【文献】
A.L.Thani Hamda,"Microstructure Characterization of Mo Back Contact Used for CIGS Based Solar Cell",Conference Record of 33rd IEEE Photovoltaic Specialist Conference (2008),Vol.1, page.224-227
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0010】
成長に従い、CIS系膜は本質的にp形ドープされる。しかし、CIS系膜中の少量のナトリウムドーパントがCIGS膜のp形導電性および開回路電圧を高め、それが次に太陽電池の効率を改善することが見出された。例えば、Ramanathan(その全体が本願明細書において参照により援用されている、Ramanathan et al., Prog. Photovolt. Res. Appl. 11 (2003) 225(非特許文献1))は、ソーダ石灰ガラス基板を高成長温度の下でのCIS膜の堆積と組み合わせて用いることによって19.5%もの高さの効率を有する太陽電池を得ることができることを教示している。この方法はガラス基板からCIS膜へナトリウムを拡散させることによって伝統的な太陽電池の効率を著しく改善する。しかし、CIS膜にもたらされるナトリウムの量およびガラス基板からのナトリウム拡散の速度を制御することは困難である。さらに、ガラス基板とは異なり、他の基板、例えば、金属およびプラスチック基板はそのような容易に利用可能なナトリウムの供給を提供しない。
【0011】
本発明の一実施形態は、基板と、基板の上に位置し、かつアルカリ元素または化合物を含む第1の遷移金属層を含む第1の電極と、第1の電極の上に位置する少なくとも1つのp形半導体吸収層と、p形半導体吸収層の上に位置するn形半導体層と、n形半導体層の上に位置する第2の電極と、を備える太陽電池を提供する。
【0012】
図1に示されるように、本発明の一実施形態は基板100および第1の(下部)電極200を備える太陽電池を提供する。第1の電極200は(i)アルカリ元素またはアルカリ化合物と、(ii)格子歪曲元素または格子歪曲化合物とを含む第1の遷移金属層202を含む。その代わりに、第1の遷移金属層202は、アルカリ元素またはアルカリ化合物は含むものの、格子歪曲元素または化合物を実質的に含まない。
【0013】
第1の遷移金属層202の遷移金属は任意の適切な遷移金属、例えば、これらに限定されるわけではないが、Mo、W、Ta、V、Ti、NbおよびZrであり得る。アルカリ元素またはアルカリ化合物はLi、NaおよびKのうちの1種類以上を含むことができる。格子歪曲元素または格子歪曲化合物は任意の適切な元素または化合物、例えば、酸素、窒素、イオウ、セレン、酸化物、窒化物、硫化物、セレン化物、有機金属化合物(例えば、メタロセンまたは金属カルボニル、例えば、タングステンペンタシオニル(pentacyonyl)またはタングステンへキサカルボニル等)あるいはそれらの組み合わせであり得る。例えば、非限定的な例において、第1の遷移金属層202は少なくとも59原子%のモリブデン、5〜40原子%の酸素、例えば、約10〜20原子%の酸素および0.01〜1.5原子%のナトリウム、例えば、0.01〜0.4原子%のナトリウムを含むことができる。いくつかの実施形態において、第1の遷移金属層202は10
20〜10
23原子/cm
3 のナトリウムを含むことができる。
【0014】
第1の遷移金属層202は100〜500nmの厚み、例えば、200〜400nm、例えば、約300nmの厚みを有することができる。いくつかの実施形態において、第1の遷移金属層202は複数の副層、例えば、1〜20の副層、例えば、1〜10の副層を含むことができる。各々の副層は異なるナトリウム濃度を有することができ、第1の遷移金属層202内に勾配のついたナトリウム濃度プロファイルを生じる。
【0015】
いくつかの実施形態において、格子歪曲元素または格子歪曲化合物は、第1の遷移金属層202の多結晶格子を歪ませるために、第1の遷移金属層のものとは異なる結晶構造を有する。いくつかの実施形態において、遷移金属がモリブデンであるとき、格子歪曲元素は酸素であり得、これは面心立方酸化物組成物、例えば、MoO
2 およびMoO
3 (例えば、MoO
x 型格子歪曲化合物)によって歪曲された体心立方Mo格子の第1の遷移金属層202を形成する。特定の理論によって結びつけられることを望むことなしに、第1の遷移金属層202の密度は、格子歪みの結果としてのより大きな面間間隔により、減少し得る。これは層202からCIS系吸収層301へのアルカリ挿入(例えば、拡散)を強化する。いくつかの他の実施形態において、格子歪曲元素は、第1の遷移金属層202の他の不純物またはマトリックスと化合物を形成するのではなく、置換または格子間原子として存在し得る。
【0016】
場合によっては、太陽電池の第1の電極200は、基板100と第1の遷移金属層202との間に位置するアルカリ拡散障壁層201ならびに/または第1の遷移金属層202の上に位置する第2の遷移金属層203を含むことができる。追加障壁および/または接着層(図示せず)、例えば、Crおよび/または金属窒化物層を、電極200と基板100との間、例えば、随意のアルカリ拡散障壁層201と基板100との間にさらに堆積させることができる。
【0017】
随意のアルカリ拡散障壁層201および第2の遷移金属層203は任意の適切な材料を含むことができる。例えば、それらはMo、W、Ta、V、Ti、Nb、Zr、Cr、TiN、ZrN、TaN、VN、V
2 Nまたはそれらの組み合わせからなる群より独立して選択することができる。層201、202および203は互いに同じであるか、または異なる金属を含むことができる。
【0018】
いくつかの実施形態において、アルカリ拡散障壁層201は実質的に酸素を含まないものの、第1の遷移金属層202および/または第2の遷移金属層203が酸素を含むことができ、ならびに/またはアルカリ拡散障壁層201よりも低い密度を達成するために、アルカリ拡散障壁層201よりも高い圧力で堆積させることができる。例えば、層203は1〜10原子%の酸素、例えば、1〜5原子%の酸素および90〜95%のモリブデンを含むことができる。もちろん、他の不純物元素(例えば、前述した格子歪曲元素または格子歪曲化合物)を、酸素の代わりにまたはそれに加えて、第1の遷移金属層202および/または第2の遷移金属層203に含ませてそれらの密度を低下させることができる。例えば、ナトリウムを層202から層203に拡散させることができる。したがって、層202および203は層201よりも、3層すべてがモリブデン系層である場合、密度が高いことが望ましい。層203は、層203の厚み、組成および/または密度に基づき、吸収層301へのアルカリ拡散を制御する。層203は吸収層301の核生成層としても作用する。
【0019】
アルカリ拡散障壁層201は圧縮応力の状態にあり、第2の遷移金属層203のものよりも厚い厚みを有することができる。例えば、アルカリ拡散障壁層201は約100〜400nm、例えば、100〜200nmの厚みを有することができ、その一方で第2の遷移金属層203は約50〜200nm、例えば、50〜100nmの厚みを有する。
【0020】
アルカリ拡散障壁層201のより大きい密度およびより厚い厚みは第1の遷移金属層202から基板100のアルカリ拡散を実質的に減少させるか、またはそれを妨げる。他方、第2の遷移金属層203はアルカリ拡散障壁層201よりも大きい空隙率を有し、第1の遷移金属層202からp形半導体吸収層301へのアルカリ拡散を許容する。これらの実施形態において、少なくとも1つのp形半導体吸収層301を堆積させている最中および/またはその後に、アルカリが第1の遷移金属層202からより低密度の第2の遷移金属層203を介して少なくとも1つのp形半導体吸収層301に拡散し得る。
【0021】
その代わりに、随意のアルカリ拡散障壁層201および/または随意の第2の遷移金属層203を省略することができる。随意の第2の遷移金属層203が省略される場合、少なくとも1つのp形半導体吸収層301を第1の遷移金属層202上に堆積し、少なくとも1つのp形半導体吸収層301の堆積の最中またはその後に、アルカリを第1の遷移金属層202から少なくとも1つのp形半導体吸収層301に拡散させることができる。
【0022】
好ましい実施形態において、p形半導体吸収層301はセレン化銅インジウム、セレン化銅インジウムガリウム、セレン化銅インジウムアルミニウムまたはそれらの組み合わせから選択されるCIS系合金材料を含むことができる。層301は約1:1:2のI族対III族対VI族の原子比を有する化学量論的組成または約1:1:2以外の原子比を有する非化学量論的組成を有することができる。好ましくは、層301は僅かに銅不足であり、III族原子1個ごとおよびVI族原子2個ごとに僅かに1個未満の銅原子を有する。少なくとも1つのp形半導体吸収層を堆積させることは、アルゴンガスおよびセレン含有ガス(例えば、セレン蒸気またはセレン化水素)を含むスパッタリング雰囲気において、少なくとも2つの導電性ターゲットから半導体吸収層を反応性ACスパッタリングすることを含み得る。例えば、少なくとも2つの導電性ターゲットの各々が銅、インジウムおよびガリウムを含み、CIS系合金材料が二セレン化銅インジウムガリウムを含む。一実施形態において、p形半導体吸収層301は、第1の遷移金属層202から拡散した、0.005〜1.5原子%のナトリウム、例えば、0.005〜0.4原子%のナトリウムを含むことができる。前述したように、ナトリウム不純物は第1の遷移金属層202からCIS系合金層301に拡散し得る。一実施形態において、ナトリウム不純物はCIS系合金の結晶粒界で濃縮することがあり、10
19〜10
22原子/cm
3 の高さの濃度を有することがある。
【0023】
次に、n形半導体層302をp形半導体吸収層301の上に堆積させることができる。n形半導体層302は任意の適切なn形半導体材料、例えば、これらに限定されるわけではないが、ZnS、ZnSeまたはCdSを含むことができる。
透明上部電極とも呼ばれる第2の電極400はn形半導体層302の上にさらに堆積される。透明上部電極400は複数の透明導電層、例えば、これらに限定されるわけではないが、随意の抵抗性酸化アルミニウム亜鉛(RAZO)層401の上に位置する、酸化インジウムスズ(ITO)、酸化亜鉛(ZnO)または酸化アルミニウム亜鉛(AZO)層402のうちの1種類以上を含むことができる。もちろん、透明上部電極400は任意の他の適切な材料、例えば、ドープZnOまたはSnOを含むことができる。
場合によっては、1つ以上の反射防止(AR)膜(図示せず)を透明上部電極400の上に堆積させて電池における光吸収を最適化し、ならびに/または電流収集グリッド線を上部導電性酸化物の上に堆積させることができる。
【0024】
その代わりに、太陽電池を逆順で形成することもできる。この構成において、透明電極を基板の上に堆積させた後、n形半導体層を透明電極の上に堆積させ、少なくともと1つのp形半導体吸収層をn形半導体層の上に堆積させ、第1の遷移金属層を少なくとも1つのp形半導体吸収層の上に堆積させ、場合によっては、第2の遷移金属層を第1の遷移金属層とp形半導体吸収層との間に堆積させ、ならびに/またはアルカリ拡散障壁層を第1の遷移金属層の上に堆積させる。基板は透明基板(例えば、ガラス)であっても、不透明(例えば、金属)であってもよい。用いられる基板が不透明である場合、前述したように層のスタックを堆積させた後に初期基板を離層し、次いでガラスまたは他の透明基板をスタックの透明電極に結合することができる。
【0025】
前述した太陽電池は任意の適切な方法によって組み立てることができる。一実施形態において、そのような太陽電池の製造方法は、基板100を提供し、第1の電極200を基板100の上に堆積させ、少なくとも1つのp形半導体吸収層301を第1の電極200の上に堆積させ、n形半導体層302をp形半導体吸収層301の上に堆積させ、第2の電極400をn形半導体層302の上に堆積させることを含む。第1の電極200を堆積させることは第1の遷移金属層202を堆積させることを含む。スパッタリングがすべての層を基板上に堆積させるのに好ましい方法として説明されているが、いくつかの層はMBE、CVD、蒸発、メッキ等によって堆積させることもできる。いくつかの実施形態において、1つ以上のスパッタリングが反応性スパッタリングであり得る。
【0026】
いくつかの実施形態において、第1の遷移金属層202のスパッタリングに用いられるスパッタリングターゲットの少なくとも1つには格子歪曲元素または化合物が含まれ得る。例えば、いくつかの実施形態において、第1の遷移金属層202をスパッタリングすることは、遷移金属、アルカリ元素または化合物および格子歪曲元素または化合物の組み合わせを含むターゲット、例えば、DCマグネトロンモリブデン酸ナトリウムターゲットまたは複合モリブデンおよびモリブデン酸ナトリウムターゲットからのスパッタリングを含む。複合ターゲットは1〜10重量%の酸素、0.5〜5重量%のナトリウムおよび残部のモリブデンを含み得る。
【0027】
いくつかの他の実施形態において、第1の遷移金属層202をスパッタリングすることは、互いに異なる組成を有するスパッタリングターゲットの少なくとも1つの対からスパッタリングすることを含む。スパッタリングターゲットの少なくとも1つの対は、(i)第1のモリブデンターゲットおよび第2のモリブデン酸ナトリウムまたは酸化ナトリウムターゲット、(ii)第1の酸化モリブデンターゲットおよび第2のセレン化ナトリウム、フッ化ナトリウム、セレン化ナトリウムまたは硫酸ナトリウムターゲット、または(iii)酸素含有反応性スパッタリングシステムにおける第1のモリブデンターゲットおよび第2のナトリウムターゲットから選択される。好ましくは、ターゲットの少なくとも1つの対はマグネトロンスパッタリングシステムの同じ真空チャンバ内に位置する。
【0028】
その代わりに、反応性スパッタリングを用いて、スパッタリングターゲットからに代えて、またはそれに加えて、気相から、いくらかまたはすべての格子歪曲元素または化合物、例えば、酸素、窒素等を導入することができる。遷移金属およびアルカリ元素または化合物の両者、場合によっては、格子歪曲元素または化合物を含むターゲットを反応性スパッタリングにおいて用いることができる(例えば、複合モリブデンおよびモリブデン酸ナトリウムターゲットからもたらされる酸素に加えて、反応性スパッタリングによって追加の酸素を層202にもたらすことができる)。その代わりに、1つの遷移金属ターゲット(例えば、Moターゲット)および1つのアルカリ元素または化合物含有ターゲット(例えば、NaFターゲット)を含むターゲットの対を反応性スパッタリングにおいて用いることができる。一実施形態において、遷移金属ターゲットはアルカリを実質的に含まないことがある。本願明細書で用いられる場合、「アルカリを実質的に含まない」という用語は、アルカリ金属または他のアルカリ含有材料が意図的に合金化またはドープされてはいないが、避けがたいアルカリの不純物が存在し得ることを意味する。所望であれば、第1の遷移金属層202をスパッタリングするのに3以上のターゲットを用いることができる。
【0029】
例えば、
図2に示されるスパッタリング装置を用いることにより、第1の遷移金属層(
図2では示されず、
図1では層202として参照される)を基板100の上に堆積させることができる。アルカリ含有材料を含むターゲット(例えば、ターゲット37aおよび37b)および遷移金属を含むターゲット(例えば、27aおよび27b)はスパッタリング処理モジュール22a、例えば、真空チャンバ内に位置する。この非限定的な例において、遷移金属ターゲット27aおよび27bは回転するMo円柱であって、DC電源7による電力供給を受け、アルカリ含有ターゲット37aおよび37bは平面状NaFターゲットであって、RF発電機6によりマッチングネットワーク5を介して電力供給を受ける。ターゲットの型は交互であり、遷移金属ターゲット、例えば、
図2に示されるターゲット27bで終わる。隣接するターゲット間の距離は、交互の遷移金属とアルカリ含有流との間に十分な重複9が存在し、したがって、アルカリ含有遷移金属層を堆積させている最中の遷移金属およびアルカリ含有物質の相互混合が強化され得るほどに十分な短さである。
【0030】
いくつかの実施形態において、第1の遷移金属層202を堆積させることは、酸素および/または窒素豊富環境で行うことができ、第1のターゲットからの遷移金属のDCスパッタリングおよび第2のターゲットからのアルカリ化合物のパルスDCスパッタリング、ACスパッタリングまたはRFスパッタリングを含むことができる。スパッタリング法の任意の適切な変種を用いることができる。例えば、電気的に絶縁の第2のターゲット材料に対しては、ACスパッタリングは絶縁ターゲットスパッタリングに用いることができるACスパッタリング法の任意の変種、例えば、中波ACスパッタリング(medium frequency AC sputtering)またはACペアスパッタリング(AC pairs sputtering)を指す。一実施形態において、第1の遷移金属層を堆積させることは、遷移金属、例えば、モリブデンを含む第1のターゲットをDCスパッタリングし、アルカリ含有材料、例えば、ナトリウム含有材料を含む第2のターゲットを酸素豊富スパッタリング環境においてパルスDCスパッタリング、ACスパッタリングまたはRFスパッタリングすることを含み得る。
【0031】
基板100は、ホイルウェブ、例えば、金属ウェブ基板、ポリマーウェブ基板またはポリマーコート金属ウェブ基板であり得、ウェブ100に沿った仮想矢の方向に従ってスパッタリングプロセスの最中にスパッタリングモジュール22aを連続的に通過することができる。任意の適切な材料をホイルウェブに用いることができる。例えば、金属(例えば、ステンレス鋼、アルミニウムまたはチタン)または熱安定性ポリマー(例えば、ポリイミド等)を用いることができる。ホイルウェブ100を一定または可変速度で移動させて相互混合を強化することができる。
【0032】
前述した様々な実施形態において、ナトリウム含有材料にはナトリウムを含む任意の材料、例えば、セレン、イオウ、酸素、窒素または障壁金属(例えば、モリブデン、タングステン、タンタル、バナジウム、チタン、ニオブまたはジルコニウム)のうちの1種類以上とナトリウムとの合金または化合物、例えば、フッ化ナトリウム、モリブデン酸ナトリウム、フッ化ナトリウム、セレン化ナトリウム、水酸化ナトリウム、酸化ナトリウム、硫酸ナトリウム、タングステン酸ナトリウム、セレン酸ナトリウム、亜セレン酸ナトリウム、硫化ナトリウム、亜硫酸ナトリウム、チタン酸ナトリウム、メタバナジウム酸ナトリウム、オルトバナジウム酸ナトリウムまたはそれらの組み合わせが含まれ得る。リチウムおよび/またはカリウムの合金または化合物、例えば、これらに限定されるわけではないが、セレン、イオウ、酸素、窒素、モリブデン、タングステン、タンタル、バナジウム、チタン、ニオブまたはジルコニウムのうちの1種類以上とリチウムまたはカリウムとの合金または化合物を用いることもできる。遷移金属ターゲットには純粋金属ターゲット、金属合金ターゲット、金属酸化物ターゲット(例えば、酸化モリブデンターゲット)等が含まれ得る。
【0033】
一実施形態において、遷移金属はモリブデンであり、第1の遷移金属層202は酸素および少なくとも1種類のアルカリ元素、例えば、ナトリウムが意図的にドープされているモリブデンを含む。酸素は省略するか、または任意の格子歪曲元素または化合物で置換することができる。同様に、ナトリウムはリチウムまたはカリウムによって全体的または部分的に置換することができる。第1の遷移層202はモリブデン、酸素およびナトリウム以外の元素、例えば、堆積の間、この層に拡散する他の物質、例えば、インジウム、銅、セレンおよび/または障壁層金属を含み得る。
【0034】
少なくとも1つのp形半導体吸収層301に拡散するナトリウムの量は、第1の遷移層内の堆積モリブデン副層の厚みおよびナトリウム含有副層の厚みを独立して制御することによって、モリブデンを含む第1のターゲットのスパッタリング速度およびナトリウムを含む第2のターゲットのスパッタリング速度を独立して調整することによって調整することができる。ナトリウム含有モリブデン層中の厚みに応じて可変ナトリウム含有率も第1の遷移金属層202内の堆積モリブデン副層の厚みおよびナトリウム含有副層の厚みを独立して制御することによって発生させることができる。モリブデン副層およびナトリウム含有副層は、第1の遷移金属層202を堆積させるか、少なくとも1つのp形半導体吸収層301を堆積させるか、または随意の堆積後のアニーリングプロセスを行うことのうちの少なくとも1つの最中に相互混合するようになり、連続ナトリウム含有モリブデン層を形成し得る。
【0035】
場合によっては、第1の電極200を堆積させることは、基板100と第1の遷移金属層202との間にアルカリ拡散障壁層201を堆積させ、第1の遷移金属層202の上に第2の遷移金属層203を堆積させることをさらに含む。いくつかの実施形態において、アルカリ拡散障壁層201をスパッタリングすることは、第2の遷移金属層203をスパッタリングすることよりも低い圧力で生じる。
【0036】
いくつかの実施形態において、アルカリ拡散障壁層201をスパッタリングすることはマグネトロンスパッタリングシステムの第1の真空チャンバ内の第1のスパッタリング環境の下で生じ、その一方で第1および/または第2の遷移金属層202、203をスパッタリングすることは、第1の真空チャンバとは異なる、マグネトロンスパッタリングシステムの第2の真空チャンバ内の第2のスパッタリング環境の下で生じる。第2のスパッタリング環境は、アルゴン圧、酸素圧または窒素圧のうちの少なくとも1つの点で第1のスパッタリング環境と異なる。例えば、アルカリ拡散障壁層201をスパッタリングすることは実質的に酸素を含まない雰囲気中で遷移金属ターゲットから生じ、その一方で第1および/または第2の遷移金属層202、203をスパッタリングすることは酸素含有雰囲気中で生じる。
【0037】
例えば、いくつかの実施形態において、アルカリ拡散障壁層201を堆積させることは金属ターゲットから0.8〜1.2mTorr圧、例えば、約1mTorr以下で不活性環境においてスパッタリングすることを含み、その一方で第1および/または第2の遷移金属層202、203を堆積させることは遷移金属ターゲットから2〜8mTorr圧で酸素および/または窒素豊富環境においてスパッタリングすることを含むことができる。アルカリ拡散障壁層201の堆積および第2の遷移金属層203の堆積に用いられるスパッタリング出力も異なり得る。例えば、アルカリ拡散障壁層201の堆積に用いられるスパッタリング出力は第2の遷移金属層203の堆積に用いられるものよりも高くても低くてもよい。
好ましくは、層202を少なくとも1つのアルカリ含有ターゲットからスパッタリングし、その一方で層203は実質的にアルカリを含まない1つ以上のターゲットからスパッタリングする。例えば、層203は1つ以上のモリブデンターゲットから酸素含有環境中で反応性スパッタリングすることができる。
【0038】
第1の遷移金属層202をスパッタリングすることは層203のものと同じであるか、または異なる真空チャンバ内で生じ得る。例えば、格子歪曲元素/化合物を含む第1の遷移金属層202を第2の遷移金属層203が堆積される第2の真空チャンバ内で堆積させることができる。その代わりに、第1の遷移金属層202をスパッタリングすることは、第1および第2の真空チャンバとは異なる、マグネトロンスパッタリングシステムの第3の真空チャンバ内で生じてもよい。
【0039】
いくつかの実施形態において、(アルカリ拡散障壁層201を堆積させ、第1の遷移金属層202を堆積させ、第2の遷移金属層203を堆積させることを含む)第1の電極200を堆積させることは、同じスパッタリング装置内でアルカリ拡散障壁層201をスパッタリングし、第1の遷移金属層202をスパッタリングし、第2の遷移金属層203をスパッタリングすることを含む。
【0040】
より好ましくは、第1の電極200を堆積させ、少なくとも1つのp形半導体吸収層301を堆積させ、n形半導体層302を堆積させ、かつ第2の電極400を堆積させることは、基板100(この実施形態において、好ましくは、ウェブ基板)の上にアルカリ拡散障壁層201、第1の遷移金属層202、第2の遷移金属層203、p形吸収層301、n形半導体層302および第2の電極400の1つ以上の導電性膜を、独立して分離されて真空を破壊することなしに接続された複数の処理モジュールの対応する処理モジュール内で、ウェブ基板が独立して分離されて接続された複数の処理モジュールを通過しながら投入モジュールから排出モジュールまで連続的に伸長するようにウェブ基板100を投入モジュールから排出モジュールまで独立して分離されて接続された複数の処理モジュールを通過させながらスパッタリングする。処理モジュールの各々はウェブ基板100上に材料をスパッタリングするための1つ以上のスパッタリングターゲットを含むことができる。
【0041】
例えば、
図3(平面図)に示されるような太陽電池を製造するためのモジュール式スパッタリング装置を層の堆積に用いることができる。この装置は投入、またはロード、モジュール21aおよび対称性排出、またはアンロード、モジュール21bを備える。投入および排出モジュールの間には処理モジュール22a、22b、22cおよび22dが存在する。処理モジュール22の数は製造されている装置の必要条件に合致するように変更することができる。各々のモジュールは、必要な真空をもたらし、およびスパッタリング動作の最中に処理ガス流を扱うために、汲み上げ装置23、例えば、真空ポンプ、例えば、高処理ターボ分子ポンプを有する。各々のモジュールは処理ガスの最適な汲み上げがもたらされるように選択される他の位置に配置されたいくつかのポンプを有することができる。これらのモジュールはスリット弁24で互いに接続し、この弁はモジュール間で処理ガスが混合するのを防ぐために非常に狭い低コンダクタンス隔離スロットを含む。これらのスロットは、隔離をさらに増す必要がある場合、別々に汲み上げることができる。他のモジュールコネクタ24を用いることもできる。その代わり、所望であれば、単一の巨大チャンバを内部的に隔離してモジュール領域を有効にもたらすこともできる。その全体が本願明細書において参照により援用されている、2004年10月25日に出願された米国特許出願公開第2005/0109392号(特許文献2)は、接続されたモジュールを有する真空スパッタリング装置を開示する。
【0042】
ウェブ基板100はローラ28または他の装置によって機械全体を移動する。追加のガイドローラを用いることができる。
図3に示されるローラは模式的であり、非限定的な例である。あるローラはウェブを広げるために弓状であってもよく、あるものはウェブの舵取りをもたらすために移動することができ、あるものはサーボ制御装置にウェブ張力フィードバックを提供することができ、他のものはウェブを望ましい位置に移動させるための単なるアイドラであり得る。したがって、投入スプール31および随意の排出スプール31bは能動的に駆動され、ウェブが機械全体を通して一定の張力で維持されるようにフィードバック信号によって制御される。加えて、投入および排出モジュールは、ウェブ100を切断し、リーダまたはトレーラ部に接合してロールのローディングおよびアンローディングを容易にする、ウェブ接合領域または装置29を各々含むことができる。いくつかの実施形態において、ウェブ100は、排出スプール31bに巻き上げられる代わりに、排出モジュール21b内のウェブ接合装置29によって太陽モジュール内にスライスされ得る。これらの実施形態において、排出スプール31bを省略することができる。非限定的な例として、いくつかの装置/ステップを省略するか、または任意の他の適切な装置/ステップによって置き換えることができる。例えば、いくつかの実施形態において、弓状ローラおよび/またはステアリングローラを省略することができる。
【0043】
プロセスの必要条件に応じてウェブ加熱をもたらす必要がある位置にヒーターアレイ30が配置される。これらのヒーター30はウェブの幅にわたって配置された高温石英ランプのマトリックスであり得る。赤外線センサがフィードバック信号をもたらしてランプ出力を自動制御し、ウェブ全体に均一な加熱をもたらす。一実施形態において、
図3に示されるように、ヒーターがウェブ100の一方の側に配置され、スパッタリングターゲット27a〜eおよび37a〜bがウェブ100の他方の側に配置される。スパッタリングターゲット27および37は二重円筒状ロータリーマグネトロンに搭載されてもよく、または平板マグネトロンスパッタリング源であり得、またはRFスパッタリング源であり得る。
【0044】
予備洗浄した後、基板100を、まず、少なくとも表面吸着水を除去するのに十分な熱を供給する、モジュール21a内のヒーターアレイ30fの側を通過させることができる。次に、ウェブを、円筒状ロータリーマグネトロンとして形成された特別なローラであり得る、ローラ32の上を通過させることができる。これは導電性(金属性)ウェブの表面を、それがローラ/マグネトロンの周囲を通過するとき、DC、ACまたはRFスパッタリングにより連続的に浄化することを可能にする。スパッタリングされたウェブ材料は周期的に変化するシールド33に捕捉される。好ましくは、別のローラ/マグネトロンを加えて(図示せず)ウェブ100の背面を浄化することができる。ウェブ100の直接スパッタ浄化はその機械の全体にわたって同じ電気的バイアスをウェブ上に存在させるが、それは、関与する特定のプロセスによっては、その機械の他の区画では望ましいものではない可能性がある。このバイアスは、マグネトロンの代わりに直線イオン銃を用いるスパッタ浄化によって回避することができ、またはこの巨大ロールコーターへの積載に先立ち、別のより小さい機械において浄化を達成することができる。その上、コロナグロー放電処理をこの位置で電気的バイアスを導入することなしに行うことができる。
【0045】
次に、ウェブ100を弁24を介して処理モジュール22aに送る。ウェブ100に沿った仮想矢の方向に従い、層の完全なスタックを1回の連続プロセスで堆積させることができる。第1の遷移金属層202は、
図3(および前に
図1)に示されるように、処理モジュール22aにおいてウェブ100上にスパッタリングすることができる。場合によっては、処理モジュール22aは3対のターゲットを含むことができ、ターゲットの各々の対は、ターゲットの型が交互であり、かつ一連のターゲットが遷移金属ターゲットで終わるような方法で配置された、遷移金属ターゲット27およびアルカリ含有ターゲット37を含む。アルカリ含有ターゲットは遷移金属ターゲットのものとは異なる組成を有する。その代わりに、単一のターゲット27のみを用いることができ、または同じ組成(例えば、複合モリブデンおよびモリブデン酸ナトリウム)を有する複数のターゲット27を用いることもできる。
【0046】
続いて、少なくとも1つのp形半導体吸収層301の堆積のために、ウェブ100を次の処理モジュール22bに送る。
図3に示される好ましい実施形態において、少なくとも1つのp形半導体吸収層301を堆積させることは、半導体吸収層を少なくとも1対の2つの導電性ターゲット27c1および27c2からアルゴンガスおよびセレン含有ガスを含むスパッタリング雰囲気中で反応性交流(AC)マグネトロンスパッタリングすることを含む。いくつかの実施形態において、2つの導電性ターゲット27c1および27c2の対は同じターゲットを含む。例えば、少なくとも2つの導電性ターゲット27c1および27c2の各々は銅、インジウムおよびガリウムを含むか、または銅、インジウムおよびアルミニウムを含む。セレン含有ガスはセレン化水素またはセレン蒸気であり得る。他の実施形態において、ターゲット27c1および27c2は互いに異なる材料を含むことができる。輻射ヒーター30は必要とされる処理温度、例えば、約400〜800℃、例えば、CIS系合金堆積に好ましい約500〜700℃にウェブを維持する。
【0047】
いくつかの実施形態において、少なくとも1つのp形半導体吸収層301は傾斜CIS系材料を含むことができる。この実施形態において、処理モジュール22bは、
図4に示されるように、少なくともさらに2対のターゲット(227および327)をさらに含む。第1のマグネトロン対127(27c1および27c2)は二セレン化銅インジウムの層のスパッタリングに用いられ、その一方でマグネトロンターゲットの次の2対227、327(27c3、27c4および27c5、27c6)はガリウム(またはアルミニウム)の量を増加させながら堆積層をスパッタリングし、したがって、バンドギャップを増加および傾斜化する。ターゲット対の総数は変化し得るものであり、例えば、2〜10対、例えば、3〜5対であり得る。これはバンドギャップを底部の約1eVから層の頂部近傍の約1.3eVまで傾斜化する。傾斜化CIS材料の堆積の詳細が、その全体が本願明細書において参照により援用されている特許文献2に記載されている。
【0048】
場合によっては、処理モジュール21aおよび22aの間に追加された処理モジュール内でアルカリ拡散障壁層201を基板100の上にスパッタリングすることができる。処理モジュール22aおよび22bの間に追加された処理モジュール内で第2の遷移金属層203を第1の遷移金属層202の上にスパッタリングすることができる。さらに、所望であれば、1つ以上の処理モジュール(図示せず)を追加して追加障壁層および/または接着層をスタックに堆積させることができる。
【0049】
いくつかの実施形態において、1つ以上の処理モジュール(図示せず)を処理モジュール21aおよび22aの間にさらに追加し、第1の電極200を基板の前側に堆積させる前に、基板100の背面上に背面保護層をスパッタリングすることができる。その全体が本願明細書において参照により援用されている、2009年2月20日に出願された「Protective Layer for Large-Scale Production of Thin-Film Solar Cells」という米国特許出願第12/379,428号(特許文献3)(代理人整理番号:075122/0139)にそのような堆積法が記載されている。
【0050】
次に、n形半導体層302および透明上部電極400をそれぞれ堆積させるために、ウェブ100を処理モジュール22cおよび22dに送ることができる。任意の適切な型のスパッタリング源、例えば、回転ACマグネトロン、RFマグネトロンまたは平板マグネトロンを用いることができる。随意の1つ以上のAR層をスパッタリングするために、追加のマグネトロンステーション(図示せず)または追加の処理モジュール(図示せず)を加えることができる。
最後に、ウェブ100を排出モジュール21bに送り、巻き取りスプール31bに巻き取るか、または切断装置29を用いて太陽電池へとスライスする。
【0051】
非限定的な実施例
実施例I
図5に示される構造を有する非限定的な実施例を以下のステップによって得る。第1に、モリブデン障壁層201を基板の上に堆積させる。第2に、第1の遷移金属層202をモリブデン障壁層201の上に複合モリブデンおよびモリブデン酸ナトリウムターゲットからのスパッタリングによって堆積させる。最後に、CIGS層301を第1の遷移金属層202の上に堆積させ、
図5aに示される構造を得る。
図5bは膜スタックを通してのCu、In、Ga、Se、OおよびMoのAES深さプロファイルを示す。CIGS層301および第1の遷移金属層202(ナトリウム−酸素含有モリブデン層)の界面はCu/In/Ga/SeおよびMoスペクトルによって明瞭に決定することができる。同様に、第1の遷移金属層202およびMo層201の界面は酸素のAESスペクトルによって明瞭に決定することができる。この非限定的な例の第1の遷移層202は約20原子%の酸素を含み、
図5bに示されるように、約500nm(1.9ミクロンから2.4ミクロンまでの深さ)の厚みを有する。もちろん、第1の遷移層202は、スパッタリングターゲットおよび/またはスパッタリングパラメータを変化させることにより、異なる組成および/または厚みを有することができる。
【0052】
実施例II
図6aに示される非限定的な実施例を以下のステップによって得る。第1に、モリブデン障壁層201を基板100の上にモリブデンターゲットからのDCスパッタリングによって約0.5〜1.5mTorrの低圧下で堆積させる。第2に、第1の遷移金属層202をモリブデン障壁層201の上に複合モリブデンおよびモリブデン酸ナトリウムターゲットのアレイからのDCスパッタリングによって約3〜6mTorrの中程度スパッタリング圧の下で堆積させる。最後に、別のモリブデン層211を第1の遷移金属層202の上に堆積させ、
図6aに示される構造を得る。したがって、この非限定的な例において、第1の遷移金属層202はナトリウムおよび酸素が意図的にドープされているモリブデン層であり、その一方でモリブデン層201および211はそうではない。
図6bに示されるように、SIMS深さプロファイルは、第1の遷移金属層202内では、ナトリウム濃度プロファイルが酸素濃度プロファイルと明確に相関することを示す。特定の理論に結びつけられることを望むものではないが、酸化モリブデンによる格子歪みの程度がより高いとき、より多量のナトリウム不純物が組み込まれ得るものと信じられる。
障壁層201および211は、層201および211のより高密度のモリブデンが有効なナトリウム拡散障壁として機能するため、含まれるナトリウムが実質的により少ない。
【0053】
実施例III
この非限定的な実施例において、第1の遷移金属層202を鋼ウェブ基板100の上にスパッタ堆積させた後、CIGS層301を第1の遷移金属層202の上に堆積させ、CdS層302をCIGS層301の上に堆積させることにより、
図7aに示される構造を有するサンプルa〜cを得る。サンプルa〜cの第1の遷移金属層202は、それぞれ、3つの複合モリブデンおよびモリブデン酸ナトリウムターゲットからの6kW、9.5kWおよび13kWのスパッタリング出力でのスパッタリングによって堆積させる。
図7bに示される、サンプルa〜cの膜スタックを通してのSIMS深さプロファイルは、得られるサンプルCのCIGS層中のナトリウム濃度(約9×10
20原子/cm
3 のピーク濃度を有する)がサンプルbのものよりも高く、ひいてはサンプルaのもの(約3×10
20原子/cm
3 のピーク濃度を有する)よりも高いことを示す。これは第1の遷移金属層202の厚みを増加させることで第1の遷移金属層202からのナトリウム拡散を強化できることを示す。
【0054】
実施例IV
この実施例は、本発明の非限定的な例としての、ナトリウムドープCIGS層301を含む太陽電池Aの効率を実質的にナトリウムを含まないCIGS層301を含む従来の太陽電池Bのものと比較する。
図8は太陽電池AおよびBの電流−電圧プロットを示す。実線はナトリウムドープCIGS層301を含む太陽電池AのI−V曲線を指し、その一方で破線は実質的にナトリウムを含まないCIGS層301を含む太陽電池BのI−V曲線を指す。
図8に示されるように、太陽電池Aは11.3%の効率(η)を有し、これは従来の太陽電池Bのもの(5.4%)より著しく高い。
【0055】
実施例V
この実施例において、太陽電池の第1の遷移金属層202を、様々なスパッタリング出力の下、2つのスパッタリングシステム、システムAおよびシステムBで堆積させる。
図9のy軸は太陽電池の効率を指し、その一方でx軸は用いられるスパッタリング出力を指す。
図9は、2つの異なるCIGS組成(線Aおよび線B)が、Na含有率を最適化して効率が最大化されるように異なるスパッタリング出力の下でスパッタ堆積された2つのナトリウム含有モリブデン層の上に形成されることを示す。この実験は、組成物AのCIGS吸収層を堆積させながら、ナトリウム含有モリブデンターゲットのスパッタリング出力を調整することによって行った(この場合、より高いCu含有率、より高いセレン対金属比およびこの組成物に対して独立して最適化された基板温度)。組成物Bの第2のCIGS吸収層は、異なるCIGターゲット、より低い全Cu含有率、より低いセレン対金属比およびこの組成物に対して独立して最適化された基板温度の組み合わせを用いて堆積させた。
一貫して、得られる太陽電池の効率はスパッタリング出力が増加するときに最初は増加し、最適スパッタリング出力に到達した後に低下する。特定の理論に結びつけられることを望むものではないが、最適スパッタリング出力を用いるときに最適ナトリウム濃度が得られるものと信じられる。
図9に示される結果は、最適スパッタリング出力がスパッタリングシステム特異的であり得ることも示す。所望であれば、特定のスパッタリングパラメータを変化させることができる。
【0056】
本発明が、前に説明された、本願明細書に示される実施形態および例に限定されるものではなく、添付の特許請求の範囲内にある任意のすべての変形をも包含することを理解するべきである。例えば、特許請求の範囲および明細書から明らかであるように、すべての方法におけるステップは、本願明細書で示されたか、または特許請求の範囲に規定された正確な順序で行う必要はなく、むしろ本発明の太陽電池の適切な形成を可能にする任意の順序で行われるものである。