(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施の形態を図面に従って説明する。
実施の形態1.
[画像形成装置の構成]
図1は、実施の形態1における画像形成装置100の構成を示す概略図である。この画像形成装置100は、現像剤を用いて記録媒体上に画像を形成する装置であり、ここでは、ブラック(K)、イエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)の4色を印刷可能なカラー用電子写真式プリンタである。
【0015】
画像形成装置100は、ロワーフレーム1と、ロワーフレーム1の上方に配置されるトップカバー2とを備える。
【0016】
ロワーフレーム1には、記録媒体としての記録用紙が搬送される概ねS字状の用紙搬送路10が形成されている。用紙搬送路10には記録用紙を搬送する用紙搬送ローラ15〜18が配置されており、記録用紙は図中矢印Xで示される用紙搬送方向に搬送される。用紙搬送方向における用紙搬送路10の、上流側端部には記録用紙を収納する給紙カセット11が配置され、下流側端部には印刷後の記録用紙が載置されるスタッカ12が配置される。
【0017】
また、ロワーフレーム1には、用紙搬送路10に沿って、用紙搬送方向の上流側から順に、給紙カセット11から記録用紙を繰り出す用紙繰り出し部13、繰り出された記録用紙の紙厚を検知する検知部14、および繰り出された記録用紙を静電効果により転写ベルト21に付着させて搬送する転写ベルトユニット20が設けられている。
【0018】
転写ベルトユニット20上には、転写ベルト21との間で転写ベルト21上の記録用紙を挟む位置に、用紙搬送方向上流側より順に画像形成ユニット30K,30Y,30M,30C(以下、適宜「画像形成ユニット30」と総称する)が一列に配列されている。画像形成ユニット30K,30Y,30M,30Cは、それぞれ、ブラック(K)、イエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)の現像剤としてのトナーを収容し、各色のトナーを用いて転写ベルト21上の記録用紙にトナー像を形成する。画像形成ユニット30K,30Y,30M,30Cは、画像形成装置本体に対して着脱可能に配置される。なお、画像形成ユニット30のように、着脱可能なまたは可動な構成要素の個々に対して、その構成要素を除いた部分を画像形成装置本体と称す場合がある。
【0019】
ロワーフレーム1において、用紙搬送方向における転写ベルトユニット20の下流側には、転写ベルトユニット20からの記録用紙上に形成されたトナー像を当該記録用紙に定着させる定着装置40が設けられている。定着装置40は、加熱ローラ41と、加熱ローラ41に当接するバックアップローラ42とを有し、記録用紙上に転写されたトナーを加圧および加熱することによって定着させる。定着装置40によってトナー像が定着された記録用紙は、後段の用紙搬送ローラ17,18によってスタッカ12に搬送される。
【0020】
トップカバー2は、ロワーフレーム1の上部を開閉可能に、ロワーフレーム1に対して回転軸3回りに回転可能に支持されている。トップカバー2を開けてロワーフレーム1の上部を開放することにより、画像形成ユニット30、定着器40、および転写ベルトユニット20の交換が可能となる。
【0021】
[画像形成ユニットの構成]
図2は、ブラック(K)の画像形成ユニット30Kの構成を示す概略図である。以下、
図2を参照して、画像形成ユニット30Kの構成を説明する。なお、画像形成ユニット30Y,30M,30Cの構成については、収容されているトナーの色が異なる点を除き、画像形成ユニット30Kの構成と同様であるので、ここでは説明を省略する。
【0022】
図2に示すように、画像形成ユニット30Kは、像担持体としての感光体31を有する。感光体31は、例えば円筒状の感光体ドラムであり、矢印R1方向に回転可能に配置される。感光体31の周囲には、その回転方向上流側から順に、帯電装置としての帯電ローラ32、潜像形成装置としての露光装置33、現像装置34、転写装置としての転写ローラ35、およびクリーニング装置36が配置される。これらのうち、感光体31、帯電ローラ32、現像装置34、およびクリーニング装置36は、画像形成ユニット30Kに含まれる。露光装置33はトップカバー2に設けられ、転写ローラ35はロワーフレーム1側の転写ベルトユニット20に設けられる(
図1参照)。
【0023】
帯電ローラ32は、感光体31の表面に電荷を供給して当該表面を帯電させる。帯電ローラ32は、感光体31の表面に一定の圧力で接触し、
図2の矢印R2方向に回転する。露光装置33は、帯電された感光体31の表面に、例えばLEDヘッド等の光源による光を照射して静電潜像を形成する。現像装置34は、静電潜像が形成された感光体31の表面に、所定色(ここではブラック)のトナーTを付着させてトナー像を形成する。
【0024】
転写ローラ35は、感光体31上に形成されたトナー像を記録用紙Pに転写する。転写ローラ35は、導電性のゴム等によって形成され、転写ベルト21を介して感光体31に圧接された状態で配置され、
図2の矢印R3方向に回転する。転写ローラ35には、トナー像の転写時に、感光体31の表面と転写ローラ35の表面との間に電位差を持たせるための電圧が印加される。記録用紙P上に転写された転写済みトナーT1は、定着装置40によって記録用紙P上に定着される。
【0025】
クリーニング装置36は、感光体31の転写後の表面に残留した転写残トナーT2を除去する。クリーニング装置36は、感光体31の表面から転写残トナーT2を掻き落とすクリーニングブレード36aと、掻き落とされた転写残トナーT2を収容する廃トナー収集部36bとを有する。クリーニングブレード36aは、弾性体で形成され、そのエッジ部が感光体31の表面に一定の圧力で接触するように配置されている。
【0026】
以下、現像装置34の構成について説明する。
現像装置34は、現像剤収容器としてのトナーカートリッジ50、現像剤貯蔵部としてのトナー貯蔵部51、現像剤供給部材としてのトナー供給ローラ52、現像剤規制部材としての現像ブレード53、および現像部材または現像剤担持体としての現像ローラ54を有する。
【0027】
トナーカートリッジ50は、現像剤としてのトナーTを収容する容器である。トナーカートリッジ50は、トナーTを収容するトナー収容室50aと、トナー収容室50aに収容されたトナーTを外部に排出するためのトナー排出口50bとを有する。トナー排出口50bは、トナーカートリッジ50の下部に形成される。
【0028】
トナー貯蔵部51は、トナーカートリッジ50の下方に設けられ、トナーカートリッジ50から排出されたトナーTを貯蔵する。トナー供給ローラ52は、トナー貯蔵部51内のトナーTを現像ローラ54に供給する。現像ブレード53は、現像ローラ54上のトナーTを薄層化する。現像ローラ54は、トナーカートリッジ50から供給されるトナーTを用いて、感光体31上に形成された静電潜像を現像する。具体的には、現像ローラ54は、感光体31に一定の圧力で接触し、感光体31の表面に形成された静電潜像を薄層化されたトナーで顕像化すなわち現像する。
【0029】
ここでは、トナーカートリッジ50は、トナー貯蔵部51およびトナー供給ローラ52の上方において、画像形成ユニット本体30aに対して着脱自在に配置される。画像形成ユニット本体30aは、画像形成ユニット30Kのうちトナーカートリッジ50を除いた部分である。画像形成ユニット本体30aは、外側がモールド39で構成されている。現像ローラ54とトナー供給ローラ52とは、互いに一定の圧力で当接するように、互いに平行に配置され、それぞれ
図2の矢印R4,R5方向に互いに同じ方向に回転する。現像ローラ54と現像ブレード53とは、
図2に示すように、例えば現像ブレード53の折り曲げ部分が現像ローラ54の周面に一定の圧力で接触するように、互いに平行に配置される。
【0030】
なお、感光体31、帯電ローラ32、現像ローラ54など、画像形成装置100に含まれる回転体は、図示しない駆動源からギアなどを経由して動力を受けて回転する。
【0031】
[トナーカートリッジの構成]
以下、トナーカートリッジ50の構成について詳しく説明する。
図3は、トナーカートリッジ50の外観斜視図である。
図3に示すように、トナーカートリッジ50は、第1の収容部材としての容器本体60と、第2の収容部材としての側面蓋80とを有する。トナーカートリッジ50は、容器本体60に側面蓋80が取り付けられることにより、または容器本体60と側面蓋80とが係合することにより構成される。
【0032】
図4および
図5は、
図3のトナーカートリッジ50の側断面図である。
図4および
図5には、
図3において破線で示される切断面CPでトナーカートリッジ50を切断し、矢印A方向から見た場合の断面図が示されている。
図4ではトナーカートリッジ50内に収容されているトナーTが示されており、
図5ではトナーTの図示は省略されている。
図6は、容器本体60と側面蓋80とが嵌合する前の状態におけるトナーカートリッジ50の外観斜視図である。なお、以下の説明では、容器本体60を側面蓋80に嵌入する方向(
図6の矢印F方向)を「嵌入方向」と称する。
【0033】
容器本体60は、内部にトナーTを収容するための容器であり、トナー収容室50aを構成する内部空間61と、内部空間61を開放する開口部62とを有する。具体的には、容器本体60は、内部空間61を包囲するように嵌入方向に延在する周壁部63を有し、嵌入方向における周壁部63の一方側の端部に嵌入方向に開口する開口部62が設けられ、他方側の端部は側壁部64によって閉塞される。容器本体60は、嵌入方向に平行な平面で切断したとき、略コの字状の断面形状を有する。
【0034】
容器本体60は、側面蓋80と嵌合する第1の嵌合部としての嵌入部65を有する。嵌入部65は、側面蓋80の内側に嵌入する部分であり、嵌入方向における容器本体60の開口部62側の端部に形成される。
【0035】
容器本体60(具体的には周壁部63)の下部には、内部空間61に収容されたトナーTを外部に排出するためのトナー排出口50bが形成され、内部空間61の下部には、トナー排出口50bを開閉するためのシャッタ部材66が配置される。また、シャッタ部材66には、シャッタ部材66を回動するためのレバー部材66Aが固定されている。レバー部材66Aを回動することで、シャッタ部材66が容器本体60に対して回動し、シャッタ部材66によるトナー排出口50bの開閉が可能になる。
【0036】
側面蓋80は、容器本体60と嵌合し、内部空間61を密閉するための蓋体である。側面蓋80は、開口部62を塞ぐように容器本体60に取り付けられる。具体的には、側面蓋80は、開口部62と対向する側壁部81と、側壁部81の周縁部から容器本体60側に嵌入方向に延び、嵌入部65と嵌合する周壁部82とを有する。側面蓋80は、嵌入方向に平行な平面で切断したとき、略コの字状の断面形状を有する。
【0037】
容器本体60と側面蓋80との間には、内部空間61内のトナーTをシールするシール部材90が配置される。シール部材90は、容器本体60と側面蓋80との間を塞ぐ部材であり、トナーカートリッジ50からのトナーTの漏出を防止する役割を果たす。
【0038】
図7は、
図5のうち破線で囲まれた嵌合部分Nの拡大詳細図である。
図8は、容器本体60と側面蓋80とが嵌合する前の状態における
図5の嵌合部分Nの拡大詳細図である。
図9は、嵌合部分Nにおける容器本体60の先端部分の拡大図である。
図10は、シール部材90が取り付けられた側面蓋80を
図6の矢印F方向から見たときの図である。
図10において、シール部材90は斜線ハッチングで示されている。以下、
図7〜
図10を参照して、容器本体60と側面蓋80との嵌合構造について詳しく説明する。
【0039】
図7および
図8に示すように、側面蓋80の周壁部82は、容器本体60の嵌入部65と嵌合する第2の嵌合部としての嵌合面83を有する。具体的には、側面蓋80は、開口部62と対向する蓋面としての底面84を有し、嵌合面83は、底面84から容器本体60側に延びる壁面である。ここでは、嵌合面83は嵌入方向に延在し、底面84は嵌入方向(または嵌合面83)に対して垂直に設けられている。嵌合面83は周壁部82の内壁面であり、底面84は側壁部81の内壁面である。側壁部81および底面84は、嵌入方向におけるトナーカートリッジ50の一端側に位置するように形成される。
【0040】
シール部材90は、側面蓋80の底面84と嵌合面83とに当接して配置される。シール部材90は、弾性材料で形成される弾性部材であり、ここではスポンジで形成されている。シール部材90は、例えば、側面蓋80の底面84上に均一の厚さで底面84に沿って貼り付け固定される。
【0041】
容器本体60の嵌入部65は、嵌入方向に延在し、内壁面67、圧接部としての圧接面68、および外壁面69を有する。
【0042】
内壁面67は、側面蓋80の底面84に向かって延び、内部空間61を画定し、内部空間61に収容されたトナーTを規制する面である。ここでは、内壁面67は、嵌合面83と平行である。また、内壁面67は、底面84に対して垂直である。
【0043】
圧接面68は、シール部材90に圧接する面である。具体的には、圧接面68は、内壁面67と連続して形成され、シール部材90に当接して側面蓋80との間でシール部材90を圧縮する面である。また、圧接面68は、容器本体60の開口部62側の端部(または嵌入方向下流側の端部)に形成された端面であり、後述するラッチ70よりも嵌入方向下流側の端部に形成される。圧接面68によるシール部材90の圧接方向は、嵌入方向と平行である。
【0044】
高いシール性を得る観点より、圧接面68は、シール部材90を挟んで嵌合面83と対向する傾斜面68aを有する。傾斜面68aは、開口部62(またはシール部材90)に近づくほど嵌合面83から離れる方向へ傾斜する。また、圧接面68は、蓋部材80側の先端に位置し、シール部材90と当接する先端部68bを有する。
図8に示すように、圧接面68はシール部材90の表面である当接面91と当接し、先端部68bは、圧縮変形前のシール部材90の当接面91と平行に形成される。ここでは、先端部68bは、底面84に対向し、嵌入方向、嵌合面83、および内壁面67に対して垂直に延びる平面である。
【0045】
外壁面69は、圧接面68と連続して内壁面67の反対側に形成された面である。外壁面69は、側面蓋80の嵌合面83と対向する。外壁面69と嵌合面83とは互いに近接しているが、外壁面69と嵌合面83との間には隙間Gが生じる。この隙間Gは、シール部材90によって内部空間61と遮断される。
【0046】
さらに、容器本体60は、第1の係合部としてのラッチ70を有し、側面蓋80は、ラッチ70と係合する第2の係合部としての穴85を有する。ラッチ70と穴85とは、シール部材90と圧接面68とが当接した状態で係合する。具体的には、ラッチ70と穴85とは、互いに係合することにより、圧接面68がシール部材90に当接してシール部材90を圧縮した状態で、容器本体60と側面蓋80とを相対的に位置決めするように構成される。ラッチ70は、外壁面69から嵌合面83に向かって突出するように形成された凸部であり、穴85は、嵌合面83から外壁面69の反対方向に窪むように形成された凹部である。ラッチ70には、嵌入方向の後方(上流側)ほど突出量(または外壁面69からの高さ)が大きくなるように外壁面69に対して傾斜した傾斜面70aが形成されている。穴85は、周壁部82を貫通する貫通穴である。
図6に示すように、ラッチ70および穴85は、本例では4つずつ設けられる。
【0047】
また、容器本体60には、嵌入部65の嵌入方向上流側の端部に、側面蓋80の嵌入方向上流側の端部80aと対向または当接する対向面60aが形成されている。
【0048】
[画像形成装置の動作]
以下、画像形成装置100の印刷時の動作について説明する。
図1を参照すると、画像形成装置100は、図示しない上位装置等から印刷指示を受けると、用紙繰り出し部13によって給紙カセット11から記録用紙を繰り出し、この記録用紙を用紙搬送路10に沿って下流側に搬送し、この記録用紙の紙厚を検知部14にて検知した後、記録用紙を転写ベルトユニット20で矢印X方向に搬送する。この搬送過程において、画像形成装置100は、画像形成ユニット30K,30Y,30M,30Cによって個々に形成した各色のトナー画像を、転写ローラ35により記録用紙の記録面上に順次重ねて転写し、さらに定着装置40によって記録面上へのトナー画像の定着を行った後、印刷済みの記録用紙をスタッカ12に搬送する。
【0049】
次に、上記の印刷動作におけるトナー画像の形成動作について、
図2を参照しながら説明する。なお、以下に説明する動作は、例えば画像形成装置100の図示しない制御部によって制御される。
【0050】
感光体31は、矢印R1方向に回転する。感光体31の表面は、帯電ローラ32により一様に帯電された後、露光装置33によって露光され、画像情報に応じた静電潜像が感光体31上に形成される。現像装置34では、トナーカートリッジ50から供給されトナー貯蔵部51に貯蔵されたトナーTが、トナー供給ローラ52により現像ローラ54に供給される。現像ローラ54に供給されたトナーTは、現像ブレード53により均一な厚さに均される。そして、感光体31上に形成された静電潜像は、現像ローラ54上の均一化されたトナーTによって顕像化すなわち現像され、感光体31の表面上にトナー像が形成される。感光体31上に形成されたトナー像は、転写ローラ35によって記録用紙P上に電気的に転写される。記録用紙P上に転写されず、感光体31表面に残った転写残トナーT2は、クリーニングブレード36aにより掻き取られ、廃トナー収集部36b内に蓄積される。
【0051】
[トナーカートリッジの組み立て]
次に、トナーカートリッジ50の組み立て動作について説明する。この組み立て動作は、作業者または製造装置によって実行される。
【0052】
容器本体60と側面蓋80との嵌合前において、トナーカートリッジ50は
図6に示す状態にある。この状態から、容器本体60を嵌入方向(矢印F方向)に移動させ、容器本体60の端部に設けられた嵌入部65を側面蓋80の内側に嵌め入れ、ラッチ70を穴85に引っ掛ける。これにより、容器本体60と側面蓋80とが嵌合し、
図3に示す状態となる。このとき、側面蓋80の端部80aは、容器本体60側の対向面60aと対向または当接する。
【0053】
次に、このときの動作について、
図5の嵌合部分Nに注目して詳細に説明する。
容器本体60と側面蓋80とは、嵌合前において
図8に示す状態にある。この状態から、容器本体60を嵌入方向(矢印F方向)に移動させると、嵌入部65の先端部分が側面蓋80内に進入し、ラッチ70に形成された傾斜面70aと側面蓋80の端部80aとが当接する。さらに容器本体60を移動させると、傾斜面70aと端部80aとが当接した状態で、嵌入部65が側面蓋80内にさらに進入する。このとき、容器本体60は、側面蓋80からの押圧力によって、圧接面68と嵌合面83とが離間する方向に弾性変形する。傾斜面70aが端部80aを通過した後、さらに容器本体60を移動させると、ラッチ70の頂部70bが嵌合面83と当接しながら嵌入方向に進み、容器本体60が弾性変形したままで、圧接面68がシール部材90に当接する。このときの状態が
図11に示されている。さらに容器本体60を移動させると、圧接面68がシール部材90を圧縮しながら嵌入方向に進み、ラッチ70が穴85と対向する位置に達したとき、ラッチ70が穴85に入り込んで穴85と係合する。このとき、容器本体60に対する側面蓋80からの押圧力が解除され、容器本体60の弾性復元力によって圧接面68が嵌合面83に近づく方向に移動して
図7の状態となり、側面蓋80と容器本体60とが互いに固定される。
【0054】
このように、ラッチ70と穴85とを係合させる際、ラッチ70が穴85に向かって移動するとき、ラッチ70が嵌合面83と当接することにより、圧接面68が嵌合面83から離れるように容器本体60が弾性変形し、ラッチ70が穴85と係合するとき、圧接面68が嵌合面83に近づくように容器本体60が弾性復元する。したがって、容器本体60と側面蓋80とを嵌合させるときの嵌入部65と嵌合面83との間隙よりも、ラッチ70と穴85とが係合したときの嵌入部65と嵌合面83との間隙の方が小さい。
【0055】
[圧接面の作用]
次に、圧接面68の作用について説明する。
図12に示すように、シール部材90は、圧接面68の先端部68bによって嵌入方向に圧縮されるとともに、傾斜面68aによって嵌合面83に向かう方向の圧力P1を受ける。このとき、シール部材90は、嵌合面83からの反力により、嵌合面83から傾斜面68aに向かう方向の圧力P2も受ける。これにより、傾斜面68aと嵌合面83との間でシール部材90が高い圧力で圧縮され、傾斜面68aとシール部材90とが高い圧力で接触する。なお、傾斜面68aは、嵌合面83と対向するとともに、底面84とも対向しており、嵌合面83および底面84との間でシール部材90を圧縮する。
【0056】
ところで、仮にシール性が十分でなく内部空間61からトナーTが漏出する場合、その経路としては、主として、内部空間61から圧接面68とシール部材90との間(接触部)をすり抜けて隙間Gに至り、隙間Gから穴85を辿って外部に漏出する経路がある。
【0057】
本実施の形態の構成では、傾斜面68aと嵌合面83との間でシール部材90が高い圧力で圧縮され、傾斜面68aとシール部材90とが高い圧力で接触することにより、隙間Gへの経路が閉塞され、トナーTの漏出が阻止される。
【0058】
図13は、比較例に係るトナーカートリッジの構成を示す概略図である。
図13では、圧接面68は、嵌合面83に対して垂直な平面のみを有し、傾斜面68aを有しない。この構成では、圧接面68がシール部材90に圧接する際、シール部材90には、嵌合面83から離れる方向の圧力P3が働く一方、
図12の圧力P1のような嵌合面83に向かう方向の圧力は働かない。このため、シール部材90には、
図13に示すように、圧力P3によって嵌合面83から離れるような変形が生じる。このような変形は、シール性を不安定にし、トナー漏れの要因となる。また、
図13の構成では、圧接面68がシール部材90に圧接するとき、圧接面68と蓋部材80との間からシール部材90が図中下方に逃げてしまい、圧接面68とシール部材90との接触圧が低下してしまう。また、シール部材90が逃げることにより、圧接面68とシール部材90との接触面積が減少する場合もある。このような接触圧の低下や接触面積の減少は、トナー漏れの要因となる。これに対し、本実施の形態の構成では、
図12に示すように嵌合面83に向かう方向の圧力P1によってシール部材90が嵌合面83に押し付けられ、シール部材90の嵌合面83からの離間が抑制され、シール性が安定する。また、傾斜面68aによってシール部材90が嵌合面83に押し付けられることにより、シール部材90の逃げが抑制され、シール部材90の逃げによる接触圧の低下や接触面積の減少が抑制される。
【0059】
図14は、別の比較例に係るトナーカートリッジの構成を示す概略図である。
図14では、側面蓋80に嵌合面83が設けられていない。この構成では、シール部材90には、傾斜面68aから圧力P4が働くが、
図12の圧力P2のような嵌合面83から傾斜面68aに向かう方向の圧力は働かない。このため、嵌合面83が設けられる構成と比較して、シール部材90と傾斜面68aとの間の圧力が低くなり、高いシール性が得られない。
【0060】
また、嵌合面83が設けられる構成において、嵌合面83と傾斜面68aとの間におけるシール部材90の圧力を高めてシール性を向上させる観点より、嵌入部65と嵌合面83とは互いに近接して配置されることが望ましい。
【0061】
[効果]
以上説明した本実施の形態1によれば、下記(1)〜(4)の効果が得られる。
(1)本実施の形態では、圧接面68は、シール部材90を挟んで嵌合面83と対向する傾斜面68aを有する。本構成によれば、傾斜面68aを有しない構成と比較して、容器本体60と側面蓋80との間のシール性を高くすることができる。具体的には、傾斜面68aと嵌合面83との間でシール部材90を高い圧力で圧縮し、傾斜面68aとシール部材90とを高い圧力で接触させることができ、これにより、圧接面68と嵌合面83との間のシール性を高めることができ、嵌合面83と外壁面69との間に生じる隙間Gにトナーが侵入することを防止することができる。また、傾斜面68aによってシール部材90を嵌合面83に押し付けることができ、シール部材90の嵌合面83からの離間やシール部材90の逃げを抑制することができ、これによりシール性を高めることができる。このようなシール性の向上により、トナーカートリッジ50の大容量化や輸送時間の長時間化が可能となる。
【0062】
(2)圧接面68は、シール部材90と当接する先端部68bを有し、先端部68bは、シール部材90の圧接面68による圧縮変形前の表面と平行に延びる。本構成によれば、圧接面68の先端が鋭角な角部である構成と比較して、シール部材90への圧力が局所的に集中することを抑えることができ、シール部材90にかかる負荷を低減することができる。
【0063】
(3)圧接面68は、開口部62に近づくほど嵌合面83に近づくように傾斜する面(以下、「逆傾斜面」と称す)を含まない。本構成によれば、シール部材90に対する嵌合面83から離れる方向への圧力を抑制し、当該圧力によるシール性の低下を抑制することができる。具体的には、圧接面68が逆傾斜面を有する構成では、当該逆傾斜面によって嵌合面83から離れる方向への圧力が生じる。このような圧力は、傾斜面68aと嵌合面83との間でのシール部材90の圧力を低下させるように、また嵌合面83からシール部材90を離間させるように作用し、シール性を低下させる要因となる。これに対し、本実施の形態の構成によれば、上記逆傾斜面による嵌合面83から離れる方向への圧力をなくすことができ、上記シール性の低下を回避することができる。
【0064】
(4)ラッチ70と穴85とを係合させる途中において、ラッチ70が穴85に向かって移動するとき、ラッチ70が嵌合面83と当接することにより、圧接面68が嵌合面83から離れるように容器本体60が弾性変形し、ラッチ70が穴85と係合するとき、圧接面68が嵌合面83に近づくように容器本体60が弾性復元する。本構成によれば、ラッチ70と穴85とが係合するときに、シール部材90を嵌合面83と圧接面68との間に挟んで圧縮して、シール部材90を嵌合面83に押し付けることができ、シール性をより高めることができる。
【0065】
[変形例]
上記の説明では、圧接面68の先端部68bがシール部材90に平行な面である構成を示したが、圧接面68の先端の形状はこれに限定されない。例えば、
図15に示すように、内壁面67と傾斜面68aとが連続して形成され、先端部68bは、内壁面67と傾斜面68aとで形成される鋭角な角部であってもよい。
【0066】
また、上記の説明では、圧接面68が逆傾斜面を含まない構成を示したが、圧接面68は逆傾斜面を含んでもよい。例えば、
図16に示すように、圧接面68は、第1の傾斜部としての傾斜面68aに加えて、開口部62に近づくほど嵌合面83に近づくように傾斜する第2の傾斜部としての傾斜面68cを含んでもよい。
図9では、圧接面68のうち嵌合面83と対向する側にのみ傾斜面68aが形成されているのに対し、
図16では、傾斜面68aに加えて、傾斜面68aが形成される側の反対側に傾斜面68cが形成されている。この場合、傾斜面68aの面積は、傾斜面68cの面積よりも大きいことが好ましい。これは、
図17に示すように、嵌合面83と傾斜面68aとの間に位置するシール部材90の圧力を高める方向に働く傾斜面68aからの力F1を、当該圧力を打ち消す方向に働く傾斜面68cからの力F2よりも大きくすることで、嵌合面83と傾斜面68aとの間に位置するシール部材90の圧力を高めることによって、嵌合面83と外壁面69との間に生じる隙間GにトナーTが侵入することを防止するためである。
【0067】
また、
図9,15の例では、傾斜面68aが平面状である構成を示したが、傾斜面68aは、R形状(または曲面状)であってもよい。例えば、傾斜面68aは、
図18に示すように凹曲面状に形成されてもよいし、
図19に示すように凸曲面状に形成されてもよい。
【0068】
また、
図16の例では、傾斜面68aおよび68cを平面で形成しテーパ状としたが、
図20に示すように、傾斜面68aおよび68cをR形状(または曲面状)に形成してもよい。また、
図21,22に示すように、傾斜面68aおよび68cのうち一方をR形状に形成し、他方を平面状に形成してもよい。
図21では、傾斜面68aが平面、傾斜面68cがR面である。
図22では、傾斜面68aがR面、傾斜面68cが平面である。このように、傾斜面68aおよび68cのうちの両方または一方をR形状(または曲面状)とする場合においても、傾斜面68aの面積を傾斜面68cの面積よりも大きくすることが好ましい。
【0069】
実施の形態2.
図23は、実施の形態2におけるトナーカートリッジの構成を示す図である。
図23には、
図5のうち破線で囲まれた嵌合部分Nの構成が示されている。このトナーカートリッジは、実施の形態1のトナーカートリッジ50に対し、側面蓋80側に傾斜面86が設けられる点で異なり、その他の部分については同様である。以下の説明では、実施の形態1と同様の部分については、同一の符号を付し、説明を省略または簡略化する。
【0070】
図23に示すように、本実施の形態では、側面蓋80は、容器本体60の傾斜面68aと対向する傾斜面86を有する。傾斜面86は、容器本体60に近づくほど嵌合面83に近づく方向に傾斜する。ここでは、傾斜面86は、嵌合面83と底面84との間に、嵌合面83と底面84とを接続するように設けられている。また、傾斜面86は、容器本体60の傾斜面68aと平行である。傾斜面86は、
図23の例では平面状であるが、R形状(または曲面状)であってもよい。
【0071】
本実施の形態の構成では、傾斜面68aと傾斜面86との間でシール部材90が圧縮され、傾斜面86がない場合と比較して、シール部材90と傾斜面68aとの間の圧力が高くなり、シール性が向上する。
【0072】
実施の形態3.
図24は、実施の形態3におけるトナーカートリッジの構成を示す図である。
図24には、
図5のうち破線で囲まれた嵌合部分Nの構成が示されている。このトナーカートリッジは、実施の形態1のトナーカートリッジ50に対し、側面蓋80側に傾斜面87が設けられる点で異なり、その他の部分については同様である。以下の説明では、実施の形態1と同様の部分については、同一の符号を付し、説明を省略または簡略化する。
【0073】
図24に示すように、本実施の形態では、側面蓋80は、嵌合面83と対向する傾斜面87を有する。傾斜面87は、容器本体60に近づくほど嵌合面83から離れる方向に傾斜する。傾斜面87は、底面84から容器本体60側に突出するように設けられている。傾斜面87は、
図24の例では平面状であるが、R形状(または曲面状)であってもよい。
【0074】
また、
図24の例では、容器本体60の圧接面68に傾斜面68aが設けられておらず、圧接面68aは、嵌合面83および嵌入方向に垂直な平面である。
【0075】
本実施の形態の構成では、圧接面68がシール部材90を圧縮する際、シール部材90は、傾斜面87により嵌合面83に向かう方向の圧力P5を受ける。この圧力P5によりシール部材90が嵌合面83に押し付けられ、
図13の構成と比較して、シール性が向上する。
【0076】
なお、
図24では傾斜面68aが設けられない構成を示したが、傾斜面68aを有する実施の形態1の構成において傾斜面87が設けられてもよい。例えば、
図25に示すように、側面蓋80に傾斜面87が設けられるとともに、圧接面68に傾斜面68aが設けられてもよい。さらに、実施の形態2の構成において傾斜面87が設けられてもよく、傾斜面68aおよび傾斜面86に加えて、傾斜面87が設けられてもよい。
【0077】
また、本件明細書において、「平行」および「垂直」とは、それぞれ、厳密な意味での平行および垂直に限定されるものではなく、略平行および略垂直も含む。
【0078】
また、本発明は、上記実施の形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々の態様で実施することができる。
【0079】
例えば、上記実施の形態では、画像形成装置としてプリンタを例示したが、本発明は、複写機、ファクシミリ装置、これらを複合させた複合機など、他の種類の画像形成装置にも適用可能である。
【0080】
また、上記の説明では、容器本体60と側面蓋80とを嵌合または係合によって固定する構成を例示したが、接着やネジ止めなど、他の方法で固定してもよい。