(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5785511
(24)【登録日】2015年7月31日
(45)【発行日】2015年9月30日
(54)【発明の名称】エンジンの燃料供給装置
(51)【国際特許分類】
F02M 37/00 20060101AFI20150910BHJP
F02M 31/20 20060101ALI20150910BHJP
【FI】
F02M37/00 331A
F02M37/00 N
F02M37/00 P
F02M31/20 E
【請求項の数】7
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2012-57801(P2012-57801)
(22)【出願日】2012年3月14日
(65)【公開番号】特開2013-189939(P2013-189939A)
(43)【公開日】2013年9月26日
【審査請求日】2014年3月25日
(73)【特許権者】
【識別番号】000001052
【氏名又は名称】株式会社クボタ
(74)【代理人】
【識別番号】100107308
【弁理士】
【氏名又は名称】北村 修一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100137590
【弁理士】
【氏名又は名称】音野 太陽
(72)【発明者】
【氏名】小野 晃由
(72)【発明者】
【氏名】久田 貴大
(72)【発明者】
【氏名】金田 光久
【審査官】
二之湯 正俊
(56)【参考文献】
【文献】
特開2004−278526(JP,A)
【文献】
特開2006−329101(JP,A)
【文献】
国際公開第2005/083258(WO,A1)
【文献】
実開昭62−197766(JP,U)
【文献】
特開昭57−131858(JP,A)
【文献】
特開2010−007487(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F02M 37/00−37/22
F02M 31/00−33/08
F02M 39/00−71/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
燃料タンクに貯留されている燃料をエンジンに供給する燃料供給路を備え、その燃料供給路には、燃料供給方向の上流側から順に、フィルタ、第1燃料ポンプが備えられているエンジンの燃料供給装置であって、
前記燃料供給路において前記燃料タンクと前記フィルタとの間の部位に、燃料を合流させて排出する合流排出部が配置され、前記エンジンの燃料を前記合流排出部に戻す第1燃料戻し路と、前記合流排出部から排出される燃料を前記燃料タンクに戻す第2燃料戻し路とを備え、前記合流排出部は、燃料を貯留自在な貯留部と、前記燃料供給路において前記合流排出部よりも上流側部位からの燃料を前記貯留部に合流させる第1合流部と、前記第1燃料戻し路からの燃料を前記貯留部に合流させる第2合流部と、前記貯留部の燃料の一部を前記燃料供給路において前記合流排出部よりも下流側部位に排出する第1排出部と、前記貯留部の燃料の残りの一部を前記第2燃料戻し路に排出する第2排出部とを備えており、
前記合流排出部は、前記第1合流部と前記第2合流部と前記第1排出部とが前記貯留部の下端部に配置され、且つ、前記第2排出部が前記貯留部の上端部に配置されているエンジンの燃料供給装置。
【請求項2】
燃料タンクに貯留されている燃料をエンジンに供給する燃料供給路を備え、その燃料供給路には、燃料供給方向の上流側から順に、フィルタ、第1燃料ポンプが備えられているエンジンの燃料供給装置であって、
前記燃料供給路において前記燃料タンクと前記フィルタとの間の部位に、燃料を合流させて排出する合流排出部が配置され、前記エンジンの燃料を前記合流排出部に戻す第1燃料戻し路と、前記合流排出部から排出される燃料を前記燃料タンクに戻す第2燃料戻し路とを備え、前記合流排出部は、燃料を貯留自在な貯留部と、前記燃料供給路において前記合流排出部よりも上流側部位からの燃料を前記貯留部に合流させる第1合流部と、前記第1燃料戻し路からの燃料を前記貯留部に合流させる第2合流部と、前記貯留部の燃料の一部を前記燃料供給路において前記合流排出部よりも下流側部位に排出する第1排出部と、前記貯留部の燃料の残りの一部を前記第2燃料戻し路に排出する第2排出部とを備えており、
前記第2排出部からの燃料排出量が前記第1排出部からの燃料排出量よりも少量になるように構成されているエンジンの燃料供給装置。
【請求項3】
前記第2排出部からの燃料排出量を前記第1排出部からの燃料排出量よりも少量とするに当たり、前記第2排出部に前記第1排出部よりも流路断面積を小さくした絞り部位を備えている、又は、前記第2燃料戻し路に前記燃料供給路における下流側部位よりも流路断面積を小さくした絞り部位を備えている請求項2に記載のエンジンの燃料供給装置。
【請求項4】
燃料タンクに貯留されている燃料をエンジンに供給する燃料供給路を備え、その燃料供給路には、燃料供給方向の上流側から順に、フィルタ、第1燃料ポンプが備えられているエンジンの燃料供給装置であって、
前記燃料供給路において前記燃料タンクと前記フィルタとの間の部位に、燃料を合流させて排出する合流排出部が配置され、前記エンジンの燃料を前記合流排出部に戻す第1燃料戻し路と、前記合流排出部から排出される燃料を前記燃料タンクに戻す第2燃料戻し路とを備え、前記合流排出部は、燃料を貯留自在な貯留部と、前記燃料供給路において前記合流排出部よりも上流側部位からの燃料を前記貯留部に合流させる第1合流部と、前記第1燃料戻し路からの燃料を前記貯留部に合流させる第2合流部と、前記貯留部の燃料の一部を前記燃料供給路において前記合流排出部よりも下流側部位に排出する第1排出部と、前記貯留部の燃料の残りの一部を前記第2燃料戻し路に排出する第2排出部とを備えており、
前記燃料供給路には、燃料供給方向の上流側から順に、燃料に含まれる水分を除去する水分除去部、第2燃料ポンプ、前記合流排出部、燃料を冷却する冷却部、第3燃料ポンプ、前記フィルタ、前記第1燃料ポンプが備えられているエンジンの燃料供給装置。
【請求項5】
前記合流排出部は、前記第1合流部と前記第2合流部と前記第1排出部とが前記貯留部の下方側部位に配置され、且つ、前記第2排出部が前記貯留部の上方側部位に配置されている請求項2〜4の何れか1項に記載のエンジンの燃料供給装置。
【請求項6】
前記燃料供給路における前記燃料タンクと前記合流排出部との間の部位には、燃料に含まれる水分を除去する水分除去部が配置されている請求項1〜5の何れか1項に記載のエンジンの燃料供給装置。
【請求項7】
前記燃料供給路における前記合流排出部と前記フィルタとの間の部位には、燃料を冷却する冷却部が配置されている請求項1〜6の何れか1項に記載のエンジンの燃料供給装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、燃料タンクに貯留されている燃料をエンジンに供給する燃料供給路を備え、その燃料供給路には、燃料供給方向の上流側から順に、フィルタ、第1燃料ポンプが備えられているエンジンの燃料供給装置に関する。
【背景技術】
【0002】
上記のような燃料供給装置では、燃料供給路に備えられたフィルタによって燃料に含まれる不純物を除去し、その不純物を除去した燃料をエンジンに供給している。そして、エンジンからの燃料を燃料タンクに戻す燃料戻し路を備えており、この燃料戻し路によってエンジンでの余剰燃料を燃料タンクに戻すようにしている。
このような燃料供給装置では、フィルタによって不純物が除去されているが、例えば、寒冷地でエンジンの始動初期等、フィルタに供給される燃料温度が低い場合に、燃料から析出物等が生じ、その析出物によってフィルタが目詰まりするという問題が生じる。
【0003】
そこで、従来の燃料供給装置では、燃料供給路の途中部位と燃料戻し路の途中部位とを連通する連絡流路を設け、その連絡流路に温度感応変位式の環流バブルを備えている(例えば、特許文献1参照。)。
この特許文献1に記載の装置では、燃料温度が所定値未満である場合に、環流バルブが連絡流路を開放することで、エンジンから燃料タンクに戻す比較的高温の燃料を、燃料タンクからの燃料に混合させてフィルタに供給している。これにより、フィルタに供給する燃料温度を上昇させてフィルタの目詰まりを防止している。また、燃料温度が所定値以上である場合には、環流バブルが連絡流路を閉鎖することで、エンジンからの余剰燃料の全量を燃料タンクに戻すようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2007−16658号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記特許文献1に記載の装置では、フィルタの目詰まりを防止するために、バイメタル等の温度感応変位体を有する環流バルブを備えることが必要となるので、それだけコストアップ及び構成の複雑化を招くことになる。
【0006】
本発明は、かかる点に着目してなされたものであり、その目的は、コストアップ及び構成の複雑化を招くことなく、フィルタの目詰まりを防止することができるエンジンの燃料供給装置を提供する点にある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この目的を達成するために、本発明
の第1発明に係るエンジンの燃料供給装置の特徴構成は、燃料タンクに貯留されている燃料をエンジンに供給する燃料供給路を備え、その燃料供給路には、燃料供給方向の上流側から順に、フィルタ、第1燃料ポンプが備えられているエンジンの燃料供給装置において、
前記燃料供給路において前記燃料タンクと前記フィルタとの間の部位に、燃料を合流させて排出する合流排出部が配置され、前記エンジンの燃料を前記合流排出部に戻す第1燃料戻し路と、前記合流排出部から排出される燃料を前記燃料タンクに戻す第2燃料戻し路とを備え、前記合流排出部は、燃料を貯留自在な貯留部と、前記燃料供給路において前記合流排出部よりも上流側部位からの燃料を前記貯留部に合流させる第1合流部と、前記第1燃料戻し路からの燃料を前記貯留部に合流させる第2合流部と、前記貯留部の燃料の一部を前記燃料供給路において前記合流排出部よりも下流側部位に排出する第1排出部と、前記貯留部の燃料の残りの一部を前記第2燃料戻し路に排出する第2排出部とを備えて
おり、
前記合流排出部は、前記第1合流部と前記第2合流部と前記第1排出部とが前記貯留部の下端部に配置され、且つ、前記第2排出部が前記貯留部の上端部に配置されている点にある。
また、上記目的を達成するために、本発明の第2発明に係るエンジンの燃料供給装置の特徴構成は、燃料タンクに貯留されている燃料をエンジンに供給する燃料供給路を備え、その燃料供給路には、燃料供給方向の上流側から順に、フィルタ、第1燃料ポンプが備えられているエンジンの燃料供給装置であって、
前記燃料供給路において前記燃料タンクと前記フィルタとの間の部位に、燃料を合流させて排出する合流排出部が配置され、前記エンジンの燃料を前記合流排出部に戻す第1燃料戻し路と、前記合流排出部から排出される燃料を前記燃料タンクに戻す第2燃料戻し路とを備え、前記合流排出部は、燃料を貯留自在な貯留部と、前記燃料供給路において前記合流排出部よりも上流側部位からの燃料を前記貯留部に合流させる第1合流部と、前記第1燃料戻し路からの燃料を前記貯留部に合流させる第2合流部と、前記貯留部の燃料の一部を前記燃料供給路において前記合流排出部よりも下流側部位に排出する第1排出部と、前記貯留部の燃料の残りの一部を前記第2燃料戻し路に排出する第2排出部とを備えており、
前記第2排出部からの燃料排出量が前記第1排出部からの燃料排出量よりも少量になるように構成されている点にある。
また、上記目的を達成するために、本発明の第3発明に係るエンジンの燃料供給装置の特徴構成は、燃料タンクに貯留されている燃料をエンジンに供給する燃料供給路を備え、その燃料供給路には、燃料供給方向の上流側から順に、フィルタ、第1燃料ポンプが備えられているエンジンの燃料供給装置であって、
前記燃料供給路において前記燃料タンクと前記フィルタとの間の部位に、燃料を合流させて排出する合流排出部が配置され、前記エンジンの燃料を前記合流排出部に戻す第1燃料戻し路と、前記合流排出部から排出される燃料を前記燃料タンクに戻す第2燃料戻し路とを備え、前記合流排出部は、燃料を貯留自在な貯留部と、前記燃料供給路において前記合流排出部よりも上流側部位からの燃料を前記貯留部に合流させる第1合流部と、前記第1燃料戻し路からの燃料を前記貯留部に合流させる第2合流部と、前記貯留部の燃料の一部を前記燃料供給路において前記合流排出部よりも下流側部位に排出する第1排出部と、前記貯留部の燃料の残りの一部を前記第2燃料戻し路に排出する第2排出部とを備えており、
前記燃料供給路には、燃料供給方向の上流側から順に、燃料に含まれる水分を除去する水分除去部、第2燃料ポンプ、前記合流排出部、燃料を冷却する冷却部、第3燃料ポンプ、前記フィルタ、前記第1燃料ポンプが備えられている点にある。
【0008】
本発明によれば、燃料タンクからの燃料が燃料供給路の上流側部位にて合流排出部に供給されており、エンジンからの燃料が第1燃料戻し路にて合流排出部に戻されている。合流排出部では、第1合流部にて燃料タンクからの燃料が貯留部に合流され、第2合流部にてエンジンからの燃料が貯留部に合流され、その合流後の燃料が貯留部に貯留される。そして、合流排出部では、貯留部に貯留される燃料の一部が第1排出部にて燃料供給路の下流側部位に排出され、残りの一部の燃料が第2排出部にて第2燃料戻し路に排出される。
【0009】
このようにして、合流排出部によって、エンジンからの燃料を燃料タンクからの燃料に合流させて、その合流後の燃料を燃料供給路の下流側部位を通してフィルタに供給することができる。よって、寒冷地でエンジンの始動初期等であっても、エンジン等から発生する熱にて加熱された燃料を燃料タンクからの低温の燃料に合流させて、比較的高温の燃料をフィルタに供給することができ、フィルタの目詰まりを防止することができる。その結果、環流バルブを必要とせずに、合流排出部を備えるだけでよく、コストアップ及び構成の複雑化を招くことなく、フィルタの目詰まりを防止することができる。
【0010】
しかも、合流排出部の貯留部に貯留される燃料のうち、燃料供給路の下流側部位に排出される以外の残りの一部は、第2排出部にて第2燃料戻し路に排出されて、燃料タンクに戻される。これにより、フィルタの目詰まりを防止できながら、エンジンの余剰燃料を燃料タンクに戻すことも適切に行うことができる。
【0012】
さらに、本発明の第2発明によれば、合流排出部における貯留部に貯留される燃料のうち、第2排出部から排出されて燃料タンクに戻される燃料流量の方が、第1排出部から排出されてフィルタ及びエンジンに供給される燃料流量よりも少量となる。そして、燃料供給路の上流側部位にて合流排出部に供給される燃料流量は、合流排出部から燃料タンクに戻される燃料流量に応じた量となるので、燃料タンクから合流排出部に供給される燃料流量も少量とすることができる。これにより、エンジンからの燃料を燃料タンクからの燃料に合流させる流量をより多くすることができ、フィルタに供給する燃料温度の上昇を適切に行い、フィルタの目詰まりを確実に防止することができる。
さらに、本発明の第3発明によれば、燃料供給路における上流側部位に、水分除去部に加えて、第2燃料ポンプを備えている。そして、上述の如く、第2排出部からの燃料排出量を第1排出部からの燃料排出量よりも少量とすることで、燃料供給路の上流側部位にて合流排出部に供給される燃料流量も少量とすることができるので、水分除去部に求められる処理能力を小さくでき、水分除去部の小型化及びコストの低減を図ることができるとともに、第2燃料ポンプについても要求される容量を小さくでき、第2燃料ポンプの小型化及びコストの低減を図ることができる。しかも、冷却部をも備えているので、上述の如く、合流排出部から排出される燃料温度が過剰な高温となっても、エンジンに供給する燃料温度を所望の温度範囲に冷却させることができる。
【0013】
本発明
の第2発明に係るエンジンの燃料供給装置の更なる特徴構成は、前記第2排出部からの燃料排出量を前記第1排出部からの燃料排出量よりも少量とするに当たり、前記第2排出部に前記第1排出部よりも流路断面積を小さくした絞り部位を備えている、又は、前記第2燃料戻し路に前記燃料供給路における下流側部位よりも流路断面積を小さくした絞り部位を備えている点にある。
【0014】
本特徴構成によれば、例えば、第2排出部の流路断面積を第1排出部の流路断面積よりも小さくすることで、第2排出部に絞り部位を備えることができる。同様に、第2燃料戻し路の流路断面積を燃料供給路における下流側部位の流路断面積を小さくすることで、第2燃料戻し路に絞り部位を備えることができる。このように、第2排出部や第2燃料戻し路に絞り部位を備えるという簡易な構成を採用するだけで、第2排出部からの燃料排出量を第1排出部からの燃料排出量よりも少量とすることができる。
【0015】
本発明に係るエンジンの燃料供給装置の更なる特徴構成は、前記合流排出部は、前記第1合流部と前記第2合流部と前記第1排出部とが前記貯留部の下方側部位に配置され、且つ、前記第2排出部が前記貯留部の上方側部位に配置されている点にある。
【0016】
本特徴構成によれば、燃料に空気が含まれている場合には、その燃料が貯留部に供給されることで、燃料に含まれている空気が、貯留部の上方側部位に上昇して、第2排出部から排出することができる。これにより、エンジンに供給する燃料に空気が含まれていても、合流排出部にてその空気抜きを行うことができる。
【0017】
本発明に係るエンジンの燃料供給装置の更なる特徴構成は、前記燃料供給路における前記燃料タンクと前記合流排出部との間の部位には、燃料に含まれる水分を除去する水分除去部が配置されている点にある。
【0018】
本特徴構成によれば、水分除去部にて燃料に含まれる水分を除去した上でエンジンに供給することができ、水分を含まない燃料をエンジンに適切に供給することができる。そして、上述の如く、第2排出部からの燃料排出量を第1排出部からの燃料排出量よりも少量とすることで、燃料供給路の上流側部位にて合流排出部に供給される燃料流量も少量とすることができるので、水分除去部に求められる処理能力を小さくでき、水分除去部の小型化及びコストの低減を図ることができる。
【0019】
本発明に係るエンジンの燃料供給装置の更なる特徴構成は、前記燃料供給路における前記合流排出部と前記フィルタとの間の部位には、燃料を冷却する冷却部が配置されている点にある。
【0020】
本特徴構成によれば、燃料温度が過剰な高温となっている場合には、冷却部にて燃料を冷却することで、エンジンに供給する燃料温度を所望の温度範囲に下げることができる。しかも、上述の如く、合流排出部を備えることで、エンジンからの燃料を燃料タンクからの燃料に合流させているので、例えば、エンジンの運転を継続させた場合には、合流排出部から排出される燃料温度が過剰な高温になる可能性が考えられる。そこで、本特徴構成の如く、燃料供給路における合流排出部とフィルタとの間の部位に冷却部を備えることで、合流排出部から排出される燃料温度が過剰な高温となっても、エンジンに供給する燃料温度を所望の温度範囲に冷却させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【
図5】トラクタにおける合流排出部の配置位置を示す模式図
【発明を実施するための形態】
【0024】
本発明に係るエンジンの燃料供給装置の実施形態を図面に基づいて説明する。
このエンジンの燃料供給装置1は、
図1に示すように、燃料タンク2に貯留されている燃料をエンジン3に供給する燃料供給路4を備えている。燃料供給路4には、燃料供給方向の上流側から順に、水分除去部5、電磁ポンプ6(第2燃料ポンプに相当する)、合流排出部7、冷却部8、フィードポンプ9(第3燃料ポンプに相当する)、フィルタ10、サプライポンプ11(第1燃料ポンプに相当する)が備えられている。
【0025】
エンジン3は、例えば、レール3a及び複数のインジェクタ3bを備えたコモンレール式のディーゼルエンジンであり、燃料の噴射量や噴射タイミングを電子制御できるように構成されている。水分除去部5は、例えば、セジメンタであり、燃料に含まれる水分を除去するように構成されている。合流排出部7は、燃料を合流させて排出するように構成されている。冷却部8は、例えば、クーラであり、燃料を冷却するように構成されている。フィルタ10は、燃料に含まれる不純物を除去するように構成されている。
【0026】
燃料供給路4の燃料は、まず、水分除去部5にて水分が除去され、電磁ポンプ6にて加圧されて冷却部8に供給され、冷却部8にて所望の温度範囲に冷却される。所望の温度範囲となった燃料は、フィードポンプ9にて加圧されてフィルタ10に供給され、フィルタ10にて不純物が除去される。不純物が除去された燃料は、サプライポンプ11にて加圧されてコモンレール式エンジン3のレール3aに供給されている。
【0027】
この燃料供給装置1では、燃料供給路4にてエンジン3に燃料を供給するだけでなく、エンジン3の燃料を合流排出部7に戻す第1燃料戻し路12と、合流排出部7から排出される燃料を燃料タンク2に戻す第2燃料戻し路13とを備えている。ここで、第1燃料戻し路12を通して合流排出部7に戻すエンジン3の燃料としては、エンジン3にて必要とされる量に対する余剰分であり、例えば、コモンレール式のエンジン3におけるレール3aやインジェクタ3bでの余剰燃料、及び、サプライポンプ11での余剰燃料となっている。
【0028】
このように、第1燃料戻し路12及び第2燃料戻し路13を備えることで、エンジン3での余剰燃料を、第1燃料戻し路12、合流排出部7、及び、第2燃料戻し路13を通して燃料タンク2に戻すこともできるように構成されている。そして、合流排出部7を備えることで、エンジン3での余剰燃料の一部を燃料タンク2からの燃料と合流させてエンジン3に循環供給できるとともに、残りの一部のエンジン3での余剰燃料を燃料タンク2に戻すこともできるように構成されている。
【0029】
合流排出部7について説明する。
図1に示すように、合流排出部7に接続されている流路は、燃料供給路4において合流排出部7よりも上流側部位4aと、第1燃料戻し路12と、燃料供給路4において合流排出部7よりも下流側部位4bと、第2燃料戻し路13との4つの流路である。合流排出部7は、燃料供給路4の上流側部位4aからの燃料と第1燃料戻し路12からの燃料とを受け入れて合流させ、その合流後の燃料を燃料供給路4の下流側部位4bと第2燃料戻し路13に排出している。
【0030】
図2及び
図3に示すように、合流排出部7は、燃料を貯留自在な貯留部14と、燃料供給路4の上流側部位4aからの燃料を貯留部14に合流させる第1合流部15と、第1燃料戻し路12からの燃料を貯留部14に合流させる第2合流部16と、貯留部14の燃料の一部を燃料供給路4の下流側部位4bに排出する第1排出部17と、貯留部14の燃料の残りの一部を第2燃料戻し路13に排出する第2排出部18とを備えている。
図2は、合流排出部7の正面図であり、
図3は、合流排出部7の側面図である。
【0031】
合流排出部7は、凹状部材と板状部材とを組み合わせて構成されており、その内部に直方状の中空空間を形成し、その中空空間を貯留部14としている。この貯留部14は、上下方向に長い縦長形状に形成されており、エンジン3にて要求されている燃料流量を確保できるだけの貯留量を有するように構成されている。また、貯留部14の両横側部には、取り付け用の孔部19が備えられており、この取り付け用の孔部19にボルトを挿通させて締結することで、所望箇所に取り付けるようにしている。
【0032】
第1合流部15、第2合流部16、第1排出部17、及び、第2排出部18の何れもが、その内部の中空空間が貯留部14に連通された円筒状に形成されている。そして、第1合流部15、第2合流部16、及び、第1排出部17は、貯留部14の下方側部位(下端部)に配置され、且つ、第2排出部18は、貯留部14の上方側部位(上端部)に配置されている。これにより、燃料に含まれている空気は、貯留部14の上方側部位に上昇して、第2排出部18から排出されるように構成されている。よって、エンジン3に供給する燃料に空気が含まれていても、合流排出部7にてその空気抜きを行うことができる。
【0033】
第1合流部15、第2合流部16、及び、第1排出部17の円筒部位における孔径は、同一の第1孔径に形成され、第2排出部18の円筒部位における孔径は、第1孔径よりも小さい第2孔径に形成されている。これにより、第2排出部18に第1排出部17よりも流路断面積を小さくした絞り部位を備えており、このような絞り部位を備えることで、第2排出部18からの燃料排出量が第1排出部17からの燃料排出量よりも少量になるように構成されている。
【0034】
ここで、第2孔径を第1孔径に対してどれだけ小さくするかを調整することによって、第2排出部18からの燃料排出量を第1排出部17からの燃料排出量よりもどれだけ少量とするかを調整することができる。したがって、孔径を調整するという簡易な調整を行うだけで、合流排出部7からエンジン3に供給する燃料供給量と合流排出部7から燃料タンク2に戻す燃料戻し量との流量の大小を調整することができる。
【0035】
燃料供給装置1での燃料の流れについて説明する。
図1に示すように、燃料タンク2の燃料が、燃料供給路4を通してエンジン3に供給されており、エンジン3での余剰燃料が、第1燃料戻し路12を通して燃料供給路4の合流排出部7に戻されている。そして、合流排出部7では、第2合流部16にてエンジン3での余剰燃料が貯留部14に供給され、第1合流部15にて燃料タンク2の燃料が貯留部14に供給され、その余剰燃料と燃料とが合流して貯留部14に貯留される。貯留部14に貯留される燃料は、第1排出部17と第2排出部18とから排出される。これにより、合流排出部7では、第1燃料戻し路12にて戻された余剰燃料に燃料供給路4の上流側部位4aにて供給される燃料タンク2からの燃料を合流させて、その合流後の燃料の一部を燃料供給路4の下流側部位4bにてエンジン3に供給するとともに、残りの一部の燃料を第2燃料戻し路13にて燃料タンク2に戻している。
【0036】
このように、燃料供給路4において燃料タンク2とフィルタ10との間の部位に合流排出部7を備えるだけで、エンジン3での余剰燃料を燃料タンク2からの燃料に合流させて、その合流後の燃料をフィルタ10に供給することができる。よって、寒冷地でエンジン3の始動初期等であっても、エンジン3等から発生する熱にて加熱された燃料を燃料タンク2からの低温の燃料に合流させて、比較的高温の燃料をフィルタ10に供給することができ、フィルタ10の目詰まりを防止することができる。
【0037】
そして、燃料供給路4の上流側部位4aにて合流排出部7に供給される燃料流量は、合流排出部7から燃料タンク2に戻される燃料流量に応じた量となるので、合流排出部7において第2排出部18からの燃料排出量を第1排出部17からの燃料排出量よりも少量とすることで、燃料タンク2から合流排出部7に供給される燃料流量も少量とすることができる。よって、フィルタ10に供給する燃料温度の上昇を適切に行うことができ、フィルタ10の目詰まりを確実に防止することができる。
【0038】
また、燃料供給路4の上流側部位4aから合流排出部7に供給される燃料供給量を少量とすることができるので、水分除去部5の処理対象の流量を少量とすることができ、水分除去部5に求められる処理能力を小さくできるとともに、電磁ポンプ6も求められる容量を小さくできる。よって、水分除去部5及び電磁ポンプ6の小型化及びコストの低減を図ることができる。
【0039】
第1燃料戻し路12にて合流排出部7に戻される燃料は、エンジン3での余剰燃料であり、その余剰燃料がエンジン3に循環供給されるので、例えば、エンジン3の運転を継続していると、エンジン3に供給される燃料温度が徐々に上昇して過剰な高温に達する可能性がある。そこで、燃料供給路4において燃料供給方向で合流排出部7よりも下流側に冷却部8を配置しているので、合流排出部7から燃料供給路4の下流側部位4bに排出された燃料は、冷却部8にて所望の温度範囲に冷却され、エンジン3に供給される燃料温度が過剰な高温になることを防止することができる。
【0040】
本実施形態におけるエンジンの燃料供給装置1は、
図4に示すようなトラクタ100等の作業車に適応されている。このトラクタ100は、左右一対の操向操作及び駆動自在な前輪101と左右一対の駆動自在な後輪102とを有する走行車体103を備えて四輪駆動式に構成されている。走行車体103の前部に、エンジン3等が内装されたボンネット104を備え、走行車体103の後部に、ステアリングハンドル105や運転座席106等が内装されたキャビン107を備えている。
【0041】
エンジン3の下部から前方に主フレーム108が延出されており、この主フレーム108に前輪101を装着する車軸ケース(図示省略)等が支持されている。エンジン3から後方にクラッチハウジング109が延出されており、このクラッチハウジング109に運転座席106の下方に位置するミッションケース110が連結されて、エンジン3からの動力が後輪102に伝達されるように構成されている。
【0042】
走行車体103の後部に、左右一対のリフトアームにより構成されているリンク機構111及び動力取り出し軸112を備えている。そして、リンク機構111にロータリ耕耘装置(図示省略)等を昇降操作自在に連結し、動力取り出し軸112にロータリ耕耘装置等を連動連結することで、ロータリ耕耘装置等の昇降操作及び駆動ができるように構成されている。
【0043】
ボンネット104には、
図5に示すように、燃料供給装置1において、水分除去部5、電磁ポンプ6、合流排出部7、冷却部8、フィードポンプ9、フィルタ10、及び、サプライポンプ11が内装されている。
図5は、ボンネット104の内部を右側から見た側面図であり、水分除去部5、電磁ポンプ6、合流排出部7、フィードポンプ9、フィルタ10、及び、サプライポンプ11については、エンジン3の右側に配置されている。
【0044】
図4に示すように、燃料タンク2については、キャビン107の床を形成するフロアパネル113の下方に配置されている。図示は省略するが、燃料タンク2は、キャビン107の右側に配置された第1燃料タンクと左側に配置された第2燃料タンクとの左右一対備えられている。そして、第1燃料タンクに燃料補給口が備えられており、連通路を通して第1燃料タンクから第2燃料タンクに燃料が供給されるように構成されている。また、燃料タンク2からの燃料の吸込みは、第2燃料タンクから燃料を吸込み、その吸い込んだ燃料を燃料供給路4にてエンジン3に供給している。
【0045】
図5に示すように、合流排出部7は、取り付け用の孔部19にボルトを挿通させて締結することで支持部材114に固定されており、その配置位置が、エンジン3よりも右側上方の高い位置となっている。これにより、合流排出部7の配置位置を高い位置とすることができ、貯留部14に貯留される燃料に空気が含まれていても、その空気が上昇して第2排出部18から排出することができ、合流排出部7における空気抜きを適切に行うことができる。ちなみに、合流排出部7の配置高さは、水分除去部5、電磁ポンプ6、フィードポンプ9、フィルタ10、及び、サプライポンプ11等よりも高い位置となっている。
【0046】
〔別実施形態〕
(1)上記実施形態において、例えば、燃料タンク2を水分除去部5や冷却部8等よりも上方側に配置することで、電磁ポンプ6(第2燃料ポンプに相当する)を省略することができる。また、電磁ポンプ6の他に、冷却部8やフィードポンプ9も省略することができ、これら3つの機器の何れか1つ、2つ、又は、すべてを省略することができる。
【0047】
(2)上記実施形態において、燃料供給路4における合流排出部7の配置位置として、水分除去部5と電磁ポンプ6との間の部位に配置することもできる。
【0048】
(3)上記実施形態において、第2燃料戻し路13の流路断面積を燃料供給路4における下流側部位4bよりも小さくすることで、第2燃料戻し路13に燃料供給路4における下流側部位4bよりも流路断面積を小さくした絞り部位を備えることができる。このような絞り部を備えることで、第2排出部18からの燃料排出量を第1排出部17からの燃料排出量よりも少量になるように構成することもできる。
また、絞り部位については、流路断面積を調整するものに限らず、オリフィス等の絞りを備えることで、絞り部位を備えることもできる。
【0049】
(4)上記実施形態では、第1燃料戻し路12にてエンジン3の余剰燃料の全量を合流排出部7に戻すようにしているが、例えば、第1燃料戻し路12の途中部位と燃料タンク2とを接続する燃料戻し用接続流路を備え、第1燃料戻し路12にてエンジン3の余剰燃料の一部を合流排出部7に戻し、燃料戻し用接続流路にてエンジン3の余剰燃料の残りの一部を燃料タンク2に直接戻すようにすることもできる。
【0050】
(5)上記実施形態では、本発明に係るエンジンの燃料供給装置を農用のトラクタ100に適応した例を示したが、その他、各種の作業車に適応することができる。
【産業上の利用可能性】
【0051】
本発明は、燃料タンクに貯留されている燃料をエンジンに供給する燃料供給路を備え、その燃料供給路には、燃料供給方向の上流側から順に、フィルタ、第1燃料ポンプが備えられ、コストアップ及び構成の複雑化を招くことなく、フィルタの目詰まりを防止することができる各種のエンジンの燃料供給装置に適応可能である。
【符号の説明】
【0052】
2 燃料タンク
3 エンジン
4 燃料供給路
4a 上流側部位
4b 下流側部位
5 水分除去部
6 電磁ポンプ(第2燃料ポンプ)
7 合流排出部
8 冷却部
9 フィードポンプ(第3燃料ポンプ)
10 フィルタ
11 サプライポンプ(第1燃料ポンプ)
12 第1燃料戻し路
13 第2燃料戻し路
14 貯留部
15 第1合流部
16 第2合流部
17 第1排出部
18 第2排出部