特許第5785791号(P5785791)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5785791
(24)【登録日】2015年7月31日
(45)【発行日】2015年9月30日
(54)【発明の名称】入眠状態判定装置
(51)【国際特許分類】
   A61B 5/16 20060101AFI20150910BHJP
   A61B 5/11 20060101ALI20150910BHJP
   A61B 5/0245 20060101ALN20150910BHJP
【FI】
   A61B5/16
   A61B5/10 310A
   !A61B5/02 321Z
【請求項の数】4
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2011-132175(P2011-132175)
(22)【出願日】2011年6月14日
(65)【公開番号】特開2012-20117(P2012-20117A)
(43)【公開日】2012年2月2日
【審査請求日】2014年2月21日
(31)【優先権主張番号】特願2010-136010(P2010-136010)
(32)【優先日】2010年6月15日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000198787
【氏名又は名称】積水ハウス株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】511020830
【氏名又は名称】トミタテクノロジー・ジャパン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100080182
【弁理士】
【氏名又は名称】渡辺 三彦
(74)【代理人】
【識別番号】100142572
【弁理士】
【氏名又は名称】水内 龍介
(74)【代理人】
【識別番号】100084629
【弁理士】
【氏名又は名称】西森 正博
(72)【発明者】
【氏名】木村 文雄
(72)【発明者】
【氏名】江見 和明
(72)【発明者】
【氏名】大谷 康則
(72)【発明者】
【氏名】藤岡 一郎
(72)【発明者】
【氏名】近藤 雅之
(72)【発明者】
【氏名】寺西 一浩
(72)【発明者】
【氏名】植山 生仁
(72)【発明者】
【氏名】富田 誠次郎
【審査官】 九鬼 一慶
(56)【参考文献】
【文献】 特開2009−297455(JP,A)
【文献】 特開2005−110920(JP,A)
【文献】 特開平08−299443(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 5/06−5/22
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
被験者に対して非装着且つ非拘束で、前記被験者の体動信号及び心拍信号を検出する生体信号検出手段(1)と、前記体動信号から体動の有無を検出する体動有無検出手段(12)と、前記心拍信号から心拍数を求める心拍数検出手段(10)と、前記心拍信号の時系列データを周波数解析して、心拍の揺らぎ成分に占める交感神経成分であるLF成分の割合及び副交感神経成分であるHF成分の割合を求める周波数解析手段(11)と、これら体動の有無、心拍数、LF成分の割合及びHF成分の割合に基づいて、入眠タイミングを判定する入眠判定手段(13)とを備え、前記入眠判定手段(13)は、2分間以上連続して無体動であって、前記心拍数が同時間連続して下降傾向にあって、さらに前記LF成分の割合と前記HF成分の割合が等しくなった拮抗状態を経過した後に、前記LF成分の割合が前記HF成分の割合よりも低くて、前記LF成分の割合が減少傾向、且つ、前記HF成分の割合が増加傾向にあって、これらLF成分の割合とHF成分の割合との差が60%以上となった時点を、入眠タイミングと判定することを特徴とする入眠状態判定装置。
【請求項2】
被験者に対して非装着且つ非拘束で、前記被験者の体動信号及び心拍信号を検出する生体信号検出手段(1)と、前記体動信号から体動の有無を検出する体動有無検出手段(12)と、前記心拍信号から心拍数を求める心拍数検出手段(10)と、前記心拍信号の時系列データを周波数解析して、心拍の揺らぎ成分に占める交感神経成分であるLF成分の割合及び副交感神経成分であるHF成分の割合を求める周波数解析手段(11)と、これら体動の有無、心拍数、LF成分の割合及びHF成分の割合に基づいて、入眠タイミングを判定する入眠判定手段(13)とを備え、前記入眠判定手段(13)は、2分間以上連続して無体動であって、前記心拍数が同時間連続して下降傾向にあって、さらに前記LF成分の割合と前記HF成分の割合が等しくなった拮抗状態を経過した後に、前記LF成分の割合が前記HF成分の割合よりも低くて、前記LF成分の割合が減少傾向から増加傾向へ切り換わる直前で、且つ、前記HF成分の割合が増加傾向から減少傾向へ切り換わる直前の時点を、入眠タイミングと判定することを特徴とする入眠状態判定装置。
【請求項3】
前記生体信号検出手段(1)は、内部に発泡性樹脂材並びに空気を封入してなり、前記被験者が横臥する寝床(2)に設置したセンサーパッド(3・・)と、このセンサーパッド(3・・)内の空気圧の変化を検知する圧電センサー(4)とを備えた請求項1乃至のいずれかに記載の入眠状態判定装置。
【請求項4】
前記入眠判定手段(13)の判定結果に基づいて、照明機器や空調機器等の住宅設備機器(15)の駆動を制御する機器制御手段(14)を備えた請求項1乃至のいずれかに記載の入眠状態判定装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被験者の生体信号を非装着且つ非拘束で検出して、入眠状態をリアルタイムに判定する入眠状態判定装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の睡眠状態を判定する判定装置としては、脳波を検出する脳波計、心電波形を検出する心電計、あるいは眼球の動きを検出する筋電計等の各種計器を用いて、これら各種計器によって検出した生体信号に基づいて睡眠状態を判定するものが知られている。
【0003】
ところが、上記判定装置においては、各種計器として、生体の電位変化を皮膚に直接電極を取り付けて検出するものを使用していることから、被験者の動作を拘束して、測定中は被験者に大きなストレスを与え、連続測定には適さず、電極の取り付け作業や取り扱いにも熟練を要するといった不具合があった。また、被験者が動くと計器の位置がずれて、生体信号を精度良く検出できないことがあった。さらに、睡眠状態の判定に際して、各種計器によって検出した睡眠時の生体信号データを一旦保存した後、コンピュータ等を用いてデータ解析を行うようにしていることから、リアルタイム性に乏しいといった不具合もあった。
【0004】
そこで、近年では、被験者の生体信号を非装着且つ非拘束で検出して、睡眠状態をリアルタイムに判定する判定装置が提案されている。例えば特許文献1には、被験者に対して非装着且つ非拘束で検出した心拍信号に基づいて睡眠状態を判定する装置が開示され、特許文献2には、被験者に対して非装着且つ非拘束で検出した体動信号に基づいて睡眠状態を判定する装置が開示されている。しかしながら、特にリアルタイム性が要求される入眠タイミングを瞬時に判定可能な入眠状態判定装置については、未だ実現されていないのが現状であった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2005−152310号公報
【特許文献2】特開2006−181263号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
この発明は、かかる現状に鑑み創案されたものであって、その目的とするところは、被験者の生体信号を非装着且つ非拘束でリアルタイムに検出して、入眠タイミングを瞬時に判定可能とする入眠状態判定装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この発明の入眠状態判定装置は、被験者に対して非装着且つ非拘束で、前記被験者の体動信号及び心拍信号を検出する生体信号検出手段(1)と、前記体動信号から体動の有無を検出する体動有無検出手段(12)と、前記心拍信号から心拍数を求める心拍数検出手段(10)と、前記心拍信号の時系列データを周波数解析して、心拍の揺らぎ成分に占める交感神経成分であるLF成分の割合及び副交感神経成分であるHF成分の割合を求める周波数解析手段(11)と、これら体動の有無、心拍数、LF成分の割合及びHF成分の割合に基づいて、入眠タイミングを判定する入眠判定手段(13)とを備え、前記入眠判定手段(13)は、2分間以上連続して無体動であって、前記心拍数が同時間連続して下降傾向にあって、さらに前記LF成分の割合と前記HF成分の割合が等しくなった拮抗状態を経過した後に、前記LF成分の割合が前記HF成分の割合よりも低くて、前記LF成分の割合が減少傾向、且つ、前記HF成分の割合が増加傾向にあって、これらLF成分の割合とHF成分の割合との差が60%以上となった時点を、入眠タイミングと判定することを特徴とする。
【0008】
具体的に、前記入眠判定手段13は、一定時間連続して無体動であって、前記心拍数が下降傾向にあって、さらに前記LF成分の割合と前記HF成分の割合が等しくなった拮抗状態を経過した後に、前記LF成分の割合が前記HF成分の割合よりも低くて、前記LF成分の割合が減少傾向、且つ、前記HF成分の割合が増加傾向にあって、これらLF成分の割合とHF成分の割合との差が所定値以上となった時点を、入眠タイミングと判定している。
【0009】
また、前記入眠判定手段13は、一定時間連続して無体動であって、前記心拍数が下降傾向にあって、さらに前記LF成分の割合と前記HF成分の割合が等しくなった拮抗状態を経過した後に、前記LF成分の割合が前記HF成分の割合よりも低くて、前記LF成分の割合が減少傾向から増加傾向へ切り換わる直前で、且つ、前記HF成分の割合が増加傾向から減少傾向へ切り換わる直前の時点を、入眠タイミングと判定している。
【0010】
さらに、前記生体信号検出手段1は、内部に発泡性樹脂材並びに空気を封入してなり、前記被験者が横臥する寝床2に設置したセンサーパッド3・・と、このセンサーパッド3・・内の空気圧の変化を検知する圧電センサー4とを備えている。
【0011】
さらにまた、前記入眠判定手段13の判定結果に基づいて、照明機器や空調機器等の住宅設備機器15の駆動を制御する機器制御手段14を備えている。
【0012】
ここで、上記の「心拍の揺らぎ」とは、具体的には心拍周期の変動(心拍信号のR−R間隔の変動)を意味しており、自律神経の活動を反映している。自律神経は、緊張状態において亢進する交感神経と、リラックス状態において亢進する副交感神経の2つの神経系からなる。
【0013】
この「心拍の揺らぎ」を周波数解析(高速フーリエ変換)して、例えばパワースペクトル密度を導き出すことで、0.1Hz前後をピークとする交感神経成分(LF成分)の活性度(強度)と、0.3Hz前後をピークとする副交感神経成分(HF成分)の活性度(強度)をそれぞれ定量化することは公知の技術である。以下、定量化された交感神経成分(LF成分)の活性度(強度)を、「LF成分の値」と称し、定量化された副交感神経成分(HF成分)の活性度(強度)を、「HF成分の値」と称する。
【0014】
そして、上記の「心拍の揺らぎ成分に占める交感神経成分であるLF成分の割合」とは、具体的にはLF成分の値とHF成分の値との合計値に対するLF成分の値の比率すなわち「LF/(HF+LF)」を意味しており、上記の「心拍の揺らぎ成分に占める副交感神経成分であるHF成分の割合」とは、具体的にはLF成分の値とHF成分の値との合計値に対するHF成分の値の比率すなわち「HF/(HF+LF)」を意味している。心拍の揺らぎ成分全体としての割合は、LF成分の割合とHF成分の割合の合計であって100%であり、例えばLF成分の割合が20%の場合には、HF成分の割合は80%になるといった関係にある。したがって、上記の「LF成分の割合とHF成分の割合が等しくなった拮抗状態」とは、LF成分及びHF成分の割合がともに50%となった状態すなわち交感神経と副交感神経とが均衡している状態を意味している。
【発明の効果】
【0015】
この発明の入眠状態判定装置によれば、被験者の生体信号を非装着且つ非拘束でリアルタイムに検出して、被験者にストレスを与えることなく、入眠タイミングを瞬時に精度良く判定することができる。しかも、この入眠判定を利用して、住宅設備機器を入眠タイミングに応じてリアルタイムに制御することができ、省エネルギー対策や安全・安心対策に応用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】この発明の一実施形態に係る入眠状態判定装置の概略的な構成を示す説明図である。
図2】生体信号検出手段の概略的な構成を示す説明図である。
図3】入眠判定手段の判定ステップを示す説明図である。
図4】心拍周期周波数解析のLF成分とHF成分の概略的な分布を示す説明図である。
図5】入眠状態判定装置を使用した入眠判定の実験結果を睡眠状態把握計測による実験結果と併せて表示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、この発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。この発明の一実施形態に係る入眠状態判定装置は、図1に示すように、被験者に対して非装着且つ非拘束で、被験者の生体信号を検出する生体信号検出手段1を備え、この生体信号検出手段1によって検出した生体信号に基づいて、被験者の入眠タイミングをリアルタイムに判定するように構成されている。
【0018】
生体信号検出手段1は、図2に示すように、被験者が横臥する寝床2に、被験者を横切るように適宜間隔をあけて略平行に設置した複数のセンサーパッド3・・を備えている。各センサーパッド3は、内部に発泡性樹脂材並びに空気を封入してなる弾性を有する袋体であって、寝床2上の被験者の生体活動により生じる体表面の音又は/及び圧変化に伴って、内部の空気圧が変化するようになっている。
【0019】
これらセンサーパッド3・・には、センサーパッド3・・内の空気圧の変化を検知する圧電センサー(pick-up)4が接続されている。そして、この圧電センサー(pick-up)4からの出力信号を信号処理回路5で増幅・濾波し、この増幅・濾波した信号を信号分離回路6で心拍信号、呼吸信号、体動信号に分離し、これら心拍信号、呼吸信号、体動信号をA/D変換回路7でA/D変換し、このA/D変換後のデータを用いて周期算出回路8で周期を算出し、これら周期データ(時系列データ)を出力するように構成されている。また、これら周期データから被験者の着床状態、離床状態を判別し、着床信号、離床信号も合わせて出力するようになっている。
【0020】
なお、上記生体信号検出手段1における圧電センサー(pick-up)4、信号処理回路5、信号分離回路6、A/D変換回路7、周期算出回路8は、センサーユニット9内に一纏めに配置されている。
【0021】
また、入眠状態判定装置は、図1に示すように、生体信号検出手段1から出力された体動信号の周期データから体動の有無を検出する体動有無検出手段12と、生体信号検出手段1から出力された心拍信号の周期データから心拍数を求める心拍数検出手段10と、生体信号検出手段1から出力された心拍信号の周期データ(心拍の揺らぎ)を高速フーリエ変換(FFT)して、図4に示すような0.1Hz前後の交感神経成分(LF成分)及び0.3Hz前後の副交感神経成分(HF成分)の値をそれぞれ算出し、心拍の揺らぎ成分に占める交感神経成分(LF成分)の割合「LF/(HF+LF)」、及び、心拍の揺らぎ成分に占める副交感神経成分(HF成分)の割合「HF/(HF+LF)」を求める周波数解析手段11と、これら体動の有無、心拍数、LF成分の割合及びHF成分の割合に基づいて、入眠タイミングを判定する入眠判定手段13と、この入眠判定手段13の判定結果に基づいて、住宅設備機器15の駆動を制御する機器制御手段(制御出力回路)14とを備えている。
【0022】
なお、心拍の揺らぎ、心拍の揺らぎ成分に占める交感神経成分(LF成分)の割合「LF/(HF+LF)」、心拍の揺らぎ成分に占める副交感神経成分(HF成分)の割合「HF/(HF+LF)」の意味するところは、上記において説明した通りであり、重複を避けるためにここでの説明は省略する。
【0023】
図3は、入眠判定手段13による入眠判定ステップを示している。まず、体動有無検出手段12によって検出した体動の有無に基づいて、一定時間(例えば2分間以上)連続して無体動であるか否かを判別する(S1)。これと同時に、心拍数検出手段10によって求めた心拍数に基づいて、心拍数の所定時間毎(例えば1分間毎)の平均値を算出し(S2)、心拍数が下降傾向にあるか否かを判別する(S3)。さらに、周波数解析手段11によって求めたLF成分の割合とHF成分の割合に基づいて、LF成分、HF成分の割合の所定時間毎(例えば1分間毎)の平均値を算出し(S4)、LF成分の割合とHF成分の割合が等しくなった最初の拮抗状態(LF成分及びHF成分の割合がともに50%となった状態)を経過したか否かを判別する(S5)。そして、最初の拮抗状態を経過している場合には、LF成分の割合がHF成分の割合よりも低いか否かを判別して(S6)、低い場合には、LF成分の割合が減少傾向から増加傾向へ切り換わる直前(境目付近)で、且つ、HF成分の割合が増加傾向から減少傾向へ切り換わる直前(境目付近)であるか否かを判別する(S7)。
【0024】
そして、一定時間(例えば2分間以上)連続した無体動であることを基準とする第1判定要素と、心拍数が下降傾向にあることを基準とする第2判定要素と、LF成分の割合とHF成分の割合が等しくなった最初の拮抗状態を経過した後に、LF成分の割合がHF成分の割合よりも低くて、LF成分の割合が減少傾向から増加傾向へ切り換わる直前(境目付近)で、且つ、HF成分の割合が増加傾向から減少傾向へ切り換わる直前(境目付近)であることを基準とする第3判定要素のすべてを満たした時点を、入眠タイミングと判定している(S8)。
【0025】
これら第1〜第3判定要素のうち、第3判定要素としては、拮抗状態の有無にかかわらず、LF成分の割合がHF成分の割合よりも低くて、LF成分の割合が減少傾向、且つ、HF成分の割合が増加傾向にあることのみを基準としても良い。
【0026】
さらに、第3判定要素としては、LF成分の割合とHF成分の割合が等しくなった最初の拮抗状態を経過した後に、LF成分の割合がHF成分の割合よりも低くて、LF成分の割合が減少傾向、且つ、HF成分の割合が増加傾向にあって、これらLF成分の割合とHF成分の割合との差が所定値(例えば60%)以上となったことを基準としても良い。
【0027】
そして、この入眠状態判定装置においては、入眠判定手段13の判定結果、すなわち、上記のようにして判定された入眠タイミング(入眠タイミングから想定される入眠前の居眠り状態や睡眠・覚睡の拮抗状態等を含む)に基づいて、機器制御手段14が照明機器や空調機器、その他各種家電機器等の住宅設備機器15の駆動を制御して、被験者の睡眠にとって快適な住空間を提供するようになっている。
【0028】
上記の入眠状態判定装置による入眠判定精度を確認するために、次のような実験を行った。すなわち、寝床に横臥した被験者に対して、入眠状態判定装置による入眠判定を実施しながら、同時に脳波、眼球運動、筋電図などを計測して睡眠状態を把握した。
【0029】
図5は、その実験結果を示している。図5において、上から1番目のグラフAは体動量の時系列変化、上から2番目のグラフBは心拍数の時系列変化、上から3番目のグラフCはLF成分の割合とHF成分の割合の時系列変化、上から4番目のグラフDは睡眠状態把握計測からの判定結果をそれぞれ示している。また、図5の各グラフを通る縦線は、入眠状態判定装置において入眠タイミングが判定された時点を示している。
【0030】
この実験結果から明らかなように、入眠状態判定装置が入眠タイミングであると判定した時点は、実験開始から10分後の時点であり、この10分後の時点では、グラフAに示すように2分間以上連続した無体動状態にあり、グラフBに示すように心拍数が下降傾向にあり、グラフCに示すようにLF成分の割合とHF成分の割合がともに50%となった最初の拮抗状態(1分後付近)を経過した後であって、LF成分の割合がHF成分の割合よりも低くて、LF成分の割合が減少傾向から増加傾向へ切り換わる直前(境目付近)で、且つ、HF成分の割合が増加傾向から減少傾向へ切り換わる直前(境目付近)の時点となっている。
【0031】
また、実験開始から10分後の時点は、グラフCに示すようにLF成分の割合がHF成分の割合よりも低くて、LF成分の割合が減少傾向、且つ、HF成分の割合が増加傾向にある時点であるとも言える。さらには、グラフCに示すようにLF成分の割合とHF成分の割合がともに50%となった最初の拮抗状態(1分後付近)を経過した後であって、LF成分の割合がHF成分の割合よりも低くて、LF成分の割合が減少傾向、且つ、HF成分の割合が増加傾向にあって、これらLF成分の割合とHF成分の割合との差が60%以上となっている時点であるとも言える。
【0032】
この実験開始から10分後の時点は、睡眠状態把握計測において、覚醒(Awake)からステージ1(Stage1)に移行したと判定された時点である。よって、入眠状態判定装置によって判定した入眠タイミングと、睡眠状態把握計測によって判定した入眠タイミングとは、ほぼ一致していることになり、入眠状態判定装置による入眠判定精度は良好であって、実用的に問題ないレベルに達していると言える。
【0033】
この発明は、上記実施形態に限定されるものではなく、この発明の範囲内で上記実施形態に多くの修正及び変更を加え得ることは勿論である。
【符号の説明】
【0034】
1・・生体信号検出手段、2・・寝床、3・・センサーパッド、4・・圧電センサー、10・・心拍数検出手段、11・・周波数解析手段、12・・体動有無検出手段、13・・入眠判定手段、14・・機器制御手段、15・・住宅設備機器
図1
図2
図3
図4
図5