特許第5785493号(P5785493)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5785493IgE媒介性疾患を治療するための新規組成物および方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5785493
(24)【登録日】2015年7月31日
(45)【発行日】2015年9月30日
(54)【発明の名称】IgE媒介性疾患を治療するための新規組成物および方法
(51)【国際特許分類】
   C07K 16/42 20060101AFI20150910BHJP
   C12N 15/09 20060101ALI20150910BHJP
   C12N 1/15 20060101ALI20150910BHJP
   C12N 1/19 20060101ALI20150910BHJP
   C12N 1/21 20060101ALI20150910BHJP
   C12N 5/10 20060101ALI20150910BHJP
   C12P 21/08 20060101ALI20150910BHJP
   A61K 39/395 20060101ALI20150910BHJP
   A61P 11/06 20060101ALI20150910BHJP
   A61P 37/08 20060101ALI20150910BHJP
【FI】
   C07K16/42ZNA
   C12N15/00 A
   C12N1/15
   C12N1/19
   C12N1/21
   C12N5/00 101
   C12P21/08
   A61K39/395 U
   A61P11/06
   A61P37/08
【請求項の数】11
【全頁数】73
(21)【出願番号】特願2011-527970(P2011-527970)
(86)(22)【出願日】2009年9月17日
(65)【公表番号】特表2012-503007(P2012-503007A)
(43)【公表日】2012年2月2日
(86)【国際出願番号】US2009057366
(87)【国際公開番号】WO2010033736
(87)【国際公開日】20100325
【審査請求日】2012年9月12日
(31)【優先権主張番号】61/097,819
(32)【優先日】2008年9月17日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】510089100
【氏名又は名称】ゼンコア インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100079108
【弁理士】
【氏名又は名称】稲葉 良幸
(74)【代理人】
【識別番号】100109346
【弁理士】
【氏名又は名称】大貫 敏史
(72)【発明者】
【氏名】デスジャルレイス,ジョン,アール.
(72)【発明者】
【氏名】チュ,スン,ワイ.
(72)【発明者】
【氏名】ホールトン,ホリー,エム.
【審査官】 竹内 祐樹
(56)【参考文献】
【文献】 米国特許第06037453(US,A)
【文献】 特表2008−513351(JP,A)
【文献】 特表2007−525443(JP,A)
【文献】 特表2008−505174(JP,A)
【文献】 Clin. Exp. Allergy, 2008, 38(2), pp.313-319 (Epub 2007 Dec 7)
【文献】 J. Allergy Clin. Immunol., 2008, 121(2), pp.320-325 (Epub 2007 Dec 20)
【文献】 Mol. Immunol., 2008, 45(15), pp.3926-3933 (Epub 2008 Aug 8)
【文献】 Allergy, 2005, 60(8), pp.977-985
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12N 15/00−15/90
C07K 16/00−19/00
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/MEDLINE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
a)下記i)およびii)を含む重鎖ポリペプチド:
i)配列番号18からなるvhCDR1、配列番号19からなるvhCDR2、および配列番号20からなるvhCDR3を含む重鎖可変領域;および
ii)S267E、G236D/267E、S239D/S267E、S267E/L328FおよびS239D/I332Eからなる群から選択されるアミノ酸置換を含む、親ヒトIgG Fc領域の変異体Fc領域であって、付番は、KabatのEU指標に従う、親ヒトIgG Fc領域の変異体Fc領域;ならびに
b)配列番号22からなるvlCDR1、配列番号23からなるvlCDR2、および配列番号24からなるvlCDR3を含む軽鎖可変領域を含む軽鎖ポリペプチド;
を含む抗IgE抗体。
【請求項2】
前記重鎖可変領域が配列番号17からなる、請求項1に記載の抗IgE抗体。
【請求項3】
前記軽鎖可変領域が配列番号21からなる、請求項1または2に記載の抗IgE抗体。
【請求項4】
前記重鎖ポリペプチドの可変領域が配列番号17からなり、前記軽鎖ポリペプチドの可変領域が配列番号21からなる、請求項1に記載の抗IgE抗体。
【請求項5】
前記変異体Fc領域がS267Eを含む、請求項に記載の抗IgE抗体。
【請求項6】
前記変異体Fc領域がS267E/L328Fを含む、請求項に記載の抗IgE抗体。
【請求項7】
前記重鎖が配列番号42からなり、前記軽鎖が配列番号40からなる、請求項に記載の抗IgE抗体。
【請求項8】
a)請求項1〜のいずれかに記載の抗IgE抗体に含まれる重鎖ポリペプチドをコードする第1の核酸;および
b)請求項1〜のいずれかに記載の抗IgE抗体に含まれる軽鎖ポリペプチドをコードする第2の核酸;
を含む核酸組成物。
【請求項9】
請求項に記載の核酸組成物を含む宿主細胞。
【請求項10】
請求項1〜のいずれかに記載の抗IgE抗体の製造方法であって、
a)請求項に記載の宿主細胞を、前記抗体が産生される条件下で培養する工程;および
b)前記抗体を回収する工程;
を含む、製造方法。
【請求項11】
請求項1〜のいずれかに記載の抗IgE抗体を含む、IgE媒介性疾患を治療するための医薬組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連特許
本出願は、35 U.S.C.119(e)に基づき、2008年9月17日に出願された米国仮出願第61/097,819号の利益を主張するものであり、参照によりその全体が本明細書に援用され、また「Methods and Compositions for Inhibiting CD32b Expressing cells」の表題で、2008年5月30日に出願されたUSSN第12/156,183号に関連し、参照によりその全体が本明細書に援用される。
【0002】
本開示は、高親和性でIgEおよびFcγRIIbに結合する免疫グロブリンに関し、該組成物は、膜アンカーIgEを発現する細胞を阻害することができる。このような組成物は、アレルギーおよび喘息を含む、IgE媒介性疾患を治療するために有用である。
【背景技術】
【0003】
喘息、アレルギー性鼻炎、アトピー性皮膚炎、および食物アレルギー等のアレルギー性疾患および状態は、過去数十年の間に非常に蔓延し、現在、先進工業諸国の人口の10〜40%が罹患している。アレルギー性疾患は、生活の質に著しく影響を及ぼし、喘息およびアナフィラキシーの重篤な症例で生じる場合がある、死亡を含む重篤な合併症をもたらし得る。アレルギーは蔓延しており、仕事や学校の時間損失の最大の原因であり、個人の生活に対するそれらの影響、ならびに医療システムおよび経済へのそれらの直接的および間接的費用は、莫大である。例えば、アレルギー性鼻炎(季節性鼻アレルギー)は、米国の人口の22%以上が罹患し、一方アレルギー性喘息は、米国の少なくとも2000万の居住者が罹患していると考えられている。米国におけるアレルギー性疾患の経済的影響は、医療費および生産性の損失を含み、90年代初期だけで、64億ドルに達すると推定されている。
【0004】
大半のアレルギー性疾患は、免疫グロブリンE (IgE)媒介性の過敏症反応により生じる。IgEは、微量濃度で血清中に通常存在する、抗体のクラスである。これは、その成熟化の特定の段階で、その表面上に抗体を発現するIgE分泌形質細胞により生成される。アレルギー患者は、彼らが敏感である、通常は無害である抗原に対する結合特異性的を有する、上昇レベルのIgEを生成する。これらのIgE分子は、血液中で循環し、循環中の好塩基球、ならびに粘膜裏層に沿った、および皮膚の下のマスト細胞の表面上のIgE特異的受容体に結合する。抗原またはアレルゲンのマスト細胞、好塩基球、および他の細胞型上のIgEへの結合は、IgE分子を架橋し、下にある受容体を凝集し、よって、細胞にヒスタミン、ロイコトリエン、プロスタグランジン、ブラジキニン、および血小板活性化因子等の、血管作動性およびニューロン刺激性介在物質を放出させる。抗体免疫複合体に起因する免疫系の抗原への即時反応から、T細胞により媒介される遅延型または細胞媒介過敏症反応と対照的に、即時型または抗体媒介過敏反応という用語につながった。IgE媒介性免疫反応は、特にI型過敏症反応と称される。
【0005】
IgE(FcεRI)に対する高親和性受容体は、即時アレルギー症状の重要な介在物質である。マスト細胞および好塩基球に加え、アレルギー性反応の主要介在物質であるFcεRIは、好酸球、血小板、ならびに単球および樹状細胞等の抗原提示細胞上を含む、いくつかの他の細胞型上に見出される。IgEのさらなる受容体は、FcεRIIであり、CD23または低親和性IgE Fc受容体としても知られる。FcεRIIは、Bリンパ球、マクロファージ、血小板、および気道平滑筋等の、多くの他の細胞型上で広く発現する。FcεRIIは、IgE発現および後続のFcεRII表面発現のフィードバック制御に関与する可能性がある。
【0006】
IgEは、大半のアレルギー性反応の媒介に中心的な役割を果たすため、体内のIgEレベルを制御するための治療を考案し、IgE合成を調節することには、多くの関心が持たれている。IgEレベルの下方制御によるIgE媒介性のアレルギー性疾患を治療するための、いくつかの対処法が提案されている。対処法の1つは、Fc受容体結合部位またはその近くでIgEのε鎖を結合することによって、IgE分子を中和することを含む。例えば、オマリズマブ(ゾレア)は、FcεRlと同じFc部位上でIgEnに結合する、組み換えヒト化モノクローナル抗IgE抗体である。組織マスト細胞および好塩基球に結合し、感作する抗原特異的IgEの量を減弱するオマリズマブは、アトピー患者において、血清総IgEまたは循環IgEの減少をもたらす。これは、次いで、アレルギー性疾患の症状の軽減につながる。興味深いことに、血清IgEレベルは、オマリズマブ−IgE複合体形成のため、治療開始後に増加し、治療停止後、最大1年の間、高いレベルを維持する場合がある。結果的に、この問題は、診断検査において偽陰性につながる場合があり、したがって、IgEレベルは日常的に確認されなければならない。したがって、IgE媒介性疾病および疾病症状を低減させるための、改善された方法および組成物の必要性が存在する。
【発明の概要】
【0007】
本開示は、高親和性でIgEおよびFcγRIIbに結合する新規共結合分子、このような共結合分子を含む組成物、ならびにIgE媒介性疾患を治療するための該新規共結合分子の使用方法を提供する。本発明の共結合分子は、膜IgEおよびFcγRIIb、すなわち、IgE+FcγRIIb+細胞を発現する細胞を阻害することができる。本発明の共結合分子は、好ましくは、循環IgEも結合することができる。本明細書に開示される阻害方法は、IgE+FcγRIIb+細胞を、細胞表面上で、IgEおよびFcγRIIbを共結合する共結合分子と接触させることを含む。
【0008】
本明細書に開示される組成物は、細胞表面上で、高親和性でIgEおよびFcγRIIbの共結合を可能にする共結合分子を含む。一実施形態において、共結合分子は、高親和性で、IgEおよびFcγRIIbに結合する免疫グロブリンを含む。本発明の共結合分子は、好ましくは、細胞表面上で、膜アンカーIgEおよびFcγRIIbに共結合し、好ましくは、約100nM未満のKdで、FcγRIIbに結合する。好適な実施形態において、共結合分子は、免疫グロブリンであり、さらなる好適な実施形態において、免疫グロブリンは抗体であり、該抗体のFv領域は、特異的にIgEに結合する。好適な実施形態において、該抗体は、循環および膜アンカーIgEの両方に結合する。代替的な実施形態において、該抗体は、循環IgEに対して膜アンカーIgEに選択的に結合する。別の実施形態において、共結合分子は、第1の標的特異的領域および第2の標的特異的領域を有する二重特異的抗体であり、第1の標的特異的領域は、IgEに結合し、第2の標的特異的領域は、約100nM未満のKdでFcγRIIbに結合する。好適な実施形態において、第1および第2の標的特異的領域は、Fv領域であり、第1のFv領域は、IgEに結合し、第2のFv領域は、約100nM未満のKdでFcγRIIbに結合する。別の実施形態において、共結合分子は、Fc領域を含むFc融合物であり、該Fc領域は、約100nM未満のKdでFcγRIIbに結合する。この実施形態において、免疫グロブリンのFc融合パートナーは、IgEに結合する。
【0009】
一実施形態において、共結合分子は、FcγRIIbと結合し、該結合の親和性は、約100nM未満、例えば、約95nM以下、約90nM以下、約85nM以下、約80nM以下、約75nM以下、約74nM以下のKdを有する。
【0010】
一実施形態において、高親和性でIgEおよびFcγRIIbを共結合する共結合分子は、親免疫グロブリンに対して変異体免疫グロブリンを含む。一実施形態において、変異体免疫グロブリンは、変異体Fc領域を含み、該変異体Fc領域は、親Fc領域と比較して、1つ以上(例えば、2つ以上)の修飾を含み、該修飾は、234、235、236、237、239、265、266、267、268、298、325、326、327、328、329、330、331、および332からなる群から選択される位置であり、付番は、EU指標に従う。別の実施形態において、修飾は、EU指標に従う、234、235、236、237、266、267、268、327、328からなる群から選択される位置においてである。別の実施形態において、修飾は、EU指標に従う、235、236、266、267、268、328からなる群から選択される位置においてである。別の実施形態において、修飾は、EU指標に従う、235、236、239、266、267、268、および328からなる群から選択される位置においてである。別の実施形態において、修飾は、EU指標に従う、234、235、236、237、266、267、268、327、328からなる群から選択される位置においてである。
【0011】
一実施形態において、該修飾は、234F、234G、234I、234K、234N、234P、234Q、234S、234V、234W、234Y、234D、234E、235A、235E、235H、235I、235N、235P、235Q、235R、235S、235W、235Y、235D、235F、235T、236D、236F、236H、236I、236K、236L、236M、236P、236Q、236R、236S、236T、236V、236W、236Y、236A、236E、236N、237A、237E、237H、237K、237L、237P、237Q、237S、237V、237Y、237D、237N、239D、239E、239N、239Q、265E、266D、266I、266M、267A、267D、267E、267G、268D、268E、268N、268Q、298D、298E、298L、298M、298Q、325L、326A、326E、326W、326D、327D、327G、327L、327N、327Q、327E、328E、328F、328Y、328H、328I、328Q、328W、329E、330D、330H、330K、330S、331S、および332Eからなる群から選択される、少なくとも1つの置換(例えば、1つ以上の置換、2つ以上の置換等)であり、付番は、EU指標に従う。一実施形態において、該修飾は、234N、234F、234D、234E、234W、235Q、235R、235W、235Y、235D、235F、235T、236D、236H、236I、236L、236S、236Y、236E、236N、237H、237L、237D、237N、239D、239N、239E、266I、266M、267A、267D、267E、267G、268D、268E、268N、268Q、298E、298L、298M、298Q、325L、326A、326E、326W、326D、327D、327L、327E、328E、328F、328Y、328H、328I、328Q、328W、330D、330H、330K、および332Eからなる群から選択される、少なくとも1つの置換(例えば、1つ以上の置換、2つ以上の置換等)であり、付番は、EU指標に従う。一実施形態において、該修飾は、234D、23
4E、234W、235D、235F、235R、235Y、236D、236N、237D、237N、239D、239E、266M、267D、267E、268D、268E、327D、327E、328F、328W、328Y、および332Eからなる群から選択される、少なくとも1つの置換(例えば、1つ以上の置換、2つ以上の置換等)であり、付番は、EU指標に従う。一実施形態において、該修飾は、234E、235Y、235R、236D、236N、237N、266M、267E、268E、268D、327D、327E、328F、328Y、328Wからなる群から選択される、少なくとも1つの置換(例えば、1つ以上の置換、2つ以上の置換等)であり、付番は、EU指標に従う。一実施形態において、該修飾は、235Y、236D、239D、266M、267E、268D、268E、328F、328W、および328Yからなる群から選択される、少なくとも1つの置換(例えば、1つ以上の置換、2つ以上の置換等)であり、付番は、EU指標に従う。一実施形態において、該修飾は、235Y、236D、266M、267E、268E、268D、328F、328Y、および328Wからなる群から選択される、少なくとも1つの置換(例えば、1つ以上の置換、2つ以上の置換等)であり、付番は、EU指標に従う。
【0012】
一実施形態において、該修飾は、235Y/267E、236D/267E、239D/268D、239D/267E、239D/332E、267E/268D、267E/268E、および267E/328Fの組み合わせの置換の、少なくとも1つをもたらし、付番は、EU指標に従う。
【0013】
一実施形態において、本明細書に開示される修飾は、親免疫グロブリンに対して、少なくとも1つの受容体に対する親和性を低減させ、該受容体は、FcγRI、FcγRIIa、およびFcγRIIIaからなる群から選択される。この実施形態において、本明細書に開示される免疫グロブリン変異体は、親免疫グロブリンに対してADCCまたはADCPの低減を媒介し得る。代替的な実施形態において、本明細書に開示される修飾は、親免疫グロブリンに対して、少なくとも1つの受容体に対する親和性を増加させ、該受容体は、FcγRI、FcγRIIa、およびFcγRIIIaからなる群から選択される。この実施形態において、本明細書に開示される免疫グロブリン変異体は、親免疫グロブリンに対してADCCまたはADCPの亢進を媒介することができる。
【0014】
免疫グロブリン組成物を含む、新規共結合分子を操作するための方法も、本明細書に開示する。
【0015】
本明細書に記載される免疫グロブリンを含む、共結合分子をコードする単離された核酸も、本明細書に開示する。随意に制御配列に操作可能に連結される核酸を含むベクターも、本明細書に開示する。ベクターを含有する宿主細胞、および共結合分子を産生し、随意に回収するための方法も、本明細書に開示する。
【0016】
本明細書に開示される免疫グロブリンを含む共結合分子も、本明細書に開示する。 共結合分子は、治療製品に用途を見出し得る。一実施形態において、本明細書に開示される共結合分子は、抗体であってもよい。
【0017】
本明細書に記載される共結合分子、および生理学的または薬学的に許容される担体または希釈剤を含む組成物も開示する。
【0018】
IgE+FcγRIIb+細胞を阻害する方法も、本明細書に開示する。本明細書に記載される細胞を阻害する方法は、IgE+FcγRIIb+細胞を共結合分子と接触させることを含み、該共結合分子は、約100nM未満のKdでFcγRIIbに結合する。最も好適な実施形態において、該共結合分子は、細胞表面上で、IgEおよびFcγRIIbに共結合する。好適な実施形態において、阻害方法は、IgE+FcγRIIb+細胞を抗体と接触させることを含み、該抗体は、そのFv領域を介してIgEに結合し、該抗体は、Fc領域を含み、該Fc領域は、100nMまたはそれ以下のKdでFcγRIIbに結合する。他の実施形態において、該Fc領域は、自然IgG1に対して高い親和性で、FcγRIIaおよび/またはFcγRIIIaに結合する。他の実施形態において、方法は、IgE+FcγRIIb+細胞を共結合分子と接触させることを含み、該共結合分子は、第1のFv領域および第2のFv領域を含む二重特異性抗体であり、該第1のFv領域はIgEに結合し、該第2のFv領域は、約100nM未満のKdでFcγRIIbに結合する。代替的な実施形態において、方法は、IgE+FcγRIIb+細胞を共結合分子と接触させることを含み、該共結合分子は、Fc領域を含むFc融合物であり、該Fc領域は、約100nM未満のKdでFcγRIIbに結合する。
【0019】
他の好適な方法は、IgE分泌を低下させる方法を含む。方法は、IgE+FcγRIIb+細胞を共結合分子と接触させることを含み、該共結合分子は、約100nM未満のKdでIgEおよびFcγRIIbに結合する。
【0020】
B細胞の成熟化を阻害する方法も含む。この方法は、IgE+FcγRIIb+細胞を共結合分子と接触させることを含み、該共結合分子は、約100nM未満のKdでIgEおよびFcγRIIbに結合する。
【0021】
本明細書に開示される共結合分子の治療および診断用途も、記載する。最も好適な実施形態において、本明細書に開示される共結合分子は、免疫グロブリンIgEにより媒介される、1つ以上のIgE媒介性疾患、例えば、自己免疫疾患、炎症性疾患等を治療するために使用される。特定の実施形態において、本明細書に開示される組成物により治療され得る、アレルギー性およびアトピー性疾患は、アレルギー性およびアトピー性喘息、アトピー性皮膚炎および湿疹、アレルギー性鼻炎、アレルギー性結膜炎および鼻結膜炎、アレルギー性脳脊髄炎、アレルギー性鼻炎、アレルギー性脈管炎、アナフィラキシーショック、ならびに任意の種類の環境的もしくは食物アレルギーに対するアレルギーを含むが、これらに限定されない。本明細書に開示される治療方法は、このような投与を必要とする患者に、細胞の表面上で、IgEおよびFcγRIIbに共結合する、治療有効量の共結合分子を投与することを含む。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】IgE+FcγRIIb+ B細胞を阻害するための新しい機構的アプローチの図説である。適切な刺激の下で、未変性B細胞は、IgE+B細胞に分化することができる。抗原のIgE B細胞受容体との結合は、これらの細胞を活性化し、これは、後に、循環IgEを放出する形質細胞に分化することができる。例えば、マスト細胞、好塩基球、および好酸球上で、FcεRに結合する循環IgEの結合は、これらの細胞を活性化する。ヒスタミン、プロスタグランジン、および他の化学介在物質の放出は、最終的に、アレルギーおよび喘息の臨床症状をもたらす。自然IgG1 Fc領域を有するオマリズマブは、IgEのFcεRへの結合を阻止することができる。図中で、抗IgE−IIbEとして参照される、FcγRIIbに対して高親和性を有する抗IgE抗体は、IgEのFcεRへの結合を阻止するだけでなく、mIgE FcγRIIb共結合によるIgE+B細胞の活性化も阻害することができる。
【0023】
図2】Fc変異体抗CD19抗体のヒトFcγRIIbへの結合を示す、Biacore表面プラズモン共鳴センサグラム。
【0024】
図3】Biacoreにより決定された、ヒトFcγRに対するFc変異体抗体の親和性。グラフは、変異体および野生型IgG1抗体のヒトFcγRI(I)、H131 FcγRIIa(H IIa)、FcγRIIb(IIb)、およびV158 FcγRIIIa(V IIIa)への結合のログ(K)を示す。G236D/S267EおよびS267E/L328Fの、V158 FcγRIIIaへの結合は、検出できなかった。G236R/L328R(Fc−KO)の検査された全ての受容体への結合は、検出できなかった。
【0025】
図4】Biacore表面プラズモン共鳴により決定された、ヒトFcγRに対するFc変異体抗体の親和性。表は、変異体および野生型IgG1抗体のヒトFcγRI、H131 FcγRIIa FcγRIIb、およびV158 FcγRIIIaへの結合の平衡K、ならびに自然(野生型)IgG1に対するそれぞれの倍数結合を提供する。n.d.=検出不可能。
【0026】
図5-1】抗IgE抗体の、重鎖(VH)および軽鎖(VL)可変領域、およびCDRのアミノ酸配列。CDRの境界は、抗体可変領域の構造的配列に基づき、以前に説明されたように定義された(Lazar et al.,2007,Mol Immunol 44:1986−1998)。
図5-2】抗IgE抗体の、重鎖(VH)および軽鎖(VL)可変領域、およびCDRのアミノ酸配列。CDRの境界は、抗体可変領域の構造的配列に基づき、以前に説明されたように定義された(Lazar et al.,2007,Mol Immunol 44:1986−1998)。
図5-3】抗IgE抗体の、重鎖(VH)および軽鎖(VL)可変領域、およびCDRのアミノ酸配列。CDRの境界は、抗体可変領域の構造的配列に基づき、以前に説明されたように定義された(Lazar et al.,2007,Mol Immunol 44:1986−1998)。
【0027】
図6】重鎖および軽鎖の野生型ならびに変異体定常領域のアミノ酸配列。
【0028】
図7】IgE+B細胞を標的とするように使用され得る、抗IgE完全長抗体のアミノ酸配列。
【0029】
図8】野生型および変異体IgE抗体の、IgE Fc領域およびFcγRIIbへの結合の親和性データの表。
【0030】
図9】野生型および変異体抗IgE抗体の、IgE Fc領域およびFcγRIIbへの結合の親和性データのプロット。
【0031】
図10】捕獲試薬として市販の(MabTech)および自社の(オマリズマブおよびMaE11)抗IgE抗体を使用したIgE ELISA。
【0032】
図11】抗IgE抗体オマリズマブの可変領域は、ELISAプロトコルのIgE検出において、MabTech捕獲抗体と競合しない。
【0033】
図12】FcγRIIb親和性に対して強化された変異体抗IgE抗体を有する、クラス変換されたIgE+B細胞は阻害するが、FcγR結合(Fc変異体G236R/L328R)を欠損する、またはIgE(モタビズマブ)への結合を欠損する抗体は阻害しない。プロットは、IL−4、抗CD40(α−CD40)アゴニスト抗体、および異なる濃度の示される抗体と共に12日間インキュベートした後の、PBMCから放出されたIgEの濃度を示す。
【0034】
図13】変異体抗IgE抗体は、クラス変換されたIgG2+B細胞を阻害しない。プロットは、IL−4、α−CD40、および異なる濃度の示される抗体と共に12日間インキュベートした後の、PBMCから放出されたIgG2の濃度を示す。
【0035】
図14】FcγRIIb親和性に対して強化された変異体抗IgE抗体による、クラス変換されたIgE+B細胞の阻害。プロットは、IL−4、抗CD40(α−CD40)アゴニスト抗体、および異なる濃度の示される抗体と共に14日間インキュベートした後の、PBMCから放出されたIgEの濃度を示す。データは、抗体の最低濃度に対して正規化された。
【0036】
図15】FcγRIIb親和性に対して強化された変異体抗IgE抗体による、クラス変換されたIgE+B細胞の阻害。プロットは、IL−4、抗CD40(α−CD40)アゴニスト抗体、抗CD79b BCR架橋抗体、および異なる濃度の示される抗体と共に14日間インキュベートした後の、PBMCから放出されたIgEの濃度を示す。データは、抗体の最低濃度に対して正規化された。
【0037】
図16】FcγRIIb親和性に対して強化された変異体抗IgE抗体による、クラス変換されたIgE+B細胞の阻害。プロットは、IL−4、抗CD40(α−CD40)アゴニスト抗体、抗μBCR架橋抗体を、および異なる濃度の示される抗体と共に14日間インキュベートした後の、PBMCから放出されたIgEの濃度を示す。データは、抗体の最低濃度に対して正規化された。
【0038】
図17】強化されたADCCおよびADCPエフェクター機能の変異体抗IgE抗体による、クラス変換されたIgE+B細胞の阻害。プロットは、IL−4、抗CD40(α−CD40)アゴニスト抗体、抗CD79b BCR架橋抗体、および異なる濃度の示される抗体と共に14日間インキュベートした後の、PBMCから放出されたIgEの濃度を示す。
【0039】
図18】強化されたADCCおよびADCPエフェクター機能の変異体抗IgE抗体による、クラス変換されたIgE+B細胞の阻害。プロットは、IL−4、抗CD40(α−CD40)アゴニスト抗体、抗μBCR架橋抗体、および異なる濃度の示される抗体と共に14日間インキュベートした後の、PBMCから放出されたIgEの濃度を示す。
【0040】
図19】抗IgE抗体の活性を検査するためのhuPBL−SCID生体内試験のプロトコル。示される日は、Der p1に特異的なIgE抗体に対して陽性の検査結果のドナーからのPBMC移植後の日数を示す。Derp1 vacc.は、Der p1抗原を用いたワクチン接種を示す。
【0041】
図20】各治療群のhuPBL−SCID生体内モデルからの全血清IgGレベル。示される日(7、23、および37)は、図19のプロトコルに概説される採血時点を示す。PBSは、未処置ビヒクル群を示し、オマリズマブは、オマリズマブ_IgG1で処置された群を示し、3 H1L1 MaE11群は、野生型IgG1(IgG1)、S267E/L328F変異体(IIbE)、またはG236R/L328R(Fc−KO)Fc領域のいずれかを含む、ヒト化MaE11で処置された群を示す。
【0042】
図21】各処置群のhuPBL−SCID生体内モデルからの全血清IgEレベル。示される日(7、23、および37)は、図19のプロトコルに概説される採血時を示す。PBSは未処置ビヒクル群を示し、オマリズマブは、オマリズマブ_IgG1で処置された群を示し、3 H1L1 MaE11群は、野生型IgG1(IgG1)、S267E/L328F変異体(IIbE)、またはG236R/L328R(Fc−KO)Fc領域のいずれかを含む、ヒト化MaE11で処置された群を示す。ELISA法の定量限界は、31.6ng/mLであり、この限界以下の試料は、プロットにおいて31.6ng/mLとして報告された。
【発明を実施するための形態】
【0043】
B細胞上での膜アンカーIgEのFcγRIIbとの共結合の阻害作用を模倣する共結合分子を、本明細書で説明する。例えば、Fcドメインが、最大約430倍を上回る親和性で、FcγRIIbに結合するように操作された変異体抗IgE抗体を、本明細書で説明する。自然IgG1に対して、FcγRIIb結合強化された(IIbE)変異体は、一次ヒトIgE+B細胞において、BCR誘発カルシウム動員および生存率を強く阻害する。同族IgE BCRおよびFcγRIIbの共結合によるB細胞機能を抑制する抗体等の単一分子の使用は、IgE媒介性疾病の治療において、新しいアプローチを表し得る。IgE媒介性疾病の例としては、これらに限定されないが、アレルギー反応および喘息を含み、以下により詳細に説明される。
【0044】
本開示に従う共結合分子は、以下により詳細に概説する種々の構成を呈し得る。一実施形態において、共結合分子は、高親和性でIgEおよびFcγRIIbに結合する免疫グロブリンを含む。この実施形態において、免疫グロブリンは、好ましくは、細胞の表面上で、膜アンカーIgEおよびFcγRIIbに共結合し、約100nM未満のKdで結合する。別の実施形態において、共結合分子は、第1の標的特異的領域および第2の標的特異的領域を有する二重特異的分子であり、第1の標的特異的領域は、IgEに結合し、第2の標的特異的領域は、約100nM未満のKdでFcγRIIbに結合するが、いくつかの実施形態においては、約10nM未満のKd、または約1nM未満のKdでFcγRIIbに結合し得、いくつかの実施形態において、100pM未満のKdで結合し得る。好適な実施形態において、共結合分子は、二重特異的抗体であり、第1および第2の標的特異的領域は、Fv領域であり、第1のFv領域は、IgEに結合し、第2のFv領域は、約100nM未満のKdでFcγRIIbに結合する。別の実施形態において、共結合分子は、Fc領域を含むFc融合物であり、該Fc領域は、約100nM未満のKdでFcγRIIbに結合する。この実施形態において、免疫グロブリンのFc融合パートナーは、IgEに結合する。
【0045】
いくつかの定義を本明細書で説明する。このような定義は、文法的上の同等語を包含するものとする。
【0046】
本明細書に使用される、「ADCC」または「抗体依存性の細胞媒介性細胞障害性」とは、FcγRを発現する非特異的細胞障害性細胞が、標的細胞上で結合抗体を認識し、後に標的細胞の溶解を生じる、細胞媒介性反応を意味する。
【0047】
本明細書に使用される、「ADCP」または「抗体依存性の細胞媒介性ファゴサイトーシス」とは、FcγRを発現する非特異的細胞障害性細胞が、標的細胞上で結合抗体を認識し、後に標的細胞のファゴサイトーシスを生じる、細胞媒介性反応を意味する。
【0048】
本明細書における、「アミノ酸修飾」とは、ポリペプチド配列におけるアミノ酸の置換、挿入、および/または欠失を意味する。本明細書における、「アミノ酸置換」または「置換」とは、親ポリペプチド配列における特定の位置でのアミノ酸の別のアミノ酸による置換を意味する。例えば、置換S267Eは、変異体ポリペプチド、この場合、位置267のセリンが、グルタミン酸と置換される、定常重鎖変異体を指す。本明細書で使用される、「アミノ酸挿入」または「挿入」とは、親ポリペプチド配列における特定の位置でのアミノ酸の追加を意味する。本明細書で使用される、「アミノ酸欠失」または「欠失」とは、親ポリペプチド配列における特定の位置でのアミノ酸の除去を意味する。
【0049】
本明細書における、「抗体」とは、認識される免疫グロブリン遺伝子の全てまたは一部により実質的にコードされる、1つ以上のポリペプチドからなるタンパク質を意味する。例えば、ヒトにおいて、認識される免疫グロブリン遺伝子は、無数の可変領域遺伝子を一緒に構成する、カッパ(k)、ラムダ(λ)、および重鎖遺伝子座、ならびにIgM、IgD、IgG(IgG1、IgG2、IgG3、およびIgG4)、IgE、およびそれぞれIgA(IgA1およびIgA2)イソタイプをコードする、定常領域遺伝子ミュー(υ)、デルタ(δ)、ガンマ(γ)、シグマ(σ)、およびアルファ(α)を含む。本明細書における抗体は、完全長抗体および抗体断片を含むものとし、任意の生物からの自然抗体、改変抗体、または実験、治療、もしくは他の目的のために組み換えにより生成された抗体を指し得る。
【0050】
本明細書で使用される、「アミノ酸」および「アミノ酸同一性」とは、特定の定義された位置で存在し得る、20の自然に生じるアミノ酸または任意の非自然類似体の1つを意味する。
【0051】
本明細書で使用される、「CD32b+細胞」または「FcγRIIb+細胞」とは、CD32b(FcγRIIb)を発現する任意の細胞または細胞型を意味する。CD32b+細胞は、B細胞、形質細胞、樹状細胞、マクロファージ、好中球、マスト細胞、好塩基球、または好酸球を含むが、これらに限定されない。
【0052】
本明細書で使用される、「IgE+細胞」とは、IgEを発現する任意の細胞または細胞型を意味する。本発明の好適な実施形態において、IgE+細胞は、膜アンカーIgE(mIgE)を発現する。IgE+細胞は、B細胞および形質細胞を含むが、これらに限定されない。
【0053】
本明細書で使用される、「CDC」または「補体依存性細胞障害性」とは、1つ以上の補体タンパク質構成要素が、標的細胞上で結合抗体を認識し、後に標的細胞の溶解を生じる、反応を意味する。
【0054】
「共結合分子」または文法上の同等語は、分子のFcγRIIbへの結合のKdが、細胞表面上で約100nM未満であり、IgEおよびFcγRIIbの両方の同時結合をもたらす、IgEおよびFcγRIIbの両方に結合することができる二機能性分子を意味する。
【0055】
本明細書で定義される、「定常領域」とは、軽鎖または重鎖免疫グロブリン定常領域遺伝子の1つによりコードされる、抗体の領域を意味する。本明細書に使用される、「定常軽鎖」または「軽鎖定常領域」とは、カッパ(Ck)またはラムダ(Cλ)軽鎖によりコードされる抗体の領域を意味する。定常軽鎖は、典型的に、単一ドメインを含み、本明細書に定義されるように、CkまたはCλの位置108〜214を指し、付番は、EU指標に従う。本明細書に使用される、「定常重鎖」または「重鎖定常領域」とは、抗体のイソタイプをそれぞれIgM、IgD、IgG、IgA、またはIgEとして定義する、ミュー、デルタ、ガンマ、アルファ、またはイプシロン遺伝子によりコードされる抗体の領域を意味する。完全長IgG抗体において、本明細書に定義される、定常重鎖は、CH1ドメインのN末端〜CH3ドメインのC末端を指し、したがって、位置118〜447を含み、付番は、EU指標に従う。
【0056】
本明細書で使用される、「エフェクター機能」とは、抗体Fc領域のFc受容体またはリガンドとの相互作用から生じる、生化学事象を意味する。エフェクター機能は、ADCCおよびADCP等のFcγR媒介性エフェクター機能、ならびにCDC等の補体媒介性エフェクター機能を含む。
【0057】
本明細書で使用される、「エフェクター細胞」とは、1つ以上のFcおよび/または補体受容体を発現し、1つ以上のエフェクター機能を媒介する免疫系の細胞を意味する。 エフェクター細胞は、これらに限定されないが、単球、マクロファージ、好中球、樹状細胞、好酸球、マスト細胞、血小板、B細胞、大型顆粒リンパ球、ランゲルハンス細胞、天然キラー(NK)細胞、およびγδT細胞を含み、これらに限定されないが、ヒト、マウス、ラット、ウサギ、およびサルを含む、任意の生物からであり得る。
【0058】
本明細書で使用される、「Fab」または「Fab領域」とは、V、CH1、V、およびC免疫グロブリンドメインを含むポリペプチドを意味する。Fabは、単独でこの領域を指すか、または完全長抗体もしくは抗体断片と関連してこの領域を指してもよい。
【0059】
本明細書で使用される、「Fc」または「Fc領域」とは、第1の定常領域免疫グロブリンドメイン、およびいくつかの場合において、ヒンジの一部を除外する、抗体の定常領域を含むポリペプチドを意味する。したがって、Fcは、IgA、IgD、およびIgGの最後2つの定常領域免疫グロブリンドメイン、ならびにIgEおよびIgMの最後の3つの定常領域免疫グロブリンドメイン、ならびにこれらのドメインに対する柔軟なヒンジN末端を指す。IgAおよびIgMにおいて、Fcは、J鎖を含んでもよい。IgGにおいて、Fcは、免疫グロブリンドメインCガンマ2およびCガンマ3(Cγ2およびCγ3)、ならびにCガンマ1(Cγ1)とCガンマ2(Cγ2)との間のヒンジを含む。Fc領域の境界は変動し得るが、ヒトIgG重鎖Fc領域は、通常、残基C226またはP230〜そのカルボキシル末端までを含むように定義され、付番は、KabatのEU指標に従う。Fcは、単独でこの領域を指すか、または以下に記載される、Fcポリペプチドと関連してこの領域を指してもよい。
【0060】
本明細書で使用される、「Fcポリペプチド」とは、Fc領域の全てまたは一部を含むポリペプチドを意味する。Fcポリペプチドは、抗体、Fc融合物、単離されたFc、およびFc断片を含む。免疫グロブリンは、Fcポリペプチドであってもよい。
【0061】
本明細書で使用される「Fc融合物」とは、1つ以上のポリペプチドが、Fcに操作可能に連結されるタンパク質を意味する。本明細書において、Fc融合物は、先行技術において使用される、「免疫アドヘシン」、「Ig融合」、「Igキメラ」、および「受容体グロブリン」(時折ダッシュを伴う)の用語の同義語であるものとする(Chamow et al.,1996,Trends Biotechnol 14:52−60、Ashkenazi et al.,1997,Curr Opin Immunol 9:195−200、共に、参照によりその全体が本明細書に援用される)。Fc融合物は、免疫グロブリンのFc領域を、一般的に任意のタンパク質、ポリペプチド、または小分子であり得る融合パートナーと結合する。Fc融合物の非Fc部分、すなわち、融合パートナーの役割は、標的結合を媒介することであり、したがって、抗体の可変領域に機能的に類似している。実質的に、いかなるタンパク質または小分子も、Fcに連結され、Fc融合物を生成し得る。タンパク質融合パートナーは、これらに限定されないが、受容体の標的結合領域、接着分子、リガンド、酵素、サイトカイン、ケモカイン、もしくはいくつかの他のタンパク質、またはタンパク質ドメインを含み得る。小分子融合パートナーは、Fc融合物を治療標的に誘導する、任意の治療薬を含み得る。このような標的は、任意の分子、例えば、疾病に関与する細胞外受容体であってもよい。
【0062】
本明細書で使用される、「Fcガンマ受容体」または「FcγR」とは、IgG抗体Fc領域を結合し、FcγR遺伝子により実質的にコードされるタンパク質のファミリーの任意のメンバーを意味する。ヒトにおいて、このファミリーは、これらに限定されないが、イソ型FcγRIa、FcγRIb、およびFcγRIcを含むFcγRI(CD64)、イソ型FcγRIIa(アロタイプH131およびR131を含む)、FcγRIIb(FcγRIIb−1およびFcγRIIb−2を含む)、およびFcγRIIcを含むFcγRII(CD32)、イソ型FcγRIIIa(アロタイプV158およびF158を含む)およびFcγRIIIb(アロタイプFcγRIIIb−NA1およびFcγRIIIb−NA2を含む)を含むFcγRIII(CD16)(Jefferis et al.,2002,Immunol Lett 82:57−65、参照によりその全体が援用される)、ならびに任意の未発見のヒトFcγRまたはFcγRイソ型もしくはアロタイプを含む。FcγRは、ヒト、マウス、ラット、ウサギ、およびサルを含むが、これらに限定されない任意の生物からであり得る。マウスFcγRは、FcγRI(CD64)、FcγRII(CD32)、FcγRIII(CD16)、およびFcγRIII−2(CD16−2)、ならびに任意の未発見のマウスFcγRまたはFcγRイソ型もしくはアロタイプを含むが、これらに限定されない。
【0063】
本明細書で使用される、「Fcリガンド」または「Fc受容体」とは、抗体のFc領域に結合してFcリガンド複合体を形成する、任意の生物からの分子、例えば、ポリペプチドを意味する。Fcリガンドは、FcγR、FcγR、FcγR、FcRn、C1q、C3、マンナン結合レクチン、マンノース受容体、ブドウ球菌タンパク質A、連鎖球菌タンパク質G、およびウイルス性FcγRを含むが、これらに限定されない。Fcリガンドは、FcγRと相同であるFc受容体のファミリーであるFc受容体ホモログ(FcRH)も含む(Davis et al.,2002,Immunological Reviews 190:123−136)。Fcリガンドは、Fcを結合する未発見の分子を含んでもよい。
【0064】
本明細書で使用される、「完全長抗体」とは、可変領域および定常領域を含む、抗体の自然な生物学的形態を構成する構造を意味する。例えば、ヒトおよびマウスを含む大半の哺乳類において、IgGイソタイプの完全長抗体は、四量体であり、同一の2対の2つの免疫グロブリン鎖からなり、各対は、軽鎖1本と重鎖1本を有し、各軽鎖は、免疫グロブリンドメインVLおよびCLを含み、各重鎖は、免疫グロブリンドメインVH、Cγ1、Cγ2、およびCγ3を含む。例えば、ラクダおよびラマ等の、いくつかの哺乳類において、IgG抗体は、2つの重鎖のみからなり得、各重鎖は、Fc領域に結合する可変ドメインを含む。
【0065】
本明細書において、「免疫グロブリン」とは、免疫グロブリン遺伝子により実質的にコードされる、1つ以上のポリペプチドを含むタンパク質を意味する。免疫グロブリンは、これらに限定されないが、抗体(二重特異的抗体)およびFc融合物を含む。免疫グロブリンは、これらに限定されないが、完全長抗体、抗体断片、および個別の免疫グロブリンドメインを含む、いくつかの構造形態を有し得る。
【0066】
本明細書で使用される、「免疫グロブリン(Ig)ドメイン」とは、タンパク質構造の分野の当業者によって確認される、別々の構造実体として存在する免疫グロブリンの領域を意味する。Igドメインは、典型的に、特有のβサンドウィッチ折り畳みトポロジーを有する。抗体のIgGイソタイプにおける既知のIgドメインは、VH Cγ1、Cγ2、Cγ3、VL、およびCLである。
【0067】
本明細書で使用される、「IgG」、もしくは「IgG免疫グロブリン」、もしくは「免疫グロブリンG」とは、認識される免疫グロブリンγ遺伝子によって実質的にコードされる抗体のクラスに属する、ポリペプチドを意味する。ヒトにおいて、このクラスは、サブクラスまたはイソタイプIgG1、IgG2、IgG3、およびIgG4を含む。
【0068】
本明細書で使用される、「IgE」、もしくは「IgE免疫グロブリン」、もしくは「免疫グロブリンE」とは、認識される免疫グロブリンε遺伝子によって実質的にコードされる抗体のクラスに属する、ポリペプチドを意味する。IgEは、膜アンカー(mIgE)、または非膜アンカーであってもよく、本明細書において、循環IgEとも称される。
【0069】
細胞の「阻害」またはその文法上の同等語は、標的細胞の活性化、増殖、成熟化、または分化の防止、または低減を意味する。
【0070】
本明細書で使用される、「イソタイプ」とは、それらの定常領域の化学的および抗原特性により定義される、免疫グロブリンのサブクラスのいずれかを意味する。既知のヒト免疫グロブリンイソ型は、IgG1、IgG2、IgG3、IgG4、IgA1、IgA2、IgM、IgD、およびIgEである。
【0071】
本明細書において、「修飾」とは、タンパク質、ポリペプチド、抗体、または免疫グロブリンの物理的、化学的、または配列特性の変更を意味する。本明細書に記載される修飾は、アミノ酸修飾およびグリコフォーム修飾を含む。
【0072】
本明細書で使用される、「グリコフォーム修飾」、もしくは「修飾されたグリコフォーム」、もしくは「操作されたグリコフォーム」とは、タンパク質、例えば、抗体に共有結合的に結合される糖組成物を意味し、該糖組成物は、親タンパク質と化学的に異なる。修飾されたグリコフォームは、典型的に、異なる糖またはオリゴ糖を指し、したがって、例えば、Fc変異体は、修飾されたグリコフォームを含み得る。代替的に、修飾されたグリコフォームは、異なる糖またはオリゴ糖を含むFc変異体を指す場合がある。
【0073】
本明細書で使用される、「親ポリペプチド」、「親タンパク質」、「親免疫グロブリン」「前駆体ポリペプチド」、「前駆体タンパク質」、または「前駆体免疫グロブリン」とは、本明細書に記載される、少なくとも1つのアミノ酸修飾のテンプレートおよび/または基礎として機能する変異体、例えば、任意のポリペプチド、タンパク質、または免疫グロブリンを生成するように後に修飾される、無修飾のポリペプチド、タンパク質、または免疫グロブリンを意味する。親ポリペプチドは、自然に生じるポリペプチドか、または自然に生じるポリペプチドの変異体もしくは操作された変型であってもよい。親ポリペプチドは、ポリペプチド自体、親ポリペプチドを含む組成物、またはそれをコードするアミノ酸配列を指す場合がある。したがって、本明細書で使用される、「親Fcポリペプチド」とは、変異体Fcポリペプチドを生成するように修飾されるFcポリペプチドを意味し、本明細書で使用される、「親抗体」とは、変異体抗体を生成するように修飾される抗体を意味する(例えば、親抗体は、限定されないが、自然に生じるIgの定常領域を含むタンパク質を含み得る)。
【0074】
本明細書で使用される、「位置」とは、タンパク質の配列における位置を意味する。位置は、順に番号付けされるか、確立された形式、例えば、Kabatに記載される、EU指標に従ってもよい。例えば、位置297は、ヒト抗体IgG1での位置である。
【0075】
本明細書で使用される、「ポリペプチド」または「タンパク質」とは、タンパク質、ポリペプチド、オリゴペプチド、およびペプチドを含む、少なくとも2つが共有結合的に結合されたアミノ酸を意味する。
【0076】
本明細書で使用される、「残基」とは、タンパク質およびその関連するアミノ酸の同一性での位置を意味する。例えば、アスパラギン297(Asn297とも称され、N297とも称される)は、ヒト抗体IgG1での残基である。
【0077】
本明細書で使用される、「標的抗原」とは、所与の抗体の可変領域により結合される分子、またはFc融合物の融合パートナーを意味する。標的抗原は、タンパク質、糖、脂質、または他の化学化合物であってもよい。抗体またはFc融合物は、標的抗原に対して親和性を有することに基づいて、所与の標的抗原に「特異的」であると言われる。
【0078】
本明細書で使用される、「標的細胞」とは、標的抗原を発現する細胞を意味する。
【0079】
本明細書で使用される、「可変領域」とは、それぞれ、カッパ、ラムダ、および重鎖免疫グロブリン遺伝子座を構成する、Vk、Vλ、および/またはVH遺伝子のいずれかにより実質的にコードされる、1つ以上のIgドメインを含む免疫グロブリンの領域を意味する。
【0080】
本明細書で使用される、「変異体ポリペプチド」、「ポリペプチド変異体」、または「変異体」とは、少なくとも1つのアミノ酸修飾によって、親ポリペプチド配列と異なるポリペプチド配列を意味する。親ポリペプチドは、自然に生じる、もしくは野生型(WT)ポリペプチドであるか、または野生型ポリペプチドの修飾された変型であってもよい。 変異体ポリペプチドは、ポリペプチド自体、ポリペプチドを含む組成物、またはそれをコードするアミノ酸配列を指す場合がある。いくつかの実施形態において、本明細書に開示される変異体ポリペプチド(例えば、変異体免疫グロブリン)は、親ポリペプチドと比較して、少なくとも1つのアミノ酸修飾、例えば、親と比較して、約1〜10のアミノ酸修飾、約1〜5のアミノ酸修飾等を有してもよい。本明細書において、変異体ポリペプチド配列は、親ポリペプチド配列と少なくとも約80%の相同性、例えば、少なくとも約90%の相同性、95%の相同性等を有し得る。したがって、本明細書で使用される、「Fc変異体」または「変異体Fc」とは、少なくとも1つのアミノ酸修飾によって、親Fc配列と異なるFc配列を意味する。Fc変異体は、Fc領域のみを包含するか、または抗体、Fc融合物、単離されたFc、Fc断片、またはFcにより実質的にコードされる他のポリペプチドと関連して存在してもよい。Fc変異体は、Fcポリペプチド自体、Fc変異体ポリペプチドを含む組成物、またはそれをコードするアミノ酸配列を指す場合がある。本明細書で使用される、「Fcポリペプチド変異体」または「変異体Fcポリペプチド」とは、少なくとも1つのアミノ酸修飾によって、親Fcポリペプチドと異なるFcポリペプチドを意味する。本明細書で使用される、「タンパク質変異体」または「変異体タンパク質」とは、少なくとも1つのアミノ酸修飾によって、親タンパク質と異なるタンパク質を意味する。本明細書で使用される、「抗体変異体」または「変異体抗体」とは、少なくとも1つのアミノ酸修飾によって、親抗体と異なる抗体を意味する。本明細書で使用される、「IgG変異体」または「変異体IgG」とは、少なくとも1つのアミノ酸修飾によって、親IgGと異なる抗体を意味する。本明細書で使用される、「免疫グロブリン変異体」または「変異体免疫グロブリン」とは、少なくとも1つのアミノ酸修
飾によって、親免疫グロブリン配列と異なる免疫グロブリン配列を意味する。
【0081】
本明細書において、「野生型」または「WT」とは、対立遺伝子変型を含む、自然界に認められるアミノ酸配列またはヌクレオチド配列を意味する。野生型タンパク質、ポリペプチド、抗体、免疫グロブリン、IgG等は、意図的に修飾されていない、アミノ酸配列またはヌクレオチド配列を有する。
【0082】
共結合分子
【0083】
本明細書に記載される、共結合分子は、細胞の表面上で、FcγRIIbおよびIgEに結合することができる二機能性分子である。これらの分子は、本明細書により詳細に概説する、種々の構成を呈し得る。好ましくは、共結合分子は、必ずしも要求されないが、タンパク質性である。いくつかの実施形態において、共結合分子は、FcγRIIbおよび/またはIgEに対する特異性が、例えば、小分子、核酸、および/またはポリペプチドによって与えられる二機能性分子であり得る。好ましくは、共結合分子は、約100nM未満のKdで、FcγRIIb結合する。好適な実施形態において、共結合分子は、高親和性で、IgEおよびFcγRIIbに結合する免疫グロブリンを含む。この実施形態において、免疫グロブリンは、好ましくは、細胞の表面上で、膜アンカーIgEおよびFcγRIIbに共結合する。別の実施形態において、共結合分子は、第1の標的特異的領域および第2の標的特異的領域を有する二重特異的分子であり、第1の標的特異的領域は、IgEに結合し、第2の標的特異的領域は、約100nM未満のKdで、FcγRIIbに結合する。好適な実施形態において、共結合分子は、二重特異的抗体であり、第1および第2の標的特異的領域は、Fv領域であり、第1のFv領域は、IgEに結合し、第2のFv領域は、約100nM未満のKdでFcγRIIbに結合する。別の実施形態において、共結合分子は、Fc領域を含むFc融合物であり、該Fc領域は、約100nM未満のKdで、FcγRIIbに結合する。この実施形態において、免疫グロブリンのFc融合パートナーは、IgEに結合する。
【0084】
一実施形態において、共結合分子は、第1の領域が、IgEに結合し、第2の領域が、約100nM未満のKdで、FcγRIIbに結合する、二機能性分子である。実質的に、任意のタンパク質、小分子または核酸、例えば、アプタマーは、二機能性結合分子を生成するように連結され、本明細書に概説されるリンカーを含んでもよい。好適な実施形態において、タンパク質融合パートナーは、これらに限定されないが、抗体の可変領域、受容体、接着分子、リガンド、酵素、サイトカイン、ケモカイン、もしくはいくつかの他のタンパク質の標的結合領域、またはタンパク質ドメインを含んでもよい。小分子融合パートナーは、共結合分子をIgE等の標的抗原に誘導する、任意の薬剤を含み得る。例えば、好適な実施形態において、共結合分子は、融合パートナーとして、FcεRIまたはFcεRII/CD23を含んでもよい。好適な実施形態において、免疫グロブリンは、共結合分子としての用途を見出す。
【0085】
免疫グロブリン
【0086】
本明細書に記載される、免疫グロブリンは、共結合分子の好適な構成要素であり、抗体、Fc融合物、単離されたFc、Fc断片、またはFcポリペプチドであってもよい。一実施形態において、免疫グロブリンは、抗体である。以下により詳細に概説するように、免疫グロブリンは、Fv領域が、IgEに結合し、Fc領域が、約100nM未満のKdで、FcγRIIbに結合する、二機能性分子としての用途を見出す。加えて、抗体は、以下に概説するように、Fc融合物または二機能性抗体における用途を見出す。
【0087】
抗体は、特定の抗原に結合する免疫タンパク質である。ヒトおよびマウスを含む大半の哺乳類において、抗体は、対のポリペプチド重鎖および軽鎖から構成される。軽鎖および重鎖可変領域は、抗体間で大幅な配列の多様性を示し、標的抗原の結合に関与する。各鎖は、個別の免疫グロブリン(Ig)ドメインで構成され、したがって、一般的な用語の免疫グロブリンは
が、このようなタンパク質に使用される。
【0088】
従来の抗体の構造単位は、典型的に、四量体を含む。各四量体は、典型的に、同一の2対のポリペプチド鎖から成り、各対は、「軽鎖」(典型的に、約25kDaの分子量を有する)1本と、「重鎖」(典型的に、約50〜70kDaの分子量を有する)1本とを有する。ヒトの軽鎖は、κおよびλ軽鎖に分類される。重鎖は、μ、δ、γ、α、またはεに分類され、それぞれ、IgM、IgD、IgG、IgA、およびIgEとして抗体のイソタイプを定義する。IgGは、これらに限定されないが、IgG1、IgG2、IgG3、およびIgG4を含む、いくつかのサブクラスを有する。IgMは、これらに限定されないが、IgM1およびIgM2を含むサブクラスを有する。IgAは、これらに限定されないが、IgA1およびIgA2を含む、いくつかのサブクラスを有する。したがって、本明細書で使用される、「イソタイプ」とは、それらの定常領域の化学的および抗原特性により定義される、免疫グロブリンのクラスおよびサブクラスのいずれかを意味する。既知のヒト免疫グロブリンイソタイプは、IgG1、IgG2、IgG3、IgG4、IgA1、IgA2、IgM1、IgM2、IgD、およびIgEである。
【0089】
軽鎖および重鎖のそれぞれは、可変領域および定常領域と称される、2つの個別の領域から構成される。IgG重鎖は、VH−CH1−CH2−CH3の順に、NからC末端まで連結される4つの免疫グロブリンドメインから成り、それぞれ、重鎖可変ドメイン、重鎖定常ドメイン1、重鎖定常ドメイン2、および重鎖定常ドメイン3を指す(VH−Cγ1−Cγ2−Cγ3とも称され、それぞれ、重鎖可変ドメイン、定常γ1ドメイン、定常γ2ドメイン、および定常γ3ドメインを指す)。IgG軽鎖は、VL−CLの順に、NからC末端まで連結される2つの免疫グロブリンドメインから成り、それぞれ、軽鎖可変ドメインおよび軽鎖定常ドメインを指す。定常領域は、配列の多様性が低く、重要な生化学事象を顕在化するいくつかの自然タンパク質の結合に関与する。微妙な相違が、可変領域に存在する場合があるが、これらの抗体クラス間の際立った特徴は、それらの定常領域である。
【0090】
抗体の可変領域は、分子の抗原結合決定因子を含有し、したがって、その標的抗原に対する抗原の特異性を決定する。可変領域は、同一クラス内の他の抗体と配列が最も異なるため、そう呼ばれる。各鎖のアミノ末端部は、抗原認識に主に関与する、約100〜110またはそれ以上のアミノ酸を含む。可変領域において、3つのループが、重鎖および軽鎖のVドメインのそれぞれに集められ、抗原結合部を形成する。それぞれのループは、アミノ酸配列の差異が最も大きい、相補性決定領域(以下、「CDR」とする)と称される。重鎖および軽鎖にそれぞれ3つずつの、全部で6つのCDRが存在し、VH CDR1、VH CDR2、VH CDR3、VL CDR1、VL CDR2、およびVL CDR3と称される。CDRの外側の可変領域は、フレームワーク(FR)領域と称される。CDRほど多様ではないが、配列の可変性が、異なる抗体間のFR領域も生じる。全体的に、抗体のこの特徴的な構造は、多大な抗原結合多様性(CDR)が、抗原の広範囲なアレイに対して特異性を得るように、免疫系により探索され得る、安定した足場(FR領域)を提供する。多くの高解析の構造は、抗原と非結合のものもあれば、抗原と複合するものもある、異なる生物からの種々の可変領域の断片に対して利用可能である。抗体の可変領域の配列および構造上の特徴は、例えば、Morea et al.,1997,Biophys Chem 68:9−16; Morea et al.,2000,Methods 20:267−279に開示されており、参照によりその全体が本明細書に援用され、抗体の保存された特徴は、例えば、Maynard et al.,2000,Annu Rev Biomed Eng2:339−376に開示されており、参照によりその全体が本明細書に援用される。
【0091】
各鎖のカルボキシ末端部分は、エフェクター機能に主に関与する定常領域を定義する。免疫グロブリンのIgGサブクラスにおいて、重鎖にいくつかの免疫グロブリンドメインが存在する。本明細書において、「免疫グロブリン(Ig)ドメイン」とは、明確な三次構造を有する免疫グロブリンの領域を意味する。本明細書に記載される実施形態の関心対象は、定常重(CH)ドメインおよびヒンジ領域を含む、重鎖ドメインである。IgG抗体と関連して、IgGイソタイプは、それぞれ、3つのCH領域を有する。したがって、IgGと関連して、「CH」ドメインとは、以下の通りである:「CH1」は、KabatのEU指標に従い、位置118〜220を指す。「CH2」は、KabatのEU指標に従い、位置237〜340を指し、「CH3」は、KabatのEU指標に従い、位置341〜447を指す。
【0092】
重鎖の別の重要な領域は、ヒンジ領域である。本明細書において、「ヒンジ」、もしくは「ヒンジ領域」、もしくは「抗体ヒンジ領域」、もしくは「免疫グロブリンヒンジ領域」とは、抗体の第1と第2の定常ドメインの間にアミノ酸を含む、柔軟なポリペプチドを意味する。構造的に、IgG CH1ドメインは、EUの位置220で終わり、IgG CH2ドメインは、残基EUの位置237で始まる。したがって、IgGにおいて、抗体ヒンジは、本明細書において、位置221(IgG1でD221)〜236(IgG1でG236)を含むように定義され、付番は、KabatのEU指標に従う。いくつかの実施形態において、例えば、Fc領域と関連して、一般的に、「下方ヒンジ」が、位置226または230から236を指す、下方ヒンジが含まれる。
【0093】
本明細書に記載される実施形態の関心対象は、Fc領域である。本明細書で使用される、「Fc」または「Fc領域」とは、第1の定常領域免疫グロブリンドメイン、およびいくつかの場合において、ヒンジの一部を除外する抗体の定常領域を含む、ポリペプチドを意味する。したがって、Fcは、IgA、IgD、およびIgGの最後2つの定常領域免疫グロブリンドメイン、ならびにIgEおよびIgMの最後の3つの定常領域免疫グロブリンドメイン、ならびにこれらのドメインに対する柔軟なヒンジN末端を指す。IgAおよびIgMにいて、Fcは、J鎖を含み得る。IgGにおいて、Fcは、免疫グロブリンドメインCガンマ2およびCガンマ3(Cγ2およびCγ3)、ならびにCガンマ1(Cγ1)とCガンマ2(Cγ2)との間の下方ヒンジ領域を含む。Fc領域の境界は変動してもよいが、ヒトIgG重鎖Fc領域は、通常、残基C226またはP230〜そのカルボキシル末端までを含むように定義され、付番は、KabatのEU指標に従う。Fcは、単独でこの領域を指すか、または以下に記載される、Fcポリペプチドと関連してこの領域を指してもよい。本明細書で使用される、「Fcポリペプチド」とは、Fc領域の全てまたは一部を含むポリペプチドを意味する。Fcポリペプチドは、抗体、Fc融合物、単離されたFc、およびFc断片を含む。
【0094】
抗体のFc領域は、いくつかのFc受容体およびリガンドと相互作用し、エフェクター機能と称される、数々の重要な機能的能力を付与する。Fc領域のIgGにおいて、FcはIgドメインCγ2およびCγ3、ならびにCγ2に通じるN末端ヒンジを含む。IgGクラスのFc受容体の重要なファミリーは、Fcγ受容体(FcγR)である。これらの受容体は、抗体と免疫系の細胞アームとの間の連通を媒介する(Raghavan et al.,1996,Annu Rev Cell Dev Biol 12:181−220、Ravetch et al.,2001,Annu Rev Immunol 19:275−290、ともに、参照によりその全体が本明細書に援用される)。ヒトにおいて、このタンパク質ファミリーは、イソ型FcγRIa、FcγRIb、およびFcγRIcを含むFcγRI(CD64)、イソ型FcγRIIa(アロタイプH131およびR131を含む)、FcγRIIb(FcγRIIb−1およびFcγRIIb−2を含む)、およびFcγRIIcを含むFcγRII(CD32)、ならびにイソ型FcγRIIIa(アロタイプV158およびF158を含む)およびFcγRIIIb(アロタイプFcγRIIIb−NA1およびFcγRIIIb−NA2を含む)FcγRIII(CD16)を含む(Jefferis et al.,2002,Immunol Lett 82:57−65、参照によりその全体が本明細書に援用される)。これらの受容体は、典型的に、Fcへの結合を媒介する細胞外ドメイン、膜貫通領域、および細胞内のいくつかのシグナル伝達事象を媒介してもよい細胞内ドメインを有する。これらの受容体は、単球、マクロファージ、好中球、樹状細胞、好酸球、マスト細胞、血小板、B細胞、大型顆粒リンパ球、ランゲルハンス細胞、天然キラー(NK)細胞、およびγγT細胞を含む、種々の免疫細胞で発現しもよい。Fc/FcγR複合体の編成は、これらのエフェクター細胞を結合抗原の部位に動員し、典型的に、細胞内のシグナル伝達事象、ならびに炎症メディエーターの放出、B細胞の活性、エンドサイトーシス、ファゴサイトーシスおよび細胞障害性攻撃等の、その後の重要な免疫反応をもたらす。細胞障害性および食細胞性エフェクター機能を媒介する能力は、抗体が標的細胞を破壊す
る潜在的機構である。FcγRを発現する非特異的細胞障害性細胞が、標的細胞上で結合抗体を認識し、後に標的細胞の溶解を生じる細胞媒介性反応は、抗体依存性の細胞媒介性細胞障害性(ADCC)と称される(Raghavan et al.,1996,Annu Rev Cell Dev Biol 12:181−220、Ghetie et al.,2000,Annu Rev Immunol 18:739−766; Ravetch et al.,2001,Annu Rev Immunol 19:275−290、ともに、参照によりその全体が本明細書に援用される)。FcγRを発現する非特異的細胞障害性細胞が、標的細胞上で結合抗体を認識し、後に標的細胞のファゴトーシスを生じる、細胞媒介性反応は、抗体依存性の細胞媒介性ファゴトーシス(ADCP)と称される。
【0095】
異なるIgGサブクラスは、FcγRに対して異なる親和性を有し、IgG1およびIgG3は、典型的に、IgG2およびIgG4よりこの受容体に実質的に良く結合する(Jefferis et al.,2002,Immunol Lett 82:57−65、参照によりその全体が本明細書に援用される)。FcγRは、異なる親和性で、IgG Fc領域に結合する。FcγRIIIaおよびFcγRIIIbの細胞外ドメインは、96%が同一であるが、FcγRIIIbは、細胞内シグナル伝達ドメインを有さない。さらに、FcγRI、FcγRIIa/c、およびFcγRIIIaは、免疫受容活性化チロシンモチーフ(ITAM)を有する細胞内ドメインを有することにより特徴付けされる、免疫複合体により引き起こされる活性の正の調節因子であるが、FcγRIIbは、免疫受容抑制チロシンモチーフを有し、したがって、阻害性である。したがって、前者は、活性化受容体と呼ばれ、FcγRIIbは、抑制受容体と呼ばれる。親和性および活性化におけるこれらの相違にも関わらず、全てのFcγRは、Cγ2ドメインのN末端および前述のヒンジで、Fc上の同じ領域に結合する。この相互作用は、構造的に良く特徴付けされ(Sondermann et al.,2001,J Mol Biol 309:737−749、参照によりその全体が本明細書に援用される)、ヒトFcγRIIIbの細胞外ドメインに結合されるヒトFcのいくつかの構造が、解明されている(pdb登録コード1E4K) (Sondermann et al.,2000,Nature 406:267−273、参照によりその全体が本明細書に援用される)(pdb登録コード1IISおよび1IIX)(Radaev et al.,2001,J Biol Chem 276:16469−16477、参照によりその全体が本明細書に援用される)。
【0096】
重複しているが、別個であるFc上の部位は、補体タンパク質C1qの接触面として機能する。Fc/FcγR結合が、ADCCを媒介する同じ方式で、Fc/C1q結合は、補体依存性細胞障害性(CDC)を媒介する。Cγ2とCγ3ドメインとの間のFc上の部位は、エンドソームから形質膜陥入された抗体を血流に再循環させる結合である、新生受容体FcRnとの相互作用を媒介する(Raghavan et al.,1996,Annu Rev Cell Dev Biol 12:181−220、Ghetie et al.,2000,Annu Rev Immunol 18:739−766、ともに、参照によりその全体が本明細書に援用される)。この過程は、大型の完全長分子による腎臓濾過の防止と共に、1〜3週間にわたる好適な抗体血清半減期をもたらす。FcのFcRnへの結合は、抗体輸送において主要な役割も果たす。Fc上でのFcRnの結合部位は、細菌タンパク質AおよびGが結合する部位でもある。これらのタンパク質の密着結合は、典型的に、タンパク質の精製中に、タンパク質Aまたはタンパク質Gの親和性クロマトグラフィーを利用することにより、抗体を精製する手段として活用される。これらの領域の再現性、補体、およびFcRn/タンパク質A結合領域は、抗体の臨床特性およびそれらの発達の両方に重要である。
【0097】
Fc領域の主な特徴は、N297で生じる、保存されたN結合グリコシル化である。場合によってオリゴ糖と称されるこの糖は、抗体にとって重要な構造的かつ機能的役割を担い、抗体が哺乳類発現系を使用して生成されなければならない、主な理由の1つである。FcγRおよびC1qへの効率的なFc結合は、この修飾を必要とし、N297糖の組成物における変更、またはその消失は、これらのタンパク質への結合に影響を及ぼす(Umana et al.,1999,Nat Biotechnol 17:176−180、Davies et al.,2001,Biotechnol Bioeng 74:288−294、Mimura et al.,2001,J Biol Chem 276:45539−45547.、Radaev et al.,2001,J Biol Chem 276:16478−16483、Shields et al.,2001,J Biol Chem 276:6591−6604、Shields et al.,2002,J Biol Chem 277:26733−26740、Simmons et al.,2002,J Immunol Methods 263:133−147、全て、参照によりその全体が本明細書に援用される)。
【0098】
本明細書に記載される実施形態の免疫グロブリンは、Fc融合物とも称される抗体様タンパク質であってもよい(Chamow et al.,1996,Trends Biotechnol 14:52−60、Ashkenazi et al.,1997,Curr Opin Immunol 9:195−200、ともに、参照によりその全体が本明細書に援用される)。本明細書において、「Fc融合物」とは、先行技術において使用される、「免疫アドヘシン」、「Ig融合」、「Igキメラ」、および「受容体グロブリン」(時折ダッシュを伴う)の用語の同義語であるものとする(Chamow et al.,1996,Trends Biotechnol 14:52−60; Ashkenazi et al.,1997,Curr Opin Immunol 9:195−200)。Fc融合物は、本明細書で「融合パートナー」として称される、1つ以上のポリペプチドが、Fcに操作可能に連結されるタンパク質である。Fc融合物は、抗体のFc領域、したがって、その好適なエフェクター機能および薬物動態を受容体、リガンド、もしくはいくつかの他のタンパク質の標的結合領域、またはタンパク質ドメインと結合させる。後者の役割は、標的認識を媒介することであり、したがって、抗体の可変領域にと機能的に類似している。Fc融合物の抗体との構造的および機能的重複のため、本開示の抗体の論議は、Fc融合物にも拡大される。
【0099】
実質的に、いかなるタンパク質または小分子も、Fcに連結され、Fc融合物を生成し得る。タンパク質融合パートナーは、これらに限定されないが、任意の抗体の可変領域、受容体の標的結合領域、接着分子、リガンド、酵素、サイトカイン、ケモカイン、もしくはいくつかの他のタンパク質、またはタンパク質ドメインを含み得る。小分子融合パートナーは、Fc融合物を標的抗原に誘導する、任意の薬剤を含み得る。このような標的抗原は、疾病に関与する、例えば、細胞外受容体等の任意の分子であってもよい。本明細書に記載される実施形態のFc融合物は、好ましくは、IgEに対して特異性を有する。例えば、好適な実施形態において、本発明のFc融合物は、融合パートナーとして、FcεRIまたはFcεRII/CD23を含んでもよい。本発明のFc融合物は、好ましくは、FcγRIIbに対して親和性を強化するFc領域に、1つ以上の変異体を含む。
【0100】
融合パートナーは、NもしくはC末端、または末端間のある残基を含む、Fc領域の任意の領域に連結されてもよい。一実施形態において、融合パートナーは、Fc領域のNまたはC末端で連結される。種々のリンカーは、融合パートナーにFc領域を共有結合的に連結するように、本明細書に記載されるいくつかの実施形態に用途を見出し得る。本明細書において、「リンカー」、「リンカー配列」、「スペーサー」、「係留配列」、またはそれらの文法上の同等語は、2つの分子を結合し、多くの場合、2つの分子を構造に配置する働きをする分子、または分子群(単量体または重合体等)を意味する。リンカーは、当該分野に公知であり、例えば、ホモまたはヘテロ二機能性リンカーが、周知である(参照によりその全体が援用される、1994 Pierce Chemical Company catalog,technical section on cross−linkers,pages 155−200を参照のこと)。いくつかの対処法は、分子を共有結合的に一緒に連結するように使用され得る。これらは、これらに限定されないが、タンパク質またはタンパク質ドメインのNとC末端の間のポリペプチド連結、ジスルフィド結合を介した連結、および化学的架橋試薬を介した連結を含む。この実施形態の一態様において、リンカーは、組み換え技術またはペプチド合成により生成される、ペプチド結合である。リンカーペプチドは、次のアミノ酸残基を主として得る:Gly、Ser、Ala、またはThr。リンカーペプチドは、所望の活性を維持するように、相互に対して適切な高次構造を成すような方式で、2つの分子を連結するのに適当な長さを有するべきである。この目的に適切な長さは、少なくとも1つの、かつ50を超えないアミノ酸残基を含む。一実施形態において、リンカーは、長さが約1〜30のアミノ酸である。一実施形態において、長さが1〜20のアミノ酸のhリンカーが使用されてもよい。有用なリンカーは、当業者に理解されるように、グリシン−セリン重合体(例えば、(GS)n、(GSGGS)n(配列番号1として記述)、(GGGGS)n(配列番号2として記述)、および(GGGS)n(配列番号3として記述)を含み、nは少なくとも1の整数である)、グリシン−アラニン重合体、アラニン−セリン重合体、および他の
柔軟なリンカーを含む。代替的に、これらに限定されないが、ポリエチレングリコール(PEG)、ポリプロピレングリコール、ポリオキシアルキレン、またはポリエチレングリコールとポリプロピレングリコールとの共重合体を含む、種々の非タンパク質性重合体は、リンカーとしての用途を見出し得る、つまり、Fc領域を融合パートナーに連結するように用途を見出し得る。
【0101】
融合パートナーとして、Fcポリペプチドも企図される。したがって、本明細書に記載される免疫グロブリンは、2つ以上のFc領域を含む、多量体Fcポリペプチドであってもよい。このような分子の利点は、単一タンパク質分子で、Fc受容体に複数の結合部位を提供することである。一実施形態において、Fc領域は、化学工学的アプローチを使用して連結されてもよい。例えば、Fab’およびFc’は、ヒンジのシステイン残基に由来するチオエーテル結合により連結され、FabFc等の分子を生成してもよい。Fc領域は、ジスルフィド操作および/または化学的架橋を使用して連結されてもよい。一実施形態において、Fc領域は、遺伝学的に連結されてもよい。一実施形態において、免疫グロブリンにおけるFc領域は、参照によりその全体が援用される、「Fc polypeptides with novel Fc ligand binding sites」の表題で、2004年12月21日に出願されたUSSN第11/022,289号に記載される、生成され、直列に連結されたFc領域に遺伝学的に連結される。直列に連結されたFcポリペプチドは、2つ以上のFc領域、例えば、1〜3つのFc領域、2つのFc領域を含んでもよい。最も好適な構造的および機能的特性で、ホモまたはヘテロ直列に連結されたFc領域を得るために、多くの操作構造体を研究することは、有利である場合がある。直列に連結されたFc領域は、ホモ直列に連結されたFc領域であってもよい、つまり、1つのイソタイプのFc領域は、同じイソタイプの別のFc領域に遺伝学的に融合されてもよい。直列に連結されたFcポリペプチド上に複数のFcγR、C1q、および/またはFcRn結合部位が存在するため、エフェクター機能および/または薬物動態が強化され得ることが予期される。代替の実施形態において、異なるイソタイプからのFc領域が、直列に連結されてもよく、ヘテロ直列に連結されたFc領域と称される。例えば、FcγRおよびFcαRI受容体を標的とする能力のため、FcγRおよびFcαRIの両方に結合する免疫グロブリンは、臨床の改善を提供し得る。
【0102】
本明細書に開示される実施形態の免疫グロブリンは、抗体クラスのいずれかに属する、免疫グロブリン遺伝子によっても実質的にコードされてもよい。特定の実施形態において、本明細書に開示される免疫グロブリンは、IgG1、IgG2、IgG3、またはIgG4を含む抗体のIgGクラスに属する配列を含む、抗体またはFc融合物に用途を見出す。 図1は、これらのヒトIgG配列の整列を提供する。代替の実施形態において、本明細書に開示される免疫グロブリンは、抗体のIgA(サブクラスIgA1およびIgA2を含む)、IgD、IgE、IgG、またはIgMクラスに属する配列を含む、抗体またはFc融合物に用途を見出す。本明細書に開示される免疫グロブリンは、1本以上のタンパク質鎖を含んでもよく、例えば、ホモまたはヘテロオリゴマーを含む単量体もしくはオリゴマーである、抗体またはFc融合物であってもよい。
【0103】
本明細書に開示される免疫グロブリンは、任意の生物、例えば、哺乳類(これらに限定されないが、ヒト、ゲッ齒類(これらに限定されないが、マウスおよびラットを含む)、ウサギ目(これらに限定されないが、ウサギおよびノウサギを含む)、ラクダ科(これらに限定されないが、ラクダ、ラマ、およびヒトコブラクダを含む)、ならびにこれらに限定されないが、原猿、広鼻猿類(新世界ザル)、オナガザル上科(旧世界ザル)、およびテナガザル、小型および大型類人猿を含むヒト上科を含むヒト以外の霊長類からの遺伝子により実質的にコードされてもよい。特定の実施形態において、本明細書に開示される免疫グロブリンは、実質的にヒトであってもよい。
【0104】
当該分野に周知のように、免疫グロブリン多型が、ヒト集団に存在する。Gm多型は、ヒトIgG1、IgG2、およびIgG3分子のマーカーのG1m、G2m、およびG3mアロタイプと称される、アロタイプ抗原決定基をコードする対立遺伝子を有する、IGHG1、IGHG2およびIGHG3遺伝子により決定される(γ4鎖上で、Gmアロタイプは発見されていない)。マーカーは、「アロタイプ」と「イソアロタイプ」とに分類され得る。これらは、イソタイプ間の強い配列の相同性に応じて、異なる血清学的根拠により区別される。アロタイプは、Ig遺伝子の対立遺伝子型により特定される抗原決定基である。アロタイプは、異なる個別の重鎖または軽鎖のアミノ酸配列のわずかな相違を表す。たった1つのアミノ酸の相違でさえ、アロタイプ決定基を引き起こすことができるが、多くの場合、いくつかのアミノ酸置換が生じている。アロタイプは、抗血清が対立遺伝子の相違のみを認識する、サブクラスの対立遺伝子間の配列相違である。イソアロタイプは、1つ以上の他のイソタイプの非多型相同領域と共有されるエピトープを生成する一イソタイプにおける対立遺伝子であり、このため、抗血清は、関連するアロタイプと関連する相同イソタイプの両方と反応する(Clark,1997,IgG effector mechanisms,Chem Immunol.65:88−110、Gorman & Clark,1990,Semin Immunol 2(6):457−66、ともに、参照によりその全体が本明細書に援用される)。
【0105】
ヒト免疫グロブリンの対立遺伝子型は、明確に特徴付けされている(WHO Review of the notation for the allotypic and related markers of human immunoglobulins.J Immunogen 1976,3:357−362、WHO Review of the notation for the allotypic and related markers of human immunoglobulins.1976,Eur.J.Immunol.6,599−601、Loghem E van,1986,Allotypic markers,Monogr Allergy 19:40−51、全てが、参照によりその全体が本明細書に援用される)。加えて、他の多型も特徴付けされている(Kim et al.,2001,J.Mol.Evol.54:1−9、参照によりその全体が本明細書に援用される)。 現在、18のGmアロタイプが知られている:G1m(1、2、3、17)もしくはG1m(a、x、f、z)、G2m(23)もしくはG2m(n)、G3m(5、6、10、11、13、14、15、16、21、24、26、27、28)もしくはG3m(b1、c3、b5、b0、b3、b4、s、t、g1、c5、u、v、g5)(Lefranc,et al.,The human IgG subclasses:molecular analysis of structure,function and regulation.Pergamon,Oxford,pp.43−78(1990)、Lefranc,G.et al.,1979,Hum.Genet.:50,199−211、ともに、参照によりその全体が本明細書に援用される)。固定された組み合わせで受け継がれるアロタイプは、Gmハプロタイプと呼ばれる。本明細書に開示される免疫グロブリンは、任意の免疫グロブリン遺伝子の任意のアロタイプ、イソアロタイプ、またはハプロタイプにより実質的にコードされ得る。
【0106】
本明細書に開示される免疫グロブリンは、これらに限定されないが、抗体、単離されたFc、Fc断片、およびFc融合物を含む、Fcポリペプチドを構成してもよい。一実施形態において、本明細書に開示される免疫グロブリンは、可変領域および定常領域を含む、抗体の自然な生物学的形態を構成する完全長抗体である。IgGイソタイプにおいて、完全長抗体は、四量体であり、同一の2対の2本の免疫グロブリン鎖からなり、各対は、軽鎖1本と、重鎖1本を有し、各軽鎖は、免疫グロブリンドメインVLおよびCLを含み、各重鎖は、免疫グロブリンドメインVH、Cγ1、Cγ2、およびCγ3を含む。別の実施形態において、本明細書に開示される免疫グロブリンは、単離されたFc領域またはFc断片である。
【0107】
本明細書に開示される免疫グロブリンは、これらに限定されないが、それぞれ、抗体断片、二重特異的抗体、ミニ抗体、ドメイン抗体、合成抗体(時折、本明細書において、「抗体模倣物」と称される)、キメラ抗体、ヒト化抗体、抗体融合(時折、「抗体結合体」と称される)、およびそれぞれの断片を含む、種々の構造であってもよい。
【0108】
一実施形態において、抗体は、抗体断片である。 特定の抗体断片は、これらに限定されないが、(i)VL、VH、CL、およびCH1ドメインからなるFab断片、(ii)VHおよびCH1ドメインからなるFd断片、(iii)単一抗体のVLおよびVHドメインからなるFv断片、(iv)単一変数からなるdAb断片、(v)単離されたCDR領域、(vi)2つの連結されたFab断片を含む二価の断片である、F(ab’)2断片、(vii)2つのドメインを結合して、抗原結合部位の形成を可能にするペプチドリンカーにより、VHドメインおよびVLドメインが連結される、単一鎖Fv分子(scFv)、(viii)二重特異性単一鎖Fv二量体、ならびに(ix)遺伝子融合によって構築される多価または多特異性断片である、「二重特異性抗体」もしくは「三重特異性抗体」を含む。抗体断片は、修飾されてもよい。例えば、分子は、VHおよびVLドメインを連結する、ジスルフィド橋の組み込みにより安定化され得る。抗体の形式および構造の例は、Holliger & Hudson,2006,Nature Biotechnology 23(9):1126−1136およびCarter 2006,Nature Reviews Immunology 6:343−357ならびにそこに引用される参考文献に記載されており、参照により全てが明示的に援用される。
【0109】
一実施形態において、本明細書に開示される抗体は、多特異性抗体、および特に二重特異性抗体であってもよく、時折、「二重特異性抗体」と称される。これらは、2つ(以上)の異なる抗原に結合する抗体である。二重特異性抗体は、例えば、化学的に、またはハイブリッドハイブリドーマから調製される等の、当該分野に公知の種々の方式で製造され得る。一実施形態において、抗体はミニ抗体である。ミニ抗体は、CH3ドメインに連結されるscFvを含む、最小化された抗体様タンパク質である。いくつかの場合において、scFvは、Fc領域に結合され得、一部または全てのヒンジ領域を含み得る。多特異性抗体の説明においては、Holliger & Hudson,2006,Nature Biotechnology 23(9):1126−1136、ならびにそこに引用される参考文献を参照し、参照により全てが明示的に援用される。
【0110】
非ヒト、キメラ、ヒト化、および完全なヒト抗体
【0111】
当該分野に周知のように、抗体の可変領域は、種々の種属から配列を構成することができる。いくつかの実施形態において、抗体可変領域は、これらに限定されないが、マウス、ラット、ウサギ、ラクダ、ラマ、およびサルを含む、ヒト以外の供給源からであり得る。いくつかの実施形態において、足場の構成要素は、異なる種属の混合物であり得る。したがって、本明細書に開示される抗体は、キメラ抗体および/またはヒト化抗体であってもよい。一般的に、「キメラ抗体」および「ヒト化抗体」の両方は、1種属以上からの領域を組み合わせる抗体を指す。例えば、「キメラ抗体」は、従来、マウスまたは他のヒト以外の種属からの可変領域およびヒトからの定常領域を含む。
【0112】
「ヒト化抗体」とは、概して、ヒト抗体で発見される配列と交換された可変ドメインフレームワーク領域を有した非ヒト抗体を指す。一般的に、ヒト化抗体において、CDRを除く抗体全体は、ヒト起源のポリヌクレオチドによりコードされるか、またはそのCDR内を除いてこのような抗体と同一である。ヒト以外の生物由来の核酸によりコードされる一部または全てのCDRは、ヒト抗体可変領域のベータシートフレームワークに移植され、移植されたCDRにより決定される特異性の抗体を作製する。このような抗体の作製は、例えば、国際公開第92/11018号、Jones,1986,Nature 321:522−525、Verhoeyen et al.,1988,Science 239:1534−1536に記載される。選択された受容体フレームワーク残基の対応するドナー残基への「逆突然変異」は、多くの場合、初期の移植されたコンストラクトで失われた親和性を回復するために要求される(米国特許第5,693,762号、参照によりその全体が援用される)。ヒト化抗体は、至適に、免疫グロブリン定常領域の少なくとも一部、典型的には、ヒト免疫グロブリンのそれを含み、したがって、典型的には、ヒトFc領域を含む。ヒト化抗体は、遺伝学的に操作された免疫系を有するマウスを使用しても生成され得る。 Roque et al.,2004,Biotechnol.Prog.20:639−654。ヒト以外の抗体のヒト化および再構成のための種々の技法および方法は、当該分野に周知である(Tsurushita & Vasquez,2004,Humanization of Monoclonal Antibodies,Molecular Biology of B Cells,533−545,Elsevier Science(USA)、ならびにそれに引用される参考文献を参照のこと)。非ヒト抗体可変領域の免疫原性を低減するためのヒト化または他の方法は、例えば、Roguska et al.,1994,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 91:969−973に記載される、表面再構成法を含み得る。一実施形態において、親抗体は、当該分野に公知のように、親和成熟化されている。構造に基づく方法が、例えば、米国特許出願第11/004,590号に記載されるよう
に、ヒト化および親和性成熟化において利用されてもよい。選択に基づく方法は、抗体可変領域をヒト化および/または親和成熟するように、つまり、その標的抗原の可変領域の親和性を増加するように利用されてもよい。他のヒト化方法は、限定されないが、USSN第09/810,502号、Tan et al.,2002,J.Immunol.169:1119−1125、De Pascalis et al.,2002,J.Immunol.169:3076−3084に記載される方法を含む、CDRの一部のみの移植を含んでもよい。構造に基づく方法は、例えば、参照によりその全体が援用される、USSN第10/153,159号、ならびに関連する出願に記載されるように、ヒト化および親和性成熟化において利用されてもよい。特定の変形において、抗体の免疫原性は、参照によりその全体が援用される、2004年12月3日に出願された、「Methods of Generating Variant Proteins with Increased Host String Content and Compositions Thereof」の表題で、Lazar et al.,2007,Mol Immunol 44:1986−1998およびUSSN第11/004,590号に記載される方法を使用して低減される。
【0113】
一実施形態において、抗体は、本明細書に概説する、少なくとも1つの修飾を伴う完全なヒト抗体である。「完全な(Fully)ヒト抗体」または「完全な(complete)ヒト抗体」とは、本明細書に概説する修飾を伴う、ヒト染色体に由来する抗体の遺伝子配列を有するヒト抗体を指す。完全なヒト抗体は、例えば、遺伝子導入マウス(Bruggemann et al.,1997,Curr Opin Biotechnol 8:455−458)、または選択法と合わせたヒト抗体ライブラリ(Griffiths et al.,1998,Curr Opin Biotechnol 9:102−108)を使用して、取得されてもよい。一実施形態において、ヒトと同等の抗体は、参照によりその全体が援用されるPCT/US09/41144に概説されるように、計算的に生成されてもよい。
【0114】
抗IgE抗体
【0115】
本明細書に記載する免疫グロブリンは、IgEに結合する。本発明の抗IgE抗体は、IgEに特異性を有する、既知または不明の任意の可変領域を含んでもよい。既知の抗IgE抗体は、これらに限定されないが、マウス抗体MaE11、MaE13、およびMaE15、US第6761889号、US第6329509号、US第20080003218A1号、およびPresta,LG et al.,1993,J Immunol 151:2623‐2632に記載されるもの等の、E25、E26、およびE27、特に、rhuMab−E25としても知られ、オマリズマブとしても知られるE25を含む、これらの抗体のヒト化および/または操作された変型を含み、参照により全てが本明細書に明示的に援用される。MaE11の好適な操作された変型は、本明細書の実施例に記載されるH1L1 MaE11である。本発明に有用であり得る他の抗IgEは、マウス抗体TES−C21、CGP51901としても知られるキメラTES−C21(Corne,J et al.,1997,J Clin Invest 99:879‐887;Racine−Poon,A et al.,1997,Clin Pharmcol Ther 62:675‐690)、ならびに、限定されないが、Kolbinger, F et al.,1993,Protein Eng6:971‐980に記載される抗体等、TNX−901としても知られるCGP56901を含む、この抗体のヒト化および/または操作された変型を含む。本明細書に用途を見出し得る他の抗IgE抗体は、US第6066718号、US第6072035号、PCT/US04/02894、US第5342924号、US第5091313号、US第5449760号、US第5543144号、US第5342924号、およびUS第5614611号に記載され、参照により全てが本明細書に援用される。他の有用な抗IgE抗体は、マウス抗体BSW17を含む。これらの抗体のいくつかの可変領域VHおよびVLドメインならびにCDRのアミノ酸配列を、図5に提供する。
【0116】
Fc変異体およびFc受容体結合特性
【0117】
本明細書に開示される免疫グロブリンは、Fc変異体を含んでもよい。Fc変異体は、親Fcポリペプチドに対して1つ以上のアミノ酸修飾を含み、該アミノ酸修飾は、1つ以上の最適化された特性を提供する。本明細書に開示されるFc変異体は、少なくとも1つのアミノ酸修飾によって、その親とアミノ酸配列が異なる。したがって、本明細書に開示されるFc変異体は、親と比較して、少なくとも1つのアミノ酸修飾を有する。代替的に、本明細書に開示されるFc変異体は、親と比較して、1つ以上のアミン酸修飾、例えば、約1〜50のアミノ酸修飾、例えば、親と比較して、約1〜10のアミノ酸修飾、約1〜5のアミノ酸修飾等を有してもよい。したがって、Fc変異体の配列、および親Fcポリペプチドの配列は、実質的に相同である。例えば、本明細書において、変異Fc変異体配列は、親Fc変異体配列と約80%の相同性、例えば、少なくとも約90%の相同性、少なくとも約95%の相同性、少なくとも98%の相同性、少なくとも約99%の相同性等を有する。本明細書に開示される修飾は、挿入、欠失、および置換を含む、アミノ酸修飾を含む。本明細書に開示される修飾は、グリコフォーム修飾も含む。修飾は、一般的に、分子生物学を使用して行われるか、または酵素的に、もしくは化学的に行われてもよい。
【0118】
本明細書に開示されるFc変異体は、それらを構成するアミノ酸修飾によって定義される。したがって、例えば、S267Eは、親Fcポリペプチドに対して、置換S267Eを伴うFc変異体である。同様に、S267E/L328Fは、親Fcポリペプチドに対して、置換S267EおよびL328Fを伴うFc変異体を定義する。野生型アミノ酸の同一性は、不特定であってもよく、この場合、前述の変異体は、267E/328Fと称される。置換が提供される順番は、恣意的であり、つまり、例えば、267E/328Fは、328F/267Eと同じFc変異体などであることに留意する。特に記載のない限り、本明細書で論議される位置は、EU指標、またはEU付番規定に従い番号付けされる(Kabat et al.,1991,Sequences of Proteins of Immunological Interest,5th Ed.,United States Public Health Service,National Institutes of Health, Bethesda、参照によりその全体が本明細書に援用される)。KabatもしくはEU付番のEU指標またはEU指標は、EU抗体の番号付けを指す(Edelman et al.,1969,Proc Natl Acad Sci USA 63:78−85、参照によりその全体が本明細書に援用される)。
【0119】
特定の実施形態において、本明細書に開示されるFc変異体は、ヒトIgG配列に基づき、したがって、ヒトIgG配列は、これらに限定されないが、例えば、ゲッ齒類および霊長類配列等の他の生物からの配列を含む、他の配列が比較される「基本」配列として使用される。免疫グロブリンは、IgA、IgE、IgGD、IgG等の、他の免疫グロブリンクラスからの配列も含む。本明細書に開示されるFc変異体は、1つの親IgGと関連して操作されるが、変異体は、別の第2の親IgGと関連して、またはそれに「移行」されてもよいものとする。これは、典型的には、第1と第2のIgGとの配列間の配列または構造相同性に基づき、第1と第2のIgGとの間の「等価の」または「対応する」残基および置換を決定することにより行われる。相同性を確立するために、本明細書に概説する第1のIgGのアミノ酸配列は、第2のIgGの配列と直接比較される。配列を整列させた後、当該分野で知られている相同性整列プロブラムの1つ以上を使用し(例えば、種属間の保存残基を使用し)、整列を維持するために必要な挿入および欠失をすることにより(すなわち、恣意の欠失および挿入を通して、保存残基の排除を避ける)、第1の免疫グロブリンの一次配列における特定のアミノ酸に等価な残基が定義される。保存残基の整列は、そのような残基の100%を保存し得る。しかしながら、75%を超える、またはわずかに50%の保存残基の整列も、等価残基を定義するのに十分である。等価残基は、構造が決定されたIgGの三次構造のレベルである、第1と第2のIgGとの間の構造的相同性を決定することにより定義されてもよい。この場合、等価残基は、親または前駆体の特定のアミノ酸残基の主鎖原子の2つ以上の原子座標(N上にN、CA 上にCA、C上にC、およびO上にO)が、整列後、約0.13nm以内であるものと定義される。別の実施形態において、等価残基は、整列後、約0.1nm以内である。整列は、最良のモデルが、タンパク質の非水素タンパク原子の原子座標の最大重複を与えるように配向され、位置付けられた後に、達成される。等価または対応する残基がどのように決定されるかに関わらず、また、IgGが作製される親IgGの同一性に関わらず、本明細書に開示される、発見されたFc変異体は、Fc変異体と有意な配列または構造的相
同性を有する、あらゆる第2の親IgGに操作されてもよいということである。したがって、例えば、等価残基を決定するための上述の方法、または他の方法を使用することにより、親抗体がヒトIgG1である、変異体抗体が生成される場合、変異体抗体は、異なる抗原、ヒトIgG2親抗体、ヒトIgA親抗体、マウスIgG2aまたはIgG2b親抗体等に結合する、別のIgG1親抗体に操作されてもよい。また、上述のように、親Fc変異体の構成は、本明細書に開示されるFc変異体を、他の親IgGに移行する能力に影響を及ぼさない。
【0120】
本明細書に開示されるFc変異体は、種々のFc受容体結合特性のために最適化され得る。1つ以上の最適化された特性を示すように操作される、または予測されるFc変異体は、本明細書において、「最適化されたFc変異体」と称される。最適化され得る特性は、限定されないが、FcγRに対して強化または低減される親和性を含む。一実施形態において、本明細書に開示されるFc変異体は、阻害受容体FcγRIIbに対して強化された親和性を有するように最適化される。他の実施形態において、本明細書に開示される免疫グロブリンは、FcγRIIbに対して強化された親和性を提供するが、例えば、FcγRI、FcγRIIa、FcγRIIIa、および/またはFcγRIIIbを含む、1つ以上の活性化FcγRに対して低減された親和性を提供する。FcγR受容体は、これらに限定されないが、ヒト、カニクイザル、およびマウスを含む、任意の生物からの細胞上で発現されてもよい。本明細書に開示されるFc変異体は、ヒトFcγRIIbに対して強化された親和性を有するように最適化されてもよい。
【0121】
本明細書で使用される、親Fcポリペプチドより「大きな親和性」、もしくは「改善された親和性」、もしくは「強化された親和性」、もしくは「良好な親和性」とは、結合アッセイの変異体および親ポリペプチドの量が、基本的に同じである時、Fc変異体が、親Fcポリペプチドより有意に高い会合平衡定数(K もしくはKa)、または低い解離平衡定数(KもしくはKd)で、Fc受容体に結合することを意味する。例えば、改善されたFc受容体結合親和性を有するFc変異体は、受容体結合親和性が、例えば、限定されないが、Biacoreを含む、本明細書に開示される結合方法によって、当業者により決定される、親Fcポリペプチドと比較したFc受容体結合親和性において、約5倍〜約1000倍、例えば、約10倍〜約500倍の改善を示し得る。したがって、本明細書で使用される、親ポリペプチドと比較して「低減された親和性」とは、Fc変異体が、親Fcポリペプチドより有意に低いKまたは高いKで、Fc受容体に結合することを意味する。より大きいまたは低減された親和性は、親和性の絶対レベルに対しても定義され得る。例えば、本明細書のデータによると、野生型(自然)IgG1は、約2mM、または約2000nMの親和性で、FcγRIIbに結合する。さらに、本明細書に記載されるいくつかのFc変異体は、野生型IgG1の約10倍を上回る親和性で、FcγRIIbに結合する。本明細書に開示される、大きな、または強化された親和性とは、約100nMより低い、例えば、約10nM 〜約100nMの間、約1〜約100nMの間、または約1nM未満のKを有することを意味する。
【0122】
本発明の抗IgE抗体は、好ましくは、FcγRIIbに対して高い親和性を有する。本明細書において、高い親和性とは、抗体とFcγRIIbとの間の相互作用の親和性が、100nMより強いことを意味する。つまり、抗体のFcγへの結合に対する平衡解離定数Kdは、100nMより低い。
【0123】
一実施形態において、Fc変異体は、1つ以上の活性化受容体に対して、FcγRIIbに対して選択的に強化された親和性を提供する。選択的に強化された親和性とは、Fc変異体が、親Fcポリペプチドと比較して、活性化受容体に対してFcγRIIbに改善された親和性を有するが、親Fcポリペプチドと比較して、活性化受容体に対して低減された親和性を有するか、またはFc変異体が、親Fcポリペプチドと比較して、FcγRIIbおよび活性化受容体の両方に改善された親和性を有するが、親和性の改善は、活性化受容体に対してよりFcγRIIbに対しての方が大きいことかのいずれかを意味する。代替の実施形態において、Fc変異体は、1つ以上の活性化FcγRへの結合を低減もしくは切断する、1つ以上の補体タンパク質への結合を低減もしくは切断する、1つ以上のFcγR媒介エフェクター機能を低減もしくは切断する、および/または1つ以上の補体媒介エフェクター機能を低減もしくは切断する。
【0124】
FcγRの異なる多型形態の存在は、本明細書に開示されるFc変異体の治療有用性に影響を与える、また別のパラメータを提供する。FcγRの異なるクラスに対する所与のFc変異体の特異性および選択性は、Fc変異体が、所与の疾患の治療のための所与の抗原を標的とする能力に有意に影響を及ぼすが、これらの受容体の異なる多型形態に対するFc変異体の特異性または選択性は、研究または前臨床実験が、検査に適切であってもよいか、そして最終的に、どの患者集団が治療に反応する可能性があるかないかを、部分的に決定し得る。したがって、これらに限定されないが、FcγRIIa、FcγRIIIa等を含む、Fc受容体多型に対する、本明細書に開示されるFc変異体の特異性または選択性は、有効な研究および前臨床実験の選択、臨床試験のデザイン、患者の選択、用量依存性、および/または臨床試験に関わる他の態様を導くために使用され得る。
【0125】
本明細書に開示されるFc変異体は、これらに限定されないが、補体タンパク質、FcRn、およびFc受容体ホモログ(cRH)を含む、FcγR以外のFc受容体との相互作用を調節する修飾を含んでもよい。FcRHは、これらに限定されないが、FcRH1、FcRH2、FcRH3、FcRH4、FcRH5、およびFcRH6を含む(Davis et al.,2002,Immunol.Reviews 190:123−136)。
【0126】
所与の疾患を治療するための、所与のFc変異体の最も有益な選択を決定する重要なパラメータは、Fc変異体の構成である。したがって、所与のFc変異体のFc受容体選択性または特異性は、抗体、Fc融合物、または融合パートナーと結合したFc変異体を構成するかによって、異なる特性を提供する。一実施形態において、本明細書に開示されるFc変異体のFc受容体特異性は、その治療有用性を決定する。治療目的の所与のFc変異体の有用性は、標的抗原のエピトープもしくは形態、および治療される疾患または徴候に依存する。いくつかの標的および徴候において、より大きなFcγRIIb親和性、および低減された活性化FcγR媒介エフェクター機能が、有益であり得る。他の標的抗原および治療用途において、FcγRIIbに対する親和性を増加する、または FcγRIIbおよび活性化受容体の両方に対する親和性を増加することが有益であり得る。
【0127】
抗IgE抗体の活性を最適化するための手段
【0128】
1つ以上のFcγRへの親和性を変更するための手段を本明細書に記載する。好適な実施形態において、親和性は、阻害受容体FcγRIIbに対して変更され、これによって、免疫グロブリンが、1つ以上のFcγRIIb媒介性阻害エフェクター機能を媒介する能力を変更する。本発明の手段は、アミノ酸修飾(例えば、機能最適化のための位置的手段、機能最適化のための置換手段等)、およびグリコフォーム修飾(例えば、グリコフォーム修飾のための手段)を含む。
【0129】
アミノ酸修飾
【0130】
アミノ酸修飾を含む免疫グロブリンを本明細書に開示し、該修飾は、1つ以上のFcγRへの親和性を変更する。好ましくは、該アミノ酸修飾は、FcγRIIbへの親和性を改善する。しかしながら、いくつかの実施形態において、修飾は、1つ以上の活性化受容体、例えば、FcγRI、FcγRIIa、およびFcγRIIIaへの親和性を改善してもよい。FcγRへの結合を変更するための修飾は、「Optimized Fc Variants」の表題で、2005年5月5日に出願されたUSSN第11/124,620号、および「Methods and Compositions for Inhibiting CD32b Expressing Cells」の表題で、2008年5月30日に出願されたUSSN第12/156,183号に記載されており、ともに、参照により本明細書に明示的に援用される。
【0131】
本明細書に記載される、抗IgE抗体の活性を最適化するための位置的手段は、免疫グロブリンFcγRIIb結合特性、エフェクター機能、および抗体の潜在的な臨床特性の修飾を可能にする、1つ以上の重鎖定常領域位置(例えば、位置:234、235、236、237、239、265、266、267、268、298、325、326、327、328、329、330、331、および332)でのアミノ酸の修飾を含むが、これに限定されない。
【0132】
特に、例えば、FcγRIIbへの親和性を変更することにより、抗IgE抗体の活性を最適化するための置換手段は、限定されないが、1つ以上の重鎖定常領域位置でのアミノ酸の置換、例えば、次の重鎖定常領域位置:234、235、236、237、239、265、266、267、268、298、325、326、327、328、329、330、331、および332での、1つ以上のアミノ酸置換を含み、付番は、EU指標に従う。一実施形態において、置換手段は、親Fc領域と比較して、少なくとも1つ(例えば、2つ以上)の置換を含み、該修飾は、EU指標に従う、234、235、236、237、239、266、267、268、325、326、327、328、および332からなる群から選択される位置である。一実施形態において、置換手段は、EU指標に従う、235、236、239、266、267、268、および328からなる群から選択される位置での1つ以上(例えば、2つ以上)の置換を含む。
【0133】
一実施形態において、該置換手段は、234F、234G、234I、234K、234N、234P、234Q、234S、234V、234W、234Y、234D、234E、235A、235E、235H、235I、235N、235P、235Q、235R、235S、235W、235Y、235D、235F、235T、236D、236F、236H、236I、236K、236L、236M、236P、236Q、236R、236S、236T、236V、236W、236Y、236A、236E、236N、237A、237E、237H、237K、237L、237P、237Q、237S、237V、237Y、237D、237N、239D、239E、239N、239Q、265E、266D、266I、266M、267A、267D、267E、267G、268D、268E、268N、268Q、298D、298E、298L、298M、298Q、325L、326A、326E、326W、326D、327D、327G、327L、327N、327Q、327E、328E、328F、328Y、328H、328I、328Q、328W、329E、330D、330H、330K、330S、331S、および332Eからなる群から選択される、少なくとも1つの置換(例えば、1つ以上の置換、2つ以上の置換等)であり、付番は、EU指標に従う。一実施形態において、該置換手段は、234N、234F、234D、234E、234W、235Q、235R、235W、235Y、235D、235F、235T、236D、236H、236I、236L、236S、236Y、236E、236N、237H、237L、237D、237N、239D、239N、239E、266I、266M、267A、267D、267E、267G、268D、268E、268N、268Q、298E、298L、298M、298Q、325L、326A、326E、326W、326D、327D、327L、327E、328E、328F、328Y、328H、328I、328Q、328W、330D、330H、330K、および332Eからなる群から選択される、少なくとも1つの置換(例えば、1つ以上の置換、2つ以上の置換等)であり、付番は、EU指標に従う。一実施形態において、該置換手段は、2
34D、234E、234W、235D、235F、235R、235Y、236D、236N、237D、237N、239D、239E、266M、267D、267E、268D、268E、327D、327E、328F、328W、328Y、および332Eからなる群から選択される、少なくとも1つの置換(例えば、1つ以上の置換、2つ以上の置換等)であり、付番は、EU指標に従う。一実施形態において、該置換手段は、235Y、236D、239D、266M、267E、268D、268E、328F、328W、および328Yからなる群から選択される、少なくとも1つの置換(例えば、1つ以上の置換、2つ以上の置換等)であり、付番は、EU指標に従う。
【0134】
一実施形態において、該置換手段は、234/239、234/267、234/328、235/236、235/239、235/267、235/268、235/328、236/239、236/267、236/268、236/328、237/267、239/267、239/268、239/327、239/328、239/332、266/267、267/268、267/325、267/327、267/328、267/332、268/327、268/328、268/332、326/328、327/328、および328/332からなる群から選択される位置での、少なくとも2つの置換(例えば、修飾の組み合わせ)であり、付番は、EU指標に従う。一実施形態において、該置換手段は、235/267、236/267、239/268、239/267、267/268、および267/328からなる群から選択される位置での、少なくとも2つの置換(例えば、修飾の組み合わせ)であり、付番は、EU指標に従う。一実施形態において、該置換手段は、234D/267E、234E/267E、234F/267E、234E/328F、234W/239D、234W/239E、234W/267E、234W/328Y、235D/267E、235D/328F、235F/239D、235F/267E、235F/328Y、235Y/236D、235Y/239D、235Y/267D、235Y/267E、235Y/268E、235Y/328F、236D/239D、236D/267E、236D/268E、236D/328F、236N/267E、237D/267E、237N/267E、239D/267D、239D/267E、239D/268D、239D/268E、239D/327D、239D/328F、239D/328W、239D/328Y、239D/332E、239E/267E、266M/267E、267D/268E、267E/268D、267E/268E、267E/325L、267E/327D、267E/327E、267E/328F、267E/328I、267E/328Y、267E/332E、268D/327D、268D/328F、268D/328W、268D/328Y、268D/332E、268E/328F、268E/3
28Y、327D/328Y、328F/332E、328W/332E、および328Y/332Eからなる群から選択される、少なくとも2つの置換(例えば、置換の組み合わせ)であり、付番は、EU指標に従う。
【0135】
一実施形態において、該置換手段は、次の置換の少なくとも1つ、または置換の組み合わせ:234F/236N、234F/236D、236A/237A、236S/237A、235D/239D、234D/267E、234E/267E、234F/267E、235D/267E、235F/267E、235S/267E、235T/267E、235Y/267D、235Y/267E、236D/267E、236E/267E、236N/267E、237D/267E、237N/267E、239D/267D、239D/267E、266M/267E、234E/268D、236D/268D、239D/268D、267D/268D、267D/268E、267E/268D、267E/268E、267E/325L、267D/327D、267D/327E、267E/327D、267E/327E、268D/327D、239D/328Y、267E/328F、267E/328H、267E/328I、267E/328Q、267E/328Y、268D/328Y、239D/332E、328Y/332E、234D/236N/267E、235Y/236D/267E、234W/239E/267E、235Y/239D/267E、236D/239D/267E、235Y/267E/268E、236D/267E/268E、239D/267E/268E、234W/239D/328Y、235F/239D/328Y、234E/267E/328F、235D/267E/328F、235Y/267E/328F、236D/267E/328F、239D/267A/328Y、239D/267E/328F、234W/268D/328Y、235F/268D/328Y、239D/268D/328F、239D/268D/328W、239D/268D/328Y、239D/268E/328Y、267A/268D/328Y、267E/268E/328F、239D/326D/328Y、268D/326D/328Y、239D/327D/328Y、268D/327D/328Y、239D/267E/332E、234W/328Y/332E、235F/328Y/332E、239D/328F/332E、239D/328Y/332E、267A/328Y/332E、2
68D/328F/332E、268D/328W/332E、268D/328Y/332E、268E/328Y/332E、326D/328Y/332E、327D/328Y/332E、234W/236D/239E/267E、239D/268D/328F/332E、239D/268D/328W/332E、および239D/268D/328Y/332Eをもたらし、付番は、EU指標に従う。一実施形態において、該置換手段は、次の置換の少なくとも1つ、または置換の組み合わせ:266D、234F/236N、234F/236D、236A/237A、236S/237A、235D/239D、234D/267E、234E/267E、234F/267E、235D/267E、235F/267E、235S/267E、235T/267E、235Y/267D、236D/267E、236E/267E、236N/267E、237D/267E、237N/267E、266M/267E、234E/268D、236D/268D、267D/268D、267D/268E、267E/268D、267E/268E、267E/325L、267D/327D、267D/327E、267E/327E、268D/327D、239D/328Y、267E/328F、267E/328H、267E/328I、267E/328Q、267E/328Y、268D/328Y、234D/236N/267E、235Y/236D/267E、234W/239E/267E、235Y/239D/267E、236D/239D/267E、235Y/267E/268E、236D/267E/268E、234W/239D/328Y、235F/239D/328Y、234E/267E/328F、235D/267E/328F、235Y/267E/328F、236D/267E/328F、239D/267A/328Y、239D/267E/328F、234W/268D/328Y、235F/268D/328Y、239D/268D/328F、239D/268D/328W、239D/268D/328Y、239D/268E/328Y、267A/268D/328Y、267E/268E/328F、239D/326D/328Y、268D/326D/328Y、239D/327D/328Y、268D
/327D/328Y、234W/328Y/332E、235F/328Y/332E、239D/328F/332E、239D/328Y/332E、267A/328Y/332E、268D/328F/332E、268D/328W/332E、268D/328Y/332E、268E/328Y/332E、326D/328Y/332E、327D/328Y/332E、234W/236D/239E/267E、239D/268D/328F/332E、239D/268D/328W/332E、および239D/268D/328Y/332Eをもたらし、付番は、EU指標に従う。一実施形態において、該置換手段は、次の置換の少なくとも1つ、または置換の組み合わせ:234N、235Q、235R、235W、235Y、236D、236H、236I、236L、236S、236Y、237H、237L、239D、239N、266I、266M、267A、267D、267E、267G、268D、268E、268N、268Q、298E、298L、298M、298Q、326A、326E、326W、327D、327L、328E、328F、330D、330H、330K、234F/236N、234F/236D、235D/239D、234D/267E、234E/267E、234F/267E、235D/267E、235F/267E、235T/267E、235Y/267D、235Y/267E、236D/267E、236E/267E、236N/267E、237D/267E、237N/267E、239D/267D、239D/267E、266M/267E、234E/268D、236D/268D、239D/268D、267D/268D、267D/268E、267E/268D、267E/268E、267E/325L、267D/327D、267D/327E、267E/327D、267E/327E、268D/327D、239D/328Y、267E/328F、267E/328H、267E/328I、267E/328Q、267E/328Y、268D/328Y、239D/332E、328Y/332E、234D/236N/267E、235Y/236D/267E、234W/239E/267E、235Y/239D/267E、236D/239D/267E、23
5Y/267E/268E、236D/267E/268E、239D/267E/268E、234W/239D/328Y、235F/239D/328Y、234E/267E/328F、235D/267E/328F、235Y/267E/328F、236D/267E/328F、239D/267A/328Y、239D/267E/328F、234W/268D/328Y、235F/268D/328Y、239D/268D/328F、239D/268D/328W、239D/268D/328Y、239D/268E/328Y、267A/268D/328Y、267E/268E/328F、239D/326D/328Y、268D/326D/328Y、239D/327D/328Y、268D/327D/328Y、239D/267E/332E、234W/328Y/332E、235F/328Y/332E、239D/328F/332E、239D/328Y/332E、267A/328Y/332E、268D/328F/332E、268D/328W/332E、268D/328Y/332E、268E/328Y/332E、326D/328Y/332E、327D/328Y/332E、234W/236D/239E/267E、239D/268D/328F/332E、239D/268D/328W/332E、および239D/268D/328Y/332Eをもたらす。
【0136】
一実施形態において、該置換手段は、次の置換の少なくとも1つ、または置換の組み合わせ:235Y/267E、236D/267E、239D/268D、239D/267E、267E/268D、267E/268E、および267E/328Fをもたらし、付番は、EU指標に従う。
【0137】
本発明のいくつかの実施形態において、免疫グロブリンは、イソタイプの修飾、つまり、親IgGの別のIgGのアミノ酸タイプへの修飾のための手段を含んでもよい。例えば、IgG1/IgG3ハイブリッド変異体は、2つのイソタイプが異なる位置で、CH2および/またはCH3領域のIgG1位置をIgG3からのアミノ酸と置換するための置換手段によって構築されてもよい。したがって、1つ以上の置換手段、例えば、274Q、276K、300F、339T、356E、358M、384S、392N、397M、422I、435R、および436Fを含む、ハイブリッド変異体IgG抗体が、構築されてもよい。本発明の他の実施形態において、IgG1/IgG2ハイブリッド変異体は、2つのイソタイプが異なる位置で、CH2および/またはCH3領域のIgG2を、IgG1からのアミノ酸と置換するための置換手段によって構築されてもよい。したがって、1つ以上の置換手段、例えば、次のアミノ酸置換:233E、234L、235L、−236G(位置236での、グリシンの挿入を指す)、および327Aの1つ以上を含む、ハイブリッド変異体gG抗体が、構築されてもよい。
【0138】
グリコフォーム修飾
【0139】
抗体を含む多くのポリペプチドは、オリゴ糖とのグリコシル化等の糖鎖を含む、種々の翻訳後修飾を受ける。グリコシル化に影響を与えることができるいくつかの要因が存在する。種属、組織および細胞型は全て、グリコシル化がどのように生じるかにおいて重要であることが示されている。加えて、血清濃度等の培養条件の変更を通して、細胞外環境は、グリコシル化に直接的な影響を与える(Lifely et al.,1995,Glycobiology 5(8):813−822)。
【0140】
全ての抗体は、重鎖の定常領域の保存位置で糖を含有する。各抗体のイソタイプは、明確な種々のN結合型糖構造を有する。重鎖に結合される糖とは別に、ヒトIgGの最大30%は、グリコシル化Fab領域を有する。IgGは、CH2ドメインのAsn297で、単一結合型二触角性糖を有する。血清からか、またはハイブリドーマまたは操作された細胞で細胞外生成される、いずれのIgGにおいても、IgGは、Asn297結合型糖に関して異種である(Jefferis et al.,1998,Immunol.Rev.163:59−76、Wright et al.,1997,Trends Biotech 15:26−32)。ヒトIgGにおいて、コアオリゴ糖は、通常、異なる数の外側残基を有する、GlcNAcManGlcNAcからなる。
【0141】
本明細書に開示される免疫グロブリンの糖鎖は、オリゴ糖の説明に通常使用される命名法を参照して説明される。この命名法を使用する糖化学の総説は、Hubbard et al.1981,Ann.Rev.Biochem.50:555−583に見られる。この命名法は、例えば、マンノースを表すMan、2−N−アセチルグリコサミンを表すGlcNAc、ガラクトースを表すGal、フコースを表すFuc、およびグルコースを表すGlcを含む。シアル酸は、5−N−アセチルノイラミン酸についてはNeuNAc、および5−グルコリルノイラミン酸についてはNeuNGcの省略標記によって記載される。
【0142】
「グリコシル化」とは、オリゴ糖(2つ以上の単糖の連結、例えば、2〜約12の単糖の連結を含有する糖)の糖タンパク質への結合を意味する。オリゴ糖測鎖は、典型的に、NまたはO結合のいずれかを通して、糖タンパク質の骨格に連結される。本明細書に開示される免疫グロブリンのオリゴ糖は、一般的に、N結合型オリゴ糖としてFc領域のCH2ドメイに結合される。「N結合型グリコシル化」とは、糖タンパク質鎖における、糖鎖のアスパラギン残基への結合を指す。当業者は、例えば、マウスIgG1、IgG2a、IgG2b、および IgG3のそれぞれ、ならびにヒトIgG1、IgG2、IgG3、IgG4、IgA、およびIgD CH2ドメインが、アミノ酸残基297で、N結合型グリコシル化のための単一部位を有することを認識するであろう(Kabat et al.Sequences of Proteins of Immunological Interest,1991)。
【0143】
本明細書の目的において、「成熟型コア糖構造」とは、一般的に、二触角性オリゴ糖に典型的な、次の糖構造:GlcNAc(Fucose)−GlcNAc−Man−(Man−GlcNAc)からなる、Fc領域に結合される処理されたコア糖構造を指す。成熟型コア糖構造は、一般的に、Fc領域のCH2ドメインのAsn297へのN結合を介して、糖タンパク質のFc領域に結合される。「二分GlcNAc」とは、成熟型コア糖構造のb1,4マンノースに結合されるGlcNAc残基である。二分GlcNAcは、b(1,4)−N−アセチルグルコサミン転移酵素III酵素(GnTIII)により、酵素的に成熟型コア糖構造に結合され得る。CHO細胞は、通常、GnTIIIを発現しないが (Stanley et al.,1984,J.Biol.Chem.261:13370−13378)、そのように操作することができる(Umana et al.,1999, Nature Biotech.17:176−180)。
【0144】
修飾されたグリコフォームまたは操作されたグリコフォームを含むFc変異体を、本明細書で説明する。本明細書で使用される、「修飾されたグリコフォーム」、または「操作されたグリコフォーム」とは、タンパク質、例えば、抗体に共有結合的に結合される糖組成物を意味し、該糖組成物は、親タンパク質のそれと化学的に異なる。操作されたグリコフォームは、これらに限定されないが、FcγR媒介性エフェクター機能の強化または低減を含む、種々の目的に有用であり得る。一実施形態において、本明細書に開示される免疫グロブリンは、Fc領域に共有結合的に結合される、フコシル化および/または二分オリゴ糖のレベルを制御するように修飾される。
【0145】
修飾されたグリコフォームを生成するための種々の方法は、当該分野において周知である(Umana et al.,1999,Nat Biotechnol 17:176−180、Davies et al.,2001,Biotechnol Bioeng 74:288−294、Shields et al.,2002,J Biol Chem 277:26733−26740、Shinkawa et al.,2003,J Biol Chem 278:3466−3473)、(US6,602,684、USSN第10/277,370号、USSN第10/113,929号、PCT国際公開第00/61739A1号、PCT国際公開第01/29246A1号、PCT国際公開第02/31140A1号、PCT国際公開第02/30954A1号)、(Potelligent(登録商標)technology[Biowa, Inc.,Princeton,NJ]、GlycoMAb(登録商標)glycosylation engineering technology[GLYCART biotechnology AG,Zurich,Switzerland]、参照により全てが明示的に援用される)。これらの技法は、例えば、操作された、種々の生物または細胞株(例えば、Lec−13CHO細胞、またはラットハイブリドーマYB2/0細胞)でIgGを発現させることにより、さもさければ、グリコシル化経路に関与する酵素(例えば、FUT8[α1,6−フコシル基転移酵素]および/またはβ1−4−N−アセチルグルコサミン転移酵素III[GnTIII])を調節することにより、またはIgGが発現した後に、糖(類)を修飾することにより、Fc領域に共有結合的に結合される、フコシル化および/または二分オリゴ糖のレベルを制御する。本明細書に開示される免疫グロブリンのグリコフォームを修飾するための他の方法は、糖操作された酵母株(Li et al.,2006,Nature Biotechnology 24(2):210−215)、蘚類(Nechansky et al.,2007,Mol Immunjol 44(7):1826−8)、および植物(Cox et al.,2006,Nat Biotechnol 24(12):1591−7)の使用を含む。修
飾されたグリコフォームを生成するための特定の方法の使用は、その方法に実施形態を制限するものではない。むしろ、本明細書に開示される実施形態は、それらがどのように生成されるかに関係なく、修飾されたグリコフォームを伴うFc変異体を包含する。
【0146】
一実施形態において、本明細書に開示される免疫グロブリンは、シアル化のレベルを変更するために、糖操作される。免疫グロブリンG分子における、高レベルのシアル化Fcグルカンは、機能性に悪影響を与える可能性があり(Scallon et al., 2007,Mol Immunol.44(7):1524−34)、Fcシアル化のレベルの相違は、変更された抗炎症性活性をもたらす可能性がある(Kaneko et al.,2006,Science 313:670−673)。抗体は、Fcコア多糖のシアル化の際に抗炎症性特性を取得し得るため、Fcシアル酸含有量の増加または低減のために、本明細書に開示される免疫グロブリンを糖操作することは、有益であり得る。
【0147】
操作されたグリコフォームは、典型的に、異なる糖またはオリゴ糖を指し、したがって、例えば、免疫グロブリンは、操作されたグリコフォームを含み得る。代替的に、操作されたグリコフォームは、異なる糖またはオリゴ糖を含む免疫グロブリンを指す場合がある。一実施形態において、本明細書に開示される組成物は、Fc領域を有するグリコシル化Fc変異体を含み、グリコシル化抗体の約51〜100%、例えば、組成物中の抗体の約80〜100%、90〜100%、95〜100%等は、フコースを欠失する、成熟型コア糖構造を含む。別の実施形態において、組成物中の抗体は、フコースを欠失する成熟型コア糖構造を含み、さらに、Fc領域に少なくとも1つのアミノ酸修飾を含む、両方である。代替の実施形態において、組成物は、Fc領域を有するグリコシル化Fc変異体を含み、約51〜100%のグリコシル化抗体、例えば、組成物中の抗体の約80〜100%または90〜100%は、シアル酸を欠失する、成熟型コア糖構造を含む。別の実施形態において、組成物中の抗体は、シアル酸を欠失する成熟型コア糖構造を含み、さらに、Fc領域に少なくとも1つのアミノ酸修飾を含む、両方である。また別の実施形態において、組成物は、Fc領域を有するグリコシル化Fc変異体を含み、グリコシル化抗体の約51〜100%、例えば、組成物中の抗体の約80〜100%または90〜100%は、シアル酸を含有する、成熟型コア糖構造を含む。別の実施形態において、組成物中の抗体は、シアル酸を含有する成熟型コア糖構造を含み、さらに、Fc領域に少なくとも1つのアミノ酸修飾を含む、両方である。別の実施形態において、操作されたグリコフォームとアミノ酸修飾の組み合わせは、抗体に最適なFc受容体結合特性を提供する。
【0148】
他の修飾
【0149】
本明細書に開示される免疫グロブリンは、FcγRまたは補体媒介性機能自体に特に関連しない、最適化された特性を提供する1つ以上の修飾を含んでもよい。該修飾は、アミノ酸修飾であるか、または酵素的に、もしくは化学的に行われる修飾であってもよい。このような修飾は、例えば、その安定性、溶解性、または臨床使用の強化等の、免疫グロブリンのある程度の改善を提供する可能性がある。本明細書に開示される免疫グロブリンをさらなる修飾と結合することにより行わせてもよい、種々の改善を本明細書に開示する。
【0150】
一実施形態において、本明細書に開示される抗体の可変領域は、親和性成熟することができる、つまり、アミノ酸修飾が、抗体のその標的抗原への結合を強化するように、抗体のVHおよび/またはVLドメインで行われ得る。このような種類の修飾は、標的抗原への結合の会合および/または解離動態を改善し得る。他の修飾は、代替標的に対する、標的抗原への選択性を改善するものを含む。これらは、非標的細胞に対して、標的上で発現する抗原への選択性を改善する修飾を含む。標的認識特性に対する他の改善は、さらなる修飾によって提供され得る。このような特性は、これらに限定されないが、特定の動態特性(すなわち、会合および解離動態)、代替標的に対する、特定の標的への選択性、および代替形態に対する、特定の標的形態への選択性を含んでもよい。例としては、完全長に対してスプライス変異体、細胞表面に対して可溶性形態、種々の多型変異体の選択性、または標的抗原の特定の立体構造形態が挙げられる。本明細書に開示される免疫グロブリンは、免疫グロブリンの内在化の低減または強化を提供する、1つ以上の修飾を含んでもよい。
【0151】
一実施形態において、修飾は、これらに限定されないが、安定性、溶解性、およびオリゴマー状態を含む、本明細書に開示される免疫グロブリンの生物物理学的特性を改善するように行われる。修飾は、例えば、より高い安定性を提供するように、免疫グロブリンのより好適な分子内相互作用を提供する置換、または高溶解性のために、露出非極性アミノ酸の極性アミノ酸との置換を含むことができる。本明細書に開示される免疫グロブリンに対する他の修飾は、特定の構造、またはホモ二量体もしくはホモ多量体分子を可能にするものを含む。このような修飾は、これらに限定されないが、操作されたジスルフィド、ならびに共有結合性ホモ二量体もしくはホモ多量体を生成するための機構を提供し得る、化学的修飾または集合法を含む。本明細書に開示される変異体に対するさらなる修飾は、特定の構造、またはヘテロ二量体、ヘテロ多量体、二機能性、および/もしくは多機能性分子を可能にするものを含む。このような修飾は、限定されないが、置換がホモ二量体の形成を低減し、ヘテロ二量体形成を増加する、CH3ドメインにおける1つ以上のアミノ酸置換を含む。さらなる修飾は、修飾が二量体を形成する傾向を低減する、ヒンジおよびCH3ドメインにおける修飾を含む。
【0152】
さらなる実施形態において、本明細書に開示される免疫グロブリンは、タンパク質分解部位を除去する修飾を含む。これらは、例えば、生産収量を低減するプロテアーゼ部位、ならびに生体内投与タンパク質を分解するプロテアーゼを含み得る。一実施形態において、さらなる修飾は、脱アミド(すなわち、グルタミニルおよびアスパラギニル残基の対応するグルタミルおよびアスパルチル残基への脱アミド)、酸化、およびタンパク質分解部位等の、共有結合分解部位を除去するように行われる。除去に特に有用である脱アミド部位は、これらに限定されないが、グリシンが続く、アスパラギニルおよびグルタミル(gltuamyl)残基、(それぞれ、NGおよびQGモチーフ)を含む、脱アミドの傾向を強化するものである。このような場合、いずれの残基の置換も、脱アミドの傾向を有意に低減することができる。一般的な酸化部位は、メチオニンおよびシステイン残基を含む。導入または除去され得る他の共有結合性修飾は、プロリンおよびリジンのヒドロキシル化、セリルまたはスレオニル残基のヒドロキシル基のリン酸化、リジン、アルギニン、およびヒスチジン測鎖の”−アミノ基のメチル化(T.E.Creighton,Proteins:Structure and Molecular Properties, W.H. Freeman & Co.,San Francisco,pp.79−86(1983)、参照によりその全体が援用される)、N末端アミンのアセチル化、および任意のC末端カルボキシル基のアミド化 を含む。さらなる修飾は、限定されないが、N結合型またはO結合型グリコシル化およびリン酸化等の、翻訳後修飾も含み得る。
【0153】
修飾は、生物学の産生に通常使用される、宿主または宿主細胞から得られる発現および/または精製収量を改善するものを含んでもよい。これらは、これらに限定されないが、種々の哺乳類細胞株(例えば、CHO)、酵母細胞株、バクテリア細胞、および植物を含む。さらなる修飾は、重鎖が、鎖間ジスルフィド結合を形成する能力を除去する、または低減する修飾を含む。さらなる修飾は、重鎖が、鎖内ジスルフィド結合を形成する能力を除去する、または低減する修飾を含む。
【0154】
本明細書に開示される免疫グロブリンは、例えば、限定されないが、全てが参照によりその全体が援用される、Cropp & Shultz,2004,Trends Genet.20(12):625−30、Anderson et al.,2004,Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A.101(2):7566−71、Zhang et al.,2003,303(5656):371−3、およびChin et al.,2003,Science 301(5635):964−7に記載される方法を含む、Schultzおよび共同研究者により開発された技術を使用して組み込まれた、非天然アミノ酸の使用を含む修飾を含んでもよい。いくつかの実施形態において、これらの修飾は、上述の種々の機能的、生物物理学的、免疫学的、または製造特性の操作を可能にする。さらなる実施形態において、これらの修飾は、他の目的のために、さらなる化学修飾を可能にする。他の修飾が、本明細書において企図される。例えば、免疫グロブリンは、例えば、ポリエチレングリコール(PEG)、ポリプロピレングリコール、ポリオキシアルキレン、またはポリエチレングリコールとポリプロピレングリコールとの共重合体等の、種々の非タンパク質性重合体の1つに連結されてもよい。さらなるアミノ酸修飾は、免疫グロブリンの特異的または非特異的な化学修飾もしくは翻訳後修飾を可能にするように行われてもよい。このような修飾は、これらに限定されないが、ペグ化およびグリコシル化を含む。ペグ化を可能にするように利用され得る特異的置換は、これらに限定されないが、効率的かつ特異的なカップリング化学法が、PEGか、さもなければ重合体部分を結合するために使用され得るような、新規システイン残基または非天然アミノ酸の導入を含む。特定のグリコシル化部位の導入は、新規N−X−T/S配列を本明細書に開示される免疫グロブリンに導入することにより、達成され得る。
【0155】
免疫原性を低減するための修飾は、親配列由来の処理されたペプチドのMHCタンパク質への結合を低減する修飾を含んでもよい。例えば、アミノ酸修飾は、任意の一般的なMHC対立遺伝子を高親和性で結合することが予測される免疫エピトープが存在しないか、または最小数であるように操作されるだろう。タンパク質配列におけるMHC結合型エピトープの同定のいくつかの方法は、当該分野で知られており、本明細書に開示される抗体のエピトープをスコアするために使用されてもよい。例えば、参照により全てが明示的に援用される、USSN第09/903,378号、USSN第10/754,296号、USSN第11/249,692号、およびそこに引用される参考文献を参照のこと。
【0156】
いくつかの実施形態において、本明細書に開示される免疫グロブリンは、FcRn結合を変更する免疫グロブリンと組み合わされてもよい。このような変異体は、免疫グロブリンに改善された薬物動態特性を提供し得る。FcRnへの結合を増加する、および/または薬物動態特性を改善する好適な変異体は、これらに限定されないが、例えば、259I、308F、428L、428M、434S、434H、434F、434Y、および434Mを含む、位置259、308、428、および434での置換を含むが、これらに限定されない(「Fc Variants with Alterned Binding to FcRn」の表題で、2008年12月22日に出願されたPCT/US第2008/088053号、参照によりその全体が援用される)。FcのFcRnへの結合を増加する他の変異体は、これらに限定されないが、250E、250Q、428L、428F、250Q/428L(Hinton et al.,2004,J.Biol.Chem.279(8): 6213−6216, Hinton et al. 2006 Journal of Immunology 176:346−356)、256A、272A、286A、305A、307A、311A、312A、376A、378Q、380A、382A、434A(Shields et al,Journal of Biological Chemistry, 2001,276(9):6591−6604、参照によりその全体が援用される)、252F、252T、252Y、252W、254T、256S、256R、256Q、256E、256D、256T、309P、311S、433R、433S、433I、433P、433Q、434H、434F、434Y、252Y/254T/256E、433K/434F/436H、308T/309P/311 S(Dall Acqua et al.Journal of Immunology,2002,169:5171−5180, Dall’Acqua et al.,2006,The Journal of biological chemistry 281:23514−23524、参照によりその全体が援用される)を含む。
【0157】
抗体の共有結合的修飾は、本明細書に開示される免疫グロブリンの範囲内に含まれ、概して、翻訳後に行われるが、必ずしもそうではない。例えば、抗体の共有結合的修飾のいくつかの種類は、抗体の特定のアミノ酸残基を、選択された側鎖、またはNもしくはC末端残基と反応することができる有機誘導化剤と反応させることにより、分子に導入される。
【0158】
いくつかの実施形態において、本明細書に開示される抗体の共有結合的修飾は、1つ以上の標識の追加を含む。「標識基」という用語は、任意の検出可能な標識を意味する。いくつかの実施形態において、標識基は、潜在的な立体障害を低減するために、種々の長さのスペーサーのアームを介して抗体に結合される。タンパク質を標識するための種々の方法が、当該分野において知られており、本明細書に開示される免疫グロブリンの生成に使用され得る。
【0159】
複合体
【0160】
一実施形態において、本明細書に開示される共結合分子は、抗体「融合タンパク質」であり、時折、「抗体複合体」とも称される。融合パートナーまたは複合パートナーは、タンパク質性または非タンパク質性であり得、後者は、一般的に、抗体上および複合パートナー上の官能基を使用して生成される。複合パートナーおよび融合パートナーは、小分子化学化合物およびポリペプチドを含む、任意の分子であってもよい。例えば、種々の抗体複合体および方法は、Trail et al.,1999,Curr.Opin.Immunol.11:584−588に記載されており、参照によりその全体が援用される。可能な複合パートナーは、これらに限定されないが、サイトカイン、細胞障害性薬剤、毒素、ラジオアイソトープ、化学療法剤、反脈管形成物質、チロシンキナーゼ阻害剤、および他の治療活性剤を含む。いくつかの実施形態において、複合パートナーは、むしろ負荷量と考えられてもよい、つまり、複合体の目的は、免疫グロブリンによる、複合パートナーの標的細胞、例えば、癌細胞または免疫細胞への標的送達である。したがって、例えば、毒素の免疫グロブリンの複合は、該毒素の標的抗原を発現する細胞への送達を標的とする。当業者により理解されるように、実際には、融合および複合の概念および定義は、重複する。融合または複合の意味は、本明細書に開示される任意の特定の実施形態にそれを制限するものではない。むしろ、これらの用語は、本明細書に開示される任意の免疫グロブリンが、ある所望の特性を提供するように、遺伝的に、化学的に、または他の方法で、1つ以上のポリペプチドもしくは分子に連結されてもよいという、広範な概念を伝達するように漠然と使用される。
【0161】
適切な複合体は、これらに限定されないが、以下に記載される標識、細胞障害性薬物(例えば、化学療法剤)、または毒素もしくはそのような毒素の活性断片を含む、薬物、および細胞障害性薬剤を含むが、これらに限定されない。適切な毒素およびそれらの対応する断片は、ジフテリアA鎖、外毒素A鎖、リシンA鎖、アブリンA鎖、クルシン、クロチン、フェノマイシン、エノマイシン等を含む。細胞障害性薬剤は、ラジオアイソトープを抗体に複合することにより、または放射性核種を抗体に共有結合的に結合されたキレート剤に結合することにより作製される、放射化学物も含む。さらなる実施形態は、カリケアマイシン、アウリスタチン、ゲルダナマイシン、マイタンシン、ならびにデュオカルマイシンおよび類似体を利用する。
【0162】
一実施形態において、本明細書に開示される共結合分子は、サイトカインに融合または複合される。本明細書で使用される、「サイトカイン」とは、細胞間の介在物質として別の細胞に作用する、1つの細胞集団により放出されるタンパク質の一般的な用語である。例えば、参照によりその全体が援用される、Penichet et al.,2001,J.Immunol.Methods 248:91−101に記載されるように、サイトカインを、抗体に融合させて、一連の所望の特性を提供することができる。このようなサイトカインの例としては、リンホカイン、モノカイン、および通常のポリペプチドホルモンが挙げられる。ヒト成長ホルモン、Nメチオニルヒト成長ホルモン、およびウシ成長ホルモン等の成長ホルモン、副甲状腺ホルモン、チロキシン、インスリン、プロインスリン、レラキシン、プロレラキシン、卵胞刺激ホルモン(TSH)、甲状腺刺激ホルモン(TSH)、および黄体ホルモン(LH)等の糖タンパク質ホルモン、肝成長因子、線維芽細胞成長因子、プロラクチン、胎盤性ラクトゲン、腫瘍壊死因子αおよびβ、ミュラー管抑制因子、マウスゴナドトロピン関連ペプチド、インヒビン、アクチビン、血管内皮増殖因子、インテグリン、トロンボポエチン(TPO)、NGF−β等の神経成長因子、血小板成長因子、TGF−αおよびTGF−β等の形質転換成長因子(TGF)、インスリン様成長因子IおよびII、エリスロポエチン(EPO)、骨誘発因子、インターフェロンα、β、およびγ等のインターフェロン、マクロファージCSF(M−CSF)等のコロニー刺激因子(CSF)、顆粒球マクロファージCSF(GM−CSF)および顆粒球CSF(G−CSF)、IL−1、IL−1α、IL−2、IL−3、IL−4、IL−5、IL−6、IL−7、IL−8、IL−9、IL−10、IL−11、IL−12、IL−15等のインターロイキン(IL)、TNFαまたはTNFβ等の腫瘍壊死因子、C5a、ならびにLIFおよびkitリガンド(KL)を含む他のポリペプチド因子が、サイトカインのうちに含まれる。本明細書で使用される、サイトカインは、自然供給源または組み換え細胞培養物からのタンパク質、および自然配列サイトカインの生物学的活性等価物を含む。
【0163】
また別の実施形態において、本明細書に開示される共結合分子は、腫瘍の事前標的化における使用のために、「受容体」(そのようなストレプトアビジン)に複合され得、そこでは、免疫グロブリン受容体複合体が、患者に投与された後、クリアリング剤を使用して、非結合複合体を循環から取り除き、その後、細胞障害性薬剤(例えば、放射性ヌクレオチド)に複合される「リガンド」(例えば、アビジン)を投与する。代替の実施形態において、免疫グロブリンは、抗体依存性酵素媒介プロドラッグ療法(ADEPT)を採用するために、酵素に複合されるか、操作可能に結合される。ADEPTは、プロドラッグ(例えば、ペプチジル化学療法薬剤)を変換するプロドラッグ活性化酵素に免疫グロブリンを複合する、または操作可能に連結することにより使用され得る。
【0164】
免疫グロブリンパートナーが、複合体として使用される時、複合体パートナーは、NまたはC末端、または末端間のある残基を含む、本明細書に開示される免疫グロブリンの任意の領域に連結されてもよい。種々のリンカーは、免疫グロブリンに複合体パートナーを共有結合的に連結するために、本明細書に開示される免疫グロブリンに用途を見出し得る。本明細書において、「リンカー」、「リンカー配列」、「スペーサー」、「係留配列」、またはそれらの文法上の同等語は、2つの分子を結合し、多くの場合、2つの分子を1つの構造に配置する働きをする分子、または分子群(単量体または重合体等)を意味する。リンカーは、当該分野において知られており、例えば、ホモまたはヘテロ二機能性リンカーが、周知である(参照によりその全体が援用される、1994 Pierce Chemical Company catalog,technical section on cross−linkers,pages 155−200を参照のこと)。いくつかの方法を、分子を共有結合的に一緒に連結するように使用することができる。これらは、これらに限定されないが、タンパク質またはタンパク質ドメインのNとC末端の間のポリペプチド連結、ジスルフィド結合を介した連結、および化学的架橋試薬を介した連結を含む。この実施形態の一態様において、リンカーは、組み換え技術またはペプチド合成により生成される、ペプチド結合である。リンカーペプチドは、次のアミノ酸残基を主に含み得る:Gly、 Ser、Ala、またはThr。リンカーペプチドは、所望の活性を維持するように、相互に対して適切な高次構造を成すような方式で、2つの分子を連結するのに適当な長さを有するべきである。この目的に適切な長さは、少なくとも1つの、かつ50を超えないアミノ酸残基を含む。一実施形態において、リンカーは、長さが約1〜30のアミノ酸であり、例えば、リンカーは、長さが1〜20のアミノ酸であってもよい。有用なリンカーは、当業者に理解されるように、グリシン−セリン重合体(例えば、(GS)n、(GSGGS)n(配列番号1として記述)、(GGGGS)n(配列番号2として記述)、および(GGGS)n(配列番号3として記述)を含み、nは少なくとも1の整数である)、グリシン−アラニン重合体、アラニン−セリン重合
体、および他の柔軟なリンカーを含む。代替的に、限定されないが、ポリエチレングリコール(PEG)、ポリプロピレングリコール、ポリオキシアルキレン、またはポリエチレングリコールとポリプロピレングリコールとの共重合体を含む、種々の非タンパク質性重合体は、リンカーとしての用途を見出し得る。
【0165】
共結合分子の産生
【0166】
共結合分子を産生し、実験的に試験するための方法も、本明細書に開示する。開示される方法は、実施形態を任意の特定の操作の用途または理論に限定するものではない。むしろ、提供される方法は、1つ以上の免疫グロブリンが、免疫グロブリンを取得するように産生され、実験的に試験され得ることを、一般的に例示して説明するものである。抗体分子生物学、発現、生成、およびスクリーニングのための一般的な方法は、Duebel & Kontermann,Springer−Verlag,Heidelberg,2001により編集されたAntibody Engineering、およびHayhurst & Georgiou,2001,Curr Opin Chem Biol 5:683−689、Maynard & Georgiou, 2000,Annu Rev Biomed Eng 2:339−76、Antibodies: A Laboratory Manual by Harlow & Lane,New York:Cold Spring Harbor Laboratory Press,1988に記載され、全て、参照によりその全体が援用される。
【0167】
本明細書に開示される一実施形態において、共結合分子をコードし、その後、所望する場合、宿主細胞内にクローン化、発現、および測定され得る核酸が作製される。したがって、各タンパク質配列をコードする、核酸、および特にDNAが作製され得る。これらの実践は、周知の手順を使用して実施される。例えば、本明細書に開示される免疫グロブリンの生成に用途を見出し得る種々の方法は、Molecular Cloning − A Laboratory Manual,3rd Ed.(Maniatis,Cold Spring Harbor Laboratory Press,New York,2001)、および Current Protocols in Molecular Biology(John Wiley & Sons)に記載されており、ともに、参照によりその全体が援用される。当業者に理解されるように、多くの配列を含むライブラリの正確な配列の生成は、高価で時間がかかる可能性がある。本明細書において、「ライブラリ」とは、これらに限定されないが、核酸またはアミノ酸配列の一覧、種々の位置での核酸またはアミノ酸の一覧、ライブラリ配列をコードする核酸を含む物理的ライブラリ、または精製または未精製形態のいずれかの変異体タンパク質を含む物理的ライブラリを含む、任意の形態の変異体の一式を意味する。したがって、本明細書に開示されるライブラリを効果的に生成するように使用され得る、種々の技法がある。このような方法は、これらに限定されないが、遺伝子アセンブリ法、PCRに基づく方法、およびPCRの変形を使用する方法、リガーゼ連鎖反応に基づく方法、合成組み換え、エラーを起こしやすい増幅法、およびランダム変異を伴うオリゴを使用する方法等の混合オリゴ法、古典的な部位指定変異導入法、カセット変異導入法、ならびに他の増幅および遺伝子合成法を含む。当該分野において知られているように、遺伝子アセンブリ、変異導入、ベクターサブクローン化等のための種々の市販のキットおよび方法があり、このような市販製品は、免疫グロブリンをコードする核酸の生成に用途を見出す。
【0168】
本明細書に開示される共結合分子は、タンパク質の発現を誘発する、または生じるような適切な条件下で、共結合分子をコードする核酸を含有する、核酸、例えば、発現ベクターで形質転換された宿主細胞を培養することにより生成することができる。発現に適切な条件は、発現ベクターおよび宿主細胞の選択により異なり、日常の実験を通して、当業者によって容易に確認されるであろう。これらに限定されないが、哺乳類細胞、バクテリア、昆虫細胞、および酵母を含む、多種多様の適切な宿主細胞が使用されてもよい。例えば、本明細書に開示される免疫グロブリンの生成に用途を見出し得る、種々の細胞株は、American Type Culture Collectionから入手可能な、ATCC(登録商標)細胞株カタログに記載されている。
【0169】
一実施形態において、共結合分子は、発現コンストラクトが、レトロウイルスまたはアデノウイルス等のウイルスを用いて哺乳類細胞に導入される系を含む、哺乳類発現系で発現される。任意の哺乳類細胞、例えばヒト、マウス、ラット、ハムスター、および霊長類の細胞を使用することができる。適切な細胞は、限定されないが、ジャーカットT細胞、NIH3T3、CHO、BHK、COS、HEK293、PER C.6、HeLa、Sp2/0、NS0細胞、およびそれらの変異体を含む、既知の研究細胞も含む。代替の実施形態において、ライブラリタンパク質は、バクテリア細胞で発現される。バクテリア発現系は、当該分野に周知であり、大腸菌(E.coli)、枯草菌、ストレプトコッカスクレモリス、およびストレプトコッカスリビダンスを含む。代替の実施形態において、免疫グロブリンは、昆虫細胞(例えば、Sf21/Sf9、イラクサギンウラバBti−Tn5b1−4)または酵母細胞(例えば、出芽酵母、ピキア等)で産生される。代替の実施形態において、共結合分子は、無細胞翻訳系を使用して、生体外で発現される。原核(例えば、E.coli)および真核(麦芽、ウサギ網状赤血球)細胞の両方に由来する生体外翻訳系が、利用可能であり、関心のタンパク質の発現レベル、および機能特性に基づき選択されてもよい。例えば、当業者に理解されるように、生体外翻訳が、例えば、リボソーム提示等の、いくつかの提示技術に必要である。加えて、免疫グロブリンは、化学合成法により産生されてもよい。動物(例えば、ウシ、ヒツジ、またはヤギの乳、発育鶏卵、全昆虫幼虫等)および植物(例えば、トウモロコシ、タバコ、ウキクサ等)の両方の形質転換発現系も同様。
【0170】
本明細書に開示される共結合分子をコードする核酸は、タンパク質を発現するために、発現ベクターに導入されてもよい。種々の発現ベクターが、タンパク質発現のために利用されてもよい。発現ベクターは、自己複製染色体外ベクター、または宿主ゲノムに組み入れられるベクターを含んでもよい。発現ベクターは、宿主細胞型と適合可能であるように構築される。したがって、本明細書に開示される免疫グロブリンの生成に用途を見出す発現ベクターは、これらに限定されないが、哺乳類細胞、バクテリア、昆虫細胞、酵母、および生体外系で、タンパク質発現を可能にするものを含む。当該分野において知られているように、本明細書に開示される共結合分子を発現するための用途を見出し得る、種々の発現ベクターが、商業的または別様に入手可能である。
【0171】
発現ベクターは、典型的に、制御もしくは調節配列と操作可能に連結するタンパク質、選択可能マーカー、任意の融合パートナー、および/または追加要素を含む。本明細書において、「操作可能に連結される」とは、核酸が、別の核酸配列と機能的関係に配置されることを意味する。概して、これらの発現ベクターは、共結合分子をコードする核酸に操作可能に連結される転写および翻訳調節核酸を含み、典型的に、タンパク質を発現するために使用される宿主細胞に適している。一般的に、転写および翻訳調節配列は、プロモーター配列、リボソーム結合部位、転写開始および停止配列、翻訳開始および停止配列、ならびに転写促進因子または活性化因子配列を含み得る。また当該分野において知られているように、発現ベクターは、典型的に、発現ベクターを含有する形質転換宿主細胞の選択を可能にする、選択遺伝子またはマーカーを含有する。選択遺伝子は、当該分野に周知であり、使用される宿主細胞により異なる。
【0172】
共結合分子は、発現タンパク質の標的、精製、スクリーニング、提示等を可能にするように、融合パートナーに操作可能に連結されてもよい。融合パートナーは、リンカー配列を介して、免疫グロブリン配列に連結されてもよい。リンカー配列は、一般的に、少数のアミノ酸、典型的には、10より少ないアミノ酸を含むが、それより長いリンカーも使用されてもよい。典型的には、リンカー配列は、柔軟かつ分解に対して耐性であるように選択される。当業者に理解されるように、広範な種々の配列のいずれをも、リンカーとして使用することができる。例えば、一般的なリンカー配列は、アミノ酸配列GGGGSを含む。融合パートナーは、免疫グロブリンおよび任意の関連する融合パートナーを所望の細胞部位または細胞外媒体に誘導する、標的またはシグナル配列であってもよい。当該分野において知られているように、特定のシグナル伝達配列は、成長媒体か、細胞の内膜と外膜との間に位置する細胞膜周辺腔のいずれかの中に分泌されるタンパク質を標的とし得る。融合パートナーは、精製および/またはスクリーニングを可能にする、ペプチドまたはタンパク質をコードする配列でもあってよい。このような融合パートナーは、これらに限定されないが、ポリヒスチジンタグ(His−タグ)(例えば、固定化金属親和性クロマトグラフィー(IMAC)システムで使用するためのHおよびH10、または他のタグ(例えば、Ni+2親和性カラム))、GST融合物、MBP融合物、Strepタグ、バクテリア酵素BirAのBSPビオチン化標的配列、および抗体の標的とされるエピトープタグ(例えば、c−mycタグ、flagタグ等)を含む。当業者に理解されるように、このようなタグは、精製、スクリーニング、または両方に有用であり得る。例えば、免疫グロブリンは、Ni+2親和性カラムに固定することにより、Hisタグを使用して生成されてもよく、次いで、精製後、同じHisタグは、(以下に記載するように)ELISAまたは他の結合測定法を実施するために、抗体をNi+2被覆プレートに固定するために使用されてもよい。融合パートナーは、免疫グロブリンをスクリーニングするための選択法の使用を可能にし得る(以下を参照)。種々の選択法を可能にする融合パートナーは、当該分野において周知である。例えば、免疫グロブリンライブラリの
構成要素を遺伝子IIIタンパク質に融合することにより、ファージ提示法が採用され得る(Kay et al.,Phage display of peptides and proteins:a laboratory manual,Academic Press,San Diego,CA,1996; Lowman et al.,1991,Biochemistry 30:10832−10838、Smith,1985,Science 228:1315−1317、参照によりその全体が援用される)。融合パートナーは、免疫グロブリンの標識を可能にし得る。代替的に、融合パートナーは、発現ベクター上で、特定の配列に結合されてもよく、融合パートナーおよび関連免疫グロブリンが、共有結合的に、または非共有結合的に、それらをコードする核酸と連結されることを可能にする。外因性核酸の宿主細胞への導入方法は、当該分野において周知であり、使用される宿主細胞により異なる。技法は、これらに限定されないが、デキストラン媒介形質移入、リン酸カルシウム沈降法、塩化カルシウム処理、ポリブレン媒介形質移入、プロトプラスト融合、電気穿孔法、ウイルス性またはファージ感染、リポソームへのリヌクレオチドのカプセル封入、およびDNAの核への直接微量注法を含む。哺乳類細胞の場合、形質移入は、一過性または安定性のいずれかであってもよい。
【0173】
一実施形態において、共結合分子は、発現後に精製または単離される。タンパク質は、当業者に知られている種々の方式で、単離または精製することができる。標準的な精製方法は、FPLCおよびHPLC等のシステムを使用して大気圧力または高圧で実施される、イオン交換、粗水性相互作用、親和性、サイズまたはゲル濾過、および逆相を含むクロマトグラフィー技術を含む。精製法は、電気泳動法、免疫学、沈降法、透析法、および等電点電気泳動法も含む。タンパク質濃度と併用して、限外濾過法および透析濾過法も、有用である。当該分野に周知のように、種々の自然のタンパク質は、Fcおよび抗体に結合し、これらのタンパク質は、本明細書に開示される免疫グロブリンの精製するための用途を見出すことができる。例えば、細菌タンパク質AおよびGは、Fc領域に結合する。同様に、細菌タンパク質Lは、いくつかの抗体のFab領域に結合し、当然、抗体の標的抗原にも同様に結合する。精製は、多くの場合、特定の融合パートナーにより可能となり得る。例えば、免疫グロブリンは、GST融合が採用される場合、グルタチオン樹脂、Hisタグが採用される場合、Ni+2親和性クロマトグラフィー、またはflagタグが使用される場合、固定抗flag抗体を使用して、精製されてもよい。適切な精製技法の一般的な指針については、例えば、参照によりその全体が援用される、Protein Purification:Principles and Practice,3rd Ed.,Scopes,Springer−Verlag,NY,1994を参照のこと。必要な精製の程度は、免疫グロブリンのスクリーニングまたは使用に応じて異なる。いくつかの場合においては、精製は必要ない。例えば、一実施形態において、免疫グロブリンが分泌される場合、スクリーニングが、媒体から直接行われてもよい。当該分野に周知のように、いくつかの選択の方法は、タンパク質の精製を含まない。したがって、例えば、免疫グロブリンのライブラリは、ファージ提示ライブラリの中に作製される場合、タンパク質精製は実施されなくてもよい。
【0174】
生体外実験
【0175】
共結合分子は、これらに限定されないが、生体外検定法、生体内および細胞を用いた検定法、ならびに選択技術を使用するものを含む、種々の方法を使用してスクリーニングされてもよい。自動高処理スクリーニング技術が、スクリーニング手順に利用されてもよい。スクリーニングは、融合パートナーまたは標識の使用を採用してもよい。融合パートナーの使用は、上で論じられた。本明細書において、「標識された」とは、本明細書に開示される免疫グロブリンが、スクリーニングでの検出を可能にするように結合される、1つ以上の要素、同位体、または化学化合物を有することを意味する。一般的に、標識は、次の3つに分類される:a)抗体により認識される融合パートナーとして組み込まれるエピトープであってもよい、免疫標識、b)放射性活性もしくは重同位体であってもよい、同位体標識、およびc)蛍光色素および比色色素、もしくは他の標識法を可能にするビオチン等の分子を含んでもよい、小分子標識。標識は、任意の位置で化合物に組み込まれてもよく、タンパク質発現中に、生体外または生体内に組み込まれてもよい。
【0176】
一実施形態において、共結合分子の機能的および/または生物物理学的特性は、生体外検定でスクリーニングされる。生体外検定は、関心のスクリーニング特性の広範なダイナミックレンジを可能にし得る。スクリーニングされ得る特性は、これらに限定されないが、安定性、溶解性、およびFcリガンド、例えば、FcγRに対する親和性を含む。複数の特性が、同時または個別にスクリーニングされてもよい。タンパク質は、検定の必要条件に応じて、精製されていても、精製されていなくてもよい。一実施形態において、スクリーンニングは、共結合分子を結合することが既知の、またはそう思われる、共結合分子のタンパク質または非タンパク質分子への結合に対する定性もしくは定量性結合検定である。一実施形態において、スクリーニングは、標的抗原への結合を測定するための結合検定である。代替の実施形態において、スクリーニングは、これらに限定されないが、FcγRのファミリー、新生児型受容体FcRn、補体タンパク質C1q、および細菌タンパク質AおよびGを含む、Fcリガンドへの共結合分子の結合についての検定である。該Fcリガンドは、任意の生物からであってもよい。一実施形態において、Fcリガンドは、ヒト、マウス、ラット、ウサギ、および/またはサルからのものである。結合検定は、限定されないが、FRET(蛍光共鳴エネルギー転移)および BRET(生物発光共鳴エネルギー転移)を用いた検定、AlphaScreen(登録商標)(増幅発光性近接均質アッセイ)、シンチレーション近接アッセイ、ELISA(酵素結合免疫吸着測定法)、SPR(表面プラズモン共鳴法、BIACORE(登録商標)としても知られる)、等温滴定熱量測定法、示差走査熱量測定法、ゲル電気泳動法、およびゲル濾過を含むクロマトグラフィーを含む、当該分野において知られている種々の方法を使用して実施され得る。これら、および他の方法は、免疫グロブリンのある融合パートナーまたは標識をうまく利用し得る。検定は、限定されないが、発色性、蛍光性、発光性、または同位体標識を含む、種々の検出方法を採用してもよい。
【0177】
共結合分子の生物物理学的特性、例えば、安定性および溶解性は、当該分野において知られている種々の方法を使用して試験されてもよい。タンパク質の安定性は、フォールドとアンフォールド状態の間の熱力学的平衡を測定することにより決定され得る。例えば、本明細書に開示される共結合分子は、化学変性剤、熱、またはpHを使用してほどかれてもよく、この移行は、これらに限定されないが、円二色性分光法、蛍光分光法、吸光分光法、NMR分光法、熱量測定法、およびタンパク質分解を含む方法を使用して監視されてもよい。当業者により理解されるように、フォールドおよびアンフォールドの移行の動態パラメータも、これら、および他の技法を使用して監視され得る。共結合分子の溶解性および全体的な構造の統合性は、当該分野において知られている広範な方法を使用して、定量的、または定性的に決定され得る。本明細書に開示される共結合分子の生物物理学的特性を特徴付けるための用途を見出し得る方法は、ゲル電気泳動法、等電点電気泳動法、キャピラリー電気泳動法、分子ふるいクロマトグラフィー、イオン交換クロマトグラフィー、および逆相高速液体クロマトグラフィー等のクロマトグラフィー、ペプチドマッピング、オリゴ糖マッピング、質量分析法、紫外吸光分光法、蛍光分光法、円二色性分光法、等温滴定熱量測定法、示差走査熱量測定法、超遠心分析法、動的光散乱法、タンパク質分解および架橋結合、濁度測定、フィルタ遅延アッセイ、免疫学的検定、蛍光色素結合検定、タンパク質染色法、顕微鏡法、およびELISAまたは他の結合検定を介した凝集物の検出を含む。X線結晶学的技法およびNMR分光法を採用した構造分析にも、用途を見出し得る。一実施形態において、安定性および/または溶解性は、所定の時間期間の後に、タンパク質溶液の量を決定することにより測定され得る。この検定において、タンパク質は、例えば、高温、低pH、または変性剤の存在等の、ある極端な条件に曝されても、曝されなくてもよい。機能は、典型的に、安定性、溶解性、および/またはよく折り畳まれた構造のタンパク質を必要とするため、前述の機能検定および結合検定も、このような測定を実施するための方式を提供する。例えば、免疫グロブリンを含む溶液は、標的抗原を結合するその能力について測定され、その後、1つ以上の所定の時間期間の間
、高温に曝され、その後、再び、抗原結合について測定され得る。アンフォールドおよび凝集タンパク質は、抗原を結合する能力があると予期されないため、活性残存量は、共結合分子の安定性および溶解性の尺度を提供する。
【0178】
一実施形態において、共結合分子は、1つ以上の細胞を用いた検定、または生体外検定を使用して試験されてもよい。このような検定において、細胞が、ライブラリに属する個別の変異体、または変異体群に曝されるように、精製もしくは未精製の免疫グロブリンが、典型的に、外因的に添加される。これらの検定は、必ずしもそうではないが、典型的に、免疫グロブリンの標的抗原に結合し、例えば、細胞溶解、ファゴサイトーシス、リガンド/受容体結合阻害、成長および/または増殖の阻害、アポトーシス等の、ある生化学事象を媒介する能力の生物学に基づく。このような検定は、多くの場合、細胞の免疫グロブリンへの応答、例えば、細胞生存、細胞ファゴサイトーシス、細胞溶解、細胞形態の変化、または自然遺伝子もしくはリポーター遺伝子の細胞発現等の転写活性化を監視することを含む。例えば、このような検定は、共結合分子のADCC、ADCP、またはCDCを誘発する能力を測定し得る。いくつかの検定において、例えば、血清補体、または末梢血単球(PBMC)、NK細胞、マクロファージ等のエェクター細胞等の、追加の細胞または構成要素が、つまり、標的細胞に加え、添加される必要がある場合がある。このような追加細胞は、任意の生物、例えば、ヒト、マウス、ラット、ウサギ、およびサルからであってもよい。架橋または単量体抗体は、抗体の標的抗原を発現する特定の細胞株のアポトーシスをもたらすか、または検定に添加された免疫細胞による、標的細胞への攻撃を媒介する場合がある。細胞の死または生存を監視するための方法は、当該分野において知られており、色素、フルオロフォア、免疫化学、細胞化学、および放射性試薬の使用を含む。例えば、カスパーゼ検定またはアネキシン−フルオロ結合物は、アポトーシスの測定を可能にし得、放射性基質(例えば、クロム−51放出検定)の取り込み、もしくは放出、またはアラマーブルー等の蛍光色素の代謝減少は、細胞成長、増殖、または活性の監視を可能にし得る。一実施形態において、DELFIA(登録商標)EuTDAを用いた、細胞障害性検定(Perkin Elmer,MA)が使用される。代替的に、死んだ、または損傷した標的細胞は、例えば、乳酸デヒドロゲナーゼ等の、1つ以上の自然な細胞内タンパク質の放出を測定することにより監視され得る。転写の活性化も、細胞
を用いた検定の機能を測定するための方法として機能する。この場合、上方制御または下方制御されてもよい自然遺伝子またはタンパク質について測定することにより、応答が監視されてもよく、例えば、特定のインターロイキンの放出が測定されてもよく、代替的に、ルシフェラーゼまたはGFPリポーターコンストラクトを介して、読出しが行われてもよい。細胞を用いた検定は、免疫グロブリンの存在に対する応答としての、細胞の形態変化の測定も含み得る。このような検定用の細胞型は、原核または真核であってもよく、当該分野において知られている種々の細胞株が採用されてもよい。代替的に、細胞を用いたスクリーニングは、共結合分子をコードする核酸で、形質転換またはそれを形質移入された細胞を使用して実施される。
【0179】
生体外検定は、限定されないが、結合検定、ADCC、CDC、細胞毒性、増殖、過酸化物/オゾン放出、エフェクター細胞の走化性、低減されたエフェクター機能抗体によるこのような検体の阻害、100倍超の改善または100倍超の減少等の活性の範囲、レセプター活性の混合、およびこのようなレセプタープロファイルから予期される検定結果を含む。
【0180】
生体内実験
【0181】
本明細書に開示される共結合分子の生物学的特性は、細胞、組織、および全生物実験において特徴付けされてもよい。当該分野において知られているように、薬物は、多くの場合、疾病または疾病モデルに対する治療における薬物の効果を測定するために、または薬物の薬物動態、毒性、および他の特性を測定するために、限定されないが、マウス、ラット、ウサギ、イヌ、ネコ、ブタ、およびサルを含む動物において試験される。該動物は、疾病モデルと称される場合がある。本明細書に開示される共結合分子に関して、候補ポリペプチドのヒトでの効果の可能性を評価するために動物モデルを使用する時、特別な課題が生じる。これらは、少なくとも部分的に、ヒトFc受容体に対する親和性に特定の作用を有する共結合分子は、オルソロガスな動物の受容体と同じ親和性作用を有さないかもしれないという事実による。これらの問題は、真のオルソロガスの正確な割り当てに関連する、回避不可能な不明確さ(Mechetina et al.,Immunogenetics,2002 54:463‐468、参照によりその全体が援用される)、およびいくつかのオルソロガスが、単純に、動物に存在しないという事実(例えば、ヒトは、FcγRIIaを有するが、マウスは有しない)により、さらに深刻化し得る。治療用物質は、多くの場合、これらに限定されないが、マウス株NZB、NOD、BXSB、MRL/lpr、K/BxN、および遺伝子導入(ノックインおよびノックアウトを含む)を含む、マウスにおいて試験される。このようなマウスは、全身性紅斑性狼瘡(SLE)および関節リウマチ(RA)等の、ヒト臓器に特異的な、全身性自己免疫または炎症性疾患病変に似た、種々の自己免疫状態を発症させることができる。例えば、自己免疫疾患に対して意図される本明細書に開示される免疫グロブリンは、免疫グロブリンの疾患病変の発達を低減する、または阻害する能力を決定するようにマウスを処置することにより、このようなマウスモデルにおいて試験することができる。マウスとヒトFcγ受容体系間の不和合性のため、代替的なアプローチとして、ヒトPBLまたはPBMC(huPBL−SCID, huPBMC−SCID)を免疫欠損マウスに植え付けることにより、ヒトエフェクター細胞およびFc受容体を伴う半機能的なヒト免疫系を提供する、
マウスSCIDモデルを使用する。このようなモデルにおいて、抗原攻撃(破傷風トキソイド等)は、B細胞を活性化して、形質細胞に分化し、免疫グロブリンを分泌し、したがって、抗原特性的液性免疫を再構成する。したがって、B細胞上でIgEおよびFcγRIIbに特異的に結合する、本明細書に開示される二重標的免疫グロブリンは、B細胞分化を特異的に阻害する能力を検査するために試験されてもよい。このような実験法は、治療物質として使用される該免疫グロブリンの可能性の判定についての有意義なデータを提供し得る。他の生物、例えば、哺乳類も、試験に使用されてもよい。例えば、サルは、ヒトに対するその遺伝子的類似性のため、治療モデルに適しており、したがって、本明細書に開示される免疫グロブリンの本明細書に開示される免疫グロブリンの効果、毒性、薬物動態、または他の特性を試験するために使用することができる。ヒトにおける本明細書に開示される免疫グロブリンの試験が、最終的に、薬物としての承認のために必要となり、したがって、当然のことながら、これらの実験が意図される。したがって、本明細書に開示される免疫グロブリンは、その治療効果、毒性、薬物動態、および/または他の臨床特性を決定するように、ヒトにおいて試験され得る。
【0182】
本明細書に開示される共結合分子は、動物モデルまたはヒトにおけるFc含有治療に優れた動作を与え得る。この明細書に記載する、このような免疫グロブリンの受容体結合プロファイルは、例えば、細胞障害性薬物の潜在能を増加するように、または薬物作用の選択性を改善するように、特定のエフェクター機能もしくはエフェクター細胞を標的にするように選択されてもよい。さらに、いくつかの、または全てのエフェクター機能を低減し、したがって、このようなFc含有薬物の副作用、または毒性を低減し得る受容体結合プロファイルが、選択され得る。例えば、FcγRIIIa、FcγRI およびFcγRIIaに対して低減された結合を有する免疫グロブリンは、ほとんどの細胞媒介性エフェクター機能を排除するように選択され得るか、またはC1qに対して低減された結合を有する免疫グロブリンが、補体媒介性エフェクター機能を制限するように選択されてもよい。いくつかの状況において、このようなエフェクター機能は、毒性作用の可能性を有することが知られている。したがって、これらの排除は、Fc保有薬物の安全性を増加し、このような改善された安全性は、動物モデルにおいて特徴付けされ得る。いくつかの状況において、このようなエフェクター機能は、望ましい治療活性を媒介することが知られている。したがって、これらの強化は、Fc保有薬物の活性または潜在能力を増加し、このような改善された活性または潜在能力は、動物モデルにおいて特徴付けされ得る。
【0183】
いくつかの実施形態において、本明細書に開示される共結合分子は、種々のヒト疾患の臨床的適切な動物モデルにおける効果について評価することができる。多くの場合、適切なモデルは、特定の抗原および受容体に対する種々の遺伝子導入動物を含む。
【0184】
ヒトFc受容体(例えば、CD32b)を発現するもの等、適切な遺伝子導入モデルは、免疫グロブリンおよびFc融合物を、それらの効果において評価し、試験するために使用され得る。マウスまたは他のゲッ齒類において、エフェクター機能を直接的、または間接的に媒介するヒト遺伝子の導入による共結合分子の評価は、自己免疫疾患およびRAにおける効果の生理学的研究を可能にし得る。FcγRIIb等のヒトFc受容体は、ヒト多型の特異性および組み合わせのゲッ齒類への導入をさらに可能にするであろう、遺伝子プロモーター(GからCの−343)、または受容体187 IもしくはTの膜貫通ドメイン等に多型を有する。多型特異的FcRに関与する種々の研究は、この項に限定されず、本明細書を通して指定される、FcR一般の全ての論議および用途を包含する。本明細書に開示される免疫グロブリンは、このような遺伝子導入モデルにおいて、Fc含有薬物に優れた活性を与え得、特にヒトFcγRIIb媒介活性用に最適化された結合プロファイルを有する変異体は、遺伝子導入CD32bマウスにおいて、優れた活性を示し得る。他のヒトFc受容体、例えば、FcγRIIa、FcγRI等の遺伝子導入マウスの効果において、同様の改善が、それぞれの受容体に最適化された結合プロファイルを有する共結合分子について観察され得る。複数のヒト受容体の遺伝子導入マウスは、対応する複数の受容体に最適化された結合プロファイルを有する免疫グロブリンについて、改善された活性を示すであろう。
【0185】
ヒト患者における候補治療抗体の潜在的な効果を特徴付けるための、動物モデルの使用に関連する問題点および不明確さのため、本明細書に開示されるいくつかの変異体ポリペプチドは、ヒトにおける評価を評価するための代用としての有用性を見出し得る。このような代用分子は、動物系において、対応する候補ヒト免疫グロブリンのFcRおよび/または補体生物学を模倣し得る。この模倣は、特定の免疫グロブリンおよび動物に対するヒト受容体との間の相対的関連親和性により顕在化される可能性が最も高い。例えば、阻害ヒトFcγRIIbに対して、低減された親和性を有するFc変異体の潜在的なヒトにおける効果を評価するためにマウスモデルを使用する場合、適切な代用変異体は、マウスFcγRIIに対して、低減された親和性を有するだろう。代用Fc変異体は、ヒトFc変異体、動物Fc変異体、または両方と関連して作製され得ることに留意されたい。
【0186】
一実施形態において、共結合分子の試験は、標的抗原を持つ特定の標的細胞の欠乏の評価を容易にするために、霊長類(例えば、カニクイザルモデル)における効果の試験を含んでもよい。さらなる霊長類のモデルは、限定されないが、自己免疫、移植、および癌の治療試験における、Fcポリペプチドを評価するための、アカゲザルの使用を含む。
【0187】
毒性試験は、標準的な薬理学的プロファイルで評価できない、または薬剤の反復投与後にのみに発生する、抗体、もしくはFc融合物に関連する効果を決定するために実施される。大半の毒性試験は、新規治療学的実体がヒトに導入される前に、任意の予測できない有害作用が見過ごされないことを確実にするために、ゲッ齒類およびゲッ齒類以外の2つの種属において実施される。一般的に、これらのモデルは、遺伝子毒性、慢性毒性、免疫原性、生殖/発生毒性、および発癌を含む、種々の毒性を測定することができる。前述のパラメータには、食消費量、体重、抗体産生、臨床化学の標準的な測定、および標準的な臓器/組織の肉眼および顕微鏡検査(例えば、心毒性)を含む。測定のさらなるパラメータは、もしあれば、注入部位損傷および中和抗体の測定である。従来、裸または複合のモノクローナル抗体治療学は、放射標識種属の正常組織、免疫原性/抗体産生、複合体またはリンカー毒性、および「傍観者」毒性を用いた、交差反応について評価される。それにもかかわらず、このような試験は、特定の問題に対処するように個別化され、ICH S6(上記される、生物工学製品についての安全性試験)で規定されるガイダンスに従わなければならない場合がある。従って、原則として、製品は、十分に良く特徴付けされ、不純物/汚染物が除去され、試験材料が、開発全体を通して同等であり、GLPコンプライアンスが維持されることが、原則である。
【0188】
本明細書に開示される共結合分子の薬物動態(PK)は、種々の動物系で試験され得、最も適切なのは、カニクイザルおよびアカゲザル等のヒト以外の霊長類である。血漿濃度およびクリアランスを使用して、6000倍(0.05〜300mg/kg)の用量範囲にわたる単一または反復i.v./s.c.投与が、半減期(日〜週)について評価され得る。定常状態での分布量および全身吸収レベルも測定され得る。このような測定のパラメータの例としては、一般的に、最大観測血漿濃度(Cmax)、Cmax到達時間(Tmax)、時間0〜無限大[AUC(0−inf)] の血漿濃度時間曲線下面積、および見かけ消失半減期(T1/2)が挙げられる。さらなる測定パラメータは、i.v.投与および生体利用性の後に得た、濃度−時間データの区画解析を含み得る。
【0189】
本明細書に開示される共結合分子は、動物系またはヒトにおいて、Fc含有治療に優れた薬物動態を与え得る。例えば、FcRnへの結合増加は、Fc含有薬物の半減期および曝露を増加し得る。代替的に、FcRnへの結合減少は、このような薬物が副作用を有する時等、露出の減少が好まれる場合、Fc含有薬物の半減期および曝露を低減し得る。
【0190】
多数のFc受容体が、種々の免疫細胞型上、ならびに異なる組織で異なって発現することは、当該分野において知られている。Fc受容体の異なった組織分布は、最終的に、本明細書に開示される共結合分子の薬力学(PD)および薬物動態(PK)特性に影響を与え得る。本発明の共結合分子は、多数のFc受容体に対して様々な親和性を有するため、PDおよび/またはPK特性についてのポリペプチドのさらなるスクリーニングは、各候補ポリペプチドにより付与されるPD、PK、および治療効果の最適なバランスを決定するのに非常に有用であり得る。
【0191】
薬力学試験は、限定されないが、特異的細胞の標的化、またはシグナル伝達機構の遮断、抗原特異的抗体の阻害の測定等を含み得る。本明細書に開示される共結合分子は、特定のエフェクター細胞集団を標的とし、それによって、可能性を改善するか、または特定の好ましい生理的区画の中への貫通を増加するように、特定の活性を誘発するようにFc含有薬物を方向付けすることができる。例えば好中球活性および局在化は、FcγRIIIbを標的とする共結合分子のによって、標的とすることができる。このような薬力学作用は、動物モデル、またはヒトにおいて実証され得る。
【0192】
使用
【0193】
作製されると、本明細書に開示される共結合分子は、種々の方法において用途を見出す。好適な実施形態において、方法は、IgEおよびFcγRIIbの両方が共結合分子によって結合され、細胞が阻害されるように、IgEおよびFcγRIIbを発現する細胞を共結合分子と接触させることを含む。本内容において、「阻害される」とは、共結合分子が、IgE+B細胞の活性および/もしくは増殖を防止するか、または低減していることを意味する。
【0194】
本明細書に開示される共結合分子は、広範な製品において用途を見出し得る。一実施形態において、本明細書に開示される共結合分子は、治療、診断、または研究試薬である。共結合分子は、モノクローナルまたはポリクローナルである組成物において用途を見出し得る。本明細書に開示される共結合分子は、治療目的に使用されてもよい。当業者により理解されるように、本明細書に開示される共結合分子は、抗体等が使用され得る、任意の治療目的のために使用されてもよい。共結合分子は、限定されないが、自己免疫および炎症性疾患、感染症、および癌を含む疾患を治療するように、患者に投与されてもよい。
【0195】
本明細書に開示される目的における「患者」とは、ヒトおよび他の動物、例えば、他の哺乳類の両方を含む。したがって、本明細書に開示される共結合分子は、ヒト治療および獣医学的用途の両方を有する。本明細書に開示される、「治療」または「治療する」とは、疾病または疾患に対する治療的処置、ならびに予防的もしくは抑制手段を含むことを意味する。したがって、例えば、疾病の発現前の共結合分子の良好な投与は、疾病の治療をもたらす。別の実施例として、疾病の症状と戦うための、疾病の臨床病態後の最適化された共結合分子の良好な投与は、疾病の治療に含まれる。「治療」および「治療する」とは、疾病を根絶するための、疾病出現後の、最適化された免疫グロブリンの投与も包含する。予想される臨床症状の軽減、および疾病の回復の可能性を伴った、発現後、および臨床症状が発達した後の薬剤の良好な投与は、疾病の治療に含まれる。これらの「治療の必要な」とは、既に疾病または疾患を有する哺乳類、ならびに疾病または疾患が予防されるべきものを含む、疾病または疾患を有する傾向があるものを含む。
【0196】
一実施形態において、本明細書に開示される共結合分子は、不適切なタンパク質、または他の分子の発現を含む疾病を有する患者に投与される。本明細書に開示される範囲内において、これは、例えば、存在するタンパク質量の変化、タンパク質の局在化、翻訳後修飾、立体構造、突然変異体または病原体の存在等による、異常タンパク質により特徴付けされる疾病および疾患を含むものとする。同様に、疾病または疾患は、限定されないが、多糖およびガングリオシドを含む、分子変化により特徴付けされ得る。過剰存在は、限定されないが、分子レベルでの過剰発現、活性部位での出現の遷延もしくは蓄積、または正常に対してタンパク質の活性の増加を含む、任意の原因による場合がある。この定義内には、タンパク質の減少により特徴付けされる疾病および疾患が含まれる。この減少は、限定されないが、分子レベルでの発現の減少、活性部位での出現の短縮もしくは減少、タンパク質の突然変異型、正常に対してタンパク質の活性の減少を含む、任意の原因による場合がある。このような過剰存在またはタンパク質の減少は、正常な発現、出現、またはタンパク質の活性に対して測定され得、該測定は、本明細書に開示される免疫グロブリンの発達および/または臨床試験において、重要な役割を果たし得る。
【0197】
IgE媒介性疾患、例えば、食物および環境アレルギー、ならびにアレルギー性喘息を治療するための新規方法を、本明細書において開示する。好適な実施形態において、本発明の製品および方法により治療され得るアレルギー性の疾病は、アレルギー性およびアトピー性喘息、アトピー性皮膚炎および湿疹、アレルギー性鼻炎、アレルギー性結膜炎および鼻結膜炎、アレルギー性脳脊髄炎、アレルギー性鼻炎、アレルギー性脈管炎、およびアナフィラキシーショックを含む。 治療され得る環境的および食物アレルギーは、チリダニ、ゴキブリ、ネコおよび他の動物、花粉(ブタクサ、ギョウギシバ、ロシアアザミ、カシ、ライ麦等)、カビおよび真菌(例えば、葉上生息菌、コウジカビ等)、天然ゴム、昆虫咬傷(ミツバチ、スズメバチ等)、ペニシリンおよび他の薬物、イチゴおよび他の果物ならびに野菜、落花生、大豆および他のマメ科植物、クルミおよび他の木の実、甲殻類および他の海産物、牛乳および他の乳製品、コムギおよび他の穀物、ならびに卵に対するアレルギーを含む。実際、いかなる食物アレルゲン、エアロアレルゲン、職業性アレルゲン、または他のIgE媒介性環境アレルゲンも、本発明に開示される製品の治療量により治療され得る。一般的なアレルゲンの例については、Arbes et al.,Prevalences of positive skin test responses to 10 common allergens in the US population: Results from the Third National Health and Nutrition Examination Survey, Clinical Gastroenterology 116(2), 377−383(2005)を参照のこと。
【0198】
本明細書に開示される共結合分子に対して良い臨床応答を示す可能性のある、または本明細書に開示される共結合分子で治療した時に、1つ以上の現在使用している治療薬よりも、有意に良好な応答を示す可能性がある患者を特定するための診断試験も、開示する。当該分野において知られている、ヒトにおけるFcγR多型を決定するための、いくつかの方法のいずれをも使用することができる。さらに、血液および組織試料等の臨床試料上で実施される、予後検査も開示する。このような検査は、機構に関わらず、活性について検定し得る。このような情報は、臨床試験の組み入れまたは除外のために、患者を特定するため、または適切な投与量および治療レジメンに関する決定を通知するために使用され得る。このような情報は、このような検定において優れた活性を示す、特定の共結合分子を含有する薬物を選択するためにも使用され得る。
【0199】
製剤
【0200】
本明細書に開示される共結合分子および1つ以上の治療的活性剤が製剤化される、医薬組成物が企図される。本明細書に開示される共結合分子の製剤は、所望の程度の純度を有する該免疫グロブリンを任意の医薬的に許容される担体、賦形剤、安定剤と混合することにより(Remington’s Pharmaceutical Sciences 16th edition,Osol,A.Ed.,1980、参照によりその全体が援用される)、凍結乾燥製剤または水溶液の形態で、保存用に調製される。許容される担体、賦形剤、または安定剤は、採用される投与量および濃度において、受給者に非毒性であり、リン酸、クエン酸、酢酸、および他の有機酸等の緩衝剤、アスコルビン酸およびメチオニンを含む抗酸化剤、 防腐剤(オクタデシルジメチルベンジル塩化アンモニウム、塩化ヘキサメトニウム、塩化ベンザルコニウム、塩化ベンゼトニウム、フェノール、ブチルオルベンジル(orbenzyl)アルコール、メチルまたはプロピルパラベン等のアルキルパラベン、カテコール、レゾルシノール、シクロヘキサノール、3−ペンタノール、およびm−クレゾール等)、低分子量(約10残基未満)ポリペプチド、血清アルブミン、ゼラチン、または免疫グロブリン等のタンパク質、ポリビニルピロリドン等の親水性重合体、グリシン、グルタミン、アスパラギン、ヒスチジン、アルギニン、またはリジン等のアミノ酸、グルコース、マンノース、またはデキストリンを含む単糖類、二糖類、および他の糖類、EDTA糖のキレート剤、スクロース、マンニトール、トレハロース、またはソルビトール等の糖類、甘味料および他の風味剤、微結晶セルロース、ラクトース、コーンスターチおよび他のスターチ類等の増量剤、結合剤、添加剤、着色剤、ナトリウム等の塩形成対イオン、金属複合体(例えば、Zn−タンパク質複合体)、ならびに/またはTWEEN(登録商標)、PLURONICS(登録商標)、もしくはポリエチレングリコール(PEG)等の非イオン性界面活性剤を含む。一実施形態において、本明細書に開示される免疫グロブリンを含む医薬組成物は、酸および塩基付加塩の両方を含むものとする、医薬的に許容される塩として存在する等の、水溶性形態であってもよい。「医薬的に許容される酸付加塩」とは、遊離塩基の生物学的効果を維持し、生物学的に
、または別の点で望ましくないことがなく、塩酸、臭化水素酸、硫酸、硝酸、リン酸等の無機酸、ならびに酢酸、プロピオン酸、グリコール酸、ピルビン酸、シュウ酸、マレイン酸、マロン酸、コハク酸、フマル酸、酒石酸、クエン酸、安息香酸、桂皮酸、マンデル酸、メタンスルホン酸、エタンスルホン酸、p−トルエンスルホン酸、サリチル酸等の有機酸で形成される塩類を指す。「医薬的に許容される塩基付加塩類」とは、ナトリウム塩、カリウム塩、リチウム塩、アンモニウム塩、カルシウム塩、マグネシウム塩、鉄塩、亜鉛塩、銅塩、マンガン塩、アルミニウム塩等に由来するものを含む。いくつかの実施形態は、アンモニウム塩、カリウム塩、ナトリウム塩、カルシウム塩、およびマグネシウム塩の少なくとも1つを含む。医薬的に許容される有機非毒性塩基由来の塩類は、一級、二級、および三級アミン類、自然に生じる置換アミン類を含む置換アミン類、イソプロピルアミン、トリメチルアミン、ジエチルアミン、トリエチルアミン、およびエタノールアミン等の環式アミンならびにイオン交換樹脂の塩類を含む。生体内投与に使用される製剤は、無菌であってもよい。これは、無菌濾過膜を通した濾過、または他の方法により容易に達成される。
【0201】
本明細書に開示される共結合分子は、免疫リポソームとしても製剤化されてもよい。リポソームは、治療薬を哺乳類に送達するのに有用である、様々な種類の脂質、リン脂質、および/または界面活性物質を含む小胞である。免疫グロブリンを含有するリポソームは、当該分野において知られている方法により調製される。リポソームの構成要素は、通常、生体膜の脂質配置に類似する、二分子層構造に配列される。特に有用なリポソームは、ホスファチジルコリン、コレステロール、およびPEG誘導体化ホスファチジルエタノールアミン(PEG−PE)を含む、脂質組成物を用いた逆相蒸発法により生成され得る。リポソームは、所定の孔径のフィルタを通して押出され、所望の径のリポソームが得られる。
【0202】
共結合分子および他の治療活性剤は、限定されないが、コロイド脱混合現象技法、界面重合(例えば、ヒドロキシメチルセルロースもしくはゼラチンマイクロカプセル、またはポリ−(メチルメタクリル酸)マイクロカプセル)、コロイド性薬物送達系(例えば、リポソーム、アルブミン微細球、微小乳濁液、ナノ粒子およびナノカプセル)、およびマクロエマルションを含む方法により調製される、マイクロカプセルに封入されてもよい。このような技法は、Remington’s Pharmaceutical Sciences 16th edition,Osol,A.Ed.,1980に開示されており、参照によりその全体が援用される。徐放性製剤が調製されてもよい。徐放性製剤の適切な例としては、マトリックスが、例えば、フィルム、またはマイクロカプセルの形態である、固体疎水性重合体の、半透過性マトリックスが挙げられる。徐放性マトリックスの例としては、ポリエステル、ヒドロゲル(例えば、ポリ(2−ヒドロキシエチル−メタクリル酸)、またはポリ(ビニルアルコール))、ポリアクチド、グルタミン酸とγエチル−L−グルタミン酸との共重合体、非分解性エチレン−ビニル酢酸、Lupron Depot(登録商標)(乳酸−グリコール酸共重合体と酢酸リュープロリドから成る注射可能な微小球)等の分解性乳酸−グリコール酸共重合体、ポリ−D−(−)−3−ヒドロキシ酪酸、およびポリ−DL−ラクチド−co−グリコリド(PLG)のマトリックスに組み込まれる、所望の生理活性分子からなる微小球に基づく送達系である、ProLease(登録商標)(Alkermesから市販)が挙げられる。
【0203】
投与
【0204】
本明細書に開示される共結合分子を含む、例えば、無菌水溶液の形態での医薬組成物の投与は、限定されないが、経口、皮下、静脈内、鼻腔内、耳内、経皮、局所(例えばゲル、塗剤、ローション、クリーム等)、腹膜内、筋肉内、肺内、膣内、非経口、直腸、または眼内を含む、様々な方式で行われてもよい。いくつかの場合において、例えば、創傷、炎症等の治療において、免疫グロブリンは、溶液またはスプレーとして直接適用されてもよい。当該分野において知られているように、医薬組成物は、導入様式に応じて製剤化されてもよい。
【0205】
皮下投与は、患者が、医薬組成物を自分で投与し得る状況において使用されてもよい。多くのタンパク質治療は、皮下投与の最大許容量で、治療有効量の製剤を可能にするのに十分に強力ではない。この問題は、アルギニン−HCl、ヒスチジン、およびポリソルベートを含む、タンパク質製剤の使用により、ある程度対処され得る。本明細書に開示される抗体は、例えば、効力の増加、血清半減期の改善、または溶解性の強化により、皮下投与により適し得る。
【0206】
当該分野において知られているように、タンパク質治療物質は、多くの場合、IV注入、またはボーラスにより送達され得る。本明細書に開示される抗体は、また、このような方法を使用して送達されてもよい。例えば、注入ビヒクルとして0.9%の塩化ナトリウムを含む、静脈内注入による投与であってもよい。
【0207】
肺送達は、吸入器具または噴霧器、およびエアロゾル化剤を含む製剤を使用して達成されてもよい。 例えば、Aradigmから市販されるAERx(登録商標)吸入可能技術、またはNektar Therapeuticsから市販されるInhance(登録商標)肺送達システムが使用されてもよい。本明細書に開示される抗体は、肺内送達により適し得る。FcRnは、肺に存在し、肺から血流への輸送を促進し得る(例えば、 Syntonix WO 04004798、Bitonti et al.(2004) Proc.Nat.Acad.Sci.101:9763−8、ともに、参照によりその全体が援用される)。したがって、肺でより効果的にFcRnを結合する、または血流により効果的に放出される抗体は、肺内投与後、改善された生体適合性を有し得る。本明細書に開示される抗体は、例えば、改善された溶解性または等電点の変化により、肺内投与により適し得る。
【0208】
さらに、本明細書に開示される共結合分子は、例えば、胃内pHでの改善された安定性、およびタンパク質分解に対する耐性の増加により、経口送達により適し得る。さらに、FcRnは、成人の腸上皮で発現するようであり、したがって、改善されたFcRn相互作用プロファイルを有する本明細書に開示される抗体は、径口投与後、強化された生体適合性を示し得る。抗体のFcRn媒介性輸送は、胃腸管、呼吸器、および生殖器のもの等、他の粘膜でも生じ得る。
【0209】
加えて、いくつかの送達系のいずれも、当該分野において知られており、本明細書に開示される抗体を投与するために使用されてもよい。例としては、これらに限定されないが、リポソーム、微小粒子、微小球(例えば、PLA/PGA 微小球)等への封入が挙げられる。代替的に、膜または繊維を含む、多孔性、非多孔性、ゼラチン様物質の移植が使用されてもよい。徐放系は、ポリエステル、ヒドロゲル、ポリ(ビニルアルコール)、ポリアクチド、L−グルタミン酸とエチル−L−グルタミン酸(gutamate)との共重合体、エチレン−ビニル酢酸、Lupron Depot(登録商標)等の乳酸−グリコール酸共重合体、およびポリ−D−(−)−3−ヒドロキシ酪酸等の、重合物質またはマトリックスを含んでもよい。例えば、レトロウイルス感染、直接注射、または脂質、細胞表面受容体、または他の形質導入剤でのコーティングにより、本明細書に開示される免疫グロブリンをコードする核酸を投与することも可能である。全ての場合において、制御放出系が、所望の動作位置で、またはその近くで、免疫ブロブリンを放出するように使用されてもよい。
【0210】
用量
【0211】
投与の用量および頻度は、一実施形態において、治療的または予防的に有効であるように選択される。当該分野において知られているように、タンパク質分解、全身に対して局所的送達、および新しいプロテアーゼ合成の速度、ならびに年齢、体重、一般健康状態、性別、食生活、投与の時間、薬物相互作用、および症状の重篤度に対する調整、必要不である場合があり、当業者により、日常の実験で確認可能である。
【0212】
製剤における治療活性共結合分子の濃度は、約0.1〜100重量%まで変動し得る。一実施形態において、共結合分子の濃度は、0.003〜1.0モルの範囲である。患者を治療するために、本明細書に開示される、治療有効量の免疫グロブリンが投与され得る。本明細書において、「治療有効量」とは、効果を生じる、投与される用量を意味する。正確な用量は、治療の目的に依存し、既知の技法を使用して、当業者により確認可能である。 投与量は、0.0001〜100mg/体重kgの範囲、もしくはそれ以上、例えば、0.1、1、10、または50mg/体重kgであってもよい。一実施形態において、投与量は、1〜10mg/kgの範囲である。
【0213】
いくつかの実施形態において、単一用量の共結合分子のみが使用される。他の実施形態において、多用量の共結合分子が投与される。投与間の経過時間は、1時間未満、約1時間、約1〜2時間、約2〜3時間、約3〜4時間、約6時間、約12時間、約24時間、約48時間、約2〜4日間、約4〜6日間、約1週間、約2週間、または2週間以上であり得る。
【0214】
他の実施形態において、本明細書に開示される共結合分子は、連続注入または長期休息期間なしの頻繁な投与のいずれかにより、メトロノミック投与計画で投与される。このようなメトロノミック投与は、休息期間なしの一定の間隔での投与を含み得る。典型的に、このような計画は、長期間、例えば、1〜2日間、1〜2週間、1〜2ヶ月間、または最大6ヶ月もしくはそれ以上の、慢性的な小用量、または連続注入を含む。小用量の使用は、副作用および休息期間の必要性を最小限にし得る。
【0215】
特定の実施形態において、本明細書に開示される共結合分子、および1つ以上の他の予防薬もしくは治療薬が、患者に周期的に投与される。周期治療は、一回目で第1の薬剤、2回目で第2の薬剤、任意に、追加回で追加の薬剤を投与し、任意の休息期間、そして1回またはそれ以上、この投与順序を繰り返すことを含む。反復の数は、典型的に、2〜10回である。治療の反復は、1つ以上の薬剤への耐性の発生を低減するか、副作用を最小限にするか、または治療効果を改善し得る。
【0216】
併用療法
【0217】
本明細書に開示される共結合分子は、1つ以上の他の治療計画または薬剤と同時に投与されてもよい。追加の治療計画または薬剤は、同じ疾病を治療するため、随伴する合併症を治療するために使用されるか、または効力、または免疫グロブリンの安全性を向上するために使用されてもよい。
【0218】
特に好適な併用療法は、アレルギーおよび喘息等のIgE媒介性疾患の治療について承認されているもの、または臨床的に評価中のものを含む。特に、本発明の治療組成物は、2つの主要な薬物治療群の、副腎皮質ステロイド等の抗炎症薬、および/またはβ2作動薬の吸入と組み合わせて使用されてもよい。吸入される副腎皮質ステロイドは、フルチカゾン、ブデソニド、フルニソリド、モメタゾン、トリアムシノロン、およびベクロメタゾンを含むが、一方、経口副腎皮質ステロイドは、プレドニゾン、メチルプレドニゾロン、およびプレドニゾロンを含む。他のステロイドは、糖質コルチコイド、デキサメタゾン、コルチゾン、ヒドロキシコルチゾン、プロスタグランジン、トロンボキサン、およびロイコトリエン等のアザルフィジンエイコサノイド、ならびにアントラリン、カルシポトリエン、クロベタゾール、およびタラゾテン等の外用ステロイドを含む。気管支拡張剤は、気道の径を拡大し、肺への流入および肺からの流出を容易にする。本発明の療法と組み合わされてもよい気管支拡張剤は、メタプロテレノール、エフェドリン、テエルブタリン、およびアルブテロール等の短期間作用型気管支拡張剤、およびサルメテロール、メタプロテレノール、およびテオフィリン等の長期作用型気管支拡張剤を含む。
【0219】
本発明の療法は、アスプリン、イブプロフェン、セレコキシブ、ジクロフェナク、エトドラク、フェノプロフェン、インドメタシン、ケトロラク、オキサプロジン、ナブメントン、スリンダク、トルメンチン、ロフェコキシブ、ナプロキセン、ケトプロフェン、およびナブメトン等の、非ステロイド性抗炎症薬剤(NSAID)と組み合わされてもよい。併用療法は、ロラタジン、フェキソフェナジン、セチリジン、ジフェンヒドラミン、マレイン酸クロルフェニラミン、クレマスチン、およびアゼラスチン等の、抗ヒスタミン薬を含んでもよい。併用療法は、噴霧形態あるいは経口形態の、クロモグリク酸、クロモグリク酸ナトリウム、およびネドロクロミル(nedrocromil)、ならびにオキシメタゾリン、フェニレフリン、およびプソイドエフェドリン等の、うっ血除去薬を含んでもよい。本発明の療法は、プランルカスト、ザフィルルカスト、およびモンテルカスト等のロイコトリエン受容体拮抗薬と呼ばれる抗炎症剤のクラス、ならびにジロートン等のロイコトリエン受容体合成阻害剤と組み合わされてもよい。
【0220】
本発明の療法は、アレルギー注射、ならびにIgEまたはFcεRの他の拮抗薬を含む、他の免疫療法と組み合わされてもよい。本発明の療法は、限定されないが、ケモカインCCR3、CCR4、CCR8、およびCRTH2、およびCCR5の阻害剤、ならびにサイトカインIL−13、IL−4、IL−5、IL−6、IL−9、IL−10、IL−12、IL−15、IL−18、IL−19、IL−21、サイトカイン受容体のクラスIIファミリー、IL−22、IL−23、IL−25、IL−27、IL−31、およびIL−33の阻害剤を含む、限定されない抗体およびFc融合物を含むケモカインまたはサイトカインの拮抗薬と組み合わされてもよい。本発明の療法は、接着、転写因子、および/または細胞内シグナル伝達の修飾因子と組み合わされてもよい。例えば、本発明の免疫グロブリンは、NF−kb、AP−1、GATA−3、Stat1、Stat−6、c−maf、NFAT、サイトカインシグナル伝達の抑制因子(SOCS)、ペルオキシソーム増殖活性化受容体(PPAR)、MAPキナーゼ、p38 MAPK、JNK、およびスフィンゴシン1−リン酸受容体の修飾因子と組み合わされてもよい。本発明の療法は、トシル酸(tolilate)スプラタスト、ホスホジエステラーゼ4(PDE4)の阻害剤、カルシウムチャネル遮断薬、およびヘパリン様分子とともに投与されてもよい。本発明の可能な併用療法は、Caramori et al.,2008,Journal of Occupational Medicine and Toxicology 3−S1−S6にさらに詳細に記載されている。
【0221】
本発明の療法は、また、1つ以上の抗生物質、抗真菌剤、または抗ウイルス剤と併せて使用されてもよい。本明細書に開示される抗体は、また、外科手術等の、他の治療計画と組み合わされてもよい。
【実施例】
【0222】
以下に提供する実施例は、単に例示を目的とする。これらの実施例は、本明細書に開示される任意の実施形態を、いかなる特定の用途または実施の理論にも限定するものではない。
【0223】
実施例1.IgE+FcγRIIb+細胞を阻害するための新規方法
【0224】
免疫グロブリンIgEは、影響を受けた組織における、アレルギー反応の中心的な発動因子であり、伝搬子である。IgEは、マスト細胞、好塩基球、好酸球、ならびに他の細胞型を含む、種々のエフェクター細胞上で発現する即時アレルギー性症状に関与する主要な受容体である、IgE(FcεRI)に対する高親和性受容体に結合する。免疫複合型IgEアレルゲンによるFcεRIの架橋は、これらの細胞を活性し、I型過敏症反応の発達を導き得る、ヒスタミン、プロスタグランジン、およびロイコトリエン等の化学伝達物質を放出する。承認されているモノクローナル抗体オマリズマブ(ゾレア)は、IgEに結合し、FcεRとの結合を遮断することにより、IgEを中和する。オマリズマブは、隔離を通して、生理活性IgEを低減し、組織マスト細胞および好塩基球に結合し、感作することができる抗原特異的IgEの量を減弱する。この自然循環IgEの中和は、次いで、アレルギー性疾病の症状の減少につながる。興味深いことに、血清IgEレベルは、オマリズマブ−IgE複合体形成により治療開始後に増加し、治療停止後、最大1年の間、高いレベルを維持する。結果として、この問題は、診断検査において偽陰性につながる場合があり、したがって、IgEレベルは、日常的に確認されなければならない。
【0225】
IgE経路を標的とする新規アプローチは、自然循環IgEの、エフェクター細胞上のFcεRとの結合を遮断するだけでなく、IgE産生の供給源を標的とする。IgEは、抗原侵入部位を排出するリンパ節に位置する、または局所的にアレルギー性反応の部位の、IgE産生形質細胞により分泌される。IgE産生形質細胞は、IgE+B細胞から分化する。B細胞のIgE産生へのクラス変換は、2つの個別の信号により誘発されるが、ともに、TH2細胞により提供され得る。
【0226】
分泌型および膜アンカー形態の2つの形態の免疫グロブリンがある。膜アンカー形態は、重鎖のC末端から伸長する膜アンカーペプチドを有するという点で、分泌型とは異なる。B細胞上の膜アンカー免疫グロブリンは、B細胞受容体(BCR)複合体とも称され、B細胞の機能において重要である。膜アンカー免疫グロブリンは、活性化リンパ芽球とIg分泌形質細胞とに分化するように、休止B細胞の信号を形質導入することができる。
【0227】
膜アンカーIgEを発現する分化されたB細胞は、本明細書では、mIgE+ B細胞と称されるが、自然の負に調節するフィードバック機構である、阻害Fc受容体FcγRIIbを有する。FcγRIIbは、B細胞、樹状細胞、単球、およびマクロファージを含む、種々の免疫細胞上で発現し、そこでは、免疫調節において重要な機能を担う。B細胞上でのその正常な機能において、FcγRIIbは、B細胞受容体(BCR)を通して、B細胞活性を調節するためのフィードバック機構として機能する。成熟型B細胞上の免疫複合型抗原によるBCRの共結合は、細胞増殖および分化をもたらす、カルシウム動員を含む細胞内シグナル伝達カスケードを活性化する。しかしながら、抗原に特異性を有するIgG抗体が産生されると、関連する免疫複合体(IC)は、BCRをFcγRIIbと架橋することができるが、この際、BCRの活性が、FcγRIIbの結合、およびBCR活性の下方制御経路に干渉する、関連する細胞内シグナル伝達経路により阻害される。mIgEをそれらのBCRとして使用するmIgE+B細胞の表面上のFcγRIIbの発現は、これらの細胞型の負の調節因子として機能する。
【0228】
図1に図示する、IgE媒介性疾病を阻害するための新規対処法は、膜アンカーIgEと阻害受容体FcγRIIbとの共結合により、IgE+B細胞(すなわち、膜アンカーIgEを発現するB細胞)を阻害することである。IgEを発現するようにクラス交換されたB細胞において、mIgEは、BCR(本明細書において、mIgE BCRと称される)として機能する。このアプローチは、B細胞活性の免疫複合型媒介性抑制の自然な生物学的機構を模倣し得、これにより、IgE産生形質細胞への分化を防止する。IgE産生形質細胞は、骨髄に存在し、おそらく、数週間から数ヶ月の寿命を有する。新しいIgE分泌形質細胞は、分化中、mIgE発現B細胞段階を通るため、その生成が、この抗IgE治療により、それらのmIgE+B細胞前駆体を阻害することにより抑止されると、既存の形質細胞は、数週間から数ヶ月以内に激減し、したがって、gEの産生も徐々に軽減されるだろう。重要なことは、mIgEを有するIgE+記憶B細胞の阻害も、高親和性で、FcγRIIbに共結合する抗IgE免疫グロブリンにより阻害されるだろう。これが生じると、療法は、根底にある疾病に長期的に影響を与え得る。
【0229】
実施例2.FcγRIIbに対して高親和性を有する抗IgE抗体
【0230】
生理学的状態下において、BCRのFcγRIIbとの架橋、および後続のB細胞の抑制は、IgGおよび同族抗原の免疫複合体を介して生じる。設計戦略は、単一の架橋抗体を使用して、この効果を再現することであった。ヒトIgGは、弱い親和性(IgG1に対して100nM超)でヒトFcγRIIbに結合し、FcγRIIb媒介性阻害は、単量体IgGではなく、免疫複合型IgGに応答して生じる。この受容体に対する高親和性(100nM未満)が、B細胞活性の最大阻害に要求されるであろうと推論された。本発明の抗IgE抗体の阻害活性を強化するために、Fc領域は、FcγRIIbへの結合を改善する変異体を用いて操作された。自然IgG1に対して改善された親和性で、FcγRIIbに結合する操作されたFc変異体が、記載されている(「Methods and Compositions for Inhibiting CD32b Expressing cells」の表題で、2008年5月30日に出願されたUSSN第12/156,183号、参照により本明細書に明示的に援用される)。
【0231】
変異体は、BCR共受容体複合体の調節構成要素である、抗原CD19を標的とする抗体の状況で、最初に生成された。この抗体のFv領域はヒト化され、親和性成熟された、抗体4G7の型であり、本明細書において、HuAM4G7と称される。この抗体のFv遺伝子は、哺乳類発現ベクターpTT5にサブクローン化された(National Research Council Canada)。Fcドメインにおける突然変異は、部位特異的突然変異誘発を使用して導入された(QuikChange,Stratagene,Cedar Creek,TX)。加えて、置換G236RおよびL328R(G236R/L328R)を含む、Fc受容体に対して切断された親和性を有する、制御されたノックアウト変異体を生成した。この変異体は、Fc−KOまたはFcノックアウトと称される。重鎖および軽鎖コンストラクトは、発現のために、HEK293E細胞に同時導入され、抗体は、タンパク質A親和性クロマトグラフィー(Pierce Biotechnology,Rockford,IL)を使用して精製された。
【0232】
結合試験のための組み換えヒトFcγRIIbタンパク質は、R&D Systems(Minneapolis,MN)から購入した。FcγRIIaおよびFcγRIIIa受容体タンパク質をコードする遺伝子は、Mammalian Gene Collection (ATCC)から購入し、6X Hisタグを含有するpTT5ベクター(National Research Council Canada) にサブクローン化した。受容体(FcγRIIaおよびV158に対してH131およびR131、ならびにFcγRIIIaに対してF158)の対立遺伝子型は、QuikChange突然変異源性を使用して生成された。受容体をコードするベクターは、HEK293T細胞に形質移入され、タンパク質は、ニッケル親和性クロマトグラフィーを使用して精製された。
【0233】
本明細書においてBiacoreとも称される、リアルタイムで生体分子相互作用について試験するための表面プラズモン共鳴(SPR)に基づく技術である、Biacore技術を使用して、受容体親和性について変異体を検査した。SPR測定は、Biacore 3000装置(Biacore,Piscataway,NJ)を使用して実施された。標準的な一級アミンカップリングプロトコルを使用して、タンパク質A/G(Pierce Biotechnology)CM5バイオセンサーチップ(Biacore)を生成した。全ての測定は、HBS−EP緩衝液(10mM HEPES pH7.4、0.15M NaCl、3mM EDTA、0.005% vol/vol界面活性剤P20、Biacore)を使用して実施された。20nMまたは50nM含有HBS−EP緩衝液での抗体は、タンパク質A/G表面上に固定化され、FcγRが注入された。各周期後、表面は、グリシン緩衝液(10mM、pH1.5)を注入することにより再生された。データは、適切な非特異的信号(流動緩衝液の対照チャネルおよび注入の応答)を減算することにより、FcγRの注入前の時間および応答をゼロにすることにより処理された。動態分析は、BIAevaluationソフトウェア(Biacore)を使用して、1:1ラングミュア結合モデルを用いた、結合データの包括的適合により実施された。
【0234】
選択変異体抗CD19抗体のFcγRIIbへの結合の代表的な一連のセンサグラムを図2に示す。Biacore結合データの適合から得た、FcγRの全てに対する全ての変異体および野生型(自然)IgG1の親和性を図3にプロットし、図4に数値的に提供する。野生型IgG1 Fcが、μM台の親和性(図4において、K=1.8μM)で、FcγRIIbと結合する一方で、阻害受容体により堅固に結合するいくつかの変異体、例えば、G236D/S267E、S239D/S267E、およびS267E/L328Fが、操作された。USSN 11/124,620に記載する、S239D/I332E変異体も、活性受容体FcγRIIaおよびFcγRIIIaに対して、改善された親和性を有し、したがって、媒介された、強化された抗体依存性細胞媒介細胞傷害性(ADCC)およびファゴサイトーシス(ADCP)が可能である。FcノックアウトまたはFc−KOとも称されるG236R/L328R変異体は、Fc受容体への結合を欠損し、本明細書に記載される実験において、対照として使用される。
【0235】
選択変異体は、IgEを標的とする抗体において構築される。抗IgE抗体の重鎖および軽鎖可変領域(VHおよびVL)を図5に提供する。アレルギー性喘息の治療に近年承認された、オマリズマブはヒト化抗体であり、ゾレアの商品名で市販されている。MaE11は、オマリズマブのマウス前駆体である。H1L1_MaE11は、MaE11の新規ヒト化変型である。これらの抗IgE抗体の重および軽VHおよびVLドメインをコードする遺伝子は、商業的に合成された(Blue Heron Biotechnologies)。また、本明細書に記載する実験で負の対照として使用された、抗呼吸器合胞体ウイルス(RSV)抗体モタビズマブの可変領域VHおよびVL遺伝子が合成された。VL遺伝子は、Cκ定常鎖をコードする、哺乳類発現ベクターpTT5(NRC−BRI,Canada)にサブクローン化された。VH遺伝子は、自然IgG1および変異体定常鎖をコードする、pTT5ベクターにサブプローン化された。選択定常鎖のアミノ酸配列を図6に提供する。全てのDNAは、配列の忠実度を確認するために配列決定された。選択抗体の完全長重鎖および軽鎖のアミノ酸配列を図7に提供する。
【0236】
プラスミド含有重鎖および軽鎖遺伝子は、リポフェクタミン(Invitrogen)を使用してHEK293E細胞に同時導入され、FreeStyle293媒体(Invitrogen)中で成長させた。成長5日後、MabSelect樹脂(GE Healthcare)を使用して、タンパク質A親和性により、抗体を培養上澄みから精製した。
【0237】
Biacoreを使用して、IgEおよびFcγRIIbへの結合について、変異体および自然IgG1抗IgE抗体を検査した。使用された抗IgE抗体の結合部位を含有する、IgEのFc領域をコードするDNAを合成し(Blue Heron Biotechnologies)、pTT5ベクターにサブクローン化した。IgE Fcは、293E細胞で発現され、上述のタンパク質Aを使用して精製された。SPR測定は、分析物がIgEのFcγRIIbまたはFc領域のいずれかであったことを除き、上述のタンパク質A/抗体捕獲法を使用して実施された。データ取得およびあてはめは上述の通りである。 図8は、これらの結合実験から得られた平衡結合定数(Ks)、ならびにFcγRIIbへの結合についての自然IgG1に対する折り畳み親和性を提供する。図9は、これらのデータのプロットを示す。結果は、抗体のIgEに対する親和性の高さ、およびS267E/L328F変異体が、2桁以上異なって、FcγRIIbへの結合を改善することを確定すし、前の結果と一致する。
【0238】
特定の変異体、例えば、S267E/L328FおよびS239D/I332Eの使用は、ここで、本明細書に記載される機構に関する概念の例示説明を意図し、本発明をそれらの特定の使用に限定するものではない。USSN第12/156,183号およびUSSN第11/124,620号に提供されるデータは、いくつかの操作された変異体が、特定のFc位置で、標的の特性を提供することを示唆する。FcγR親和性、得にFcγRIIbに対する親和性を強化するための置換は、234、235、236、237、239、266、267、268、325、326、327、328、および332を含む。いくつかの実施形態において、置換は、FcγRIIbに対する親和性を強化するために、限定されない、次の位置の少なくとも1つ以上に対して行われる:235、236、239、266、267、268、および328。
【0239】
FcγRIIbに対する親和性を強化するように置換を行うための、限定されない位置の組み合わせは、234/239、234/267、234/328、235/236、235/239、235/267、235/268、235/328、236/239、236/267、236/268、236/328、237/267、239/267、239/268、239/327、239/328、239/332、266/267、267/268、267/325、267/327、267/328、267/332、268/327、268/328、268/332、326/328、327/328、および328/332を含む。いくつかの実施形態において、FcγRIIbに対する親和性を強化するように置換を行うための位置の組み合わせは、限定されないが、235/267、236/267、239/268、239/267、267/268、および267/328を含む。
【0240】
FcγRIIbに対する親和性を強化するための置換は、234D、234E、234W、235D、235F、235R、235Y、236D、236N、237D、237N、239D、239E、266M、267D、267E、268D、268E、327D、327E、328F、328W、328Y、および332Eを含む。いくつかの実施形態において、FcγRIIbに対する親和性を強化するように置換を行うための位置の組み合わせは、限定されないが、235Y、236D、239D、266M、267E、268D、268E、328F、328W、および328Yを含む。
【0241】
FcγRIIbに対する親和性を強化するための置換の組み合わせは、L234D/S267E、L234E/S267E、L234F/S267E、L234E/L328F、L234W/S239D、L234W/S239E、L234W/S267E、L234W/L328Y、L235D/S267E、L235D/L328F、L235F/S239D、L235F/S267E、L235F/L328Y、L235Y/G236D、L235Y/S239D、L235Y/S267D、L235Y/S267E、L235Y/H268E、L235Y/L328F、G236D/S239D、G236D/S267E、G236D/H268E、G236D/L328F、G236N/S267E、G237D/S267E、G237N/S267E、S239D/S267D、S239D/S267E、S239D/H268D、S239D/H268E、S239D/A327D、S239D/L328F、S239D/L328W、S239D/L328Y、S239D/I332E、S239E/S267E、V266M/S267E、S267D/H268E、S267E/H268D、S267E/H268E、S267E/N325L、S267E/A327D、S267E/A327E、S267E/L328F、S267E/L328I、S267E/L328Y、S267E/I332E、H268D/A327D、H268D/L328F、H268D/L328W、H268D/L328Y、H268D/I332E、H268E/L328F、H268E/L328Y、A327D/L328Y、L328F/I332E、L328W/I332E、およびL328Y/I332Eを含む。いくつかの実施形態においてFcγRIIbに対する親和性を強化するための置換の組み合わせは、限定されないが、L235Y/S267E、G236D/S267E、S239D/H268D、S239D/S267E、S267E/H268D、S267E/H268E、およびS267E/L328Fを含む。
【0242】
実施例3.FcγRIIbに対して高親和性を有する抗IgE抗体によるIgE+B細胞の生体外阻害
【0243】
IgEを検出するための酵素結合免疫吸着測定法(ELISA)を確立した。pH9.4の炭酸水素ナトリウム緩衝液でコーティングした後、pH9.4(0.1Mの炭酸水素ナトリウム緩衝液)で、一晩、10ug/mLで、抗IgE捕獲抗体との付着により、平底プレートを調製した。翌日、プレートを3%BSA/PBSで遮断し、IgE(ヒトIgE ELISAキットから、Bethyl Laboratories)の段階希釈が、1μg/mLに3x添加された。3時間後、プレートをTTBSで3x(200ul)洗浄し、結合IgEを測定した。HRP複合型ヤギポリクローナル抗ヒトIgE抗体(Bethyl Laboratories)を1%BSA/PBS中で、1時間、(1:5000)で添加した。試料を3x洗浄し、TMBペルオキシダーゼ基質(KPL,Inc50−76−00)を用いて検出した。反応を50μlの2N H2SO4で停止させ、450nmで読み取った。
【0244】
図10は、3つのモノクローナル抗IgE抗体(MabTech;107/182/101)、MaE11_IgG1_G236R/L328R、およびオマリズマブ_IgG1_G236R/L328Rのプールを含む、種々の抗ヒトIgE抗体を用いた、 IgEの捕獲を示す。データは、市販の抗IgE抗体試薬(MabTech)、オマリズマブ、およびその親キメラ抗体MaE11が、IgEを捕獲することができることを示す。IgEを検出するようにこの検定を使用するために、MaE11およびオマリズマブ抗体が、MabTech抗 IgE試薬により捕獲されたIgEに干渉するかどうかを決定することが必要であった。検定は、上述のように繰り返され、吸光度からのIgEの濃度を、標準曲線を使用して計算した。図11は、抗IgE抗体オマリズマブ_G236R/L328Rが、現在のELISAプロトコルにおいて、MabTech抗IgE抗体と競合しないことを示す。
【0245】
Fc変異体抗IgE抗体を、IgE+B細胞を阻害するそれらの能力について検査した。ヒトPBMCを、5ng/mLのインターロイキン−4(IL−4)および100ng/mLの抗CD40抗体(クローンG28.5 IgG1)を添加することにより、IgE産生B細胞にクラス変換するように誘発した。抗CD40抗体は、CD40のアゴニストであり、したがって、活性化補助因子CD40Lの活性を模倣する。様々な濃度の抗IgE抗体を添加し、試料を12日間、インキュベートした。捕獲抗体として5ug/mL Mabtech抗IgEを使用して、上述のようにELISAプレートを調製し、遮断した。 100ulのPBMC試料を添加し、3時間超インキュベートした後、TTBS 3x(200ul)で洗浄した。抗体HRP複合型抗体を添加し、上述のように検出した。標準曲線を使用して、450nmでの吸光度をIgE濃度に変換した。結果を図12に示す。FcγR結合(G236R/L328R変異体)を欠損する抗体、または IgEに対して特異性を持たない抗体(モタビズマブ抗RSV抗体)は、分化されたB細胞からのIgE産生に影響を与えなかった。逆に、FcγRIIbに対して大きい親和性を有する変異体抗体は、IgE産生を阻害した。これらのデータは、表面IgEと阻害FcγR受容体FcγRIIbとの共結合が、その免疫グロブリン型のクラス変換されたB細胞を阻害することを示唆する。IgE+B細胞の阻害は、IgE発現形質細胞の数を低減し、これは次いで、検出されるIgEの量を低減する。IgE産生B細胞に対するこの活性の選択性を評価するために、IgG2 ELISA(Bethyl Laboratories)を使用して、同じ試料からヒトIgG2を測定した。図13は、IgG2分泌が阻害されなかったことを示し、高FcγRIIb親和性を有する抗gE抗体の阻害活性は、IgE+クラス変換された細胞に対して選択的であることを示す。承認された抗IgE抗体オマリズマブの変異体を使用したこの実験の繰り返しは、高FcγRIIb親和性を有する変異体による類似した阻害結果を示した(図14)。
【0246】
高FcγRIIb親和性を有する抗IgE抗体のIgE産生を阻害する能力は、mIgE BCR刺激の存在下で評価された。IL−4およびα−CD40アゴニスト抗体により促進されたIgEへクラス変換で、上記の検定が繰り返され、加えて、B細胞が、抗μ抗体、または抗CD79b抗体のいずれかを使用して活性化された。これらの抗体は、BCRに架橋し、これにより、免疫複合型抗原に類似した信号を提供する。抗μ抗体は、膜アンカーIgMに架橋結合し、抗CD79bはCD79bに架橋し、これは、BCR複合体のシグナル伝達構成要素である。PBMCは、IL−4、α−CD40、および抗CD79b または抗μのいずれかと共に14日間インキュベートされ、IgEは、上述のように検出された。抗CD79b(図15)および抗μ(図16)の結果は、B細胞がBCR架橋結合を介して刺激される時、FcγRIIbに対して高親和性を有する抗IgE抗体が、IgE産生を阻害することができることを示す。
【0247】
IgE+B細胞を阻害するための追加戦略は、これらを枯渇することである。 これは、エフェクター機能について強化された、抗IgE抗体を使用して行うことができる。変異体S239D/I332Eは、活性化受容体であるFcγRIIaおよびFcγRIIIa(図3および図4)への結合を増加し、したがって、ADCCおよびADCPエフェクター機能を改善する。上記のB細胞検定を、抗IgE抗体オマリズマブのS239D/I332E変異体を使用して実施した。PBMCは、IL−4、α−CD40、および抗CD79b(図17)または抗μ(図18)のいずれかと共に、14日間インキュベートされ、IgEは、上述のように検出された。結果(図17および18)は、最適化されたエフェクター機能を有する抗IgE抗体が、クラス変更されたIgE+B細胞からのIgE産生を阻害できることを示す。
【0248】
実施例4.FcγRIIbに対して高親和性を有する抗IgE抗体によるIgE+B細胞の生体内阻害
【0249】
本明細書に開示される免疫グロブリンは、ヒトにおける治療活性の代用として、huPBL−SCIDマウスモデルを使用して評価された。この試験は、一般的なヒトアレルゲンであるチリダニタンパク質Der p 1に応答する、本明細書に記載される抗IgE抗体のB細胞活性および形質細胞発達を阻害する能力を検査した。この方法において、Der p 1にアレルギー性反応を有する血液ドナーからのヒト末梢血白血球が、免疫欠損SCIDマウスに移植され、自然または変異体抗IgE抗体で処置された。マウスは、免疫応答を刺激するために、抗原によって攻撃され、形質細胞へのB細胞の発達の経過を検査するために、免疫グロブリンの産生が測定された。
【0250】
血液ドナーは、Der p 1に対する抗IgE抗体の存在に基づいて、チリダニ抗原に対するアレルギーについてスクリーニングされた。陽性反応のドナーは、末梢血単核球(PBMC)を得る(obtained)ために、白血球除去された。本試験のプロトコルを図20に提供する。PBMC注入の1日前に、マウスに100μlの抗シアロGM抗体(Wako,Richmond,VA)を用いて腹腔内(i.p.)注射を与え、マウス自然キラー(NK)細胞を枯渇した。翌日、マウスに、0.5mL量の3x10 PBLを腹腔内に注入した。PBMC注入後、各群に7匹のマウスの、5つの異なるマウス群にマウスを分けた。PBMC注入後7日目、ELISA(ZeptoMetrix,Buffalo,NY)により、ヒトIgGおよびIgEレベルを決定するために、後眼窩洞/神経叢(OSP)穿刺を介して、血液を全てのマウスから採取した。2日後(9日目)、マウスに、10mg/kg抗体またはPBSを腹腔内に注入した。11日目、マウスに、15μgのチリダニ抗原Der p 1(LoTox Natural Der p 1,Indoor Biotechnologies,Charlottesville,VA)を腹腔内に注入した。23日目(抗原ワクチン接種後12日目)、ヒトIgGおよびIgE抗体を決定するために、血液を全てのマウスから採取した。同じ日、マウスは、2回目の10mg/kg抗体またはPBSの腹腔内に注入を受けた。2日後(25日目)、マウスは、10ugのチリダニ抗原Der p 1の腹腔内追加免疫ワクチン接種を受けた。37日目(抗原追加免疫後12日目)、ヒト免疫グロブリン決定のために、血液をOSPにより採取した。ヒトIgGおよびIgE濃度は、上述のものと同様のELISA法を使用して測定された。
【0251】
血清IgGおよびIgEレベルについての結果を、それぞれ図21および21に示す。抗原曝露前、ヒトIgGおよびIgE抗体のレベルは、全群において低かった。Der p 1免疫化後、全群が、高レベルのヒトIgGを示し、移植されたヒトB細胞によるワクチン接種されたDer p 1抗原または内因性マウス抗原のいずれかへの強い免疫応答を示した。IgG応答とは逆に、処置群は、IgE抗体の産生において、有意に異なった。オマリズマブおよびH1L1 MaE11 のIgG1型は、ヒトIgEの産生を阻害する能力において、ビヒクルと等しかった。しかしながら、H1L1 MaE11のFcγRIIbl強化(IIbE、S267E/L328F)型は、検出可能なレベルのヒトIgEを示さなかった。全てのFcγRへの結合を欠失する、H1L1 MaE11のFc−KO(変異体G236R/L328R)型は、ヒトIgE産生において亢進を示した。これは、おそらく、ヒトmIgEに架橋するその能力、したがってIgE+B細胞を活性化するが、抗体のIgG1およびIIbE型が有するもの等の、FcγRIIb阻害またはFcγRIIa/IIIa細胞障害活性のその完全な欠損によるのである。これらの生体内データは、FcγRIIbに対して高親和性を有する抗IgE抗体が、ヒトIgE+B細胞活性化および免疫グロブリン分泌形質細胞分化を阻害することができ、したがって、本明細書に開示される免疫グロブリンのIgE媒介性疾患を治療する可能性を支持することを示す。
【0252】
引用される全ての参考文献は、参照によりそれらの全体が本明細書に明示的に援用される。
【0253】
特定の実施形態が、例示の目的のため、上で説明されたが、詳細の多くの変形が、特許請求の範囲で記載される、本発明から逸脱することなく行われてもよいことを、当業者は理解するであろう。
図1
図2
図3
図4
図5-1】
図5-2】
図5-3】
図6
図7
図8
図9
図10
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図12
図13
図14
図15
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図18
図19
図20
図21
【配列表】
[この文献には参照ファイルがあります.J-PlatPatにて入手可能です(IP Forceでは現在のところ参照ファイルは掲載していません)]