(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
(I)液体/液体エマルジョン系が形成され、ここで、該液体/液体エマルジョン系は溶媒に分散された触媒成分(i)及び(ii)の1つの溶液を含んで、これにより分散された滴を形成する;そして
(II)固体粒子が、該分散された滴を固体化することにより形成される、
方法により得られ得る触媒である、請求項1に記載の外部担体を含まない固体の粒状触媒。
【発明を実施するための形態】
【0021】
定義
明細書を通して、以下の定義が採用される。
外部の担体を含まない、により触媒が外部の無機又は有機の支持体、例えばシリカ又はアルミナ又はポリマー状支持体物質を含まないことが意味される。
【0022】
粒状、により本発明の触媒物質が、粒子、典型的には自由に流動する粉体、典型的には直径が約1〜500μmである粉体、として存在することが意味される。
【0023】
用語C
1〜20の炭化水素基は、炭素及び水素のみを含む任意のC
1〜20の基を包含する。任意のC
1〜20の炭化水素基は好ましくはC
1〜15の炭化水素基、より好ましくはC
1〜10の炭化水素基、特にC
1〜6の炭化水素基である。
【0024】
従って、用語C
1〜20の炭化水素基はC
1〜20のアルキル、C
2〜20のアルケニル、C
2〜20のアルキニル、C
3〜20のシクロアルキル、C
3〜20のシクロアルケニル、C
6〜20のアリール基、C
7〜20のアルキルアリール基又はC
7〜20のアリールアルキル基を含む。
【0025】
別に明記されない限り、好ましいC
1〜20の炭化水素基は、C
1〜20のアルキル基又はC
6〜20のアリール基、特にC
1〜10のアルキル基又はC
6〜10のアリール基、例えばC
1〜6のアルキル基である。最も特に好ましい炭化水素基は、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、tertブチル、フェニル又はベンジルである。
【0026】
用語アリールは好ましくはC6〜10のアリールであって、任意的に1又は2のC
1〜6のアルキル基、例えばメチル又はtertブチル基、で置換されていてもよい該アリールを意味する。
【0027】
用語ハロゲンは、錯体の定義に関するときは、フッ素、塩素、臭素、ヨウ素基、特に塩素基を含む。
【0028】
用語ヘテロアリールは、少なくとも1のヘテロ原子を含む単環状芳香環構造を意味する。好ましいヘテロアリール基は、O,S及びNから選択された1〜4のヘテロ原子を有する。好ましいヘテロアリール基は、フラニル、チオフェニル、オキサゾール、チアゾール、イソチアゾール、イソオキサゾール、トリアゾール及びピリジルを含む。
【0029】
「第14族〜第16族に属する1以上のヘテロ原子」を含む任意の基は、好ましくはSi,O,S又はNを意味する。N基は−NH−又はNR’’−として表され得、ここでR’’はC1〜10のアルキルである。
【0030】
金属イオンの酸化状態は、問題の金属イオンの性質及び各金属イオンの個々の酸化状態の安定性により主に支配される。しかし、典型的には、金属イオンは、3+又は4+の酸化状態、特に4+の酸化状態であるだろう。
【0031】
本発明の錯体において、金属イオンMは配位子Xにより配位されて、金属イオンの価数を満たし、その利用可能な配位サイトを埋めることが理解される。これらのシグマ配位子の性質は大きく変わることができる。
【0032】
触媒が分散されているところの溶媒は、触媒溶液相とは混和することができないか又は少なくとも総合的に混和可能ではないことができる。
【0033】
発明の詳細な説明
もし、式(I)の錯体を構成する2つの多環式配位子が同じであれば、好ましい。一つの環上の置換基が他の上の対応する置換基と同じであれば、それもまた好ましい。即ち、両方のR
1’は好ましくは同じである。好ましくは、本発明のメタロセンはラセミ(rac)又はラセミ−アンチ−形である。
【0035】
各Xは、同じであるか又は異なっていてもよく、好ましくは水素原子、ハロゲン原子、R,OR,OSO
2CF
3,OCOR,SR,NR
2又はPR
2基、ここでRは直鎖又は分岐状、環状又は非環状のC1〜C20アルキル、C2〜C20アルケニル,C2〜C20アルキニル,C6〜C20−アリール,C7〜C20−アルキルアリール又はC7〜C20−アリールアルキル基であり;任意的に第14族〜第16属に属するヘテロ原子を含んでいてもよく、又はSiR
3,SiHR
2又はSiH
2Rである。Rは好ましくはC
1〜6のアルキル、フェニル又はベンジル基である。
【0036】
最も好ましくは、各Xは独立して、水素原子、ハロゲン原子、C
1〜6のアルコキシ基若しくはR基、例えば好ましくはC
1〜6のアルキル、フェニル又はベンジル基である。最も好ましくはXは塩素又はメチル基である。好ましくは両方のXは同じである。
【0037】
Lは、好ましくは1又は2のヘテロ原子、例えばケイ素又はゲルマニウム原子を含む架橋例えば−SiR
62−、ここで各R
6は、独立してC1〜C20アルキル、C6〜C20−アリール又はトリ(Cl〜C20−アルキル)シリル残基、例えばトリメチルシリルである。より好ましくはR
6はC
1〜6アルキル、特にメチルである。LはC
1〜4アルキレン結合、例えばエチレンであってもよい。最も好ましくは、Lは1又は2の原子架橋、特にジメチルシリル又はエチレン架橋であってもよい。
【0038】
R
1は、好ましくは直鎖又は分岐状のC1〜20アルキル、C2〜C20アルケニル,C2〜C20のアルキニル基又は4〜20の炭素原子を有し、任意的にO,N,S,P又はSi原子、特にO,N及びSを含んでいてもよいアリール若しくはアリールアルキル基、例えば2−(5−Me−チオフェニル)又は2−(5−Me−フラニル)基であってもよい。
【0039】
より好ましくはR
1は直鎖又は分岐状のC1〜10のアルキル基、例えば直鎖又は分岐状のC1〜6のアルキル基である。R
1は理想的には直鎖のC1〜6のアルキル基、好ましくはメチル又はエチル基である。
【0040】
好ましくはT
1及びT
4はOR
2又はSR
2基又はC5〜10のアリール又はヘテロアリール基、例えばフェニル、クミル又はトリルである。
【0041】
好ましくは、R
2は直鎖又は分岐状、環状又は非環状のC1〜C20アルキル、C2〜C20のアルケニル、C2〜C20のアルキニル、C6〜C20のアリールである。より好ましくはR
2は直鎖又は分岐状のC1〜10−アルキル基、例えばメチル、エチル、イソプロピル、又はtertブチルである。
【0042】
最も好ましくはT
1及びT
4はOC
1〜6アルキル、特にメトキシ又はエトキシである。もしT
1及びT
4が同じであれば好ましい。
【0043】
好ましくはR
18は、直鎖又は分岐状、環状又は非環状のCl〜20−アルキル,C2〜C20アルケニル,C2〜C20アルキニル,C6〜C20−アリール,C7〜C20−アルキルアリール又はC7〜C20−アリールアルキル基であり、任意的に第14族〜第16族に属する1以上のヘテロ原子を含んでいてもよい。
【0044】
より好ましくは、R
18は、直鎖又は分岐状のC1〜10アルキル基である。より好ましくはR
18はメチル又はエチル基である。
【0045】
さらに好ましい実施態様において、2つのR
18基はそれらが結合されている炭素原子と一緒にC4〜20の炭化水素環系、好ましくはC5〜10の環系、を形成する。好ましい環は、モノ又は二環式、好ましくは単環式である。好ましい環は飽和又は不飽和、特に飽和である。最も好ましい環はシクロペンチル又はシクロヘキシルである。
【0046】
T
2及びT
3は好ましくはC4〜C10の分岐状三級アルキルであるか、又は2つのR
18基はC4〜10シクロアルキルであり、残りのR
18基はC1〜10のアルキルである。好ましい選択肢はtert−ブチル,1−アルキルシクロペンチル又は1−アルキルシクロヘキシルを含む。
【0047】
W
1及びW
2は好ましくは同じである。それらは、好ましくは任意的な置換されたフェニル基、又は5若しくは6員のヘテロアリール基、例えばフラニル、チオフェニル、ピロリル、トリアゾリル及びピリジルを含む。
【0048】
いかなる5員のヘテロアリール基も、環に1のヘテロ原子、例えばO,N又はS、好ましくはS、を好ましくは含むべきである。
【0049】
好ましくは、W
1及びW
2は、フェニル誘導体基又はチオフェニル誘導体基である。より好ましくはフェニル/チオフェン誘導体基は置換されていないか、又は1の置換基を有する。
【0050】
任意のW
1又はW
2基上の任意的な置換基はR
5である。もし存在するならば、1又は2のR
5があるべきであり、好ましくは1つのR
5基があるべきである。
【0051】
好ましくはR
5は直鎖又は分岐状の、環状又は非環状の、Cl〜C20−アルキル,C2〜C20アルケニル,C2〜C20アルキニル,C6〜C20−アリール,C7〜C20−アルキルアリール又はC7〜C20−アリールアルキル基であり、任意的に14族〜16族から選択された1以上のヘテロ原子を含んでいてもよい。好ましくはR
5はC1〜C6アルキル、例えばメチル、イソプロピル又はtertブチルである。
【0052】
一つの好ましい実施態様において、2つの隣接するR
5基は一緒になって単環式若しくはW
1又はW
2へ縮合された多環式環をさらに形成することができる。新しい環は好ましくは5若しくは6員であるか又は複数のR
5基は好ましくは2つの新しい環、例えばさらに5員及び6員環を形成する。
【0053】
新しい環は、脂肪族又は芳香族であることができる。好ましくは、任意の新しい環はそれに結合しているW
1又はW
2と一緒に芳香系を形成する。
【0054】
この方法で、基、例えばカルバゾリル、ベンゾチオフェニル及びナフチルが、位置W
1又はW
2において形成されることができる。これらの新しい環が1又は2のR
5基により置換されていることもまた、本願発明の範囲内である(ここで、別の環を形成する2つの隣接するR
5基の選択は排除される)。
【0055】
従って、非常に好ましくは、R
5は直鎖又は分岐状の、環状又は非環状のC1〜C10アルキル基であるか、又は2つの隣接するR
5基が一緒になって単環式若しくはW
1及び/又はW
2へ縮合された多環式芳香環を形成することができる。
【0056】
最も好ましい実施態様において、W
1及びW
2は任意的に一つのR
5置換基を有していてもよいフェニル基である。好ましくは、その置換基はインデニル環の結合に対してパラに持たれる。
【0057】
従って、好ましい実施態様において、本発明の錯体は式(II)を有する。
ここで、
MはZr又はHf、好ましくはZrであり;
R
1は直鎖又は分岐状のC1〜C10アルキルであり;
Lはエチレン又はSiR
62であり;
R
6はC1〜C10アルキルであり;
各Xは水素原子、ハロゲン原子、OR、又はR基であり;
Rはメチル、エチル、イソプロピル、トリメチルシリル、又はC6〜C10アリールであり、好ましくはXは塩素又はメチルであり;
W
1及びW
2は、任意的に1又は2のR
5基を有していてもよいフェニル誘導体基又はチオフェニル誘導体基である。
R
5はC1〜C10アルキルであるか、又は2つの隣接するR
5基は一緒になって、単環式若しくは、W
1又はW
2へ縮合された多環式環をさらに形成して、例えばベンゾチオフェニル基を形成することができ;
T
1は、OC1〜C6アルキル又はC6〜C10アリールであり;
T
2は、C4〜C10の炭化水素基、好ましくは三級の炭化水素基、例えばtert−ブチルであり;
T
3はC4〜C10の炭化水素基、好ましくは三級の炭化水素基、例えばtert−ブチルであり;かつ
T
4はOC1〜C6アルキル又はC6〜C10アリールである。
【0058】
好ましい実施態様において、本発明の錯体は式(III)を有し、
ここで
MはZr又はHf、好ましくはZrであり;
R
1は直鎖又は分岐状のC1〜C10アルキルであり;
Lはエチレン又はSiR
62であり;
R
6はC1〜C10アルキルであり;
各Xは水素原子、ハロゲン原子、OR、又はR基であり;
Rはメチル、エチル、イソプロピル、トリメチルシリル、又はC6〜C10アリールであり、好ましくはXは塩素又はメチルであり;
nは0〜2であり;
R
5はC1〜C10アルキルであり;
T
1は、O−C1〜C6アルキル又はC6〜C10アリールであり;
T
2は、C
4〜C
10の炭化水素基、好ましくは三級の炭化水素基、例えばtert−ブチルであり;
T
3はC
4〜C
10の炭化水素基、好ましくは三級の炭化水素基、例えばtert−ブチルであり;かつ
T
4はO−C1〜C6アルキル又はC6〜C10アリールである。
【0059】
式(I)の化合物の例は以下の通りである。
ラセミ−Me
2Si(2−メチル−4−フェニル−5−メトキシ−6−tert−ブチリデン−l−イル)
2ZrCl
2
ラセミ−Me
2Si(2−メチル−4−(チオフェン−2−イル)−5−メトキシ−6−tert−ブチリデン−l−イル)
2ZrCl
2
ラセミ−Me
2Si(2−メチル−4−(5−メチルチオフェン−2−イル)−5−メトキシ−6−tert−ブチリデン−l−イル)
2ZrCl
2
ラセミ−Me
2Si(2−メチル−4−(ベンゾチオフェン−2−イル)−5−メトキシ−6−tert−ブチリデン−l−イル)
2ZrCl
2
ラセミ−Me
2Si(2−メチル−4−(ベンゾチオフェン−2−イル)−5−メトキシ−6−tert−ブチリデン−l−イル)
2ZrCl
2
ラセミ−Me
2Si(2−メチル−4−(4−ピリジル)−5−メトキシ−6−tert−ブチリデン−l−イル)
2ZrCl
2
ラセミ−Me
2Si(2−メチル−4−(tert−ブチルフェニル)−5−メトキシ−6−tert−ブチリデン−l−イル)
2ZrCl
2
ラセミ−Me
2Si(2−メチル−4−(tert−ブチルフェニル)−5−エトキシ−6−tert−ブチリデン−l−イル)
2ZrCl
2
ラセミ−Me
2Si(2−メチル−4−(2,5−ジメチルフェニル)−5−メトキシ−6−tert−ブチリデン−l−イル)
2ZrCl
2
ラセミ−Me
2Si(2−エチル−4−フェニル−5−メトキシ−6−tert−ブチリデン−1−イル)
2ZrCl
2
ラセミ−Me
2Si(2−プロピル−4−フェニル−5−メトキシ−6−tert−ブチリデン−l−イル)
2ZrCl
2
ラセミ−アンチ−Me
2Si(2−メチル−4−フェニル−5−メトキシ−6−tert−ブチリデン−l−イル)(2−メチル−4−(5−メチルチオフェン−2−イル)−5−メトキシ−6−tert−ブチリデン−l−イル)ZrCl
2;
ラセミ−アンチ−Me
2Si(2−メチル−4−フェニル−5−メトキシ−6−tert−ブチリデン−l−イル)(2−メチル−4−(5−メチルチオフェン−2−イル)−5−エトキシ−6−tert−ブチリデン−l−イル)ZrCl
2
ラセミ−アンチ−Me
2Si(2−メチル−4−フェニル−5−メトキシ−6−tert−ブチリデン−l−イル)(2−イソプロピル−4−フェニル−5−メトキシ−6−tert−ブチリデン−l−イル)ZrCl
2
ラセミ−Me
2Si(2−メチル−4−フェニル−5−メトキシ−6−(l−メチル−シクロヘキシル)インデン−l−イル)
2ZrCl
2
及びそれらの対応するジメチル誘導体及びさらに対応するハフニウム化合物。
【0060】
置換基のより狭い定義が示されている上の開示を通して、該より狭い定義は本願において他の置換基のすべてのより広い及びより狭い定義と関連して開示されているものと見なされる。
【0061】
合成
本発明の触媒を形成するために必要とされる配位子は、任意の方法により合成されることができ、当業者は必要な配位子物質の製造のために種々の合成プロトコルを工夫することができるだろう。国際公開第2007/116034号パンフレットは、必要な化学を開示しており、参照することにより本明細書に取り込まれる。
【0062】
共触媒
活性な触媒種を形成するために、当該技術において周知である共触媒を用いることが通常必要である。第13族の金属の有機金属化合物を含む共触媒、例えばメタロセン触媒を活性化するために使用される有機アルミニウム化合物、が本発明における使用に適切である。
【0063】
本発明のオレフィン重合触媒系は、(i)金属イオンが本発明の配位子により配位されている錯体;及び通常(ii)アルミニウムアルキル化合物(又は他の適切な共触媒)又はそれらの反応生成物、を含む。即ち、共触媒は好ましくはアルモキサン、例えばMAO又はMAO以外のアルモキサンである。
【0064】
しかし、あるいは、本発明の触媒は、他の共触媒、例えばホウ素化合物、例えばB(C
6F
5)
3,C
6H
5N(CH
3)
2H:B(C
6F
5)
4,(C
6H
5)
3C:B(C
6F
5)
4又はNi(CN)
4[B(C
6F
5)
3]
42−と一緒に使用され得る。アルモキサン、特にMAO、の使用は非常に好ましい。
【0065】
製造
本発明の触媒は固体であり、好ましくは外部の担体は使用されない。固体の、粒状の形態であるが、外部の担体を使用していない本発明の触媒を固体で提供するために、液体液体エマルション系が使用されるならば、好ましい。本方法は溶媒に触媒成分(i)及び(ii)を分散させて、分散された滴を形成し、そして該分散された滴を固体化して固体粒子を形成することを含む。
【0066】
特に、該方法は、1以上の触媒成分の溶液を製造すること;該溶液を溶媒に分散させて、該1以上の触媒成分が分散された相の滴の中に存在するエマルジョンを形成すること;外部の粒状多孔質の支持体の不存在において該分散された滴中の触媒成分を固定化して、該触媒を含む固体粒子を形成すること、及び任意的に、該粒子を回収することを含む。
【0067】
この方法は、如何なる添加された外部の多孔質の支持体、例えば無機酸化物、例えばシリカ、を使用することなしに、改善された形態(morphology)、例えば所定の球の形状及び粒子サイズ、を有する活性な触媒粒子の製造を可能にする。また、所望される表面の性質が得られることができる。
【0068】
用語「1以上の触媒成分の溶液を製造する」により、触媒を形成する化合物が一つの溶液に混合されて、該溶液が混和しない溶媒に分散されること、又は触媒形成化合物の各部分のために少なくとも2の独立した触媒溶液が製造されて、次に該溶液が逐次的に該溶媒に分散されることが意味される。
【0069】
触媒を形成するための好ましい方法においては、該触媒の各部分のために少なくとも2の独立した溶液が製造されて、次に該溶液が混和しない溶媒に逐次的に分散される。
【0070】
より好ましくは、遷移金属化合物及び共触媒を含む錯体の溶液が溶媒と合わされて、エマルジョンを形成し、該エマルジョンにおいて、不活性な溶媒が連続液状相を形成し、触媒成分を含む溶液が分散された滴の形における分散された相(不連続相)を形成する。該滴は次に固体化されて固体の触媒粒子を形成し、該固体の粒子は液体から分離され、任意的に洗浄及び/又は乾燥される。連続相を形成する溶媒は、分散段階の間に使用される条件(例えば温度)において少なくとも触媒溶液と混和しなくてもよい。
【0071】
必要な工程の完全な開示は国際公開第03/051934号パンフレットに見られることができ、該パンフレットは参照することにより本明細書に取り込まれる。
【0072】
不活性溶媒は、化学的に不活性でなければならない。好ましくは、連続相の溶媒はそこに溶解された有意な量の触媒形成化合物を含まない。即ち、触媒の固体粒子は分散された相から由来する(即ち、連続相へと分散された溶液におけるエマルジョンに与えられた)化合物から、滴の形で形成される。
【0073】
用語「固定化」及び「固体化」は、本明細書において同じ目的のため、即ち外部の多孔質粒状担体、例えばシリカ、の不存在において自由流動する固体触媒の粒子を形成するため、交換可能に使用される。即ち、固体化は滴の中で起きる。該段階は、該国際公開第03/051934号パンフレットに開示された種々の方法において実行されることができる。好ましくは、固体化は、エマルジョン系への外部の刺激、例えば固体化を引き起こす温度変化、により引き起こされる。即ち、該段階において、触媒成分は形成された固体の粒子内に「固定化」されたままである。1以上の触媒成分が固体化/固定化反応に参加し得ることもまた可能である。
【0074】
従って、所定の粒子サイズの範囲を有する固体の、組成的に均一である粒子が得られることができる。
【0075】
さらに、本発明の触媒粒子のサイズは溶液中の滴のサイズにより制御されることができ、均一な粒子サイズ分布を有する球状粒子が得られることができる。
【0076】
本発明もまた産業的に有利である、なぜならそれは固体粒子の製造をワンポット手順として実行されることを可能にするからである。連続又は半連続方法もまた触媒の製造のために可能である。
【0077】
分散された相
化学の分野において、2相エマルジョン系を製造するための原理が公知である。即ち、該2つの相の液体系を形成するために、触媒成分の溶液及び連続液体相として使用される溶媒は少なくとも分散段階の間は、基本的に非混和性でなければならない。これは公知の方法、例えば該2つの液体及び/又は分散段階/従って、固体化段階の温度を選択することにより達成されることができる。
【0078】
触媒成分の溶液を形成するために溶媒が使用されてもよい。溶媒は、触媒成分を溶解するように選択される。溶媒は好ましくは有機溶媒、例えば当該分野において使用されるもの、であることができ、任意的に、置換された炭化水素例えば直鎖又は分岐状の脂肪族、非環式又は芳香族炭化水素、例えば直鎖又は環状のアルカン、芳香族炭化水素及び/又はハロゲン含有炭化水素を含む。
【0079】
芳香族炭化水素の例は、トルエン、ベンゼン、エチルベンゼン、プロピルベンゼン、ブチルベンゼン及びキシレンである。トルエンは好ましい溶媒である。該溶液は1以上の溶媒を含んでいてもよい。即ち、そのような溶媒は、エマルジョンの形成を促進するために使用されることができ、通常固体化された粒子の一部を構成しないが、例えば固体化段階の後、連続相と一緒に除去される。
【0080】
あるいは、溶媒は固体化に参加してもよい、例えば高い融点、例えば40℃超、適切には70℃超、例えば80℃超、又は90℃超を有する不活性な炭化水素(ワックス)、が分散される相の溶媒として使用されて、触媒化合物を形成された滴内において固定化してもよい。
【0081】
別の実施態様において、溶媒は、液状モノマー、例えば「重合」固定化段階において重合されるように設計された液状オレフィンモノマー、から部分的又は完全になる。
【0082】
連続相
連続液相を形成するために使用される溶媒は、単独の溶媒又は種々の溶媒の混合物であり、少なくとも、分散段階の間に使用される条件(例えば温度)において触媒成分の溶液と非混和性であり得る。好ましくは、該溶媒は該化合物に関して不活性である。
【0083】
用語「該化合物に関して不活性」は、本明細書においては、連続相の溶媒が化学的に不活性である、即ち触媒を形成する如何なる成分とも化学反応を起こさないことを意味する。即ち、触媒の固体粒子は、分散された相から由来する即ち連続相へと分散された溶液におけるエマルジョンに与えられた化合物から、滴において形成される。
【0084】
固体触媒を形成するために使用された触媒成分は、連続液状相の溶媒に可溶ではないことが好ましい。好ましくは、該触媒成分は該連続相形成溶媒に本質的に不溶である。
【0085】
固体化は、本質的に、滴が形成された後に起きる、即ち固体化は滴の中において、例えば滴に存在する化合物の中で固体化させる反応を起こすことにより、実行される。さらに、たとえある種の固体化剤が該系に独立して添加されたとしても、それは滴の相の中で反応し、触媒形成成分は連続相に入って行かない。
【0086】
用語「エマルジョン」は本明細書において二相系及び多相系の両方を包含する。
【0087】
好ましい実施態様において、連続相を形成する該溶媒は、ハロゲン化有機溶媒又はそれらの混合物、好ましくはフッ素化有機溶媒、特に半、高度に、又は完全にフッ素化された有機溶媒及びそれらの官能化された誘導体を含む不活性溶媒である。上記の溶媒の例は、半、高度に、又は完全にフッ素化された炭化水素、例えばアルカン、アルケン、及びシクロアルカン、エーテル、例えばパーフルオロ化されたエーテル及びアミン、特に三級アミン、及びそれらのフッ素化された誘導体である。好ましいのは、半、高度に、又は完全にフッ素化された、特に完全にフッ素化された炭化水素、例えばC3〜C30、例えばC4〜C10のパーフルオロ炭化水素である。適切なパーフルオロアルカン及びパーフルオロシクロアルカンの特定な例は、パーフルオロ−ヘキサン、−ヘプタン、−オクタン及び−(メチルシクロヘキサン)を含む。半フッ素化された炭化水素は、特に半フッ素化されたn−アルカンに関する。
【0088】
「半フッ素化された」炭化水素は、−C−F及び−C−Hのブロックが交互に並んでいる炭化水素をもまた含む。「高度にフッ素化された」は、−C−H単位の大部分が−C−F単位で置き換えられていることを意味する。「完全にフッ素化された」は、全ての−C−H単位が−C−F単位で置換されていることを意味する。「Chemie in unserer Zeit」、第34巻、1月、2000年、第6号におけるA.Enders及びG.Maasの論文、及び「Advances in Colloid and Interface Science」,第56巻(1995年)第245〜287頁,Elsevier ScienceにおけるPierandrea Lo Nostroの論文を見られたい。
【0089】
分散段階
該エマルジョンは、当該技術において公知の任意の手段、即ち混合すること、例えば、連続相を形成する溶媒に該溶液を激しく撹拌すること、又は混合ミルにより、又は超音波により、又はまず、均一系を形成し、次に該均一系は、該系の温度を変化させることにより二相系に転移されて滴が形成されるところのエマルジョンを製造するためのいわゆる相変化法を使用することによって形成されることができる。
【0090】
該2つの相状態は、エマルジョン形成段階及び固体化段階の間、例えば適切な撹拌により維持される。
【0091】
追加的に、乳化剤/エマルジョン安定化剤が、エマルジョンの形成及び/又は安定性を促進するために好ましくは当該技術において公知の方法で使用されることができる。該目的のために、例えば界面活性剤、例えば炭化水素に基づく種類(例えば10000までの分子量を有するポリマー状炭化水素であって、任意的にヘテロ原子で中断されていてもよい炭化水素)好ましくはハロゲン化された炭化水素、例えば半又は高度にフッ素化された炭化水素であって、任意的に例えば、−OH,−SH,NH
2,NR’’
2,−COOH,−COONH
2,アルケンの酸化物、−CR’’=CH
2,ここでR’’は、水素、又はC1〜C20アルキル、C2〜C20アルケニル、若しくはC2〜C20アルキニル基、オキソ基、環状エーテル、及び/又はこれらの基の任意の反応性誘導体、例えばアルコキシ若しくはカルボン酸アルキルエステル基、又は好ましくは官能基化された末端を有する半、高度に又は完全にフッ素化された炭化水素、が使用されることができる。該界面活性剤は、触媒溶液に添加されることができ、該溶液はエマルジョンの分散された相を形成し、エマルジョンの形成を促進しかつエマルジョンを安定化させる。
【0092】
あるいは、乳化及び/又はエマルジョン安定化助剤は、少なくとも1の官能基を有する界面活性剤の前駆体を、該官能基と反応性がありかつ触媒溶液又は溶媒中に存在する化合物と反応させることによってまた形成されることができる。得られた反応生成物は、実際の乳化助剤及び/又は形成されたエマルジョン系での安定化剤として作用する。
【0093】
該反応生成物を形成するために使用可能な界面活性剤の前駆体の例は、例えば−OH,−SH,NH
2,NR’’
2,−COOH,−COONH
2,アルケンの酸化物、−CR’’=CH
2,ここでR’’は、水素、又はC1〜C20アルキル、C2〜C20アルケニル、若しくはC2〜C20アルキニル基、オキソ基、3〜5の環原子を有する環状エーテル、及び/又はこれらの基の任意の反応性誘導体基、例えばアルコキシ若しくはカルボン酸アルキルエステル基;例えば、1以上の該官能基を有する半、高度に又は完全にフッ素化された炭化水素から選択された少なくとも1の官能基を有する公知の界面活性剤を含む。好ましくは界面活性剤前駆体は上記の末端官能基を有する。
【0094】
そのような界面活性剤前駆体と反応する化合物は、好ましくは触媒溶液に含まれ、さらなる添加剤又は1以上の触媒形成化合物であり得る。そのような化合物は例えば第13族の化合物(例えば、MAO及び/又はアルミニウムアルキル化合物)及び/又は遷移金属化合物である。
【0095】
もし界面活性剤の前駆体が使用されるならば、好ましくは、遷移金属化合物の添加の前にまず触媒溶液の化合物と反応される。一つの実施態様において、例えば、高度にフッ素化されたC1〜n(適切にはC4〜30又はC5〜15)のアルコール(例えば高度にフッ素化されたヘプタノール、オクタノール、又はノナノール)、酸化物(例えばプロペンオキサイド)又はアクリレートエステルが共触媒と反応されて、「実際の」界面活性剤を形成する。次に、追加量の共触媒及び遷移金属化合物が、該溶液に添加されて、得られた溶液が連続相を形成する溶媒に分散される。「実際の」界面活性剤溶液は分散段階の前、又は分散された系において製造され得る。もし、該溶液が分散段階の前に作られるならば、該製造された「実際の」界面活性剤溶液及び遷移金属溶液は非混和性の溶媒に逐次的に分散され得るか(例えば界面活性剤溶液が先)、又は分散段階の前に一緒にされ得る。
【0096】
固体化
分散された滴における触媒成分の固体化は、種々の方法において、例えば、滴に存在する化合物の、固体触媒形成反応生成物の形成を引き起こす又は加速することにより、実行されることができる。これは、使用された化合物及び/又は所望される固体化速度に依存して、外部の刺激、例えば系の温度変化、のあり又はなしで実行されることができる。
【0097】
特に好ましい実施態様において、固体化はエマルジョン系が、該系を外部の刺激、例えば温度変化、例えば、5〜100℃、例えば10〜100℃又は20〜90℃、例えば50〜90℃の温度差に付すことにより形成された後に実行される。
【0098】
該エマルジョン系は速い温度変化に付されて、分散系における速い固体化を引き起こす。分散された相は、例えば直ちに(数ミリ秒〜数秒)温度変化に付されて、滴内の成分の瞬間的な固体化を達成してもよい。成分の所望される固体化のために必要とされる適切な温度変化、即ちエマルジョン系の温度における上昇又は低下、は、任意の特定の範囲に制限されることはできないが、当然にエマルジョン系に、即ち使用される化合物及びそれらの濃度/比、並びに使用された溶媒に依存し、それらに応じて選択される。任意の技術が使用されて、分散された系に十分な加熱又は冷却効果を与え、所望される固体化を引き起こすこともまた明らかである。
【0099】
一つの実施態様において、加熱又は冷却の効果は、ある温度のエマルジョン系を有意に異なる温度、例えば上記のような温度、の不活性な受容媒体にもっていき、そうすることにより該エマルジョン系の温度変化が十分になり、滴の速い固体化を引き起こすことにより得られる。該受容媒体は、気体、例えば空気、又は液体、好ましくは溶媒若しくは2以上の溶媒の混合物であることができ、ここで、触媒成分は非混和性であり、触媒成分に関して不活性である。例えば、該受容媒体は、第一のエマルジョン形成段階における連続相として使用される同じ非混和性の溶媒を含む。
【0100】
該溶媒は単独で又は他の溶媒、例えば脂肪族若しくは芳香族炭化水素、例えばアルカン、との混合物として使用されることができる。好ましくは、受容媒体としてのフッ素化された溶媒が使用され、それはエマルジョン形成における連続相、例えば完全にフッ素置換された炭化水素、と同じであり得る。
【0101】
あるいは、温度の差はエマルジョン系のゆっくりとした加熱により、例えば、毎分10℃、好ましくは毎分0.5〜6℃、より好ましくは毎分1〜5℃により実行され得る。
【0102】
例えば、炭化水素溶媒の溶融が分散相を形成するために使用される場合、滴の固体化は上記の温度差を使用して該系を冷却することにより実行され得る。
【0103】
好ましくは、エマルジョンを形成するために使用され得る該「一つの相」変化は、分散された系において温度変化を再び実行し、そうすることにより、滴において使用された溶媒が連続相、好ましくは上で定義されたフッ素系の連続相、と混和可能になり、その結果、滴がその溶媒について貧しくなり、「滴」の中に残っている固体化成分が固体化を始めることにより、エマルジョン系の滴内の触媒的に活性な含有物を固体化するために使用されることができる。即ち、非混和性は溶媒及び条件(温度)に関して調節されて、固体化段階を制御することができる。
【0104】
例えばフッ素系の溶媒の、有機溶媒との混和性が文献から見られることができ、従って当業者により選択されることができる。相変化に必要とされる臨界温度もまた文献から入手可能であり、当該技術分野において公知である方法、例えば、Hildebrand−Scatchard−理論を使用して決定されることができる。上で引用されたA.Enders及びG.及びPierandrea Lo Nostroの論文もまた参照されたい。
【0105】
即ち本発明に従うと、滴の全体又は一部のみが固体の形に転化され得る。例えば、予備重合段階が固体化段階として使用されるとき、予備重合化のために使用されるモノマーの量が相対的に大きいならば、「固体化された」滴のサイズは元の滴より小さいか又はより大きい。
【0106】
回収された固体触媒の粒子は、任意的な洗浄段階の後、オレフィンの重合工程において使用されることができる。あるいは、分離されそして任意的に洗浄された固体粒子は、重合段階における使用の前に、乾燥されて、該粒子に存在する溶媒を除去することができる。分離及び任意的な洗浄工程は、公知の方法、例えば濾過及び次の、適切な溶媒による固体の洗浄により、実行されることができる。
【0107】
粒子の滴の形状は実質的に維持され得る。形成された粒子は1〜500μm、例えば5〜500μm、有利には5〜200μm又は10〜150μmの範囲の平均サイズの範囲を有し得る。5〜60μmの平均サイズの範囲さえ、可能である。該サイズは触媒が使用される重合反応の性質に依存して選択され得る。有利には、該粒子は形状において基本的に球状であり、それらは低い多孔性及び低い表面積を有する。
【0108】
触媒溶液の形成は0〜100℃、例えば20〜80℃の温度において行われることができる。分散段階は、−20〜100℃、例えば約−10〜70℃、例えば−5〜30℃において、例えば約0℃において実行され得る。
【0109】
得られた分散物に、上で定義された乳化剤が添加されて、滴の形成を改善/安定化し得る。滴における触媒成分の固体化は好ましくは、混合物の温度を例えば0℃の温度から100℃へ、例えば60〜90℃まで、徐々に上昇させることにより実行される。例えば1〜180分、例えば1〜90分又は5〜30分、又は速い熱交換として行われる。加熱時間は反応器の大きさに依存する。
【0110】
約60〜100℃、好ましくは約70〜95℃(溶媒に沸点より下)において好ましくは行われる固体化段階の間、溶媒は好ましくは除去され得、任意的に固体は洗浄溶液で洗浄されてもよく、該洗浄溶液は任意の溶媒又は溶媒の混合物、例えば、上で定義されたもの及び/又は当該技術において使用されているもの、好ましくは炭化水素、例えばペンタン、ヘキサン又はヘプタン、適切にはヘプタン、であることができる。洗浄された触媒は、乾燥又はオイルにスラリー化され、そして重合工程における触媒−オイルスラリーとして使用されることができる。
【0111】
製造段階の全て又は一部が連続方法において行われることができる。エマルジョン/固体化法により製造された固体触媒タイプのそのような連続的又は半連続的製造方法を記載している国際公開第2006/069733号パンフレットを参照されたい。
【0112】
重合化
本発明の触媒を使用して重合化されるオレフィンは、好ましくはエチレン又はα−オレフィン又はエチレンとα−オレフィンとの混合物、又は複数のαオレフィン、例えばC
2〜20オレフィン、例えばエチレン、プロペン、1−ブテン、1−ヘキセン、4−メチル−1−ペンテン、1−オクテン等、の混合物である。本発明の方法において重合されたオレフィンは不飽和の重合化可能な基を含む任意の化合物を含み得る。即ち、例えば不飽和化合物、例えばC
6〜20オレフィン(環状又は多環式オレフィン(例えばノルボルネン)を含む)、及びポリエン、特にC
4〜20のジエン、が低級オレフィン、例えばC
2〜5α−オレフィンとのコモノマー混合物に含まれ得る。ジオレフィン(即ちジエン)は得られるポリマーに長い鎖の分岐を導入するのに適切に使用される。そのようなジエンの例は、α,ω直鎖のジエン、例えば1,5−ヘキサジエン、1,6−ヘプタジエン、1,8−ノナジエン、1,9−デカジエン等を含む。
【0113】
本発明の触媒は、ポリプロピレンポリマー、それらのホモポリマー又はコポリマーのいずれか、の製造における使用のために特に適切である。コモノマーとして好ましく使用されるのは、C4〜C12オレフィン、例えばブテン、ヘキセン、オクテン、又はそれらの任意の混合物である。
【0114】
本発明の方法における重合化は、慣用の重合化技術、例えば気相重合、溶液重合、スラリー重合又はバルク重合、を使用して1以上、例えば1,2、又は3の重合化反応器において実行され得る。
【0115】
一般的に、スラリー(又はバルク)と少なくとも1の気相反応器との組み合わせがしばしば好ましく、特に反応器の順番は、スラリー(又はバルク)、次に1以上の気相反応器である。
【0116】
スラリー反応器のためのプロピレン重合の場合、反応温度は一般的に60〜110℃(例えば60〜90℃)の範囲であり、反応器の圧力は一般的に5〜80バール(例えば25〜70バール)の範囲であり、滞留時間は一般的に0.3〜5時間(例えば0.5〜2時間)である。当該モノマーが通常反応媒体として使用される。
【0117】
気相反応器の場合、使用される反応温度は、一般的に60〜115℃(例えば60〜110℃)の範囲であり、反応器の圧力は一般的に10〜25バールの範囲であり、滞留時間は一般的に0.5〜8時間(例えば0.5〜4時間)である。使用される気体はモノマーであり、任意的に非反応性気体、例えば窒素、との混合物であってもよい。実際の重合化段階及び反応器に加えて、該工程は任意の追加的な重合段階、例えば予備重合段階、及び当該技術において公知の任意の更なるアフター反応器取扱段階を含むことができる。
【0118】
一般的には、使用される触媒の量は触媒の性質、反応器のタイプ及び条件並びにポリマー生成物に所望される性質に依存する。当該技術において周知であるように、水素はポリマーの分子量を制御するために使用されることができる。本発明の触媒が重合工程の間に使用される水素の濃度の広い範囲にわたって例外的によく行われ、そのことが、該触媒が広い範囲のポリマー製造に使用されるのに有益にする。これは本発明のさらなる特徴を構成する。本発明の触媒の活性は非常に高くもあり、ポリマー生産性のレベルは優秀である。
【0119】
本発明の触媒により製造される該ポリマーは、全ての種類の最終製品、例えばパイプ、フィルム、成型品(例えば射出成型品、ブロー成型品、回転成型品)、押出コーティング等において有用である。
【0120】
上に記載されたように、本発明の触媒は、低い鎖規則性及び低い融点を有するが、それでもなお相対的に高い結晶性、高い分子量及び非常に低いキシレン可溶分を有するポリプロピレン物質の形成を許す。この特徴の組み合わせは非常に魅力的であり、この特徴の組み合わせを達成することは以前には達成されていなかったと考えられる。
【0121】
即ち、別の特徴から見ると、本発明は147℃未満の融点、少なくとも1%の2,1エラーのパーセンテージ、及び0.5重量%未満のキシレン可溶画分を有するポリプロピレンホモポリマーを提供する。
【0122】
理想的には2,1エラーのパーセンテージは1.5%超である。ポリプロピレンの分子量は少なくとも300,000、好ましくは少なくとも400,000、特に少なくとも500,000であることができる。あるポリマーは少なくとも800,000の分子量(Mw)を有することができる。
【0123】
融点は145℃未満、例えば144℃、まで下げられることができる。融点の下限は好ましくは138℃例えば140℃である。
【0124】
キシレン可溶値は好ましくは非常に低く、例えば0.5重量%未満、特に0.35重量%未満である。
【0125】
さらに高度に好ましいポリマーは従って147℃未満の融点、少なくとも1%の2,1エラーのパーセンテージ、及び0.5重量%未満のキシレン可溶画分、及び少なくとも500,000のMwを有するポリプロピレンホモポリマーである。
【0126】
別の特徴から見ると、本発明は、上で定義したメタロセン触媒の存在においてプロピレンを重合させることを含む、147℃未満の融点、少なくとも1%の2,1エラーのパーセンテージ、及び0.5重量%未満のキシレン可溶画分を有するポリプロピレンホモポリマーの製造方法を提供する。
【0127】
本発明は、今以下の非制限的な実施例を参照して説明される。
【0128】
分析試験:
融点Tm[℃]及び結晶化温度Tc[℃]:
融点(Tm)、結晶化温度(Tc)は、5〜10mg、典型的には8±0.5mgの試料についてメトラーTA820示差走査熱量計(DSC)を使用して(ISO11357−3:1999に従って)測定された。結晶化及び融点曲線の両方が10℃/分の冷却及び30〜225℃の間の加熱走査の間に得られた。融点及び結晶化温度は吸熱及び発熱のピークとしてとられた。第二の加熱走査のピーク温度が融解温度T
mとしてとられた。
【0129】
メルトフローレート(MFR):
MFR
2及びMFR
21[g/10分]:ISO1133(230℃、それぞれ2.16及び21.6kg荷重)
【0130】
GPC:分子量平均、分子量分布、及び多分散性指数(Mn,Mw,MWD,PDI)
分子量平均(Mw,Mn)、分子量分布(MWD),及び多分散性指数により記載されるその広さ、PDI=Mw/Mn(ここでMnは数平均分子量でありかつMwは重量平均分子量である)は、ISO 16014−4:2003及びASTM D 6474−99に従って、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)により測定された。示差屈折率検出計及びオンライン粘度計を備えられたWatersのGPCV2000装置が、Tosoh Bioscience製の2本のGMHXL−HT及び1本のG7000HXL−HT TSK−ゲルカラム及び溶媒としての1,2,4−トリクロロベンゼン(TCB、250mg/Lの2,6−ジターシャリーブチル−4−メチル−フェノールで安定化されている)で、140℃及び1mL/分の一定のフローレートで使用された。1分析当たり209.5μLの試料溶液が注入された。カラムのセットは、1kg/モル〜12000kg/モルの範囲の少なくとも15の狭いMWDポリスチレン(PS)標準で、(ISO 16014−2:2003に従って)ユニバーサルキャリブレーションを使用して、校正された。使用されたPS,PE、及びPPのためのMark Houwink定数はASTM D6474−99による。すべての試料は、0.5〜4.0mgのポリマーを4mL(140℃における)の安定化されたTCBに溶解させ、GPC装置にサンプリングする前に、連続的に静かに振動させながら最大160℃において最大3時間保つことにより調製された。
【0131】
固有粘度
ポリマー試料は、1mg/mlの濃度及び135℃の温度においてデカリンにおいて溶解された。薄いポリマー溶液の相対粘度はIS01628−1に従って、自動化ウベローデ毛細管粘度計;LAUDA PVSlを使用して測定された。溶解されたポリマー溶液の相対粘度は該ポリマー溶液の測定された動粘度:純粋な溶媒の比として決定された。固有粘度は、ハギンスの式及び公知のハギンスの定数の使用により、既知の濃度における単独の粘度測定から計算された。
【0132】
13C NMR
定量的溶液状態
13C{
1H}核磁気共鳴(NMR)スペクトルが、
1H及び
13Cそれぞれについて400.15及び100.62MHzで稼働している9.4T超電導標準ボアマグネットを有するブルッカーのアヴァンスIII400NMRスペクトロメーターを使用して記録された。約200mgの物質が、10mmのNMRチューブの中で、約3mlのl,l,2,2−テトラクロロエタン−d
2(TCE−d
2)に溶解された。測定は、全てのニューマチックに窒素ガスを有する、
13C最適化された10mmの選択的励起プローブヘッドを使用して125℃において行われた。データはNOE及びバイレベルのWALTZ16デカップリングスキームで、標準の90°シングルパルス励起を使用して獲得された。3秒のサイクル遅延及び1.6秒の獲得時間を使用して、合計で6144のトランジェントがスペクトルごとに獲得された。
【0133】
トリアドレベル及び位置エラーにおけるタクチシティの分布は、V.Busico及びR.Cipullo,Progress in Polymer Science,2001年,第26巻,第443〜533頁におけるような基本的な帰属の後、かつC.De Rosa, F.Auriemma,M.Paolillo,L.Resconi,I.Camurati,Macromolecules,2005年,第38巻(第22号),9143〜9154頁に記載された方法に基づいて定量的
13C{
1H}NMRスペクトルから決定された。
ペンタアド分布の定量は、
13C{
1H}スペクトルにおけるメチル領域の積分を通して行われ、適切なときには関心のある立体配列、例えば誤挿入、に関連しないサイトについて修正された。
【0134】
キシレン可溶物
2.0gのポリマーが撹拌下、135℃において250mlのp−キシレンに溶解される。30分後、該溶液は環境温度において15分間冷却することを許され、次に30分間25℃において沈殿することを許される。該溶液は濾紙を使用して2つの100mlフラスコに濾過される。第一の100mlの容器からの溶液は窒素フローにおいて気化され、残さは定常的な重さに到達するまで、真空下、90℃において乾燥される。
XS%=(100−m−Vo)/(mo−v);mo=最初のポリマーの量(g);m=残さの重さ(g);Vo=最初の体積(ml);v=分析された試料の体積(ml)。
【0135】
Al及びZrの決定(ICP−法)
触媒の元素分析は、質量Mの固体試料をとり、ドライアイス上で冷却することにより行われた。試料は、既知の体積、V、まで硝酸(HNO
3,65%、Vの15%)及び脱イオン化したての(DI)水(Vの5%)、に溶解させることにより希釈された。次に該溶液はフッ化水素酸(HF,40%,Vの3%)に添加され、DI水で最終体積、V,まで希釈され、2時間安定化のために放置された。分析はサーモエレメンタルIRIS アドヴァンテージ XUV誘導結合プラズマ原子発光分光装置(ICP−AES)を使用して室温において行われた。該分光装置は、分析の直前に、ブランク(DI水中の5%HNO
3,3%HFの溶液)。低い標準(DI水中の5%HNO
3,3%HFの溶液中の10ppmのAl)、高い標準(DI水中の5%HNO
3,3%HFの溶液中の50ppmのAI,20ppmのZr)及び品質コントロール試料(DI水中の5%HNO
3,3%HFの溶液中の20ppmのAI,10ppmのZr)を使用して行われた。ジルコニウムの含有量は、339.198nmの線を使用して、アルミニウムの含有量は396.152nmの線で、そしてカリウムは766.490nmの線を使用して監視された。報告されている値(0〜100の間であることが必要とされており、そうでなければさらなる希釈が必要される)は、同じ試料から採取された3つの連続する一定分量の平均であり、式1を使用して元の触媒に関連付けられる。
ここでCは、ppmにおける濃度であり、10,000の因子により%の含有量に関連付けられる、
RはICP−AESからの報告された値であり
Vはmlにおける希釈の合計体積であり、
Mはgにおける試料の元の質量である。
【0136】
もし希釈が必要ならば、そうすると、これもまた、希釈因子によるCの乗算により考慮に入れられる必要がある。
【実施例】
【0137】
化学物質:(rac−ジメチルシリル−ビス(2−メチル−4−フェニル−5−メトキシ−6−tert−ブチリデン−l−イル)ジクロロジルコニウム,M=801.08g/モル)は、国際公開第2007/116034号パンフレットに記載されたように製造された。その
1HNMRスペクトルが、上記の特許出願に報告されている一つに相当することが確認された。その構造は下に示される。
【0138】
MAOはアルベマーレから購入され、30重量%のトルエン溶液として使用された。パーフルオロアルキルエチルアクリレートエステル(CAS番号65605−70−1)は、シトニックス社から購入され、乾燥され、使用の前に脱気された。ヘキサデカフルオロ−1,3−ジメチルシクロヘキサンが乾燥され、乾燥され、使用の前に脱気された。プロピレンはボレアリスにより提供され、使用前に十分に精製された。トリエチルアルミニウムはクロンプトンから購入され、純粋な形で使用された。水素はAGAにより提供され、使用前に精製された。
【0139】
すべての化学物質及び化学反応は、オーブンで乾燥されたガラス器具、シリンジ又は針を用いて、シュレンク及びグローブボックス技術を使用して不活性ガス雰囲気下において取り扱われた。
【0140】
実施例1(本発明):
外部担体を含まない固体粒子の形態の触媒は、国際公開第2003/051934号パンフレットの実施例5に記載された手順に従って、連続相としてヘキサデカフルオロ1,3−ジメチルシクロヘキサン、界面活性剤前駆体として種々のパーフルオロアルキル鎖の長さを有するパーフルオロアルキルエチルアクリレートエステルの混合物及びメタロセンとして(rac−ジメチルシリル−ビス(2−メチル−4−フェニル−5−メトキシ−6−tert−ブチリデン−l−イル)ジクロロジルコニウムを使用して製造された。
【0141】
詳細な触媒の製造は以下のように行われた:
グローブボックスの中で、80μLの乾燥しかつ脱気されたパーフルオロアルキルエチルアクリレートエスエルがセプタムボトルの中で2mLのMAOと混合され、放置されて終夜、反応した(界面活性剤溶液)。次の日、60.60mgのメタロセンが別のセプタムボトルにおいて4mLのMAO溶液に溶解され、グローブボックスの中で放置され撹拌された(触媒溶液)。
【0142】
60分後、4mLの触媒溶液及び1mLの界面活性剤溶液が、−10℃における40mLのヘキサデカフルオロ−1,3−ジメチルシクロヘキサンを含み、オーバーヘッド撹拌機(撹拌速度=600rpm)を備えられた50mLの乳化ガラス反応器に逐次的に添加された。赤〜橙のエマルジョンが直ちに形成し(測定されたエマルジョン安定性=14秒)、0℃/600rpmにおいて15分間撹拌された。次に、エマルジョンは2/4テフロン(登録商標)チューブにより90℃における100mLの熱いヘキサデカフルオロ−1,3−ジメチルシクロヘキサンに移動され、移動が完了するまで、600rpmにおいて撹拌された。撹拌速度は300rpmまで下げられ、油浴が外された。撹拌が室温においてもう15分間、続けられた。撹拌機のスイッチを切ったとき、触媒は放置されて連続相のトップに沈殿し、45分後にサイホンで吸い出された。残った赤い固体の触媒は2時間50℃においてアルゴンフローの上で乾燥された。0.39gの赤い自由な、流動する粉末が得られた。
【0143】
比較例1:
本発明の触媒は、連続相としてヘキサデカフルオロ−1,3−ジメチルシクロヘキサン、界面活性剤前駆体として種々のパーフルオロアルキル鎖の長さを有するパーフルオロアルキルエチルアクリレートエステルの混合物、及びメタロセンとしてrac−シクロヘキシル(メチル)シランジイルビス[2−メチル−4−(4’−tert−ブチルフェニル)インデニル]ジルコニウムジクロライドを用いて上記の手順に従って製造された、外部担体を含まない固体粒子の形態の触媒と比較された(比較例1)。
【0144】
触媒の結果は表1に開示される。
【0145】
【0146】
重合化:
プロピレンのホモ重合化
重合化は5Lの反応器において行われた。200μlのトリエチルアルミニウムが5mLの乾燥しかつ脱気されたペンタン中に捕捉剤として供給された。次に(ミリモルで測定されて)所望される量の水素が投入され、1100gの液状プロピレンが反応器に供給された。温度は30℃にセットされた。5mLのヘキサデカフルオロ−1,3−ジメチルシクロヘキサン中の所望される量の触媒(7〜30mg)が窒素の過剰圧力で反応器に勢いよく入れられる。次に温度が15分に亘って、70℃まで上昇される。重合化は、反応器をベントすること及びポリマーが集められる前の窒素でのフラッシングにより30分後に停止される。
【0147】
重合化の結果及びポリマーの分析は表2に示されている。
【0148】
比較例2
本発明の触媒は、国際公開第2007/116034号パンフレットの実施例5及び6、即ち溶液重合におけるMAOを有する触媒、ともまた比較される。
【0149】
DSC分析は、本発明の固体粒状触媒で得られたポリマーは、同じ触媒錯体であるが、溶液重合において得られたポリマーとは異なることを明確に示す(表3)。バルクプロピレンにおいて70℃で製造された本発明のポリマー(エントリー1〜5、表2)は、プロピレンとシクロヘキサンとの液状混合物においてそれぞれ100℃及び120℃において製造された国際公開第2007/116034号パンフレットの実施例5及び6より低い融点を示す。
【0150】
この、より低い融点は国際公開第2007/116034号パンフレットの実施例5及び6と比較してNMR分光学により識別された2,1位置エラーのより高い量(表2を参照のこと)により説明されることができる(1.7%vs.0.6%)。即ち、本発明の触媒により形成されたポリマーはより低位に位置規則的である。
【0151】
【0152】