(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
カラーフィルタアレイであって、該カラーフィルタアレイは複数の1次フィルタおよび複数の2次フィルタを備え、前記複数の1次フィルタ及び前記複数の2次フィルタの各々は特定のスペクトル応答性を有し、前記複数の1次フィルタ及び前記複数の2次フィルタの各々は複数の画素における対応する画素上に形成され、
前記複数の1次フィルタはさらに、フィルタの第1部分集合及びフィルタの第2部分集合を備え、
前記フィルタの第1部分集合は、前記複数の1次フィルタのうち第1スペクトル応答性を有する1次フィルタを含み、
前記第1部分集合の前記1次フィルタの各々は、水平及び垂直の両方向に、当該1次フィルタの中心から隣接する前記第1部分集合の前記1次フィルタの中心までを測れば、当該1次フィルタに対応する画素の長さの約2倍の距離だけ、互いに分離されるように配置され、
前記フィルタの第2部分集合は、前記複数の1次フィルタのうち、前記第1スペクトル応答性とは異なる第2スペクトル応答性を有する1次フィルタを含み、
前記第2部分集合の前記1次フィルタの各々は、水平及び垂直の両方向に、当該1次フィルタの中心から隣接する前記第2部分集合の前記1次フィルタの中心までを測れば、当該1次フィルタに対応する画素の長さの約2倍の距離だけ、互いに分離されるように配置され、
前記複数の2次フィルタはさらに、フィルタの第3部分集合を備え、
前記フィルタの第3部分集合は、前記複数の2次フィルタのうち、前記第1スペクトル応答性及び前記第2スペクトル応答性と異なる第3スペクトル応答性を有する2次フィルタを含み、
前記第3部分集合の前記2次フィルタの各々は、水平及び垂直の両方向に、当該2次フィルタの中心から隣接する前記第3部分集合の前記2次フィルタの中心までを測れば、当該2次フィルタに対応する画素の長さの約4倍の距離だけ、互いに分離されるように配置され、かつ、前記第1部分集合の4つの前記1次フィルタの各々が、当該2次フィルタの斜め上下方向に隣接するように配置され、かつ、前記第2部分集合の前記1次フィルタが垂直方向に隣接するように配置されている、
カラーフィルタアレイ。
請求項1に記載のカラーフィルタアレイにおいて、前記第3スペクトル応答性は、前記第1スペクトル応答性及び前記第2スペクトル応答性と高い相関関係を有する、カラーフィルタアレイ。
請求項1に記載のカラーフィルタアレイにおいて、前記第1部分集合の前記1次フィルタは、2pのサンプリングピッチを有する第1の矩形格子状に配置され、前記第2部分集合の前記1次フィルタは、2pのサンプリングピッチを有する第2の矩形格子状に配置され、前記第3部分集合の前記2次フィルタは、4pのサンプリングピッチを有する第3の矩形格子状に配置され、ここに、pは前記複数の画素の各々の画素サイズである、カラーフィルタアレイ。
【発明を実施するための形態】
【0020】
様々な実施形態による、汎用的に詰め合わせたピクセル配列のカメラ機構を提供する。いくつかの実施形態では、
図4に示すようなカラーフィルタの豊富な詰め合わせ(リッチアソートメント)にした、カラーフィルタアレイまたはモザイクを使用した汎用的に詰め合わせたピクセル配列のカメラシステムおよび方法を提供する。カラーフィルタアレイは、異なる色分解特性(または複数の色)を有する複数のフィルタのうち1つを各画素に結合させた、画像形成またはカメラシステムに使用する。カラーフィルタアレイにおけるカラーフィルタの各々は、画質の特別な属性を高めることができる。これら属性としては、例えば色再現性、スペクトル分解能、ダイナミックレンジ、感度がある。カラーフィルタアレイにおけるフィルタの各々によってキャプチャされる情報を使用することにより、ユーザーはこれら汎用的に詰め合わせたピクセル配列のカメラ機構により、1つのキャプチャした画像から様々な画像タイプ(例えば、モノクローム画像、ハイダイナミックレンジ(HDR)のモノクローム画像、3色(RGB)画像、HDRのRGB画像、および/またはマルチスペクトル画像を生成することができる。
【0021】
いくつかの実施形態では、これら機構は、
図4に示すもののように、カラーフィルタアレイの空間およびスペクトルレイアウトを決定する手法を提供することができる。例えば、測色的および分光的色再現性、ダイナミックレンジおよび信号対雑音比(SNR)に関する変数のバランスをとるためにコスト的手法またはエラー的手法を使用する汎用的に詰め合わせたピクセル配列のカメラシステムおよび方法を提供する。
【0022】
いくつかの実施形態では、これらの機構は様々な画像タイプを再構築するためのデモザイク処理の手法を提供することができる。例えば、アンダーサンプルのチャネルを再構築するサブミクロン画素およびアンチエイリアシングの手法を含む、汎用的に詰め合わせたピクセル配列のカメラシステムおよび方法を提供する。特に、残りのフィルタによってキャプチャされた情報からエイリアシングを取り除くために、特定のフィルタからの情報を使用する。
【0023】
これらの機構は様々な用途で使用することができる。例えば、カラーフィルタアレイの空間およびスペクトルレイアウトを高めるためのこれら機構は、汎用的に詰め合わせたピクセル配列のカメラシステムで使用することができる。カメラシステムは1つの画像をキャプチャすることができ、カラーフィルタアレイ内のフィルタの各々からの情報を使って、スペクトル分解能、ダイナミックレンジおよび空間分解能のバランスをとるまたはトレードオフして、1つのキャプチャされた画像から複数の画像タイプで画像を生成することができる。これら画像タイプとしては、例えばモノクローム画像、ハイダイナミックレンジ (HDR)のモノクローム画像、3色(RBG)画像、HDRのRGB画像、および/またはマルチスペクトル画像がある。
【0024】
いくつかの実施形態では、サブミクロン画素を有するイメージセンサを具えた、汎用的に詰め合わせピクセル配列のカメラ機構を提供する。一般には、サブミクロン画素を具えた画像センサの分解能は、光学的分解能の限界を超えるとされてきた。
【0025】
このようなカメラシステムの製作にあたり、光学画像システムの分解能には、回折や収差などの複数の要因によって限界があることに留意されたい。収差はレンズ設計において修正することができるが、回折は回避することのできない限界である。円形開口を有するレンズの2次元解析パターンは一般にエアリーディスクと称され、エアリーディスクの幅はシステムの最大分解能の限界を定める。これは一般に下記のように定められる。すなわち、
【0027】
ここで、I
0はエアリー回折パターンの中心の強度であり、J
1はオーダー1の第1種ベッセル関数であり、θは観測角度(すなわち、円形開口の軸線と、開口中心および観測点を結ぶラインとの間における角度)である。尚、z = πq/λNであり、ここで、qは観測面における光軸からの半径方向距離であり、λは入射光の波長であり、Nはシステムのf数である。理想的なレンズの場合、この回折パターンは焦点画像の点広がり関数(PSF)であり、PSFのフーリエ変換を光学画像システムの分解能の特徴付けに使用する。この量は、一般に変調伝達関数 (MTF)と称される。このような画像システムのMTFは、入射光の波長λとf数Nから直接計算することができる。これはMTF
opt (λ,N) = F(I(θ))と表され、ここで、F( )はフーリエ変換を示す。
【0028】
尚、画素は一般に矩形であり、その有限のサイズは画像システムの分解能の特性に影響を与える。イメージセンサの変調伝達関数(MTF)は、矩形関数のフーリエ変換として近似することができる。
これは、MTF
sensor(p) = F(s(t))と表される。この矩形関数s(t)は下記の様に表すことができる。すなわち、
【0030】
ここで、pは画素サイズであり、ζは開口比であり、これはオンチップマイクロレンズの使用により、通常1とされる。
【0031】
尚、カメラシステム(例えば、レンズおよびセンサを含む)の全体的な基本的光学的分解能は、周波数領域においてMTF = MTF
opt(λ,N)・MTF
sensor(p)と表すことができる。これを計算するには、λ=555nm(一般に、人間の目における感度のピークに対応する)とN = f/5.6(これは、例えば消費者向け写真で一般に使用される瞳孔の大きさ)を使用する。これらの値で、基本的なMTFを画素サイズpによって決める。
【0032】
様々な画素サイズのMTFを
図3に示す。図に示すように、0.70μm(最も左側の曲線305で示す)、1.00μm(曲線310で示す)、1.25μm(曲線315で示す)、1.75μm(曲線320で示す)の画素サイズに対するMTFを計算する。画素サイズp = 1.00μmのMTFは、0.25fsで約0.1である、ここで、fsはイメージセンサのサンプリング周波数である。尚、MTFが0.1以下の場合には、人間の目はコントラストを認識することができない。また、p = 1.00μmの画素サイズのイメージセンサにおける光学的分解能の限界は、イメージセンサのナイキスト周波数の半分である。よって、
図3はサブミクロン画素を有するセンサの分解能が光学的分解能の限界を超えていることを示している。
【0033】
いくつかの実施形態では、カラーフィルタの詰め合わせが豊富なカラーフィルタアレイまたはモザイクを使用した汎用的に詰め合わせたピクセル配列のカメラシステムおよび方法を提供する。重ねて、
図3に示すように、1.0μmの画素サイズに関しては、レンズ開口からの回折および画素による平均化に基因して、MTFの組合せは、サンプリング周波数fsの約1/4の光学的分解能の限界となる。ここで、fs = 1/Δsであり、Δsはサンプリングピッチである。これを利用したいくつかの実施形態による模範的なカラーフィルタアレイ、すなわち配列400を
図4に示す。上述したように、カラーフィルタアレイを、異なる色分解特性(または複数の色)を有する複数のフィルタのうち1つを各画素に結合した、画像形成またはカメラシステムに使用する。用語「カラー」は、一般的に、フィルタまたはそのフィルタから取得したその色に関する画素値を指す。
図4に示すように、カラーフィルタアレイ400は、1次フィルタ(すなわち、カラーフィルタa,b,c)および2次フィルタ(すなわち、カラーフィルタd,e,f,g)を有する。
【0034】
カラーフィルタアレイ400におけるa,b,cでマーク付けした画素(「1次フィルタ」と総称する)は、サンプリングピッチΔs
a,b,c = 2pの矩形格子における3個の異なるスペクトル画像をキャプチャする。したがって、a,b,cのナイキスト周波数はn
a,b,c = fs
a,b,c/2 = fs/4である。尚、回折に基因して、フィルタa,b,cはエイリアシングを起こさないことに留意されたい。というのも、光学的分解能の限界はサンプリング周波数fsの1/4だからである。これらエイリアシング・フリーの画素a,b,cは、高分解能モノクローム画像および高分解能RGB画像のような高分解能画像の再構築に使用することができる。
【0035】
カラーフィルタアレイ400におけるd,e,f,gとマーク付けした画素(「2次フィルタ」と総称する)は、異なるスペクトルフィルタを通して矩形格子に入射した画像をサンプリングする。各第2フィルタのサンプリングピッチはΔs
d,e,f,g = 4pであり、ナイキスト周波数はfn
d,e,f,g = fs
d,e,f,g/2 = fs/8である。
【0036】
カラーフィルタアレイ400のナイキスト周波数の説明をさらに行うために、ナイキストまたは使用可能な周波数領域500を
図5に示す。図示のように、1次フィルタのナイキスト領域は、点線510によって示す周波数空間のほぼ正方形の部分に位置し、2次フィルタのナイキスト領域は、点線520によって示す周波数空間のほぼ正方形の部分に位置する。
【0037】
さらに
図5には、上述のように、陰影付き領域530で示すサブミクロン画素の光学的分解能の限界も示す。尚、2次フィルタのナイキスト周波数(点線520で示す)は光学的分解能の限界よりも低いので、エイリアシングアーチファクトの可能性がある。しかし、本明細書に示すように、これらエイリアシングアーチファクトは、1次フィルタを使って取得するデモザイク画像からの高周波数情報を使って除去することができる。
【0038】
カラーフィルタアレイ400を使用し、複数の画像特性を同時にキャプチャすることができる。しかし、各特性の忠実性にはトレードオフの存在する可能性があることに留意されたい。例えば、カラーフィルタアレイ400の1次フィルタを使用して、高分解能でモノクローム画像および標準RGB画像を再構築する。ハイダイナミックレンジ(HDR)画像に関しては、2次フィルタを使い、かつ空間分解能を低減することによって、スペクトル分解能を向上する。
【0039】
別の実施例では、ダイナミックレンジおよびスペクトルを犠牲にすることによって、高空間分解能を得ることができる。つまり、モノクローム画像は高い空間分解能を有する。空間分解能を犠牲にすることにより、スペクトルの質が向上する。分解能をさらに犠牲にすることにより、スペクトルの質の向上に加えてダイナミックレンジが拡大する。
【0040】
いくつかの実施形態では、1次フィルタおよび2次フィルタのフィルタスペクトルを高めるためにコスト関数またはエラー関数を使用することができる。コスト関数には、いくつかの項、例えば色再現性の品質(例えば、RGB画像に関する)、反射率の再構築(例えば、マルチスペクトル画像に関する)およびダイナミックレンジ(例えば、HDR画像に関する)を組み込むことができる。
【0041】
m番目のチャネルにおける画素で測定した値x
m(ここでmは1次または2次のフィルタa,b,c,d,e,f,gのうち1つ)は、下記の方程式で表される。すなわち、
【0043】
ここで、i(λ)は照明のスペクトルパワー分布、r(λ)はシーンポイントのスペクトル反射率、およびc
m(λ)はカメラのm番目のカラーチャネルにおけるスペクトル応答である。波長λを等間隔のLポイントでサンプリングする際のx
mは下記の離散方程式で表すことができる。すなわち、
【0045】
さらに、上述の方程式を行列(マトリス)式で書き直すと、X =C
TIRとなり、ここで、X = [x
a, x
b, . . . x
g]
T, C = [c
m(λ
l) ]であり、Iは離散照明サンプルi(λ
l)で構成される対角マトリックスであり、R = [r(λ
l)]である。
【0046】
いくつかの実施形態では、1次および2次のフィルタに対応する色再現エラーを決定することができる。例えば、HDRのRGB画像を得るには、カラーフィルタアレイ400の1次フィルタを使用して高露出RGB画像を再構築することができ、カラーフィルタアレイ400の2次フィルタを使用して低露出画像を再構築することができる。いくつかの実施形態では、1次フィルタおよび2次フィルタのスペクトル応答は最高の色再現性を生ずる。尚、様々な色評価指標をフィルタの色再現性の評価に使用することができ、これら指標は、基準素材を測定した色とその既知の色との差異を最小にするコスト関数を使用することができる。
【0047】
いくつかの実施形態では、色の違いを計算するには、人間の視覚の直接測定に基づく、多くの他の色空間を定義する基礎となるCIE 1931 XYZ色空間(国際照明委員会作成)を使用することができる。CIE XYZ3刺激値からのRGB3刺激値(いくつかのデジタルカメラまたはカラーモニタで採用)の計算は、線形変換である。CIE XYZ3刺激値はY = A
TIRと定義することができ、ここで、Yは真の3刺激値を表し、AはCIE XYZカラーマッチング関数、即ち、
【0048】
【数5】
の行列(マトリクス)である。1次フィルタ、すなわち
【数6】
に対応する推定CIE3刺激値は、最適な線形変換、すなわち
【数7】
と表すことができ、ここで、X′= [x
a, x
b, x
c]
Tである。変換T′は色差が最小、すなわちmin‖Y−T′X′‖
2 になるよう決定することができる。同様に、2次フィルタ、すなわち
【数8】
に対応する推定CIE3刺激値は、
【数9】
と表すことができ、ここで、X″= [x
d, x
e, x
f, x
g]
Tである。
尚、真のカラーYと1組のN個の実世界対象物(オブジェクト)セットに対する推定カラー
【数10】
との間における色差の平均的な大きさは、カメラシステムの色再現性を数値化する測定基準として使用することができる。1次および2次のフィルタに対応する色再現エラーは、下記の方程式によって表すことができる。すなわち、
【数11】
【0049】
いくつかの実施形態では、スペクトル分布の再構築によって導入されるエラーを決定することができる。例えば、スペクトル分布は線形モデルを使って再構築することができる。モデルは線形なので、再構築は効率的で安定している。再構築のための線形モデルは一組の直交スペクトル基底関数b
k(λ)のセットとして表すことができる。すなわち、
【数12】
ここで、σ
kはスカラー係数で、Kは基底関数の個数である。上述の方程式をコスト関数に代入することによって、コストまたはエラー関数は下記の方程式によって表すことができる。すなわち、
【数13】
これら方程式はX= F・σと書くことができ、ここで、FはM×Kの行列(マトリクス)で、
【数14】
であり、Mはカラーフィルタチャネル(例えば、
図4のカラーフィルタアレイ400は7個のチャネルを持っているので、M=7)の数であり、σ = [σ
k]である。スペクトル分布は‖F・σ−X‖
2 を最小にすることによって再構築される。尚、ほとんどの材料のスペクトル反射率は平滑で、一般には正であることに留意すべきである。したがって、再構築手法は下記のような制約された最小化式として表すことができる。すなわち、
【数15】
ただしB・σ≧0であり、 ここで、
【数16】
は平滑化制約、αは平滑化パラメータ、1≧L,1≧k≧K、
【数17】
B = [b
k(λ
l)]である。この正規化された最小化は2次計画法を使って解くことができる。マルチスペクトル画像の平均平方再構築誤差R(C)は、下記の様に表すことができる。すなわち、
【数18】
ここで、σ
n はn番目の対象物(オブジェクト)の実際の係数を表し、
【数19】
は再構築する係数を表す。尚、いくつかの実施形態では、基底関数Kの個数は8で、平滑化パラメータαは64.0に設定される。
【0050】
いくつかの実施形態では、コスト関数はダイナミックレンジの拡大と信号対雑音比(SNR)とのバランスをとる手法を含むことができる。上述したように、HDR画像を得るために、2次フィルタ(例えば、カラーフィルタアレイ400のフィルタd,e,f,g)は1次フィルタ(例えば、カラーフィルタアレイ400のフィルタa,b,c)よりも低い透過率を有する。これにより、2次フィルタの信号対雑音比(SNR)の低下が起こる可能性がある。このようなトレードオフは1次フィルタと2次フィルタとの露出比β = e
max/e
minに基づいて制御することができる。ここで、e
max は1次フィルタの平均露出で、e
min は2次フィルタの平均露出である。よって、βは上述した方程式X = C
TIRのCによって決めることができ、ここで決まった値βは、ダイナミックレンジの拡大と信号対雑音比の低減とのバランスをとるために使用することができる。
【0051】
いくつかの実施形態では、ダイナミックレンジは、次式
【数20】
と定義することができ、ここで、
V
full は検出器の飽和容量(例えば、V
full = 3500e)を表し、N
r はイメージセンサの読み取りノイズの二乗平均平方根(RMS)である。検出器の読み取りノイズのRMSは、
【数21】
と定義することができる。例えば、N
dark は33eと設定することができる。
図4のカラーフィルタアレイ400を使ういくつかの実施形態では、N
r は変わらないが、最大検出可能なグレーレベルはβV
full となる。従って、カラーフィルタアレイ400を使うカメラシステムのダイナミックレンジは下記の様に表すことができる。
【0052】
【数22】
いくつかの実施形態では、信号対雑音比は
【数23】
と定めることができ、ここで、Vは信号でNは雑音である。2次フィルタに対応する信号は、露出βを使ってV″
max = V′
max/βと表すことができ、ここで、V′
maxは1次フィルタによる信号である。1次フィルタによる信号が飽和していない場合には、2次フィルタによる信号は1次信号から決定することができる。1次信号が飽和しているときの2次フィルタの信号対雑音比は、モザイク400を使ったカメラシステムにとって最悪の信号雑音比であり、以下のように表される。
【0053】
【数24】
ここで、
【数25】
である。SNR
GAP とDR
GAP が大きいとき、カメラシステムの信号対雑音比およびダイナミックレンジの点で性能が高いので、下記のコスト関数を使用することができる。すなわち、
【数26】
【0054】
いくつかの実施形態では、上述のコスト関数の各々を組み合わせて、全体のコスト関数を得ることができる。例えば、上述のコスト関数の各々は特定の画質度を表すので、全体のコスト関数は個々のコストの加重和として表すことができる。すなわち、
【0056】
尚、重み係数(例えば、w
1,w
2,w
3)は、カメラシステムを使用または製造する用途の画質要求に従って決めることができる。例えば、いくつかの実施形態では、w
1=1.0,w
2=1.0,w
3=1.0を使用して、全体のコスト関数を決めることができる。尚、フィルタは正数のスペクトル応答性(Cは正数)を持っているので、Cの向上または最適化は下記の様に表すことができる。
【0058】
いくつかの実施形態では、初期推定値をフィルタのスペクトル応答性に割り当てることができる。つまり、Cの中で7つのスペクトル応答関数を求めるために、初期推定値を最適化手法と共に使用することができる。1つの例では、フィルタ応答に対する初期推定値を市販の一組の光学バンドパスフィルタおよびオンチップフィルタによるセットから選択することができる。別の例では、市販のフィルタを1つ以上の上述したコスト関数に基づいて、7個のチャネルの各々に割り当てることができる(例えば、色再現エラーに基づく一組の177個の市販フィルタよりなるセットからの割り当てる)。よって、1次フィルタC
0′および2次フィルタC
0″は下記のように決定される。
【0060】
ここで、C
0は一組の市販フィルタである。
【0061】
7個のフィルタそれぞれに対する7つの初期推定値の割り当てに応じてc=argmin
cGの条件付き非線形最小化を行うために、反復適用を使用することができる。例えば、スペクトル応答性を決めるためにMathworks(登録商標)、Mathlab(登録商標)または他の適切なコンピュータプログラムを使用することができる。Mathlab(登録商標)を使う際には、FMINCONルーチンを使用して、上述のような条件付き非線形多変数関数の最小値を求めることができる。また一方で、条件付き非線形多変数関数の最小値を求めるには、その他の適切なコンピュータプログラムも使うことができる。
【0062】
図6は
図4のカラーフィルタアレイ400における7個の機能強化したフィルタのスペクトル応答性を示す。スペクトル応答の決定にコスト関数を使用することによって、またコスト関数の色再現項の結果として、曲線605、610、615でそれぞれ表される1次フィルタa,b,cは、赤、緑、青のフィルタにほぼ類似するスペクトル応答性を持つことに留意されたい。したがって、1次フィルタを使用して、可視光スペクトルのほぼ全体をカバーするRGB画像取得することができる。
【0063】
さらに、2次フィルタd,e,f,g(それぞれ曲線620、625、630、635によって示す)によってキャプチャしたスペクトルは、それらのスペクトル応答性に関係なく、1次フィルタを使って取得した画像と大きく相互に関連する。この結果、2次フィルタによって生成した画像のアンチエイリアシングを行うことができる。さらにコスト関数の特性により、2次フィルタは1次フィルタよりも低い露出または透過率を持つ。したがって、1次フィルタおよび2次フィルタを使ってハイダイナミックレンジ情報を取得することができ、また7個のフィルタは異なるスペクトルを持ち、可視スペクトルをサンプリングするので、それらの再構築した画像を使用して、各シーンポイントにおける完全なスペクトル分布、すなわちマルチスペクトル画像の平滑な推測を取得することができる。
【0064】
下記の表1は、カラーフィルタアレイ400の初期および機能強化した一組の7個のフィルタによるセットにおける、全体コスト関数の色再現性ならびにスペクトル再構築成分のエラー、推定ダイナミックレンジ、信号対雑音比を示す。さらに
図1は、ベイヤモザイクにおける赤、緑、青フィルタにおける全体コスト関数の色再現性およびスペクトル再構築成分のエラー、推定ダイナミックレンジ、ならびに信号対雑音比も示す。
【0066】
コスト関数を使って汎用的に詰め合わせピクセル配列のカラーフィルタアレイにおけるフィルタのスペクトル応答性を高めると、表1の各エラーは減少した。また、信号対雑音比の低下は約2.3dBで低く保たれるとともに、ダイナミックレンジは約4.6dB向上した。さらに、全体的なコスト関数の色再現性およびスペクトル再構築成分のエラーはベイヤモザイクの方が高いことに留意されたい。
【0067】
図7は、本発明のいくつかの実施形態によるカラーフィルタアレイを有するカメラシステムを使って1つのキャプチャした画像から複数の画像タイプを生成するシステム700の概略図である。
【0068】
図7に示すように、カメラシステム700は、1次フィルタ712および2次フィルタ714を有するカラーフィルタアレイ710を備える。上述したように、カラーフィルタアレイ710は
図4のカラーフィルタアレイ400と類似のものとすることができる。1次フィルタ712は3個のカラーフィルタa,b,c2を有し、2次フィルタ714は4個のカラーフィルタd,e,f,gを有する。1次フィルタは、サンプリングピッチΔs
a,b,c = 2pで矩形格子上における3つの異なるスペクトル画像をキャプチャし、2次フィルタはそれぞれ、異なるスペクトルフィルタによりサンプリングピッチΔs
d,e,f,g = 4pで矩形格子における入射画像をサンプリングする。
【0069】
図7にも示す様に、1次フィルタ712および2次フィルタ714から取得した情報を使用して、複数のタイプの画像、例えばモノクローム画像720、ハイダイナミックレンジ(HDR)のモノクローム画像730、3色(RGB)画像740、HDRのRGB画像760、マルチスペクトル画像770を生成することができる。いくつかの実施形態では、アンチエイリアシングとともに、マルチモーダルデモザイク処理の手法を高分解能画像の生成に適用する。
【0070】
図4のカラーフィルタアレイ400に戻って説明すると、各画素には1つの測色(色測定)があることに留意されたい。他の色は、例えば、画像のタイプ(例えば、モノクローム画像、HDRモノクローム画像、RGB画像、HDRのRGB画像、マルチスペクトル画像など)に関係なく、例えば、高分解能の出力画像を再構築するために、隣接する画素によって取得した情報から推定する。この手法は一般に「デモザイク処理(demosaicing)」と称される。
【0071】
Λ
mを、チャネルm ∈{a,c,d,e,f,g}に対する一組の画素位置(i、j)よりなるセットとして示すと、各フィルタのマスク関数は以下のように定義される。
【0073】
図4のカラーフィルタアレイ400または
図7のカラーフィルタアレイ710では、7タイプの色チャネル、すなわち、a,b,c,d,e,f,gがある。したがって、観測データ、y(i,j)は下記のように表すことができる。
【0074】
【数31】
ここで、x
m はm番目のチャネルにおける最大解像度画像である。
【0075】
図7に戻って説明すると、モノクローム画像720は、1次フィルタ712から取得した情報を使って、1つのキャプチャした画像から生成することができる。上したように、1次フィルタ712がキャプチャした情報はエイリアシングの影響を受けない。よって、722では、カラーフィルタアレイ710における他の1次フィルタ712からの線形補間を使って、1次フィルタ712における1つの欠落情報を推定することができる。
【0076】
高分解能のモノクローム画像720は、1次フィルタの測定した情報を使って再構築することができる。これは、下記のように表すことができる。
【数32】
ここで、
【数33】
は、1次フィルタ(例えば、
図4の1次フィルタa,b,c)で画素を補間することによって取得した最大解像度画像である。補間については、有限インパルス応答(FIR)フィルタF(i,j)を使用することができ、下記のように表すことができる。
【数34】
ここで、v = a, bまたはc、*は畳み込みを示し、また
【数35】
である。例えば、いくつかの実施形態では、全ての周波数を通す30x×30のサイズのFIRフィルタを求めるのに、Mathworks(登録商標)、Mathlab(登録商標)のfirl関数を使うことができ、これによって、補間による高周波数の損失を最小限にすることができる。
【0077】
いくつかの実施形態では、1次フィルタ712および2次フィルタ714から取得した情報を使うことによって、1つのキャプチャされた画像から、HDR(ハイダイナミックレンジ)のモノクローム画像730を生成することができる。ハイダイナミックレンジのモノクローム画像(例えば、画像730)を生成するために、低露出モノクローム画像732を構築することができる。734では、2次フィルタ714(例えば、
図4の4個の2次フィルタd,e,f,g)からの情報を使って、低露出モノクローム画像732を構築する。これら2次フィルタ714は低い露出を持ち、共同して可視スペクトル全体をカバーする。
【0078】
例えば、フィルタa(例えば、
図4に示すカラーフィルタアレイ400のフィルタa)を持つ画素のモノクローム値を計算することができる。
図4に示すように、カラーフィルタアレイ400は、各画素aの周りに対角線上に配置した4個の異なる2次的な画素(例えば、画素d,e,f,g)を有する。よって、各画素aのモノクローム値は、4個の隣接する2次的な画素における測定の平均として計算することができ、下記のように表すことができる。
【0079】
【数36】
尚、半画素位相シフトによって起こるエイリアシングは、対角線上に隣接する4個の画素を加えることによってなくなる。このとき、画素aでの値を他の画素に対して補間して、低露出モノクローム画像732(I
LEM)を生じ、これは、以下のように表すことができる。
【0080】
【数37】
ここで、
【数38】
そして
である。
【0081】
低露出モノクローム画像732の取得後、ステップ736で、例えば1次フィルタ712を使って生成したモノクローム画像720および2次フィルタ714を使って生成した低露出モノクローム画像732などの、異なる露出のモノクローム画像およびそれらに関連する情報を組み合わせることによって、HDRのモノクローム画像730を生成することができる。
【0082】
いくつかの実施形態では、3色(RGB)画像740を1次フィルタ712で取得した情報を使ってキャプチャした1つの画像から生成することができる。
図6で先に述べたように、
図4の1次フィルタa,b,cのようなカラーフィルタアレイ710で使用する1次フィルタ712は、赤、緑、青のフィルタに類似するスペクトル応答性を有する。ステップ742,744では、1次フィルタを使って計算する
【0083】
【数39】
の画像内における情報を組み合わせるために、色再現マトリクスT′およびH′(CIEのXYZ3刺激値からsRGB3刺激値への線形変換)を使って3色(RGB)画像740を構築することができる。RGB画像は下記のように表すことができる。
【数40】
【0084】
上述したように、RGB画像の色再現のため色差を計算するよう、人間の視覚に関する直接測定に基づき、多くの他の色空間を定義する基礎となる、CIEの1931XYZ色空間(国際照明委員会作成)を使用することができる。CIEのXYZ3刺激値からsRGB3刺激値(デジタルカメラやカラーモニタに採用されている)への計算は線形変換である。CIEのXYZ3刺激値はY = A
TIRと定義することができ、ここでYは真の3刺激値を表し、AはCIEのXYZカラーマッチング関数、すなわち、
【0085】
【数41】
のマトリクスである。1次フィルタ、すなわち、
【数42】
に対応する推定されるCIE3刺激値は、最適の線形変換、すなわち、
【数43】
と表すことができ、ここでX′ = [x
a, x
b, x
c]
T
である。変換T′は、色差を最小限にするように定められる。すなわち、
min‖Y−T′X′‖
2いくつかの実施形態では、カラーフィルタアレイ710の1次フィルタ712および2次フィルタ714から取得した情報を使って、1つのキャプチャした画像からHDRのRGB画像760を生成することができる。ハイダイナミックレンジ3色画像(例えば、画像760)を生成するために、低露出3色画像750を構築することができる。
【0086】
最大解像度による2次フィルタ画像である、
【数44】
を、双線形補間を使用し、d,e,f,gの画素を使ってそれぞれ計算することができる。しかし、これは深刻なエイリアシングとなる。いくつかの実施形態では、2次フィルタ画像のエイリアシングをステップ752で1次フィルタ画像である、
【数45】
からの情報を使って推定することができる。
図6の重複部分に示すように、1次フィルタ712および2次フィルタ714のスペクトル間には強い相関関係がある。例えば、フィルタeに対応する最大解像度での画像、すなわち、
【数46】
をアンチエイリアシングする場合、フィルタeはフィルタaと強い相関関係を持つ。したがって、各フィルタeの場所の補間された最大解像度でのフィルタaの画像
【数47】
をサンプリングすることができる。これらのものはフィルタeの最大解像度での画像の計算に使用することができ、下記のように表すことができる。
【数48】
ここで、Ω( )は双線形補間を表す。エイリアシングは補間されるものから最初の画像
【数49】
を引くことによって推測することができる。その後、チャネルeのエイリアシングの最終的な推定を得るために、上述の差異を、aとeの画素のフィルタ透過比であるΨ
ae によって拡縮し、aとeの画素における露出の差異を考慮する。推定したエイリアシングΨ
aeは下記のように表すことができる。
【0087】
【数50】
ここで、Ψ
aeは、以下の通りである
【数51】
である。
よって、ステップ754で、アンチエイリアシングされる画像
【数52】
は次式、すなわち、
【数53】
と計算することができる。さらに、その他のアンチエイリアシングされた2次フィルタは同様に計算することができる。
【0088】
図8は、アンチエイリアシングの手法によって、2次フィルタから計算された低露出RGB画像の例を示す。例えば、画像810はアンチエイリアシングのない2次フィルタ714から計算された低露出RGB画像を示す。尚、エイリアシングによって生じた擬似カラーアーチファクト812が存在する。画像820は、1次フィルタ712における1次フィルタを持つ画素を使って計算したダウンサンプルされた画像、すなわち、
【0089】
【数54】
を示す。そして画像830はダウンサンプルした画像820とチャネルaの最大解像度での画像を使って推定したエイリアシングY
e(i,J)を示す。尚、画像830の輝度を視覚化するために増強する。したがって、画像840は、画像830を使ってアンチエイリアシングの後に取得した低露出RGB画像であり、これは、エイリアシングの推定を提供する。画像840はアンチエイリアシング手法の有効性を示し、擬似カラーアーチファクト(例えば、画像820におけるアーチファクト812)を除去することができる。
【0090】
低露出RGB画像は756で2次フィルタ画像に色再現マトリクスを掛けることによって得ることができ、下記のように表すことができる。
【0091】
【数55】
ここで、T″は、色再現マトリクスであり、HはCIEのXYZからRGBへの線形変換である。
【0092】
低露出RGB750を取得した後、ステップ758で、異なる露出の3色(RGB)画像と、例えば、RGB画像740および低露出RGB画像750などのそれらの関連情報とを組み合わせることにより、HDR(ハイダイナミックレンジ)のRGB画像760を生成することができる。
【0093】
いくつかの実施形態では、マルチスペクトル画像770は、カラーフィルタアレイ710の1次フィルタ712および2次フィルタ714からの情報を使って、1つのキャプチャした画像から生成することができる。マルチペクトル画像770に関しては、対象物のスペクトル反射率は、ステップ772で、画像
【0094】
【数56】
とアンチエイリアシングした画像
【数57】
を使って再構築することができる。いくつかの実施形態では、HDRのRGB画像760は、カラーフィルタアレイ 710の1次フィルタ712および2次フィルタ714から得た情報を使って、1つのキャプチャした画像から生成することができる。
【0095】
先に述べた様に、スペクトル分布は、方程式の最小化、‖F・σ−X‖
2 によって再構築することができる。いくつかの実施形態では、再構築手法は条件付き最小化として下記のように表すことができる。
【0096】
【数58】
ただし、B・σ≧0、ここで、
【数59】
は平滑化条件付き、αは平滑化パラメータ、すなわち、
【数60】
である。この正規化された最小化は2次計画法を使って解くことができる。
【0097】
図9は円形ゾーンプレート(CZP)の原画像910といくつかの実施形態による原画像910の1つのキャプチャした画像から生成した複数の画像920,930,940,950である。グラウンドトゥルースとしての原画像910は、f数5.6、および画素サイズ1.0μmを持つレンズの回折限定モデルを使って計算したCZP画像を示す。画像をキャプチャするよう、複数の1次フィルタおよび複数の2次フィルタを持つ汎用的に詰め合わせたピクセル配列のカラーフィルタアレイまたはモザイク(例えば、カラーフィルタアレイ400、カラーフィルタアレイ710等)を有するカメラシステムを使って、複数の画像タイプ、例えば、デモザイクしたモノクローム画像920、デモザイクした3色(RGB)画像930、デモザイクしてアンチエイリアシングした低露出モノクローム画像940、およびデモザイクしてアンチエイリアシングした低露出モノクローム画像950を生成することができる。
【0098】
図10は、910、920、930、940、950の各画像の変調伝達関数(MTF)の計算を示す。図に示すように、曲線1010は原画像910と関連し、曲線1020は、モノクローム画像920および3色(RGB)画像930に関連し、曲線1030は低露出モノクローム画像940と関連し、そして曲線1040は低露出3色(RGB)画像950と関連する。尚、カラーフィルタアレイの1次フィルタを使って生成したモノクローム画像920および3色 (RGB)画像930の曲線1010は、原画像910と関連する曲線1020とほぼ類似し。また、低露出モノクローム画像940は、0.1754fsで約0.1のMTFを持ち、一方低露出3色(RGB)画像950は0.1647fsで約0.1のMTFを持つ。標準のモノクローム画像およびRGB画像に関しては、一般に0.2125fsで起こる。これにより、複数の1次フィルタおよび複数の2次フィルタを持つカラーフィルタアレイとマルチモーダルデモザイク処理の手法を使うカメラ機構によって、ユーザーが復元画像の空間分解能と放射分析的詳細特性との間におけるトレードオフの制御を行うことができることを実証する。
【0099】
1つのキャプチャした画像から生成した画像の他の例を
図11および
図12に示す。尚、
図11のグラウンドトゥルース画像1110および
図12の1210は、f数5.6、および1.0μmの画素サイズを持つレンズの回折限定モデルを使って計算する。
図11の画像1120および
図12の画像1220は、1次フィルタおよび2次フィルタを持つ、汎用的に詰め合わせたピクセル配列のカラーフィルタアレイまたはモザイクを持つカメラシステムを使ってキャプチャした原画像の例を示す。
図11の画像1130および
図12の画像1230は、原画像1120と1220のそれぞれと1次フィルタから取得した情報を使って生成したデモザイクしたモノクローム画像の例を示す。
図11の画像1140および
図12の画像1240は、原画像1120,1220のそれぞれと、1次フィルタおよび2次フィルタから取得した情報を使って生成したHDR(ハイダイナミックレンジ)のモノクローム画像の例を示す。
図11の画像1150および
図12の画像1250は、原画像1120,1220のそれぞれと1次フィルタから取得した情報を使って生成した3色(RGB)画像の例を示す。
図11の画像1160および
図12の画像1260は、原画像1120,1220のそれぞれと1次フィルタおよび2次フィルタから取得した情報を使って生成したHDR(ハイダイナミックレンジ)の3色(RGB)画像の例を示す。
【0100】
モノクローム画像およびRGB画像における飽和領域の質感および色は、対応するHDR(ハイダイナミックレンジ)画像において視認できるようになることに留意されたい。
図11および
図12にも示すように、ハイダイナミックレンジ3色(RGB)画像よりもハイダイナミックレンジモノクローム画像内の方がより詳細に表示される。
【0101】
さらに、
図11および
図12は、1次フィルタおよび2次フィルタから取得、計算した情報を使って生成したマルチスペクトル画像の例を示す。例えば、
図11の画像1170および
図12の画像1270は、同調フィルタと冷却CCDカメラを使ってキャプチャしたいくつかの静止シーンの31バンドマルチスペクトル画像(10nm間隔で、400〜700nm)を示す。対応する再構築したスペクトル反射率曲線1180,1280は、再構築したスペクトル反射率(点線で表示)がグラウンドトゥルース画像のスペクトル反射率とほぼ同一であることを示す。
【0102】
代案として、いくつかのカメラシステムは異なる汎用的に詰め合わせたピクセル配列のカラーフィルタアレイを使ってシーンの1つの画像をキャプチャし、画像解像度、ダイナミックレンジ、およびスペクトル詳細特性の間におけるトレードオフの制御を行い、複数の画像タイプで画像を生成することができる。
【0103】
例えば、
図13は、5個の異なるカラーフィルタ、例えば、緑(G)、赤(R)、青(B)、黄(Y)、エメラルド(E)を含む8×8のカラーフィルタアレイ1300の例を示す。各カラーフィルタは2つの露出、例えば、明るい露出および暗い露出を持ち、この場合、色(C)は明るい画素を示し、色(C′)は暗い画素を示す。例えば、画素Gは明るい緑の画素、画素G′は暗い緑の画素を示す。
【0104】
図13に示すように、明および暗の緑チャネルは、水平方向と垂直方向に2行毎にサンプリングを行い、また対角線方向に各行毎にサンプリングを行う。よって、明および暗の緑チャネルの水平方向および垂直方向のサンプリング周波数はf
HV/2であり、明および暗の緑チャネルにおける対角線方向のサンプリング周波数はf
D である。ここで、f
HVは水平方向および垂直方向のサンプリング周波数であり、f
D はイメージセンサの対角線方向のサンプリング周波数である。さらに、明および暗の緑チャネルの水平方向および垂直方向のナイキスト周波数は、サンプリング周波数の半分、すなわちf
HV/4であるとともに、明および暗の緑チャネルにおける対角線方向のナイキスト周波数はf
D/2である。
図13に戻って説明すると、明および暗の赤、青、黄およびエメラルドのチャネルは水平方向および垂直方向に4行毎にサンプリングし、対角線方向には2行毎にサンプリングする。したがって、明および暗の赤、青、黄、エメラルドにおけるチャネルの水平方向および垂直方向のサンプリング周波数はf
HV/4であり、対応する対角線方向のサンプリング周波数はf
D/2である。したがって、明および暗の赤、青、黄、エメラルドにおけるチャネルの水平方向および垂直方向のナイキスト周波数はf
HV/8で、対応する対角線方向のナイキスト周波数はf
D/4である。
【0105】
図13のカラーフィルタアレイ1300のナイキスト周波数をさらに説明するために、周波数領域内のナイキストまたは使用可能な周波数領域1400を
図14に示す。図面に示すように、明および暗の緑チャネルのナイキスト領域は、実線1410で示すほぼ正方形の領域に位置し、明および暗の赤、青、黄、エメラルドにおけるチャネルのナイキスト領域は点線1420で示すほぼ正方形の領域に位置する。
【0106】
本発明のいくつかの実施形態によるカラーフィルタアレイの別の例において、
図15は5個の異なるカラーフィルタ、例えば、緑(G)、赤(R)、青(B)、黄(Y)、エメラルド(E)を含む9×9のカラーフィルタアレイ1500の例を示す。
【0107】
図15に示すように、緑のチャネルは水平方向および垂直方向には各行毎にサンプリングし、また対角線方向に各行毎にサンプリングする。よって、暗い緑チャネルの水平方向および垂直方向のサンプリング周波数はf
HVであり、緑チャネルの対角線方向のサンプリング周波数はf
D である。さらに、緑のチャネルの水平方向および垂直方向のナイキスト周波数はサンプリング周波数の半分、すなわちf
HV/2であり、緑チャネルの対角線方向のナイキスト周波数はf
D/2である。
図15に戻って説明すると、赤、青、黄、エメラルドのチャネルは水平方向および垂直方向には2列毎にサンプリングし、対角線方向には2列毎にサンプリングする。よって、赤、青、黄、エメラルドチャネルの水平方向および垂直方向のサンプリング周波数はf
HV/2であり、対応する対角線方向のサンプリング周波数はf
D/2である。したがって、赤、青、黄、エメラルドのチャネルの水平方向および垂直方向のナイキスト周波数はf
HV/4であり、対応する対角線方向のナイキスト周波数はf
D/4である。
【0108】
カラーフィルタアレイ1500のナイキスト周波数を
図16にさらに説明する。
図16は、緑チャネルのナイキスト領域が実線1610で示すほぼダイアモンド形状の領域に位置し、赤、青、黄、エメラルドのチャネルのナイキスト領域が、点線1620で示すほぼダイアモンド形状の領域に位置することを示す。
【0109】
同様に、上述のように、本発明のいくつかの実施形態による
図13のカラーフィルタアレイ1300または
図15のカラーフィルタアレイ1500などのカラーフィルタアレイを有するカメラシステムを使って、1つのキャプチャした画像から複数の画像のタイプを生成することができる。例えば、
図13のカラーフィルタアレイ1300の2つの露出を持つ5個のカラーフィルタから得た情報を、モノクローム画像、ハイダイナミックレンジ(HDR)モノクローム画像、3色(RGB)画像、HDRのRGB画像、およびマルチスペクトル画像の生成に使用することができる。別の例では、
図15のカラーフィルタアレイ1500の5個のカラーフィルタから取得した情報を使用して、複数のタイプの画像、例えばモノクローム画像および3色(RGB)画像を生成することができる。また上述のように、アンチエイリアシングとともにデモザイク処理を施す手法を適用して複数のタイプの画像を生成することができる。
【0110】
いくつかの実施形態では、 カラーフィルタアレイ1300,1500のうち一方を使用し、局部的色分布の線形回帰モデルを使ってエイリアシング効果を低減することができる。例えば、小さな局部領域(例えば、変色エッジ)には強い色間の相関関係があるとされている。画像内のこれら局部的色分布は下記の線形回帰モデルによって表すことができる。
【0111】
【数61】
ここで、
である。カラーフィルタアレイ1300または1500の位置(i,j)の画素は、(R
i,j, g
i,j, b
i,j, y
i,j, e
i,j), (r
i,j, G
i,j, b
i,j, y
i,j, e
i,j), (r
i,j, g
i,j, B
i,j, y
i,j, e
i,j), (r
i,j, g
i,j, b
i,j, Y
i,j, e
i,j),(r
i,j, g
i,j, b
i,j, y
i,j, E
i,j)のいずれかで表すことができ、ここで、R
i,j、G
i,j、B
i,j、Y
i,j、E
i,jはカラーフィルタアレイの既知の赤、緑、青、黄、エメラルドを示し、r
i,j, g
i,j, b
i,j, y
i,j, e
i,jはカラーフィルタアレイの未知のコンポーネントを示す。さらに、r
i,j, g
i,j, b
i,j, y
i,j, e
i,jの推定は、以下のもの、すなわち、
【数62】
で示す。
結果として、V
GRおよびM
R は下記のようになる。
【数63】
これら表示を用いて、Rのエイリアシングを推定することができる。
【0112】
いくつかの実施形態では、カラーフィルタアレイ1300または1500のうち一方を使用し、方向平滑化を用いてエイリアシング効果を低減することができる。例えば、アンチエイリアシングの計算コストを下げるために、局部的統計値(例えば、V
GG,V
GR,M
G,M
R)を計算する際に、方向平滑化を使うことができる。
図17に示すように、カラーフィルタアレイ1710の局部的領域方向に沿う1次元の平滑化をステップ1720に適用し、色1730の1次元信号を取得する。その後、アンチエイリアシングの手法をステップ1740で1次元色信号1730に適用する。アンチエイリアシング後、各位相の色データをステップ1750で取得する。その後、アンチエイリアシングした1次元色データを使って、ステップ1760で局部的統計値(例えば、V
GG,V
GR,M
G,M
R)を計算することができる。
【0113】
尚、方向平滑化手法は、どの適切な方向にも適用することができる。例えば、平滑化手法は、水平方向、垂直方向、右上対角線方向である
【数64】
の方向および右下対角線方向である
【数65】
の方向に適用することができる。尚、平滑化の方向は局部的な肌理(きめ)の方向の少なくとも一部(例えば、水平ストライプの水平方向の平滑化)に基づいて選択することができる。
【0114】
いくつかの実施形態では、いくつかの方向(例えば、水平方向、垂直方向、右上対角線方向、右下対角線方向)の方向平滑化の手法を行い、アンチエイリアシング、局部的統計値の計算、および出力色補間も各方向に関して行う。アンチエイリアシングした1次元信号の勾配および局部的な色変動の大きさを測定することによって、各方向の残りのエイリアシングを評価することができる。いくつかの実施形態では、最小の残りのエイリアシングを提供する方向を、補間フィルタの適切な方向として選択することができる。
【0115】
図18は原画像1810の一部分と、いくつかの実施形態による原画像1810の1つのキャプチャした画像から生成した複数の画像1820,1830,1840,1850を示す。画像をキャプチャするために、各々が2つの露出(例えば、明るい露出および暗い露出)を持つ5個の異なるカラーフィルタを有する、
図13のカラーフィルタアレイ1300のような汎用的に詰め合わせピクセル配列のカラーフィルタアレイカメラシステムおよび上述のアンチエイリアシングの手法を使って、例えば、モノクローム画像1820、3色(RGB)画像1830、ハイダイナミックレンジ (HDR)モノクローム画像1840およびHDRのRGB画像1850を生成することができる。尚、空間分解能を犠牲にすることによって、スペクトルおよびダイナミックレンジの質を向上させることができることに留意されたい。
【0116】
いくつかの実施形態では、カメラ機構と関連して使用するハードウェアは、画像プロセッサ、画像キャプチャ装置(
図4に示す汎用的に詰め合わせピクセル配列のカラーフィルタアレイを具える)および画像記憶装置を有することができる。画像プロセッサは、本明細書に記載の画像および画像関連データを処理することのできる任意の適切な装置とすることができる。例えば、画像プロセッサは、コンピュータのような汎用装置や、クライアント、サーバ、画像キャプチャ装置(カメラ、ビデオレコーダー、スキャナ、携帯電話、携帯情報端末など)などの専用の装置であってもよい。尚、これら汎用装置または専用装置は、プロセッサ(マイクロプロセッサ、デジタル信号プロセッサ、コントローラなど)、メモリ、通信インタフェース、表示コントローラ、入力装置などの適切なコンポーネントを具えることができる。画像キャプチャ装置は、携帯カメラ、ビデオカメラまたはレコーダー、コンピュータカメラ、スキャナ、携帯電話、携帯情報端末、閉回路のテレビジョンカメラ、セキュリティカメラ、インターネットプロトコルカメラなどの、画像および/または映像をキャプチャする任意の適切な装置とすることができる。画像キャプチャ装置は、本明細書に記載の汎用的に詰め合わせたピクセル配列のカラーフィルタアレイを有することができる。画像の記憶装置は、メモリ(例えば不揮発性メモリ)、外部装置へのインタフェース(サムドライブ、メモリスティック、ネットワークサーバまたは他の記憶またはターゲット装置)、ディスクドライブ、ネットワークドライブ、データベース、サーバなどの画像を記憶する任意の適切な装置とすることができる。
【0117】
このように、本発明は、汎用的に詰め合わせたピクセル配列のカメラシステムおよび方法を提供する。
【0118】
本発明を上述した実施形態で説明したが、これらは例として説明ものであり、添付の特許請求の範囲によってのみ限定される本発明の主旨や範囲から逸脱することなく、本発明の実施の詳細においては多くの変更が可能である。本明細書で記載した実施形態は種々の方法で組み合わせたり、組み替えたりすることができる。