特許第5785588号(P5785588)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ シーゲイト テクノロジー エルエルシーの特許一覧

(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5785588
(24)【登録日】2015年7月31日
(45)【発行日】2015年9月30日
(54)【発明の名称】装置、磁気素子、および変換ヘッド
(51)【国際特許分類】
   G11B 5/39 20060101AFI20150910BHJP
   H01L 43/08 20060101ALI20150910BHJP
【FI】
   G11B5/39
   H01L43/08 B
   H01L43/08 Z
【請求項の数】20
【全頁数】16
(21)【出願番号】特願2013-129436(P2013-129436)
(22)【出願日】2013年6月20日
(65)【公開番号】特開2014-10884(P2014-10884A)
(43)【公開日】2014年1月20日
【審査請求日】2013年7月23日
(31)【優先権主張番号】13/539,099
(32)【優先日】2012年6月29日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】500373758
【氏名又は名称】シーゲイト テクノロジー エルエルシー
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】特許業務法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ディミタール・ベリコフ・ディミトロフ
(72)【発明者】
【氏名】ソン・ダイアン
(72)【発明者】
【氏名】マーク・ウィリアム・コビントン
【審査官】 長谷川 直也
(56)【参考文献】
【文献】 米国特許出願公開第2011/0279923(US,A1)
【文献】 特開2003−264324(JP,A)
【文献】 特開2012−119053(JP,A)
【文献】 特開2005−203063(JP,A)
【文献】 特開2002−319112(JP,A)
【文献】 特開2009−032382(JP,A)
【文献】 特開2004−178656(JP,A)
【文献】 特開2004−259330(JP,A)
【文献】 特開2003−303406(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2011/0051291(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G11B 5/33− 5/39、
H01L 27/22、29/82、43/00−43/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定の磁化を有する磁気自由層を含む磁気積層体と、
空気軸受面(ABS)上で前記磁気積層体と分離され、前記ABS上に、前記所定の磁化と平行に計測される第1の幅で構成され、シールドバイアス機構により前記所定の磁化と反対のバイアス磁化にバイアスされた側方シールド層状構造とを備え、前記シールドバイアス機構は、前記ABS上に、前記所定の磁化と平行に計測されかつ前記第1の幅より小さい第2の幅を有し、前記磁気積層体との接触なしに前記側方シールド層状構造に接する機構である、装置。
【請求項2】
前記磁気積層体は、磁気ピン止め参照構造なしで第1および第2の磁気自由層を含む3層読み出しセンサとして構成される、請求項1に記載の装置。
【請求項3】
前記側方シールド層状構造の第1のサブ層は、前記ABS上で前記第1の磁気自由層と横方向に整列され、
前記側方シールド層状構造の第2のサブ層は、前記ABS上で前記第2の磁気自由層と横方向に整列される、請求項2に記載の装置。
【請求項4】
前記第1のサブ層は、前記所定の磁化と反対の第1のバイアス磁化を有する、請求項3に記載の装置。
【請求項5】
前記第2のサブ層は、前記所定の磁化に一致し、前記第1のバイアス磁化と反対の第2のバイアス磁化を有する、請求項4に記載の装置。
【請求項6】
所定の磁化を有する磁気自由層を含む磁気積層体を備え、
前記磁気積層体は、空気軸受面(ABS)上で、第1および第2の側方シールド層状構造の間に、前記第1および第2の側方シールド層状構造と間を隔てて配置され、
各側方シールド層状構造は、前記ABS上に、前記所定の磁化と平行に計測される第1の幅で構成され、シールドバイアス機構により前記所定の磁化と反対のバイアス磁化にバイアスされており、前記シールドバイアス機構は、前記ABS上に、前記所定の磁化と平行に計測されかつ前記第1の幅より小さい第2の幅を有し、前記磁気積層体との接触なしに前記側方シールド層状構造に接する機構である、磁気素子。
【請求項7】
前記磁気積層体は、各側方シールド層状構造の第1および第2のバイアスサブ層とそれぞれ横方向に整列される第1および第2の磁気自由層を含み、
前記第1および第2の磁気自由層は、実質的に反対の方向を向いている第1および第2の所定の磁化に設定されている、請求項6に記載の磁気素子。
【請求項8】
前記第1および第2のバイアスサブ層に互いに反対の第1および第2のバイアス磁化をそれぞれ与えるように、第1のバイアス機構が少なくとも一方の側方シールド層状構造と前記ABS上で接している、請求項7に記載の磁気素子。
【請求項9】
前記第1のバイアス機構は、異なるブロッキング温度を有する反強磁性層の層状構造である、請求項8に記載の磁気素子。
【請求項10】
前記磁気積層体に前記所定の磁化を与えるように、第2のバイアス機構が前記磁気積層体の前記第1の磁気自由層と接している、請求項8に記載の磁気素子。
【請求項11】
前記ABSから遠位に配置される後方バイアス磁石が前記磁気積層体に前記所定の磁化を与える、請求項10に記載の磁気素子。
【請求項12】
前記第1のバイアス機構の反対側で、第3のバイアス機構が少なくとも一方の側方シールド層状構造と前記ABS上で接している、請求項8に記載の磁気素子。
【請求項13】
前記第2のバイアス機構は、上部シールドの厚み低減部分に位置する、請求項10に記載の磁気素子。
【請求項14】
独立した所定の磁化を有するように構成された第1および第2の磁気自由層を含む3層磁気積層体と、
空気軸受面(ABS)上で前記磁気積層体と分離され、前記ABS上に、前記所定の磁化と平行に計測される第1の幅で構成され、シールドバイアス機構により前記独立した所定の磁化とそれぞれ反対のバイアス磁化に各々がバイアスされた第1および第2の磁気サブ層を用いて構成された側方シールド層状構造とを備え、前記シールドバイアス機構は、前記ABS上に、前記所定の磁化と平行に計測されかつ前記第1の幅より小さい第2の幅を有し、前記3層磁気積層体との接触なしに前記側方シールド層状構造に接する機構である、変換ヘッド。
【請求項15】
第1の結合層が前記第1および第2の磁気サブ層を分離し、第2の結合層が前記側方シールド層状構造を上部シールドに接続する、請求項14に記載の変換ヘッド。
【請求項16】
前記第1および第2の結合層は、RKKY結合を提供するように構成される、請求項15に記載の変換ヘッド。
【請求項17】
前記上部シールドは、前記第1の磁気自由層に取り付けられたバイアス機構から前記第1および第2の磁気サブ層にバイアス磁化を伝達する、請求項15に記載の変換ヘッド。
【請求項18】
第1の結合層が前記第1および第2の磁気サブ層を分離し、第1のバイアス機構が前記側方シールド層状構造と上部シールドとの間に配置される、請求項14に記載の変換ヘッド。
【請求項19】
第2のバイアス機構が、前記上部シールドの反対側で、底部シールドの厚み低減部分において前記第2の磁気自由層と接触する、請求項18に記載の変換ヘッド。
【請求項20】
前記第1の結合層は負のRKKY結合を提供する、請求項17に記載の変換ヘッド。
【発明の詳細な説明】
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0001】
概要
さまざまな実施例は、一般に、少なくとも磁気読み出しが可能な磁気素子に関する。
【0002】
さまざまな実施例に従うと、磁気積層体は所定の磁化を有する磁気自由層を備えるように構成することができる。側方シールド層状構造は、空気軸受面(air bearing surface:ABS)上で磁気積層体から離間し、当該所定の磁化と反対のバイアス磁化にバイアスすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0003】
図1】データ記憶デバイスの例示的な部分のブロック図である。
図2図1のデータ記憶デバイスで使用できる例示的な磁気素子の断面ブロック図である。
図3A】さまざまな実施例に従って構築された例示的な磁気素子の部分を示すブロック図である。
図3B】さまざまな実施例に従って構築された例示的な磁気素子の部分を示すブロック図である。
図4A】例示的な磁気素子の正面ブロック図である。
図4B】例示的な磁気素子の断面ブロック図である。
図5A】さまざまな実施例に従って構築された例示的な磁気素子の正面ブロック図である。
図5B】さまざまな実施例に従って構築された例示的な磁気素子の断面ブロック図である。
図6A】例示的な磁気素子の正面ブロック図である。
図6B】例示的な磁気素子の断面ブロック図である。
図7】さまざまな実施例に従って実施される例示的な磁気素子作製ルーチンの工程を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0004】
詳細な説明
データ記憶デバイスのより高いデータビット密度とより速いデータ転送レートに向けて産業界の需要が高まるにつれて、さまざまなデータ読み出しおよび書き込み構成要素の物理的および磁気的なサイズは、工程および設計の変動性に強く影響されるようになる。非ピン止め(non-pinned)3層磁気応答積層体など、より小さなデータアクセス素子の導入によって、磁気シールド間のシールド対シールド間隔を縮小させ、データビット感度を増加させることができるが、工程のわずかな変動により磁気的な非対称性の影響を受けやすくなることがある。それゆえ、設計および工程の変動性の影響を受け難くしながら、データビット分解能の向上を実現するように構成された磁気素子は、産業界で継続的に要求されている。
【0005】
したがって、磁気積層体は空気軸受面(ABS)上で側方シールド層状構造と間を隔てていてもよい。磁気積層体は所定の磁化を有する磁気自由層を有することができ、一方で、側方シールド層状構造はその所定の磁化に反対のバイアス磁化にバイアスすることができる。側方シールド層状構造において、磁気積層体の磁化と反対方向のバイアス磁化が存在することによって、磁気的な幅および磁気的な非対称性を最小化したときに、クロストラックデータビット分解能およびトラック密度性能を最大化することができる。
【0006】
磁気応答磁気積層体はさまざまな環境で構築することができるが、データ記憶デバイスの例示的なデータ変換部100が図1で与えられる。変換部100は、プログラムされたビット108を記憶可能な磁気記憶媒体106上で変換ヘッド104を位置決めする作動アセンブリ102を有する。記憶媒体106は、空気軸受面(ABS)112を生じさせるために使用中に回転するスピンドルモータ110に取り付けられる。作動アセンブリ102のスライダ部114は、空気軸受面(ABS)112の上を空中移動して、変換ヘッド104を含むヘッドジンバルアセンブリ(HGA)116を媒体106の所望の部分の上に位置決めする。
【0007】
変換ヘッド104は、磁気ライタおよび磁気応答リーダなど、1つ以上の変換素子を含むことができ、変換素子は、それぞれデータをプログラムしたり、データを記憶媒体106から読み出したりするよう動作する。このようにして、作動アセンブリ102の制御された動作は、変換器を記憶媒体表面に規定されたトラック(図示せず)に整列させ、データを書き込み、読み出し、書き換える。
【0008】
この開示の範囲内で、用語「積層体」は、磁性または非磁性材料によって構築された単層または多層の層状構造であり得る非限定的用語であることに注意すべきである。本願を通じて、用語「積層体」は、任意の動作環境で外部のデータビットに磁気的に応答するように構築された構成要素を意味すると理解されるであろう。例えば、決して限定的ではないが、磁気積層体は、複数のデータビットを区別することができるデータ読み出しまたは書き込み構成であってもよい。
【0009】
図2は、図1のデータ記憶デバイス100で使用可能な例示的な磁気素子130の断面ブロック図を示す。素子130は、各々が外部磁界に対して感度がある第1および第2の強磁性自由層132および134を有する。すなわち、各自由層132および134は、空気軸受面(ABS)によって自由層132および134とは間を隔てられる、隣接しているデータ記憶媒体のデータトラック136上のプログラムされた磁気ビットなど、遭遇した外部磁界に応答するであろう。自由層132と134との間の相対的な角度は、X軸に沿って測定したときに媒体の磁界がABS内に向いているかABSから外に向いているかによって異なり、これは、低または高抵抗/電圧状態に変換するであろう。
【0010】
自由層132および134の各々は、層132と134との間に測定可能な磁気抵抗効果を生じさせるように働く非磁性スペーサ層138に接触して隣接している。スペーサ138は所定の厚みを有するどのような非磁性材料からでも構築することができるが、さまざまな自由層の磁気相互作用およびデータビット検出に適合するように、さまざまな異なる非限定な構成を用いることができる。スペーサ層138に結合された自由層132および134の層状構造は、いくつかの実施例において、初期磁化を設定するために自由層132および134に所定のバイアス磁界を与える後部搭載バイアス磁石142によって影響を受ける磁気積層体140として特徴付けることができる。
【0011】
積層体規定工程において適切な成長テンプレート(シード)または保護(キャップ)を実現するシード層144およびキャップ層146などのそれぞれの電極層に、自由層132および134の各々がさらに結合された磁気積層体140をさらに構築することができる。しかしながら、電極層なしで磁気素子130を構築する一方で、他の実施例では、電極層144および146の組成、形状および配置は、必要に応じて、例えば層144および146の幅または長さの一方または両方を拡張するなど、性能または製造上の利益をもたらすために変更することが考えられる。
【0012】
特定のデータトラック136に沿ってデータビットに遭遇している間に、隣接したトラックからのデータビットが意図せずに磁気積層体140によって検出されることがある。したがって、積層体140の磁気的な幅を縮小し、そのような意図しないデータビット検出を最小限にするために、少なくとも1つのシールド層を電極層144および146の各々に取り付けてもよい。シールド層148および150は、さまざまな構造および組成において、それらのいずれも要件とされるまたは限定されるものではないが、不要な磁束を自由層132および134から離れる方向に導くような方向に合わせることができる。
【0013】
磁気積層体140のシールドを、磁気積層体140にバイアス磁界を与えても与えなくてもよい側方シールドなど、他のシールド層で補うことができる。さらに、ノイズおよび意図しない隣接ビットの検出を排除することによって、予め設定されたデータトラック136からのプログラムされたデータビットの磁気検出を改善するために、側方シールドはシールド層148および150に組み合わせ可能である。シールドおよびバイアス層のサイズと数は、特に、高い線形データビット密度記録において、磁気積層体140を確実に動作させるのに必要な磁化強度に影響を与えることができる。
【0014】
積層体140の磁気安定性は、X軸に沿って計測された、積層体のストライプ高さ152の伸長に伴って向上させることができる。ストライプ高さの伸長は、磁気収率(magnetic yield)の増加をもたらし得る工程変動に対する感度の低下に対応し得る。多数の磁気シールド148および150の構成は、線形データビット分解能を増加させることができるが、ABS上に磁気積層体140から横方向に位置する側方シールドを使用することによって、素子130の磁気的な幅を効率的に最小化し、データトラック密度性能を向上させる。
【0015】
図3Aおよび3Bはそれぞれ、ABSの図と、ABS上の側方シールド層状構造164間に配置された磁気積層体162で構築された例示的な磁気素子160の等角図とを提供する。磁気積層体162は、図2の磁気積層体140と極めて類似して、非磁性スペーサ層168で分離されかつ電極キャップとシード層170との間に配置されている2つの磁気自由層166を備えた3層読み出しセンサとして構成される。示された実施例において、各側方シールド層状構造164は、非磁性スペーサ層174によって互いに分離されかつシールドキャップ層178によって上部シールド176と分離された磁気自由層172に対して磁気積層体162を一致させるように構築される。
【0016】
側方シールド層状構造164の一方または両方が上部および底部シールド176および178と結合することができるが、図3Aは、各側方シールド層状構造164がシールドキャップ178を介して上部シールド176に接続し、絶縁材料によって底部シールド178から磁気的および電気的に絶縁している実施例を示す。さらに、絶縁材料を使用することによって、磁気積層体162と、積層体162の自由層166に所定量の磁気的な影響を与えるように調整可能な各側方シールド層状構造164との間に、磁気バッファを設けることができる。すなわち、磁気積層体162と側方シールド層状構造164との間の絶縁材料の厚さは、側方シールド層状構造164から自由層166へ与える磁化をより多くしたり少なくしたりするように調整することができる。
【0017】
図3Bに示される磁気素子160の等角図に戻り、後部バイアス磁石180は、ABSから遠位側の磁気積層体162に隣接して配置され、かつ、その磁気積層体162から電気的に絶縁される。後部バイアス磁石180は、磁気積層体162および側方シールド層状構造164に所定量の磁束を与えるY軸に沿う厚みおよびZ軸に沿う幅を有するように構成することができる。すなわち、後部バイアス磁石180は、いくつかの実施例において、磁気積層体162の初期磁化と1つ以上の側方シールド層状構造164のバイアス磁化との両方を設定するために用いることができる。
【0018】
バイアス磁化の源および大きさにかかわらず、磁気積層体162および側方シールド層状構造164層の構成は、浮遊磁界の抑制など、素子160の磁気性能に影響を及ぼすことができる。磁気積層体162および側方シールド層状構造164の磁気自由層166および172を実質的に整列させることによって、磁気的な幅を増大することによってクロストラック分解能を不利に低下させる可能性がある結合効果を制御することができる。クロストラック分解能を向上させる一方で磁気結合効果を減少させるために、厚み182および184が実質的に一致した磁気自由層166および172の調整の追加を、層の横方向整列と組み合わせてもよい。
【0019】
共通の厚み182および184が磁気積層体162の磁気自由層166および側方シールド層状構造164の両方によって共有されているが、側方シールド層状構造の自由層172に一致するように調整されている磁気積層体162の磁気自由層166の厚みが異なるさまざまな実施例が構築されることに注意すべきである。すなわち、側方シールド層状構造164および磁気積層体162の横方向に整列される下層186は、横方向に整列される上層188の第2の厚みと異なる第1の厚みを有することができる。
【0020】
磁気積層体162と側方シールド層状構造164層の構成の調整によって素子160の動作の制御性を高めることができるが、一方で、側方シールドバイアス磁化の相対的な方向によって、磁気的な幅を縮小させ、磁気積層体162と側方シールド層状構造164との間の磁気結合効果を低下させることができる。特に縮小されたデータ記憶デバイスの形状因子において、磁気的な幅を縮小させてクロストラック分解能を向上させるために、磁気積層体162の磁化と反対の磁化方向を有する側方シールド層状構造164層のバイアス磁化を調整することによって、磁気自由層166および172の整列された、厚みの一致した構成を補完することができる。
【0021】
図4Aおよび4Bはそれぞれ、ABSと、例示的な磁気素子190の断面ブロックとを示し、磁気素子190は、側方シールド層状構造192の自由層194および196のバイアス磁化を磁気積層体202の自由層198および200と位相がずれた方向に設定するように構成されている。側方層状構造の自由層194および196をバイアスする特定の態様に限定するものでないが、さまざまな実施例では、各側方シールド層状構造192の反対側にバイアス機構204が接触して結合されている。
【0022】
図4Aに示されるように、バイアス機構204は、積層体の自由層198および200の初期磁化に悪影響を与えないように、磁気積層体202から遠位に位置する。さらに、積層体の自由層198および200に対するバイアス機構204の磁気的な影響を和らげるために、シールドキャップおよびシード層206および208を、バイアス機構204と磁気積層体202との間に配置することができる。バイアス機構204のうち1つ以上の厚みによって、磁気素子190のシールド対シールド距離を増加させることができるが、これにより、小さい形状因子のデバイスで素子の拡張性が低減することがある。しかしながら、上部および底部シールド210および212の一部は、素子190のシールド対シールド間隔を増やさないようにしつつバイアス機構204を収容するために、さまざまな非限定的形状で取り除くことができる。
【0023】
バイアス機構204の使用は、構造上または材料上、特定の構成に限定されない。例えば、バイアス機構204は、高いブロック温度を有する反強磁性材料または反強磁性結合を与える軟磁性材料の層状構造など、固体の高保磁力材料とすることができる。バイアス機構204の位置および機能はまた、積層体バイアス機構216によって初期磁化に設定された磁気積層体202を示す図4Bが、線214から見た磁気素子190の断面図で一般的に示すようには限定されない。積層体バイアス機構216は、ABS上に位置していないが、ABSから遠位の磁気自由層198および200と直接結合することができ、積層体202を所定の初期磁化に設定するのに十分な磁化を依然として与えることができる。
【0024】
図4Aのバイアス機構204に極めて類似して、積層体バイアス機構216は、磁気素子190の物理的なサイズの増加を回避するために上部および底部シールド210および212のくぼんだ部分に入れ子とすることができるさまざまな材料およびサイズで調整することができる。積層体バイアス機構216と磁気自由層198および200との接触位置によって、単独でまたは後部バイアス磁石218と協働して磁気積層体202を初期磁化に設定するのに十分な磁気強度を与えることができる。すなわち、後部バイアス磁石218は、積層体の自由層198および200をデータビット読み出しの助けとなる初期磁化に設定するのに必要な磁化の一部または全部を与えることができる。
【0025】
バイアス機構204および216は、図4Aおよび4Bに示された形状、向き、および材料構成に限定されない。いくつかの実施例では、側方シールド層状構造192に接触しているバイアス機構204は異なるブロッキング温度を有する反強磁性層で構築され、このことは、結合された自由層194および196の磁気方向の調整を可能にする。他の実施例では、磁気積層体202と側方シールド層状構造192の両方の磁化方向の調整を可能にするために、異なるブロックキング温度層を有する各バイアス機構204および216を構成する。
【0026】
図5Aおよび5Bはそれぞれ、ABSの図と、バイアス磁化を側方シールド層状構造226に通すために上部シールド222を利用する他の例示的な磁気素子220の断面ブロック図とを示す。第1および第2の結合層228および230は、たとえばRKKY相互作用のように、上部シールド222から側方シールド層状構造226の磁気自由層232への磁化の結合伝達を提供することができる。第1および第2の結合層228および230は、それぞれの側方シールド自由層232に対する磁気積層体234の自由層236の初期磁化に対して、所定の磁化の大きさで異なる位相の方向を与えるように調整された同種または異種の材料として構築することができる。
【0027】
結合層228および230を使用することによって、より少ないバイアス機構224で、磁束の伝達に上部シールド222を利用して磁気積層体234および側方シールド層状構造226の初期磁化を設定することが可能になる。バイアス機構224は、切断線238からの図5Bに示されるように、磁気積層体234の自由層236に直接に取り付けられて示されているが、そのような構成は限定的ではない。というのも、バイアス機構224が一方または両方の側方シールド層状構造226に接続されていても後部バイアス磁石240が自由層236の初期磁化を設定することができるからである。
【0028】
図6Aおよび6Bは、側方シールド層状構造256のバイアス磁化と磁気積層体258の初期磁化とを決定するために、バイアス機構252と結合層254との使用を組み合わせた例示的な磁気素子250の実施例をさらに示す。示されるように、バイアス機構は、各側方シールド層状構造256と、底部シールド262に近位の磁気積層体258の自由層272のうち1つとに接触して、ABS上に位置する。各側方シールド層状構造256上の単一のバイアス機構252と磁気積層体258という構成によって、工程および設計の変動性に対する脆弱性を減らしながら、磁気素子250の構造を簡略化することができる。
【0029】
上部シールド266が磁束を横方向に伝達できるとともに、側方シールド層状構造256の自由層264同士の間の結合層254という構成によって、単一のバイアス機構252がバイアス磁化を設定するのに十分であることが可能になる。図6Bは、線268に沿った磁気素子250を示し、磁気積層体258に取り付けられたバイアス機構252が、どのようにABSから遠位に配置され、磁気積層体258の磁気自由層272を初期磁化に設定するために後部バイアス磁石270によって補完され得るのかを示す。
【0030】
磁気素子250は、データトラック容量の増加や磁気的な幅の減少など、形状因子が縮小しデータビット容量が向上したデータ記憶デバイスに応じたさまざまな性能基準に適合することができるバイアス機構252および結合層254の材料および構成の選択を通じて、調整された動作を提供できる。しかしながら、結合層254とバイアス機構252との組み合わせは図6Aおよび6Bに示された構成に限定されるものでない。というのも、バイアス機構252は多かれ少なかれ十分であり、かつ、底部シールド262を通してバイアス磁化を流すように配置され得るからである。
【0031】
図7は、磁気積層体の磁化に反対のバイアス磁化を有する側方シールド層状構造を設けるために、さまざまな実施例に従って実施される例示的な磁気素子作製ルーチン280を与える。ルーチン280では、最初に、ステップ282において基板上に底部シールドを堆積する。底部シールドは、NiFeのような軟磁性材料などの、磁気積層体から離れる磁束を吸収することが可能などのような材料によっても構築することができる。
【0032】
その後、ステップ284で、磁気積層体の初期磁化と反対のバイアス磁化を与える側方シールド層状構造を設計する。図3A−6Bで一般的に示されるように、側方シールド層状構造は、バイアス磁化、恐らくは磁気積層体の初期磁化も設定する1つ以上のバイアス機構および結合層を有していてもよい。いくつかのバイアス機構および結合層はステップ284の設計に応じてステップ286の前に形成することができるが、ステップ286において、磁気的に反応する積層体が底部シールドの上に形成される。
【0033】
磁気積層体は、データを読み出すまたは書き込むように適合されたどのような数の構成であってもよい。そのような積層体の一実施例は、非ピン止め磁化と、非磁性スペーサ層で分離された2つの磁気自由層とを特徴とする図2に示す3層構成である。磁気積層体の構成にかかわらず、ステップ288は、バイアス磁化の大きさおよび側方シールド層状構造の磁気自由層の方向を調整できるよう適合された任意のバイアス機構および結合層を有するとともに、ステップ284で設計された側方シールド層状構造を堆積するように進む。
【0034】
バイアス機構および結合層が磁気積層体の初期磁化と反対のバイアス磁化を与えるように構築されて、ステップ290では、側方シールド層状構造および磁気積層体を上部シールドで覆う。上部シールドは、バイアス機構からそれぞれの側方シールド層状構造に磁束を伝達するように構成されてもされなくてもよい任意のサイズの任意の材料から形成することができる。
【0035】
ルーチン280を通じて、データビット密度を増加させた用途に適用可能な高クロストラック分解能の磁気素子は、バイアス機構、結合層、または両方を有する側方シールド層状構造のバイアス磁化を設定することによって構築することができる。しかしながら、ルーチン280は限定的でない。というのも、さまざまステップを除外し、変更し、付加することができるからである。例えば、側方シールド層状構造および磁気積層体は単一の磁気積層体として同時に形成することができ、これは、それぞれの構成要素に物理的に分離するように後に分離溝で分離される。
【0036】
バイアス磁化で磁気素子の側方シールドを調整することによって、形状因子を縮小したデータ記憶デバイスで問題となり得る結合効果に抗しつつ浮遊磁界を制御できることを認めることができる。さまざまなバイアス機構および結合層の構成においてバイアス磁化を提供できることによって、工程および設計の変動性への耐性を高めつつ、クロストラック分解能およびデータトラック容量を向上することができる。そのため、本技術は、より高いデータアクセス精度とより速いデータ転送時間とを有するより大容量のデータ記憶デバイスで動作可能な磁気素子の作製を可能にする。
【0037】
本開示のさまざまな実施例の多数の特性および利点が、さまざまな実施例の構造および機能の詳細とともに以上の記述において述べられてきたとしても、この詳細な説明は単に例示的なものにすぎず、特に、添付の請求項が表現される用語の広い一般的な意味によって十分に示されている本開示の原則の範囲内の部品の構造および配置という事項においては詳細に変更がなされ得ることを理解すべきである。たとえば、特定の要素は、本技術の精神および範囲から逸脱することなく、特定の用途に応じて異なっていてもよい。
【符号の説明】
【0038】
100 データ記憶デバイス、104 変換ヘッド、106 磁気記憶媒体、130,160,190,220,250 磁気素子、132,134,166,172,198,200,232,236,272 自由層、138 スペーサ層、140,162,202,234,258 磁気積層体、142,180,218,240,270 後部バイアス磁石、164,166,192,226,256 側方シールド層状構造、176,210,222,266 上部シールド、178,212,262 底部シールド、204,216,224,252 バイアス機構。
図1
図2
図3A
図3B
図4A
図4B
図5A
図5B
図6A
図6B
図7