特許第5785517号(P5785517)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5785517
(24)【登録日】2015年7月31日
(45)【発行日】2015年9月30日
(54)【発明の名称】無線通信システムおよびネットワーク
(51)【国際特許分類】
   H04W 4/00 20090101AFI20150910BHJP
   H04W 16/32 20090101ALI20150910BHJP
【FI】
   H04W4/00 111
   H04W16/32
【請求項の数】9
【全頁数】17
(21)【出願番号】特願2012-95536(P2012-95536)
(22)【出願日】2012年4月19日
(65)【公開番号】特開2013-223218(P2013-223218A)
(43)【公開日】2013年10月28日
【審査請求日】2013年8月26日
(73)【特許権者】
【識別番号】392026693
【氏名又は名称】株式会社NTTドコモ
(74)【代理人】
【識別番号】100125689
【弁理士】
【氏名又は名称】大林 章
(72)【発明者】
【氏名】森岡 康史
(72)【発明者】
【氏名】ウリ アンダルマワンティ ハプサリ
(72)【発明者】
【氏名】ウメシュ アニール
(72)【発明者】
【氏名】高橋 秀明
(72)【発明者】
【氏名】萩原 淳一郎
(72)【発明者】
【氏名】石井 啓之
【審査官】 桑江 晃
(56)【参考文献】
【文献】 特開2002−335569(JP,A)
【文献】 国際公開第2011/052774(WO,A1)
【文献】 特表2009−509369(JP,A)
【文献】 特表2009−505509(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04B 7/26
H04W 4/00 − 99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1セルを形成し、第1周波数帯にて無線通信を実行可能な第1基地局と、
前記第1セルより小さい第2セルを形成し、前記第1周波数帯とは異なる第2周波数帯にて無線通信を実行可能な第2基地局と、
前記第1基地局および前記第2基地局と無線通信可能なユーザ装置と
前記第1基地局と前記第2基地局との各々を介して確立される、前記ユーザ装置が外部ネットワークとの間で信号を送受信するための論理経路を制御可能な通信制御部とを備え
前記通信制御部は、音声信号を送受信するための第1論理経路とデータ信号を送受信するための他の論理経路とが前記第1基地局を介して確立された状態で、前記ユーザ装置が前記第2基地局を発見した場合に、当該第1論理経路を維持したまま、前記データ信号を送受信するための論理経路を、前記他の論理経路から、前記第2基地局を介して確立される第2論理経路に切り替える
無線通信システム。
【請求項2】
前記第2周波数帯は、前記第1周波数帯よりも周波数が高
請求項1に記載の無線通信システム。
【請求項3】
前記外部ネットワークとの接続点となるゲートウェイ装置を具備し、
前記第2基地局は、当該第2基地局に組み込まれゲートウェイ部を有し、
前記第1論理経路は前記第1基地局を介して前記ゲートウェイ装置と前記ユーザ装置とに確立され、前記第2論理経路は前記第2基地局の前記ゲートウェイ部と前記ユーザ装置とに確立され、
前記ユーザ装置は、前記ゲートウェイ装置および前記第2基地局の前記ゲートウェイ部を経由して前記外部ネットワークと通信可能である
請求項1または2に記載の無線通信システム。
【請求項4】
前記外部ネットワークとの接続点となるゲートウェイ装置を具備し、
前記第1論理経路は前記第1基地局を介して前記ゲートウェイ装置と前記ユーザ装置とに確立され、前記第2論理経路は前記第2基地局を介して前記ゲートウェイ装置と前記ユーザ装置とに確立され、
前記ユーザ装置は、前記ゲートウェイ装置を介して前記外部ネットワークと通信可能である
請求項1から3のいずれかに記載の無線通信システム。
【請求項5】
前記第1基地局に接続され、前記通信制御部を有する交換局を備え、
前記交換局の前記通信制御部は、
第1制御信号を前記第1基地局に送信して前記第1基地局と前記ユーザ装置との無線通信を制御し、前記第1制御信号とは異なる第2制御信号を前記第1基地局経由で前記第2基地局に送信して前記第2基地局と前記ユーザ装置との無線通信を制御する
請求項1からのいずれかに記載の無線通信システム。
【請求項6】
前記第1制御信号に基づいた前記第1基地局との前記ユーザ装置との無線通信の制御には、当該第1基地局と当該ユーザ装置との無線信号の送受信スケジュールの制御が含まれ、前記第2制御信号に基づいた前記第2基地局と前記ユーザ装置との無線通信の制御には、当該第2基地局と当該ユーザ装置との無線信号の送受信スケジュールの制御が含まれる
請求項に記載の無線通信システム。
【請求項7】
前記第1基地局に接続される交換局を備え、
前記第1基地局は、前記通信制御部を有し、
前記交換局は、
前記第1基地局および前記第2基地局の少なくともいずれかと接続する前記ユーザ装置の無線通信を制御する制御信号を前記第1基地局に送信し、
前記第1基地局の前記通信制御部は、
前記制御信号が前記第1基地局と前記ユーザ装置との無線通信を制御するものである場合には、当該制御信号に基づいて当該第1基地局と当該ユーザ装置との無線通信を制御し、
前記制御信号が前記第2基地局と前記ユーザ装置との無線通信を制御するものである場合には、当該制御信号に基づいて当該第2基地局と当該ユーザ装置との無線通信を制御する
請求項1からのいずれかに記載の無線通信システム。
【請求項8】
前記制御信号に基づいた前記第1基地局との前記ユーザ装置との無線通信の制御には、当該第1基地局と当該ユーザ装置との無線信号の送受信スケジュールの制御が含まれ、前記制御信号に基づいた前記第2基地局と前記ユーザ装置との無線通信の制御には、当該第2基地局と当該ユーザ装置との無線信号の送受信スケジュールの制御が含まれる
請求項7に記載の無線通信システム。
【請求項9】
第1セルを形成し、第1周波数帯にて無線通信を実行可能な第1基地局と、
前記第1セルより小さい第2セルを形成し、前記第1周波数帯とは異なる第2周波数帯にて無線通信を実行可能な第2基地局と、
前記第1基地局と前記第2基地局との各々を介して確立される、前記ユーザ装置が外部ネットワークとの間で信号を送受信するための論理経路を制御可能な通信制御部とを備え
前記通信制御部は、音声信号を送受信するための第1論理経路とデータ信号を送受信するための他の論理経路とが前記第1基地局を介して確立された状態で、前記ユーザ装置が前記第2基地局を発見した場合に、当該第1論理経路を維持したまま、前記データ信号を送受信するための論理経路を、前記他の論理経路から、前記第2基地局を介して確立される第2論理経路に切り替える
ネットワーク。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、無線通信システムおよびネットワークに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、スマートフォンをはじめとするユーザ装置の高性能・高機能化に伴い、無線通信のトラヒック量が増大する傾向にあるため、無線通信システムの処理容量の向上が求められている。処理容量の向上を実現するために、小規模基地局および高周波数帯域の活用が提案されている。すなわち、広い領域をカバーする大規模基地局(マクロ基地局)に加えて、大規模基地局より狭い領域をカバーする小規模基地局(ピコ基地局、フェムト基地局等)を利用することにより、1つの基地局が処理すべきトラヒック量を低減して無線通信システム全体のスループットを向上させること、及び、既に無線通信に利用されている周波数帯(800MHz帯、2GHz帯等)に加え、より広い帯域幅を無線通信に利用可能な高周波数帯(例えば、3.5GHz帯)を活用して、無線通信システムのスループットを向上させることが提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2010-062875号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
小規模基地局を用いる構成では、大規模基地局のみを用いた構成と比較して、同じ範囲をカバーするのに必要な基地局数が多いため、導入及び維持の負荷が増大する可能性がある。また、電波は周波数が高いほど減衰しやすい(伝搬損失が大きい)ため、高周波数帯を用いた無線通信は、より低い周波数帯を用いた無線通信と比較して通信の安定性が低い可能性がある。
【0005】
以上の事情を考慮して、本発明は、小規模基地局および高周波数帯を用いた無線通信システムにおいて、小規模基地局の導入及び維持の負荷を抑制しつつ、無線通信の安定性の向上を可能にすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の無線通信システムは、第1セルを形成し、第1周波数帯にて無線通信を実行可能な第1基地局と、前記第1セルより小さい第2セルを形成し、前記第1周波数帯とは異なる第2周波数帯にて無線通信を実行可能な第2基地局と、前記第1基地局および前記第2基地局と無線通信可能なユーザ装置と、外部ネットワークとの接続点となるゲートウェイ装置と、前記第1基地局と前記第2基地局との各々を介して確立される、前記ユーザ装置のための論理経路を制御可能な通信制御部とを備え、前記第1基地局は、前記ゲートウェイ装置を経由して前記外部ネットワークに接続し、前記第2基地局は、前記ゲートウェイ装置を経由して又は直接に前記外部ネットワークに接続し、前記ユーザ装置は、前記第1基地局を介して確立される第1論理経路と前記第2基地局を介して確立される第2論理経路との双方を同時に用いて、前記外部ネットワークとのユーザ信号の送受信を実行することが可能であり、前記通信制御部は、前記第1基地局と前記ユーザ装置との無線通信および前記第2基地局と前記ユーザ装置との無線通信を制御する。
【0007】
以上の構成によれば、第2基地局とユーザ装置との無線通信を通信制御部が制御するので、第2基地局自身がユーザ装置との無線通信を制御する構成と比較して、第2基地局の制御機能、ひいては第2基地局全体の構成が単純化される。したがって、第2基地局を導入(製造及び設置)し、維持し、運用するための負荷が低減され得る。また、ユーザ装置が第1論理経路と第2論理経路との双方(ひいては第1基地局と第2基地局との双方)を用いて外部ネットワークとの通信を実行できるから、トラヒックの集中が回避され得る。
【0008】
本発明の好適な態様において、前記第2周波数帯は、前記第1周波数帯よりも周波数が高く、前記通信制御部は、前記第1論理経路を用いて音声信号を送受信し、前記第2論理経路を用いてデータ信号を送受信するように前記ユーザ装置を制御する。
以上の構成によれば、より高い周波数帯を用いたスループットの高い通信経路でデータ信号が送受信され、より低い周波数帯を用いた安定性の高い通信経路で音声信号が送受信されるから、スループットの向上と重要性の高い音声信号の安定した送受信とが同時に実現され得る。
【0009】
本発明の好適な態様において、前記通信制御部は、前記第1基地局と接続し前記第1論理経路を用いて無線通信している前記ユーザ装置が前記第2基地局を発見した場合に、当該第1論理経路が経由する基地局を当該第2基地局に変更するように、当該第1基地局と当該第2基地局とを制御する。
以上の構成によれば、第2基地局が発見された場合に論理経路が第1基地局から第2基地局に変更される(オフロードされる)から、無線通信の連続性が維持されつつ、第1基地局へのトラヒックの集中が回避され得る。
【0010】
本発明の好適な態様において、前記第2基地局は、当該第2基地局に組み込まれた、または当該第2基地局に接続されたゲートウェイ部を有し、前記第1論理経路は前記第1基地局を介して前記ゲートウェイ装置と前記ユーザ装置とに確立され、前記第2論理経路は前記第2基地局の前記ゲートウェイ部と前記ユーザ装置とに確立され、前記ユーザ装置は、前記ゲートウェイ装置および前記第2基地局の前記ゲートウェイ部を経由して前記外部ネットワークと通信可能である。
以上の構成によれば、第2基地局を経由してユーザ装置から送信された情報はゲートウェイ装置を経由せずに外部ネットワークに到達するから、第1基地局およびゲートウェイ装置が処理すべきトラヒック量が軽減される。
【0011】
本発明の好適な態様において、前記第1論理経路は前記第1基地局を介して前記ゲートウェイ装置と前記ユーザ装置とに確立され、前記第2論理経路は前記第2基地局を介して前記ゲートウェイ装置と前記ユーザ装置とに確立され、前記ユーザ装置は、前記ゲートウェイ装置を介して前記外部ネットワークと通信可能である。
以上の構成によれば、第2基地局がゲートウェイ部を備える構成と比較して、第2基地局の構成がより単純化される。したがって、第2基地局を導入(製造及び設置)し、維持し、運用するための負荷がより低減され得る。
【0012】
本発明の好適な態様において、無線通信システムは、前記第1基地局に接続され、前記通信制御部を有する交換局を備え、前記交換局の前記通信制御部は、第1制御信号を前記第1基地局に送信して前記第1基地局と前記ユーザ装置との無線通信を制御し、前記第1制御信号とは異なる第2制御信号を前記第1基地局経由で前記第2基地局に送信して前記第2基地局と前記ユーザ装置との無線通信を制御する。
【0013】
本発明の好適な態様において、前記第1制御信号に基づいた前記第1基地局との前記ユーザ装置との無線通信の制御には、当該第1基地局と当該ユーザ装置との無線信号の送受信スケジュールの制御が含まれ、前記第2制御信号に基づいた前記第2基地局と前記ユーザ装置との無線通信の制御には、当該第2基地局と当該ユーザ装置との無線信号の送受信スケジュールの制御が含まれる。
【0014】
本発明の好適な態様において、無線通信システムは、前記第1基地局に接続される交換局を備え、前記第1基地局は、前記通信制御部を有し、前記交換局は、前記第1基地局および前記第2基地局の少なくともいずれかと接続する前記ユーザ装置の無線通信を制御する制御信号を前記第1基地局に送信し、前記第1基地局の前記通信制御部は、前記制御信号が前記第1基地局と前記ユーザ装置との無線通信を制御するものである場合には、当該制御信号に基づいて当該第1基地局と当該ユーザ装置との無線通信を制御し、前記制御信号が前記第2基地局と前記ユーザ装置との無線通信を制御するものである場合には、当該制御信号に基づいて当該第2基地局と当該ユーザ装置との無線通信を制御する。
【0015】
本発明の好適な態様において、前記制御信号に基づいた前記第1基地局との前記ユーザ装置との無線通信の制御には、当該第1基地局と当該ユーザ装置との無線信号の送受信スケジュールの制御が含まれ、前記制御信号に基づいた前記第2基地局と前記ユーザ装置との無線通信の制御には、当該第2基地局と当該ユーザ装置との無線信号の送受信スケジュールの制御が含まれる。
【0016】
本発明のネットワークは、第1セルを形成し、第1周波数帯にて無線通信を実行可能な第1基地局と、前記第1セルより小さい第2セルを形成し、前記第1周波数帯とは異なる第2周波数帯にて無線通信を実行可能な第2基地局と、外部ネットワークとの接続点となるゲートウェイ装置と、前記第1基地局と前記第2基地局との各々を介して確立される、ユーザ装置のための論理経路を制御可能な通信制御部とを備え、前記第1基地局は、前記ゲートウェイ装置を経由して前記外部ネットワークに接続し、前記第2基地局は、前記ゲートウェイ装置を経由して又は直接に前記外部ネットワークに接続し、前記第1基地局および前記第2基地局は、前記第1基地局を介して確立される第1論理経路および前記第2基地局を介して確立される第2論理経路をそれぞれ用いて、前記ユーザ装置と同時に無線通信することが可能であり、前記通信制御部は、前記第1基地局と前記ユーザ装置との無線通信および前記第2基地局と前記ユーザ装置との無線通信を制御する。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本発明の第1実施形態に係る無線通信システムを示すブロック図である。
図2】マクロ基地局が形成するマクロセルおよびスモール基地局が形成するスモールセルを示す図である。
図3】スモール基地局とゲートウェイ部との通信に用いられるプロトコル構成を示す図である。
図4】マクロ基地局とスモール基地局との通信に用いられるプロトコル構成を示す図である。
図5】交換局が実行する論理経路(ベアラ)の制御の一例を示す図である。
図6】第1実施形態のユーザ装置の構成を示すブロック図である。
図7】第1実施形態のマクロ基地局の構成を示すブロック図である。
図8】第1実施形態のスモール基地局の構成を示すブロック図である。
図9】第1実施形態の交換局の構成を示すブロック図である。
図10】第1実施形態のゲートウェイ装置の構成を示すブロック図である。
図11】本発明の第2実施形態に係る無線通信システムを示すブロック図である。
図12】本発明の第3実施形態のマクロ基地局の構成を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
第1実施形態
1(1). 無線通信システムの構成
図1は、本発明の第1実施形態に係る無線通信システム1のブロック図である。無線通信システム1は、ユーザ装置100と、マクロ基地局200と、スモール基地局300と、交換局400と、ゲートウェイ装置500とを要素として備える。また、ネットワークNWは、マクロ基地局200と、スモール基地局300と、交換局400と、ゲートウェイ装置500とを備える。
【0019】
無線通信システム1内の各要素は、所定のアクセス技術(Access Technology)、例えば3GPP規格(Third Generation Partnership Project)に規定されるLTE/SAE(Long Term Evolution / System Architecture Evolution)に従って通信を実行する。3GPP規格に規定された用語に従うと、ユーザ装置100はUser Equipment(UE)であり、マクロ基地局200はevolved Node B(eNB)であり、交換局400はMobile Management Entity(MME)であり、ゲートウェイ装置500はPacket-Data-Network/Serving Gateway(P/S−GW)である。スモール基地局300はevolved Node Bの構成に準じる。
本実施形態では、無線通信システム1がLTE/SAEに従って動作する形態を例示して説明するが、本発明の技術的範囲を限定する趣旨ではない。本発明は、必要な設計上の変更を施した上で、他のアクセス技術にも適用可能である。
【0020】
ユーザ装置100は、マクロ基地局200およびスモール基地局300と無線通信することが可能である。ユーザ装置100と各基地局(マクロ基地局200,スモール基地局300)との無線通信の方式は任意である。例えば、下りリンクではOFDMA(Orthogonal Frequency Division Multiple Access)が採用され得、上りリンクではSC−FDMA(Single-Carrier Frequency Division Multiple Access)が採用され得る。
【0021】
マクロ基地局200とスモール基地局300とは有線にて相互に接続される。交換局400は、マクロ基地局200とゲートウェイ装置500とに有線で接続される。ゲートウェイ装置500は基地局200および交換局400に接続されると共に、無線通信システム1の外部ネットワークであるインターネット600に接続される。すなわち、ゲートウェイ装置500はインターネット600との接続点として機能し得る。
【0022】
スモール基地局300はゲートウェイ部GWを備える。ゲートウェイ部GWは、ゲートウェイ装置500と同様、インターネット600に接続される要素である。すなわち、ゲートウェイ部GWは、インターネット600との接続点として機能し得る。
【0023】
図2は、マクロ基地局200がその周囲に形成するマクロセルCmおよびスモール基地局300がその周囲に形成するスモールセルCsを示す図である。各セルCの中に各基地局のアンテナが模式的に示されている。作図の便宜上、マクロセルCmが示される平面とスモールセルCsが示される平面とが相違しているが、実際には、同一の平面(地表等)上にマクロセルCmとスモールセルCsとが重畳され得る。
【0024】
セルC(マクロセルCm,スモールセルCs)は各基地局(マクロ基地局200,スモール基地局300)からの電波がユーザ装置100に有効に到達する範囲である。したがって、ユーザ装置100は、ユーザ装置100自身が在圏するセルCに対応する基地局と無線通信可能である。
【0025】
スモール基地局300は、マクロ基地局200と比較して小規模であり無線送信能力(平均送信電力、最大送信電力等)も小さい。また、スモール基地局300が無線通信に用いる周波数帯(第2周波数帯、例えば3.5GHz帯)は、マクロ基地局200が無線通信に用いる周波数帯(第1周波数帯、例えば2GHz帯)よりも周波数が高く、伝搬損失が大きい。したがって、スモールセルCsはマクロセルCmよりも面積が小さい。結果として、概略的には、第2周波数帯を用いた無線通信よりも第1周波数帯を用いた無線通信の方が安定性が高い場合が多い。
【0026】
スモールセルCsがマクロセルCmの内部に重層的に形成される(オーバレイされる)ことを考慮すると、ユーザ装置100がスモールセルCsに在圏する場合、そのユーザ装置100は、そのスモールセルCsを形成するスモール基地局300及びそのスモールセルCsを包含するマクロセルCmを形成するマクロ基地局200と無線通信可能である。
【0027】
1(2). ユーザ信号および制御信号の送受信
図1を再度参照して、無線通信システム1におけるユーザ信号および制御信号の送受信について説明する。図1において、実線がユーザ信号(音声信号、データ信号等のユーザデータを示す信号)の送受信に用いられる経路を示し、破線が制御信号の送受信に用いられる経路を示す。換言すると、実線はUプレーン(ユーザプレーン,User Plane)のインタフェースを示し、破線はCプレーン(制御プレーン,Control Plane)のインタフェースを示す。
【0028】
以上のインタフェースにおいては、3GPPに規定されるEPS(Evolved Packed System)のプロトコル構成が採用される。特に、スモール基地局300(制御部330)と、スモール基地局300内のゲートウェイ部GWとのUプレーン通信は、S1−Uプロトコルを用いて実行される(図3)。S1−Uプロトコルは、eNBとP/S−GWとの間のユーザデータ通信に用いられるプロトコルである。また、マクロ基地局200とスモール基地局300とのCプレーン通信は、X2−MMEプロトコルを用いて実行される(図4)。X2−MMEプロトコルは、MMEとeNBとのCプレーン通信に用いられるS1−MMEプロトコルを、基地局間の有線インタフェースであるX2インタフェースに適用したプロトコルである。
【0029】
ユーザ装置100は、2つの経路を用いてインターネット600とユーザ信号を送受信し得る。すなわち、ユーザ装置100は、ユーザ装置100からマクロ基地局200およびゲートウェイ装置500を経てインターネット600へ向かうUプレーン経路と、ユーザ装置100からスモール基地局300のゲートウェイ部GWを経て(ゲートウェイ装置500を経由せずに)インターネット600へ向かうUプレーン経路を用いて通信を実行することができる。
【0030】
無線通信システム1内において、ユーザ信号の送受信は論理的な経路であるベアラ(Bearer)を用いて実行される。ベアラ(EPSベアラ)は、交換局400の指示(制御信号)に基づいて、ユーザ装置100とゲートウェイ要素(ゲートウェイ装置500又はゲートウェイ部GW)とに確立される。より具体的には、交換局400が、確立されるべきベアラを特定するベアラIDを搭載した制御信号を、確立されるべきベアラに対応する要素(例えば、ユーザ装置100、マクロ基地局200、及びゲートウェイ装置500)に送信して、ベアラを確立する。同一の経路に複数のベアラが確立されることも可能である。確立されたベアラは、交換局400によって制御される。
【0031】
以下、マクロ基地局200を介してゲートウェイ装置500とユーザ装置100とに確立されるベアラをマクロベアラと称し、スモール基地局300のゲートウェイ部GWとユーザ装置100とに確立されるベアラをスモールベアラと称する。ユーザ装置100は、マクロベアラとスモールベアラとの双方を同時に用いて、インターネット600とのユーザ信号の送受信を実行することが可能である。
【0032】
前述の通り、第1周波数帯を用いたマクロ基地局200との無線通信の方が、第2周波数帯を用いたスモール基地局300との無線通信よりも安定性が高いことを鑑みると、ユーザ装置100は、送受信される情報の重要性または遅延の許容度等に応じてマクロベアラとスモールベアラとを選択すると好適である。例えば、交換局400が、マクロベアラを用いて音声信号を送受信する一方、スモールベアラを用いてデータ信号を送受信するようにユーザ装置100を制御すると好適である。
【0033】
また、交換局400は、マクロ基地局200とユーザ装置100との無線通信およびスモール基地局300とユーザ装置100との無線通信を制御することが可能である。より具体的には、例えば、交換局400は、マクロ基地局200からの下りリンク通信のスケジューリング情報等を含む第1制御信号をマクロ基地局200に送信して、マクロ基地局200とユーザ装置100との無線通信を制御すると共に、スモール基地局300からの下りリンク通信のスケジューリング情報等を含む第2制御信号をスモール基地局300に送信して、スモール基地局300とユーザ装置100との無線通信を制御することができる。すなわち、交換局400は、マクロ基地局200とスモール基地局300とに対してそれぞれ異なる制御信号を送信して無線通信を制御することが可能である。
【0034】
前述の通り、第1周波数帯を用いたマクロ基地局200との無線通信の方が安定性が高いので、ユーザ装置100自体の制御(例えば、ユーザ装置100の送信電力制御、ハンドオーバ制御等)に関する制御信号は、マクロ基地局200を介して交換局400からユーザ装置100へ送信されると好適である。
【0035】
1(3). ベアラの制御
図5を参照して交換局400が実行するベアラ制御の一例を説明する。図5の例では、当初、ユーザ装置100とマクロ基地局200とが無線接続され、音声ベアラ及びデータベアラが、マクロ基地局200を介してユーザ装置100とゲートウェイ装置500とに確立されていると想定する。以上の音声ベアラ及びデータベアラはマクロベアラであると理解される。ユーザ装置100は、音声ベアラを用いて音声信号を送受信し、データベアラを用いてデータ信号を送受信する。
【0036】
ユーザ装置100が移動してスモールセルCs内に進入すると、ユーザ装置100はそのスモールセルCsを形成するスモール基地局300からの無線信号を受信し、そのスモール基地局300の存在を認識(発見)する(S10)。
【0037】
ユーザ装置100は、より高速な無線通信を実行可能なスモール基地局300を発見したことを通知する制御信号を、接続中のマクロ基地局200を介して交換局400に送信する(S12)。上記の制御信号を受信した交換局400は、そのユーザ装置100に確立されているデータベアラを、マクロベアラからスモールベアラに切り替えることを決定する。なお、交換局400が切替先のベアラを決定する以上の構成の他、上記の制御信号に、現在確立されているデータベアラ(マクロベアラ)をスモールベアラに切り替える指示が含まれる構成も採用可能である。
【0038】
交換局400は、スモールベアラへの切替えに先立ち、スモールベアラの準備をスモール基地局300に指示する(S14)。スモール基地局300は、その指示が受領されその指示に従うことを示す制御信号(Ack信号)を交換局400に送信し(S16)、スモールベアラの準備を実行する。交換局400は、ユーザ装置100とスモール基地局300との無線接続(RRC Connection)を確立するように、ユーザ装置100に指示する(S17)。ユーザ装置100およびスモール基地局300は、制御信号を送受信して無線接続を確立する(S18)。無線接続が確立されると、スモール基地局300は、ユーザ装置100とスモール基地局300とが無線接続されたことを通知する制御信号を交換局400に送信する(S20)。
【0039】
ユーザ装置100とスモール基地局300との無線接続の確立後、交換局400は、データベアラをマクロベアラからスモールベアラに切り替えるように指示する(S22)。すなわち、データベアラの中継点からマクロ基地局200を削除し、データベアラの一方の端点をゲートウェイ装置500からスモール基地局300のゲートウェイ部GWに変更することを指示する制御信号を、各要素(ユーザ装置100、マクロ基地局200、スモール基地局300、およびゲートウェイ装置500)に送信する。各要素は、交換局400からの制御信号に基づいて、データベアラの切替えを実行する(S24)。
【0040】
なお、以上の説明では、ユーザ装置100とゲートウェイ(ゲートウェイ装置500,ゲートウェイ部GW)とに設定されるベアラ(EPSベアラ)が一括して切り替えられるが、ユーザ装置100と基地局(マクロ基地局200,スモール基地局300)とに設定される無線ベアラと、基地局とゲートウェイとに設定されるS1ベアラとが個別に切り替えられる構成も採用可能である。
【0041】
以上のベアラ切替えの結果、音声ベアラはマクロベアラとして維持される一方、データベアラはマクロベアラからスモールベアラに切り替えられる。したがって、ベアラ切替え後のユーザ装置100は、マクロ基地局200を介して音声信号を送受信する一方で、スモール基地局300を介してデータ信号を送受信する。
【0042】
1(4). 各要素の構成
1(4)−1. ユーザ装置の構成
図6は、本実施形態に係るユーザ装置100の構成を示すブロック図である。ユーザ装置100は、無線通信部110と制御部120とを備える。音声・映像等を出力する出力装置およびユーザからの指示を受け付ける入力装置等の図示は便宜的に省略されている。
【0043】
無線通信部110は、各基地局(マクロ基地局200、スモール基地局300)と無線通信を実行するための要素であり、各周波数帯に対応した送受信アンテナと、各基地局に対応する周波数帯の無線信号(電波)を受信して電気信号に変換する受信回路と、音声信号・データ信号等の電気信号を送信先基地局の周波数帯に対応した無線信号に変換して送信する送信回路とを含む。
【0044】
制御部120は、ベアラ設定部122とマクロ送受信部124とスモール送受信部126とを備える。ベアラ設定部122は、交換局400からの指示に基づいてベアラを確立すると共に、マクロ基地局200または交換局400等の指示に基づいてベアラを制御する(例えば、前述のベアラ切替えを実行する)。マクロ送受信部124は、無線通信部110を介してマクロ基地局200と無線信号を送受信する。換言すると、マクロ送受信部124はマクロベアラを用いた通信を実行する。スモール送受信部126は、無線通信部110を介してスモール基地局300と無線信号を送受信する。換言すると、スモール送受信部126はスモールベアラを用いた通信を実行する。
【0045】
制御部120並びに制御部120に含まれるベアラ設定部122、マクロ送受信部124、及びスモール送受信部126は、ユーザ装置100内の不図示のCPU(Central Processing Unit)が、不図示の記憶部に記憶されたコンピュータプログラムを実行し、そのコンピュータプログラムに従って機能することにより実現される機能ブロックである。
【0046】
1(4)−2. マクロ基地局の構成
図7は、本実施形態に係るマクロ基地局200の構成を示すブロック図である。マクロ基地局200は、無線通信部210とネットワーク通信部220と制御部230とを備える。無線通信部210は、ユーザ装置100と無線通信を実行するための要素であり、マクロ基地局200が用いる周波数帯について、ユーザ装置100の無線通信部110と同様の構成を有する。ネットワーク通信部220は、ネットワークNW内の他のノード(スモール基地局300、交換局400、ゲートウェイ装置500等)と通信を実行するための要素であり、有線または無線で他のノードと電気信号を送受信する。
【0047】
制御部230は、ベアラ設定部232と制御信号中継部234とユーザ信号中継部236とを備える。ベアラ設定部232は、ユーザ装置100のベアラ設定部122と同様に構成される。制御信号中継部234は、ユーザ装置100、スモール基地局300、および交換局400のいずれかからの制御信号を、必要に応じて他のいずれかへ中継する。ユーザ信号中継部236は、ユーザ装置100からのユーザ信号をゲートウェイ装置500へ中継すると共に、ゲートウェイ装置500からのユーザ信号をユーザ装置100へ中継する。
【0048】
制御部230並びに制御部230に含まれるベアラ設定部232、制御信号中継部234、及びユーザ信号中継部236は、マクロ基地局200内の不図示のCPUが、不図示の記憶部に記憶されたコンピュータプログラムを実行し、そのコンピュータプログラムに従って機能することにより実現される機能ブロックである。
【0049】
1(4)−3. スモール基地局の構成
図8は、本実施形態に係るスモール基地局300の構成を示すブロック図である。スモール基地局300は、無線通信部310とネットワーク通信部320と制御部330とゲートウェイ部GWとを備える。無線通信部310は、ユーザ装置100と無線通信を実行するための要素であり、スモール基地局300が用いる周波数帯について、マクロ基地局200の無線通信部210と同様の構成を有する。ネットワーク通信部320は、ネットワークNW内の他のノード(マクロ基地局200、交換局400、ゲートウェイ装置500等)と通信を実行するための要素であり、マクロ基地局200のネットワーク通信部220と同様の構成を有する。
【0050】
制御部330は、制御信号中継部332とベアラ設定部334とユーザ信号中継部336とを備える。制御信号中継部332は、マクロ基地局200から受信したユーザ装置100宛ての制御信号をユーザ装置100へ送信すると共に、ユーザ装置100から受信したマクロ基地局200宛ての制御信号をマクロ基地局200へ送信する。ベアラ設定部334は、ユーザ装置100のベアラ設定部122と同様に構成される。ユーザ信号中継部336は、ユーザ装置100とゲートウェイ部GWとのユーザデータ通信を中継する。
【0051】
ゲートウェイ部GWは、ゲートウェイ装置500と同等の機能を有する要素である。ゲートウェイ部GWは、交換局400からの指示に基づいてベアラを確立すると共に、マクロ基地局200または交換局400等の指示に基づいてベアラを制御する。ゲートウェイ部GWに確立されたベアラはベアラ設定部334を経由する。また、ゲートウェイ部GWは、スモールベアラを用いてユーザ装置100から送信されたユーザ信号をインターネット600に送信すると共に、インターネット600から受信したユーザ信号をベアラを用いてユーザ装置100へ送信する。なお、ゲートウェイ部GWがスモール基地局300と別個に設けられスモール基地局300と接続される構成も採用可能である。
【0052】
1(4)−4. 交換局の構成
図9は、本実施形態に係る交換局400の構成を示すブロック図である。交換局400は、ネットワーク通信部410と制御部420とを備える。ネットワーク通信部410は、ネットワークNW内の他のノード(マクロ基地局200、スモール基地局300、ゲートウェイ装置500等)と通信を実行するための要素であり、マクロ基地局200のネットワーク通信部220と同様の構成を有する。
【0053】
制御部420は、ベアラ確立部422と通信制御部424とを備える。ベアラ確立部422は、ベアラ設定部(122,232,334,532)を制御する要素であり、項目1(2)において前述したように、確立されるべきベアラを特定するベアラIDを搭載した制御信号を、確立されるべきベアラに対応する要素に送信して、ベアラを確立させる。通信制御部424は、各基地局を介して確立されるベアラを制御する要素であり、項目1(3)において前述したように、スモールセルCsの発見等を契機としてベアラの切替えを指示する。また、通信制御部424は、項目1(2)において前述したように、マクロ基地局200およびスモール基地局300に対して制御信号を送信し、マクロ基地局200とユーザ装置100との無線通信およびスモール基地局300とユーザ装置100との無線通信を制御する。
【0054】
制御部420並びに制御部420に含まれるベアラ確立部422および通信制御部424は、交換局400内の不図示のCPUが、不図示の記憶部に記憶されたコンピュータプログラムを実行し、そのコンピュータプログラムに従って機能することにより実現される機能ブロックである。
【0055】
1(4)−5. ゲートウェイ装置の構成
図10は、本実施形態に係るゲートウェイ装置500の構成を示すブロック図である。ゲートウェイ装置500は、ネットワーク通信部510と外部ネットワーク通信部520と制御部530とを備える。ネットワーク通信部510は、ネットワークNW内の他のノード(マクロ基地局200、スモール基地局300、交換局400等)と通信を実行するための要素であり、マクロ基地局200のネットワーク通信部220と同様の構成を有する。外部ネットワーク通信部520は、インターネット600と通信を実行するための要素であり、必要に応じてユーザ信号のプロトコル変換を実行する。
【0056】
制御部530は、ベアラ設定部532とユーザ信号送受信部534とを備える。ベアラ設定部532は、ユーザ装置100のベアラ設定部122と同様に構成される。ユーザ信号送受信部534は、ベアラを用いてゲートウェイ装置500に送信されたユーザ信号をインターネット600に送信すると共に、インターネット600から受信したユーザ信号をベアラを用いてユーザ装置100へ送信する。
【0057】
制御部530並びに制御部530に含まれるベアラ設定部532及びユーザ信号送受信部534は、ゲートウェイ装置500内の不図示のCPUが、不図示の記憶部に記憶されたコンピュータプログラムを実行し、そのコンピュータプログラムに従って機能することにより実現される機能ブロックである。
【0058】
1(5). 本実施形態の効果
以上に説明した第1実施形態によれば、スモール基地局300とユーザ装置100との無線通信を交換局400が制御するので、スモール基地局300自身が無線通信を制御する構成と比較して、スモール基地局300の制御機能、ひいてはスモール基地局300全体の構成が単純化される。したがって、スモール基地局300を導入(製造及び設置)し、維持し、運用するための負荷が低減され得る。
【0059】
ゲートウェイ装置500とスモール基地局300のゲートウェイ部GWとの双方を介してユーザ装置100がインターネット600との通信を実行可能であるから、トラヒックの集中が回避される。さらに、より高い周波数帯を用いたスループットの高い通信経路で大容量の情報(データ信号等)を送受信し、より低い周波数帯を用いた安定性の高い通信経路で重要な情報(制御信号,音声信号等)を送受信する場合には、スループットの向上と重要情報の安定した送受信とが同時に実現される。
【0060】
第2実施形態
本発明の第2実施形態を以下に説明する。以下に例示する各実施形態において、作用、機能が第1実施形態と同等である要素については、以上の説明で参照した符号を流用して各々の説明を適宜に省略する。
【0061】
2(1). 無線通信システムの構成
図11は、本発明の第2実施形態に係る無線通信システム1のブロック図である。第2実施形態のスモール基地局300はゲートウェイ部GWを備えず、ゲートウェイ装置500に接続される。スモール基地局300とゲートウェイ装置500とのUプレーン通信は、S1−Uプロトコルを用いて実行される。
【0062】
ユーザ装置100は、2つの経路を用いてインターネット600とユーザ信号を送受信し得る。すなわち、ユーザ装置100は、ユーザ装置100からマクロ基地局200およびゲートウェイ装置500を経てインターネット600に向かうUプレーン経路と、ユーザ装置100からスモール基地局300およびゲートウェイ装置500を経てインターネット600に向かうUプレーン経路とを用いて通信を実行可能である。
【0063】
交換局400(ベアラ確立部422)の指示の下、マクロ基地局200を介してゲートウェイ装置500とユーザ装置100とに第1ベアラが確立され、スモール基地局300を介してゲートウェイ装置500とユーザ装置100とに第2ベアラが確立される。
【0064】
2(2). 本実施形態の効果
第2実施形態によれば、第1実施形態と同様の作用及び効果が奏される。特に、スモール基地局300がゲートウェイ部GWを備えないので、スモール基地局300の構成がより単純化される。したがって、スモール基地局300を導入(製造及び設置)し、維持し、運用するための負荷がより低減され得る。
【0065】
第3実施形態
3(1). マクロ基地局の構成
図12は、第3実施形態に係るマクロ基地局200の構成を示すブロック図である。マクロ基地局200は、通信制御部238をさらに備える。マクロ基地局200の通信制御部238は、第1実施形態の交換局400の通信制御部424と同等の機能を有する。
【0066】
マクロ基地局200の通信制御部238は、交換局400(通信制御部424)と協働してユーザ装置100の無線通信を制御する。具体的には、交換局400は、マクロ基地局200およびスモール基地局300のいずれか一方又は双方と無線接続するユーザ装置100の無線通信を制御する制御信号を、マクロ基地局200に送信する。マクロ基地局200の通信制御部238は、受信した制御信号がマクロ基地局200とユーザ装置100との無線通信を制御するものである場合には、その制御信号に基づいてマクロ基地局200とユーザ装置100との無線通信(マクロベアラを用いた無線通信)を制御し、受信した制御信号がスモール基地局300とユーザ装置100との無線通信を制御するものである場合には、その制御信号に基づいてスモール基地局300とユーザ装置100との無線通信(スモールベアラを用いた無線通信)を制御する。
【0067】
3(2). 本実施形態の効果
第3実施形態によれば、前述の実施形態と同様の作用及び効果が奏される。また、マクロベアラを用いた無線通信とスモールベアラを用いた無線通信との双方をマクロ基地局200が制御するので、交換局400がそれぞれの無線通信を制御する構成と比較して、マクロ基地局200のみが有する情報に基づいたより詳細な無線通信の制御が可能となる。
【0068】
変形例
以上の実施の形態は多様に変形される。具体的な変形の態様を以下に例示する。以上の実施の形態および以下の例示から任意に選択された2以上の態様は、相互に矛盾しない限り適宜に併合され得る。
【0069】
4(1). 変形例1
以上の実施形態では、交換局400がマクロ基地局200を介してスモール基地局300に制御信号を送信する。しかし、交換局400とスモール基地局300とを直接接続し、交換局400がスモール基地局300に制御信号を直接的に送信してもよい。以上の交換局400とスモール基地局300とのCプレーン通信は、前述のS1−MMEプロトコルを用いて実行される。
【0070】
4(2). 変形例2
以上の実施形態では、マクロ基地局200とスモール基地局300との間にはUプレーン経路が設けられない。しかし、マクロ基地局200とスモール基地局300との間にUプレーン経路が設けられてもよい。そして、スモールベアラが、スモール基地局300およびマクロ基地局200を経由して、ユーザ装置100とゲートウェイ装置500とに確立されてもよい。
【0071】
4(3). 変形例3
以上の実施形態では、通信制御部(424,238)が制御する論理経路はベアラである。しかし、通信制御部(424,238)が、他の論理経路、例えばIP(Internet Protocol)レベルのセッションを制御してもよい。
【0072】
4(4). 変形例4
以上の実施形態では、マクロ基地局200とスモール基地局300とが有線(X2インタフェース)にて接続される。しかし、マクロ基地局200とスモール基地局300とが無線にて制御されてもよい。マクロ基地局200とスモール基地局300との通信は任意のインタフェースを用いて実行され得る。例えば、X2 over Un、RRC over Uu、S1 proxy、S1 proxy over Un等のインタフェースが用いられ得る。
【0073】
4(5). 変形例5
ユーザ装置100は、各基地局(マクロ基地局200、スモール基地局300)と無線通信が可能な任意の装置である。ユーザ装置100は、例えば、フィーチャーフォンまたはスマートフォン等の携帯電話端末でもよく、デスクトップ型パーソナルコンピュータでもよく、ノート型パーソナルコンピュータでもよく、UMPC(Ultra-Mobile Personal Computer)でもよく、携帯用ゲーム機でもよく、その他の無線端末でもよい。
【0074】
4(6). 変形例6
無線通信システム1内の各要素(ユーザ装置100、マクロ基地局200、スモール基地局300、交換局400、ゲートウェイ装置500)においてCPUが実行する各機能は、CPUの代わりに、ハードウェアで実行してもよいし、例えばFPGA(Field Programmable Gate Array)、DSP(Digital Signal Processor)等のプログラマブルロジックデバイスで実行してもよい。
【符号の説明】
【0075】
1……無線通信システム、100……ユーザ装置、110……無線通信部、120……制御部、122……ベアラ設定部、124……マクロ送受信部、126……スモール送受信部、200……マクロ基地局、210……無線通信部、220……ネットワーク通信部、230……制御部、232……ベアラ設定部、234……制御信号中継部、236……ユーザ信号中継部、238……通信制御部、300……スモール基地局、310……無線通信部、320……ネットワーク通信部、330……制御部、332……制御信号中継部、334……ベアラ設定部、336……ユーザ信号中継部、400……交換局、410……ネットワーク通信部、420……制御部、422……ベアラ確立部、424……通信制御部、500……ゲートウェイ装置、510……ネットワーク通信部、520……外部ネットワーク通信部、530……制御部、532……ベアラ設定部、534……ユーザ信号送受信部、600……インターネット、C(Cm,Cs)……セル、GW……ゲートウェイ部、ID……ベアラ、NW……ネットワーク。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12