【実施例】
【0034】
以下、実施例等により本発明をさらに具体的に説明するが、本発明の範囲はこれらの実施例等に限定されるものではない。
【0035】
〔実施例1〕
フェニル変性シリコーン樹脂およびポリメチルハイドロジェンシロキサン(架橋剤)の混合物である、質量平均分子量344000の付加反応型オルガノポリシロキサン(剥離剤組成物A)を、固形分30質量%となるようにトルエンで希釈して、シリコーン樹脂溶液Aを調製した。このシリコーン樹脂溶液A100質量部に白金系触媒(信越化学工業社製,PL−50T)2質量部を加え、トルエンで固形分濃度が1.2質量%となるように調整し、塗工液を得た。上記剥離剤組成物Aにおける官能基・置換基およびそれらの含有量を表1に示す。
【0036】
得られた塗工液を、乾燥後の膜厚が坪量0.07g/m
2となるように、基材としてのポリエチレンテレフタレートフィルム(三菱ポリエステルフィルム社製,T−300,厚さ:38μm)上にバーコート法により均一に塗布した後、130℃で1分間乾燥させ、基材上に剥離剤層が積層された剥離フィルムを得た。
【0037】
〔実施例2〕
両末端トリビニル変性シリコーン樹脂、分岐状ビニル変性シリコーンオリゴマーおよびポリメチルハイドロジェンシロキサン(架橋剤)との混合物である、質量平均分子量287000の付加反応型オルガノポリシロキサン(剥離剤組成物B)を、固形分30質量%となるようにトルエンで希釈して、シリコーン樹脂溶液Bを調製した。このシリコーン樹脂溶液B100質量部に白金系触媒(信越化学工業社製,PL−50T)2質量部を加え、トルエンで固形分濃度が1.5質量%となるように調整し、塗工液を得た。上記剥離剤組成物Bにおける官能基・置換基およびそれらの含有量を表1に示す。
【0038】
得られた塗工液を、乾燥後の膜厚が坪量0.09g/m
2となるように、基材としてのポリエチレンテレフタレートフィルム(三菱ポリエステルフィルム社製,T−300,厚さ:38μm)上にバーコート法により均一に塗布した後、130℃で1分間乾燥させ、基材上に剥離剤層が積層された剥離フィルムを得た。
【0039】
〔実施例3〕
フェニル変性シリコーン樹脂およびポリメチルハイドロジェンンシロキサン(架橋剤)の混合物である、質量平均分子量341000の付加反応型オルガノポリシロキサン(剥離剤組成物C)を、固形分30質量%となるようにトルエンで希釈して、シリコーン樹脂溶液Cを調製した。このシリコーン樹脂溶液C100質量部に白金系触媒(信越化学工業社製,PL−50T)2質量部を加え、トルエンで固形分濃度が1.2質量%となるように調整し、塗工液を得た。上記剥離剤組成物Cにおける官能基・置換基およびそれらの含有量を表1に示す。
【0040】
得られた塗工液を、乾燥後の膜厚が坪量0.07g/m
2となるように、基材としてのポリエチレンテレフタレートフィルム(三菱ポリエステルフィルム社製,T−300,厚さ:38μm)上にバーコート法により均一に塗布した後、130℃で1分間乾燥させ、基材上に剥離剤層が積層された剥離フィルムを得た。
【0041】
〔比較例1〕
両末端トリビニル変性シリコーン樹脂、分岐状ビニル変性シリコーンオリゴマーおよびポリメチルハイドロジェンシロキサン(架橋剤)との混合物である、質量平均分子量287000の付加反応型オルガノポリシロキサン(剥離剤組成物B)を、固形分30質量%となるようにトルエンで希釈して、シリコーン樹脂溶液Bを調製した。このシリコーン樹脂溶液B100質量部に白金系触媒(信越化学工業社製,PL−50T)2質量部を加え、トルエンで固形分濃度が1.5質量%となるように調整し、塗工液を得た。
【0042】
得られた塗工液を、乾燥後の膜厚が坪量0.07g/m
2となるように、基材としてのポリエチレンテレフタレートフィルム(三菱ポリエステルフィルム社製,T−300,厚さ:38μm)上にバーコート法により均一に塗布した後、130℃で1分間乾燥させ、基材上に剥離剤層が積層された剥離フィルムを得た。
【0043】
【表1】
【0044】
〔試験例1〕(エタノール液滴移動時間の測定)
傾斜45℃に傾けたガラス板に、実施例および比較例で得られた剥離フィルムを貼付した。そして、温度23℃、湿度50%の条件下で、エタノール(関東化学社製,エタノール(99.5))12.0mg(研精工業社製の電子天秤「ER−182−A」を用いて計量)を、ガラス管を用いて剥離フィルムの剥離剤層表面に滴下し、滴下地点から液滴が100mm移動した時間(秒)を測定した。結果を表2に示す。
【0045】
〔試験例2〕(塗工幅収縮率の評価)
BaTiO
3(堺化学工業社製,BT−03)100質量部、ポリビニルブチラール(積水化学工業社製,エスレックB・K BM−2)10質量部、フタル酸ジオクチル(関東化学社製,フタル酸ジオクチル 鹿1級)5質量部、トルエン69質量部およびエタノール46質量部を混合したセラミックスラリーを、乾燥後の膜厚が4μmになるように剥離フィルムの剥離剤層表面に25μmアプリケーターを用いて塗布し、その後、温度23℃、湿度50%の条件で1時間乾燥させた。温度23℃、湿度50%の条件下で、デジタルマイクロメーター(ミツトヨ社製,MODEL AT112)を用いて塗工幅を測定し、下記の式(1)を用いて塗工幅収縮率(%)を算出した。結果を表2に示す。
塗工幅収縮率={(B−A)/A}×100 ・・・(1)
A:剥離フィルムの剥離剤層表面にセラミックスラリーを塗工した後、乾燥前の塗工幅
B:剥離フィルムの剥離剤層表面にセラミックスラリーを塗工し、乾燥させた後の塗工幅
【0046】
〔試験例3〕(グリーンシート剥離性の評価)
BaTiO
3(堺化学工業社製,BT−03)100質量部、ポリビニルブチラール(積水化学工業社製,エスレックB・K BM−2)10質量部、フタル酸ジオクチル(関東化学社製,フタル酸ジオクチル 鹿1級)5質量部、トルエン69質量部およびエタノール46質量部を混合したセラミックスラリーを、乾燥後の膜厚が4μmになるように剥離フィルムの剥離剤層表面に25μmアプリケーターを用いて塗布した。その後、60℃で1分間乾燥させることで、厚さ4μmのセラミックグリーンシートが得られ、これをサンプルとした。
【0047】
得られたサンプルを、室温23℃、湿度50%の雰囲気下に24時間置いた。次に、サンプルの中心部を100mm×70mmの大きさにカットし、幅100mmの一方の端辺に、セラミックグリーンシート側から長さ100mmのアクリル粘着テープ(日東電工社製,31Bテープ)を貼付した。このサンプルを、剥離フィルムを下にして平版に貼付し、アクリル粘着テープを貼付した側を下側にして45°に傾け、剥離試験機(島津製作所社製,AG−IS 500N)に設置した。そして、セロハン粘着テープを貼付した端辺の剥離フィルムをセラミックグリーンシートから剥がし、アクリル粘着テープ側を剥離試験機の治具に取り付けた。この状態にて、剥離速度200mm/minでアクリル粘着テープを垂直方向上方に引っ張り、剥離力(mN/100mm)を測定した。結果を表2に示す。なお、本発明におけるセラミックグリーンシート成型用剥離フィルムとして好ましい剥離力は、用途によっても異なるが、4〜20mN/100mm程度、より好ましくは、10〜18mN/100mm程度の範囲内である。
【0048】
また、上記剥離力の測定と併せて、上記剥離試験時におけるセラミックグリーンシートからの剥離フィルムの剥離性について評価した。剥離試験時にセラミックグリーンシートが破れなかったものを「良」、破れたものを「悪」とした。結果を表2に示す。
【0049】
〔試験例4〕(液滴接触角の測定)
実施例および比較例で得られた剥離フィルムの剥離剤層表面における2μlのエタノールおよび水の液滴接触角を、協和界面科学社製の全自動接触角計DM−701を使用して測定した。具体的には、温度23℃、湿度50%の環境下で、傾きを0度にした平坦なガラス基板上に剥離フィルムを静止させ、2μlのエタノール(関東化学社製,エタノール(99.5))または水(共栄製薬社製,精製水)の液滴を剥離フィルムの剥離剤層表面上に滴下し、液滴が静止した3秒後に、液滴接触角を求めた。結果を表2に示す。
【0050】
【表2】
【0051】
表2に示される実施例1〜3の結果より、エタノール12.0mgの液滴の移動時間が3.4秒以上で、塗工幅収縮率が低下する傾向にあり、耳高が抑制され、したがって塗工性が良好であることが理解できる。
【0052】
一方、比較例1の結果より、エタノール12.0mgの液滴の移動時間が3.4秒未満になると、塗工幅収縮率が高くなる傾向にあり、耳高が発生し、したがって塗工性が悪化することが理解できる。
【0053】
以上のことから、45°に傾斜させた剥離フィルムの剥離剤層表面にエタノール12.0mgを滴下させ、当該エタノールの液滴が100mm移動するのに要する時間が3.4秒以上であるセラミックグリーンシート成型用剥離フィルムは、塗工性に優れることが分かる。
【0054】
なお、表2に示される結果より、2μlのエタノールまたは水の液滴接触角と、塗工幅収縮率・耳高との相関関係は見られなかった。