(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5786087
(24)【登録日】2015年7月31日
(45)【発行日】2015年9月30日
(54)【発明の名称】ダウンフロー容器内のセルロース材料に処理液を添加する方法及び装置
(51)【国際特許分類】
D21C 7/06 20060101AFI20150910BHJP
D21C 3/24 20060101ALI20150910BHJP
B01J 4/00 20060101ALN20150910BHJP
【FI】
D21C7/06
D21C3/24
!B01J4/00 103
【請求項の数】9
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2014-502508(P2014-502508)
(86)(22)【出願日】2011年3月25日
(65)【公表番号】特表2014-514471(P2014-514471A)
(43)【公表日】2014年6月19日
(86)【国際出願番号】SE2011050339
(87)【国際公開番号】WO2012134358
(87)【国際公開日】20121004
【審査請求日】2013年11月28日
(73)【特許権者】
【識別番号】514052704
【氏名又は名称】ヴァルメト アクチボラグ
(74)【代理人】
【識別番号】100064388
【弁理士】
【氏名又は名称】浜野 孝雄
(72)【発明者】
【氏名】トロリン,ダニエル
(72)【発明者】
【氏名】ウィルゴットソン,フレドリック
【審査官】
中村 勇介
(56)【参考文献】
【文献】
国際公開第2011/021968(WO,A1)
【文献】
特表2008−506862(JP,A)
【文献】
米国特許第03881986(US,A)
【文献】
特表2005−520071(JP,A)
【文献】
国際公開第2005/116327(WO,A1)
【文献】
特開昭59−137589(JP,A)
【文献】
特表2002−506133(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
D21B 1/00− 1/38
D21C 1/00−11/14
D21D 1/00−99/00
D21F 1/00−13/12
D21G 1/00− 9/00
D21H11/00−27/42
D21J 1/00− 7/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ダウンフロー容器を用いて連続したプロセスによる化学パルプの製造中に木材チップのような粉砕したセルロース材料に処理液を添加する方法であって、チップがプラグ流で容器を降下し、処理したチップが容器の底部から連続して送出される方法において、
プラグ流に平行に設けた少なくとも一つの入れ子式パイプを介して処理液を添加して、プラグ流において可変の高さ位置で処理液を分配すること
を特徴とする方法。
【請求項2】
プラグ流において調整可能な液体レベルを確立し、入れ子式パイプの出口を、液体レベルの上方でしかも液体レベルの上方に確立したチップ容量の上方面レベルより下方に入れ子式パイプの出口が位置するように調整すること
を特徴とする請求項1記載の方法。
【請求項3】
出口の位置における入れ子式パイプを介して添加した処理液の温度を制御して、温度が出口近くの圧力での沸騰温度を越え、容器内の液体レベルの上方に位置したチップ容量内にフラッシング効果が得られるようにしたこと
を特徴とする請求項2記載の方法。
【請求項4】
添加した処理液が、出口近くの圧力での沸騰温度を越える処理液の温度をもつ熱い処理液の形態であり、容器内の液体レベルの上方に位置したチップ容量内へ処理液からの蒸気を解放することでフラッシング効果が得られるようにこと
を特徴とする請求項3記載の方法。
【請求項5】
入れ子式パイプの出口の高さ位置が、最新の液体レベル位置、木材の種類、フラッシングによる蒸煮の必要性、木材の水分含有量、或いは容器の底部に設けた底部かき取り機における負荷のようなプロセスパラメーターに依存して変えられること
を特徴とする請求項3又は4記載の方法。
【請求項6】
ダウンフロー容器(13)を用いて連続したプロセスによる化学パルプの製造中に木材チップのような粉砕したセルロース材料に処理液を添加する装置であって、チップがプラグ流で容器を降下し、処理したチップが容器の底部から連続して送出される装置において、
上記処理液を収容する源(BL)に接続した少なくとも一本のパイプ(7b1、7b2)が上記プラグ流の方向に平行にダウンフロー容器内に設けられ、上記パイプの下方出口部分(701、702)が、容器内下方出口部分の高さ位置を調整する調整手段(M/72、74/82、84)によって制御されること
を特徴とする装置。
【請求項7】
下方出口部分(701、702)が、固定パイプ部分に入れ子式に設けられること
を特徴とする請求項6記載の装置。
【請求項8】
調整手段が、容器(13)の外側に設けた外部モーター(M)を備え、上記モーターが接続部材(72、74/82、84)により上記下方出口部分に接続されていること
を特徴とする請求項7記載の装置。
【請求項9】
調整手段が、容器内の液体レベルを検出するセンサーに接続した外部モーターの制御ユニット(CPU)を備えていること
を特徴とする請求項8記載の装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プラグフロー形態でチップが下降していくダウンフロー容器を用いて連続したプロセスで化学パルプを製造している間に、粉砕したセルロース材料、好ましくは木材チップに処理液を添加する、請求項1及び請求項6の前段に記載の方法及び装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
連続ダイジェスターを用いて化学セルロースパルプを蒸解する古い先行技術では、ダイジェスターにおいて蒸解プロセスが確立される前に、チップビンを備えた予備処理装置と、蒸気容器と含浸チップシュートとを用いるのが普通であった。含浸流体又は輸送流体中におけるチップのスラリのその後の形成前に、蒸煮をチップビンにおいて一つの又は幾つかのステップで実施してきた。蒸煮は、含浸流体がチップに十分に浸透し、そして空気がシステム内に引き込まれないように、空気を確実に放出するために絶対的に必要であると考えられてきた。
【0003】
このようにして比較的簡単なシステムを得るために、チップビンを含浸容器と一体化する試みがなされてきた。
【0004】
既に特許文献1米国特許第2,803,540号において、チップビンからのチップが、蒸煮と含浸とを組合わせて達成する容器に供給されるシステムが提案されている。この容器では、チップは容器の上方部分で蒸煮され、含浸流体が同じ温度で、容器壁の外側に位置しかつ容器壁を貫通するノズルを備えた分配用環状マニホールド/ヘッダーを用いて容器の種々のレベルにおいて添加される。これらの原理はまた、非特許文献1“Continuous Pulping Processes”パルプ及び紙工業の技術連合 1970年Sven Rydholm 144頁に記載された“Mumin cooking”として公知のプロセスにも適用されてきた。かかるプロセスでは、未蒸煮のチップは、上方部分において蒸煮の得られる組合わせた含浸容器に通され、強制循環中に容器の上方部分におけるある一点に含浸流体が添加される。含浸流体はこの場合、チップと同じ流れ方向にもっぱら運ばれる。
【0005】
低圧の最初の共通蒸煮及び含浸容器を備えた同様なシステムは特許文献2米国特許第3,532,594号明細書に示されており、かかるシステムは、例えばスウェーデン国のSkoghall millにおいて運転されてきた。この場合には、加熱した含浸液体が中央パイプを介してチップ容量に添加されるが、蒸気供給用の付加的な中央パイプも示されている。このシステムは、生産能力の問題、後に続く供給システムにおける能力の問題、並びにブローンパルプにおけるあまりにも高すぎる廃棄及びシーブ内容物のような種々の理由で後に放棄されてきた。
【0006】
特許文献3米国特許5,635,025号には、予め蒸煮処理することなしに、組合わせチップビン、含浸容器及びチップシュートの形式の容器にチップを供給するシステムが示されている。該容器においてチップの蒸煮が行なわれ、チップは流体レベル上に位置し、含浸流体の単純な添加は液体レベルの下から容器壁を通して行なわれる。
【0007】
かかるさらに別のシステムは、特許文献4米国特許6,280,567号に記載されており、予め蒸煮処理することなしに、大気含浸容器にチップが供給され、チップは、約130〜140℃の温度を維持した温黒液を添加することにより加熱される。添加含浸液は、特許文献1に示されたものと同様にしてノズルを介して、すなわち容器の壁を貫いた供給ノズルを用いて添加される。
【0008】
代わりのシステムはスウェーデン国特許第523.850号において提案されており、加圧した黒液は蒸煮処理容器の上方部分に添加され、それにより、黒液は、減圧した後、蒸煮処理用の蒸気を解放する。熱い黒液の添加は、チップベッドを貫通する固定水平供給パイプによって行われ、該パイプの長さ方向に沿って多数の孔が設けられている。熱い黒液の分配が大きな(しかし全横断面ではない)領域にわたってなさるとしても、この解決法は、水平パイプがチッププラグ運動を妨げ得るので、望ましくはない。先行技術ではほとんど、蒸煮処理と含浸とを組合わせた容器に添加する含浸液のために、容器の壁に設けた固定環状分配ノズルか又は固定中央パイプが用いられている。
【0009】
最近の数年の間に、新しいダイジェスターシステムの設計容量は、代表的には500〜2000ADt/24hから5000ADt/24hを越える生産率へ相当に増大してきている。設計生産率の増大につれて、チップの蒸煮処理と含浸とを組合わせた容器の直径も増大する。
【0010】
実質的に大気圧状態で蒸煮し含浸するための共通の処理容器を用いた技術は、IMPBIN(商標)の名称でメトソ ペイパー社から提供される。概念の幾つかの改良は以下のように特許になっている。
・スウェーデン国特許第523.850号(米国特許第7381302号に相当)、含浸液は比較的高い静止ヘッドを用いてIMPBINにおける複数の固定位置に連続して上昇する温度で添加される。
・スウェーデン国特許第528.448号(欧州特許第1818445号に相当)、IMPBINの液循環はダイジェスターにおける液循環と分離される。
・スウェーデン国特許第530.725号(欧州特許第2065513号に相当)、冷却シャワーは悪臭を放つガスのダウンブロー樋を叩くためにIMPBINの頂部に供給される。
【0011】
公知の解決法の別の欠点は、この共通の蒸煮及び含浸容器が両方の機能を最適化する必要があることにあり、また蒸煮効果及び含浸時間の両方がシステムに供給されるセルロースの形態及び異なる動作条件に応じて変化し得る必要があるので、利益が相反する。含浸液における含浸時間を延す必要がある場合には、液体レベルの増加は蒸煮処理ゾーンにおける時間を減少させ得る或いは熱い液体のフラッシングによって発生した蒸気の量を低減させ得るので、液体レベルを増加することは可能でない。液体レベルの真下における蒸気のフラッシングオフにより沸騰効果が生じ、容器の中央に十分に充填したチップパイルの形成を分裂させ、容器の内側にチャンネリング効果
を引き起こし、容器内のセルロース材料の一様な処理を妨げることになる。
【0012】
含浸し難い木材に対して含浸領域を広げる可能性をもち、或いは有効な蒸煮処理効果を維持しながら、他のプロセス条件が含浸領域における増加した液体レベルを必要とする場合の上記欠点は、特に動作中に品質の異なるセルロース材料が供給されるIMPBINの非常に多くの実行の後に明らかとなる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
本発明の主目的は、チップがプラグフローにおいて容器を降下していくダウンフロー容器を用いて、連続したプロセスで化学パルプを製造する間にチップに処理液を添加し、しかも上述の他の公知の解決法に伴う欠点をもたない改良型の順応性のある装置を提供することにある。
【0014】
本発明の特殊な目的は、蒸気の供給及び/又はフラッシング熱液体により、蒸気を添加しながら液体レベルを変化させることができ、確立した液体レベルに無関係に最適な蒸煮処理が手近となるように蒸気の添加が液体レベル上で非常に近接して行なわれるように制御されることにある。
【0015】
本発明の別の特殊な目的は、木材の品質に変化が起こる際に含浸領域における保持時間を変えることのできるようにすることにある。木材の品質のこれらの変化は、
・木材の種類(広葉樹/針葉樹/一年生植物)又はそれらの混合物;
・冬季から夏季への変化(チップに付着した氷の量及びチップの温度の変化);
・木材チップの品質(チップのサイズ、ピンチップ/普通のチップ);
・チップの水分含有量;
・チップ緊度(広葉樹対針葉樹しかし各種類の中でも変化する)
に依存し得る。
【0016】
本発明のなお別の特殊な目的は、ダウンフロー容器の底部における機械的送り手段、典型的には底部かき取り機におけるトルク要求を低減できるようにすることにある。チップの品質が時折仕様の範囲外である際に、例えば細かい木材粒子の量が多い場合(のこぎり屑やピンチップ破片が多い場合)には、容器内のチップコラムの圧縮は、容器の底部におけるかき取り機における動作負荷が極端に高くなるような程度まで増加する。チップコラムの高すぎる圧縮に対抗するために、液体レベルの上方に位置するチップによる下向きの推力を低減するように液体レベルを増加することによって容器内の液体レベルとチップとの差を減少させるのが普通の手段である。かかる制御中に、蒸気及び/又は熱い溶液の導入ポイントを液体レベルの上昇で覆って蒸気の有効な発生を損なうべきでないことが重要である。
【0017】
本発明は、広葉樹や針葉樹チップ、バガス、竹或いはその他の一年生植物を蒸解する際に有利に用いることができる。
【課題を解決するための手段】
【0018】
本発明の特徴は独立請求項に記載され、任意の選択的な実施形態は従属請求項に記載される。本発明はまた、好ましい実施形態で開示されるが、かかる実施形態の全ての特徴は、主張した効果のために必要な特徴として特に記載してなくとも、任意選択的ではあるが本発明に包含され得る。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図5】調整可能なパイプの代わりの原理構成を示す。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下の説明においては、用語“処理液”が用いられ、かかる用語は、処理容器内の全チップ流れに対してむらなく添加される一種類の処理液を意味している。この処理液は、単に蒸気から成ることができるが、しかし、熱い使用済みの蒸解液、すなわち後続のダイジェスターからの黒液、並びに以下の熱い液体の二種類以上の混合液も含むことができる。
・黒液、
・白液のような新鮮な蒸解化学薬品(及び添加物例えば
アントラキノン)、
・後続の洗浄段階からの稀釈液(すなわち洗浄段階からの洗浄濾液)、
・蒸気(処理液を加熱するために直接添加)。
【0021】
用語“処理容器”も用いられ、かかる用語は、
脱リグニンの形態か或いは含浸状態でチップを処理するために使用する任意の種類の処理容器を意味し、すなわち、かかる容器は、IMPBINのような大気圧で蒸煮と処理を組合わせた容器、或いは加圧式のダイジェスターでも良い。用語“微粉砕したセルロース材料”は、好ましくは木材チップの形態であり得るが、しかし広葉樹や針葉樹或いは一年生植物から得られたのこぎり屑やピンチップのような比較的破砕した木材も含めて用いられる。
【0022】
図1には、化学パルプの製造中におけるチップの含浸用の先行技術の装置が示されており、実質的に大気圧(±0.5バールすなわち圧力容器ではない)でチップを湿式蒸煮する方法を含めたメトソ ペイパー社から市販のIMPBIN概念の全ての本質的な部品にある。この装置は、垂直に設けた本質的に円筒状の含浸容器13を有し、蒸煮処理なしの小さなチップバッファー1及びシュート供給部(チップ供給部)2の形態の供給手段を介して含浸容器の頂部に、蒸煮していないチップが連続して供給される。従って含浸容器に供給されるチップは加熱されていないチップであり、普通雰囲気温度と同じ温度にある。
【0023】
容器内の圧力は、含侵容器の頂部の弁ライン4に設けた制御弁31を介して、できれば入力ライン5を介して蒸気STの制御と組み合わせて必要に応じて調整され得る。大気圧が確立されることになる際には、この弁ラインは直接大気に開放できる。大気圧のレベルに圧力が確立され、或いは大きさ−0.5バール(−50kPa)の僅かに不足の圧力が出口4で確立され、或いは大きさ0.5バール(50kPa)までの僅かに過剰の圧力が確立される。換気流の入力SW
AIR(掃引空気)は必要に応じて頂部に加えることができ、粉砕したセルロース材料の導入によって生じた又は存在していたあらゆる気体の除去を確実にする。含浸したチップは、この場合出口10の形態の、できれば又含浸容器30の底部の底部かき取り機(BS)と関連した出口手段を介して連続して送出される。
【0024】
液体のレベルLIQ
LEVの上方のチップのレベルCH
LEVは、木材チップを含浸している際に少なくとも2m、好ましくは少なくとも5mである必要がある。嵩密度の低い原料をパルプ化する場合、流体の表面上のチップのコラムの高さの相応した増加が好ましくは確立される。この高さは、容器を通る一様なプラグ流においてチップの最適通過を得るために重要である。
【0025】
主としてユーカリ樹やその他の一年生植物のような容易に蒸解できる種類の木材を含浸する際には、新鮮な蒸気による蒸煮処理は、チップ温度が通常高い温暖な気候帯においては、本質的に避けられる。従って新鮮な蒸気は、通常の定常状態動作中に含浸流体によって確立した流体レベルの上方に位置するチップに添加する必要がない。本発明はまた、嵩密度の低い針葉樹が原料として用いられる場合にも適用できる。
【0026】
蒸煮するのが難しい主として木材の原料、特に密度の低い針葉樹を処理する際、及び低温季節中のような極端に低い温度のチップを用いて運転する場合には、含浸流体で確立した流体レベルの上方に位置するチップは、チップが処理液で確立した流体レベルに達する前に、チップの温度がチップパイルにおいて100℃に達するように外部蒸気STを含浸容器へ添加することによって加熱され得る。
【0027】
共通の中央パイプ7aを介して添加した熱い処理液はまた、黒液の一つの共通の流れに依らない全体として別個の源からの混合物として確立され得る。例えば、処理液はまた洗浄濾液も含み得る。添加した処理液はまた、黒液及び付加的な量の新鮮な蒸解化学薬品すなわち白液、並びにプロセスに必要であるアルカリ分布を確立する目的をもつ蒸気の混合物であることができる。特に黒液中の残留アルカリが低い場合には、単純に木材の酸性度を中性化するために、通常、アルカリの迅速な初期消耗が行なわれ、一方、含浸段階の後の最終残留アルカリを特定のレベルに保つのが望ましい。添加アルカリの必要量は、液体レベルより上方のチップ容量における蒸煮中に解放される木材の酸性度のレベルにほとんど依存し、従って処理すべき木材の種類(針葉樹又は広葉樹)に依存する。容器には、プロセスの初期に液体抽出(REC)できるように、抽出スクリーン6を設けても設けなくてもよい。
【0028】
図2において、単一中央パイプ7を介して処理液BLを添加する領域の
図1の細部を示している。記載するように、中央パイプ7からの出口は液体レベルLIQ
LEVの上方に位置している。湿式蒸煮処理概念に従って添加される熱い処理液は、下向きの矢印で示すように、容器の中央に添加される。中央パイプの出口端のレベルにおけるチップパイルの圧力は、添加した処理液の沸騰圧より低く、また添加した処理液は灰色の上向きの矢印で示すように蒸気をフラッシングする。別の熱回収システム(フラッシュサイクロン、リボイラー、熱交換器など)により発生した付加的な新鮮な及び/又はフラッシュオフ蒸気STは、かかる付加的な蒸気の必要性に応じてかかる高さ位置に添加され得、この蒸気の流れも灰色の上向き矢印で示されている。
【0029】
図3には、
図1の先行技術の構成に対してなされた改良点を強調している本発明の好ましい実施形態を示している。中心線CLの左側には、低い液体レベルLIQ
LEV
1が確立され、一方、中心線CLの右側には、高い液体レベルLIQ
LEV
2が確立されている。
【0030】
連続したプロセスにおいて化学パルプを製造する間に、粉砕したセルロース材料、好ましくは木材チップに熱い処理液BLを添加する装置が示されている。上記プロセスは、粉砕したセルロース材料がプラグ流で容器の下方へ下がっていき、また処理した粉砕したセルロース材料が容器の底部から連続して送出される、
図1のものと同様なダウンフロー容器13を用いている。中心線CLの各側には、二つの異なるモードが示され、熱い処理液を添加する二本のパイプ7b
1、7b
2が示されているが、しかし、ある実施形態では、当然一本だけのパイプを使用することができ、或いは代わりに二本以上のパイプを使用することもできる。
【0031】
処理液BLは共通の源BLからパイプ7を介して共通のヘッダー7cに供給される。二本以上のパイプ7b
1、7b
2の上方端部は共通のヘッダー7cに接続されている。垂直パイプ7b
1、7b
2は好ましくは上方の固定パイプ部分を備え、そして上方の固定パイプ部分に対して入れ子式に下方出口部分70
1、70
2がそれぞれ設けられている。
【0032】
下方出口部分の開放下方端部はチッププラグ流に挿入されている。中心線CLの左側に示すように、低い液体レベルLIQ
LEV
1が確立され、下方出口部分70
1の高さ位置はこの液体レベルの上方の距離に調整される。中心線CLの右側に示すように、高い液体レベルLIQ
LEV
2が確立され、下方出口部分70
2の高さ位置はこの液体レベルの上方の距離に調整される。いずれの場合においても、調整は上記固定パイプ部分に対して下方出口部分を入れ子式に摺動させることによって行われる。
【0033】
図3に示すように、単一制御弁CVは処理容器13の外側のパイプ7に設けられ得る。
【0034】
また
図3に示すように、処理容器から処理液の流れを排出する排出ストレーナ6が処理容器の壁に設けられ得るが、しかし設けなくても良い。上記排出ストレーナは垂直パイプ7bの開放下方端部の下方に位置している。かかる排出ストレーナの必要性は、特に、木材の種類及び全プロセスのアルカリ分布に依存する。
【0035】
図4には、入れ子式にパイプを調整する一つの原理を示す。垂直固定パイプ部分7bは、垂直固定パイプ部分内に設けた下方出口部分70を備えている。下方出口部分70の高さ位置は、モーターMによって駆動されるドラム74に巻回されたワイヤーコネクターを含む調整手段によって制御され、ワイヤーコネクターの下方端部は下方出口部分70の引き突起部71に取付けられている。好ましくは、パイプ間にはシーリング要素73が設けられ得る。ワイヤーを用いることにより、下方出口部分を高い位置へ上昇させる際に下方出口部分に正の引張り力を伝達できる。下方出口部分を降下させることになる場合には、圧力の作用している下方出口部分の前方に面積の縮小領域があるので、重力及びパイプ内の圧力が用いられる。
【0036】
下方出口部分70の高さ位置を制御する入力パラメーターとして少なくとも一つのプロセスパラメーターを有する制御システムCPUを用いることができ、制御ユニットは二方向接続を介して、調整手段で得た位置及びモーターを制御することができる。一つのかかる入力パラメーターは検出した液体レベルLIQ
LEVであることができ、また他の入力パラメーターは底部かき取り機BSにおける検出したトルク要求であることができる。
【0037】
制御モード
実際の液体レベルがフィードバック信号として用いられる場合には、システムは、液体の正味の入力流を変えることができ、そして液体レベルが上昇し始めるとすぐに、調整手段は、下方出口部分70の出口と液体レベルとの間の設定した間隔を維持するように下方出口パイプを容器の液体レベルまで上昇し始める。意図した液体レベルがフィードホワード信号として用いられる場合には、システムは、液体レベルを上昇させる意図した制御が作用し始めるとすぐに、下方出口部分70を上昇し始めることができる。底部かき取り機BSにおけるトルク要求が設定値を越える場合には、システムは、液体レベルを同時に上昇させながら、下方出口部分70を上昇させ始める。
【0038】
図5には、入れ子式にパイプを調整する別の原理を示す。垂直固定パイプ部分7bは、垂直固定パイプ部分外に設けた下方出口部分70を備えている。下方出口部分70の高さ位置は、モーターMを介してプーリーホイールによって駆動される丈夫な引きロッド82を含む調整手段によって制御され、引きロッドの下方端部は下方出口部分70の引き突起部81に取付けられている。好ましくは、引き突起部81はシーリング要素を含むことができる。丈夫な引きロッドは、上向き及び下向きの両方向に下方出口部分を引っ張ることができる。
【0039】
入れ子式のパイプを備えた装置は、容器内に確立した液体レベルを変える可能性をもたらし、しかも液面近いが液体レベルより上方で、蒸気の形態の又は好ましくは熱い処理液フラッシングオフ蒸気の形態の処理液を添加することができる。こうして、蒸煮効果が液体レベルの上方で全チップ容量を蒸煮することができる。
【0040】
蒸煮効果を最大に維持しながら、液体レベルを変える可能性は、種々のプロセス条件にプロセスを適合させるために重要である。種々のプロセス条件は、容器に供給される木材に依存し得る。例えば、木材の種類又は木材の混合物(針葉樹/広葉樹)の変化により、或いは若木が容器に供給され場合、或いは容器が冬季又は夏季に用いられ場合(チップによって容器に付着する氷の量が蒸煮処理要求を変え得る)に、チップの比重は変化し得る。
【0041】
液体レベルを変えることはまた、容器の底部に設けた底部かき取り機におけるトルク要求を低減しようとする際に重要な制御観点でもある。液体レベルを上昇させることにより、液体レベルの上方におけるチップパイルからの下向き力を低減でき、従ってチッププラグから底部かき取り機への総下向き推力を低減できる。
【0042】
本発明は、特許請求の範囲に記載した発明の範囲内で種々の仕方で変更できる。入れ子式パイプは相互に同心的に摺動する二本のパイプを用いること以外の他の手段で構成してもよい。例えば、上方固定パイプ部分は、あるべロー機構を介して下方出口部分に接続することができる。下方出口部分は少なくとも二本の摺動管を備えることができ、すなわち上方固定パイプ部分と最下方出口部分との間に中間摺動管を用いてもよい。最も簡単な形態では、調整手段は単にハンドクランク型調整ホイールを備えることができる。
【符号の説明】
【0043】
13:ダウンフロー容器
7b
1、7b
2:パイプ
BL:処理液の源
70
1、70
2:下方出口部分
71:引き突起部
73:シーリング要素
74:ドラム
CPU:制御システム
81:引き突起部
82:引きロッド
M:モーター