特許第5785910号(P5785910)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5785910(メタ)アクリル酸又はそのエステルの製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5785910
(24)【登録日】2015年7月31日
(45)【発行日】2015年9月30日
(54)【発明の名称】(メタ)アクリル酸又はそのエステルの製造方法
(51)【国際特許分類】
   C07C 51/377 20060101AFI20150910BHJP
   C07C 57/04 20060101ALI20150910BHJP
   C07B 61/00 20060101ALN20150910BHJP
【FI】
   C07C51/377
   C07C57/04
   !C07B61/00 300
【請求項の数】2
【全頁数】18
(21)【出願番号】特願2012-144637(P2012-144637)
(22)【出願日】2012年6月27日
(65)【公開番号】特開2014-9168(P2014-9168A)
(43)【公開日】2014年1月20日
【審査請求日】2015年1月8日
(73)【特許権者】
【識別番号】000004628
【氏名又は名称】株式会社日本触媒
(74)【代理人】
【識別番号】110000914
【氏名又は名称】特許業務法人 安富国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】亀井 寿
(72)【発明者】
【氏名】萩庭 尚道
(72)【発明者】
【氏名】吉田 裕
【審査官】 水島 英一郎
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2005/095320(WO,A1)
【文献】 特表2005−521718(JP,A)
【文献】 特開平5−178609(JP,A)
【文献】 特表2006−525106(JP,A)
【文献】 特開平2−196753(JP,A)
【文献】 特開2014−156449(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07C 51/377
C07C 57/04
C07C 69/54
C07C 67/327
CAplus(STN)
REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
3−ヒドロキシカルボン酸又はそのエステルを含む原料組成物から、(メタ)アクリル酸又はそのエステルを製造する方法であって、
該製造方法は、該3−ヒドロキシカルボン酸又はそのエステルを脱水反応させることにより(メタ)アクリル酸又はそのエステルを生成させる脱水工程を含み、
該脱水工程は、脱水触媒を用いて行い、かつ、
該脱水触媒は、下記一般式(1):
(1)
(式中、Mはアルカリ金属及びアルカリ土類金属からなる群より選ばれる少なくとも1つの元素;Xは珪素、アルミニウム、チタン及びジルコニウムからなる群より選ばれる少なくとも1つの元素;Yはホウ素及びリンからなる群より選ばれる少なくとも1つの元素;Oは酸素を表す。aは1、bは1〜300の数、cは0〜0.8の数、dはa、b、cの値及び各種構成元素の結合状態により定まる数値を表す。)
で表される酸化物であることを特徴とする、(メタ)アクリル酸又はそのエステルの製造方法。
【請求項2】
前記3−ヒドロキシカルボン酸は、3−ヒドロキシプロピオン酸であることを特徴とする請求項1に記載の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、3−ヒドロキシカルボン酸又はそのエステルから(メタ)アクリル酸又はそのエステルを製造する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
(メタ)アクリル酸は吸水性樹脂等の原料として工業的に広く利用されており、通常、(メタ)アクリル酸の製法としては、固定床多管式連続反応器を用い酸化物触媒の存在下、プロピレンやイソブチレンを接触気相酸化によりアクロレインやメタクロレインとし、得られたアクロレインやメタクロレインの接触気相酸化により(メタ)アクリル酸を製造する二段酸化方法が一般的である。プロピレンやイソブチレンは化石資源由来の原料であるため、再生可能資源から製造することが望まれている。
また(メタ)アクリル酸エステルは、(メタ)アクリル酸のエステル化等により製造されており、粘着剤、塗料等各種樹脂の原料として広く用いられている。
【0003】
再生可能な資源であるバイオマス等を利用して、(メタ)アクリル酸を商業的規模で経済的に製造する試みが行われている。バイオマスからの(メタ)アクリル酸の生成方法としては、天然物であり容易に入手可能な乳酸(2−ヒドロキシプロピオン酸、2HPとも称す)や、天然物から得られる糖類やセルロース等を分解して得られる糖類を更に発酵により調製される3−ヒドロキシプロピオン酸(3HPとも称す)等のヒドロキシプロピオン酸(HPとも称す)を、脱水することにより(メタ)アクリル酸を調製する方法が挙げられる。
【0004】
従来の方法としては、(a)β−ヒドロキシカルボン酸を含む発酵ブイヨンを準備し;(b)前記発酵ブイヨンから前記β−ヒドロキシカルボン酸を含む溶液を形成し;(c)脱水触媒の存在下に前記溶液を蒸発させることにより、前記β−ヒドロキシカルボン酸をα,β−不飽和型カルボン酸に転化することを含む、α,β−不飽和型カルボン酸の製造方法が開示されている。また、脱水触媒として、濃硫酸、リン酸、Cu−Ba−CrO触媒、シリカゲルやH−βゼオライトにリン酸、リン酸塩、硫酸塩や炭酸塩等を担持した触媒が開示されている(特許文献1参照)。
更に、3−ヒドロキシプロピオン酸水溶液を、気相反応にて脱水するに際し、SiO、TiO、α−アルミナ、γ−アルミナが触媒として示されている(特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特表2005−521718号公報
【特許文献2】国際公開第2005/095320号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記文献に記載の製法では、(メタ)アクリル酸の選択率が低いという問題、及び、触媒上でコーキングを起こすという問題があることがわかった。そこで、本発明者らは、以下の種々の課題を見出した。
(メタ)アクリル酸の製法において、3−ヒドロキシカルボン酸を脱水反応させる時には、脱炭酸による分解や、短鎖のカルボン酸の生成等の副反応が起こることを見出し、これにより(メタ)アクリル酸の選択率が低くなることがわかった。これは、特に3−ヒドロキシカルボン酸の転化率が高い時に顕著である。
また、(メタ)アクリル酸の製法における生成物の(メタ)アクリル酸等は、上記文献に開示されている脱水触媒上では吸着しやすく、コーキングを起こしやすいため、触媒の活性低下が非常に大きいことを見出した。更に、(メタ)アクリル酸の製法に用いる原料の3−ヒドロキシカルボン酸には、原料中にオリゴマーやN含有化合物が混入する場合があり、一般的な脱水触媒を用いた場合は、オリゴマーやN含有化合物が脱水触媒に強固に付着し、コーキングが起こりやすくなることを見出した。コーキングが多いと、触媒の活性低下が早く、頻繁な触媒再生や触媒交換が必要となり、生産性が低下するという問題や、触媒内部に生成したコークにより、触媒の破壊・粉化が起こり、反応器の閉塞や触媒寿命が短くなるという弊害があることも見出した。
【0007】
したがって、3−ヒドロキシカルボン酸の転化率及び(メタ)アクリル酸の選択率を向上させ、触媒上でのコーキングを低減させ、効率的に(メタ)アクリル酸を製造するための工夫の余地があった。
【0008】
そこで本発明の課題は、3−ヒドロキシカルボン酸又はそのエステルを原料として(メタ)アクリル酸又はそのエステルを製造する際に、副反応を抑制して、3−ヒドロキシカルボン酸又はそのエステルの転化率及び(メタ)アクリル酸又はそのエステルの選択率を向上させ、また、触媒上でのコーキングを低減させて、触媒活性の低下や反応器の閉塞等を抑制し、高純度の(メタ)アクリル酸又はそのエステルを効率的に製造することができる(メタ)アクリル酸又はそのエステルの製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、上記課題を解決すべく種々検討した結果、3−ヒドロキシカルボン酸又はそのエステルを含む原料組成物から(メタ)アクリル酸又はそのエステルを製造するにあたり、3−ヒドロキシカルボン酸又はそのエステルを脱水反応させて(メタ)アクリル酸又はそのエステルを生成させる脱水工程で用いる脱水触媒として、アルカリ金属元素及び/又はアルカリ土類金属元素を含有してなる特定の酸化物を用いることにより、副反応を抑制して、3−ヒドロキシカルボン酸又はそのエステルの転化率及び(メタ)アクリル酸又はそのエステルの選択率を向上させ、また、触媒上でのコーキングを低減させて、触媒活性の低下や反応器の閉塞等を抑制し、高純度の(メタ)アクリル酸又はそのエステルを効率的に製造することができることを見出して、本発明を完成した。
【0010】
すなわち、本発明は、3−ヒドロキシカルボン酸又はそのエステルを含む原料組成物から、(メタ)アクリル酸又はそのエステルを製造する方法であって、該製造方法は、該3−ヒドロキシカルボン酸又はそのエステルを脱水反応させることにより(メタ)アクリル酸又はそのエステルを生成させる脱水工程を含み、該脱水工程は、脱水触媒を用いて行い、かつ、該脱水触媒は、下記一般式(1):
(1)
(式中、Mはアルカリ金属及びアルカリ土類金属からなる群より選ばれる少なくとも1つの元素;Xは珪素、アルミニウム、チタン及びジルコニウムからなる群より選ばれる少なくとも1つの元素;Yはホウ素及びリンからなる群より選ばれる少なくとも1つの元素;Oは酸素を表す。aは1、bは1〜300の数、cは0〜0.8の数、dはa、b、cの値及び各種構成元素の結合状態により定まる数値を表す。)
で表される酸化物であることを特徴とする、(メタ)アクリル酸又はそのエステルの製造方法である。
また、本発明は、前記3−ヒドロキシカルボン酸が、3−ヒドロキシプロピオン酸であることを特徴とする上記製造方法である。
【発明の効果】
【0011】
本発明の(メタ)アクリル酸又はそのエステルの製造方法によれば、副反応を抑制して、3−ヒドロキシカルボン酸又はそのエステルの転化率及び(メタ)アクリル酸又はそのエステルの選択率を向上させ、また、触媒上でのコーキングを低減させて、触媒活性の低下や反応器の閉塞等を抑制し、高純度の(メタ)アクリル酸又はそのエステルを効率的に製造することができる。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明を詳細に説明する。
なお、以下において記載する本発明の個々の好ましい形態を2つ以上組み合わせたものもまた、本発明の好ましい形態である。
【0013】
本発明の(メタ)アクリル酸又はそのエステルの製造方法は、3−ヒドロキシカルボン酸又はそのエステルを含む原料組成物から、(メタ)アクリル酸又はそのエステルを製造する方法であり、該3−ヒドロキシカルボン酸又はそのエステルを脱水反応させることにより(メタ)アクリル酸又はそのエステルを生成させる脱水工程を含み、該脱水工程は、特定の脱水触媒を用いて行うものである。
【0014】
本発明で用いる脱水触媒(以下、単に「触媒」ともいう)は、一般式(1):
(1)
(式中、Mはアルカリ金属及びアルカリ土類金属からなる群より選ばれる少なくとも1つの元素;Xは珪素、アルミニウム、チタン及びジルコニウムからなる群より選ばれる少なくとも1つの元素;Yはホウ素及びリンからなる群より選ばれる少なくとも1つの元素;Oは酸素を表す。aは1、bは1〜300の数、cは0〜0.8の数、dはa、b、cの値及び各種構成元素の結合状態により定まる数値を表す。)
で表される酸化物である。
【0015】
以下の説明において、上記一般式(1)で、Mで表される、アルカリ金属及びアルカリ土類金属からなる群より選ばれる少なくとも1つの元素を、M元素;Xで表される、珪素、アルミニウム、チタン及びジルコニウムからなる群より選ばれる少なくとも1つの元素を、X元素;Yで表される、ホウ素及びリンからなる群より選ばれる少なくとも1つの元素を、Y元素;ともいう。
【0016】
一般式(1)において、M元素とX元素との割合は1:1〜300である。つまり、bは1〜300である。触媒活性の点から、bは、好ましくは1.5〜250、より好ましくは2〜200、更に好ましくは2.5〜150である。
また、M元素と、必要に応じて添加するY元素との割合は1:0〜0.8である。つまり、cは0〜0.8である。触媒活性や活性の維持の点から、cは、好ましくは0.01〜0.8、より好ましくは0.03〜0.8、更に好ましくは0.05〜0.8である。
dは、a、b、cの値及び各種構成元素の結合状態により定まる数値であるが、触媒の安定性の点から、好ましくは2〜600、より好ましくは3〜400、更に好ましくは5〜300である。
【0017】
一般式(1)中、M、X、Yは、それぞれ複数の元素を含んでいても良い。Mは、アルカリ金属及びアルカリ土類金属からなる群より選ばれる元素のうち、2種以上を含んでいても良い。Xは、珪素、アルミニウム、チタン及びジルコニウムからなる群より選ばれる元素のうち、2種以上を含んでいても良い。Yは、ホウ素とリンの両方を含んでいても良い。また、M、X、Yは、それぞれ1種又は2種の元素を含むことが好ましい。
M、X、Yがそれぞれ複数の元素より成る場合、添字aは、アルカリ金属及びアルカリ土類金属からなる群より選ばれる複数の元素の合計の原子数を表し、bは、珪素、アルミニウム、チタン及びジルコニウムからなる群より選ばれる複数の元素の合計の原子数を表し、cは、ホウ素とリンの合計の原子数を表す。
なお、一般式(1)においては、アルカリ金属及びアルカリ土類金属からなる群より選ばれる元素の合計の原子数を表すaを1とした場合の、b、c、dの数値を記載している。
【0018】
上記アルカリ金属としては、リチウム、ナトリウム、カリウム、ルビジウム、セシウム及びフランシウムが挙げられ、好ましくはナトリウム、カリウム、セシウムである。
上記アルカリ土類金属としては、ベリリウム、マグネシウム、カルシウム、ストロンチウム、バリウム及びラジウムが挙げられ、好ましくはマグネシウム、カルシウム、バリウムである。
Mとしては、好ましくはナトリウム、カリウム、セシウム、バリウムであり、より好ましくはナトリウム、カリウム、セシウムである。
Xとしては、好ましくは珪素、アルミニウムであり、より好ましくは珪素である。
Yとしては、好ましくはリンである。
【0019】
ところで、上述のように、3−ヒドロキシカルボン酸又はそのエステルの脱水反応時には、脱炭酸による分解や、短鎖のカルボン酸の生成等の副反応が起こりやすいため、(メタ)アクリル酸又はそのエステルの選択率が低くなり、これは、特に3−ヒドロキシカルボン酸又はそのエステルの転化率が高い時に顕著である。また、(メタ)アクリル酸又はそのエステルの製法における生成物の(メタ)アクリル酸又はそのエステル等は、一般的な脱水触媒上では吸着しやすいため、コーキングを起こしやすい。しかし、本発明における上記脱水触媒は、副反応が小さく、また比較的低コーキングであり、コーキングが起こっても触媒の活性低下が緩やかである。当該効果は、本発明における触媒の構成が寄与していると考えられる。つまり、本発明における触媒は、M元素、X元素及び/又はY元素の種類、数、比率を適切に選択することで、触媒上の酸点及び塩基点の数、強度、酸点/塩基点間の距離等を制御し、3−ヒドロキシカルボン酸又はそのエステルの触媒上への吸着、反応部位である水酸基からの水分子の脱離、生成した(メタ)アクリル酸又はそのエステルの脱着を過不足なく行い、分解反応等の副反応やコーキングを抑制し、脱水反応が適度に進行するものと考えられる。
【0020】
上記脱水触媒の調製方法としては、特に限定されるものではなく、従来公知のあらゆる方法が適用できる。
上記M元素は、その原料として、アルカリ金属元素及び/又はアルカリ土類金属元素の酸化物、水酸化物、ハロゲン化物、塩類(炭酸塩、硝酸塩、カルボン酸塩、リン酸塩、硫酸塩等)、金属そのもの等が用いられる。
上記X元素の内、珪素は、その原料として、酸化珪素、ケイ酸、ケイ酸塩類(アルカリ金属ケイ酸塩、アルカリ土類金属ケイ酸塩等)、珪素含有ゼオライト(アルミノシリケート、シリコアルミノホスフェート等)、有機ケイ酸エステル等が用いられる。ゼオライトとしてはA型、X型、Y型、X型、ZSM−5型、β型等が例示できる。アルミニウム、チタン及びジルコニウムは、その原料として、それぞれの酸化物、水酸化物、ハロゲン化物、アルコキシド及び塩類(炭酸塩、硝酸塩、カルボン酸塩、リン酸塩、硫酸塩等)等が用いられる。
必要に応じて加えられる上記Y元素は、その原料としては、リン酸、リン酸塩、ホウ酸、ホウ酸塩及び酸化物等が用いられる。
【0021】
本発明における触媒の調製法例としては、例えば以下の方法等が挙げられる。(1)M元素源とX元素源を、水中に溶解又は懸濁させ、攪拌下で加熱濃縮し、乾燥後に成型し、焼成を経て触媒とする方法。(2)M元素源の水溶液中に、酸化珪素成型体を浸した後、加熱乾固し、乾燥、焼成を経て触媒とする方法。(3)各種ケイ酸塩又は珪素含有酸化物に、M元素源の水溶液を加えて混合した後、乾燥、成型、焼成等を経て触媒とする方法。(4)珪素含有ゼオライトに、M元素源をイオン交換法によりドープした後、乾燥、成型、焼成等を経て触媒とする方法。
なお、上記(2)〜(3)では、X元素が珪素である場合について記載したが、X元素がアルミニウム、チタン、ジルコニウムの場合も、上記と同様にして得ることができる。
また、触媒にY元素を含有させるには、M元素源又はX元素源中にY元素を含有する原料を用いても良いし、触媒調製途中でY元素の原料を加えても良い。
【0022】
更に、上記触媒は、公知の坦体(例えば、シリカ、アルミナ、シリコンカーバイド等)に坦持又は混合して用いることもできる。
上記触媒の焼成温度は、用いる触媒原料の種類等にもよるが、好ましくは300〜1000℃であり、より好ましくは400〜800℃である。
上記触媒の焼成時間は、特に限定されないが、好ましくは0.2〜24時間であり、より好ましくは0.5〜12時間である。
【0023】
また、3−ヒドロキシカルボン酸又はそのエステルを脱水反応させて(メタ)アクリル酸又はそのエステルを製造するために用いられ、かつ、下記一般式(1):
(1)
(式中、Mはアルカリ金属及びアルカリ土類金属からなる群より選ばれる少なくとも1つの元素;Xは珪素、アルミニウム、チタン及びジルコニウムからなる群より選ばれる少なくとも1つの元素;Yはホウ素及びリンからなる群より選ばれる少なくとも1つの元素;Oは酸素を表す。aは1、bは1〜300の数、cは0〜0.8の数、dはa、b、cの値及び各種構成元素の結合状態により定まる数値を表す。)
で表される酸化物であることを特徴とする(メタ)アクリル酸又はそのエステル製造用触媒も、本発明の1つである。
【0024】
なお、本明細書においては、特に断りのない限り、3−ヒドロキシカルボン酸又はそのエステルについては、3−ヒドロキシカルボン酸をこれらの代表として記載し、また、(メタ)アクリル酸又はそのエステルについては、(メタ)アクリル酸をこれらの代表として記載する。なお、3−ヒドロキシカルボン酸エステル及び(メタ)アクリル酸エステルは、それぞれ対応する酸を、後述の方法によりエステル化して得ることができる。
【0025】
本発明における3−ヒドロキシカルボン酸としては、3−ヒドロキシプロピオン酸(以下、3HPともいう)、3−ヒドロキシイソ酪酸等が挙げられ、好ましくは3−ヒドロキシプロピオン酸である。また、(メタ)アクリル酸としては、アクリル酸、メタクリル酸が挙げられ、好ましくはアクリル酸である。
上記3−ヒドロキシカルボン酸は、1種でも2種でも用いることができる。また、(メタ)アクリル酸は、使用した3−ヒドロキシカルボン酸の種類に応じて得られる。
【0026】
3−ヒドロキシカルボン酸を含む原料組成物は、該3−ヒドロキシカルボン酸を含んでいれば良く、3−ヒドロキシカルボン酸のエステルダイマー、エーテルダイマーや、トリマー以上のオリゴマー等を含んでいても良い。また、溶媒や、3−ヒドロキシカルボン酸の調製において生成する副生物等を含んでいてもよい。
原料組成物に含まれる3−ヒドロキシカルボン酸とそのエステルの総量の濃度は、好ましくは5〜95質量%、より好ましくは7〜90質量%、更に好ましくは10〜90質量%である。
【0027】
3−ヒドロキシカルボン酸を含む原料組成物には溶媒が含まれていてもよい。溶媒としては、3−ヒドロキシカルボン酸を溶解できるものであれば、特に限定されないが、例えば、水、アルコール、炭化水素、エーテル、ケトン、エステル、アミン、アミド等が挙げられる。これらは、1種でも2種以上でも用いることができる。溶媒の沸点は、気化が容易になるため3−ヒドロキシカルボン酸よりも低い方が好ましい。好適には水である。
本発明において、原料組成物中に溶媒を含有させる場合、原料組成物100質量%における溶媒の濃度は、好ましくは5〜95質量%であり、より好ましくは10〜93質量%、更に好ましくは10〜90質量%である。溶媒の濃度が5質量%以上であれば、粘度の低下により原料組成物の取り扱いが容易になり、また、3−ヒドロキシカルボン酸の蒸発が促進される効果が期待できる。一方、95質量%以下とすることにより、蒸発にかかる熱量を抑制し、用役費の低減に寄与できる。
【0028】
3−ヒドロキシカルボン酸を含む原料組成物には、3−ヒドロキシカルボン酸以外の成分、例えば、3−ヒドロキシカルボン酸を発酵等により合成する際の副生物等が含まれていても良い。当該副生物としては、具体的には、発酵において3−ヒドロキシカルボン酸と共に副生される可能性のある、ギ酸、酢酸、プロピオン酸、酪酸、コハク酸、フマル酸、ピルビン酸、グリコール酸、乳酸、エタノール、アミノ酸類、1,3−プロパンジオール、グリセリン、ヒドロキシプロピオンアルデヒド、アラニン等が例示される。
【0029】
本発明で用いられる3−ヒドロキシカルボン酸は、種々の源から得ることができ、地球温暖化及び環境保護の観点から、炭素源としてリサイクル可能な生物由来資源を用いることが好ましい。
3−ヒドロキシカルボン酸としては、農作物等から得られる糖類やセルロース等を分解して得られる糖類から、更に発酵により調製された3−ヒドロキシプロピオン酸、3−ヒドロキシイソ酪酸等を用いることができる。
本発明においては、原料組成物中に含まれる3−ヒドロキシカルボン酸の少なくとも一部又は全部が、発酵により得られる3−ヒドロキシカルボン酸であることが好ましい。
また3−ヒドロキシカルボン酸の原料として、バイオマス等の生物由来資源であることが好ましい。
【0030】
3−ヒドロキシカルボン酸は、公知の方法で入手可能であり、例えば、国際公開第2008/027742号に記載されている、Streptomyces griseus ATCC21897由来beta−alanine aminotransferase遺伝子導入大腸菌を用いた、グルコースを炭素源とした発酵により得ることができる。また、国際公開第2001/016346号に記載されている、Klebsiella pneumoniae由来グリセリン脱水酵素及び大腸菌由来アルデヒド酸化酵素導入大腸菌を用いた、グリセリンを炭素源とした発酵によっても得ることができる。
【0031】
本発明に用いる3−ヒドロキシカルボン酸を含む原料組成物としては、より不純物が少ない原料組成物を用いることが好ましい。
不純物が少ない原料組成物を得る方法としては、公知の方法が利用可能である。具体的には、発酵により得られた粗製3−ヒドロキシカルボン酸を、カルシウム塩を用いて沈殿させて、3−ヒドロキシカルボン酸のカルシウム塩として回収した後、硫酸等の酸と反応させて、3−ヒドロキシカルボン酸を精製する方法;発酵により得たアンモニウム型の3−ヒドロキシカルボン酸を、電気透析又は陽イオン交換法によって3−ヒドロキシカルボン酸に化学変換させて精製する方法;等が利用できる。
また、発酵により得られたアンモニウム塩型の3−ヒドロキシカルボン酸水溶液に、水に不混和性のアミン溶媒を添加し加熱することにより、アンモニアを除去して3−ヒドロキシカルボン酸のアミン溶液を得ることができる。そこに水を加えて加熱することにより、3−ヒドロキシカルボン酸の水溶液を得ることができる。
また、3−ヒドロキシカルボン酸の蒸気圧を利用して、蒸発にて精製することもできる。しかし、3−ヒドロキシカルボン酸の蒸気圧は小さく、かつ加熱によりオリゴマー化等の副反応が進行しやすいため、減圧下での薄層蒸発のような熱履歴の小さな蒸発方法が好ましい。
更に、3−ヒドロキシカルボン酸をアルコールによってエステル化し、得られた3−ヒドロキシカルボン酸エステルを蒸留にて精製した後、3−ヒドロキシカルボン酸エステルを加水分解することで、精製した3−ヒドロキシカルボン酸を得ることもできる。
【0032】
なお、本発明で用いる原料組成物には、発酵工程で用いる培地成分である無機化合物が存在することがある。無機化合物としては、例えば、リン酸水素二ナトリウム、リン酸二水素ナトリウム、リン酸水素二カリウム、リン酸二水素カリウム、塩化アンモニウム、塩化ナトリウム、塩化カリウム、塩化マグネシウム、塩化カルシウム、塩化鉄、硫酸マグネシウム、硫酸ナトリウム、硫酸マンガン、硫酸亜鉛、硫酸鉄、硫酸銅、酢酸アンモニウム等が挙げられる。
原料組成物中に無機化合物が存在すると、気相反応の場合、蒸発器中で無機化合物が析出して、閉塞や蒸発効率の低下が生じることがあり、また、無機化合物の作用によって、3−ヒドロキシカルボン酸が蒸発器中で変性し、オリゴマーや他の副生物となり、(メタ)アクリル酸収率の低下を招くおそれがある。また、無機化合物が触媒に吸着すると、触媒活性の低下や(メタ)アクリル酸選択率の低下を招く場合もある。
無機化合物の量は、原料組成物中の3−ヒドロキシカルボン酸とそのエステルの総量100質量%に対して、総量で1質量%以下が好ましく、0.5質量%以下がより好ましく、0.1質量%以下が更に好ましい。無機化合物の量が1質量%以下であれば、蒸発器での析出による閉塞や3−ヒドロキシカルボン酸のオリゴマー化等の副反応が抑えられ、また、脱水工程においても触媒の活性低下を抑制できるため、長期間の安定運転が可能となる。
【0033】
本発明の(メタ)アクリル酸の製造方法は、3−ヒドロキシカルボン酸を、上記特定の脱水触媒を用いて脱水反応させることにより、(メタ)アクリル酸を生成させる脱水工程を含むものであるが、脱水工程は液相反応、気相反応のいずれも可能である。触媒の活性を上げ、生産性を上げるには、気相反応の方が好ましい。気相反応では、3−ヒドロキシカルボン酸を含む原料組成物を気化させ、気化したガスを上記特定の脱水触媒と接触させて脱水反応を行うことで実施できる。
【0034】
3−ヒドロキシカルボン酸を含む原料組成物の気化(蒸発)は、該組成物を加熱することにより実施することができる。蒸発器内の温度は、150℃〜500℃が好ましく、170℃〜480℃がより好ましく、200℃〜460℃が更に好ましく、220℃〜440℃が特に好ましく、220℃〜420℃が最も好ましい。当該温度が150℃〜500℃の範囲であれば、原料組成物が速やかに気化し、副反応による蒸発器や反応器の閉塞が生じない。また、500℃より高いと、加熱に必要なエネルギーが過大になるばかりか、該組成物がコーキングを起こし、炭素質の析出物が蒸発器や反応器内に付着して閉塞を起こす可能性がある。
【0035】
蒸発器内の圧力は、低いほど原料組成物の蒸発が起こりやすくなるため有利であるが、引き続く反応器の適正な圧力や設備等のコストも合わせて選択する必要がある。蒸発器内の圧力としては、好ましくは10kPa〜1000kPaであり、より好ましくは30kPa〜300kPaであり、更に好ましくは50kPa〜250kPaである。
【0036】
蒸発器は、液体で供給する原料組成物に効率的に熱を伝える構造が好ましい。例えば、水平管型や垂直管型の自然循環式蒸発器、強制循環式蒸発器等が挙げられる。
また、蒸発器内の原料組成物の流路に、ラシヒリング、ベルルサドル、球状成型物、金網の成型物(ディクソンパッキン、マクマホンパッキン等)、メラパック(スルザーケムテック社製)といった不規則充填物や規則充填物等の、単位充填容積当たりの表面積が大きな充填物を充填し、そこに原料組成物を供給することで、原料組成物(液体)が接する表面積を大きくして蒸発させる方法も挙げられる。こうすることにより、供給した原料組成物が、表面積の大きな充填物と接触することになり、伝熱面積が増え、効率的に熱が伝わり、短時間で蒸発が進み、そのため、蒸発器内での原料組成物の転化率が低くなる。
上記充填物の材料としては、鉄やステンレス等の金属材料や、シリカ、セラミック等の無機材料等が使用できる。
また、原料組成物を流動床式の蒸発器に供給して、気化させても良い。例えば、粉体状の不活性固体を不活性ガスで流動化させ、加熱された流動床式蒸発器に原料組成物を供給し、気化させても良い。
【0037】
蒸発工程において好ましい形態は、加熱する際にガス(水や不活性気体等)を導入しながら蒸発させる形態が好ましい。原料組成物と共に、水や不活性気体等のガスを導入すると、3−ヒドロキシカルボン酸の蒸発が促進され、安定な反応を継続できるため、好ましい形態である。
ガスとしては、窒素、ヘリウム、アルゴン、二酸化炭素、水が蒸発した水蒸気等が挙げられ、これらは1種でも2種以上でも用いることができる。好適には、窒素、水蒸気である。この水蒸気には、原料組成物中に溶媒として含まれる水が気化した水蒸気も含まれる。
ガスの供給量としては、原料組成物中の3−ヒドロキシカルボン酸及びそのオリゴマーの総量に対して、水及び/又は不活性気体の総量として0.5モル倍〜100モル倍が好ましく、1モル倍〜50モル倍がより好ましい。
【0038】
次に、脱水工程で使用する反応器としては、中に固体触媒を保持し、加熱することができればよく、例えば、固定床連続反応器、流動床連続反応器等が使用でき、固定床連続反応器が好ましい。
上記固定床連続反応器を用いる場合は、反応器内に触媒を充填して加熱しておき、そこに原料組成物の蒸気を供給すればよい。原料組成物の蒸気は、上昇流、下降流、水平流、いずれも好適に使用できる。また、熱交換の容易さから、固定床多管式連続反応器が好適に使用できる。
上記流動床連続反応器を用いる場合は、反応器の中に粉体状の触媒を入れ、原料組成物の蒸気や、別途供給する不活性ガス等で触媒を流動させながら、反応させることができる。触媒が流動しているため、重質分による閉塞が起こりにくい。また、触媒の一部を連続的に抜き出して、新しい触媒や再生した触媒を連続的に供給することもできる。
【0039】
脱水工程は蒸発工程の後にあれば良く、その間に別の工程があっても良い。例えば、蒸発器で気化させた原料組成物の蒸気を、所定の温度に加熱/冷却する温度調整工程を経て、反応器で脱水工程を実施しても良い。
また、蒸発器と反応器を一体化しても良い。例えば、反応管に、蒸発層として表面積の大きい充填物を充填し、当該蒸発層の下に触媒を充填することにより、蒸発層を蒸発工程、触媒層を脱水工程として連続した運転も、好ましい形態の1つである。
また、1つ乃至は複数の蒸発層と、触媒を充填した多管式の反応器を連結して運転することも、好ましい形態である。
【0040】
脱水触媒としては、上記一般式(1)で表される触媒を用いる。
上記触媒は、粉体状でも成形体であっても良い。成形体形状としては、限定されるものではなく、球状、シリンダー型、リング型、ハニカム型等が挙げられる。触媒の形態は使用する反応形式に応じて選択することができる。固定床反応器の場合は、圧力損失を小さくするために成型体が好ましく、流動床反応器の場合は、触媒を流動させるために粉体の方が好ましい。
【0041】
反応器への原料組成物の供給速度は、3−ヒドロキシカルボン酸の転化率の維持や、触媒の活性低下抑制の観点から、原料組成物が全量蒸発した気体及びガス(上述の水や不活性気体等)の総量のGHSV(空間速度)が、1〜100000/時が好ましく、2〜50000/時がより好ましく、6〜30000/時が更に好ましい。GHSVは、原料組成物及びガスの組成から計算される気体体積流量(0℃、101kPa換算)を、触媒層の体積で除した値として定義される。当該GHSVは、原料組成物や不活性気体の供給速度を変更すること等により調節することができる。
【0042】
触媒層の温度は、150℃〜500℃に保持することが好ましい。より好ましくは200℃〜450℃、更に好ましくは220℃〜430℃、特に好ましくは250℃〜400℃である。この温度範囲(150℃〜500℃)であると、反応速度が速く、副反応も生じにくく、(メタ)アクリル酸の収率が高くなる。
反応圧力は、特に限定されないが、原料組成物の蒸発方法、脱水反応の生産性、脱水反応後の捕集効率等を勘案して決定することができる。反応圧力としては、10kPa〜1000kPaが好ましく、より好ましくは30kPa〜300kPa、更に好ましくは50kPa〜250kPaである。
【0043】
上記の蒸発工程や脱水工程によって、3−ヒドロキシカルボン酸の脱水反応を安定に維持することができるが、それでもなお、触媒上に炭素状物質(コーク)が徐々に付着する場合がある。その場合、触媒活性の低下による生産性の低下や選択率の低下等の問題が生じる恐れがある。その場合、生成した炭素状物質を除去することによって、正常な状態に戻すことができる。
【0044】
脱水触媒上の炭素状物質を除去するには、脱水触媒に酸化剤を接触させて、前記炭素状物質を除去して、触媒を再生することができる。
酸化剤としては、過酸化水素水、有機過酸化物、硝酸、亜硝酸等が溶解した液状の酸化剤を使用しても良いし、ガス状の酸化剤を使用しても良い。好ましくは、ガス状の酸化剤である。
ガス状の酸化剤は、炭素状物質の酸化分解のために該炭素状物質に酸素元素を供給することが可能な気体分子であり、例えば、酸素(空気中の酸素も酸化剤に該当する)、オゾン、一酸化窒素、二酸化窒素、一酸化二窒素等を挙げることができる。これらの酸化剤のうち、一種以上のガス状酸化剤が含まれていれば良く、例えば、空気と酸素との混合ガス、一酸化窒素と酸素との混合ガス等を使用しても良く、また、窒素、二酸化炭素、アルゴン、ヘリウム及び水蒸気等の不活性ガスから任意に選択した一種以上のガスと酸化剤との混合ガスを使用しても良い。好ましくは酸素を含んだガスである。
【0045】
触媒再生において触媒の加熱温度は、高温であるほど触媒再生時間を短縮できるが、あまり高すぎると触媒の構造変化等によって、触媒の活性や選択率が低下する恐れがある。通常好ましい範囲は300〜800℃であり、より好ましくは320〜700℃であり、更に好ましくは350〜600℃である。800℃を超えると、例えばシンタリングによる触媒表面積の低下や、相転移による触媒の結晶構造変化等の、触媒における物理的構造及び化学的性質が変わることになって、触媒活性や選択率が低下する恐れがある。温度は、触媒種によっても上限は異なるが、触媒調製の際に触媒を焼成する場合、焼成温度を超えない温度で加熱することが好ましい。
【0046】
上記加熱温度を制御するには、該触媒を加熱するための加熱器の設定温度、酸化剤濃度、及びガス流量等を調整すると良い。この場合、加熱器の設定温度及び/又は酸化剤の濃度が高いほど、触媒を加熱する温度が高くなる。そして、触媒加熱温度を連続的に測定しつつ、加熱器の設定温度及び/又は酸化剤の濃度を調整して触媒加熱温度を制御することも可能である。また、特開平5−192590号公報に開示されている触媒加熱温度の制御方法も挙げられる。
酸化剤濃度としては、温度制御や生産コスト等の点から、好ましくは1〜21体積%である。
処理時間としては、(メタ)アクリル酸の生産性等の点から、好ましくは1〜100時間、より好ましくは2〜50時間である。
【0047】
炭素状物質を酸化分解除去する本実施形態に係る方法では、触媒の種類によっては、脱水反応過程や炭素状物質の酸化分解過程で触媒活性成分が飛散する場合がある。このような場合には、必要とする触媒活性に応じて、触媒活性成分の補充処理が行われる。当該補充処理を行うことが好ましい触媒としては、Y元素がリンである触媒が例示される。3−ヒドロキシカルボン酸の脱水反応過程や炭素状物質の酸化分解除去過程で飛散したリンが補充されると、活性が回復する。
【0048】
触媒活性成分の補充処理を行うためには、触媒調製の際における活性成分を担持させる方法を再実行すると良い。この方法としては、例えば、(1)含浸等の方法により、反応管から抜き出した触媒に、所定量の触媒活性成分を補充する方法、(2)特開平2−290255号公報に開示されている方法等により、反応管に充填されている状態の触媒に揮発性化合物(リン酸エステル等のリン元素を含有する化合物)を接触させる処理により、触媒活性成分を補充する方法、等が挙げられる。
【0049】
本発明において、反応器出口から得られる反応生成物を冷却して(メタ)アクリル酸を含む組成物を得る方法としては、特に限定されるものではないが、例えば、反応生成ガスを熱交換器に導入し、反応生成ガスの露点以下の温度で凝縮して得る方法や、反応生成ガスを溶剤等の捕集剤に接触させて吸収する方法等により冷却して、(メタ)アクリル酸を含む組成物を得ることができる。
該組成物中の(メタ)アクリル酸濃度は、好ましくは5質量%〜95質量%、より好ましくは10〜95質量%、更に好ましくは20〜95質量%である。
【0050】
このようにして得られた反応生成物の組成物中には、主な反応生成物である水、(メタ)アクリル酸が含まれており、その他に副生物や原料組成物中の溶媒や不純物が含まれる場合がある。溶媒が水の場合は、(メタ)アクリル酸の水溶液の状態で重合物製造の原料とすることができる。また、精製工程を加えることにより、高純度の(メタ)アクリル酸にすることができる。
精製工程は、蒸留、抽出、膜分離、晶析等の公知の技術により実施でき、それらを組み合わせて実施しても良い。
上記のようにして得られた(メタ)アクリル酸を含む反応生成物は、捕集や精製工程の取扱いを、重合禁止剤の存在下で行うことが好ましい。重合禁止剤としては、メトキノン、酢酸マンガン、ニトロソフェノール、クペロン、N−オキシル化合物、ジブチルチオカルバミン酸銅、フェノチアジン、ハイドロキノン等が例示できる。また、必要に応じて酸素含有ガスを供給してもよい。
【0051】
このように、本発明で得られた(メタ)アクリル酸の組成物を精製することにより、高純度の(メタ)アクリル酸を得ることができる。したがって、本発明の方法は、高純度の(メタ)アクリル酸の製造方法をも提供する。
当該方法としては、具体的には、晶析により(メタ)アクリル酸又はそのエステルを精製する工程を含む。
【0052】
上記のガス状の反応生成物を、冷却凝縮や溶剤捕集等により液化し、必要に応じて、この液化物に含まれる水や捕集溶剤を従来公知の方法(例えば、蒸留)により除去したものを、晶析方法によって高純度の(メタ)アクリル酸を得る方法を以下に示す。
ここで、粗(メタ)アクリル酸とは、冷却工程で得られた(メタ)アクリル酸を含む組成物を指し、特に(メタ)アクリル酸の水溶液が好適に用いられる。
晶析工程は、粗(メタ)アクリル酸からプロピオン酸を分離することができる従来公知の方法、例えば、特開平9−227445号公報や特表2002−519402号公報に記載された方法等を用いて行うことができる。
【0053】
以上の方法により、(メタ)アクリル酸を製造することができる。かくして製造された(メタ)アクリル酸は、すでに公知となっているように、(メタ)アクリル酸エステル等の(メタ)アクリル酸誘導体;ポリ(メタ)アクリル酸、ポリ(メタ)アクリル酸ナトリウム等の親水性樹脂;等の合成原料として有用である。従って、本発明による(メタ)アクリル酸の製造方法は、(メタ)アクリル酸誘導体や親水性樹脂の製造方法に取り入れることが当然可能である。
【0054】
本発明の方法にて、3−ヒドロキシカルボン酸の脱水反応による(メタ)アクリル酸の製造と同様に、3−ヒドロキシカルボン酸エステルの脱水反応による(メタ)アクリル酸エステルの製造も効率よく実施することができる。
【0055】
3−ヒドロキシカルボン酸エステルは、3−ヒドロキシカルボン酸をアルコールにてエステル化を行い、合成することができる。
使用するアルコールとしては、特に限定されず、用途に応じて選択すればよいが、炭素数が1〜20のアルコールが好ましく、炭素数が1〜10のアルコールがより好ましく、炭素数1〜5のアルコールが更に好ましい。
【0056】
エステル化反応は、3−ヒドロキシカルボン酸とアルコールを、エステル化触媒の存在下又は非存在下、加熱することによって達成できる。3−ヒドロキシカルボン酸はカルボン酸のため、触媒の非存在下でもエステル化反応は進行する。しかし、生産効率の点から、エステル化触媒を用いることが好ましい。
エステル化触媒としては、公知のものが使用できるが、塩酸、硫酸、硝酸、リン酸等の鉱酸類;ゼオライトやイオン交換樹脂等の固体酸類;ヘテロポリ酸等の無機酸類;p−トルエンスルホン酸等のスルホン酸類;ジブチルスズジラウレート、酸化スズ、ジブチルスズオキサイド、酢酸亜鉛、テトラアルコキシチタン等の金属化合物類;等が挙げられる。
反応温度は、50℃〜300℃が好ましく、80℃〜250℃がより好ましい。
エステル化反応は平衡反応のため、収率向上のために、反応蒸留や、生成物を抽出しながらの反応も効果的である。
また、微生物を使用して、3−ヒドロキシカルボン酸とアルコールから、3−ヒドロキシカルボン酸エステルを合成することもできる。
【0057】
3−ヒドロキシカルボン酸エステルから、上述の工程を経て、(メタ)アクリル酸エステルを得ることができる。
このようにして得られた反応生成物中には、主な反応生成物である(メタ)アクリル酸エステル及び水が含まれており、その他(メタ)アクリル酸、副生物や原料組成物中の溶媒や不純物が含まれる場合がある。その場合は、精製工程を加えることにより、高純度の(メタ)アクリル酸エステルにすることができる。精製工程は、蒸留、抽出、膜分離、晶析等の公知の技術により実施でき、それらを組み合わせて実施しても良い。
【実施例】
【0058】
以下、実施例を挙げて本発明をより具体的に説明するが、本発明はもとより下記の実施例により制限を受けるものではなく、前・後記の趣旨に適合し得る範囲で適当に変更を加えて実施することも可能であり、それらはいずれも本発明の技術的範囲に包含される。
なお、以下ことわりのない場合、「%」は「質量%」を、「部」は「質量部」をそれぞれ示すものとする。
【0059】
(調製例1)3−ヒドロキシプロピオン酸(3HP)を含む組成物の取得方法
3HPの発酵による製造を、特開2012−085635号公報の実施例1の方法に従って行った。得られた発酵液から濾過にて菌体を分離し、得られた濾液700gに、n−ドデカノール100gを添加し、エバポレーターで水を留去した。最終的に50℃、2.7kPaで留出がなくなるまで行った。
得られた残液を、80℃、10Paの薄膜蒸発器にかけ、3HPとn−ドデカノールの混合物を留分として取得した。得られた留分に等量の水を添加し、混合して水相に3HPを抽出した。油水分離した油相に再度等量の水を添加し、3HPの抽出を行った。油水分離した水相を合わせて濾過を行い、3HP水溶液を得た。3HPの濃度は16質量%であった。得られた3HP水溶液に水を添加して12質量%に調整し、この水溶液を脱水反応の原料組成物とした。
【0060】
実施例1
(触媒の調製)
硫酸リチウム一水和物2.1gを水100gに溶解し、90℃で加熱撹拌しながら酸化珪素20gを加えた後、濃縮乾固してから空気雰囲気中120℃で20時間乾燥した。得られた固体を粗粉砕し、更に空気中500℃で2時間焼成することにより、酸素を除く組成がLiSi10からなる触媒を得た。得られた触媒を10〜24メッシュに破砕して、脱水反応に用いた。
(脱水反応)
内径10mmのステンレス管に、蒸発層としてステンレス製の1.5mmディクソンパッキンを充填し、電気炉内に設置し蒸発器とした。また内径10mmのステンレス管に、上記の触媒2.2mlを充填し、電気炉内に設置し反応器とした。蒸発器の出口と反応器の入口をステンレス管で連結し、周囲を電気ヒーターで加熱できるようにした。
また、蒸発器内の温度を275℃とし、反応器内の温度を300℃とし、上記調製例1で得られた3−ヒドロキシプロピオン酸の12質量%水溶液を、毎時16.7gの速度で蒸発器の上部に供給した。同時に、毎時3Lの速度で窒素ガスを流した。このときのGHSVは10000であった。蒸発器の出口ガスはそのまま反応器へ供給し、8時間継続して、反応器内で脱水反応を実施した。1〜8時間の出口ガスを冷却捕集し、反応液を取得した。反応液を分析したところ、3HPの転化率は95モル%であり、アクリル酸の収率は92モル%、アクリル酸の選択率は97モル%であった。反応後抜き出した触媒に若干着色が観察され、コーキングが生じていることが示唆された。示差熱天秤を用いて触媒を空気中で加熱し、重量減少から触媒上のコーク量を算出したところ、2.7質量%であった。
【0061】
実施例2
(触媒の調製)
上記実施例1において、硫酸リチウム一水和物2.1gを硝酸ナトリウム2.8gに変更した以外は全く同様にして、酸素を除く組成がNaSi10からなる触媒を得た。
(脱水反応)
上記の触媒を用いて、実施例1と同様に脱水反応を実施した。3HPの転化率は98モル%であり、アクリル酸の収率は96モル%、アクリル酸の選択率は98モル%であった。触媒上のコーク量は2.3質量%であった。
【0062】
実施例3
(触媒の調製)
上記実施例1において、硫酸リチウム一水和物2.1gを硫酸カリウム2.9gに変更した以外は全く同様にして、酸素を除く組成がKSi10からなる触媒を得た。
(脱水反応)
上記の触媒を用いて、実施例1と同様に脱水反応を実施した。3HPの転化率は98モル%であり、アクリル酸の収率は95モル%、アクリル酸の選択率は97モル%であった。触媒上のコーク量は2.6質量%であった。
【0063】
実施例4
(触媒の調製)
上記実施例1において、硫酸リチウム一水和物2.1gを硝酸セシウム3.3gに変更した以外は全く同様にして、酸素を除く組成がCsSi10からなる触媒を得た。
(脱水反応)
上記の触媒を用いて、実施例1と同様に脱水反応を実施した。3HPの転化率は100モル%であり、アクリル酸の収率は98モル%、アクリル酸の選択率は98モル%であった。触媒上のコーク量は2.6質量%であった。
【0064】
実施例5
(触媒の調製)
上記実施例1において、硫酸リチウム一水和物2.1gを硝酸ナトリウム2.8gとリン酸水素二アンモニウム1.4gに変更した以外は全く同様にして、酸素を除く組成がNa0.3Si10からなる触媒を得た。
(脱水反応)
上記の触媒を用いて、実施例1と同様に脱水反応を実施した。3HPの転化率は100モル%であり、アクリル酸の収率は98モル%、アクリル酸の選択率は98モル%であった。触媒上のコーク量は2.4質量%であった。
【0065】
実施例6
(触媒の調製)
上記実施例1において、硫酸リチウム一水和物2.1gを硝酸セシウム3.3gとホウ酸0.28gに変更した以外は全く同様にして、酸素を除く組成がCs0.2Si10からなる触媒を得た。
(脱水反応)
上記の触媒を用いて、実施例1と同様に脱水反応を実施した。3HPの転化率は95モル%であり、アクリル酸の収率は92モル%、アクリル酸の選択率は97モル%であった。触媒上のコーク量は2.6質量%であった。
【0066】
実施例7
(触媒の調製)
上記実施例1において、硫酸リチウム一水和物2.1gを硫酸マグネシウム2.0gに変更した以外は全く同様にして、酸素を除く組成がMgSi20からなる触媒を得た。
(脱水反応)
上記の触媒を用いて、実施例1と同様に脱水反応を実施した。3HPの転化率は90モル%であり、アクリル酸の収率は87モル%、アクリル酸の選択率は97モル%であった。触媒上のコーク量は1.9質量%であった。
【0067】
実施例8
(触媒の調製)
上記実施例1において、硫酸リチウム一水和物2.1gを硝酸カルシウム4水和物3.9gに変更した以外は全く同様にして、酸素を除く組成がCaSi20からなる触媒を得た。
(脱水反応)
上記の触媒を用いて、実施例1と同様に脱水反応を実施した。3HPの転化率は92モル%であり、アクリル酸の収率は90モル%、アクリル酸の選択率は98モル%であった。触媒上のコーク量は2.2質量%であった。
【0068】
実施例9
(触媒の調製)
上記実施例1において、硫酸リチウム一水和物2.1gを水酸化バリウム8水和物5.2gに変更した以外は全く同様にして、酸素を除く組成がBaSi20からなる触媒を得た。
(脱水反応)
上記の触媒を用いて、実施例1と同様に脱水反応を実施した。3HPの転化率は92モル%であり、アクリル酸の収率は89モル%、アクリル酸の選択率は97モル%であった。触媒上のコーク量は2.4質量%であった。
【0069】
実施例10
(触媒の調製)
上記実施例1において、硫酸リチウム一水和物2.1gを硝酸カリウム0.67gと炭酸セシウム2.7gに変更した以外は全く同様にして、酸素を除く組成がCs0.4Si20からなる触媒を得た。
(脱水反応)
上記の触媒を用いて、実施例1と同様に脱水反応を実施した。3HPの転化率は100モル%であり、アクリル酸の収率は95モル%、アクリル酸の選択率は95モル%であった。触媒上のコーク量は1.6質量%であった。
【0070】
実施例11
(触媒の調製)
硫酸カリウム1.0gを水100gに溶解し、90℃で加熱撹拌しながら酸化アルミニウム20gを加えた後、濃縮乾固してから空気雰囲気中120℃で20時間乾燥した。得られた固体を粗粉砕し、更に空気中500℃で2時間焼成することにより、酸素を除く組成がKAl20からなる触媒を得た。得られた触媒を10〜24メッシュに破砕して、脱水反応に用いた。
(脱水反応)
上記の触媒を用いて、実施例1と同様に脱水反応を実施した。3HPの転化率は98モル%であり、アクリル酸の収率は96モル%、アクリル酸の選択率は94モル%であった。触媒上のコーク量は2.3質量%であった。
【0071】
実施例12
(触媒の調製)
特開2009−190915号公報の方法に従い、球状のZSM−5型ゼオライト(プロトン型、珪素/アルミニウム=100/1)を合成した。硝酸セシウム1.0gを水100gに溶解し、室温で上記ゼオライト20gを加えて3時間撹拌後、濾過してゼオライトを分離し、再度硝酸セシウム水溶液に加え、室温で3時間撹拌後濾過した。得られたセシウム担持ゼオライトを、空気雰囲気中120℃で20時間乾燥した。更に空気中500℃で2時間焼成することにより、酸素を除く組成がCsAl1.4Si143からなる触媒を得た。
(脱水反応)
上記の触媒を用いて、実施例1と同様に脱水反応を実施した。3HPの転化率は100モル%であり、アクリル酸の収率は99モル%、アクリル酸の選択率は99モル%であった。触媒上のコーク量は2.4質量%であった。
【0072】
比較例1
実施例1の脱水工程において、触媒を酸化珪素に変更した以外は、同様に脱水反応を実施した。3HPの転化率は43モル%であり、アクリル酸の収率は39モル%、アクリル酸の選択率は91モル%であった。触媒上のコーク量は1.9質量%であった。実施例の触媒に比べると、活性が著しく劣り、3HPの転化率が非常に低かった。アクリル酸収率が低いため、アクリル酸収率当たりの触媒上のコーク量[触媒上のコーク量(質量%)]/[アクリル酸収率(モル%)]の値は0.05と、実施例1の場合の0.02に比べて2倍以上と大きく、同じアクリル酸生産量に対して、実施例1に比べて比較例1ではコーク生成量が2倍以上になることが示唆される。
【0073】
比較例2
実施例1の脱水工程において、触媒を酸化チタンに変更した以外は、同様に脱水反応を実施した。3HPの転化率は97モル%であり、アクリル酸の収率は88モル%、アクリル酸の選択率は91モル%であった。触媒上のコーク量は7.6質量%であった。実施例の触媒に比べると、アクリル酸の選択率が低く、触媒上のコーク量が著しく多かった。
【0074】
比較例3
実施例1の脱水工程において、触媒を酸化ジルコニウムに変更した以外は、同様に脱水反応を実施した。3HPの転化率は98モル%であり、アクリル酸の収率は87モル%、アクリル酸の選択率は89モル%であった。触媒上のコーク量は9.3質量%であった。実施例の触媒に比べると、アクリル酸の選択率が低く、触媒上のコーク量が著しく多かった。
【0075】
実施例13
(触媒の調製)
硝酸カリウム1.7gとリン酸水素二アンモニウム1.1gを水100gに溶解し、90℃で加熱撹拌しながら酸化珪素20gを加えた後、濃縮乾固してから空気雰囲気中120℃で20時間乾燥した。得られた固体を粗粉砕し、更に空気中500℃で2時間焼成することにより、酸素を除く組成がK0.5Si20からなる触媒を得た。得られた触媒を10〜24メッシュに破砕して、脱水反応に用いた。
(脱水反応)
内径10mmのステンレス管に、蒸発層としてステンレス製の1.5mmディクソンパッキンを充填し、電気炉内に設置し蒸発器とした。また内径10mmのステンレス管に、上記の触媒2.2mlを充填し、電気炉内に設置し反応器とした。蒸発器の出口と反応器の入口をステンレス管で連結し、周囲を電気ヒーターで加熱できるようにした。
また、蒸発器内の温度を275℃とし、反応器内の温度を300℃とし、3−ヒドロキシプロピオン酸の12質量%水溶液を、毎時33.5gの速度で蒸発器の上部に供給した。同時に、毎時6Lの速度で窒素ガスを流した。このときのGHSVは20000であった。蒸発器の出口ガスはそのまま反応器へ供給し、24時間継続して、反応器内で脱水反応を実施した。1〜2時間及び23〜24時間の出口ガスを冷却捕集し、反応液を取得した。反応液を分析したところ、1〜2時間の3HPの転化率は88モル%、アクリル酸の収率は86モル%であり、23〜24時間の3HPの転化率は82モル%、アクリル酸の収率は81モル%と、触媒活性の低下が観察された。
そこで、反応器の温度を450℃に上げ、酸素2容量%、窒素98容量%の混合ガスを毎時6Lで12時間流通させ、引き続き空気を毎時6Lで12時間流通させて、触媒上に析出しているコークを燃焼させて触媒再生を実施した。
その後上記反応条件で、再び反応したところ、1〜2時間の3HPの転化率は88モル%、アクリル酸の収率は87モル%であり、23〜24時間の3HPの転化率は81モル%、アクリル酸の収率は80モル%と、1回目とほぼ同じ反応結果が得られた。
【0076】
このように、脱水触媒としてアルカリ金属元素及び/又はアルカリ土類金属元素を含有する特定の酸化物を用いて、3−ヒドロキシカルボン酸又はそのエステルを脱水反応させることにより(メタ)アクリル酸又はそのエステルを生成させる、本発明の(メタ)アクリル酸又はそのエステルの製造方法を用いることによって、副反応を抑制して、3−ヒドロキシカルボン酸又はそのエステルの転化率及び(メタ)アクリル酸又はそのエステルの選択率を向上させ、また、触媒上でのコーキングを低減させて、触媒活性の低下や反応器の閉塞等を抑制し、高純度の(メタ)アクリル酸又はそのエステルを効率的に製造することができるという作用機序は、すべて同様であるものと考えられる。
したがって、上記実施例の結果から、本発明の技術的範囲全般において、また、本明細書において開示した種々の形態において本発明が適用でき、有利な作用効果を発揮することができるといえる。