特許第5785583号(P5785583)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2015.5.11 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5785583
(24)【登録日】2015年7月31日
(45)【発行日】2015年9月30日
(54)【発明の名称】炭化水素ガスセンサ
(51)【国際特許分類】
   G01N 27/416 20060101AFI20150910BHJP
【FI】
   G01N27/46 311G
【請求項の数】8
【全頁数】16
(21)【出願番号】特願2013-101037(P2013-101037)
(22)【出願日】2013年5月13日
(65)【公開番号】特開2014-222154(P2014-222154A)
(43)【公開日】2014年11月27日
【審査請求日】2015年2月16日
(73)【特許権者】
【識別番号】000004064
【氏名又は名称】日本碍子株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088672
【弁理士】
【氏名又は名称】吉竹 英俊
(74)【代理人】
【識別番号】100088845
【弁理士】
【氏名又は名称】有田 貴弘
(72)【発明者】
【氏名】中曽根 修
(72)【発明者】
【氏名】新妻 匠太郎
(72)【発明者】
【氏名】平田 紀子
(72)【発明者】
【氏名】中山 裕葵
【審査官】 黒田 浩一
(56)【参考文献】
【文献】 特開2011−102793(JP,A)
【文献】 特開2000−162175(JP,A)
【文献】 特開平08−247995(JP,A)
【文献】 特開2000−171434(JP,A)
【文献】 特開2003−302371(JP,A)
【文献】 特開2003−156470(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 27/416
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
酸素イオン伝導性の固体電解質からなるセンサ素子を用いて構成され、被測定ガス中の炭化水素ガス成分の濃度を、前記炭化水素ガス成分を燃焼させることにより前記固体電解質内を流れる電流に基づいて特定する炭化水素ガスセンサであって、
外部空間に連通し、前記被測定ガスに第1の拡散抵抗を付与する第1の拡散律速部と、
前記第1の拡散律速部と連通し、前記外部空間から前記第1の拡散抵抗のもとで被測定ガスが導入される第1の内部空所と、
前記第1の内部空所に連通し、前記被測定ガスに第2の拡散抵抗を付与する第2の拡散律速部と、
前記第2の拡散律速部と連通し、前記第1の内部空所から前記第2の拡散抵抗のもとで被測定ガスが導入される第2の内部空所と、
前記第2の内部空所に連通し、前記被測定ガスに第3の拡散抵抗を付与する第3の拡散律速部と、
前記第3の拡散律速部と連通し、前記第2の内部空所から前記第3の拡散抵抗のもとで被測定ガスが導入される第3の内部空所と、
前記第1の内部空所に面して形成された第1の内部電極と、前記センサ素子の外面に形成された第1の外部電極と、前記第1の内部電極と前記第1の外部電極の間に存在する前記固体電解質とから構成された第1の電気化学的ポンピングセルと、
前記第2の内部空所に面して形成された第2の内部電極と、前記センサ素子の外面に形成された第2の外部電極と、前記第2の内部電極と前記第2の外部電極との間に存在する前記固体電解質とから構成された第2の電気化学的ポンピングセルと、
前記第3の内部空所に面して形成された測定電極と、前記センサ素子の外面に形成された第3の外部電極と、前記測定電極と前記第3の外部電極との間に存在する前記固体電解質とから構成された測定ポンピングセルと、
基準ガスが導入される基準ガス空間と、
前記基準ガス空間に面して形成された基準電極と、
を備え、
前記第1の電気化学的ポンピングセルは、前記第1の内部空所において前記被測定ガス中の炭化水素ガスの燃焼が実質的に生じないように前記第1の内部空所の酸素分圧を調整し、
前記第3の内部空所における酸素濃度勾配が平衡状態を保つように、前記第3の拡散律速部における前記第3の拡散抵抗が定められてなるとともに前記第2の電気化学的ポンピングセルによる前記第2の内部空所の酸素分圧の調整が行われてなる状態で、前記測定ポンピングセルによって前記第3の内部空所に酸素を供給することにより、前記第3の内部空所に存在する前記炭化水素を前記測定電極の表面において全て燃焼させ、その際に前記測定電極と前記第3の外部電極との間、または前記測定電極と前記基準電極との間を流れる電流の大きさに基づいて、前記被測定ガスに存在する前記炭化水素ガス成分の濃度を特定する、
ことを特徴とする炭化水素ガスセンサ。
【請求項2】
請求項1に記載の炭化水素ガスセンサであって、
前記第2の電気化学的ポンピングセルは、前記第2の内部空所に存在する可燃性ガス成分のうち、少なくとも水素または一酸化炭素を含んでなる前記炭化水素以外の可燃性ガス成分である対象外可燃性ガス成分が選択的に燃焼するように、前記第2の内部空所の酸素分圧を調整する、
ことを特徴とする炭化水素ガスセンサ。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の炭化水素ガスセンサであって、
前記第1の内部電極と前記第1の外部電極との間に与える第1の電圧を調整することで、前記第1の内部空所の酸素分圧が調整され、
前記第2の内部電極と前記第2の外部電極との間に与える第2の電圧を調整することで、前記第2の内部空所の酸素分圧が調整され、
前記測定ポンピングセルにおいて前記測定電極と前記第3の外部電極との間に与える第3の電圧を調整することによって、前記第3の内部空所に存在する前記炭化水素が全て燃焼するように、前記測定電極の表面における酸素分圧が調整される、
ことを特徴とする炭化水素ガスセンサ。
【請求項4】
請求項3に記載の炭化水素ガスセンサであって、
前記第1の内部電極と、前記基準電極と、前記第1の内部電極と前記基準電極との間に存在する前記固体電解質とから構成され、前記第1の電圧の大きさを検出する第1の酸素分圧検出センサセルと、
前記第2の内部電極と、前記基準電極と、前記第2の内部電極と前記基準電極との間に存在する前記固体電解質とから構成され、前記第2の電圧の大きさを検出する第2の酸素分圧検出センサセルと、
前記測定電極と、前記基準電極と、前記測定電極と前記基準電極との間に存在する前記固体電解質とから構成され、前記第3の電圧の大きさを検出する測定センサセルと、
をさらに備え、
前記第1の酸素分圧検出センサセルにおける前記第1の電圧の検出値に基づいて前記第1の内部空所の酸素分圧が調整され、
前記第2の酸素分圧検出センサセルにおける前記第2の電圧の検出値に基づいて前記第2の内部空所の酸素分圧が調整され、
前記測定センサセルにおける前記第3の電圧の検出値に基づいて前記測定電極の表面における酸素分圧が調整される、
ことを特徴とする炭化水素ガスセンサ。
【請求項5】
請求項1ないし請求項4のいずれかに記載の炭化水素ガスセンサであって、
前記炭化水素ガス成分の濃度の特定を、
前記第1の内部空所の酸素分圧よりも前記第2の内部空所の酸素分圧の方が大きく、
前記第2の内部空所の酸素分圧よりも前記測定電極の表面における酸素分圧の方が大きい、
という関係をみたしつつ行う、
ことを特徴とする炭化水素ガスセンサ。
【請求項6】
請求項5に記載の炭化水素ガスセンサであって、
前記炭化水素ガス成分の濃度の特定を、
前記第1の内部空所の酸素分圧を10−10atm〜10−30atmとし、
前記第2の内部空所の酸素分圧を10−5atm〜10−15atmとし、
前記測定電極の表面における酸素分圧を10−0atm〜10−10atmとして行う、
ことを特徴とする炭化水素ガスセンサ。
【請求項7】
請求項5または請求項6に記載の炭化水素ガスセンサであって、
前記被測定ガスにおける酸素分圧が大きいほど、前記第1の内部空所における目標酸素分圧を小さくする、
ことを特徴とする炭化水素ガスセンサ。
【請求項8】
請求項1ないし請求項7のいずれかに記載の炭化水素ガスセンサであって、
前記第1の外部電極、前記第2の外部電極、または前記第3の外部電極の少なくとも2つが共通である、
ことを特徴とする炭化水素ガスセンサ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被測定ガス中の炭化水素ガスを検出する炭化水素ガスセンサに関する。
【背景技術】
【0002】
可燃性ガスとして一酸化炭素(CO)、水素(H)および炭化水素(HC)を含んだ被測定ガスにおける可燃性ガスの合計濃度、あるいは、該可燃性ガス中のHCのみの濃度を測定することの出来る装置がすでに公知である(例えば、特許文献1参照)。係る被測定ガスとしては、内燃機関、外燃機関、燃焼路等における燃焼排気ガスが例示される。
【0003】
特許文献1に開示された装置は、概略、それぞれが周囲から区画された第一の処理ゾーンと第二の処理ゾーンとを有するとともに、外部空間に対する開口部と第一の処理ゾーンの間、および、第一の処理ゾーンと第二の処理ゾーンとの間において、そこを流れるガス雰囲気に対して所定の拡散抵抗を付与するように構成されている。係る装置において、可燃性ガス成分を含む被測定ガスはまず、装置外部から第一の処理ゾーンに所定の拡散抵抗の下に導かれ、第一の処理ゾーンにおいて第一の電気化学的酸素ポンプセルによる酸素のポンピング作用によって可燃性ガス成分が実質的に燃焼され得ない程度にまでその酸素分圧を低減されたうえで、第二の処理ゾーンに所定の拡散抵抗の下に導かれる。そして、第二の処理ゾーンにおいては、雰囲気中に存在する可燃性ガス成分が第二の電気化学的酸素ポンプセルによる酸素のポンピング作用によって酸素を供給することで燃焼させられる。係る燃焼の際に第二の電気化学的酸素ポンプセルを流れるポンプ電流、あるいは、第二の電気化学的酸素ポンプセルの電極間に生じる電圧が検出され、その検出値に基づいて被測定ガス中の可燃性ガスの濃度を求めるようになっている。
【0004】
また、開口部と第一の処理ゾーンとの間に、炭化水素ガスを酸化せず一酸化炭素ガスや水素ガスなどの炭化水素ガス以外の可燃性ガスを選択的に酸化させる選択的酸化触媒を配置しておくことによって、炭化水素ガスのみを第二の処理ゾーンに導くことにより、炭化水素ガスの濃度を求めることが出来るようにもなっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許34500084号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1に開示された装置を用いて上述の濃度測定手法を行った場合、第一の処理ゾーンにおいては、被測定ガスの酸素分圧が、可燃性ガスが実質的に燃焼され得ない低い値に制御されるので、第一の処理ゾーンは極端な酸素濃度が低い状態となる。一方、第二の処理ゾーンには、可燃性ガスを燃焼させるべく酸素が供給されることから、第二の処理ゾーンは第一の処理ゾーンに比して十分に酸素濃度が高い状態となっている。第一の処理ゾーンと第二の処理ゾーンとは連通しているので、両処理ゾーンの間においてこのように酸素濃度に差があると、酸素濃度の高い第二の処理ゾーンから酸素濃度の低い第一の処理ゾーンへと酸素が流入する。このとき、第一の処理ゾーンでは第一の電気化学的酸素ポンプセルによる酸素のポンピング作用によって酸素が素子外部へと排出されるので、第二の処理ゾーンから流入した酸素についても同様に素子外部へ排出される。すると、第二の処理ゾーンにおいては、可燃性ガスを燃焼させるための酸素が不足することになるため、可燃性ガスの燃焼に必要な量よりも多くの酸素が供給されることになる。
【0007】
すると、上述の濃度測定手法では、可燃性ガスの濃度を、酸素の供給の際に第二の電気化学的酸素ポンプセルを流れるポンプ電流、あるいは、第二の電気化学的酸素ポンプセルの電極間に生じる電圧に基づいて求めるものとされているところ、可燃性ガスを燃焼させるために本来必要な量よりも多くの酸素が供給されたがゆえに、可燃性ガスの濃度値は、本来の値よりも過大な値にて算出されてしまうことになる。
【0008】
しかも、係る現象は、測定感度を増加させるべく、第一の処理ゾーンにおける酸素分圧をより低い値にしようとすればするほど顕著となり、より測定誤差を増大させることとなる。
【0009】
本発明は上記課題に鑑みてなされたものであり、可燃性ガスとして一酸化炭素ガス、水素ガス、および炭化水素ガスが含まれる被測定ガスにおける炭化水素ガスの濃度を精度良く得ることが出来る、炭化水素ガスセンサを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するため、請求項1の発明は、酸素イオン伝導性の固体電解質からなるセンサ素子を用いて構成され、被測定ガス中の炭化水素ガス成分の濃度を、前記炭化水素ガス成分を燃焼させることにより前記固体電解質内を流れる電流に基づいて特定する炭化水素ガスセンサであって、外部空間に連通し、前記被測定ガスに第1の拡散抵抗を付与する第1の拡散律速部と、前記第1の拡散律速部と連通し、前記外部空間から前記第1の拡散抵抗のもとで被測定ガスが導入される第1の内部空所と、前記第1の内部空所に連通し、前記被測定ガスに第2の拡散抵抗を付与する第2の拡散律速部と、前記第2の拡散律速部と連通し、前記第1の内部空所から前記第2の拡散抵抗のもとで被測定ガスが導入される第2の内部空所と、前記第2の内部空所に連通し、前記被測定ガスに第3の拡散抵抗を付与する第3の拡散律速部と、前記第3の拡散律速部と連通し、前記第2の内部空所から前記第3の拡散抵抗のもとで被測定ガスが導入される第3の内部空所と、前記第1の内部空所に面して形成された第1の内部電極と、前記センサ素子の外面に形成された第1の外部電極と、前記第1の内部電極と前記第1の外部電極の間に存在する前記固体電解質とから構成された第1の電気化学的ポンピングセルと、前記第2の内部空所に面して形成された第2の内部電極と、前記センサ素子の外面に形成された第2の外部電極と、前記第2の内部電極と前記第2の外部電極との間に存在する前記固体電解質とから構成された第2の電気化学的ポンピングセルと、前記第3の内部空所に面して形成された測定電極と、前記センサ素子の外面に形成された第3の外部電極と、前記測定電極と前記第3の外部電極との間に存在する前記固体電解質とから構成された測定ポンピングセルと、基準ガスが導入される基準ガス空間と、前記基準ガス空間に面して形成された基準電極と、を備え、前記第1の電気化学的ポンピングセルは、前記第1の内部空所において前記被測定ガス中の炭化水素ガスの燃焼が実質的に生じない(第1の内部空所に導入された炭化水素ガスの大部分が第2の内部空所へ導入される)ように前記第1の内部空所の酸素分圧を調整し、前記第3の内部空所における酸素濃度勾配が平衡状態を保つように、前記第3の拡散律速部における前記第3の拡散抵抗が定められてなるとともに前記第2の電気化学的ポンピングセルによる前記第2の内部空所の酸素分圧の調整が行われてなる状態で、前記測定ポンピングセルによって前記第3の内部空所に酸素を供給することにより、前記第3の内部空所に存在する前記炭化水素を前記測定電極の表面において全て燃焼させ、その際に前記測定電極と前記第3の外部電極との間、または前記測定電極と前記基準電極との間を流れる電流の大きさに基づいて、前記被測定ガスに存在する前記炭化水素ガス成分の濃度を特定する、ことを特徴とする。
【0011】
請求項2の発明は、請求項1に記載の炭化水素ガスセンサであって、前記第2の電気化学的ポンピングセルは、前記第2の内部空所に存在する可燃性ガス成分のうち、少なくとも水素または一酸化炭素を含んでなる前記炭化水素以外の可燃性ガス成分である対象外可燃性ガス成分が選択的に燃焼するように、前記第2の内部空所の酸素分圧を調整する、ことを特徴とする。
【0012】
請求項3の発明は、請求項1または請求項2に記載の炭化水素ガスセンサであって、前記第1の内部電極と前記第1の外部電極との間に与える第1の電圧を調整することで、前記第1の内部空所の酸素分圧が調整され、前記第2の内部電極と前記第2の外部電極との間に与える第2の電圧を調整することで、前記第2の内部空所の酸素分圧が調整され、前記測定ポンピングセルにおいて前記測定電極と前記第3の外部電極との間に与える第3の電圧を調整することによって、前記第3の内部空所に存在する前記炭化水素が全て燃焼するように、前記測定電極の表面における酸素分圧が調整される、ことを特徴とする。
【0013】
請求項4の発明は、請求項3に記載の炭化水素ガスセンサであって、前記第1の内部電極と、前記基準電極と、前記第1の内部電極と前記基準電極との間に存在する前記固体電解質とから構成され、前記第1の電圧の大きさを検出する第1の酸素分圧検出センサセルと、前記第2の内部電極と、前記基準電極と、前記第2の内部電極と前記基準電極との間に存在する前記固体電解質とから構成され、前記第2の電圧の大きさを検出する第2の酸素分圧検出センサセルと、前記測定電極と、前記基準電極と、前記測定電極と前記基準電極との間に存在する前記固体電解質とから構成され、前記第3の電圧の大きさを検出する測定センサセルと、をさらに備え、前記第1の酸素分圧検出センサセルにおける前記第1の電圧の検出値に基づいて前記第1の内部空所の酸素分圧が調整され、前記第2の酸素分圧検出センサセルにおける前記第2の電圧の検出値に基づいて前記第2の内部空所の酸素分圧が調整され、前記測定センサセルにおける前記第3の電圧の検出値に基づいて前記測定電極の表面における酸素分圧が調整される、ことを特徴とする。
【0014】
請求項5の発明は、請求項1ないし請求項4のいずれかに記載の炭化水素ガスセンサであって、前記炭化水素ガス成分の濃度の特定を、前記第1の内部空所の酸素分圧よりも前記第2の内部空所の酸素分圧の方が大きく、前記第2の内部空所の酸素分圧よりも前記測定電極の表面における酸素分圧の方が大きい、という関係をみたしつつ行う、ことを特徴とする。
【0015】
請求項6の発明は、請求項5に記載の炭化水素ガスセンサであって、前記炭化水素ガス成分の濃度の特定を、前記第1の内部空所の酸素分圧を10−10atm〜10−30atmとし、前記第2の内部空所の酸素分圧を10−5atm〜10−15atmとし、前記測定電極の表面における酸素分圧を10−0atm〜10−10atmとして行う、ことを特徴とする。
【0016】
請求項7の発明は、請求項5または請求項6に記載の炭化水素ガスセンサであって、前記被測定ガスにおける酸素分圧が大きいほど、前記第1の内部空所における目標酸素分圧を小さくする、ことを特徴とする。
【0017】
請求項8の発明は、請求項1ないし請求項7のいずれかに記載の炭化水素ガスセンサであって、前記第1の外部電極、前記第2の外部電極、または前記第3の外部電極の少なくとも2つが共通である、ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0018】
請求項1ないし請求項8の発明によれば、被測定ガスが炭化水素以外の可燃性成分を含んでいたとしても、炭化水素ガス濃度を精度よく求めることが出来る。加えて、被測定ガスが水蒸気または/および二酸化炭素を含んでいたとしても、これらの影響を受けずに炭化水素ガス濃度を精度よく求めることが出来る。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】ガスセンサ100の構造を模式的に示す断面図である。
図2】HC検出電流Ip2の絶対値と実際の炭化水素ガス濃度との関数関係を示すグラフ(感度特性)を例示する図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
<ガスセンサの概略構成>
図1は、本発明の実施の形態に係るガスセンサ100の構造を模式的に示す断面図である。本実施の形態に係るガスセンサ100は、エチレン(C)、プロパン(C)、プロピレン(C)その他種々の炭化水素(HC)ガスを検出し、その濃度を求めるためのものである。その要部たるセンサ素子101は、酸素イオン伝導性固体電解質であるジルコニアを主成分とするセラミックスを構造材料として構成されてなる。
【0021】
具体的には、センサ素子101は、それぞれが酸素イオン伝導性固体電解質からなる第1基板層1と、第2基板層2と、第3基板層3と、第1固体電解質層4と、スペーサ層5と、第2固体電解質層6との6つの層が、図面視で下側からこの順に積層された構造を有する。
【0022】
センサ素子101の一先端部側であって、第2固体電解質層6の下面と第1固体電解質層4の上面との間には、ガス導入口10と、第1拡散律速部11と、第1内部空所20と、第2拡散律速部30と、第2内部空所40、第3拡散律速部45と、第3内部空所80とが備わっている。さらに、第1拡散律速部11と第1内部空所20との間には、緩衝空間12と、第4拡散律速部13とが設けられていてもよい。ガス導入口10と、第1拡散律速部11と、緩衝空間12と、第4拡散律速部13と、第1内部空所20と、第2拡散律速部30と、第2内部空所40と、第3拡散律速部45と、第3内部空所80とは、この順に連通する態様にて隣接形成されてなる。ガス導入口10から第3内部空所80に至る部位を、ガス流通部とも称する。
【0023】
ガス導入口10と、緩衝空間12と、第1内部空所20と、第2内部空所40と、第3内部空所80とは、スペーサ層5をくり抜いた態様にて設けられた内部空間である。緩衝空間12と、第1内部空所20と、第2内部空所40と、第3内部空所80とはいずれも、上部を第2固体電解質層6の下面で、下部を第1固体電解質層4の上面で、側部をスペーサ層5の側面で区画されてなる。
【0024】
第1拡散律速部11、第2拡散律速部30、第4拡散律速部13、および、第3拡散律速部45はいずれも、2本の横長の(図面に垂直な方向に開口が長手方向を有する)スリットとして設けられる。
【0025】
また、第3基板層3の上面と、スペーサ層5の下面との間であって、ガス流通部よりも先端側から遠い位置には、基準ガス導入空間43が設けられてなる。基準ガス導入空間43は、上部をスペーサ層5の下面で、下部を第3基板層3の上面で、側部を第1固体電解質層4の側面で区画された内部空間である。基準ガス導入空間43には、基準ガスとして、例えば酸素や大気が導入される。
【0026】
ガス導入口10は、外部空間に対して開口してなる部位であり、該ガス導入口10を通じて外部空間からセンサ素子101内に被測定ガスが取り込まれる。
【0027】
第1拡散律速部11は、ガス導入口10から取り込まれた被測定ガスに対して、所定の拡散抵抗を付与する部位である。
【0028】
緩衝空間12は、外部空間における被測定ガスの圧力変動(被測定ガスが自動車の排気ガスの場合であれば排気圧の脈動)によって生じる被測定ガスの濃度変動を、打ち消すことを目的として設けられる。なお、センサ素子101が緩衝空間12を備えるのは必須の態様ではない。
【0029】
第4拡散律速部13は、緩衝空間12から第1内部空所20に導入される被測定ガスに、所定の拡散抵抗を付与する部位である。第4拡散律速部13は、緩衝空間12が設けられることに付随して設けられる部位である。
【0030】
緩衝空間12および第4拡散律速部13が設けられない場合は、第1拡散律速部11と第1内部空所20とが直接に連通する。
【0031】
第1内部空所20は、ガス導入口10から導入された被測定ガス中の酸素分圧を調整するための空間として設けられる。係る酸素分圧は、主ポンプセル21が作動することによって調整される。
【0032】
主ポンプセル21は、第1内部空所20を区画する第1固体電解質層4の上面、第2固体電解質層6の下面、および、スペーサ層5の側面のそれぞれのほぼ全面に設けられた内側ポンプ電極22と、第2固体電解質層6の上面の内側ポンプ電極22と対応する領域に外部空間に露出する態様にて設けられた外側ポンプ電極23と、これらの電極に挟まれた酸素イオン伝導性固体電解質とを含んで構成される電気化学的ポンプセル(第1の電気化学的ポンピングセル)である。内側ポンプ電極22と外側ポンプ電極23とは、平面視矩形状の多孔質サーメット電極(例えば、0.1wt%〜30.0wt%のAuを含むPtなどの貴金属とZrOとのサーメット電極)として形成される。
【0033】
主ポンプセル21においては、センサ素子101外部に備わる可変電源24によりポンプ電圧Vp0を印加して、外側ポンプ電極23と内側ポンプ電極22との間にポンプ電流Ip0を流すことにより、第1内部空所20内の酸素を外部空間に汲み出し、あるいは、外部空間の酸素を第1内部空所20内に汲み入れることが可能となっている。
【0034】
また、センサ素子101においては、内側ポンプ電極22と、第3基板層3の上面と第1固体電解質層4とに挟まれる基準電極42と、これらの電極に挟まれた酸素イオン伝導性固体電解質とによって、電気化学的センサセルである第1酸素分圧検出センサセル60が構成されている。基準電極42は、外側ポンプ電極等と同様の多孔質サーメットからなる平面視ほぼ矩形状の電極である。また、基準電極42の周囲には、多孔質アルミナからなり、基準ガス導入空間につながる基準ガス導入層48が設けられてなり、基準電極42の表面に基準ガス導入空間43の基準ガスが導入されるようになっている。第1酸素分圧検出センサセル60においては、第1内部空所20内の雰囲気と基準ガス導入空間43の基準ガスとの間の酸素濃度差に起因して内側ポンプ電極22と基準電極42との間に起電力V0が発生する。
【0035】
第1酸素分圧検出センサセル60において生じる起電力V0は、第1内部空所20に存在する雰囲気の酸素分圧に応じて変化する。センサ素子101においては、係る起電力V0が、主ポンプセル21の可変電源24をフィードバック制御するために使用される。これにより、可変電源24が主ポンプセル21に印加するポンプ電圧Vp0を、第1内部空所20の雰囲気の酸素分圧に応じて制御することができる。
【0036】
第2拡散律速部30は、第1内部空所20から第2内部空所40に導入される被測定ガスに、所定の拡散抵抗を付与する部位である。
【0037】
第2内部空所40は、第2拡散律速部30を通じて導入された該被測定ガスにおける可燃性ガス成分を、炭化水素ガスのみとする処理を行うための空間として設けられる。第2内部空所40では、補助ポンプセル50が作動することにより、外部より酸素を供給できるようになっている。
【0038】
補助ポンプセル50は、第2内部空所40を区画する第1固体電解質層4の上面、第2固体電解質層6の下面、および、スペーサ層5の側面のそれぞれのほぼ全面に設けられた補助ポンプ電極51と、外側ポンプ電極23と、これらの電極に挟まれた酸素イオン伝導性固体電解質とを含んで構成される、補助的な電気化学的ポンプセル(第2の電気化学的ポンピングセル)である。補助ポンプ電極51も、外側ポンプ電極23および内側ポンプ電極22と同様、平面視矩形状の多孔質サーメット電極として形成される。なお、外側ポンプ電極23を用いることは必須の態様ではなく、外側ポンプ電極23に代えて、センサ素子101の外面に設けられた他のサーメット電極が補助ポンプセル50の外側ポンプ電極を構成する態様であってもよい。
【0039】
係る補助ポンプセル50においては、センサ素子101外部に備わる可変電源52によりポンプ電圧Vp1を印加して、外側ポンプ電極23と補助ポンプ電極51との間にポンプ電流Ip1が流れるようにすることにより、酸素を第2内部空所40内に汲み入れることが可能となっている。
【0040】
また、センサ素子101においては、補助ポンプ電極51と、基準電極42と、これらの電極に挟まれた酸素イオン伝導性固体電解質とによって、電気化学的センサセルである第2酸素分圧検出センサセル61が構成されている。第2酸素分圧検出センサセル61においては、第2内部空所40内の雰囲気と基準ガス導入空間43の基準ガスとの間の酸素濃度差に起因して補助ポンプ電極51と基準電極42との間に起電力V1が発生する。
【0041】
第2酸素分圧検出センサセル61において生じる起電力V1は、第2内部空所40に存在する雰囲気の酸素分圧に応じて変化する。センサ素子101においては、係る起電力V1が、補助ポンプセル50の可変電源52をフィードバック制御するために使用される。これにより、可変電源52が補助ポンプセル50に印加するポンプ電圧Vp1を、第2内部空所40の雰囲気の酸素分圧に応じて制御することができる。
【0042】
第3拡散律速部45は、第2内部空所40から第3内部空所80に導入される被測定ガスに、所定の拡散抵抗を付与する部位である。
【0043】
第3内部空所80は、第3拡散律速部45を通じて導入された該被測定ガス中の炭化水素ガスの濃度測定に係る処理を行うための空間として設けられる。第3内部空所80では、測定ポンプセル47が作動することにより、外部より酸素を供給できるようになっている。測定ポンプセル47は、外側ポンプ電極23と、測定電極44と、これらの電極に挟まれた酸素イオン伝導性固体電解質とを含んで構成される電気化学的ポンプセル(測定ポンピングセル)である。なお、外側ポンプ電極23を用いることは必須の態様ではなく、外側ポンプ電極23に代えて、センサ素子101の外面に設けられた他のサーメット電極が測定ポンプセル47の外側ポンプ電極を構成する態様であってもよい。
【0044】
測定電極44は、外側ポンプ電極等と同様の多孔質サーメットからなる平面視ほぼ矩形状の電極である。
【0045】
さらに、センサ素子101には、測定センサセル41が備わっている。測定センサセル41は、測定電極44と、基準電極42と、これらの電極に挟まれた酸素イオン伝導性固体電解質とによって構成される電気化学的センサセルである。測定センサセル41においては、第3内部空所80内の特に測定電極44の表面近傍の雰囲気と基準ガス導入空間43の基準ガスとの間の酸素濃度差に起因して、測定電極44と基準電極42との間に起電力V2が生じる。なお、本実施の形態において、測定電極44の表面には、最上部において第3内部空所80に露出した部分のみならず、測定電極44を構成する多孔質サーメットの内部において外部と連通する態様にて多数存在する微細な孔の壁部もが含まれる。
【0046】
測定センサセル41において生じる起電力V2は、第3内部空所80に存在する雰囲気(より厳密には、測定電極44の表面近傍の雰囲気の)酸素分圧に応じて変化する。センサ素子101においては、係る起電力V2が、測定ポンプセル47の可変電源46をフィードバック制御するために使用される。これにより、可変電源46が測定ポンプセル47に印加するポンプ電圧Vp2を、第3内部空所80内の雰囲気の酸素分圧に応じて制御することができる。
【0047】
なお、センサ素子101においては、外側ポンプ電極23と基準電極42との間に生じる起電力Vrefを測定することにより、センサ素子101外部の酸素分圧を知ることもできるようになっている。
【0048】
さらに、センサ素子101においては、第2基板層2と第3基板層3とに上下から挟まれた態様にて、ヒータ70が形成されてなる。ヒータ70は、第1基板層1の下面に設けられた図示しないヒータ電極を通して外部から給電されることより発熱する。ヒータ70が発熱することによって、センサ素子101を構成する固体電解質の酸素イオン伝導性が高められる。ヒータ70は、第1内部空所20から第2内部空所40の全域に渡って埋設されており、センサ素子101の所定の場所を所定の温度に加熱、保温することができるようになっている。なお、ヒータ70の上下面には、第2基板層2および第3基板層3との電気的絶縁性を得る目的で、アルミナ等からなるヒータ絶縁層72が形成されている(以下、ヒータ70、ヒータ電極、ヒータ絶縁層72をまとめてヒータ部とも称する)。
【0049】
<炭化水素ガス濃度の測定>
次に、以上のような構成を有するガスセンサ100を用いて炭化水素ガスの濃度を特定する手法について説明する。
【0050】
まず、センサ素子101が、可燃性ガスとして炭化水素ガスのほか一酸化炭素、水素などを含むとともに、酸素、水蒸気(HO)、二酸化炭素、不燃性ガスなどを含んでなる被測定ガスの雰囲気下に配置される。すると、ガス導入口10からセンサ素子101の内部へと被測定ガスが導入される。センサ素子101の内部に導入された被測定ガスは、第1拡散律速部11あるいはさらに第4拡散律速部13により所定の拡散抵抗が付与されたうえで、第1内部空所20に到達する。
【0051】
第1内部空所20においては、主ポンプセル21が作動することによって、内部に存在する被測定ガスにおける酸素分圧が、該被測定ガス中に含まれる可燃性ガスが燃焼しない程度に、少なくとも、該被測定ガス中に含まれる炭化水素ガスが実質的に燃焼しない程度に、十分低い所定の値(例えば、10−14atm〜10−20atm)となるように、酸素の汲み出しが行われる。ここで、被測定ガス中に含まれる炭化水素ガスが実質的に燃焼しないとは、第1内部空所20に導入された炭化水素ガスの大部分が第2内部空所40へ導入されることを意味する。
【0052】
実際の酸素の汲み出しは、第1酸素分圧検出センサセル60において内側ポンプ電極22と基準電極42との間に生じる起電力V0の目標値を、係る酸素分圧を実現する所定の値に定めておき、実際の起電力V0の値と目標値との差異に応じて、可変電源24が主ポンプセル21に印加するポンプ電圧Vp0を制御することによって実現される。例えば、酸素を多く含む被測定ガスが第1内部空所20に到達すると起電力V0の値が目標値から大きく変位するので、係る変位が減少するように、可変電源24は主ポンプセル21に印加するポンプ電圧Vp0を制御する。
【0053】
なお、好ましくは、第1内部空所20に到達した被測定ガスにおける酸素分圧が大きいほど(起電力V0の実測値と直近に定められた目標値との差異が大きいほど)、第1内部空所20における(目標の)酸素分圧が小さくなるように、起電力V0の目標値が設定される。これにより、酸素のより確実な汲み出しが実現される。
【0054】
このように酸素分圧が低められた被測定ガスは、第2拡散律速部30によって所定の拡散抵抗を付与されたうえで、第2内部空所40に到達する。
【0055】
なお、被測定ガス中に水蒸気が存在する場合、上述のように第1内部空所20から酸素が汲み出されると、第1内部空所20においては、水蒸気の分解反応(2HO→2H+O)が促進され、水素と酸素が発生する。このうち酸素は主ポンプセル21によって汲み出されるが、水素は被測定ガスともども第2内部空所へと導入される。
【0056】
また同様に、被測定ガス中に二酸化炭素が存在する場合、上述のように第1内部空所20から酸素が汲み出されると、第1内部空所20においては、二酸化炭素の分解反応(2CO→2CO+O)が促進され、一酸化炭素と酸素が発生する。このうち酸素は主ポンプセル21によって汲み出されるが、一酸化炭素は被測定ガスともども第2内部空所40へと導入される。
【0057】
第2内部空所40においては、補助ポンプセル50が作動することによって、酸素の汲み入れが行われる。係る酸素の汲み入れは、第2内部空所40に到達した被測定ガス(第1内部空所20で発生した水素または/および一酸化炭素を含む)が含有してなる可燃性ガスのうち、少なくとも水素または一酸化炭素を含んでなり、かつ、炭化水素ガス以外の可燃性ガス成分(対象外可燃性ガス成分)を選択的に、第2内部空所40に到達した時点で内部に存在する酸素と反応させて燃焼させるべく行われる。例えば水素であれば、2H+O→2HOなる反応が、一酸化炭素であれば2CO+O→2COなる反応が、それぞれ促進されるように、第2内部空所40内に酸素が汲み入れられる。
【0058】
実際の酸素の汲み入れは、第2酸素分圧検出センサセル61において補助ポンプ電極51と基準電極42との間に生じる起電力V1の目標値を、係る態様での対象外可燃性ガス成分の燃焼が実現されるに足りる酸素濃度を与える酸素分圧が実現される所定の値に定めておき、実際の起電力V1の値と目標値との差異に応じて、可変電源52が補助ポンプセル50に印加するポンプ電圧Vp1を制御することによって実現される。例えば、可燃性ガスを多く含む被測定ガスが第2内部空所40に到達して酸素と反応すると酸素分圧が低下して起電力V1の値が目標値から大きく変位するので、係る変位が減少するように、可変電源52は補助ポンプセル50に印加するポンプ電圧Vp1を制御する。
【0059】
なお、このような制御態様を実施することで、第2内部空所40において可燃性ガス成分のうち対象外可燃性ガス成分である水素、一酸化炭素が選択的に燃焼させられ易く、炭化水素ガスが燃焼させられ難いのは、水素、一酸化炭素のガス拡散スピードが炭化水素ガスのガス拡散スピードよりも大きく、炭化水素ガスより先に、汲み入れられる酸素と接触して燃焼すること、および、水素、一酸化炭素が炭化水素ガスより酸素と結合しやすいこと、言い換えると燃焼しやすいことに、起因する。
【0060】
対象外可燃性ガス成分が燃焼させられた被測定ガスは、第3拡散律速部45によって所定の拡散抵抗を付与されたうえで、第3内部空所80に到達する。
【0061】
第3内部空所80においては、測定ポンプセル47が作動することによって、測定電極44からの酸素の汲み入れが行われる。係る酸素の汲み入れは、第3内部空所80に到達した被測定ガスが含有してなる炭化水素ガスが確実に燃焼するように行われる。
【0062】
実際の酸素の汲み入れは、測定センサセル41において測定電極44と基準電極42との間に生じる起電力V2の目標値を、炭化水素ガスの燃焼が実現されるに足りる酸素濃度を与える酸素分圧が実現される所定の値に定めておき、実際の起電力V2の値と目標値との差異に応じて、可変電源46が測定ポンプセル47に印加するポンプ電圧Vp2を制御することによって実現される。例えば、炭化水素ガスを多く含む被測定ガスが第3内部空所80に到達して酸素と反応すると酸素分圧が低下して起電力V2の値が目標値から大きく変位するので、係る変位が減少するように、可変電源46は測定ポンプセル47に印加するポンプ電圧Vp2を制御する。なお、第3内部空所80においては、必ずしも酸素濃度は均一とは限らず、測定電極44の近傍と第3拡散律速部45の近傍を比較した場合に、前者が後者と同じか相対的に高い酸素濃度勾配が形成されるが、上述の態様によるポンプ電圧Vp2の制御は、係る酸素濃度勾配を保つ制御であるともいえる。
【0063】
そして、このとき測定ポンプセル47を流れる電流(HC検出電流)Ip2が被測定ガス中のHC濃度に略比例する(HC検出電流Ip2とHC濃度とが線型関係にある)ことから(図2参照)、本実施の形態に係るガスセンサ100においては、係るHC検出電流Ip2を検出し、その検出値に基づいて、被測定ガス中のHCガス濃度を求めるようになっている。
【0064】
図2は、HC検出電流Ip2の絶対値と実際の炭化水素ガス濃度との関数関係を示すグラフ(感度特性)を例示する図である。なお、図2においてHC検出電流の値を絶対値で示しているのは、説明の単純化のためである。より詳細に言えば、図1のガスセンサ100において第3内部空所80に酸素を汲み入れる場合、HC検出電流Ip2の値は負となる。
【0065】
図2においては、HC検出電流Ip2と炭化水素ガス濃度との理想的な関数関係を実線Lにて例示している。実線Lは、縦軸に0でない切片を有する一次直線である。なお、炭化水素ガス濃度が0の状態(炭化水素ガスが存在しない状態)におけるHC検出電流Ip2の値は本来0となるはずであるが、実際には、主ポンプセル21による酸素の汲み出しの影響を受け、測定電極44の表面近傍において目標となる酸素濃度に比較して酸素は不足するため、炭化水素ガスが存在しない状態においても目標の酸素濃度とするための汲み込み電流、すなわち、HC検出電流Ip2はわずかに流れることになる。このときのHC検出電流Ip2を特にオフセット電流OFSとする。
【0066】
そこで、本実施の形態に係るガスセンサ100においては、使用に先立って、図2に示したような感度特性(具体的にはオフセット電流OFSとグラフの傾き)が、炭化水素ガス濃度が既知のガスをガスセンサ100に与えたときのHC検出電流Ip2の値に基づいて、個々のセンサ素子101ごとにあらかじめ特定される。そして、実際の炭化水素ガスの検出に際しては、Ip2の値が絶えず測定され、先に特定されていた感度特性をもとに、個々の測定値に対応する炭化水素ガス濃度が求められる。
【0067】
係る態様での炭化水素ガス濃度測定を精度よく行うには、第1内部空所において可燃性ガスと酸素とを反応させないこと、および、第2内部空所において炭化水素ガスは燃焼させずに炭化水素ガス以外の可燃性ガスである対象外可燃性ガス成分のみを燃焼させることが、必要である。
【0068】
これらを実現するには、第1内部空所20の酸素分圧よりも第2内部空所40の酸素分圧の方が大きく、第2内部空所40の酸素分圧よりも測定電極44の表面近傍における酸素分圧の方が大きい、という関係をみたすように、第1酸素分圧検出センサセル60における起電力V0、第2酸素分圧検出センサセル61における起電力V1、および、測定センサセル41における起電力V2の目標値が定められることが、好ましい。
【0069】
仮に、第1内部空所20における酸素分圧が大き過ぎて酸素の汲み出しが少ない場合や第2内部空所40における酸素分圧が大き過ぎて炭化水素ガスまでが測定電極44に到達するまでに酸化されてしまう場合、感度特性は図2に波線L1にて示したような傾きの小さいものとなる。係る場合、Ip2の炭化水素ガス濃度依存性がほとんどないため、Ip2の値に基づいて炭化水素ガス濃度を精度よく求めることが困難となる。
【0070】
一方、第2内部空所40における酸素分圧が小さ過ぎる場合、第2内部空所40における対象外可燃性ガス成分の燃焼が不十分となって対象外可燃性ガス成分までが測定電極44に到達してしまうことになり、感度特性は図2に波線L2にて示したようなオフセット電流OFS2の値が大きなものとなる。係る場合、被測定ガスにおける炭化水素ガスの存在の有無に関わらず、第1内部空所20で発生した水素または/および一酸化炭素を含め、炭化水素ガス以外の対象外可燃性ガス成分が、測定電極44から汲み入れられた酸素によって燃焼させられてしまう。そのため、HC検出電流Ip2の値に占めるオフセット電流OFS2の比率が大きくなり過ぎることや、存在する水蒸気量または/および二酸化炭素量によってオフセット電流OFS2の値が変動するために感度特性を正確に決定できないことが理由で、感度特性を正確に特定することができず、結果として、Ip2の値に基づいて炭化水素ガス濃度を精度よく求めることが困難となる。
【0071】
また、炭化水素ガス濃度の測定精度を確保するには、測定電極44から汲み入れられる酸素が第2内部空所40へと流出することなく確実に炭化水素ガスの燃焼に用いられるようにすることも必要である。測定電極44から汲み入れられた酸素が第2内部空所40に流出するということは、炭化水素ガスの燃焼と無関係にHC検出電流Ip2が流れるということであり、それは結果として、正確な炭化水素ガス濃度が得られないことになるので、そのような状況が生じるのは好ましくない。
【0072】
例えば、上述のように第1内部空所20の酸素分圧の方が第2内部空所40の酸素分圧よりも小さくなるように、かつ、第2内部空所40の酸素分圧の方が第3内部空所80の酸素分圧よりも小さくなるように各内部空所の酸素分圧を制御した場合、第2拡散律速部30によって第2内部空所40から第1内部空所10へのガスの逆流が制限されているにも関わらず、主ポンプセル21による酸素の汲み出しによって酸素分圧が低められた第1内部空所20に対し、第2内部空所40に存在する酸素が流出し、これに起因して第2内部空所40の酸素分圧が変動(低下)することが起こり得る。係る変動の影響を受けて、測定電極44から汲み入れられる酸素の量が第3内部空所80に到達した被測定ガス中の炭化水素ガスを燃焼させるために必要な量よりも多くなってしまうと、測定ポンプセル47を流れるHC検出電流Ip2に基づいて得られた炭化水素ガス濃度の値は、実際の値よりも過大な値にて算出されてしまうことになる。
【0073】
そこで、本実施の形態に係るガスセンサ100においては、このような状況が生じないように、第1内部空所20と第2内部空所40との間に第2拡散律速部30をスリット状に設けることに加えて、測定電極44を第2内部空所40とは異なる空間である第3内部空所80に設けるとともに、第3内部空所80と第2内部空所40との間に第3拡散律速部45をスリット状に設けている。さらには、第3内部空所80における上述の酸素濃度勾配が平衡状態を保つように、第3拡散律速部45における拡散抵抗を定めるとともに補助ポンプセル50による第2内部空所40の酸素分圧を制御する。これは例えば、第3拡散律速部45を通過するガスに対して、測定に支障のない範囲で(少なくとも、被測定ガスが第2内部空所40から第3内部空所80へと確実に到達するように)拡散抵抗が付与されるようにするとともに、定常状態における補助ポンプセル50による第2内部空所40への酸素の汲み入れが、第2内部空所40から第1内部空所20への流出分を補う態様にて行われるように、補助ポンプ電極51と基準電極42との間に生じる起電力V1の目標値を設定することで実現される。
【0074】
これにより、第2拡散律速部30によって第2内部空所40から第1内部空所10へのガスの逆流が制限されているにも関わらず、仮に、第2内部空所40から第1内部空所20への酸素の流出が生じたとしても、第3内部空所80においては、第2内部空所40における酸素分圧の変動の影響を受けることなく、被測定ガスにおける炭化水素ガス濃度に応じた測定電極44からの酸素の汲み入れが実現される。
【0075】
なお、図2の実線Lで例示するような感度特性を確実に得るには、第1内部空所20の酸素分圧を10−10atm〜10−30atmとし、第2内部空所40の酸素分圧を10−5atm〜10−15atmとし、第3内部空所80(より詳細には測定電極44の表面)における酸素分圧を10−0atm〜10−10atmとするのがより好ましい。
【0076】
以上、説明したように、本実施の形態に係るガスセンサにおいては、第1内部空所において主ポンプセルを作動させることによって酸素分圧が常に一定の低い値(含有する可燃性ガスが実質的に燃焼しない値)とされた被測定ガスが第2内部空所に与えられる。そして、第2内部空所では炭化水素以外の可燃性ガスが燃焼させられ、被測定ガスは、可燃性ガスとしては炭化水素ガスのみを含んだ状態とされる。係る被測定ガスはスリット状の第3拡散律速部を経て第3内部空所へと到達する。第3内部空所には測定電極が設けられており、測定電極から汲み入れられた酸素によって、炭化水素が燃焼させられる。係る燃焼の際に酸素を供給するべく測定ポンプセルを流れるポンプ電流は、被測定ガス中の炭化水素濃度との間に線型関係を有している。このことに基づいて、被測定ガス中の炭化水素濃度を知ることができるようになっている。
【0077】
しかも、係るガスセンサにおいては、第3内部空所における酸素濃度勾配が平衡状態を保つように、第3拡散律速部における拡散抵抗を定められてなるとともに補助ポンプセルによる第2内部空所の酸素分圧が制御される。これにより、第2内部空所から第1内部空所への酸素の流出が生じたとしても、測定電極から汲み入れられる酸素が第2内部空所へと流出することなく確実に炭化水素ガスの燃焼に用いられるので、炭化水素ガス濃度を精度よく求めることが出来る。
【0078】
また、本実施の形態によれば、被測定ガスが水蒸気または/および二酸化炭素を含んでいたとしても、係る水蒸気または/および二酸化炭素が分解することで生じた酸素は第1内部空所で外部へと汲み出され、同じく分解で生じた水素または/および一酸化炭素は第2内部空所で燃焼させられるので、被測定ガスが測定電極の表面に到達した時点では、可燃性ガス成分は炭化水素ガスのみとなっており、水蒸気の影響を受けずに炭化水素ガス濃度を精度よく求めることが出来る。
【0079】
<変形例>
上述の実施の形態においては、測定ポンプセル47を構成する外側ポンプ電極23と測定電極44との間を流れる電流をHC検出電流Ip2としていたが、これに代わり、測定センサセル41を構成する測定電極44と基準電極42との間を流れる電流をHC検出電流Ip2として、炭化水素ガスの濃度を特定する態様であってもよい。
【0080】
また、上述の実施の形態においては、主ポンプセル21、補助ポンプセル50、および、測定ポンプセル47がいずれも、外側ポンプ電極23を、センサ素子101の外面に設けられた外部電極として共通に用いているが、これは必須の態様でない。上述したように、主ポンプセル21、補助ポンプセル50、および、測定ポンプセル47がそれぞれに固有の外部電極を備えていてもよいし、あるいは、これら3つのポンプセルのうちの2つの外部電極が共通とされていてもよい。
【符号の説明】
【0081】
1 第1基板層
2 第2基板層
3 第3基板層
4 第1固体電解質層
5 スペーサ層
6 第2固体電解質層
10 ガス導入口
11 第1拡散律速部
12 緩衝空間
13 第2拡散律速部
20 第1内部空所
21 主ポンプセル
22 内側ポンプ電極
23 外側ポンプ電極
24、46、52 可変電源
30 第2拡散律速部
40 第2内部空所
41 測定センサセル
42 基準電極
43 基準ガス導入空間
44 測定電極
45 第3拡散律速部
47 測定ポンプセル
48 基準ガス導入層
50 補助ポンプセル
51 補助ポンプ電極
60 第1酸素分圧検出センサセル
61 第2酸素分圧検出センサセル
80 第3内部空所
100 ガスセンサ
101 センサ素子
図1
図2