(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記ミドル横溝の前記内端は、トレッド平面視において、タイヤ周方向にのびる中央縁部と、該中央縁部の両側に配された円弧状の面取部とを含む請求項1又は2に記載の重荷重用空気入りタイヤ。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の実施の一形態が図面に基づき説明される。
図1に示されるように、本実施形態の重荷重用空気入りタイヤ(以下、単に「タイヤ」ということがある)1は、例えばトラック・バス等の重荷重車両に好適に使用される。
【0020】
本実施形態のタイヤ1のトレッド部2は、タイヤ赤道Cを中心とするトレッド幅TWの25〜35%の領域である中央領域Crと、該中央領域Crのタイヤ軸方向の外側の領域である側方領域Sh、Shとを含む。なお、トレッド幅TWは、トレッド部2のトレッド接地端2t、2t間のタイヤ軸方向距離とする。
【0021】
本明細書において、前記「トレッド接地端2t」は、外観上、明瞭なエッジによって識別しうるときには当該エッジとするが、識別不能の場合には、前記正規状態のタイヤ1に正規荷重を負荷してキャンバー角0゜でトレッド部2を平面に接地させたときの最もタイヤ軸方向外側で平面に接地する接地端がトレッド接地端2tとして定められる。
【0022】
前記「正規荷重」とは、タイヤが基づいている規格を含む規格体系において、各規格がタイヤ毎に定めている荷重であり、JATMAであれば最大負荷能力、TRAであれば表 "TIRE LOAD LIMITS AT VARIOUS COLD INFLATION PRESSURES" に記載の最大値、ETRTOであれば "LOAD CAPACITY" とする。
【0023】
前記トレッド部2には、その中央領域Crをタイヤ周方向に連続してのびる少なくとも1本、本実施形態では、タイヤ赤道Cの両側で連続してのびる一対のクラウン主溝3A、3Aと、各側方領域Sh、Shでタイヤ周方向に連続してのびる一対のショルダー主溝3B、3Bとが設けられる。これにより、トレッド部2は、一対のクラウン主溝3A、3A間のクラウン陸部4A、クラウン主溝3Aとショルダー主溝3Bとの間のミドル陸部4B、及びショルダー主溝3Bとトレッド接地端2tとの間のショルダー陸部4Cが区分される。
【0024】
前記クラウン主溝3Aは、
図1及び
図3に示されるように、タイヤ軸方向の内側で凸となる内側頂点3Aiと、タイヤ軸方向の外側で凸となる外側頂点3Aoとが交互に配置され、小さな振幅でジグザグ状に屈曲しながら、タイヤ周方向に連続してのびる。また、一対のクラウン主溝3A、3Aは、それらのジグザグの位相を、互いにタイヤ周方向に位置ずれして配置される。
【0025】
このようなクラウン主溝3Aは、トレッド部2と路面との間の水膜を、タイヤ周方向に円滑に案内しつつ、タイヤ周方向に対してエッジ効果を発揮でき、排水性能及びトラクション性能を向上しうる。クラウン主溝3Aの溝幅W1aは、好ましくは、トレッド幅TWの2〜4%程度、溝深さD1a(
図2に示す)が、トレッド幅TWの5〜8%程度が望ましい。また、内側頂点3Ai、3Ai間のタイヤ周方向のジグザグピッチP1aが、トレッド幅TWの25〜35%程度、内側頂点3Ai及び外側頂点3Ao間のジグザグ幅S1aが、トレッド幅TWの1〜3%程度が望ましい。
【0026】
本実施形態のクラウン主溝3Aには、
図2及び
図3に示されるように、その溝底3Abから突出し、かつトレッド平面視おいて、略縦長矩形状の突起11が、該クラウン主溝3Aの溝中心線3AL(
図1に示す)に沿って隔設される。このような突起11は、クラウン主溝3Aにおける石噛みを防ぐのに役立つ。
【0027】
また、本実施形態の突起11には、内側頂点3Ai及び外側頂点3Aoに沿って屈曲する屈曲突起11cが含まれる。このような屈曲突起11cは、石噛みが特に発生しやすい内側頂点3Ai及び外側頂点3Aoにおいて、石噛みを効果的に抑制しうる。
【0028】
図1及び
図4に示されるように、前記ショルダー主溝3Bも、内側頂点3Biと外側頂点3Boとが交互に配置されて、小さな振幅でジグザグ状に屈曲しながらタイヤ周方向に連続してのびる。
【0029】
このようなショルダー主溝3Bも、排水性能及びトラクション性能を向上しうる。ショルダー主溝3Bの溝幅W1bは、好ましくは、トレッド幅TWの4〜6%程度、溝深さD1b(
図2に示す)が、トレッド幅TWの5〜8%程度が望ましい。同様に、ショルダー主溝3BのジグザグピッチP1bがトレッド幅TWの25〜35%程度、ジグザグ幅S1bが、トレッド幅TWの1〜3%程度が望ましい。
【0030】
また、本実施形態のショルダー主溝3Bには、その溝底3Bbから溝深さD1bと同高さで突出し、かつその溝中心線3BLに沿って、タイヤ周方向に連続してのびる隔壁体12が設けられる。このような隔壁体12は、ショルダー主溝3Bの溝容積を小さくして、空気の振動による気柱共鳴音を小さくするのに役立つ。
【0031】
図3に示されるように、前記クラウン陸部4Aには、一対のクラウン主溝3A、3A間を連通し、かつタイヤ周方向に隔設されるクラウン横溝5Aが設けられる。これにより、クラウン陸部4Aには、クラウン横溝5Aによって区分されるクラウンブロック6Aがタイヤ周方向に隔設される。
【0032】
前記クラウン横溝5Aは、一対のクラウン主溝3A、3Aの内側頂点3Ai、3Ai間を連通し、かつ55〜75度の角度α2aで傾斜してのびる。
【0033】
このようなクラウン横溝5Aは、タイヤ周方向及びタイヤ軸方向に対してエッジ効果を発揮できるため、トラクション性能及び操縦安定性能を向上しうる。また、クラウン横溝5Aは、その傾斜に沿って、トレッド部2と路面との間の水膜を、タイヤ軸方向外側に円滑に案内でき、排水性能を向上しうる。クラウン横溝5Aの溝幅W2aは、好ましくは、トレッド幅TW(
図1に示す)の2〜4%程度、溝深さD2a(
図2に示す)が、トレッド幅TWの5〜8%程度が望ましい。
【0034】
また、クラウン横溝5Aには、
図2及び
図3に示されるように、その溝底5Abから隆起するクラウンタイバー13が設けられる。このようなクラウンタイバー13は、タイヤ周方向で隣り合うクラウンブロック6A、6A間を連結して、クラウン陸部4Aの周方向剛性を大きくでき、トラクション性能を高めるのに役立つ。クラウンタイバー13は、タイヤ軸方向の長さL5aが、好ましくは、クラウンブロック6Aのタイヤ軸方向の幅W3aの50〜80%程度、隆起高さH5a(
図2に示す)が、クラウン横溝5Aの溝深さD2aの30〜50%程度が望ましい。
【0035】
また、クラウンタイバー13には、前記クラウン横溝5Aの溝中心線5ALに沿ってのびるクラウンサイプ13sが設けられる。このようなクラウンサイプ13sは、クラウンタイバー13に適度な柔軟性を与えて、クラック等の損傷を抑制しうるとともに、クラウン横溝5Aの排水性能の向上に役立つ。
【0036】
前記クラウンブロック6Aは、
図3に示されるように、トレッド平面視において、タイヤ周方向の長さL3aが、タイヤ軸方向の幅W3aよりも大きい縦長矩形状に形成される。このようなクラウンブロック6Aは、タイヤ周方向剛性を高めることができ、トラクション性能を向上しうる。クラウンブロック6Aは、その長さL3aが、好ましくは、トレッド幅TW(
図1に示す)の25〜40%程度、幅W3aが、トレッド幅TWの8〜20%程度が望ましい。
【0037】
また、クラウンブロック6Aには、クラウン主溝3Aとクラウン横溝5Aとがなす鋭角のコーナ部6Acに面取14が設けられる。このような面取14は、コーナ部6Acでチッピング等の損傷が生じるのを抑制しうるとともに、クラウン主溝3Aと路面との間で形成される気柱内の振動に乱れを生じさせ、気柱共鳴によるノイズの発生を効果的に抑制しうる。
【0038】
図1及び
図4に示されるように、前記ミドル陸部4Bには、クラウン主溝3A及びショルダー主溝3Bよりも、溝幅W1c及び溝深さD1c(
図2に示す)が小に設定され、かつタイヤ周方向に連続してのびるミドル副溝7が設けられる。これにより、ミドル陸部4Bは、クラウン主溝3Aとミドル副溝7との間の内側ミドル陸部4Ba、及びミドル副溝7とショルダー主溝3Bとの間の外側ミドル陸部4Bbに区分される。
【0039】
本実施形態のミドル副溝7は、内側頂点7iと、外側頂点7oとが交互に配置されて、クラウン主溝3A及びショルダー主溝3Bよりも大きな振幅でジグザグ状に屈曲しながら、タイヤ周方向に連続してのびる。また、ミドル副溝7は、内側頂点7iから外側頂点7oへのびる短尺傾斜部7Aと、外側頂点7oから内側頂点7iへのび、かつ短尺傾斜部7Aよりも
タイヤ周方向の長さが大きい長尺傾斜部7Bとを含む。
【0040】
このようなミドル副溝7も、排水性能及びトラクション性能を向上するのに役立つ。ミドル副溝7の溝幅W1cは、好ましくは、トレッド幅TWの1〜3%程度、溝深さD1c(
図2に示す)が、トレッド幅TWの3〜5%程度が望ましい。また、ミドル副溝7のジグザグピッチP1cがトレッド幅TWの25〜35%程度、ジグザグ幅S1cが、トレッド幅TWの3〜5%程度がが望ましい。
【0041】
ミドル副溝7には、その溝底7bから隆起するミドルタイバー15が設けられる。本実施形態のミドルタイバー15は、短尺傾斜部7Aに設けられる短尺タイバー15Aと、長尺傾斜部7Bに設けられる長尺タイバー15Bとを含む。
【0042】
このような短尺タイバー15A及び長尺タイバー15Bは、タイヤ軸方向で隣り合う内側ミドル陸部4Ba及び外側ミドル陸部4Bbとを連結して、ミドル陸部4Bの軸方向剛性を大きくでき、旋回性能を向上しうる。短尺タイバー15A及び長尺タイバー15Bの隆起高さH5(
図2に示す)が、好ましくは、ミドル副溝7の溝深さD1c(
図2に示す)の30〜50%程度が望ましい。
【0043】
さらに、ミドル副溝7の溝底7bには、その溝中心線7L(
図1に示す)に沿ってのびるミドル副溝サイプ16が設けられる。本実施形態のミドル副溝サイプ16は、短尺傾斜部7Aに設けられる短尺サイプ16Aと、長尺傾斜部7Bに設けられる長尺サイプ16Bとを含む。このような短尺サイプ16A及び長尺サイプ16Bは、ミドル副溝7の溝幅W1cを、接地圧によって大きくでき、排水性能の向上に役立つ。
【0044】
また、本実施形態では、短尺サイプ16A及び長尺サイプ16Bが、ミドル副溝7の内側頂点7iにおいて連通する。これにより、短尺サイプ16A及び長尺サイプ16Bは、内側ミドル陸部4Baの接地圧が相対的に大きくなる直進時において、排水性能をより向上しうる。
【0045】
一方、短尺サイプ16A及び長尺サイプ16Bは、ミドル副溝7の外側頂点7oにおいて互いに離間する。これにより、旋回時に大きな横力がかかる外側ミドル陸部4Bbの剛性を維持でき、操縦安定性能を向上しうる。
【0046】
前記内側ミドル陸部4Baは、クラウン主溝3Aからタイヤ軸方向外側に距離を隔てた位置に内端5Biを有して、ミドル副溝7にのびる内側ミドル横溝5Bを具える。これにより、内側ミドル陸部4Baには、内側ミドル横溝5Bをラグ溝として有して、タイヤ周方向に連続する内側ミドルリブ6Bとして形成される。
【0047】
前記内側ミドル横溝5Bは、クラウン主溝3Aの外側頂点3Ao側からミドル副溝7の内側頂点7iとの間を、タイヤ周方向に対して45〜75度の角度α2bでのびる。
【0048】
このような内側ミドル横溝5Bは、クラウン主溝3Aと連通していないため、接地時において、該クラウン主溝3A内で圧縮された空気が、内側ミドル横溝5Bに流れ込むのを抑制でき、耐ノイズ性能を向上しうる。また、内側ミドル横溝5Bは、タイヤ周方向に対して傾斜してのびるため、トレッド部2と路面との間の水膜を、タイヤ軸方向外側に円滑に案内でき、排水性能を維持しうる。内側ミドル横溝5Bの溝幅W2bは、トレッド幅TWの2.5〜4.0%程度が望ましい。
【0049】
なお、前記角度α2bが75度を超えると、上記のような排水性能を十分に維持できなくなる恐れがある。逆に、角度α2bが45度未満であっても、トレッド部2と路面との間の水膜をタイヤ軸方向外側へ円滑に案内できず、排水性能が低下するおそれがある。このような観点より、角度α2bは、より好ましくは70度以下が望ましく、また、より好ましくは50度以上が望ましい。
【0050】
さらに、本実施形態では、
図5に拡大して示されるように、内側ミドル横溝5Bの内端5Biとクラウン主溝3Aとの間の最短距離L6aとトレッド幅TW(
図1に示す)との比L6a/TWが1.3〜2.5%に限定される。これにより、内側ミドル横溝5Bの内端5Biを、トレッド部2の中央領域Cr(
図1に示す)に近づけうるとともに、該内側ミドル横溝5Bのタイヤ軸方向の長さが、過度に短くなるのを防ぐことができ、排水性能をより効果的に維持しうる。
【0051】
なお、前記比L6a/TWが2.5%を超えると、上記のような作用を十分に発揮できないおそれがある。逆に、前記比L6a/TWが1.3%未満であると、クラウン主溝3Aと内側ミドル横溝5Bとの間のトレッド剛性が低下するおそれがある。このような観点より、前記比L6a/TWは、より好ましくは2.2%以下が望ましく、また、より好ましくは1.6%以上が望ましい。
【0052】
また、内側ミドル横溝5Bは、
図6に示される溝中心線5BL(
図5に示す)に沿った断面において、内端5Biの縁から溝底5Bbへのびる内端壁5Bwが、トレッド法線Nに対して0〜50度の角度α6aで傾斜する。しかも、内側ミドル横溝5Bの溝深さD2bとクラウン主溝3Aの溝深さD1aとの比D2b/D1aは、20〜80%に限定される。
【0053】
これにより、内側ミドル横溝5Bは、排水性能を維持しつつ、クラウン主溝3Aと内側ミドル横溝5Bとの間のトレッド剛性が低下するのを抑制でき、クラック等の損傷を抑制しうる。
【0054】
なお、前記角度α6aが50度を超えると、内側ミドル横溝5Bの溝容積が小さくなり、排水性能を十分に向上できないおそれがある。逆に、前記角度α6aが小さくても、クラウン主溝3Aと内側ミドル横溝5Bとの間のトレッド剛性を十分に向上できないおそれがある。このような観点より、前記角度α6aは、より好ましくは35度以下が望ましく、また、より好ましくは15度以上が望ましい。
【0055】
さらに、前記比D2b/D1aが20%未満であると、内側ミドル横溝5Bの溝容積が小さくなるおそれがある。逆に、前記比D2b/D1aが80%を超えると、クラウン主溝3Aと内側ミドル横溝5Bとの間のトレッド剛性を十分に高めることができないおそれがある。このような観点より、前記比D2b/D1aは、より好ましくは40%以上が望ましく、また、より好ましくは60%以下が望ましい。
【0056】
また、内端壁5Bwと溝底5Bbとの間には、曲率半径R6aが1〜10mmの円弧からなる面取部18が形成される。このような面取部18は、内端壁5Bwと溝底5Bbとの入隅に集中しがちな歪みを分散でき、クラック等の損傷をより効果的に抑制しうる。
【0057】
なお、前記曲率半径R6aが1mm以下であると、上記歪みを十分に分散できないおそれがある。逆に、前記曲率半径R6aが10mmを超えると、内側ミドル横溝5Bの溝容積が小さくなり、排水性能を十分に維持できないおそれがある。このような観点より、前記曲率半径R6aは、より好ましくは3mm以上が望ましく、また、より好ましくは8mm以下が望ましい。
【0058】
また、
図5に示されるように、内側ミドル横溝5Bの内端5Biは、トレッド平面視において、タイヤ周方向にのびる中央縁部21と、該中央縁部21の両側に配された円弧状の面取部22、22とを含むのが望ましい。このような面取部22も、内側ミドル横溝5Bの内端5Biと、該内側ミドル横溝5Bの溝中心線5BLの両側の側縁5Bs、5Bsとの入隅に、歪が集中するのを抑制でき、クラック等の損傷を効果的に抑制しうる。
【0059】
この面取部22の曲率半径R6bは、0.5mm以上、かつ内側ミドル横溝5Bの溝幅W2bの50%以下が望ましい。なお、前記曲率半径R6bが0.5mm未満であると、上記歪みを十分に分散できないおそれがある。逆に、前記曲率半径R6bが溝幅W2bの50%を超えると、溝容積が小さくなるおそれがある。このような観点より、前記曲率半径R6bは、より好ましくは1.0mm以上が望ましく、また、より好ましくは溝幅W6aの40%以下が望ましい。
【0060】
さらに、トレッド部2には、
図5及び
図6に示されるように、クラウン主溝3Aと内側ミドル横溝5Bとを継ぐミドル連通サイプ24が設けられるのが望ましい。このようなミドル連通サイプ24は、クラウン主溝3Aと内側ミドル横溝5Bとの間のトレッド部2の剛性を緩和し、その部分で歪みが集中するのを抑制しうる。
【0061】
このような作用を効果的に発揮するために、ミドル連通サイプ24の溝深さD6bは、内側ミドル横溝5Bの溝深さD2bよりも大きいのが望ましい。なお、ミドル連通サイプ24の溝深さD6bが小さいと、クラウン主溝3Aと内側ミドル横溝5Bとの間のトレッド部2の剛性を十分に緩和できないおそれがある。このような観点より、ミドル連通サイプ24の溝深さD6bと内側ミドル横溝5Bの溝深さD2bとの比D6b/D2bは、より好ましくは1.1以上、さらに好ましくは1.2以上が望ましい。
【0062】
一方、前記ミドル連通サイプ24の溝深さD6bが大きくても、クラウン主溝3Aと内側ミドル横溝5Bとの間のトレッド部2の剛性が低下するおそれがある。このような観点より、ミドル連通サイプ24の溝深さD6bとクラウン主溝3Aとの溝深さD1aとの比D6b/D1aは、好ましくは0.95以下、さらに好ましくは0.9以下が望ましい。
【0063】
同様の観点より、ミドル連通サイプ24の幅W6bは、内側ミドル横溝5Bの溝幅W2bの0.33以下、さらに好ましくは0.2以下が望ましく、また0.05以上、さらに好ましくは0.1以上が望ましい。
【0064】
本実施形態の内側ミドル横溝5Bの溝底5Bbには、該内側ミドル横溝5Bの溝中心線5BLに沿ってのびる内側ミドルサイプ25が設けられる。このような内側ミドルサイプ25も、内側ミドル横溝5Bの溝幅W2bを、接地圧によって大きくでき、排水性能及び耐久性能を向上しうる。
【0065】
また、内側ミドルサイプ25のタイヤ軸方向の内端は、ミドル連通サイプ24と連通するのが望ましい。これにより、内側ミドルサイプ25は、クラウン主溝3A側の内側ミドル横溝5Bの溝幅W5bを大きくでき、排水性能をさらに向上しうる。
【0066】
さらに、内側ミドルサイプ25のタイヤ軸方向の外端は、ミドル副溝7の内側頂点7iにおいて、短尺サイプ16A及び長尺サイプ16Bに連通するのが望ましい。これにより、内側ミドルサイプ25は、短尺サイプ16Aと長尺サイプ16Bとの相乗効果により、内側ミドル横溝5Bの溝幅W2bをさらに大きくでき、排水性能を大幅に向上しうる。
【0067】
図4に示されるように、前記内側ミドルリブ6Bは、クラウン主溝3Aとミドル副溝7との間で、タイヤ周方向に連続するリブ体として形成される。ここでリブ体について「連続する」とは、横溝によってタイヤ周方向に分断されていないことを意味し、サイプは上記横溝には含まないものとする。
【0068】
これにより、内側ミドルリブ6Bは、ブロック列に比べて、タイヤ周方向の剛性、及びタイヤ軸方向の剛性を高めることができ、直進安定性能及び旋回安定性能を高めうる。この内側ミドルリブ6Bの前記幅W3bは、トレッド幅TWの7〜15%程度が望ましい。
【0069】
また、内側ミドルリブ6Bのタイヤ軸方向の外端には、トレッド平面視において、タイヤ軸方向内側に縦長矩形状に凹む凹溝26が設けられる。このような凹溝26は、内側ミドルリブ6Bと路面との間の水膜を、ミドル副溝7に案内でき、排水性能を向上しうる。凹溝26のタイヤ周方向の長さL6cは、好ましくは、内側ミドルリブ6Bの前記幅W3bの40〜60%程度、タイヤ軸方向の幅W6cが、内側ミドルリブ6Bの幅W3bの10〜20%程度が望ましい。
【0070】
前記外側ミドル陸部4Bbは、
図7に示されるように、ミドル副溝7とショルダー主溝3Bとの間をのび、かつタイヤ周方向に隔設される外側ミドル横溝5Cが設けられる。これにより、外側ミドル陸部4Bbには、外側ミドル横溝5Cによって区分される外側ミドルブロック6Cが、タイヤ周方向に隔設される。
【0071】
前記外側ミドル横溝5Cは、ミドル副溝7の外側頂点7oとショルダー主溝3Bの内側頂点3Biとの間を連通し、かつ内側ミドル横溝5Bの角度α2bと同一範囲の角度α2cで傾斜してのびる。このような外側ミドル横溝5Cも、トラクション性能、操縦安定性能、及び排水性能を向上しうる。外側ミドル横溝5Cの溝幅W2cは、好ましくは、トレッド幅TW(
図1に示す)の2.5〜4.0%程度、溝深さD2c(
図2に示す)が、トレッド幅TWの1.5〜3.5%程度が望ましい。
【0072】
また、外側ミドル横溝5Cの溝底には、該外側ミドル横溝5Cの溝中心線に沿ってのびる外側ミドルサイプ27が設けられる。このような外側ミドルサイプ27も、外側ミドル横溝5Cの溝幅W2cを、接地圧によって大きくでき、排水性能及び耐久性能を向上しうる。
【0073】
また、外側ミドルサイプ27のタイヤ軸方向の内端は、ミドル副溝7の外側頂点7oにおいて、長尺サイプ16Bと連通するのが望ましい。これにより、外側ミドルサイプ27は、ミドル副溝7の長尺傾斜部7Bから外側ミドル横溝5Cにかけて溝幅を大きくでき、排水性能をさらに向上しうる。なお、外側ミドルサイプ27は、短尺サイプ16Aとは連通しないため、外側ミドル陸部4Bbの剛性を維持でき、操縦安定性能を向上しうる。
【0074】
前記外側ミドルブロック6Cは、タイヤ周方向の長さL3cが、タイヤ軸方向の幅W3cよりも大、かつタイヤ軸方向内側に突出する略縦長ベース形状に形成される。このような外側ミドルブロック6Cは、トラクション性能及び操縦安定性能を向上しうる。外側ミドルブロック6Cは、前記長さL3cがトレッド幅TW(
図1に示す)の25〜35%程度、また、前記幅W3cがトレッド幅TWの7〜15%程度が望ましい。
【0075】
また、外側ミドルブロック6Cのタイヤ軸方向の内端には、トレッド平面視において、タイヤ軸方向内側に縦長矩形状に凹む凹溝28が設けられるのが望ましい。このような凹溝28も、チッピング等の損傷を抑制しうるとともに、排水性能を向上しうる。この凹溝28は、内側ミドルリブ6Bの凹溝26と略同一の大きさで形成されるのが望ましい。
【0076】
前記ショルダー陸部4Cには、ショルダー主溝3Bとトレッド接地端2tとの間をのび、かつタイヤ周方向に隔設されるショルダー横溝5Dが設けられる。これにより、ショルダー陸部4Cには、ショルダー横溝5Dによって区分されるショルダーブロック6Dがタイヤ周方向に隔設される。
【0077】
前記ショルダー横溝5Dは、ショルダー主溝3Bの外側頂点3Boとトレッド接地端2tとの間を連通し、かつタイヤ周方向に対して70〜90度程度の角度α2dで傾斜してのびる。このようなショルダー横溝5Dは、排水性能、トラクション性能及び操縦安定性能を向上しうる。ショルダー横溝5Dの溝幅W2dは、好ましくは、トレッド幅TW(
図1に示す)の2.5〜5.5%程度、溝深さD2d(
図2に示す)が、トレッド幅TWの5〜8%程度が望ましい。
【0078】
また、ショルダー横溝5Dには、その溝底5Dbから隆起するショルダータイバー29が設けられる。このようなショルダータイバー29は、タイヤ周方向で隣り合うショルダーブロック6D、6Dを連結して、ショルダー陸部4Cのタイヤ周方向剛性を大きくでき、トラクション性能及び旋回性能を向上しうる。ショルダータイバー29のタイヤ軸方向の長さL5dは、好ましくは、ショルダーブロック6Dのタイヤ軸方向の幅W6dの40〜60%程度、隆起高さH5dが、ショルダー横溝5Dの前記溝深さD2dの60〜80%程度が望ましい。
【0079】
前記ショルダーブロック6Dは、タイヤ周方向の長さL6dが、タイヤ軸方向の幅W6dよりも大きい縦長矩形状に形成される。このようなショルダーブロック6Dも、トラクション性能及び操縦安定性能を向上しうる。前記長さL6dは、好ましくは、トレッド幅TW(
図1に示す)の25〜35%程度、また、前記幅W6dがトレッド幅TWの10〜20%程度が望ましい。
【0080】
また、ショルダーブロック6Dは、ショルダー主溝3Bとショルダー横溝5Dとがなす鋭角のコーナ部30に面取31が設けられる。このような面取31も、耐久性能及び耐ノイズ性能を向上させるのに役立つ。
【0081】
また、ショルダーブロック6Dには、トレッド接地端2t側に、タイヤ軸方向に小長さで切り込まれたショルダーサイプ32がタイヤ周方向に隔設される。このようなショルダーサイプ32は、ショルダーブロック6Dのトレッド接地端2t側の剛性を緩和させて、轍に衝突した際の衝撃を吸収できるため、ワンダリング性能を向上しうる。
【0082】
以上、本発明の特に好ましい実施形態について詳述したが、本発明は図示の実施形態に限定されることなく、種々の態様に変形して実施しうる。
【実施例】
【0083】
図1に示す基本構造をなし、表1に示す内側ミドル横溝を有するタイヤが製造され、それらが評価された。また、比較として、
図8に示されるクラウン主溝に連通する内側ミドル横溝を有するタイヤ(比較例1)についても同様にテストされた。なお、共通仕様は以下の通りである。
タイヤサイズ:275/80R22.5
リムサイズ:22.5×7.5
トレッド幅TW:248mm
クラウン主溝:
溝幅W1a:6mm、比W1a/TW:2.4%
溝深さD1a:16mm、比D1a/TW:6.5%
ジグザグピッチP1a:80mm、比P1a/TW:32.3%
ジグザグ幅S1a:2mm、比S1a/TW:0.8%
ショルダー主溝:
溝幅W1b:10mm、比W1b/TW:4.0%
溝深さD1b:16mm、比D1b/TW:6.5%
ジグザグピッチP1b:80mm、比P1b/TW:32.3%
ジグザグ幅S1b:2mm、比S1b/TW:0.8%
クラウン横溝:
角度α2a:65度
溝幅W2a:6mm、比W2a/TW:2.4%
溝深さD2a:10mm、比D2a/TW:4.0%
クラウンブロック:
長さL3a:80mm、比L3a/TW:32.3%
幅W3a:30mm、比W3a/TW:12.1%
ミドル副溝:
溝幅W1c:5mm、比W1c/TW:2.0%
溝深さD1c:10mm、比D1c/TW:4.0%
ジグザグピッチP1c:80mm、比P1c/TW:32.3%
ジグザグ幅S1c:8mm、比S1c/TW:3.2%
短尺タイバー、長尺タイバー:
隆起高さH5:4.5mm、比H5/D1c:45%
内側ミドル横溝:
溝幅W2b:8mm、比W2b/TW:3.2%
内側ミドルリブ:
幅W3b:26mm、比W3b/TW:10.5%
凹溝の長さL6c:12mm、比L6c/W3b:46.2%
凹溝の幅W6c:4mm、比W6c/W3b:15.4%
外側ミドル横溝:
角度α2c:65度
溝幅W2c:8mm、比W2c/TW:3.2%
溝深さD2c:10mm、比D2c/TW:4.0%
外側ミドルブロック:
長さL3c:74mm、比L3c/TW:29.8%
幅W3c:28mm、比W3c/TW:11.3%
ショルダー横溝:
角度α2d:80度
溝幅W2d:8〜10mm、比W2d/TW:3.2〜4.0%
溝深さD2d:16mm、比D2d/TW:6.5%
テスト方法は、次のとおりである。
【0084】
<耐ノイズ性能>
下記条件でリム装着された各試供タイヤを、直径1.7mのISO路を有したドラム上を時速40km/hにて走行させ、タイヤ半径方向の中心から後方に0.2m、高さ0.32m及びタイヤトレッド端よりもタイヤ軸方向外側に1.0m離間した位置にてマイクロホンにより騒音レベルdB(A)を測定した。結果は、比較例1を100とする指数で表示し、指数が小さいほど通過騒音が小さく良好である。
内圧:900kPa(正規内圧)
タイヤ縦荷重:23.8kN(正規荷重の70%)
測定場所:無響室
【0085】
<排水性能>
各供試タイヤを上記リムにリム組し、内圧900kPa充填して、2−D車の4輪に装着し、タイヤテストコースのウエットアスファルト路面を実車走行したときのフィーリングを、100名のテストドライバーの官能によって評価された。結果は、供試タイヤが、比較例1のタイヤよりも劣ると答えたドライバーの割合により、次のとおり表示した。
◎:10%未満
○:10%以上かつ30%未満
△:30以上かつ50%未満
×:50%以上
【0086】
<耐クラック性能>
各供試タイヤを上記リムに上記条件でリム組みし直径1.7mのドラム試験機上を、速度50km/h、荷重33.83kN(正規荷重)で10000km走行させ、クラウン主溝と内側ミドル横溝との間のトレッドゴムに、クラック等の損傷の有無を目視にて確認した。評価は、次のとおりである。
◎:クラックが発生しなかった
○:クラウン主溝の溝深さの20%未満の深さのクラックが発生した
△:クラウン主溝の溝深さの50%未満の深さのクラックが発生した
×:クラウン主溝の溝深さの50%以上の深さのクラックが発生した
テストの結果を表1に示す。
【0087】
【表1】
【0088】
テストの結果、実施例のタイヤは、排水性能を維持しつつ、耐ノイズ性能を向上しうることが確認できた。