特許第5786102号(P5786102)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5786102酸性ポリマー処理方法に特徴のあるフィラー
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】5786102
(24)【登録日】2015年7月31日
(45)【発行日】2015年9月30日
(54)【発明の名称】酸性ポリマー処理方法に特徴のあるフィラー
(51)【国際特許分類】
   A61K 6/08 20060101AFI20150910BHJP
   A61K 6/027 20060101ALI20150910BHJP
   C09C 3/12 20060101ALI20150910BHJP
【FI】
   A61K6/08 H
   A61K6/027
   C09C3/12
【請求項の数】3
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2015-10736(P2015-10736)
(22)【出願日】2015年1月22日
【審査請求日】2015年1月22日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】390011143
【氏名又は名称】株式会社松風
(72)【発明者】
【氏名】原 大輔
(72)【発明者】
【氏名】中塚 稔之
(72)【発明者】
【氏名】門林 勇生
【審査官】 鶴見 秀紀
(56)【参考文献】
【文献】 特開2002−145715(JP,A)
【文献】 特開2001−322908(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 6/00−6/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
解砕イオン徐放性ガラスフィラーであって、
シラン化合物によりイオン徐放性ガラスフィラーの表面を被覆し、シラン化合物処理イオン徐放性ガラスフィラーを製造するシラン化合物処理工程、
酸性ポリマーによりシラン化合物処理イオン徐放性ガラスフィラーを処理し、酸性ポリマー処理イオン徐放性ガラスフィラーを製造する酸性ポリマー処理工程、
酸性ポリマー処理イオン徐放性ガラスフィラーを解砕する解砕工程を順次経て得られた解砕イオン徐放性ガラスフィラーにおいて、
シラン化合物処理イオン徐放性ガラスフィラーは凝集しており、
イオン徐放性ガラスフィラーのMV値(A)、シラン化合物処理イオン徐放性ガラスフィラーのMV値(B)、解砕イオン徐放性ガラスフィラーのMV値(C)との関係が以下の式を満たしていることを特徴とする解砕イオン徐放性ガラスフィラー。
(B)/(A)≧2
(B)/(C)≧2
(C)/(A)≧1
【請求項2】
請求項記載の解砕イオン徐放性ガラスフィラーであって、
イオン徐放性ガラス フィラーのガラス組成範囲が
SiO 15〜35質量%、
Al 15〜30質量%、
5〜20質量%、
SrO 20〜45質量%、
F 5〜15質量%、
NaO 0〜10質量%である解砕イオン徐放性ガラスフィラー。
【請求項3】
請求項1〜記載の解砕イオン徐放性ガラスフィラーを含む歯科用材料。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は歯科分野で用いられる歯科材料にイオン徐倣性を付与するための解砕イオン徐放性ガラスフィラーに関する。歯科材料とは、歯科治療における充填または補綴修復、仮封、仮着、補綴物の作製、接着・合着、小窩裂溝封鎖等に用いられる材料のことであり、具体的には、コンポジットレジン(前装冠用や保存修復用などを含む)、仮封・仮着材、レジンセメント、接着材、フィッシャーシーラント等が挙げられ、イオン徐放性ガラスフィラーと重合性単量体とを混合して製造するものである。
【背景技術】
【0002】
従来のイオン徐放性ガラスフィラーは、ガラス組成中に存在するフッ素、ストロンチウム、ボロンなどの金属イオンを徐放させるために数々の試みがなされてきた。しかし、十分なイオン量を徐放させることができず、また、継続してイオンを徐放し続けることもできなかった
特許文献1においては、シラン化合物処理及び酸性ポリマー処理を施したフッ素徐放性フィラーに関する記載があるものの、各種処理を施す前後のフィラー粒子径(MV値)はいずれも同等であり、その結果、イオン徐放量及び持続性は十分でなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2001-139844
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来のイオン徐放性ガラスフィラーは、各種イオンを徐放はするもののその徐放量は少ないものであったことから、もっと多くのイオン徐放量を有し、且つその徐放が長期間に渡り継続する持続性も有したイオン徐放性ガラスフィラーが求められていた。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らは上記課題を解決するために誠意検討した結果、シラン化合物処理及び酸性ポリマー処理を施すフィラーが凝集や造粒した状態であることによって、フィラーのイオン徐放性やその持続性に影響を与えることを明らかにした。より具体的には各処理前後のおけるフィラーの粒子径(MV値)とイオン徐放性及びその持続性の関係を見出し、本発明を完成させたのである。
本発明は解砕イオン徐放性ガラスフィラーであって、
シラン化合物によりイオン徐放性ガラスフィラーの表面を被覆し、シラン化合物処理イオン徐放性ガラスフィラーを製造するシラン化合物処理工程、
酸性ポリマーによりシラン化合物処理イオン徐放性ガラスフィラーの表面を処理し、酸性ポリマー処理イオン徐放性ガラスフィラーを製造する酸性ポリマー処理工程、
酸性ポリマー処理イオン徐放性ガラスフィラーを解砕する解砕工程を順次経て得られた解砕イオン徐放性ガラスフィラーにおいて、
シラン化合物処理イオン徐放性ガラスフィラーは凝集しており、
イオン徐放性ガラスフィラーのMV値(A)、シラン化合物処理イオン徐放性ガラスフィラーの造粒物のMV値(B)、解砕イオン徐放性ガラスフィラーのMV値(C)との関係が以下の式を満たしていることを特徴とする解砕イオン徐放性ガラスフィラーである。
(B)/(A)≧2、好ましくは(B)/(A)≧5、更に好ましくは(B)/(A)≧10である。
(B)/(C)≧2、好ましくは(B)/(C)≧5、更に好ましくは(B)/(C)≧10である。
(C)/(A)≧1である
イオン徐放性ガラス フィラーのガラス組成範囲がSiO 15〜35質量%、Al 15〜30質量%、B 5〜20質量%、SrO 20〜45質量%、F 5〜15質量%、NaO 0〜10質量%であることが好ましい。
解砕イオン徐放性ガラスフィラーを歯科用材料に含むことで多大な効果を発することができる。
【発明の効果】
【0006】
本発明の解砕イオン徐放性ガラスフィラーから徐放するイオンによって口臭予防に効果が認められ、更にはエナメル質の透明性も向上させることが認められた。
【発明を実施するための形態】
【0007】
本発明の解砕イオン徐放性ガラスフィラーに用いるイオン徐放性ガラスフィラーはフッ化物イオンを徐放し、更にストロンチウムイオン、アルミニウムイオン及びホウ酸イオンの内から少なくとも一種類以上のイオンを徐放することが好ましく、より好ましくはフッ化物イオン、ストロンチウムイオン及びホウ酸イオンを徐放することである。
上記のイオン徐放性ガラスフィラーからのイオン徐放とはイオン徐放性ガラスフィラーを構成するガラス組成中に含まれている元素に基因したイオンの持続的な徐放を意味するものであり、金属フッ化物等の水への溶解によって一時的に多量を放出するものとは異なる。
【0008】
本発明の解砕イオン徐放性ガラスフィラーに用いるイオン徐放性ガラスフィラーを構成するガラスの組成はガラス骨格を形成する1種類以上のガラス骨格形成元素とガラス骨格を修飾する1種類以上のガラス修飾元素を含んだものであれば何等制限なく用いることができる。また、前記のガラス組成においてはガラス組成によってガラス骨格形成元素やガラス修飾元素の両方の元素として働く、いわゆるガラス両性元素はガラス骨格形成元素の範疇として含めるものである。イオン徐放性ガラスフィラーを構成するガラスの組成に含まれるガラス骨格形成元素を具体的に例示するとシリカ、アルミニウム、ボロン、リン等が挙げられるが、単独だけでなく複数を組み合わせて用いることができる。また、ガラス修飾元素を具体的に例示するとフッ素、臭素、ヨウ素等のハロゲン類元素、ナトリウム、リチウム等のアルカリ金属類元素、カルシウム、ストロンチウム等のアルカリ土類金属類元素等が挙げられるが、単独だけでなく複数を組み合わせて用いることができる。これらの中でもガラス骨格形成元素としてシリカ、アルミニウム、ボロンを含み、且つガラス修飾元素としてフッ素、ナトリウム、ストロンチウムを含んだガラス組成をイオン徐放性ガラスフィラーに用いることが好ましく、それらのガラス組成を具体的に例示するとストロンチウム、ナトリウムを含んだシリカガラス、フルオロアルミノシリケートガラス、フルオロボロシリケートガラス、フルオロアルミノボロシリケートガラス等が挙げられる。さらに、フッ化物イオン、ストロンチウムイオン、アルミニウムイオン、ホウ酸イオンを徐放することが本発明においてはより好ましいことから、そのガラス組成を具体的に例示するとナトリウム、ストロンチウムを含んだフルオロアルミノボロシリケートガラスが挙げられ、そのガラス組成範囲はSiO2 15〜35質量%、Al2O3 15〜30質量%、B2O3 5〜20質量%、SrO 20〜45質量%、F 5〜15質量%、Na2O 0〜10質量%となる。このガラス組成は元素分析、ラマンスペクトルおよび蛍光X線分析等の機器分析を用いることにより確認することができるが、いずれかの分析方法においても実測値がこれらのガラス組成範囲に合致しているものであれば何等問題はない。
【0009】
本発明の解砕イオン徐放性ガラスフィラーに用いるイオン徐放性ガラスフィラーの本原料であるガラスを製造する方法は特に制限はなく、溶融法あるいはゾルーゲル法等の製造方法で製造することができる。その中でも溶融炉を用いた溶融法で製造する方法が原料の選択も含めたガラス組成の設計のし易さから好ましい。
また前記で製造したガラスの構造は非晶質構造であることが好ましいが、一部結晶質構造を含んでいても何等問題はない。、さらに非晶質構造を有するガラスと結晶構造を有するガラスの混合物を用いても何等問題はない。それらのガラスの構造が非晶質であるか否かの判断はX線回折分析や透過型電子顕微鏡等の分析機器を用いて行うことができる。その中でも本発明の解砕イオン徐放性ガラスフィラーは外部環境におけるイオン濃度との平衡関係により各種イオンが徐放することから、その出発原料であるイオン徐放性ガラスフィラーを構成するガラスの構造は均質な構造である非晶質構造であることが好ましい。
【0010】
本発明の解砕イオン徐放性ガラスフィラーに用いるイオン徐放性ガラスフィラーは本原料であるガラスを粉砕することによって得ることができる。本発明の解砕イオン徐放性ガラスフィラーからの各種イオン徐放量はフィラーの粒度指標であるMV値に影響を受けるため、解砕イオン徐放性ガラスフィラーに用いるイオン徐放性ガラスフィラーのMV値を制御することが重要である。そのためにはイオン徐放性ガラスフィラーの本原料であるガラスを湿式又は/及び乾式の粉砕、解砕、分級、篩い分け等によりイオン徐放性ガラスフィラーのMV値を制御しなければならい。本発明に用いられるイオン徐放性ガラスフィラーのMV値(A)は0.01〜100μmの範囲であれば特に制限はないものの、好ましくは0.01〜50μmの範囲、さらに好ましくは0.1〜5μmの範囲である。また、そのフィラー形状は球状、板状、破砕状、鱗片状等の任意の形状でよく、特に何等制限はないが、好ましくは球状あるいは破砕状である。
【0011】
本発明の解砕イオン徐放性ガラスフィラーからのイオン徐放性を高めるために、イオン徐放性ガラスフィラー表面を表面処理することにより機能化してイオン徐放性を向上させことが重要となる。その表面処理に用いる表面処理材を具体的に例示すると界面活性剤、脂肪酸、有機酸、無機酸、モノマー、ポリマー、各種カップリング材、シラン化合物、金属アルコキシド化合物及びその部分縮合物等が挙げられる。これらの中でもシラン化合物による表面処理を行った後に酸性ポリマーにより表面処理を行うことがより好ましい。
【0012】
次に、シラン化合物によりイオン徐放性ガラスフィラーの表面を被覆し、シラン化合物処理イオン徐放性ガラスフィラーを製造するシラン化合物処理工程について説明する。
所望のMV値に粉砕及び又は解砕されたイオン徐放性ガラスフィラーを含有する水性分散体中に、一般式(I)
【0013】
【化1】
(式中、ZはRO-、Xはハロゲン、YはOH-、Rは炭素数が8以下の有機基、n、m、Lは0から4の整数で、n+m+L=4である)で表されるシラン化合物を混合し、これを系中で加水分解または部分加水分解してシラノール化合物を経て、次いでこれを縮合させて、イオン徐放性ガラスフィラー表面を被覆する。その結果、シラン化合物処理イオン徐放性ガラスフィラーの固形物又は造粒物を得ることができる。
【0014】
上記のシラン化合物処理工程は、シラン化合物の加水分解及び縮合とガラス表面へのポリシロキサン処理を同一系内で同時に行っているが、シラン化合物の加水分解及び縮合を別の系で行って低縮合シラン化合物(オリゴマー)を生成させ、それをイオン徐放性ガラスフィラーを含有する水性分散体に混合する表面処理方法でも効率よくイオン徐放性ガラスフィラー表面にポリシロキサン被膜を形成することが可能である。より好ましくは市販の低縮合シラン化合物(オリゴマー)を用い、低縮合生成過程を経ず混合するポリシロキサン処理方法である。この方法が好ましい理由としては、シラン化合物単量体を用いた場合はポリシロキサン処理工程で多量の水が存在することから、縮合が3次元的に起こるため、その結果、自己縮合が優位に進行し、均一なポリシロキサン被膜をガラス表面に形成することができない。
【0015】
一方低縮合シラン化合物(オリゴマー)を用いる場合は、ある長さのポリシロキサン主鎖を有するユニット単位でガラス表面にポリシロキサン被膜を均一に形成することが可能となる。またこの低縮合シラン化合物(オリゴマー)の形状は特に制限はないが3次元体のものよりも直鎖状の方が良く、またその重合度においても長いものほど縮合反応性が劣り、イオン徐放性ガラスフィラー表面上のポリシロキサン被膜の形成が悪くなることから、好ましい重合度は2〜20の範囲であり、より好ましくは2〜6である。その時の分子量は500〜600の範囲である。
【0016】
上記水性分散体中でのポリシロキサン処理は比較的低速の撹拌状態下で行われ、温度は室温から100℃の範囲、より好ましくは室温から50℃の範囲であり、撹拌時間は通常数分から数十時間、より好ましくは30分〜4時間の範囲で行われる。撹拌は特別な方法を必要とするものではなく、一般業界で通常に使用されている設備を採用して行うことができる。例えば万能混合撹拌機やプラネタリーミキサー等のスラリー状のものを撹拌できる撹拌機を用いて撹拌すればよい。撹拌温度は水性媒体が揮発しない温度、つまり水性媒体の沸点以下の温度であれば何等問題はない。撹拌時間はシラン化合物または低縮合シラン化合物の種類または添加量、ガラスの種類、MV値及びその水性分散体中に占める割合、水性媒体の種類及び水性分散体中に占める割合により、縮合して形成するゲル化速度が影響を受けることから、調節しなければならなく、またゲルが形成されるまで行わなければならない。撹拌速度は速すぎるとゲル構造が崩れ、均一な被膜が形成されないため、低速で行う必要がある。
【0017】
また上記の水性媒体とは水及びアルコールから構成される。アルコールを加えることにより乾燥工程においてイオン徐放性ガラスフィラーの凝集性を軽減させ、より解砕性を向上させる多大な効果がある。好ましいアルコールとしては炭素数2〜10のアルコール類であるが、炭素数が10以上のアルコールの添加は沸点が高く溶媒を乾燥除去するために長時間を要する。具体的なアルコールとしては、エチルアルコール、n−プロピルアルコール、イソプロピルアルコール、n−ブチルアルコール、t−ブチルアルコール、iso−ブチルアルコール、n−ペンチルアルコール、iso−アミルアルコール、n−ヘキシルアルコールn−ヘプチルアルコール、n−オクチルアルコール、n−ドデシルアルコールが挙げられ、より好ましくは炭素数2〜4のアルコール、例えばエチルアルコール、n−プロピルアルコール、iso−プロピルアルコールが好適に使用される。上記アルコールの添加量は水に対して5〜100重量部、好ましくは5〜20重量部である。添加量が100重量部以上になると乾燥工程が複雑になる等の問題が生じる。またガラスの含有量は水性媒体に対して25〜100重量部の範囲であり、好ましくは30〜75重量部の範囲である。含有量が100重量部を超える場合は縮合によるゲル化速度が速く、均一なポリシロキサン被膜層を形成しにくく、また25重量部より少ない場合、撹拌状態下でガラスが沈降したり水性媒体中で相分離が発生したりする。また、シラン化合物の添加量はガラスのMV値に依存するが、ガラスに対してSiO2 換算で0.1〜10重量部の範囲であり、好ましくは0.1〜4重量部である。添加量が0.1重量部以下の場合は、ポリシロキサン被膜層形成の効果がなく、一次粒子まで解砕できず凝集したものになり、10重量部以上では乾燥後の固形物又は造粒物が硬すぎて解砕することができない。
【0018】
「ゲル」状態にある系を、乾燥し水性媒体を除去して固化させる。乾燥は、熟成と焼成の2段階からなり、前者はゲル構造の生長と水性媒体の除去を、後者はゲル構造の強化を目的としている。前者はゲル構造にひずみを与えず、かつ水性媒体を除去することから静置で行う必要があり、箱型の熱風乾燥器等の設備が好ましい。熟成温度は室温から100℃の範囲で、より好ましくは40〜80℃の範囲である。温度がこの範囲以下の場合は、水性媒体除去が不十分であり、この範囲以上の場合は急激に揮発し、ゲル構造に欠陥が生じたり、ガラス表面から剥離したりする恐れがある。熟成時間は乾燥器等の能力にもよるため、水性媒体が充分除去できる時間ならば何等問題はない。
【0019】
一方焼成工程は昇温と係留に分かれ、前者は目標温度まで徐々に長時間かけて昇温する方がよく、急激な温度はゲル分散体の熱伝導が悪いため、ゲル構造内にクラックが生じる可能性がある。後者は一定温度での焼成である。焼成温度は100〜350℃の範囲であり、よりこのましくは100〜200℃である。
【0020】
以上のように乾燥によりゲルから水性媒体を除去し、収縮した固化物又は造粒物が得られる。固化物又は造粒物はイオン徐放性ガラスフィラーの凝集状態ではあるが、単なるイオン徐放性ガラスフィラーの凝集物ではなく、個々の微粒子の境界面には縮合により形成されたポリシロキサンが介在している。したがって次の工程としてこの固化物又は造粒物をある程度の粒度(MV値)まで解砕するものの、ポリシロキサン処理前のイオン徐放性ガラスフィラー相当にまで解砕する必要はなく、造粒した状態で何等問題はない。状況によってはシラン化合物処理イオン徐放性ガラスフィラーを全く解砕することなく、次の酸性ポリマー処理工程に進んでも良い。固形物又は造粒物の解砕は、せん断力または衝撃力を加えることにより容易に可能であり、解砕方法としては、例えばヘンシェルミキサー、クロスロータリミキサー、スーパーミキサー等を用いて行いことができる。
本発明においては、シラン化合物処理イオン徐放性ガラスフィラーのMV値(B)とイオン徐放性ガラスフィラーのMV値(A)の関係は、次の式を満たす範囲で解砕することが好ましい。
(B)/(A)≧2、好ましくは(B)/(A)≧5、更に好ましくは(B)/(A)≧10である。また、10000≧(B)/(A)であることが好ましい。
ポリシロキサン処理されたシラン化合物処理イオン徐放性ガラスフィラーが元のイオン徐放性ガラスフィラーと異なる点は個々の粒子がポリシロキサンで被覆されており、且つ凝集して造粒しているところである。
【0021】
一般式(I)で表されるシラン化合物の例としては、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、テトラプロポキシシラン、テトラアリロキシシラン、テトラブトキシシラン、テトラキス(2-エチルヘキシロキシ)シラン、トリメトキシクロロシラン、トリエトキシクロロシラン、トリイソプロポキシクロロシラン、トリメトキシヒドロキシシラン、ジエトキシジクロロシラン、テトラフェノキシシラン、テトラクロロシラン、水酸化ケイ素(酸化ケイ素水和物)等が例示でき、より好ましくはテトラメトキシシランおよびテトラエトキシシランである。また一般式(I)で表されるシラン化合物で示される縮合体であることがより好ましい。
また一般式(I)で表されるシラン化合物の低縮合体であることがより好ましい。例えばテトラメトキシシランおよびテトラエトキシシランを部分加水分解して縮合させた低縮合シラン化合物である。これらの化合物は単独または組み合わせて使用することができる。
【0022】
またポリシロキサン処理時に一般式(I)で表されるシラン化合物の一部としてオルガノシラン化合物も添加することができる。具体的にオルガノシロキサン化合物を例示すると、メチルトリメトキシシラン、エチルトリメトキシシラン、メトキシトリプロピルシラン、プロピルトリエトキシシラン、ヘキシルトリメトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリ(β−メトキシエトキシ)シラン、γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルメトキシシラン、γメルカプトプロピルトリメトキシシラン、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、3−アミノプロピルトリエトキシシラン、メチルトリクロロシラン、フェニルトリクロロシラン等が例示でき、特に好ましくはメチルトリメトキシシラン、エチルトリエトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、フェニルトリクロロシランである。これらの化合物は単独または組み合わせて使用することができる。しかしこれらはポリシロキサン層内において有機基が存在するため、ポリシロキサン層形成時のひずみを受ける可能性があり、機械的強度に問題が生じることがある。このため少量の添加にとどめておく必要がある。またポリシロキサン処理時に一般式(I)で表されるシラン化合物の一部として、他の金属のアルコキシド化合物、ハロゲン化物、水和酸化物、硝酸塩、炭酸塩も添加することができる。
【0023】
次に、酸性ポリマーによりシラン化合物処理イオン徐放性ガラスフィラーの表面を処理し、酸性ポリマー処理イオン徐放性ガラスフィラーを製造する酸性ポリマー処理工程について説明する。
前記工程で得られたシラン化合物処理イオン徐放性ガラスフィラーは酸性ポリマーと反応させる酸性ポリマー処理を施すことによって本発明に用いられる最も好ましい酸性ポリマー処理イオン徐放性ガラスフィラーを得ることができる。酸性ポリマー処理は乾式流動型の撹拌機であれば業界で一般に使用されている設備を用いることができ、ヘンシルミキサー、スーパーミキサー、ハイスピードミキサー等が挙げられる。シラン化合物処理イオン徐放性ガラスフィラーへの酸性ポリマーの反応は、酸性ポリマー溶液を含浸や噴霧等により接触させることにより行うことができる。例えばシラン化合物処理イオン徐放性ガラスフィラーを乾式流動させ、その流動させた状態で上部から酸性ポリマー溶液を分散させ、十分撹拌するだけでよい。このとき酸性ポリマー溶液の分散法は特に制限はないが、均一に分散できる滴下またはスプレー方式がより好ましい。また反応は室温付近で行うことが好ましく、温度が高くなると酸反応性元素と酸性ポリマーの反応が速くなり、酸性ポリマー反応相の形成が不均一になる。
熱処理後、熱処理物の解砕は剪断力または衝撃力を加えることにより容易に可能であり、解砕方法としては上記反応に用いた設備などで行うことができる。
【0024】
反応に用いる酸性ポリマー溶液の調製に用いる溶媒は、酸性ポリマーが溶解する溶媒であれば何等問題はなく、水、エタノール、エタノール、アセトン等が挙げられる。これらの中で特に好ましいのは水であり、これは酸性ポリマーの酸性基が解離し、シラン化合物処理イオン徐放性ガラスフィラーにおけるイオン徐放性ガラスの表面部と均一に反応することができる。
酸性ポリマー溶液中に溶解したポリマーの重量分子量は2000〜50000の範囲であり、5000〜40000の範囲にある。2000未満の重量平均分子量を有する酸性ポリマー処理イオン徐放性ガラスフィラーはイオン徐放性が低くなる傾向にある。50000を超える重量平均分子量を有する酸性ポリマーは酸性ポリマー溶液の粘性が上がり、酸性ポリマー処理を行うことが困難となる。また酸性ポリマー溶液中に占める酸性ポリマー濃度は3〜25重量%の範囲が好ましく、より好ましくは8〜20重量%の範囲である。酸性ポリマー濃度3重量%未満になると酸性ポリマー反応相が脆弱になる。また酸性ポリマー濃度が25重量%を超えるとポリシロキサン層(多孔質)を拡散しにくくなる反面、イオン徐放性ガラスフィラーに接触すると酸−塩基反応が速く、反応中に硬化が始まり凝集が起こる等の問題が生じる。またシラン化合物処理イオン徐放性ガラスフィラーに対する酸性ポリマー溶液の添加量は6〜40重量%の範囲が好ましく、より好ましくは10〜30重量%である。この添加量で換算するとシラン化合物処理イオン徐放性ガラスフィラーに対する酸性ポリマー量は1〜7重量%、また水量は10〜25重量%の範囲が最適値である。
【0025】
上記の方法によりシラン化合物処理イオン徐放性ガラスフィラーのシラン化合物層の下に酸性ポリマー反応相を形成するために用いることのできる酸性ポリマーは、酸性基として、リン酸残基、ピロリン酸残基、チオリン酸残基、カルボン酸残基、スルホン酸基等の酸性基を有する重合性単量体の共重合体または単独重合体である。このような重合性単量体としては、例えばアクリル酸、メタクリル酸、2-クロロアクリル酸、3-クロロアクリル酸、アコニット酸、メサコン酸、マレイン酸、イタコン酸、フマール酸、グルタコン酸、シトラコン酸、4-(メタ)アクリロイルオキシエトキシカルボニルフタル酸、4-(メタ)アクリロイルオキシエトキシカルボニルフタル酸無水物、5-(メタ)アクリロイルアミノペンチルカルボン酸、11-(メタ)アクリロイルオキシ-1,1-ウンデカンジカルボン酸、2-(メタ)アクリロイルオキシエチルジハイドロジェンホスフェート、10-(メタ)アクリロイルオキシデシルジハイドロジェンホスフェート、20-(メタ)アクリロイルオキシエイコシルジハイドロジェンホスフェート、1,3-ジ(メタ)アクリロイルオキシプロピル-2-ジハイドロジェンホスフェート、2-(メタ)アクリロイルオキシエチルフェニルリン酸、2-(メタ)アクリロイルオキシエチル2'-ブロモエチルリン酸、(メタ)アクリロイルオキシエチルフェニルホスホネート、ピロリン酸ジ(2-(メタ)アクリロイルオキシエチル)、2-(メタ)アクリロイルオキシエチルジハイドロジェンジチオホスホスフェート、10-(メタ)アクリロイルオキシデシルジハイドロジェンチオホスフェート等が列挙できる。これらの重合体の中でも酸-塩基反応が比較的遅い、α-β不飽和カルボン酸の単独重合体または共重合体が好ましい。より好ましくはアクリル酸重合体、アクリル酸-マレイン酸共重合体、アクリル酸-イタコン酸共重合体である。
【0026】
製造された酸性ポリマー処理イオン徐放性ガラスフィラーを解砕する解砕工程について説明する。
酸性ポリマー処理工程後の酸性ポリマー処理イオン徐放性ガラスフィラーは固化物又は造粒物が得られる。酸性ポリマー処理イオン徐放性ガラスフィラーは固化物又は造粒物をポリシロキサン処理前のイオン徐放性ガラスフィラー相当に解砕することができる。固化物又は造粒物の解砕は、せん断力または衝撃力を加えることにより容易に可能であり、解砕方法としては、例えばヘンシェルミキサー、クロスロータリミキサー、スーパーミキサー等を用いて行うとができる。
本発明においては、酸性ポリマー処理イオン徐放性ガラスフィラーを解砕した後の解砕イオン徐放性ガラスフィラーのMV値(C)とシラン化合物処理イオン徐放性ガラスフィラーのMV値(B)が以下の式を満たす。
(B)/(C)≧2、好ましくは(B)/(C)≧5、更に好ましくは(B)/(C)≧10である。また、10000≧(B)/(C)であることが好ましい。
【0027】
また更に、本発明においては、酸性ポリマー処理イオン徐放性ガラスフィラーを解砕した後の解砕イオン徐放性ガラスフィラーのMV値(C)とイオン徐放性ガラスフィラーのMV値(A)が以下の式を満たす。
(C)/(A)≧1であることが好ましい。更に2≧(C)/(A)≧1であることが好ましい。
イオン徐放性ガラスフィラーのMV値(A)、解砕イオン徐放性ガラスフィラーのMV値(C)との関係が前記式であることで、イオン徐放性ガラスフィラーとしての、前記本発明の多くの効果をもたらす事ができる。
【0028】
本発明の解砕イオン徐放性ガラスフィラーはシラン化合物処理及び酸性ポリマー処理に用いるイオン徐放性ガラスフィラーを構成するガラス組成により、イオン種を持続的に徐放することが特徴であり、金属フッ化物等の水への溶解によって一時的に多量を放出するものとは異なるものである。
解砕イオン徐放性ガラスフィラーがイオン徐放性を有しているか否かを以下の手法によって判断することができる。
蒸留水100gに対して解砕イオン徐放性ガラスフィラーを0.1g加え、1時間撹拌させた時の蒸留水中に徐放したイオン濃度(F1)又はイオン種に起因した元素濃度(F1)と、2時間撹拌した時の蒸留水中に徐放したイオン濃度(F2)又はイオン種に起因した元素濃度(F2)が下式(1)の関係を満足する場合をイオン徐放とみなすことができる。
F2 > F1×1.1 ・・・・式(1)
また、解砕イオン徐放性ガラスフィラーから徐放するイオンが複数ある場合は、すべてのイオン濃度又は元素濃度が式(1)を満足することが好ましいが、少なくとも一つのイオン濃度又は元素濃度が式(1)を満足した場合でも本発明の持続的なイオン徐放とみなすことができる。これらのイオン濃度や元素濃度の分析はプラズマ発光分析、原子吸光分析、イオンクロマト分析及びイオン選択性電極法(ISE)を用いて行うことができるが、特に制限されるものではない。
本発明の解砕に用いるイオン徐放性ガラスフィラーはシラン化合物処理及び酸性ポリマー処理に用いるイオン徐放性ガラスフィラーを構成するガラス組成により、イオン徐放とともに酸中和能を有していることが特徴である。酸中和能はpHを4.0に調整した乳酸水溶液10gに対して解砕イオン徐放性ガラスフィラーを0.1g加え、5分間撹拌させた時のpH変化を測定することにより確認することできる。その時のpHが5.5以上、より好ましくは6.0以上、最も好ましくは6.5以上を示す場合において酸中和能を有していると判断することができる。
【0029】
本発明の解砕イオン徐放性ガラスフィラーを含む歯科用材料は好ましい。歯科材料にはアクリル樹脂を中心とするマトリックスに混合されたとしても、本発明の解砕イオン徐放性ガラスフィラーはイオン徐放能をはじめあらゆる効果を発することができる。
本発明の解砕イオン徐放性ガラスフィラーを用いた歯科材料への配合量は0.1〜90質量%の範囲で配合していれ特に制限はなく、好ましくは10〜50質量%の範囲、より好ましくは15〜40質量%の範囲である。
【実施例】
【0030】
以下の試験方法及び評価により、本発明の効果を知ることができる。
[MV値の測定方法]
MV値は日機装株式会社製「マイクロトラックHRAX100」を用いて測定した。
[イオン徐放性試験1]
蒸留水100gに対して解砕イオン徐放性ガラスフィラー又は他のフィラーを0.1g加え、1時間撹拌させた時の蒸留水中に徐放したイオン濃度(F1)又はイオンに起因する元素濃度(F1)をフッ素イオン選択性電極(Orion 9609BNWP, Thermo Fisher Scientific)及びプラズマ発光分光分析装置(ICP-AES; ICPS-8000, 島津製作所)を用いて分析を行う。また、攪拌時間のみ12時間に変更して同様の試験を行い、その時のイオン濃度(F2)又はイオンに起因する元素濃度(F2)を同様に分析する。それぞれのフィラーから徐放されるイオンに基因したF1とF2を以下の式から比較評価を行い、イオン徐放性の有無を判断する。
F2>F1:イオン徐放性あり
F2≦F1:イオン徐放性なし
【0031】
[イオン徐放性試験2]
蒸留水100gに対して解砕イオン徐放性ガラスフィラー又は他のフィラーを0.1g加え、1時間撹拌させた時の蒸留水中に徐放したイオン濃度(F1)又はイオンに起因する元素濃度(F1)をフッ素電極(イオン選択性電極法(ISE)、メーカー名等)及びプラズマ発光(メーカー名等)を用いて分析を行う。また、蒸留水10kgと解砕イオン徐放性ガラスフィラー又は他のフィラー5gを1時間攪拌後、遠心分離・ろ過・乾燥を経て各種イオンを徐放させた解砕イオン徐放性ガラスフィラー又は他のフィラーを得る。次に蒸留水100gに対して各種イオンを徐放させた解砕イオン徐放性ガラスフィラー又は他のフィラーを0.1g加え、5時間撹拌した時の蒸留水中に徐放したイオン濃度(F3)又はイオンに起因する元素濃度(F3)を同様に分析する。それぞれのフィラーから徐放されるイオンに基因したF1とF3を以下の式から比較評価を行い、イオン徐放性の有無を判断する。
F3>F1:イオン徐放性あり
F3≦F1:イオン徐放性なし
【0032】
[酸中和能]
pHを4.0に調製した乳酸水溶液10gに対して解砕イオン徐放性ガラスフィラー又は他のフィラーを0.1g加え、5分間撹拌させた時のpH変化を測定する。その時のpHが5.5以上を示した場合を酸中和能ありと判断する。
【0033】
[口臭測定]
口臭の抑制効果を評価するために5名を対象に以下の試験を実施した。PMMA樹脂50gとMMA10g、解砕イオン徐放性ガラスフィラー又は他のフィラー40gを混合し、15mm×15mm×1mmに成型した後、120℃で硬化させ、試験片とした。試験片を各被験者に60分間口腔内に保持させ、保持前の口臭と、保持後の口臭を比較することにより評価を行った。口臭の比較には呼気中の硫化水素、メチルメルカプタン、ジメチルサルファイド等に由来する口腔内の硫黄化合物濃度(VSC値)の測定(XP-Breath-Tron:新コスモス電機)を行い、保持前の呼気中のVSC(1)値と15分間保持した後の呼気中のVSC(2)値を比較した。評価の結果、口臭低減率=(1−VSC(2)/VSC(1))×100を算出し、5名の平均値を算出した。
【0034】
[エナメル質の透明性測定]
牛歯エナメル質を直径5mm、厚さ1.0mmの円盤状に加工し、バフ研磨を行い初期試験片とした。初期試験片をpHを4.0に調製した乳酸水溶液100gに170時間浸漬し、酸エッチング試験片とした。次に、酸エッチング試験片を解砕イオン徐放性ガラスフィラー又は他のフィラーを1g加えた蒸留水100gに70時間浸漬し、浸漬試験片とした。
これらの試験片(初期試験片、酸エッチング試験片、浸漬試験片)の光透過率を「スペクトロフォトメーターU−3200」(株式会社日立製作所)を用い、780nm〜380nmの波長範囲で測定し比較した。
(浸漬試験片光透過率(%)−酸エッチング試験片光透過率(%))で評価した。1%未満:効果なし(なし)、2〜5%効果有り(有)、5〜10%高効果有り(高有)とした。
【0035】
以下に、解砕イオン徐放性ガラスフィラーの作製方法を記載する。
[イオン徐放性ガラスフィラー(IG)の製造]
二酸化ケイ素、酸化アルミニウム、酸化ホウ素、フッ化ナトリウム、炭酸ストロンチウムの各種原料(ガラス組成:表1)をボールミルを用いて均一に混合し原料混合品を調製した後、その原料混合品を溶融炉中で1400℃にて溶融した。その融液を溶融炉から取り出し水中で冷却してガラスを製造した。4連式振動ミルのアルミナポット(内容積3.6リットル)中に直径6mmφのアルミナ玉石4kgを投入後、上記で得たガラスを500g投入して40時間粉砕を行い、イオン徐放性ガラスフィラー(IG)を得た。
このIGのMV値は日機装株式会社製「マイクロトラックHRAX100」を用いて測定し、結果を表1に記載した。
【0036】
[シラン化合物処理イオン徐放性ガラスフィラー(SF)の製造]
水900g及びエタノール100gに表1記載の配合割合でシラン化合物を投入し、2時間室温で撹拌し低縮合物を調製した。調製した低縮合物(1000g)と前述のイオン徐放性ガラスフィラーを500gを万能混合攪拌機に投入し、90分間撹拌混合した。その後、140℃にて熱処理を30時間施し、次にヘンシェルミキサーを用いて解砕しシラン化合物処理イオン徐放性ガラスフィラー(SF)を得た。
このSFのMV値は日機装株式会社製「マイクロトラックHRAX100」を用いて測定し、結果を表1に記載した。解砕していない場合は「解砕無」と表記した。
【0037】
[解砕イオン徐放性ガラスフィラー(KF)の製造]
表1に記載の酸性ポリマーを用いて、表1記載の濃度の酸性ポリマー水溶液を調製した。前記SF500gをヘンシェルミキサーを用いて撹拌しつつ、調製した酸性ポリマー水溶液を用いて噴霧した。その後、熱処理(100℃3時間)を施し、酸性ポリマー処理イオン徐放性ガラスフィラーを製造した。酸性ポリマー処理イオン徐放性ガラスフィラーをヘンシェルミキサーを用いて解砕し解砕イオン徐放性ガラスフィラー(KF)を得た。
このKFのMV値は日機装株式会社製「マイクロトラックHRAX100」を用いて測定し、結果を表1に記載した。
【0038】
表1に記載した各化合物の略称は以下の通りである。
シラン化合物:テトラメトキシシラン(TMS)
テトラエトキシシラン(TES)
酸性ポリマー:ポリアクリル酸-平均分子量20000(ナカライ社製:PAA2)
ポリアクリル酸-平均分子量40000(ナカライ社製:PAA4)
ポリメタクリル酸-平均分子量20000(ナカライ社製:PMA2)
ポリメタクリル酸-平均分子量40000(ナカライ社製:PMA4)
【0039】
非イオン徐放性ガラスフィラーとして以下のフィラーを使用した。
非イオン徐放性ガラスフィラー1:フューズレックスX(シリカフィラー、MV値=2.1μm:龍森社、FLX)
非イオン徐放性フィラー2:シリカフィラーであるアドマファイン SO−C5(シリカフィラー、MV値=1.6μm:アドマテックス社、SOC5)
【0040】
(A)イオン徐放性ガラスフィラーのMV値、(B)シラン化合物処理イオン徐放性ガラスフィラーのMV値、(C)解砕イオン徐放性ガラスフィラーのMV値の関係について以下の関係式の結果を表1に記載した。
[MV値関係1](B)/(A)
[MV値関係2](B)/(C)
[MV値関係3](C)/(A)
製造された各フィラーを前記[長期イオン徐放量の測定][イオン徐放量の測定][酸中和能][口臭測定][エナメル質の透明性測定]の試験を実施し、試験結果を表1に記載した。
【0041】
【表1】
【0042】
シラン化合物によりイオン徐放性ガラスフィラーの表面を被覆した後に、酸性ポリマーにより表面を処理した酸性ポリマー処理イオン徐放性ガラスフィラーを用いた場合はイオン徐倣量も多く、長期イオン徐倣量も多い。また、酸中和能も優れており、口臭の低減にも効果があった。更にエナメル質においては透明度が上がることも確認された。
SFMV値が5μmを上回ると、エナメル質の透明度が更に上がることが確認された。
【産業上の利用可能性】
【0043】
従来にはないイオン徐放性を示す解砕イオン徐放性ガラスフィラーである。
更に、口腔内環境を整えることのできる解砕イオン徐放性ガラスフィラーであり、エナメル質の透明性も向上することから、産業上利用し得る発明である。

【要約】

本発明は歯科分野で用いられる歯科材料にイオン徐倣性を付与するための解砕イオン徐放性ガラスフィラーに関する。歯科材料とは、歯科治療における充填または補綴修復、仮封、仮着、補綴物の作製、接着・合着、小窩裂溝封鎖等に用いられる材料のことである。
従来のイオン徐放性ガラスフィラーは、ガラス組成中に存在する金属イオンを十分に継続して放出するし続けるイオン徐放性ガラスフィラーを歯科材料では望まれていた。
【解決手段】 イオン徐放性ガラスフィラーにシラン化合物処理工程、酸性ポリマー処理工程を経るが、それぞれの工程において特定のD50粒子径の関係に制御すること解決する。
【選択図】 なし