(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記ポリオレフィン樹脂が、メタロセン化合物の重合触媒から得られる直鎖状低密度ポリエチレンを備える請求項1〜3のいずれかに記載の架橋ポリオレフィン樹脂発泡シート。
【発明を実施するための形態】
【0009】
[架橋ポリオレフィン樹脂発泡シート]
本発明に係る架橋ポリオレフィン樹脂発泡シートは、シート状に加工されたポリオレフィン樹脂に架橋処理及び発泡処理が施されてなる架橋ポリオレフィン樹脂発泡シートであって、該架橋ポリオレフィン樹脂発泡シートに形成された気泡が独立気泡であり、該架橋ポリオレフィン樹脂発泡シートの発泡倍率が1.3〜2.3cm
3/gであるとともに、平均セル壁厚みが10〜20μmであるものである。
【0010】
<独立気泡>
本発明において、気泡が独立気泡であるとは、全気泡に対する独立気泡の割合(独立気泡率という)が65%以上であることを意味する。
独立気泡率は、JIS K7138(2006)やASTM D2856(1998)に準拠して求めることができる。市販の測定器では、乾式自動密度計アキュピック1330などが挙げられる。
独立気泡率は、例えば、下記の要領で測定される。架橋ポリオレフィン樹脂発泡シートから一辺が5cmの平面正方形状で、且つ一定厚みの試験片を切り出す。試験片の厚みを測定し、試験片の見掛け体積V
1を算出するとともに試験片の重量W
1を測定する。次に、気泡の占める見掛け体積V
2を下記式に基づいて算出する。なお、試験片を構成している樹脂の密度は、1g/cm
3とする。
気泡の占める見掛け体積V
2=V
1−W
1
続いて、試験片を23℃の蒸留水中に水面から100mmの深さに沈めて、試験片に15kPaの圧力を3分間に亘って加える。水中で圧力を解放後、試験片を水中から取り出して試験片の表面に付着した水分を除去し、試験片の重量W
2を測定し、下記式に基づいて連続気泡率F
1及び独立気泡率F
2を算出する。
連続気泡率F
1(%)=100×(W
2−W
1)/V
2
独立気泡率F
2(%)=100−F
1
【0011】
<発泡倍率>
本発明において、架橋ポリオレフィン樹脂発泡シートの発泡倍率は、1.3〜2.3cm
3/gである。発泡倍率が、1.3cm
3/g未満であると、柔軟性が低下して、衝撃吸収性等が悪くなり、架橋ポリオレフィン樹脂発泡シートが、シール材、衝撃材としての機能を十分に発揮できなくなるおそれがある。一方、2.3cm
3/gより大きくなると、架橋ポリオレフィン樹脂発泡シートの機械的強度を良好にできなくなるおそれがある。架橋ポリオレフィン樹脂発泡シートの衝撃吸収性や機械的強度を良好にするためには、発泡倍率は、1.5〜2.0cm
3/gがより好ましい。なお、本発明では、JIS K7222に従い発泡シートの密度を求め、その逆数を発泡倍率とする。
【0012】
<平均セル壁厚み>
本発明の架橋ポリオレフィン樹脂発泡シートは、その平均セル壁厚みが、10〜20μmとなるものである。
図1に示すように、樹脂発泡シートは、気泡である多数のセル20を有し、隣接するセル20、20がセル壁21によって隔てられたものである。平均セル壁厚みとは、厚さ方向に隣接するセル20とセル20との最短距離Dの十点平均値をいう。平均セル壁厚みの具体的な測定方法は後述するとおりである。
架橋ポリオレフィン樹脂発泡シートにおいて平均セル壁厚みが、10μm未満となると、発泡シートの機械的強度、特にずりせん断に対する強度が低下して、耐衝撃性等が低下するおそれがある。一方、20μmより大きくなると、柔軟性が低下し、十分な衝撃吸収性を得ることができなくなるおそれがある。本発明において、平均セル壁厚みは、好ましくは12〜18μmである。
【0013】
<架橋ポリオレフィン樹脂発泡シートの厚み>
架橋ポリオレフィン樹脂発泡シートの厚みは、50〜300μmであることが好ましく、70〜150μmであることがより好ましい。
厚みを50μm以上とすると、架橋ポリオレフィン樹脂発泡シートの機械的強度や柔軟性の確保が容易になる。また、厚みを300μm以下とすると、薄膜化が可能になり、小型化した電子機器に好適に使用できる。
【0014】
<架橋度>
架橋ポリオレフィン樹脂発泡シートの架橋度は、25〜55質量%であることが好ましい。本発明において、架橋度が25質量%以上であると、発泡シートを延伸する際に発泡シートの表面近傍部の気泡が破泡して表面荒れが生じることがなく、得られる架橋ポリオレフィン樹脂発泡シートの外観の意匠性の低下を防ぐことができる。また、セル壁の厚みを大きくしやすくなり、セル壁の厚みを容易に上記した所定値以上とすることができる。一方、架橋度が55質量%以下であると、発泡性ポリオレフィン樹脂組成物を加熱発泡する際に、所望の発泡倍率に調整しやすくなり、また、セル壁の厚みを上記した所定値以下に容易に調整することができる。このような観点から、架橋度は30〜50質量%がより好ましい。なお、架橋度は、後述する測定方法によって測定されるものである。
【0015】
<平均気泡径及び気泡のアスペクト比>
架橋ポリオレフィン樹脂発泡シートのタテ方向及びヨコ方向の平均気泡径は、それぞれ300μm以下が好ましい。なお、タテ方向とは、押出方向等であるMD方向と一致する方向であり、ヨコ方向とは、MD方向に直交しシートに平行であるCD方向に一致する方向である。
発泡シートのタテ方向及び発泡シートのヨコ方向の平均気泡径が上記下限値以下であれば、架橋ポリオレフィン樹脂発泡シートに、十分な機械的強度を持たせ、耐衝撃性等を良好にすることができる。そのような観点から、架橋ポリオレフィン樹脂発泡シートのタテ方向及びヨコ方向の平均気泡径は、250μm以下であることがより好ましい。
また、平均セル壁厚みを上記のように比較的大きくしても、十分な柔軟性や衝撃吸収性を持たせられるように、架橋ポリオレフィン樹脂発泡シートのタテ方向及びヨコ方向の平均気泡径は、100μm以上であることが好ましく、180μm以上であることがより好ましい。
【0016】
気泡のアスペクト比A(タテ方向の平均気泡径/ヨコ方向の平均気泡径)は、0.25〜2であることが好ましく、気泡のアスペクト比B(ヨコ方向の平均気泡径/架橋ポリオレフィン樹脂発泡シートの厚み方向の平均気泡径)は、2〜18であることが好ましい。
気泡のアスペクト比A(タテ方向の平均気泡径/ヨコ方向の平均気泡径)が上記範囲内であると、架橋ポリオレフィン樹脂発泡シートの厚み、柔軟性及び引張強度にばらつきが発生したり、架橋ポリオレフィン樹脂発泡シートの柔軟性が低下したりすることがない。このような観点から、アスペクト比Aは0.25〜1.2がより好ましく、より好ましくは0.5〜1.15であり、更に好ましくは0.6〜1.1である。
また、気泡のアスペクト比B(タテ方向の平均気泡径/ヨコ方向の平均気泡径)が上記範囲内であると、架橋ポリオレフィン樹脂発泡シートの厚み、柔軟性及び引張強度にばらつきが発生することがない。このような観点から、アスペクト比Bは2.5〜15がより好ましい。
なお、タテ方向の平均気泡径、ZD方向(厚み方向)の平均気泡径、及びヨコ方向の平均気泡径は、WO2005/007731に記載された方法により測定することができる。
【0017】
<25%圧縮強度>
架橋ポリオレフィン樹脂発泡シートの25%圧縮強度は、250〜1400kPaであることが好ましく、400〜1300kPaが更に好ましい。
25%圧縮強度を1400kPa以下とすることで、架橋ポリオレフィン樹脂発泡シートに衝撃吸収性能を持たせ、緩衝材やシール材として使用可能になる。また、架橋ポリオレフィン樹脂発泡シートは、巻き取られた際などに厚みが減少するなどの不具合が発生することがあるが、25%圧縮強度が250kPa以上となると、そのような厚みの減少が防止されやすくなる。なお、25%圧縮強度は、架橋ポリオレフィン樹脂発泡シートをJIS K6767に準拠して測定したものをいう。
【0018】
<引張強度>
架橋ポリオレフィン樹脂発泡シートのタテ方向及びヨコ方向における引張強度は、材料強度の観点等から、5〜30MPaが好ましく、7〜25MPaがより好ましい。なお、引張強度とは、後述する測定方法により測定されたものである。
【0019】
[ポリオレフィン樹脂]
上述した架橋ポリオレフィン樹脂発泡シートの形成に用いられるポリオレフィン樹脂としては、チーグラー・ナッタ化合物、メタロセン化合物、酸化クロム化合物等の重合触媒で重合されたポリエチレン系樹脂が挙げられ、好ましくは、メタロセン化合物の重合触媒で重合されたポリエチレン系樹脂が用いられる。本発明の架橋ポリオレフィン樹脂発泡シートの形成に用いられるポリエチレン系樹脂としては、メタロセン化合物等の重合触媒を用いて、エチレンと必要に応じて少量のα−オレフィンとを共重合することにより得られる直鎖状低密度ポリエチレンが好ましい。直鎖状低密度ポリエチレンを用いることにより、得られる架橋ポリオレフィン樹脂発泡シートに高い柔軟性が得られるとともに、架橋ポリオレフィン樹脂発泡シートの薄肉化が可能になる。
α−オレフィンとして、具体的には、プロピレン、1−ブテン、1−ペンテン、4−メチル−1−ペンテン、1−ヘキセン、1−ヘプテン、及び1−オクテン等が挙げられる。なかでも、炭素数4〜10のα−オレフィンが好ましい。
【0020】
ポリエチレン系樹脂の密度は、製造される架橋ポリオレフィン樹脂発泡シートに高い柔軟性が得られる観点から、0.870〜0.910g/cm
3が好ましく、0.875〜0.907g/cm
3がより好ましく、0.880〜0.905g/cm
3が更に好ましい。ポリエチレン系樹脂としては、複数のポリエチレン系樹脂を用いることもでき、また、上記した密度範囲以外のポリエチレン系樹脂を加えてもよい。
【0021】
<メタロセン化合物>
本発明において好適なメタロセン化合物としては、遷移金属をπ電子系の不飽和化合物で挟んだ構造を有するビス(シクロペンタジエニル)金属錯体等の化合物を挙げることができる。より具体的には、チタン、ジルコニウム、ニッケル、パラジウム、ハフニウム、及び白金等の四価の遷移金属に、1又は2以上のシクロペンタジエニル環又はその類縁体がリガンド(配位子)として存在する化合物を挙げることができる。
このようなメタロセン化合物は、活性点の性質が均一であり各活性点が同じ活性度を備えている。メタロセン化合物を用いて合成した重合体は、分子量、分子量分布、組成、組成分布等の均一性が高いため、メタロセン化合物を用いて合成した重合体を含むシートを架橋した場合には、架橋が均一に進行する。均一に架橋されたシートは、均一に延伸できるため、架橋ポリオレフィン樹脂発泡シートの厚みを均一にできる。
【0022】
リガンドとしては、例えば、シクロペンタジエニル環、インデニル環等を挙げることができる。これらの環式化合物は、炭化水素基、置換炭化水素基又は炭化水素−置換メタロイド基により置換されていてもよい。炭化水素基としては、例えば、メチル基、エチル基、各種プロピル基、各種ブチル基、各種アミル基、各種ヘキシル基、2−エチルヘキシル基、各種ヘプチル基、各種オクチル基、各種ノニル基、各種デシル基、各種セチル基、フェニル基等が挙げられる。なお、「各種」とは、n−、sec−、tert−、iso−を含む各種異性体を意味する。
また、環式化合物をオリゴマーとして重合したものをリガンドとして用いてもよい。
更に、π電子系の不飽和化合物以外にも、塩素や臭素等の一価のアニオンリガンド又は二価のアニオンキレートリガンド、炭化水素、アルコキシド、アリールアミド、アリールオキシド、アミド、アリールアミド、ホスフィド、アリールホスフィド等を用いてもよい。
【0023】
四価の遷移金属やリガンドを含むメタロセン化合物としては、例えば、シクロペンタジエニルチタニウムトリス(ジメチルアミド)、メチルシクロペンタジエニルチタニウムトリス(ジメチルアミド)、ビス(シクロペンタジエニル)チタニウムジクロリド、ジメチルシリルテトラメチルシクロペンタジエニル−t−ブチルアミドジルコニウムジクロリド、等が挙げられる。
メタロセン化合物は、特定の共触媒(助触媒)と組み合わせることにより、各種オレフィンの重合の際に触媒としての作用を発揮する。具体的な共触媒としては、メチルアルミノキサン(MAO)、ホウ素系化合物等が挙げられる。なお、メタロセン化合物に対する共触媒の使用割合は、10〜100万モル倍が好ましく、50〜5,000モル倍がより好ましい。
【0024】
<チーグラー・ナッタ化合物>
チーグラー・ナッタ化合物は、トリエチルアルミニウム−四塩化チタン固体複合物であって、四塩化チタンを有機アルミニウム化合物で還元し、更に各種の電子供与体及び電子受容体で処理して得られた三塩化チタン組成物と、有機アルミニウム化合物と、芳香族カルボン酸エステルとを組み合わせる方法(特開昭56−100806号、特開昭56−120712号、特開昭58−104907号の各公報参照)、及びハロゲン化マグネシウムに四塩化チタンと各種の電子供与体を接触させる担持型触媒の方法(特開昭57−63310号、特開昭63−43915号、特開昭63−83116号の各公報参照)等で製造されたものが好ましい。
【0025】
<その他のポリオレフィン樹脂>
ポリオレフィン樹脂シートを構成するポリオレフィン系樹脂は、上記した直鎖状低密度ポリエチレンを使用する場合、上記の直鎖状低密度ポリエチレンを単独で使用してもよいが、他のポリオレフィン樹脂を含んでいてもよい。
他のポリオレフィン樹脂としては、例えば、エチレンを50質量%以上含有するエチレン−酢酸ビニル共重合体等の他のポリエチレン系樹脂、ポリプロピレン系樹脂等が挙げられる。これらは1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0026】
ポリプロピレン系樹脂としては、例えば、ポリプロピレン、プロピレンを50質量%以上含有するプロピレン−α−オレフィン共重合体等が挙げられる。これらは1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
プロピレン−α−オレフィン共重合体を構成するα−オレフィンとしては、具体的には、エチレン、1−ブテン、1−ペンテン、4−メチル−1−ペンテン、1−ヘキセン、1−ヘプテン、1−オクテン等が挙げることができ、これらの中では、炭素数6〜12のα−オレフィンが好ましい。他のポリオレフィン樹脂を含有する場合、直鎖状低密度ポリエチレンに対する他のポリオレフィン樹脂の割合は、40質量%以下が好ましく、30質量%以下がより好ましく、20質量%以下が更に好ましい。
【0027】
[架橋ポリオレフィン樹脂発泡シートの製造方法]
架橋ポリオレフィン樹脂発泡シートの製造方法に、特に制限はなく、例えば、以下の工程(1)〜(3)を含む製造方法により製造できる。
・工程(1)
ポリエチレン系樹脂、及び熱分解型発泡剤を押出機に供給して溶融混練し、押出機からシート状に押出すことによって発泡性ポリオレフィン樹脂シートを製造する工程
・工程(2)
発泡性ポリオレフィン樹脂シートに電離性放射線を照射して発泡性ポリオレフィン樹脂シートを好ましくは20〜55質量%の架橋度に架橋させる工程
・工程(3)
架橋させた発泡性ポリオレフィン樹脂シートを加熱し、熱分解型発泡剤を発泡させて、好ましくは得られた発泡シートを発泡時の溶融状態を維持したままMD方向又はCD方向の何れか一方又は双方の方向に延伸して、発泡シートの気泡を延伸し、発泡倍率が1.3〜2.3cm
3/gであるとともに、平均セル壁厚みが10〜20μmである架橋ポリオレフィン樹脂発泡シートを得る工程
なお、架橋ポリオレフィン樹脂発泡シートの製造方法としては、この方法のほかに、WO2005/007731に記載された方法により製造することができる。
【0028】
熱分解型発泡剤としては、特に制限はなく、例えば、アゾジカルボンアミド、N,N’−ジニトロソペンタメチレンテトラミン、p−トルエンスルホニルセミカルバジド等が挙げられる。これらの中では、アゾジカルボンアミドが好ましい。なお、熱分解型発泡剤は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0029】
発泡性ポリオレフィン樹脂組成物中における熱分解型発泡剤の添加量は、ポリオレフィン樹脂100質量部に対して1〜8質量部が好ましく、2〜6質量部がより好ましい。熱分解型発泡剤の添加量がこの範囲内であると、発泡性ポリオレフィン樹脂シートの発泡性が向上し、所望する発泡倍率を有する架橋ポリオレフィン樹脂発泡シートを得ることができる。また、2質量部以上とすることで、気泡が大きくなり、平均気泡径を大きくしつつ、平均セル壁の厚みを狙い通りの範囲に設定することが可能になる。
なお、発泡方法としては、上記に限定されず、ブタンガス等による物理発泡を用いてもよい。
発泡性ポリオレフィン樹脂組成物には、必要に応じて、2,6−ジ−t−ブチル−p−クレゾール等の酸化防止剤、酸化亜鉛等の発泡助剤、気泡核調整材、熱安定剤、着色剤、難燃剤、帯電防止剤、充填材等が、架橋ポリオレフィン樹脂発泡シートの物性を損なわない範囲で添加されていてもよい。
【0030】
発泡性ポリオレフィン樹脂組成物を架橋する方法としては、例えば、発泡性ポリオレフィン樹脂シートに電子線、α線、β線、γ線等の電離性放射線を照射する方法、発泡性ポリオレフィン樹脂組成物に予め有機過酸化物を配合しておき、得られた発泡性ポリオレフィン樹脂シートを加熱して有機過酸化物を分解させる方法等が挙げられ、これらの方法は併用されてもよい。
上記電離放射線の照射量は、架橋度を適切な程度にして、平均セル壁厚みを上記範囲に調整できるように、5〜15Mradであることが好ましく、6〜13Mradであることがより好ましい。
【0031】
本製造方法において用いることができる有機過酸化物としては、例えば、1,1−ビス(t−ブチルパーオキシ)3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、1,1−ビス(t−ブチルパーオキシ)シクロヘキサン等が挙げられる。これらは1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0032】
有機過酸化物の添加量は、ポリオレフィン樹脂100質量部に対し、0.01〜5質量部が好ましく、0.1〜3質量部がより好ましい。有機過酸化物の添加量が上記範囲内であると、発泡性ポリオレフィン樹脂シートの架橋が進行しやすく、また、得られる架橋ポリオレフィン樹脂発泡シート中に有機過酸化物の分解残渣の量を抑制することができる。
発泡性ポリオレフィン樹脂シートを発泡させる方法としては、特に制限はなく、例えば、熱風により加熱する方法、赤外線により加熱する方法、塩浴による方法、オイルバスによる方法等が挙げられ、これらは併用してもよい。
【0033】
発泡シートの延伸は、発泡性ポリオレフィン樹脂シートを発泡させて発泡シートを得た後に行ってもよいし、発泡性ポリオレフィン樹脂シートを発泡させつつ行ってもよい。なお、発泡性ポリオレフィン樹脂シートを発泡させて発泡シートを得た後、発泡シートを延伸する場合には、発泡シートを冷却することなく発泡時の溶融状態を維持したまま続けて発泡シートを延伸してもよく、発泡シートを冷却した後、再度、発泡シートを加熱して溶融又は軟化状態とした上で発泡シートを延伸してもよい。
【0034】
また、工程(3)において、架橋ポリオレフィン樹脂発泡シートのMD方向における延伸倍率は、1.1〜2.0倍が好ましく、1.2〜1.8倍がより好ましい。
架橋ポリオレフィン樹脂発泡シートのMD方向における延伸倍率を上記下限値以上とすると、架橋ポリオレフィン樹脂発泡シートの柔軟性及び引張強度が良好になりやすくなる。一方、上限値以下とすると、発泡シートが延伸中に破断したり、発泡中の発泡シートから発泡ガスが抜けて発泡倍率が著しく低下したりすることが防止され、架橋ポリオレフィン樹脂発泡シートの柔軟性や引張強度が良好になり、品質も均一なものとしやすくなる。
【0035】
本発明では、架橋度、熱分解型発泡剤の配合量、熱分解型発泡剤の発泡温度、発泡時のポリオレフィン系樹脂の溶融粘度、延伸倍率等を適宜設定することにより、発泡倍率が1.3〜2.3であるとともに、平均セル壁厚みが10〜20μmである架橋ポリオレフィン樹脂発泡シートを製造することができる。例えば、架橋度を比較的大きくして発泡時のポリオレフィン系樹脂の溶融粘度を抑えつつ、熱分解型発泡剤の配合量を比較的多くすると、発泡倍率が上記範囲内に抑えられつつ、気泡径やセル壁厚さがが比較的大きくなり、それにより、上記範囲の発泡倍率と、平均セル壁厚みとを有する架橋ポリオレフィン樹脂発泡シートを製造することが可能になる。
【0036】
[粘着テープ]
本発明の粘着テープは、本発明に係る架橋ポリオレフィン樹脂発泡シートを基材として用いて、架橋ポリオレフィン樹脂発泡シートの少なくとも一方の面に粘着剤層を設けたものである。
本発明の粘着テープを構成する粘着剤層の厚みは、5〜200μmであることが好ましい。粘着剤層の厚みは、より好ましくは7〜150μmであり、更に好ましくは10〜100μmである。粘着テープを構成する粘着剤層の厚みが5〜200μmの範囲であると、粘着テープを用いて固定した構成体の厚みを薄くできる。
【0037】
架橋ポリオレフィン樹脂発泡シートの一面又は両面に積層一体化される粘着剤層を構成する粘着剤としては、特には制限はなく、例えば、アクリル系粘着剤、ウレタン系粘着剤、ゴム系粘着剤等を用いることができる。
架橋ポリオレフィン樹脂発泡シートの少なくとも一面に粘着剤を塗布して粘着剤層を積層一体化させる方法としては、例えば、架橋ポリオレフィン樹脂発泡シートの少なくとも一面にコーター等の塗工機を用いて粘着剤を塗布する方法、架橋ポリオレフィン樹脂発泡シートの少なくとも一面にスプレーを用いて粘着剤を噴霧、塗布する方法、架橋ポリオレフィン樹脂発泡シートの少なくとも一面に刷毛を用いて粘着剤を塗布する方法等が挙げられる。
【0038】
本発明の架橋ポリオレフィン樹脂発泡シートを用いた粘着テープは、携帯型電話機やビデオカメラ等の電子機器本体内に内装される電子部品に衝撃が加わるのを防止する衝撃吸収材や、電子機器本体内に埃や水分等が進入するのを防止するシール材として用いることができる。
【実施例】
【0039】
本発明を実施例により更に詳細に説明するが、本発明はこれらの例によってなんら限定されるものではない。
【0040】
[測定方法]
本明細書における各物性の測定方法は、次の通りである。
<発泡倍率>
架橋ポリオレフィン樹脂発泡シートについてJIS K7222に準拠して密度を測定し、その逆数を発泡倍率とした。
<平均セル壁厚み>
厚み方向及びヨコ方向に平行な断面の光学顕微鏡写真を撮影し、
図1に示すようにヨコ方向と厚み方向ともに分散するように10点選んで、厚み方向に隣接するセル間の最短距離を物差しで測定し、写真のスケールから実際の距離を割り出し、その10点平均値を平均セル壁厚みとした。
<架橋度>
架橋ポリオレフィン樹脂発泡シートから約100mgの試験片を採取し、試験片の重量A(mg)を精秤する。次に、この試験片を120℃のキシレン30cm
3中に浸漬して24時間放置した後、200メッシュの金網で濾過して金網上の不溶解分を採取、真空乾燥し、不溶解分の重量B(mg)を精秤する。得られた値から、下記式により架橋度(質量%)を算出する。
架橋度(質量%)=100×(B/A)
<平均気泡径>
上記した明細書記載の方法に従って測定したものである。
<引張強度>
架橋ポリオレフィン樹脂発泡シートをJIS K6251 4.1に規定されるダンベル状1号形にカットしたものを試料として用い、測定温度を23℃で、JIS K6767に準拠して測定したものである。
<25%圧縮強度>
架橋ポリオレフィン樹脂発泡シートについてJIS K6767に準拠して測定した。
<破壊強度>
架橋ポリオレフィン樹脂発泡シートにアクリル系粘着剤(商品名NA、積水化学工業株式会社製)を両面塗工し、40℃で48時間養生して粘着剤を架橋させ、その後、5mm幅10cm長さにカットした。このとき、シートの長さ方向は、MD方向に一致するようにした。そのカットした架橋ポリオレフィン樹脂発泡シートの一方の面をSUS板に貼付し、他方の面を25μm厚さのポリエチレンテレフタレート(PET)フィルムに貼付し、破壊強度測定用サンプルを得た。次いで、破壊強度測定用サンプルは、40℃で48時間養生した。
その後、
図2に示すように、架橋ポリオレフィン樹脂発泡シート10の長さ方向が鉛直方向に一致するようにして、SUS板11側を固定して、破壊強度測定用サンプルを引張試験機(商品名TE-701、テスター産業株式会社製)にセットした。その後、PETフィルム12を剥離角度180°、速度100m/分で鉛直上向きに引張り、架橋ポリオレフィン樹脂発泡シート10を厚さ方向(Z方向)に凝集破壊したときの荷重を測定し、その測定値を破壊強度とした。
【0041】
[実施例1]
メタロセン化合物の重合触媒によって得られた直鎖状低密度ポリエチレン系樹脂(ダウケミカル社製、商品名「アフィニティーPL1850」、密度:0.902g/cm
3)100質量部と、熱分解型発泡剤としてのアゾジカルボンアミド2.2質量部(大塚化学株式会社製、商品名「SO−G3」で構成される発泡性ポリオレフィン樹脂組成物を押出機に供給して130℃で溶融混練し、厚みが310μmの長尺状の発泡性ポリオレフィン樹脂シートに押出した。
次に、上記長尺状の発泡性ポリオレフィン樹脂シートの両面に加速電圧800kVの電子線を9.0Mrad照射して発泡性ポリオレフィン樹脂シートを架橋した後、この発泡性ポリオレフィン樹脂シートを熱風及び赤外線ヒーターにより250℃に保持された発泡炉内に連続的に送り込んで加熱して、厚み350μmの発泡シートを得た。
次いで、得られた発泡シートを発泡炉から連続的に送り出した後、この発泡シートをその両面の温度が200〜250℃となるように維持した状態で、発泡シートをそのCD方向に2.5倍の延伸比で延伸させると共に、発泡性ポリオレフィン樹脂シートの発泡炉への送り込み速度(供給速度)よりも速い巻取速度でもって発泡シートを巻き取ることによって発泡シートをMD方向に延伸させて、発泡シートの気泡をCD方向及びMD方向に延伸して変形させ架橋ポリオレフィン樹脂発泡シートを得た。なお、上記発泡シートの巻取速度は、発泡性ポリオレフィン樹脂シート自身の発泡によるMD方向への膨張分を考慮しつつ調整した。得られた架橋ポリオレフィン樹脂発泡シートを上記評価方法に従って評価し、その結果を表1に示す。
【0042】
[実施例2]
実施例1と同様の発泡性ポリオレフィン樹脂組成物を押出機に供給して130℃で溶融混練し、厚みが310μmの長尺状の発泡性ポリオレフィン樹脂シートに押出した。
次に、上記長尺状の発泡性ポリオレフィン樹脂シートの両面に加速電圧800kVの電子線を9.0Mrad照射して発泡性ポリオレフィン樹脂シートを架橋した後、この発泡性ポリオレフィン樹脂シートを熱風及び赤外線ヒーターにより250℃に保持された発泡炉内に連続的に送り込んで加熱して発泡させ、厚み350μmの発泡シートを得た。
得られた発泡シートを発泡炉から連続的に送り出した後、この発泡シートをその両面の温度が200〜250℃となるように維持した状態で、発泡シートをそのCD方向に2倍の延伸比で延伸させると共に、発泡性ポリオレフィン樹脂シートの発泡炉への送り込み速度(供給速度)よりも速い巻取速度でもって発泡シートを巻き取ることによって発泡シートをMD方向に延伸させて、発泡シートの気泡をCD方向及びMD方向に延伸して変形させ架橋ポリオレフィン樹脂発泡シートを得た。なお、上記発泡シートの巻取速度は、発泡性ポリオレフィン樹脂シート自身の発泡によるMD方向への膨張分を考慮しつつ調整した。得られた架橋ポリオレフィン樹脂発泡シートを上記評価方法に従って評価し、その結果を表1に示す。
【0043】
[比較例1]
発泡性ポリオレフィン樹脂組成物におけるアゾジカルボンアミドの配合量を1.8質量部とするとともに、電子線照射量を6.9Mradとした点を除いて実施例1と同様に実施した。得られた架橋ポリオレフィン樹脂発泡シートの評価結果を表1に示す。
【0044】
【表1】
【0045】
表1から明らかなように、実施例1、2では、平均セル壁厚みを大きくすることで、破壊強度が良好となり、機械的強度、特にずりせん断に対する強度が良好となった。一方、比較例2では、実施例1、2と発泡倍率が同じであったにもかかわらず、平均セル壁厚みが小さかったため、機械的強度を良好にすることができなかった。