【文献】
知念 賢一 Ken-ichi Chinen,インターネット技術,コンピュータソフトウェア VOL.15 NO.2,日本,日本ソフトウェア科学会 Japan Society for Software Sience and Technology,1998年 3月16日,第15巻,第48頁〜第61頁
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記取得部が、前記ユーザ端末からのWebサイトへのアクセス履歴を記憶するアクセス履歴記憶部を参照してユーザが興味を持つ情報を特定し、特定した情報に関するオブジェクトを前記待機オブジェクトとして取得する、
請求項2に記載の情報処理装置。
前記取得部が、ユーザ端末の機種と待機オブジェクトの取得範囲とが関連付けられたルール情報を参照して、前記ユーザ端末から受信した機種情報に対応する前記取得範囲を特定し、該取得範囲に位置するオブジェクトを前記待機オブジェクトとして取得する、
請求項2に記載の情報処理装置。
請求項1〜9のいずれか一項に記載の情報処理装置から送信された前記フル・サイズ・フレームを前記ユーザ端末において制御する表示制御プログラムを該ユーザ端末に実行させる表示制御装置であって、
前記表示制御プログラムが、前記ユーザ端末上の前記Webブラウザに表示された前記フル・サイズ・フレームを処理する表示制御モジュールを備える、
表示制御装置。
埋め込まれるべきオブジェクトが取得されていない他のページへのスクロール操作が行われるときに、前記表示制御モジュールがスクロール速度を初期速度よりも遅くする、
請求項12に記載の表示制御装置。
スクロール操作により別ページが表示されるときに、前記表示制御モジュールが、既に表示したページ内のオブジェクトが該別ページでも用いられるものであるか否かを判定し、該オブジェクトが用いられると判定した場合には該別ページの表示時に該オブジェクトを再利用する、
請求項12〜14のいずれか一項に記載の表示制御装置。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、添付図面を参照しながら本発明の実施形態を詳細に説明する。なお、図面の説明において同一又は同等の要素には同一の符号を付し、重複する説明を省略する。以下の実施形態では、本発明に係る情報処理装置をWebサーバに適用する。
【0026】
図1〜14を用いて、実施形態に係るWebシステム1の機能および構成を説明する。Webシステム1はユーザ端末からの要求に応じてWebコンテンツを生成し、そのWebコンテンツをユーザ端末に提供するコンピュータ・システムである。ユーザはこのWebシステム1を利用することで様々な情報を入手することができる。
【0027】
図1に示すように、Webシステム1はユーザ端末10、Webサーバ(情報処理装置)20、及びデータベース群30を備えている。ユーザ端末10とWebサーバ20とはインターネットなどのネットワークを介して接続されている。Webサーバ20はインターネットや専用線などのネットワークを介してデータベース群30にアクセスできる。
図1では3台のユーザ端末10を示しているが、ユーザ端末10の台数は限定されない。
【0028】
Webシステム1におけるWebコンテンツの提供の概念を
図2に示す。一回のHTTPレスポンス(HTTP response)でユーザ端末に提供されるWebコンテンツは、一列に並んだ複数のページで構成される。このWebコンテンツの外枠は、当該複数ページ分のオブジェクトのすべてを埋め込むことができるように生成され、本明細書ではその外枠を「フル・サイズ・フレーム(full size frame)」という。ここで、オブジェクトの種類は限定されず、従来から存在する様々な種類のオブジェクト(例えば、テキスト、静止画、動画、他のWebコンテンツへのリンク、バナー広告など)をフル・サイズ・フレームに埋め込むことができる。一つのフル・サイズ・フレームは複数ページ分の領域を有しており、複数のページはそのフル・サイズ・フレームの中で連続して一列に繋がっている。
図2の例では、一つのフル・サイズ・フレームFが10ページ分の領域を有している。
【0029】
WebブラウザBは一度に1ページ分のみを表示するので、ユーザはWebコンテンツを1ページずつ見ることができる。本実施形態において、次ページを表示するためのボタンまたはリンクはWebコンテンツに埋め込まれず、ユーザはWebブラウザBのスクロールバー(Scroll Bar)Cを操作することで、別のページをWebブラウザB上に表示させる。なお、当然ながら、Webブラウザの縦または横のウィンドウ・サイズが1ページ分のコンテンツの縦または横の長さよりも短い場合には、スクロールバーは、その1ページ分の範囲内でスクロールする機能も有する。すなわち、本実施形態において、スクロールバーCはページ内でのスクロールの機能とページ切替のためのスクロールの機能という二つのスクロール機能を持ち得る。
【0030】
スクロールバーCの全体の長さ(ノブNが移動可能な部分の長さ)はフル・サイズ・フレームFの全体の長さに対応し、ノブNの長さはWebコンテンツ内のページ数に応じて設定される。
図2の例では、Webコンテンツが10ページで構成されるので、ノブNの長さはスクロールバーC全体の約1/10である。
【0031】
WebブラウザBが1ページ目を表示している時に、ユーザがスクロールバーCのノブNを1ページ分だけ下にスライドさせるか、あるいはスクロールバーC内の2ページ目に相当する箇所をクリックしたとする。この場合には、ノブNは2ページ目に相当する位置まで移動し、WebブラウザBは2ページ目を表示する。別の例で、ユーザがスクロールバーCのノブNをいちばん下までスライドさせるか、あるいはスクロールバーC内の10ページ目に相当する箇所を複数回クリックするか押し続けるかしたとする。この場合には、ノブNは10ページ目に相当する位置まで移動し、WebブラウザBは10ページ目を表示する。
【0032】
フル・サイズ・フレームFは複数ページ分の領域を有するとともに、Webコンテンツを構成するすべてのオブジェクトのそれぞれを埋め込むための複数のフィールドを有する。しかし、フル・サイズ・フレームFがユーザ端末にダウンロードされる際には、すべてのオブジェクトがそのフル・サイズ・フレームFに埋め込まれるのではない。Webコンテンツのダウンロードの態様を
図3〜6を用いて説明する。
【0033】
HTTPリクエスト(HTTP Request)を送信したユーザ端末が最初に受信するデータ(初回にダウンロードされるデータ)は2種類ある。一つは、最初に表示されるページ内のすべてのオブジェクトのみが埋め込まれたフル・サイズ・フレームである。本明細書では、フル・サイズ・フレーム内のページのうちユーザ端末で最初に表示されるものを「初期表示ページ」ともいう。もう一つは、最初に表示されない他のページに埋め込まれるオブジェクト群の一部であり、本明細書ではこれを「待機オブジェクト」ともいう。待機オブジェクトは、フル・サイズ・フレームに埋め込まれることなく当該フル・サイズ・フレームとは独立にユーザ端末10にダウンロードされる。
【0034】
最初に1ページ目が表示されるとするならば、
図3に示すように、ユーザ端末は、その1ページ目内のオブジェクトがすべて埋め込まれたフル・サイズ・フレームFを受信する。さらに、ユーザ端末は、一部の待機オブジェクトも受信する。
図3の例は、最初に表示されない2〜6ページ目のオブジェクトのうち、2ページ目に埋め込まれる予定のすべてのオブジェクトGaと、4ページ目に埋め込まれる予定のオブジェクトの一部Gbとが待機オブジェクトであることを示している。ユーザ端末は、最初に表示されないページに埋め込まれる予定の待機オブジェクトをフル・サイズ・フレームFとは別個独立に受信する。
【0035】
その後、ユーザ端末のWebブラウザにおいてスクロール操作により2ページ目が表示されたとする。この場合には、
図4に示すように、初回ダウンロードで既に得られている2ページ目の全オブジェクトGaがフル・サイズ・フレームFに埋め込まれて表示される。この場合には、ユーザ端末はWebサーバにHTTPリクエストを送信しないので、ユーザ端末とWebサーバとの間に通信は発生しない。
【0036】
その後、
図5に示すように、ユーザのスクロール操作により3ページ目が表示されたとする。3ページ目内のオブジェクトGcは初回ダウンロードで全く得られていないので、ユーザ端末がそのオブジェクトGcをWebサーバに要求し、その要求に応じて送られてきた3ページ目のオブジェクトGcを受信してフル・サイズ・フレームFに埋め込む。この一連の処理により、ユーザは3ページ目を見ることができる。
【0037】
その後、
図6に示すように、ユーザのスクロール操作により4ページ目が表示されたとする。4ページ目内のオブジェクトのうち、初回ダウンロードで既に得られているオブジェクトGbはフル・サイズ・フレームFに埋め込まれて表示される。一方、4ページ目内のオブジェクトのうち、初回ダウンロードの対象外であったオブジェクトGdはこの時点で初めてWebサーバから提供されてフル・サイズ・フレームFに埋め込まれ、Webブラウザ上に表示される。
【0038】
このように、最初に表示されないページ内のオブジェクトのうち初回ダウンロードの対象外であるものは、スクロール操作により表示対象になった時点で初めてダウンロードされる。
【0039】
次に、フル・サイズ・フレームを制御するユーザ端末10及びWebサーバ20について説明する。
【0040】
図7(a)に示すように、ユーザ端末10は、オペレーティングシステムやアプリケーション・プログラムなどを実行するCPU101と、ROM及びRAMで構成される主記憶部102と、ハードディスクやフラッシュメモリなどで構成される補助記憶部103と、ネットワークカードあるいは無線通信モジュールで構成される通信制御部104と、キーボードやマウス、タッチパネルなどの入力装置105と、ディスプレイなどの出力装置106とを備えている。
【0041】
ユーザ端末10の種類は限定されず、例えば据置型又は携帯型のパーソナルコンピュータでもよいし、高機能携帯電話機(スマートフォン)や携帯電話機、携帯情報端末(PDA)などの携帯端末でもよい。当然ながら、ユーザ端末10に搭載される部品は端末の種類により異なり得る。
【0042】
後述するユーザ端末10の各機能的構成要素は、CPU101又は主記憶部102の上に所定のソフトウェアを読み込ませ、CPU101の制御の下で通信制御部104や入力装置105、出力装置106などを動作させ、主記憶部102又は補助記憶部103におけるデータの読み出し及び書き込みを行うことで実現される。処理に必要なデータやデータベースは主記憶部102又は補助記憶部103内に格納される。
【0043】
図7(b)に示すように、Webサーバ20もユーザ端末10と同様のハードウェア構成を備えている。ただし、
図7に示す各ハードウェア資源に用いられる具体的な部品はWebサーバ20とユーザ端末10との間で異なり得る。例えば、ユーザ端末10が入力装置105及び出力装置106としてタッチパネルを備える一方で、Webサーバ20は入力装置205としてキーボード及びマウスを備え、出力装置206として液晶モニタを備えていてもよい。Webサーバ20についても、ユーザ端末10の場合と同様に、後述する各機能的構成要素がハードウェアを用いて実現される。
【0044】
なお、Webサーバ20は1台のコンピュータで構成されていてもよいし、複数台のコンピュータで構成されていてもよい。
【0045】
ユーザ端末10の機能及び構成を説明する。
図8に示すように、ユーザ端末10は機能的構成要素として要求部11、コンテンツ受信部12、及び表示制御部13を備えている。これらの機能要素の一部は、ユーザ端末10が、フル・サイズ・フレームに記述されたスクリプト(例えばJavascript(商標または登録商標))や、そのフル・サイズ・フレーム内のスクリプトから呼び出されるアプリケーション・プログラミング・インタフェース(Application Programming Interface(API))を実行することで実現する。
【0046】
要求部11は、WebコンテンツをWebサーバ20に要求する機能要素である。ユーザがWebコンテンツを要求する操作を行うと、要求部11はそのWebコンテンツのURL(Uniform Resource Locator)と、フル・サイズ・フレームの作成指示を示す情報とを含むHTTPリクエストを生成し、そのHTTPリクエストをWebサーバ20に送信する。本明細書ではこのHTTPリクエストを「初期要求」ともいう。また、要求部11は、更なるオブジェクトを取得するためのデータが表示制御部13から入力された場合にはそのデータに基づいてHTTPリクエストを生成し、当該HTTPリクエストをWebサーバ20に送信する。本明細書ではこのHTTPリクエストを「補充要求」ともいう。
【0047】
ここで、Webコンテンツの種類は限定されず、これに応じて、そのWebコンテンツを得るためのユーザ操作の態様も限定されない。例えば、ユーザがオンライン・ショッピング・サイトにアクセスして商品検索を実行した場合には、Webコンテンツはその検索結果である。また、ユーザが何らかのホームページへのリンクをクリックした場合には、Webコンテンツはそのホームページである。本発明は、複数のページを有する任意のWebコンテンツに適用することができる。
【0048】
コンテンツ受信部12は、HTTPリクエストに応じてWebサーバ20から送られてきたHTTPレスポンスを受信する機能要素である。Webコンテンツそのものを初めて取得する場合には、HTTPレスポンスは、初期表示ページ内のすべてのオブジェクトが埋め込まれたフル・サイズ・フレームと待機オブジェクトとを含む。既に取得したWebコンテンツの2番目以降に表示されるページにおける欠落オブジェクトを取得する場合には、HTTPレスポンスは不足分のオブジェクトを含む。コンテンツ受信部12は受信したデータを表示制御部13に出力する。
【0049】
表示制御部13は、Webブラウザ上におけるWebコンテンツの表示を制御する機能要素である。
【0050】
コンテンツ受信部12からフル・サイズ・フレーム及び待機オブジェクトが入力されると、表示制御部13はそのフル・サイズ・フレームをキャッシュ・メモリ(cache memory)に一時的に格納すると共にそのフル・サイズ・フレームを処理して初期表示ページをWebブラウザ上に表示する。この処理により、フル・サイズ・フレームに埋め込まれている初期表示ページ内の全オブジェクトもキャッシュ・メモリ内に記憶される。表示制御部13は一般に1ページ目を最初に表示するが、2ページ目以降のいずれかを最初に表示してもよい。加えて、表示制御部13は待機オブジェクトをキャッシュ・メモリに一時的に記憶する。
【0051】
また、表示制御部13はスクロールバーの表示を制御する。まず、表示制御部13はフル・サイズ・フレームを解析することでページの総数を特定し、総ページ数に基づいてスクロールバーのノブの長さを調節する。例えば、総ページ数が50ページであれば、表示制御部はノブの長さがトラックの長さの1/50になるようにノブの長さを調節する。
【0052】
さらに、表示制御部13はWebコンテンツ内における特定のオブジェクトの位置を示す印をスクロールバーのトラック上に描画する。例えば
図9に示すように、表示制御部13は細長い横棒をその印としてトラック上に描画してもよいし、オブジェクトの位置に対応するトラック上の場所の色をトラックのデフォルト色と異ならせてもよい。フル・サイズ・フレームには、特定のオブジェクトの表示位置を示す位置情報(例えば特殊なタグ)が記述されている。表示制御部13はその位置情報を解析することで、Webコンテンツの全体における特定のオブジェクトの大よその位置を特定する。そして、表示制御部13はその特定した位置に対応するスクロールバーCのトラックT上に印Mを描画する。例えば、表示制御部13は、ある一つの特定のオブジェクトが5ページ目の下側に位置すると判定し、スクロールバーCのトラックTの対応箇所に印Mを描画する。そのタグが何種類か存在するようであれば、表示制御部13はその種類ごとに表現を変えて(例えば色分け)印Mを描画してもよい。
図9の例では、2種類のオブジェクトが色分けされて、それぞれのオブジェクトの位置が印Maあるいは印Mbにより示されている。
【0053】
フル・サイズ・フレーム内において特定のオブジェクトの群が所定の基準によりソートされており、かつ、その順序の中での区切りを示すタグがそのフル・サイズ・フレームに記述されている場合には、表示制御部13はWebコンテンツの全体におけるその区切りの位置を特定して、その位置に対応するスクロールバーのトラック上に印を描画してもよい。例えば、価格が1万円〜10万円の範囲にある多数の商品が価格の昇順に並んだWebコンテンツにおいて、1万円区切りの価格帯毎にタグが付与されている場合には、表示制御部13は、商品価格が1万円台から2万円台に変わる付近、商品価格が2万円台から3万円台に変わる付近、…、商品価格が8万円台から9万円台に変わる付近を示す印をトラック上に描画する。なお、何らかの基準に基づくオブジェクトの並べ替えはWebサーバ20が行ってもよい。あるいは、ユーザ端末10上でソート可能なようにフル・サイズ・フレームが記述されてもよい。
【0054】
このようにスクロールバーのトラック上に印を描画することで、ユーザが興味を持つと思われるオブジェクトの表示位置がわかりやすく示されるので、ユーザは興味のあるオブジェクトをすぐに見つけることができる。一例として、その印がカテゴリ分布を示すものであれば、ユーザはその分布を容易に知ることができる。別の例として、その印がユーザの評価(ランク)を示すものであれば、ユーザは他人の評価が高い情報の場所を容易に知ることができる。
【0055】
表示制御部13は、同じ印に対応するオブジェクト同士を集約するようにオブジェクトをソートする機能を有していてもよい。この機能を用いれば、同じ印に対応するオブジェクトがまとまるので、ユーザが見易い態様でオブジェクトを表示することができる。
【0056】
ユーザのスクロール操作により、現在表示されているページとは別のページが指定された場合には、表示制御部13は、次に表示されるページ(次ページ)に関するフル・サイズ・フレーム内の記述と、キャッシュされている待機オブジェクトとを比較して、次ページ内に埋め込むべき待機オブジェクトが存在するか否かを判定する。そして、次ページのオブジェクトが存在する場合には、表示制御部13はそのオブジェクトのすべてをキャッシュから読み出してフル・サイズ・フレームに埋め込む。また、表示制御部13はキャッシュを参照することで、これまでにWebブラウザ上に表示されたページ内に埋め込まれており、且つ、次ページで再利用できるオブジェクトが存在するか否かを判定する。そして、再利用可能なオブジェクトが存在する場合には、表示制御部13はそのオブジェクトを次ページに埋め込む。
【0057】
このように既表示ページ内のオブジェクトを再利用することで、キャッシュ・メモリの使用量の節約、ユーザ端末10とWebサーバ20との間のデータ通信量の抑制、およびページ表示の高速化が可能になる。
【0058】
続いて、表示制御部13は、次ページに埋め込むべきオブジェクトがすべて埋め込まれたか否かを判定する。次ページ内のすべてのオブジェクトがフル・サイズ・フレームに埋め込まれた場合には、表示制御部13は更なるオブジェクトを要求することなく次ページをWebブラウザ上に表示する。一方、次ページに埋め込むべきオブジェクトのすべてがキャッシュされていない場合(オブジェクトが欠落している場合)には、表示制御部13は、フル・サイズ・フレームの識別子と、次ページの番号と、欠落しているオブジェクトのリストとを示すデータを要求部11に出力する。この場合には、要求部11がそのデータに基づいてHTTPリクエスト(補充要求)を生成してWebサーバ20に送信する。そして、コンテンツ受信部12がそのリクエストに応じてWebサーバ20から送られてきたオブジェクトを受信する。本明細書では、ユーザ端末10がフル・サイズ・フレーム受信後に要求および取得するオブジェクトを「補充オブジェクト」という。表示制御部13はその補充オブジェクトをフル・サイズ・フレームに埋め込むことで次ページの生成を完了し、そのページをWebブラウザ上に表示する。また、表示制御部13は、フル・サイズ・フレームに埋め込まれた補充オブジェクトをキャッシュ・メモリに格納する。
【0059】
フル・サイズ・フレームを取得した後に一度表示されたページを再び表示する場合には、基本的には、表示制御部13はキャッシュ・メモリに記憶されているオブジェクトを再利用して、Webサーバ20にオブジェクトを要求することなくそのページを表示すればよい。ただし、ユーザ端末10のオペレーティング・システム(OS)などによるキャッシュ制御により、一部のオブジェクトがキャッシュ・メモリから消去された場合には、表示制御部13は補充オブジェクトを取得する場合と同様の処理を実行する。したがって、要求部11は補充要求を送信し、コンテンツ受信部12が欠落しているオブジェクトを補充オブジェクトとしてWebサーバ20から受信する。表示制御部13は取得したオブジェクトをフル・サイズ・フレームに再度埋め込む。
【0060】
表示制御部13は、ユーザのスクロール操作に基づいてノブの移動速度(スクロール速度)を調節してもよい。表示制御部13は、ユーザ操作により移動しているノブの位置と、埋め込むべきオブジェクトのすべてを取得していないページの情報とに基づいて、そのページに対応するトラック内の位置をノブが移動しているか否かを判定する。そして、そのページをノブが移動していると判定した場合には、表示制御部13はノブの移動速度を通常の速度(初期速度)よりも遅くする。ここで、通常の速度とは、スクロールバーの初期状態として設定されている速度のことである。ノブの移動速度を遅くした後に、表示制御部13は、既にすべてのオブジェクトが埋め込まれているページに対応するトラック内の位置をノブが移動しているか否かを判定する。そして、そのページをノブが移動していると判定した場合には、表示制御部13はノブの移動速度を通常速度に戻す。
【0061】
ノブの移動が止まった時に、表示制御部13は、その停止箇所に対応するページをWebブラウザ上に表示する。このとき、そのページに表示するオブジェクトが欠落している場合には、表示制御部13は上述した通りにそのオブジェクトをWebサーバ20から取得して欠落箇所にそのオブジェクトを埋め込む。欠落オブジェクトの取得は、あくまでもノブの動きが止まった時点で実行される。
【0062】
このようにノブの移動速度を落とす(スクロールバーを意図的に重くする)ことで、オブジェクトを追加でダウンロードする分だけページの表示が遅くなるかもしれないことをユーザに予め知らせることが可能になる。
【0063】
表示制御部13は、ノブの動きが止まったことを契機として、すなわちユーザのスクロール操作が完了したことを契機として、次ページ内へのオブジェクトの埋め込みを実行する。したがって、ノブの移動途中に通過するページへはオブジェクトは埋め込まれない。
【0064】
なお、表示制御部13はスクロールバー以外のインタフェースをページ切替手段として有してもよい。例えば、表示制御部13は、ページ番号を直接入力することでそのページに移動するウィンドウを画面上に表示する機能を有してもよい。ページ番号が指定された後の動作は、スクロールバーのノブの移動が止まった時の動作と同じである。
【0065】
フル・サイズ・フレームは、Webコンテンツ内のオブジェクトをドラッグ・アンド・ドロップ(drag and drop)などのユーザ操作によりオブジェクトの表示順を変更すること可能にするスクリプトまたはコードを含んでいてもよい。表示制御部13はそのスクリプトまたはコードに従って、ユーザ操作を受け付け、その操作に応じてオブジェクトの表示順を変更する。この機能を実装すれば、ユーザはオブジェクトの情報を比較するなどの作業を容易に行うことができる。
【0066】
次に、Webサーバ20によりアクセスされるデータベース群30内の各データベースについて説明する。データベース群30は、Webシステム1で必要な各種データベースの集まりである。各データベースの設置場所は任意であり、例えば、各データベースが一箇所にまとめられていてもよいし、別々の場所に設置されていてもよい。各データベースの管理者は同一人であってもよいし互いに異なっていてもよい。
【0067】
オブジェクト・データベース(オブジェクト記憶部)31は、フル・サイズ・フレームに埋め込まれる可能性がある各種オブジェクトを記憶する装置である。例えば、オブジェクト・データベース31はテキスト、静止画、動画、他のWebコンテンツへのリンク、バナー広告などの様々なオブジェクトを記憶している。オブジェクトの種類は何ら限定されないので、様々なデータベースがオブジェクト・データベース31として機能し得る。例えば、オンライン・ショッピング・サイトで用いられる商品情報(商品名や商品説明などのテキストと商品画像とを含む情報)を記憶する商品データベースがオブジェクト・データベース31として機能し得る。
図1ではオブジェクト・データベース31を一つのみ示しているが、オブジェクト・データベース31は複数種類のデータベースの集合であってもよい。
【0068】
アクセス履歴データベース32(アクセス履歴記憶部)は、ユーザ端末10がWebサイトにアクセスしたことを示すアクセス履歴を記憶する装置である。アクセス履歴の記録対象となるWebサイトは何ら限定されない。例えば、オンライン・ショッピング・サイトのアクセス履歴を記録するならば、そのサイトのトップページや各商品ページなどへのアクセスが記録対象となる。
【0069】
ユーザ端末10がWebブラウザ上にWebサイトを表示したこと、およびそのWebサイト上でユーザが行う任意の操作の双方を「Webサイトへのアクセス」と言うことができる。したがって、アクセス履歴は、ユーザ端末10上に表示されたWebサイトの履歴に限定されない。例えば、商品検索機能を有するWebサイト上でユーザが指定した検索クエリの履歴や、Webサイト上におけるお気に入り情報の登録などもアクセス履歴ということができる。もちろん、他の種類の情報もアクセス履歴となり得る。Webサイトへのアクセスを監視してその履歴を記録する機能は各ユーザ端末10が有していてもよいし、Webサーバ20が有していてもよいし、図示しない他のサーバが有していてもよい。
【0070】
アクセス履歴の例を
図10〜12に示す。
図10は、各ユーザ端末10での各Webサイトの表示時間を示すアクセス履歴(表示履歴)を示している。この例では、ユーザを一意に特定するユーザIDと、アクセスされたWebサイト(Webページ)のURLと、アクセスの開始日時及び終了日時とが互いに関連付けられたレコードがアクセス履歴として蓄積されている。このレコードは、アクセスの開始日時及び終了日時と共にまたはこれらに代えて、表示時間を含んでいてもよい。
【0071】
図11は、各ユーザ端末10で指定および送信された検索クエリを示すアクセス履歴を示している。この例では、ユーザIDと、アクセスされたWebサイト(Webページ)のURLと、商品検索のためのクエリと、検索日時とが互いに関連付けられたレコードがアクセス履歴として蓄積されている。
【0072】
図12は、各ユーザ端末10でお気に入りとして登録された情報のリストを示すアクセス履歴を示している。この例では、ユーザIDと、アクセスされたWebサイト(Webページ)のURLと、登録または更新された最新のお気に入りリストとが互いに関連付けられたレコードがアクセス履歴として蓄積されている。
【0073】
操作履歴データベース(操作履歴記憶部)33は、ユーザ端末10のWebブラウザにおけるスクロール操作履歴を記憶する装置である。この操作履歴は、Webブラウザにアドイン(add−in)またはプラグイン(plug−in)された監視用のプログラムにより格納される。監視用プログラムはユーザ端末10において各Webサイト(Webページ)におけるスクロールバーのノブの移動を記録する。そして、新たなWebサイト(Webページ)が切り替わる度に、あるいはWebブラウザが閉じられる時に、表示されていたWebページにおけるノブの移動範囲を算出して、その算出結果を操作履歴データベース33に送信及び格納する。記録される移動範囲は、Webページの全長に対するスクロールされた範囲の割合である。
図13の例では、ユーザIDと、アクセスされたWebサイト(Webページ)のURLと、スクロール範囲と、アクセス日時とが互いに関連付けられたレコードが操作履歴として蓄積されている。
【0074】
上記の各データベースおよび各レコードの構成は上記で示すものに限定されず、各データベースに対して任意の正規化又は冗長化を行ってよい。例えば、アクセス履歴データベース32が上記3種類のアクセス履歴のうちの少なくとも2種類を記憶していてもよい。
【0075】
このようなデータベース群30を前提として、Webサーバ20の機能及び構成を説明する。
図8に示すように、Webサーバ20は機能的構成要素として要求受信部21、要求処理部22、及び送信部23を備えている。
【0076】
要求受信部21は、ユーザ端末10からHTTPリクエストを受信する機能要素である。要求受信部21はそのHTTPリクエストを要求処理部22に出力する。上記のとおり、そのHTTPリクエストには初期要求と補充要求との2種類がある。
【0077】
要求処理部22は、ユーザ端末10からのHTTPリクエストに従って、そのユーザ端末10に返すデータを生成する機能要素である。要求処理部22はフレーム生成部22a、取得部22b、及び埋込部22cという三つの機能要素を備えている。初期要求を受信した際にはその三つの機能要素のすべてが実行され、補充要求を受信した際には取得部22bのみが実行される。
【0078】
なお、初期要求が、フル・サイズ・フレームの作成指示を示す情報を含んでいない場合にも、要求処理部22は次の方法でフル・サイズ・フレームを作成すると判断する。具体的には、ユーザは、自身を一意に特定するユーザIDと、フル・サイズ・フレームを要求するか否かを示すフラグ情報とを予め所定のデータベースに登録しておく。また、初期要求はユーザIDを含んでいるものとする。以上を前提として、要求処理部22は、ユーザIDに対応するフラグ情報がフル・サイズ・フレームの要求を示していれば、要求処理部22はフル・サイズ・フレームを生成すると判定する。
【0079】
フレーム生成部22aは、HTTPリクエストで指定されるWebコンテンツを表示するためのフル・サイズ・フレームを生成する機能要素である。
【0080】
フル・サイズ・フレームはWebコンテンツの全ページ分の領域で構成される。
言い換えれば、フル・サイズ・フレームは、表示されるまたは表示される可能性がある複数のページ(全ページ)が所定方向に配置される場合に、これらのページに埋め込まれて画面上に表示されるべき複数のオブジェクトが占有する領域のサイズを有する。
【0081】
したがって、フレーム生成部22aはページの境界を示すタグ(ページ境界タグ)をそのフル・サイズ・フレームのファイル(フレーム・ファイル)に記述する必要がある。そのため、フレーム生成部22aはWebコンテンツの総ページ数を特定する必要があるが、総ページ数の特定方法は限定されない。例えば、総ページ数が予め固定的に定められているWebコンテンツが要求されたのであれば、フレーム生成部22aはその総ページ数に従って、ページ境界タグをフレーム・ファイルに記述する。検索結果をユーザに提示する場合などのように、Webコンテンツの総ページ数が流動的である場合には、フレーム生成部22aはWebサーバ20または他の検索サーバ(図示せず)で得られたヒット件数と、予め定められているWebコンテンツの構成とに基づいて総ページ数を算出する。そして、フレーム生成部22aは算出した総ページ数に従って、ページ境界タグをフレーム・ファイルに記述する。
【0082】
当然ながら、フレーム・ファイル内に記述される情報はページ境界タグに限るものではなく、フレーム生成部22aはWebブラウザによる処理に必要な他のタグやデータなどもそのフレーム・ファイル内に書き込む。また、フレーム生成部22aは、各ページに埋め込まれるオブジェクトを特定して、そのオブジェクトを埋め込むためのタグもフレーム・ファイルに記述する。ただし、この時点では、フル・サイズ・フレームには未だオブジェクトは埋め込まれていない。
【0083】
このように、フレーム生成部22aは、所定方向に配置されるページの総数と、各ページに埋め込まれて画面上に表示されるべきすべてのオブジェクトとを特定して、各ページおよび各オブジェクトを示すタグをフレーム・ページに記述する。その結果、Webコンテンツが占有する領域のサイズを有するフル・サイズ・フレームが生成される。
【0084】
取得部22bは、フル・サイズ・フレームに埋め込まれるオブジェクトまたは当該フレームに埋め込まれる可能性があるオブジェクトを取得する機能要素である。
【0085】
[初期要求]
初期要求を受信した場合には、取得部22bは初期表示ページに埋め込まれるすべてのオブジェクトを初期表示オブジェクトとして取得すると共に、初期表示ページ以外の他のページに埋め込まれるオブジェクトの一部を待機オブジェクトとして取得する。取得部22bはテキスト、静止画、動画などの各種オブジェクトを記憶するオブジェクト・データベース31から初期表示オブジェクトおよび待機オブジェクトを取得することができる。
【0086】
待機オブジェクトを取得する際には、取得部22bはどのオブジェクトを待機オブジェクトとして取得するかを決定する必要がある。以下に示す通り、取得部22bは様々な手法により待機オブジェクトを取得することができる。
【0087】
[特定のページ]
取得部22bは、初期表示ページから所定の範囲内にある一部のページに埋め込まれるオブジェクトのすべてを待機オブジェクトとして取得してもよい。Webコンテンツの総ページ数が10ページであり、初期表示ページが1ページ目である場合に、取得部22bは2ページ目および3ページ目に埋め込まれるオブジェクトのすべてを待機オブジェクトとして取得してもよいし、2〜5ページ目に埋め込まれるオブジェクトのすべてを待機オブジェクトとして取得してもよい。この場合に、取得部22bは2〜9ページ目に埋め込まれるオブジェクトのすべてを待機オブジェクトとして取得してもよいが、残り9ページ分のオブジェクトのすべてを取得することはしない。
【0088】
別の例で、Webコンテンツの総ページ数が20ページであり初期表示ページが10ページ目である場合に、取得部22bは11ページ目に埋め込まれるオブジェクトのすべてを待機オブジェクトとして取得してもよいし、9ページ目に埋め込まれるオブジェクトのすべてを待機オブジェクトとして取得してもよいし、9,11ページ目に埋め込まれるオブジェクトのすべてを待機オブジェクトとして取得してもよい。このように初期表示ページがWebコンテンツの途中に位置するページである場合には、取得部22bはその初期表示ページの後に続くページだけでなく、初期表示ページの前に位置するページのオブジェクトを待機オブジェクトとして取得してもよい。
【0089】
このように、初期表示ページの周辺に位置するページのオブジェクトに限って取得することで、Webブラウザ上でその周辺ページについてはWebサーバ20と再度通信することなく高速に表示することができる。
【0090】
[データのサイズまたは種類]
取得部22bは、データサイズが所定の閾値未満のオブジェクトのみを待機オブジェクトとして取得してもよい。なお、この閾値は通信環境などに応じて任意に設定可能であり、例えば100KBに設定したり、1MBに設定したりしてもよい。あるいは、取得部22bは画像などの他のオブジェクトを取得することなく、当該他のオブジェクトに比べてデータサイズが小さいテキストのみを待機オブジェクトとして取得してもよい。
【0091】
このように、データサイズが小さいオブジェクトのみを待機オブジェクトとすることで、通信時間を短くしたりキャッシュ・メモリの使用量を抑えたりしつつ、最低限必要な情報だけを即時に表示することができる。
【0092】
[装置の性能]
取得部22bは、Webサーバ20またはユーザ端末10の性能に基づいて、取得する待機オブジェクトを決定してもよい。
【0093】
取得すべき待機オブジェクトをWebサーバ20の性能に基づいて決定する場合には、取得部22bは予め設定されているルール情報に基づいて、どのオブジェクトを待機オブジェクトとして取得するかを決定する。なお、このルール情報はパラメータ・ファイルとしてメモリ内に記憶されていてもよいし、プログラム内に記述されていてもよい。例えば、Webコンテンツ全体の10%分のオブジェクトを取得するというルールが設定されている場合には、取得部22bはその割合に相当し且つ初期表示ページから所定の範囲内にある領域を特定し、特定した領域内のオブジェクトを待機オブジェクトとして取得する。Webコンテンツの総ページ数が30であり、初期表示ページが1ページ目であれば、Webコンテンツ全体の10%は3ページ分に相当するので、取得部22bは2ページ目および3ページ目に埋め込まれるオブジェクトを待機オブジェクトとして取得する。
【0094】
なお、上述した“特定のページ”または“データのサイズまたは種類”についての二つの手法がルール情報として規定されていてもよい。
【0095】
待機オブジェクトをユーザ端末10の性能に基づいて決定する場合には、取得部22bは端末の機種と待機オブジェクトの取得範囲とが関連付けられたルール情報に基づいて、どのオブジェクトを待機オブジェクトとして取得するかを決定する。
【0096】
ルール情報は予め設定されており、Webサーバ20、またはデータベース群30内の所定のデータベース(図示せず)に格納されている。
図14に示すように、ルール情報は、機種情報(例えば型番)とルールとが対応付けられた情報である。機種の代わりに、その機種から導くことが可能なメーカまたは通信キャリアがルールと関連付けられてもよい。このようなルール情報の利用は、ユーザ端末10から送られてくる初期要求が端末の機種を示す情報を含んでいることを前提とする。
【0097】
取得部22bは初期要求内の機種情報に対応するルール情報を読み出して、そのルールに従って待機オブジェクトを取得する。
図14の例は、ユーザ端末10が機種Aであれば取得部22bがWebコンテンツ全体の10%に相当するオブジェクトを待機オブジェクトとして取得し、ユーザ端末10が機種Bであれば取得部22bがWebコンテンツ内のテキストデータのみを待機オブジェクトとして取得することを示している。
【0098】
[ユーザの興味の推定]
取得部22bはユーザが興味を持つオブジェクトを推定してそのオブジェクトを取得してもよい。このために、取得部22bはアクセス履歴データベース32及び操作履歴データベース33のいずれかを参照する。この手法では、ユーザ端末10から送られてくる初期要求が、ユーザを一意に特定するユーザIDを含んでいることを前提とする。
【0099】
[表示履歴の利用]
アクセス履歴データベースがユーザ端末10でのWebページの表示時間を記録しているのであれば、取得部22bは一定時間以上表示されたWebページに掲載されていたものと同一または類似するオブジェクトを待機オブジェクトとして取得する。具体的には、取得部22bは初期要求に含まれているユーザIDと対応し、且つ所定時間以上表示されたWebページを特定する。続いて、取得部22bはそのWebページのソースコードを解析することでそのページに掲載されていたオブジェクト(具体的にはテキストや画像等)を特定する。そして、取得部22bはそのオブジェクトと同一または類似するオブジェクトを待機オブジェクトとして取得する。この結果、取得部22bは、フル・サイズ・フレームに埋め込まれるオブジェクトのうち、Webページに掲載されていたオブジェクトと同一または類似するオブジェクトを得る。
【0100】
類似オブジェクトの判定方法は限定されない。例えば、類似オブジェクトは、アクセス履歴で示されるWebページ内のテキストと所定の割合以上(例えば50%以上)一致するテキストであったり、そのWebページ内のテキストの同義語であったりしてもよい。あるいは、類似オブジェクトは、画像の特徴量などのような従来の画像類似判定に基づいて、アクセス履歴で示されるWebページ内の画像と類似であると判定される画像であってもよい。あるいは、類似オブジェクトは、テキストまたは画像で示される商品と同一カテゴリである商品を示すテキストまたは画像であってもよい。
【0101】
[検索クエリの利用]
アクセス履歴データベース32がユーザの検索履歴を記録しているのであれば、取得部22bはその検索クエリに合致するオブジェクトを待機オブジェクトとして取得する。具体的には、取得部22bは初期要求に含まれているユーザIDと対応する一又は複数の検索クエリをアクセス履歴データベース32から取得し、その検索クエリを取得する。一つのユーザIDに複数の検索クエリが対応している場合には、取得部22bはそのすべての検索クエリを取得してもよいし、直近の一又は複数の検索クエリのみを取得してもよい。続いて、取得部22bはその検索クエリを満たすオブジェクトを待機オブジェクトとして取得する。例えば、取得部22bはその検索クエリに合致する商品の情報(例えば、商品名、商品説明、及び商品画像)を待機オブジェクトとして取得する。この結果、取得部22bは、フル・サイズ・フレームに埋め込まれるオブジェクトのうち検索クエリに合致するオブジェクトを得る。
【0102】
[お気に入りの利用]
アクセス履歴データベース32が、特定のWebサイトにおいて登録されているユーザのお気に入りを記録しているのであれば、取得部22bはそのお気に入りで指定されている情報に合致するオブジェクトを待機オブジェクトとして取得する。具体的には、取得部22bは初期要求に含まれているユーザIDと対応するお気に入りのリストをアクセス履歴データベース32から取得する。続いて、取得部22bは各お気に入りの情報と同一または類似するオブジェクトを待機オブジェクトとして取得する。例えば、商品情報(例えば、商品名、商品説明、及び商品画像から成る情報)がお気に入りとして登録されているのであれば、取得部22bはその商品と同一または類似する商品に関するオブジェクトを待機オブジェクトとして取得する。
【0103】
これらのように表示履歴、検索クエリ、あるいはお気に入り情報を用いることで、ユーザが興味を持っていると推定されるオブジェクトを取得することができる。
【0104】
[操作履歴の利用]
取得部22bはユーザが興味を持っていると思われるオブジェクトを過去のスクロール操作から推定し、推定したオブジェクトを待機オブジェクトとして取得してもよい。具体的には、取得部22bは初期要求に含まれているユーザIDに対応する操作履歴を操作履歴データベース33から読み出すことで、Webページのスクロール範囲を特定する。スクロール範囲が100%であればユーザがWebページの最下段までスクロールしたことを示しており、それが50%であればユーザがWebページのちょうど中間点までスクロールしたことを示している。続いて、取得部22bは各スクロール範囲の統計値を求める。この統計値は、例えば平均値、中央値、または最大値であり得るが、これらに限定されない。続いて、取得部22bはフル・サイズ・フレームにおいてその統計値に相当する範囲を特定し、その範囲内に位置するオブジェクトをオブジェクト・データベース31から取得する。
【0105】
このように操作履歴を用いることで、必要であると推定されるオブジェクトをユーザのスクロール操作の傾向に合わせて取得することができる。
【0106】
このように待機オブジェクトの取得方法は様々であるが、いずれにしても、取得部22bはこの待機オブジェクトを初期表示オブジェクトと共に保持する。なお、取得部22bは、一回の初期要求に対して上述した取得方法の任意の2以上を用いて待機オブジェクトを取得してもよい。
【0107】
[補充要求]
補充要求を受信した場合には、取得部22bはその補充要求で指定されているすべてのオブジェクトを補充オブジェクトとして取得する。具体的には、取得部22bはフル・サイズ・フレームの識別子に基づいてそのフル・サイズ・フレームのソースコードを読み出し、次ページの番号と、欠落オブジェクトのリストとに基づいて、取得すべきオブジェクトを特定する。そして、取得部22bは特定したオブジェクトをオブジェクト・データベース31から読み出す。そして、取得部22bは読み出した補充オブジェクトを送信部23に出力する。
【0108】
埋込部22cは、フル・サイズ・フレームに初期表示オブジェクトのすべてを埋め込む機能要素である。具体的には、埋込部22cは初期表示オブジェクトそのものまたは初期表示オブジェクトのURLをフレーム・ファイルに書き込む。この書込みが埋込処理に相当する。埋込部22cは、待機オブジェクトをフル・サイズ・フレームに埋め込むことはせずに、初期表示オブジェクトの埋め込みのみを実行する。
【0109】
また、埋込部22cは、特定のオブジェクトの表示位置を示す位置情報をフレーム・ファイル内に記述する。どのオブジェクトを特定オブジェクトとするかは限定されない。例えば、埋込部22cはアクセス履歴に基づいて特定された、ユーザが興味を持つと思われるオブジェクトの位置を示す位置情報をフレーム・ファイル内に記述してもよい。ユーザ端末10はこの位置情報に基づいてスクロールバー上に印を描画する。
【0110】
埋込部22cは編集したフル・サイズ・フレーム(フレーム・ファイル)を、待機オブジェクトと共に送信部23に出力する。
【0111】
送信部23は、要求処理部22により生成または取得されたデータをHTTPレスポンスとしてユーザ端末10に送信する機能要素である。HTTPリクエストが初期要求であった場合には、送信部23は、待機オブジェクトが埋め込まれることなくすべての初期表示オブジェクトが埋め込まれたフル・サイズ・フレームと待機オブジェクトとの双方をユーザ端末10に送信する。HTTPリクエストが補充要求であった場合には、送信部23は補充オブジェクトをユーザ端末10に送信する。
【0112】
次に、
図15〜18を用いて、Webシステム1の動作を説明するとともに本実施形態に係る情報処理方法について説明する。以下では、ユーザがオンライン・ショッピング・サイトで商品検索したことに応じて500個の商品がヒットし、その検索結果がフル・サイズ・フレームを用いて表示される場面を想定する。1ページには10個の商品が表示され、したがってフル・サイズ・フレームが50ページ分の領域を有するものとする。
【0113】
図15を用いて一連の処理の大まかな流れを説明する。ユーザがWebコンテンツを取得するための操作を実行すると(ステップS11)、要求部11が初期要求を生成してWebサーバ20に送信する(ステップS12)。
【0114】
Webサーバ20では、要求受信部21がその初期要求を受信し(ステップS12、受信ステップ)、要求処理部22がその初期要求を処理することでフル・サイズ・フレームおよび待機オブジェクトを用意し(ステップS13)、送信部23がそれらのデータをユーザ端末10に送信する(ステップS14、送信ステップ)。ステップS13の処理については後で詳述する。
【0115】
ユーザ端末10では、コンテンツ受信部12がフル・サイズ・フレームおよび待機オブジェクトを受信し(ステップS14)、表示制御部13がフル・サイズ・フレームの初期表示ページを表示する(ステップS15)。その後、ユーザのスクロール操作によりオブジェクトの補充を必要とするページ切替が行われると(ステップS16)、要求部11が補充要求を生成してWebサーバ20に送信する(ステップS17)。
【0116】
Webサーバ20では、要求受信部がその補充要求を受信し(ステップS17)、要求処理部22がその補充要求に基づいて、指定されたページに埋め込むための補充オブジェクトを取得し(ステップS18)、送信部23がその補充オブジェクトをユーザ端末10に送信する(ステップS19)。
【0117】
ユーザ端末10では、コンテンツ受信部12がその補充オブジェクトを受信し(ステップS19)、表示制御部13がその補充オブジェクトをフル・サイズ・フレームに埋め込んだ上で、指定されたページを表示する(ステップS20)。
【0118】
図16を用いて、Webサーバ20における初期要求の処理を詳細に説明する。まず、フレーム生成部22aがフル・サイズ・フレーム(フレーム・ファイル)を生成する(ステップS131、フレーム生成ステップ)。続いて、取得部22bが初期表示オブジェクトを取得すると共に(ステップS132、取得ステップ)、待機オブジェクトの取得範囲を決定した上で必要な待機オブジェクトを取得する(ステップS133)。上述したように、取得部22bはどの範囲の待機オブジェクトを取得するかを様々な手法により決めることができる。オブジェクトの取得が完了すると、埋込部22cが初期表示オブジェクトのみをフル・サイズ・フレームに埋め込む(ステップS134、埋込ステップ)。
【0119】
図17,18を用いて、フル・サイズ・フレームを受信した後のユーザ端末10の動作を説明する。以下に説明する処理の一部はステップS15〜S20の処理と重複する。
【0120】
コンテンツ受信部12がフル・サイズ・フレームおよび待機オブジェクトを受信すると、表示制御部13がWebブラウザ上に初期表示ページを表示し、待機オブジェクトをキャッシュ・メモリに格納することでその待機オブジェクトを保持する(ステップS201)。このステップS201において、必要であれば、表示制御部13はスクロールバーのトラック上に印を付す処理も行う。フル・サイズ・フレームは50ページ分の領域を有しているので、スクロールバーのノブの長さはトラックの長さの1/50となる。
【0121】
その後、ページ切替のためのスクロール操作が発生してその操作が完了すると(ステップS202)、表示制御部13は次ページを表示するための処理を実行する。
【0122】
まず、表示制御部13は次ページに埋め込むべき待機オブジェクトがキャッシュ・メモリ内に存在するか否かを判定する(ステップS203)。その待機オブジェクトが存在するならば(ステップS203;YES)、表示制御部13はその待機オブジェクトをキャッシュ・メモリから読み出してフル・サイズ・フレームに埋め込む(ステップS204)。一方、待機オブジェクトが存在しないならば(ステップS203;NO)、表示制御部13はステップS204の処理をスキップする。
【0123】
続いて、表示制御部13は次ページ内のオブジェクトがすべて埋め込まれたか否かを判定する(ステップS205)。もし次ページ内のオブジェクトが一部欠落していれば(ステップS205;NO)、表示制御部13は要求部11およびコンテンツ受信部12と協働してWebサーバ20から補充オブジェクトを取得し(ステップS206)、その補充オブジェクトをフル・サイズ・フレームに埋め込む(ステップS207)。そして、表示制御部13はスクロール操作により指定された次ページをWebブラウザ上に表示する(ステップS208)。一方、次ページ内のオブジェクトがすべて埋め込まれたならば(ステップS205;YES)、表示制御部13は補充オブジェクトを要求することなく次ページを表示する(ステップS208)。
【0124】
その後、ページ切替のための更なるスクロール操作が発生した場合には、
図18に示す処理が実行される。そのスクロール操作が完了すると(ステップS211)、表示制御部13は以前に表示したページがそのスクロール操作により指定されたか否かを判定する(ステップS212)。もしそのページがこれから初めて表示されると判定した場合には(ステップS212;NO)、表示制御部13はステップS203〜S208の処理を再度実行する。
【0125】
一方、フル・サイズ・フレームの受信後に一回以上表示したページが再び指定された場合には(ステップS212;YES)、表示制御部13は次ページのオブジェクトがすべてフル・サイズ・フレームに埋め込まれているか否かを判定する(ステップS213)。表示制御部13は、次ページ内のすべてのオブジェクトがキャッシュ・メモリに記憶されているならば、次ページのオブジェクトがすべてフル・サイズ・フレームに埋め込まれていると判定する。表示すべきオブジェクトが欠落している場合には(ステップS213;NO)、表示制御部13は上記ステップS206,S207と同様の処理を実行した後に次ページを表示する(ステップS214〜S216)。一方、次ページのオブジェクトがすべてフル・サイズ・フレームに埋め込まれていれば(ステップS213;YES)、表示制御部13は補充オブジェクトを取得することなく次ページを表示する(ステップS216)。
【0126】
一度に50ページ分のオブジェクトをユーザ端末10に送信しようとすれば、ユーザが別のページを見ようとするとそのページが直ぐに表示されず、ユーザを待たせることになってしまう。しかし、本発明では必要最低限の待機オブジェクトのみがユーザ端末10に送信され、しかも、待機オブジェクトの埋め込みはページの初回表示時に初めて実行されるので、次ページの表示が高速に実行される。
【0127】
次に、
図19を用いて、Webシステム1を実現するためのプログラムPを説明する。プログラムPは、コンピュータをユーザ端末10として機能させるためのクライアント・プログラム(表示制御プログラム)P1と、コンピュータをWebサーバ20として機能させるためのサーバ・プログラム(情報処理プログラム)P2とを備えている。
【0128】
クライアント・プログラムP1は、メインモジュールP10、要求モジュールP11、コンテンツ受信モジュールP12、および表示制御モジュールP13を備えている。
【0129】
メインモジュールP10は、ユーザ端末10でのWebコンテンツの表示を統括的に制御する部分である。要求モジュールP11、コンテンツ受信モジュールP12、および表示制御モジュールP13を実行することにより実現される機能はそれぞれ、上記の要求部11、コンテンツ受信部12、および表示制御部13の機能と同様である。
【0130】
サーバ・プログラムP2は、メインモジュールP20、要求受付モジュールP21、要求処理モジュールP22、および送信モジュールP23を備えている。要求処理モジュールP22は、フレーム生成モジュールP22a、取得モジュールP22b、および埋込モジュールP22cを備えている。
【0131】
メインモジュールP20は、Webサーバ20でのWebコンテンツ管理を統括的に制御する部分である。要求受付モジュールP21、要求処理モジュールP22、および送信モジュールP23を実行することにより実現される機能はそれぞれ、上記の要求受信部21、要求処理部22、および送信部23の機能と同様である。フレーム生成モジュールP22a、取得モジュールP22b、および埋込モジュールP22cを実行することにより実現される機能はそれぞれ、上記のフレーム生成部22a、取得部22b、および埋込部22cの機能と同様である。
【0132】
クライアント・プログラムP1及びサーバ・プログラムP2はそれぞれ、例えば、CD−ROMやDVD−ROM、半導体メモリ等の有形の記録媒体に固定的に記録された上で提供されてもよい。また、各プログラムP1,P2は、搬送波に重畳されたデータ信号として通信ネットワークを介して提供されてもよい。例えば、クライアント・プログラムP1はフル・サイズ・フレームに埋め込まれた形で提供されてもよいし、フル・サイズ・フレームと共にユーザ端末10に送信されてもよい。なお、ユーザ端末10とは別の表示制御装置が、クライアント・プログラムP1をユーザ端末10に実行させてもよい。
【0133】
以上説明したように、本実施形態によれば、スクロール操作によりページ切替可能な複数のページの領域が一列に繋がったフル・サイズ・フレームが送信されるので、ユーザ端末10上には最初から、複数ページ分のサイズの外枠が用意される。したがって、従来のオートページャライズ機能のように、ページ切替が発生する度にユーザ端末10上でページを付け足す必要がなく、その分、Webコンテンツのページ切替を高速化することができる。また、ユーザは最初からどのページにもスクロール操作のみで移動することができる。
【0134】
また、初期表示ページ以外のページに埋め込まれるオブジェクトの一部を予めユーザ端末10に送信するので、ページ切替の際のオブジェクト取得に要する時間を節約することができる。このように、全ページ分の外枠であるフル・サイズ・フレームは最初から用意する一方で、最初は表示されないページのオブジェクトの一部を予めユーザ端末10に送っておくことで、スクロール操作によるWebコンテンツのページ切替の高速化が可能になる。
【0135】
ユーザ端末10は最初、必要最低限と推測される待機オブジェクトのみを受信する。また、移動先のページで欠落しているオブジェクトがあればユーザ端末10はその時点で初めて補充オブジェクトをWebサーバ20に要求する。したがって、キャッシュ・メモリの消費量を抑制することができる。
【0136】
以上、本発明をその実施形態に基づいて詳細に説明した。しかし、本発明は上記実施形態に限定されるものではない。本発明は、その要旨を逸脱しない範囲で様々な変形が可能である。
【0137】
スクロールバーへの印の描画は省略可能である。また、スクロールバーのノブの速度を変更する処理も省略可能である。
【0138】
上記実施形態では、一度表示したページを再び表示する際には、キャッシュ・メモリ内に記憶されているオブジェクトを再利用したが、この再利用は必須ではない。すなわち、ページが切り替わる度にユーザ端末10はWebサーバ20に補充オブジェクトを要求してもよい。
【0139】
上記実施形態ではWebサーバ20が初期要求に応じてフル・サイズ・フレームおよび待機オブジェクトをユーザ端末10に送信したが、Webサーバ20は初期要求に応じて、初期表示オブジェクトが埋め込まれたフル・サイズ・フレームのみをユーザ端末10に送信してもよい。この場合には、初期表示ページの次のページが表示される際に、ユーザ端末10は必ず補充要求をWebサーバ20に送信することになる。
【0140】
また、初期要求に応じてフル・サイズ・フレームおよび待機オブジェクトを送信する場合でも、Webサーバ20はこれら二種類のデータを同時にではなく別々のタイミングでユーザ端末10に送信してもよい。例えば、Webサーバ20はまずフル・サイズ・フレームを送信し、その後所定時間が経過したら待機オブジェクトを送信してもよい。