特許第5785992号(P5785992)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5785992
(24)【登録日】2015年7月31日
(45)【発行日】2015年9月30日
(54)【発明の名称】消色装置及び消色装置の制御プログラム
(51)【国際特許分類】
   G03G 21/00 20060101AFI20150910BHJP
【FI】
   G03G21/00 574
【請求項の数】5
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2013-130472(P2013-130472)
(22)【出願日】2013年6月21日
(65)【公開番号】特開2015-4844(P2015-4844A)
(43)【公開日】2015年1月8日
【審査請求日】2014年2月18日
(73)【特許権者】
【識別番号】000003078
【氏名又は名称】株式会社東芝
(73)【特許権者】
【識別番号】000003562
【氏名又は名称】東芝テック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107928
【弁理士】
【氏名又は名称】井上 正則
(74)【代理人】
【識別番号】100165261
【弁理士】
【氏名又は名称】登原 究
(74)【代理人】
【識別番号】100194076
【弁理士】
【氏名又は名称】中本 篤志
(72)【発明者】
【氏名】杉山 博之
【審査官】 佐々木 創太郎
(56)【参考文献】
【文献】 特開平06−332340(JP,A)
【文献】 特開2011−145543(JP,A)
【文献】 特開2013−061646(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G03G 15/20
G03G 21/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
一方向の湾曲部を有する搬送路に沿ってシートを搬送する搬送部と、
前記シート上に形成された画像の読取処理を行う読取部と、
前記搬送路に沿って設けられ、搬送される前記シートを加熱することで、前記画像に対して消色処理を実行する消色部と、
搬送過程で、前消色処理に起因して一方向にカールが発生する前記シートに前記搬送路の湾曲方向とは逆方向の湾曲を与えることでカールを矯正するカール矯正機構と、
前記読取処理の結果に基づいて前記シートに前記消色処理を実行するか否かを判断する制御部と、
前記制御部が前記消色処理を実行すると判断した場合、前記カール矯正機構の矯正力を第1の強さに設定し、前記制御部が前記消色処理を実行しないと判断した場合、前記カール矯正機構の矯正力を前記第1の強さよりも弱い第2の強さに設定する矯正力設定部と、
を有する消色装置。
【請求項2】
前記カール矯正機構は、第1ローラ及び第2ローラを含み、
前記矯正力設定部は、前記第1ローラ及び第2ローラにより形成されるニップの圧力を調整することで異なる矯正力を設定する請求項1に記載の消色装置。
【請求項3】
シートの厚さ情報を入力する入力部をさらに有し、
前記制御部は、前記入力部より取得した前記シートの前記厚さ情報と所定の厚さとを比較し、
前記矯正力設定部は、前記制御部が前記消色処理を実行すると判断した場合において、前記厚さ情報が前記所定の厚さよりも厚い場合には前記カール矯正機構の矯正力を前記第1の強さよりも強い第3の強さに設定し、前記厚さ情報が前記所定の厚さよりも薄い場合には前記カール矯正機構の矯正力を前記第1の強さよりも弱い第4の強さに設定する請求項1又は請求項2に記載の消色装置。
【請求項4】
前記搬送部は、第1搬送路と第2搬送路とを有し、
前記第2搬送路は、前記第1搬送路のシート搬送方向下流側に位置する分岐点を始点とし、前記第1搬送路のシート搬送方向上流側に位置する合流点を終点として前記第1搬送路に接続し、
前記消色部は、前記第2搬送路に沿って位置し、
前記カール矯正機構は、前記第1搬送路に沿って前記分岐点より下流に位置する請求項1乃至請求項3の何れか1項に記載の消色装置。
【請求項5】
コンピュータに、
一方向の湾曲部を有する搬送路に沿ってシートを搬送する機能と、
前記シートに形成された画像の読取処理を行う機能と、
前記搬送路へ搬送される前記シートを加熱することで、前記画像に対して消色処理を実行する機能と、
搬送過程で、前消色処理に起因して一方向にカールが発生する前記シートに前記搬送路の湾曲方向とは逆方向の湾曲を与える機能と、
前記読取処理の結果に基づいて前記シートに前記消色処理を実行するか否かを判断する機能と、
前記消色処理を実行すると判断された場合、前記カール矯正力を第1の強さに設定し、前記消色処理を実行しないと判断された場合、前記カール矯正力を前記第1の強さよりも弱い第2の強さに設定する機能と、
を実現させる消色装置の制御プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、シート上に形成された画像を消色する消色装置、及び当該消色装置の制御プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、例えば記録用紙等のシート上の画像の色材を加熱することで透明へ消色し、シートを再利用可能な状態にする消色装置においては、読取部がシート上の画像を保存するために読取処理を行う機能も備えている。ところで、消色処理を行ったシートはカールを生じやすいため、消色装置はカールと逆方向へカールがかかるようデカーラを設けている。
【0003】
しかしながら、シートへ消色処理を行わない場合(例えば読取処理のみを行う場合)には、デカーラによってシートがカールしてしまうという問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2000―226143公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の実施形態が解決しようとする課題は、デカーラを有する消色装置において消色処理を実行しないシートに対してもカールの発生を抑制する消色装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
実施形態の消色装置は、搬送部、読取部、消色部、カール矯正機構、制御部、及び矯正力設定部を有する。前記搬送部は、一方向の湾曲部を有する搬送路に沿ってシートを搬送する。前記読取部は、前記シート上に形成された画像の読取処理を行う。前記消色部は、前記搬送路に沿って設けられ、搬送される前記シートを加熱することで、前記画像に対して消色処理を実行する。前記カール矯正機構は、搬送過程で、前消色処理に起因して一方向にカールが発生する前記シートに前記搬送路の湾曲方向とは逆方向の湾曲を与えることでカールを矯正する。前記制御部は、前記読取処理の結果に基づいて前記シートに前記消色処理を実行するか否かを判断する。前記矯正力設定部は、前記制御部が前記消色処理を実行すると判断した場合、前記カール矯正機構の矯正力を第1の強さに設定し、前記制御部が前記消色処理を実行しないと判断した場合、前記カール矯正機構の矯正力を前記第1の強さよりも弱い第2の強さに設定する。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】第1の実施形態における消色装置の構成を説明する断面図。
図2】第1の実施形態における消色装置のハードウェア構成の制御ブロック図。
図3】第1の実施形態におけるデカーラの構成を示す断面図。
図4】第1の実施形態における第2消色モード及び読取モードの制御フローチャート。
図5】第2の実施形態における第2消色モード及び読取モードの制御フローチャート。
図6】第1の実施形態におけるデカーラの変形例を示す断面図。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、発明を実施するための実施形態について図面を参照して説明する。
(第1の実施形態)
【0009】
以下に第1の実施形態について図1乃至図4を参照して説明する。
【0010】
消色装置は、消色可能トナーや消色可能インク等の消色可能な色材により画像を形成された記録用紙等のシートに対し、画像の色を消す消色処理を施す。消色可能な色材は、呈色性化合物、顕色剤、消色剤を含む。呈色性化合物は、例えばロイコ染料が挙げられる。顕色剤は、例えばフェノール類が挙げられる。消色剤は、加熱されると呈色性化合物と相溶し、顕色剤と親和性を有さない物質が挙げられる。消色可能な色材は、呈色性化合物と顕色剤との相互作用により発色し、消色温度以上の加熱により呈色性化合物と顕色剤との相互作用が絶たれるため、消色する。以下、消色可能な色材を単に記録材料と呼ぶ。
【0011】
以下に、本実施形態の消色装置の構成及び動作について説明する。
【0012】
図1は、第1の実施形態における消色装置100の構成を説明する断面図である。消色装置100は、給紙トレイ110、給紙部材120、読取部130、消色部150、第1トレイ160、第2トレイ170、排出部材180、第1搬送路190、第2搬送路195、第3搬送路200、第4搬送路205、第1分岐部材210、第2分岐部材215、分岐点220、合流点225、操作部240、複数の搬送ローラ286及びデカーラ310(カール矯正機構)を有する。
【0013】
給紙トレイ110は、再利用するシートを積載する。再利用するシートは、例えば、記録材料で画像形成されたシートである。尚、シートはA3、A4、B5等、様々なサイズであって良い。給紙部材120は、ピックアップローラ、シート供給ローラ、及びシート供給ローラに対向配置される分離ローラ等を有する。給紙部材120は、給紙トレイ110上のシートを1枚ずつ消色装置100内部の第1搬送路190へ搬送する。
【0014】
給紙トレイ110は、給紙トレイ110上のシートの有無を検知する検知センサ112を有する。検知センサ112は、例えば、マイクロセンサやマイクロアクチュエータであって良い。
【0015】
第1搬送路190は、複数の搬送ローラ286を有し、給紙トレイ110から分岐点220へ向かう搬送路を形成する。第1搬送路190は、読取部130を介して給紙されたシートを分岐点220へ搬送する。
【0016】
読取部130は、第1搬送路190に沿って給紙トレイ110の下流に配置される。読取部130は、例えば、第1搬送路190を挟んで対向して位置する第1読取ユニット132a及び第2読取ユニット132bを有する。第1読取ユニット132a及び第2読取ユニット132bは、搬送されるシートの第1面の画像及び裏面である第2面の画像を読み取る。すなわち読取部130は、第1読取ユニット132a及び第2読取ユニット132bにより、第1搬送路190を搬送されるシートの両面の画像を読み取る。
【0017】
第1分岐部材210は、読取部130の下流で第1搬送路190の分岐点220に配置される。第1分岐部材210は、読取部130を出て分岐点220へ搬送されるシートの搬送方向を切り替える。第1分岐部材210は、第1搬送路190を搬送されるシートを第2搬送路195又は第3搬送路200へ選択的に振り分ける。第1分岐部材210は、例えば、通常の状態(非駆動状態)では、第1搬送路190から第3の搬送路200へのシートの搬送を許容する。他方、駆動状態では、シートの第1搬送路190から第3の搬送路200への搬送を阻止し、従って、シートは、第2搬送路195へ搬送される。
【0018】
第2搬送路195は複数の搬送ローラ286を有し、分岐点220において第1搬送路190より分岐する。さらに、第2搬送路195は、読取部130よりも上流に位置する合流点225へ向かって湾曲部を有している。このため、第2搬送路195は、合流点225において、第1搬送路190と合流する。すなわち、第1搬送路190と第2搬送路195は、分岐点220及び合流点225を介して循環する搬送路を形成する。第2搬送路195には、後述する消色部150が配置される。従って、循環する搬送路は、読取部130から搬送されてきたシートを、消色部150を経由して、再び、読取部130へ搬送することを可能とする。詳述すれば、本実施形態の消色装置100は、給紙部材120から供給されたシートを、第1搬送路190により合流点225を経由して読取部130へ導き、読取部130で処理されたシートを、第1分岐部材210を制御して分岐点220で第2搬送路195へ導き、消色部150、更に合流点225を経由して読取部130の順に搬送する。
【0019】
消色部150は、例えば、第1消色ユニット152aおよび第2消色ユニット152bを有し、この両ユニットは、図1に示すように第2搬送路195を挟んで対向して配置され、搬送されるシート両面の画像の色を消す消色処理を行う。消色部150は、例えば、搬送されるシートへ接触した状態でシートを消色温度まで加熱することにより、記録材料によりシート上に形成された画像の色を消色する。消色部150の第1消色ユニット152aは、シートの一方の面側からシートへ当接して加熱する。第2消色ユニット152bは、シートの他方の面側からシートへ当接して加熱する。すなわち、消色部150は、搬送されるシート両面の画像を一度の搬送で消色する。
【0020】
操作部240は、例えば、タッチパネル式の表示部と各種の操作キーとを有し、消色装置100本体の上部に配置される。操作キーは、例えば、テンキー、ストップキー、スタートキー等を有する。ユーザは、操作部240を介して、消色処理の開始又は消色するシートの画像の読み込み等の消色装置100の機能動作を指示する。操作部240は、消色装置100の設定情報や動作ステータスやログ情報等を表示する。
【0021】
尚、操作部240は、例えば、ネットワークを介して外部装置の操作装置と接続され、外部の操作装置から操作出来る構成であっても良い。又は、操作部240は、消色装置100本体から独立した形態で、有線又は無線通信によって消色装置100を操作する構成であっても良い。すなわち、本実施形態の操作部240は、消色装置100に対して処理の指示や情報の閲覧等が出来るものであれば良い。
【0022】
図1に示す第3搬送路200は分岐点220を介して第1搬送路190と繋がっており、分岐点220を通過したシートを第2分岐部材215へ搬送する。第2分岐部材215を介して搬送されるシートは、図1に示すように、上下に配置される第1トレイ160又は第2トレイ170のいずれかに収容される。例えば、第2分岐部材215は、第1トレイ160の後述する排出部材180の近傍に配置され、第1分岐部材210を介して搬送されたシートを第1トレイ160又は、第3搬送路200に第2分岐部材215を介して接続された第4搬送路205へ搬送する。第2分岐部材215は、例えば、通常の状態(非駆動状態)では、第3搬送路200から第4搬送路205へのシートの搬送を阻止し、シートは第1トレイ160に排紙される。他方、駆動状態では、シートの第3搬送路200から第1トレイ160への搬送を阻止し、従って、シートは、第4搬送路205に搬送される。第4搬送路205は搬送ローラ286を有し、シートを第2トレイ170へ搬送する。尚、第3搬送路200に沿って設けられるデカーラ310については後述する。
【0023】
排出部材180は、詳述すると、消色装置100の下部に上下に配置された第1トレイ160、第2トレイ170にそれぞれ備えられる。排出部材180は、それぞれ第1トレイ160又は第2トレイ170へシートを排紙する。例えば、第1トレイ160は、シートの画像が消色され、再利用可能となったシートを収容する。第2トレイ170は、再利用不可能と判断されたシートを収容する。以下、第1トレイ160をリユーストレイと呼び、第2トレイ170をリジェクトトレイと呼ぶ。尚、リユーストレイとリジェクトトレイは、受け入れる対象とするシートを入れ替えることも可能である。それぞれのトレイがどのようなシートを収容するかの設定、すなわち、シートの搬送先の設定は、例えば、操作部240から可能である。
【0024】
消色装置100は、第1乃至第4搬送路190,195、200、205を搬送されるシートを検知する複数のシート検知センサ(図示せず)を有する。シート検知センサは、例えば、マイクロセンサやマイクロアクチュエータであって良い。シート検知センサは、搬送路の適切な位置に配置される。
【0025】
以下に、上述の構成を有する消色装置100の制御について説明する。
【0026】
図2は、第1の実施形態における消色装置100のハードウェア構成の制御ブロック図である。消色装置100は、読取部130、消色部150、操作部240、制御部250、記憶部260、検知部270、搬送部280、及び通信インターフェース(I/F)部290を有する。消色装置100の各部は、バス300を介して接続される。
【0027】
制御部250は、CPU(Central Processing Unit)又はMPU(Micro Processing Unit)からなるプロセッサ252とメモリ254を有する。メモリ254は、例えば、半導体メモリであり、各種制御プログラムを格納するROM(Read Only Memory)256と、プロセッサ252に一時的な作業領域を提供するRAM(Random Access Memory)258を有する。例えば、ROM256は、再利用可否の閾値とするシートの印字率、画像が消色されたか否かを判断するための濃度閾値等を格納する。RAM258は、読取部130で読み取った画像を一時的に保存しても良い。制御部250は、ROM256又は記憶部260に格納された各種プログラム等に基づいて、画像形成装置100の各部を制御する。
【0028】
記憶部260は、読取部130が読み取った画像を保存する。記憶部260は、例えば、ハードディスクドライブ、その他の磁気記憶装置、光学式記憶装置、若しくはフラッシュ・メモリ等の半導体記憶装置、又はこれらの任意の組み合わせであって良い。例えば、消色部150が消色処理する前に、制御部250は、読取部130が読み取ったシートの画像を記憶部260へ保存することにより、後で消色された画像のデータが必要となった場合に、画像データを取得することが出来る。
【0029】
検知部270は、図1に示す検知センサ112及び前述した各搬送路において搬送されるシートを検知するシート検知センサを有する。制御部250は、検知センサ112からの信号に基づいて給紙トレイ110上のシートの有無を判断する。
【0030】
搬送部280は、図1に示す第1乃至第4搬送路190、195、200、205と、上記搬送路に配置される入口ローラ282、出口ローラ284、及び複数の搬送ローラ286と、並びにこれら各ローラを駆動する複数の搬送モータとを有する。
【0031】
通信I/F部290は、外部の機器と接続するインターフェースである。通信I/F部290は、例えば、Bluetooth(登録商標)、赤外線接続、光接続といったIEEE80、IEEE802.11、IEEE802.3、IEEE3304等の適切な無線または有線を介してネットワーク上の外部装置と通信する。通信I/F部290は、更に、USB規格の接続端子が接続されるUSB接続部やパラレルインターフェース等を含んでも良い。制御部250は、通信I/F部290を介して複合機、その他外部機器と通信する。尚、読取部130、消去部150及び操作部240については、既に説明済みであるのでその説明については省略する。
【0032】
以下に、本実施形態の消色装置100が実行する各処理について説明する。
【0033】
消色装置100は、例えば、以下の各処理モードを有する。前述のシートの搬送経路は、消色装置100が実行する各処理モードに基づいて適宜変更される。以下に参照される分別処理は、読取部130が読み取ったシートの表面状態を示す画像を基に、シートが再利用可能か否かを制御部250が判定し、判定結果に応じて第1トレイ160又は第2トレイ170へ選択的に振り分ける処理である。保存処理は、読取部130が読み取ったシート上の画像を記憶部260へ保存する処理である。尚、分別処理及び保存処理については詳細を後述する。
(1)第1消色モード:保存処理を行わず、消色処理のみを行う。
(2)第2消色モード:保存処理後、消色処理を行う。
(3)第3消色モード:保存処理を行わず、消色処理後、分別処理を行う。
(4)第4消色モード:保存処理後、消色処理を行い、さらに分別処理を行う。
(5)第5消色モード:分別処理後、必要に応じて消色処理を行い、さらに分別処理を行う。
(6)読取モード:消色処理を行わず、保存処理を行う。
上述の各処理モードは、消色装置100の操作部240で選択出来る。また、各処理モードの選択は、消色装置100の操作部240に限らず、外部の端末から設定しても良い。第1乃至第5消色モードでは、シートは必ず消色部150へ搬送される。一方、読取モードでは、消色装置100は、第1搬送路190を搬送されるシートを、第2搬送路195を介して消色部150へ搬送することなく、読取部130から分岐点220および第3搬送路200を経由して排紙する。この場合、前述のように、第1分岐部材210は非駆動状態にあり、第1搬送路190と第3搬送路200は連通状態にある。
【0034】
制御部250は、例えば、操作部240で設定された上述の各処理モードに応じて、読取部130、消色部150、及びその他の構成を制御する。例えば、第1乃至第5消色モードが選択された場合には、制御部250は、消色部150にシートの画像を消色させる。
【0035】
消色部150がシートの画像を消色した後に、この消色されたシートの画像を読取部130が読み取る場合(第3消色モード、第4消色モード、第5消色モード)、制御部250は、読取部130が読み取った画像のデータに基づいて、シートの折り目、破れ目、又はしわ等による影の有無、並びに消し残りの割合を基にシートが再利用可能か否かを判定する。制御部250は、上記判定結果に基づいて、シートの搬送先をリユーストレイ160又はリジェクトトレイ170に決定する(分別処理)。
【0036】
尚、第5消色モードにおける1回目の分別処理においては、制御部250は、読取部130が読み取った画像のデータに基づいて、シートの折り目、破れ目、又はしわ等による影の有無、並びに印字率を基にシートが再利用可能か否かを判定する。制御部250は、上記判定結果に基づいて、シートの搬送先を消色部150又はリジェクトトレイ170に決定する。また、この分別処理は、後述する保存処理を兼ねても良い。すなわち制御部250は、読み取った画像を基に再利用可能か否かの判定をするとともに、この画像を記憶部260へ保存する。
【0037】
他方、消色部150へシートが搬送される前に、読取部130がシートの画像を読み取る場合(第2消色モード、第4消色モード)、制御部250は、読取部130で読み取った画像を記憶部260へ保存する(保存処理)。ここで、制御部250は、読取部130が読み取ったシートの画像のデータ中に機密データ等の消色を禁止すべき禁止データが含まれているか否かを判定しても良い。
【0038】
消色処理を行わずに、シートの画像を読み取る読取モードが設定された場合、読取部130がシートの画像を読み取り、読み取った画像を記憶部260へ保存する(保存処理)。制御部250は、第1分岐部材210を駆動せず、従って読み取りが終了したシートを、消色部150へ搬送せず、第2分岐部材215を制御してリジェクトトレイ170へ排紙する。尚、この読取モードにおいて、制御部250は保存処理ではなく分別処理又は、保存処理と分別処理の両方を行っても良い。すなわち制御部250は、読取モードにおいて読取部130がシートの画像を読み取り、読み取った画像を記憶部260へ保存した上で、当該画像を基に、例えばシートの再利用可否を判定することにより、シートをリユーストレイ160又はリジェクトトレイ170へ分別しても良い。
【0039】
図3は、第1の実施形態のデカーラ310の断面図である。本実施形態のデカーラ310は、分岐点220から分岐される第3搬送路200上に設けられる。デカーラ310は、第1ローラ312と第2ローラ314を有する。第1ローラ312は、例えば金属等による硬度が高い材料で表面が形成される。他方、第2ローラ314は第1ローラ312よりも硬度が低い、例えば、ゴム等により表面が形成される。また、第1ローラ312は第2ローラ314よりも直径が小さく形成される。第2ローラ314は、図示しないモータ等の駆動機構により回転する駆動ローラである。第1ローラ312は、矯正力設定部316により第2ローラ314側へ圧力をかけられることで第2ローラ314とともにニップを形成する。ニップは、第2ローラ314が硬度の高い第1ローラ312に円周に沿って変形した形状を有する。デカーラ310へ搬送されるシートは、ニップの形状に沿ってカールが付けられる。すなわちシートは、上述した循環する搬送路の湾曲部により生じたカールとは逆方向のカールが付与される。
【0040】
次に第1ローラ312の動作について説明する。本実施形態におけるニップは、矯正力設定部316によりそれぞれニップ圧が第1の強さ又は第1の強さより弱い第2の強さへ設定される。矯正力設定部316は、例えば、ステッピングモータ又はソレノイド等であり、第1ローラ312を駆動させることでニップ圧を設定する。図3(a)は、ニップ圧が第1の強さへ設定された場合のデカーラ310の断面図である。矯正力設定部316は、第1ローラ312へ所定の圧力を加えることにより、第2ローラ314とのニップ圧を第1の強さに設定する。図3(b)は、ニップ圧が第2の強さへ設定された場合のデカーラ310の断面図である。矯正力設定部316は、ニップ圧を第1の強さへ設定する場合の圧力よりも弱い圧力を第1ローラ312へ加えることで、ニップ圧を第2の強さに設定する。第2の強さは、例えば、シートを搬送することが可能なニップ圧を有していれば良い。シートへ生じるカールの強さは、ニップ圧の強さに対応するため、ニップ圧が第1の強さより弱い第2の強さの場合、シートへ生じるカールの強さもニップ圧が第1の強さの場合よりも弱い。
【0041】
矯正力設定部316は、消色処理が施されたシートがデカーラ310へ搬送される場合、ニップ圧を第1の強さに設定する(図3(a)参照)。消色処理が施されたシートは、消色部150により加熱された状態で循環する搬送路を搬送されるためにカールする。カールしたシートは、デカーラ310へ搬送されることにより、カール方向とは逆方向のカールを生じる力を受けるため、シートのカールは相殺される。他方、読取モードにより消色処理が実行されないシートがデカールへ搬送される場合、矯正力設定部316は、ニップ圧を第2の強さに設定する(図3(b)参照)。消色処理が実行されないシートは、カールが生じないため、デカーラ310へ搬送される場合にニップ圧を第1の強さよりも弱い第2の強さへ設定することで、デカーラ310によるカールの発生を抑制することが可能である。
【0042】
次に、制御部250の制御を図4を参照して説明する。本実施形態におけるデカーラ310は、シートへ消色処理を施すか否かにより制御が異なるため、ここではシートへ消色処理を施すモードとして第2消色モード、及びシートへ消色処理を施さないモードとして読取モードを例にとって説明する。図4は、第1の実施形態における第2消色モード及び読取モードの制御フローチャートである。ユーザによって処理が開始されると、制御部250は、給紙部材120のピックアップローラを駆動させて給紙トレイ110に載置されたシートの給紙を行う(ACT101)。制御部250は、給紙されたシートを搬送ローラ286により第1搬送路190へ搬送する(ACT102)。次に制御部250は、シートの保存処理を行う(ACT103)。読取部130において、第1読取ユニット132a及び第2読取ユニット132bがシート両面の画像を読み取る。保存処理が終了し、分岐点220へ搬送されるシートの搬送先を、制御部250は、消色処理の有無により決定する(ACT104)。シートへ消色処理を施す場合(ACT104、Yes)、制御部250は、第1分岐部材を制御することにより、シートを第1搬送路190から第2搬送路195へ搬送する(ACT105)。第2搬送路195へ搬送されてくるシートに対して制御部250は、消去部150による消色処理を施す(ACT106)。次に制御部250は、消色処理が施されたシートを第2搬送路195より合流点225を介して第1搬送路190へ搬送する(ACT107)。
【0043】
制御部250は、再び第1搬送路190へ搬送されてくるシートを、今度は第1分岐部材を駆動せず、第3搬送路200へ搬送する(ACT108)。制御部250は、第3搬送路200へ搬送されるシートをデカーラ310に搬送する(ACT109)。矯正力設定部316により第1ローラ312が第1の位置へ制御されることで、デカーラ310のニップ圧は、第1の強さへ設定される。これにより、消色処理が施されカールしたシートを矯正する。制御部250は、矯正されたシートをリユーストレイ160又はリジェクトトレイ170へ排紙する。(ACT110)
【0044】
他方、シートへ消色処理を施さない場合(ACT104、No)、制御部250は、第1分岐部材210を駆動せず、シートを第3搬送路200へ搬送する(ACT111)。制御部250は、第3搬送路200へ搬送されるシートをデカーラ310へ搬送する(ACT112)。第1ローラ312が矯正力設定部316により、第2の位置へ制御されることで、デカーラ310のニップ圧は、第2の強さへ設定される。これにより、消色処理が施されていないシートは、矯正されずカールされない。制御部250は、デカーラ310を通過したシートをリジェクトトレイ170へ排紙する。(ACT110)
【0045】
尚、上述のフローチャートは、第4消色モードと読取モードとを例にとって説明したものであり、他の各処理モードにおいても本実施形態のデカーラ310の制御を適用することが可能である。
【0046】
上述した第1の実施形態によれば、消色処理を行わないシートがデカーラへ搬送される場合、矯正力設定部によりニップ圧の強さを弱めることで、シートがデカーラによりカールされてしまうことを防ぐことが可能である。
(第2の実施形態)
【0047】
以下に、第2の実施形態について、図1図2及び図5を参照して説明する。本実施形態のデカーラ310が第1の実施形態のデカーラと異なる点は、シートの厚さに応じてニップ圧を変化させる点である。
【0048】
制御250部は、給紙トレイ110より消色装置100本体へ給紙されるシートの厚さを入力部より受信する。入力部は、例えば、操作部240である。ユーザがシートの厚さ情報を操作部240より入力することで、制御部250は、シートの厚さ情報を取得する。入力部は他の形態として、例えば、既知の厚さ検知部材でも良い。制御部250は、厚さ検知部材による検知結果としてシートの厚さ情報を取得する。
【0049】
本実施形態のデカーラ310は、消色処理の有無に加え、シートの厚さに応じてニップ圧を変化させることが可能である。シートへ消色処理を施さない場合は、矯正力設定部316はニップ圧を第2の強さに制御する。シートへ消色処理を施す場合、矯正力設定部316は、シートの厚さに応じてニップ圧の強さを変更する。シートが第1のシートよりも厚い第3のシートである場合、搬送路によるシートへのカールが強いので、矯正力設定部316はニップ圧を第1の強さよりも強い第3の強さへ設定する。他方、シートが第1のシートよりも薄い第4のシートである場合、搬送路によるシートへのカールが弱いので、矯正力設定部316はニップ圧を第1の強さよりも弱い第4の強さへ設定する。
【0050】
次に、制御部250の制御プロセスについて図5を参照して説明する。本実施形態のデカーラ310は、シートへ消色処理を施すか否かにより制御が異なるため、第1の実施形態と同様に第2消色モード及び読取モードを例にとって説明する。図5は、第2の実施形態における第2消色モード及び読取モードの制御フローチャートである。ユーザによって処理が開始されると、制御部250は、シートの厚さ情報を入力部より取得する(ACT201)。制御部250は、給紙部材120のピックアップローラを駆動させて給紙トレイ110に載置されたシートの給紙を行う(ACT202)。制御部250は、給紙されたシートを搬送ローラ286により第1搬送路190へ搬送する(ACT203)。次に制御部250は、シートの保存処理を行う(ACT204)。読取部130において、第1読取ユニット132a及び第2読取ユニット132bがシート両面の画像を読み取る。保存処理が終了し、分岐点へ搬送されるシートの搬送先を、制御部250は、消色処理の有無により決定する(ACT205)。シートへ消色処理を施す場合(ACT205、Yes)、制御部250は、第1分岐部材を制御することにより、シートを第2搬送路195へ搬送する(ACT206)。第2搬送路195へ搬送されてくるシートに対して制御部250は、消去部150により消色処理を施す(ACT207)。次に制御部250は、消色処理が施されたシートを第2搬送路195より合流点225を介して第1搬送路190へ搬送する(ACT208)。
【0051】
制御部250は、再び第1搬送路190へ搬送されてくるシートを第3搬送路へ搬送する(ACT209)。第3搬送路へ搬送されるシートは、デカーラ310に搬送される。矯正力設定部316は、制御部250が取得した厚さ情報に基づいてニップ圧を設定する(ACT210)。シートが第1のシートである場合(ACT210、A)、矯正力設定部316は、第1ローラ312を第1の位置へ制御し、デカーラ310のニップ圧を第1の強さへ設定する(ACT211)。シートが第1のシートよりも厚い第3のシートである場合(ACT210、B)、矯正力設定部316は、第1ローラ312を第3の位置へ制御し、デカーラ310のニップ圧を第3の強さへ設定する(ACT212)。シートが第1のシートよりも薄い第4のシートである場合(ACT210、C)、矯正力設定部316は、第1ローラ312を第4の位置へ制御し、デカーラ310のニップ圧を第4の強さへ設定する(ACT213)。
制御部250は、シートをリユーストレイ160又はリジェクトトレイ170へ排紙する(ACT214)。
【0052】
他方、シートへ消色処理を施さない場合(ACT205、No)、制御部250は、シートを第3搬送路200へ搬送する(ACT215)。第3搬送路へ搬送されるシートは、デカーラ310に搬送される(ACT216)。第1ローラ312が矯正力設定部316により、第2の位置へ制御されることで、デカーラ310のニップ圧は、第2の強さへ設定される。制御部250は、第2分岐部材215を駆動して、デカーラ310を通過したシートをリジェクトトレイ170へ排紙する。(ACT217)
【0053】
上述した第2の実施形態によれば、第1の実施形態と同様の効果に加え、シートの厚さに応じてニップ圧を変化させることで、厚紙や薄紙に対しても適正なデカールの矯正力を与え、排紙されるシートへカールが発生するのを抑制することが出来る。
【0054】
以上説明した少なくとも一つの実施形態によれば、消色処理を実行しないシートがデカーラに搬送される場合、デカーラによるシートへの矯正力を、消色処理を実行するシートに対する矯正力よりも小さくすることで、デカーラによりシートにカールが生じてしまうことを防ぐことが可能である。
【0055】
本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、種々の変形が可能である。上記実施形態において、デカーラは2つのローラにより構成されるが、これに限るものではない。図6に示すように、矯正力設定部が1つのローラをシート搬送方向と直交する幅方向へ移動させる構成でも良い。例えば、図6(a)は、矯正力設定部が矯正力を第1の強さに設定した場合のデカーラ310aの断面図である。Pは搬送されるシートを示す。他方、図6(b)は、矯正力設定部がローラの位置を移動させることで、矯正力を第2の強さに設定した場合のデカーラ310aの断面図である。矯正力設定部は、ローラの位置を変化させることで、上述した第1乃至第4の強さへ矯正力を設定することが可能である。
【0056】
また、上述の実施形態において、図4図5のプロセスを具現化するプログラムは、各装置が備える記憶媒体(ROM又は記憶部)に予め組み込んで提供するものとするが、これに限らず、インストール可能な形式又は実行可能な形式のファイルでCD−ROM、CD−R、DVD(Digital Versatile Disk)等のコンピュータで読み取り可能な記録媒体に記録して提供するように構成してもよい。さらに、記憶媒体は、コンピュータ或いは組み込みシステムと独立した媒体に限らず、LANやインターネット等により伝達されたプログラムをダウンロードして記憶又は一時記憶した記憶媒体も含まれる。
【0057】
また、上記実施形態の各装置で実行されるプログラムをインターネット等のネットワークに接続されたコンピュータ上に格納し、ネットワーク経由でダウンロードさせることにより提供するように構成してもよく、インターネット等のネットワーク経由で提供又は配布するように構成してもよい。
【0058】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0059】
100…消色装置
150…消色部
250…制御部
280…搬送部
310…デカーラ(カール矯正機構)
312…第1ローラ
314…第2ローラ
316…矯正力設定部
図1
図2
図3
図4
図5
図6