特許第5785526号(P5785526)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5785526
(24)【登録日】2015年7月31日
(45)【発行日】2015年9月30日
(54)【発明の名称】棒鋼製品の製造方法
(51)【国際特許分類】
   B23D 33/02 20060101AFI20150910BHJP
   B23D 23/00 20060101ALI20150910BHJP
   B21J 5/06 20060101ALI20150910BHJP
   B21J 5/08 20060101ALI20150910BHJP
【FI】
   B23D33/02 A
   B23D23/00 A
   B21J5/06 F
   B21J5/08 Z
【請求項の数】3
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2012-168602(P2012-168602)
(22)【出願日】2012年7月30日
(65)【公開番号】特開2014-24179(P2014-24179A)
(43)【公開日】2014年2月6日
【審査請求日】2014年9月1日
(73)【特許権者】
【識別番号】000001199
【氏名又は名称】株式会社神戸製鋼所
(74)【代理人】
【識別番号】100131750
【弁理士】
【氏名又は名称】竹中 芳通
(74)【代理人】
【識別番号】100146112
【弁理士】
【氏名又は名称】亀岡 誠司
(74)【代理人】
【識別番号】100167335
【弁理士】
【氏名又は名称】武仲 宏典
(74)【代理人】
【識別番号】100164998
【弁理士】
【氏名又は名称】坂谷 亨
(72)【発明者】
【氏名】滝 康寿
(72)【発明者】
【氏名】室屋 勇希
(72)【発明者】
【氏名】久保田 吉彦
(72)【発明者】
【氏名】多比良 知秀
【審査官】 村上 哲
(56)【参考文献】
【文献】 特開平08−318424(JP,A)
【文献】 特開2002−144142(JP,A)
【文献】 実公昭56−020108(JP,Y2)
【文献】 特開平03−230842(JP,A)
【文献】 特開2001−129632(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23D 33/00 − 35/00
B21J 5/06
B21J 5/08
B23D 23/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱間圧延もしくは直送圧延後の圧延材を冷却した後、冷間シャーにより切断して棒鋼を製造する棒鋼製品の製造方法であって、
前記冷間シャーの下方には、ロ−ラテーブル搬送ラインに沿って、前記圧延材を載置するための溝部を形成した切断テーブルが設けられる一方、前記冷間シャーの上方には、載置した前記圧延材の切断後の棒鋼両端相当部を保持するとともに上方から圧縮力を付与する保持金型、及び前記圧延材を切断するためのシャーが夫々昇降可能に設けられており、
前記圧延材の先頭部を、前記冷間シャーに投入して前記切断テーブル上に形成された前記溝部内に載置した後に、前記保持金型を下降させて前記棒鋼両端相当部に上方から圧縮力をかけ、
前記シャーを下降させつつ、前記保持金型を複数回昇降させて前記棒鋼両端相当部に上方から圧縮力をかけながら、前記圧延材を所定長に切断して棒鋼製品となすことを特徴とする棒鋼製品の製造方法。
【請求項2】
熱間圧延もしくは直送圧延後の圧延材を冷却した後、冷間シャーにより切断して棒鋼を製造する棒鋼製品の製造方法において、前記冷間シャーによって切断された前記棒鋼の両端面に、プレス装置を用いて圧縮加工と面取り加工を同時に施すものであって、
前記プレス装置に投入された棒鋼を、前記プレス装置の略チャック部軸心直下まで搬送した後、チャック部で把持して前記棒鋼の軸心を前記プレス装置のラム軸心に合致させ、
一対のラムに取り付けられたダイスを対向方向に同期して伸縮させることで、前記棒鋼の両端面及び両端面エッジ部に、前記ダイスに形成されたプレス面とテーパ面を夫々押し当てて、前記棒鋼の両端面に圧縮加工と面取り加工を同時に施して棒鋼製品となすことを特徴とする棒鋼製品の製造方法。
【請求項3】
熱間圧延もしくは直送圧延後の圧延材を冷却した後、冷間シャーにより切断して棒鋼を製造する棒鋼製品の製造方法において、前記冷間シャーによって切断された前記棒鋼の端面に、ロータリスエージング装置を用いて圧縮加工と面取り加工を同時に施すものであって、
前記ロータリスエージング装置は、前記棒鋼の一端側を絞り加工する前段部と、前記棒鋼の他端側を絞り加工する後段部からなり、
前記ロータリスエージング装置の前段部に投入された前記棒鋼の他端側を、チャック部に差し込んで外周を把持した後、前記棒鋼の一端側をチャック部軸心に沿ってダイス方向に前進させて、前記ダイスのプレス面により前記棒鋼の一端面を圧縮加工すると同時に、前記ダイスのテーパ面により前記棒鋼の一端面エッジ部を面取り加工し、
次いで、前記棒鋼を前記ロータリスエージング装置の後段部に移送し、前記後段部に投入された前記棒鋼の一端側を、チャック部に差し込んで外周を把持した後、前記棒鋼の他端側をチャック部軸心に沿ってダイス方向に前進させて、前記ダイスのプレス面により前記棒鋼の他端面を圧縮加工すると同時に、前記ダイスのテーパ面により前記棒鋼の他端面エッジ部を面取り加工し、棒鋼製品となすことを特徴とする棒鋼製品の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱間圧延もしくは直送圧延後の圧延材を冷却した後、冷間シャーにより切断して棒鋼を製造する棒鋼製品の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
熱間圧延ラインによる圧延、もしくは連続鋳造機と圧延機とを搬送ラインで直結し前記連続鋳造機により鋳造された鋳片を直ちに圧延機に搬送する直送圧延によって圧延材が得られる。得られた圧延材は、後続の冷却床の長さスペースを考慮して分割シャーにより分割され、前記冷却床に複数本横並びに載置冷却した後、冷却後の圧延材を冷間シャー(コールドシャー)によって製品長さに切断して棒鋼製品が製造される。
【0003】
その際、圧延材の鋼種が例えば合金鋼や高炭素鋼の場合は、前記冷間シャーによる切断後に残留応力で端面割れが発生し易いという問題点を有している。そこで先ず、この様な端面割れを防止するための従来技術1〜3について以下説明する。
【0004】
従来技術1は、切断後の棒鋼端面にポンチやグラインダ等により凹面を形成して、歪を開放することにより端面割れを発生させないようにするものである。しかしながら、この方法では棒鋼製品の端面形状が悪化するため、製品価値の低下を招く恐れがあり現実的な防止策とはなり得ない。
【0005】
従来技術2は、圧延材を切断に適する温度まで加熱した後、切断するものである(特許文献1,2参照)。しかしながら、この従来技術2では、被切断材を加熱するための加熱装置や被切断材の温度を測定するための温度測定装置を設置するための設備費が発生する上、前記加熱装置の電気代や燃料代の維持費も要する。
【0006】
一方、従来技術3は、熱間圧延終了後の圧延材温度が低下しない温間で切断する方法であるが、圧延材を温間で切断するためには、熱間圧延後の圧延材を素早く冷間シャーに移動させる必要がある。圧延材を素早く冷間シャーに移動させるには、冷却床のスペースを空けて冷却床での切断待ち時間を短縮する必要がある。しかし、冷却床のスペースを空けるには、例えば熱間圧延間隔を長くするなど生産性を落とさなければならない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2002−126940号公報
【特許文献2】特開2007−50480号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の目的は、熱間圧延もしくは直送圧延後の圧延材を冷却した後、冷間シャーにより切断して棒鋼を製造する棒鋼製品の製造方法において、棒鋼製品の製品価値や生産性を落とすことなく、切断後の端面割れの発生を防止する棒鋼製品の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記目的を達成するために、本発明の請求項1に係る棒鋼製品の製造方法が採用した手段は、熱間圧延もしくは直送圧延後の圧延材を冷却した後、冷間シャーにより切断して棒鋼を製造する棒鋼製品の製造方法であって、前記冷間シャーの下方には、ロ−ラテーブル搬送ラインに沿って、前記圧延材を載置するための溝部を形成した切断テーブルが設けられる一方、前記冷間シャーの上方には、載置した前記圧延材の切断後の棒鋼両端相当部を保持するとともに上方から圧縮力を付与する保持金型、及び前記圧延材を切断するためのシャーが夫々昇降可能に設けられており、前記圧延材の先頭部を、前記冷間シャーに投入して前記切断テーブル上に形成された前記溝部内に載置した後に、前記保持金型を下降させて前記棒鋼両端相当部に上方から圧縮力をかけ、前記シャーを下降させつつ、前記保持金型を複数回昇降させて前記棒鋼両端相当部に上方から圧縮力をかけながら、前記圧延材を所定長に切断して棒鋼製品となすことを特徴とするものである。
【0010】
本発明の請求項2に係る棒鋼製品の製造方法が採用した手段は、熱間圧延もしくは直送圧延後の圧延材を冷却した後、冷間シャーにより切断して棒鋼を製造する棒鋼製品の製造方法において、前記冷間シャーによって切断された前記棒鋼の両端面に、プレス装置を用いて圧縮加工と面取り加工を同時に施すものであって、前記プレス装置に投入された棒鋼を、前記プレス装置の略チャック部軸心直下まで搬送した後、チャック部で把持して前記棒鋼の軸心を前記プレス装置のラム軸心に合致させ、一対のラムに取り付けられたダイスを対向方向に同期して伸縮させることで、前記棒鋼の両端面及び両端面エッジ部に、前記ダイスに形成されたプレス面とテーパ面を夫々押し当てて、前記棒鋼の両端面に圧縮加工と面取り加工を同時に施して棒鋼製品となすことを特徴とするものである。
【0011】
本発明の請求項3に係る棒鋼製品の製造方法が採用した手段は、熱間圧延もしくは直送圧延後の圧延材を冷却した後、冷間シャーにより切断して棒鋼を製造する棒鋼製品の製造方法において、前記冷間シャーによって切断された前記棒鋼の端面に、ロータリスエージング装置を用いて圧縮加工と面取り加工を同時に施すものであって、前記ロータリスエージング装置は、前記棒鋼の一端側を絞り加工する前段部と、前記棒鋼の他端側を絞り加工する後段部からなり、前記ロータリスエージング装置の前段部に投入された前記棒鋼の他端側を、チャック部に差し込んで外周を把持した後、前記棒鋼の一端側をチャック部軸心に沿ってダイス方向に前進させて、前記ダイスのプレス面により前記棒鋼の一端面を圧縮加工すると同時に、前記ダイスのテーパ面により前記棒鋼の一端面エッジ部を面取り加工し、次いで、前記棒鋼を前記ロータリスエージング装置の後段部に移送し、前記後段部に投入された前記棒鋼の一端側を、チャック部に差し込んで外周を把持した後、前記棒鋼の他端側をチャック部軸心に沿ってダイス方向に前進させて、前記ダイスのプレス面により前記棒鋼の他端面を圧縮加工すると同時に、前記ダイスのテーパ面により前記棒鋼の他端面エッジ部を面取り加工し、棒鋼製品となすことを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0013】
本発明の請求項1に係る棒鋼製品の製造方法によれば、製品価値や生産性を落とすことなく棒鋼製品の両端面の表面に圧縮歪が付与され、前記棒鋼製品の両端面に引張応力が作用したとしても端面割れが発生しない。
【0014】
本発明の請求項2に係る棒鋼製品の製造方法によれば、製品価値や生産性を低下させずに棒鋼製品の両端面の表面に圧縮歪が付与され、前記棒鋼製品の両端面に引張応力が作用したとしても端面割れが発生しない。また、圧縮加工が、前記棒鋼の両端面の圧縮加工の際、これら両端面エッジ部の面取り加工を同時に施すので、面取りのためのグラインダ掛け等を行う後工程を省略できる。
【0015】
本発明の請求項3に係る棒鋼製品の製造方法によれば、製品価値や生産性を低下させずに棒鋼製品の両端面の表面に圧縮歪が付与され、前記棒鋼製品の両端面に引張応力が作用したとしても端面割れが発生しない。また、圧縮加工が、前記棒鋼の両端面の圧縮加工の際、これら両端面エッジ部の面取り加工を同時に施すので、面取りのためのグラインダ掛け等を行う後工程を省略できる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本発明の実施の形態1に係る棒鋼製品の製造方法を説明するための模式的工程図である。
図2図1の冷間シャーをX方向から見た模式的立面図であって、図(a)は圧延材の切断開始前の状態、図(b)は切断終了後の状態を示している。
図3図2(b)のY−Y矢視図である。
図4】本発明の実施の形態2に係る棒鋼製品の製造方法を説明するための模式的工程図である。
図5図4のA部平断面を拡大して示す部分詳細断面図である。
図6】本発明の実施の形態3に係るロータリスエージング装置の前段部要部を示す模式的立断面図であって、図(a)は絞り加工開始前の状態、図(b)は絞り加工終了後の状態を示している。
【発明を実施するための形態】
【0018】
先ず、本発明の実施の形態1に係る棒鋼製品の製造方法につき、熱間圧延した圧延材を冷却した後、冷間シャーにおいてこの圧延材を保持する保持金型で切断前後の棒鋼両端相当部に圧縮力をかけながら前記圧延材を切断する態様例を、以下添付図1〜3を参照しながら説明する。図1は本発明の実施の形態1に係る棒鋼製品の製造方法を説明するための模式的工程図、図2図1の冷間シャーをX方向から見た模式的立面図であって、図(a)は圧延材の切断開始前の状態、図(b)は切断終了後の状態を示している。また、図3図2(b)のY−Y矢視図である。
【0019】
図1において、熱間圧延後の圧延材1は、ローラテーブル2により搬送され、冷却床3内に搬入される。そして、冷却床3内で冷却を完了した圧延材1は、後続のローラテーブル4により搬送されて、切断される先頭部が冷間シャー5に投入される。図2,3に示す如く、この冷間シャー5の下方には、ロ−ラテーブル搬送ラインに沿って、圧延材1を載置するため溝部6aを形成した切断テーブル6が設けられる一方、冷間シャー5の上方には、載置した圧延材1の切断後の棒鋼両端相当部を保持するとともに上方から圧縮力を付与する保持金型7a,7b、及び圧延材1を切断するためのシャー5aが夫々昇降可能に設けられている。
【0020】
切断される圧延材1の先頭部が冷間シャー5に投入されると、切断テーブル6上に形成された溝部6a内に載置され(図2(a)参照)、次いで、保持金型7aを下降して切断された圧延材1の先端部(切断後の棒鋼製品一端側)に圧縮力をかけると同時に、保持金型7bを下降して圧延材1の棒鋼相当後端部(切断後の棒鋼製品他端側)に圧縮力をかける。そして、この冷間シャー5において、シャー5aを下降しつつ、保持金型7a,7bを複数回昇降して圧縮力をかけながら、圧延材1を所定長に切断する(図2(b)、図3参照)。
【0021】
その結果、切断されると同時に両端部に圧縮加工を施された棒鋼製品10が製造され、コンベヤ16の間欠運転により冷間シャー5から排出されるとともに、次の圧延材1の先頭部が、冷間シャー5の切断テーブル6に投入される。そして、この圧延材1の切断と圧縮の同時加工が繰り返される。
【0022】
尚、図1,3においては、ローラテーブル4は2系列設けられており、圧延材1をこれら2系列のローラテーブル4から交互に冷間シャー5に投入して加工する場合を例示したが、圧延材1は、これら2系列のローラテーブル4から、同時に冷間シャー5に投入して加工することも当然可能である。
【0023】
一方、圧延材1が、連続鋳造機と圧延機とを搬送ラインで直結し、前記連続鋳造機により鋳造された鋳片を直ちに圧延機に搬送する直送圧延によって製造される場合も、得られた圧延材1は、後続の冷却床3の長さスペースを考慮して図示しない分割シャーにより分割される。そして、この後は上記実施の形態1と全く同様に、圧延材1として後続の冷却床3に複数本横並びに載置冷却した後、この圧延材1を冷間シャー5によって製品長さに切断するとともに圧縮加工を施して、棒鋼製品10を製造することも当然可能である。
【0024】
以上の通り、本発明の実施の形態1に係る棒鋼製品の製造方法によれば、熱間圧延後の圧延材1を冷却した後、冷間シャー5において圧延材1を保持する保持金型7a,7b切断後の棒鋼両端相当部に圧縮力をかけながら、圧延材1を切断して棒鋼製品10となすので、製品価値や生産性を落とすことなく前記両端面の表面に圧縮力が付与され、棒鋼製品10の両端面に引張応力が作用したとしても端面割れが発生しない。
【0025】
次に、本発明の実施の形態2に係る棒鋼製品の製造方法につき、熱間圧延後の圧延材を冷却した後切断し、切断した棒鋼にプレス装置を用いて圧縮加工する態様例を、以下添付図4,5を参照しながら説明する。図4は本発明の実施の形態2に係る棒鋼製品の製造方法を説明するための模式的工程図、図5図4のA部平断面を拡大して示す部分詳細断面図である。
【0026】
図4において、熱間圧延後の圧延材1は、ローラテーブル2により搬送され、冷却床3内に搬入される。そして、冷却床3内で冷却を完了した圧延材1は後続のローラテーブル4で搬送され、冷間シャー5によって所定長に切断される。所定長に切断された棒鋼1aは、ローラテーブル4からコンベヤ16上に移載され、このコンベヤ16の間欠走行によって順次プレス装置17に投入される。
【0027】
前記プレス装置17は、コンベヤ16を挟んで対向するラム17a,17aがラム軸心CRを一致させて配設されており、ラム17a,17aの伸縮は、同期して棒鋼1aを圧縮加工可能な様に構成されている。ラム17a,17aの先端には、夫々ダイス18,18が取り付けられており、各ダイス18の加工面には、棒鋼1aの端部外径寸法に合わせてプレス面19aとテーパ面19cが形成されている。
【0028】
また、このプレス装置17には、棒鋼1aの外周を把持して、ラム17aの棒鋼1aへの圧縮力を担持するためのチャック部(図示省略)が備えられており、このチャック部軸心CCは、ラム軸心CRに一致する様に構成されている。
【0029】
そして、コンベヤ6によりプレス装置17に投入された棒鋼1aは、コンベヤ16の間欠走行によりプレス装置17の略チャック部軸心CC直下まで搬送された後、このチャック部に外周を把持されて、棒鋼1aの軸心をラム軸心CRに合致される。そして、プレス装置17のラム17a,17aに取り付けられたダイス18,18を、対向方向に同期して伸縮させて、棒鋼1aの両端面に夫々プレス面19a,19aを押し当て同時に圧縮加工を施こす。このダイス18,18が棒鋼1aの両端面を圧縮加工する際は、ダイス18,18夫々に形成されたテーパ面19c,19cが棒鋼1aの両端面エッジ部を同時に圧縮して、面取り部10a,10aを形成する。
【0030】
その結果、両端面に圧縮加工と面取り加工を同時に施された棒鋼製品10が製造され、コンベヤ16の間欠運転によりプレス装置17から排出されるとともに、次の棒鋼1aが、プレス装置17の略チャック部軸心CC直下まで搬入される。そして、次の棒鋼1aの圧縮加工が繰り返される。
【0031】
一方、圧延材1が、連続鋳造機と圧延機とを搬送ラインで直結し前記連続鋳造機により鋳造された鋳片を直ちに圧延機に搬送する直送圧延によって製造される場合も、得られた圧延材1は、後続の冷却床3の長さスペースを考慮して図示しない分割シャーにより分割される。そして、この後は上記実施の形態2と全く同様に、圧延材1として後続の冷却床3に複数本横並びに載置冷却した後、この圧延材1を冷間シャー5によって製品長さに切断して棒鋼1aが製造され、この棒鋼1aにプレス装置7による圧縮加工を施して、棒鋼製品10を製造することも当然可能である。
【0032】
以上の通り、本発明の実施の形態2に係る棒鋼製品の製造方法によれば、冷間シャー5によって切断された棒鋼1aの両端面にプレス装置17により圧縮加工を施して棒鋼製品10となすので、棒鋼製品10の製品価値や生産性を落とすことなく両端面の表面に圧縮歪が付与され、棒鋼製品10の両端面に引張応力が作用したとしても端面割れが発生しない。また、前記圧縮加工が、棒鋼1aの両端面の圧縮加工の際、両端面エッジ部の面取りを同時加工するので、面取りのためのグラインダ掛け等を行う後工程を省略できる。
【0033】
次に、本発明の実施の形態3に係る棒鋼製品の製造方法につき、熱間圧延後の圧延材を冷却した後切断し、切断した棒鋼にロータリスエージング装置を用いて圧縮加工する態様例を、以下添付図4,6を参照しながら説明する。本発明の実施の形態3に係る棒鋼製品の製造方法においては、図4のプレス装置17をロータリスエージング装置27に読み替えて説明する。図6は本発明の実施の形態3に係るロータリスエージング装置の前段部要部を示す模式的立断面図であって、図(a)は絞り加工開始前の状態、図(b)は絞り加工終了後の状態を示している。
【0034】
本発明の実施の形態3が上記実施の形態2と相違するところは、棒鋼に圧縮加工(面取り加工を含む)を施す方法にあり、その他は全く同構成であるから、圧縮加工の方法についての説明に止めるものとする。
即ち、本発明の実施の形態2においては、棒鋼1aへの圧縮加工がプレス装置17により施されていたのに対し、本発明の実施の形態3においては、棒鋼1aへの圧縮加工がロータリスエージング装置27により施される。
【0035】
更に詳しく説明するならば、冷却床3内で冷却を完了した圧延材1は後続のローラテーブル4で搬送され、冷間シャー5によって所定長に切断される。所定長に切断された棒鋼1aは、ローラテーブル4からコンベヤ16上に移載され、このコンベヤ16の間欠走行によって順次ロータリスエージング装置27に投入される。
【0036】
本発明の実施の形態3に係るロータリスエージング装置27は、棒鋼1aの一端側を絞り加工する前段部と、棒鋼1aの他端側を絞り加工する後段部からなり、先ず、ロータリスエージング装置27の前段部における要部構成と加工手順につき説明する。
【0037】
ロータリスエージング装置27は、コンベヤ6を挟んで対向するチャック部27aとダイス28とが、チャック部軸心CCとダイス軸心CDを一致させて配設されている。チャック部27aは、棒鋼1aの他端部を把持するとともに軸心CCに沿ってダイス方向に前進後退可能に、またダイス28は、周方向に複数個に均等分割され、求心方向に絞り込んで棒鋼1aの先端面に圧縮加工が可能に構成されている。即ち、ダイス28の加工面には、棒鋼1aの先端面に圧縮加工を施すためのプレス面29a、端部外周面に微量の絞り加工を施すための絞り面29b及び端面エッジ部にテーパ加工を施すためのテーパ面29cが形成されている。
【0038】
そして、コンベヤ6によりロータリスエージング装置27の前段部に投入された棒鋼1aは、他端側をチャック部27aに差し込まれて外周を把持され(図6(a)参照)た後、棒鋼1aの一端側をチャック部軸心CCに沿ってダイス28方向に前進させ、ダイス28を求心方向に絞り込んで、前進して来た棒鋼1aの一端側に圧縮加工を施す(図6(b)参照)。
【0039】
即ち、このダイス28に形成されたプレス面29aに棒鋼1aの一端面を押し当てて圧縮加工を施すとともに、絞り面29bが棒鋼1aの一端面外周に微量の絞り加工を施し、テーパ面29cが棒鋼1aの一端面エッジ部を絞り込んで面取り部10aが形成される。
【0040】
一端側が圧縮加工された棒鋼1aは、次いで棒鋼1aの他端側を圧縮加工するため、ロータリスエージング装置27の後段部に移送される。この後段部においては図示省略するが、チャック部27aとダイス28の配置が図6とは左右勝手違いとなり、棒鋼1aの一端側をチャック部27aで把持するとともに他端側をダイス28で圧縮加工する様に読み替えれば、上記と全く同一の加工手順となるので説明は省略する。
【0041】
その結果、両端に圧縮、面取り及び絞りの各加工を施された棒鋼製品10が製造され、コンベヤ6の間欠運転によりロータリスエージング装置27から排出されるとともに、次の棒鋼1aが、ロータリスエージング装置27の前段部まで搬送される。そして、次の棒鋼1aの圧縮加工が繰り返される。
【0042】
尚、上記実施の形態3においては、ダイス28の加工面には、棒鋼1aの端部外径寸法に合わせて、その端部外周に微量の絞り加工を施すための絞り面29bが形成され、棒鋼1aを前進及び回転させて、ダイス28のプレス面29aにより棒鋼1aの先端面を圧縮加工すると同時に、絞り面29bにより棒鋼1aの端部外周を微量の絞り加工する態様例で説明したが、ダイス28の絞り面29b内径を棒鋼1aの端部外径寸法より大きく形成しておき、ダイス28を回転及び伸縮させて棒鋼1aの先端面を圧縮加工すると同時に、面取り部10aのみを形成することも可能である。
【0043】
以上の通り、本発明の実施の形態2,3に係る棒鋼製品10の製造方法によれば、前記圧縮加工が、プレス装置17またはロータリスエージング装置27にて加工可能なので、棒鋼製品10の製品価値や生産性を落とすことなく棒鋼1aの両端面に圧縮歪を付与できる。また、これらの装置を用いた棒鋼製品10の製造方法によれば、棒鋼1aの両端面の圧縮加工と同時に、両端面エッジ部を面取り加工できる。
【0044】
この様に、本発明に係る圧縮加工は、単純な圧縮のみならず上述した絞り加工の如く、棒鋼の両端面に圧縮歪を付与し得る他の加工方法も含んでいる。即ち、本発明に係る圧縮加工とは絞り加工等を含むものである。
【0045】
本発明に係る圧延材としては、例えば機械構造用合金鋼〔JIS G4053:即ち、マンガン鋼SMn〕、マンガンクロム鋼(SMnC)、クロム鋼(SCr)、クロムモリブデン鋼(SCM)、ニッケルクロム鋼(SNC)、ニッケルクロムモリブデン鋼(SNCM)等〕やばね鋼(JIS G 3801:SUP)、高炭素クロム軸受鋼(JIS G 4805:SUJ)等の材質からなる圧延材は焼入れ性が高いため、熱間圧延後の冷却時に過冷組織を生成し易く、冷間シャーによる切断時に端面割れを発生し易いので、本発明の適用が特に効果的である。
【実施例】
【0046】
(1)棒鋼サンプル作製
(a)実施例−1の棒鋼サンプル作製
既存の熱間圧延ラインにおいて、温度800〜1100℃にて熱間圧延したニッケルクロム鋼からなる圧延材1を冷却床3で冷却し、冷間シャー5において切断前後の棒鋼両端相当部をハンマーで叩いて圧縮力をかけながら所定長に切断して、得られた5本の棒鋼製品10を実施例−1の棒鋼サンプルとした。切断時の各棒鋼1aの表面温度を接触温度計で測定したところ、50〜800℃であった。
【0047】
(b)実施例−2の棒鋼サンプル作製
冷間シャー5によって所定長に切断した棒鋼1aから5本を順次抜き取り、各棒鋼1aの両端面をハンマーで叩いて圧縮加工を施した以外は実施例−1と全く同様にして、得られた5本の棒鋼製品10を実施例−2の棒鋼サンプルとした。圧縮加工直前の各棒鋼1aの表面温度は50〜800℃であった。
【0048】
(c)実施例−3の棒鋼サンプル作製
温度800〜1100℃にて熱間圧延したばね鋼からなる圧延材1を用いた以外は実施例−2と全く同様にして、得られた5本の棒鋼製品10を実施例−3の棒鋼サンプルとした。圧縮加工直前の各棒鋼1aの表面温度は50〜800℃であった。
【0049】
(d)比較例−1の棒鋼サンプル作製
上記実施例−2の棒鋼サンプル作製の際、所定長に切断した棒鋼1aから別の5本を抜き取って、何も加工せずに比較例−1の棒鋼サンプルとした。
【0050】
(e)比較例−2の棒鋼サンプル作製
上記実施例−3の棒鋼サンプル作製の際、所定長に切断した棒鋼1aから別の5本を抜き取って、何も加工せずに比較例−2の棒鋼サンプルとした。
【0051】
(2)端面割れ試験
作製した上記実施例−1〜3及び比較例−1,2の各サンプルを、室温にて引張応力を負荷した状態で7日間放置した後、端面割れ発生の有無を目視観察した。結果は表1に示す通り、比較例−1,2では端面割れが発生していたが、実施例−1〜3では何れも端面割れは生じていなかった。
【0052】
【表1】
【0053】
以上説明した通り、本発明に係る棒鋼製品の製造方法によれば、熱間圧延もしくは直送圧延後の圧延材を冷却した後、冷間シャーにより切断して棒鋼を製造する棒鋼製品の製造方法であって、前記冷間シャーにおいて圧延材を保持する保持金型で切断前後の棒鋼両端相当部に圧縮力をかけながら、前記圧延材を切断して棒鋼製品となす、或いは前記冷間シャーによって切断された棒鋼の両端面に圧縮加工を施して棒鋼製品となすので、製品価値や生産性を落とすことなく前記両端面の表面に圧縮歪が付与され、前記棒鋼製品の両端面に引張応力が作用したとしても端面割れが発生しない。
【符号の説明】
【0054】
CR:ラム軸心,
CC:チャック部軸心
CD:ダイス軸心,
1:圧延材, 1a:棒鋼,
2,4:ローラテーブル,
3:冷却床,
5:冷間シャー, 5a:,シャー,
6:切断テーブル, 6a:溝部,
7a,7b:保持金型,
10:棒鋼製品, 10a:面取り部,
16:コンベヤ,
17:プレス装置, 17a:ラム,
18:ダイス,
19a:プレス面, 19c:テーパ面,
27:ロータリスエージング装置, 27a:チャック,
28:ダイス,
29a:プレス面, 29b:絞り面, 29c:テーパ面
図1
図2
図3
図4
図5
図6