特許第5785451号(P5785451)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5785451
(24)【登録日】2015年7月31日
(45)【発行日】2015年9月30日
(54)【発明の名称】コネクタ
(51)【国際特許分類】
   H01R 13/639 20060101AFI20150910BHJP
   H01R 13/627 20060101ALI20150910BHJP
【FI】
   H01R13/639 Z
   H01R13/627
【請求項の数】3
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2011-147159(P2011-147159)
(22)【出願日】2011年7月1日
(65)【公開番号】特開2013-16300(P2013-16300A)
(43)【公開日】2013年1月24日
【審査請求日】2014年2月24日
(73)【特許権者】
【識別番号】591043064
【氏名又は名称】モレックス インコーポレイテド
【氏名又は名称原語表記】MOLEX INCORPORATED
(74)【代理人】
【識別番号】110000154
【氏名又は名称】特許業務法人はるか国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】羽生 拓司
(72)【発明者】
【氏名】尾田 聡也
【審査官】 段 吉享
(56)【参考文献】
【文献】 特開2004−178960(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01R 13/639
H01R 13/627
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ケーブルの挿入穴が形成された第1の筐体と、
第2の筐体であって、前記第2の筐体に対して前記第1の筐体が前記ケーブルの挿抜方向とは交差する方向に挿抜される第2の筐体と、
を備え、
前記第1の筐体及び前記第2の筐体は、前記ケーブルの挿抜方向に沿って設けられ、かつ前記第1の筐体と前記第2の筐体とが嵌合した状態において、前記ケーブルの挿抜方向の抜出側に進むに従って互いの間隔が広くなるように、前記第1の筐体の挿抜方向に向かい合う抜出抑制面を有する係止部をそれぞれ有する、
ことを特徴とするコネクタ。
【請求項2】
ケーブルの挿入穴が形成された第1の筐体と、
第2の筐体であって、前記第2の筐体に対して前記第1の筐体が前記ケーブルの挿抜方向とは交差する方向に挿抜される第2の筐体と、
を備え、
前記第1の筐体及び前記第2の筐体には、前記第1の筐体の抜出時に互いに接触する抜出抑制面を有する係止片がそれぞれ設けられ、
前記第1の筐体の抜出抑制面と前記第2の筐体の抜出抑制面とは、前記ケーブルの挿抜方向に沿って設けられ、かつ前記第1の筐体と前記第2の筐体とが嵌合した状態において、前記ケーブルの挿抜方向の抜出側に進むに従って互いの間隔が広くなるように向かい合う、
ことを特徴とするコネクタ。
【請求項3】
前記第1の筐体の係止片及び前記第2の筐体の係止片は、前記第1の筐体の挿入時に互いに接触する挿入抑制面をそれぞれ有し、
前記第1の筐体の挿入抑制面及び前記第2の筐体の挿入抑制面は、前記ケーブルの挿抜方向に沿って設けられ、かつ前記第1の筐体と前記第2の筐体とが嵌合した状態において、一方が他方に対して前記ケーブルの挿抜方向の抜出側に進むに従って互いの間隔が広くなるように傾斜する、
請求項2に記載のコネクタ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コネクタに関し、特には2つの筐体の嵌合構造に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、ケーブルが挿入されたソケットコネクタが、回路基板上に配置されたベースコネクタに回路基板と垂直な方向に嵌め込まれる、いわゆる垂直嵌合型のコネクタが開示されている。このコネクタでは、ベースコネクタの内側面及びソケットコネクタの外側面にケーブルの挿入方向に延びる係止部がそれぞれ設けられており、これら係止部が上下に重なるように係合する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009−224086号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、上記従来のコネクタでは、ソケットコネクタをベースコネクタから取り外す際に、回路基板から離れる方向にケーブルが引き上げられることが多い。このとき、ソケットコネクタの係止部は傾斜した状態でベースコネクタの係止部と接触することから、抜け止めのための抵抗力を十分に発揮できないおそれがある。また、係止部が部分的に削られるため、それ以降、抜け止めのための抵抗力が激減するおそれがある。
【0005】
本発明は、上記実情に鑑みて為されたものであり、抜け止めのための抵抗力の向上を図ると共に、抜け止めのための抵抗力の劣化を抑制することが可能なコネクタを提供することを主な目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するため、本発明のコネクタは、ケーブルの挿入穴が形成された第1の筐体と、第2の筐体であって、前記第2の筐体に対して前記第1の筐体が前記ケーブルの挿抜方向とは交差する方向に挿抜される第2の筐体と、を備える。前記第1の筐体及び前記第2の筐体は、前記第1の筐体と前記第2の筐体とが嵌合した状態において、前記ケーブルの挿抜方向の抜出側に進むに従って互いの間隔が広くなるように、前記第1の筐体の挿抜方向に向かい合う係止部をそれぞれ有する。
【0007】
本発明によると、ケーブルが第1の筐体の抜出方向に引き上げられたときに、2つの係止部が平行な状態に近づくため、抜け止めのための抵抗力の向上を図ることが可能である。また、係止部が部分的に削られることが抑制されるため、抜け止めのための抵抗力の劣化を抑制することが可能となる。
【0008】
また、本発明のコネクタは、ケーブルの挿入穴が形成された第1の筐体と、第2の筐体であって、前記第2の筐体に対して前記第1の筐体が前記ケーブルの挿抜方向とは交差する方向に挿抜される第2の筐体と、を備える。前記第1の筐体及び前記第2の筐体には、前記第1の筐体の抜出時に互いに接触する抜出抑制面を有する係止片がそれぞれ設けられる。前記第1の筐体の抜出抑制面と前記第2の筐体の抜出抑制面とは、前記第1の筐体と前記第2の筐体とが嵌合した状態において、前記ケーブルの挿抜方向の抜出側に進むに従って互いの間隔が広くなるように向かい合う。
【0009】
本発明によると、ケーブルが第1の筐体の抜出方向に引き上げられたときに、2つの抜出抑制面が平行な状態に近づくため、抜け止めのための抵抗力の向上を図ることが可能である。また、抜出抑制面が部分的に削られることが抑制されるため、抜け止めのための抵抗力の劣化を抑制することが可能となる。
【0010】
また、本発明のコネクタにおいて、前記第1の筐体の係止片及び前記第2の筐体の係止片は、前記第1の筐体の挿入時に互いに接触する挿入抑制面をそれぞれ有し、前記第1の筐体の挿入抑制面及び前記第2の筐体の挿入抑制面の一方が他方に対して傾斜していてもよい。これによると、第1の筐体を第2の筐体に挿入するときに、2つの挿入抑制面が平行ではないため、挿入に必要な力の低減を図ることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1A】本発明の一実施形態に係るコネクタの斜視図である。
図1B】コネクタの分解斜視図である。
図2A】コネクタに含まれる第1の筐体の平面図である。
図2B】コネクタに含まれる第1の筐体の側面図である。
図3】コネクタに含まれる第2の筐体の断面図である。
図4A】コネクタの断面図である。
図4B】コネクタの断面図である。
図5】変形例に係る筐体の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明のコネクタの実施形態を、図面を参照しながら説明する。
【0013】
図1A及び図1Bは、コネクタ1の斜視図である。図2A及び図2Bは、第1の筐体である雄型筐体2の平面図及び側面図である。図3は、第2の筐体である雌型筐体3の断面図である。図4A及び図4Bは、コネクタ1の断面図である。これらの図では、ケーブル91の挿入方向を前方向とし、ケーブル91の抜出方向を後方向とし、雄型筐体2の挿入方向を下方向とし、雄型筐体2の抜出方向を上方向とする。
【0014】
コネクタ1は、ケーブル91が取り付けられる雄型筐体2と、不図示の回路基板上に配置される雌型筐体3と、を備えている。雄型筐体2と雌型筐体3とが嵌合するとき、コネクタ1は、全体として上下方向に比較的短い概略矩形板状を為す。雄型筐体2及び雌型筐体3は、絶縁性の樹脂材料により成形されている。
【0015】
雄型筐体2は、上下方向に比較的短い概略矩形板状に構成されている。雄型筐体2には、後端から前方に延びる複数の挿入穴2aが形成されている。各々の挿入穴2aには、先端に端子92を有するケーブル91が挿入される。雄型筐体2の左右両方の外側面には、外側方に突出する凸状の係止部21が設けられている。係止部21は、外側面の前後方向の中央部で前後方向に延びている。
【0016】
雌型筐体3は、上下方向に比較的短い概略矩形箱状に構成されており、上方向と後方向とに向けて開放された収納空間3aを有している。雌型筐体3は、収納空間3aの前方に配置される中辺部31と、中辺部31の両端から後方に延び、収納空間3aの左右両方に配置される一対の側辺部32と、収納空間3aの下方に配置される底部33と、を備えている。
【0017】
中辺部31には、前後方向に貫通する複数の貫通穴31aが左右方向に離れて形成されており、各々の貫通穴31aには、板状の端子93が起立した姿勢で前方から後方に向けて挿入される。端子93は、雄型筐体2と雌型筐体3とが嵌合するとき、ケーブル91の先端に設けられた端子92と接触する。また、端子93は、不図示の回路基板の表面に設けられた電極と接触する。
【0018】
各々の側辺部32の内側面には、内側方に突出する凸状の係止部35が設けられている。係止部35は、内側面の前後方向の中央部で前後方向に延びている。また、各々の側辺部32の後部には、上下方向に貫通する貫通穴32aが形成されており、各々の貫通穴32aには、支持金具4が上方から下方に向けて挿入される。支持金具4は、はんだ等で不図示の回路基板に固着される。
【0019】
雄型筐体2は、雌型筐体3の収納空間3aに上方から下方に向けて挿入される。このとき、雄型筐体2の係止部21と雌型筐体3の係止部35とは、互いに相手を乗り越えて係合状態に至る(図4Bを参照)。雄型筐体2及び雌型筐体3は、係止部21,35が受けた力を吸収するためのバネ形状のような構成を有しておらず、係止部21,35が受けた力は、係止部21,35自身が変形することによって吸収される。こうした係止部21,35は、フリクションロックとも呼ばれる。
【0020】
具体的には、雄型筐体2の係止部21は、上方を向いた抜出抑制面21aと、下方を向いた挿入抑制面21cと、を有している。雌型筐体3の係止部35は、下方を向いた抜出抑制面35aと、上方を向いた挿入抑制面35cと、を有している。雄型筐体2が雌型筐体3に挿入されるとき、係止部21の下側の挿入抑制面21cと、係止部35の上側の挿入抑制面35cと、が接触する。これら挿入抑制面21c,35cが互いに接触することにより、挿入抵抗力が生じる。他方、雄型筐体2が雌型筐体3から抜出されるとき、係止部21の上側の抜出抑制面21aと、係止部35の下側の抜出抑制面35aと、が接触する。これら抜出抑制面21a,35aが互いに接触することにより、抜出抵抗力(すなわち、抜け止めのための抵抗力)が生じる。
【0021】
挿入抵抗力は、挿入抑制面21c,35cの角度に応じて定まり、抜出抵抗力は、抜出抑制面21a,35aの角度に応じて定まる。抜出抵抗力を挿入抵抗力より大きくするため、抜出抑制面21a,35aの上下方向を基準とする傾斜は、挿入抑制面21c,35cよりも大きく設定される(図4Bを参照)。
【0022】
雄型筐体2の係止部21の抜出抑制面21aは、前上がりに傾斜している(図2Bを参照)。これに対して、雌型筐体3の係止部35の抜出抑制面35aは、前後方向には傾斜していない(図3を参照)。このため、雄型筐体2と雌型筐体3とが嵌合した状態において、抜出抑制面21a,35aは、後方向に進むに従って互いの間隔が広くなるように上下方向に向かい合う。そして、ケーブル91が上方に引き上げられたとき、抜出抑制面21a,35aは、より平行に近い形で接触することになる(図4Aを参照)。これにより、抜出抵抗力の向上を図ることが可能であると共に、抜出抑制面21a,35aが部分的に削られることが抑制されるため、抜出抵抗力の劣化を抑制することが可能である。なお、抜出抑制面21aの傾斜角度は、抜出抑制面21a,35aの間隔や抜出抑制面21aの長さなどに応じて適宜設定される。
【0023】
ここで、雄型筐体2と雌型筐体3とが嵌合した状態とは、係止部21,35が係合状態にあって、かつ雄型筐体2自身やケーブル91が持ち上げられていない状態、すなわち、雄型筐体2の下面が雌型筐体3の底面と平行に接触している状態である。
【0024】
なお、本実施形態では、雄型筐体2の係止部21の抜出抑制面21aが前上がりに傾斜した例を挙げたが、これに限られず、図5に示されるように、雌型筐体3の係止部35の抜出抑制面35aが前下がりに傾斜しても、同様の作用効果を得ることが可能である。
【0025】
また、本実施形態では、雄型筐体2の係止部21の挿入抑制面21cも、前上がりに傾斜している(図2Bを参照)。これに対して、雌型筐体3の係止部35の挿入抑制面35cは、前後方向には傾斜していない(図3を参照)。このため、雄型筐体2が雌型筐体3の収納空間3aに挿入されるときに、挿入抑制面21c,35cは一方が他方に対して傾斜した状態で接触することになる。これにより、挿入抵抗力の低減を図ることが可能である。
【0026】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、種々の変形実施が当業者にとって可能であるのはもちろんである。
【符号の説明】
【0027】
1 コネクタ、2 雄型筐体(第1の筐体)、2a 挿入穴、21 係止部、21a 抜出抑制面、21c 挿入抑制面、3 雌型筐体(第2の筐体)、3a 収納空間、31 中辺部、31a 貫通穴、32 側辺部、32a 貫通穴、33 底部、35 係止部、35a 抜出抑制面、35c 挿入抑制面、4 支持金具、91 ケーブル、92 端子、93 端子。
図1A
図1B
図2A
図2B
図3
図4A
図4B
図5