(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
継手本体の内周面と継手本体内に一体又は別体に設けた円筒コア部の外周面との間のパイプ挿入口を防塵する継手用防塵キャップであって、円形薄板の一側面に形成した環状中空溝から成る環状突起部と、この環状突起部の外周に形成した外環フランジ面と、前記環状突起部の内側に形成した凹部面とによりキャップ体を構成し、前記環状突起部を前記パイプ挿入口に嵌着し、前記外環フランジ面を継手本体の外端面に当接させると共に、内外径の異なるパイプを接合する継手であり、前記環状突起部の外径を前記パイプ挿入口の内周に嵌着するか、または、前記環状突起部の内径を円筒コア部の外周に嵌着するようにしたことを特徴とする継手用防塵キャップ。
継手本体の外端面をすり鉢面を形成した継手であって、前記キャップ体の凹部面を押圧した際、前記すり鉢面に前記キャップ体の外環フランジ面をすり鉢状に反った状態で当接させた請求項1又は2に記載の継手用防塵キャップ。
円形薄板の一側面に形成した環状中空溝から成る環状突起部と、この環状突起部の外周に形成した外環フランジ面と、前記環状突起部の内側に形成した凹部面とによりキャップ体を構成し、前記環状突起部を継手本体のパイプ挿入口に嵌着し、前記外環フランジ面を継手本体の外端面に当接させることを特徴とする継手用防塵キャップ。
パイプに挿嵌する円筒コア部を継手本体内に収容した継手であって、前記円筒コア部を継手本体の内部に収容した状態で、前記環状突起部を円筒コア部内に嵌着し、前記外環フランジ面を円筒コア部の外端面と継手本体の外端面に当接した請求項4に記載の継手用防塵キャップ。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、栓体状のキャップのうち、特許文献1のような継手端部の外周側に装着されるキャップは、材料の弾性特性を利用して継手に外嵌させているため、射出成形時の寸法のバラツキにより寸法精度上の問題が生じて嵌合が強く又は弱くなり過ぎることがある。このため、このキャップを継手に着脱しにくくなったり、装着後のキャップが緩みやすくなって継手から外れたりするおそれがあった。
継手端部の内周側に装着されるキャップの場合には、継手内周側への嵌合部分が有蓋の円筒部であるため、内径や外径方向への弾性力を得ることが難しくなり継手に嵌合する力が弱くなる。このため、このキャップは、継手への密着力が弱くなって塵や埃の浸入を防ぐことが難しくなったり継手から外れやすくなっていた。
【0007】
一方、同文献2の継手では、パイプの挿入量の明示手段を兼用する粘着シール部材により防塵性を得ようとしているものの、この粘着シール部材を防塵手段として継手に貼付ける場合、目視により継手の円筒端面中央部に合わせながら貼付ける必要があるため貼付け作業に手間が掛かっていた。パイプの接合作業時にも、配管作業者が粘着シール部材を継手端面から両手作業により剥がす必要があるため手間を要していた。更に、この粘着シール部材を、接合後のパイプと継手とのシール性に悪影響を及ぼすことのない材質により設ける必要がある。
【0008】
同文献3における防塵キャップは、コア内径部に挿入されているだけであるためコア内径部への嵌合力が弱く、その結果、この防塵キャップと継手端部との間に隙間が生じて防塵性に劣ることがある。更に、同文献2と同様に、パイプの挿入量の明示手段として粘着シール部材を貼付ける場合には作業に手間が掛かり、パイプの接合作業時にもこの粘着シール部材を剥がす手間が掛かっていた。更に、この防塵キャップは、射出成形が必要な形状であるため金型製作に費用もかかっていた。
【0009】
本発明は、上記の課題点を解決するために開発したものであり、その目的とするところは、継手との隙間を塞いで密着性を向上させた状態で継手のパイプ挿入側に強固に装着して高い防塵性を発揮でき、ワンタッチで容易に着脱できる継手用防塵キャップを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するため、請求項1に係る発明は、継手本体の内周面と継手本体内に一体又は別体に設けた円筒コア部の外周面との間のパイプ挿入口を防塵する継手用防塵キャップであって、円形薄板の一側面に形成した環状中空溝から成る環状突起部と、この環状突起部の外周に形成した外環フランジ面と、環状突起部の内側に形成した凹部面とによりキャップ体を構成し、環状突起部をパイプ挿入口に嵌着し、外環フランジ面を継手本体の外端面に当接させると共に、内外径の異なるパイプを接合する継手
であり、前記環状突起部の外径を前記パイプ挿入口の内周に嵌着するか、または、前記環状突起部の内径を円筒コア部の外周に嵌着するようにした継手用防塵キャップである。
【0011】
請求項2に係る発明は、凹部面の外面を外環フランジ面の外面よりキャップ体の他側面にやや突設させた継手用防塵キャップである。
【0012】
請求項3に係る発明は、継手本体の外端面をすり鉢面を形成した継手であって、キャップ体の凹部面を押圧した際、すり鉢面にキャップ体の外環フランジ面をすり鉢状に反った状態で当接させた継手用防塵キャップである。
【0014】
請求項
4に係る発明は、円形薄板の一側面に形成した環状中空溝から成る環状突起部と、この環状突起部の外周に形成した外環フランジ面と、環状突起部の内側に形成した凹部面とによりキャップ体を構成し、環状突起部を継手本体のパイプ挿入口に嵌着し、外環フランジ面を継手本体の外端面に当接させる継手用防塵キャップである。
【0015】
請求項
5に係る発明は、パイプに挿嵌する円筒コア部を継手本体内に収容した継手であって、円筒コア部を継手本体の内部に収容した状態で、環状突起部を円筒コア部内に嵌着し、外環フランジ面を円筒コア部の外端面と継手本体の外端面に当接した継手用防塵キャップである。
【0016】
請求項
6に係る発明は、キャップ体は、樹脂製円形薄板を真空成形によって製造した継手用防塵キャップであ
り、請求項7に係る発明は、このキャップを用いた継手である。
【発明の効果】
【0017】
請求項1に係る発明によると、キャップ体に環状突起部を設け、この環状突起部を継手のパイプ挿入口に嵌着し、外環フランジ面を継手本体の外端面に当接させてパイプ挿入口を防塵しているので、環状突起部により継手との隙間を塞いで密着性を向上させ、高い防塵性を発揮させながら強固に継手に装着できる。
継手への装着時には、パイプ挿入口外周面により環状突起部がガイドされることで位置合わせすることなく容易に所定位置に装着できる。一方、取外し時には、外環フランジ面に爪や指を差し込むことで容易に取外しできる。このように、片手で簡単にワンタッチ着脱できる。
更に、外環フランジ面によって管端部を塞いで防塵する構造であるため、継手本体のキャップ装着側外周面に印字情報がある場合、この印字情報が防塵キャップにより塞がれることがない。外観フランジ面を小径に形成できるため、使用材料を少なくして省資源化にも寄与できる。しかも、成形時の寸法のバラツキを吸収できるため、製作時の寸法精度を緩和して容易に大量生産することもできる。
しかも、同じ呼び径で内外径の異なるパイプを接合するために、パイプ挿入口径の異なる継手が使用された場合において、外径の小さいパイプ用の継手のときには環状突起部の外径がパイプ挿入口の内周に嵌着し、外径の大きいパイプ用の継手のときには環状突起部の内径が円筒コア部の外周に嵌着できるため、パイプ挿入口径の異なる継手に対して1種類の防塵キャップを共通利用でき、その際、何れの口径の場合にも、自然の緩みや抜け出しが防がれ、高い防塵性を発揮した状態で装着できる。
【0018】
請求項2に係る発明によると、継手に挿入した状態から凹部面を押圧することにより環状突起部をパイプ挿入口内にさらに押し込み、この押し込みによって外環フランジ面をパイプ挿入口に強く当接させて、外環フランジ面とパイプ挿入口との密着性を高めることにより、高い防塵性を発揮することができる。
【0019】
請求項3に係る発明によると、凹部面の押圧により、外環フランジ面をすり鉢状に反った状態ですり鉢面に当接させることで、継手の外端側と外環フランジ面端部との間にV字状の開口部位を開口させ、この隙間に爪や指を差し込んで片手の動作で容易にキャップを取外すことが可能になる。
【0021】
請求項
4に係る発明によると、パイプ挿入口の内周面にパイプをシール接続する外周シール構造の継手本体に装着する場合でも、環状突起部により継手との隙間を塞いで密着性を向上させ、高い防塵性を発揮させながら強固に継手に装着できる。
継手への装着時には、パイプ挿入口外周面により環状突起部がガイドされることで位置合わせすることなく容易に所定位置に装着できる。一方、取外し時には、外環フランジ面に爪や指を差し込むことで容易に取外しできる。このように、片手で簡単にワンタッチで着脱できる。
更に、外環フランジ面によって管端部を塞いで防塵する構造であるため、継手本体のキャップ装着側外周面に印字情報がある場合、この印字情報が防塵キャップにより塞がれることがない。外観フランジ面を小径に形成できるため、使用材料を少なくして省資源化にも寄与できる。しかも、成形時の寸法のバラツキを吸収できるため、製作時の寸法精度を緩和して容易に大量生産することもできる。
【0022】
請求項
5に係る発明によると、パイプに嵌挿する円筒コア部を継手本体内部に収容した状態でキャップを着脱でき、環状突起部を円筒コア部内に嵌着した状態で、外環フランジ面を円筒コア部の外端面と継手本体の外端面に当接することで、円筒コア部の抜け出しを防いだ状態でキャップを強固に装着して高い防塵性を発揮する。
【0023】
請求項
6に係る発明によると、射出成形品に比較して金型を容易に設けることができ、取数を大きくすることも容易になるため、真空成形時のコストを大幅に抑えることもできる。製作時には、シボ加工や、シルク印刷されたシートなどを成形して表面に各種の装飾を施したり機能性を持たせることも可能であり、更に、継手の口径や材料等に応じて肉厚を広い範囲で設定することも容易であるため、各種の継手に対して対応可能である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下に、本発明における継手用防塵キャップの好ましい実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。
図1においては、本発明の継手用防塵キャップを継手本体から取外した状態を示しており、
図2においては、
図1の継手用防塵キャップを継手本体に装着した状態を示している。
【0026】
先ず、便宜上、本発明の継手用保護キャップが装着される継手の好ましい実施形態を述べる。継手本体1は、給水・給湯用の接合用のパイプPを抜け止め状態で接合可能に形成される。接合用パイプPは、例えば、架橋ポリエチレン管やポリブテン管の樹脂管から成っているが、これら以外にも、金属強化ポリエチレン管などの樹脂管、或は、銅管等の金属管などであってもよい。この場合、樹脂管は、同じ呼び径のパイプPであっても外径、内径が異なる場合があり、例えば、呼び径16AのサイズのパイプPの場合、外径−内径が、φ21.5mm−φ16.2mm、φ21.5mm−φ15.6mm、φ22.0mm−φ16.8mmの場合がある。このうち、外径φ21.5mm−内径φ16.2mm、外径φ21.5mm−内径φ15.6mmのパイプPは、架橋ポリエチレン管であり、外径φ22.0mm−内径φ16.8mmのパイプPはポリブテン管である。
【0027】
図1ないし
図5において、継手本体1は、後述する、いわゆる内周シール構造によってパイプPを接合可能な構造になっており、継手部2、円筒コア部3、外筒4、蓋部材5、ロックリング6、Oリングからなるシール部材7、挿入ガイド15を有している。
【0028】
図4、
図5において、継手部2は、例えば、銅合金などの金属、又はPPS(ポリフェニレンサルファイド樹脂)などの剛性の高い樹脂で筒状に形成され、内部に通水用の流路口2aを有している。この継手部2には円筒コア部3が一体に形成され、かつ、外筒4が取付けられている。
【0029】
円筒コア部3は、継手部2のパイプP接合側に、このパイプPの内径に応じた所定の外径に設けられている。この場合、円筒コア部3の外径は、前記した同じ呼び径の架橋ポリエチレン管のパイプPとポリブテン管のパイプPとでは異なる。例えば、呼び径16A用の継手本体1の場合、架橋ポリエチレン管用の円筒コア部3の外径は、架橋ポリエチレン管の内径と略同径のφ16.2mmとなり、ポリブテン管用の円筒コア部3の外径は、ポリブテン管の内径と略同径のφ16.8mmに形成される。円筒コア部3は、継手部2と別体であってもよく、この場合には、別体に設けた円筒コア部を継手本体1内に収容した状態でこの円筒コア部の脱落を防ぐ構造に設けるようにすればよい。
円筒コア部3の外周面8と外筒4及び蓋部材5により構成される内周面9との間にはパイプ挿入口10が形成され、このパイプ挿入口10にパイプPが挿入されて接合される。
【0030】
円筒コア部3の外周面8におけるロックリング6との対向位置には装着溝11、11が2箇所に形成され、この装着溝11に、例えば、EPDM等のゴム製のOリング7が装着されている。図示しないが、Oリング7にはパイプPの挿入を円滑にするための潤滑材が塗布され、このOリング7によりパイプPの内周面と継手本体1とが密封シールされる。
【0031】
継手部2の外周囲には凹凸状の係合部12が形成され、この係合部12に外筒4が取付けられる。継手部2の円筒コア部3との他方側には雄ネジ部13が設けられ、この雄ネジ部13には図示しないヘッダーや接続部材、或はその他の外部配管が接続可能になっている。継手部2は、図示したような直線形状以外にも、例えば、チーズ形状やエルボ形状などであってもよい。
【0032】
外筒4は、例えば、非結晶性ナイロンやPPSU(ポリフェニルサルフォン樹脂)など透明或は半透明の樹脂により形成される。そのため、外筒4の外部よりパイプPや挿入ガイド15の挿入状態を透視可能になっている。
【0033】
外筒4の継手部2への取付け内周側には、この継手部2の係合部12とスナップ嵌合可能な係合部16が設けられている。外筒4の他端側の外周側には、凹凸状の係合段部17が設けられている。外筒4は、係合部12、16のスナップ嵌合により継手部2と一体化され、その嵌合後には外筒4と継手部2とが相互に回転可能になる。図示しないが、外筒4の内径は、挿入ガイド15の外径の寸法と略同じ寸法に設けられている。外筒4の入口側内周には内向きのテーパ面18と、このテーパ面18になだらかにつながるR面19が形成されている。
【0034】
蓋部材5は、例えば、引張り弾性率が外筒4よりも高く、透明性を有するポリアセタールなどの樹脂によりキャップ状に形成されている。蓋部材5の外端面20にはすり鉢面21が形成され、このすり鉢面21よりも外径側にはC面状の切欠き面22が設けられている。すり鉢面21は、軸心方向に向けて緩やかに傾斜するテーパ面状に設けられ、このすり鉢面21に続けて継手本体1の内周面の一部を構成する筒状内周面23が形成されている。筒状内周面23は、継手部2の軸心Qと略平行に形成され、この筒状内周面23によりパイプPの外周面を保持して案内可能になっている。パイプPの挿入時には、このパイプPがすり鉢面21により筒状内周面23まで調芯されながら案内され、この筒状内周面23を含む継手本体1の内周面9と円筒コア部の外周面8とにより、軸心Qとの傾きが抑えられた状態でパイプ挿入口10に挿入される。
【0035】
すり鉢面21、筒状内周面23は、蓋部材5に形成された環状凸部24に設けられている。環状凸部24は、蓋部材5の内周端部側に突設形成され、この環状凸部24により、外筒4を継手部2に装着した後のロックリング6の抜け出しが防止される。環状凸部24の図示しない内径(筒状内周面23の内径)は、円筒コア部3の外径と同様にパイプPの外径に応じて設定される。例えば、パイプPが架橋ポリエチレン管の場合よりも、ポリブテン管の場合がより大きい内径となる。
【0036】
蓋部材5の外筒側内周には、外筒4の係合段部17にスナップ嵌合可能な係合段部25が形成されている。蓋部材5は、係合段部17、25のスナップ嵌合により外筒4に取付けられ、その取付け後には蓋部材5と外筒4とが相互に回転可能になっている。その際、すり鉢面21の先端面(蓋部材の外端面20)と円筒コア部3の先端面部位とは軸心Q方向において同一平面上に配設される。
【0037】
ロックリング6は、ステンレス鋼等により略環状に形成され、環状部30と、この環状部30の内径側の爪部31とを有している。爪部31は、環状部30から所定の傾斜角度で屈曲形成されてパイプPの表面に係止可能になっている。ロックリング6は、外筒4の開口側と蓋部材5の内周部位との間に形成される空隙32に装着される。パイプPの挿入時には、爪部31により挿入がスムーズになり、この爪部31がパイプPに係止することでパイプPに引抜き荷重が加わったときに引抜き阻止力が発揮される。このため、パイプPは、引き抜き防止状態で速やかに接合される。
【0038】
挿入ガイド15は、パイプPのガイド用として継手本体1内に配設され、Oリング7とロックリング6との間のパイプ挿入口10に装着される。挿入ガイド15は、例えば、弾性を有するポリアセタール等の硬質樹脂を材料として形成され、適宜の色に着色されている。挿入ガイド15の外周には複数の弾性舌片35が形成され、この弾性舌片35は、外筒4に形成された内径凸部36に係止可能になっている。弾性舌片35は、内径凸部36を乗り越えたときにクリック音を発生可能になっており、作業者は、このクリック音と、挿入ガイド15に着色された色を外筒から視認することにより、パイプPが所定の状態まで挿入されたことを確認可能になっている。
【0039】
上述した内部構造により、継手本体1は、ロックリング6で引き抜き防止状態にしながらパイプPを接合し、円筒コア部3に装着されたOリング7でこのパイプPの内周をシールする、内周シール構造になっている。この継手本体1は、同じ呼び径で内外径の異なる架橋ポリエチレン管やボリブテン管などのパイプPを接合する場合、パイプPの内外径に応じた蓋部材5、2継手部に交換することで対応する。このように継手本体1は、同じ呼び径で内外径の異なるパイプPを接合可能な継手である。
【0040】
続いて、本発明における継手用防塵キャップの好ましい実施形態を説明する。
図1、
図2に示すように、本発明の継手用防塵キャップ(以下、キャップ体40という)は、前述した継手本体1のパイプ挿入口10から装着されてこのパイプ挿入口10を防塵するものである。
【0041】
キャップ体40は、例えば、半透明のポリプロピレンやPET(ポリエチレンテレフタラート)等の樹脂製薄板材料によって真空成形で製造される。このキャップ体40は、
図4、
図5に示すように、環状突起部41、環状中空溝42、外環フランジ面43、凹部面44により構成され、環状突起部41をパイプ挿入口10に嵌着し、外環フランジ面43を外端面20に当接した状態で継手本体1に装着される。
【0042】
環状突起部41は、円形薄板の一面側に形成された環状中空溝42から成り、環状外周面45、環状内周面46、半円弧部47を有している。環状外周面45、環状内周面46のうち、環状外周面45が継手本体の内周面9よりも僅かに大きい外径に形成されるか、或は、環状内周面46が円筒コア部の外周面8よりも僅かに小さい内径に形成されている。これによって、環状突起部41の外径をパイプ挿入口10の内周に嵌着するか、または、環状突起部41の内径を円筒コア部3の外周に嵌着するようになっている。本実施形態では、環状外周面45の外径が架橋ポリエチレン管用の蓋部材5の筒状内周面23に嵌合し、環状内周面46の内径がポリブテン管用の円筒コア部3の外周面8に嵌合する径に形成されている。
【0043】
環状外周面45と環状内周面46とは、断面半円状の半円弧部47により接続され、この構造により前記の環状中空溝42が形成される。更に、環状外周面45に続けて、アール部48を介して外環フランジ面43が設けられ、環状内周面46に続けて、アール部49を介して凹部面44が設けられている。
この構成により、環状突起部41は、求心方向に弾性変形して拡径又は縮径できるようになっている。
【0044】
外環フランジ面43は、環状突起部41の外周側に鍔状に形成されている。外環フランジ面43の外径は、継手本体1のすり鉢面21よりもやや大径に設けられ、キャップ体40が継手本体1に装着されたときに、この外環フランジ面43がパイプ挿入口10の外端面20に当接可能になっている。この場合、外環フランジ面43の外径は、蓋部材5の外径よりも小さく形成されているとよく、外環フランジ面43の当接時にこの外環フランジ面43が蓋部材5の外周面よりも外径側に突出しないようにすることが望ましい。外環フランジ面43は、環状突起部41が拡縮変形した場合にも、アール部48を介してパイプ挿入口の外端面20への当接状態が保持される。
【0045】
凹部面44は、環状突起部41の内側に形成され、この凹部面44の内側に円筒コア部3の先端側を収容可能になっている。凹部面44の外面44aは、キャップ体40を継手本体1に装着する前の自然の状態で、外環フランジ面43の外面43aよりもキャップ体40の他側面にやや突設された状態で形成されている。
【0046】
キャップ体40を継手本体1に装着し、凹部面44に円筒コア部3の先端側が収容されるときには、この凹部面44と円筒コア部3先端側との間に僅かな空隙50が形成される。また、外環フランジ面43がパイプ挿入口10の外端面20に当接したときには、蓋部材5とキャップ体40との間に間隙51が形成される。この状態でキャップ体40の凹部面44を押圧した際には、すり鉢面21にキャップ体の外環フランジ面43がすり鉢状に反った状態で当接する。
また、キャップ体40の継手本体1への嵌合部位、すなわち、環状突起部41における表面側に、シボ加工を施すようにしてもよい。
【0047】
次いで、上記実施形態の継手用防塵キャップを前述した継手本体に着脱する場合を説明する。
図4において、キャップ体40を継手本体1に装着する場合には、蓋部材5のパイプ挿入口10に環状突起部41を押し込むように嵌合させる。
図4、
図5においては、架橋ポリエチレン管用の継手本体1を示しており、この場合には、環状突起部41において、環状外周面45の外径が環状凸部24の内径よりもやや大きい径であり、環状内周面46の内径が円筒コア部3の先端側の外径よりもやや大きい径になる。これにより、
図4に示すように、環状内周面46と円筒コア部3との間には僅かな空間55が生じる。
【0048】
そして、キャップ体40には環状中空溝42から成る上記の環状突起部41が形成されているため、
図4の矢印に示すように、この環状突起部41が環状凸部24によって内径側に圧縮されながらパイプ挿入口10内に嵌着する。この嵌着は、後述する環状突起部の弾性力により、密着したものとなる。更に、キャップ体40を挿入すると、外環フランジ面43が継手本体の外端面20に当接する。
【0049】
続いて、自然の状態でこの凹部面44の外面44aが外環フランジ面43の外面43aよりもキャップ体40の他面側にやや突設形成されていることより、
図5において凹部面44を押圧したときに環状突起部41が押し込まれ、この環状突起部41の押し込みによって外環フランジ面43がすり鉢面21に沿ってすり鉢状に変形しながら当接する。このとき、環状凸部24による環状突起部41の押圧力がより強くなる。この変形に伴って、外環フランジ面43の縁部位と蓋部材の切欠き面22との間には、略V字状の開口部位が形成される。
【0050】
一方、
図6においては、架橋ポリエチレン管よりも大径のポリブテン管用の継手本体1を示している。この場合には、環状突起部41において、環状内周面46の内径が円筒コア部3の先端側の外径よりもやや小さい径になり、環状外周面45の外径が環状凸部24の内径よりもやや小さい径になっている。これにより、環状外周面45と環状凸部24との間には僅かな空間56が生じている。
【0051】
そして、前記と共通のキャップ体40を装着した際に、
図6の矢印に示すように、環状突起部41は、円筒コア部3の先端側により外径側に拡径されながらパイプ挿入口10内に嵌着する。この嵌着も、後述する環状突起部の弾性力により、密着したものとなる。更に、キャップ体40を挿入したときには、外環フランジ面43が継手本体の外端面20に当接する。
【0052】
このように、キャップ体40に環状中空溝42から成る環状突起部41を設けているので、素材の伸び特性を利用することなく環状中空溝42が成す空間によって環状突起部41に適度の弾性力を発生させ、この弾性力により環状突起部41が内径側に圧縮、もしくは外径側に拡径することにより、キャップ体40をパイプ挿入口10に嵌合させることが可能になる。このため、同じ呼び径でパイプ挿入口10の口径の異なる継手本体に対して、1種類の共通のキャップ体40を用いて、真空成形時の寸法のバラツキを吸収して寸法精度上の問題を解決しながら密着性を向上させて嵌着できる。このとき、環状突起部41の表面が平坦状になっていることで、この環状突起41部が蓋部材5又は円筒コア部3と隙間なく嵌合し、外環フランジ面43が継手本体の外端面20に当接することで防塵性が高まっている。
しかも、環状突起部41の内側に凹部面44を設けていることで、嵌合部分が円筒状である場合と比較して剛性を高め、適度な弾性力を発生させた状態で嵌合させることができる。
【0053】
隙間を塞いで密着性を向上させた状態でキャップ体40を継手本体1に装着して高い防塵性を発揮できると共に、装着後のキャップ体40の自然の緩みや脱落を確実に防止することができる。更に、図示しない環状突起部41の軸心Q方向の突起高さを所定の低さまで低く設けることで、真空成形時の寸法を安定させることもできる。
【0054】
キャップ体40の継手本体1への嵌合部位である環状突起部41にシボ加工を施しているので、継手本体1への密着性をより向上でき、キャップ体40を真空成形するときの離型性も向上できる。このシボを適宜の模様とすることで装飾性を向上したり、シボの凹凸による抵抗を強くしてキャップ体40の脱落をより確実に防止することもできる。
【0055】
キャップ体40を装着作業時には、パイプ挿入口10の入口側からこのキャップ体40を挿入するだけですり鉢面21に沿わせて芯出しながら嵌着できる。このため、粘着シール部材を用いる場合のように位置合わせする必要もなく、キャップ体40を容易に所定位置に装着できる。
【0056】
外環フランジ面43が蓋部材5の端面側に当接して防塵する構造であるので、この蓋部材5の外周側に印字情報がある場合にも、装着後のキャップ体40がこの印字情報を邪魔して外部から隠すことがない。このため、継手本体1の装飾性を妨げることがない。
キャップ体40は、半透明の樹脂製円形薄板材により形成されており、装着後の環状突起部41が挿入ガイド15に近接した状態にあることから、この挿入ガイド15の指示色を外部から透過させて確認することもできる。
【0057】
図4、
図6の継手本体において、キャップ体40を継手本体1から取外す場合には、外環フランジ面43と蓋部材の切欠き面22との間の略V字状の開口部位に爪や指を差し込んだときに、環状突起部41が元の形状に復帰しようとする弾性力を利用できる。この弾性力は、キャップ体40を成す素材自体や、環状外周面45と環状内周面46との接続部、具体的には本実施形態における断面半円状の半円弧部47によりもたらされ、この弾性力により、片手の動作によって容易にこのキャップ体40を取り外しできる。このとき、パイプ挿入口10と外気とが連通することで、音を発生させることも可能になる。その場合には音を確認することでキャップ体40が外れたことを確認できる。
【0058】
作業者が、キャップ体40を取外した継手本体1にパイプPを接合する際には、透明性を有する蓋部材5、外筒4を介して着色された挿入ガイド15やパイプPを視認したり、挿入ガイド15の弾性舌片35によりクリック音を確認でき、パイプPの挿し込み量を測る作業が不要になる。このようにキャップ体40を防塵手段として用いることによってマーカー用の粘着シール部材やペンを必要とすることがなく、粘着シール部材の粘着材や、インクなどがパイプPに悪影響を与える危険性がなくなると共に、パイプP接合後のシール性も確保できる。
【0059】
次に、本発明の継手用防塵キャップの他の実施形態を説明する。なお、この実施形態において、前記実施形態と同一部分は同一符号によって表し、その説明を省略する。
図7において、この実施形態における継手本体60は、継手部61、透視筒62、蓋部材63、環状スペーサ64、ロックリング6、Oリングからなるシール部材65を有しており、この継手本体60に上述したキャップ体40が着脱可能になっている。
【0060】
この継手本体60において、透視筒62は透明性を有する樹脂材料により形成され、パイプPの挿入状態を外部から視認可能になっている。環状スペーサ64は、外周シール用のOリング65が装着された透視筒62と蓋部材63との間に装着され、ロックリング6をOリング65から離間させた状態で配置するために設けられている。
【0061】
継手部61と蓋部材63とは、透視筒62、環状スペーサ64、ロックリング6、Oリング65が内部に組み込まれた状態で一体化され、これによって継手本体60が構成されている。継手本体60は、ロックリング6で抜け止め状態にしながらパイプPを接合し、Oリング65でこのパイプPの外周をシールする、いわゆる外周シール構造になっている。
【0062】
継手本体60にキャップ体40を装着する場合には、前述した実施形態と同様に蓋部材63に形成されたパイプ挿入口66から環状突起部41を押し込むように嵌合させる。このとき、環状突起部41における環状外周面45の外径がパイプ挿入口66の内径よりもやや大きい径になっていることで、環状突起部41がパイプ挿入口66により内径側に圧縮されながらこのパイプ挿入口66に嵌着する。更に、キャップ体40を挿入したときには、外環フランジ面43が継手本体60の外端面67に当接する。このようにして、環状突起部41の弾性力により密着性を向上させながらキャップ体40を継手本体60に装着して高い防塵性を発揮できる。しかも、この環状突起部41の弾性力により、キャップ体40が自然に緩んだり脱落することが防止される。
【0063】
キャップ体40を継手本体60から取外す場合には、前記実施形態と同様に、外環フランジ面43と蓋部材63に形成された切欠き面68との間の略V字状の開口部位に爪や指を差し込むことで容易に取外すことができる。
【0064】
更に、継手本体60内には、パイプPに挿嵌するための円筒コア部70を収容した状態でキャップ体40を装着することも可能である。この実施形態における円筒コア部70は、円筒部71と鍔部72とを有する筒形状であって、継手本体60と別体に設けられている。円筒コア部70はパイプPに装着可能に設けられ、その装着時には、円筒部71がパイプPの内周側に挿嵌され、鍔部72がパイプPの切断端部に当接した状態になる。
【0065】
この継手本体60にキャップ体40を装着する場合には、
図7の二点鎖線に示すように、鍔部72がパイプ挿入口66の開口側になるように円筒コア部70を継手本体60内部に収容し、次いで、キャップ体40の環状突起部41を鍔部72の対向位置に配置させるようにパイプ挿入口66に挿入しながら、外環フランジ面43を円筒コア部70の外端部位と継手本体の外端面67に当接させる。このとき、環状外周面45の外径がパイプ挿入口66の内径よりもやや大きい径になっていることで、環状突起部41がパイプ挿入口66により内径側に圧縮され、高い防塵性を発揮しつつ緩みや脱落を防止した状態で継手本体60にキャップ本体40を嵌着できる。これにより、円筒コア部70がパイプ挿入口66から脱落することも確実に防がれる。
更に、本発明は、前記実施の形態記載に限定されるものではなく、本発明の特許請求の範囲に記載されている発明の精神を逸脱しない範囲で、種々の変更ができるものである。