特許第5785979号(P5785979)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5785979
(24)【登録日】2015年7月31日
(45)【発行日】2015年9月30日
(54)【発明の名称】排ガス処理装置
(51)【国際特許分類】
   F23G 7/06 20060101AFI20150910BHJP
   F23G 5/50 20060101ALI20150910BHJP
   F23K 5/00 20060101ALN20150910BHJP
【FI】
   F23G7/06 DZAB
   F23G5/50 J
   F23G5/50 N
   F23G5/50 Q
   !F23K5/00 303
【請求項の数】3
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2013-91259(P2013-91259)
(22)【出願日】2013年4月24日
(65)【公開番号】特開2014-214933(P2014-214933A)
(43)【公開日】2014年11月17日
【審査請求日】2013年12月5日
(73)【特許権者】
【識別番号】000231235
【氏名又は名称】大陽日酸株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100086210
【弁理士】
【氏名又は名称】木戸 一彦
(74)【代理人】
【識別番号】100128358
【弁理士】
【氏名又は名称】木戸 良彦
(72)【発明者】
【氏名】川端 宏文
(72)【発明者】
【氏名】坂田 晋
【審査官】 黒石 孝志
(56)【参考文献】
【文献】 特表2008−540990(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F23G 7/06
F23G 5/50
F23K 5/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
水素及びアンモニアを含む排ガスを処理する排ガス処理装置において、前記排ガス中の水素濃度を測定する第1水素濃度測定手段と、該第1水素濃度測定手段の下流側で前記排ガス中の水素濃度を測定する第2水素濃度測定手段と、前記第2水素濃度測定手段の下流側に設けられた燃焼式除害装置とを備えるとともに、前記第1水素濃度測定手段と前記第2水素濃度測定手段との間に、前記第1水素濃度測定手段で測定した第1水素濃度があらかじめ設定された第1水素濃度設定値以下になったときに前記排ガスへの水素の添加を開始し、前記第2水素濃度測定手段で測定した第2水素濃度があらかじめ設定された第2水素濃度設定値以上になったときに前記排ガスへの水素の添加を終了する水素添加手段を備え、前記水素添加手段と前記第2水素濃度測定手段との間にバッファタンクが設けられている排ガス処理装置。
【請求項2】
水素及びアンモニアを含む排ガスを処理する排ガス処理装置において、前記排ガス中の水素濃度を測定する第1水素濃度測定手段と、該第1水素濃度測定手段の下流側で前記排ガス中の水素濃度を測定する第2水素濃度測定手段と、前記第2水素濃度測定手段の下流側に設けられた燃焼式除害装置とを備えるとともに、前記第1水素濃度測定手段と前記第2水素濃度測定手段との間に、前記第1水素濃度測定手段で測定した第1水素濃度があらかじめ設定された第1水素濃度設定値以下になったときに前記排ガスへの水素の添加を開始し、前記第2水素濃度測定手段で測定した第2水素濃度があらかじめ設定された第2水素濃度設定値以上になったときに前記排ガスへの水素の添加を終了する水素添加手段を備え、前記第1水素濃度測定手段と前記第2水素濃度測定手段との間にバッファタンクを設けるとともに、前記水素添加手段は、該バッファタンクに水素を添加する排ガス処理装置。
【請求項3】
前記燃焼式除害装置の下流側に、該燃焼式除害装置から導出された燃焼除害処理ガス中のアンモニアの濃度を測定するアンモニア濃度測定手段を設けるとともに、前記水素添加手段は、前記アンモニア濃度測定手段で測定したアンモニア濃度があらかじめ設定されたアンモニア濃度上限値以上になったときに前記排ガスへの水素の添加を開始する請求項1又は2記載の排ガス処理装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、排ガス処理装置に関し、詳しくは、半導体,液晶,太陽光発電パネル,LEDなどの電子デバイスを成膜するデバイス製造装置から排出される水素及びアンモニアを含む排ガスを処理するための装置に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体,液晶,太陽光発電パネル,LEDなどの電子デバイスを製造するプロセスからは、水素やアンモニアのように、広い濃度範囲で可燃性を有する成分を含む排ガスが排出されることがある。水素及びアンモニアを含む排ガスを処理する方法として、外部から空気を導入して排ガスに混合し、可燃性成分の濃度を爆発下限未満に希釈した後、有毒成分であるアンモニアを湿式スクラバーで吸収処理する方法が知られている(例えば、特許文献1参照。)。また、燃焼式除害装置を使用し、排ガスの流量を監視しながら水素及びアンモニアを燃焼処理する方法も知られている(例えば、特許文献2参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第3352476号公報
【特許文献2】特許第4690597号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、特許文献1に記載された方法では,外部から大量の空気を導入するため、湿式スクラバーにおける排ガスの処理量が増大し、湿式スクラバーが大型化するという問題があり、さらに、アンモニアを含むアルカリ廃水が大量に発生することから、廃液処理費用が嵩むという問題もあった。また、特許文献2に記載された方法では、排ガスの流量は監視するものの、排ガス中のアンモニア及び濃度に関する情報が無いままで運転するため,過剰な燃料量を燃焼式除害装置に供給する必要があり、ランニングコストが嵩むという問題があった。
【0005】
そこで本発明は、水素及びアンモニアを含む排ガスを効率よく処理することができる排ガス処理装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため、本発明の排ガス処理装置は、水素及びアンモニアを含む排ガスを処理する排ガス処理装置において、前記排ガス中の水素濃度を測定する第1水素濃度測定手段と、該第1水素濃度測定手段の下流側で前記排ガス中の水素濃度を測定する第2水素濃度測定手段と、前記第2水素濃度測定手段の下流側に設けられた燃焼式除害装置とを備えるとともに、前記第1水素濃度測定手段と前記第2水素濃度測定手段との間に、前記第1水素濃度測定手段で測定した第1水素濃度があらかじめ設定された第1水素濃度設定値以下になったときに前記排ガスへの水素の添加を開始し、前記第2水素濃度測定手段で測定した第2水素濃度があらかじめ設定された第2水素濃度設定値以上になったときに前記排ガスへの水素の添加を終了する水素添加手段を備え、前記水素添加手段と前記第2水素濃度測定手段との間にバッファタンクが設けられていることを特徴としている。
【0007】
さらに、本発明の排ガス処理装置は、水素及びアンモニアを含む排ガスを処理する排ガス処理装置において、前記排ガス中の水素濃度を測定する第1水素濃度測定手段と、該第1水素濃度測定手段の下流側で前記排ガス中の水素濃度を測定する第2水素濃度測定手段と、前記第2水素濃度測定手段の下流側に設けられた燃焼式除害装置とを備えるとともに、前記第1水素濃度測定手段と前記第2水素濃度測定手段との間に、前記第1水素濃度測定手段で測定した第1水素濃度があらかじめ設定された第1水素濃度設定値以下になったときに前記排ガスへの水素の添加を開始し、前記第2水素濃度測定手段で測定した第2水素濃度があらかじめ設定された第2水素濃度設定値以上になったときに前記排ガスへの水素の添加を終了する水素添加手段を備え、前記第1水素濃度測定手段と前記第2水素濃度測定手段との間にバッファタンクを設けるとともに、前記水素添加手段は、該バッファタンクに水素を添加することを特徴としている。また、前記燃焼式除害装置の下流側に、該燃焼式除害装置から導出された燃焼除害処理ガス中のアンモニアの濃度を測定するアンモニア濃度測定手段を設けるとともに、前記水素添加手段は、前記アンモニア濃度測定手段で測定したアンモニア濃度があらかじめ設定されたアンモニア濃度上限値以上になったときに前記排ガスへの水素の添加を開始することを特徴としている。
【発明の効果】
【0008】
本発明の排ガス処理装置によれば、燃焼式除害装置を、水素及びアンモニアを燃焼除害処理するのに適した燃焼状態に維持することができるので、水素及びアンモニアを含む排ガスを効率よく処理することができる
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本発明の排ガス処理装置の第1形態例を示す説明図である。
図2】本発明の排ガス処理装置の第2形態例を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
図1は、本発明の排ガス処理装置の第1形態例を示すもので、この排ガス処理装置は、原料ガス(プロセスガス)及びキャリアガスとして、水素(H2)、アンモニア(NH3)、窒素(N2)、その他のガスを使用するCVD装置11から排出される排ガスに含まれるアンモニアと水素とを燃焼式除害装置12で燃焼させて排ガス中から除去するものであって、CVD装置11と燃焼式除害装置12との間には、CVD装置11側、すなわち、排ガスの流れ方向上流側から順に、第1水素濃度測定手段13,水素添加手段14,バッファタンク15及び第2水素濃度測定手段16が設けられ、燃焼式除害装置12の下流側には、アンモニア濃度測定手段17が設けられている。
【0011】
例えば、CVD装置11では、気相成長を行う工程の進行に伴って供給するガスの種類や量が変化し、例えば、工程開始から予熱などを行っている工程初期では、アンモニアは供給されずに水素と窒素とが供給され、工程中間でアンモニアの供給が始まり、次いで水素の供給が停止する。さらに、工程の後半では水素の供給が再開されるという工程が行われる。
【0012】
燃焼式除害装置12は、燃焼用の種火を形成するための少量の燃料を供給する燃料供給部18と、燃焼用及び燃焼ガス冷却用の空気を供給する空気供給部19とを備えるもので、排ガス中の水素と空気中の酸素とを反応させて燃焼させ、あらかじめ設定された温度以上の燃焼状態を維持することにより、アンモニアを燃焼又は分解して排ガス中から除去する。
【0013】
水素添加手段14は、第1水素濃度測定手段13で測定した第1水素濃度があらかじめ設定された第1水素濃度設定値以下に減少したときに排ガスへの水素の添加を開始し、第2水素濃度測定手段16で測定した第2水素濃度があらかじめ設定された第2水素濃度設定値以上に増加したときに排ガスへの水素の添加を終了する。第1水素濃度設定値及び第2水素濃度設定値は、燃焼式除害装置12の構成や排ガスの流量などの条件に応じて適宜設定することができるが、第2水素濃度設定値を第1水素濃度設定値以上の濃度に設定することにより、燃焼式除害装置12に導入する排ガス中の水素濃度を確実に所定濃度以上にすることができる。
【0014】
水素添加手段14から排ガスに添加する水素ガスの量は任意に設定できるが、CVD装置11への水素の供給が停止し、第1水素濃度測定手段13で測定した排ガス中の水素濃度が減少したときに、燃焼式除害装置12での燃焼に不足する一定量の水素を水素添加手段14から添加し、そして、CVD装置11への水素の供給が再開され、第2水素濃度測定手段16で測定した水素濃度が所定濃度を上回ったときに水素の添加を終了するように設定することができる。
【0015】
これにより、燃焼式除害装置12に導入される排ガス中の水素濃度を、燃焼式除害装置12でアンモニアを除去可能な燃焼温度が得られる水素濃度以上にすることができ、燃焼式除害装置12でアンモニアを確実に除去することができる。また、水素添加手段14の下流側にバッファタンク15を設けることにより、第1水素濃度測定手段13が測定した水素濃度が低下したとき、水素添加手段14から水素供給が開始されるまでの応答が多少遅くなっても、水素添加手段14から添加された水素と排ガスとをバッファタンク15内で十分に混合してから燃焼式除害装置12に導入することができるとともに、水素濃度の変動による第2水素濃度測定手段16の誤動作も避けることができる。
【0016】
さらに、燃焼式除害装置12の下流側にアンモニア濃度測定手段17を設けることにより、例えば第1水素濃度測定手段13の不具合によって水素濃度が低下した排ガス中への水素の添加が正常に行われなくなり、燃焼式除害装置12に導入される排ガス中の水素濃度が低下して燃焼温度が下がり、アンモニアが完全に除去できなくなった場合でも、燃焼式除害装置12から導出された燃焼除害処理ガス中のアンモニアの濃度をアンモニア濃度測定手段17で測定し、あらかじめ設定されたアンモニア濃度上限値を上回ったときに水素添加手段14から排ガスへの水素の添加を開始することにより、燃焼式除害装置12に導入される排ガス中の水素濃度を所定濃度以上にすることができ、燃焼式除害装置12でのアンモニアの除去を確実に行うことができ、規定濃度以上のアンモニアが排出されることを防止できる。
【0017】
また、水素添加手段14からの水素の添加量を一定量とし、第1水素濃度測定手段13と第2水素濃度測定手段16とによって開始と終了とを制御するように設定することにより、複雑な制御装置を用いずに、簡単な構成で、しかも信頼性の高い制御を行うことが可能となる。
【0018】
図2は、本発明の排ガス処理装置の第2形態例を示しており、前記第1形態例に示した排ガス処理装置の構成要素と同一の構成要素には同一の符号を付して詳細な説明は省略する。
【0019】
本形態例は、複数のCVD装置11から排出される排ガスを一つの燃焼式除害装置12で処理するもので、複数のCVD装置11から排出された排ガスは、1本の配管にまとめられて燃焼式除害装置12に導入される際に、前記第1形態例と同様に、第1水素濃度測定手段13,水素添加手段14,バッファタンク15及び第2水素濃度測定手段16が配置された配管内を流れることにより、前記同様にして水素濃度が燃焼式除害装置12で必要とする水素濃度以上に調節される。
【0020】
このように複数のCVD装置11から排出される排ガスの除害処理を行う際にも、燃焼式除害装置12に導入される排ガス中の水素濃度に応じて水素添加手段14から水素を添加することにより、燃焼式除害装置12における水素及びアンモニアの除去を確実に行うことができる。
【0021】
また、複数のCVD装置11から排出される排ガス中の水素濃度の変動状態によっては、水素添加手段14からの水素添加量を、第1水素濃度測定手段13で測定した水素濃度の低下状態に応じて設定することにより、燃焼式除害装置12でのアンモニアの燃焼を確実に行いながら、過剰な水素を添加することによる運転コストの上昇を回避することができる。さらに、バッファタンク15を設けることにより、複数のCVD装置11の運手状態によって変動する排ガス中の水素濃度を所定濃度以上で平均化することができ、燃焼式除害装置12での燃焼温度の異常な上昇を防止することもできる。
【0022】
なお、各形態例において、燃焼式除害装置12の下流側のアンモニア濃度測定手段17は省略することが可能であり、また、水素添加手段14から供給した水素と排ガスとを配管内で十分に混合可能ならば、バッファタンク15を省略することができる。一方、バッファタンク15を設けた場合は、水素添加手段14からバッファタンク15内に水素を供給するように形成することもできる。
【0023】
また、アンモニア濃度測定手段17で測定したアンモニア濃度の上昇によって水素を添加する際には、第1水素濃度測定手段13などに不都合が発生したことを表示することが好ましい。さらに、アンモニア濃度測定手段17からの信号で水素を添加してもアンモニア濃度が低下しない場合や、測定したアンモニア濃度があらかじめ設定された異常濃度限界値を超えたときには、故障警報を発生させて装置を緊急停止するように構成することもできる。
【符号の説明】
【0024】
11…CVD装置、12…燃焼式除害装置、13…第1水素濃度測定手段、14…水素添加手段、15…バッファタンク、16…第2水素濃度測定手段、17…アンモニア濃度測定手段、18…燃料供給部、19…空気供給部
図1
図2