なくとも第1の混合モジュールの出力及び第1の変更信号に基づいて第1の出力信号を発生するように構成されている第1の補償モジュールを含む。
【0018】
別の面において、本発明は、一般的に、所望の光束及び色度の出力光を生成する方法を指向している。本方法は、第1の変更信号を少なくとも部分的に使用して、1つ又はそれ以上の第1の光源のための第1の駆動電流を生成するステップを含む。本方法は更に、第2の変更信号を少なくとも部分的に使用して、1つ又はそれ以上の第2の光源のための第2の駆動電流を生成するステップを含む。本方法は、出力光の特性を表す光信号を生成するステップをも含み、この出力光は、1つ又はそれ以上の第1の光源と1つ又はそれ以上の第2の光源とによって放出された光の混合である。本方法は更に、光信号の第1の部分を処理するステップを含み、このステップは、第1の基準信号に基づいて第1の混合動作を遂行し、それによって1つ又はそれ以上の第1の光源によって放出される光の放射束を表す第1の測定値を発生するステップを含む。本方法は更に、光信号の第2の部分を処理するステップを含み、このステップは、第2の基準信号に基づいて第2の混合動作を遂行し、それによって1つ又はそれ以上の第2の光源によって放出される光の放射束を表す第2の測定値を発生するステップを含む。本方法は更に、もし必要ならば、第1の駆動電流及び第2の駆動電流を調整するステップを含む。
【0019】
本発明の上記の面の一実施形態においては、光信号の第1の部分を処理する上記ステップは更に、第1の変更信号に基づいて第1の補償動作を遂行するステップを含む。
【0020】
別の面では、本発明は、所望の光束及び色度の出力光を生成する方法を遂行するために、プロセッサに遂行させるステートメント及び命令がその上に記録されているコンピュータ可読媒体を含むコンピュータプログラムプロダクトに関する。上記方法は、
第1の変更信号を少なくとも部分的に使用して1つ又はそれ以上の第1の光源のための第1の駆動電流を生成するステップと、
第2の変更信号を少なくとも部分的に使用して1つ又はそれ以上の第2の光源のための第2の駆動電流を生成するステップと、
出力光を表す光信号を生成するステップと、
を含み、
上記出力光は、1つ又はそれ以上の第1の光源によって放出された光と、1つ又はそれ以上の第2の光源によって放出された光との混合である。
【0021】
本方法は更に、光信号の第1の部分を処理するステップを含み、この処理ステップは、第1の基準信号に基づいて第1の混合動作を遂行し、それによって1つ又はそれ以上の第1の光源によって放出される光の放射束を表す第1の測定値を発生するステップを含む。本方法は更に、光信号の第2の部分を処理するステップを含み、この処理ステップは、第2の基準信号に基づいて第2の混合動作を遂行し、それによって1つ又はそれ以上の第2の光源によって放出される光の放射束を表す第2の測定を発生するステップを含む。本方法は更に、第1の駆動電流及び第2の駆動電流を調整するステップを含むこともできる。
【0022】
本明細書の目的のために使用する“LED”という用語は、電気信号に応答して放射を生成することができる如何なるエレクトロルミネセントダイオードまたは他の型のキャリア注入/接合をベースとするシステムをも含むものと理解されたい。即ち、LEDという用語は、限定するものではないが、電流に応答して光を放出する種々の半導体をベースとする構造、発光ポリマー、有機発光ダイオード(OLED)、エレクトロルミネセントストリップ等を含む。つまり、LEDとは、赤外スペクトル、紫外スペクトル、及び可視スペクトルの種々の部分(一般に、ほぼ400nmからほぼ700nmまでの放射波長を含む)の1つ又はそれ以上の放射を生成するように構成することができる全ての型の発光ダイオード(半導体及び有機発光ダイオードを含む)のことである。LEDの例は、限定するものではないが、種々の型の赤外LED、紫外LED、赤LED、青LED、緑LED、黄LED、アンバーLED、橙LED、及び白LED(後に詳述する)を含む。LEDは、所与のスペクトル(例えば、狭帯域、広帯域)内の種々の帯域幅(例えば、半値全幅、即ちFWHM)、及び所与の一般的な色類別内の種々の主波長を有する放射を生成するように構成及び/又は制御することができることも理解されたい。
【0023】
例えば、本質的に白光を生成するように構成されているLED(例えば、白LED)の一実施形態は、それぞれがエレクトロルミネセンスの異なるスペクトルを放出する複数のダイを含むことができる(これらのスペクトルが組合され、混合されて本質的に白光を形成する)。別の実施形態では、白光LEDを、第1のスペクトルを有するエレクトロルミネセンスを別の第2のスペクトルに変換する蛍光体材料と組合せることができる。この実施形態の一例では、比較的短い波長と狭い帯域幅スペクトルを有するエレクトロルミネセンスが蛍光体を“ポンプ”し、蛍光体はやや広めのスペクトルを有する長めの波長放射を放射する。
【0024】
LEDという用語が、LEDの物理的及び/又は電気的パッケージの型を限定するものではないことも理解されたい。例えば、上述したように、LEDは、それぞれが放射の異なるスペクトルを放出するように構成された複数のダイ(例えば、それらは個々に制御することが可能であるか、または不可能である)を有する単一の発光デバイスであることができる。また、LEDは、LEDの一体部分と考えられる蛍光体と組合せることができる(例えば、ある型の白LED)。一般的に、LEDという用語は、パッケージされたLED、パッケージされていないLED、面実装LED、チップオンボードLED、TパッケージLED、パワーパッケージLED、ある型の容器及び/又は光学要素(例えば、拡散レンズ)を含むLED等であることができる。
【0025】
“光源”とは、限定するものではないが、LEDをベースとする源(上述したような1つ又はそれ以上のLEDを含む)、白熱源(例えば、フィラメント灯、ハロゲン灯)、蛍光源、リン光源、高強度放電源(例えば、ナトリウム蒸気、水銀蒸気、及び金属ハロゲン化物灯)、レーザ、他の型のエレクトロルミネセント源、パイロルミネセント源(例えば、炎光)、キャンドルルミネセント源(例えば、ガスマントル、炭素アーク放射源)、フォトルミネセント源(例えば、ガス放電源)、電子的飽和(satiation)を使用する陰極線ルミネセント源、ガルバノルミネセント源、クリスタロルミネセント源、キネルミネセント源、熱ルミネセント源、摩擦ルミネセント源、ソノルミネセント源、電波ルミネセント源、及びルミネセントポリマーを含むさまざまな放射源のいずれか1つ又はそれ以上のことであると理解されたい。
【0026】
所与の光源は、可視スペクトル、可視外スペクトル、または両者の組合せ内の電磁放射を生成するように構成することができる。従って、“光”及び“放射”という用語が互換的に使用される。更に、光源は、一体要素として、1つ又はそれ以上のフィルタ(例えば、カラーフィルタ)、レンズ、その他の光学要素を含むことができる。また、光源は、限定するものではないが、指示、表示、及び/又は照射を含むいろいろな応用のために構成できることを理解されたい。“照射源”は、内部または外部空間を効果的に照射するのに十分な強さを有する放射を生成するように特に構成された光源である。因みに、“十分な強さ”とは、周囲照射(即ち、間接的に知覚することができ、また例えば全体が、または部分的に知覚される前にいろいろな介在表面の1つ又はそれ以上から反射されたものであることができる光)を与えるために、空間または環境内で生成される可視スペクトル内の十分な放射パワーのことである(放射パワーまたは“光束”に関して、全方向における光源からの合計光出力を表すのに、“ルーメン”という単位が使用されることが多い)。
【0027】
“スペクトル”とは、1つ又はそれ以上の光源によって発生された放射の何れか1つ又はそれ以上の周波数(または、波長)のことであると理解されたい。従って、“スペクトル”とは、可視範囲内の周波数(または、波長)のことだけではなく、赤外、紫外、及び総合電磁スペクトルの他の領域内の周波数(または、波長)のことをいう。また、所与のスペクトルは、比較的狭い帯域(例えば、本質的に数周波数または波長成分を有するFWMH)を有することも、または比較的広い帯域(種々の相対強さを有する幾つかの周波数または波長成分)を有することもできる。所与のスペクトルは、2つまたはそれ以上の他のスペクトルを混合した(例えば、複数の光源からそれぞれ放出された放射を混合した)結果であり得ることも理解されたい。
【0028】
本明細書では、“色”という用語は“スペクトル”という用語と互換的に使用されている。しかしながら、“色”という用語は、主として、一般的に観測者によって知覚される放射の特性のことを言うために使用される(この用法が、この用語の範囲を限定するものではない)。従って、“異なる色”とは、異なる波長成分及び/又は帯域幅を有する複数のスペクトルを暗示している。“色”という用語を、白光及び非白光に関連して使用できることも理解されたい。
【0029】
“色温度”という用語は、一般的には白光に関連して使用されるが、この用法がこの用語の範囲を限定するものではない。本来色温度とは、白光の特定の色の内容もしくはシェード(例えば、赤みを帯びた、青みを帯びた)のことである。所与の放射サンプルの色温度は、慣習的に、当該放射サンプルと本質的に同一のスペクトルを放射する黒体放射体のケルビン(K)で表される温度によって特徴付けられる。黒体放射体の色温度は、一般に、ほぼ700K(典型的には、人の目に最初に見えると考えられる)から10,000Kを越えるまでの範囲内にあり、白光は、一般に、1,500−2,000K以上の色温度で知覚される。
【0030】
低めの色温度は、一般に、より多くの重要な赤成分を有する、即ち“より暖かく感じる”白光を指示する。一方、高めの色温度は、一般に、より多くの重要な青成分を有する、即ち“より冷たく感じる”白光を指示する。例えば、火はほぼ1,800Kの色温度を有し、普通の白熱電球はほぼ2,848Kの色温度を有し、早朝の日光はほぼ3,000Kの色温度を有し、そして曇りの日中の空はほぼ10,000Kの色温度を有している。ほぼ3,000Kの色温度を有する白光の下で見るカラー画像は比較的赤みを帯びた色調を呈し、一方ほぼ10,000Kの色温度を有する白光の下で見る同一のカラー画像は比較的青みを帯びた色調を呈する。
【0031】
“照明設備”とは、特定のフォームファクタ、アセンブリ、またはパッケージ内の1つ又はそれ以上の照明ユニットの用具または配列のことをいう。“照明ユニット”とは、同一の、または異なる型の1つ又はそれ以上の光源を含む装置のことである。所与の照明ユニットは、1つまたは複数の光源のための種々の取付け配列、エンクロージャ/ハウジング配列及び形状、及び/又は、電気的及び機械的接続構成の何れか1つを有することができる。更に、所与の照明ユニットは、オプションとして、光源の動作に関係する他の種々の構成要素(例えば、制御回路)を組合せる(例えば、含む、結合する、及び/又は、・・と共にパッケージする)ことができる。“LEDをベースとする照明ユニット”とは、上述したような1つ又はそれ以上のLEDをベースとする光源を、単独で、または他のLEDをベースとしない光源と組合せて含む照明ユニットをいう。“多重チャネル”照明ユニットとは、異なるスペクトルの放射をそれぞれ生成するように構成された少なくとも2つの光源を含むLEDをベースとする、またはLEDをベースとしない照明ユニットのことであり、各異なる源スペクトルを多重チャネル照明ユニットの“チャネル”と称することができる。
【0032】
“コントローラ”という用語は、一般的に、1つ又はそれ以上の光源の動作に関係する種々の装置を記述するために使用される。コントローラは、以下に説明する種々の機能を遂行させるために、多くの方法で(例えば、専用ハードウェアを用いて)実現することができる。“プロセッサ”はコントローラの一例であって、これは、以下に説明する種々の機能を遂行させるためにソフトウェア(例えば、マイクロコード)を使用してプログラムすることができる1つ又はそれ以上のマイクロプロセッサを使用している。コントローラは、プロセッサを使用して、もしくは使用せずに実現することができ、また、ある種の機能を遂行させるための専用ハードウェアと、他の機能を遂行させるためのプロセッサ(例えば、1つ又はそれ以上のプログラムされたマイクロプロセッサ及び付属回路)との組合せとして実現することもできる。本明細書の種々の実施形態に使用することができるコントローラ要素の例は、限定するものではないが、普通のマイクロプロセッサ、専用集積回路(ASIC)、及び書替え可能なゲートアレイ(FPGA)を含む。
【0033】
種々の実施形態では、プロセッサまたはコントローラを、1つ又はそれ以上の記憶媒体(以下、総称的に“メモリ”という。例えば、RAM、PROM、及びEEPROMのような揮発性及び不揮発性コンピュータメモリ、フロッピー(登録商標)ディスク、コンパクトディスク、光ディスク、磁気テープ等)と組合せることができる。ある実施形態では、記憶媒体は、1つ又はそれ以上のプロセッサ及び/又はコントローラ上で実行された場合に、以下に説明する機能の少なくともいくつかを遂行させる1つ又はそれ以上のプログラムでエンコードすることができる。種々の記憶媒体をプロセッサまたはコントローラ内に固定することも、または記憶させた1つ又はそれ以上のプログラムをプロセッサまたはコントローラ内にロードして、以下に説明する本発明の種々の面を実現させるようにポータブルとすることもできる。“プログラム”または“コンピュータプログラム”とは、包括的なセンスとして、1つ又はそれ以上のプロセッサまたはコントローラをプログラムするために使用することができる何等かの型のコンピュータコード(例えば、ソフトウェアまたはマイクロコード)のことをいう。
【0034】
“アドレス指定可能”とは、それ自体を含む複数のデバイスに宛てられた情報(例えば、データ)を受信し、それに宛てられた特定情報に選択的に応答するように構成されているデバイス(例えば、一般的に光源、照明ユニットまたは設備、1つ又はそれ以上の光源または照明ユニットと組合されているコントローラまたはプロセッサ、その他の非照明関係デバイス等)のことをいう。“アドレス指定可能”という用語は、複数のデバイスが1つの、または複数の通信媒体を介して互いに結合されているようなネットワーク化された環境(即ち、後述する“ネットワーク”)に関連して使用されることが多い。
【0035】
ネットワークの一実施形態では、ネットワークに結合されている1つ又はそれ以上のデバイスは、そのネットワークに結合されている1つ又はそれ以上の他のデバイスのためのコントローラとして(例えば、マスター/スレーブ関係で)働かせることができる。別の実施形態では、ネットワーク化された環境は、そのネットワークに結合されているデバイスの1つ又はそれ以上を制御するように構成されている1つ又はそれ以上の専用コントローラを含むことができる。一般的に、ネットワークに結合されている複数のデバイスの各々は、1つまたは複数の通信媒体上に存在するデータへのアクセスを有することはできるが、所与のデバイスは、それが、例えばそれに割当てられている特定の識別子(例えば、“アドレス”)に基づいて、そのネットワークとデータを選択的に交換する(即ち、ネットワークからデータを受信し、及び/又はネットワークへデータを送信する)ように構成されていることから“アドレス指定可能”であることができる。
【0036】
“ネットワーク”とは、ネットワークに結合されている任意の2つまたはそれ以上のデバイスの間で、及び/又は複数のデバイスの間で情報(例えば、デバイス制御、データ格納、データ交換等のための)の輸送を容易にする2つまたはそれ以上のデバイス(コントローラまたはプロセッサを含む)の何等かの相互接続のことである。容易に理解されるように、複数のデバイスを相互接続するのに適するネットワークの種々の実施形態はさまざまなネットワークトポロジの何れかを含み、いろいろな通信プロトコルの何れかを使用することができる。更に、本明細書によるさまざまなネットワークでは、2つのデバイス間の何れか一方の接続が、2つのシステムの間の専用接続を表すことも、または代替として、非専用接続を表すこともできる。このような非専用接続は、2つのデバイスに宛てられた情報を輸送する他に、必ずしも2つのデバイスの何れかに宛てられたものではない情報をも輸送することができる(例えば、オープンネットワーク接続)。更に、以下に説明するデバイスの種々のネットワークは、ネットワーク全体にわたって情報の輸送を容易にするために、1つ又はそれ以上のワイヤレス、ワイヤー/ケーブル、及び/又は光ファイバリンクを使用できることは容易に理解できよう。
【0037】
“ユーザインタフェース”とは、人のユーザと1つまたは複数のデバイスとの間の通信を可能にする、ユーザまたはオペレータと1つ又はそれ以上のデバイスとの間のインタフェースのことである。本明細書の種々の実施形態に使用できるユーザインタフェースの例は、限定するものではないが、スイッチ、ポテンショメータ、ボタン、ダイアル、スライダー、マウス、キーボード、キーパッド、種々の型のゲームコントローラ(例えば、ジョイスティック)、トラックボール、ディスプレイ画面、種々の型のグラフィカルユーザインタフェース(GUI)、タッチスクリーン、マイクロホン、及び人が生成したある形状の刺激を受けそれに応答して信号を生成する他の型のセンサを含む。
【0038】
“光センサ”とは、入射光の特性(例えば、その光束出力または放射束出力)に応答する測定可能なセンサパラメータを有する光デバイスのことである。
【0039】
“広帯域光センサ”とは、例えば可視スペクトルのような広い波長範囲内の光の全ての波長に応答する光センサのことである。
【0040】
“狭帯域光センサ”とは、例えば可視スペクトルの赤領域のような狭い波長範囲内の光の全ての波長に応答する光センサのことである。
【0041】
“色度”とは、光の知覚される色印象のことである(北米照明工学協会の標準に準拠)。
【0042】
“光束”とは、光源が放出する可視光の瞬時量のことである(北米照明工学協会の標準に準拠)。
【0043】
“スペクトル放射束”とは、指定された波長において光源が放出する電磁パワーの瞬時量のことである(北米照明工学協会の標準に準拠)。
【0044】
“スペクトルパワー分布”とは、例えば可視スペクトルのようなある範囲の波長にわたって光源が放出するスペクトル放射束の分布のことである。ある実施形態では、スペクトルパワー分布の特性を、光源のスペクトル及び色に関連付けることもできる。
【0045】
“放射束”とは、ある指定された波長範囲にわたって光源が放出するスペクトル放射束の和のことである。
【0046】
“フィルタ”とは、信号を処理し、その信号の成分の少なくとも一部分を除去、増強、またはそれ以外に変更する信号処理デバイスのことである。フィルタの例は、当業者には明白なように、受動、能動、デジタル、アナログ、ローパス、ハイパス、バンドパス、バタワース、櫛形、その他のフィルタ設計を含む。
【0047】
“混合”とは、時間的に変化する信号を、1つ又はそれ以上の基準信号を使用して処理し、その時間的に変化する信号の少なくとも一部分の変更された表現を発生させる信号処理または濾波方法のことである。例えば、混合は、周期的な、または準周期的な信号の周波数を翻訳または変換して時間的に変化する信号の諸面を表す出力(例えば、直流信号)を発生するか、またはそれ以外に信号からの情報の抽出を容易にするために該信号を処理するのに使用することができる。“ミキサー”とは混合を遂行するデバイスのことであり、このデバイスは信号乗算器を、及びオプションとして局部発振器、位相検出器、及び/又は1つ又はそれ以上の付加的なフィルタを含む。ホモダイン受信器、ヘテロダイン受信器、ロックインフィルタまたは増幅器等が、ミキサーを構成するデバイスの例である。
【0048】
上述した概念、及び以下に詳述する付加的な概念の全ての組合せ(これらの概念が相互に矛盾しないことを条件として)が、本発明の主題の一部であることを理解されたい。即ち、特許請求の範囲に記載した全ての組合せは、本明細書の主題の一部であることを企図している。また、引例に現れ、本明細書にも明示的に使用されている術語は、以下に記述する特定の概念と最も一致する意味に取るべきである。
【0049】
添付図面においては、異なる図面にわたって同一部品に対して概ね類似する参照番号を付してある。また、図面は必ずしも同一のスケールで描かれてはおらず、代わりに、本発明の原理を示すことに主眼をおいている。
【図面の簡単な説明】
【0050】
図1】本発明の一実施形態による照射システムのブロック図である。
図2A】本発明の一実施形態による濾波モジュールのブロック図である。
図2B】本発明の一実施形態による補償モジュールのブロック図である。
図3】緑、青及び白LEDから形成される光スペクトルのサンプルを、広帯域光センサの応答曲線のサンプルと共に示す図である。
図4A】本発明の一実施形態による多重光源のためのパルス列を、光センサからの受信信号と共に示す図である。
図4B図4Aに示す受信信号の高速フーリエ変換を示す図である。
図5図4Aからの受信信号を、本発明の一実施形態による濾波モジュールのために選択されたバンドパスフィルタと共に周波数ドメイン内に示す図である。
図6】本発明の一実施形態によるバンドパスフィルタを使用して濾波した後の、図5からの受信信号を示す図である。
図7】本発明の一実施形態による濾波された受信信号と、濾波された基準信号のコンボリューションを示す図である。
図8図7の信号の直流周波数成分を示す図である。
図9】本発明の一実施形態によるPWM波の基本波の振幅の変化を示す図である。
図10】本発明の一実施形態によるPWMデューティサイクル補償係数を示す図である。
図11】本発明の一実施形態により、青光源の放出を一定に保って、緑光源の強さを変化させた時の効果を示す図である。
図12】本発明の一実施形態による光源の実際の強さと検出された強さとの間の比較を示す図である。
図13】本発明の一実施形態によるヘテロダイン信号の低周波数成分を示す図である。
図14】所望の出力光を生成するための本発明の一実施形態による方法を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0051】
本発明は、異なる色を有する光源の組合せからの出力光の光束出力及び色度を、光源の駆動電流を調整する光フィードバックによって所望のレベルに維持できることに基づいている。しかしながら、狭帯域光センサ間のクロストーク、及び光源からの光を測定するサンプリング周波数が低いこと等の諸制限のために、光フィードバック制御を使用して一貫した出力光を維持することは困難である。これらの望ましくない効果自体がフィードバック制御システムの応答時間を長引かせる可能性があり、また検出され、評価される異なる色の光源からの放射束の量に誤差を導入するおそれがある。
【0052】
本発明は、光フィードバック制御システムにおけるこれらの望ましくない効果を解消することを志向している。本システムにおいては、特定の色に対応する1つ又はそれ以上の光源のアレイ毎の制御信号が、色毎に異なる周波数を有する駆動電流を供給させるように独立的に構成されている。信号処理モジュールは、広帯域光センサによって収集された混合された放射束の出力サンプルから、異なる色の各光源に対応する放射束を弁別するように構成されている。信号処理モジュールは1つ又はそれ以上の濾波モジュールを含み、各濾波モジュールの出力は、組合された色の光源の放射束出力に実質的に正比例する。その後、この情報は、各色の光源アレイ用の制御信号を生成するために、出力光の所望の光束及び色度と共に、コントローラによって使用される。
【0053】
より一般的に言えば、出願者等は、混合光を供給している1つ又はそれ以上の構成要素光源による光出力の識別可能な時間的に変化する面を観測し弁別することに基づいて、混合光の異なる色の光源の特性を弁別するのが有益であると認識し、理解した。構成要素光源の特性を弁別することによって、光フィードバックを容易にすることができる。
【0054】
以上に鑑みて、本発明の種々の実施形態は、照明ユニット内の混合光を供給する2つまたはそれ以上の光源から時間的に変化する光出力(時間的に変化する光出力は光源毎に異なる)を供給し、各光源からの光のいろいろな面を測定するために、これらの時間的変化に基づいて混合光を検知し濾波することに関連している。例えば、各光源からの光は異なる所定の周波数で変調またはパルス化することができ、濾波は、バンドパス濾波、混合/復調技術(例えば、ホモダイニング、ヘテロダイニング、またはロックイン濾波)、及び補償動作のような時間的濾波からなることができる。検知された光を表す光信号に異なる濾波動作を適用し、異なる光源からの光の少なくとも一部分の放射束または強さを弁別することができる。これらの濾波動作の出力は、光源が所定の信号で駆動されていることに基づいて、1つ又はそれ以上の構成要素光源から放出される光の強さを決定するのに使用することができ、これは、光源の、従って照明ユニットまたは照明設備のフィードバック制御に有用である。
【0055】
本発明のいくつかの実施形態では、濾波及び/又は混合のようなある動作によって、光源からの光に関する情報が失われる可能性がある。これらの損失を補償するために、本発明の実施形態は、濾波及び混合の結果を、光源からの光または光源の駆動電流を表す他の特性と組合せることによって、光源に関する情報を回復するようになっている。例えば、PWM駆動光源からの光のデューティサイクル及び/又は振幅を表す信号を、この光源の駆動電流または光センサ出力から入手することができ、これらの信号を、光源からの光の強さを部分的に表す濾波された信号と組合せることによって、光源からの光の強さをより詳細に表現する補償された信号を導出することができる。
【0056】
光源の制御
本発明は、混合光に寄与する光源を、時間的に変化する駆動信号で駆動するための制御手段を提供する。駆動信号は、制御信号を使用して所望の照明効果を発生させるように構成されており、また識別可能な時間的に変化する成分を有することもできるようにも構成されている。変更信号は制御信号を少なくとも部分的に構成するのに使用することができ、変更信号は、例えば、制御信号の選択された変調周波数及び/又はデューティサイクルを表す。図1を参照すると、一実施形態では、光源を活動させるための制御信号は、特定のパルス周波数を有するパルス幅変調(PWM)信号のようなスイッチド(switched)波形に相当し、パルス幅変調信号の周波数は、その周波数が各色の光源毎に異なるように、制御システム199から受信する信号によって変更または選択することができる。例えば、赤光源135のために周波数f1を選択することができ、緑光源140のために周波数f2を選択することができ、そして青光源145のためにパルス周波数fnを選択することができる。
【0057】
例えば、制御システム199は、多重周波数発生器100を介して光源変調器105、110、及び115へ伝送される独立的に異なるPWM制御信号を生成することができ、これらの光源変調器は、所定の信号を光源電流ドライバ120、125、及び130へ伝送し、それらに駆動電流を供給させることによって光源135、140、及び145の活動化を可能にする。当業者には明白なように、電流ドライバは、電流レギュレータ、スイッチ、その他の類似デバイスであることができる。光源の制御及び駆動のための電力は、電源104から供給することができる。
【0058】
一実施形態では、PWM制御信号は、駆動電流またはPWM制御信号の、周波数及び/又はデューティサイクルのような時間的に変化する面を表すアナログまたはデジタル変更信号を使用して構成される。例えば、変更信号自体は、実質的にPWM制御信号または駆動電流に類似した波形であることも、または駆動電流またはそれを表している制御信号をどのように生成するのかという情報を担持している別の信号であることもできる。
【0059】
一実施形態では、PWMまたは他のパルス化信号の周波数は、ヘルツ(Hz)で測定され、これは、信号が1秒間にサイクルまたは繰返す回数である。例えば、オン値とオフ値をスイッチングするPWM信号の場合、PWM信号のオン値の始まりからその次のオフ値の終わりまでの部分を1サイクルと呼ぶ。PWM信号のサイクル時間に対するPWM信号がオン値を取る時間の比を、PWM信号のデューティファクタまたはデューティサイクルと呼ぶ。代替として、デューティファクタまたはデューティサイクルを、PWM信号の平均値に比例する0と1との間の値で呼ぶこともできる。2つより多くのレベルを有する、または他の時間的なスイッチング挙動を有するスイッチド波形も同様に、例えば、当業者には明白な重畳原理または他の技術を使用して解析することができる。
【0060】
本発明の種々の実施形態では、PWM信号のパルス周波数はファームウェア内で生成させることができる。例えば、制御システムの高周波数クロックを使用し、その出力を分割してより低い周波数信号を必要数だけ得ることができる。この必要数は、照射システム内の異なる色の発光要素の数、独立的に制御される光源のアレイの数、または当業者には明白な他の基準に基づいて決定することができる。当業者には明白なように、パルス幅変調の代替として、パルス符号変調(PCM)または他のパルス変調法を使用することができる。
【0061】
本発明のいくつかの実施形態では、光源の動作を制御するのに使用されるパルス周波数は、どのパルス周波数も互いに他の整数倍にならないように選択されている。例えば、これは、異なる光源から同一の周波数の高調波が出現するのを回避することによって、濾波モジュールにおける異なる光源からの光の弁別を容易にすることができる。光源の動作を制御するのに使用されるパルス周波数は、互いに他の整数倍であることもできる。この場合、異なる光源からの光を濾波モジュールによって弁別するには、例えば、濾波及び/又は復調中の異なる光源からの高調波の寄与を補償するための別の処理が必要になる。
【0062】
一実施形態では、ユーザインタフェース(図示してない)がコントローラに作動的に結合され、システムのユーザから出力光の光束出力及び色度の所望値を入手するようになっている。別の実施形態では、照射システムは、出力光の所望の光束出力及び色度を、そのメモリ内に格納しておくことができる。
【0063】
当業者には明らかなように、コントローラによって生成されるPWM制御信号またはPCM制御信号は、PWM制御信号シーケンスを決定するための命令を有するコンピュータ可読媒体上のコンピュータソフトウェアまたはファームウェアとして実現することができる。
【0064】
当分野においては公知のように、PWM、PCM、または他の信号のような時間的に変化する信号は、フーリエ解析によって、一般に調波と呼ばれる正弦波信号の重畳として表すことができる。一実施形態では、2レベルPWM矩形波信号の場合、重畳は、直流信号、基本波成分、及び高調波からなることができる。基本波成分は、PWM信号と同一周波数を有する1つの正弦波信号によって表すことができ、高調波は、基本周波数の整数倍である周波数を有する複数の正弦波信号によって表すことができる。PWM信号内の時間的に変化する調波の場合、基本波成分が最大振幅を有することが多い。更に、直流、基本波、及び高調波成分の相対振幅は、デューティサイクルに伴って実質的に予測可能なように変化し得る。
【0065】
例えば、振幅A、周期T0、及びデューティサイクルτを有する適当に時間シフトされたPWM信号、または非対称パルス列は、次のような時間的に変化する方程式によって表すことができる。
【数1】
但し、Π(t)は、|t|<1/2の場合の値が1であり、それ以外の場合の値が0である単位パルス関数である。(1)式をフーリエ展開すると、次の代替表現が得られる。
【数2】
即ち、PWM信号は、デューティサイクルに比例する直流信号、及びPWM信号の周波数の整数倍である周波数で振幅が減少して行く一連の正弦状の変化する調波の重畳によって表すことができる。式(2)の重要性は、スイッチされたPWM波形によって駆動される光源が放出する光を表す信号の濾波、混合、及び補償に関する以下の説明から明白になるであろう。
【0066】
光源
光源は、可視スペクトルの赤、緑、及び青領域内の放射をそれぞれ生成するようになっており、また当業者には明白なように、他の色の光を放出することもできる。本発明の別の実施形態では、アンバーのような他の色の光源を、別途使用することも、赤光源、緑光源、及び青光源と組合せて使用することもできる。オプションとして、光源は、動作中の光源によって生成される熱の熱管理を改善するために、分離したヒートシンク(図示してない)上に取付けることができる。
【0067】
PWM駆動電流のようなスイッチド波形によって駆動される光源の場合、光源によって放出される光が、実質的に類似するスイッチされた波形に従って変化することも、または、当業者ならば理解されるように、例えばキャパシタンス及びインダクタンスのような要因に起因して、光が駆動電流のスイッチングに遅延またはスキューして(非0スイッチング時間のような)応答する可能性がある。本発明の実施形態は、光源の非理想的な応答を斟酌し、補償することができる。例えば、光源からの光を表す光信号の電子的処理は、電流ドライバ、光源、及び光センサの組合された変換関数の逆の信号変換を適用して遂行することができる。代替として、当業者ならば理解されるように、光源、電流ドライバ、及び/又は光センサの非理想的応答を考慮して、以下に説明する濾波及び補償を直接適用可能にするように調整することができる。
【0068】
赤光源、緑光源、及び青光源の各々によって放出される着色された光の組合せ、または代替として他の色の組合せによって、特定の光束及び色度の出力光(例えば、白光)を、または異なる色の光源によって定義される色域の他の何れかの色の光を発生させ得ることに注目されたい。
【0069】
一実施形態では、照射システムは、赤光源、緑光源、及び青光源、及びオプションとして他の色光源からの光を混合することによって生成された出力光を空間的に均一化するための混合用光学系(図示してない)を含む。
【0070】
当業者ならば理解されるように、光源から放出される光の高速な変動は実質的に知覚不能であるから、典型的にPWMまたはPCMのようなパルス変調法を使用して、光源から放出される光の知覚される強さを制御することができる。典型的に、知覚されるのは平均強さである。従って、パルス変調された光源のデューティファクタまたはデューティサイクルを増減させることによって、光源の知覚される強さを相応して増減させることができる。
【0071】
光センサ
本発明は1つ又はそれ以上の光センサを提供し、こ(れら)の光センサは、これ(ら)に入射する混合された光を表す光信号を発生し、光信号は照射システムのフィードバック制御に使用される。光センサ150は、フォトトランジスタ、フォトセンサ集積回路(IC)、非付勢LED、光学フィルタを有するシリコンフォトダイオード等であることができる。本発明の一実施形態では、光センサ150は、可視スペクトル内のスペクトル放射束に実質的に一定の応答性を呈する光学フィルタ(濾波器)を有するシリコンフォトダイオードである。光学的濾波付きシリコンフォトダイオードを使用することの利点は、この構成が如何なる多層干渉フィルタをも必要としないことである。その結果、光センサのこのフォーマットは、実質的に平行化された光を必要としない。本発明の別の実施形態では、光センサ150上に入射する放射束を表す光信号は、その光センサに組合されている増幅器回路を用いて電子的に前処理することも、またはコントローラ199内のアナログまたはデジタル手段によって処理することもできる。
【0072】
フィルタリング(濾波)モジュール
本発明は、1つ又はそれ以上の濾波モジュールを提供し、これは、構成要素光源から放出された光の、光信号によって表されるいろいろな面を弁別及び/又は測定するように構成されている。例えば、濾波モジュールは、混合光を表す光信号を処理することによって、混合光内の異なる色の各光源の放射束を測定するように構成することができる。例えば、各光源は所定の周波数のPWM信号によって駆動されているので、各色光源の濾波及び弁別は、各光源から放出される光の所定の時間的に変化するシグネチャを活用することに基づくことができる。
【0073】
再度図1を参照すると、一実施形態では、広帯域光センサ150の出力は、光信号を処理するように構成されている信号処理モジュール198へ結合される。信号処理モジュール198は、各濾波モジュール180、185、及び190のための入力を生成する信号スプリッタモジュール160を含む。また、濾波モジュール180、185、及び190は、例えばコントローラ195により供給される駆動電流(または関連変更信号)の構成に使用される制御の入力バージョンとして受入れる。濾波モジュール180、185、及び190の出力は、コントローラ195に結合され、電子フィルタ165、170、及び175からの各色の光源のための放射束出力の値を表す。これらの値に基づいて、コントローラ195は、出力光の光束及び色度を所望のレベルに維持するために、赤光源135、緑光源140、及び青光源145のための駆動電流の量を調整することができる。
【0074】
図2A及び2Bに示すように、いくつかの実施形態では濾波モジュール180、185、及び190は更に、混合モジュール235及び/又は補償モジュール255を含む。混合モジュール235は、解析を容易にするために、受信した光信号または他の入力200の少なくとも一部分を(例えば、周波数変換を使用して)変換するように構成することができる。補償モジュール255は、例えば、濾波及び/又は混合中に失われた情報を補償するために、そしてそれによって濾波モジュールから供給される測定を改善するために、光の測定された面を表す信号230に修正を施すように構成することができる。これらの実施形態のいくつかの面では、混合モジュール235及び/又は補償モジュール255は、それらの動作を支えるために、コントローラから供給される信号(制御信号または変更信号に基づく全信号または部分信号のような)を使用するように構成されている。このような全信号、または部分信号は、基準信号205として構成することができる。
【0075】
本発明の一実施形態では、濾波モジュールまたは混合モジュール235の少なくとも一部分は、ホモダイン受信器、ヘテロダイン受信器、ロックインフィルタ等として構成され、例えば監視中の各色の光源のために適切な受信器の実施形態が設けられている。ホモダイン受信器及びヘテロダイン受信器の例を、図2Aに示す。当分野においては公知のように、これら2つの受信器構成の間の差は、基準信号として使用される選択周波数である。ヘテロダイン受信器の基準信号の周波数は受信信号の周波数とは異なっており、ホモダイン受信器の基準信号の周波数は受信信号の周波数と同一である。ロックインフィルタまたは受信器は、基準信号が正弦波基準信号ではなく、方形波信号のようなスイッチされた波形であるホモダイン受信器と考えることができる。当業者ならば理解されるように、ロックインフィルタはデジタル技法で容易に実現することができる。
【0076】
本発明の一実施形態では、図2Aに示すように、濾波及び混合は、以下のことからなることができる。即ち、混合光を表す受信信号200は、監視中の光源の色のためのパルス周波数の中心周波数、またはその付近の中心周波数を有するバンドパスフィルタ210によって濾波される。従って、バンドパスフィルタ210の出力は、パルス周波数に近い入力信号の調波を表す濾波された信号であることができる。他の調波を選択するような濾波も可能である。更に、もし必要ならば、基準信号205をフィルタ215によって濾波することができる。基準信号205の濾波は濾波モジュールの型に依存し、例えば、ホモダイン受信器の場合には濾波が必要であるが、ヘテロダイン受信器またはロックインフィルタシステムの場合には基準信号205の濾波は不要である。例えば、受信信号200及び基準信号205の濾波は、調波及び他の干渉信号を減衰させるために行うことができる。得られた濾波済みの信号は混合され、この混合は、実質的に、乗算器220による信号の乗算からなることができる。本発明の一面においては、得られた信号は、その後にローパスフィルタ225によって濾波され、評価中の特定の1つ又はそれ以上の光源の光束出力を実質的に表す濾波及び変換された信号230が得られる。
【0077】
例えば、図3は、緑光源310、青光源320、及び白光源330を含む照射システムのためのサンプル光スペクトルを示している。この図には、広帯域光センサのサンプル応答曲線340、及び混合された緑光、青光、及び白光の正味スペクトル350も示されている。濾波モジュールは、混合され、検知された光から、緑、青、及び白光源のスペクトルを表す信号を回復するように構成されている。
【0078】
一実施形態では、駆動信号の基本波成分、及び/又は、オプションとして1つ又はそれ以上の高調波成分、または光源の光出力を表す関連信号の面を測定することによって、PWM、PCM、または他の信号によって駆動される光源からの光の複数の面を測定することができる。測定は、駆動信号周波数、またはそれらの整数倍の周波数のオーダーの周波数における時間的濾波のような濾波動作、混合/復調、及び補償動作(詳細は後述する)の組合せによって行うことができる。測定された成分と当該信号との間の関係は、フィードバックの目的のために有用な情報を回復するのに使用することができる。更に、選択された基本波及び/又は高調波成分だけを測定することによって、測定していない光源からの干渉を実質的に低減させることができる。
【0079】
混合
光信号またはそれに基づく濾波された信号のような受信信号の混合は、基準信号を使用する受信信号の処理(即ち、例えば、これら2つの信号を乗算することによるもの、または、当業者ならば理解されるように、等価デジタルまたはアナログ処理によるもの)を含む。当業者ならば理解されるように、混合は、ホモダイン、ヘテロダイン、または他の受信器またはフィルタの動作によって表すことができる。一実施形態では、各濾波モジュールまたは混合モジュールのための基準信号は、光源に印加される駆動信号から、または代替として、光源変調器またはコントローラのような別の源から入手される。例えば、以上のようにして入手された基準信号は、その光源に印加されるPWM駆動信号の実質的なレプリカであることができる。いくつかの実施形態では、これらの基準信号を濾波することによって、駆動信号と同一の周波数を有し、復調に適した実質的に正弦波の信号を得ることができる。例えば、受信したPWM信号と同様に、バンドパスフィルタを使用してPWM駆動信号を濾波することによって、PWM周波数で所定の振幅を有する実質的に正弦波の信号を得ることができる。別の実施形態では、例えばコントローラまたは光源変調器によって指示される光源の周波数と一致する周波数を有する基準信号が独立的に生成される。局部発振器及び/又はフェーズロックドループ、または他の発振回路を、基準信号を生成するために使用することができる。
【0080】
ホモダイン受信器
以下の説明は、図3に示すサンプル光スペクトルに適用された本発明の一実施形態によるホモダイン受信器として構成された濾波モジュールまたは混合モジュールの使用例である。この構成では、照射システムは、緑光、青光、及び白光を放出する光源からなる。
【0081】
図4A及び4Bに本発明の一実施形態を示す。図4Aは、緑光源のためのPWMパルス列410、青光源のためのPWMパルス列420、及び受信信号440を示している。本発明のこの実施形態では、受信信号は、雑音、及び各光源によって生成された応答、即ち、広帯域光センサによって受信された被検出放射束または光束を含んでいる。更に、図4Bは、図4Aに示す受信信号の高速フーリエ変換450を示している。
【0082】
本発明のいくつかの実施形態では、受信信号は、特定の色の光源のためのパルス周波数を中心とするバンドパスフィルタを通過させられる。図5は、受信信号のスペクトル500、及びこの受信信号を濾波するために使用された2つのバンドパスフィルタのスペクトルを示している。第1のバンドパスフィルタのスペクトル510はf1に等しい中心周波数を有し、第2のバンドパスフィルタのスペクトル520はf2に等しい中心周波数を有し、周波数f1及びf2はそれぞれの色の光源のために選択された駆動周波数に基づいて選択することができる。いくつかの実施形態では、これらのバンドパスフィルタは、例えばQ=5のような比較的低いQ、即ち、フィルタの半値全幅に対するフィルタの中心周波数の比を有することができる。図6は、図5に示したバンドパスフィルタによって濾波された後の受信信号を示している。第1のフィルタの出力のスペクトル610及び第2のフィルタの出力のスペクトル620が示されている。
【0083】
ホモダイン受信器である本発明の一実施形態では、濾波された受信信号に乗算される基準信号は、異なる色の光源の制御に使用される制御信号または変更信号に基づくものである。例えば、基準信号は、PWM駆動電流を表すものであることができる。上述した濾波された各受信信号に組合される各基準信号も同様に、中心周波数f1及びf2を有するバンドパスフィルタを通過させることができる。
【0084】
例えば、式(1)及び(2)にx(t) で表されているPWM信号(実質的にf1に近いPWM周波数1/T0を有する)が受信され、中心周波数f1における利得が1(unity gain)のバンドパスフィルタによって濾波されるものとすれば、フィルタの出力はy (t)=( 2A/π) sin (πτ) cos ( 2πf0 t )によって表すことができる実質的に減衰していない成分を、多分減衰した他の信号成分と共に含むことになる。y (t) に対応する出力は、光源によって放出された光の強さに関する情報(振幅A及びデューティサイクルτでエンコードされている)を担持するPWM周波数を有する実質的に正弦波状の信号である。
【0085】
ホモダイニングの場合、各色の光の各濾波された受信信号には、対応する基準信号(オプションとして濾波される)が乗算される。本発明の一実施形態では、これらの信号は時間ドメインにおいて乗算される。図7は、出力信号710及び720を得るために、第1及び第2の濾波された基準信号と、対応する第1及び第2の濾波された受信信号610及び620とを乗算した積のスペクトルを示している。明瞭化のために、2つの出力信号710、720は互いに他方に対してスケールされている。例えば、図7は周波数ドメインで示されているので、得られた乗算された信号のコンボリューションを示している。
【0086】
受信信号と、同じ周波数の基準信号とを乗算して得られた出力は、実質的に直流成分を有し、この直流成分は、2つの信号の振幅の積に比例し、2つの信号間の位相によって影響を受けた値を有する。これは、同一周波数を有する2つの任意正弦波の積として次式で表すことができる。
【数3】
【0087】
本発明の一実施形態では、処理された信号(濾波された受信信号と、濾波された基準信号との積であることができる)の直流成分を監視することによって、信号の変化を識別することができる。即ち、例えば式(3)において、A1 が濾波された受信信号の振幅を表し、A2 及びφが濾波された基準信号の所定の(または測定された)振幅及び相対位相を表しているものとすれば、式(3)の右辺の第1項は、処理された信号にローパスフィルタを適用することによって回復することができ、またA1はA2 及びφを与えることによって回復することができる。例えば、図7に示す信号710及び720のそれぞれの低周波数成分810及び820を示している図8に示すように、緑光源及び青光源のための処理された信号の直流成分を監視することができる。これらの成分の値は、受信信号の基本波成分の振幅に比例している、従って光源によって放出される光の強さに比例している。
【0088】
ヘテロダイン受信器
本発明の別の実施形態によれば、濾波モジュールまたは混合モジュールは、ヘテロダイン受信器として構成されている。即ち、この濾波技術に使用される基準信号は、それを乗算するPWM信号の周波数とは異なる。当業者には理解されるように、基準信号は発振器または他の信号発生デバイスを使用して生成させることができる。一実施形態では、基準信号がこのフォーマットで生成されるので、濾波された受信信号に乗算する前に如何なるフィルタをも必要としない。受信信号と基準信号との乗算は、混合または信号の周波数変換の形状であることができ、当業者には明らかなように、他の混合または変換方法も適用可能である。
【0089】
一実施形態では、受信信号と、異なる周波数を有する基準信号とを乗じて得られる出力は、直流成分を有し、この直流成分は、2つの信号の振幅A1 及びA2 の積に比例し、2つの信号の間の位相によって影響された値を有する。これは、異なる周波数ω1及びω2を有する2つの任意正弦波の積として次式で表すことができる。
【数4】
【0090】
本発明の一実施形態では、受信信号は濾波され、正弦波基準信号が乗ぜられ、その結果がローパスフィルタまたはバンドパスフィルタを使用して濾波されて望ましくない成分が除去される。これは、式(4)の右辺の第1項を除去することに相似する。本発明のいろいろな面では、最後のフィルタの出力は、典型的に、受信信号よりも低い周波数で振動する。例えば、式(4)において、出力周波数(ω1−ω2)は、いくつかの実施形態では受信信号周波数ω1よりも低い。この中間周波数信号は解析が容易であり、例えば振幅A1 でエンコードされている光源の強さに関する情報を含んでいる。
【0091】
上記ホモダイン受信器に適用した技術の残余は、ヘテロダイン受信器として構成されている濾波モジュールまたは混合モジュールに適用することができる。例えば、直流または時間的に変化する信号を検出し、光源によって放出される光のいろいろな面の変化を検出することができる。図13は、ホモダイン受信器に関して記述した例について、本発明の一実施形態によるヘテロダイン受信器から決定された、緑光1310及び青光1320のための基準信号と受信信号との積の周波数成分を示している。
【0092】
受信器またはフィルタの他の実施形態
以上にホモダイン受信器及びヘテロダイン受信器及び関連技術を、異なる光源からの光を濾波し、弁別する手段の例として説明したが、これらの技術の他の変形、追加、及び改良も有用である。例えば、デジタルまたはアナログ信号を混合、または変換するための多くの技術が無線工学及び信号処理の分野において公知である。
【0093】
一実施形態では、本発明は、異なる光源からの光を弁別するためにスーパーへテロダイン受信器を含む。公知のように、典型的には、スーパーへテロダイン受信器は少なくとも2つのステージを含む。即ち、先ず受信信号を濾波し、中間周波数にダウン変換する。次いで、中間周波数を更に濾波してベースバンド周波数に変換することができる。上述したホモダイン受信器及びヘテロダイン受信器の動作の説明から、当業者ならば、スーパーヘテロダイン受信器を使用してどのように本発明を実施するかは理解されよう。
【0094】
一実施形態では、本発明は、異なる光源からの光を弁別するためのロックインフィルタまたは受信器を含む。ロックインフィルタまたは受信器は、ホモダイン受信器またはヘテロダイン受信器に類似しており、基準信号は、典型的に、例えば監視中の光源に関連付けられた制御信号または変更信号を表す矩形波またはスイッチド波形信号である。更に、ロックインフィルタは、もしそれがPWMまたはPCM信号を受入れるように設計されていれば、受信信号の実質的な濾波は不要である。その代わりとして、基準信号は例えば、基準信号のスイッチング時間で信号インバータをデジタル的にスイッチオン及びスイッチオフさせるように働かせることができる。
【0095】
光信号の補償
本発明の種々の実施形態では、光信号に適用される濾波動作及び/又は混合動作が、フィルタによって監視中の光源に対応する光信号の一部を潜在的に除去してしまう恐れがある。例えば、光信号内の望ましくない成分(濾波モジュールが弁別しようとしている色とは異なる色の光を表す成分のような)を除去するだけではなく、上述したような濾波が行われてしまう可能性があり、これは実際にはこのプロセスの副作用である。例えば、混合中に適用されるバンドパスフィルタは、PWMによって駆動される光源に対応する光信号の調波のいくつかを除去するおそれがある。光信号の一部が除去されると、監視中の光源からの光に関する情報が失われることになるが、本発明は、光信号補償を行うことができる。この補償は、フィードバックの目的のために、監視中の光源のいろいろな面のより多くの有用表現を回復するように、情報の損失を補償するように構成可能な補償モジュールを介して遂行される。
【0096】
一実施形態では、濾波及び混合は、選択された光源からの出力光を表す波形の基本波成分の振幅だけを実質的に表す出力を発生するように構成することができる。従って、補償動作は、例えば基本波の振幅及び光源出力波形のデューティサイクルに関する情報を使用して、所定の関係を通して当該光源からの光の強さと発生される出力とを関係付け、光源からの光の強さに比例する値を再構築するように構成することができる。この再構築は、基本波成分のフーリエ級数振幅係数によって表されるもののような、これら3つの変数の間のモデル化された関係に基づくことができる。
【0097】
別の実施形態では、濾波及び混合は、基本波成分及び1つ又はそれ以上の高調波成分の振幅を表す出力を発生するように構成することができる。即ち補償動作は、この出力を当該光源からの光の強さに関係付けることができる。例えば、幾つかの調波の振幅を解析し、これらの振幅を、光源の出力光を表すあるクラスの波形(例えば、異なるデューティサイクルを有するあるクラスのPWM波形)を表す所定のモデルに相関させることによって、光の強さに比例する値を導出することができる。例えば、光源からの光の強さを表す値を決定するために、2つまたはそれ以上の調波の絶対及び/又は相対振幅を、PWM信号の調波のパラメータ化されたフーリエ級数振幅係数に相関させることができる。
【0098】
例示実施形態では、PWMまたはその他のスイッチされた波形のデューティサイクルが50%から変化すると、PWM信号内の調波の相対振幅が増加する。しかしながら同時に、基本周波数を含むこれらの調波の絶対振幅は低下する。これらの両現象は、式(2)においてAnのτへの依存性に見ることができる。即ち、
【数5】
ここに、Anはn次調波の振幅であり、τはデューティサイクルであり、そしてAはPWM信号の振幅である。例えば、図9に、デューティサイクルの変化につれて変化するPWM信号の基本波の相対振幅900(PWM信号の振幅に対する)を示す。
【0099】
従って、本発明の一実施形態では、デューティサイクルに伴う基本波及び高調波の振幅の変動を補償するために、補償モジュールは、例えば基本波の振幅を表す入力に、デューティサイクルτに依存する係数を乗じ、それによって例えばPWM信号によって駆動されている光源からの光の強さを表す信号を導出することができる。デューティサイクルは、基準信号,又は濾波されていないまたは部分的に濾波された光信号から入手した実質的なPWM信号を解析することによって、または、例えばこのような信号の調波のフーリエ係数を解析することによって、コントローラから直接入手することができる。当業者ならば理解されるように、実質的にPWM信号からデューティサイクルを判別する装置は、コンパレータ、エッジトリガ、または他のデジタル/アナログ電子デバイスを含むことができる。
【0100】
一実施形態では、上述したデューティサイクルの補償は、復調器出力に、式(5)で与えられる振幅の逆数を乗ずることからなる。例えば、基本波の場合、振幅の逆数は実質的に以下のように表すことができる。
【数6】
【0101】
本発明の一実施形態では、図10に示されているデューティサイクル補償係数1000は、5%から95%までのデューティサイクルの範囲にわたってプロットされている。いくつかの実施形態では、受信信号の振幅が次第に小さくなって潜在的な処理問題を招来することがないように、デューティサイクルがこの範囲を越えて広がることはない。
【0102】
本発明の一実施形態では、補償は、較正曲線、関数、ルックアップテーブル、または等価な方法を使用して、観測された光の強さを真の光の強さに相関させることからなることができる。例えば、図11は、例えば青光源を表す信号2を一定に保持した場合の、例えば緑光源を表す信号1の観測された強さと実際の強さとの間の実質的に線形の相関を示している。図示のように、この変化する強さは、観測されたデータ点1115にフィットさせたこの較正曲線を規定する実質的な直線1110によって表すことができる。本発明の他の実施形態では、較正曲線は、二次または他の多項式、指数、漸近、正弦、または他の解析または非解析関数を使用して規定することができる。別の例として、図12は、照射システムの実施形態によって放出された緑光1210及び青光1220の実際の強さと検出された強さとの間の相関曲線(例えば、緑光の観測されたデータ1215、及び青光の観測されたデータ1225にフィットさせている)を示している。
【0103】
一実施形態では、第1の光源のために導出された情報を、第2の光源に適用される補償動作に使用することができる。例えば、第1の光源のためのPWM波形に起因する光信号内の調波は、上述した1つ又はそれ以上の調波の解析によって予測することができ、またこれらの予測された調波の寄与を、例えば第2の光源を表す信号から干渉調波を差引くことによって、第2の光源の解析において除去することができる。このようにして、多重光源の並列、相互依存補償をも遂行することができる。
【0104】
駆動電流の供給方法
本発明の実施形態では、各色の光源のための駆動電流または関連制御信号または変更信号を供給する代替技術が使用され、これにより広帯域センサを使用して各色の光源からの光束出力を弁別できるようにする。
【0105】
本発明の一実施形態では、PWMまたはPCM信号のような一般的なスイッチド波形信号は、異なる光源のための異なる電流駆動信号を生成するために変調することができる。例えば、デューティサイクルまたはパルス密度係数が光源毎に異なって変調されている普通のPWMまたはPCM信号を発生させることができ、これにより異なる周波数(これは濾波によって弁別することができる)で各光源が駆動される。この実施形態の一バージョンでは、例えば30kHz乃至100kHzの範囲のパルス周波数nを有する普通のPWM信号のデューティファクタは、ちらつきを目立たなくさせるために、例えば100Hz程度のより低い周波数mで変調される(但し、mは光源毎に異なる)。この変調は、PWM信号のデューティファクタを1/m秒毎に所定量だけ増加させることからなることができる。例えば、この所定量は、2進値によって指図することができる。中心周波数mを有するバンドパスフィルタが、変調されたPWM信号に従って生成された光を弁別するために、処理モジュールで使用される。上述したように変調された信号に対して、混合及び補償を遂行することもできる。
【0106】
上例において説明した周波数変調スキームは、方形波を有する変調された普通のPWM信号をもたらす。この実施形態の別の例では、普通のPWM信号の変調は、一連の変調波形を生成し、一連の波形の各々の選択されたスイッチング点においてデューティファクタを周期的に増加させることからなることができる。更に、変調信号の調波内容を減少させるために、変調波形の重畳が正弦波を近似するように、変調波形を選択することができる。
【0107】
正弦波に対する適当な近似は、例えばマーク・ジョンソンの「フォト検出及び測定:光学システムにおける性能の最大化」のセクション5.6「ウォルシュ復調器」に記述されているように、2つまたはそれ以上のウォルシュ関数を使用することによって達成することができる。当業者には明白なように、ウォルシュ関数は、直交級数を形成している2パラメータ関数である。これらの関数は、フーリエ解析及び合成の場合の正弦及び余弦級数と同じように使用して、他の関数の近似を構築することができる。更に、ウォルシュ関数は本質的にデジタルであるので、それらはステップを含む関数を近似するのに効率的であり得る。この解決法の考え得る利点は、PWMまたはPCM駆動信号を発生させるのに多重ドライバチャネルにおいて共通クロックを使用することができ、それによって構成要素のコストを低減させ得ることである。
【0108】
本発明の別の実施形態では、PWMまたはPCM駆動信号は更に、限定するものではないが、振幅変調(AM)、周波数変調(FM)、単側波帯変調(SSB)、位相変調(PM)、直交振幅変調(QAM)、振幅シフトキーイング(ASK)、周波数シフトキーイング(FSK)、連続位相変調(CPM)、トレリス符号化変調(TCM)、直交周波数分割変調(OFDM)、時分割多重化(TDM)、符号分割多重アクセス(CDMA)、キャリア検知多重アクセス(CSMA)、周波数ホッピングスペクトラム拡散(FHSS)、及び直接シーケンススペクトラム拡散(DSSS)技術を含む他の公知の変調技術を使用して変調することができる。
【0109】
本発明の別の実施形態では、例えば補償の一部として、ロックイン増幅器のようなミキサー(混合器)が入力と基準信号との間の位相差に対して有している既知の感度を低下させることができる。感度低下は、例えば、フェーズロックドループによって、基準信号と受信信号または光信号とを同期させることを含むことができる。もし受信信号がPWMまたはPCM信号であれば、感度低下は、基準信号と受信信号の立上がり縁とを同期させることによって実現することができる。これにより、上述した周波数変調は、差分パルス位置変調になる。この解決法の潜在的な利点は、例えば、駆動コントローラ変更信号から基準信号を導出するための電気接続を必要とせずに、光源からの光を1つ又はそれ以上の信号処理モジュールによって弁別できることである。異なる所定の周波数にロックオンすることによって、ネットワーク化された照明システム内の多重光源または照明設備(例えば、ルミネア)の出力を監視するために、単一のロックイン増幅器を使用することができる。
【0110】
混合光を発生し、弁別する方法の例
図14は、混合光を発生し、弁別するための本発明の実施形態例による方法を示している。図示のように、駆動電流制御信号を生成及び/又は構成するために使用される変更信号が、ステップ1410において1つ又はそれ以上の光源のアレイ毎に生成され、その後ステップ1420において駆動電流が生成される。例えば、変更信号は、特定の振幅、周波数、及び/又はデューティサイクルを有するPWM駆動電流を指定することができる。光源は、それぞれの駆動電流によって駆動され、放出された光はステップ1430において混合される。上述した諸ステップは、混合光の生成について総合ステップ1400として表すことができる。
【0111】
図14を続けて参照すると、混合光を表す光信号が、例えば光センサを用いて、ステップ1440において生成される。光信号は、全体的にステップ1450として表される処理ステップ(以下の諸ステップを含むことができる)への入力として使用される。オプションとしてのステップ1460において、光信号が複製及び濾波される。ここでは、例えば1つ又はそれ以上のバンドパスフィルタを使用して濾波され、これらの各バンドパスフィルタは、選択された光源からの光を表す光信号の成分を選択的に通過させるように構成された中心周波数を有する。更に、ステップ1465において、光が弁別される1つ又はそれ以上の光源の各アレイに対応する基準信号を生成、または導出することができる。例えば、基準信号は、変更信号、制御信号、またはそれらをベースとする信号の濾波されたバージョン、または濾波されていないバージョンであることも、または使用される混合アプローチに依存して局部的に生成することもできる。ステップ1470において、濾波された又は濾波されていない光信号は、例えばホモダイン、ヘテロダイン、またはロックインフィルタ技術を使用して、基準信号と混合される。混合は、共に1つ又はそれ以上の光源の選択されたアレイに対応する濾波された光信号と基準信号との間で遂行される。オプションとしてのステップ1480において、混合動作の結果に対して補償動作が遂行され、濾波及び/又は混合中に失われた情報を補償することができる。例えば、もし混合動作が、光源からの光の帯域制限された部分に基づいて光の強さの指示を生成すれば、補償動作はこの指示と、他の情報(駆動電流のデューティサイクルのような)とを組合せ、実質的に帯域幅制限されていない光の強さの指示を生成することができる。最後に、ステップ1490において、光を表す処理済みの(及びオプションとして補償済みの)信号に基づいてフィードバック制御(例えば、光の指示と光の所望の品質とを比較し、もし必要ならば、変更信号及び/又は駆動電流を調整する)が遂行される。
【0112】
上述した方法、または類似した方法の少なくとも一部分は、オプションとして、例えば磁気または光ディスク、RAM、ROM、信号、または他の媒体のようなコンピュータ可読媒体上に格納可能なコンピュータプログラムプロダクトを使用して提供することができる。当業者には明らかなように、プロセッサは、コンピュータプログラムプロダクトのステートメントを読み、これらのステートメントに従って方法を遂行する手段を動作させることができる。
【0113】
以上に本発明の種々の面を、フーリエ解析技術に基づく信号処理に関連して説明したが、余弦変換、ウェーブレット変換、その他の解析方法に基づく技術のような類似信号処理技術も、本発明の実施形態による結果と類似の結果を達成するために適用可能である。このような信号処理を、以上の説明に基づいて如何に実現するかは、当業者ならば理解することができよう。
【0114】
幾つかの実施形態を説明したが、当業者ならば、上述した機能を遂行する、及び/又は結果及び/又は1つ又はそれ以上の長所を取得するための種々の他の手段及び/又は構造を容易に考案することができよう。これらの各変化及び/又は変形は、上述した本発明の実施形態の範囲内にあることを理解されたい。より一般的に言えば、当業者には明白なように、上述した全てのパラメータ、寸法、材料、及び構成は例示に過ぎず、実際のパラメータ、寸法、材料、及び/又は構成は、本発明の教示が使用される特定の1つまたは複数の応用に依存しよう。以上のように、上述した実施形態は単なる例示に過ぎず、これらの実施形態は、特許請求の範囲の独立項及び従属項に特定的に記載されているものとは異なって実現できることを理解されたい。本明細書において説明した実施形態は、各個々の特色、システム、物品、材料、キット、及び/又は上述した方法を指向している。更に、もしこれらの特色、システム、物品、材料、キット、及び/又は方法が相互に矛盾しなければ、これらの特色、システム、物品、材料、キット、及び/又は方法の2つまたはそれ以上の何等かの組合せも、本発明の範囲内に含まれる。
【0115】
本明細書において定義し、使用されている全ての定義は、辞書の定義、引用した文書内の定義、及び/又は通常の定義の意味を支配するものであることを理解されたい。
【0116】
明細書及び特許請求の範囲に使用されている“ある”、及び“1つの”という不定冠詞は、それとは逆に明示されていない限り、“少なくとも1つ”を意味するものであると理解されたい。
【0117】
明細書及び特許請求の範囲に使用されている“及び/又は”というフレーズは、そのように互いに結合されている要素、即ち、ある場合には連結的に存在し、他の場合には離接的に存在する要素の“何れか一方、または両方”を意味するものと理解されたい。“及び/又は”を用いて記述される複数の要素も同じ意味である、即ちそのように互いに結合されている要素の“1つ又はそれ以上”を意味する。“及び/又は”によって特定的に識別される要素以外の他の要素も、これらの特定的に識別されている要素に関係があろうと、なかろうと、オプションとして存在することができる。即ち、限定するものではないが、“からなる”のようなオープンエンデッドの言語と共に使用された時の“A及び/又はB”とは、一実施形態ではAだけのことであり(オプションとして、B以外の要素を含む)、別の実施形態ではBだけのことであり(オプションとして、A以外の要素を含む)、更に別の実施形態ではA及びBの両方のことである(オプションとして、他の要素を含む)。
【0118】
明細書及び特許請求の範囲に使用されている“または”とは、上述した“及び/又は”と同じ意味を有しているものと理解されたい。例えば、あるリスト内のアイテムを分離する場合、“または”、または“及び/又は”は包括的であるものと解釈する、即ち、複数の要素または要素のリストの少なくとも1つを含むだけではなく、1つより多くを、そしてオプションとして、付加的な記載されていないアイテムをも含むものと解釈すべきである。これに対して、“・・の1つだけ”、または“・・の正確に1つ”のように明確に指示されている用語、または特許請求の範囲に使用される場合の“からなる( consisting of )”とは、複数の要素または要素のリストの正確に1つの要素を含むことを意味する。一般的に、使用されている“または”という用語は、“・・の何れか”、“・・の1つ”、“・・の1つだけ”、または“・・の正確に1つ”のような排他的な用語が先行する場合には、排他的な二者択一(即ち、“一方または他方であるが、両方ではない”)を指示するとのみ解釈すべきである。
【0119】
1つ又はそれ以上の要素のリストについて明細書及び特許請求の範囲に使用されている“少なくとも1つ”というフレーズは、要素のリスト内の要素の何れか1つ又はそれ以上から選択された少なくとも1つの要素を意味するが、必ずしも要素のリスト内に特定的に記載されている各要素及び全要素の少なくとも1つを含むものではなく、また要素のリスト内の要素の何等かの組合せを排除するものではないと理解すべきである。この定義によれば、“少なくとも1つ”というフレーズが指している要素のリスト内に特定的に識別されている要素以外の要素も、その特定的に識別されている要素に関係があろうと、なかろうと、オプションとして存在することが可能になる。従って、例えば、限定するものではないが、“A及びBの少なくとも1つ”(または、等価的に、“AまたはBの少なくとも1つ”、または、等価的に、“A及び/又はBの少なくとも1つ”)とは、一実施形態では少なくとも1つのAのことであって、オプションとして1つAより多くのAを含むがBは存在せず(オプションとして、B以外の要素を含む)、別の実施形態では少なくとも1つのBのことであって、オプションとして1つより多くのBを含むがAは存在せず(オプションとして、A以外の要素を含む)、更に別の実施形態では少なくとも1つのA(オプションとして1つより多くのAを含む)、及び少なくとも1つのB(オプションとして1つより多くのBを含む)のことであることができる(オプションとして、他の要素を含む)。
【0120】
逆の意味に明示されていない限り、1つより多くのステップまたは動作を含む特許請求の範囲に記載されている何れの方法においても、方法のステップまたは動作の順序は必ずしも記載されている方法のステップまたは動作の順序に限定されるものではないことをも理解されたい。
【0121】
特許請求の範囲並びに上述した明細書においては、“・・を具備する”、“・・を含む( including, containing, involving )”、“・・を担持する”、“・・を有する”、“・・を保持する”、“・・から成り立つ”等のような全ての遷移フレーズは、オープンエンデッドである、即ち、“・・を含むが、それに限定されるものではない”という意味であると理解されたい。“・・からなる”、及び“本質的に・・からなる”という遷移フレーズだけが、それぞれクローズドまたはセミクローズド遷移フレーズである。
図1
図2A
図2B
図3
図4A
図4B
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14