【文献】
安藤芳康,排気ガス浄化用触媒担体,デンソー公開技報,デンソー知的財産部,1998年 4月15日,No.119,p.57 (整理番号:119-057),ISSN:1342-7970
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記外周壁に接する前記パーシャルセルの隔壁の厚さが、前記パーシャルセルを構成する他の隔壁よりも厚く形成され、且つ、前記外周壁方向に向かって、漸増するように形成されている請求項1又は2に記載のハニカム構造体。
前記不完全交点部における内接円である交点内接円の直径平均値(mm)を、前記完全セルの隔壁平均厚さ(mm)で除して算出した、不完全交点比r2が、2.0<r2<4.0である請求項2に記載のハニカム構造体。
前記最外周交点部における内接円である交点内接円の直径平均値(mm)を、前記完全セルの隔壁平均厚さ(mm)で除して算出した、最外周交点比r1が、2.0<r1<4.0である請求項1〜6のいずれか1項に記載のハニカム構造体。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明について、適宜、図面を参酌しながら、実施形態を説明するが、本発明はこれらに限定されて解釈されるべきものではない。本発明に係る要旨を損なわない範囲で、当業者の知識に基づいて、種々の変更、修正、改良、置換を加え得るものである。例えば、図面は、好適な本発明に係る実施形態を表すものであるが、本発明は図面に表される態様や図面に示される情報により制限されない。本発明を実施し又は検証する上では、本明細書中に記述されたものと同様の手段若しくは均等な手段が適用され得るが、好適な手段は、以下に記述される手段である。
【0024】
[1]本発明におけるハニカム構造体の構成:
本発明におけるハニカム構造体は、
図1、
図4に示されるように、二つの端面11A,11Bの間を連通する複数のセル3を区画形成する多孔質の隔壁13と、前記隔壁13と一体的に形成された外周壁19とを有するハニカム構造体1であって、前記セル3が、六角形の完全なセル断面を有する完全セル5と、前記セルの最外周部に位置し、六角形を形成せずに不完全なセル断面を有するパーシャルセル7と、からなるハニカム構造体として構成される。
【0025】
ハニカム構造体1は、次の(1)〜(4)の少なくとも1つを満たす。
【0026】
(1)前記外周壁に接する前記パーシャルセルの隔壁が、その他の隔壁よりも厚く形成されている。
【0027】
(2)前記外周壁に接する前記パーシャルセルの隔壁の厚さが、前記パーシャルセルを構成する他の隔壁よりも厚く形成され、且つ、前記外周壁方向に向かって、漸増するように形成されている。
【0028】
(3)前記パーシャルセルの隔壁と、前記完全セルの隔壁との交点部であって、前記パーシャルセルの、前記外周壁へ延びる、完全セルの隔壁長さより短い隔壁の始点に形成される交点部を、不完全交点部とし、前記不完全交点部がR状に形成されている。
【0029】
(4)前記外周壁と前記パーシャルセルの隔壁との交点部を、最外周交点部とし、前記最外周交点部がR状に形成されている。
【0030】
本発明のハニカム構造体は、次の(1a
)を満たす。(1a)前記外周壁に接する前記パーシャルセルの隔壁が、当該外周壁に接する前記パーシャルセルの隔壁以外の隔壁よりも厚く形成され
、且つ、前記外周壁と前記パーシャルセルの隔壁との交点部を、最外周交点部とし、前記最外周交点部がR状に形成されている
。このような構成により、本発明におけるハニカム構造体では、セルよれが発生し難く、キャニング時に製品が割れる等の弊害が生じないハニカム構造体を提供できる。すなわち、アイソスタティック破壊強度を向上でき、耐熱衝撃性を向上できるハニカム構造体を提供できる。さらに、触媒担持した際には、触媒を均一に塗布することができるため、高価な触媒を有効活用でき、触媒使用量を削減することができる。
【0031】
以下、更に、本発明のハニカム構造体の特徴的構成について、図面を参照しながら説明する。
【0032】
[1−1]完全セルとパーシャルセル:
本発明のハニカム構造体におけるセルは、完全セルとパーシャルセルからなる。さらに、このパーシャルセルの外側(端面の中心側と反対側方向)には、パーシャルセルの隔壁と一体的に形成された外周壁が形成されている。
【0033】
(完全セル)
ここで、「完全セル」とは、六角形の完全なセル断面を有するセルを意味する。言い換えれば、ハニカム構造体の端面(入口端面、或いは出口端面)の、最外周部に位置しないセルであって、セル断面を構成する各辺が不足なく形成されたセルをいう。さらに、セル断面が六角形状であるセルである。具体的には、
図1、
図2、
図4に示されるように、六角形の完全なセル断面を有した、完全セル5を挙げることができる。なお、完全セルの断面形状は、六角形状であればよく、厳密な正六角形でなくてもよい。
【0034】
(パーシャルセル)
また、「パーシャルセル」とは、セルの一部が外周壁によって構成されているセルであり、セル断面が六角形を形成せずに不完全なセル断面を有するセルをいう。言い換えれば、上記「完全セル」の外側に配されるセルであり、セル断面を構成する辺が不足し、セル断面が六角形状でないセルをいい、セルの周囲の一部が隔壁によって区画されていないセルをいう。具体的には、
図1、
図2、
図4に示されるように、セル断面が六角形を形成していないパーシャルセル7を挙げることができる。
【0035】
(パーシャルセルの隔壁)
ハニカム構造体1では、(1)前記外周壁に接する前記パーシャルセルの隔壁が、その他の隔壁よりも厚く形成されていることが好ましい。このように形成されることにより、アイソスタティック破壊強度を確実に向上させることができる。
【0036】
具体的には、
図5Aに示されるように、外周壁19に接しないパーシャルセル7の隔壁13bよりも、隔壁の厚さを厚く形成した、「外周壁19に接するパーシャルセル7の隔壁13a」を挙げることができる。また、「その他の隔壁」としては、たとえば、
図5Aに示されるように、「外周壁に接するパーシャルセルの隔壁13a」を除いた、他の隔壁13bが挙げられる。
【0037】
また
、ハニカム構造体1では、(2)前記外周壁に接する前記パーシャルセルの隔壁の厚さが、前記パーシャルセルを構成する他の隔壁よりも厚く形成され、且つ、前記外周壁方向に向かって、漸増するように形成されていることが好ましい。このように形成されることにより、アイソスタティック破壊強度を確実に向上させることができる。
【0038】
具体的には、
図4に示されるように、前記外周壁19に接する前記パーシャルセル7の隔壁の厚さが、前記外周壁19方向に向かって、漸増するように形成されている「隔壁13a」を例示できる。なお、パーシャルセル7の隔壁の厚さを漸増させるように形成する方法としては、口金のスリットの幅を前記外周壁に接する前記パーシャルセルの隔壁に相当する部分を、漸増するようにして、設ける。
【0039】
また
、ハニカム構造体1では、(3)前記パーシャルセルの隔壁と、前記完全セルの隔壁との交点部であって、前記パーシャルセルの、前記外周壁へ延びる、完全セルの隔壁長さより短い隔壁の始点に形成される交点部を、不完全交点部とし、前記不完全交点部がR状に形成されていることが好ましい。すなわち、不完全交点部の中心に向かって凹んだ状態となるように曲率を持たせて、不完全交点部を形成することが好ましい。このように形成されることにより、アイソスタティック破壊強度を確実に向上させることができる。
【0040】
ここで、「交点部」とは、隔壁と隔壁が交わる部分をいう。たとえば、完全セルを形成する隔壁と隔壁が交わる「交点部」は、
図6に示されるように、完全セル5を形成する隔壁13と隔壁13が交わり内接円21が描かれている交点部等が挙げられる。また、「不完全交点部」とは、パーシャルセルの隔壁と、前記完全セルの隔壁との交点部であって、前記パーシャルセルの、前記外周壁へ延びる、完全セルの隔壁長さより短い隔壁の始点に形成される交点部をいう。具体的には、
図5Bに示されるように、パーシャルセル7の隔壁13aと、前記完全セル5の隔壁13bとの交点部であって、パーシャルセル7の、外周壁19へ延びる、隔壁13bの長さより短い隔壁13aの始点に形成される、不完全交点部25が挙げられる。
【0041】
なお、「外周壁へ延びる隔壁の長さより短い隔壁」としたのは、隔壁13bに相当する辺と、外周壁19へ延びる隔壁13aに相当する辺を区別するためである。たとえば、
図8では、隔壁13bが、外周壁19へ延びる隔壁13aよりも長く描かれている。
【0042】
上記不完全交点部をR状に形成する方法としては、たとえば、口金の不完全交点部に対応する箇所をR加工することで形成できる。
【0043】
また
、ハニカム構造体1では、(4)前記外周壁と前記パーシャルセルの隔壁との交点部を、前記最外周交点部とし、最外周交点部がR状に形成されていることが好ましい。すなわち、最外周交点部の中心に向かって凹んだ状態となるように曲率を持たせて、最外周交点部を形成することが好ましい。このように形成されることにより、アイソスタティック破壊強度を確実に向上させることができる。
【0044】
ここで、「最外周交点部」とは、パーシャルセルの隔壁と外周壁が交わる交点部分をいう。具体的には、
図5Cに示されるように、パーシャルセル7の隔壁と外周壁19が交わる交点部分であり、R状に形成されている最外周交点部23を例示できる。
【0045】
なお、最外周交点部をR状に形成するには、口金の最外周交点部に対応する箇所をR加工することで形成できる。
【0046】
(パーシャルセルの隔壁平均厚さと外周壁の平均厚さ)
さらに、本発明のハニカム構造体では、前記パーシャルセルの隔壁平均厚さw(mm)を、前記外周壁の平均厚さo(mm)で除して算出した値が、0.1<w/o<1.0であることが好ましい。パーシャルセルの隔壁平均厚さと外周壁の平均厚さが、このような関係を有することによって、ハニカム構造体のキャニング時に生じやすい、セルよれを防止できる。その結果、アイソスタティック破壊強度を向上させることができる。
【0047】
一方、前記パーシャルセルの隔壁平均厚さw(mm)を、前記外周壁の平均厚さo(mm)で除して算出した値が、0.1未満であると、最外周部が薄くなり過ぎてしまう。その結果、最外周部における強度不足が生じ、ハニカム構造体全体としてのアイソスタティック破壊強度が不足してしまう。また、前記パーシャルセルの隔壁平均厚さw(mm)を、前記外周壁の平均厚さo(mm)で除して算出した値が、1.0超であると、最外周部が厚くなり過ぎてしまう。この場合に、前記パーシャルセルの内周に配置される完全セルよりも、著しく最外周部が厚くなり過ぎてしまうため、耐熱衝撃性が低下する虞がある。すなわち、最外周部での熱容量が高くなり過ぎ、最外周部と最外周部以外の部分(完全セルが配置される内周部)での温度差がつき易くなる。
【0048】
たとえば、
図2に示されるように、斜線が引かれているパーシャルセル7の部分が、「最外周部」に相当する。たとえば、
図2に示されるように、点線で示された斜線が引かれていない完全セル5を挙げることができる。
【0049】
より好ましくは、前記パーシャルセルの隔壁平均厚さw(mm)を、前記外周壁の平均厚さo(mm)で除して算出した値が、0.4<w/o<0.6である。このようにすることで確実に、セルよれを防止できアイソスタティック破壊強度を十分に得ることができる。
【0050】
ここで、ハニカム構造体の最外周に位置する外周壁は、成形時にハニカム成形体と一体的に形成させる成形一体壁(隔壁と外周壁とが焼結し、隔壁と外周壁との境界が明確には残っていない状態)として形成される。この外周壁の厚さは、0.3〜0.7mmが好ましく、さらに、0.4〜0.6mmが好ましい。
【0051】
(交点比)
ここで、「交点比」は、次のように求めることができる。
図6に示されるように、完全セル5を形成する隔壁13と隔壁13が交わる交点部に、内接する内接円21を描く。さらに、その内接円21の直径tの平均値(交点内接円直径平均値)を求める。そして、この交点内接円直径平均値を、完全セル5の隔壁平均厚さで除して算出した数値が、交点比となる。
【0052】
(不完全交点部と不完全交点比)
さらに、本発明のハニカム構造体では、前記パーシャルセルの隔壁と、前記完全セルの隔壁との交点部であって、前記パーシャルセルの、前記外周壁へ延びる隔壁長さより短い隔壁の始点に形成される交点部を、不完全交点部とし、前記不完全交点部における内接円である交点内接円の直径平均値(mm)を、完全セルの隔壁平均厚さ(mm)で除して算出した、不完全交点比r2が、2.0<r2<4.0であることが好ましい。このように構成されることによって、確実にアイソスタティック破壊強度を向上させながら、耐熱衝撃性を向上させることができる。
【0053】
一方、前記不完全交点比r2が、2.0未満であると、不完全交点部の強度が不足する。また、前記不完全交点比r2が、4.0超であると、最外周部の熱容量が高くなり過ぎ、最外周部と最外周部以外の部分(完全セルが配置される内周部)での温度差がつき易くなる。
【0054】
ここで、「不完全交点比」は、上記「交点比」に準じて次のように求められる。
図8に示されるように、不完全交点部25において内接する内接円27を描く。そして、内接円27の直径t2の平均値(交点内接円直径平均値)を求め、この交点内接円直径平均値を、完全セル5の隔壁平均厚さで除する。このようにして算出した値が、「不完全交点比」となる。なお、「不完全交点比r2」の値が、「1.15」超である場合には、不完全交点部はR状に形成されていることになる。
【0055】
好ましくは、前記不完全交点比r2が、2.5<r2<3.5である。このように構成されることによって、確実にセルよれを防止することができ、且つ、最外周部における熱容量を許容限度内に抑制することができる。
【0056】
(最外周交点部と最外周交点比)
さらに、本発明のハニカム構造体では、前記外周壁と前記パーシャルセルの隔壁とが成す最外周交点部において、最外周交点部における内接円である交点内接円の直径平均値(mm)を、完全セルの隔壁平均厚さ(mm)で除して算出した、最外周交点比r1が、2.0<r1<4.0であることが好ましい。このように構成されることで、最外周交点部を十分に補強できる。なお、「最外周交点比r1」の値が、「1.15」超である場合には、最外周交点部はR状に形成されていることになる。
【0057】
一方、前記最外周交点比r1が、2.0未満であると、最外周交点部の強度が不足し、セルよれを生じさせやすい。また、前記最外周交点比r1が、4.0超であると、最外周部での熱容量が高くなり過ぎ、最外周部と、最外周部以外の部分(完全セルが配置される内周部)で温度差が生じやすくなる。
【0058】
ここで、「最外周交点比」は、上記「交点比」に準じて次のように求められる。
図7に示されるように、最外周交点部23において内接する内接円22を描く。そして、内接円22の直径t1の平均値(交点内接円直径平均値)を求め、この交点内接円直径平均値を、完全セルの隔壁平均厚さで除する。このようにして算出した値が、「最外周交点比」となる。
【0059】
好ましくは、最外周交点比r1が、2.5<r1<3.5である。このようにすることで、最外周交点部を確実に補強できる。
【0060】
(完全セルの隔壁とパーシャルセルの隔壁)
さらに、本発明のハニカム構造体では、前記パーシャルセルの隔壁平均厚さw(mm)を、完全セルの隔壁平均厚さt(mm)で除して算出した値が、2.0<w/t<4.0である。このように構成されることによって、確実にセルよれを防止することができる。且つ、最外周部熱容量を許容限度内に抑制することができる。その結果、最外周部と、完全セルが配置され内周部との温度差がつき難くなり、耐熱衝撃性を向上させることができる。
【0061】
一方、完全セルの隔壁平均厚さt(mm)を、前記パーシャルセルの隔壁平均厚さw(mm)で除して算出した値が、2.0未満であると、パーシャルセルの強度が十分でなく、セルよれを生じさせやすい。また、完全セルの隔壁平均厚さt(mm)を、前記パーシャルセルの隔壁平均厚さw(mm)で除して算出した値が、4.0超であると、耐熱衝撃性を向上させ難くなる。
【0062】
好ましくは、完全セルの隔壁平均厚さt(mm)を、前記パーシャルセルの隔壁平均厚さw(mm)で除して算出した値が、2.5<w/t<3.5である。
【0063】
[2]その他の構成:
本発明のハニカム構造体のその他の構成としては、以下のような構成であることが好ましい。
【0064】
(隔壁の厚さ)
完全セルの隔壁の平均厚さは、140μm以下であってもよく、100μm以下でもよい。また、パーシャルセルの隔壁の平均厚さは、140μm以下であってもよく、100μm以下でもよい。完全セルの隔壁の平均厚さ、及びパーシャルセルの隔壁の平均厚さが、140μm以下に薄肉化された場合には、強度低下が心配されるが、これまで説明したような強度補強を行うことにより、薄肉化された六角セルを備えるハニカム構造体の実用化を実現することができる。
【0065】
ここで、本明細書において「隔壁の平均厚さ」は、ハニカム構造体の一方の端面(或いは他方の端面)を、走査型電子顕微鏡(SEM)で観察し、観察視野に含まれる任意に選択した隔壁(10箇所)について厚さを測定し、平均値として算出した値である。
【0066】
好ましくは、セル密度は、30セル/cm
2以上100セル/cm
2以下であること、より好ましくは、セル密度が30セル/cm
2以上100セル/cm
2未満であり、隔壁の厚さが50μm以上310μm未満であるように形成することである。セル密度が30セル/cm
2未満であると、排ガスとの接触効率が不足する傾向にある。一方、セル密度が100セル/cm
2超であると、圧力損失が増大する傾向にある。隔壁の厚さが50μm未満であると、強度が不足して耐熱衝撃性が低下する場合がある。一方、隔壁の厚さが310μm以上であると、圧力損失が増大する傾向にある。
【0067】
ここで、本明細書において、「セル密度」は、ハニカム構造体の一方の端面(或いは他方の端面)を、走査型電子顕微鏡(SEM)で観察し、観察視野に含まれる任意に選択した領域中に存在するセルの数を測定することによって算出した値である。
【0068】
さらに、隔壁における気孔率は40%〜80%であることが好ましい。気孔率が40%未満であると、触媒が十分にコートし難くなる。また、80%超であると、材料強度が低下してしまうという問題がある。
【0069】
ここで、本明細書において、「隔壁における気孔率」は、水銀ポロシメータにより測定した値である。
【0070】
(ハニカム構造体の材料)
ハニカム構造体の材料としては、耐熱性に優れたセラミックスであることが好ましい。特に、この観点から、コージェライト、ムライト、アルミナ、アルミニウムタイタネート、炭化珪素、窒化珪素が好ましい。さらに、耐熱衝撃割れの観点から、熱膨張の低いコージェライト、アルミニウムタイタネートが好適である。
【0071】
[3]ハニカム構造体の作製方法:
本発明のハニカム構造体は、例えば、以下のように製造することができる。ただし、以下の例に限定されるものではない。
【0072】
まず、坏土用材料としてコージェライト化原料を用意する。コージェライト化原料は、コージェライト結晶の理論組成となるように各成分を配合するため、シリカ源成分、マグネシア源成分、及びアルミナ源成分等を配合する。このうちシリカ源成分としては、石英、溶融シリカを用いることが好ましく、更に、このシリカ源成分の粒径を100〜150μmとすることが好ましい。
【0073】
マグネシア源成分としては、例えば、タルク、マグネサイト等を挙げることができる。これらの中でも、タルクが好ましい。タルクは、コージェライト化原料中37〜43質量%含有させることが好ましい。タルクの粒径(平均粒子径)は、5〜50μmであることが好ましく、10〜40μmであることが更に好ましい。また、マグネシア(MgO)源成分は、不純物としてFe
2O
3、CaO、Na
2O、K
2O等を含有していてもよい。
【0074】
アルミナ源成分としては、不純物が少ないという点で、酸化アルミニウム及び水酸化アルミニウムの少なくともいずれか一種を含有するものが好ましい。また、コージェライト化原料中、水酸化アルミニウムは10〜30質量%含有させることが好ましく、酸化アルミニウムは0〜20質量%含有させることが好ましい。
【0075】
次に、コージェライト化原料に添加する坏土用材料(添加剤)を用意する。添加剤として、バインダを用いる。そして、バインダ以外には、分散剤や界面活性剤を使用することができる。
【0076】
バインダとしては、例えば、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、メチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、カルボキシルメチルセルロース、ポリビニルアルコール等を挙げることができる。また、分散剤としては、例えば、デキストリン、ポリアルコール等を挙げることができる。また、界面活性剤としては、例えば、脂肪酸石鹸を挙げることができる。なお、添加剤は、一種単独または二種以上用いることができる。
【0077】
次に、コージェライト化原料100質量部に対して、バインダを3〜8質量部、分散剤を0.1〜2質量部、水を10〜40質量部の割合で混合し、これら坏土用材料を混練し、坏土を調製する。
【0078】
次に、調製した坏土を、押出成形法、射出成形法、プレス成形法等でハニカム形状に成形し、生のハニカム成形体を得る。連続成形が容易であり、例えばコージェライト結晶を配向させることができることから、押出成形法を採用することが好ましい。押出成形法は、真空土練機、ラム式押出成形機、2軸スクリュー式連続押出成形機等の装置を用いて行うことができる。
【0079】
次に、ハニカム成形体を乾燥させて所定の寸法に調整してハニカム乾燥体を得る。ハニカム成形体の乾燥は、熱風乾燥、マイクロ波乾燥、誘電乾燥、減圧乾燥、真空乾燥、凍結乾燥等で行うことができる。なお、全体を迅速且つ均一に乾燥することができることから、熱風乾燥と、マイクロ波乾燥または誘電乾燥と、を組み合わせて乾燥を行うことが好ましい。
【0080】
[4]触媒:
上述したように、ハニカム構造体の隔壁に触媒を担持させて、触媒付きハニカム構造体として使用されることが好ましい。この触媒によって、炭化水素(HC)、一酸化炭素(CO)、窒素酸化物(NOx)を浄化することができる。
【0081】
触媒としては、三元触媒(TWC;three way catalyst)、酸化触媒(DOC)、NOx選択還元用SCR触媒、NOx吸蔵還元触媒(LNT)などを挙げることができる。
【0082】
三元触媒は、主に炭化水素(HC)、一酸化炭素(CO)、窒素酸化物(NOx)を浄化する触媒のことをいう。例えば、白金(Pt)、パラジウム(Pd)、ロジウム(Rh)を含む触媒を挙げることができる。この三元触媒により、炭化水素は水と二酸化炭素に、一酸化炭素は二酸化炭素に、窒素酸化物は窒素に、それぞれ酸化または還元によって浄化される。
【0083】
NO
X選択還元用SCR触媒としては、金属置換ゼオライト、バナジウム、チタニア、酸化タングステン、銀、及びアルミナからなる群より選択される少なくとも1種を含有するものを挙げることができる。また、NOx吸蔵触媒としては、アルカリ金属、及び/又はアルカリ土類金属等を挙げることができる。アルカリ金属としては、K、Na、Li等を挙げることができる。アルカリ土類金属としては、Caなどを挙げることができる。K、Na、Li、及びCaの合計量は、ハニカム構造体1の単位体積(1cm
3)当り、5g以上であることが好ましい。
【0084】
[5]ハニカム触媒体の製造方法:
本発明のハニカム構造体に触媒をコート(担持)した、触媒付きハニカム構造体(ハニカム触媒体)を作製する場合には、例えば、以下のようにして作製することができる。前述のように得られたハニカム構造体の、一方の端面側の端部を触媒スラリーに浸漬させ、他方の端面側から吸引することによって隔壁に触媒を塗工する(触媒を担持させる)。その後、焼成することによってハニカム触媒体を作製することができる。
【0085】
触媒スラリーを隔壁に塗工する(触媒を隔壁に担持させる)方法は、特に限定されず、公知の方法で塗工することができる。例えば、まず、触媒を含有する触媒スラリーを調製する。その後、調製した触媒スラリーを、ディッピングや吸引により、ハニカム焼成体の一方の端面側からのセル内に流入させる。この触媒スラリーは、隔壁の表面全体に塗工することが好ましい。そして、触媒スラリーをセル内に流入させた後に、余剰スラリーを圧縮空気で吹き飛ばす。その後、触媒スラリーを乾燥、焼付けすることにより、隔壁に触媒が担持されたハニカム触媒体を得ることができる。
【0086】
なお、乾燥条件は、80〜150℃、1〜6時間とすることが好ましい。また、焼付け条件は450〜700℃、0.5〜6時間とすることが好ましい。なお、触媒スラリーに含有される触媒以外の成分としては、アルミナ等が挙げられる。
【実施例】
【0087】
以下、本発明を実施例に基づいて具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0088】
(ハニカム構造体の作製方法)
コージェライト化原料として、アルミナ、水酸化アルミニウム、カオリン、タルク、及びシリカを使用し、コージェライト化原料100質量部に、分散媒を35質量部、有機バインダを6質量部、分散剤を0.5質量部、それぞれ添加し、混合、混練して坏土を調製した。分散媒として水を使用し、有機バインダとしてヒドロキシプロピルメチルセルロースを使用し、分散剤としてはエチレングリコールを使用した。
【0089】
次いで、所定の口金を用いて坏土を押出成形し、円柱形(円筒形)のハニカム成形体を得た。このハニカム成形体は、一方の端面(入口端面)と、他方の端面(出口端面)の間を連通する複数のセルを区画形成する多孔質の隔壁と、前記隔壁と一体的に形成された外周壁とを有するハニカム構造体である。さらに、入口端面、及び出口端面の上記セルは、これまで説明したハニカム構造体のように、六角形の完全なセル断面を有する完全セルと、六角形を形成せずに不完全なセル断面を有するパーシャルセルから構成される。
【0090】
次に、上記押出成形により得られたハニカム成形体を、マイクロ波乾燥機で乾燥させた。更に、熱風乾燥機で完全に乾燥させた後、ハニカム成形体の両端面を切断し、所定の寸法に整えた。
【0091】
上記の製造方法により、直径105.7mm、長さ(端面中心間距離)114.3mmのハニカム構造体を、表1、表2に示されるような、「完全セルの隔壁平均厚さt」、「セルピッチ」、「パーシャルセルの隔壁平均厚さw」、「外壁平均厚さo」、「w/o」、「不完全交点比r2」、「最外周交点比r1」となるように作製し、実施
例2、4
、6〜9、11〜18、参考例
1、3、
5、10、19
〜24、比較例1及び2のハニカム構造体を得た。このようにして得られた、実施
例2、4
、6〜9、11〜18、参考例
1、3、
5、10、19
〜24、比較例1及び2のハニカム構造体を、以下の「アイソスタティック破壊強度」、「電気炉スポーリング性(ESP)」の点から評価した。その結果を表1、表2に示した。
【0092】
なお、表1、及び表2中、「w/t」の値が、「1.00」であるものは、「パーシャルセルの隔壁平均厚さ」と「完全セルの隔壁平均厚さ」が同じであることを意味する。また、「パーシャルセル壁厚」が「均一」とは、「パーシャルセルの隔壁厚さが均一な状態で形成されている」ことを意味し、「パーシャルセル壁厚」が「漸増」とは、「パーシャルセル隔壁厚さが外周壁方向に向かって、漸増するように形成されている」ことを意味する。また、「不完全交点比r2」の値が、「1.15」であるものは、不完全交点部がR状に形成されていないことを意味する。同様に、「最外周交点比r1」の値が、「1.15」であるものは、最外周交点部がR状に形成されていないことを意味する。
【0093】
(アイソスタティック破壊強度の評価)
社団法人自動車技術会発行の自動車規格(JASO規格)M505−87で規定されているアイソスタティック破壊強度試験に基づいて測定する。アイソスタティック破壊強度試験は、ゴムの筒状容器にハニカム構造体を入れてアルミ製板で蓋をし、水中で等方加圧圧縮を行う試験である。アイソスタティック破壊強度(アイソ強度)は、ハニカム構造体が破壊したときの加圧圧力値(MPa)で示される。アイソ強度は、1.00MPa以上を合格とし、表中に「○」で示す。合格品のうち、アイソ強度が、1.5MPaを超える場合、より優れたものとして、表中に「◎」で示す。さらに、1.00MPa未満のものを、不合格として表中に「×」で示す。尚、アイソスタティック破壊強度試験は、ハニカム構造体を自動車に搭載する際に、ハニカム構造体が、外周面把持された状態で缶体内に収納される場合の、圧縮負荷加重を模擬した試験である。
【0094】
(電気炉スポーリング性(ESP)の評価)
室温より所定温度高い温度に保った電気炉に室温のハニカム構造体を入れて20分間保持後、耐火レンガ上へハニカム構造体を取り出し15分間以上自然放置した後、室温になるまで冷却した。外観を観察して金属棒でハニカム構造体外周部を軽く叩くことにより耐熱衝撃性を評価した。ハニカム構造体にクラックが観察されず、かつ打音が鈍い音でなく、金属音であれば合格とし、電気炉内温度を50℃ステップで順次上げていく毎に同様の検査を800℃になるまで繰り返した。このうち、700℃になっても外観及び打音に異常がみられなかったものを合格とし「○」で示す。合格品のうち、800℃になっても外観及び打音に異常がみられなかったものを、より優れたものとして表中に「◎」で示す。さらに、700℃に達するまでに外観又は打音に異常がみられたものを不合格として表中に「×」で示す。
【0095】
【表1】
【0096】
【表2】
【0097】
(考察)
実施
例2、4
、6〜9、11〜18、参考例
1、3、
5、10、19
〜24では「アイソスタティック破壊強度の評価」、及び「電気炉スポーリング性(ESP)の評価」について、良好な結果を得ることができた。特に、実施例14は、全実施例の中で、最も優れた結果を得ることができ、「アイソスタティック破壊強度」を向上させ、及び耐熱衝撃性を向上させることが確認できた。一方、比較例1及び2は、アイソスタティック破壊強度が不足し、耐熱衝撃性が向上させることができないことが確認された。