特許第5786146号(P5786146)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5786146モデル細胞チップ、モデル細胞チップによる薬効評価装置、および薬効評価方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5786146
(24)【登録日】2015年8月7日
(45)【発行日】2015年9月30日
(54)【発明の名称】モデル細胞チップ、モデル細胞チップによる薬効評価装置、および薬効評価方法
(51)【国際特許分類】
   C12M 3/00 20060101AFI20150910BHJP
   C12M 1/34 20060101ALI20150910BHJP
   C12Q 1/06 20060101ALI20150910BHJP
   G01N 27/28 20060101ALI20150910BHJP
   G01N 27/416 20060101ALI20150910BHJP
【FI】
   C12M3/00 Z
   C12M1/34 A
   C12Q1/06
   G01N27/28 301Z
   G01N27/46 386Z
   G01N27/28 P
【請求項の数】13
【全頁数】21
(21)【出願番号】特願2009-519241(P2009-519241)
(86)(22)【出願日】2008年6月6日
(86)【国際出願番号】JP2008060448
(87)【国際公開番号】WO2008152983
(87)【国際公開日】20081218
【審査請求日】2011年6月6日
(31)【優先権主張番号】特願2007-152696(P2007-152696)
(32)【優先日】2007年6月8日
(33)【優先権主張国】JP
(31)【優先権主張番号】特願2007-152711(P2007-152711)
(32)【優先日】2007年6月8日
(33)【優先権主張国】JP
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】505003986
【氏名又は名称】安田 賢二
(74)【代理人】
【識別番号】100092783
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 浩
(74)【代理人】
【識別番号】100126354
【弁理士】
【氏名又は名称】藤田 尚
(74)【代理人】
【識別番号】100104282
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 康仁
(72)【発明者】
【氏名】安田 賢二
(72)【発明者】
【氏名】杉山 篤
(72)【発明者】
【氏名】安東 賢太郎
(72)【発明者】
【氏名】野村 典正
(72)【発明者】
【氏名】寺薗 英之
(72)【発明者】
【氏名】金子 智行
(72)【発明者】
【氏名】福島 守
【審査官】 高山 敏充
(56)【参考文献】
【文献】 特開2006−112846(JP,A)
【文献】 国際公開第2005/047500(WO,A1)
【文献】 国際公開第2005/107644(WO,A1)
【文献】 国際公開第2005/082280(WO,A1)
【文献】 国際公開第2002/008387(WO,A1)
【文献】 特開2006−094703(JP,A)
【文献】 特開2006−115723(JP,A)
【文献】 日本薬理学雑誌,2002年,Vol. 119,pp.345-351
【文献】 日本薬理学雑誌,2003年,Vol. 121,pp.384-392
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12M 1/00−3/10
PubMed
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板、
該基板上に配置された心筋細胞集団保持領域にあって、安定した拍動を行うペースメーカーとして機能する複数個の心筋細胞を含む該心筋細胞集団であって、前記心筋細胞保持領域が複数の細胞保持部(CH)を備え、該細胞保持部(CH)の各々が該複数個の心筋細胞の1つを保持する、心筋細胞集団、
前記心筋細胞集団保持領域に隣接して前記基板上に配置されたhERG発現細胞保持領域であって、1つのhERG発現細胞を保持する細胞保持部(CH)を含み、該1つのhERG発現細胞が、前記心筋細胞集団の前記細胞保持部(CH)の1つの心筋細胞とインタラクションが可能なように構成され、前記心筋細胞集団の拍動が、前記hERG発現細胞に伝達するように構成されている、hERG発現細胞保持領域、
前記心筋細胞集団および前記hERG発現細胞の周囲を囲む前記基板上に形成された壁であって、該壁で囲われた領域が細胞培養液で満たされている、壁、
前記心筋細胞集団保持領域の1つの前記細胞保持部(CH)に設けられ、前記複数個の心筋細胞の一つが載置されている第1の微小電極、
前記hERG発現細胞の細胞保持部に設けられ、前記hERG発現細胞が載置されている第2の微小電極、
前記壁で囲われた領域内に設けられた比較電極、ならびに
前記第1および第2の微小電極のそれぞれに接続された引き出し線および前記比較電極に接続された引き出し線、
を備え、
前記第1の微小電極によって計測された前記心筋細胞の細胞電位により前記心筋細胞集団が安定した拍動を行いペースメーカーとして機能することが確認され、前記第2の微小電極によって計測された前記hERG発現細胞の細胞電位により前記hERG発現細胞保持領域に薬剤が添加された際に前記薬剤の影響による前記hERG発現細胞の細胞電位の変化が確認され、前記hERG発現細胞に対する前記薬剤の毒性が、前記第2の微小電極によって計測された前記hERG発現細胞の細胞電位の信号強度の低下として評価され得るように構成された、薬効を評価するため、または薬剤の心筋毒性を検査するためのチップ。
【請求項2】
基板、
前記基板上に配置された心筋細胞集団保持領域であって、安定した拍動を行うペースメーカーとして機能する心筋細胞を保持する複数個の細胞保持部(CH)を含む、心筋細胞集団保持領域、
前記心筋細胞集団保持領域に隣接して前記基板上に配置された細胞連絡チャネルであって、直列配列されて配置された複数の心筋細胞または線維芽細胞をそれぞれ保持する複数の細胞保持部(CH)を含み、1番目の細胞保持部(CH)が前記心筋細胞集団と隣接して前記心筋細胞集団の前記細胞保持部(CH)の1つの心筋細胞とインタラクションが可能なように構成され、前記心筋細胞集団の拍動が前記複数の心筋細胞または線維芽細胞に伝達するように構成されている、細胞連絡チャネル、
前記心筋細胞集団および前記細胞連絡チャネルの周囲を囲む前記基板上に形成された壁であって、該壁で囲われた領域が細胞培養液で満たされている、壁、
前記心筋細胞集団保持領域の1つの前記細胞保持部(CH)内に設けられ、前記複数個の心筋細胞の一つが載置されている第1の微小電極、
前記心筋細胞または前記線維芽細胞の前記細胞保持部(CH)の各々に配置された第nの微小電極であって、該第nの微小電極のそれぞれに該心筋細胞または該線維芽細胞が載置されている、第nの微小電極、
前記壁で囲われた領域内に設けられた比較電極、ならびに
前記第1および第nの微小電極のそれぞれに接続された引き出し線および前記比較電極に接続された引き出し線
を備え、
前記第1の微小電極によって計測した前記心筋細胞の細胞電位により前記心筋細胞集団が安定した拍動を行いペースメーカーとして機能することが確認され、前記第nの微小電極によって計測した前記心筋細胞または線維芽細胞の細胞電位の時間変化により前記細胞連絡チャネルに薬剤が添加された際に前記薬剤の影響による前記心筋細胞または線維芽細胞の細胞電位の伝搬速度の変化が確認され、前記心筋細胞または線維芽細胞に対する前記薬剤の毒性が、前記第nの微小電極によって計測された前記心筋細胞または線維芽細胞の拍動の伝播速度の遅延として評価され得るように構成された、薬効を評価するため、または薬剤の心筋毒性を検査するためのチップ。
【請求項3】
前記心筋細胞集団保持領域と前記hERG発現細胞保持領域との間に、前記心筋細胞集団の細胞の一つと前記hERG発現細胞とが連携するための開口部を有する障壁が設けられた請求項1記載のチップ。
【請求項4】
前記心筋細胞集団保持領域と前記細胞連絡チャネルとの間に、前記心筋細胞集団の細胞の一つと前記細胞連絡チャネルの端部の細胞とが連携するための開口部を有する障壁が設けられた請求項2記載のチップ。
【請求項5】
前記細胞保持部が前記細胞が通り抜けることの出来ない間隙を有する細胞非接着性の壁で囲われている請求項1〜4のいずれか記載のチップ。
【請求項6】
前記複数の細胞保持部(CH)を含む細胞連絡チャネルであって、該細胞保持部の各々がそれぞれ心筋細胞または線維芽細胞を保持する、細胞連絡チャネルを更に備える、請求項2または4記載のチップ。
【請求項7】
直列配列された前記複数の細胞保持部(CH)に保持された前記心筋細胞または線維芽細胞が、前記心筋細胞集団の1つの細胞と連携して前記心筋細胞集団の拍動を伝える、請求項6記載のチップ。
【請求項8】
前記基板が透明基板である、請求項1〜7のいずれか記載のチップ。
【請求項9】
請求項1〜8のいずれか記載のチップ、
細胞培養液を前記壁で囲われた領域内に供給し、および該領域から排出する培養液供給・排出手段、
前記hERG発現細胞に作用する薬剤を前記細胞培養液に加えるため、または前記心筋細胞もしくは前記線維芽細胞に作用する薬剤を前記細胞培養液に加えるための薬剤供給手段、ならびに
前記微小電極のそれぞれに接続された引き出し線と前記比較電極に接続された引き出し線とを用いて前記微小電極に載置されている細胞電位を計測し記録する手段、
を備える、薬効を評価するため、または心筋毒性を検査するための装置。
【請求項10】
X−Y方向に駆動されるとともに前記透明基板を載置するステージをさらに含む、請求項9記載の装置。
【請求項11】
請求項9または10記載の装置を使用して薬効を評価または薬剤の心筋毒性を検査するための方法であって、
a)前記細胞に作用する薬剤を前記細胞培養液に加える工程、
b)前記心筋細胞集団の心筋細胞に割り当てられた前記電極、および前記hERG発現細胞または直接配列された前記心筋細胞もしくは線維芽細胞の各々に割り当てられた前記電極の細胞電位を計測することによって、前記心筋細胞集団の発生する拍動の伝播の状態を決定する工程
を含む、方法。
【請求項12】
前記hERG発現細胞に作用する薬剤が前記細胞培養液に加えられたときに、前記心筋細胞集団の発生する拍動により前記hERG発現細胞により発生される電気信号の大きさの低減を評価することにより、前記hERG発現細胞に作用する薬剤の効果を評価する工程を含む、請求項11記載の方法。
【請求項13】
前記細胞に作用する薬剤が前記細胞培養液に加えられたときに、前記心筋細胞集団の発生する拍動が前記細胞連絡チャネルを伝播する速度を遅延させるか否かを評価して前記薬剤の心筋に対する毒性を検査する工程を含む、請求項11または12記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、モデル細胞チップ、モデル細胞チップによる薬効評価装置、および薬効評価方法に関する。特に、本発明は、hERG発現細胞を利用したモデル細胞チップおよびモデル細胞による薬効評価装置、ならびに心筋細胞に対する薬物の心筋毒性検査装置、心筋毒性検査チップおよび心筋毒性検査方法に関する。
【背景技術】
【0002】
細胞の状態の変化や、細胞の薬剤等に対する応答を観察するのに多用されているのはバイオアッセイである。従来のバイオアッセイでは、一般的に培養細胞を用いることが多い。この系では複数の細胞を用いてアッセイを行うので、細胞集団の値の平均値をあたかも1細胞の特性であるかの様に観察してきた。
【0003】
しかし、実際には細胞は集団の中で細胞周期が同調しているものはまれであり、各々の細胞が異なった周期でタンパク質を発現している。このため、刺激に対する応答の結果を解析するときにゆらぎの問題が常に付きまとう。
【0004】
すなわち、細胞の反応機構自体が普遍的に持つ応答のゆらぎが存在するために、常に、平均的なレスポンスしか得ることができない。これらの問題を解決するために、同調培養等の手法が開発されているが、常に同じステージにある細胞群を使用することは、常にそのような細胞を供給し続けなければならないということで、バイオアッセイを広く一般に広める障害となっている。
【0005】
また、細胞に対する刺激(シグナル)は、細胞周辺の溶液に含まれるシグナル物質、栄養、溶存気体の量によって与えられるものと、他の細胞との物理的接触・細胞間インタラクションによるものの2種類があることからも、ゆらぎについての判断が難しいのが実情であった。
【0006】
細胞の物理的接触・細胞間インタラクションの問題は、バイオアッセイを組織断片のような細胞塊で行うことである程度解決できる。しかし、この場合、培養細胞と異なり、常に均一な素性の細胞塊を得ることができない。そのため、得られるデータがばらついたり、集団の中に情報が埋もれてしまったりする問題がある。
【0007】
細胞群の細胞の1つ1つを最小構成単位とする情報処理モデルの計測のために、本願の発明者らは特開2006‐94703(特許文献1)に示すように、細胞を特定の空間配置の中に閉じ込めておくための複数の細胞培養区画を構成し、隣接する区画間は細胞の通り抜けることができない溝またはトンネルでお互いを連結するとともに、必要に応じて、溝またはトンネルあるいは細胞培養区画に、細胞の電位変化を計測するための複数の電極パターンを持つ構造の集合細胞マイクロアレー(バイオアッセイチップ)を提案した。
【特許文献1】特開2006‐94703号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
従来のバイオアッセイでは、細胞を組織断片として扱うか、培養細胞のように1細胞として扱うかのいずれかであった。細胞の数が多すぎると上記従来技術の項で述べたように、得られる情報が平均的なものになってしまい、薬剤などに対するレスポンスが正確に得られない問題がある。細胞を1細胞ずつ用いる場合は、本来、多細胞組織の細胞として機能している細胞を、引き離された独立した状態の細胞として使用するために、細胞同士のインタラクションの影響が現れなくなることとなり、やはり正確な薬剤レスポンスすなわちバイオアッセイデータを得る上で問題がある。
【0009】
細胞に対する薬剤の影響を評価する場合、1細胞単位で細胞電位、細胞形態が正確に計測できるとともに、細胞に対する薬剤の毒性検査が1細胞の細胞電位、細胞形態として正確に計測できるデバイスやシステムを開発することが重要である。
さらに、心筋細胞および線維芽細胞について見ると隣接する心筋細胞あるいは線維芽細胞からの拍動の伝播が、1細胞単位で細胞電位、細胞形態が正確に計測できるとともに、心筋細胞に対する薬物の毒性検査が1細胞の細胞電位、細胞形態として正確に計測できるデバイスやシステムを開発することが重要である。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、以下のモデル細胞チップ、該モデル細胞チップによる薬効評価装置、および該モデル細胞チップにより薬効評価することを含む薬効評価方法を提供する。
(1)基板、
該基板上に配置した複数個の細胞よりなる安定した拍動を行う心筋細胞の細胞集団のそれぞれの細胞を保持する複数個の細胞保持部、
該細胞集団の1細胞と連携して前記細胞集団の拍動を伝えられるhERG発現細胞を保持する細胞保持部、
前記基板上に形成され、前記細胞集団および前記hERG発現細胞周辺に細胞培養液を満たすための壁、
前記基板上に設けられ、前記細胞集団の一つの細胞を載置する微小電極、
前記基板上に設けられ、前記hERG発現細胞を載置する微小電極、
前記壁で囲われた領域内に設けられた比較電極、および
前記微小電極のそれぞれに接続された引き出し線および前記比較電極に接続された引き出し線、
を有することを特徴とするモデル細胞チップ。
(2)前記細胞集団のそれぞれの細胞を保持する複数個の細胞保持部の形成された領域と前記hERG発現細胞の細胞保持部の配置された領域との間に、前記細胞培養液の流れを阻害するとともに前記細胞集団の細胞の一つと前記hERG発現細胞が連携するための開口部を有する障壁が設けられた上記(1)記載のモデル細胞チップ。
(3)前記細胞保持部が前記細胞が通り抜けることの出来ない間隙を有する細胞非接着性の壁で囲われている上記(1)記載のモデル細胞チップ。
(4)基板、
該基板上に配置した複数個の細胞よりなる安定した拍動を行う心筋細胞よりなる細胞集団を保持する細胞保持部、
該細胞集団の1細胞と連携して前記細胞集団の拍動を伝えられるhERG発現細胞を保持する細胞保持部、
前記基板上に形成され、前記細胞集団および前記hERG発現細胞周辺に細胞培養液を満たすための壁、
前記基板上に設けられ、前記細胞集団の一つの細胞を載置する微小電極、
前記基板上に設けられ、前記hERG発現細胞を載置する微小電極、
前記壁で囲われた領域内に設けられた比較電極、
前記微小電極のそれぞれに接続された引き出し線および前記比較電極に接続された引き出し線、
前記細胞培養液を前記壁で囲われた領域内に供給し、および、排出する培養液供給、排出手段、
前記細胞に作用する薬剤を前記細胞培養液に加える手段、および
前記微小電極のそれぞれに接続された引き出し線と前記比較電極に接続された引き出し線とを用いて前記微小電極に載置されている細胞電位を計測し記録する手段、
を有することを特徴とするモデル細胞チップによる薬効評価装置。
(5)前記細胞集団の形成された領域と前記hERG発現細胞の配置された領域との間に、前記細胞培養液の流れを阻害するとともに前記細胞集団の細胞の一つと前記hERG発現細胞が連携するための開口部を有する障壁が設けられた上記(4)記載のモデル細胞チップによる薬効評価装置。
(6)前記細胞保持部が前記細胞が通り抜けることの出来ない間隙を有する細胞非接着性の壁で囲われている上記(4)記載のモデル細胞チップによる薬効評価装置。
(7)前記細胞培養液を供給する培養液供給手段に前記細胞に作用する薬剤を添加する手段が付加された上記(4)記載のモデル細胞チップによる薬効評価装置。
(8)基板、
該基板上に配置した複数個の細胞よりなる安定した拍動を行う心筋細胞よりなる細胞集団を保持する細胞保持部、
該細胞集団の1細胞と連携して前記細胞集団の拍動を伝えられるhERG発現細胞を保持する細胞保持部、
前記基板上に形成され、前記細胞集団および前記hERG発現細胞周辺に細胞培養液を満たすための壁、
前記基板上に設けられ、前記細胞集団の一つの細胞を載置する微小電極、
前記基板上に設けられ、前記hERG発現細胞を載置する微小電極、
前記壁で囲われた領域内に設けられた比較電極、
前記微小電極のそれぞれに接続された引き出し線および前記比較電極に接続された引き出し線、
前記細胞培養液を前記壁で囲われた領域内に供給し、および、排出する培養液供給、排出手段、
前記細胞に作用する薬剤を前記細胞培養液に加える手段、および
前記微小電極のそれぞれに接続された引き出し線と前記比較電極に接続された引き出し線とを用いて前記微小電極に載置されている細胞電位を計測し記録する手段、
を有することを特徴とするモデル細胞チップによる薬効評価装置を使用して、
前記細胞に作用する薬剤が前記細胞培養液に加えられたときに、前記細胞集団の発生する拍動が前記hERG発現細胞の発生する電気信号の振幅を低下させるか否かを評価することを含む、
前記細胞に作用する薬剤のモデル細胞チップによる薬効評価方法。
(9)基板、
該基板上に配置した複数個の細胞よりなる安定した拍動を行う心筋細胞からなる細胞集団のそれぞれの細胞を保持する複数個の細胞保持部を含む心筋細胞集団保持領域、
該細胞集団の1細胞と連携して前記細胞集団の拍動を伝えられるhERG発現細胞を保持する細胞保持部を含むhERG発現細胞保持領域、
前記基板表面と、前記心筋細胞集団保持領域および前記hERG発現細胞保持領域の周囲に形成された壁とによって規定される、細胞培養液を満たすための領域、
前記基板上に設けられ、前記心筋細胞集団保持領域の一つの細胞保持部において、心筋細胞を載置する微小電極、
前記基板上に設けられ、前記hERG発現細胞保持領域の一つの細胞保持部において、hERG発現細胞を載置する微小電極、
前記細胞培養液を満たすための領域内に設けられた比較電極、ならびに
前記微小電極のそれぞれに接続された引き出し線および前記比較電極に接続された引き出し線、
を備えるモデル細胞チップ。
(10)基板、
該基板上に配置した複数個の細胞よりなる安定した拍動を行う心筋細胞からなる細胞集団のそれぞれの細胞を保持する複数個の細胞保持部を含む心筋細胞集団保持領域、
該細胞集団の1細胞と連携して前記細胞集団の拍動を伝えられるhERG発現細胞を保持する細胞保持部を含むhERG発現細胞保持領域、
前記基板表面と、前記心筋細胞集団保持領域および前記hERG発現細胞保持領域の周囲に形成された壁とによって規定される、細胞培養液を満たすための領域、
前記基板上に設けられ、前記心筋細胞集団保持領域の一つの細胞保持部において、心筋細胞を載置する微小電極、
前記基板上に設けられ、前記hERG発現細胞保持領域の一つの細胞保持部において、hERG発現細胞を載置する微小電極、
前記細胞培養液を満たすための領域内に設けられた比較電極、ならびに
前記微小電極のそれぞれに接続された引き出し線および前記比較電極に接続された引き出し線、
前記細胞培養液を前記細胞培養液を満たすための領域内に供給し、および排出する培養液供給・排出手段、
前記hERG発現細胞に作用する薬剤を前記細胞培養液に加えるための細胞培養液供給手段、ならびに
前記微小電極のそれぞれに接続された引き出し線と前記比較電極に接続された引き出し線とを用いて前記微小電極に載置されている細胞電位を計測し記録する手段、
を備える、モデル細胞チップによる薬効評価装置。
(11)上記(10)記載のモデル細胞チップによる薬効評価装置を使用して、
前記hERG発現細胞に作用する薬剤が前記細胞培養液に加えられたときに、前記心筋細胞集団の発生する拍動により前記hERG発現細胞に発生する電気信号の振幅の低下を評価して、前記hERG発現細胞に作用する薬剤のモデル細胞チップによる薬効評価を行うことを含む、薬効評価方法。
【0011】
本発明は、1細胞を特定の空間配置の中に閉じ込めておく構成を利用して、適切なサイズの管理された心筋細胞集団を構成して安定した拍動を行わせ、ペースメーカーとして機能させる。さらに、この細胞集団とインタラクションするhERG発現細胞を一つのみ収納した細胞保持部を隣接して構成する。通常の培養液の下で心筋細胞集団の発生する拍動をhERG発現細胞に伝播させる。この伝播状態を、心筋細胞集団の一つの心筋細胞に対して設けた電極とhERG発現細胞に設けた電極によりそれぞれの細胞電位を計測する。
【0012】
次に、hERG発現細胞に作用する薬剤を添加した培養液の下で、上記と同じ計測、検出を行い、それぞれの計測、検出結果の比較により、hERG発現細胞に対する薬剤の毒性を評価する。
【0013】
本発明はまた、以下の心筋毒性検査装置、心筋毒性検査チップ、および心筋毒性検査方法を提供する。
(1)透明基板、
該透明基板上に配置した複数個の細胞よりなる安定した拍動を行う心筋細胞よりなる細胞集団、
該細胞集団の1細胞と連携して前記細胞集団の拍動を伝える複数個の直列配列された心筋細胞と線維芽細胞よりなる細胞連絡チャネル、
前記透明基板上に形成され、前記細胞集団および前記細胞連絡チャネルの周辺に細胞培養液を満たすための壁、
前記細胞培養液を前記壁で囲われた領域内に供給し、および、排出する培養液供給、排出手段、
前記細胞に作用する薬剤を前記細胞培養液に加える手段、
前記透明基板上に設けられ、前記細胞集団の一つの細胞を載置している微小電極、
前記透明基板上に設けられ、前記細胞連絡チャネルの細胞のいくつかをそれぞれ載置している分離された複数の微小電極、
前記壁で囲われた領域内に設けられた比較電極、
前記微小電極のそれぞれに接続された引き出し線と前記比較電極に接続された引き出し線とを用いて前記微小電極に載置されている細胞電位を計測し記録する手段、および
前記透明基板上に配置した一つの細胞の状態を光学的に計測する手段、
を有することを特徴とする心筋毒性検査装置。
(2)前記細胞が、前記細胞が通り抜けることの出来ない間隙を有する細胞非接着性の壁で囲われている上記(1)記載の心筋毒性検査装置。
(3)前記細胞集団の形成された領域と前記細胞連絡チャネルの形成された領域との間に、前記細胞培養液の流れを阻害するとともに前記細胞集団の細胞の一つと前記細胞連絡チャネルの端部の細胞が連携するための開口部を有する障壁が設けられた上記(1)記載の心筋毒性検査装置。
(4)前記細胞培養液を還流する培養液還流手段に前記細胞に作用する薬剤を添加する手段が付加された上記(1)記載の心筋毒性検査装置。
(5)透明基板、
該透明基板上に配置した複数個の細胞よりなる細胞集団、
該細胞集団の1細胞と連携して前記細胞集団の拍動を伝える複数個の直列配列された心筋細胞と線維芽細胞よりなる細胞連絡チャネル、
前記透明基板上に形成され、前記細胞集団および前記細胞連絡チャネルの周辺に細胞培養液を満たすための壁、
前記細胞培養液を前記壁で囲われた領域内に供給し、および、排出する培養液供給、排出手段、
前記細胞に作用する薬剤を前記細胞培養液に加える手段、
前記透明基板上に設けられ、前記細胞集団の一つの細胞を載置している微小電極、
前記透明基板上に設けられ、前記細胞連絡チャネルの細胞のいくつかをそれぞれ載置している分離された複数の微小電極、
前記壁で囲われた領域内に設けられた比較電極、
前記微小電極のそれぞれに接続された引き出し線と前記比較電極に接続された引き出し線とを用いて前記微小電極に載置されている細胞電位を計測し記録する手段、
X−Y方向に駆動されるとともに前記透明基板を載置するステージ、および
前記ステージ上に載置された前記透明基板上の細胞の状態を光学的に計測する手段、
を有することを特徴とする心筋毒性検査装置。
(6)前記細胞が、前記細胞が通り抜けることの出来ない間隙を有する細胞非接着性の壁で囲われている上記(5)記載の心筋毒性検査装置。
(7)前記細胞集団の形成された領域と前記細胞連絡チャネルの形成された領域との間に、前記細胞培養液の流れを阻害するとともに前記細胞集団の細胞の一つと前記細胞連絡チャネルの端部の細胞が連携するための開口部を有する障壁が設けられた上記(5)記載の心筋毒性検査装置。
(8)前記細胞培養液を供給する培養液供給手段に前記細胞に作用する薬剤を添加する手段が付加された上記(5)記載の心筋毒性検査装置。
(9)透明基板、
該透明基板上に配置した複数個の細胞よりなる細胞集団、
該細胞集団の1細胞と連携して前記細胞集団の拍動を伝える複数個の直列配列された心筋細胞と線維芽細胞よりなる細胞連絡チャネル、
前記透明基板上に形成され、前記細胞集団および前記細胞連絡チャネルの周辺に細胞培養液を満たすための壁、
前記透明基板上に設けられ、前記細胞集団の一つの細胞を載置している微小電極、
前記透明基板上に設けられ、前記細胞連絡チャネルの細胞のいくつかをそれぞれ載置している分離された複数の微小電極、
前記壁で囲われた領域内に設けられた比較電極、
前記微小電極のそれぞれに接続された引き出し線と前記比較電極に接続された引き出し線、
を有することを特徴とする心筋毒性検査チップ。
(10)前記細胞が、前記細胞が通り抜けることの出来ない間隙を有する細胞非接着性の壁で囲われている上記(9)記載の心筋毒性検査チップ。
(11)前記細胞集団の形成された領域と前記細胞連絡チャネルの形成された領域との間に、前記細胞培養液の流れを阻害するとともに前記細胞集団の細胞の一つと前記細胞連絡チャネルの端部の細胞が連携するための開口部を有する上記(9)記載の心筋毒性検査チップ。
(12)透明基板、
該透明基板上に配置した複数個の細胞よりなる細胞集団、
該細胞集団の1細胞と連携して前記細胞集団の拍動を伝える複数個の直列配列された心筋細胞と線維芽細胞よりなる細胞連絡チャネル、
前記透明基板上に形成され、前記細胞集団および前記細胞連絡チャネルの周辺に細胞培養液を満たすための壁、
前記細胞培養液を前記壁で囲われた領域内に供給し、および、排出する培養液供給、排出手段、
前記細胞に作用する薬剤を前記細胞培養液に加える手段、
前記透明基板上に設けられ、前記細胞集団の一つの細胞を載置している微小電極、
前記透明基板上に設けられ、前記細胞連絡チャネルの細胞のいくつかをそれぞれ載置している分離された複数の微小電極、
前記壁で囲われた領域内に設けられた比較電極、
前記微小電極のそれぞれに接続された引き出し線と前記比較電極に接続された引き出し線とを用いて前記微小電極に載置されている細胞電位を計測し記録する手段、および
前記透明基板上に配置した一つの細胞の状態を光学的に計測する手段、
を有する心筋毒性検査装置を使用して、
前記細胞に作用する薬剤が前記細胞培養液に加えられたときに、前記細胞集団の発生する拍動が前記細胞連絡チャネルを伝播する速度を遅延させるか否かを評価して前記細胞に作用する薬剤の心筋に対する毒性を検査する心筋毒性検査方法。
(13)透明基板、
該透明基板上に配置された、安定した拍動を行う心筋細胞を保持するための複数の細胞保持部(CH)を含む心筋細胞集団保持領域、
前記細胞保持部の1細胞と連携して前記心筋細胞集団の拍動を伝えるための、直列配列された複数の細胞保持部(CH)を含む細胞連絡チャネルであって、該細胞保持部(CH)が心筋細胞または線維芽細胞を保持する、細胞連絡チャネル、
前記透明基板表面と、前記心筋細胞集団保持領域および前記細胞連絡チャネルの周囲に形成された壁とによって規定される、細胞培養液を満たすための領域、
前記細胞培養液を前記壁で囲われた領域内に供給し、および排出するための培養液供給/排出手段、
前記細胞に作用する薬剤を前記細胞培養液に加えるための薬剤供給手段、
前記透明基板上に設けられ、前記心筋細胞集団保持領域の細胞保持部(CH)の一つにおいて心筋細胞を載置している微小電極、
前記透明基板上に設けられ、前記細胞連絡チャネルの複数の細胞保持部(CH)において前記心筋細胞または線維芽細胞を載置している複数の微小電極、
前記壁で囲われた領域内に設けられた比較電極、
前記微小電極のそれぞれに接続された引き出し線と前記比較電極に接続された引き出し線とを用いて前記微小電極に載置されている細胞電位を計測し記録する手段、ならびに
前記透明基板上に配置した細胞の状態を光学的に計測する手段、
を備える、心筋毒性検査装置。
(14)前記細胞保持部(CH,CH)の各々が、前記透明基板上に設けられた細胞非接着性の壁で囲まれた空間として規定され、該壁が前記細胞が通り抜けることの出来ない1以上の間隙を有する、上記(13)記載の心筋毒性検査装置。
(15)前記心筋細胞集団保持領域と前記細胞連絡チャネルの形成された領域との間に、前記細胞培養液の流れを阻害するとともに前記心筋細胞集団保持領域の複数の細胞保持部(CH)のうち一つに収容された細胞と前記細胞連絡チャネルの端部の細胞保持部(CH)の細胞とが連携するための開口部を有する障壁が設けられた、上記(13)記載の心筋毒性検査装置。
(16)透明基板、
該透明基板上に配置された複数個の細胞保持部(CH)を含む心筋細胞集団保持領域、
該心筋細胞集団保持領域の細胞保持部(CH)の1細胞と連携して前記心筋細胞集団の拍動を伝える複数個の直列配列された細胞保持部(CH)を含む細胞連絡チャネルであって、該細胞保持部(CH)が心筋細胞または線維芽細胞を保持する、細胞連絡チャネル、
前記透明基板表面と、前記心筋細胞集団保持領域および前記細胞連絡チャネルの周囲に形成された壁とによって規定される、細胞培養液を満たすための領域、
前記細胞培養液を前記壁で囲われた領域内に供給し、および排出するための培養液供給/排出手段、
前記細胞に作用する薬剤を前記細胞培養液に加えるための薬剤供給手段、
前記透明基板上に設けられ、前記心筋細胞集団保持領域の細胞保持部(CH)の一つにおいて心筋を載置している微小電極、
前記透明基板上に設けられ、前記細胞連絡チャネルの複数の細胞保持部(CH)において前記心筋細胞または線維芽細胞を載置している複数の微小電極、
前記壁で囲われた領域内に設けられた比較電極、
前記微小電極のそれぞれに接続された引き出し線と前記比較電極に接続された引き出し線とを用いて前記微小電極に載置されている細胞電位を計測し記録する手段、
X−Y方向に駆動されるとともに前記透明基板を載置するステージ、ならびに
前記ステージ上に載置された前記透明基板上の細胞の状態を光学的に計測する手段、
を備える、心筋毒性検査装置。
(17)透明基板、
該透明基板上に配置された、心筋細胞を保持するための複数個の細胞保持部(CH)を含む心筋細胞集団保持領域、
該細胞集団の1細胞と連携して前記心筋細胞集団の拍動を伝えるための、直列配列された複数個の細胞保持部(CH)を含む細胞連絡チャネルであって、該細胞保持部(CH)が心筋細胞または線維芽細胞を保持する、細胞連絡チャネル、
前記透明基板表面と、前記心筋細胞集団保持領域および前記細胞連絡チャネルの周囲に形成された壁とによって規定される、細胞培養液を満たすための領域、
前記透明基板上に設けられ、前記心筋細胞集団保持領域の細胞保持部(CH)の一つにおいて心筋細胞を載置している微小電極、
前記透明基板上に設けられ、前記細胞連絡チャネルの複数の細胞保持部(CH)において前記心筋細胞または線維芽細胞を載置している複数の微小電極、
前記壁で囲われた領域内に設けられた比較電極、および
前記微小電極のそれぞれに接続された引き出し線と前記比較電極に接続された引き出し線、
を備える、心筋毒性検査チップ。
(18)上記(13)〜(16)のいずれか記載の心筋毒性検査装置を使用して、前記細胞に作用する薬剤が前記細胞培養液に加えられたときに、前記心筋細胞集団の発生する拍動が前記細胞連絡チャネルを伝播する速度を遅延させるか否かを評価して前記細胞に作用する薬剤の心筋に対する毒性を検査する心筋毒性検査方法。
【0014】
本発明は、1細胞を特定の空間配置の中に閉じ込めておく構成を利用して、適切なサイズの管理された心筋細胞集団を構成して安定した拍動を行わせ、ペースメーカーとして機能させる。さらに、この細胞集団とインタラクションする心筋細胞および線維芽細胞の複数個の直列配列された拍動細胞連絡チャネルを構成する。通常の培養液の下で心筋細胞集団の発生する拍動を拍動細胞連絡チャネルに伝播させ、この伝播を直列配列された心筋細胞および線維芽細胞で次々に伝播させる。この伝播状態を、心筋細胞集団の一つの心筋細胞に対して設けた電極と直列配列された心筋細胞および線維芽細胞のいくつかに対してそれぞれ設けた電極により細胞電位を計測する。さらに、直列配列された拍動細胞の内の心筋細胞については拍動の状態を光学的に検出する。
【0015】
次に、心筋細胞に作用する薬剤を添加した培養液の下で、上記と同じ計測、検出を行い、それぞれの計測、検出結果の比較により、心筋細胞に対する薬物の毒性を評価する。
【発明の効果】
【0016】
本発明により、hERG発現細胞に対する薬剤の毒性を正確に計測、評価することができる。
【0017】
本発明により、心筋細胞および線維芽細胞の1細胞ごとの拍動の伝播を細胞電位、光学的データとして正確に計測、評価することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】本発明の第一の実施形態に係るモデル細胞チップおよびモデル細胞チップによる薬効評価装置の構造の1例を模式的に示した斜視図である。
図2図1に示すモデル細胞チップおよびモデル細胞チップによる薬効評価装置の細胞保持部CHの構成の1例を模式的に示す斜視図である。
図3】(a)、(b)、(c)および(d)は、本発明の第一の実施形態における細胞電位の計測に関する信号を示す図である。
図4】本発明の第二の実施形態に係る心筋毒性検査装置の構造の1例を模式的に示した斜視図である。
図5図4に示す心筋毒性検査装置の細胞保持部CHの構成の1例を模式的に示す斜視図である。
図6図6は、図4に示す心筋毒性検査装置の細胞保持部CHに保持された細胞を光学的に検出する光学系を説明する図である。
図7】(a)、(b)および(c)は、細胞電位の計測に関する信号を示す図である。それぞれ、(a)は細胞集団10の拍動による細胞電位であり、(b)は培養液に薬物が含まれない通常状態における標的細胞の拍動による細胞電位であり、(c)は培養液に薬物が含まれた状態における標的細胞の拍動による細胞電位である。横軸に時間を、縦軸に微小電極2と比較電極2との間に得られる細胞電位を示す。
図8】(a)、(b)および(c)は、細胞の拍動に伴う体積変化を光学系によって計測した結果に関する信号を示す図である。(a)は細胞集団10の細胞の拍動に伴う体積変化である。(b)は培養液に薬物が含まれない通常状態における標的細胞の拍動に伴う体積変化を上段に示し、下段にこれを電気信号として評価するために時間微分値として処理したときの波形を示す。(c)は培養液に薬物が含まれた状態における標的細胞の拍動に伴う体積変化を評価するための説明図であり、図8(a)、図8(b)に比し時間軸を拡大した形で示す。
図9】(a)は培養液に薬物が含まれない通常状態における標的細胞のNaイオン、Ca2+イオン、Kイオン成分の流入出量に伴う細胞電位変化を示す図であり、(b)は培養液に薬物が含まれた状態における標的細胞のNaイオン、Ca2+イオン、Kイオン成分の流入出量に伴う細胞電位変化を示す図である。
【符号の説明】
【0019】
(第一の実施形態(図1〜3))
1…透明基板、2…微小電極、2c…比較電極、2’…微小電極2の引き出し線、3,3,3及び3…アガロースゲルによる壁、4,4,4及び4…間隙、7…周辺を取り巻く壁、8,8,8…パイプ、PC…パソコン、Ms…パソコンの操作信号、10…心筋細胞、CH…細胞集団、CH…細胞保持部、10…hERG発現細胞、11…障壁、11…開口、100…モデル細胞チップによる薬効評価装置。
【0020】
(第二の実施形態(図4〜9))
1…透明基板、2…微小電極、2c…比較電極、2’…微小電極2の引き出し線、3,3,3及び3…アガロースゲルによる壁、4,4,4及び4…間隙、7…周辺を取り巻く壁、8,8,8…パイプ、PC…パソコン、Ms…パソコンの操作信号、10,10,10,10,−−−,10…心筋細胞あるいは線維芽細胞、15…光学観察装置の透明ステージ、16…X−Y駆動装置、18…Z駆動装置、CH、CH、CHおよびCH…細胞保持部、CCC…細胞連絡チャネル、10…細胞集団、11…障壁、11…開口、19…ダイクロイックミラー、20…バンドパスフィルタ、21…カメラ、22…光源、23…バンドパスフィルタ、24…シャッター、25…コンデンサレンズ、26…対物レンズ、100…心筋毒性検査装置。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
図1は本発明の第一の実施形態に係るモデル細胞チップおよびモデル細胞チップによる薬効評価装置の構造の1例を模式的に示した斜視図である。図2は、図1に示すモデル細胞チップおよびモデル細胞チップによる薬効評価装置の細胞保持部CHの構成の1例を模式的に示す斜視図である。
【0022】
100はモデル細胞チップによる薬効評価装置であり、透明基板1の上に構築されている部品を主体として構成される。透明基板1は光学的に透明な材料、たとえば、ガラス基板あるいはシリコン基板である。2は微小電極であり、たとえば、ITOによる透明電極とされ、透明基板1上に配置される。2’は微小電極2の引き出し線である。3,3,3及び3はアガロースゲルによる壁であり、微小電極2の周辺に間隙4,4,4及び4を介して配置される。アガロースゲルによる壁3,3,3及び3は中心部が切り欠かれて細胞収納部となる空間を形成している。アガロースゲルによる壁3,3,3及び3により形成される細胞収納部となる空間の透明基板1上には、必要により、微小電極2が配置される。微小電極2の有無に係らず、細胞収納部に一つの細胞10が収納できる。図2では、アガロースゲルによる壁3,3,3及び3により形成される細胞収納部となる空間の透明基板1上に、微小電極2が配置され、その上に心筋細胞10が収納されている。微小電極2には引き出し線2’が接続されて引き出されている様子を示す。微小電極2の細胞載置面および微小電極2を設けないで透明基板1に、直接、細胞を載置する場合の細胞載置面にはコラーゲン等の細胞が電極表面および透明基板に接着するのを助ける素材を塗っておくのがよい。アガロースゲルによる壁3,3,3及び3により形成される細胞収納部内の細胞は、アガロースゲルは細胞にとっては非接着性であるため、この壁3,3,3及び3の高さを細胞と同程度としても、壁を乗り越えて細胞10が移動することはない。また、アガロースゲルによる壁3,3,3及び3中心部が切り欠かれて形成される細胞収納部の周辺の間隙4,4,4及び4は細胞の大きさより小さいものとされるから、この間隙4,4,4及び4をすり抜けて細胞10が移動することはない。
【0023】
図1において、心筋細胞集団保持領域には、3×3個の細胞保持部CHが含まれ、細胞保持部CHはそれぞれ細胞収納部に一つの心筋細胞10を保持する。この3×3個の細胞保持部CHの心筋細胞10により構成される細胞集団CHは安定した拍動を行うペースメーカーとして機能するものである。細胞集団CHでは、一つの細胞保持部CHのみに微小電極2が備えられ、引き出し線2’が引き出されている。また、細胞集団CHの右側の中央の細胞保持部CHに対向して構成されている細胞保持部CHにはhERG発現細胞10が保持されている。細胞保持部CHには微小電極2が備えられ、hERG発現細胞10はこの微小電極2の上に載置される。微小電極2からは引き出し線2’が引き出されている。hERG発現細胞10を保持する細胞保持部CHを含むhERG発現細胞保持領域と上記心筋細胞集団保持領域とを隔てるように、細胞集団CHの右側と細胞保持部CHの左端部との間に障壁11が設けられる。この障壁11の中央部の下部には小さい開口11が形成される。この開口11の両側にはそれぞれ対向する細胞集団CHの右側の中央の細胞保持部CHと、細胞保持部CHとがあり、それぞれの細胞収納部の周辺の間隙4を介してそれぞれに保持されている細胞の物理的接触・細胞間インタラクションが可能なように構成されている。細胞集団CHの下部に比較電極2が設けられ、引き出し線2’が引き出されている。
【0024】
7は周辺を取り巻く壁であり、細胞集団CHG、細胞保持部CHおよび比較電極2を取り巻いている。8および8は壁7の内部の領域に、細胞の培養液を供給し、および、壁7の内部の領域から、細胞の培養液を排出するためのパイプであり、図の例では、基板1の底面近くまで延伸されたパイプ8から培養液が供給され、基板1の底面近くまで延伸されたパイプ8から培養液が排出される。培養液を供給するパイプ8の培養液の出口の近くにパイプ8が結合され、このパイプ8を介して細胞に作用させたい薬剤が供給される。したがって、細胞10はパイプ8により壁7の内部の領域に供給される細胞の培養液に曝されながら、微小電極2の上に安定して保持される。細胞を培養液に曝す必要がなくなったときは、パイプ8により壁7の内部の領域から培養液を排出すればよい。また、培養液を新しいものと交換するときは、培養液を排出した後、あるいは、排出しながら、培養液を供給すればよい。一方、細胞に薬剤を作用させたいときは、パイプ8により培養液を排出しながら、パイプ8を介して細胞に作用させたい薬剤を培養液に加えて、パイプ8により培養液とともに供給すればよい。このとき、細胞集団CHと細胞保持部CHとの間に障壁11を設けたことにより、薬剤を含む培養液がパイプ8により壁7の内部の領域に供給されるとき、細胞保持部CHのhERG発現細胞が薬剤の影響を受ける程度に比し、細胞集団CHの細胞が薬剤の影響を受ける程度は低いものとなる。すなわち、パイプ8により薬剤を含む培養液が供給されるとき、この培養液は障壁11の両側の壁7との隙間および障壁11の上面を乗り越えて細胞集団CHにも供給されるから細胞集団CHの細胞も薬剤の影響を受ける。しかし、その影響は細胞保持部CHのhERG発現細胞に対するものと比較すれば間接的であるので、ペースメーカーとしての機能に影響を及ぼすほどのものではない。なお、パイプ8、パイプ8およびパイプ8の構成、配置は計測の仕方により任意に変更してよい。例えば、パイプ8およびパイプ8は分離されたものとしてもよいし、パイプ8は省略して、パイプ8を供給、排出の両方に使用するものとしてもよい。
【0025】
PCはパソコンであり、細胞保持部CHの微小電極2の引き出し線2’と比較電極2の引き出し線2’との間で細胞電位を計測し記録する。また、パソコン9には操作者の操作信号Msが加えられる。
【0026】
図1に示すモデル細胞チップによる薬効評価装置100の構造の主要なサイズの例を示すと以下のようである。これは、細胞の大きさを10μmφとした例である。透明基板1の大きさは100mm×150mm、微小電極2は8μm×8μmの大きさ、アガロースゲルによる壁3,3,3及び3の個々の大きさは20μm×20μm×10μm(高さ)、間隙4,4,4及び4の幅2μm、アガロースゲルによる壁3,3,3及び3により形成される細胞収納部となる空間は12μmφの円柱状、壁7の外形は5mm×5mmとし高さは5mmである。障壁11aの高さは1mmである。尚、ここでは、微小電極2は8μm×8μmの正方形としたが、アガロースゲルによる壁3,3,3及び3の全体と間隙4,4,4及び4の幅とで構成する細胞の収納部となる10μmφの円状の電極としてもよい。
【0027】
以下、本発明のモデル細胞チップによる薬効評価装置100の構成例とこれを用いた具体的な計測例を説明する。
【0028】
図3(a)、図3(b)、図3(c)および図3(d)は、本発明の第一の実施形態における細胞電位の計測に関する信号を示す図である。それぞれ、横軸に時間を、縦軸に微小電極2と比較電極2との間に得られる細胞電位を示す。図3(a)は心筋細胞の細胞集団CHの拍動による細胞電位である。ここでは、図1に示す細胞集団CHの一つの心筋細胞が載置された電極から引き出された引き出し線2’と比較電極2から引き出された引き出し線2’との間の電位である。図に示すように、安定した拍動を示し、ペースメーカーとして機能しうることがわかる。図3(b)は培養液に薬剤が含まれない通常状態における標的細胞の拍動による細胞電位である。ここでは、計測の標的細胞を細胞保持部CHのhERG発現細胞とし、hERG発現細胞10が載置された電極から引き出された引き出し線2’と比較電極2から引き出された引き出し線2’との間の電位が計測されている。図3(a)の波形と比較して明らかなように、hERG発現細胞10によるKイオン成分のみの流入出量に伴う細胞電位変化を主体とした波形となっていることが観察される。これに対して、図3(c)は培養液に薬剤が含まれた状態における標的細胞のhERG発現細胞10によるKイオン成分のみの流入出量に伴う細胞電位変化を主体とした細胞電位である。ここでは、薬剤がhERG発現細胞10のKイオン成分のみの流入出量を低下させたため信号強度が低下した状態で検出されている。図3(d)は培養液に含まれた薬剤が含まれた状態における標的細胞のhERG発現細胞10によるKイオン成分のみの流入出量に伴う細胞電位変化を主体とした細胞電位である。ここでは、薬剤がhERG発現細胞10のKイオン成分のみの流入出量を低下させたため信号強度が低下した状態で検出されている。すなわち、hERG発現細胞に対する薬剤の毒性を信号強度の低下として評価することが出来る。
【0029】
なお、第一の実施形態では、基板1および電極2を光学的に透明な材料で構成することにしたから、具体的に説明はしなかったが、細胞の拍動の状態を光学顕微鏡で観察することを併用することが出来る。そうすれば、パルス電位で評価するだけよりも、薬剤の影響を多面的に評価できる。逆に、光学顕微鏡で観察しない場合には、基板1および電極2を光学的に透明な材料で構成する必要は無い。
【0030】
図4は本発明の第二の実施形態に係る心筋毒性検査装置の構造の1例を模式的に示した斜視図である。図5は、図4に示す心筋毒性検査装置の細胞保持部CHの構成の1例を模式的に示す斜視図である。図6は、図4に示す心筋毒性検査装置の細胞保持部CHに保持された細胞を光学的に検出する光学系を説明する図である。
【0031】
100は心筋毒性検査装置であり、透明基板1の上に構築されている部品を主体として構成される。透明基板1は光学的に透明な材料、たとえば、ガラス基板あるいはシリコン基板である。2は微小電極であり、たとえば、ITOによる透明電極とされ、透明基板1上に配置される。2’は微小電極2の引き出し線である。3,3,3及び3はアガロースゲルによる壁であり、微小電極2の周辺に間隙4,4,4及び4を介して配置される。アガロースゲルによる壁3,3,3及び3は中心部が切り欠かれて細胞収納部となる空間を形成している。アガロースゲルによる壁3,3,3及び3により形成される細胞収納部となる空間の透明基板1上には、必要により、微小電極2が配置される。微小電極2の有無に係らず、細胞収納部に一つの細胞10が収納できる。図5では、アガロースゲルによる壁3,3,3及び3により形成される細胞収納部となる空間の透明基板1上に、微小電極2が配置され、その上に心筋細胞10が収納されている。微小電極2には引き出し線2’が接続されて引き出されている様子を示す。微小電極2の細胞載置面および微小電極2を設けないで透明基板1に、直接、細胞を載置する場合の細胞載置面にはコラーゲン等の細胞が電極表面および透明基板に接着するのを助ける素材を塗っておくのがよい。アガロースゲルによる壁3,3,3及び3により形成される細胞収納部内の細胞は、アガロースゲルは細胞にとっては非接着性であるため、この壁3,3,3及び3の高さを細胞と同程度としても、壁を乗り越えて細胞10が移動することはない。また、アガロースゲルによる壁3,3,3及び3中心部が切り欠かれて形成される細胞収納部の周辺の間隙4,4,4及び4は細胞の大きさより小さいものとされるから、この間隙4,4,4及び4をすり抜けて細胞10が移動することはない。
【0032】
図4において、細胞保持部CH、CH、CHおよびCHはそれぞれ細胞収納部に一つの心筋細胞あるいは線維芽細胞10、10、10および10を保持するとともに、図では明確でないが、それぞれ、微小電極2を備えていて、引き出し線2’、2’、2’および2’が引き出されている。これらの心筋細胞または線維芽細胞は直列配列された細胞連絡チャネルCCCを構成する。ここで、nは例えば20である。また、これら20個の直列配列された心筋細胞および線維芽細胞の配分は、ランダムでよいが、細胞保持部CHの細胞およびCH20の細胞は心筋細胞であったほうがよい。この細胞連絡チャネルCCCの左端には3×3の細胞保持部CHが形成されていて、それぞれの細胞保持部CHに心筋細胞10が保持されてなる細胞集団10を含む心筋細胞集団保持領域が存在する。この細胞集団10は安定した拍動を行うペースメーカーとして機能するものである。細胞集団10では、細胞集団10の一つの細胞保持部CHのみに微小電極2が備えられ、引き出し線2’が引き出されている。また、細胞集団10の右側の中央の細胞保持部CHが細胞連絡チャネルCCCの細胞保持部CHに対向するように構成されている。細胞集団10の右側と細胞連絡チャネルCCCの左端部との間に障壁11が設けられる。この障壁11の中央部の下部には小さい開口11が形成される。この開口11の両側には対向する細胞集団10の右側の中央の細胞保持部CHと細胞連絡チャネルCCCの細胞保持部CHがあり、それぞれの細胞収納部の周辺の間隙4を介してそれぞれに保持されている細胞の物理的接触・細胞間インタラクションが可能なように構成されている。細胞集団10の下部に比較電極2が設けられ、引き出し線2’が引き出されている。
【0033】
7は周辺を取り巻く壁であり、細胞集団10G、細胞連絡チャネルCCCおよび比較電極2を取り巻いている。8および8は壁7の内部の領域に、細胞の培養液を供給し、および、壁7の内部の領域から、細胞の培養液を排出するためのパイプであり、図の例では、基板1の底面近くまで延伸されたパイプ8から培養液が供給され、基板1の底面近くまで延伸されたパイプ8から培養液が排出される。培養液を供給するパイプ8の培養液の出口の近くにパイプ8が結合され、このパイプ8を介して細胞に作用させたい薬剤が供給される。したがって、細胞10はパイプ8により壁7の内部の領域に供給される細胞の培養液に曝されながら、微小電極2の上に安定して保持される。細胞を培養液に曝す必要がなくなったときは、パイプ8により壁7の内部の領域から培養液を排出すればよい。また、培養液を新しいものと交換するときは、培養液を排出した後、あるいは、排出しながら、培養液を供給すればよい。一方、細胞に薬剤を作用させたいときは、パイプ8により培養液を排出しながら、パイプ8を介して細胞に作用させたい薬剤を培養液に加えて、パイプ8により培養液とともに供給すればよい。このとき、細胞集団10と細胞連絡チャネルCCCとの間に障壁11を設けたことにより、薬剤を含む培養液がパイプ8により壁7の内部の領域に供給されるとき、細胞連絡チャネルCCCの細胞が薬剤の影響を受ける程度に比し、細胞集団10の細胞が薬剤の影響を受ける程度は低いものとなる。すなわち、パイプ8により薬剤を含む培養液が供給されるとき、この培養液は障壁11の両側の壁7との隙間および障壁11の上面を乗り越えて細胞集団10にも供給されるから細胞集団10の細胞も薬剤の影響を受ける。しかし、その影響は細胞連絡チャネルCCCの細胞に対するものと比較すれば間接的であるので、ペースメーカーとしての機能に影響を及ぼすほどのものではない。なお、パイプ8、パイプ8およびパイプ8の構成、配置は計測の仕方により任意に変更してよい。例えば、パイプ8およびパイプ8は分離されたものとしてもよいし、パイプ8は省略して、パイプ8を供給、排出の両方に使用するものとしてもよい。
【0034】
PCはパソコンであり、細胞保持部CHの微小電極2の引き出し線2’と比較電極2の引き出し線2’との間で細胞電位を計測し記録する。また、パソコン9には操作者の操作信号Msが加えられる。
【0035】
心筋毒性検査装置100は光学観察装置200のXYステージ15に載せて細胞連絡チャネルCCCの任意の細胞10の拍動を、光学系により観察することが出来る。XYステージ15は、光学的に透明であるとともに、操作者の操作信号Msに応じてパソコンPCが与える信号に応じてX−Y駆動装置16により、任意の位置に移動される。図6では、細胞連絡チャネルCCCの細胞10の拍動の状態を観察する例を示している。12は培養液を示す。
【0036】
22は位相差顕微鏡あるいは微分干渉顕微鏡の光源であり、一般にハロゲン系のランプが用いられる。23は位相差等の実体顕微鏡観察の光源の光から特定の波長のもののみを透過させるバンドパスフィルタである。たとえば細胞10の観察の場合には、波長700nm近傍の狭帯域の光を用いることで細胞10の損傷を防ぐことができる。24はシャッターで、XYステージ15を移動させる場合など、画像計測をしていない間は光の照射を遮断する機能を有する。25はコンデンサレンズであり、位相差観察をする場合は位相差リングを導入し、微分干渉観察をする場合は、偏光子を導入する。XYステージ15上には基板1上に形成されている細胞応答計測装置100が載置されX−Y駆動装置16によって前記XYステージ15を移動させることで前記細胞応答計測装置100の任意の位置を観察し、計測することができる。前記細胞応答計測装置100内の細胞10の拍動の状態は、対物レンズ17で観察される。対物レンズ17の焦点位置はパソコンPCによる信号に応じて駆動装置18によってZ軸方向に移動させることができる。対物レンズ17の倍率は40倍以上のものが使用できる。対物レンズ17で観察されるのは、光源22から透過された光による細胞10の位相差像あるいは微分干渉像である。前記バンドパスフィルタ23を透過するのと同波長の光を反射するダイクロイックミラー19およびバンドパスフィルタ20によって、位相差顕微鏡像あるいは微分干渉顕微鏡像のみがカメラ21によって観察される。カメラ21によって観察された画像信号はパソコンPCに導入される。
【0037】
図4に示す心筋毒性検査装置100の構造の主要なサイズの例を示すと以下のようである。これは、細胞の大きさを10μmφとした例である。透明基板1の大きさは100mm×150mm、微小電極2は8μm×8μmの大きさ、アガロースゲルによる壁3,3,3及び3の個々の大きさは20μm×20μm×10μm(高さ)、間隙4,4,4及び4の幅2μm、アガロースゲルによる壁3,3,3及び3により形成される細胞収納部となる空間は12μmφの円柱状、壁7の外形は5mm×5mmとし高さは5mmである。障壁11aの高さは1mmである。尚、ここでは、微小電極2は8μm×8μmの正方形としたが、アガロースゲルによる壁3,3,3及び3の全体と間隙4,4,4及び4の幅とで構成する細胞の収納部となる10μmφの円状の電極としてもよい。
【0038】
以下、本発明の細胞応答計測装置100の構成例とこれを用いた具体的な計測例を説明する。
【0039】
図7(a)、図7(b)および図7(c)は、細胞電位の計測に関する信号を示す図である。それぞれ、横軸に時間を、縦軸に微小電極2と比較電極2との間に得られる細胞電位を示す。図7(a)は細胞集団10の拍動による細胞電位である。ここでは、図4に示す細胞集団10の一つから引き出された引き出し線2’と比較電極2から引き出された引き出し線2’との間の電位である。図に示すように、安定した拍動を示し、ペースメーカーとして機能しうることがわかる。図7(b)は培養液に薬物が含まれない通常状態における標的細胞の拍動による細胞電位である。ここでは、計測の標的細胞を細胞連絡チャネルCCCの細胞10とし、細胞10から引き出された引き出し線2’と比較電極2から引き出された引き出し線2’との間の電位が計測されている。図7(a)の波形と比較して明らかなように、細胞連絡チャネルCCCの細胞10による拍動の伝達に要する時間Δtだけ遅れていることが観察される。これに対して、図7(c)は培養液に薬物が含まれた状態における標的細胞の拍動による細胞電位である。ここでも、計測の標的細胞を細胞連絡チャネルCCCの細胞10とし、図7(b)との比較が明確になるようにしている。図7(a)、図7(b)、の波形と比較して明らかなように、細胞連絡チャネルCCCの細胞10による拍動の伝達に要する時間Δtだけの遅れではなく、時間Δt+αの遅れとなっていることが観察される。これは、細胞連絡チャネルCCCの細胞に対する薬物の作用によるNaイオン阻害の大きさが+αの遅れの増大として表れていることを意味する。すなわち、心筋細胞に対する薬物の毒性をNaイオン阻害として評価することが出来る。
【0040】
図8(a)、図8(b)および図8(c)は、細胞の拍動に伴う体積変化を光学系によって計測した結果に関する信号を示す図である。図8(a)は細胞集団10の細胞の拍動に伴う体積変化である。細胞集団10の細胞の一つの拍動を図6に示す形で光学的に検出したものである。細胞の拍動に伴う収縮および拡張がパルス状に現れる変化として認められる。この波形の周期は、図7(a)に示す拍動に伴う細胞電位の変化の周期と同じである。図8(b)は培養液に薬物が含まれない通常状態における標的細胞の拍動に伴う体積変化を上段に示し、下段にこれを電気信号として評価するために時間微分値として処理したときの波形を示す。ここでも、計測の標的細胞を細胞連絡チャネルCCCの細胞10とし、細胞10の拍動を図6に示す形で光学的に検出したものである。図8(a)の波形と比較して明らかなように、細胞連絡チャネルCCCの細胞10による拍動の伝達に要する時間Δtだけ遅れていることが観察される。これに対して、図8(c)は培養液に薬物が含まれた状態における標的細胞の拍動に伴う体積変化を評価するための説明図であり、図8(a)、図8(b)に比し時間軸を拡大した形で示す。上段は図8(b)の上段の波形に対応する波形であり、図8(a)の波形と比較して明らかなように、細胞連絡チャネルCCCの細胞10による拍動の伝達に要する時間Δtよりもさらにβだけ遅れが増大していることが観察される。標的細胞の拍動に伴う体積変化が薬物により受ける影響は、この遅延の増大以上に体積変化の傾きが小さくなることが特徴的である。図8(c)の下段に参考波形として示した薬物を含まない培養液での体積変化と比較してみるとこのことがよく分かる。図8(c)の中段には、上段の波形を評価するために時間微分値として処理したときの波形を示す。この時間微分値を図8(b)の下段のそれと比較すると分かるように、ピーク値が小さくなるとともに、傾きが緩やかになっている。これは、薬物により心筋の収縮速度が低下して、心拍出量が低下したことを意味する。すなわち、心筋細胞に対する薬物の毒性を収縮速度の低下として評価することが出来る。
【0041】
図9(a)は培養液に薬物が含まれない通常状態における標的細胞のNaイオン、Ca2+イオン、Kイオン成分の流入出量に伴う細胞電位変化を示す。図9(b)は培養液に薬物が含まれた状態における標的細胞のNaイオン、Ca2+イオン、Kイオン成分の流入出量に伴う細胞電位変化を示す。図9(a)、図9(b)を対比してすぐ分かるように、QT遅延が表われて波形が時間軸方向に伸びている。さらにKイオンの流入出に伴い、波形が大きく変形している。これを電気信号として評価するために、図に破線で示した“0”と“100”の間の値に対して、30%、60%および90%の値の継続時間をAPD30,APD60およびAPD90として検出する。ここで、APDとはAction Potential Durationの頭文字からとった表現である。これらの値の大きさおよび比率を評価すれば、その薬物のNaイオン、Ca2+イオン、Kイオン成分の流入出量に及ぼす影響を評価できる。
本発明の第二の実施形態の典型例では、透明基板上に拍動ペースメーカー細胞集団を配置し、続いて心筋拍動細胞を適当に離して配置する。これらの間に適当な数の線維芽細胞を配置・結合させて細胞ネットワークを構成する。ネットワークを構成する心筋拍動細胞と線維芽細胞のそれぞれは、透明基板上に設けた透明電極の上に配置される。この細胞ネットワークは光学的に観察可能とされる。ネットワークを構成する細胞には薬物が作用するように薬物を含む液体の流れに曝す。ネットワークの心筋拍動細胞の一つから終段の心筋拍動細胞への拍動の伝播の通常の遅れと薬物の作用時の拍動の伝播の遅れの差異を電極から得られる電気信号で捕らえてNaイオン阻害を評価する。ネットワークの心筋拍動細胞の一つの拍動を光学的に捕らえて体積変化を検出することから薬物の作用時の収縮速度を検出して心拍出量を評価する。ネットワークの心筋拍動細胞の一つの拍動を電気的に捉えることで、Naイオン、Ca2+イオン、Kイオン成分の流入出量を割り出し、薬物によるQT遅延を評価する。
【産業上の利用可能性】
【0042】
本発明によれば、細胞集団のペースメーカーとしての拍動を基礎としてhERG発現細胞に対する薬剤の影響、すなわち、薬剤の薬効を等価的にin vitroで評価できる。
【0043】
本発明によれば、細胞集団のペースメーカーとしての拍動を基礎として心筋細胞あるいは線維芽細胞が直列配列された細胞連絡チャネルCCCによる細胞の拍動の伝達応答およびこれに対する薬物の影響、すなわち、薬物の心筋毒性を等価的にin vitroで評価できる。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9