(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記制御装置は、前記放風弁の開度を増加させる際、前記副コンプレッサ出口圧と前記停止時基準圧との差が小さいほど前記放風弁の開度の増加量を小さくするように構成されている、請求項1に記載のエンジンシステム。
前記制御装置は、前記放風弁の開度を増加させる際、前記副コンプレッサの出口圧と前記運転時基準圧との差が小さいほど前記放風弁の開度の増加量を小さくするように構成されている、請求項3に記載のエンジンシステム。
前記制御装置は、過給機の運転台数を増やす際、前記副タービン入口弁を開放し始めた後、副過給機回転数が所定の切替回転数以上となったときに前記副コンプレッサ出口弁の開放を開始し、前記切替回転数はエンジン負荷に応じて決定するように構成されている、請求項3又は4に記載のエンジンシステム。
前記制御装置は、エンジン負荷に基づいて所定のサージマージンを有する前記副コンプレッサの第2切替動作点を決定し、前記第2切替動作点を通過する圧力曲線の副過給機回転数を前記第2切替回転数とするように構成されている、請求項6に記載のエンジンシステム。
前記制御装置は、過給機の運転台数を増やす際、主コンプレッサ出口圧を取得し、副過給機回転数が前記第2切替回転数以上であり、かつ、取得した主コンプレッサ出口圧が前記第2切替動作点における副コンプレッサ出口圧よりも小さいときに副コンプレッサ出口弁を開き始めるように構成されている、請求項7に記載のエンジンシステム。
前記制御装置は、取得した主コンプレッサ出口圧に基づいてエンジン負荷を推定し、推定したエンジン負荷に基づいて所定のサージマージンを有する前記副コンプレッサの第1切替動作点を決定し、前記第1切替動作点を通過する圧力曲線の副過給機回転数を前記第1切替回転数とするように構成されている、請求項9に記載のエンジンシステム。
前記制御装置は、前記放風弁を閉じる際、前記副過給機回転数と前記第1切替回転数との差が小さくなるほど前記放風弁の開度の減少量を小さくするように構成されている、請求項6乃至10のうちいずれか一の項に記載のエンジンシステム。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
このように、従来のエンジンシステムでは、サージを確実に回避するために、早期に放風弁を開放し、その後に逆流防止用の弁を閉じている。そのため、エンジン本体へ供給できるはずの空気まで外部へ排出してしまい、その結果、エンジン本体へ供給する掃気ガスの圧力(掃気圧)が低下して、エンジン本体を効率よく運転することができない。
【0008】
本発明は、以上のような事情に鑑みてなされたものであって、過給機の運転台数を変更する際に、過給機にサージが発生するのを防止しつつ、エンジン本体の効率が低下するのを抑えることができるエンジンシステムを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明のある形態に係るエンジンシステムは、エンジン本体と、主タービン及び主コンプレッサを有する少なくとも一台の主過給機と、前記エンジン本体に対して前記主過給機と並列に配置され、副タービン及び副コンプレッサを有する少なくとも一台の副過給機と、前記副タービンの入口側に設けられた副タービン入口弁と、前記副コンプレッサの出口側に設けられた副コンプレッサ出口弁と、前記副コンプレッサで昇圧された外気を前記副コンプレッサ出口弁の上流から外部へ導く放風配管と、前記放風配管に設けられた放風弁と、制御装置と、を備え、前記制御装置は、前記主過給機及び前記副過給機が運転した状態から、前記主過給機を運転させたまま前記副タービン入口弁及び前記副コンプレッサ出口弁を閉じて前記副過給機を停止させ、過給機の運転台数を減らす際、副過給機回転数に基づいて所定のサージマージンを有する停止時基準圧を決定し、副コンプレッサ出口圧が前記停止時基準圧よりも高いときに前記放風弁の開度を増加させ、前記副コンプレッサ出口圧が前記停止時基準圧よりも低いときに前記放風弁の開度を減少させるように構成されている。
【0010】
かかる構成によれば、放風弁は副コンプレッサ出口圧が停止時基準圧よりも低いときには閉止される。つまり、サージが発生する可能性が低いときは、放風弁を閉じて副コンプレッサで昇圧した外気をエンジン本体に供給する。これにより、副コンプレッサで昇圧された空気が無駄に外部へ放出されるのが抑えられ、エンジン本体の掃気圧の低下を抑えることができる。その結果、過給機の運転台数を減らす際に、エンジン本体の効率が低下するのを抑制することができる。
【0011】
また、上記のエンジンシステムにおいて、前記制御装置は、前記放風弁の開度を増加させる際、前記副コンプレッサ出口圧と前記停止時基準圧との差が小さいほど前記放風弁の開度の増加量を小さくするように構成されていてもよい。
【0012】
かかる構成によれば、副コンプレッサの運転点がサージ領域の近くにない場合には放風弁の開度の増加量は小さくなる。つまり、副コンプレッサにサージが発生する可能性が高くない場合には、副コンプレッサで昇圧した外気はあまり外部に放出されない。これにより、より一層、副コンプレッサにサージが発生するのを抑えつつ、掃気圧を高めてエンジン本体を効率よく運転することができる。
【0013】
また、本発明のある形態に係るエンジンシステムは、エンジン本体と、主タービン及び主コンプレッサを有する少なくとも一台の主過給機と、前記エンジン本体に対して前記主過給機と並列に配置され、副タービン及び副コンプレッサを有する少なくとも一台の副過給機と、前記副タービンの入口側に設けられた副タービン入口弁と、前記副コンプレッサの出口側に設けられた副コンプレッサ出口弁と、前記副コンプレッサで昇圧された外気を前記副コンプレッサ出口弁の上流から外部へ導く放風配管と、前記放風配管に設けられた放風弁と、制御装置と、を備え、前記制御装置は、前記主過給機が運転し前記副過給機が停止した状態から、前記主過給機を運転させたまま前記副タービン入口弁及び前記副コンプレッサ出口弁を開いて前記副過給機を運転させ、過給機の運転台数を増やす際、副過給機回転数に基づいて所定のサージマージンを有する運転時基準圧を決定し、副コンプレッサ出口圧が前記運転時基準圧よりも高いときに前記放風弁の開度を増加させ、前記副コンプレッサ出口圧が前記運転時基準圧よりも低いときに前記放風弁の開度を減少させるように構成されている。
【0014】
かかる構成によれば、副コンプレッサの出口圧が運転時基準圧よりも低いときには放風弁の開度が減少する。つまり、サージが発生する可能性が低いときは、放風弁の開度を小さくして副コンプレッサで昇圧した空気をエンジン本体に多く供給する。これにより、副コンプレッサで昇圧された空気が無駄に外部へ放出されるのが抑えられ、エンジン本体の掃気圧の低下を抑えることができる。その結果、過給機の運転台数を増やす際に、エンジン本体の効率が低下するのを抑制することができる。
【0015】
また、上記のエンジンシステムにおいて、前記制御装置は、前記放風弁の開度を増加させる際、前記副コンプレッサの出口圧と前記運転時基準圧との差が小さいほど前記放風弁の開度の増加量を小さくするように構成されていてもよい。
【0016】
かかる構成によれば、副コンプレッサの運転点がサージ領域の近くにない場合には放風弁の開度の増加量は小さくなる。つまり、副コンプレッサにサージが発生する可能性が高くない場合には、副コンプレッサで昇圧した外気はあまり外部に放出されない。これにより、より一層、副コンプレッサにサージが発生するのを抑えつつ、掃気圧を高めてエンジン本体を効率よく運転することができる。
【0017】
また、上記のエンジンシステムにおいて、前記制御装置は、過給機の運転台数を増やす際、前記副タービン入口弁を開放し始めた後、副過給機回転数が所定の切替回転数以上となったときに前記副コンプレッサ出口弁の開放を開始し、前記切替回転数はエンジン負荷に応じて決定するように構成されていてもよい。切替回転数は、副コンプレッサの出口圧と掃気圧を比較して決定するのではなく、副コンプレッサ出口弁を開く直前から切替完了後までの、副コンプレッサの動作曲線(副コンプレッサ流量と副コンプレッサ出口圧の関係)を予測し、副コンプレッサがサージしないように考慮し決定される。
【0018】
かかる構成によれば、過給機の運転台数を増やす際に、副過給機回転数が切替回転数に達するまで副コンプレッサ出口弁を閉じておくため、主コンプレッサで昇圧した外気を副コンプレッサに逆流することなく、掃気としてエンジン本体に供給することができる。そのため、エンジン本体を効率よく運転することができる。また、切替回転数はエンジン負荷に応じて決定されるため、サージを回避しつつ、エンジン本体のより効率のよい運転が可能である。
【0019】
また、本発明の他の形態に係るエンジンシステムは、エンジン本体と、主タービン及び主コンプレッサを有する少なくとも一台の主過給機と、前記エンジン本体に対して前記主過給機と並列に配置され、副タービン及び副コンプレッサを有する少なくとも一台の副過給機と、前記副タービンの入口側に設けられた副タービン入口弁と、前記副コンプレッサの出口側に設けられた副コンプレッサ出口弁と、前記副コンプレッサで昇圧された外気を前記副コンプレッサ出口弁の上流から外部へ導く放風配管と、前記放風配管に設けられた放風弁と、制御装置と、を備え、前記制御装置は、前記主過給機が運転し前記副過給機が停止した状態から、前記主過給機を運転させたまま前記副タービン入口弁及び前記副コンプレッサ出口弁を開いて前記副過給機を運転させ、過給機の運転台数を増やす際、前記放風弁を所定の開度で開いた状態で前記副タービン入口弁の開放を開始した後、副過給機回転数が所定の第1切替回転数以上となったときに前記放風弁の閉止を開始し、副過給機回転数が前記第1切替回転数よりも大きい第2切替回転数以上となったときに前記副コンプレッサ出口弁の開放を開始するように構成されている。
【0020】
かかる構成によれば、放風弁がある程度閉まった状態で副コンプレッサ出口弁が開き始めるため、副コンプレッサで昇圧した外気が放風弁を介して外部に放出されるのを抑えることができる。また、主コンプレッサで昇圧した外気が副コンプレッサへ逆流するのを抑えることができる。よって、エンジン本体の効率が低下するのを抑えることができる。
【0021】
また、上記のエンジンシステムにおいて、前記制御装置は、エンジン負荷に基づいて所定のサージマージンを有する前記副コンプレッサの第1切替動作点(副コンプレッサ流量と副コンプレッサ出口圧)を決定し、前記第1切替動作点を通過する圧力曲線(副過給機の各回転数における副コンプレッサ流量と副コンプレッサ出口圧の関係)の副過給機回転数を前記第1切替回転数とするように構成されていてもよい。第1切替回転数は、副コンプレッサの出口圧と掃気圧を比較して決定するのではなく、エンジン負荷に基づいて放風弁を閉じ始める直前から副コンプレッサ出口弁を開き始める直前までの、副コンプレッサの動作曲線を予測し、副コンプレッサがサージしないように考慮し決定される。
【0022】
かかる構成によれば、エンジン負荷に基づいて第1切替動作点を決定し、さらにこの第1切替動作点を用いて第1切替回転数を決定することになる。そのため、副コンプレッサ出口圧等の圧力を測定することなく放風弁の開閉を制御することができる。よって、他の条件によっては、副コンプレッサ出口圧等の圧力を測定する圧力計が不要となる。
【0023】
また、上記のエンジンシステムにおいて、前記制御装置は、エンジン負荷に基づいて所定のサージマージンを有する前記副コンプレッサの第2切替動作点を決定し、前記第2切替動作点を通過する圧力曲線の副過給機回転数を前記第2切替回転数とするように構成されてもよい。第2切替回転数は、副コンプレッサの出口圧と掃気圧を比較して決定するのではなく、エンジン負荷に基づいて副コンプレッサ出口弁を開き始める直前から開き終わる(切替完了)までの、副コンプレッサの動作曲線を予測し、副コンプレッサがサージしないように考慮し決定される。
【0024】
かかる構成によれば、エンジン負荷に基づいて第2切替動作点を決定し、さらにこの第2切替動作点を用いて第2切替回転数を決定することになる。そのため、副コンプレッサ出口圧等の圧力を測定することなく副コンプレッサ出口弁を開放し始めるタイミングを決定することができる。よって、他の条件によっては、副コンプレッサ出口圧等の圧力を測定する圧力計が不要となる。
【0025】
また、上記のエンジンシステムにおいて、前記制御装置は、過給機の運転台数を増やす際、主コンプレッサ出口圧を取得し、副過給機回転数が前記第2切替回転数以上であり、かつ、取得した主コンプレッサ出口圧が前記第2切替動作点における副コンプレッサ出口圧よりも小さいときに副コンプレッサ出口弁を開き始めるように構成されていてもよい。
【0026】
エンジン負荷に基づいて副コンプレッサ出口弁を開放するタイミングを決定する場合、エンジン負荷が急激に変動する状況では主コンプレッサ出口圧が想定した圧力より高い場合があり、そのとき主コンプレッサ出口弁を開放すると、主コンプレッサで昇圧した外気が副コンプレッサへ逆流するおそれがある。これに対し、上記の構成では、実際の主コンプレッサ出口圧を取得して、逆流が発生するおそれがある場合には副コンプレッサ出口圧弁を開放しないため、副コンプレッサに逆流が生じるのを防ぐことができる。
【0027】
また、上記のエンジンシステムにおいて、前記制御装置は、取得した主コンプレッサ出口圧に等しい値を第2切替圧とし、当該第2切替圧においてサージが発生する副コンプレッサ流量に所定流量を加えた値を第2切替流量とし、前記第2切替圧でかつ前記第2切替流量である動作点を第2切替動作点とし、前記第2切替動作点を通過する圧力曲線の副過給機回転数を前記第2切替回転数とするように構成されていてもよい。
【0028】
かかる構成によれば、第2切替回転数は、エンジン負荷を用いず主コンプレッサ出口圧に基づいて決定されるため、エンジン負荷が急激に変動する状況で副過給機の台数を増加したとしても、副コンプレッサに逆流が生じるのを防ぐことができる。
【0029】
また、上記のエンジンシステムにおいて、前記制御装置は、取得した主コンプレッサ出口圧に基づいてエンジン負荷を推定し、推定したエンジン負荷に基づいて所定のサージマージンを有する前記副コンプレッサの第1切替動作点を決定し、前記第1切替動作点を通過する圧力曲線の副過給機回転数を前記第1切替回転数とするように構成されていてもよい。
【0030】
かかる構成によれば、主コンプレッサ出口圧に基づいて第1切替回転数を決定することができるため、第2切替回転数のみならず第1切替回転数を決定する際にもエンジン負荷を直接取得する必要がない。つまり、運転台数増加制御においてエンジン負荷の取得が省略できることから、運転台数減少制御においてもエンジン負荷の取得を省略できる場合には、エンジンシステムを簡略化することができる。
【0031】
また、上記のエンジンシステムにおいて、前記制御装置は、前記放風弁を閉じる際、副過給機回転数と前記第1切替回転数との差が小さくなるほど前記放風弁の開度の減少量を小さくするように構成されていてもよい。
【0032】
かかる構成によれば、副コンプレッサにサージが発生する可能性が低い場合には、素早く放風弁を閉じることができるため、エンジン本体の効率の低下をさらに抑えることができる。
【発明の効果】
【0033】
以上のとおり、上記のエンジンシステムによれば、過給機にサージが発生するのを防止しつつ、過給機の運転台数を変更する際に、エンジン本体の効率が低下するのを抑制することができる。
【発明を実施するための形態】
【0035】
以下、本発明の実施形態について図を参照しながら説明する。以下では、全ての図面を通じて同一又は相当する要素には同じ符号を付して、重複する説明は省略する。
【0036】
(第1実施形態)
はじめに第1実施形態について説明する。
【0037】
<エンジンシステムの全体構成>
まず、本実施形態に係るエンジンシステム100の全体構成について説明する。
図1は、エンジンシステム100の全体の概略構成図である。
図1において、太く描いた破線は排気ガスの流れを示しており、太く描いた実線は掃気ガスの流れを示している。
図1に示すように、エンジンシステム100は、エンジン本体10と、主過給機20と、副過給機30と、副タービン入口弁41と、副コンプレッサ出口弁42と、放風弁43と、を備えている。
【0038】
本実施形態におけるエンジン本体10は、船舶の推進用主機であり、大型の2ストロークディーゼルエンジンである。エンジン本体10には、エンジン本体10の回転数(エンジン回転数)を測定するエンジン回転計11(
図2参照)が設けられている。また、エンジン本体10は、燃料の噴射量を調整する燃料供給装置12(
図2参照)を有している。なお、エンジン本体10は、4ストロークエンジンであってもよく、ガスエンジンやガソリンエンジンであってもよい。以下の説明における「掃気」は、4ストロークエンジンの場合には「給気」と読み替えられる。
【0039】
主過給機20は、エンジン本体10の運転状態にかかわらず常に運転する過給機である。エンジン本体10から排出された排気ガスは主排気配管21を介して主タービン22に供給される。主タービン22は供給された排気ガスのエネルギにより回転する。主タービン22と主コンプレッサ23は連結シャフト24により連結されており、主タービン22の回転に伴って主コンプレッサ23も回転する。主コンプレッサ23が回転すると、外部から取り込んだ空気(外気)が昇圧され、昇圧された外気は掃気ガスとして主掃気配管25を介してエンジン本体10に供給される。
【0040】
副過給機30は、エンジン本体10の運転状態に応じて、運転又は停止する過給機である。副過給機30はエンジン本体10に対して主過給機20と並列に配置されている。なお、副過給機30は、主過給機20と同じ仕様(容量)であってもよく異なる仕様であってもよい。エンジン本体10から排出された排気ガスは副排気配管31を介して副タービン32に供給される。副タービン32は供給された排気ガスのエネルギにより回転する。副タービン32と副コンプレッサ33は連結シャフト34により連結されており、副タービン32の回転に伴って副コンプレッサ33も回転する。副コンプレッサ33が回転すると、外部から取り込んだ空気(外気)が昇圧され、昇圧された外気は掃気ガスとして副掃気配管35および主掃気配管25を介してエンジン本体10に供給される。
【0041】
本実施形態では、副掃気配管35は主掃気配管25に連結されている。そして、主掃気配管25の副掃気配管35が連結されている部分よりも下流には掃気ガスを冷却するエアクーラ50が設けられている。ただし、掃気ガスを冷却しない場合及び過給機20、30ごとにエアクーラ50を設ける場合などには、副掃気配管35を主掃気配管25に連結せず、エンジン本体10に直接連結してもよい。なお、副過給機30には、副過給機30(副コンプレッサ33)の回転数を測定する副過給機回転計36が設けられている。また、副コンプレッサ33の出口付近には副コンプレッサ33によって昇圧された外気の圧力(副コンプレッサ出口圧)を測定する副コンプレッサ出口圧計37が設けられている。
【0042】
副タービン入口弁41は、副排気配管31に設けられており、副タービン32の入口側に位置する弁である。副コンプレッサ出口弁42は、副掃気配管35に設けられており、副コンプレッサ33の出口側に位置する弁である。副掃気配管35の副コンプレッサ出口弁42よりも上流側の部分には、放風配管44が連結されている。放風配管44は、副コンプレッサ33で昇圧された外気を外部へ導く配管である。放風弁43は、この放風配管44に設けられている。上述した弁のうち、副タービン入口弁41及び副コンプレッサ出口弁42は、本実施形態においては全閉又は全開のいずれかに切り替えられる開閉弁であるが、開度の調整ができる調整弁であってもよい。これらの弁の開閉の切り替えには多少の時間がかかる(
図4参照)。一方、放風弁43は、本実施形態では、開度の調整が可能である調整弁である。ただし、放風弁43は開閉弁であってインチング操作(開指令/閉指令による操作)により開度を調整してもよい。
【0043】
<制御系の構成>
次に、エンジンシステム100の制御系の構成について説明する。
図2は、エンジンシステム100の制御系のブロック図である。
図2に示すように、エンジンシステム100は、エンジンシステム100全体を制御する制御装置60を備えている。制御装置60は、例えばCPU、ROM、RAM等によって構成されている。
【0044】
制御装置60は、エンジン回転計11、燃料供給装置12、副過給機回転計36、及び副コンプレッサ出口圧計37と電気的に接続されている。制御装置60は、これらの機器から送信される信号に基づいて、エンジン回転数、燃料噴射量、副過給機回転数、及び副コンプレッサ出口圧等を取得する。制御装置60は、上記の各機器からの入力信号に基づいて種々の演算を行い、エンジンシステム100の各部を制御する。本実施形態では、制御装置60は、副タービン入口弁41、副コンプレッサ出口弁42、及び放風弁43と電気的に接続されており、各種の演算等の結果に基づいて、これらの機器へ制御信号を送信する。
【0045】
<運転台数削減制御>
続いて、主過給機20及び副過給機30が運転した状態から、主過給機20を運転させたまま副過給機30を停止させ、過給機の運転台数を減らす制御(運転台数削減制御)について説明する。
図3は、運転台数削減制御の方法を示したフローチャートである。以下で説明する演算及び制御は、制御装置60によって遂行される。また、
図4は副タービン入口弁41、副コンプレッサ出口弁42、及び放風弁43の各開度を示したタイムチャートである。なお、
図4は概念的に示すものであり、実際の値とは必ずしも一致しない(以下で説明する他のタイムチャート及びグラフも同様)。
【0046】
まず、処理が開始されると、制御装置60は、副タービン入口弁41と副コンプレッサ出口弁42を同時に閉じる(ステップS1)。これにより、副タービン32にエンジン本体10から排出される排気ガスが供給されなくなり、副過給機30の回転数が次第に低下していく。なお、
図4に示すように、これらの弁が全開から全閉となるには多少の時間がかかる。このため、副タービン入口弁41を閉じ始めてから副過給機30が停止するまでには多少の時間がかかることから、副タービン入口弁41から少し遅れて副コンプレッサ出口弁42を閉じ始めたとしても、主コンプレッサ23で昇圧した外気が副コンプレッサ33へ逆流するのを防止することができる。
【0047】
続いて、制御装置60は、副過給機回転計36及び副コンプレッサ出口圧計37から送信される信号を読み込み、これらの信号に基づいて副過給機回転数及び副コンプレッサ出口圧を取得する(ステップS2)。
【0048】
続いて、制御装置60は、ステップS2で取得した副過給機回転数に基づいて停止時基準圧を決定する(ステップS3)。ここで、
図5は、副過給機30の各回転数における副コンプレッサ流量と副コンプレッサ出口圧の関係を示した図、すなわち各回転数における圧力曲線を示した図(コンプレッサマップ)である。図中の太線は各回転数においてサージが発生する点をつないだ線(サージライン)を示している。図中の破線は、サージラインから所定の間隔(サージマージン)を有するように予め設定された停止時基準圧ラインである。上述した「停止時基準圧」は、この圧力曲線と停止時基準圧ラインとが交差する点の圧力である。制御装置60は、副過給機30の回転数ごとの停止時基準圧のデータを記憶している。そのため、取得した副過給機30の回転数に基づいて停止時基準圧を決定することができる。
【0049】
続いて、制御装置60は、副コンプレッサ出口圧が、停止時基準圧よりも大きいか否かを判定する(ステップS4)。すなわち、副コンプレッサ33にサージが発生する危険性があるか否かを判定する。副コンプレッサ出口圧が停止時基準圧以下であると判定した場合には(ステップS4でNO)、ステップS5へ進む。つまり、副コンプレッサ33にサージが発生する可能性がないと判断した場合にはステップS5へ進む。一方、副コンプレッサ出口圧が停止時基準圧よりも大きいと判断した場合には(ステップS4でYES)、ステップS6へ進む。つまり、副コンプレッサ33にサージが発生する可能性があると判断した場合にはステップS6へ進む。
【0050】
副コンプレッサ33にサージが発生する可能性がないとしてステップS5へ進んだ場合、制御装置60は、放風弁43に制御信号を送信して放風弁43の開度を減少させる。一方、副コンプレッサ33にサージが発生する可能性があるとしてステップS6へ進んだ場合、制御装置60は、放風弁43に制御信号を送信して放風弁43の開度を増加させる。なお、本実施形態では、副コンプレッサ出口圧と停止時基準圧との差に応じて放風弁43の開度の変化量を決定する。つまり、副コンプレッサ出口圧と停止時基準圧との差が小さくなるに従って放風弁43の開度の増減量を小さくする。
【0051】
続いて、ステップS5又はS6を経た後、制御装置60は、副過給機30が停止したか否かを判定する(ステップS7)。つまり、副過給機回転数がゼロになったか否かを判定する。副過給機30が停止したと判定した場合には(ステップS7でYES)、処理を終了する。一方、副過給機30が停止していないと判定した場合には(ステップS7でNO)、ステップS2に戻ってステップS2〜S8を繰り返す。
【0052】
図4のうち放風弁43の開度のタイムチャートを示す図(
図4の下図)において、実線が本実施形態における放風弁43の開度を示しており、破線が副タービン入口弁41及び副コンプレッサ出口弁42を閉じ始めるのと同時に放風弁43が開き始めた場合(早期開放の場合)の放風弁43の開度を示している。なお、前述した特許文献1乃至3に記載のものは、破線で示すものよりもさらに早いタイミングで放風弁43を開き始めている。この図で示すように、本実施形態の場合は、副コンプレッサ33にサージが発生する可能性がないときには放風弁43が開き始めないため、放風弁43の開き始めのタイミングを早期開放の場合に比べて遅らせることができる。さらに、本実施形態では、放風弁43は一定の割合で開度が大きくなるのではなく、サージが発生する可能性が低いときには開度を減少させることもある。これにより、サージが発生しない範囲で、放風弁43の開度を可能な限り小さくすることができる。
【0053】
図6は、副コンプレッサ出口圧と掃気圧の時間変化を示した図である。
図6において、実線は本実施形態の場合を示しており、破線は早期開放の場合を示している(
図4の下図参照)。まず、
図6のうち副コンプレッサ出口圧の時間変化を示す図(
図6の上図)に着目すると、本実施形態の場合は早期開放の場合に比べ、放風弁43の開き始めが遅いことから、副コンプレッサ出口圧が低下し始めるのも遅くなることがわかる。
【0054】
続いて、
図6のうち掃気圧の時間変化を示す図(
図6の下図)に着目すると、本実施形態の場合は早期開放の場合に比べ、掃気圧の落ち込みが少ない。これは、本実施形態の場合、副コンプレッサ出口弁42が閉まり始めた後であっても、副コンプレッサ33で昇圧した外気を掃気ガスとして利用できるからである。
【0055】
このように、本実施形態によれば、過給機の運転台数を減らす際、従来のようにサージの発生を考慮して放風弁43を早期に開き始める場合に比べ、副過給機30を停止する間だけでなく停止した後においても、掃気圧の低下を抑制することができる。よって、本実施形態によれば従来の場合に比べて、エンジン本体10を効率よく運転することができる。
【0056】
<運転台数増加制御>
続いて、主過給機20が運転し副過給機30が停止している状態から、主過給機20を運転させたまま副過給機30を運転させ、過給機の運転台数を増やす制御(運転台数増加制御)について説明する。
図7は、運転台数増加制御の方法を示したフローチャートである。以下で説明する演算及び制御は、制御装置60によって遂行される。また、
図8は副タービン入口弁41、副コンプレッサ出口弁42、及び放風弁43の開度を示したタイムチャートである。
【0057】
まず、処理が開始されると、制御装置60は、副タービン入口弁41を開放する(ステップS11)。これにより、副タービン32に排気ガスが供給され副過給機30は運転し始める。なお、副コンプレッサ出口弁42は、副タービン入口弁41と同時には開放しない。副過給機30の回転数が少なく副コンプレッサ出口圧が小さい状態で副コンプレッサ出口弁42を開いてしまうと、主コンプレッサ23で昇圧された外気が副コンプレッサ33に逆流してしまうからである。
【0058】
続いて、制御装置60は、エンジン回転計11、燃料供給装置12、副過給機回転計36、及び副コンプレッサ出口圧計37から送信される信号を読み込み、これらの信号に基づいてエンジン負荷(エンジン回転数及び燃料噴射量から推定)、副過給機回転数、及び副コンプレッサ出口圧を取得する(ステップS12)。
【0059】
続いて、制御装置60は、切替回転数を決定する(ステップS13)。ここでいう「切替回転数」とは、副コンプレッサ出口弁42を開放し始めるときの副過給機回転数である。切替回転数はエンジン負荷に応じて決定する。具体的には、制御装置60は、
図9に示すグラフに対応するマップデータを記憶しており、取得したエンジン負荷に基づいて切替回転数を決定する。なお、
図9に示すように、エンジン負荷が大きくなるに従って切替回転数は大きくなる。
【0060】
続いて、制御装置60は、ステップS12で取得した副過給機回転数が、ステップS13で決定した切替回転数以上か否かを判定する(ステップS14)。副過給機回転数が切替回転数以上であると判定したとき(ステップS14でYES)、副コンプレッサ出口弁42の開放を始め(ステップS15)、その後ステップS16へ進む。一方、副過給機回転数が切替回転数よりも小さいと判定したとき(ステップS14でNO)、ステップS15を経ずにステップS16に進む。
【0061】
続いて、制御装置60は、ステップS12で取得した副過給機回転数に基づいて運転時基準圧を決定する(ステップS16)。運転時基準圧は、前述した停止時基準圧(
図3のステップS3参照)と同様に予め設定された所定量のサージマージンを有する圧力である。制御装置60は、副過給機回転数ごとの運転時基準圧のデータを記憶している。そのため、取得した副過給機回転数に基づいて運転時基準圧を決定することができる。なお、各副過給機回転数において、運転時基準圧と停止時基準圧とを同じ値にしてもよい。
【0062】
続いて、制御装置60は、副コンプレッサ出口圧が、運転時基準圧よりも大きいか否かを判定する(ステップS17)。すなわち、副コンプレッサ33にサージが発生する危険性があるか否かを判定する。副コンプレッサ出口圧が運転時基準圧以下であると判定した場合には(ステップS17でNO)、ステップS18へ進む。つまり、副コンプレッサ33にサージが発生する可能性がないと判断した場合にはステップS18へ進む。一方、副コンプレッサ出口圧が運転時基準圧よりも大きいと判断した場合には(ステップS17でYES)、ステップS19へ進む。つまり、副コンプレッサ33にサージが発生する可能性があると判断した場合にはステップS19へ進む。
【0063】
副コンプレッサ33にサージが発生する可能性がないとしてステップS18へ進んだ場合、制御装置60は、放風弁43に制御信号を送信して放風弁43の開度を減少させる。一方、副コンプレッサ33にサージが発生する可能性があるとしてステップS19へ進んだ場合、制御装置60は、放風弁43に制御信号を送信して放風弁43の開度を増加する。なお、放風弁43の開度を増加させるとき、副コンプレッサ出口圧と運転時基準圧との差が小さくなるに従って、放風弁43の開度の増減量を小さくする。
【0064】
続いて、ステップS18又はS19を経た後、制御装置60は、副コンプレッサ出口弁42が全開になったか否かを判定する(ステップS20)。なお、副コンプレッサ出口弁42が全開になったか否かは、副コンプレッサ出口弁42の全閉/全開確認用リミットスイッチや開放が開始されてからの時間等によって判断することができる。副コンプレッサ出口弁42が全開になったと判定した場合には(ステップS20でYES)、処理を終了する。一方、副コンプレッサ出口弁42が全開になっていないと判定した場合には(ステップS20でNO)、ステップS12に戻ってステップS12〜S20を繰り返す。
【0065】
以上のとおり、本実施形態の運転台数増加制御によれば、サージが発生しない範囲で可能な限り放風弁43の開度(全閉も含む)が小さくなるように制御される。そのため、副コンプレッサ33で昇圧した外気は、外部に排出されるのが抑えられて、副コンプレッサ出口弁42が開き始めるとすぐに掃気ガスとしてエンジン本体10に供給される。そのため、掃気圧を高めることができ、エンジン本体10を効率よく運転することができる。
【0066】
なお、本実施形態の運転台数増加制御では、エンジン負荷及び副過給機回転数に基づいて副コンプレッサ出口弁42を開放するタイミングを決定している。ただし、副コンプレッサ出口弁42を開放するタイミングは、これに限られない。例えば
図10に示すように副コンプレッサ出口弁42の前後差圧を測定する差圧計38を設け、当該前後差圧に基づいて副コンプレッサ出口弁42を開放するタイミングを決定してもよい。具体的には、副コンプレッサ出口弁42の上流側の圧力が下流側の圧力よりも高くなったときに副コンプレッサ出口弁42を開放してもよい。
【0067】
また、
図10に示すように、エアクーラ50とエンジン本体10の間に掃気圧を測定する掃気圧計39を設け、副コンプレッサ出口圧と掃気圧の差圧が所定の閾値を越えたときに、副コンプレッサ出口弁42を開放するようにしてもよい。さらに、副コンプレッサ出口弁42として、副コンプレッサ33で昇圧した外気がエンジン本体10へ流れるが、主コンプレッサ23で昇圧した外気が副コンプレッサ33に流れないような逆止弁を採用してもよい。
【0068】
(第2実施形態)
次に、第2実施形態について説明する。本実施形態では、運転台数増加制御の方法が第1実施形態の場合と異なる。以下、本実施形態の運転台数増加制御について説明する。
【0069】
図11は、本実施形態の運転台数増加制御の方法を示したフローチャートである。また、
図12は、副タービン入口弁41、副コンプレッサ出口弁42、及び放風弁43の開度、並びに副過給機30の回転数を示したタイムチャートである。
【0070】
図11に示すように、運転台数増加制御の処理が開始されると、制御装置60は、所定の開度となるように放風弁43の開放を開始し(ステップS21)、所定時間後に副タービン入口弁41の開放を開始する(ステップS22)。副タービン入口弁41の開放を開始することにより、副過給機30は運転し始める(
図12参照)。
【0071】
続いて、制御装置60は、エンジン回転計11、燃料供給装置12、及び副過給機回転計36から送信される信号を読み込み、これらの信号に基づいてエンジン負荷(エンジン回転数及び燃料噴射量から推定)及び副過給機回転数を取得する(ステップS23)。
【0072】
続いて、制御装置60は、第1切替動作点(副コンプレッサ流量と副コンプレッサ出口圧)を決定する(ステップS24)。「第1切替動作点」は、所定のサージマージンを有する副コンプレッサ33の動作点であって、放風弁43を閉じ始める点である。放風弁43の開閉によって副コンプレッサ33の動作点は大きく変化するため、放風弁43を閉じ始めるタイミングが異なれば副コンプレッサ33の動作曲線(動作点の軌跡)も異なる。本実施形態では、副コンプレッサ33がある動作点に達した時に放風弁43を閉じ始めれば、放風弁43を閉じ始める直前から副コンプレッサ出口弁42を開き始める直前までの間にサージが生じない、つまりその間に動作曲線がサージ領域に達しないという条件を満たす動作点を第1切替動作点として設定する。ただし、第1切替動作点は、エンジン負荷に応じて変化する。なお、第1切替動作点における副コンプレッサ出口圧及び副コンプレッサ流量をそれぞれ第1切替圧及び第1切替流量とする(
図15参照)。制御装置60は、
図13に示す第1切替圧のグラフに対応するマップデータを記憶しており、このマップデータとステップS23で取得したエンジン負荷に基づいて第1切替圧を決定する。同様に、制御装置60は、
図14に示す第1切替流量のグラフに対応するマップデータを記憶しており、このマップデータとステップS23で取得したエンジン負荷に基づいて第1切替流量を決定する。なお、
図13、
図14に示すように、エンジン負荷が大きくなるほど第1切替圧及び第1切替流量は大きくなる。
【0073】
続いて、制御装置60は、第1切替回転数を決定する(ステップS25)。本実施形態では、副コンプレッサ33の第1切替動作点を通過する圧力曲線の副過給機回転数を第1切替回転数とする。例えば、
図15で示すように第1切替動作点である点AをX%回転数の圧力曲線が通過する場合には、第1切替回転数をX%回転数とする。なお、エンジンの運転状況などによっては、副過給機回転数が第1切替回転数に達したときの副コンプレッサ33の動作点が第1切替動作点と異なる場合がある。ただし、第1切替動作点は所定のサージマージンを有しているため、実際の動作点が第1切替動作点から多少ずれたとしても、放風弁43を閉じ始める直前から副コンプレッサ出口弁42を開き始める直前までの間は副コンプレッサ33のサージを回避することができる。
【0074】
続いて、制御装置60は、副過給機回転数が第1切替回転数以上であるか否かを判定する(ステップS26)。副過給機回転数が第1切替回転数以上であると判定した場合には(ステップS26でYES)、放風弁43の閉止を開始する(ステップS27;
図12参照)。一方、副過給機回転数が第1切替回転数よりも小さいと判定した場合には(ステップS26でNO)、ステップS23に戻ってステップS23〜S26を繰り返す。
【0075】
ステップS27を経て放風弁43の閉止を開始した後は、制御装置60は、再度、エンジン回転計11、燃料供給装置12、及び副過給機回転計36から送信される信号を読み込み、これらの信号に基づいてエンジン負荷及び副過給機回転数を取得する(ステップS28)。
【0076】
続いて、制御装置60は、第2切替動作点を決定する(ステップS29)。「第2切替動作点」は、所定のサージマージンを有する副コンプレッサ33の動作点であって、副コンプレッサ出口弁42を開き始める点である。第2切替動作点は、第1切替動作点と同様にして決定する。すなわち、副コンプレッサ33がある動作点に達した時に副コンプレッサ出口弁42を開き始めれば、副コンプレッサ出口弁42を開き始める直前から開き終わる(切替完了)までの間にサージが生じない、つまりその間に動作曲線がサージ領域に達しないという条件を満たす動作点を第2切替動作点として設定する。第2切替動作点も第1切替動作点と同様に、エンジン負荷に応じて変化する。なお、第2切替動作点における副コンプレッサ出口圧及び副コンプレッサ流量をそれぞれ第2切替圧及び第2切替流量とする(
図15参照)。制御装置60は、
図13、
図14に示す第2切替圧のグラフ及び第2切替流量に対応するマップデータ及びエンジン負荷に基づいて、第2切替圧及び第2切替流量を決定する。なお、エンジン負荷が同じである場合、第2切替圧及び第2切替流量は、それぞれ第1切替圧及び第1切替流量よりも高い値に決定される。
【0077】
続いて、制御装置60は、第2切替回転数を決定する(ステップS30)。第1切替回転数の場合と同様に、副コンプレッサ33の第2切替動作点を通過する圧力曲線の副過給機回転数を第2切替回転数とする。例えば、
図15で示すように第2切替動作点である点BをY%回転数の圧力曲線が通過している場合には、第2切替回転数をY%回転数とする。なお、第2切替圧及び第2切替流量は、それぞれ第1切替圧及び第1切替流量よりも大きいことから、第2切替回転数は第1切替回転数よりも高くなる。また、エンジンの運転状況などによっては、副過給機回転数が第2切替回転数に達したときの副コンプレッサの動作点が第2切替動作点と異なる場合がある。ただし、第2切替動作点は所定のサージマージンを有しているため、実際の動作点が第2切替動作点から多少ずれたとしても、副コンプレッサ出口弁42を開き始める直前から開き終わるまでの間は副コンプレッサ33のサージを回避することができる。
【0078】
続いて、制御装置60は、副過給機回転数が第2切替回転数以上であるか否かを判定する(ステップS31)。副過給機回転数が第2切替回転数以上であると判定した場合には(ステップS31でYES)、副コンプレッサ出口弁42の開放を開始し(ステップS32;
図12参照)、その後に処理を終了する。一方、副過給機回転数が第2切替回転数よりも小さいと判定した場合には(ステップS31でNO)、ステップS28に戻ってステップS28〜S31を繰り返す。
【0079】
本実施形態の運転台数増加制御は以上のとおりである。運転台数増加制御を以上のように行うことにより、
図12に示すように、放風弁43が所定の開度で開いた状態で副タービン入口弁41の開放が開始された後、放風弁43の閉止が開始し、さらにその後に副コンプレッサ出口弁42の開放が開始されることになる。つまり、放風弁43がある程度閉まった状態で副コンプレッサ出口弁42の開放が開始されるため、副コンプレッサ33で昇圧した外気が放風弁43を介して外部に放出されるのを抑えることができる。また、副コンプレッサ33で外気が十分に昇圧されるため、主コンプレッサ23で昇圧した外気が副コンプレッサ33へ逆流することを抑えることができる。よって、エンジン本体10の効率が低下するのを抑えることができる。また、本実施形態の運転台数増加制御では、副コンプレッサ出口弁42及び放風弁43の開閉が、副過給機回転数に基づいて制御されるため、副コンプレッサ出口圧力の取得を省略することができる。そのため、例えば、運転台数減少制御をタイムスケジュールに基づいて行うなど、運転台数増加制御のみならず運転台数減少制御においても副コンプレッサ出口圧力を用いない場合には、
図1における副コンプレッサ出口圧計37を省略することができる。
【0080】
なお、以上では、副過給機回転数が第1切替回転数以上であると判定した場合には、放風弁43の閉止を開始することを説明したが(ステップS26、S27)、この放風弁43を閉じる速度、すなわち放風弁43の開度の減少率(変化率)は一定でなくてもよい。例えば、副過給機回転数と第1切替回転数の差が大きいほど放風弁43を閉じる速度を大きく、すなわち放風弁43の開度の減少量を大きくしてもよい。かかる構成によれば、副コンプレッサ33のサージが発生する可能性が低い場合に、より素早く放風弁43を閉じることができるため、エンジン本体10の効率の低下をさらに抑えることができる。
【0081】
(第3実施形態)
次に、第3実施形態について説明する。本実施形態は、第2実施形態において運転台数増加制御に所定のステップを追加したものである。以下、本実施形態の第2実施形態との相違部分を中心に説明する。
【0082】
図16は、本実施形態に係るエンジンシステム200の全体の概略構成図である。
図16に示すように、本実施形態に係るエンジンシステム200では、主掃気配管25に主コンプレッサ出口圧計40が設けられているが、それ以外は
図1に示す第1実施形態及び第2実施形態に係るエンジンシステム100と同じ構成である。主コンプレッサ出口圧計40は主コンプレッサ23の出口側であってエアクーラ50の上流に位置している。主コンプレッサ出口圧計40は制御装置60と電気的に接続されており、制御装置60は主コンプレッサ出口圧計40から送信される信号に基づいて、主コンプレッサ出口圧を取得する。
【0083】
図17は、本実施形態の運転台数増加制御の方法を示したフローチャートであり、第2実施形態の
図11に相当する。
図17と
図11を対比すればわかるように、本実施形態の運転台数増加制御は、第2実施形態の運転台数増加制御にステップS41、S42を追加したものである。第2実施形態では、制御装置60がステップS29において副過給機回転数が第2切替回転数以上であると判定した場合、副コンプレッサ出口弁42の開放を開始していたが、本実施形態ではステップS31において副過給機回転数が第2切替回転数以上であると判定した場合、すぐに副コンプレッサ出口弁42の開放を開始せずにステップS41へ進む。
【0084】
ステップS41では、制御装置60は、主コンプレッサ出口圧計40から送信される信号を読み込み、この信号に基づいて主コンプレッサ出口圧を取得する。
【0085】
続いて、制御装置60は、ステップS41で取得した主コンプレッサ出口圧が、ステップS29において第2切替動作点を決定する際に用いた第2切替圧以下であるか否かを判定する(ステップS42)。主コンプレッサ出口圧が第2切替圧以下である場合は(ステップS42でYES)、副コンプレッサ出口弁42の開放を開始し(ステップS32)、その後に処理を終了する。一方、主コンプレッサ出口圧が第2切替圧よりも大きいと判定した場合には(ステップS42でNO)、ステップS28に戻ってステップS28〜S31、S41、S42を繰り返す。
【0086】
以上のとおり、本実施形態では、副過給機回転数が第2切替回転数以上であることに加え、主コンプレッサ出口圧が第2切替圧以下であるときに、はじめて副コンプレッサ出口弁42の開放を開始する。
【0087】
ここで、船舶が一定速度で航行する場合であっても、海の状況によってはエンジン負荷が大きく変動する場合がある。エンジン負荷が下がったとき主コンプレッサ出口圧は下がるよう制御されるが、エンジン負荷が下がってから主コンプレッサ出口圧が下がるまでにはある程度の時間がかかる。そのため、エンジン負荷が下がるのと同時に運転台数増加制御を行った場合、主コンプレッサ出口圧はまだ高い状態にあるため主コンプレッサ23で昇圧した外気が副コンプレッサ33側へ逆流してしまうおそれがある。
【0088】
これに対し、本実施形態では、主コンプレッサ出口圧が第2切替圧以下であるときにはじめて副コンプレッサ出口弁42の開放を開始する。もともと、副コンプレッサ出口圧が第2切替圧力となった時に副コンプレッサ出口弁42の開放を開始するのであるから、副コンプレッサ出口弁42の開放が開始されたときの副コンプレッサ出口圧は第2切替圧である。そのため、本実施形態のように、主コンプレッサ出口圧が第2切替圧力以下であれば、副コンプレッサ出口弁42の開放が開始されたときには、主コンプレッサ出口圧は副コンプレッサ出口圧より小さいことになる。よって、本実施形態によれば、エンジン負荷が変動するような場合であっても、主コンプレッサ23で昇圧した外気が副コンプレッサ33側へ逆流するようなことはない。
【0089】
なお、本実施形態では、主コンプレッサ出口圧計40を用いて主コンプレッサ出口圧を取得したが、例えば、主掃気配管25のエアクーラ50よりも下流に掃気圧計(
図10の符号39参照)を設け、その掃気圧計が測定した掃気圧に基づいて主コンプレッサ出口圧を取得(推定)してもよい。この点は後述の第4実施形態の場合も同様である。
【0090】
(第4実施形態)
次に、第4実施形態について説明する。本実施形態は、第2実施形態において第1切替回転数および第2切替回転数を決定する方法が異なるものである。以下、本実施形態における第1切替回転数および第2切替回転数の決定方法を中心に説明する。
【0091】
本実施形態に係るエンジンシステムの全体構成は、
図16に示す第3実施形態のエンジンシステム200と基本的に同じである。すなわち、本実施形態に係るエンジンシステムでは主掃気配管25に主コンプレッサ出口圧計40が設けられている。
【0092】
図18は、本実施形態の運転台数増加制御の方法を示したフローチャートであり、第2実施形態の
図11に相当する。
図18と
図11を対比すればわかるように、本実施形態の運転台数増加制御は、第2実施形態の運転台数増加制御のステップS23、S28、S29をステップS51、S53、S54に変更し、ステップS52を追加したものである。
【0093】
第2実施形態ではステップS22を経た後、エンジン負荷及び副過給機回転数を取得していたところ(
図11のステップS23参照)、本実施形態では、主コンプレッサ出口圧計40及び副過給機回転計36から送信される信号を読み込み、これらの信号に基づいて「主コンプレッサ出口圧」及び副過給機回転数を取得する(ステップS51)。その後、制御装置60は、ステップS51で取得した主コンプレッサ出口圧に基づいてエンジン負荷を推定する(ステップS52)。具体的には、制御装置60は、
図19に示すグラフに対応するマップデータを記憶しており、このマップデータと取得したコンプレッサ出口圧に基づいてエンジン負荷を推定する。なお、
図19に示すように、コンプレッサ出口圧が大きくなるに従って推定されるエンジン負荷は大きくなる。
【0094】
その後は、第2実施形態と同様に、推定したエンジン負荷に基づいて第1切替動作点を決定し(ステップS24)、第1切替回転数を決定する(ステップS24)。なお、ステップS52で推定したエンジン負荷と実際のエンジン負荷とには多少の誤差があるものの、前述の通り第1切替動作点は所定のサージマージンを有しているため、当該誤差に起因して実際の動作点が第1切替動作点から多少ずれたとしても、放風弁43を閉じ始める直前から副コンプレッサ出口弁42を開き始める直前までの間は副コンプレッサ33のサージを回避することができる。
【0095】
また、本実施形態ではステップS27を経た後、ステップS51と同様に、主コンプレッサ出口圧及び副過給機回転数を取得する(ステップS53)。その後、制御装置60は、第2切替動作点を決定する(ステップS54)。具体的には、制御装置60は、ステップS53で取得した主コンプレッサ出口圧に等しい値を第2切替圧とする。そして、この第2切替圧においてサージが発生する副コンプレッサ33の流量に所定流量(マージン流量)を加えた値を第2切替流量とする。さらに、副コンプレッサ出口圧が第2切替圧で、かつ、副コンプレッサ流量が第2切替流量である動作点を第2切替動作点とする。すなわち、
図20で示すように、サージラインにおける第2切替圧(主コンプレッサ出口圧)の点(サージ点)である点Cをとり、この点Cから所定のマージン流量分だけ副コンプレッサ流量の増加側にシフトした点Dを第2切替動作点とする。
【0096】
続いて、
図18のステップS30において、副コンプレッサ33の第2切替動作点を通過する圧力曲線の副過給機回転数を第2切替回転数とする。例えば、
図20で示すように第2切替動作点である点DをZ%回転数の圧力曲線が通過している場合には、第2切替回転数をZ%回転数とする。第2切替回転数を決定した後の処理(ステップS31、S32)は、第2実施形態の場合と同様である。
【0097】
なお、上記のマージン流量の値は特に限定されない。マージン流量は一定であってもよく、主コンプレッサ出口圧が高くなるほど大きくするなど変動させてもよい。また、以上では、サージ点である点Cから所定のマージン流量だけ副コンプレッサ流量の増加側にシフトした点Dを第2切替動作点としたが、上記のシフトの方向は副コンプレッサ流量の増加方向のみに限られない。例えば、サージ点(点C)から所定のマージン流量だけ副コンプレッサ流量の増加側にシフトすると共に、所定のマージン圧力だけ副コンプレッサ圧力の減少側にシフトさせた点を第2切替動作点としてもよい。
【0098】
以上のとおり、本実施形態では、エンジン負荷ではなく主コンプレッサ出口圧に基づいて第1切替回転数および第2切替回転数を決定し、副過給機回転数がこの第1切替回転数以上であるとき放風弁43の閉止を開始し、この第2切替回転数以上であるとき副コンプレッサ出口弁42の開放を開始する。このように、放風弁43を閉止するタイミングおよび副コンプレッサ出口弁42を開放するタイミングは、エンジン負荷に影響されないため、エンジン負荷が変動する状況で稼働台数増加制御を行う場合は有効である。さらに、第1実施形態による運転台数減少制御を行うなど、運転台数増加制御のみならず運転台数減少制御においてもエンジン負荷を用いない場合には、
図2における制御装置60とエンジン回転計11および燃料供給装置12との接続を省略することができる。
【0099】
以上、第1乃至4実施形態について説明した。以上では、エンジンシステム100、200が一台の主過給機20と一台の副過給機30を備える場合について説明したが、エンジンシステム100、200は主過給機20を複数台備えていてもよく、副過給機30を複数台備えていてもよい。例えば、第1実施形態であれば、エンジンシステム100は、
図21に示すように、一台の主過給機20と、二台の副過給機30を備えていても良い。
エンジンシステムは、主過給機及び副過給機が運転した状態から、主過給機を運転させたまま副タービン入口弁及び副コンプレッサ出口弁を閉じて副過給機を停止させ、過給機の運転台数を減らす際、副過給機の回転数に基づいて所定のサージマージンを有する停止時基準圧を決定し、副コンプレッサの出口圧が前記停止時基準圧よりも高いときに放風弁を開放し、副コンプレッサの出口圧が停止時基準圧よりも低いときに放風弁を閉止する。